(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/14 20060101AFI20240917BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240917BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B65H7/14
G03G15/00 460
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2020123703
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町井 衣美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 征児
(72)【発明者】
【氏名】関水 幸一
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-64673(JP,A)
【文献】特開2002-260051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/14
G03G 15/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送手段と、
シートが搬送される搬送路を形成するガイド手段と、
光を発する発光素子と、
光の受光量に応じて検知信号が変化する受光素子と、
前記発光素子から前記搬送路へ向かう光路を形成するための第1光路部と、
前記搬送路から前記受光素子へ向かう光路を形成するための第2光路部と、
を備え、前記搬送路内にシートが有るか否かに応じて前記検知信号が変化するシート搬送装置であって、
前記発光素子、前記受光素子、前記第1光路部及び前記第2光路部は、前記搬送路を通過するシートの厚さ方向に関して前記搬送路の一方側に配置され、
前記搬送路内にシートが有る場合に前記受光素子に入射する光の量が、前記搬送路内にシートが無い場合に前記受光素子に入射する光の量より多く、
前記発光素子が発する光に対する前記第1光路部及び前記第2光路部の反射率が、前記発光素子が発する光に対する前記ガイド手段の反射率より高い、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記第1光路部及び前記第2光路部は、白色の樹脂で形成されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記第1光路部及び前記第2光路部は、金属材料で形成されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記第1光路部及び前記第2光路部の表面は、鏡面仕上げされている、
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第1光路部及び前記第2光路部の表面には、金属層が形成されている、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記第1光路部及び前記第2光路部の表面には、金属テープが貼付されている、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記第1光路部及び前記第2光路部の表面には、金属を含有する塗料が塗布されている、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記ガイド手段は、黒色の樹脂で形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記ガイド手段の表面は、ツヤ消し仕上げされている、
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記ガイド手段の表面には、前記発光素子が発する光の吸収率が99%以上である塗料が塗布されている、
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記発光素子が発する光に対する前記第1光路部及び前記第2光路部の反射率は、3%以上であり、
前記発光素子が発する光に対する前記ガイド手段の反射率は、1.5%以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項12】
前記発光素子が発する光に対する前記第1光路部及び前記第2光路部の反射率は、4%以上であり、
前記発光素子が発する光に対する前記ガイド手段の反射率は、1%以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項13】
前記発光素子は、発光ダイオードである、
ことを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項14】
前記第1光路部は、一方の開口端において前記発光素子が設けられた基板と対向し、かつ、他方の開口端において前記搬送路に連通する筒形状の内面を形成し、
前記第2光路部は、一方の開口端において前記受光素子が設けられた基板と対向し、かつ、他方の開口端において前記搬送路に連通する筒形状の内面を形成し、
前記発光素子が発する光に対する、前記第1光路部が形成する筒形状の内面及び前記第2光路部が形成する筒形状の内面の反射率が、前記発光素子が発する光に対する前記ガイド手段の反射率より高い、
ことを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項15】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
シートを搬送する請求項1乃至
14のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
前記搬送手段は、シートを挟持して回転する回転体対と、前記回転体対のニップ部を加熱するための加熱手段とを有し、前記画像形成手段によってトナー画像を形成されたシートを前記回転体対によって搬送しながらトナー画像を加熱してシートに定着させる定着装置を含み、
前記発光素子、前記受光素子、前記第1光路部及び前記第2光路部は、前記ニップ部から前記搬送路に送り出されるシートが有るか否かに応じて前記検知信号が変化するように配置されている、
ことを特徴とする請求項
15に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置及びシートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置には、記録材又は原稿として用いるシートの搬送を制御するために、シートの搬送路上にシートを検知するためのシート検知機構が搭載されている。画像形成装置の高速化に伴い、応答が速いシート検知機構として、光を用いてシートの有無を検出する光学式のシート検知機構が用いられるようになってきている。
【0003】
