(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/093 20060101AFI20240917BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240917BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240917BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
G03G9/093
G03G9/097 365
G03G9/097 368
G03G9/087
G03G9/087 331
G03G9/08 381
(21)【出願番号】P 2020124138
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】堀田 克之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
(72)【発明者】
【氏名】釜江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大津 剛
(72)【発明者】
【氏名】白山 和久
(72)【発明者】
【氏名】豊泉 悟崇
(72)【発明者】
【氏名】上倉 健太
(72)【発明者】
【氏名】芝原 昇平
(72)【発明者】
【氏名】井田 隼人
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200815(JP,A)
【文献】特開2019-128516(JP,A)
【文献】特開2015-132654(JP,A)
【文献】特開2010-160451(JP,A)
【文献】特開2014-038177(JP,A)
【文献】特開2015-034976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂とワックスを含有するコア粒子と、該コア粒子表面に無機酸化物微粒子と、該コア粒子を被覆している有機ケイ素重合体を含む被覆層とを有するトナー粒子を有するトナー
の製造方法であって、
該コア粒子は、示差走査熱量測定(DSC)によるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQi(J/g)、該コア粒子のヘキサン処理後のDSCによるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQh(J/g)としたとき、以下の関係式を満たし、
0.7≦Qi-Qh≦20.0
該有機ケイ素重合体は、下記式(T3)で表される部分構造を有し、
前記トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の
29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、下記式(T3)で表される部分構造のピーク面積の割合[ST3]が、ST3≧0.05の関係を満たし、
R-Si(O
1/2)
3 (T3)
(式(T3)中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を表す。)
該無機酸化物微粒子が該コア粒子表面に熱固着して
おり、
該結着樹脂とワックスを含有するコア粒子表面に該無機酸化物微粒子を付着させる工程、
および該無機酸化物微粒子の付着したコア粒子を水系媒体中で分散させる工程、
該無機酸化物微粒子の付着したコア粒子の表面に該有機ケイ素重合体を被覆する工程を含み、
該コア粒子表面に該無機酸化物微粒子を付着させる工程ののちに、該無機酸化物微粒子が付着した該コア粒子を熱風で処理する工程を有することを特徴とするトナーの
製造方法。
【請求項2】
前記Qi-Qhの値が、1.0以上7.0以下である請求項1に記載のトナー
の製造方法。
【請求項3】
前記有機ケイ素重合体は、X線光電子分光分析を用いた測定において、
前記コア粒子の表層における、ケイ素原子の濃度dSiと酸素原子の濃度dOと炭素原子の濃度dCの合計
(dSi+dO+dC)に対するケイ素原子の濃度(dSi/[dSi+dO+dC])が、2.5原子%以上である請求項1または2に記載のトナー
の製造方法。
【請求項4】
前記コア粒子は、0.15≦(Qi-Qh)/Qi≦0.90の関係を満たす請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー
の製造方法。
【請求項5】
前記無機酸化物微粒子のコア粒子表面に対する被覆率が3%以上30%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー
の製造方法。
【請求項6】
前記無機酸化物微粒子の一次粒子の個数平均粒径が、7nm以上55nm以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のトナー
の製造方法。
【請求項7】
前記無機酸化物微粒子が、チタン酸ストロンチウム微粒子である請求項1~6のいずれか1項に記載のトナー
の製造方法。
【請求項8】
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含有する請求項1~7のいずれか1項に記載のトナー
の製造方法。
【請求項9】
前記ワックスが炭化水素ワックスである請求項1~8のいずれか1項に記載のトナー
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナー及びトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及しており、省エネルギー対応・高生産性への要求が高まっている。また、近年ではオフセット印刷に迫る高画質化も求められるなど、それらを実現する高品質なトナーの技術開発が求められている。
省エネルギー化に対応するため、定着工程においてはトナーを低温でより素早く溶融させる技術が検討されている。トナーの低温定着性を向上させるために、トナーの結着樹脂のガラス転移点や軟化点を下げ、かつシャープメルト性を有する結着樹脂を用いる方法がある。近年、さらにシャープメルト性を有する樹脂として、結晶性ポリエステルを含有させたトナーが多く提案されている。
また、高生産性に対しては、電源ON直後、1つのジョブ中や、ジョブ間における各種制御の時間を短縮させるために様々なトナーの検討がなされている。例えば、高温高湿環境に放置されても帯電性の低下しないトナーや、高温においてもトナーが定着部材に巻き付かない定着可能温度の広いトナーを作製する検討が進められている。
高温でもトナーが定着部材に巻き付かないトナーとして、例えば特許文献1では、2種のポリエステル樹脂を含有し、トナー表面からトナー中心部に向かうトナーの深さ方向におけるワックスの偏在度合いが制御されていることを特徴とするトナーが提案されている。特許文献1のトナーは、トナー粒子表面近傍に存在するワックス量が多いために定着時に効果的にワックスが染み出し離型性を高め耐定着巻き付き性を良化させることができている。しかしながら、本発明者の検討では、印字比率の低い画像を長期出力すると画像の粒状感が増大し、高品位な画像を得られにくいことがあることがわかった。
画像の粒状感は、トナー粒子と転写部材との付着力が増大し、転写均一性が低減してしまうことが主な要因であることがわかってきており、それを低減させる技術が検討されている。例えば、部材との付着力を低減させる提案として、無機微粒子の外添剤でトナー粒子を高い被覆率で被覆し、微粒子のスペーサ効果で付着力を低減すること、コア粒子よりも付着力の低いシェルでコア粒子を被覆する検討が行われている。例えば特許文献2では、特定の構造を有する有機ケイ素重合体を含有する被覆層を有するトナー粒子を有するトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-83749号公報
【文献】特開2016-21041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、耐定着巻き付き性を有しつつ、転写部材との付着力が低減でき、粒状感の少ない高品位な画像を得られるトナーの検討を進めてきた。その結果、特許文献1に記載のようなトナー粒子表面近傍にワックスが多く存在するようなコア粒子と、有機ケイ素重合体との密着性が低いことがわかってきた。コア粒子から脱離した有機ケイ素重合体は電子写真の現像工程で感光体表面へと移行し、さらに一部はクリーニング工程においてクリーニングブレードをすり抜ける。これは低湿環境であるとその傾向がより顕著である。その結果、有機ケイ素重合体によるすり抜けの多い部位と少ない部位とで次の帯電工程において潜像電位の違いを引き起こすため、画像濃度の違いとなって現れてしまうことがある(以下、外添剤ゴーストとも称する)。
本発明の目的は、上記の課題を解決したトナーを提供することにある。具体的には、表面近傍にワックスの多いコア粒子に対しても密着性の高い有機ケイ素重合体を含む被覆層を有し、耐定着巻き付き性と帯電安定性、粒状感の少ない高品位な画像を長時間にわたって得られ、かつ外添剤ゴーストを抑制できるトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、結着樹脂とワックスを含有するコア粒子と、該コア粒子表面に無機酸化物微粒子と、該コア粒子を被覆している有機ケイ素重合体を含む被覆層とを有するトナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該コア粒子は、示差走査熱量測定(DSC)によるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQi(J/g)、該コア粒子のヘキサン処理後のDSCによるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQh(J/g)としたとき、以下の関係式を満たし、
0.7≦Qi-Qh≦20.0
該有機ケイ素重合体は、下記式(T3)で表される部分構造を有し、
前記トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、下記式(T3)で表される部分構造のピーク面積の割合[ST3]が、ST3≧0.05の関係を満たし、
R-Si(O1/2)3 (T3)
(式(T3)中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を表す。)
該無機酸化物微粒子が該コア粒子表面に熱固着しており、
該結着樹脂とワックスを含有するコア粒子表面に該無機酸化物微粒子を付着させる工程、
および該無機酸化物微粒子の付着したコア粒子を水系媒体中で分散させる工程、
該無機酸化物微粒子の付着したコア粒子の表面に該有機ケイ素重合体を被覆する工程を含み、
該コア粒子表面に該無機酸化物微粒子を付着させる工程ののちに、該無機酸化物微粒子が付着した該コア粒子を熱風で処理する工程を有することを特徴とするトナーの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のトナーは、表面近傍にワックスの多いコア粒子に対しても密着性の高い有機ケイ素重合体を含む被覆層を有し、耐定着巻き付き性と現像耐久性、粒状感の少ない高品位な画像を長時間にわたって得られ、かつ外添剤ゴーストを抑制できるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】トナーコア粒子表面に無機酸化物微粒子を熱固着させるのに好適な表面処理装置の説明図である。
【
図2】本発明のトナー粒子の
29Si-NMRの測定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0009】
本発明において、「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
【0010】
結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す。
【0011】
本発明のトナーは、結着樹脂とワックスを含有するコア粒子と、、該コア粒子表面に無機酸化物微粒子と、該コア粒子を被覆している有機ケイ素重合体を含む被覆層を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該コア粒子は、示差走査熱量測定(DSC)によるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQi(J/g)、該コア粒子のヘキサン処理後のDSCによるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQh(J/g)としたとき、以下の関係式を満たし、
0.7≦Qi-Qh≦20.0
該有機ケイ素重合体は、下記式(T3)で表される部分構造を有し、
前記トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、下記式(T3)で表される部分構造のピーク面積の割合[ST3]が、ST3≧0.05の関係を満たし、
R-Si(O1/2)3 (T3)
(式(T3)中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を表す。)
該無機酸化物微粒子が該コア粒子表面に熱固着していることを特徴とするトナーである。
【0012】
本発明の効果が発現するメカニズムについて、本発明者らは以下のように考えている。コア粒子表面近傍にワックスが多く存在するコア粒子の表面は疎水性が高くなっている。一方、コア粒子を被覆する本発明の有機ケイ素重合体を有する被覆層は
R-Si(O1/2)3 (T3)
で示される部分構造を有している。この構造中のRは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基であり比較的疎水性を示すものの、親水性のSi-OH基も多量に含有するために被覆層全体としては親水性を示す。そのため、コア粒子と被覆層は極性が大きく異なるために濡れ性が低く密着性が低くなると考えている。
【0013】
本発明のトナー粒子は、コア粒子表面に無機酸化物微粒子が熱固着していることを特徴としている。熱による無機酸化物微粒子の固着はコア粒子表面への無機酸化物微粒子の密着性を向上させ、耐久後においても無機酸化物微粒子の脱離も抑制することができる。また、無機酸化物微粒子は電気陰性度の大きい酸素原子を含んでいる。そのため、疎水性の部位がコア粒子表面近傍に多く存在する疎水性のワックスに固着した無機酸化物微粒子の酸素原子と、有機ケイ素重合体のシラノール部位の親水性を呈するヒドロキシ基とが水素結合のような相互作用により親和性示すため、有機ケイ素重合体とワックスが多く存在するコア粒子とを密着させる作用を示すものと考えられる。
【0014】
本発明のトナー粒子のコア粒子は、示差走査熱量測定(DSC)によるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQi(J/g)、該コア粒子のヘキサン処理後のDSCによるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQh(J/g)としたとき、以下の関係式を満たすことを特徴とする。
0.7≦Qi-Qh≦20.0
【0015】
