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特許7555756インプリントシステム、インプリント方法、および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】インプリントシステム、インプリント方法、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240917BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020135069
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030811
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯野 諭
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121694(JP,A)
【文献】特開2017-041554(JP,A)
【文献】特開2016-100428(JP,A)
【文献】特開2017-224812(JP,A)
【文献】特開2019-212674(JP,A)
【文献】特開2020-047733(JP,A)
【文献】特表2008-511972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027,21/30
B29C 43/58、59/02
G03F 7/00、9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のショット領域の上のインプリント材と型とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させることにより前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置を有するインプリントシステムであって、
前記型を保持する型保持部と、
前記型保持部によって保持された前記型の側面に力を加えて前記型のパターン領域を変形させる変形機構と、
前記変形機構を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記変形機構によって前記型に力を加えたときの前記型の応答特性に基づいて、前記型と前記インプリント材とを接触させる前に前記変形機構により前記型に事前荷重をかけておき、前記型と前記インプリント材との接触が完了した後、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させるように構成され、
前記応答特性は、前記型と前記インプリント材とを接触させた状態における前記変形機構の駆動力に対する前記型の変形量の関係を示す特性である、ことを特徴とするインプリントシステム
【請求項2】
前記制御部は、複数の型のそれぞれの予め得られた応答特性から、前記型保持部によって保持された前記型に対応する前記応答特性取得る、ことを特徴とする請求項1記載のインプリントシステム
【請求項3】
基板のショット領域の上のインプリント材と型とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させることにより前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置を有するインプリントシステムであって、
前記型を保持する型保持部と、
前記型保持部によって保持された前記型の側面に力を加えて前記型のパターン領域を変形させる変形機構と、
前記変形機構を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記変形機構によって前記型に力を加えたときの前記型の応答特性に基づいて、前記型と前記インプリント材とを接触させる前に前記変形機構により前記型に事前荷重をかけておき、前記型と前記インプリント材との接触が完了した後、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させるように構成され、
前記制御部は、第1ショット領域に対する前記インプリント処理において前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させた結果から、前記型保持部によって保持された前記型に対応する前記応答特性取得る、ことを特徴とするンプリントシステム
【請求項4】
基板のショット領域の上のインプリント材と型とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させることにより前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置を有するインプリントシステムであって、
前記型を保持する型保持部と、
前記型保持部によって保持された前記型の側面に力を加えて前記型のパターン領域を変形させる変形機構と、
前記変形機構を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記変形機構によって前記型に力を加えたときの前記型の応答特性に基づいて、前記型と前記インプリント材とを接触させる前に前記変形機構により前記型に事前荷重をかけておき、前記型と前記インプリント材との接触が完了した後、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させるように構成され、
