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特許7555755医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240917BHJP
【FI】
G16H10/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020134936
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030737
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 杏莉
(72)【発明者】
【氏名】狩野 佑介
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103310109(CN,A)
【文献】特表2016-507256(JP,A)
【文献】特開2003-204941(JP,A)
【文献】特開2012-090962(JP,A)
【文献】特開2019-021080(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059794(WO,A1)
【文献】特開2012-055415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0333106(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0251199(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトコルに従ってモニタリングされる被検者の健康状態データのうち、2つ以上の時点の前記健康状態データに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、前記被検者の健康状態を評価する評価部と、
前記評価した結果に基づいて、前記プロトコルを変更する時点の候補を生成する生成部と、
前記変更する時点の候補を表示するように表示部を制御する表示制御部と、
を備え
前記表示制御部は、前記変更する時点の候補と共に、前記プロトコルを変更する内容の候補を表示するように前記表示部を制御し、
前記プロトコルを変更する内容は、前記健康状態データの計測頻度及び計測タイミングのうちの1つ以上である、医用情報処理装置。
【請求項2】
前記変更する時点の候補と共に、前記変更する内容の候補の表示中、操作者の操作に応じて、いずれかの候補が選択されると、当該選択された候補に基づいて、前記プロトコルを変更するプロトコル処理部、
を更に備えた、請求項1記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記2つ以上の時点の前記健康状態データのうち、少なくとも1つの時点の健康状態データを予測して当該予測した健康状態データと、残りの健康状態データとに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、前記被検者の健康状態を評価する、請求項1又は2記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記2つ以上の時点の前記健康状態データを異なる時間変化成分に分解して得られる複数の時間変化成分のうち、少なくとも1つの時間変化成分に基づいて、前記健康状態を評価する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記異なる時間変化成分に分解することは、周波数分解することである、請求項4記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記異なる時間変化成分に分解することは、周期成分分解することである、請求項4記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記異なる時間変化成分に分解することは、期間に分解することである、請求項4記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記異なる時間変化成分に分解することは、時点の集合に分解することである、請求項4記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記評価部は、前記健康状態データを異なる時間変化成分に分解し、前記分解により得られた1つ以上の短周期成分を用いて健康状態の悪化の有無を評価し、前記分解により得られた1つ以上の長周期成分を用いて健康状態の安定性を評価する、請求項4記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記2つ以上の時点の前記健康状態データのうち、少なくとも最新の時点の前記健康状態データに基づいて、前記健康状態の悪化の有無を判定する判定部、
を更に備え、
前記評価部は、前記悪化の無いことが判定された場合、前記健康状態の安定性を評価する、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医用情報処理装置と、
前記医用情報処理装置に用いられる前記健康状態データを記憶するデータ記憶装置と、
を備えた医用情報処理システム。
【請求項12】
コンピュータに、
プロトコルに従ってモニタリングされる被検者の健康状態データのうち、2つ以上の時点の前記健康状態データに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、前記被検者の健康状態を評価する機能、
前記評価した結果に基づいて、前記プロトコルを変更する時点の候補を生成する機能、
前記変更する時点の候補を表示するように表示部を制御する機能、
を実現させるための医用情報処理プログラムであって、
前記制御する機能は、前記変更する時点の候補と共に、前記プロトコルを変更する内容の候補を表示するように前記表示部を制御し、
前記プロトコルを変更する内容は、前記健康状態データの計測頻度及び計測タイミングのうちの1つ以上である、医用情報処理プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、在宅などの病院外又は病棟などの病院内における患者の健康状態を把握するための健康状態モニタリングが用いられてきている。この種の健康状態モニタリングは、病院内外で取得された患者の健康状態に関するデータを病院の医用情報処理システムに送信することを意味する。また、健康状態モニタリングは、医師による診察及び診断を含むオンライン診療を伴う場合もある。これらの健康状態モニタリングは、予め定められた時期や持続期間などを示すプロトコルに沿って行われる。
【0003】
このような健康状態モニタリングは、通常は特に問題ないが、本発明者の検討によれば、当該データが示す健康状態によっては、予め定められたプロトコルが不適切になる可能性がある。また、健康状態モニタリングのプロトコルが不適切な状態で維持された場合、患者の精神的負担や金銭的負担を必要以上に継続させてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-334527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、健康状態モニタリングのプロトコルを適切な状態に管理することである。
【0006】
ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る医用情報処理装置は、評価部と、生成部と、表示制御部とを備えている。前記評価部は、プロトコルに従ってモニタリングされる被検者の健康状態データのうち、2つ以上の時点の前記健康状態データに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、前記被検者の健康状態を評価する。前記生成部は、前記評価した結果に基づいて、前記プロトコルを変更する時点の候補を生成する。前記表示制御部は、前記変更する時点の候補を表示するように表示部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システム及びその周辺構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態における時間変化成分を算出する動作の一例を説明するための模式図である。
