(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】成形装置、成形方法、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240917BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020106234
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】山下 敬司
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054210(JP,A)
【文献】特表2012-506146(JP,A)
【文献】特開2013-055146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/30、21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、
前記組成物が前記基板上のショット領域に塗布されてから前記組成物が前記型と接触するまでの時間に基づいて、前記組成物の
揮発が促進するように揮発量を調整する制御部と、を有し
、
前記制御部は、前記型を前記組成物に接触させる時の前記組成物の体積または膜厚が複数のショット領域で均一化されるように、前記揮発量を調整する、
ことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記揮発量を調整するために、前記組成物の周囲に気体を供給する少なくとも1つの供給口を含む調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記揮発量を調整するために、前記組成物の周囲の気体を回収する少なくとも1つの回収口を含む調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記揮発量を調整するために、前記組成物を硬化させない波長帯域の光を前記組成物に照射する照射部を制御することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記揮発量を調整するために、前記組成物の周囲に熱を加える加熱部を制御することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記組成物が前記基板上の前記ショット領域に塗布されてから前記組成物が前記型と接触するまでの時間が最大となるショット領域の前記時間を基準として前記複数のショット領域の前記組成物の前記揮発量を制御することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項7】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、
前記組成物が前記基板上のショット領域に塗布されてから前記組成物が前記型と接触するまでの時間に基づいて、前記組成物の揮発量を調整する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記型を前記組成物に接触させる時の前記組成物の体積または膜厚が複数の前記ショット領域で均一化されるように、前記組成物が前記ショット領域に塗布された順番とは異なる順番で複数のショット領域の揮発量の調整を行う、
ことを特徴とする成形装置。
【請求項8】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形方法であって、
前記組成物が前記基板上のショット領域に塗布されてから前記組成物が前記型と接触するまでの時間に基づいて、前記組成物の
揮発が促進するように揮発量を調整する制御工程と、を有し、
前記制御工程において、前記型を前記組成物に接触させる時の前記組成物の体積または膜厚が複数のショット領域で均一化されるように、前記組成物の前記揮発量を調整する、
ことを特徴とする成形方法。
【請求項9】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形方法であって、
前記組成物が前記基板上のショット領域に塗布されてから前記組成物が前記型と接触するまでの時間に基づいて、前記組成物の揮発量を調整する制御工程と、を有し、
前記制御工程において、前記型を前記組成物に接触させる時の前記組成物の体積または膜厚が複数の前記ショット領域で均一化されるように、
前記組成物が前記ショット領域に塗布された順番とは異なる順番
で複数のショット領域の前記揮発量の調整を行うことを特徴とす
る成形方法。
【請求項10】
前記制御工程は、前記組成物の周囲に気体を供給する供給量または供給時間の少なくとも一方を制御することで、前記組成物の前記揮発量を調整することを特徴とする請求項
8または
9に記載の成形方法。
【請求項11】
前記制御工程は、前記組成物の周囲の気体を回収する回収量または回収時間の少なくとも一方を制御することで、前記組成物の前記揮発量を調整することを特徴とする請求項
8~
10のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項12】
前記制御工程は、前記揮発量を調整するために、前記組成物に熱を加える工程または前記組成物に光を照射する工程の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項
8~1
1のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項13】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の成形装置を用いて基板上の組成物を成形する成形工程と、
前記成形工程で前記組成物が成形された前記基板を処理する処理工程と、
前記処理工程で処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置、成形方法、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの微細化の要求が進んでいる。また、従来のフォトリソグラフィ技術に加えて、基板上のインプリント材(組成物)を型で成形し、インプリント材のパターンを基板上に成形する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を成形することができる。
【0003】
例えば、インプリント技術の1つとして、光硬化法がある。この光硬化法を採用したインプリント装置では、まず、基板上のインプリント領域であるショット領域に光硬化性のインプリント材を塗布する。次に、型(原版)のパターン部とショット領域の位置合わせを行いながら、型と基板に塗布されたインプリント材とを接触(押印)させ、インプリント材を型に充填させる。そして、光を照射して前記インプリント材を硬化させたうえで型とインプリント材とを引き離す(離型)ことにより、インプリント材のパターンが基板上に成形される。
【0004】
