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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】医用画像診断装置およびマーカー
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/055 370
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020109120
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006717
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亨
(72)【発明者】
【氏名】七海 隆一
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0035108(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0360401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に配置されるマーカーと、
前記被検体および前記マーカーを撮影する少なくとも1つの撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像から前記マーカーの動きを検出する検出部と、
を有し、
前記マーカーは、前記検出部によって検出可能な平面状の構造体を複数有し、
前記複数の構造体には、前記撮影部からの距離に応じて互いに異なるパターンが設けられ、前記異なるパターンのそれぞれのパターンは、前記それぞれのパターンから取得される前記検出部が前記マーカーの動きを検出するための特徴点群が、パターンごとに異なる直線上で、且つ、平行でない位置から取得されるように設けられ、
前記複数の構造体は、互いに所定距離以上離れて配置されていることを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記複数の構造体は、互いに連結され、前記撮影部による前記被検体の撮像方向の異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記複数の特徴点群を抽出するための前記複数のパターンのうち少なくとも2つのパターンは、同じ種類のパターンであることを特徴とする請求項に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記パターンは、前記構造体の一面にのみ設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
被検体に配置されるマーカーと、
前記被検体および前記マーカーを撮影する少なくとも1つの撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像から前記マーカーの動きを検出する検出部と、
を有し、
前記マーカーは、前記検出部が前記マーカーの動きを検出するための複数の特徴点を有するパターンが設けられた複数の三角形の平面基板によって形成される多角錐の立体形状の構造体を有することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項6】
前記マーカーのサイズは、前記マーカーを包含する仮想の立方体の断面積が前記撮影部の撮影範囲内に収まるサイズであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記撮影部による前記被検体の撮像方向における前記複数の構造体の間の最大距離をdmaxとし、前記撮像方向に垂直な方向における前記マーカーの最大幅をwmaxとすると、以下の式(1)が成り立つことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
(1/2)wmax<dmax・・・(1)
【請求項8】
さらに、以下の式(2)が成り立つことを特徴とする請求項に記載の医用画像診断装置。
max<wmax・・・(2)
【請求項9】
前記最大距離は、7.5mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項またはに記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記撮影部は、光学カメラであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記医用画像診断装置は磁気共鳴イメージング装置であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記マーカーは、前記被検体の頭部に装着される装着具に付されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記マーカーは、前記装着具の開口を通して、前記撮影部によって撮影されることを特徴とする請求項12に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
被検体に配置されて前記被検体とともに医用画像診断装置の撮影部によって撮影され、前記医用画像診断装置によって撮影された医用画像におけるモーションアーティファクトを低減するための被検体の動き検出用のマーカーであって、
前記医用画像診断装置によって検出可能な平面状の構造体を複数有し、
前記複数の構造体には、前記撮影部からの距離に応じて互いに異なるパターンが設けられ、前記異なるパターンのそれぞれのパターンは、前記それぞれのパターンから取得される前記マーカーの動きを検出するための特徴点群が、パターンごとに異なる直線上で、且つ、平行でない位置から取得されるように設けられ、
前記複数の構造体は、互いに所定距離以上離れて配置されていることを特徴とするマーカー。
【請求項15】
被検体に配置されて前記被検体とともに医用画像診断装置の撮影部によって撮影され、前記医用画像診断装置によって撮影された医用画像におけるモーションアーティファクトを低減するための被検体の動き検出用のマーカーであって、
前記医用画像診断装置が前記マーカーの動きを検出するための複数の特徴点を有するパターンが設けられた複数の三角形の平面基板によって形成される多角錐の立体形状の構造
体を有することを特徴とするマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像診断装置および画像におけるモーションアーティファクト検出用のマーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体を撮影する医用画像診断装置として、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置の他、種々のモダリティが用いられている。例えば、MRI装置は、静磁場中に置かれた被検体に高周波(Radio Frequency:RF)磁場を印加して、
被検体から発生した磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号を基に、被検体内の画像を生成する。