Qiはコア粒子全体に存在するワックスに由来する吸熱量を示している。一方、Qhはコア粒子をヘキサンで処理することにより、コア粒子表面近傍に存在するワックスをヘキサンに溶解させ除去したのちのコア粒子内部に存在するワックスに由来する吸熱量を示している。そのため、Qi-Qhはコア粒子表面近傍に存在するワックスに由来する吸熱量を示すパラメータであり、Qi-Qhの値が大きいほど、コア粒子表面近傍にワックスが多く存在することで、定着工程において素早くワックスが溶融し高い離型効果を発揮することができる。Qi-Qhが上記の範囲にあると、高い耐定着巻き付き性と耐久後の非画像粒状性とを両立することができる。Qi-Qhが20.0を超えると、耐久後の非画像粒状性が悪化する。好ましくは0.7以上10.0以下であり、より好ましくは1.0以上7.0以下であり、さらに好ましくは1.8以上5.0以下である。
【0016】
また、本発明のトナー粒子の示差走査熱量測定(DSC)によるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQit、ヘキサン処理後のDSCによるワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQht(J/g)としたとき、以下の関係式を満たすことを特徴とする。
0.8≦Qit-Qht≦21.0
【0017】
Qit-Qhtが上記の範囲にあると、高い耐定着巻き付き性と耐久後の非画像粒状性とを両立することができる。
【0018】
また、本発明のトナー粒子のコア粒子は、(Qi-Qh)/Qiの値が0.05以上0.90以下の範囲にあることが好ましい。(Qi-Qh)/Qiは、コア粒子中に存在する表面近傍のワックスの割合を示すパラメータであり、この値が高いと、コア粒子内部よりも表面近傍にワックスが多く存在することを示している。(Qi-Qh)/Qiの値が前記範囲内であると、高い耐定着巻き付き性と耐久後の外添剤ゴースト抑制効果や非画像粒状性を高いレベルで両立することができる。
【0019】
本発明のトナー粒子は、(Qit-Qht)/Qitの値が0.06以上0.95以下の範囲にあることが好ましく、より好ましい範囲は0.09以上0.85以下であり、さらに好ましくは0.15以上0.70以下である。さらに好ましくは0.21以上0.42以下である。
【0020】
Qiの好ましい範囲としては、Qi-Qhや(Qi-Qh)/Qiの範囲を前記範囲に制御しやすい観点で、3.0以上40.0以下が好ましい。より好ましくは3.0以上30.0以下であり、さらに好ましくは5.0以上15.0以下が好ましい。
【0021】
Qiは、ワックスの種類、添加量などにより制御することができる。
【0022】
Qi-Qhは、ワックスの種類、添加量に加え、コア粒子の製造方法により制御することが可能である。コア粒子の製造方法としては、溶解懸濁法・乳化凝集法・懸濁重合法などのように水中でトナー粒子を形成する場合、コア粒子表面には親水性の材料が集まりやすく、疎水性であるワックスはトナー粒子内部に偏在しやすい。そのため、溶融混練ののち、粉砕法によってコア粒子を形成することが好ましい。さらに、
図1で示す装置(詳細は後述)を用い、熱風で処理したコア粒子を使用すると熱風処理によりワックスが表面に偏在し、Qi-Qhを前記範囲に制御することが容易であるため特に好ましい。Qi-Qhは、熱風の温度、熱風の流量、コア粒子の時間当たりの処理量などにより制御することが可能である。また、ワックス分散剤を用いると、熱風によるワックスの移動速度が変化するため、Qi-Qhの値を変化させることが可能である。
【0023】
本発明のトナー粒子は、コア粒子を被覆している有機ケイ素重合体を含む被覆層を有しており、前記有機ケイ素重合体は、下記式(T3)で表される部分構造を有し、
前記トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、下記式(T3)で表される部分構造のピーク面積の割合[ST3]が、ST3≧0.05の関係を満たすことを特徴とする。
R-Si(O1/2)3 (T3)
(式(T3)中、Rは炭素数が1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を表す。)
【0024】
本発明のトナー粒子はTHF不溶分の29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、上記式(T3)で表される部分構造(以下、T3構造とも称する。)のピーク面積の割合[ST3]が、ST3≧0.05の関係を満たすことで、トナー粒子の表面の表面自由エネルギーを低くすることができるため、転写部材との付着力を低減させることができ、画像の粒状感の小さい良好な画像を得ることができる。ST3が0.05未満であると、画像の粒状性が悪化する。より好ましいST3の範囲は、0.50以上0.80以下である。
【0025】
なお、上記T単位構造の割合は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体の製造における反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
【0026】
本発明のトナー粒子は、コア粒子表面に無機酸化物微粒子が熱固着していることを特徴とし、無機酸化物微粒子は、前述したように表面近傍にワックスが多く存在するコア粒子と、コア粒子を被覆する有機ケイ素重合体との密着性を向上させるために必須である。
【0027】
無機酸化物微粒子は、電気陰性度の大きい酸素原子を含んでおり、このような無機酸化物微粒子としては、以下のものが挙げられる。シリカ微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化チタン微粒子、酸化マグネシウム微粒子、酸化錫微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化セリウム微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、チタン酸マグネシウム微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子、チタン酸カルシウム微粒子、ジルコン酸ストロンチウム微粒子、ジルコン酸カルシウム微粒子、およびこれら組成の複合物。好ましい無機酸化物微粒子としては、シリカ微粒子または酸化チタン微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子であり、より好ましくはチタン酸ストロンチウム微粒子である。
【0028】
前記無機酸化物微粒子は、一次粒子の個数平均粒径(D1)が7nm以上300nm以下であると好ましい。より好ましくは7nm以上55nm以下であり、更に好ましくは30nm以上50nm以下である。D1が上記範囲内であると熱風処理により無機酸化物微粒子がコア粒子に完全に埋没せず、有機ケイ素重合体との密着性が向上し、ゴースト発生が抑制されるとともに帯電性も良化するために好ましい。
【0029】
前記無機酸化物微粒子は、該無機酸化物微粒子のコア粒子表面に対する被覆率が1%以上50%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以上30%以下であり、更に好ましくは10%以上20%以下である。被覆率が上記範囲内にあることで、無機酸化物微粒子と有機ケイ素重合体との密着性が向上し、ゴースト発生を抑制するとともに分離性が良化する。被覆率は無機酸化物微粒子の添加量や粒径、外添条件、後述する熱処理条件等により制御することができる。
【0030】
また、コア粒子表面に熱固着させる無機酸化物微粒子は前述の微粒子から2種類を選択して併用することが望ましい。前述した無機酸化物微粒子を2種選択して使用することにより、密着性の向上だけでなく定着分離性や帯電安定性を両立させることができる。
【0031】
上記の無機酸化物微粒子はコア粒子表面の一部に埋め込まれる形で熱固着させることが好ましく、後述する熱処理装置によって熱固着できる。熱固着させる方法としては、無機酸化物微粒子をトナー粒子と低温で混合した後に熱風で表面処理する方法が無機酸化物微粒子を均一に固着できるので好ましい。なお、無機微粒子を熱固着させた場合は、前述のコア粒子表面に対する被覆率は熱固着後の被覆率を指すものとする。
【0032】
無機酸化物微粒子がトナー粒子の表面に埋め込まれている状態は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM;S-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて80,000倍に拡大してトナー粒子の表面輪郭部を観察することによって確認できる。FEはField Emission(電界放射型)を意味する。
【0033】
<有機ケイ素重合体>
本発明に用いられる有機ケイ素重合体の代表的な製造例としては、ゾルゲル法と呼ばれる製造方法が挙げられる。
【0034】
ゾルゲル法は、金属アルコキシドM(OR)n(M:金属、O:酸素、R:炭化水素、n:金属の価数)を出発原料に用いて、溶媒中で加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経て、ゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機-無機ハイブリット、ナノコンポジットの合成に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子といった種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することができる。
【0035】
トナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解及び縮重合によって生成されることが好ましい。
【0036】
また、有機ケイ素重合体を含有する表層がトナーの粒子の表面に均一に設けられていることが好ましい態様の1つである。有機ケイ素重合体を含む表層がトナーの粒子の表面に均一に設けられていることによって、転写部材との付着力を低減させることができ、画像の粒状感の小さい良好な画像となるトナーを得ることができる。
【0037】
さらに、ゾルゲル法は、溶液から出発し、その溶液をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることができる。
【0038】
上記微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機ケイ素化合物の種類及び添加量などによって調整することができる。
【0039】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を重合させて得られる有機ケイ素重合体であることが好ましい。
【0040】
【0041】
R1は、炭素数1以上6以下の炭化水素基、又は、アリール基を表す。R1における炭化水素基は、アリール基以外の炭化水素基である。R1が炭化水素基又はアリール基であることで、得られる有機ケイ素重合体の疎水性を向上させることが可能となり、環境安定性に優れたトナーを得ることができる。R1の疎水性が大きい場合、様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みて、R1は炭素数1以上3以下であることが好ましい。炭素数1以上3以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく例示でき、アリール基としては、フェニル基が好ましく例示できる。この場合、帯電性及びカブリ抑制が良好となる。より好ましくは、環境安定性と保存安定性の観点から、R1はメチル基である。
【0042】
R2~R4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基であり(以下「反応基」ともいう。)、これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合させて架橋構造を形成し、耐部材汚染及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点からメトキシ基やエトキシ基が好ましい。また、R2~R4の加水分解、付加重合及び縮合重合は反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
【0043】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR1を除く一分子中に3つの反応基(R2、R3及びR4)を有する有機ケイ素化合物(以下「三官能性シラン」ともいう。)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
【0044】
また、本発明において、有機ケイ素重合体の含有量は、トナー粒子中に0.5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.75質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
上記式(Z)としては以下のものが挙げられる。
【0046】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のメチルシラン。
【0047】
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のシラン。
【0048】
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
【0049】
ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメトキシジクロロシラン、ビニルエトキシジクロロシラン、ビニルジメトキシクロロシラン、ビニルメトキシエトキシクロロシラン、ビニルジエトキシクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルジアセトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、ビニルアセトキシメトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジエトキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルメトキシジヒドロキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン。
【0050】
アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のアリルシラン。
【0051】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体において、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の含有量は、有機ケイ素重合体中に50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは60モル%以上である。式(Z)を満たす有機ケイ素化合物の含有量を50モル%以上とすることによって、さらにトナーの環境安定性を向上させることができる。
【0052】