近年、装置の生産性向上のため、一度に複数領域にインプリント材を塗布した後、連続的に押印・離型をするインプリント方法が知られている。しかし、インプリント材を塗布してから押印するまでの時間が、各領域で異なる。そのため、各領域の塗布されたインプリント材が揮発し、押印する前までインプリント材の体積が異なってしまい、インプリント材が足りず、パターンが未充填となる、または基板内でインプリント材の膜厚に分布が生じるといった問題が生じる場合があった。
【0005】
一方で、インプリント材の揮発等に関する問題を解決するために、特許文献1では、各インプリント領域におけるインプリント直前にそのインプリント領域にインプリント材を塗布する。さらに、基板の外側のインプリント領域と中心付近のインプリント領域とで、インプリント時の気体の供給条件を変える方法が記載されている。また、特許文献2では、インプリント材が塗布されてからの時間に応じて、インプリント材の吐出量を調整する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許5275419号公報
【文献】特許4654224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、複数領域に連続してインプリント材を塗布するインプリント方法ではないため、インプリント材を塗布してからインプリントするまでの時間差によりインプリント材の膜厚の差が生じてしまう問題については考慮されていない。また、特許文献2でもインプリント材を塗布してからインプリントするまでの時間差によりインプリント材の膜厚の差が生じてしまう問題については考慮されていない。
【0008】
そこで本発明は、組成物が塗布されてから型と接触するまでの時間に拘わらず組成物の体積または膜厚を均一化することのできる成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一側面としての成形装置は、型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、組成物が基板上のショット領域に塗布されてから組成物が型と接触するまでの時間に基づいて、組成物の揮発が促進するように揮発量を調整する制御部と、を有し、制御部は、型を組成物に接触させる時の組成物の体積または膜厚が複数のショット領域で均一化されるように、揮発量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組成物が塗布されてから型と接触するまでの時間に拘わらず組成物の体積または膜厚を均一化することのできる成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のインプリント装置の概略断面図である。
【
図2】一般的なインプリント処理の塗布工程、押印工程、離型工程を説明する概略断面図である。
【
図3】各ショット領域におけるインプリント材の揮発量の一例を示す図である。
【
図4】実施例1の塗布工程、押印工程、離型工程を説明する概略断面図である。
【
図5】実施例1の塗布工程、押印工程、離型工程を説明するフローチャートである。
【
図7】実施例2のインプリント材の揮発分布及び照度分布についての一例を示す図である。
【
図9】実施例4の平坦化装置による処理を説明する図である。
【
図10】物品の製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の実施例では、型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置としてインプリント装置を用いた例について説明する。各図において、同一の部材については、同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
〔実施例1〕
図1は、本実施例の、型を用いて基板10上の組成物を成形する成形装置としてのインプリント装置(リソグラフィ装置)1の構成の一例を示した図である。インプリント装置1は、基板10上に供給されたインプリント材(組成物)と型7(原版、テンプレート、モールド)とを接触させる。そして、インプリント材9に硬化用のエネルギーを与えることにより、型7の凹凸パターンが転写された硬化物の組成物を成形する装置である。
【0014】
ここで、インプリント材9には、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態のインプリント材と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が150nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。
【0015】
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0016】
インプリント材9は、スピンコーターやスリットコーターにより基板10上に膜状に付与される。或いは液体噴射ヘッドにより、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板10上に付与されてもよい。インプリント材9の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0017】
本実施例では、インプリント装置1は、光の照射によりインプリント材9を硬化させる光硬化法を採用するものとして説明する。また、以下では、基板10上のインプリント材9に対して光を照射する、後述する照射光学系の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面内で互いに直交する2方向をX軸方向及びY軸方向とする。
【0018】
ここで、
図1を用いて、インプリント装置1の各部について説明する。インプリント装置1は、型保持部3と、照射部2と、基板ステージ(移動部)4と、塗布部(組成物供給部)5と、補助部材15と、制御部6と、アライメント計測部21とを含みうる。また、インプリント装置1は、基板ステージ4を載置し基準平面を形成する定盤22と、型保持部3を固定するブリッジ定盤23と、定盤22から延設され、床面からの振動を除去する除振器24を介してブリッジ定盤23を支持する支柱25とを備える。さらに、インプリント装置1は、共に不図示であるが、型7を装置外部と型保持部3との間で搬入出させる型搬送部や、基板10を装置外部と基板ステージ4との間で搬入出させる基板搬送部などを含み得る。
【0019】
型保持部3は、真空吸着力や静電気力によって型7を引き付けて保持する型チャック11と、型チャック11を保持して型7(型チャック11)を移動させる型移動機構12とを含む。型チャック11及び型移動機構12は、照射部2からの光が基板10上のインプリント材9に照射されるように、中心部(内側)に開口を有する。
【0020】
型移動機構12は、基板10上のインプリント材9への型7の押し付け(押印)、又は、基板10上のインプリント材9からの型7の引き離し(離型)を選択的に行うように、型7をZ軸方向に移動させる。型移動機構12に適用可能なアクチュエータは、例えば、リニアモータやエアシリンダを含む。
【0021】