【0003】
また、これらのモダリティでは、撮影時に被検体が動くと、画像にいわゆるモーションアーティファクトが発生することがあり、この場合は再撮影となるため被検体の負担が増大する。
【0004】
モーションアーティファクトの発生を抑える技術として、特許文献1には、カメラ画像を用いて、被検体に固定したモアレパターンを有するマーカーを追跡し、マーカーの動き情報をMRI装置にフィードバックしてスキャンを制御することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、カメラの撮影範囲に対して大きなマーカーを被検体に固定し、撮影時にカメラの視野内にマーカーに付された識別可能なパターンの一部が必ず入るようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8121361号明細書
【文献】米国特許第8848977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、カメラの撮影範囲を変更しない場合は、マーカーのサイズが小さくなると、マーカーの動き検出精度が低下する可能性がある。
【0008】
そこで、上記を鑑みて、本発明は、被検体の撮影時に使用するマーカーの動き検出精度の低下を抑えることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、被検体に配置されるマーカーと、
前記被検体および前記マーカーを撮影する少なくとも1つの撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像から前記マーカーの動きを検出する検出部と、
を有し、
前記マーカーは、前記検出部によって検出可能な平面状の構造体を複数有し、
前記複数の構造体には、前記撮影部からの距離に応じて互いに異なるパターンが設けられ、前記異なるパターンのそれぞれのパターンは、前記それぞれのパターンから取得される前記検出部が前記マーカーの動きを検出するための特徴点群が、パターンごとに異なる直線上で、且つ、平行でない位置から取得されるように設けられ、
前記複数の構造体は、互いに所定距離以上離れて配置されていることを特徴とする医用画像診断装置である。
また、本開示の一態様は、被検体に配置されるマーカーと、
前記被検体および前記マーカーを撮影する少なくとも1つの撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像から前記マーカーの動きを検出する検出部と、
を有し、
前記マーカーは、前記検出部が前記マーカーの動きを検出するための複数の特徴点を有するパターンが設けられた複数の三角形の平面基板によって形成される多角錐の立体形状の構造体を有することを特徴とする医用画像診断装置である。

【0010】
また、本開示の一態様は、被検体に配置されて前記被検体とともに医用画像診断装置の撮影部によって撮影され、前記医用画像診断装置によって撮影された医用画像におけるモーションアーティファクトを低減するための被検体の動き検出用のマーカーであって、
前記医用画像診断装置によって検出可能な平面状の構造体を複数有し、
前記複数の構造体には、前記撮影部からの距離に応じて互いに異なるパターンが設けられ、前記異なるパターンのそれぞれのパターンは、前記それぞれのパターンから取得される前記マーカーの動きを検出するための特徴点群が、パターンごとに異なる直線上で、且つ、平行でない位置から取得されるように設けられ、
前記複数の構造体は、互いに所定距離以上離れて配置されていることを特徴とするマーカーである。
また、本開示の一態様は、被検体に配置されて前記被検体とともに医用画像診断装置の撮影部によって撮影され、前記医用画像診断装置によって撮影された医用画像におけるモーションアーティファクトを低減するための被検体の動き検出用のマーカーであって、
前記医用画像診断装置が前記マーカーの動きを検出するための複数の特徴点を有するパターンが設けられた複数の三角形の平面基板によって形成される多角錐の立体形状の構造
体を有することを特徴とするマーカーである。
【発明の効果】
【0011】
本開示の技術によれば、被検体の撮影時に使用するマーカーの動きを精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成を示す図
図2】第1実施形態に係るマーカーおよびパターンの一例を示す図
図3】第1実施形態に係るパターンの一例を示す図
図4】第1実施形態に係るマーカーおよびパターンの一例を示す図
図5】従来例に係るマーカーの効果の一例を示す図
図6】第1実施形態に係るマーカーの効果の一例を示す図
図7】第1実施形態に係る処理手順の一例を示すフローチャート
図8】第1実施形態に係るマーカーの一適用例を示す図
図9】一変形例に係るマーカーおよびカメラの配置の一例を示す図
図10】一変形例に係る磁気共鳴イメージング装置の構成の一例を示す図
図11】一変形例に係る磁気共鳴イメージング装置の構成の別の例を示す図
図12】一変形例に係るマーカーの一適用例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において構成要素、部材、処理の一部は省略して表示する。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の医用画像診断装置の実施形態について詳細に説明する。なお、医用画像診断装置としては、被検体を撮影可能な任意のモダリティを採用することができる。具体的には、本実施形態に係る医用画像診断装置10は、MRI装置、X線コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)装置の単一モダリティに適用可能である。さらに、医用画像診断装置10は、PET(Positron Emission Tomography)装置の単一モダリティにも適用可能である。また、医用画像診断装置10は、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置の単一モダリティにも適用可能である。あるいは、本実施形態に係る医用画像診断装置としては、MR/PET装置、CT/PET装置、MR/SPECT装置、CT/SPECT装置等の複合モダリティに適用されてもよい。なお、以下の説明における具体例では、本実施形態に係る医用画像診断装置10は、磁気共鳴イメージング装置であるとする。ただし、以下の説明は、上記の各種モダリティに適用することができる。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像診断装置である磁気共鳴イメージング装置100の構成を示す図である。磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、RFコイルユニット6a、6b、6c、6d、送信部7、切換回路8、受信部9を有する。さらに、磁気共鳴イメージング装置100は、磁場制御部10、計算機システム11、光学式撮影部21、マーカー22、動き算出部23を有する。