また、電子写真式の画像形成装置は、シート上に転写されたトナー画像を加熱することでシートに定着させる熱定着方式の定着装置を有している。定着装置の付近に光学式のシート検知機構を配置する場合、シートから発生する水蒸気によって光路上の部材に結露が生じたり、高温により発光部の劣化が進行して発光量が低下したりすると、受光部に入射する光量が減少し、検知精度が低下する場合がある。特許文献1には、定着装置の付近に光学式センサを配置するとともに、光学センサの発光部及び受光部に冷却風を吹き付けて冷却することで、結露や発光部の劣化を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学式のシート検知機構によってシートの有無を正確に検知するためには、シートの有無に応じて受光部に入射する光量が変化し、受光部の検知信号が予め設定された閾値を跨いで変化することが必要である。しかしながら、上記の結露や発光部の劣化だけでなく、累積発光時間の増加に伴う発光部の劣化や、迷光の存在といった不利な条件でシートを検知すべき場合もある。このような場合に、従来、シートが有る状態で受光部に入射する光量とシートが無い状態で受光部に入射する光量との差が小さくなることで、検知精度が低下する可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、比較的不利な条件でも高い検知精度でシートの有無を検知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、シートを搬送する搬送手段と、シートが搬送される搬送路を形成するガイド手段と、光を発する発光素子と、光の受光量に応じて検知信号が変化する受光素子と、前記発光素子から前記搬送路へ向かう光路を形成するための第1光路部と、前記搬送路から前記受光素子へ向かう光路を形成するための第2光路部と、を備え、前記搬送路内にシートが有るか否かに応じて前記検知信号が変化するシート搬送装置であって、前記発光素子、前記受光素子、前記第1光路部及び前記第2光路部は、前記搬送路を通過するシートの厚さ方向に関して前記搬送路の一方側に配置され、前記搬送路内にシートが有る場合に前記受光素子に入射する光の量が、前記搬送路内にシートが無い場合に前記受光素子に入射する光の量より多く、前記発光素子が発する光に対する前記第1光路部及び前記第2光路部の反射率が、前記発光素子が発する光に対する前記ガイド手段の反射率より高い、ことを特徴とするシート搬送装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的不利な条件でも高い検知精度でシートの有無を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施例1に係るシート検知機構の斜視図(a、b)。
【
図3】実施例1に係るシート検知機構の側面図(a)及び断面図(b、c)。
【
図6】実施例1に係るシート検知機構の動作を説明するための図(a、b)。
【
図7】実施例1における乱反射光の影響について説明するための図。
【
図8】実施例1と従来例について、受光部の出力電圧と閾値の関係を表すグラフ。
【
図9】実施例2に係るシート検知機構の斜視図(a、b)。
【
図10】実施例2に係るシート検知機構の側面図(a)及び断面図(b、c)。
【
図11】実施例2に係るシート検知機構の動作を説明するための図(a~c)。
【
図12】実施例2における透過光の影響について説明するための図。
【
図13】実施例3に係るシート検知機構の斜視図(a、b)。
【
図14】実施例3に係るシート検知機構の側面図(a)及び断面図(b、c)。
【
図15】実施例3に係るシート検知機構の動作を説明するための図(a、b)。
【
図16】実施例3における乱反射光の影響について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、実施例1に係るシート検知機構及び画像形成装置について説明する。まず、
図1を用いて画像形成装置1の全体構成を画像形成時の動作とともに説明する。
【0012】
図1に示す画像形成装置1は、イエローY、マゼンダM、シアンC、ブラックKの4色のトナーを中間転写ベルトに一次転写した後、シートに二次転写して画像を形成する中間転写タンデム方式の電子写真式画像形成装置である。画像形成装置1は、シートにトナー画像を形成する画像形成部1Bと、画像形成部1Bへシートを供給するシート給送部1Dと、シートにトナー画像を定着させる定着装置18と、を備える。
【0013】
シート給送部1Dは、カセット23、給送ローラ24及び分離ローラ25を含む。カセット23は、給送されるシートSを支持するシート支持部であり、画像形成装置1の本体(枠体及び外装を含む筐体。以下、装置本体1Aとする)に対して着脱可能である。なお、記録材であるシートSとしては、普通紙及び厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材等、サイズ及び材質の異なる多様なシートを使用可能である。
【0014】
給送ローラ24は、装置本体1Aに固定された不図示の駆動ユニットの動力によって回転し、カセット23に支持されているシートSの最上位シートに当接してシートSを搬送路に給送する給送部材である。駆動ユニットは、例えば装置本体1Aの枠体を構成するフレームによって保持されたギア列等の駆動機構と、駆動機構に動力を供給するモータ等の駆動源と、を含む。分離ローラ25は、給送ローラ24に当接して給送ローラ24との間に分離ニップを形成し、分離ニップにおいてシートに摩擦力を作用させることで、給送ローラ24によって搬送される最上位のシートSから他のシートSを分離してシートSの重送を防ぐ。
【0015】
画像形成部1Bは、レーザスキャナユニット9、中間転写ユニット10、プロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kを備える。なお、各々のプロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kは、異なる色の、即ちイエローY、マゼンダM、シアンC、ブラックKのトナーによりトナー画像を形成する点以外は同様の構成である。プロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kは、装置本体1Aに対して着脱可能であり、各カートリッジは感光体ユニット5と現像ユニット4で構成される。
【0016】
各感光体ユニット5は、ドラム状に形成された感光体(像担持体)である感光ドラム1a、帯電手段としての帯電ローラ2、クリーニング手段としてのクリーニングブレード8等を備える。また、現像手段としての各現像ユニット4は、現像剤担持体としての現像ローラ6、トナー塗布ローラ7等を備える。
【0017】
中間転写ユニット10は、中間転写体としての中間転写ベルト12、4つの一次転写ローラ11、二次転写ローラ16、二次転写対向ローラ13、クリーニング装置26及びテンションローラ14を備える。中間転写ベルト12は、無端筒状のベルトであり、二次転写対向ローラ13及びテンションローラ14に張架され、二次転写対向ローラ13から駆動を受けて図中反時計回りに回転する。中間転写ベルト12を挟んで互いに対向する二次転写対向ローラ13及び二次転写ローラ16の間には、二次転写部としてのニップ部(転写ニップ)が形成されている。
【0018】
定着装置18は、シートSを挟持して搬送する回転体対としての定着ローラ対19と、シートS上のトナー画像を加熱するための加熱手段と、を有する熱定着方式の構成を備える。本実施例では、シートSの画像面(二次転写部においてトナー画像を転写された面)に当接する加熱ローラ19aと、加熱ローラ19aに圧接する加圧ローラ19bとによって定着ローラ対19が構成される。そして、定着ローラ対19のニップ部(定着ニップ)にシートSが挟持されて搬送される。なお、加熱ローラ19a及び/又は加圧ローラ19bに代えて、例えば筒状のフィルムをガイド部材に外嵌したものを用いてもよい。加熱手段としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミック基板上に抵抗発熱体を配置したヒータ、電磁誘導により加熱ローラ或いはフィルムに設けられた導電層を発熱させる誘導加熱装置等を用いることができる。
【0019】
画像形成装置1が画像形成動作を行う場合、装置本体1Aに搭載された制御部1Cがプリント信号を発すると、給送ローラ24によりカセット23に収納されたシートSが1枚ずつ給送されてレジストレーションローラ対17に送られる。シートSは、レジストレーションローラ対17により斜行補正及びタイミング補正が行われた後、画像形成部1Bの二次転写部に送り出される。なお、制御部1Cは、少なくとも1つのプロセッサとメモリとを有し、プロセッサがメモリから制御プログラムを読み出して実行することで画像形成装置1の動作を制御する。制御部1Cが実行する制御プログラムには、画像形成動作の手順の他に、後述するシート検知機構32の検知信号に基づいてシートの有無を判断する方法が規定されている。
【0020】