また、本発明において、本発明の効果を損なわない程度に、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に3つの反応基を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。併用してもよい有機ケイ素化合物としては以下のようなものが挙げられる。
【0053】
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン。
【0054】
本発明のトナーは、トナー粒子の表層(表面層、最表層)のX線光電子分光分析(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いた測定において、トナー粒子の表層における、炭素原子の濃度dCと酸素原子の濃度dOとケイ素原子の濃度dSiと硫黄原子の濃度dSの合計(dC+dO+dSi+dS)に対するケイ素原子の濃度dSi(dSi/[dC+dO+dSi+dS])が、1.0原子%以上であることが好ましく、2.5原子%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは5.0原子%以上であり、特に好ましくは15.0原子%以上である。
【0055】
上記ESCAは、トナー粒子の表面からトナー粒子の中心(長軸の中点)に数nmの厚さで存在する表層の元素分析を行うものである。このトナー粒子の表層におけるケイ素原子の濃度(dSi/[dC+dO+dSi+dS])が1.0原子%以上であることで、表層の表面自由エネルギーを小さくすることができる。その結果、トナー粒子表面への汚染等を抑制し、帯電安定性をさらに向上させることができる。
【0056】
一方、前記トナー粒子の表層におけるケイ素原子の濃度(dSi/[dC+dO+dSi+dS])は、帯電性の観点より、33.3原子%以下であることが好ましく、より好ましくは28.6原子%以下である。
【0057】
前記トナー粒子の表層におけるケイ素原子の濃度は、上記式(T3)中のRfの構造、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体の含有量によっても制御することができる。なお、本発明においてトナー粒子の表層とはトナー粒子の表面からトナー粒子の中心(長軸の中点)に向かって0.0nm以上5.0nm以下の厚さで存在する層を意味する。
【0058】
<結着樹脂>
本発明におけるコア粒子は、結着樹脂として、下記の重合体などを用いることが可能である。ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。その中でも、非晶性樹脂が好ましく、非晶性ポリエステル樹脂を主成分としていることが、低温定着性の観点からさらに好ましい。また、無機酸化物微粒子をコア粒子表面に固着させるためにはスチレンアクリル樹脂を結着樹脂とするトナーよりも、ポリエステル樹脂を結着樹脂とするトナーの方が該無機酸化物微粒子の固着が発生しやすいため好ましい。
【0059】
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価もしくは3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価もしくは3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが用いられる。ここで、「歪み硬化性」を発現させるため、分岐ポリマーを作製するためには、非晶性樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多官能化合物を使用することが好ましい。従って、ポリエステルユニットの原料モノマーとして、3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含むことが好ましい。
【0060】
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価アルコールモノマーとしては、以下の多価アルコールモノマーを使用することができる。
【0061】
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
【0062】
【化2】
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
【0063】
式(B)で示されるジオール類;
【0064】
【0065】
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価カルボン酸モノマーとしては、以下の多価カルボン酸モノマーを使用することができる。
【0066】
2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
【0067】
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、特に1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
【0068】
本発明のポリエステルユニットの製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述のアルコールモノマー及びカルボン酸モノマーを同時に仕込み、エステル化反応またはエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。また、重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステルユニットの重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。
【0069】
また、ポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、水酸基価は20mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であることが、帯電安定性の観点から好ましい。
【0070】
また、結着樹脂は、低分子量の樹脂と高分子量の樹脂を混ぜ合わせて使用しても良い。高分子量の樹脂と低分子量の樹脂の含有比率は質量基準で40/60以上85/15以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
【0071】
また、コア粒子に結晶性を有する樹脂を含有すると、低温定着性がさらに向上するため好ましい。
【0072】
結晶性を有する樹脂の例としては、結晶性ポリエステル、結晶性ビニル樹脂、結晶性ポリウレタン、結晶性ポリウレアが挙げられる。好ましくは結晶性ポリエステル、結晶性ビニル樹脂が用いられる。
【0073】
前記結晶性ポリエステルは、脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸とを主成分として含む単量体組成物を重縮合反応させることにより得られる。脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸は、炭素数が6以上12以下であることが好ましい。
【0074】
脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタジエングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコールネオペンチルグリコールが挙げられる。これらの中でも、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールの如き直鎖脂肪族、α,ω-ジオールが好ましく例示される。上記アルコール成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールから選ばれるアルコールであることが好ましい。
【0075】
また、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体としては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等の芳香族アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体としては、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0076】
さらに、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のアルコ-ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えばn-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、ラウリルアルコール、2-エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の1官能性アルコールなどが挙げられる。
【0077】
一方、脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。具体例としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
【0078】
上記カルボン酸成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から選ばれるカルボン酸であることが好ましい。
【0079】
また、脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。その他の多価カルボン酸単量体のうち、2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルなども含まれる。また、その他のカルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステル等の誘導体等も含まれる。
【0080】
さらに、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。
【0081】
本発明における結晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコ-ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで所望の結晶性ポリエステルを得ることができる。
【0082】
上記エステル化またはエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行うことができる。
【0083】
また、上記重縮合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
【0084】
エステル化もしくはエステル交換反応または重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステルの強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたりしてもよい。また低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりする等の方法を用いてもよい。
【0085】
結晶性ビニル樹脂としては例えば、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである重合性単量体に由来するユニットを有する重合体を含有する樹脂が挙げられる。
【0086】
炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18以上36以下の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコサ、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドドリアコンタ等]及び炭素数18以上36以下の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル等]が挙げられる。
【0087】
これらの内、トナーの保存安定性の観点から好ましくは炭素数18以上36以下の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましいのは炭素数18以上30以下の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、更に好ましいのは直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルである。
【0088】
また、該重合体中の炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである重合性単量体に由来するユニットの割合が、該重合体中の全ユニットの総モル数に対して10.0モル%以上60.0モル%以下であることが好ましい。
【0089】
これら結晶性を有する樹脂は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下含有することが好ましい。
【0090】
水分吸着を抑制する観点から、結晶性を有する樹脂の酸価は2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0091】
また、後述するワックスのコア粒子中での存在状態を制御し、本発明のQi-Qhの範囲にワックスの存在状態を制御する目的で、コア粒子中にワックス分散剤を含有することが好ましい。
【0092】
ワックス分散剤としては、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト変性された重合体を用いることが好ましい。
【0093】
該ポリオレフィンは、特に限定されることはないが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックスなどが挙げられる。
【0094】
該ポリオレフィンは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大吸熱ピークのピーク温度が70℃以上100℃以下であることが好ましい。また、ワックス分散性の観点から、ワックスと該ポリオレフィンの示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大吸熱ピークのピーク温度の差が0℃以上20℃以下であることが好ましい。
【0095】
