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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】送風器及び電子部品の実装装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/068 20060101AFI20240917BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240917BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
F24F13/068 B
H01L21/60 311T
F24F7/06 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020164025
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056167
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2022-09-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン ペトロフ ガナシェフ
(72)【発明者】
【氏名】羽根 洋祐
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-159239(JP,A)
【文献】特開2019-100636(JP,A)
【文献】特開2012-093066(JP,A)
【文献】特開2002-228220(JP,A)
【文献】特開平09-264575(JP,A)
【文献】特開昭62-031683(JP,A)
【文献】特開平06-066439(JP,A)
【文献】特開昭50-065044(JP,A)
【文献】特開2004-116987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/068
H01L 21/60
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバの上部に設けられ、
少なくとも一つのファンフィルタユニットと、
前記ファンフィルタユニットからの気体が流入する加圧室と、
前記加圧室の底面の少なくとも一部を構成し、前記加圧室からの気体が通過して、直接前記チャンバに対面する複数の通気孔を有する通気板と、
を有し、
少なくとも一部の前記通気孔の鉛直方向の長さとなる通気板の厚さが、前記通気孔の直径の5分の2から5分の4であり、
前記通気孔の配置密度を(通気孔の配置本数)/(通気孔の配置面積)とし、前記通気孔の開口率を、{π(通気孔の直径)2/4}×(通気孔の配置密度)とした場合に、前記加圧室からの気流が前記通気孔に当たる角度が80°、ダウンフロー流量が30m /分において、前記通気板の少なくとも一部の厚さが、
であることを特徴とする送風器。
【請求項2】
前記通気板は、前記開口率が異なる領域を有し、
前記開口率が異なる各領域において、前記通気板の厚さが、
であることを特徴とする請求項記載の送風器。
【請求項3】
前記ファンフィルタユニットの直下の領域以外の領域において、前記通気板の厚さが、
であることを特徴とする請求項記載の送風器。
【請求項4】
前記通気板の厚さが、3~7mmであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の送風器。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の送風器を、上部に備えたチャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、電子部品を実装する実装機と、
を有することを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項6】
前記実装機は、前記チャンバ内に設けられた架台に支持され、
前記架台及び前記実装機には、前記通気板から下方に向かう方向に連続した排気経路が設けられていることを特徴とする請求項記載の電子部品の実装装置。
【請求項7】