【0016】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状の磁石であり、磁気共鳴イメージング装置100の装置内の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石1としては、例えば超電導磁石が使用される。
【0017】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状のコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の各軸に対応する3種のコイルが組み合わされて形成されている。傾斜磁場コイル2は、上記の3種のコイルが傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX軸、Y軸、Z軸の各軸に沿って傾斜する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、例えば静磁場方向と同方向とする。X軸、Y軸、Z軸の各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮影断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0018】
被検体200は、寝台4の天板41に載置された状態で傾斜磁場コイル2の内部の空間(撮像空間)内に移動される。なお、この撮像空間のことをボアと呼ぶ。寝台4は、寝台制御部5の制御の下に、天板41をその長手方向(図1における左右方向)および上下方向に移動させる。通常、この長手方向と静磁場磁石1の中心軸の延伸方向とが平行になるように寝台4が設置される。
【0019】
RFコイルユニット6aは、高周波信号の送信用のコイルユニットである。RFコイルユニット6aは、1つまたは複数のコイルを円筒形状のケース内に収容して形成される。RFコイルユニット6aは、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。RFコイルユニット6aは、送信部7から高周波信号(RF信号)の供給を受けて、高周波磁場(RF磁場)を発生する。RFコイルユニット6aは、被検体200の大部分を含む領域にRF磁場を
発生する。すなわち、RFコイルユニット6aは、いわゆるホールボディ(WB)コイルを備えたものであるといえる。
【0020】
RFコイルユニット6b、6dは、高周波信号の受信用のコイルユニットである。RFコイルユニット6b、6dは、天板41上に載置されたり、天板41に内蔵されたり、被検体200に装着されたりする。図に示すように、RFコイルユニット6d上に被検体200が載置されてもよい。被検体200の撮影時には、RFコイルユニット6b、6dは被検体200とともにボア内に移動される。RFコイルユニット6b、6dとしては、様々なタイプのコイルユニットが適宜選択できる。RFコイルユニット6b、6dは、被検体200で生じる磁気共鳴信号を検出する。特に被検体200の頭部に装着するタイプのRFコイルユニット6bを頭部RFコイル6bと呼ぶ。
【0021】
RFコイルユニット6cは、高周波信号の送受信用のコイルユニットである。なお、RFコイルユニット6cは、高周波信号の送信用のコイルユニットと高周波信号の受信用のコイルユニットとが別体に構成されていてもよい。RFコイルユニット6cは、天板41上に載置されたり、天板41に内蔵されたり、被検体200に装着されたりする。被検体200の撮影時には、RFコイルユニット6cは被検体200とともにボア内に移動される。RFコイルユニット6cとしては、様々なタイプのコイルユニットが適宜選択できる。RFコイルユニット6cは、送信部7からRF信号の供給を受けて、RF磁場を発生する。また、RFコイルユニット6cは、被検体200で生じる磁気共鳴信号を検出する。RFコイルユニット6cとしては、複数のコイルエレメントが配列されたアレイコイルを利用できる。RFコイルユニット6cは、RFコイルユニット6aに比べて小さく、被検体200の局所のみを含むようなRF磁場を発生する。すなわち、RFコイルユニット6cは、局所コイルを備えたものであるといえる。なお、頭部RFコイルとして、RF信号の送受信用の局所コイルを用いてもよい。
【0022】
送信部7は、ラーモア周波数に対応するRFパルスをRFコイルユニット6aまたはRFコイルユニット6cに選択的に供給する。なお、送信部7は、RFコイルユニット6aに供給するRFパルスとRFコイルユニット6cに供給するRFパルスとでは、形成するRF磁場の大きさの違いなどに適応して振幅および位相を異ならせる。
切換回路8は、RFコイルユニット6cを、RF磁場を発生するべき送信期間には送信部7に接続し、磁気共鳴信号を検出するべき受信期間には受信部9に接続する。なお、送信期間および受信期間は、計算機システム11が送信部7に指示する。
【0023】
受信部9は、RFコイルユニット6b、6cで検出される磁気共鳴信号に対し、増幅、位相検波、アナログディジタル変換などの処理を行って磁気共鳴データを得る。
計算機システム11は、インタフェース部11a、データ収集部11b、再構成部11c、記憶部11d、表示部11e、入力部11f、主制御部11gを有する。
【0024】
インタフェース部11aには、磁場制御部10、寝台制御部5、送信部7、切換回路8、受信部9が接続されている。インタフェース部11aは、これらの接続された各部と計算機システム11との間で送受信される信号の入出力を行う。
【0025】
データ収集部11bは、受信部9から出力される磁気共鳴データを収集する。データ収集部11bは、収集した磁気共鳴データを記憶部11dに格納する。
【0026】
再構成部11cは、記憶部11dに記憶された磁気共鳴データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を実行し、被検体200内の所望の核スピンのスペクトラムデータあるいはMR画像データを生成する。
【0027】
記憶部11dは、磁気共鳴データと、スペクトラムデータあるいは画像データとを、被検者毎に記憶する。
【0028】
表示部11eは、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種データを主制御部11gによる制御に従って表示する。表示部11eとしては、液晶ディスプレイなどの表示装置を利用できる。
【0029】
入力部11fは、オペレータからの種々の指示や情報の入力を受け付ける。入力部11fとしては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、キーボード等の入力デバイスを適宜利用できる。
【0030】
主制御部11gは、図示しないCPUやメモリ等を有しており、磁気共鳴装置100全体の動作を制御する。
【0031】
磁場制御部10は、主制御部11gの制御に従って、所要のパルスシーケンスに従って各傾斜磁場を変化させるとともに、所定の周波数のRFパルスを送信するように傾斜磁場電源3および送信部7を制御する。また、動き算出部23から送信される被検体200の動き情報に基づいて、それぞれの傾斜磁場および周波数を変化させる。なお、磁場制御部10の機能は、主制御部11gの機能の一部として統合されてもよい。また、ここでは傾斜磁場および周波数を変化させるが、いずれか一方のみを変化させてもよい。