上記スチレンアクリル系ポリマーのモノマーユニットを構成するモノマーとしては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンなどのスチレン及びその誘導体などのスチレン系モノマー;メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有α-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体などのN原子を含むビニル系モノマー;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸などの不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物などの不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルなどの不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸などの不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸などのα,β-不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物などのα,β-不飽和酸無水物、前記α,β-不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物、及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を含むビニル系モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4-(1-ヒドロキシ-1-メチルブチル)スチレン、4-(1-ヒドロキシ-1-メチルヘキシル)スチレンなどの水酸基を含むビニル系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸-2-クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類などのメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0096】
また、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するビニル系モノマーを含有してもよい。
【0097】
飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するビニル系モノマーを含有すると、帯電安藝正がより向上するため好ましい。飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するビニル系モノマーとしては、シクロプロピルアクリレート、シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、ジヒドロシクロペンタジエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートなどのモノマー及びこれらの併用が挙げられる。
【0098】
これらの中でも、疎水性の観点から、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレートが好ましい。
【0099】
なお、本発明において、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーをグラフト変性する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0100】
本発明において、重合体のTHF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が5000以上70000以下であることが好ましく、10000以上50000以下であることがより好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)が上記範囲である場合、トナー粒子中におけるワックスの分散性が向上すると同時に耐ブロッキング性、耐ホットオフセット性が向上する。
【0101】
また、該重合体は、該結着樹脂100質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部以下含有されることが好ましい。
【0102】
<ワックス>
本発明のコア粒子に用いられるワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
【0103】
これらのワックスの中でも、低温定着性、定着分離性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス、もしくはカルナバワックスの如き脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明において、コア粒子の結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用する際、耐定着分離性がさらに向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
【0104】
本発明では、ワックスは、結着樹脂100質量部あたり2質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。
【0105】
また、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時の吸熱曲線において、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度としては45℃以上140℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは70℃以上110℃以下であり、さらに好ましくは85℃以上110℃以下である。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内であるとトナーの保存性と耐ホットオフセット性を両立しやすいため好ましい。
【0106】
<着色剤>
トナーには着色剤を用いてもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0107】
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0108】
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
【0109】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0110】
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
【0111】
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
【0112】
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
【0113】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
【0114】
<荷電制御剤>
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
【0115】
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
【0116】
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0117】
<無機微粒子>
本発明のトナー粒子には、コア粒子表面に固着している本発明の無機酸化物微粒子とは別に、必要に応じて無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよく外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの無機微粒子(無機微粉体)が好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物などの疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
【0118】
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m2/g以上400m2/g以下の無機微粒子が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粒子であることが好ましい。トナーの流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲内の無機微粒子を併用してもよい。
【0119】
外添剤としては、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーなどの公知の混合機を用いることができる。
【0120】
<現像剤>
トナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが、長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。すなわち、トナー及び磁性キャリアを含有する二成分系現像剤であって、該トナーが本発明のトナーであることが好ましい。
【0121】
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、あるいは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
【0122】
トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、好ましくは2質量%以上15質量%以下、より好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
【0123】
[トナー粒子の製造方法]
<コア粒子の製造>
本発明のトナー粒子のコア粒子を製造する方法としては、ワックスをコア粒子表面近傍に存在させやすい点で粉砕法が好ましい。乳化凝集法や溶解懸濁法、懸濁重合法等の水中でコア粒子を作製する製造方法を用いた場合、疎水性の高いワックスはコア粒子内部に偏在し、本発明のQi-Qhの範囲にワックスの存在状態を制御することは困難である。
【0124】
以下、粉砕法でのトナー製造手順の一例について説明する。
【0125】
原料混合工程では、コア粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂、ワックス、着色剤、及び必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0126】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中にワックス等を分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーなどのバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工社製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0127】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルなどの粉砕機で粗粉砕した後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
【0128】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)などの分級機や篩分機を用いて分級し、分級品(コア粒子)を得る。中でも、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)は、分級と同時にコア粒子の球形化処理を行うことができ、転写効率の向上という点で好ましい。
【0129】
<無機酸化物微粒子の付着・熱固着工程>
本発明の無機酸化物微粒子をコア粒子の表面に熱固着させる方法について説明する。
【0130】
熱風を用いてトナーの表面へ無機酸化物微粒子を固着する方法では、まずコア粒子表面への無機酸化物微粒子の外添処理を行い、コア粒子に無機酸化物微粒子を付着させる。外添処理する方法としては、トナー粒子と無機酸化物微粒子を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
【0131】
続いて、無機酸化物微粒子が付着したコア粒子を熱処理工程で
図1のような熱処理装置を用いて熱処理を行う。この熱処理により表面近傍のワックスがさらに増加し、本発明のQi-Qh、(Qi-Qh)/Qiの範囲にワックスの存在状態を制御することが大変容易となる。その結果、耐定着巻き付き性が向上する。
【0132】
原料定量供給手段1により定量供給された混合物(無機酸化物微粒子が付着したコア粒子)は、圧縮気体調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
【0133】
図1において、原料定量供給手段1により定量供給された混合物は、圧縮気体調整手段2により調整された圧縮気体によって、処理室6の中心軸上に設置された導入管3に導かれる。導入管を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ、粉体粒子供給口14から、熱処理が行われる処理室6に導かれる。
【0134】
このとき、処理室6に供給された混合物は、処理室6内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室6に供給された混合物は、処理室6内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
【0135】
供給された混合物を熱処理するための熱風は、熱風供給手段7の熱風入口部7から供給され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。このとき、略円錐状の分配部材12により、旋回される熱風の偏りを少なくすることができる。
【0136】
処理室6内に供給される熱風は、熱風供給手段7の熱風出口部11における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましい。熱風供給手段7の熱風出口部11における温度が上記の範囲内であれば、混合物を加熱しすぎることによるコア粒子の融着や合一を防止しつつ、ワックスをコア粒子の表面近傍へ移動させることが可能となり、耐定着巻き付き性性が向上する。さらに好ましくは、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度より20℃以上高い温度であることが好ましい。
【0137】
さらに、無機酸化物微粒子が熱固着された熱処理コア粒子は冷風供給手段8(8-1、8-2、8-3)から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段8から供給される冷風の温度は-20℃以上30℃以下であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理コア粒子を効率的に冷却することができ、混合物の均一な球形化処理を阻害することなく、熱処理コア粒子の融着や合一を防止することができる。冷風の絶対水分量は、0.5g/m3以上15.0g/m3以下であることが好ましい。
【0138】
次に、冷却された熱処理コア粒子は、処理室6の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段10の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
【0139】
