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  • 特許-長尺筒状セラミック体 図1
  • 特許-長尺筒状セラミック体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】長尺筒状セラミック体
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/16 20060101AFI20240917BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20240917BHJP
   C04B 41/90 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H01J37/16
C04B35/111
C04B41/90 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020129018
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025872
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 裕貴
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-241230(JP,A)
【文献】特開2019-009141(JP,A)
【文献】特開2014-045012(JP,A)
【文献】特開2019-110460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
C04B 41/81
C04B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を有するセラミック本体を含み、
該セラミック本体の一方の端部近傍の内周面を第1内周部とし、該セラミック本体の他方の端部近傍の内周面を第2内周部とし、該第1内周部と該第2内周部とを接続している部分を接続部とし、
前記第2内周部が前記第1内周部よりも小さい径を有しており、
前記第1内周部の径の中心と前記第2内周部の径の中心とが、同じ軸上に存在しており、
前記接続部の内壁面が曲率を有し、
前記接続部の両端部のうちの少なくとも一方の端部の内壁面が、前記両端部に挟まれた中間部の内壁面よりも大きな曲率を有し、
前記中間部の内壁面が、250mm以上の曲率半径を有する、
長尺筒状セラミック体、
を含み、
前記第1内周部の少なくとも前記接続部側の表面、前記第2内周部の少なくとも前記接続部側の表面、および前記接続部の内壁面にメタライズ層が積層された、ライナーチューブ。
【請求項2】
前記メタライズ層が、モリブデン、タングステンまたはチタンを主成分として含む、請求項1に記載のライナーチューブ。
【請求項3】
前記メタライズ層が、0.2以下の厚みの変動係数を有する、請求項1または2に記載のライナーチューブ。
【請求項4】
前記メタライズ層の上に、金、白金または銀を主成分とする第1めっき層が、さらに積層されている、請求項1~3のいずれかに記載のライナーチューブ。
【請求項5】
前記メタライズ層と前記第1めっき層との間に、ニッケルを主成分とする第2めっき層が、さらに積層されている、請求項4に記載のライナーチューブ。
【請求項6】
前記第1めっき層の表面が、0.2以下(但し0を除く)の算術平均粗さRaの変動係数を有する、請求項4または5に記載のライナーチューブ。
【請求項7】
前記第1めっき層の表面が、0.25以下(但し0を除く)の2乗平均平方根傾斜RΔqの変動係数を有する、請求項4~6のいずれかに記載のライナーチューブ。
【請求項8】