前記制御部は、前記型保持部によって保持された前記型の前記応答特性と基準となる型の前記応答特性との比に基づいて、前記事前荷重の値決定る、ことを特徴とするンプリントシステム
【請求項5】
前記制御部は、更に、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差を低減するために前記変形機構を駆動する際の当該駆動の向きが一定となるように、前記事前荷重の値決定る、ことを特徴とする請求項に記載のインプリントシステム
【請求項6】
基板のショット領域の上のインプリント材と型とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させることにより前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置を有するインプリントシステムであって、
前記型を保持する型保持部と、
前記型保持部によって保持された前記型の側面に力を加えて前記型のパターン領域を変形させる変形機構と、
前記変形機構を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記変形機構によって前記型に力を加えたときの前記型の応答特性に基づいて、前記型と前記インプリント材とを接触させる前に前記変形機構により前記型に事前荷重をかけておき、前記型と前記インプリント材との接触が完了した後、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させるように構成され、
前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差を低減するための前記変形機構の駆動は、線形成分の重ね合わせ誤差を低減するための第1駆動と、高次成分の重ね合わせ誤差を低減するための、前記第1駆動の後の残ストロークで行う第2駆動と、を含むことを特徴とするンプリントシステム
【請求項7】
基板のショット領域の上のインプリント材と型とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させることにより前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント方法であって、
型保持部によって保持された前記型の側面に力を加えて前記型のパターン領域を変形させる変形機構によって前記型に力を加えたときの前記型の応答特性を取得する工程と、
前記型と前記インプリント材とを接触させる前に、前記取得された応答特性に基づいて、前記変形機構により前記型に事前荷重をかける工程と、
前記変形機構により前記型に前記事前荷重がかけられた状態で前記型と前記インプリント材とを接触させる工程と、
前記型と前記インプリント材との接触が完了した後、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させる工程と、
を有し、
前記型の応答特性は、
前記型と前記インプリント材とを接触させた状態における前記変形機構の駆動力に対する前記型の変形量の関係を示す応答特性、または、
第1ショット領域に対する前記インプリント処理において前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させた結果から取得された応答特性、を含む
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項8】
基板のショット領域の上のインプリント材と型とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させることにより前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント方法であって、
型保持部によって保持された前記型の側面に力を加えて前記型のパターン領域を変形させる変形機構によって前記型に力を加えたときの前記型の応答特性を取得する工程と、
前記型と前記インプリント材とを接触させる前に、前記取得された応答特性に基づいて、前記変形機構により前記型に事前荷重をかける工程と、
前記変形機構により前記型に前記事前荷重がかけられた状態で前記型と前記インプリント材とを接触させる工程と、
前記型と前記インプリント材との接触が完了した後、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させる工程と、
を有し、
前記事前荷重の値は、前記型保持部によって保持された前記型の前記応答特性と基準となる型の前記応答特性との比に基づいて決定された値である、ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項9】
基板のショット領域の上のインプリント材と型とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させることにより前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント方法であって、
型保持部によって保持された前記型の側面に力を加えて前記型のパターン領域を変形させる変形機構によって前記型に力を加えたときの前記型の応答特性を取得する工程と、
前記型と前記インプリント材とを接触させる前に、前記型の応答特性に基づいて、前記取得された応答特性に基づいて、前記変形機構により前記型に事前荷重をかける工程と、
