(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/13 20060101AFI20240917BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240917BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B41J29/13
G03G21/16 161
H05K5/03 Z
(21)【出願番号】P 2020173280
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳山 兼人
(72)【発明者】
【氏名】椿本 康人
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-203574(JP,A)
【文献】特開2009-290515(JP,A)
【文献】特開平10-142859(JP,A)
【文献】実開昭57-167860(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0234733(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297210(US,A1)
【文献】特開2012-242736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0001893(US,A1)
【文献】特開2009-239752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 -29/13
G03G 21/16
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部を収容し、フレーム部材を含む筐体と、
前記筐体の上方を覆う閉位置と前記筐体の上部を開放する開位置とに回動可能に前記筐体に軸支されたカバー部材と、
一端が前記カバー部材に対して回転可能に前記カバー部材に取り付けられ、他端が前記フレーム部材に対して移動可能に前記フレーム部材に取り付けられた支柱部材と、
前記フレーム部材に設けられ、前記支柱部材の前記他端の移動をガイドするガイド部と、
前記カバー部材の前記開位置から前記閉位置への回動に伴う前記支柱部材の前記他端の移動を規制する係止部と、
を備える処理装置において、
前記支柱部材と係合し、前記他端の移動を前記係止部によって規制する第1位置と前記係止部による前記他端の移動の規制を解除する第2位置とに移動可能に構成された切替部材
と、
前記切替部材を前記第1位置と前記第2位置のいずれかに位置させるように前記切替部材を付勢する付勢部と、を備え
、
前記切替部材は、前記フレーム部材の側面に沿って前記第1位置と前記第2位置の間をスライドするように構成されており、
前記付勢部は、前記フレーム部材の前記側面に設けられていることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記切替部材は、
前記第1位置において、前記フレーム部材に対し、前記他端の移動を前記係止部が規制可能な第1のガイド経路を前記ガイド部とともに形成し、
前記第2位置において、前記フレーム部材に対し、前記他端の移動を前記係止部が規制することが回避される第2のガイド経路を前記ガイド部とともに形成することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記支柱部材は、前記切替部材に係合して前記切替部材を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるための作用部を有することを特徴とする請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記切替部材は、前記カバー部材が前記支柱部材の前記他端が前記係止部に係止される位置からさらに開方向に回動させられる際に、前記作用部が係合して前記第1位置から前記第2位置へ移動するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
処理部を収容し、フレーム部材を含む筐体と、
前記筐体の上方を覆う閉位置と前記筐体の上部を開放する開位置とに回動可能に前記筐体に軸支されたカバー部材と、
一端が前記カバー部材に対して回転可能に前記カバー部材に取り付けられ、他端が前記フレーム部材に対して移動可能に前記フレーム部材に取り付けられた支柱部材と、
前記フレーム部材に設けられ、前記支柱部材の前記他端の移動をガイドするガイド部と、
前記カバー部材の前記開位置から前記閉位置への回動に伴う前記支柱部材の前記他端の移動を規制する係止部と、
を備える処理装置において、
前記支柱部材と係合し、前記他端の移動を前記係止部によって規制する第1位置と前記係止部による前記他端の移動の規制を解除する第2位置とに移動可能に構成された切替部材と、