前記架台と前記チャンバの内壁との間に、前記通気板から下方に向かう方向に連続した排気経路が設けられていることを特徴とする請求項記載の電子部品の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風器及び電子部品の実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップなどの電子部品を基板に対して実装する実装機は、実装不良を防ぐために、高い清浄度の空間での実装が必要となる。このため、かかる実装機は、実装機を覆うカバーが設けられ、カバー内に、天井から下方に向かう気流であるダウンフローを発生させて、機構部分等から発生する塵埃などを排気することにより、電子部品への塵埃の付着を防止している。
【0003】
このダウンフローを起こすための構成としては、ダウンフローを発生させたい空間の上に加圧室を設け、加圧室にファン、ブロワーなどによって吸気して加圧室の内部の気圧を高めて、加圧室の下部に設けられた流通抵抗付与部材を介して、下方に送風する構成となっている。また、給気する空気の清浄度を上げるため、加圧室内には、HEPAなどのファンフィルタユニットを介して給気することが一般的である。
【0004】
流通抵抗付与部材は、加圧室内の圧力分布を均一に近づけてダウンフローを生じさせるために、充分な流通抵抗を付与する。流通抵抗付与部材としては、網材の他、金属製の板に貫通孔を形成したパンチング板を使用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-288433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電子部品の実装においても、半導体製造の前工程レベルのクラス1(ISO3)の清浄度が得られるクリーン環境が要求されるようになり、塵埃の巻き上げに対しても非常に微細な制御が必要とされるようになってきた。例えば、半導体チップを多層に配置することにより集積度を高める3Dパッケージやハイブリッドボンディングでは、非常に狭いピッチの電極同士を接合する必要がある。このため、基板に対して電子部品を実装する際には、より高い精度、例えば、サブミクロンオーダーの精度が要求されるようになってきている。
【0007】
さらに、実装時に、実装のための機構部分の動作による誤差や、動作により発生する塵埃が、接合不良を招く可能性がある。しかしながら、上記のようなファンフィルタユニットを使ってダウンフローを形成しても、必要とされるクリーン環境において、許容できない塵埃の巻き上がりが生じてしまうことがあった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、塵埃の巻き上がりを抑えることが可能なダウンフローを形成できる送風器及び電子部品の実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の送風器は、チャンバの上部に設けられ、少なくとも一つのファンフィルタユニットと、前記ファインフィルタユニットからの気体が流入する加圧室と、前記加圧室の底面の少なくとも一部を構成し、前記加圧室からの気体が通過して、直接前記チャンバに対面する複数の通気孔を有する通気板と、を有し、少なくとも一部の前記通気孔の鉛直方向の長さとなる通気板の厚さが、前記通気孔の直径の5分の2から5分の4であり、
前記通気孔の配置密度を(通気孔の配置本数)/(通気孔の配置面積)とし、前記通気孔の開口率を、{π(通気孔の直径)2/4}×(通気孔の配置密度)とした場合に、前記加圧室からの気流が前記通気孔に当たる角度が80°、ダウンフロー流量が30m /分において、前記通気板の少なくとも一部の厚さが、
である。
【0010】
本発明の電子部品の実装装置は、前記送風器を、上部に備えたチャンバと、前記チャンバ内に設けられ、電子部品を実装する実装機と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、塵埃の巻き上がりを抑えることが可能なダウンフローを形成できる送風器及び電子部品の実装装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態の送風器を適用した実装装置の概略構成を示す一部断面図である。
図2】通気板の一部を示す斜視図である。
図3】開口率10%の場合のダウンフロー領域における横方向の風の平均速度を示すグラフである。
図4】開口率20%の場合のダウンフロー領域における横方向の風の平均速度を示すグラフである。
図5】開口率50%の場合のダウンフロー領域における横方向の風の平均速度を示すグラフである。
図6】開口率70%の場合のダウンフロー領域における横方向の風の平均速度を示すグラフである。