また、粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室6の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室6内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体粒子供給口14から供給されるトナーの旋回方向、冷風供給手段8から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段7から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室6内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、コア粒子に強力な遠心力がかかり、コア粒子の分散性がさらに向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃ったコア粒子を得ることができる。
【0140】
<有機ケイ素重合体の被覆工程>
次に、得られたコア粒子を本発明の有機ケイ素重合体により被覆し本発明のトナー粒子を得る。
【0141】
有機ケイ素重合体をコア粒子の表層に含有させる具体的態様について説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0142】
まず、得られたコア粒子を水系媒体中で分散させる。コア粒子の水系媒体中での分散安定剤として以下のものを使用することができる。
【0143】
無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
【0144】
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
【0145】
さらに公知のノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤を使用することもできる。
【0146】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノラウレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0147】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩や、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩や、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩等が挙げられる。
【0148】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンオニウムブロマイド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0149】
これらの分散安定剤の中でもノニオン系であると分散がより容易なので好ましい。
【0150】
有機ケイ素重合体形成後に分散安定剤を除去しやすいという観点で、無機分散安定剤を用いることが好ましく、さらに難水溶性無機分散安定剤を用いることがさらに好ましい。
【0151】
本発明において、難水溶性無機分散安定剤を用い、水系媒体にコア粒子を分散させる場合に、これらの分散安定剤の添加量はコア粒子100.0質量部に対して、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。また、コア粒子100質量部に対して300質量部以上3,000質量部以下の水を用いてコア粒子分散媒体を調製することが好ましい。
【0152】
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤を得るためには、水のような液媒体中で、高速撹拌下、難水溶性無機分散剤を生成させてもよい。具体的には、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。さらには、リン酸三カルシウムの分散安定剤を用いることが、有機ケイ素重合体の被覆層の形状安定性・製造安定性の観点から好ましい。この理由は、リン酸三カルシウムの結晶構造に由来する。リン酸三カルシウムは、カルシウムイオンを中心に、リン酸イオンが周辺に配列する六方晶の結晶構造を組む。そのため、コア粒子表面には、カルシウムイオンが水系媒体に配向しやすくなり、水系媒体中の有機ケイ素化合物の加水分解した部分であるシラノール基と電気的吸引力が高まり、有機ケイ素重合体の被覆層を形成しやすくなる。
【0153】
縮合工程のpHは、任意の条件で行うことができるが、有機ケイ素化合物の縮合は、水系媒体のpHに影響する。そのため、水系媒体のpHを制御することで、本発明の効果をより高めることが可能である。
【0154】
酸性条件下では、アルコキシ基の加水分解はプロトンを触媒として求電子的に進むため、分子内のアルコキシ基の加水分解は逐次的に進行する。よって、シラノール基が有機ケイ素化合物の縮合体中に残りやすく、疎水化が進みにくい。また、3次元的な縮合反応が起こりにくく、分子量も上がりにくい。一方、塩基性条件下では、アルコキシ基の加水分解は水酸化物イオンを触媒として求核的に進むため、分子内のアルコキシ基の加水分解は一斉に進行する。よって、シラノール基が有機ケイ素化合物の縮合体中に残りにくく、疎水化が進みやすい。また、3次元的な縮合反応が起こりやすく、分子量が上がりやすい。その結果、水系媒体中で大きな有機ケイ素重合体粒子を形成することができる。
【0155】
そして、有機ケイ素重合体の疎水性が高くなると、水系媒体中での安定性が低くなり、コア粒子に移行しやすくなる。その結果、得られたトナー粒子の表面は凹凸が形成できるため、塩基性条件下で縮合工程を行うことが好ましい。また、塩基性条件下で縮合工程を行う場合、有機ケイ素重合体の分子量が高くなりやすいため、水系媒体に溶解する有機ケイ素化合物の量を低減することが可能となる。よって、排水中の有機ケイ素化合物を減らすことが可能となり、排水処理負荷低減の観点からも好ましい。
【0156】
具体的には、縮合工程における水系媒体のpHは7.5以上12.0以下が好ましく、8.0以上11.0以下がより好ましい。縮合工程のpHは公知の酸又は塩基で制御することができる。
【0157】
pHを調整する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過マンガン酸、チオシアン酸、ホスホン酸、リン酸、二リン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、トリポリリン酸等の無機酸や、アスパラギン酸、、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過マンガン酸、チオシアン酸、ホスホン酸、リン酸、二リン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、トリポリリン酸等の無機酸や、アスパラギン酸、o-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、イソニコチン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、2-グリセリン酸、グルタミン酸、シアノ酢酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸、o-ニトロ安息香酸、ニトロ酢酸、ピクリン酸、ピコリン酸、ピルビン酸、フマル酸、フロオロ酢酸、ブロモ酢酸、o-ブロモ安息香酸、マレイン酸、マロン酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸は特段の制限なく用いることができる。また、これらの酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0158】
pHを調整する塩基としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属やその水溶液、アルカリ金属塩やその水溶液、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属やその水溶液、アルカリ土類金属塩、アンモニア、尿素を含むアミン類などが挙げられる。より具体的には、例えば、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、炭酸リチウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、アンモニア水溶液、尿素等が挙げられる。これらの塩基は特段の制限なく用いることができる。また、これらの塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0159】
さらに、必要に応じて、トナー粒子の表面に無機微粒子などの外添剤が外添処理される。外添処理する方法としては、トナー粒子と公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
【0160】
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
【0161】
<コア粒子中のQi、Qhの測定方法>
コア粒子中のQi、Qhは、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0162】
具体的には、試料約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、示差走査熱量測定を行う。リファレンスとしてはアルミニウム製の空パンを用いる。
測定により得られたワックスに由来する吸熱ピークの積分値(J/g)から吸熱量Qiを求めることができる。
【0163】
ワックスに由来する吸熱ピークが他の原材料(たとえば結晶性樹脂)の吸熱ピークと重なっていない場合には、得られた吸熱ピークの吸熱量をそのままワックスに由来する最大吸熱ピークの吸熱量として扱う。ワックスの吸熱ピークが他の原材料(たとえば結晶性樹脂)吸熱ピークと重なっている場合は、得られた吸熱ピークの吸熱量から他の原材料に由来する吸熱量を差し引く必要がある。
【0164】
他の原材料に由来する吸熱量は、以下のようにして求めることができる。コア粒子をヘキサン溶媒でソックスレー抽出することでコア粒子中のワックスをヘキサンに溶解させる。ヘキサンを抽出した残りのトナー粒子について同様にDSC測定を行い吸熱ピークの吸熱量を測定することで求めることができる。
【0165】
Qhはコア粒子をヘキサン処理したのちにDSC測定することで求める。コア粒子100mgを秤量し、ヘキサン30mLを添加する。5秒間振とうさせたのちに吸引ろ過し、フィルター上のヘキサン処理粒子を減圧下で2時間乾燥させたのちに回収し、同様にDSC測定を行う。このようにして得られたワックスに由来する吸熱ピークの吸熱量をQh(J/g)とする。
【0166】
本発明のコア粒子のように熱風処理を行い表面近傍にワックスが多く存在するコア粒子の場合、表面の疎水性が高くヘキサン添加時にコア粒子がヘキサン中に分散しやすい。一方、水系媒体中で重合または凝集させて形成されたコア粒子や、粉砕法であっても熱風処理がないか不十分なコア粒子はヘキサンへの濡れ性が極めて低いためヘキサン中でコア粒子が分散せず凝集してしまうことがある。その場合、凝集してしまったコア粒子を吸引ろ過により回収したのちにDSC測定によりQhを求める。
【0167】
このようにして求めたQiとQhからQi-Qh、(Qi-Qh)/Qiを算出する。
なお、トナー粒子に対しても、上記と同様の方法によってQi-Qh、(Qi-Qh)/Qiを求めることができる。
【0168】
<式(T3)で表される部分構造の確認方法>
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(T3)で表される部分構造の確認には以下の方法を用いる。
【0169】
式(T3)のRで表されるアルキル基、フェニル基、アルキルアミノ基の有無は、13C-NMRにより確認した。また、式(T3)の詳細な構造は1H-NMR、13C-NMR及び29Si-NMRにより確認した。使用した装置及び測定条件を以下に示す。
【0170】
(測定条件)
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mm
のサンプルチューブに入れた。
【0171】
当該方法にて、式(T3)のRで表されるアルキル基、フェニル基、アルキルアミノ基の有無を確認した。シグナルが確認できたら、式(T3)の構造は“あり”とした。
【0172】
(13C-NMR(固体)の測定条件)
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
【0173】
(29Si-NMR(固体)の測定方法)
(測定条件)
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mm
のサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
29Si 90° パルス幅:4.00μs@-1dB
コンタクト時間:1.75ms~10ms
繰り返し時間:30s(DD/MAS)、10s(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
【0174】
<トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(T3)で表される部分構造(T3構造)及びケイ素に結合するO1/2の数が2.0である構造(SX2構造)の割合の算出方法>
<T3構造、X1構造、X2構造、X3構造、X4構造の確認及び定量方法>
T3、X1、X2、X3及びX4の部分構造は、1H-NMR、13C-NMR及び29Si-NMRにより確認できる。
【0175】
トナー粒子のTHF不溶分の29Si-NMR測定後に、トナー粒子における置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて、下記一般式(X4)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が4.0であるX4構造、下記一般式(X3)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が3.0であるX3構造、下記式(X2)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が2.0であるX2構造、下記式(X1)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が1.0であるX1構造、式(T3)で表わされるT単位構造にピーク分離して、各ピークの面積比から各成分のモル%を算出する。
【0176】
【化4】
(式(X1)中のRi、Rj、Rkはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
【0177】
【化5】
(式(X2)中のRg、Rhはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
【0178】
【化6】