型移動機構12は、型7を高精度に位置決めするために、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成されていても良い。また、型移動機構12は、Z軸方向だけではなく、X軸方向やY軸方向に型7を移動可能に構成されていても良い。更に、型移動機構12は、型7のθ(Z軸周りの回転)方向の位置や型7の傾きを調整するためのチルト機能を有するように構成されていても良い。
【0022】
型7は、矩形の外周形状を有し、基板10に対向する面(パターン面)に3次元状に形成されたパターン(回路パターンなどの基板10に転写すべき凹凸パターン)を備えたパターン部7aを有する。型7は、光8を透過させることが可能な材料、例えば、石英で構成される。また、型7は、光8が照射される面に、平面形状が円形で、かつ、ある程度の深さのキャビティを有していてもよい。
【0023】
照射部2は、不図示の光源及び照射光学系を有し、照射光学系は後述する光学素子を組み合わせたものを備える。照射部2は、インプリント処理(成形処理)において、型7を介して、基板10上のインプリント材9に光8を照射する。照射する光は例えば、紫外線であるが、これに限らずインプリント材9を適切に硬化させることができる波長の光であれば紫外線以外であってもよい。照射部2は、光源と、光源から照射される光をインプリント処理に適切な光8の状態(光の強度分布、照明領域など)に調整するための光学素子(レンズ、ミラー、遮光板など)とを含みうる。本実施例では、光硬化法を採用しているため、インプリント装置1が照射部2を有している。但し、例えば、熱硬化法を採用する場合には、インプリント装置1は、照射部2に代えて、インプリント材(熱硬化性インプリント材)を硬化させるための熱源を有することになる。
【0024】
基板ステージ4は、真空吸着力や静電気力によって基板10を引き付けて保持する基板チャック14と、基板チャック14を保持して型7を移動させるステージ駆動機構16とを含みうる。基板ステージ4は、XY面内で移動可能である。型7のパターン部7aを基板10上のインプリント材9に押し付ける際に基板ステージ4の位置を調整することで型7の位置と基板10の位置とを互いに整合させる。基板ステージ4に適用可能なアクチュエータは、例えば、リニアモータやエアシリンダを含む。また、基板ステージ4は、X軸方向やY軸方向だけではなく、Z軸方向に基板10を移動可能に構成されていても良い。
【0025】
なお、インプリント装置1における型7の押印及び離型は、型7をZ軸方向に移動させることで実現する。ただし、基板10をZ軸方向に移動させることで実現させても良い。また、型7と基板10の双方を相対的にZ軸方向に移動させることで、型7の押印及び離型を実現しても良い。また、基板ステージ4は、基板10のθ(Z軸周りの回転)方向の位置や基板10の傾きを調整するためのチルト機能を有するように構成されていても良い。
【0026】
また、基板ステージ4は、その側面に、X、Y、Z、ωx、ωy、ωzの各方向に対応した複数の参照ミラー17を備える。これに対して、インプリント装置1は、これらの参照ミラー17にそれぞれヘリウムネオンなどのビームを照射することで基板ステージ4の位置を測定する複数のレーザー干渉計18を備える。なお、
図1では、参照ミラー17とレーザー干渉計18との1つの組のみを図示している。レーザー干渉計18は、基板ステージ4の位置を実時間で計測し、後述する制御部6は、このときの計測値に基づいて基板10(基板ステージ4)の位置決め制御を実行する。また、基板ステージ4の位置を計測するためにエンコーダを用いてもよい。
【0027】
補助部材15は、基板チャック14に保持された基板10を取り囲むようにして、基板チャック14の周囲に配置されている。また、補助部材15の上面と基板チャック14に保持された基板10の上面とがほぼ同じ高さになるように、補助部材15が配置されている。基板チャック14はステージ駆動機構16上に搭載される。
【0028】
補助部材15は、参照ミラー17とレーザー干渉計18との光路に後述する少なくともインプリント材9に対して高可溶性又は高拡散性のいずれか一方の性質を有する気体が侵入しないようにさせる機能を有する。また、補助部材15があることにより、基板10の周辺に配置されるショット領域をインプイリントする際に、第1気体供給部から供給される気体の濃度を高く保つことができるという効果もある。ここで、補助部材15の上面の空間と基板10の上面の空間とで気体の濃度に1%以上の差が生じない限度で、補助部材15の上面の高さと基板チャック14に保持された基板10の上面の高さに差が生じていてもよい。例えば、補助部材15の上面と基板チャック14に保持された基板10の上面との高さの差は1mm以下であればよい。より好ましくは、補助部材15の上面と基板チャック14に保持された基板10の上面との高さの差は0.1mm以下であればよい。
【0029】
基板10は、ガラス、セラミックス、金属、インプリント材等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板10とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板10としては、具体的に、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英を材料に含むガラスウエハなどである。また、基板10は、インプリント処理によりマスターマスクからレプリカマスクを製造するためのガラス基板であっても良い。
【0030】
塗布部5は型保持部3の近傍に設置され、基板10上に存在する、少なくとも1つのショット領域(成形領域、インプリント領域)にインプリント材9を塗布する。塗布部5は、塗布方式としてインクジェット方式を採用し、未硬化状態のインプリント材9を収容する容器19と、吐出部20とを含みうる。容器19は、その内部をインプリント材9の硬化反応を起こさないような、例えば若干の酸素を含む雰囲気としつつ、インプリント材9を管理可能とするものが望ましい。また、容器19の材質は、インプリント材9にパーティクルや化学的な不純物を混入させないようなものとすることが望ましい。吐出部20は、例えば複数の吐出口を含むピエゾタイプの吐出機構(インクジェットヘッド)を有する。インプリント材9の塗布量(吐出量)は、0.1~10pL/滴の範囲で調整可能であり、通常、約1pL/滴で使用する場合が多い。なお、インプリント材9の全塗布量は、パターン部7aの密度、および所望の残膜厚により決定される。
【0031】
アライメント計測部21は、光8を型7に形成されたアライメントマーク及び基板10に形成されたアライメントマークに照射し、その反射光であるアライメント光を検出することで、型7と基板10との相対位置ずれ量等を計測(検出)する。この相対位置ずれ量等の計測は、型7とインプリント材9とが接触している状態で行う。ここで計測された相対位置ずれ量などは、型移動機構12やステージ駆動機構16を調整することで、位置ずれを低減する際に用いられる。また、不図示の形状補正部(型補正部)により型7のパターン部7aまたは基板10のショット領域の形状を変形させることで、位置ずれを低減させることもできる。
【0032】