【0032】
光学式撮影部21が被検体200と共にモーションアーティファクトを低減するための被検体の動き検出用のマーカー22を撮影し、動き算出部23が、光学式撮影部21によって撮影された画像から、マーカー22の動きを検出する。動き算出部23は、撮影部によって撮影された画像からマーカーの動きを検出する検出部に対応する。動き検出部23は、検出したマーカー22の動きを示す動き情報を磁場制御部10に送信する。磁場制御部10は、受信した動き情報に基づいて、傾斜磁場および周波数を制御し、被検体200の撮像面を略一定に維持する。これにより、被検体200が動いた場合でもモーションアーティファクトの発生が抑えられた画像データが得られる。すなわち、磁気共鳴イメージング装置100によれば、被検体200の動きを補正した画像データを得ることができる。なお、動き検出部23によるマーカー22の動きの検出を基に、装置内の磁場制御部10以外の任意の機能部の動作が制御されてよい。
【0033】
ここで、「動き」とは、3次元空間の剛体の動きであれば、一般的に6自由度の動きを示し、回転3軸、並進3軸で表現される動きを意味する。本明細書の説明でも、6自由度の動きを例にして示すが、被検体200の動きを表現できれば任意の数の自由度が採用されてよい。
【0034】
光学式撮影部21は一般的には光学カメラであるが、マーカー22の動きを撮影あるいは捕捉できれば任意の撮像装置が採用されてよい。光学式撮影部21が光学カメラである場合は、少なくとも1台以上の光学カメラ、好ましくは2台以上の光学カメラによって光学式撮影部21が形成される。光学式撮影部21の光学カメラの台数が増えるほど、被検体200について様々な軸の動きの計測精度が高まる。
【0035】
また、光学式撮影部21はMR対応であることが望ましい。ここで、「MR対応」とは、MR撮影時に画像データに影響を与えるノイズを低減する構成が用いられ、強い磁場環境でも正常に動作することを意味する。例えば、MR対応の光学式撮影部21として、非磁性体材料を用い、磁気シールドされたカメラが挙げられる。
【0036】
また、光学式撮影部21は、図1のように静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2に囲まれる
空間であるボア内に配置されることが望ましい。これにより、マーカー22により近接した場所でマーカー22の撮影を行うことができる。すなわち、光学式撮影部21において、マーカー22の撮影用にレンズ構成を複雑にする必要がない。なお、光学式撮影部21をボア内に配置できない場合は、ボア外に動き撮影部を配置してもよい。この場合は、光学式撮影部21がカメラであるとすると、焦点距離が長いレンズ等を用いてマーカー22をある程度の大きさで撮影する必要がある。また、光学式撮影部21であるカメラで、直接マーカーを撮像してもよいし、反射部材として鏡等を用いてマーカーを撮影してもよい。すなわち、マーカー22を所定の大きさ(撮像サイズ)で撮像できれば、磁気共鳴イメージング装置100において光学式撮影部21を任意の位置に配置することができる。
【0037】
光学式撮影部21の撮影範囲は、後述するマーカー22全体を撮影できる範囲である。例えば、マーカー22を完全に包含する仮想の最小の立方体を想定した場合、光学式撮影部21の撮影範囲は、この仮想の立方体の最大の断面積よりも大きい必要がある。言い換えれば、マーカー22のサイズは、光学式撮影部21の撮影範囲内に収まるサイズである必要がある。例えば、光学式撮影部21の撮像範囲が60×40mmである場合、マーカー22全体を取り囲む最小の立方体の最大の断面積は60×40mm以下となる。なお、光学式撮影部21がカメラである場合の光学式撮影部21の撮影範囲は、イメージセンサーの大きさと、レンズの焦点距離およびカメラの光学中心から被写体(ここではマーカー22)までの距離とで決まる。なお、撮影時にマーカー22が動く範囲も含めて光学式撮影部21の撮影範囲が決定されてもよい。
【0038】
なお、光学式撮影部21がカメラである場合は、マーカー22に光を照射する照明部(図示せず)を用いてもよい。照明部を用いることで、光学式撮影部21は、マーカー22あるいはマーカー22上に形成された特徴点またはパターンをコントラスト高く撮像できる。なお、照明部もMR対応であることが望ましく、MR対応のLED照明またはファイバ照明などを用いることができる。照明部が照射する光は、白色光、単色光、近赤外光、赤外光など、マーカー22あるいはマーカー22上に形成されたパターンをコントラスト高く撮像できれば、任意の波長および波長帯の光を用いてよい。
【0039】
動き算出部23は、光学式撮影部21で撮影された画像を解析し、マーカー22の動きあるいは被検体200の動きを算出する。例えば、動き算出部23は、ハードウェア資源として、CPU、GPU、MPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。なお、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)が動き算出部23に用いられてよい。また、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable
Logic Device:FPGA)が動き算出部23に用いられてよい。また、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)により動き算出部23が実現されてもよい。また、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic
Device:SPLD)により動き算出部23が実現されてもよい。なお、マーカー22を用いて被検体200の動きを算出する、光学式撮影部21、動き算出部23をまとめて、動き計測システム300と呼ぶ。なお、一般的には、MR撮影への影響を避けるため、動き算出部23は、ボア外、特に検査室外に配置されるが、MR撮影に影響を与えないのならば、ボア内に配置してもよい。
【0040】
次に、図2図4を参照しながら、マーカー22について説明する。本実施形態において、マーカー22は、被検体(被写体)200に装着されるものであり、被検体200の動きに応じて空間的な位置が変化する。図2に、マーカー22の形状の一例を示す。図に示すように、マーカー22は動き算出部23によって検出可能な平面状の構造体201a、201bを複数有している。構造体201a、201bは、典型的には平面基板である
が任意の形状を採用できる。構造体201a、201bには、マーカー22の動きを算出するために必要な特徴点をカメラ画像から算出するためのパターン202a。202bがそれぞれ付されている。ここでは、構造体201a、201bは透明でない平板基板であり、その一面にのみパターン202a、202bが付されている。また、マーカー22は、構造体201aと構造体201bを互いに連結して、光学式撮影部21による被検体200の撮像方向の異なる位置にそれぞれの構造体を位置決めする位置決め部203を有する。位置決め部203によって、光学式撮影部21による被検体200の撮影における構造体201aと構造体201bの相対的な位置関係が一定に保たれる。