(式(X3)中のRfはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
【0179】
【0180】
カーブフィティングは日本電子(株)製のJNM-EX400用ソフトのEXcalibur for Windows(商品名) version 4.2(EX series)を用いる。メニューアイコンから「1D Pro」をクリックして測定データを読み込む。次に、メニューバーの「Command」から「Curve fitting function」を選択し、カーブフィティングを行う。その一例を
図2に示す。合成ピーク(b)と測定結果(d)の差分である合成ピーク差分(a)のピークが最も小さくなるようにピーク分割を行う。
【0181】
X1構造の面積、X2構造の面積、X3構造の面積、X4構造の面積を求めて以下の式によりSX1、SX2、SX3、SX4を求める。
【0182】
本発明では化学シフト値でシランモノマーを特定して、トナー粒子の29Si-NMRの測定において全ピーク面積からモノマー成分を取り除いたX1構造の面積とX2構造の面積とX3構造の面積とX4構造の面積の合計を有機ケイ素重合体の全ピーク面積とした。
SX1+SX2+SX3+SX4=1.00
SX1={X1構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX2={X2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX3={X3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX4={X4構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
ST3={T3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
【0183】
X1構造、X2構造、X3構造及びX4構造におけるケイ素の化学シフト値を以下に示す。
X1構造の一例(Ri=Rj=-OC2H5、Rk=-CH3):-47ppm
X2構造の一例(Rg=-OC2H5、Rh=-CH3):-56ppm
X3構造の一例(Rf=-CH3):-65ppm
【0184】
また、X4構造がある場合のケイ素の化学シフト値を以下に示す。
X4構造:-108ppm
【0185】
<トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体の分離方法>
トナー粒子から有機ケイ素重合体のTHF不溶分を得るためには、まず、強酸でトナー粒子を溶出させ、有機ケイ素重合体を残存・乾固させたのちに、THFを添加し、THF不溶分を得る。
【0186】
<トナー粒子表面に存在するケイ素元素の濃度の測定方法>
本発明におけるトナー粒子表面に存在する炭素元素濃度dC、酸素元素濃度dO、ケイ素元素濃度dSiの合計濃度(dC+dO+dSi)に対するケイ素元素の濃度(atomic%は、ESCA(X線光電子分光分析)により表面組成分析を行い算出した。
【0187】
本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:ULVAC-PHI社製 Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件: X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
ラスター:300μm×200μm
PassEnergy:58.70eV StepSize:0.125eV
中和電子銃:20μA、1V Arイオン銃:7mA、10V
Sweep数:Si 15回、C 10回、O 5回
【0188】
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出した。
【0189】
<無機微粉子の一次粒子の個数平均径の測定方法>
無機微粒子の一次粒子の個数平均径の測定は、日立超高分解能電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて行う。
【0190】
測定は、無機微粒子を混合した後のトナーについて行う。
【0191】
撮影倍率は5万倍とし、撮影された写真をさらに2倍に引き伸ばした後、得られたFE-SEM写真像から、無機微粒子の最大径(長軸径)aと最小径(短軸径)bを測定して、(a+b)/2を当該粒子の粒径とする。ランダムに選択した100個の無機微粒子について粒径を計測し算術平均を求め、無機微粉末の一次粒子の個数平均径とする。
【0192】
<無機酸化物微粒子の被覆率の測定方法>
無機酸化物微粒子の被覆率は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM;S-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー粒子の表面画像を、画像解析ソフト(Image-Pro Plus ver.5.0、(株)日本ローパー)により解析して算出する。
【0193】
トナーのコア粒子表面に存在する無機酸化物微粒子を上記SEM装置にて観察する。
【0194】
観察する際はなるべくコア粒子表面が平坦であるような箇所を選ぶことにする。
【0195】
コア粒子表面において無機酸化物微粒子のみを抽出した画像について二値化を行い、コア粒子表面の面積に対する無機酸化物微粒子の占める面積の割合として算出する。同様の操作を10個のコア粒子に対して行い、それらの相加平均値を求める。
【0196】
<樹脂のTHF可溶分の分子量測定>
樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0197】
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
【0198】
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0199】
<結着樹脂の軟化点Tmの測定方法>
結着樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
【0200】
また、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとなるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
【0201】
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
【0202】
CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0203】
<酸価の測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。本発明におけるポリエステル樹脂の酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
【0204】
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
【0205】
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作成されたものを用いる。
【0206】
(2)操作
(A)本試験
粉砕したポリエステル樹脂の試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
【0207】
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0208】
<無機酸化物粒子及び外添剤(無機微粒子)のBET比表面積の測定>
無機微粒子のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行う。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0209】
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行う。本装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続される。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明における無機微粒子のBET比表面積とする。
【0210】
なお、BET比表面積は以下のようにして算出する。
【0211】
まず、無機微粒子に窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)と外添剤の窒素吸着量Va(モル/g)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル/g)を縦軸とした吸着等温線を得る。次いで、外添剤の表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル/g)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1-Pr)=1/(Vm×C)+(C-1)×Pr/(Vm×C)
【0212】
ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。
【0213】
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1-Pr)とすると、傾きが(C-1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる。この直線をBETプロットという。
直線の傾き=(C-1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
【0214】
Prの実測値とPr/Va(1-Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きの値と切片の値が算出できる。これらの値を上記の数式に代入して、得られた連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
【0215】
さらに、ここで算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm2)から、下記の式に基づいて、無機微粒子のBET比表面積S(m2/g)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10-18
【0216】
ここで、Nはアボガドロ数(モル-1)である。
【0217】
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定する。
【0218】
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋の質量を精秤する。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約0.1gの外添剤を入れる。
【0219】
無機微粒子を入れた該試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。尚なお、真空脱気の際には、無機微粒子が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。試料セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。真空脱気終了後、試料セル内に窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋の質量との差から外添剤の正確な質量を算出する。尚なお、この際に、試料セル内の外添剤が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
【0220】
次に、無機微粒子が入った該試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、本装置の分析ポートに試料セルをセットする。なお、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
【0221】
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行う。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を、同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、本装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
【0222】
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入して無機微粒子に窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより前記吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。なお、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、上述したように無機微粒子のBET比表面積を算出する。
【0223】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
【0224】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムを脱イオン水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0225】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
【0226】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0227】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0228】
具体的な測定法は以下の(1)~(7)の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去する。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を脱イオン水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量の脱イオン水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカー内に、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例】
【0229】
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これらは本発明をなんら限定するものではない。以下の処方の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0230】
<チタン酸ストロンチウム微粒子の製造例1>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiO2として1.5モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.5とし解膠処理を行った。