制御部6は、CPUやメモリなどを含む、少なくとも1つのコンピュータで構成される。また、制御部6は、インプリント装置1の各構成要素に回線を介して接続され、メモリに格納されたプログラムに従って、インプリント装置1の各構成要素の動作及び調整などを統括的に制御する。また、制御部6は、インプリント装置1の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置1の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよい。
【0033】
ここで、インプリント装置1による一般的なインプリント方法(インプリント処理)について説明する。
【0034】
まず、制御部6は、基板搬送部により基板ステージ4に基板10を載置および固定させる。次に、制御部6は、ステージ駆動機構16を駆動させて基板10の位置を適宜変更させつつ、アライメント計測部21により基板10上のアライメントマークを順次計測させ、基板10の位置を高精度に検出する。そして、制御部6は、その検出結果から各転写座標を演算し、この演算結果に基づいて所定のショット毎に逐次パターンを成形させる(ステップ・アンド・リピート)。
【0035】
ここで、ある1つのショット領域に対するパターン成形の流れとして、制御部6は、まず、ステージ駆動機構16により、インプリント材9を吐出させる吐出部20の吐出口の下に基板10上の塗布位置(ショット領域上の特定の位置)を位置決めさせる。その後、制御部6は塗布部5を制御し、基板10上のショット領域にインプリント材9を塗布する(塗布工程)。次に、制御部6は、ステージ駆動機構16により、パターン部7a直下の押し付け位置にショット領域が位置するように基板10を移動させ、位置決めさせる。
【0036】
次に、制御部6は、パターン部7aとショット領域上の基板10側パターンとの位置合わせや倍率補正機構によるパターン部7aの倍率補正などを実施する。その後、型移動機構12を駆動させる。ショット領域上のインプリント材9にパターン部7aを押し付ける(接触させる)際に、パターン部7aを基板10に向かって凸形状に変形させてインプリント材9に押し付ける(押印工程)。この押し付けにより、インプリント材9は、パターン部7aの凹凸パターンに充填される。なお、制御部6は、押し付け完了の判断を型保持部3の内部に設置された不図示の荷重センサにより行う。この状態で、制御部6は。照射部2を制御して、型7の背面(上面)から光8を所定時間、インプリント材9に照射し、型7を透過した光8によりインプリント材9を硬化させる(硬化工程)。そして、インプリント材9が硬化した後、制御部6は、型移動機構12を再駆動させ、パターン部7aを基板10から引き離す(離型工程)。
【0037】
これにより、基板10上のあるショット領域の表面には、パターン部7aの凹凸パターンに倣った3次元形状のインプリント材9のパターン(層)が成形される。このような一連のインプリント動作を基板ステージ4の駆動によりショット領域を変更しつつ複数回実施することで、インプリント装置1は、1枚の基板10上に複数のインプリント材9のパターンを成形することができる。
【0038】
また、型7を基板10上のインプリント材9に押し付けて、パターン部7aにインプリント材9を充填させる際に、型7と基板10との間に存在する空気が、パターン部7aに入り込み、硬化後、成形されたパターンに不良の発生が生じ得る。そこで、型7と基板10との間の空間に、少なくともインプリント材9に対して高可溶性又は高拡散性のいずれか一方の性質を有する気体を供給させるとよい。
【0039】
図2は、一般的なインプリント処理の工程のうち、塗布工程、押印工程、離型工程を示す概略図である。
図2(A)は、一般的なインプリント処理における塗布工程を説明する示す概略図である。
図2(B)は、一般的なインプリント処理における押印工程と離型工程を示す概略図である。
図2(C)は、一般的なインプリント処理が終了した基板10の状態を示す
【0040】
図2(A)に例示しているように、一般的な塗布工程は、連続して基板10上の複数のショット領域にインプリント材9を塗布する。本実施例においては、最初にインプリント材9を塗布するショット領域を、ショット領域Aとする。2番目にインプリント材9を塗布するショット領域をショット領域Bとして、複数のショット領域にインプリント材9を塗布していき、最後にインプリント材9を塗布する、x番目のショット領域をショット領域Xとする。このように、ショット領域Aからショット領域Bと続き、最後のショット領域Xまで連続してインプリント材9を基板10上に塗布する。
【0041】
次に、
図2(B)に例示しているように、一般的な押印工程においては、連続的に複数のショット領域のインプリント材9に対して、型7を順次押し付ける。また一般的な離型工程は、型7を押し付け後に型7をインプリント材9から離型させる。離型を行うまでに、インプリント材9を硬化させる硬化工程を行う。
図2(C)は、一般的なインプリント処理が終了した基板10の状態を示す。このように、一般的なインプリント処理を順次行っていくと、最初にインプリント処理を行ったショット領域Aと、最後にインプリント処理を行ったショット領域Xとでは、インプリント材9を塗布してから、型7を押印して離型するまでの時間が大きく異なる。これはインプリント材9の塗布は比較的短時間でできるのに対して、インプリント処理には比較的時間がかかるためである。
【0042】
インプリント材9の種類によっては、時間の経過に応じて揮発していく特性を有しているものが多い。そのため、ショット領域Xを押印(インプリント)するまでに、基板10上の各ショット領域に塗布されたインプリント材9は塗布されてから押印するまでの経過時間に基づいて徐々に揮発していく。インプリント材9が揮発していくと、各ショット領域に塗布されたインプリント材9の体積は徐々に減少してしまう。ここで、インプリント材9の体積が減少した状態で、型7をインプリント材9に押印処理及び離型処理をする。その場合、パターン部7aに必要なインプリント材9の体積(または膜厚)が足りなくなり、パターン部7aにインプリント材9が充填しきらない(パターン未充填)状態が発生する場合がある。
【0043】
また、上記のようにインプリント材9の体積が減少してしまうとインプリント処理後のインプリント材9の残膜厚(Residual Layer Thickness;RLT)も減少してしまう。残膜厚が減少すると、この後の加工工程にも影響を与え、所望の加工ができない事態になる場合もある。
【0044】
このように、従来のインプリン処理では、インプリント材9を塗布してから型7を押印するまでの時間が各ショット領域で異なり、基板10内でパターン未充填が発生する、または残膜厚が減少する(残膜厚にムラが生じてしまう)場合があった。一方、最初からインプリント材9の塗布量を増やしすぎると、はみ出したインプリント材9によって他のインプリント処理に悪影響を与えてしまう問題があった。
【0045】
そこで、本実施例では、インプリント材9を塗布する塗布工程から押印工程までの時間に応じて、各ショット領域に塗布されたインプリント材9の揮発量を異ならせるように制御(調整)する揮発制御工程(揮発調整工程)を設けている。具体的には、意図的に基板10上の所定のショット領域のインプリント材9の揮発を促進させることによって、各ショット領域の押印する前までのインプリント材9の体積または膜厚を均一化(均等化)にさせる。均一化することで、インプリント処理をする際の各ショット領域のインプリント材9を所望の体積または膜厚にすることができる。