一方、画像形成部1Bにおいては、まず帯電ローラ2によって感光ドラム1aの表面が所定の極性(本実施例では負極性)に一様に帯電させられる。次に、レーザスキャナユニット9が、印刷すべき画像情報を単色の成分画像に分解した信号に応じて変調されたレーザ光を不図示の光源から出射し、感光ドラム1aの表面を露光する。これにより、各感光ドラム1aの表面には、各色の成分画像に対応する静電潜像が形成される。その後、現像ユニット4によって静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させて現像することで、各感光ドラム1aの表面に単色のトナー画像が形成される。
【0021】
感光ドラム1aの表面に形成されたトナー画像は、中間転写ベルト12を挟んで感光ドラム1aに対向する一次転写ローラ11にトナーの正規帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)のバイアス電圧が印加されることで中間転写ベルト12に一次転写される。中間転写ベルト12に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト12の回転により二次転写部に到達する。そして、二次転写部において、二次転写ローラ16にトナーの正規帯電極性とは逆極性のバイアス電圧が印加されることで、トナー画像がシートSに二次転写される。
【0022】
画像形成部1Bで形成されたトナー画像を二次転写部において転写されたシートSは、定着装置18に送られる。定着装置18は、定着ローラ対19によってシートSを挟持して搬送しながら、シートS上のトナー画像を加熱及び加圧し、シートSに定着させる。定着装置18を通過したシートSはさらに搬送ローラ対27を介して搬送され、排出ローラ対21により排出トレイ22に排出される。
【0023】
上述した画像形成装置1内部におけるシートSの搬送路に沿って配置された給送ローラ24及びレジストレーションローラ対17は、シートSを搬送する搬送手段の例である。同様に、画像形成装置1内部におけるシートSの搬送路に沿って配置された二次転写ローラ16及び二次転写対向ローラ13、定着ローラ対19、搬送ローラ対27及び排出ローラ対21は、シートSを搬送する搬送手段の他の例である。
【0024】
なお、本実施例では、画像形成手段の一例として中間転写型の電子写真ユニットである画像形成部1Bを例示したが、像担持体に形成したトナー画像を中間転写体を介さずに記録材に転写する直接転写型の電子写真ユニットを用いてもよい。また、電子写真方式に限らず、例えばインクジェット式やオフセット印刷方式の画像形成手段を用いてもよい。
【0025】
<シート検知機構>
次に、画像形成装置1内部でシートが搬送される搬送路におけるシートの有無を検知するための光学式のシート検知機構32について説明する。
図1に示すように、本実施例のシート検知機構32はシートSの搬送方向に関して定着ローラ対19の下流かつ搬送ローラ対27の上流に配置され、定着ローラ対19から送り出されるシートSの有無を表す検知信号を出力する。また、シート検知機構32の検知信号は、制御部1Cに伝えられる。
【0026】
制御部1Cは、シート検知機構32から受け取った検知信号に基づいて、ジャムの報知やシートSの搬送制御を行う。例えば、画像形成動作の開始時刻から所定の時間が経過してもシート検知機構32がシートSの存在を表す検知信号を出力しない場合、制御部1Cは定着装置18までのいずれかの地点でシートSのジャム(搬送不良)が生じたと判断することができる。また、制御部1Cは、シート検知機構32の検知結果が切り替わった時刻を、シートSの先端及び後端(搬送方向の下流端及び上流端)が搬送路上の所定位置を通過した時刻として扱うことで、例えば排出ローラ対21の駆動開始・停止のタイミングを決定する。従って、シート検知機構32の検知信号が搬送路におけるシートSの有無を正しく反映していることが、画像形成装置1が本来の性能を発揮するために必要である。
【0027】
<シート検知機構の基本構成>
シート検知機構32の基本構成について説明する。以下、シート検知機構32を通過する際のシートの移動方向を「搬送方向Z」と表す。搬送方向Zに垂直な方向であってシート面に沿った方向を「シート幅方向X」と表す。シート幅方向X及び搬送方向Zに垂直な方向(シート検知機構32と対向する位置におけるシート面の法線方向)をシートの「厚さ方向Y」と表す。本実施例において、シート幅方向Xは定着装置18における加熱ローラ19a及び加圧ローラ19bの回転軸線方向(定着ニップの長手方向、画像形成時の主走査方向)と実質的に同じ方向である。搬送方向Zは、定着ニップからシートが送り出される方向(定着ニップの短手方向)と実質的に同じ方向である。また、シート検知機構32に関する部材の形状や部材間の位置関係は、当該部材が画像形成装置1の一部として組付けられた状態を基準にして説明する。
【0028】
図2(a、b)は、シート検知機構32の斜視図である。
図3(a)は、シート検知機構32をシート幅方向Xに見た側面図である。
図3(b)は、シート検知機構32における光路の1つに沿った仮想平面(
図3(a)の3B-3B線)におけるシート検知機構32の断面図(本実施例では搬送方向Zに垂直な仮想平面における断面図)である。
図3(c)は、シート幅方向Xに対して垂直な仮想平面(
図3(b)の3C-3C線)におけるシート検知機構32の断面を、シート幅方向Xに見た断面図である。
【0029】
図2及び
図3の各図に示すように、シート検知機構32は、搬送方向Zにおいて定着ローラ対19の下流側の搬送路を形成するガイドユニット(28,45)に取り付けられたセンサユニット20及び反射板44を有する。
【0030】
ガイドユニットは、シートの一方の面を案内する第1搬送ガイド28と、搬送路(シートが移動する空間)を挟んで第1搬送ガイド28と対向し、シートの他方の面を案内する第2搬送ガイド45と、を有する。第1搬送ガイド28及び第2搬送ガイド45は、シート幅方向X及び搬送方向Zに沿った方向に広がるガイド面28a,45aを有し、互いに対向するガイド面28a,45aの間に搬送路が形成されている。なお、ガイド面28a,45aは、平坦な面に限らず、例えば搬送方向Zに沿って複数のリブが形成されていてもよく、通気孔として格子状の孔やスリットが形成されていてもよい。
【0031】
センサユニット20は、センサ基板31と固定台29とを有し、第1搬送ガイド28に取り付けられている。具体的には、第1搬送ガイド28のガイド面28aとは反対側(搬送路から見て第1搬送ガイド28の内側)に固定台29が固定され、固定台29に対してセンサ基板31が取り付けられている。
【0032】
図4は、センサ基板31の斜視図である。センサ基板31には、固定台29に対する位置を固定する(位置決めする)ための位置決め部65としての位置決め孔65a,65bと、固定台29に保持される被保持部としての貫通穴62と、が形成されている。センサ基板31には、光を発する発光素子(第1光学素子部)としての発光部33と、発光部33と協働してシートを光学的に検知するための受光素子(第2光学素子部)としての受光部35と、が実装されている。
【0033】
発光部33には、消費電力の少ない発光素子として、電界発光する発光ダイオード(LED)を好適に用いることができる。本実施例の発光部33には、例えばピーク波長が850nmの赤外LEDを用いており、出力値は40~25mA程度である。なお、ドミナント波長が850nmのLEDを発光部33に用いてもよく、波長パラメータが上記のいずれとも異なるLED(例えば可視光LED)を発光部33に用いてもよい。以下、光学式のシート検知機構32がシートの検知に用いる「光」は、可視光及び赤外線の他、広く用いられている記録材である普通紙によって遮られる任意の電磁波を含むものとし、「光量」はそのような光の放射エネルギーを指すものとする。
【0034】
受光部35にはフォトトランジスタを好適に用いることができる。受光部35のフォトトランジスタは、光が当たっていない状態では約3.3Vの電圧を出力している。受光部35は発光部33から出射された光を受光すると電流が流れやすくなり、センサユニット20が出力する検知信号としての出力電圧が小さくなる。また、センサ基板31には電気回路が形成されており、発光部33、受光部35は制御部1Cと電気的に接続されている。なお、