【0231】
脱硫・解膠を行ったメタチタン酸をTiO2として採取し、3Lの反応容器に投入した。該解膠メタチタン酸スラリーに、塩化ストロンチウム水溶液を、SrO/TiO2モル比で1.15となるよう添加した後、TiO2濃度0.8モル/Lに調整した。次に、撹拌混合しながら90℃に加温した後、窒素ガスのマイクロバブリングを600ml/minで行いながら10モル/L水酸化ナトリウム水溶液444mLを45分間かけて添加し、その後、窒素ガスのマイクロバブリングを400ml/minで行いながら95℃で1時間撹拌を行った。
【0232】
その後、当該反応スラリーを反応容器のジャケットに10℃の冷却水を流しながら撹拌して15℃まで急冷し、pH2.0となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した後、固形分に対して5.0質量%のステアリン酸ナトリウムを、水に溶解させた水溶液として添加して2時間撹拌保持を続けた後、塩酸を加えてpH6.5に調整し、1時間撹拌保持を続け、チタン酸ストロンチウムの表面にステアリン酸を析出させた。
【0233】
次いで、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間したのち、凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行ない、チタン酸ストロンチウム微粒子(無機微粒子1)を得た。無機微粒子1は粉末X線回折の測定で、チタン酸ストロンチウムの回折ピークを示した。
【0234】
<チタン酸ストロンチウム微粒子の製造例2~6>
チタン酸ストロンチウム微粒子の製造例1において10モル/L水酸化ナトリウム水溶液の滴下時間を変更したこと以外は同様にして製造を行い、チタン酸ストロンチウム微粒子(無機微粒子2~6)を得た。物性を表1に示す。
【0235】
<シリカ微粒子の製造例>
燃焼炉として、内炎と外炎が形成できる二重管構造の炭化水素-酸素混合型バーナーを用いた。バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料の珪素化合物を導入した。二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスを噴射させ、還元雰囲気である内炎及び外炎を形成させた。
【0236】
可燃性ガスと酸素の量及び流量の制御により、雰囲気と温度、火炎の長さ等を調整した。火炎中において珪素化合物からシリカ微粒子が形成され、さらに所望の粒径になるまで融着させた。その後、冷却後、バグフィルター等により捕集することによってシリカ微粒子を得た。得られたシリカ微粒子100部に、ヘキサメチルジシラザン4部で表面処理を行い、シリカ微粒子(無機微粒子7~10)を得た。物性を表1に示す。
【0237】
<酸化チタン微粒子の製造例>
硫酸チタニル水溶液を熱加水分解して得た含水酸化チタンスラリーをアンモニア水によりpH7に中和し、濾過、水洗して得たケーキを、ケーキの酸化チタンを塩酸で解膠し、アナターゼ型チタニアゾルを得た。このゾルの平均一次粒子径は7nmであった。
【0238】
また、出発原料としてTiO2相当分を50質量%含有しているイルメナイト鉱石を使用し、この原料を150℃で2時間乾燥させた後、硫酸を添加して溶解させることによって、TiOSO4水溶液を得た。これを濃縮し、TiO2相当分100部に対し、上記アナターゼ型チタニアゾル4.0部をシードとして添加した後、120℃で加水分解を行ない、不純物を含有しているTiO(OH)2のスラリーを得た。
【0239】
このスラリーをpH5~6で繰り返し水洗浄を行い、硫酸、FeSO4、不純物を十分に除去した。そして、高純度のメタチタン酸〔TiO(OH)2〕のスラリーを得た。
【0240】
該メタチタン酸を270℃で6時間加熱処理した後、十分に解砕処理を行い、BET比表面積50m2/g、個数平均粒径50nmのアナターゼ型結晶の酸化チタン微粒子を得た。
【0241】
次に、上記のアナターゼ型酸化チタン微粒子に対して5.0質量%のn-オクチルトリエトキシシランを、水に溶解させた水溶液として添加して2時間撹拌保持を続けた後、塩酸を加えてpH6.5に調整し、1時間撹拌保持を続けた。
【0242】
次いで、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間乾燥してチタン微粒子の凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行ない、酸化チタン微粒子(無機微粒子11)を得た。物性を表1に示す。
【0243】
【0244】
<結着樹脂の製造例>
(ポリエステル樹脂の製造例1)
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:
59.0部(0.15モル;多価アルコール総モル数に対して80.0mol%)
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:
13.6部(0.04モル;多価アルコール総モル数に対して20.0mol%)
・テレフタル酸:20.8部(0.13モル;多価カルボン酸総モル数に対して80.0mol%)
・無水トリメリット酸:6.6部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を投入した。そして、モノマー総量100部に対して、触媒として2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒)を1.5部添加した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
【0245】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、そのまま反応させASTM D36-86に従って測定した軟化点が90℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、ポリエステル樹脂Lを得た。得られたポリエステル樹脂Lの軟化点(Tm)は97℃、酸価は7mgKOH/gであった。
【0246】
<非晶性ポリエステルの製造例2>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:73.4部(0.19モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:11.6部(0.07モル;多価カルボン酸総モル数に対して82.0mol%)
・アジピン酸:6.8部(0.05モル;多価カルボン酸総モル数に対して14.0mol%)
・ジ(2-エチルヘキシル酸)スズ:0.8部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量し投入した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
【0247】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:8.2部(0.04モル;多価カルボン酸総モル数に対して6.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度145℃に維持したまま12時間反応させ、温度を下げることで反応を止め(第2反応工程)、非晶性ポリエステル樹脂Hを得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂Hは、軟化点は150℃、酸価は10mg/KOHであった。
【0248】
(ビニル系非晶性樹脂の合成例)
オートクレーブにキシレン50部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で185℃まで昇温した。スチレン97部、n-ブチルアクリレート3部、ジ-t-ブチルパーオキサイド3部、及びキシレン20部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、4時間連続的に滴下し重合させた。更に同温度で1時間保ち重合を完了させ、溶媒を除去し、ビニル系非晶性樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は5000で、軟化点(Tm)は108℃であった。
【0249】
<ワックス分散剤の製造例>
・低分子量ポリプロピレン(融点80℃):
15.0部(0.03モル;構成モノマーの総モル数に対して3.0mol%)
・キシレン:25.0部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に175℃の温度まで昇温した。
・スチレン:
64.5部(0.62モル;構成モノマーの総モル数に対して76.0mol%)
・メタクリル酸シクロヘキシル:
9.6部(0.06モル;構成モノマーの総モル数に対して7.0mol%)
・アクリル酸ブチル:
11.5部(0.09モル;構成モノマーの総モル数に対して11.0mol%)
・メタクリル酸メチル:
2.4部(0.02モル;構成モノマーの総モル数に対して3.0mol%)
・キシレン:10.0部
・ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート:0.5部
その後、上記材料を2.5時間かけて滴下し、さらに40分間撹拌した。次いで、溶剤を留去して、ポリプロピレンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフトしているビニル系樹脂を得た。得られたビニル系樹脂は、ピーク分子量Mp7000、軟化点120℃であった。
【0250】
<結晶性ポリエステルの製造例>
・1,6-ヘキサンジオール: 34.5部
(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸: 65.5部
(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫: 0.5部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、2.5時間反応させた。
【0251】
次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
【0252】
その後、反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステルを得た。得られた結晶性ポリエステルの融点は70℃であった。
【0253】
<コア粒子の製造例1>
・ポリエステル樹脂L 75部
・ポリエステル樹脂H 25部
・結晶性ポリエステル 3部
・ワックス分散剤 3部
・炭化水素ワックス 7部
(フィッシャートロプシュワックス;最大吸熱ピークのピーク温度90℃)
・C.I.ピグメントブルー15:3 5部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業株式会社製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度110℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて吐出温度120℃にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、フロイントターボ(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF-300(ホソカワミクロン社製)を用い、運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とし分級を行い、コア粒子1を得た。
【0254】
<コア粒子の製造例2>
コア粒子の製造例1において、ポリエステル樹脂Lとポリエステル樹脂Hを使用せず、非晶性ビニル樹脂 100部に置き換えた以外はコア粒子の製造例1と同様にして製造を行い、コア粒子2を得た。
【0255】
<コア粒子の製造例3>
コア粒子の製造例1において、炭化水素ワックスをエステルワックス(カルナバワックス;最大吸熱ピークのピーク温度85℃)5部に置き換えた以外はコア粒子の製造例1と同様にして製造を行い、コア粒子3を得た。
【0256】
<コア粒子の製造例4~11>
コア粒子の製造例1において、炭化水素ワックスの部数及び/またはワックス分散剤の部数を表2に記載のものに置き換えた以外はコア粒子の製造例1と同様にして製造を行い、コア粒子4~11を得た。物性を表2に示す。
【0257】
【0258】
<表面に無機酸化物微粒子が付着した熱処理前コア粒子の製造例1>
得られたコア粒子1と無機酸化物微粒子を所定量配合し、ヘンシェルミキサーFM-10C型(三井三池化工機製)で回転数30s-1、回転時間10minで混合し、熱処理前コア粒子1を得た。この時、コア粒子を100部として無機酸化物微粒子を配合した。無機酸化物微粒子の添加部数を表3に示す。
【0259】
<表面に無機酸化物微粒子が付着した熱処理前コア粒子の製造例2~32>
表面に無機酸化物微粒子が付着した熱処理前コア粒子の製造例1において、無機酸化物微粒子の種類及び部数を表3に記載のものに置き換えた以外は表面に無機酸化物微粒子が付着した熱処理前コア粒子の製造例1と同様にして製造を行い、熱処理前コア粒子2~32を得た。物性を表3に示す。
【0260】
【0261】
<表面に無機酸化物微粒子が熱固着した熱処理コア粒子の製造例1>
次に
図1で示す表面処理装置によって熱処理前コア粒子1に熱処理を行い、表面に無機酸化物微粒子が熱固着した熱処理コア粒子1を得た。運転条件はフィード量=2kg/hrとし、また、熱風温度=160℃、熱風流量=6m
3/min.、冷風温度=-5℃、冷風流量=4m
3/min.、ブロワー風量=20m
3/min.、インジェクションエア流量=1m
3/min.とした。
【0262】
<表面に無機酸化物微粒子が熱固着した熱処理コア粒子の製造例2~38>
表面に無機酸化物微粒子が熱固着した熱処理コア粒子の製造例1に対し、表4に記載の熱処理前コア粒子、熱風温度に変更したこと以外は無機酸化物微粒子が熱固着したコア粒子の製造例1と同様にして製造を行い、無機酸化物微粒子が熱固着した熱処理コア粒子2~38を得た。
【0263】
【0264】
<分散安定剤水溶液1の製造例>
・Na3PO4水溶液(0.1モル/リットル) 100.0部
・イオン交換水 70.0部
・HCl水溶液(1.0モル/リットル) 2.4部
還流冷却管、温度計を備えた反応容器に、上記材料を投入した。続いて、高速撹拌装置TK-ホモミキサーを用いて、反応容器内を12000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。
・CaCl2水溶液(1.0モル/リットル) 85.0部
ここに、上記材料を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む分散安定剤水溶液1を得た。
【0265】
<シラン化合物加水分解液1の製造例>
・メチルトリエトキシシラン 50.0部
・イオン交換水 50.0部