【0041】
次に、図3を参照しながら、パターン202a、202bの特徴点について説明する。例えば、パターン202a、202bとしてチェッカーボードパターンを用いる場合、それぞれの白黒の模様の角(図中、丸印で示す部分)が特徴点29となる。光学式撮影部21によって撮影されたパターン202a、202bの画像を画像解析することで、画像から特徴点29を検出することができる。また、撮影された画像におけるパターン202a、202bの特徴点29の経時変化を解析することで、マーカー22、ひいては、マーカー22が装着された被検体200の動きを算出することができる。
【0042】
図2に示すように、光学式撮影部21側のパターン202aの特徴点と、被検体200側のパターン202bの特徴点とは、互いにねじれの位置にある2つの直線上に配置されている。したがって、光学式撮影部21により生成される画像データは、角度の異なる2直線(あるいは、台形歪みにより若干曲がった2直線)上にある特徴点を含む。これら2直線は、互いに近接する特徴点の座標を結ぶベクトルの方向を基に判別することが可能である。
【0043】
一般に、パターンが立体的に配置されたマーカーのカメラによる撮影では、カメラ側のパターンの特徴点の移動速度が被検体側のパターンの特徴点の移動速度よりも速くなる。このため、これらの特徴点は、互いに重なった状態(オクルージョン)で検出されやすい。オクルージョンの発生を避けるには、カメラの台数を増やす、あるいは、重なった特徴点を識別するための負荷の高い計算を行う必要がある。本実施形態では、図2のマーカー22を用いることにより、計算速度を落とさずに上記2直線を判別可能であり、オクルージョンが発生する可能性を抑えることができる。
【0044】
なお、図2に示すマーカー22の構造体上に描かれるパターン202a、202bは、同じ種類のパターンであるが、光学式撮影部21による撮像画像から特徴点を算出できれば任意のパターンが採用されてよい。図2の例では、チェッカーボードパターンの例が示されているが、円形パターン、矩形パターン等の種々のパターンを用いることができる。なお、チェッカーボードパターンや矩形パターンを用いる場合は、上記の特徴点29と同様に、パターンの白または黒の各矩形の角部分を特徴点とする。また、円形パターンを用いる場合は、円の重心部分を特徴点とする。ただし、パターンの画像から精度よく特徴点が算出できれば、特徴点を決定する任意の方法が採用されてよい。
【0045】
なお、図4に示すように、各構造体上に形成されるパターンあるいは特徴点の個数はそれぞれ異なっていてもよい。図4に示すマーカー22は、図2に示すマーカー22と異なり、構造体201aが2つに分割されており、それぞれの構造体201aにパターン202aが付されている。分割された2つの構造体201aは長さが同じ位置決め部203によって構造体201bとそれぞれ連結されている。なお、位置決め部203の長さは互いに異ならせてもよい。また、図4に示すように、1つの構造体201aに付されるパターン202aを2列の点線模様にし、別の構造体201aに付されるパターン202aを3列の点線模様としてもよい。これにより、パターン202aの構成がそれぞれ異なることで、撮像画像においてマーカー22の配置向きなどが特定しやすくなる。
【0046】
図4に示すように、パターン202aとパターン202bとは、光学式撮影部21から被検体までの距離に応じて異なるパターンとする。また、パターン202a、202bは複数の特徴点からなる特徴点群を有し、パターン202a、202bが有する特徴点群は互いに異なっている。また、光学式撮影部21側のパターン202aの特徴点と、被検体200側のパターン202bの特徴点とは、互いにねじれの位置にある。すなわち、パターン202aが有する特徴点群に含まれる特徴点と、パターン202bが有する特徴点群に含まれる特徴点とは、互いに平行ではない直線上にそれぞれ配置されている。これにより、光学式撮影部21は、パターン202a、202bからそれぞれ異なる特徴点を抽出して、画像において構造体ごとに形成されたパターンを識別可能となるため、特徴点の算出精度が高まる。また、パターン202aとパターン202bの種類を同じにして(例えばチェッカーボード)、パターン202aとパターン202bの各パターンの対称性を異ならせてもよい。このようにパターンを形成しても、光学式撮影部21から被検体までの距離に応じて異なるパターン202a、202bが識別可能となる。
【0047】
また、図2図4に示す例では、本実施形態のマーカー22は、構造体201aと構造体201bとの間が光学式撮影部21の撮像方向(カメラ撮像方向)に対して、所定距離以上離れて配置されていることを特徴とする。なお、構造体201a、201bが互いに平行でない場合の構造体201a、201bの距離は、構造体201a、201bの互いに対向する面の最大距離、最小距離、各面の任意の代表点間の(平均)距離など任意の計測方法で特定される距離が採用されてよい。また、ここでは、構造体201aと構造体201bが、光学式撮影部21による被験体の撮像方向の異なる位置に配置されていることを想定する。ただし、以下の説明は、構造体201aと構造体201bが光学式撮影部21から見て同一平面内で所定距離以上離れて配置されている場合にも適用できる。
【0048】
ここで、光学式撮影部21の撮像方向の一例としてのカメラ撮像方向を定義する。カメラ撮像方向は、カメラが撮影している向きにおいて、カメラの光軸CXとパターンが描かれている構造体201a、201bの平面の法線Nとのなす角度Φが、カメラの画角に対して、以下の式(1)を満たすΦの範囲に入るいずれかの方向と定義する。カメラの画角は、イメージセンサーと焦点距離で決まる角度であり、ここでは2θとする。
Φ<θ・・・(1)
【0049】
図4の場合は、構造体201a、201bが平面基板であり、互いに略平行であるため、構造体201a、201bの平面基板の法線をNとする。なお、法線Nの延伸方向はカメラの光軸CXの延伸方向とは異なるが、Φがθよりも小さいため、平面基板の法線Nの方向は光学式撮影部21の撮像方向(カメラ撮像方向)となる。
【0050】
ここで、構造体201aと構造体201bとの間の最大距離あるいは光学式撮影部21の撮像方向における構造体201aと構造体201bとの間の最大距離をdmaxとする。また、光学式撮影部21の撮像方向と垂直な方向において、任意の構造体201a、201bの長さのうち最大の長さ(最大幅)をwmaxとする。このとき、以下の式(2)が成り立つことが望ましい。
(1/2)wmax<dmax・・・(2)
これにより、後述するが法線に垂直方向の軸の周りの回転の計測精度が向上する。さらには、以下の式(3)も成り立つことが望ましい
max<wmax・・・(3)
式(3)は、計測精度には関係しないが、マーカー22全体のサイズ、したがってマーカー22を包含する最小の立方体のサイズを制限する基準となる。
【0051】
以上より、マーカー22の具体的なサイズの例としては、被検体200を人間として人