図5図5は、第1の実施形態におけるプロトコルの変更時点を算出する動作の一例を説明するための模式図である。
図6図6は、第1の実施形態におけるプロトコルの表示例を説明するための模式図である。
図7図7は、第1の実施形態における第1変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、第1の実施形態の第1変形例におけるプロトコルの表示例を説明するための模式図である。
図9図9は、第1の実施形態の第2変形例における動作の一例を説明するための模式図である。
図10図10は、第1の実施形態の第2変形例における動作の他の例を説明するための模式図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図12図12は、第2の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図13図13は、第2の実施形態におけるアラートの表示例を説明するための模式図である。
図14図14は、第2の実施形態における安定性の評価結果の表示例を説明するための模式図である。
図15図15は、第2の実施形態におけるプロトコルを変更する動作の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態について図面を用いて説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システム及びその周辺構成を示すブロック図である。図1中、複数のモニタリング装置1-1,1-2,…が病院外のネットワークNWO、病院内のゲートウェイ(GW)装置10及びネットワークNWIを介してデータ記憶装置20及び医用情報処理装置30に接続されている。データ記憶装置20及び医用情報処理装置30は、医用情報処理システムを構成している。なお、医用情報処理装置30は、データ記憶装置20を含む構成に変形してもよい。各々のモニタリング装置1-1,1-2,…は、互いに同様の構成のため、以下ではモニタリング装置1-1を代表例に挙げて説明する。また、本明細書中、「患者」の用語は、「被検者」を説明する箇所を除き、「被検者」の一例である。「被検者」は、患者及び健常者を包含する用語である。
【0010】
モニタリング装置1-1は、在宅の患者毎に設けられ、データ取得部2-1及びデータ通信部3-1を備えている。なお、データ取得部2-1及びデータ通信部3-1は、別々の装置として設けられる場合に限定されない。例えば、データ取得部2-1及びデータ通信部3-1は、スマートフォンのように1つの装置として設けられていてもよい。
【0011】
データ取得部2-1は、患者から健康状態データを取得し、当該健康状態データを無線でデータ通信部3-1に送信する装置である。健康状態データとしては、単一種類のデータでもよく、複数種類データを統合・加工したデータでもよい。同様に、健康状態データとしては、単一種類データ又は複数種類データに基づいて、演算して得られたデータ、検索して得られたデータ、判定して得られたデータ、選択して得られたデータ、生成して得られたデータ等を包含する。また、健康状態データとしては、数値データでもよく、段階(カテゴリ・2値)データでもよい。段階(カテゴリ)データは、例えば、「悪化」及び「良好」のように、数値以外の尺度(名義尺度・順序尺度)で健康状態を示すデータの一例である。データの取得方法としては、ペースメーカのように患者に埋め込まれた装置が取得する方式、活動量計、体重計(体組成計)又は血圧計のように患者が装置を用いて計測する方式、スマートフォンのように患者が装置に入力する方式などが適宜、使用可能となっている。
【0012】
この種の健康状態データとしては、例えば、患者又は健常者などの被検者の入院時、外来時、在宅時に取得・記録するデータが適宜、使用可能となっている。但し、本実施形態では、患者を代表例に挙げて述べる。なお、健康状態データとしては、これに限らず、患者から取得した健康状態データを加工して得られるデータを用いてもよい。加工して得られる健康状態データとしては、例えば、無増悪期間(過去分、予測分)、増悪可能性(スコア、ルールで計算した値、モデルで計算した値)(過去分、予測分)、有害イベント有無(過去分、予測分)及びアドヒアランス(過去分、予測分)が適宜、使用可能となっている。
【0013】
有害イベント有無としては、有害イベント有の継続期間(発生から解消までの期間)、有害イベント無しの継続期間、又は、有害イベントが発生した件数を用いてもよい。有害イベント有の継続期間は、無増悪期間とは逆の状態の期間としてもよい。また、有害イベント有の継続期間としては、例えば、1日2回血圧を測定し、3日間で6回の全てが高血圧(有害イベント)だった場合、中間の低い血圧の可能性を考慮せずに、3日間としてもよい。あるいは、中間の低い血圧の可能性を考慮して、6回としてもよい。有害イベントは、高い血圧に限らず、高い熱としてもよく、他の悪化状態としてもよい。言い換えると、有害イベント有の継続期間は、悪い状態の健康状態データが継続している期間である。増悪可能性は、増悪確率を指してもよく、増悪確率が閾値より高い状態や低い状態を指してもよい。増悪確率は、健康状態データに対応してテーブルから読み出したスコアとしてもよく、健康状態データ及びルールで計算した値としてもよく、健康状態データ及びモデルに基づいて算出した値としてもよい。
【0014】
アドヒアランスは、患者が治療方針に賛同して治療を実行するか否かを示しており、実行する患者が良い患者を意味し、否の患者が悪い患者を意味する。アドヒアランスの悪い患者とは、例えば、決められた薬を飲まない患者や、血圧等のデータを測定しない患者等を意味する。
【0015】
なお、本実施形態では、データ取得部2-1は、健康状態データを無増悪期間、増悪可能性、有害イベント有無及びアドヒアランス等に加工せずにデータ通信部3-1に送信する。
【0016】
データ通信部3-1は、データ取得部2-1から受けた健康状態データを病院外のネットワークNWO、病院内のゲートウェイ装置10及びネットワークNWIを介してデータ記憶装置20に送信する。また同様に、本実施形態では、データ通信部3-1は、健康状態データを無増悪期間、増悪可能性、有害イベント有無及びアドヒアランス等に加工せずにデータ記憶装置20に向けて送信する。
【0017】
なお、データ通信部3-1としては、定期的に健康状態データを送信する場合、例えば、リアルタイムで自動的に送信する方式が使用可能となっている。また、データ通信部3-1としては、不定期に健康状態データを送信する場合、例えば、患者の明示的な操作で送信する方式や、健康状態データを蓄積しておき、病院訪問時に蓄積した健康状態データを転送する方式などが、適宜、使用可能となっている。いずれにしても、データ通信部3-1は、後述するプロトコルに従ってモニタリングされる患者の健康状態データを送信する。
【0018】
ゲートウェイ装置10は、病院内のネットワークNWIと、病院外のネットワークNWOとの間を通信可能に接続する装置である。
【0019】
データ記憶装置20は、病院外のモニタリング装置1-1から送信された健康状態データを患者情報に関連付けて保存する記憶装置である。また、データ記憶装置20は、病院内の電子カルテシステム(図示せず)から取得した健康状態データ及び患者情報を互いに関連付けて保存する記憶装置である。患者情報は、患者固有の情報であり、例えば、患者ID、患者氏名、生年月日、性別及び年齢を含んでいる。このようなデータ記憶装置20としては、例えば、健康状態モニタリング専用のサーバ装置を設けてもよい。この場合、データ記憶装置20は、保存した健康状態データを無増悪期間、増悪可能性、有害イベント有無及びアドヒアランス等のいずれかに加工し、当該加工した健康状態データを更に保存してもよい。なお、本実施形態に係るデータ記憶装置20は、保存した健康状態データを無増悪期間、増悪可能性、有害イベント有無及びアドヒアランス等に加工していない。あるいは、データ記憶装置としては、当該専用のサーバ装置ではなく、患者情報及び健康状態データ以外のデータをも保存する既存のサーバ装置を用いてもよい。既存のサーバ装置としては、例えば、VNA(Vendor Neutral Archive)システム又はデータウエアハウス(DWH:Data WareHouse)が適宜、使用可能となっている。
【0020】