撹拌機を備えた反応容器に、上記材料を投入し、10質量%塩酸を用いてpHを3.0に調整し、撹拌しながら加水分解を行い、シラン化合物加水分解液1を得た。加水分解の完了は、当初2相に分離している液が1相になったことをもって確認した。
【0266】
<シラン化合物加水分解液2~5の製造例>
シラン化合物加水分解液1の製造例において、それぞれのシラン化合物を表5に記載のものに変更した以外は同様にして反応を行い、シラン化合物加水分解液2~5を得た。
【0267】
【0268】
<界面活性剤水溶液1の製造例>
・ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル 10.0部
・イオン交換水 90.0部
撹拌機を備えた反応容器に、上記材料を投入し、撹拌しながら溶解を行い、界面活性剤水溶液1を得た。
【0269】
<トナーの製造例1>
(水系媒体への分散工程)
・熱処理コア粒子1 15.0部
・分散安定剤水溶液1 100.0部
温度計を備えた反応容器に、上記材料を投入した。反応容器内を25℃にしなから、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製:ウルトラタラクスT50)5000rpmで6分間分散し、熱処理コア粒子分散液1を得た。
【0270】
(縮合工程)
・熱処理コア粒子分散液1 100.0部
・シラン化合物加水分解液1 1.8部
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、上記材料を投入した。反応容器内を200rpmで撹拌しながら70℃まで昇温させた。そこに、1mol/LのNaOH水溶液でpH9.0に調整し、240分間撹拌し、縮合反応を行った。続いて、希塩酸でpH1.5に調整し、分散安定剤を除去した。その後、桐山濾紙(No.5C:空孔径1μm)を用いて濾過し、粒子と濾液とを分離した。得られた粒子を、さらにイオン交換水で洗浄し、30℃で24時間真空乾燥を行い、有機ケイ素重合体で被覆されたトナー粒子1を得た。
【0271】
さらに、得られた有機ケイ素重合体で被覆されたトナー粒子1(99.5部)に、ポリジメチルシロキサン5質量%で表面処理したBET比表面積100m2/gの疎水性シリカ微粒子0.5部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業株式会社製)で回転数30s-1、回転時間10min混合して、トナー粒子1を含有するトナー1を得た。物性を表6に示す。
【0272】
<トナーの製造例2~43>
トナーの製造例1において、熱処理コア粒子、無機酸化物微粒子、シラン化合物加水分解物を表6に記載のものに変更した以外はトナー製造例1と同様にして製造を行い、トナー2~43を得た。
【0273】
【0274】
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 62.7部
MnCO3 29.5部
Mg(OH)2 6.8部
SrCO3 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
【0275】
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
【0276】
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0277】
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0278】
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0279】
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0280】
<被覆樹脂1の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。得られた被覆樹脂1:30部を、トルエン40部、及びメチルエチルケトン30部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0281】
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75ml/100g)
これらを、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散した。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過し、被覆樹脂溶液1を得た。
【0282】
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を、100部の充填コア粒子1に対して樹脂成分として2.5部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0283】
<二成分系現像剤の製造例1>
磁性キャリア1:92.0部に対し、トナー1を8.0部加え、V型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
【0284】
<二成分系現像剤2~43の製造例>
二成分系現像剤1の製造例において、トナーを表7のように変更する以外は同様にして製造を行い、二成分系現像剤2~43を得た。
【0285】
【0286】
〔実施例1〕
[評価]
[1.低温定着性評価]
画像形成装置としてヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5560改造機を用いて、上記二成分系現像剤1を、画像形成装置のシアン用現像器または/及びマゼンタ用現像器に入れ、後述の評価を行った。改造点は、定着温度、プロセススピード、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーを自由に設定できるようにした点である。
【0287】
画像は、常温常湿(NN)環境下(温度23℃、相対湿度50%以上~60%以下)において、紙上のトナー載り量が1.0mg/cm2になるように調整し、通紙方向後端側に画像印字比率25%となるような横帯となるよう未定着画像を作成した。評価紙は、コピー用紙GF-C300(A4、坪量300.0g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
【0288】
その後、低温低湿(LL)環境下(温度15℃、相対湿度15%以下)において、プロセススピードを450mm/secに設定し、定着温度を120℃から順に5℃ずつ上げ、オフセットが生じない下限温度を低温定着温度とした。評価結果を表8に示す。
【0289】
(低温定着温度の評価基準)
A:150℃未満 (良好である。)
B:150℃以上160℃未満 (良好である。)
C:160℃以上170℃未満 (本発明の効果が得られているレベルである。)。
D:170℃以上 (本発明の効果が十分に得られていないレベルである。)。
【0290】
[2.耐定着巻き付き性評価]
上記低温定着性評価で用いた評価機を用いて、前記二成分系現像剤1について、定着温度領域の試験を行った。画像は単色モードで常温常湿(NN)環境下(温度23℃、相対湿度50%以上~60%以下)において、紙上のトナー載り量が1.0mg/cm2になるように調整し、通紙方向先端から2mmの余白を設けたうえで画像印字比率25%となるよう未定着画像を作成した。評価紙は、コピー用紙CS-680(A4、坪量68.0g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
【0291】
その後、高温高湿(HH)環境下(温度30℃、相対湿度80%)において、プロセススピードを300mm/secに設定し、定着温度を140℃から順に5℃ずつ上げ、定着紙の巻き付きが生じない上限温度を耐定着巻き付き性温度とした。
【0292】
耐定着巻き付き性を以下の基準でランク付けした。評価結果を表8に示す。
【0293】
(耐定着巻き付き性の評価基準)
A:175℃以上 (非常に優れている。)
B:165℃以上175℃未満 (良好である。)
C:155℃以上165℃未満 (本発明の効果が得られているレベルである。)
D:155℃未満 (本発明の効果が十分に得られていないレベルである。)
【0294】
[3.帯電安定性評価]
画像形成装置としてヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5560改造機を用いて、上記二成分系現像剤1を、画像形成装置のシアン用現像器に入れ、シアントナーボトルにトナー1を充てんして後述の評価を行った。改造点は、現像器内部で過剰になった磁性キャリアを現像器から排出する機構を取り外したことである。
【0295】
FFh画像(ベタ画像)におけるトナーの紙上への載り量が0.45mg/cm2となるように、調整した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFが256階調の256階調目(ベタ部)である。
【0296】
耐久画像出力試験では、画像比率5%で、1万枚の耐久画像出力試験を行った。試験環境は、高温高湿(HH)環境下(温度30℃、相対湿度80%)にて行った。1万枚連続通紙中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととした。
【0297】
評価紙は、コピー用紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
【0298】
初期(1枚目)と1万枚連続通紙時の画出し評価の項目と評価基準を以下に示す。また評価結果を表8に示す。
【0299】
(画像濃度の測定)
X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を使用し、初期(1枚目)及び10,000枚目のFFh画像部:ベタ部の画像濃度を測定し、両画像濃度の差Δから、以下の基準でランク付けした。評価結果を表8に示す。
A:0.04未満(非常に優れている。)
B:0.04以上0.09未満(良好である。)
C:0.09以上0.15未満(本発明の効果が得られているレベルである。)
D:0.15以上(本発明の効果が十分に得られていないレベルである。)
【0300】
[4.外添剤ゴースト評価]
画像形成装置としてヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5560改造機を用いて、上記二成分系現像剤1を、画像形成装置のシアン用現像器に入れ、シアントナーボトルにトナー1を充てんして後述の評価を行った。改造点は、現像器内部で過剰になった磁性キャリアを現像器から排出する機構を取り外したことである。
【0301】
FFh画像(ベタ画像)におけるトナーの紙上への載り量が0.45mg/cm2となるように、調整した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFが256階調の256階調目(ベタ部)である。
【0302】
試験環境は、常温低湿(NL)環境下(温度23℃、相対湿度5%)にて行った。
【0303】
評価紙は、コピー用紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
【0304】
まず、通紙方向に対して平行な縦帯と、縦帯以外の部分は白地部である画像を画像比率10%で100枚出力した。縦帯部分はFFh画像(ベタ画像)である。連続通紙中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととした。
【0305】
100枚通紙後、全面のハーフトーン画像(80h)を出力し、初期の外添剤ゴースト性評価に使用した。
【0306】
その後、通紙方向に対して平行な縦帯と、縦帯以外の部分は白地部である画像を画像比率10%でさらに1万枚出力した。連続通紙中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととした。
【0307】
1万枚通紙後、全面のハーフトーン画像(80h)を出力し、耐久後の外添剤ゴースト性評価に使用した。
【0308】
X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を使用し、初期(100枚通紙後)及び耐久後(10,000枚通紙後)のハーフトーン画像(80h)8において、縦帯を出力していた部分と白地部を出力していた部分の画像濃度を測定し、両画像濃度の差Δから外添剤ゴースト性を評価し、以下の基準でランク付けした。評価結果を表8に示す。
A:0.03未満(非常に優れている。)
B:0.03以上0.06未満(良好である。)
C:0.06以上0.11未満(本発明の効果が得られているレベルである。)
D:0.11以上(本発明の効果が十分に得られていないレベルである。)
【0309】
[5.転写均一性の評価]
画像形成装置としてヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5560改造機を用いて、上記二成分系現像剤1を、画像形成装置のシアン用現像器に入れ、シアントナーボトルにトナー1を充てんして後述の評価を行った。改造点は、現像器内部で過剰になった磁性キャリアを現像器から排出する機構を取り外したことである。
【0310】
FFh画像(ベタ画像)におけるトナーの紙上への載り量が0.45mg/cm2となるように、調整した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFが256階調の256階調目(ベタ部)である。
【0311】
耐久画像出力試験では、画像比率0.6%で、1万枚の耐久画像出力試験を行った。試験環境は、常温低湿(NL)環境下(温度23℃、相対湿度5%)にて行った。1万枚連続通紙中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととした。評価紙は、コピー用リサイクル紙GF-R100W(A4、坪量67.0g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
【0312】
初期(1枚目)と1万枚連続通紙時の画出し評価の項目と評価基準を以下に示す。また評価結果を表8に示す。
【0313】
(画像均一性の評価)
上記1万枚の耐久出力後にベタ画像を出力し、2cm角の画像をデジタルマイクロスコープにて取り込み、取り込んだ画像をImage-Jにて8bitグレースケール変換を行った後、濃度ヒストグラムを計測し、その標準偏差を求めた。その標準偏差の値に応じ以下の評価基準にてランク付けを行った。
A:標準偏差2.0未満(非常に優れている、肉眼では不均一性を認識できない)
B:標準偏差2.0以上4.0未満(かなり優れている)
C:標準偏差4.0以上6.0未満(本発明の効果が得られている)
D:標準偏差6.0以上(本発明の効果が得られていない、遠目で不均一性を感じる)
【0314】
〔実施例2~39、比較例1~4〕
二成分系現像剤1を二成分系現像剤2~43に変えるほかは実施例1と同様に評価を行い、評価結果を表8に示した。
【0315】
【符号の説明】
【0316】
1.原料定量供給手段、2.圧縮気体流量調整手段、3.導入管、4.突起状部材、5.供給管、6.処理室、7.熱風供給手段、8(8-1,8-2,8-3).冷風供給手段、9.規制手段、10.回収手段、11.熱風供給手段出口、12.分配部材、13.旋回部材、14.粉体粒子供給口