前記変形機構により前記型に前記事前荷重がかけられた状態で前記型と前記インプリント材とを接触させる工程と、
前記型と前記インプリント材との接触が完了した後、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させる工程と、
を有し、
前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差を低減するための前記変形機構の駆動は、線形成分の重ね合わせ誤差を低減するための第1駆動と、高次成分の重ね合わせ誤差を低減するための、前記第1駆動の後の残ストロークで行う第2駆動と、を含むことを特徴とするインプリント方法。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のインプリントシステムを用いて基板の上にパターンを形成する工程と、
前記工程において前記パターンが形成された基板の処理を行う工程と、
を含み、前記処理が行われた前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントシステム、インプリント方法、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置は、基板のショット領域上のインプリント材と型とを接触させ、インプリント材を硬化させることによって、基板のショット領域の上にインプリント材の硬化物からなるパターンを形成する。インプリント装置は、ショット領域と型(のパターン領域)との重ね合わせ誤差を低減するために、型の側面に力を加えることによって型のパターン領域を変形させる変形機構を備えうる。
【0003】
特許文献1には、変形機構の駆動量のプリセット量を目標駆動量よりも常に大きくなるようにする(あるいは、常に小さくなるようにする)ことで、変形機構の駆動方向の違いによるヒステリシスの影響をなくす技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、型のパターン領域を変形させる型形状補正機構と、基板のパターン領域を変形させる加熱機構との双方を用いて型のパターン領域と基板のパターン領域との形状の差を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-212674号公報
【文献】特開2013-102132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
型とインプリント材とが接触している状態での変形機構の駆動のしやすさは、型の個体によって異なりうる。これは、型の表面状態(粗さ、形状等)の個体差によるものと推測されている。
【0007】
型の個体によって変形機構の駆動のしやすさが異なるということは、型とショット領域との重ね合わせ誤差を一定量補正するのに必要な駆動力が型によって異なるということである。したがって、変形機構によって補正できる重ね合わせ誤差の量が型によって変わる可能性がある。例えば、駆動しにくい型に対して補正量が変形機構の補正ストロークの上限に達すれば補正残差が生じる。また、変形機構による補正は複数段階に分かれていることがあるが、最初のステップで補正ストロークを大きく使うと次のステップで補正量が足りなくなることもありえ、その結果、重ね合わせ誤差が増大することも考えられる。インプリント装置では、1つの製品に対して型の個体によって補正量が変わってしまうことは望ましくない。
【0008】
本発明は、例えば、型の個体差がインプリント処理時における型の変形機構の動作に及ぼす影響を低減するのに有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、基板のショット領域の上のインプリント材と型とを接触させた状態で前記インプリント材を硬化させることにより前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置を有するインプリントシステムであって、前記型を保持する型保持部と、前記型保持部によって保持された前記型の側面に力を加えて前記型のパターン領域を変形させる変形機構と、前記変形機構を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記型と前記インプリント材とを接触させた状態における前記変形機構の駆動力に対する前記型の変形量の関係を示す応答特性に基づいて、前記型と前記インプリント材とを接触させる前に前記変形機構により前記型に事前荷重をかけておき、前記型と前記インプリント材との接触が完了した後、前記ショット領域と前記パターン領域との重ね合わせ誤差が低減されるように前記変形機構によって前記パターン領域を変形させる、ことを特徴とするインプリントシステムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、型の個体差がインプリント処理時における型の変形機構の動作に及ぼす影響を低減するのに有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インプリント装置の構成を示す図。
図2】変形機構の構成例を示す図。
図3】型の応答特性を説明する図。
図4】応答特性データを作成する処理のフローチャート。
図5】基板に対する一連のインプリント処理のフローチャート。
図6】型に事前荷重をかけることによる効果を説明する図。
図7】基板に対する一連のインプリント処理のフローチャート。