VNAシステムは、異なるメーカー製の医用画像管理システム(PACS:Picture Archiving and Communication Systems)に保管されている医用画像ファイル、及び各臨床部門システムで管理されている多様な診療データを一元的に管理する統合アーカイブシステムである。VNAシステムは、例えば、不図示のPACS、及び不図示の電子カルテシステムと、LAN等の病院内ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。VNAシステムは、例えば、PACSに記憶されている医用画像ファイルを定期的に取得し、VNAシステムが備えるメモリに記憶する。また例えば、VNAシステムは、電子カルテシステムに記憶されている電子カルテに関する情報を定期的に取得し、VNAシステムが備えるメモリに記憶している。また例えば、VNAシステムは、モニタリング装置1-1から送信された健康状態データを、VNAシステムが備えるメモリに記憶している。
【0021】
データウエアハウスは、例えば、医療・介護等関係機関で発生した情報、いわゆる診療ビッグデータを一括して蓄積するデータベースシステムである。前述同様に、データウエアハウスは、例えば、PACSに記憶されている医用画像ファイルを定期的に取得し、データウエアハウスが備えるメモリに記憶する。また同様に、データウエアハウスは、電子カルテシステムに記憶されている電子カルテに関する情報を定期的に取得し、データウエアハウスが備えるメモリに記憶している。また同様に、データウエアハウスは、モニタリング装置1-1から送信された健康状態データを、データウエアハウスが備えるメモリに記憶している。
【0022】
電子カルテに関する情報には、例えば、患者情報及び診療データが含まれる。患者情報は、前述した通りである。
【0023】
診療データは、診療の過程で、患者の身体状況、病状、及び治療等について、医療従事者が知り得た情報であり、病院内の患者の健康状態データを含んでいる。診療データは、例えば、検査履歴情報、画像情報、心電図情報、バイタルサイン情報、薬歴情報、レポート情報、カルテ記載情報、及び看護記録情報等を含む。
【0024】
健康状態データについては、前述した通りである。病院内の患者の健康状態データとしては、例えば、診療データのうちの、心電図情報、バイタルサイン情報、カルテ記載情報の一部、及び看護記録情報の一部、が適宜、使用可能となっている。健康状態データは、前述同様に、数値等の客観データのみに限定されず、非数値、例えば文字で表される主観データ等であってもよく、段階(カテゴリ・2値)データであってもよい。
【0025】
検査履歴情報は、例えば、患者に対して検体検査、及び細菌検査等が行われた結果取得される検査結果の履歴を表す情報である。画像情報は、例えば、患者を撮影等することにより取得された医用画像の所在を表す情報である。画像情報には、例えば、検査が実施された結果医用画像診断装置により生成される医用画像ファイルの所在を表す情報が含まれる。心電図情報は、例えば、患者から計測された心電図波形に関する情報である。バイタルサイン情報は、例えば、患者の生命に関わる基本的な情報である。バイタルサイン情報には、例えば、脈拍数、呼吸数、体温、血圧、及び意識レベル等が含まれる。薬歴情報は、例えば、患者に投与された薬剤の量の履歴を示す情報である。レポート情報は、例えば、診療科の診療医からの検査依頼に対して、放射線科の読影医がX線画像、CT画像、MRI画像、及び超音波画像等の医用画像を読影し、患者の状態及び疾患についてまとめた情報である。レポート情報には、例えば、読影医がPACSに記憶された医用画像ファイルを参照して作成された読影レポートを表す読影レポート情報が含まれる。レポート情報には、例えば、読影対象となる医用画像ファイルに対応する患者の患者ID、患者氏名、生年月日を表す情報が含まれる。カルテ記載情報は、例えば、診療医等により電子カルテに入力された情報である。カルテ記載情報には、例えば、入院時の診療記録、患者の病歴、及び薬の処方履歴等が含まれる。看護記録情報は、例えば、看護師等により電子カルテに入力された情報である。看護記録情報には、入院時の看護記録等が含まれる。
【0026】
一方、医用情報処理装置30は、通信インタフェース31、メモリ32、入力インタフェース33、ディスプレイ34及び処理回路35を備えている。
【0027】
ここで、通信インタフェース31は、医用情報処理装置30をネットワークNWIに接続して他の装置と通信するための回路である。通信インタフェース31としては、例えば、ネットワークインタフェースカード(NIC)が使用可能となっている。以下の説明では、医用情報処理装置30と他の装置との間の通信に通信インタフェース31が介在する旨の記載を省略する。
【0028】
メモリ32は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hardware Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリと、それらメモリに付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路から構成されている。メモリ32は、例えば、本医用情報処理装置の医用情報処理プログラム等の各種プログラムと、データ記憶装置20から取得した患者情報及び健康状態データ、予め保存するテーブル、ルール及びモデル、過去分のデータ、予測したデータ、処理途中のデータ等の各種データとを記憶する。
【0029】
入力インタフェース33は、操作者(ユーザ)からの各種指示・命令・情報・選択・設定を医用情報処理装置本体に入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド(又はトラックパッド)、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ(又はタッチスクリーン)等によって実現される。入力インタフェース33は、処理回路35に接続されており、ユーザから受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路35へと出力する。この場合、入力インタフェース33は、ユーザがマウス、キーボード等の物理的な操作部品により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)をディスプレイ34に表示させてもよい。なお、本明細書において入力インタフェース33は物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路35へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース33の例に含まれる。以下の説明では、「ユーザによる入力インタフェース33の操作」を「ユーザの操作」ともいう。
【0030】
ディスプレイ34は、医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイと内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。ディスプレイ34は、例えば、患者情報、健康状態データ、健康状態モニタリングのプロトコルなど、任意のデータを適宜、表示可能である。ディスプレイ34は、表示部の一例である。
【0031】
処理回路35は、ユーザにより入力インタフェース33を介してから入力された指示に基づいて、メモリ32に記憶された医用情報処理プログラムを読み出し、これらに従って医用情報処理装置30を制御する。例えば、処理回路35は、メモリ32から読み出した医用情報処理プログラムに従って、医用情報処理装置30の各機能を実現させるプロセッサである。例えば、処理回路35は、コンピュータに、プロトコルに従ってモニタリングされる患者の健康状態データのうち、2つ以上の時点の当該健康状態データに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、当該患者の健康状態を評価する機能、当該評価した結果に基づいて、当該プロトコルを変更する時点の候補を生成する機能、当該変更する時点の候補を表示するように表示部を制御する機能、を実現させるための医用情報処理プログラムを実行してもよい。あるいは、処理回路35は、医用情報処理装置30の各機能のうち、更に他の機能をコンピュータに実現させるための医用情報処理プログラムを実行してもよい。ここで、各機能としては、例えば、データ取得機能35a、健康状態評価機能35b、時点算出機能35c、表示制御機能35d及びプロトコル処理機能35eなどがある。なお、各機能は、適宜、複数のプロセッサに分散させて実現してもよい。あるいは、各機能又は各機能の一部を、適宜、他の装置に実行させてもよい。例えば、各機能のうち、プロトコル処理機能35eをデータ記憶装置20又は図示しない他の装置に実行させてもよい。また例えば、データ取得機能35aのうち、健康状態データを加工する機能をデータ記憶装置20又は図示しない他の装置に実行させてもよい。