【0046】
以下、本実施例におけるインプリント装置1のインプリント処理に関して
図3から
図5を参照して詳しく説明する。
図3は、各ショット領域におけるインプリント材9の揮発量の一例を示す図である。
図4は、本実施例のインプリント処理の工程のうち、塗布工程、押印工程、揮発工程、離型工程を示す概略図である。
図4(A)は、本実施例のインプリント処理における塗布工程を示す概略図である。
図4(B)は、本実施例のインプリント処理における揮発工程を示す概略図である。
図4(C)は、本実施例のインプリント処理における押印工程を示す概略図である。
図4(D)は、本実施例のインプリント処理における離型工程を示す概略図である。
【0047】
図5は、
図4で示したインプリント処理に対応する各工程のフローチャートである。以下に、本実施例のインプリント処理について、
図5を参照して説明する。なお、
図5のフローチャートに示す各動作(処理)は、制御部6がコンピュータプログラムを実行することによって制御される。
【0048】
まず、ステップS101では、制御部6は、連続でインプリント処理をする複数のショット領域の数を決める。そしてその数に応じて、各ショット領域において、それぞれインプリント材9を塗布してから、型7を押印するまでの時間を算出する。
【0049】
次に、ステップS102では、制御部6は、ステップS101で算出した時間に基づき、各ショット領域において、インプリント材9を塗布してから型7を押印するまでに揮発して残留するインプリント材9の体積を算出する。即ち、ステップS101によって算出された、インプリント材9を塗布してから型7を押印するまでの、ショット領域毎の時間に基づいて、各ショット領域のインプリント材9の揮発後の残留体積を算出する。
【0050】
次に、ステップS103では、制御部6は、ステップS102で算出した複数のショット領域におけるインプリント材9の体積が最小となるショット領域を算出する。算出後は、連続でインプリント処理をする複数のショット領域のインプリント材9の体積を、最小となるショット領域の体積と同じとなるように、各ショット領域のインプリント材9の揮発量を算出する。即ち、インプリント材9を塗布してから型7と接触するまでの時間が最大となるショット領域の体積を基準とする。そして、当該ショット領域以外の各ショット領域のインプリント材9の体積がそれぞれのインプリント時にその最小体積とほぼ同じにするための揮発量を算出する。ここで、連続でインプリント処理をする各ショット領域とインプリント材9の揮発量の関係は例えば、
図3のようになる。
【0051】
次に、ステップS104では、
図4(A)に示すように、ステップS101で算出した複数のショット領域に連続してインプリント材9を塗布する。インプリント材9を塗布する際には、インプリント材9の体積が最小となるショット領域の残膜厚(押印後の膜厚)が、所望の残膜厚となるように、インプリント材9の吐出配置を変える。またはインプリント材9の吐出量をあらかじめ多めに塗布しておくことが望ましい。但し、前述のように、塗布量が多すぎると問題が生じるので、塗布量は適正範囲にとどめる。なお、所望の残膜厚としては例えば、30nmから50nm程度の範囲である。
【0052】
次に、ステップS105では、ステップS103で算出した複数のショット領域のインプリント材9の揮発量に基づいて、
図4(B)に例示するように、揮発機構(調整部)30を用いて複数のショット領域のインプリント材9の揮発を促進させる(揮発工程)。複数のショット領域のインプリント材9の揮発を促進させる処理に際し、ステップS104で複数のショット領域にインプリント材9を塗布した順番と逆の順番でインプリント材9を揮発させていくことが好ましい。これによりインプリント処理中の無駄な動作が削減され、スループットが向上する。
【0053】
このとき、
図3に示したような揮発量となるような圧力で気体を各ショット領域に対して供給または回収する。これによって
図4(B)の揮発量を制御する処理が終わった段階では、インプリント材9の体積の大小関係は、ショット領域A<ショット領域B< ~ <ショット領域Xのようになる。その結果、
図4(C)のように、各ショット領域に押印動作を行う際のインプリント材9の体積(膜厚)は略同じとなる。また、
図4(D)に示すように、押印処理後の各ショット領域の残膜厚は略均一となる。
【0054】
揮発機構30は、基板10に塗布されたインプリント材9近傍(周囲)の雰囲気に気体を供給または回収する機能を有する機構である。揮発機構30は、気体供給口31によってインプリント材9近傍の雰囲気に気体を供給する。また、インプリント材9近傍の雰囲気の気体を回収する場合、揮発機構30に設けた気体回収口31によって気体を回収する。さらに揮発機構30は不図示の駆動部(アクチュエータ)によりX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に駆動可能とする。
【0055】
本実施例においては、気体供給口31と気体回収口31は共通の穴構造(穴部)を用いて選択的に気体供給と気体回収を行うように構成される。しかし、気体供給口31と気体回収口31をそれぞれ異なる穴構造として揮発機構に設けるようにしてもよい。なお、本実施例の揮発機構30では、気体回収口31から供給する気体と、気体回収口31によって回収する気体との揮発機構30内の流路は同一の流路を使用している。しかし、これに限らず、気体を供給する際の流路と、気体の回収する際の流路とを別々の流路とするように、揮発機構30内に例えば、仕切り板やチューブ等を設け2つ以上の流路を形成するようにしてもよい。
【0056】
図6は、本実施例の揮発機構30の概略図である。揮発機構30は、
図6(A)のように、ライン上に気体を供給または回収する気体供給口31及び気体回収口31がライン状に配置されている構造でもよいし、
図6(B)に示すように、1つのショット領域全体をカバーできるような構造にしてもよい。なお、
図6(A)及び
図6(B)における揮発機構30の縦の長さは、1ショット領域の縦幅に相当する。しかし、これに限らず1つ以上の気体供給口31及び気体回収口31を略矩形状の構造とするようにしてもよい。また、気体供給口31及び気体回収口31として、穴構造としているが、より均一に気体を供給、回収するために、メッシュ構造や多孔質構造とするようにしてもよい。揮発機構30が、
図6(A)のような構造の場合は、ステップS105は、基板ステージ4を
図4(B)のようにスキャン駆動しながら、揮発機構30より気体を供給もしくは回収する。揮発機構30が、
図5(B)のような構造の場合では、ステップS105の基板ステージ4の駆動は、1ショット領域毎にステップ駆動しながら、揮発機構30より気体を供給もしくは回収する。
【0057】
揮発機構30が、インプリント材9の近傍の雰囲気に気体を供給または回収することで、インプリント材9の揮発成分の蒸気圧が下がり、インプリント材9の揮発を促進することができる。また、制御部6が、気体の供給量、気体の回収量、気体供給時間、または気体回収時間を連動して制御することで、インプリント材9の揮発を促進してインプリント材9の揮発量を効率的に調整する制御ができる。なお、インプリント材9の近傍とは、ショット領域に塗布されたインプリント材9の揮発をショット領域毎に促進できる(カバーできる)範囲であれば良い。