図8】実施形態における物品製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1には、本発明の一実施形態のインプリント装置100の構成が示されている。インプリント装置100は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。このように、インプリント装置100は、インプリント処理によって基板Sの上にインプリント材IMの硬化物からなるパターンを形成するように構成される。インプリント処理は、接触処理、アライメント処理、硬化処理、分離処理を含みうる。接触処理は、基板Sのショット領域(インプリント対象領域)の上のインプリント材IMに型Mのパターン領域Pを接触させる処理である。アライメント処理は、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域Pとのアライメントを行う処理である。インプリント処理におけるアライメント処理は、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域Pとの重ね合わせ誤差が低減されるように型Mのパターン領域Pを変形させる変形処理を含む場合がある。硬化処理は、インプリント材IMを硬化させる処理である。分離処理は、インプリント材IMの硬化物からなるパターンと型Mのパターン領域Pとを分離する処理である。
【0014】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0015】
本明細書および添付図面では、基板Sの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。位置合わせ(アライメント処理)は、基板および型の少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。
【0016】
インプリント装置100は、基板Sを保持し駆動する基板駆動機構SDM、基板駆動機構SDMを支持するベースフレームBF、型Mを保持し駆動する型駆動機構MDM、および、型駆動機構MDMを支持する構造体STを備えうる。基板駆動機構SDMは、基板Sを保持する基板チャックSCを含む基板ステージSSと、基板ステージSSを位置決めすることによって基板Sを位置決めする基板位置決め機構SAとを含みうる。型駆動機構MDMは、型Mを保持する型チャックMC(型保持部)と、型チャックMCを位置決めすることによって型Mを位置決めする型位置決め機構MAとを含みうる。型駆動機構MDMは、接触工程および/または分離工程において型Mに加えられる力を検出する検出部LCを含む。型駆動機構MDMは、更に、接触処理において、型Mのパターン領域Pが基板Sに向かって凸形状になるように型Mのパターン領域Pを変形させるようにパターン領域Pの反対側の面に圧力を加える圧力機構を備えうる。
【0017】
基板駆動機構SDMおよび型駆動機構MDMは、基板Sと型Mとの相対位置が変更されるように基板Sおよび型Mの少なくとも一方を駆動する駆動機構DMを構成する。駆動機構DMによる相対位置の変更は、基板Sの上のインプリント材に対する型Mのパターン領域Pの接触、および、硬化したインプリント材(硬化物のパターン)からの型Mの分離のための駆動を含む。換言すると、駆動機構DMによる相対位置の変更は、接触処理および分離処理が行われるように基板Sと型Mとの相対位置を変更することを含む。基板駆動機構SDMは、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型駆動機構MDMは、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0018】
インプリント装置100は、更に、型Mのパターン領域Pを変形させる変形機構MAGを備えうる。変形機構MAGは、XY平面に平行な面内におけるパターン領域Pの形状(大きさを含む)が変更されるようにパターン領域Pを変形させうる。変形機構MAGは、例えば、型Mの4つの側面に力を加えることによってパターン領域Pを変形させうる。
【0019】
インプリント装置100は、更に、ディスペンサDSPを備えうる。ただし、ディスペンサDSPは、インプリント装置100の外部装置として構成されてもよい。ディスペンサDSP(供給部)は、基板Sのショット領域にインプリント材IMを配置(供給)する。基板Sのショット領域へのインプリント材IMの配置は、基板駆動機構SDMによって基板Sが駆動されている状態で、該駆動と同期してディスペンサDSPがインプリント材IMを吐出することによってなされうる。ここで、ディスペンサDSPが基板Sの上の1つのショット領域にインプリント材IMを配置する度に接触処理、アライメント処理、硬化処理および分離処理が実行されうる。あるいは、ディスペンサDSPが基板Sの上の複数のショット領域にインプリント材IMを配置した後に、該複数のショット領域の各々に対して接触処理、アライメント処理、硬化処理および分離処理が実行されてもよい。
【0020】
インプリント装置100は、更に、硬化部CUを備えうる。硬化部CUは、基板Sの上のインプリント材IMに型Mのパターン領域Pが接触した状態でインプリント材IMに硬化用のエネルギーを照射することによってインプリント材IMを硬化させる。これによって、インプリント材IMの硬化物からなるパターンが基板Sの上に形成される。
【0021】
インプリント装置100は、更に、基板Sのショット領域のマークSMKの位置、型MのマークMMKの位置、基板Sのショット領域のマークSMKと型MのマークMMKとの相対位置等を計測する計測部ASを備えうる。インプリント装置100は、更に、基板Sのショット領域のマークSMKの位置を検出(計測)するオフアクシススコープOASを備えうる。