【0032】
次に、各機能としてのデータ取得機能35a、健康状態評価機能35b、時点算出機能35c、表示制御機能35d及びプロトコル処理機能35eについて順に述べる。但し、以下に説明する各機能の分担は、便宜的なものであり、適宜、変更可能である。ある機能が分担する処理を他の機能が分担する場合でも、処理回路35がその処理を実行することに変わりはないからである。例えば、データ取得機能35a、健康状態評価機能35b、時点算出機能35c及びプロトコル処理機能35eは、適宜、表示制御機能35dの機能を実行することにより、処理中又は処理後のデータ等をディスプレイ34に表示させてもよい。なお、各機能の分担が変更可能なことは、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0033】
データ取得機能35aは、プロトコルに従ってモニタリングされる患者の健康状態データを取得する。例えば、データ取得機能35aは、操作者の操作に応じて、入力インタフェース33から入力された患者IDに基づいて、当該患者IDに対応する患者情報及び健康状態データをデータ記憶装置20から取得し、当該患者情報及び健康状態データをメモリ32に保存する。
【0034】
ここで、プロトコルは、時系列に沿った健康状態データをモニタリングする健康状態モニタリングの実行計画であり、次の(a)~(f)等の少なくとも1つを定めることが可能となっている。(a)健康状態モニタリングの停止や開始、(b)データ計測頻度(増加、減少)、(c)データ計測タイミング(季節に限定、曜日に限定、時間に限定)、(d)計測データ種類(追加、減少、変更)、(e)来院時期、頻度、(f)電話診療やオンライン診療の時期、頻度。
【0035】
また、データ取得機能35aは、メモリ32内の健康状態データを加工し、当該加工した健康状態データを更にメモリに保存してもよい。例えば、データ取得機能35aは、活動量、体組成、血圧などの健康状態データを増悪確率に加工し、当該増悪確率を更にメモリ32に保存する。例えば、活動量、体組成、血圧などの健康状態データが良好な範囲にある場合、所定の低い値の増悪確率に加工してもよい。逆に、当該健康状態データが良好な範囲にない場合、所定の高い値の増悪確率に加工してもよい。具体的には例えば、活動量の範囲、体組成の範囲、血圧の範囲と、増悪確率の値とを関連付けたテーブルを予めメモリ32に保存しておき、当該テーブルに基づいて上記加工を実行してもよい。あるいは、テーブルに代えて、ルール又はモデルを用いてもよい。
【0036】
健康状態評価機能35bは、プロトコルに従ってモニタリングされる患者の健康状態データのうち、2つ以上の時点の当該健康状態データに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、当該患者の健康状態を評価する。
【0037】
時間変化成分は、健康状態データの時間変化を表すデータである。「時間変化成分」は、「変化成分」と呼んでもよく、「時間変化情報」や「変化情報」といった他の名称で呼んでもよい。この種の時間変化成分は、単位時間あたりの健康状態データ変化(dx/dt)、単位健康状態データ変化あたりの時間(dt/dx)、(単位換算しない)単なる健康状態データ変化(dx)、のいずれでもよい。また、時間変化成分は、変化なしを示す健康状態データ変化や時間変化(dx=0、dt=0)であってもよい。すなわち、時間変化がゼロであっても時間変化成分と呼ぶ。また、時間変化成分は、数値データ、又は段階(カテゴリ・2値)データ、であってもよい。また、時間変化成分は、1つ以上の時点の当該健康状態データに対応する変化成分であってもよい。この場合、時間変化成分は、前述した時間当たりの単純な変化に限らず、例えば、周波数、振幅、ステップ関数や符号関数の立ち上がり時間、パルス関数のパルス幅や振幅、デルタ関数の振幅、であってもよい。なお、これらの関数は、例示であり、時間変化成分は、何らかの関数に当てはめた場合の幅や振幅であってもよい。健康状態評価機能35bは、評価部の一例である。
【0038】
時点算出機能35cは、当該評価した結果に基づいて、当該プロトコルを変更する時点の候補を生成する。なお、時点の候補を生成することは、時点の候補を算出することと、時点の候補を選択することとを包含する。例えば、時点算出機能35cは、当該評価した結果に基づいて、当該プロトコルを変更する時点の候補を算出してもよい。あるいは、時点算出機能35cは、当該評価した結果に基づいて、当該プロトコルを変更する時点の候補を、プロトコル内の複数の時点から選択してもよい。いずれにしても、時点算出機能35cは、時点の候補を生成する。時点算出機能35cは、生成部の一例である。
【0039】
プロトコルを変更する時点は、現在でもよく、未来でもよい。プロトコルを変更する内容は、例えば上記(a)~(f)のうち、1つ以上であればよい。すなわち、プロトコルを変更する内容は、例えば上記(a)~(f)のうち、複数あってもよい。
【0040】
表示制御機能35dは、当該変更する時点の候補を表示するように表示部としてのディスプレイ34を制御する。例えば、表示制御機能35dは、患者情報と、健康状態データと、変更する時点の候補を含むプロトコルなどの、健康状態モニタリングに関する情報をディスプレイ34に表示させてもよい。また、表示制御機能35dは、変更する時点の候補と共に、当該プロトコルを変更する内容の候補を表示するようにディスプレイ34を制御してもよい。表示制御機能35dは、表示制御部の一例である。
【0041】
プロトコル処理機能35eは、操作者による入力インタフェース33の操作に応じて、プロトコルを作成する処理や変更する処理を実行する。例えば、プロトコル処理機能35eは、当該変更する候補の表示中、操作者の操作に応じて、いずれかの候補が選択されると、当該選択された候補に基づいて、プロトコルを変更する。また、プロトコル処理機能35eは、プロトコルを変更する前に、参考のための電子カルテを閲覧する電子カルテ閲覧処理を実行してもよい。また、プロトコル処理機能35eは、プロトコルを変更する際に、健康状態モニタリングの日程を変更する健康状態モニタリングスケジューリング処理を実行してもよい。また、プロトコル処理機能35eは、プロトコルを変更する前に、電話再診・オンライン診療受付のために患者に連絡するための電話再診・オンライン診療受付連絡処理を実行してもよい。
【0042】
次に、以上のように構成された医用情報処理装置を備えた医用情報処理システムの動作について図3のフローチャート及び図4乃至図6の模式図を用いて説明する。
【0043】
いま、データ記憶装置20は、病院外のモニタリング装置1-1から送信された健康状態データを患者情報に関連付けて保存しているとする。また、データ記憶装置20は、病院内の電子カルテシステム(図示せず)から取得した健康状態データ及び患者情報を互いに関連付けて保存しているとする。この状態でステップST10が開始される。
【0044】
ステップST10において、医用情報処理装置30の処理回路35は、プロトコルに従ってモニタリングされる患者の健康状態データを取得する。例えば、データ取得機能35aは、操作者の操作に応じて、入力インタフェース33から入力された患者IDに基づいて、当該患者IDに対応する患者情報及び健康状態データをデータ記憶装置20から取得し、当該患者情報及び健康状態データをメモリ32に保存する。
【0045】
ステップST10の後、ステップST20乃至ST30において、処理回路35は、プロトコルに従ってモニタリングされる患者の健康状態データのうち、2つ以上の時点の当該健康状態データに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、当該患者の健康状態を評価する。
【0046】