前記メタライズ層、前記第1めっき層および前記第2めっき層の総厚みの変動係数が0.2以下である、請求項~7のいずれかに記載のライナーチューブ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のライナーチューブと、該ライナーチューブの外周側に電磁レンズまたは電磁偏向器とを含む荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、長尺筒状セラミック体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子線露光装置において、光軸を含む周囲を真空に保つために、ライナーチューブが光学鏡筒内に設けられている。ライナーチューブの外周側には電磁レンズ、電磁偏向器などが配置されている。特許文献1には、セラミックス筒体の内面に、チタンメタライズ層と白金めっき層とが順次形成されたライナーチューブが記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載のライナーチューブは、大径内面と小径内面とを接続する接続面の両端部で、メタライズ層が不連続になりやすい。さらに、チタンメタライズ層の厚みを十分に制御することが難しい。そのため、特許文献1に記載のライナーチューブを備える荷電粒子線装置は、電子ビームの偏向を制御することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-6594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の課題は、内周面にメタライズ層を形成しても、メタライズ層に不連続な部分が発生しにくい長尺筒状セラミック体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る長尺筒状セラミック体は、筒状を有するセラミック本体を含み、セラミック本体の一方の端部近傍の内周面を第1内周部とし、セラミック本体の他方の端部近傍の内周面を第2内周部とし、第1内周部と第2内周部とを接続している部分を接続部とし、第2内周部が第1内周部よりも小さい径を有しており、第1内周部の径の中心と第2内周部の径の中心とが、同じ軸上に存在しており、接続部の内壁面の少なくとも一部が軸に対して傾斜している。
【0007】
本開示に係るライナーチューブは、上記の長尺筒状セラミック体を含み、第1内周部の少なくとも接続部側の表面、第2内周部の少なくとも接続部側の表面、および接続部の内壁面にメタライズ層が積層されている。
【0008】
本開示に係る荷電粒子線装置は、上記のライナーチューブと、ライナーチューブの外周側に電磁レンズまたは電磁偏向器とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、内周面にメタライズ層を形成しても、メタライズ層に不連続な部分が発生しにくい長尺筒状セラミック体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)は、本開示の一実施形態に係る長尺筒状セラミック体を示す説明図であり、(B)は、(A)に示すX-X線で切断した際の断面を示す説明図である。
図2】本開示の他の実施形態に係る長尺筒状セラミック体の断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係る長尺筒状セラミック体は、上記のように、筒状を有するセラミック本体を含み、セラミック本体の一方の端部近傍の内周面を第1内周部とし、セラミック本体の他方の端部近傍の内周面を第2内周部とし、第1内周部と第2内周部とを接続している部分を接続部とする。本開示に係る長尺筒状セラミック体を、図1および2に基づいて説明する。
【0012】
図1(A)に示すように、一実施形態に係る長尺筒状セラミック体1は、筒状を有するセラミック本体10を含む。本明細書において「長尺」とは、100mm以上の長さを意味する。
【0013】
セラミック本体10は、セラミックスで形成されていれば限定されない。セラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム、炭化珪素、炭窒化珪素、炭化チタン、炭窒化チタンなどを主成分とするセラミックスが挙げられる。本明細書において「主成分」とは、セラミックスを構成する成分の合計100質量%における80質量%以上を占める成分をいう。セラミックスに含まれる各成分の同定は、CuKα線を用いたX線回折装置で行い、各成分の含有量は、例えばICP(InductivelyCoupled Plasma)発光分光分析装置または蛍光X線分析装置により求めればよい。
【0014】
主成分が酸化アルミニウムであるセラミックスの場合、例えば、マグネシウム、カルシウムおよび珪素が酸化物としてさらに含まれていてもよい。
【0015】