【0022】
インプリント装置100は、更に、制御部CNTを備えうる。制御部CNTは、駆動機構DM、変形機構MAG、ディスペンサDSP、硬化部CU、計測部AS、オフアクシススコープOASを制御しうる。制御部CNTは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ(CPUおよびメモリを含む)、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。制御部CNTは、インプリント装置100内に設けてもよいし、インプリント装置100とは別の場所に設置し遠隔で制御してもよい。
【0023】
制御部CNTは、計測部ASによって検出される結果、例えば、基板Sのショット領域のマークSMKの位置に基づいて当該ショット領域の形状を演算することができる。また、制御部CNTは、計測部ASによって検出される結果、例えば、型MのマークMMKの位置に基づいて型Mのパターン領域Pの形状を演算することができる。制御部CNTは、このようにして得られたショット領域の形状とパターン領域Pの形状とに基づいて、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域Pとの重ね合わせ誤差を演算しうる。あるいは、制御部CNTは、計測部ASによって検出される結果、例えば、基板SのマークSMKと型MのマークMMKとの相対位置に基づいて、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域Pとの重ね合わせ誤差を演算しうる。換言すると、制御部CNTは、計測部ASの出力に基づいて、基板Sのショット領域と型Mのパターン領域Pとの重ね合わせ誤差(ショット領域の形状とパターン領域の形状との差)を演算しうる。重ね合わせ誤差は、例えば、倍率成分、および、歪み成分(例えば、ひし形、台形等の成分、または、より高次の成分)を含みうる。
【0024】
図2には、変形機構MAGの構成例が示されている。変形機構MAGは、型Mの4つの側面MSに力を加えることによって型Mのパターン領域Pを変形させうる。変形機構MAGによって制御可能なパターン領域Pの形状(大きさを含む)の成分は、例えば、倍率成分、および、歪み成分(例えば、ひし形、台形等の成分、または、より高次の成分)を含みうる。変形機構MAGは、複数のユニット20を含みうる。各ユニット20は、型Mの側面MSに接触する接触部21と、接触部21を駆動するアクチュエータ22とを含みうる。アクチュエータ22は、例えば、ピエゾ素子を含みうるが、他の素子を含んでもよい。
【0025】
図3は、2つの型MaとMbの応答特性を説明する図である。応答特性とは、型とインプリント材とを接触させた状態における、変形機構MAGの駆動力に対する型の変形量の関係を示す特性をいう。型の個体差によって、型と基板上のインプリント材とが接触している状態での変形機構MAGの駆動しやすさ(駆動効率)が異なる。応答特性は、例えば、
型Mの変形量/変形機構MAGの駆動力
で表現されうる。応答特性は、型の個体によって異なりうる。これは、型の表面状態(粗さ、形状等)の個体差によるものと推測されている。以降、説明を簡単にするため、型の倍率を例として説明する。
【0026】
図3(a)は、変形機構MAGにより型Maに対して力を加えて倍率を変化させる様子を示している。時刻0からt1までは、型Maと基板S上のインプリント材IMとが空間的に離れた、非接触の状態である。時刻t1で型Maとインプリント材IMとの接触が始まり(接液)、時刻t2で型Maのパターン部の全面がインプリント材IMと接触する。時刻t2からt3にかけて、接触状態で変形機構MAGが駆動し、基板S(のショット領域)と型Maとの倍率差をmから0へ変化させる。ここでは、基板の倍率は不変であるとし、型Maを変形させた分だけ、基板と型との倍率差が変化するものとする。このときに必要な変形機構MAGの駆動力をaとする。駆動力は検出部LCで検出される。駆動効率は、m/aで表される。
【0027】
図3(b)は、変形機構MAGにより型Mbに対して力を加えて倍率を変化させる様子を示している。型Maのときと同じ量の倍率変化を生じさせるために、aより大きな駆動力2aを必要とする。駆動効率は、m/2aで表される。したがってこの例では、型Maに比べて型Mbに対する変形機構MAGの駆動効率は低い。ここで、変形機構MAGの出せる駆動力の上限(駆動リミット)をLとする。アライメント終了時の駆動力をみると、駆動リミットLまでの余裕は型Mbより型Maの方が大きい。
【0028】
このように型の個体によって接触時の装置挙動が異なることは、装置性能の不安定さにつながる可能性がある。そこで本実施形態では、型の応答特性に応じて、型とインプリント材との接触が始まる前に変形機構MAGが型に与える荷重(事前荷重)を調整する。モールドと基板上のインプリント材との接触が多く繰り返されることにより、モールドにはダメージが蓄積されパターンの破損等が発生しうる。電子線描画装置などによりブランクモールドへパターンを直接描画することによりモールドを都度作製するのでは、費用が莫大となり生産コストが大幅に増加する。そのため、マスターモールドの複製品であるレプリカモールドをインプリント技術により複数作製し、レプリカモールドを適宜交換しながらインプリント装置を運用することが考えられている。したがって、個々の(レプリカ)モールドの応答特性を調べておくことは装置性能の安定性向上に有益である。