前記支柱部材が有する作用部であって、前記切替部材に係合して前記切替部材を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させるための作用部と、
前記切替部材を前記第1位置と前記第2位置のいずれかに位置させるように前記切替部材を付勢する付勢部と、を備え、
前記作用部は、前記カバー部材が前記支柱部材の前記他端が前記係止部に係止されて前記開位置にある状態からさらに開方向に回動させられる際に、前記付勢部の付勢力に抗して前記切替部材を前記第1位置から前記第2位置へ移動させることを特徴とす
る処理装置。
【請求項6】
前記作用部は、前記切替部材が前記第2位置に位置し、前記開位置にある前記カバー部材が前記閉位置へ移動する際に、前記支柱部材の前記他端の被係止部が前記係止部に係止されない位置まで移動した後に、前記付勢部の付勢力に抗して前記切替部材を前記第2位置から前記第1位置へ移動させることを特徴とする請求項
3ないし5の何れか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記切替部材は、
前記第1位置にあるときに、前記作用部と係合して前記作用部から前記第2位置へ移動するための力を受ける第1の被作用部と、
前記第2位置にあるときに、前記作用部と係合して前記作用部から前記第1位置へ移動するための力を受ける第2の被作用部と、
を有することを特徴とする請求項
3ないし6のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記支柱部材は、前記ガイド部にガイドされる被ガイド部であり、前記作用部であり、かつ前記係止部に係止される被係止部である、ボス部を有し、
前記ガイド部は、前記ボス部がスライド移動可能に係合して前記ボス部をガイドするガイドレール部を有し、
前記係止部は、前記ガイドレール部の一部に設けられており、
前記切替部材は、
前記ボス部がスライド移動可能に係合して前記ボス部をガイドする切替レール部であって、前記第1位置にあるときに前記ガイドレール部とともに前記第1のガイド経路を形成し、前記第2位置にあるときに前記ガイドレール部とともに前記第2のガイド経路を形
成する切替レール部を有することを特徴とする請求項
4に記載の処理装置。
【請求項9】
前記ガイドレール部と前記切替レール部は、前記切替部材が前記第1位置にあるときに、前記係止部がガイド経路に露出する第1の相対位置となり、前記切替部材が前記第2位置にあるときに、前記係止部をガイド経路に露出しない第2の相対位置となることを特徴とする請求項
8に記載の処理装置。
【請求項10】
前記ボス部の突出方向は、略水平方向であり、
前記切替部材は、前記フレーム部材の側面に対して前記ボス部の突出方向と直交する上下方向に移動可能に設けられており、
前記ガイドレール部と前記切替レール部は、それぞれ、前記ボス部の突出方向と直交する方向に前記ボス部をガイドするように構成されるとともに、互いに前記突出方向にずれた配置で設けられていることを特徴とする請求項
9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記第1の相対位置は、前記切替レール部が前記ガイドレール部に対して下方にずれた配置となり、前記突出方向に見たときに、前記係止部が前記ガイドレール部と前記切替レール部との間の段差をつなぐようにガイド経路に露出する相対位置であり、
前記第2の相対位置は、前記ガイドレール部と前記切替レール部が同じ高さになり、前記突出方向に見たときに、前記係止部がガイド経路の下方に退避した位置になる相対位置であることを特徴とする請求項1
0に記載の処理装置。
【請求項12】
前記ボス部は、前記支柱部材の前記他端に設けられており、
前記支柱部材は、前記カバー部材と前記支柱部材の前記一端のいずれか一方に設けられた軸受と、他方に設けられた軸と、の係合により、前記カバー部材に対して前記ボス部の突出方向と平行な方向に延びる回転軸を有し、
前記軸受と前記軸は、前記回転軸と直交する第1の方向には略嵌合状態となり、前記回転軸及び前記第1の方向と直交する第2の方向には非嵌合状態となるように隙間を有して係合していることを特徴とする請求項
8ないし10のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、記録媒体に画像を記録する記録部と、記録媒体を搬送する搬送部と、を含むことを特徴とする請求項1
ないし12のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項14】
前記カバー部材に設けられる第2の処理部をさらに備え、
前記第2の処理部は、原稿の画像を読み取る読取部であることを特徴とする請求項1
ないし13のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項15】
前記処理部は、原稿の画像を読み取る読取部であることを特徴とする請求項1