【0058】
また、気体を供給する際の気体の種類に関して、インプリント材9に悪影響を及ぼすような気体でなければ特に限定するものではないが、例えば、インプリント材9の揮発成分を含む気体を供給してもよい。インプリント材9の揮発成分の濃度を変化させることで、インプリント材9の揮発を促進してインプリント材9の揮発量を調整する制御ができる。
【0059】
図5に戻り、次に、ステップS106では、制御部6は、最初にインプリント材9を塗布したショット領域(ショット領域A)に対して
図4(C)のように型7をインプリント材9に接触させる(押印工程)。次に、ステップS107では、型7にインプリント材9を接触させた状態で照射部2によりインプリント材9に光を照射し、インプリント材9を硬化させる。次に、ステップS108では型7をインプリント材9から引き離す(離型工程)。これを次のショット領域であるショット領域Bにも行い、最後のショット領域Xまで行った後にインプリント処理を終了する。
【0060】
このように、本実施例では複数のショット領域に連続してインプリント材9を塗布する。塗布後、インプリント材9を塗布してから型7がインプリント材9に接触するまでの時間に応じて、インプリント材9の近傍の雰囲気に気体を供給または回収する。これにより、複数のショット領域のインプリント材9の揮発を促進してインプリント材9の揮発量を異ならせるように調整する制御ができ、押印をする前までのインプリント材9の体積または膜厚を均一化することができる。さらに、パターン部7aにインプリント材9が充填しきらない状態や、残膜厚にムラが生じることを低減することができる。
【0061】
以上、本実施例では複数のショット領域のインプリント材9の揮発量を調整することで複数のショット領域での押印する前までのインプリント材9の体積または膜厚を均一化することのできるインプリント装置(成形装置)を提供することができる。
【0062】
〔実施例2〕
実施例1では、インプリント材9の揮発を促進させるために、気体を供給または回収する方法を用いた揮発機構について説明したが、本実施例では、インプリント材9に光を照射する機能を有する揮発機構について説明する。なお、ここで言及しない事項及びインプリント装置1の構成は、実施例1と同様である。また、本実施例ではインプリント材9の揮発を促進させる方法が実施例1と異なる方法としているが、インプリント材9の揮発を促進させること自体は実施例1と同様であるため、
図5で示した処理について説明を省略する。
【0063】
本実施例の揮発機構30は、インプリント材9に光を照射する少なくとも1つ以上の光源32を有する。光源32には、インプリント材9を硬化させる波長を含まない波長帯域(波長領域)の光源を用いる。本実施例の揮発機構30は、インプリント材9に光を照射する照射部としても機能する。ここで、本実施例の揮発機構30が照射部2と同様にインプリント材9を硬化(化学反応)させる波長を含む光をインプリント材9に照射すると、インプリント材9の物性が変化してしまい、押印工程等で悪影響を与えてしまう。
【0064】
即ち、押印工程等において、例えば、インプリント材9の粘度が変化して、インプリント材9の押印時にインプリント材9が濡れ広がりにくくなり結果として気泡が巻き込まれやすくなることが考えられる。さらに、気泡が消失するまでの時間が長くなり、結果として生産性が悪化する。そして、インプリント材9が硬化してしまった場合は、型7をインプリント材9に押印することができず、パターン形成ができなくなる等の問題が生じる。従って、本実施例の揮発機構30にはインプリント材9を硬化させない波長帯域(波長領域)の光源を用いる必要がある。
【0065】
揮発機構30に用いる光源としては、例えば、LED、レーザダイオード(LD)、ハロゲンランプ、エキシマランプ、冷陰極管、HIDランプ等が挙げられる。その他の光源の構成をしても構わないが、本実施例では、小型・軽量のLED、LDが適している。本実施例の揮発機構30は、基板10上に塗布されたインプリント材9やその周辺に光を照射する。これにより、インプリント材9付近の温度を上昇させ、インプリント材9の揮発を促進させることができる。
【0066】
本実施例においては、この揮発機構30から複数のショット領域のインプリント材9またはその周辺に対し光を照射する。当該光の照射は、制御部6によって、照射する光の照度や照射時間を複数のショット領域毎に制御することで、複数のショット領域のインプリント材9の揮発を促進してインプリント材9の揮発量を調整することができる。
【0067】
図7は、実施例2のインプリント材9の揮発分布及び照度分布の一例を示した図である。揮発機構30の光源32の配置として、実施例1の
図6(A)と同様に、ライン状に配置されてもよいし、
図6(B)と同様に1つのショット領域全体をカバーできるような配置としてもよいがこれに限らない。更に、1つのショット領域内で、
図7(A)のようにインプリント材9の揮発量に分布がある場合は、複数の光源32それぞれの照度を変更する。またはショット領域内に照度分布を形成するための光学系を揮発機構30に設ける。そして、ショット領域内のインプリント材9に対し光を照射することで、
図7(B)のようにショット領域内に照度分布を形成し、ショット領域内でインプリント材9の揮発量に分布を生じさせる。これにより、1つのショット領域内でインプリント材9の揮発量に分布がある場合であっても、押印をする前までのインプリント材9の体積または膜厚を均一化することができる。
【0068】
このように、本実施例では複数領域に連続してインプリント材9を塗布する。塗布後、インプリント材9を塗布してから型7がインプリント材9に接触するまでの時間に応じて、インプリント材9またはその周辺に光を照射する。これにより、複数のショット領域のインプリント材9の揮発を促進してインプリント材9の揮発量を調整する制御ができ、押印する前のインプリント材9の体積または膜厚を均一化することができる。さらに、パターン部7aにインプリント材9が充填しきらない状態や、残膜厚にムラが生じることを低減することができる。
【0069】
以上、本実施例では実施例1と同様に複数のショット領域のインプリント材9の揮発量を調整する。これにより複数のショット領域での押印する前までのインプリント材9の体積または膜厚を均一化することのできるインプリント装置(成形装置)を提供することができる。
【0070】
〔実施例3〕
実施例2では、インプリント材9の揮発を促進するために、光源32から光を照射する方法を用いた揮発機構について説明したが、本実施例では、ヒーター等の温調機能を有する温調機構について説明する。なお、ここで言及しない事項及びインプリント装置1の構成は、実施例1及び2と同様である。また、本実施例ではインプリント材9の揮発を促進させる方法が実施例1または2と異なる方法としているが、インプリント材9の揮発を促進させること自体は実施例1及び2と同様であるため、
図5で示した処理について説明を省略する。なお、本実施例の温調機構33は揮発機構30としても機能する。
【0071】
図8は、実施例3の温調機構33の概略図である。温調機構33は、