【0029】
図4は、本実施形態における、複数の型の応答特性を表す応答特性データを作成する処理のフローチャートである。この処理は、インプリント処理を実行する前の準備段階において実施される。
【0030】
S101で、制御部CNTは、不図示の基板搬送機構を制御して基板(例えばパイロット基板)を搬入する。搬入された基板は基板チャックSCによって保持される。
S102で、制御部CNTは、不図示の型搬送機構を制御して型を搬入する。搬入された型は型チャックMCによって保持される。
S103で、制御部CNTは、変形機構MAGを制御して型Mの側面に事前荷重を加える。この事前荷重は所定の初期値(デフォルト値)とする。
S104で、制御部CNTは、ディスペンサDSPを制御して基板のショット領域にインプリント材を供給する。
S105で、制御部CNTは、駆動機構DMを制御して型とショット領域に供給されたインプリント材とを接触させる。
【0031】
S106で、制御部CNTは、型とインプリント材とが接触した状態でのアライメント処理を実行する。アライメント処理において、制御部CNTは、計測部ASを用いて、ショット領域のマークSMKと型のマークMMKを同時に観察することで、基板と型との相対位置ずれ(重ね合わせ誤差)を検出する。制御部CNTは、例えば、検出された相対位置ずれが低減されるように基板駆動機構SDMを制御する。また、アライメント処理は、相対位置ずれが低減されるように変形機構MAGにより型のパターン領域を変形(補正)させることも含む。例えば、S1061では、変形機構MAGを制御することにより、倍率以外に、並進、回転などの重ね合わせ誤差が補正されうる。また、S1062では、高次成分の重ね合わせ誤差が補正されうる。
【0032】
S107で、制御部CNTは、型の識別子と応答特性とが関連付けて記述された応答特性データを生成する。生成された応答特性データは例えば制御部CNT内のメモリに記憶される。ここで、アライメント開始時の相対位置ずれとアライメント終了時の相対位置ずれとの差分を、「型の変形量」とする。また、アライメント開始時の変形機構MAGの駆動力とアライメント終了時の変形機構MAGの駆動力との差分を、「変形機構MAGの駆動力」とする。応答特性は、「変形機構MAGの駆動力」に対する「型の変形量」として計算される。
【0033】
S108で、制御部CNTは、硬化部CUを制御して基板上のインプリント材を硬化させる。
S109で、制御部CNTは、駆動機構DMを制御して硬化したインプリント材から型を引き離す離型を行う。
S110では、制御部CNTは、インプリント対象領域であるショット領域を変更する。
【0034】
S111で、制御部CNTは、型搬送機構を制御して型を搬出する。S112では、制御部CNTは、次に処理(検査)すべき型があるかを判定する。次の型がある場合には、S102に戻り処理が繰り返される。処理が繰り返されることにより、S107では、各型に対する応答特性が応答特性データに追記されていく。S112で、次に処理すべき型はないと判定された場合、S113で、制御部CNTは、基板搬送機構を制御して基板を搬出し、この処理を終了する。
【0035】
図5は、本実施形態における、基板に対する一連のインプリント処理のフローチャートである。
【0036】
S201で、制御部CNTは、不図示の型搬送機構を制御して型を搬入する。搬入された型は型チャックMCによって保持される。このとき、搬入された型の識別子が、メモリに記憶される。
【0037】
S202で、制御部CNTは、不図示の基板搬送機構を制御して基板を搬入する。搬入された基板は基板チャックSCによって保持される。
【0038】
S203で、制御部CNTは、メモリに記憶されている応答特性データを参照して、搬入された型の識別子に対応する応答特性を判定し、その応答特性から事前荷重を求める。
S204で、制御部CNTは、変形機構MAGを制御して型Mの側面に、S203で求められた事前荷重を加える。
S205で、制御部CNTは、ディスペンサDSPを制御して基板のショット領域にインプリント材を供給する。
S206で、制御部CNTは、型に事前荷重がかけられた状態で、駆動機構DMを制御して型とショット領域に供給されたインプリント材とを接触させる。
【0039】
S207で、制御部CNTは、型とインプリント材とが接触した状態でのアライメント処理を実行する。アライメント処理において、制御部CNTは、計測部ASを用いて、ショット領域のマークSMKと型のマークMMKを同時に観察することで、基板と型との相対位置ずれ(重ね合わせ誤差)を検出する。制御部CNTは、例えば、検出された相対位置ずれが低減されるように基板駆動機構SDMを制御する。また、アライメント処理は、相対位置ずれが低減されるように変形機構MAGを制御する。例えば、S2071では、変形機構MAGを制御することにより、倍率以外に、並進、回転などの重ね合わせ誤差が補正されうる。また、S2072では、高次成分の重ね合わせ誤差が補正されうる。
【0040】
S208で、制御部CNTは、硬化部CUを制御して基板上のインプリント材を硬化させる。
S209で、制御部CNTは、駆動機構DMを制御して硬化したインプリント材から型を引き離す離型を行う。
【0041】
S210では、制御部CNTは、現在のショットが最終ショットであるかを判定する。現在のショットが最終ショットではない場合には、S204に戻り、次のショットの処理が繰り返される。現在のショットが最終ショットである場合、S211で、制御部CNTは、基板搬送機構を制御して基板を搬出し、インプリント処理を終了する。