例えば、ステップST20において、処理回路35は、メモリ32から読み出した2つ以上の時点の当該健康状態データに基づいて、1つ以上の時間変化成分を算出する。具体的には図4に一例を示すように、今日の健康状態データと、3回前に取得された健康状態データとの差分を、時間変化成分ΔPとして算出する。なお、図4中、増悪確率Pは、例えば、健康状態データに対応してテーブル(図示せず)から読み出したスコアとしてもよく、ルール又はモデルを用いて計算した値としてもよい。このような増悪確率Pの算出方法としては、テーブルからスコアを検索する場合、四則演算で算出可能な場合、機械学習の学習済みモデルを用いて計算する場合などがある。あるいは、加工前の健康状態データから増悪確率(加工後の健康状態データ)を求めた過去の事例に基づいて、今回の健康状態データから増悪確率を算出してもよい。あるいは、加工前の健康状態データと増悪確率とを関連付けたガイドラインを用いて、増悪確率を算出してもよい。また図4中、今日は、2020/7/10 18:07であり、今日の健康状態データは、増悪確率P=0.30である。3回前は、2020/6/16 18:07であり、その健康状態データは、増悪確率P=0.31である。このため、時間変化成分ΔPは、次のように算出される。
【0047】
ΔP=0.31-0.30=0.01
また例えば、ステップST30において、処理回路35は、算出した時間変化成分が閾値以下か否かを判定する。閾値は、例えば0.1である。ステップST30の判定の結果、否の場合には患者の健康状態が不安定である旨を評価して、ステップST80に移行する。一方、ステップST30の判定の結果、閾値以下の場合には患者の健康状態が安定している旨を評価して、ステップST40に移行する。この例では、ΔPは、0.01であり、閾値「0.1」以下である。このため、処理回路35の動作は、ステップST40に移行する。
【0048】
ステップST30の後、ステップST40において、処理回路35は、プロトコルの変更時点の候補を算出する。なお、ここでいう「算出」は、加減乗除の四則演算や、論理積や論理和などの論理演算などを含む。四則演算は、暦の計算に用いる法演算を含む。具体的には図5に一例を示すように、処理回路35は、「今日」と、健康状態データに付与された日時とを比較し、論理積(AND)の演算により、「今日」の日付を変更時点の候補として算出する。続いて、処理回路35は、「外来予約」と、健康状態データに付与された日時とを比較し、論理積(AND)の演算により、「外来予約」の日付を変更時点の候補として算出する。「外来予約」の日付が複数ある場合には、最も早い日付を選択する。あるいは、変更時点の候補は、今日の日付に所定期間を加算した日付として算出してもよい。但し、ステップST40は、算出に限らず、プロトコルに定められた計画(健康状態モニタリングのスケジュール)からの選択又は抽出などを包含する生成処理によって実現されてもよい。いずれにしても、図5に示す例では、処理回路35は、(1)2020/7/10 (今日)の日付と、(2)2020/7/12 (外来予約)の日付とを、プロトコルの変更時点の候補として算出する。
【0049】
ステップST40の後、ステップST50において、処理回路35は、当該変更時点の候補を含むプロトコルをディスプレイ34に表示させる。ディスプレイ34は、例えば図6に示すように、当該変更時点の候補を含むプロトコルと、患者情報とを表示する。図6中、横軸は日付を表す。縦軸は、健康状態モニタリングの期間と、「活動量」、「体組成」及び「血圧」等の健康状態データと、変更時点の候補とを表す。図6のプロトコル中、左側から6/16過ぎの[退]マークに至るまでの網掛け期間は、入院期間を表す。健康状態データにおける枠内の数値は、当日の計測回数を表す。例えば、血圧[3]は、当日に血圧を3回計測したことを表す。変更時点の行において、7/10に対応するカレンダーマークC1と、7/12に対応するカレンダーマークC2とは、それぞれ変更時点の候補が「7/10」及び「7/12」であることを表す。なお、例えば、カレンダーマークC1,C2の近傍に「停止」や「データ計測頻度の減少」等の如き、変更内容の候補を表示してもよい。ここで、例えば、操作者の操作により、カーソル34aがカレンダーマークC1上に移動してクリック操作されると、図示しないカレンダーがウインドウ表示される。当該カレンダーは、変更時点を入力又は選択可能なものであり、変更時点に関連付けて変更理由を保存できることが好ましい。変更理由は、例えば、ステップST30におけるΔPが閾値以下である旨の判定結果や患者の健康状態が安定している旨の評価結果を含んでもよく、更に、ステップST20のΔPの算出結果を含めてもよい。また、当該カレンダーは、プロトコルの変更内容の候補を含んでおり、変更内容の候補の選択により、変更内容を入力できることが好ましい。
【0050】
ステップST50の後、ステップST60において、処理回路35は、操作者の操作に応じて、変更時点の候補のいずれかにプロトコルを変更するか否かを判定する。ステップST60の判定の結果、否の場合にはプロトコルを変更せず、ステップST80に移行する。一方、ステップST60の判定の結果、変更する場合にはステップST70に移行する。
【0051】
ステップST60の後、ステップST70において、処理回路35は、ステップST60における操作者の操作に基づいて、プロトコルを変更する。
【0052】
ステップST70の後、ステップST80において、処理回路35は、最新のプロトコルをディスプレイ34に表示させる。
【0053】
上述したように第1の実施形態によれば、プロトコルに従ってモニタリングされる患者の健康状態データのうち、2つ以上の時点の前記健康状態データに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、当該患者の健康状態を評価する。また、当該評価した結果に基づいて、当該プロトコルを変更する時点の候補を生成する。また、当該変更する時点の候補を表示するように表示部を制御する。
【0054】
このように、モニタリング中の健康状態データの時間変化成分に基づく評価結果に応じて、プロトコルを変更する時点の候補を表示する構成により、健康状態モニタリングのプロトコルを適切な状態に管理することができる。
【0055】
また、第1の実施形態によれば、当該変更する時点の候補と共に、当該プロトコルを変更する内容の候補を表示するように表示部を制御してもよい。この場合、プロトコルをどのように変更するかを変更時点に関連付けてユーザに提示することができる。
【0056】
また、第1の実施形態によれば、上述した医用情報処理装置と、当該医用情報処理装置に用いられる健康状態データを記憶するデータ記憶装置と、を備えた医用情報処理システムを設けてもよい。この場合、第1の実施形態の作用効果を得ることができる医用情報処理システムを実現することができる。
【0057】
なお、以上のような第1の実施形態は、以下の第1変形例又は第2変形例のように変形してもよい。以下、順に説明する。
【0058】
[第1の実施形態の第1変形例]
第1変形例は、予測した健康状態データを用いて将来の健康状態を評価する場合の例である。この場合、処理回路35の健康状態評価機能35bは、前述した機能に加え、2つ以上の時点の健康状態データのうち、少なくとも1つの時点の健康状態データを予測して当該予測した健康状態データと、残りの健康状態データとに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、前記患者の健康状態を評価する。
【0059】
言い換えると例えば、健康状態評価機能35bは、2つ以上の時点を(a+b)個の時点とするとき(a及びbはそれぞれ自然数)、モニタリングされるa個以上の時点の健康状態データに基づいて、b個の時点の健康状態データを予測してもよい。また、健康状態評価機能35bは、モニタリングされるa個の時点の健康状態データと、当該予測されたb個の時点の健康状態データとに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、患者の健康状態を評価してもよい。
【0060】
ここで、「a個の時点の健康状態データ」は、時間変化成分の算出に用いる健康状態データを意味する。「a個以上の時点の健康状態データ」は、未来の健康状態データの予測に用いる取得済みの健康状態データを意味し、前述した時間変化成分の算出に用いるa個の健康状態データを含んでいる。本変形例では、a=1、b=1を用いるが、これに限定されない。例えば、今日(6/16)の日付より未来の3個の日付(6/26, 7/3, 7/10)の健康状態データを予測する場合、b=3であるが、a=1に限らない。例えば、過去の1つの時点の日付(6/6)と、今日の日付(6/16)とを用いる場合、a=2になる。
【0061】