間への装着を考えると、カメラ撮像方向に垂直な方向の1辺の最大サイズ(wmax)は、好ましくは30mm以下であり、より好ましくは15mm以下である。また、頭部の動きを計測する場合は、マーカー22が頭部RFコイルと干渉しないようにするために、マーカー22のカメラ撮像方向のサイズを7.5mm以上30mm以下とすることが好ましい。
【0052】
次に、図5を参照しながら、上記のマーカー22を用いた場合に得られる効果について従来例を交えて説明する。図5A図5Dは、従来のマーカーを用いる例であり、構造体1201である平面基板上に特徴点を算出するためのパターン1202が付されたものである。構造体1201は上記の構造体201aまたは構造体201bに、パターン1202は上記のパターン202aまたは202bにそれぞれ対応する。カメラ撮像方向(カメラ光軸の延伸方向)に垂直な軸を中心として構造体1201が回転した場合(図5A、5C)と、カメラ撮像方向に垂直な軸の延伸方向に構造体1201が並進移動した場合(図5B、5D)とで、カメラ画像上のパターンの変化を比較する。なお、図5A図5Dでは、カメラ画像上におけるマーカー1202の移動を矩形内に模式的に示す。
【0053】
図5A図5Bに示す例の場合、平面基板に描かれたパターン1202のカメラ画像上での変化は、構造体1201の回転と並進とではほとんど区別がつかない。すなわち、従来のマーカーを使用する方法では、カメラ画像を用いて上記のような構造体1201の回転と並進を区別することが難しいため、計測精度の向上が期待できない。
【0054】
また、図5C図5Dの例では、平面基板のサイズが図5A図5Bの例よりも大きく、パターン1202の描かれている領域も大きい。図5Cの例では、図5Aと同様の回転において構造体1201のパターンのカメラ画像における変化が、図5Aの例よりも大きくなる。したがって、マーカーをカメラ撮像方向に垂直な軸方向に大きくすることで、図5C図5Dの例における構造体1201の回転と並進は、図5A図5Bの例よりも区別しやすくなる。すなわち、図5C図5Dの例の方が図5A図5Bの例に比べて、動き計測精度が向上するといえる。しかしながら、マーカーがカメラ撮像方向に垂直な軸方向に大きくなると、構造体1201のサイズも大きくなり被検体の負担が大きくなることが想定される。
【0055】
次に、図6A図6Bを参照しながら、本実施形態におけるマーカー22を使用する例について説明する。カメラ撮像方向に垂直な軸方向におけるマーカー22のサイズは、図5のマーカーと同じとする。ただし、マーカー22では、カメラ撮像方向に複数の構造体201a、201bが互いに離間して配置されている。このような構造体201a、201bを有するマーカー22を、図5A図5Cの例と同様に回転する。このとき、カメラ画像において、回転中心からより離れた構造体201aに上のパターン202aと回転中心により近い構造体201b上のパターン202bとの変位の差が従来例よりも大きく現れる。一方、マーカー22が並進する場合では、回転軸から各構造体201a、201bまでの距離に関係なく、カメラ画像におけるパターン202aとパターン202bの変位は同じとなる。
【0056】
したがって、マーカー22を用いることで、カメラ画像において、構造体の回転と並進におけるパターンの変位の差に大きな違いが現れるため、画像解析によってマーカー22の動きより正確に区別できるといえる。すなわち、カメラ撮像方向に対して略垂直な方向に対してマーカーのサイズを大きくしなくても、マーカーの動きの計測精度を高めることができる。
【0057】
次に、以上のように構成された磁気共鳴イメージング装置100の動作について説明する。図7は、磁気共鳴イメージング装置100において、被検体200を撮像する際に主
に動き計測システム300に関連して実行される処理を示すフローチャートである。
【0058】
ステップS1において、作業者がマーカー22を被検体200に装着する。例えば、頭部を撮影する場合は、頭部の動きのみを測定するため、皮膚の動きと共にマーカーが動かないようにマーカー22を被検体200に固定することが望ましい。一例として、図8Aの例では、眼鏡やゴーグルなど、被検体200の頭部に装着される装着具であるマーカー固定具51にマーカー22が付されている。マーカー固定具51は、皮膚の動きの影響を受けにくい。そして、マーカー22はマーカー固定具51と共に被検体200に取り付けられる。
【0059】
なお、計測したい動きにマーカー22が追従する限り、被検体200に対するマーカー22の装着は任意の方法が採用されてよい。装着方法として、マーカー固定具51を用いる方法の他に、例えば、皮膚の動きの影響を受けにくい額や鼻などの部位にマーカーを直接張り付ける方法が用いられてよい。
【0060】
また、図8Bに示す例のように、頭部計測の場合は、頭部検査用のRFコイル6bを用いて被検体200を撮影する場合も想定される。そのため、マーカー22は頭部RFコイル6bの開口52を通して、光学式撮影部21によって撮影される。したがって、開口52のサイズが小さい場合は、開口52を通してマーカー22のパターン202a、202b全体が撮影できることが求められる。このことから、マーカー22のサイズとしては、開口52のサイズにもよるが、カメラ撮像方向に略垂直な方向におけるマーカー22の1辺の長さが30mm以下であることが望ましい。
【0061】
被検体200への負担の観点から、マーカー22の1辺の長さは、好ましくは15mm以下である。また、マーカー22が頭部RFコイルと干渉しないためには、マーカー22のカメラ撮像方向における長さは、7.5mm以上30mm以下であることが好ましい。このことから、光学式撮影部21の撮影範囲は、30mm×30mm以上である。
【0062】
一方、頭部RFコイル等を用いない場合、すなわちマーカー22のサイズに制限がない場合は、被検体200への負担ができるだけ小さくなるサイズとすることができる。このような場合は、光学式撮影部21の撮影範囲もマーカー22のサイズに応じて変更される。
【0063】
ステップS2において、動き計測システム300の光学式撮影部21が、被検体200に装着されたマーカー22を動画(各時刻における撮像画像の集合)撮影する。各時刻における撮像画像は、動き算出部23に転送される。なお、画像の転送に使用されるケーブルは、ノイズの混入を防ぐために、光ケーブルなどであることが好ましい。上記の通り、頭部の場合は、頭部RFコイル6bの開口52を通して撮影される。撮影のフレームレートは撮影シーケンスにもよるが、通常は20フレーム/秒以上であり、好ましくは50フレーム/秒以上である。画像のピクセルサイズは640×480ピクセル、あるいは1024×960ピクセルであるが、転送速度に影響を与えない限り任意のピクセルサイズが採用されてよい。
【0064】
ステップS3において、動き算出部23が、撮影により得られた動画の各フレーム画像から、マーカー22の動きを算出する。なお、カメラの内部パラメータを示す内部行列A(3×3行列)は、キャリブレーションにより事前に取得済みとする。
【0065】
ここで、画像におけるマーカー22の動きの算出方法について具体的に説明する。各時刻のカメラ画像におけるマーカー22のパターン202a、202bから特徴点の画素位置(u,v)を算出する。なお、iは、画素位置が複数ある場合に付される添え字で