図7】通気板の開口率に応じた通気板の厚さと通気孔の直径の最適比を示すグラフである。
図8】通気板の厚さを変えた場合のダウンフロー領域の風向の変化を示す説明図である。
図9】通気板を最適値よりも薄くした場合の気流を示す説明図である。
図10】通気板を最適値よりも厚くした場合の気流を示す説明図である。
図11】通気板を最適値とした場合の気流を示す説明図である。
図12】FFUを加圧室の中央に設置した場合の気流を示す説明図である。
図13】第2の実施形態の実装装置を示す断面図(A)、平面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
[構成]
図1に示すように、本実施形態の送風器1は、ファンフィルタユニット(FFU:Fan Filter Unit)10、加圧室20、通気板30を有する。送風器1は、クリーンルームとして構成されるチャンバ40の上部に設けられている。
【0014】
ファンフィルタユニット(以下、FFUとする)10は、図示しないが、ファンの下流にULPAフィルタが設置され、ULPAフィルタを介して清浄化された空気を加圧室20に給気する。加圧室20は、FFU10からの気体が流入し、気圧が高められる空間である。加圧室20は、垂直方向の辺の長さが、水平方向の辺の長さがよりも短い直方体形状である。
【0015】
通気板30は、加圧室20の底面を構成する。通気板30は、図2に示すように、加圧室20からの気体が通過する複数の通気孔31を有している。通気孔31は、鉛直方向を軸とする円柱形状の貫通孔である。本実施形態では、通気孔31は、通気板30の面に、等間隔に設けられている。通気板30は、例えば、金属製又は樹脂製の板を打ち抜くことにより、通気孔31を形成したパンチング板とすることができる。
【0016】
通気板30の厚さt、つまり鉛直方向の長さは、3mm~7mmとすることが好ましい。但し、撓みを低減するために、5mm~6mmとすることがより好ましい。なお、通気板30の厚さtと通気孔31の直径Dとの関係については、後述する。
【0017】
チャンバ40は、内部に電子部品の実装機50を収容した直方体形状の容器である。チャンバ40の上部に、送風器1が設けられることにより、加圧室20の通気板30は、チャンバ40の天井を構成する。チャンバ40の底部には、排気口41が設けられている。このため、チャンバ40内の気体は、塵埃とともにチャンバ40の底部の排気口41から排出される。なお、実装機50は、工場等の床面Fに設置された架台60上に設置されている。
【0018】
[通気板の厚さと通気孔の直径]
通気板30の厚さtは、通気孔31の直径の5分の2から5分の4である。また、通気孔31の配置密度を、(通気孔の配置本数)/(通気孔の配置面積)とし、通気孔31の1つ(1本)当たりの軸に直交する断面積を、{π(通気孔の直径)/4}とし(πは円周率)、通気孔31の開口率を、{π(通気孔の直径)/4}×(通気孔の配置密度)とした場合に、通気板30の少なくとも一部の厚さtが、
である。通気孔31の配置面積は、通気孔31が形成された領域を囲う面積であり、通気板30の全体に均等に通気孔31が設けられている場合、配置面積は、通気板30の全体の面積と同等である。
【0019】
発明者は、従来から用いられていたパンチング板の貫通孔を介して流れる気流は、加圧室の気流の方向の影響を受けることを見出した。すなわち、パンチング板の上の加圧室の気流は、必ずしも鉛直方向下向きにはならない。例えば、設置する設備の都合上、ダクトを介して横方向、つまり鉛直方向に交差する方向から送風せざるを得ない場合もある。このように、横方向の流れ成分を含んでいると、貫通孔を通過する気流も、横方向の流れの影響を受けて、鉛直方向に対する傾斜が大きなダウンフローになる。
【0020】
これに対処するため、ファンフィルタユニットをパンチング板の中央の直上に配置したとしても、パンチング板の中央から離れるほど、気流の方向が横方向となるので、上記と同様の現象が生じる。また、パンチング板の全体に向かって、鉛直方向の給気がなされるように、ファンフィルタユニットを多数配置することも考えられる。しかし、パンチング板の上にこのようなスペースを確保できる設備は限られており、多数のファンフィルタユニットを用意することはコスト面でも問題がある。また、パンチング板での圧力損失を大きくしてパンチング板の全体に向かって鉛直方向の給気がなされるようにすると、十分なダウンフローの流量を得られず、塵埃の排出を十分に行うことができない。