これに伴い、1つ以上の時間変化成分ΔPは、任意の日付の組合せで算出可能である。例えば、過去の1つの日付(6/6)の健康状態データと、今日の日付(6/16)の健康状態データとの間の時間変化成分ΔP(6/6, 6/16)を算出してもよい。
【0062】
同様に、今日(6/16)の健康状態データと、10日後の日付(6/26)の健康状態データとの間の時間変化成分ΔP(6/16, 6/26)を算出してもよい。
【0063】
また、10日後の日付(6/26)の健康状態データと、その1週間後の日付(7/3)の健康状態データとの間の時間変化成分ΔP(6/26, 7/3)を算出してもよい。
【0064】
また、10日と1週間後の日付(7/3)の健康状態データと、その1週間後の日付(7/10)の健康状態データとの間の時間変化成分ΔP(7/3, 7/10)を算出してもよい。
【0065】
あるいは、隣り合う時点に限らず、今日(6/16)の健康状態データと、所望の予測日(7/10)の健康状態データとの間の時間変化成分ΔP(6/16, 7/10)を算出してもよい。
【0066】
複数の時間変化成分ΔPを算出した場合、閾値以下か否かの判定は、各々のΔP(6/6, 6/16),ΔP(6/16, 6/26),ΔP(6/26, 7/3),ΔP(7/3, 7/10),ΔP(6/16, 7/10)について実行してもよい。また、全ての判定結果がいずれも閾値以下の場合に、プロトコルの変更時点の候補を算出するようにしてもよい。この場合、例えば今日(6/16)と予測日(7/10)との間のΔP(6/16, 7/10)が閾値以下でも、他のΔPがΔP(6/6, 6/16),ΔP(6/16, 6/26),ΔP(6/26, 7/3),ΔP(7/3, 7/10)が閾値を超えて変動している場合に、妥当な評価結果(閾値を超えて不安定)を出すことができる。
【0067】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0068】
このような第1変形例では、図7に示すように、ステップST20及びST40の動作が第1の実施形態とは異なる。
【0069】
すなわち、ステップST20において、処理回路35は、少なくとも1つの時点の健康状態データを予測して当該予測した健康状態データと、残りの健康状態データとに対応する1つ以上の時間変化成分ΔPを算出する。具体的には例えば、処理回路35は、モニタリングされた1個以上の時点の健康状態データから1個の時点の健康状態データを予測する。例えば、1月前から今日(6/16)までモニタリングされた増悪確率Pの推移を予測日(7/10)の時点に外挿することにより、予測日(7/10)の増悪確率Pを予測する。この第1変形例では、予測日(7/10)の増悪確率Pを0.30と予測するが、この値に限定されない。しかる後、処理回路35は、今日(6/16)の健康状態データと、予測日(7/10)の健康状態データとの差分を、時間変化成分ΔPとして算出する。図7中、今日は、2020/6/16 18:07であり、今日の健康状態データは、増悪確率P=0.31である。予測日は、2020/7/10 18:07であり、その健康状態データは、増悪確率P=0.30である。このため、時間変化成分ΔPは、次のように算出される。
【0070】
ΔP=0.31-0.30=0.01
ステップST20の後、前述同様に、処理回路35は、ステップST30を実行し、ステップST40に移行する。
【0071】
ステップST30の後、ステップST40において、処理回路35は、プロトコルの変更時点の候補を算出する。例えば図7に一例を示すように、処理回路35は、「今日」と、健康状態データに付与された日時とを比較し、論理積(AND)の演算により、「今日」の日付を変更時点の候補として算出する。
【0072】
続いて、処理回路35は、予測日の日付「2020/7/10」と、健康状態データに付与された日時とを比較し、論理積(AND)の演算により、予測日の日付「2020/7/10」を変更時点の候補として算出する。
【0073】
また、当該予測した未来の日付(2020/7/10)を変更時点の候補として算出する。続いて、処理回路35は、「外来予約」と、健康状態データに付与された日時とを比較し、論理積(AND)の演算により、「外来予約」の日付を変更時点の候補として算出する。「外来予約」の日付が複数ある場合には、最も早い日付を選択する。あるいは、変更時点の候補は、予測日の日付又は今日の日付に所定期間を加算した日付として算出してもよい。
【0074】
但し、ステップST40は、算出に限らず、プロトコルに定められた計画(健康状態モニタリングのスケジュール)からの選択又は抽出などを包含する生成処理によって実現されてもよい。
【0075】
いずれにしても、図7に示す第1変形例では、処理回路35は、(1)2020/6/16 (今日)の日付と、(2)2020/7/10 (予測日)の日付と、(3)2020/7/12 (外来予約)の日付とを、プロトコルの変更時点の候補として算出する。
【0076】
ステップST40の後、ステップST50において、処理回路35は、当該変更時点の候補を含むプロトコルをディスプレイ34に表示させる。ディスプレイ34は、例えば図8に示すように、当該変更時点の候補を含むプロトコルと、患者情報と、予測した健康状態データ(増悪確率予測:7/10は閾値より低い)とを表示する。変更時点の候補を示す3つのカレンダーマークC1,C2,C3は、ステップST40で求めた3つの日付に対応している。なお、予測した健康状態は、プロトコルの変更時点を求めた前提条件を意味している。これにより、第1変形例のステップST40が終了する。
【0077】
以下、前述同様に、ステップST50以降の処理が実行される。
【0078】
以上のような第1変形例によれば、1つ以上の時間変化成分に基づいて患者の健康状態を予測し、当該予測した健康状態を評価する。従って、第1の実施形態の作用効果に加え、予測した健康状態の評価に基づいて、プロトコルを変更する時点の候補を生成することができる。
【0079】
[第1の実施形態の第2変形例]
第2変形例は、健康状態データを異なる時間変化成分に分解して健康状態を評価する場合の例である。この場合、処理回路35の健康状態評価機能35bは、前述した機能に加え、2つ以上の時点の健康状態データを異なる時間変化成分に分解して得られる複数の時間変化成分のうち、少なくとも1つの時間変化成分に基づいて、健康状態を評価する。ここで、健康状態評価機能35bは、1つの時間変化成分で健康状態を評価してもよく、2つ以上の各々の時間変化成分で健康状態を評価してもよく、2つ以上の時間変化成分を統合して健康状態を評価してもよい。
【0080】
また、異なる時間変化成分に分解することは、周波数分解することであってもよい。周波数分解は、例えば、健康状態データを高周波フィルタと低周波フィルタとで別々にフィルタリング処理することにより実行してもよい。
【0081】
また、異なる時間変化成分に分解することは、周期成分分解することであってもよい。周期成分分解は、前述同様に、健康状態データを高周波フィルタと低周波フィルタ等とで別々にフィルタリング処理することにより実行してもよい。例えば図9に示すように、健康状態評価機能35bは、2つ以上の時点の健康状態データを周期分解して得られる複数の時間変化成分のうち、少なくとも1つの時間変化成分に基づいて、健康状態を評価してもよい。周期分解で得られる複数の時間変化成分は、例えば、閾値を超える長周期成分と、閾値以下の短周期成分である。健康状態評価機能35bは、例えば、長周期成分に対して、(L1)パワースペクトル解析でパワーを計測する処理、(L2)周波数解析で周波数を算出する処理、(L3)ルールベース、又は(L4)周期成分の代表値を算術演算する処理、の処理を施すことにより、健康状態を評価してもよい。また例えば、健康状態評価機能35bは、例えば、短周期成分に対して、(S1)パワースペクトル解析、(S2)周波数解析、(S3)ルールベース、又は(S4)周期成分の代表値算術演算の処理を施すことにより、健康状態を評価してもよい。また、健康状態評価機能35bは、長周期成分に基づいて安定性を評価してもよく、短周期成分に基づいて悪化の有無を評価してもよい。すなわち、健康状態評価機能35bは、健康状態データを異なる時間変化成分に分解し、当該分解により得られた1つ以上の短周期成分を用いて健康状態の悪化の有無を評価してもよく、当該分解により得られた1つ以上の長周期成分を用いて健康状態の安定性を評価してもよい。
【0082】