図2及び
図3の各図に示す発光部33と受光部35の配置は逆にしても以下の説明と同等の機能が得られる。
【0035】
また、
図2及び
図3の各図に示すように、第2搬送ガイド45のガイド面45aには反射部材としての反射板44が固定され、発光部33から出射された光を受光部35の方向に反射(鏡面反射)させる。発光部33及び受光部35は搬送方向Zにおいて略同じ位置を占めつつシート幅方向Xに並んでおり、反射板44は搬送方向Zの位置が発光部33及び受光部35と重複し、かつ、シート幅方向Xにおいて発光部33及び受光部35の間に位置する。なお、
図3(b)には、発光部33から反射板44を経て受光部35に至る経路の中で最短の経路を通る光線Lbを、発光部33から反射板44を経て受光部35に至る光線束の代表例として図示している。
【0036】
反射部材は、少なくともガイド面45aに比べて発光部33が発する光に対する反射率が高い部材を用いる。本実施例では光沢のある板金(具体的にはSUS430の板)で構成された反射板44を反射部材として用いている。反射部材は、これに限らずアルミ蒸着を施したPET(ポリエチレンテレフタラート)等の樹脂シートや、ガラス表面にアルミ又は銀を蒸着した鏡を用いても構わないが、受光部35の出力の安定性を考慮すると板金が望ましい。特にステンレスが好ましく、ステンレスの中でもSUS430が好ましい。温度変化が比較的激しい定着装置18の周辺においても表面が変形しにくく、安定して光を反射できる利点があるからである。また、高湿度環境下でも腐食に強いこと、さらに安価に光沢性のある表面を得られることから、受光部35の方向へ反射する光量を安定して多くすることができる利点もある。なお、ここでいう「受光部35の方向」とは、受光部35に光が直接向かう方向(
図3(b)の矢印参照)だけでなく、後述の導光部及び他の反射部材等を介して間接的に受光部35に光が向かう方向も含まれる。
【0037】
図5は、固定台29の斜視図である。
図5(a、b)に示すように、固定台29は、センサ基板31を保持する保持部61と、センサ基板31の位置決め孔65a,65bと係合してセンサ基板31の位置決めを行う位置決め部66である突起66a,66bと、を備える。センサ基板31を固定台29に装着する場合、突起66a,66bを位置決め孔65a,65bに係合させることで、センサ基板31の主面に沿った方向(本実施例ではシート幅方向X及び搬送方向Z)の位置決めがなされる。また、保持部61の爪がセンサ基板31の貫通穴62を介してセンサ基板31の裏面と係合することで、厚さ方向Yの位置決めがなされ、センサ基板31が固定台29に対して固定される。ただし、センサ基板31及び固定台29の位置決め及び固定の方法は上記のものに限らず、例えばネジを使用して両者を締結してもよい。
【0038】
なお、
図3(b)のように位置決め用の突起66a,66bを発光部33と受光部35との間に配置することで、固定台29とセンサ基板31との間に僅かな隙間が生じても、隙間から漏れた発光部33からの光を受光部35が直接受光することを防止できる。つまり、シート検知機構32の検知精度向上に寄与する。発光部33及び受光部35を結ぶ方向に見て、位置決め用の突起66a,66bの少なくとも1つ発光部33及び受光部35とオーバーラップする位置関係にあればよい。なお、センサ基板31に位置決め用の突起(又はネジが貫通する貫通穴)を配置し、固定台29に突起と係合する位置決め孔(又はネジが螺合する雌ネジ)を設けて、突起(又はネジ)が発光部33と受光部35との間に位置するようにしてもよい。
【0039】
ここで、
図5(a、b)に示すように、固定台29には、発光部33から出射された光を搬送路に導く略筒形状の第1導光部30aと、搬送路からの光を受光部35に導く略筒形状の第2導光部30bと、を有している。第1導光部30aは、発光部33から搬送路に向かう光路を形成するための第1光路部として機能し、第2導光部30bは、搬送路から受光部35に向かう光路を形成するための第2光路部として機能する。第1導光部30aは、筒形状の一方の開口端において発光部33を囲いながらセンサ基板31に当接し、他方の開口端において第1搬送ガイド28のガイド面28aに形成された第1開口部41aに開口している。第2導光部30bは、筒形状の一方の開口端において受光部35を囲いながらセンサ基板31に当接し、他方の開口端において第1搬送ガイド28のガイド面28aに形成された第2開口部41bに開口している。従って、第1導光部30a及び第2導光部30bの内側の空間は、第1搬送ガイド28の開口部を介して第1搬送ガイド28と第2搬送ガイド45の間の空間である搬送路に連通している。
【0040】
なお、本実施例の第1導光部30a及び第2導光部30bは、筒形状の側面の一部が開放された断面コ字状(角ばったC字状)に形成されている。そして、第1導光部30a及び第2導光部30bの開いている側が第1搬送ガイド28の平面部28bに塞がれることで(
図2(a)~
図3(c)参照)、光路を囲む筒形状が形成される。第1搬送ガイド28の平面部28bは、搬送方向Zにおけるガイド面28aの上流端から、搬送路から遠ざかるように延びる面である。第1搬送ガイド28の平面部28bは、上方からセンサユニット20を取り付け可能な取付け面としても機能する。ただし、第1導光部30a及び第2導光部30bの開放部分を第1搬送ガイド28の一部で塞ぐことで光路を囲む筒形状を形成する構成に代えて、第1導光部30a及び/又は第2導光部30bを角柱状又は円柱状等の完全な筒形状としてもよい。
【0041】
第1導光部30a及び第2導光部30bが延びる方向(筒形状の中心線の方向)は、発光部33から反射板44を経て受光部35に至るV字状の最短経路((
図3(b)の光線Lb参照)に沿った方向とすると好適である。これにより、発光部33から出射された光を反射板44へ向けて効率的に導き、かつ、反射板44から受光部35に向かう光を効率的に集めることができる。
【0042】
<検知動作>
次に、シート検知機構32によるシートの検知動作について説明する。
図3(b)の断面図は、搬送路内にシートが無い状態のシート検知機構32の様子を表している。シートが無い状態では、発光部33が発した光は第1導光部30aを通って搬送路内に照射され、反射板44によって反射される。反射板44で反射された光は、第2導光部30bを通って受光部35に入射する。そして、受光部35のフォトトランジスタに電流が流れやすくなり、受光部35の出力電圧が低下する。
【0043】
本実施例の制御部1Cは、受光部35の出力電圧に対して予め閾値を設定しており、出力電圧が閾値より低い場合に搬送路内にシートが無いと判断する。つまり、
図3(a~c)の状態では、出力電圧が閾値より低いため、制御部1Cは搬送路内にシートが無いと判断(シート無しを検知)する。なお、出力電圧が閾値に等しい場合をシート無しとするかシート有りとするかは任意に予め設定可能である。
【0044】
図6(a、b)は、搬送路内にシートSが有る状態のシート検知機構32の様子を表している。
図6(a)は、シート検知機構32をシート幅方向Xに見た側面図である。
図6(b)は、シート検知機構32の光路の1つに沿った仮想平面(
図6(a)の6B-6B線)におけるシート検知機構32の断面図(本実施例では搬送方向Zに垂直な仮想平面における断面図)である。
【0045】
図6(b)に示すように、シートSが有る状態では、発光部33からの光はシートSによって遮られ、受光部35に光は届かない(光線Lb参照)。この場合、受光部35のフォトトランジスタには電流が流れず、出力電圧は低下しない。制御部1Cは、受光部35の出力電圧が閾値より大きいため、搬送路内にシートSが有ると判断(シート有りを検知)する。
【0046】
言い換えると、本実施例のシート検知機構32は、発光素子、第1光路部、受光素子及び第2光路部が厚さ方向Yに関して搬送路の一方側に配置され、反射部材が厚さ方向Yに関して搬送路の他方側に配置される反射型の構成を採用している。そして、搬送路内にシートが有る場合に受光素子に入射する光の量が、搬送路内にシートが無い場合に受光素子に入射する光の量より少なくなるように構成している。