セラミック本体10の長さは、100mm以上であれば限定されず、得られる長尺筒状セラミック体の用途に応じて適宜設定される。セラミック本体10の長さは、例えば100mm以上250mm以下程度である。セラミック本体10の外径も、限定されず、得られる長尺筒状セラミック体の用途に応じて適宜設定される。セラミック本体10の外径は、例えば18mm以上40mm以下程度である。セラミック本体10のように単一の太さ(外径)を有していない場合は、最も細い部分の外径と最も太い部分の外径とが、上記のような範囲の長さを有していればよい。
【0016】
セラミック本体10の内周面について、図1(B)を参照して説明する。図1(B)に示すように、セラミック本体10の一方の端部近傍に第1内周部11が位置し、セラミック本体10の他方の端部近傍に第2内周部12が位置している。第1内周部11は、セラミック本体10の一方の端面からセラミック本体10の全長の45%程度までの長さを有している。第2内周部12は、セラミック本体10の他方の端面からセラミック本体10の全長の35%程度までの長さを有している。
【0017】
第2内周部12は、第1内周部11よりも小さい径を有している。第2内周部12の径D2は、第1内周部11の径D1よりも小さければ限定されない。例えば、第2内周部12の径D2は、第1内周部11の径D1の50%以上65%以下程度の長さであるのがよい。第1内周部11の径D1の中心と第2内周部12の径D2の中心とは、同じ軸上に存在している。
【0018】
一実施形態に係る長尺筒状セラミック体1において、第1内周部11と第2内周部12とは、接続部13を介して接続されている。第1内周部11の径D1と第2内周部12の径D2との大きさが異なるため、接続部13の一方の端部の径と他方の端部の径との大きさが異なる。したがって、接続部13の内壁面の少なくとも一部が、第1内周部11の径D1の中心と第2内周部12の径D2の中心とを通る上記の軸に対して傾斜している。その結果、第1内周部11、第2内周部12および接続部13の内壁面に、例えばメタライズ層を形成したとしてもメタライズ層に不連続な部分が発生しにくくなる。上記の軸に対する接続部13の内壁面の傾斜角は特に限定されず、例えば4°以上18°以下程度であるのがよい。
【0019】
図2に示す他の実施形態に係る長尺筒状セラミック体1’のように、接続部13’の内壁面が曲率を有していてもよい。このように、接続部13’の内壁面が曲率を有していると、接続部13’の両端部が第1内周部11’および第2内周部12’に緩やかに接続される。その結果、第1内周部11’、第2内周部12’および接続部13’の内壁面に、例えばメタライズ層を形成したとしてもメタライズ層に不連続な部分がより発生しにくくなる。
【0020】
接続部13’の内壁面において、接続部13’の両端部の少なくとも一方の端部は、この両端部に挟まれた接続部13’の中間部よりも大きな曲率を有しているのがよい。このような構成の場合、第1内周部11’、第2内周部12’および接続部13’の内壁面に、例えばメタライズ層が形成されたとしても、接続部13’の両端部に形成されたメタライズ層に応力が集中しにくくなる。その結果、例えば、加熱および冷却が繰り返される環境下であっても、長期間にわたって使用することができる。
【0021】
接続部13’の中間部の内壁面の曲率半径は限定されない。接続部13’の中間部の内壁面は、例えば250mm以上の曲率半径を有していてもよく、特に300mm以上350mm以下程度の曲率半径を有しているのがよい。接続部13’の端部の内壁面の曲率半径は、例えば、5mm以上15mm以下程度であるのがよい。
【0022】
本開示の長尺筒状セラミック体を製造する方法は、限定されず、例えば下記のような手順で製造される。まず、酸化アルミニウム、炭化珪素、炭窒化珪素、炭化チタンまたは炭窒化チタン粉末を準備する。これらの粉末の純度は限定されない。これらの粉末は、例えば、99質量%以上の純度を有しているのがよい。必要に応じて、セラミックスの原料として使用される他の粉末を使用してもよい。
【0023】
以下、酸化アルミニウムを主成分とする長尺筒状セラミック体を得る場合について説明する。まず、主成分である酸化アルミニウム粉末(純度が99質量%以上)と、水酸化マグネシウム、酸化珪素および炭酸カルシウムの各粉末とを粉砕用ミルに溶媒(イオン交換水)とともに投入して、粉末の平均粒径(D50)が1.5μm以下になるまで粉砕した後、有機結合剤と、酸化アルミニウム粉末を分散させる分散剤とを添加、混合してスラリーを得る。