【0021】
発明者は、従来、気流に関して考慮されていなかった通気板30の厚さt、さらに厚さtと直径Dの比、通気孔31の開口率について着目した。そして、簡単な構造のパンチング板のような通気板30の厚さtを現実の使用に耐え得るものとしつつ、鉛直に近いダウンフローを生じさせることができる値を検討した。
【0022】
その結果を、図3図6に示す。図3図6は、通気板30の厚さtを横軸、通気孔31の直径Dを縦軸として、通気孔31の開口率を変えて、通気板30を通気して気流がダウンフローとなったダウンフロー領域に発生する横風の平均風速を、ハッチングの濃淡でプロットしたグラフである。風速m/sの正の値は、通気板30の上の横方向と同じ方向であること、負の値は、その逆の横方向であることを示す。風速は、3次元有限要素法で計算した。「ダウンフロー領域に発生する横風の平均風速」とは、通気板30から厚さt又は通気孔31のピッチのいずれか大きい方の長さの4倍離れた下流の断面での風速の平均値である。また、いずれの図も水平面積1mあたりのダウンフロー流量は、30m/分とした。
【0023】
図3は開口率10%、図4は開口率20%、図5は開口率50%、図6は開口率70%である。各図において、(A)、(B)は、鉛直方向に対して、加圧室20内の気流が通気孔31に当たる角度が異なる。(A)は80°、(B)は60°である。つまり、通気孔31に対して流入する気流の角度が(A)の方がより水平に近く浅いということになる。許容される横風は、風速の絶対値が0.1m/s以下、つまり横方向の風速が-0.1と+0.1m/sの間の領域である。図中、点線と双方向矢印で示した「OK」の範囲が、横風のおおよその許容される条件領域である。このため、このような条件領域を満たす性能の通気板30を選択することが好ましい。なお、ハッチングの濃淡の境界のギザギザは、数値計算の誤差によるものである。
【0024】
図3図6に示すように、気流の鉛直方向に対する傾斜が大きいと、つまり、通気板30の面に対する気流の角度が小さいと、許容される条件領域は狭くなる。
【0025】
加圧室20を大きく、高さを確保すれば、加圧室20から通気孔31に流入する気流を鉛直に近づけることはできる。但し、加圧室20のスペースは限定されるため、高さ方向に拡大することには限界がある。このため、少なくとも流入する角度が80°程度以上で対策することを考えた。
【0026】
そこで、図3図6の(A)のグラフに着目する。これらのグラフでは、許容される条件領域は、点線で示す原点を通る直線の内側の範囲である。このため、ダウンフロー領域に発生する横風を許容できる範囲に抑えるため、厚さtと直径Dの比(t/D)を、許容される条件領域を満たす特異な値にする必要がある。
【0027】
最適なt/Dの値は、図3(A)~図6(A)のいずれにおいても、5分の3(0.6)前後となっている。例えば、図6では、通気板30の厚さtが3mmの時、通気孔31の直径が7mmの時が横風の許容できる条件の1つとなる。すなわち、t/D=3/7=0.43となる。また、図3では、通気板30の厚さtが3mmの時、通気孔31の直径が4mmの時が横風の許容できる条件の1つとなる。すなわち、t/D=3/4=0.75となる。
【0028】
また、例えば、図3図6では開口率が相違するので、横風の許容できる条件が開口率によって異なっていることがわかる。ここで、この関係は、以下の近似式1で表すことができる。
【0029】
t/Dの最適値と開口率αの関係を、図7に示す。気流の入射角度は80°、ダウンフロー流量は30m/分、プロットした点とその範囲は、図3~6より、横方向の許容風速を±0.1m/s以下とした許容条件で決定した。この決定した点から近似式1を得た。点線は、式1の近似値である。
【0030】
ここで、通気板30を異なる厚さtとした場合のダウンフロー領域における風向の変化を、図8に模式的に示す。厚さtは、(a)は2mm、(b)は3mm、(c)は4mm、(d)は6mm、(e)は10mm、(f)は20mm、(g)は50mmである。また、通気孔31の直径D5mm、通気孔31の配置ピッチ10mm(孔開口率19.635%)であり、水平面積1mあたりのダウンフロー流量は、30m/分である。加圧室20内の気流が通気孔31に当たる角度(入射角度)は80°である。図8の中央に示したグラフは、図4(A)と同様である。
【0031】