【0047】
<検知精度の低下要因>
しかし、シート検知機構32がシートを検知する時の実際の状況によっては、シートが無い状態での受光部35の出力電圧が0Vより大きくなり、シートがある状態での出力電圧が理論値(本実施例では3.3V)より小さくなることが考えられる。つまり、シートの有無に応じた出力電圧の変化幅が小さくなり、出力電圧と出力電圧の閾値との間に誤検知を避けるために十分な大きさのマージンを確保できない場合が考えられる。
図8の「従来例」は、複数の理由が重なり、シートが無い状態及びシートが有る状態における出力電圧が閾値Pに近付いてしまった場合を表している。以下、受光部35の出力電圧が閾値Pに近付く理由を説明する。
【0048】
(1)LEDの光量低下
発光部33として使用しているLEDは、累積発光時間とともに光量が低下することが一般に知られている(
図8の(1a))。さらに熱の影響がある中では累積発光時間によるLEDの光量の低下がより大きくなることも知られている(
図8の(1b))。その結果、シートが無い状態でも受光部35に届く光量が低下して出力電圧が大きくなる。
【0049】
(2)反射板44の結露
画像形成動作が繰り返し実行されて複数枚のシートが連続的に搬送されていくとき、定着装置18が発生する熱でシートから水蒸気が発生し、光路上の部材(特に反射板44)が結露する場合がある。反射板44に結露が生じると、反射板44に対する入射光の光量に対し、反射板44によって鏡面反射された反射光の光量の比(反射率)が低下する。反射板44の反射率が低下すると、搬送路内にシートが無い状態でも受光部35に届く光量が低下して出力電圧が大きくなる(
図8の(2))。
【0050】
(3)光路での光の減衰
発光部33から第1導光部30aを介して搬送路内に照射され、反射板44に反射され、第2導光部30bを介して受光部35に到達するまでの光路において、光路を形成している部材による吸収・散乱等により光が減衰する。その結果、シートが無い状態でも受光部35に届く光量が低下して出力電圧が大きくなる(
図8の(3))。
【0051】
なお、上述した熱の影響(1b)を抑制するために、発光部33、受光部35及び反射板44に冷却風を送るためのファンや風路を設けることも考えられる。しかし、このような冷却風を送る構成により、装置がコストアップしたり、装置が大きくなってしまう。また、画像形成装置内部でトナーが飛散して反射板44や第1導光部30a又は第2導光部30bに付着すると、却って光路での光の減衰が大きくなる場合もある。
【0052】
(4)シートと搬送ガイドの間を通る迷光
一方、搬送路内にシートSが有る場合でも受光部35に全く光が到達しないとは限らず、実際には一部の光が迷光として受光部35に到達する。
図7に示すようにシートSと搬送ガイド28との間で反射されながら一部の光が受光部35に届くことで、受光部35の出力電圧が低下する(
図8の(4))。さらに、近年、画像形成装置に記録材として用いられるシートは多様化する傾向にあり、シートSが光を反射しやすい種類の場合には、受光部35にはより多くの迷光が届くこととなり、さらに出力電圧が低下する。
【0053】
(5)暗電流
受光部35として使用しているフォトトランジスタの性質として、光が入射していない状態でも漏れ電流(暗電流)が生じる。暗電流は、受光部35の出力電圧を低下させる方向に作用する(
図8の(5))。
【0054】
以上の1~5に例示した理由により、
図8の左側に示すように、従来例ではシート無し状態での受光部35の出力電圧が大きくなり、シート有り状態での出力電圧が小さくなることで、シートの有無に応じた出力電圧の変化幅が小さくなる場合があった。誤検知を防ぐためには、実際の使用状態における出力電圧に対して十分なマージンを確保できるような閾値Pを設定することが望ましいが、シートの有無に応じた出力電圧の変化幅が小さいとマージンを確保することが難しくなる。従って、1~5に例示したような比較的不利な条件が重なると、誤検知が生じやすくなる可能性がある。
【0055】
シート検知機構32の誤検知が生じると、シート検知機構32の検知信号に基づいて制御部1Cが行う制御に異常が生じる可能性がある。そのため、従来例では、累積発光時間に応じて増大する影響(上記1a、1b)を考慮してシート検知機構32又は画像形成装置1の寿命を設定する対策をとる場合があった。これに関して、誤検知の可能性を低減する方法として、発光部33に発光させる光量を十分大きくすることで、累積発光時間が増大しても発光部33の光量を維持することが考えられる。しかし、発光部33に発光させる光量を大きくすると、発光部33の劣化が早まってセンサユニット20の寿命が短くなる可能性がある。
【0056】
<本実施例におけるシート検知機構の詳細>
そこで、本実施例では、シート無し状態において受光部35により多くの光が届き、シート有り状態において受光部35に到達する光量を抑えるように、以下の構成を採用している。まず、発光部33から搬送路までの光路、及び、搬送路から受光部35までの光路における光の減衰を抑えるために、固定台29を白色の樹脂で形成している。さらに、第1導光部30a及び第2導光部30bの光路を形成する面(筒形状の内側の面、導光面)を鏡面仕上げとする。鏡面仕上げとは、バフ研磨等の方法により部材表面に光沢が出るように部材表面の凹凸を小さくする表面仕上げであり、例えば算術平均粗さRaが0.2[μm]以下となるものを指す。
【0057】
一方、シートと搬送ガイドとの間を通って受光部35に届く迷光を低減するために、第1搬送ガイド28は黒色の樹脂で形成する。黒色の樹脂は、例えば基材となる樹脂材料にカーボンブラック等の光吸収率が高い成分を混錬したものであってもよい。また、第1搬送ガイド28のガイド面28aはツヤ消し仕上げをすることで迷光をさらに低減している。ツヤ消し仕上げ(マット仕上げ)とは、粒子を含有する塗料の塗布やサンドブラスト等の方法により部材表面の凹凸を大きく(表面積を大きく)する表面仕上げであり、例えば算術平均粗さRaが1.6[μm]以上となるものを指す。なお、シートの搬送に支障が生じないように、ガイド面28aの算術平均粗さRaは例えば6.3[μm]以下とすると好適である。
【0058】
上記の構成により、発光部33が発する光に対する第1導光部30a及び第2導光部30bの反射率は、発光部33が発する光に対する第1搬送ガイド28の反射率より高く設定されている。言い換えると、発光素子が発する光に対する第1光路部及び第2光路部の反射率は、発光部が発する光に対するガイド手段の反射率より高い構成となっている。
【0059】
第1導光部30a及び第2導光部30bの導光面の反射率(第1反射率)は、好ましくは3%以上で、より好ましくは4%以上である。一方、発光部33が発する光に対する第1搬送ガイド28のガイド面28aの反射率は、好ましくは1.5%以下で、より好ましくは1%以下とする。本実施例において、発光部33から出射される光の反射率は、鏡面仕上げした白色樹脂の場合約4%、ツヤ消し仕上げした黒色樹脂の場合約1%である。
【0060】
なお、第1導光部30aの反射率及び第2導光部30bの反射率の各々が条件を満たしていれば、反射率の値は互いに異なっていてもよい。
【0061】
また、本実施例では第1搬送ガイド28のガイド面28aの全域をツヤ消し仕上げした黒色樹脂で形成しているが、最終的に受光部35に届く迷光への寄与が大きい領域にのみ反射率を低減する構成を適用してもよい。迷光への寄与が大きい領域とは、例えば、ガイド面28aにおける第1開口部41a及び第2開口部41bの周縁部(
図2(a))である。従って、第1導光部30a及び第2導光部30bの反射率は、ガイド手段としての第1搬送ガイド28の内、少なくともガイド面28aにおける第1開口部41a及び第2開口部41bの周縁部の反射率より高ければよい。
【0062】
反射率の測定方法を
図17(a、b)に示す。
図17(a)は発光部91から出射された光を、光軸上に設置した光量測定器92で測定する様子の概略図である。
図17(b)は発光部91から出射された光を被測定材93の測定面93aで反射させ、光量測定器92で測定する様子の概略図である。発光部91は、シート検知機構32に用いる発光部33と同じ発光素子(本実施例では赤外LED)を用いるものとする。