【0042】
図6を参照して、本実施形態によるインプリント処理の効果を説明する。図6(a)は、型Maより駆動効率が低い型Mbを使用した場合の従来例における挙動を示した図であり、図3(b)と同じものである。図6(b)は、型Mbに対して変形機構MAGによりS203で求められた事前荷重を加えた場合を示している。ここでも、倍率を例として説明するが、対象は倍率に限らない。S203では、使用中の型の応答特性と基準となる型の応答特性との比から事前荷重が計算されうる。例えば、型Maに対する駆動効率m/aを基準とした場合、型Mbに対する駆動効率m/2aの比率は、1/2となる。この場合、変形機構MAGの事前荷重値は、a×(1-1/2)=a/2となる。この事前荷重値の決定(S203)は、時刻0より前に実行される。その後、時刻0の時点からt1の前までに、非接触状態で変形機構MAGをa/2まで駆動させ、型と基板の倍率差をm/2の状態にしておく。なお、非接触状態では、接触時のように型によって駆動効率が低下するという現象はみられていないため、変形機構MAGを駆動させた分だけ通常どおり型の倍率は変化するものとする。また、事前荷重値がaに近いほど、時刻t3における駆動力は、駆動リミットLに対して余裕がある状態となる。ただし、変形機構MAGの駆動の向きは常に一定であることが望ましい。駆動力aのすぐ近くに駆動させてしまうと、基板の倍率のばらつきなどにより、場合によっては後のアライメント時の駆動の向きが逆になってしまうことが考えられる。このため、事前荷重は、aのすぐ近くではなく、aから余裕をもって離れた値にする必要がある。どの程度離れた値にするかは、処理する基板、または基板内におけるショット毎のばらつきに応じて決めてもよい。
【0043】
S205で、時刻t1より前に、ディスペンサDSPが、基板Sのショット領域にインプリント材IMを配置(供給)する。その後、時刻t1からt2の間に、基板駆動機構SDMと型駆動機構MDMの位置合わせを行い、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMに型Mのパターン領域Pを接触させる(S206)。これにより、接触状態(インプリント材を介して型と基板が接触している状態)になる。
【0044】
S2071で、倍率を含む線形成分を対象としたアライメントが行われる(第1駆動)。このアライメントは、時刻t2からt3の間に行われる。図6(b)では、接触前のS204で変形機構MAGを駆動させ型にS203で設定された事前荷重をかけたため、必要とされる型Mbの倍率変化量は、図2(b)の半分m/2である。この倍率変化を生じさせるために必要な接触状態での変形機構MAGの駆動力は、型Mbに対する駆動効率m/2aから計算すると、(m/2)/(m/2a)=aとなる。すなわち、このアライメントの終了時刻t3における変形機構MAGの駆動力は、a/2+a=3a/2となり、図2(b)に比べて駆動リミットLまでの余裕が広がる。
【0045】
S2071では、倍率以外にも、並進、回転などの重ね合わせ誤差が補正されうる。なお、S207は、計測部ASにて、ショット領域のマークSMKと型MのマークMMKとの相対位置ずれを検出しながら行うため、接触状態であることが必要である。
【0046】
S2072では、高次成分の重ね合わせ誤差を対象とした補正が行われる(第2駆動)。高次成分の補正は、S2071を経た変形機構MAGの残ストロークで行われる。S203、S204にて、事前荷重値は、型の応答特性に応じた値に変更されているため、駆動効率の低い型Mbでも、駆動リミットLまで余裕がある状態で高次成分の補正を実施することができる。高次成分の補正は、時刻t3以降、かつ次工程の硬化・分離の前に行わればよい。
【0047】
このようにして、駆動効率の低い型と駆動効率の高い型との間で、重ね合わせ誤差補正量の差を小さくすることができる。これにより、装置の安定性を向上させることができる。
【0048】
<第2実施形態>
上述の第1実施形態は、予め得られた応答特性データから、型チャックMCによって保持された型の応答特性を取得するものであった。これに対し第2実施形態では、応答特性データを事前に作成する処理は行わず、インプリント処理中に、基板の第1ショット(第1ショット領域に対するインプリント処理)において型の応答特性を取得する。
【0049】
図7は、本実施形態における、基板に対する一連のインプリント処理のフローチャートである。
【0050】
S301で、制御部CNTは、不図示の型搬送機構を制御して型を搬入する。搬入された型は型チャックMCによって保持される。
S302で、制御部CNTは、不図示の基板搬送機構を制御して基板を搬入する。搬入された基板は基板チャックSCによって保持される。
【0051】
S303で、制御部CNTは、現在のショットが第1ショットであるかを判定する。現在のショットが第1ショットである場合、処理はS304に進み、第1ショットではない場合、処理はS312に進む。
【0052】
S304で、制御部CNTは、変形機構MAGを制御して型Mの側面に事前荷重を加える。この事前荷重は所定の初期値(デフォルト値)とする。
【0053】
S305で、制御部CNTは、ディスペンサDSPを制御して基板の第1ショット領域にインプリント材を供給する。
S306で、制御部CNTは、駆動機構DMを制御して型と第1ショット領域に供給されたインプリント材とを接触させる。
【0054】