図8(b)に示すように、最適なt/Dの範囲にある厚さtの場合には、加圧室20内の気流が通気孔31に当たる角度が水平に近くても鉛直方向のダウンフローを生じさせることができる。この場合のチャンバ40内の気流の方向は、例えば、後述の図11の白抜きの矢印で示すことができる。一方、図8(a)に示すように、最適なt/Dの範囲よりも厚さtが薄い場合には、加圧室20内の横風が、そのままの方向でダウンフロー領域に伝わる。この場合のチャンバ40内の気流の方向は、例えば、後述の図9の白抜きの矢印で示すことができる。一方、図8(c)~(f)に示すように、最適なt/Dの範囲よりも厚さtが厚いとき、気流が通気孔31の側面にぶつかって反射するため、加圧室20内の気流と逆方向の気流が発生してしまう。この場合のチャンバ40内の気流の方向は、例えば、後述の図10の白抜きの矢印で示すことができる。このような通気孔31の側面にぶつかって生じる逆方向の気流を抑えるためには、図8(g)に示すように、非常に厚い通気板30とする必要がある。つまり、非常に厚く重量のあるパンチング板を用意する必要があり、このような条件は現実的ではない。仮に、通気孔だけのノズルのようなものとしても、非常に多くのノズルを配置することは困難である。
【0032】
[効果]
本実施形態は、FFU10と、FFU10からの気体が流入する加圧室20と、加圧室20の底面の少なくとも一部を構成し、加圧室20からの気体が通過する複数の通気孔31を有する通気板30と、を有し、通気板30の厚さtが、通気孔31の直径Dの5分の2から5分の4である。
【0033】
また、通気孔31の配置密度を(通気孔の配置本数)/(通気孔の配置面積)とし、通気孔31の開口率を、{π(通気孔の直径)/4}×(通気孔の配置密度)とした場合に、通気板30の厚さtが、
である。
【0034】
このような構成により、加圧室20の気流の方向にかかわらず、つまり横風や非対称な気流にかかわらず、通気板30の通気孔31を通過させることにより、十分な流速の横風の少ないダウンフロー気流を送風することができる。このため、ダウンフロー領域での気流の渦や淀みが抑制され、塵埃の巻き上がりが減少し、清浄度を向上させることができる。また、パンチング板のような簡単な構造で実現できる。
【0035】
[変形例]
なお、FFU10は、加圧室20の上部に配置できるとは限らない。つまり、図9図11に示すように、高さ方向の制約のために、ダクトを介して横方向からFFU10により給気する場合もある。この場合、ダクト部分が加圧室20となる。
【0036】
このような場合には、給気は横方向の成分がほとんどとなり、例えば、図9に示すように、本実施形態で示した最適値の厚みより薄い通気板30(t/Dは0.3)を用いた場合には、チャンバ40内に、加圧室20の気流と同じ方向の傾きで、ダウンフローが発生してしまう。そして、その影響で内側(加圧室20の気流上流方向)に強い巻き上がりの気流(渦気流)が発生している。また、図10に示すように、実施形態で示した最適値の厚みよりも厚い通気板30(t/Dは1.5)を用いた場合には、チャンバ40内に、加圧室20の気流を逆方向の傾きで、ダウンフローが発生してしまう。その影響で、外側(加圧室20の気流下流方向)に強い巻き上がりの気流(渦気流)が発生している。一方、本実施形態の通気板30(t/Dは0.6)を用いた場合には、図11に示すように、チャンバ40内に、鉛直に近いダウンフローを発生させることができる。そのため、ダウンフローの脇に生じる巻き上がりの気流は弱いものとなっている。
【0037】
また、図12に示すように、FFU10を加圧室20の中央に設けたとしても、FFU10の直下の領域Raについては、鉛直に近いダウンフローを発生させることができるが、周辺の領域Rbについては、中央から離れるほど、気流が大きく傾斜する。このため、通気板30のうち、FFU10の直下については、本実施形態を適用せず、周辺の領域Rbにのみ、本実施形態を適用してもよい。
【0038】
[第2の実施形態]
第2の実施形態として、図13を参照して、上記の送風器1を適用した実装装置2を説明する。本実施形態は、図13(A)に示すように、実装機50及び架台60に、通気板30から下方に向かう方向に連続した排気経路51a、60aが設けられている。また、架台60とチャンバ40の内壁との間に、通気板30から下方に向かう方向に連続した排気経路40aが設けられている。排気経路51aは、実装機50の本体の底部に形成された上下方向に貫通した孔である。この孔は、少なくとも塵埃の発生源となるモータ、摺動部等の機構部分の近傍であることが好ましい。
【0039】