あり、場合によっては省略されてよい。パターン202a、202bがチェッカーボードパターンである場合は、各白黒の矩形の角部分を特徴点とする。また、マーカー22のパターン202a、202bの各特徴点の相対位置関係は既知であり、マーカー22の座標系における各特徴点の3次元座標は(mxi,myi,mzi)となる。なお、光学式撮影部21のカメラ座標系における画素位置(u,v)とマーカー座標系において対応する特徴点の座標(mxi,myi,mzi)は、以下の式(1)で表現することができる。
【数1】
ここで、Aはカメラの内部行列(3×3行列)であり、Pは射影行列(3×4行列)であり回転行列と並進行列とからなる。なお、Pは以下の式で表現される。
【数2】
ここで、Rとtは、それぞれ以下の式(3)、(4)で表現される。
【数3】
【数4】
ここでα、β、γは回転3自由度を表現するx、y、z軸周りの回転角度、t、t、tは並進3自由度を表現するx、y、z方向の移動量である。これらの変数により、画像におけるマーカー22の動きを表現することができる。
【0066】
射影行列Pは、対応する特徴点に関して、マーカー座標系からカメラ座標系への変換行列を示している。Pの変数は12個(自由度は6)である。したがって、少なくとも3つの特徴点のマーカー座標系における3次元座標が既知で、それに対応するカメラ画素が分かれば、Pを上記の式(2)によって算出できる。
【0067】
例えば、ある時刻tで取得したカメラ画像から得られる射影行列をPt0とし、次のフレームの時刻tで取得したカメラ画像から得られる射影行列をPt1とする。このとき、時刻tからt間でのマーカー22の動き(Pcamerat0→t1)は、以
下の式(5)で表される。
camera、t0→t1=Pt1-1 t0・・・(5)
【0068】
これにより、マーカー22の6自由度(α、β、γ、t、t、t)での動きを算
出することができる。なお、ここで説明した算出方法は一例にすぎず、各時刻におけるマーカー22の6自由度の動きが算出できれば、他の算出方法が採用されてもよい。また、ここでは1台のカメラによる撮影から得られる画像からマーカー22の動きを算出する場合を想定しているが、2台以上のカメラによる撮影から得られる画像から上記の式を用いてマーカー22の動きを算出してもよい。さらに、マーカー22の特徴点間の相対位置が不明である場合は、ステレオカメラを用いて、各特徴点の3次元座標を得てもよい。この場合は、各特徴点の3次元座標(mxi、myi、mzi)は、ステレオカメラを用いて算出される3次元座標に対応する。
【0069】
ステップS4において、動き算出部23が、各時刻で算出されるカメラ座標系でのマーカー22の6自由度の動き(Pcamera,t0→t1)をMRI装置座標系に変換す
る。なお、MRI装置座標系とは、MRI装置固有の座標系である。カメラの設置位置とMRI装置の位置との関係に変更がなければ、カメラ座標系からMRI装置座標系への変換行列Pcamera→MRIは事前に得られる。例えば、MRI装置とカメラによって、同じ特徴点あるいは位置関係が分かっている特徴点を複数個有するファントムを撮影することで、ステップS3で説明した同様の計算により、マーカー22の動きを算出できる。なお、カメラ座標系からMRI装置座標系への変換行列Pcamera→MRIが算出できれば、他の算出方法が採用されてもよい。あらかじめPcamera→MRIが算出されている場合は、MRI装置座標系でのマーカー(被検体)の動き(PMRIt0→t1)は、以下の式(6)により算出できる。
MRIt0→t1=Pcamerat0→t1camera→MRI・・・(6)
【0070】
ステップS5において、動き算出部23が、各時刻で算出されるMRI装置座標系でのマーカー22(被検体)の動き(PMRIt0→t1)を磁場制御部10に送信する。
なお、カメラで撮影された画像から算出される動き情報を磁場制御部に伝送する時間をレイテンシと定義すると、レイテンシは50ミリ秒以下であり、好ましくは20ミリ秒以下である。これにより、マーカー22の動きの算出精度をより高めることができる。
【0071】
ステップS6において、磁場制御部10は、被検体の動きを補正するために、傾斜磁場および周波数を動きに応じて修正する。次に、ステップS7において、光学式撮影部21は、被検体の撮影が完了したか否かを判定する。撮影が完了していない場合は(S7:NO)、処理はステップS2に戻る。また、撮影が完了している場合は(S7:YES)、処理はステップS8に進む。
【0072】
ステップS8において、MRI装置は、画像再構成によって画像データを生成する。データ収集部11bは、各時刻において受信部9から出力される動き補正された磁気共鳴データを収集する。データ収集部11bは、収集した磁気共鳴データを、記憶部11dに格納する。そして、再構成部11cは、記憶部11dに記憶された磁気共鳴データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成を実行し、被検体200内の所望の核スピンのスペクトラムデータあるいはMR画像データを生成する。これにより、撮影時に被検体200が動いても、撮像面を一定に維持することができるため、モーションアーティファクトを低減した画像データを生成することができる。
【0073】
以上のように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置によれば、被検体にマーカーを装着して撮影を行う際に、マーカーの動きを精度よく検出して画像生成を行うことができる。これにより、撮像画像において、被検体の動きに起因するモーションアーティファクトなどの不要な現象の発生を抑え、ひいては、再撮影など被検体の撮影に伴う負担を軽減することができる。また、モダリティとしてMRI装置を用いる場合、他のモダリティに比べて1枚の画像を得るために必要な情報を収集するのに時間がかかる。したがって、MRI装置をモダリティとして採用した場合の上記のマーカーを用いることによって得られ
る効果が特に高いことが期待できる。
【0074】
(その他の実施形態)
上述した実施形態は本発明の具体例を示すものにすぎない。本発明の範囲は上述した実施形態の構成に限られることはなく、その要旨を変更しない範囲のさまざまな実施形態を採ることができる。以下に上記の実施形態のいくつかの変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例において、上記の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0075】
(第1の変形例)
第1の変形例について説明する。上記の実施形態と第1の変形例との違いは、マーカーの形状と光学式撮影部が有するカメラの台数である。図9Aは、第1の変形例におけるマーカー1022の形状を示す。マーカー1022は、多角錐の立体形状を有し、複数の構造体である三角形の平板基板1201からなる。また、平板基板1201のそれぞれの表面には特徴点を有するパターン1202が付されている。なお、マーカー1022は、平板基板1201の法線とカメラの光軸とのなす角度Φがカメラの画角θよりも小さくなるように構成されている。また、図9Aに示すように、本変形例において、マーカー1022の幅wmaxは15mmであり、マーカー1022の高さdmaxは15mmである。