【0063】
図17(a)において、発光部91から光量測定器92までの光路長を2aとする。この場合、
図17(b)において、発光部91から被測定材93の測定面93aまでの光路長をa、被測定材93の測定面93aから光量測定器92までの距離をaとする。また、発光部91から出射された光の入射角θ1と被測定材93の測定面93aでの反射角θ2を45degとする。
図17(a)における光量測定器92の出力値をTとし、
図17(b)における光量測定器92の出力値をHとする。測定面93aの反射率は、H/Tで与えられる。
【0064】
搬送路内にシートが無い場合(
図3(a~c))、発光部33から出射された光は相対的に反射率が高い第1導光部30aで反射されながら搬送路に導かれる。また、反射板44で反射され、第2導光部30bに入った光は、相対的に反射率が高い第2導光部30bで反射されながら搬送路に導かれる。従って、第1導光部30a及び第2導光部30bの内面(導光面)の反射率を高くすることで、従来例に比べて第1導光部30a及び第2導光部30bにおける光の減衰(
図8の(3))を抑制することができる。言い換えると、第1導光部30a及び第2導光部30bの内面の反射率を高くすることで、シートが無い状態において、発光部33から出射された光の全体(全放射束)に対し最終的に受光部35に届く光の割合を増加させることができる。
【0065】
一方、搬送路内にシートSが有る場合(
図6(a、b))、シートSによって反射された光は相対的に反射率の低い第1搬送ガイド28によって吸収される。従って、第1搬送ガイド28のガイド面28aの反射率を低くすることで、シートSと第1搬送ガイド28との間の反射を経て受光部35に届く迷光の量(
図8の(4))を従来例に比べて抑制することができる。特に、シートSの表面に光沢がある場合等、シートSによる光の反射が比較的生じやすい条件でも受光部35に届く迷光の量を抑制できるため、多様な種類のシートに対して高い検知精度を発揮することができる。
【0066】
その結果、
図8の右側に示すようにシート無しの場合とシート有りの場合の受光部35の出力電圧の差が大きくなり、予め設定される閾値Pに対して出力電圧のマージンを十分に確保しやすくなる。そして、制御部1Cが受光部35の出力電圧に基づいてシートの有無を判断することで、搬送路内におけるシートの有無をより正確に判断して誤検知の発生を抑制できる。
【0067】
つまり、本実施例の構成により、比較的不利な条件でも誤検知の可能性を低減して検知精度を維持することができる。その結果、例えば
図8の(1a)及び(1b)に示すように累積発光時間の増加により発光部33であるLEDの発光量が低下しても、(3)の光路での光の減衰が抑制され、受光部35における受光量の著しい低下を抑制することができる。従って、従来例に比べて、シートの検知精度を維持したまま、シート検知機構32及び画像形成装置1の寿命をより長く設定することが可能となる。
【0068】
以上説明したように、本実施例によれば、検知精度を維持しつつシート検知機構32及び画像形成装置1の長寿命化を実現することができる。本実施例のシート検知機構32は、熱定着方式の定着装置18の周辺でシートを検知する用途に好適に用いることができる。
【0069】
(変形例)
上記実施例1では、第1導光部30a及び第2導光部30bの反射率を高めるために、鏡面仕上げした白色樹脂を用いているが、第1搬送ガイド28より反射率が高ければ他の構成を用いてもよい。例えば、第1導光部30a及び第2導光部30bの導光面に対し、アルミテープ等の金属テープの貼り付け、金属を含有する塗料の塗布、又は、金属の蒸着等による金属皮膜(金属層)の形成を行ってもよい。また、第1導光部30a及び第2導光部30bをステンレス等の金属材料で形成してもよい。
【0070】
一方、上記実施例1では、第1搬送ガイド28の反射率を低く抑えるためにツヤ消し仕上げした黒色樹脂を用いているが、第1導光部30a及び第2導光部30bより反射率が低ければ他の構成を用いてもよい。例えば、第1搬送ガイド28のガイド面28aの少なくともa1領域に、光の吸収率が高いカーボン系の材料の貼り付け又は塗料の塗布を行ってもよい。光吸収率の高い塗料とは、例えば幅広い波長帯の光に対して99%以上の吸収率を達成する塗料を指す。塗料の具体例としては、ベンタブラック(Surrey?NanoSystem社製、吸収率99.965%)、黒色無双(光陽オリエントジャパン(株)製、吸収率99.3%)等がある。
【0071】
また、上記実施例1ではシートの搬送方向Zに垂直な面(X-Y平面)に沿って、発光部33から反射板44を介して受光部35に至るV字状の光路が構成されているが、光路の設計は適宜変更可能である。例えば、発光部33及び受光部35が搬送方向Zに並んだ構成として、シート幅方向Xに垂直な面(Y-Z平面)に沿ってV字状の光路を構成してもよい。また、第1搬送ガイド28及び第2搬送ガイド45に複数の反射部材を配置して、搬送路内に出射された光が複数回の鏡面反射を経て受光部35に向かう光路(例えばコの字状の光路)を構成してもよい。また、搬送路に対して厚さ方向の一方側に発光部33を配置し、他方側に受光部35及び反射部材を配置し、反射部材によって反射された光がガイド面(28a又は45a)の裏側を通って受光部35に届くL字状の光路を構成してもよい。
からの
【0072】
なお、第1光路部及び第2光路部は、本実施例の第1導光部30a及び第2導光部30bのように筒形状を形成するものに限らない。例えば、指向性のあるLEDを発光部33として使用し、出射光の中心軸が反射板44による反射を介して受光部35に向かうように発光部33を取付けるとき、第1光路部及び第2光路部は中心軸と交差しないように開放された形状とする。このとき、中心軸から逸れているために第1光路部及び第2光路部がなければ受光部35に到達し得ない光を受光部35に導くための面を、中心軸に対して少なくとも一方側に設けて第1光路部及び第2光路部としてもよい。
【実施例2】
【0073】
次に、実施例2について図を用いて説明する。本実施例では、発光部と受光部が搬送路を挟んで反対側に配置される構成を用いる。以下、実施例1と共通の参照符号を付した要素は実施例1と実質的に同一の構成及び作用を有するものとし、実施例1と異なる部分に関して説明する。
【0074】
<シート検知機構の基本構成>
本実施例に係るシート検知機構70の基本構成について説明する。
図9(a、b)は、本実施例に係るシート検知機構70の斜視図である。
図10(a)は、シート検知機構70をシート幅方向Xに見た側面図である。
図10(b)は、シート検知機構70の光路の1つに沿った仮想平面(
図10(a)の10B-10B線)におけるシート検知機構70の断面図(本実施例では搬送方向Zに垂直な仮想平面における断面図)である。
図10(c)は、シート幅方向Xに対して垂直な仮想平面(
図10(b)の10C-10C線)におけるシート検知機構70の断面を、シート幅方向Xに見た断面図である。
【0075】
図9及び
図10の各図に示すように、シート検知機構70は、搬送方向Zにおいて定着ローラ対19の下流側の搬送路を形成するガイドユニット(28,45)に取り付けられたセンサユニット71を有する。
【0076】
センサユニット71は、第1搬送ガイド28に取り付けられている第1固定台50と、発光部33が設けられた第1センサ基板51と、第2搬送ガイド45に取り付けられている第2固定台52と、受光部35が設けられた第2センサ基板53と、を含む。第1固定台50には、発光部33から搬送路に向かう光路を形成する第1導光部54が、第1センサ基板51から第1搬送ガイド28のガイド面28aに向かって延びるように形成されている。第2固定台52には、搬送路から受光部35に向かう光路を形成する第2導光部55が、第2搬送ガイド45のガイド面45aから第2センサ基板53に向かって延びるように形成されている。
【0077】