【0024】
ここで、上記粉末の合計100質量%における水酸化マグネシウム粉末の含有量は0.3~0.42質量%、酸化珪素粉末の含有量は0.5~0.8質量%、炭酸カルシウム粉末の含有量は0.060~0.1質量%であり、残部が酸化アルミニウム粉末および不可避不純物である。
【0025】
有機結合剤としては、例えば、アクリルエマルジョン、ポリビニールアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0026】
次に、スラリーを噴霧造粒して顆粒を得た後、冷間静水圧プレス成形装置を用いて、成形圧を78MPa以上128MPa以下として加圧することにより円柱状の成形体を得る。成形体は、切削加工により軸方向に沿って貫通孔を形成する。
【0027】
貫通孔を備えた成形体を、大気雰囲気中、例えば、焼成温度を1500℃以上1700℃以下、保持時間を4時間以上6時間以下として焼成することによって、円筒状の焼結体が得られる。得られた円筒状の焼結体の外周面に円筒研削を、内周面に内面研削をそれぞれ施すことによって、例えば、図1、2に示すような形状の長尺筒状セラミック体1,1’を得ることができる。
【0028】
本開示の長尺筒状セラミック体は、例えば、ライナーチューブの部材として使用される。以下、一実施形態に係る長尺筒状セラミック体1を使用した場合を例に、ライナーチューブを説明する。
【0029】
本開示の一実施形態に係るライナーチューブは、一実施形態に係る長尺筒状セラミック体1の第1内周部11の少なくとも接続部13側の表面、第2内周部12の少なくとも接続部13側の表面、および接続部13の内壁面にメタライズ層が積層された構造を有している。
【0030】
メタライズ層に含まれる金属は限定されず、例えば、モリブデン、タングステン、チタン、銀などを主成分とする金属が挙げられる。これらの金属の中でも、モリブデン、タングステンまたはチタンを主成分とする金属であるのがよい。モリブデン、タングステンおよびチタンは非磁性の金属であり、内部空間を電子ビームが通過しても、電子ビームに悪影響を与えにくくなる。さらに、モリブデン、タングステンおよびチタンは、比較的高い体積抵抗率を有しているため、渦電流を発生させる可能性が低くなる。
【0031】
メタライズ層がモリブデンあるいはタングステンを主成分とする場合、メタライズ層を構成する金属元素100質量%のうち、マンガンを15質量%以上25質量%以下、残部が主成分の金属であってもよい。メタライズ層が銀を主成分とする場合、メタライズ層を構成する金属元素100質量%のうち銅を25質量%以上30質量%以下、チタンを0.8質量%以上2質量%以下、残部が銀であってもよい。
【0032】
メタライズ層の厚みは限定されず、例えば15μm以上45μm以下程度であってもよい。メタライズ層の厚みの変動係数は、例えば0.2以下であるのがよい。メタライズ層の厚みの変動係数が0.2以下であれば、メタライズ層の厚みを薄くしても、厚みのばらつきが小さくなる。その結果、メタライズ層の不連続な部分が発生しにくくなり、導通不良の可能性が低減される。
【0033】
一実施形態に係るライナーチューブは、メタライズ層の上に第1めっき層が、さらに積層されていてもよい。第1めっき層は、金、白金または銀を主成分とする金属で形成されている。このような第1めっき層に含まれる金、白金または銀は、高い標準電位を有するのに加えて錆びにくい。その結果、ライナーチューブの信頼性をより向上させることができる。
【0034】
第1めっき層の厚みは限定されず、例えば、0.01μm以上0.1μm以下程度であってもよい。第1めっき層の算術平均粗さRaは限定されず、例えば、1.1μm以上1.7μm以下程度であってもよい。第1めっき層の表面において、算術平均粗さRaの変動係数は0.2以下(但し0を除く)であるのがよい。第1めっき層の表面がこのような算術平均粗さRaの変動係数を有していると、第1めっき層の表面にガスが吸着しにくくなる。その結果、ライナーチューブの内部空間を真空にするための排気効率が向上する。
【0035】