また、健康状態評価機能35bは、当該悪化の有無の評価結果と、当該安定性の評価結果とに基づいて、進行中の健康状態モニタリングの効果を判定してもよい。例えば、[A]悪化の有無の評価結果と、[B]安定性の評価結果とに基づき、以下のように、[C]健康状態モニタリングの効果を判定してもよい。
[A]悪化有り、[B]安定、[C]効果無し。 ・・・(1)
[A]悪化有り、[B]不安定、[C]効果無し。・・・(2)
[A]悪化なし、[B]安定、[C]効果あり。 ・・・(3)
[A]悪化なし、[B]不安定、[C]効果あり。・・・(4)
また、健康状態評価機能35bは、上記(1)乃至(4)の場合の判定結果に応じて、次のような処理をしてもよい。
【0083】
上記(1)の場合、例えば、アラートを出力する処理と、医師の診察を受けるように患者を促すための患者の連絡先を提示する処理とを実行してもよい。提示する処理は、例えば、表示制御機能35dによりディスプレイ34に表示させる処理を含んでもよい。これは以下の場合も同様である。
【0084】
上記(2)の場合、例えば、アラートを出力する処理と、医師の診察を受けるように患者を促すための患者の連絡先を提示する処理とを実行してもよい。
【0085】
上記(3)の場合、例えば、健康状態モニタリングを減弱するようにプロトコルの変更候補を提示する処理を実行してもよい。
【0086】
上記(4)の場合、例えば、健康状態モニタリングを継続又は増強するようにプロトコルの変更候補を提示する処理を実行してもよい。
【0087】
また、異なる時間変化成分に分解することは、期間に分解することであってもよい。すなわち、健康状態評価機能35bは、2つ以上の時点の健康状態データを期間に分解して得られる複数の時間変化成分のうちの1つ以上の時間変化成分に基づいて、健康状態を評価してもよい。期間としては、例えば、予め設定した日付までの期間と、当該設定した日付より後の期間とが使用可能となっている。すなわち、互いに重ならない複数の期間が使用可能となっている。
【0088】
また、異なる時間変化成分に分解することは、時点の集合(以下、時点セットともいう)に分解することであってもよい。時点の集合は、少なくとも1つの時点の集まり(又は時点の組合せ)である。例えば図10に示すように、健康状態評価機能35bは、2つ以上の時点の健康状態データを時点セットに分解して得られる複数の時間変化成分のうちの1つ以上の時間変化成分に基づいて、健康状態を評価してもよい。時点セットに分解して得られる複数の時間変化成分は、例えば、4点の時点(H1~H4)のうち、2つの時点(H1,H3)を含む第1時点セットと、1つの時点(H2)を含む第2時点セットである。健康状態評価機能35bは、例えば、第1時点セットの2つの時点(の健康状態データ)に対して、(TA1)値の変化量、傾き、(TA2)ルールベースモデル(例、形状の比較、良好なときの傾きの形状と、算出時の傾きの形状とを比較)、(TA3)機械学習モデル、に基づく処理を施すことにより、健康状態を評価してもよい。また例えば、健康状態評価機能35bは、例えば、第2時点セットの1つの時点に対して、(TB1)ルールベース、又は(TB2)機械学習モデル、に基づく処理を施すことにより、健康状態を評価してもよい。
【0089】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0090】
以上のように構成された第2変形例によれば、2つ以上の時点の健康状態データを異なる時間変化成分に分解して得られる複数の時間変化成分のうち、少なくとも1つの時間変化成分に基づいて、健康状態を評価する。従って、第1の実施形態の作用効果に加え、健康状態データの時系列に沿った動きを、分解した異なる時間変化成分に応じて患者の健康状態を評価することができる。
【0091】
また、第2変形例によれば、当該異なる時間変化成分に分解することは、周波数分解することであってもよい。この場合、第1の実施形態の作用効果に加え、健康状態データの時系列に沿った動きを分解した周波数に応じて患者の健康状態を評価することができる。
【0092】
また、第2変形例によれば、当該異なる時間変化成分に分解することは、周期成分分解することであってもよい。この場合、第1の実施形態の作用効果に加え、健康状態データの時系列に沿った動きを分解した周期成分に応じて患者の健康状態を評価することができる。
【0093】
また、第2変形例によれば、当該異なる時間変化成分に分解することは、期間に分解することであってもよい。この場合、第1の実施形態の作用効果に加え、健康状態データの時系列に沿った動きを分解した期間に応じて患者の健康状態を評価することができる。
【0094】
また、第2変形例は、当該異なる時間変化成分に分解することは、時点の集合に分解することであってもよい。この場合、第1の実施形態の作用効果に加え、健康状態データの時系列に沿った動きを分解した時点の集合に応じて患者の健康状態を評価することができる。
【0095】
また、第2変形例によれば、健康状態データを異なる時間変化成分に分解し、当該分解により得られた1つ以上の短周期成分を用いて健康状態の悪化の有無を評価し、当該分解により得られた1つ以上の長周期成分を用いて健康状態の安定性を評価するようにしてもよい。この場合、第1の実施形態の作用効果に加え、周期成分に応じて、健康状態の悪化の有無と、健康状態の安定性とを評価することができる。
【0096】
<第2の実施形態>
図11は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置の構成を示すブロック図であり、図2と略同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0097】
第2の実施形態は、第1の実施形態の構成に加え、健康状態の悪化の有無を評価する構成となっている。これに伴い、処理回路35は、図11に示すように、悪化評価機能35fを更に備えている。
【0098】
悪化評価機能35fは、前述した2つ以上の時点の健康状態データのうち、少なくとも最新の時点の健康状態データに基づいて、健康状態の悪化の有無を判定する。なお、悪化評価機能35fは、悪化判定機能と呼んでもよい。悪化評価機能35fは、判定部の一例である。
【0099】
また、健康状態評価機能35bは、前述した機能に加え、当該悪化の無いことが判定された場合、健康状態の安定性を評価する。
【0100】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の第1変形例又は第2変形例に適用してもよい。
【0101】
次に、以上のように構成された医用情報処理装置の動作について図12のフローチャート及び図13乃至図15の模式図を用いて説明する。
【0102】
いま、前述同様にステップST10が実行され、患者情報及び健康状態データがメモリ32に保存されたとする。
【0103】
ステップST10の後、ステップST19aにおいて、処理回路35は、メモリ32から読み出した2つ以上の時点の健康状態データのうち、少なくとも最新の時点の健康状態データに基づいて、健康状態が悪化したか否かに応じて悪化の有無を判定する。この判定の結果、健康状態が悪化した場合にはステップST19bに移行する。
【0104】
ステップST19bにおいて、処理回路35は、例えば図13に示す如き、アラートを含むプロトコルをディスプレイ34に表示させる。図13中、最新の時点の健康状態データの日付に対応する縦形領域に赤い斜線で示すアラートと、アラート上に悪化評価機能の判定結果「悪化」とがディスプレイ34に表示されている。また、患者に電話再診又はオンライン診療の受付を促す連絡をするためのボタンBt3の表示色が赤色に変更される。このボタンBt3がカーソル34aにより選択されて操作されると、患者の連絡先(例、電話番号、メールアドレス)が表示される。以下、操作者による電話及び/又はメール送信により、健康状態の悪化と、電話再診又はオンライン診療の受付を促す連絡が患者に対して行われる。この連絡は、健康状態の悪化に伴い、患者を病院に呼ぶ必要が生じたために行われる。
【0105】
ステップST19bの後、ステップST19cにおいて、処理回路35は、患者からの回答に応じて、プロトコルを変更する。ステップST19cの終了後、ステップST80に移行する。
【0106】
一方、ステップST19aの判定の結果、否の場合(悪化が無い場合)には、前述したステップST20に移行する。
【0107】
ステップST20において、処理回路35は、前述同様に、2つ以上の時点の当該健康状態データに基づいて、1つ以上の時間変化成分を算出する。
【0108】