第1導光部54及び第2導光部55は、光路を囲む略筒形状に形成されている。なお、本実施例の第1導光部54及び第2導光部55は、筒形状の側面の一部が開放された断面コ字状(角ばったC字状)に形成されている。そして、第1導光部54及び第2導光部55の開いている側が、第1搬送ガイド28の平面部28b及び第2搬送ガイド45の平面部45bに塞がれることで、光路を囲む筒形状が形成されている。なお、第1導光部54及び第2導光部55を、角柱状又は円柱状等の完全な筒形状としてもよい。
【0078】
第1導光部54は、筒形状の一方の端部において発光部33を囲いながら第1センサ基板51に当接し、他方の端部において第1搬送ガイド28のガイド面28aに形成された第1開口部56(
図9(a)、
図10(b))に開口している。第2導光部55は、筒形状の一方の端部において受光部35を囲いながら第2センサ基板53に当接し、他方の端部において第2搬送ガイド45のガイド面45aに形成された第2開口部57(
図9(b)、
図10(b))に開口している。
【0079】
なお、第1センサ基板51を第1固定台50に対して位置決め及び固定する方法、及び、第2センサ基板53を第2固定台52に対して位置決め及び固定する方法は、実施例1と同様のものを用いることができる。即ち、第1固定台50及び第2固定台52の各々に保持部及び位置決め用の突起を配置し、第1センサ基板51及び第2センサ基板53の各々に被保持部としての貫通穴及び突起と係合する位置決め孔を設ければよい。
【0080】
<検知動作>
次に、シート検知機構70によるシートの検知動作について説明する。
図10(b)は、搬送路内にシートが無い状態のシート検知機構70を表している。この状態では、発光部33からの光は第1導光部54の内側を通って搬送路内に照射された後、そのまま第2開口部57に入り、第2導光部55の内側を通って受光部35に到達する。つまり、光は発光部33から受光部35に向かって直線的な光路に沿って進む。従って、シートが無い状態では受光部35のフォトトランジスタに電流が流れやすくなり、出力電圧が低下する。制御部1Cは受光部35の出力電圧に対して予め閾値Pを設定しており、受光部35の出力電圧が閾値Pより低い状態をシートが無い状態と判断する。
【0081】
図11(a~c)は、搬送路内にシートSが有る状態のシート検知機構70を表している。
図11(a)は、シート検知機構70をシート幅方向Xに見た側面図である。
図11(b)は、シート検知機構70の光路の1つに沿った仮想平面(
図11(a)の11B-11B線)におけるシート検知機構70の断面図(本実施例では搬送方向Zに垂直な仮想平面における断面図)である。
図11(c)は、シート幅方向Xに対して垂直な仮想平面(
図11(b)の11C-11C線)におけるシート検知機構70の断面を、シート幅方向Xに見た断面図である。
【0082】
図11(b)に示すように、シートSが有る状態では、発光部33からの光はシートSによって遮られ、受光部35に光は届かない。そのため、受光部35であるフォトトランジスタに電流が流れず、出力電圧は低下しない。制御部1Cは、受光部35の出力電圧が低下せず、閾値Pより大きい状態をシートSが無い状態と判断する。
【0083】
言い換えると、本実施例のシート検知機構70は、発光素子及び第1光路部が厚さ方向Yに関して搬送路の一方側に配置され、受光素子及び第2光路部が厚さ方向Yに関して搬送路の他方側に配置される透過型の構成を採用している。そして、搬送路内にシートが有る場合に受光素子に入射する光の量が、搬送路内にシートが無い場合に受光素子に入射する光の量より少なくなるように構成している。
【0084】
<検知精度の低下要因>
しかし実際は、実施例1で説明したように、光路上の部材の結露、発光部33であるLEDの累積発光時間及び熱に依存する発光量の低下により、搬送路内にシートが無い状態で受光部35に届く光量が低下する場合がある。また、実施例1と比べて光路長が短く、直線状になっているので減衰の程度は小さくなるものの、光路を形成している部材による吸収・散乱等により、受光部35に届くまでの光路上で光が減衰する。
【0085】
一方、搬送路内にシートSが有る場合は、
図12に示すように実際はシートSがわずかに光を透過し、また拡散する。その結果、シートSを透過した光が直接的に受光部35に届いたり、シートSを透過しつつ拡散された光が主に第2搬送ガイド45との間で乱反射して、迷光として受光部35に届く場合がある。つまり、シートSが有る状態であっても、一部の光が受光部35に届き、受光部35に電流が流れてフォトトランジスタの出力電圧が低下する場合がある。さらに、昨今、シートSが薄く光を透過しやすい種類の場合には、受光部35にはより多くの光が届くこととなり、さらに出力電圧が低下する。このように、本実施例のシート検知機構70においても、不利な条件が重なった場合に、搬送路内におけるシートの有無に応じた受光部35の出力電圧と出力電圧の閾値とのマージンが小さくなり、誤検知が生じやすくなる可能性がある。
【0086】
そこで、本実施例においても、発光部33が発する光に対する第1導光部54及び第2導光部55の反射率が、発光部33が発する光に対するガイドユニット(28,45)の反射率より高くなる構成とする。
【0087】
具体的には、第1導光部54及び第2導光部55の光路を形成する面(導光面、筒形状の内側の面)の少なくとも一部にアルミ箔テープを貼付する。また、第2搬送ガイド45は黒色の樹脂で形成し、さらに、光吸収率の高い塗料を塗布する。光吸収率の高い塗料とは、例えば幅広い波長帯の光に対して99%以上の吸収率を達成する塗料を指す。
【0088】
第1導光部54及び第2導光部55の反射率を高くすることで、搬送路内にシートが無い場合に、発光部33が発した光が第1導光部54及び第2導光部55で減衰することを低減することができる。アルミ箔テープの反射率は約70%であり、白色系樹脂を鏡面仕上げした場合の反射率(4%程度)よりも高いので、実施例1に比べより光量の低下を抑えることができる。さらに、光路長が短く真っ直ぐであるため、実施例1に比べて受光部35に届く光量をさらに増加させやすい構成となっている。
【0089】
一方、第2搬送ガイド45の反射率を低くすることで、搬送路内にシートが有る場合に、シートを透過、拡散して第2搬送ガイド45との間で乱反射し、迷光として受光部35に到達する光量を抑制できる。
【0090】
その結果、シートの有無に応じた受光部35に届く光量の変化幅が大きくなり、受光部35の出力電圧の変化が大きくなる。そして、シートの有無に応じた受光部35の出力電圧に、制御部1Cで予め設定した閾値Pに対して十分なマージンを確保しやすくなることから、比較的不利な条件でも誤検知の可能性を低減して検知精度を維持することができる。そして、例えば発光部33であるLEDの発光量が低下しても受光部35における受光量の著しい低下を防ぐことができ、シート検知機構70の検知精度を維持したままシート検知機構32及び画像形成装置1の寿命をより長く設定することが可能となる。
【0091】
なお、実施例1で説明したように、発光部33が発する光に関して、第1導光部54及び第2導光部55の反射率が第2搬送ガイド45の反射率より高ければ、反射率を高く(低く)するための構成は適宜変更可能である。第1導光部54及び第2導光部55の反射率は、好ましくは3%以上で、より好ましくは4%以上であり、第2搬送ガイド45の反射率は、好ましくは1.5%以下で、より好ましくは1%以下とする。第1導光部54及び第2導光部55の反射率の値は、互いに異なっていてもよい。
【0092】
また、本実施例では第2搬送ガイド45のガイド面45aの全域に光吸収率の高い塗料を塗布するが、最終的に受光部35に届く迷光への寄与が大きい領域にのみ塗料を塗布してもよい。迷光への寄与が大きい領域とは、例えば、ガイド面45aにおける第2開口部57の周縁部(
図12)である。従って、第1導光部54及び第2導光部55の反射率は、ガイド手段としての第2搬送ガイド45の内、少なくともガイド面45aにおける第2開口部57の周縁部の反射率より高ければよい。
【実施例3】
【0093】
次に、実施例3について図を用いて説明する。本実施例では、搬送路内にシートが有る場合にシートからの反射光を受光部が検出する構成を用いる。以下、実施例1と共通の参照符号を付した要素は実施例1と実質的に同一の構成及び作用を有するものとし、実施例1と異なる部部分に関して説明する。