第1めっき層の2条平均平方根傾斜RΔqは限定されず、例えば、0.4以上1.6以下であるとよい。さらに、第1めっき層の表面において、2条平均平方根傾斜RΔqの変動係数は0.25以下(但し0を除く)であるのがよい。第1めっき層の表面がこのような2条平均平方根傾斜RΔqの変動係数を有していると、第1めっき層の表面にガスがより吸着しにくくなる。その結果、ライナーチューブの内部空間を真空にするための排気効率がより向上する。
【0036】
算術平均粗さRaおよび2乗平均平方根傾斜RΔqは、JIS B 0601:2001に準拠し、形状解析レーザ顕微鏡((株)キーエンス製、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK-X1100またはその後継機種))を用いて測定することができる。
【0037】
測定条件としては、照明方式を同軸照明、倍率を120倍、カットオフ値λsを無し、カットオフ値λcを0.08mm、カットオフ値λfを無し、終端効果の補正を有り、測定対象とする第1めっき層の表面から1か所当たりの測定範囲を、例えば、2792μm×2093μmに設定して、各測定範囲毎に、測定範囲の長手方向に沿って測定対象とする線を1本引いて、線粗さ計測を行えばよい。計測の対象とする線1本当たりの長さは、例えば、2640μmである。測定範囲は、軸方向に沿って略等間隔に8箇所設定し、測定対象とする線は合計8本とする。算術平均粗さRaおよび2乗平均平方根傾斜RΔqのそれぞれの変動係数は、測定対象の線8本から得られる平均値および標準偏差から算出すればよい。
【0038】
一実施形態に係るライナーチューブは、メタライズ層と第1めっき層との間に、ニッケルを主成分とする第2めっき層が、さらに積層されていてもよい。第2めっき層を積層させることによって、第1めっき層を形成している成分がメタライズ層に拡散するのを抑制することができる。第2めっき層の厚みは限定されず、例えば1μm以上3μm以下程度であってもよい。
【0039】
メタライズ層、第1めっき層および第2めっき層の総厚みの変動係数は、例えば0.2以下であるのがよい。メタライズ層、第1めっき層および第2めっき層の総厚みの変動係数が0.2以下であれば、これらの層の厚みを薄くしても、厚みのばらつきが小さくなる。その結果、導通不良の可能性が低減される。
【0040】
メタライズ層、第1めっき層および第2めっき層のそれぞれの厚みを測定する場合、まず、ライナーチューブを半円筒状になるように、切断または研削した後、断面を研磨する。この研磨によって得られるいずれか片側の研磨面を測定の対象として、軸方向に沿って10箇所測定範囲を設定する。
【0041】
測定範囲は、第1内周部、第2内周部および接続部の長さに応じて設定すればよい。長尺筒状セラミック体1’の場合、例えば、第1内周部11’から3箇所、第2内周部12’から5箇所、接続部13’から2箇所、合計10箇所測定範囲を設定し、測定範囲は各部分毎に略等間隔になるようにすればよい。そして、走査型電子顕微鏡を用い、倍率を、例えば、500倍として測定の対象とする層の厚みを測定すればよい。メタライズ層の厚みの変動係数およびメタライズ層、第1めっき層および第2めっき層の総厚みの変動係数は、この測定範囲毎に得られる厚みの平均値および標準偏差から算出すればよい。以下、ライナーチューブの製造方法について説明する。
【0042】
まず、長尺筒状セラミック体の第1内周部、第2内周部および接続部の内壁面に、例えば、モリブデンを主成分とし、マンガンを含むペーストを塗布する。ここで、ペーストの常温における粘度は、例えば250p以下、特に、210p以下であるとよい。次いで、水素:窒素の体積比率が70~80:30~20のフォーミングガス雰囲気で、温度を1300℃~1400℃として熱処理する。このよにすることによって、メタライズ層が積層されたライナーチューブを得ることができる。さらに、第1めっき層や第2めっき層を積層する場合は、いずれも無電解メッキによって積層すればよい。
【0043】
本開示に係るライナーチューブは、例えば、電子顕微鏡、イオンビーム顕微鏡、電子ビーム露光装置、電子線マイクロアナライザー、イオンビーム装置、サイクロトロン、電子ビーム溶接機等の荷電粒子線装置の部材として採用される。このような荷電粒子線装置は、例えば、本開示の一実施形態に係るライナーチューブと、このライナーチューブの外周側に電磁レンズまたは電磁偏向器を含む。
【符号の説明】
【0044】
1、1’ 長尺筒状セラミック体
10 セラミック本体
11、11’ 第1内周部
12、12’ 第2内周部
13、13’ 接続部
図1
図2