S307で、制御部CNTは、型とインプリント材との接触が完了し、型とインプリント材とが接触した状態でアライメント処理を実行する。アライメント処理において、制御部CNTは、計測部ASを用いて、ショット領域のマークSMKと型のマークMMKを同時に観察することで、基板と型との相対位置ずれ(重ね合わせ誤差)を検出する。制御部CNTは、例えば、検出された相対位置ずれが低減されるように基板駆動機構SDMを制御する。また、アライメント処理は、相対位置ずれが低減されるように変形機構MAGを制御する。例えば、S3071では、変形機構MAGを制御することにより、倍率以外に、並進、回転などの重ね合わせ誤差が補正されうる。また、S3072では、高次成分の重ね合わせ誤差が補正されうる。
【0055】
S308で、制御部CNTは、現在使用されている型の応答特性を取得する。取得された応答特性のデータはメモリに記憶される。ここで、アライメント開始時の相対位置ずれとアライメント終了時の相対位置ずれとの差分を、「型の変形量」とする。また、アライメント開始時の変形機構MAGの駆動力とアライメント終了時の変形機構MAGの駆動力との差分を、「変形機構MAGの駆動力」とする。応答特性は、「変形機構MAGの駆動力」に対する「型の変形量」として計算される。
【0056】
S309で、制御部CNTは、硬化部CUを制御して基板上のインプリント材を硬化させる。
S310で、制御部CNTは、駆動機構DMを制御して硬化したインプリント材から型を引き離す離型を行う。
S311では、制御部CNTは、現在のショットが最終ショットであるかを判定する。現在のショットが最終ショットではない場合には、S303に戻り、次のショットの処理が繰り返される。
【0057】
S304において、現在のショットが第1ショットではないと判定された場合、処理はS312に進む。S312で、現在のショットが第1ショットの次のショットである第2ショットであると判定された場合、S313で、制御部CNTは、S308においてメモリに記憶された応答特性を読み出し、この応答特性に基づいて事前荷重値を設定(更新)する。
【0058】
S314で、制御部CNTは、変形機構MAGを制御して型Mの側面に、S313で更新された事前荷重を加える。
S315で、制御部CNTは、ディスペンサDSPを制御して基板の第1ショット領域にインプリント材を供給する。
S316で、制御部CNTは、型に事前荷重がかけられた状態で、駆動機構DMを制御して型と第1ショット領域に供給されたインプリント材とを接触させる。
【0059】
S317で、制御部CNTは、型とインプリント材とが接触した状態でのアライメント処理を実行する。アライメント処理において、制御部CNTは、計測部ASを用いて、ショット領域のマークSMKと型のマークMMKを同時に観察することで、基板と型との相対位置ずれ(重ね合わせ誤差)を検出する。制御部CNTは、例えば、検出された相対位置ずれが低減されるように基板駆動機構SDMを制御する。また、アライメント処理は、相対位置ずれが低減されるように変形機構MAGにより型のパターン領域を変形(補正)させることも含む。例えば、S3171では、変形機構MAGを制御することにより、倍率以外に、並進、回転などの重ね合わせ誤差が補正されうる。また、S3172では、高次成分の重ね合わせ誤差が補正されうる。
【0060】
その後、処理はS309に進む。S309では、硬化部CUにより基板上のインプリント材が硬化され、S310では、型駆動機構MDMにより離型が行われる。S311では、現在のショットが最終ショットであるかが判定される。現在のショットが最終ショットではない場合には、処理S303に戻り、次のショットの処理が繰り返される。現在のショットが最終ショットである場合、S318で、制御部CNTは、基板搬送機構を制御して基板を搬出し、インプリント処理を終了する。
【0061】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0062】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0063】
次に、物品製造方法について説明する。図8の工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0064】
図8の工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図8の工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0065】
図8の工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0066】
図8の工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図8の工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0067】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0068】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0069】
100:インプリント装置、SDM:基板駆動機構、MDM:型駆動機構、MAG:変形機構、DSP:ディスペンサ、CU:硬化部、AS:計測部、OAS:オフアクシススコープ、CNT:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8