実装機50は、例えば、基板に半導体チップを実装する。半導体チップの実装は、半導体チップの回路面を上方に向けたフェイスアップボンディングとすることができる。また、回路面を基板に向けたフェイスダウンボンディングとすることもできる。この場合、いわゆるフリップチップボンディングを行う。
【0040】
排気経路60aは、架台60の上面に設けられ、排気経路51aと連続した貫通孔と、架台60の内部に設けられた空隙と、架台60の底部に設けられた貫通孔を有する。架台60の内部の空隙は、配線を残す程度で、制御装置等、気流を阻害するものが極力外部へ排除されている。
【0041】
以上のような本実施形態では、送風器1からの鉛直に近いダウンフローが、排気経路51a、40a、60aを介して、床面Fの排気口41から排気される。これにより、塵埃の巻き上がり等を抑制して、清浄度の高い実装が可能となる。
【0042】
上記のように、実装装置においても、半導体製造の前工程レベルのクラス1(ISO3)の清浄度が得られるクリーン環境が要求されるようになっている。
【0043】
従来、実装装置においては、実装装置としてのクリーン度を上げるために、上部にHEPA等のFFUを設け、FFUからのダウンフローは、実装機のカバーの背面に設けた排気ファンから排気する構造が一般的であった。しかし、局所的な速い気流を発生させ、塵埃を巻き上げる渦気流を発生させてしまうことがあった。このため、クラス1到達は困難であった。渦気流の例は、図9図11のチャンバ40内における側壁付近の気流である。
【0044】
本装置では、ULPAであるFFU10から通気板30の通気孔31を介して、鉛直に近いダウンフローを流し、排気ファンを使わずに、実装機50及び架台60に設けた排気経路51a、60a、架台60とチャンバ40の内壁との間に設けた排気経路40aによって、ダウンフローが床面F側の排気まで導かれる。このため、渦気流の発生による塵埃の巻き上がりが防止され、クラス1を実現できる。
【0045】
なお、図13(B)に示すように、FFU10は、チャンバ40内の全体が直下になるような領域には配置されていない。このような場合であっても、上記の実施形態で示した通気板30を適用することにより、横方向の気流を、鉛直に近いダウンフローとすることができる。また、上記のように、FFU10の直下以外の領域にのみ、上記の通気板30の厚さt、直径Dを適用してもよい。
【0046】
さらに、通気板30のうち、ダウンフローを鉛直方向に対して所望の方向に傾斜させたい領域がある場合には、その部分については、本実施形態を適用せず、一部にのみ本実施形態を適用してもよい。すなわち、上記のように、通気板30の厚さtと通気孔31の直径Dと、さらに開口率αから、通気板30を通過した気流の方向を決定することができる。このため、例えば、チャンバ40内の側壁にごく近い位置では、側壁に向かう方向の気流として、側壁に気流を沿わせるように、通気板30の厚さt、通気孔31の直径D及び開口率αを設定することもできる。こうすることで、チャンバ40内の側壁沿いの巻き上げる気流を、より効果的に抑制でき、塵埃の排出もスムーズにすることができる。
【0047】
また、実装装置2のチャンバ40内に設置される実装機50、架台60等の構成部の形状によっては、その直上からの真直ぐなダウンフローではなく、構成部を避けるように気流を生じさせたほうが、塵埃の巻き上げなどを抑制できる場合がある。このような場合、所望する気流となるように、通気板30の厚さt、通気孔31の直径D及び開口率αを設定することもできる。
【0048】
なお、通気板30は、その材質は問われない。金属でも樹脂、セラミックでもよく、必要な剛性と重量とすることができればよい。
【0049】
さらに、上記の実施形態では、通気孔31の断面形状を円形としている。これにより、製造が容易となる。しかし、楕円形や多角形など、どのような形状でもよく、通気出来る開口の実効直径が、上記の実施形態で示した範囲であればよい。この場合、開口率を求めるための通気孔31の1つ(1本)当たりの軸に直交する断面積は、楕円形、多角形など、それぞれの形状の面積となる。
【0050】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 送風器
2 実装装置
10 ファンフィルタユニット(FFU)
20 加圧室
30 通気板
40 チャンバ
60 架台
51a、60a、40a 排気経路
D 直径
F 床面
t 厚さ

図1
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