【0094】
<シート検知機構の基本構成>
本実施例のシート検知機構90の基本構成について説明する。
図13(a、b)は、本実施例に係るシート検知機構90の斜視図である。
図14(a)は、シート検知機構90をシート幅方向Xに見た側面図である。
図14(b)は、シート検知機構90の光路の1つに沿った仮想平面(
図14(a)の14B-14B線)におけるシート検知機構90の断面図(本実施例では搬送方向Zに垂直な仮想平面における断面図)である。
図14(c)は、シート幅方向Xに対して垂直な仮想平面(
図14(b)の14C-14C線)におけるシート検知機構90の断面を、シート幅方向Xに見た断面図である。
【0095】
本実施例では、実施例1とは異なり第2搬送ガイド45に反射部材は配置されていない。また、第1導光部30aの中心線を延長した仮想線と第2導光部30bの中心線を延長した仮想線とが搬送路の内側の点で交差するように配置されることが実施例1と異なっている。その他のセンサユニット20の構成は実質的に実施例1と同様である。
【0096】
<検知動作>
シート検知機構90によるシートの検知動作について説明する。
図14(b)は、搬送路内にシートが無い状態のシート検知機構90を表している。シートが無い状態では、発光部33からの光は第1導光部30aを出た後、第2搬送ガイド45のガイド面45aに届くが、ガイド面45aには反射部材が設けられていないため、基本的には受光部35に向かう方向に反射されない。そして、受光部35に殆ど光が届かないため、受光部35のフォトトランジスタに電流が流れず、出力電圧は低下しない。制御部1Cは、受光部35の出力電圧が低下せず、受光部35の出力電圧が予め設定した閾値Pより大きい状態をシートSが無い状態と判断する。
【0097】
図15(a、b)は、搬送路内にシートSが有る状態のシート検知機構90を表している。
図15(a)は、シート検知機構90をシート幅方向Xに見た側面図である。
図15(b)は、シート検知機構90の光路の1つに沿った仮想平面(
図15(a)の15B-15B線)におけるシート検知機構90の断面図(本実施例では搬送方向Zに垂直な仮想平面における断面図)である。
【0098】
搬送路内にシートSが有る場合、発光部33から出射され、第1導光部30aを介して搬送路内に照射された光は、シートSによって反射され、第2導光部30bを介して受光部35に入射する。その結果、受光部35のフォトトランジスタに電流が流れやすくなり、出力電圧が低下する。本実施例では、制御部1Cは、受光部35の出力電圧が閾値Pより低下した状態をシートSが有る状態と判断する。
【0099】
言い換えると、本実施例のシート検知機構90は、発光素子、第1光路部、受光素子及び第2光路部が厚さ方向Yに関して搬送路の一方側に配置される拡散反射型の構成を採用している。そして、搬送路内にシートが有る場合に受光素子に入射する光の量が、搬送路内にシートが無い場合に受光素子に入射する光の量より多くなるように構成している。
【0100】
しかし実際は、実施例1で説明したように、光路上の部材の結露、発光部33であるLEDの累積発光時間及び熱に依存する発光量の低下により、搬送路内にシートが有る状態で受光部35に届く光量が低下する場合がある。また、本実施例ではシートによって受光部35に向けて光を反射させるため、反射率の高い反射板44を用いる実施例1に比べて、受光部35に届く光量は少なくなる。また、シートの材質によっても受光部35に届く光量が少なくなる場合がある。さらに、搬送路におけるシート面の傾きや湾曲によって、受光部35に届く光量が変動する。
【0101】
一方、シートSが無い場合、実際には第2搬送ガイド45がわずかに光を反射する。
図16に示すように第2搬送ガイド45で反射した光が第1搬送ガイド28との間で乱反射され、その一部が迷光として受光部35に届くと、受光部35には電流が流れ、受光部35の出力電圧が低下する可能性がある。
【0102】
そこで、本実施例においても、発光部33が発する光に対する第1導光部30a及び第2導光部30bの反射率が、発光部33が発する光に対するガイドユニット(28,45)の反射率より高くなる構成とする。具体的には、第1導光部54及び第2導光部55の光路を形成する面(導光面、筒形状の内側の面)は、白色の樹脂で形成するか、又は、鏡面仕上げ、金属テープの貼り付け、金属含有塗料の塗布或いは蒸着等による金属層の形成を行う。また、第1搬送ガイド28及び第2搬送ガイド45のガイド面28a,45aは、黒色の樹脂で形成し、ツヤ消し仕上げを施し、又は、光吸収率の高い塗料を塗布する。
【0103】
なお、第1導光部30a及び第2導光部30bの反射率は、好ましくは3%以上で、より好ましくは4%以上である。第1搬送ガイド28及び第2搬送ガイド45の反射率は、好ましくは1.5%以下で、より好ましくは1%以下とする。第1導光部54及び第2導光部55の反射率の値は、互いに異なっていてもよい。
【0104】
また、本実施例では第1搬送ガイド28及び第2搬送ガイド45のガイド面28a,45aの全域の反射率を低くした構成とするが、最終的に受光部35に届く迷光への寄与が大きい領域のみ反射率が低い構成としてもよい。迷光への寄与が大きい領域とは、例えば、ガイド面28aにおける第1開口部41a及び第2開口部41bの周縁部(
図16)と、ガイド面45aにおける第1開口部41a及び第2開口部41bの対向部の周縁部である。従って、第1導光部30a及び第2導光部30bの反射率は、ガイド手段としての第1搬送ガイド28及び第2搬送ガイド45の内、少なくともガイド面28aにおける第1開口部41a及び第2開口部41bの周縁部及びガイド面45aにおける第1開口部41a及び第2開口部41bの対向部の周縁部の反射率より高ければよい。
【0105】
第1導光部30a及び第2導光部30bの反射率を高くすることで、搬送路内にシートが有る場合に、発光部33が発した光が第1導光部54及び第2導光部55で減衰することを低減することができる。従って、シートに反射されて受光部35に届く光量を増加させることができる。
【0106】
一方、第1搬送ガイド28及び第2搬送ガイド45の反射率を低くすることで、搬送路内にシートが無い場合に第1搬送ガイド28及び第2搬送ガイド45の間で乱反射して迷光として受光部35に到達する光量を抑制できる。
【0107】
その結果、シートの有無に応じた受光部35に届く光量の変化幅が大きくなり、受光部35の出力電圧の変化が大きくなる。そして、シートの有無に応じた受光部35の出力電圧に、制御部1Cで予め設定した閾値Pに対してマージンを十分に確保できることから、比較的不利な条件でも誤検知の可能性を低減して検知精度を維持することができる。そして、例えば発光部33であるLEDの発光量が低下しても受光部35における受光量の著しい低下を防ぐことができ、シート検知機構90の検知精度を維持したままシート検知機構32及び画像形成装置1の寿命をより長く設定することが可能となる。
【0108】
(その他の実施形態)
上記実施例1~3では、シート搬送装置の例として、定着装置18から送り出されるシートを検知するシート検知機構を備えた画像形成装置について説明したが、本技術は、画像形成装置の他の部分又は他のシート搬送装置にも適用可能である。例えば、
図1の画像形成装置1において、実施例1~3のいずれかと同様の構成を備えたシート検知機構を、給送ローラ24とレジストレーションローラ対17との間に配置してもよい。「他のシート搬送装置」の例としては、画像形成装置から受け取ったシートに綴じ処理等の処理を施すシート処理装置や、原稿としてのシートから画像情報を読み取るためにイメージセンサへ向けてシートを搬送する自動原稿給送装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0109】
1:画像形成装置/13,16,17,19,21,24,27:搬送手段/18:定着装置/28,45:ガイド手段(第1搬送ガイド、第2搬送ガイド)/30a,54:第1光路部(第1導光部)/30b,55:第2光路部(第2導光部)/33:発光素子(発光部)/35:受光素子(受光部)