図8に示すように基板ステージ4に設けるものとして、基板10とステージ駆動機構16の間に配置される。さらに、温調機構33は上述のように、ヒーター等の温調機能を有している。また、本実施例の温調機構33は、熱を加えてインプリント材9近傍の雰囲気を温める加熱部としても機能する。そして、制御部6が、温調機構33を制御することで、基板10の加熱温度や加熱時間を調整することができる。そして、インプリント材9近傍の雰囲気を加熱することでインプリント材9の揮発を促進してインプリント材9の揮発量を調整することができる。これにより、押印する前までのインプリント材9の体積または膜厚を均一化することができる。なお、インプリント材9の物性が変化する温度まで、加熱することは押印工程等で悪影響を与えてしまうため好ましくない。押印工程等での悪影響は実施例1と同様である。
【0072】
本実施例の温調機構33は、基板10とステージ駆動機構16の間に基板10全体をカバーする大きさで1つ配置される。そして、ショット領域及びその周囲のインプリント材9近傍の雰囲気を加熱するように制御部6が制御することで、インプリント材9の揮発量の調整ができる。これにより、基板10に塗布されたインプリント材9全体を同時に加熱することなく、複数のショット領域それぞれのインプリント材9の揮発量を調整することができる。また、本実施例の温調機構33は1つに限らず、温調機能を有している複数の温調機構33を基板10とステージ駆動機構16の間に配置し、前述のような制御を行うようにしてもよい。
【0073】
なお、実施例1及び2では、インプリント材9が塗布された複数のショット領域に対して、基板ステージ4をステップ駆動またはスキャン駆動することで、ショット領域毎にインプリント材9の揮発を促進する制御をしていた。本実施例でも、ショット領域毎にインプリント材9の揮発量を調整してもよいが、複数のショット領域毎に塗布されているインプリント材9の揮発量を一括で調整するようにしてもよい。揮発量を一括で調整する場合、制御部6が、ステップS103と同様に、複数のショット領域に塗布されているそれぞれのインプリント材9の揮発量を算出する。そして、算出したそれぞれのインプリント材9の揮発量に基づいて、複数のショット領域のそれぞれのインプリント材9の雰囲気に異なる温度で加熱するように制御することで、インプリント材9の揮発量を一括で調整することができる。これにより、インプリント処理の時間を短縮することができるため、スループットを向上させることができる。
【0074】
なお、温調機構33は、基板10とステージ駆動機構16の間に配置することに限らない。例えば、実施例1または2の揮発機構30と同様に、基板10に対して上側に配置し赤外線等の光を照射するようにしてもよい。さらに、温調機構33に駆動部を設け、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に駆動可能に構成するようにしてもよい。さらに、揮発機構30にヒーター等の温調機構33を設けるようにして、実施例1及び2と同様の方法でインプリント材9の揮発を促進する調整をしてもよい。
【0075】
さらに、温調機構33によってインプリント材9近傍の雰囲気を加熱することで、インプリント材9の揮発を促進させるように調整していたが、インプリント材9の雰囲気の温度を下げる冷却機能を温調機構33に備えるようにしてもよい。そして、冷却機能を備える温調機構33によって、基板10の冷却温度、冷却時間を調整することでインプリント材9近傍の雰囲気を冷却し、インプリント材9の揮発を抑制するようことができる。従って、インプリント材9近傍の雰囲気を加熱した時と同様に、インプリント材9の揮発量を調整することができ、押印する前の複数のショット領域のインプリント材9の体積または膜厚を均一化することができる。なお、インプリント材9の物性が変化する温度まで、冷却することは押印工程等で悪影響を与えてしまうため好ましくない。押印工程等での悪影響は実施例1と同様である。
【0076】
さらに、
図7(A)のように、1つのショット領域内でインプリント材9の揮発量に分布がある場合は、ショット領域内のインプリント材9近傍の雰囲気に加熱(または冷却)することで温度分布を形成する。これにより、ショット領域内でインプリント材9の揮発量に分布を生じさせる。これにより、ショット領域内でインプリント材9の揮発量に分布がある場合であっても、複数のショット領域における押印する前のインプリント材9の体積または膜厚を均一化することができる。
【0077】
このように、本実施例では複数領域に連続してインプリント材9を塗布する。塗布後、インプリント材9を塗布してから型7がインプリント材9に接触するまでの時間に応じて、インプリント材9近傍の雰囲気に加熱する。これにより、複数のショット領域のインプリント材9の揮発を促進してインプリント材9の揮発量を調整する制御をすることができ、押印する前のインプリント材9の体積または膜厚を均一化することができる。さらに、パターン部7aにインプリント材9が充填しきらない状態や、残膜厚にムラが生じることを低減することができる。
【0078】
以上、本実施例では実施例1及び2と同様に複数のショット領域のインプリント材9の揮発量を調整する。これにより複数のショット領域での押印する前までのインプリント材9の体積または膜厚を均一化することのできるインプリント装置(成形装置)を提供することができる。
【0079】
なお、加熱や冷却、気体の供給や回収、或いは光照射等を適宜組み合わせることによって、揮発を促進または抑制するように制御するようにしても良い。そして、インプリント材9が基板10上のショット領域に塗布されてからインプリント材9が型7と接触するまでの時間に基づいて、インプリント材9の揮発量を調整するようにしても良い。即ち、揮発を促進または抑制することによって、型7をインプリント材9に接触させる時のインプリント材9の体積または膜厚が複数のショット領域で均一化されるように、揮発量を調整することで安定したインプリント(押印)が可能となる。
【0080】
更には、インプリント材9が基板10上のショット領域に塗布されてからインプリント材9が型7と接触するまでの時間に基づいて、揮発量の制御だけでなく、インプリント材9の塗布量を制御するようにしても良い。両者の組み合わせにより、型7をインプリント材9に接触させる時のインプリント材9の体積または膜厚が複数のショット領域でより均一化することができる。
【0081】
〔実施例4〕
実施例4は、成形装置の例として、基板Wの上に平坦化層を形成する形成処理を行う平坦化装置について説明する。なお、ここで言及しない事項は、前述の各実施例と同様である。前述の各実施例では、型(モールド)7として、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有するモールド(平面テンプレート)であってもよい。平面テンプレートは、平面部によって基板W上の組成物を平坦化するように成形する平坦化処理(成形処理)を行う平坦化装置(成形装置)に用いられる。平坦化処理は、基板W上に供給された硬化性組成物に平面テンプレートの平坦部を接触させた状態で、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化性組成物を硬化させる工程を含む。