【0076】
また、図9Bに示すように、光学式撮影部21によって撮影される被検体200に、2つのマーカー1022がマーカー固定具51によって装着されている。このため、2つのマーカー1022は、相対位置関係が一定となるようにマーカー固定具51によって固定されている。また、マーカー1022は、マーカー固定具51によって被検体200の鼻に装着される。マーカー1022を鼻に装着することで、被検体200の皮膚の動きに起因するマーカー1022の動きの検出精度への影響を最小限に抑えることができる。なお、マーカー1022は、被検体200の額に貼り付けられたりしてもよい。
【0077】
さらに、本変形例では、光学式撮影部21は少なくとも2台のカメラを有する。また、各カメラの撮像範囲は、それぞれのカメラがそれぞれ異なるマーカーを撮像するように設定される。なお、図9Bには光学式撮影部としてのカメラ21を2台使用する場合を示すが、マーカー1022の動きの計測精度を向上させるため、1つのマーカー1022を2台以上のカメラ21を用いて撮像してもよい。このようにカメラ21を構成することで、マーカー1022自体は小さくても、マーカー1022どうしの相対位置関係が一定、かつ、既知であれば、複数のマーカー1022を一体型のマーカーとみなせる。これにより、磁気共鳴イメージング装置100において、マーカーの動きの計測精度をさらに向上させることができる。
【0078】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例について説明する。上記の実施形態と第2の変形例との違いは、光学式撮影部の構成である。本変形例では、被検体200の頭部の動きを計測することを想定する。図10に示すように、被検体200を撮影するカメラ21が天板41に固定されている。カメラ21は、鏡などの反射板71を用いて、被検体200に固定されたマーカー22を頭部RFコイル6bの開口を通じて撮影する。反射板71により、被検体200に対するカメラ撮像方向(カメラ21の光軸方向)が変更される。反射板71は、非磁性材料により形成され、被検体200を光学的に反射可能であれば任意の素材により形成することができる。例えば、反射板71として、アクリルにアルミ蒸着処理を施した鏡や誘電体膜を付着させたハーフミラー等が挙げられる。反射板71は、反射板71の角度を手動で調整できるように、支持アーム73に回転可能に設けられている。
【0079】
このような構成により、被検体200の視野内に、カメラ21を配置しなくてよいため
、被検体200の視野を広く確保でき、撮影時に装置100内の各部が被検体200に与える圧迫感を抑える効果が期待できる。また、カメラ21と反射板71とは、支持部72や支持アーム73によって一体化されており、支持部72は、寝台の天板41上で移動させることができる。すなわち、本変形例では、カメラ21、反射板71、支持部72、支持アーム73が移動式の光学式撮影部2021となる。
【0080】
移動式の光学式撮影部2021は、ボアの中心軸に沿って移動可能である。例えば、支持部72は、天板41に設けられたレール(図示せず)に沿って移動する構造体(移動台車)である。支持部72には、レール上の走行性を高めるための車輪(図示せず)が取り付けられている。なお、支持部72がレールを走行可能であれば、車輪を用いる代わりに、レールに接触する面を、レールに対して低摩擦係数を有する材料で形成してもよい。また、レールは、磁気共鳴イメージング装置100における磁気共鳴撮像に使用する磁場に作用しない非磁性材料により形成される。
【0081】
本変形例では、上記の光学式撮影部2021により、カメラ21の位置を被検体200に応じて調整できるため、被検体200に装着されたマーカー22をより精度よくカメラ21で撮影することができる。これにより、被検体200の動きの計測精度をさらに高めることができる。
【0082】
(第3の変形例)
次に、第3の変形例について説明する。上記の実施形態と第3の変形例との違いは、光学式撮影部の構成である。本変形例では、被検体200の頭部の動きを計測することを想定する。図11に示すように、被検体200を撮影するカメラ21は、ボアの外に配置されている。なお、ボアの外であれば、カメラを天板41等の装置に固定してもよい。
図11では、1台のカメラ21を使用する例を示すが、動き計測精度を向上させるために複数のカメラを使用するのが好ましい。また、反射板71を用いて、被検体200に固定されたマーカー22を頭部RFコイル6bの開口を通じて撮影する。反射板71により、被検体200に対するカメラ撮像方向(カメラ21の光軸方向)が変更される。
【0083】
このような構成により、被検体200の視野内に、カメラ21を配置しなくてよいため、被検体200の視野を広く確保でき、撮影時に装置100内の各部が被検体200に与える圧迫感を抑える効果が期待できる。また、画像ノイズの原因となりうる電子機器であるカメラをMRI装置からできるだけ離すことができるため、撮像画像におけるノイズの発生がより低減される効果が期待できる。なお、反射板71は、第2の変形例と同様、支持部72によって天板41に固定され、かつ、移動可能に構成されていてもよい。
【0084】
(第4の変形例)
次に、第4の変形例について説明する。上記の実施形態と第4の変形例との違いは、マーカーの構成である。図12を用いて相違を説明する。図2に示すように、上記の実施形態におけるマーカー22は、カメラ21の撮像方向において互いに高さ(位置)が異なるパターン202a、202bを有する。このため、撮像画像では、1つの平面基板のみを有するマーカーを使用する場合に比べて、少なくともカメラ21の撮像方向においてカメラ21に近い側のパターン202aのサイズが大きくなる。ここで、マーカー22のパターンは、撮像画像において、カメラ21の撮像方向に互いに高さが異なるパターンとして表現されていればよい。
【0085】
そこで、本変形例におけるマーカー4022は、図12の例に示すように、平面基板4201上にホログラムによって3次元的なパターン4202を記録した構造体を採用する。したがって、マーカー4202自体は平面に付されているが、カメラ21による撮像画像においては立体的な仮想像4202a、4202bが再現される。この結果、撮像画像
では、カメラ21の撮像方向において異なる高さのパターンが現れ、光学式撮影部21による被検体200の撮像方向において、カメラ21からの距離が互いに異なる位置に構造体が再現されることとなる。パターン4202に用いられるホログラムとしては、特にリップマンホログラムを用いることで、画像においてより高精細な空間的な構造体あるいはパターンを再現できる。
【0086】
したがって、本変形例によれば、カメラの撮像方向に対してマーカーのサイズを小さくして装置内の各部との干渉を抑えつつ、上記のようにマーカーを立体的に形成した場合と同様にマーカーの動きの計測精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0087】
130、330 情報処理装置
131 取得部
132、332 選択部
133 推論部
図1
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図12