ステップST20の後、ステップST30において、処理回路35は、前述同様に、算出した時間変化成分が閾値以下か否かを判定する。なお、時間変化成分が閾値以下の場合、処理回路35は、健康状態に安定性があることを評価して、ステップST40に移行する。時間変化成分が閾値を超えた場合、処理回路35は、健康状態が不安定であることを評価して、ステップST80に移行する。
【0109】
ステップST30の後、ステップST40において、処理回路35は、プロトコルの変更時点の候補を算出する。例えば、処理回路35は、ステップST30に用いた時間変化成分の元となる健康状態データの日付を、変更時点の候補として算出する。候補の日付は、今日の日付、近い未来の外来予約日、及び予測した未来の日付、のいずれでもよい。
【0110】
ステップST40の後、ステップST50において、処理回路35は、当該変更時点の候補を含むプロトコルをディスプレイ34に表示させる。ディスプレイ34は、例えば図14に示すように、当該変更時点の候補を含むプロトコルと、患者情報とを表示する。悪化評価の結果「良」は、ステップST19aの判定の結果、悪化が無い場合に対応している。安定性評価の結果「安定」は、ステップST30の判定の結果、閾値以下の場合に対応している。また、安定性評価の結果の日付は、予測した未来の日付に対応している。
【0111】
ステップST50の後、ステップST60において、処理回路35は、操作者の操作に応じて、変更時点の候補のいずれかにプロトコルを変更するか否かを判定する。ステップST60の判定の結果、否の場合にはプロトコルを変更せず、ステップST80に移行する。一方、ステップST60の判定の結果、変更する場合にはステップST70に移行する。
【0112】
ステップST60の後、ステップST70において、処理回路35は、ステップST60における操作者の操作に基づいて、プロトコルを変更する。例えば図14中、操作者の操作により、カーソルが安定性評価の結果「安定」上に移動すると、所定のメッセージ「健康状態モニタリング減弱可能」が表示される。安定性評価の結果上のカーソルが操作されると、例えば、健康状態モニタリングのスケジュールが現在から安定性評価の対象日に減弱される。この処理は、例えば図15に示すように、健康状態の悪化が無い状態(良好な状態、ST19a;NO)が安定して所定期間続く場合(ST30:YES)には、健康状態モニタリングの期間を減弱(短縮)する状況に対応する。前述した安定性評価の対象日は、図15に示す例では外来予定日に対応するが、これに限定されない。すなわち、安定性評価の対象日は、評価結果が安定を示す期間中で且つ今日以降であれば、任意の日付を指定できる。但し、患者の負担を軽減させる観点から、早めの日付が好ましい。
【0113】
なお、これに限らず、操作者の操作により、カーソルを健康状態モニタリングスケジューリングのボタンBt2上に配置し、当該カーソルによるボタンBt2の操作により、健康状態モニタリングのスケジュール変更画面をディスプレイ34に表示させてもよい。
【0114】
ステップST70の後、ステップST80において、処理回路35は、最新のプロトコルをディスプレイ34に表示させる。
【0115】
上述したように第2の実施形態によれば、2つ以上の時点の健康状態データのうち、少なくとも最新の時点の健康状態データに基づいて、健康状態の悪化の有無を判定する。また、当該悪化の無いことが判定された場合、健康状態の安定性を評価する。これにより、第1の実施形態の作用効果に加え、健康状態の悪化の有無を評価することができる。
【0116】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、プロトコルに従ってモニタリングされる患者の健康状態データのうち、2つ以上の時点の前記健康状態データに対応する1つ以上の時間変化成分に基づいて、当該患者の健康状態を評価する。また、当該評価した結果に基づいて、当該プロトコルを変更する時点の候補を生成する。また、当該変更する時点の候補を表示するように表示部を制御する。これにより、健康状態モニタリングのプロトコルを適切な状態に管理することができる。
【0117】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1図2又は図11における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0118】
なお、以上のような医用情報処理装置、医用情報処理システム(又は医用情報処理プログラム)は、以下の[1]~[9]に示すように、表現してもよい。
【0119】
[1]健康状態データの2つ以上の時点のデータから得られる1つ以上の時間変化成分を用いて健康状態を評価する健康状態評価部と、前記健康状態の評価により、健康状態モニタリングのプロトコルを変える時点を示す時点算出部と、前記健康状態モニタリング、のプロトコルを変える時点を表示する表示部と、を備えた医用情報処理装置。
【0120】
[2]前記表示部は、前記プロトコルを変える時点の表示に加えて、前記プロトコルを変える内容を表示する、上記[1]記載の医用情報処理装置。
【0121】
[3]前記健康状態評価部は、前記1つ以上の時間変化成分を用いて健康状態を予測し、前記予測した健康状態を評価する、上記[1]又は[2]記載の医用情報処理装置。
【0122】
[4]前記健康状態評価部は、前記健康状態データを周波数分解して得られた1つ以上の時間変化成分を用いて、健康状態を評価する、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の医用情報処理装置。
【0123】
[5]前記健康状態評価部は、前記健康状態データを周期成分分解して得られた1つ以上の時間変化成分を用いて、健康状態を評価する、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の医用情報処理装置。
【0124】
[6]前記健康状態評価部は、前記健康状態データを期間に分解して得られた1つ以上の時間変化成分を用いて、健康状態を評価する、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の医用情報処理装置。
【0125】
[7]前記健康状態評価部は、前記健康状態データを時点セットに分解して得られた1つ以上の時間変化成分を用いて、健康状態を評価する、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の医用情報処理装置。
【0126】
[8]健康状態データを2つ以上の異なる時間変化成分に分解する成分分解部と、前記成分分解部により得られた1つ以上の短周期成分を用いて健康状態の悪化を評価する悪化評価部と、前記成分分解部により得られた1つ以上の長周期成分を用いて健康状態の安定性を評価する安定性評価部と、前記悪化評価部による評価結果と前記安定性評価部による評価結果とに応じて、進行中の健康状態モニタリング計画の効果を判定する効果判定部と、を備えた医用情報処理装置。
【0127】
[9]上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の医用情報処理装置と、
前記医用情報処理装置に用いられる前記健康状態データを記憶するデータ記憶装置と、
を備えた医用情報処理システム。但し、これに限らず、上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の医用情報処理装置は、前記健康状態データを記憶するデータ記憶装置を備えてもよい。
【0128】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1-1,1-2 モニタリング装置
2-1,2-2 データ取得部
3-1,3-2 データ通信部
10 ゲートウェイ装置
20 データ記憶装置
30 医用情報処理装置
31 通信インタフェース
32 メモリ
33 入力インタフェース
34 ディスプレイ
34a カーソル
35 処理回路
35a データ取得機能
35b 健康状態評価機能
35c 時点算出機能
35d 表示制御機能
35e プロトコル処理機能
35f 悪化評価機能
Bt1,Bt2,Bt3 ボタン
C1,C2,C3 カレンダーマーク
NWO,NWI ネットワーク
図1
図2
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図10
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