【0082】
平坦化装置では、平面テンプレートを用いて、基板Wの上に平坦化層を形成する。基板W上の下地パターンは、前の工程で形成されたパターン起因の凹凸プロファイルを有しており、特に近年のメモリ素子の多層構造化に伴いプロセス基板は100nm前後の段差を持つものも出てきている。基板W全体の緩やかなうねりに起因する段差は、フォト工程で使われているスキャン露光装置のフォーカス追従機能によって補正可能である。しかし、露光装置の露光スリット面積内に収まってしまうピッチの細かい凹凸は、そのまま露光装置のDOF(Depth Of Focus)を消費してしまう。基板の下地パターンを平滑化する従来手法としてSOC(Spin On Carbon)、CMP(Chemical Mechanical Polishing)のような平坦化層を形成する手法が用いられている。しかし従来技術では十分な平坦化性能が得られない問題があり、今後多層化による下地の凹凸差は更に増加する傾向にある。
【0083】
この問題を解決するために、本実施例の平坦化装置は、基板Wに予め塗布された未硬化の組成物に対して平面テンプレート(平面プレート)を押し当てて基板面内の局所平面化を行う。本実施例において、平坦化装置の構成は、
図1に示したインプリント装置1と概ね同様とすることができる。ただし平坦化装置では、凹凸パターンが形成されたパターン部を有する型の代わりに、基板Wと同じかそれより大きい面積の平面プレートを使用し、基板Wの上の組成物層の全面に接触させる。型保持部は、そのような平面プレートを保持するように構成される。
【0084】
図9は、実施例4に係る平坦化装置による処理を説明する図である。
図9(A)は、平坦化加工を行う前の下地パターン600が形成された基板Wを示す図である。孤立パターンエリア601は、パターン凸部分の面積が少なく、Denseエリア602はパターン凸部分の占める面積は凹部分の占める面積と1:1である。
図9(B)は、基板W上に組成物(インプリント材)603を供給し、平面プレート604を接触させる前の状態を示している。この組成物603の供給パターンは、孤立パターンエリア601およびDenseエリア602などの基板W全面での凹凸情報を考慮して計算されたものである。
図9(C)は、平面プレート604を基板W上の組成物603と接触させ、組成物603に光源605からの光を照射して組成物603を硬化させている状態を示している。
図9(D)は、硬化させた組成物603から平面プレート604を引き離した状態を示している。
【0085】
上述したように、実際の基板Wはパターンの段差のみでなく、基板W全面で凹凸をもっているため、その凹凸の影響により、平面プレート604が組成物603と接触するタイミングが異なる。本実施例では、最初に接触した位置では、接触直後から組成物603の移動が始まるが、その程度に応じて組成物603を多く配置している。また、最後に接触した位置では、組成物の移動の始まりが遅く、周辺から流入する組成物が加わるが、その程度に応じて組成物603の量を減らしている。このような対処により、基板W全面で均一な厚みの平坦化層を形成することができる。
【0086】
前述の各実施例に係る発明は、本実施例の平坦化装置についても同様に適用することが可能であり、前述の各実施例と同様の効果が得られる。
【0087】
〔物品製造方法に係る実施例〕
インプリント装置1を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0088】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0089】
次に、物品の具体的な製造方法について
図10を参照して説明する。
図10(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に成形されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0090】
図10(B)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが成形された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図10(C)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える(接触工程)。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する(硬化工程)。
【0091】
図10(D)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが成形される(パターン形成工程、成形工程)。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0092】
図10(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる(処理工程)。
図10(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが成形された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0093】
なお、型4zとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型を用いた例について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有する型(ブランクテンプレート)であってもよい。
【0094】
なお、以上の上記各実施例では、光硬化法によるインプリント方法およびインプリント装置1について述べた。光を照射して硬化させるステップを、熱を加えて硬化させる熱硬化法によるステップに変更しても良い。すなわち、熱硬化法においても、上記各実施例は適用され得る。なお、熱硬化法を用いたインプリント装置1及びインプリント方法においては、加熱により、インプリント材9が硬化しないようにする。
【0095】
なお、以上の上記各実施例における均一(均等)とは同一である必要はなく、設定した体積または膜厚に対して10%程度の違いがあるものも均等化の範囲に入るものとする。例えば、押印前のインプリント材9の膜厚(または残膜厚)を15nmに設定していた場合は、15nm±10%の範囲内であれば均一(均等)の範囲に入るものとする。
【0096】
また、以上の上記実施例における制御の一部または全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介してインプリント装置1等に供給するようにしてもよい。そしてそのインプリント装置1等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【0097】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【符号の説明】
【0098】
1 インプリント装置
7 型
7a パターン部
9 インプリント材
10 基板
20 吐出部
30 揮発機構
31 気体供給口、気体回収口
32 光源
33 温調機構