ないし12のいずれか1項に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の構成として、記録媒体に画像を記録する記録部を収容する筐体上部に、記録部へのアクセスを可能とすべく筐体内を開閉するカバー部材を設けたものがある。かかる構成において、カバー部材に、原稿から画像を読み取る読取部を設ける場合もある。カバー部材乃至読取部を含むカバー部材は、記録部を含む下筐体に対して回動可能に連結される。そのような構成の記録装置において、装置内部を搬送される紙などの記録媒体が装置内部で詰まってしまった際の装置内部へのアクセスを容易にするため、カバー部材を上方に持ち上げて開いた状態で保持するための機構を設けるものがある。例えば、特許文献1では、下筐体と、回動部を介して下筐体に結合されたカバー部材を備え、回動部の軸を中心にしてカバー部材が下筐体に対して上方に解放され、カバー部材に結合された支柱部材で保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された構成では、開閉部材を閉じる際に、下筐体から支柱部材の保持を解除するために開閉部材と下筐体の間に手を入れ、スタンドを押しながらカバー部材を閉じる二つの動作を同時に行わなければならず、ユーザ操作性に課題がある。また、付勢手段が支柱部材の回動方向に付勢されていることにより、意図せず支柱部材に力を与えてしまった場合、望外にカバー部材が閉じてしまう課題があった。
【0005】
本発明は、簡易な操作によりカバー部材の安定した開状態の維持と解除を行うことが可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の処理装置は、
処理部を収容し、フレーム部材を含む筐体と、
前記筐体の上方を覆う閉位置と前記筐体の上部を開放する開位置とに回動可能に前記筐体に軸支されたカバー部材と、
一端が前記カバー部材に対して回転可能に前記カバー部材に取り付けられ、他端が前記フレーム部材に対して移動可能に前記フレーム部材に取り付けられた支柱部材と、
前記フレーム部材に設けられ、前記支柱部材の前記他端の移動をガイドするガイド部と、
前記カバー部材の前記開位置から前記閉位置への回動に伴う前記支柱部材の前記他端の移動を規制する係止部と、
を備える処理装置において、
前記支柱部材と係合し、前記他端の移動を前記係止部によって規制する第1位置と前記係止部による前記他端の移動の規制を解除する第2位置とに移動可能に構成された切替部材と、
前記切替部材を前記第1位置と前記第2位置のいずれかに位置させるように前記切替部材を付勢する付勢部と、を備え、
前記切替部材は、前記フレーム部材の側面に沿って前記第1位置と前記第2位置の間をスライドするように構成されており、
前記付勢部は、前記フレーム部材の前記側面に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な操作によりカバー部材の安定した開状態の維持と解除を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る記録装置の記録部を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施例に係る記録装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】アクセス部開放状態の記録装置の斜視図である。
【
図4】アクセス部開放状態の記録装置の側面図である。
【
図5】アクセス部開放状態の記録装置の一部拡大側面図である。
【
図8】開放部材のフレーム部材に対する位置を示す断面図である。
【
図9】アクセス部開放状態の開放部材の第1位置を示す側面断面図である。
【
図10】アクセス部を閉じる際の支柱部材の移動を示す側面断面図である。
【
図11】アクセス部を閉じる際の開放部材とフレーム部材の断面斜視図である。
【
図12】アクセス部を閉じる際の開放部材の第2位置を示す側面断面図である。
【
図13】アクセス部を閉じる際の開放部材の第2位置を示す断面斜視図である。
【
図14】アクセス部を閉じる際に開放部材の第2位置を示す側面断面図である。
【
図15】アクセス部を閉じる際の開放部材の第1位置を示す側面断面図である。
【
図16】アクセス部を閉じた際の支柱部材の位置を示す側面断面図である。
【
図17】アクセス部を開いた際の支柱部材の位置を示す側面断面図である。
【
図18】アクセス部を閉く際に開放部材が第2位置にある時の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0010】
(実施例1)
<装置構成>
図1は、本発明の実施例1に係るインクジェットプリンタ(記録装置)1のプリント部(記録部)5を含む内部構成を示した斜視図であり、記録装置1の外装部は取り除いて示している。
図1に示すように、記録装置1の機構部は、装置本体の下筐体2に装着されている。下筐体2を+y方向に見たときの背面側に、記録媒体としてのシート材を積載する給紙トレイ3が備えられている。給紙トレイ3上のシート材は、給送手段及び搬送路(不図示)により、最上位の1枚が分離されて搬送手段(搬送ローラ)40へ給送される。給送されたシート材は、搬送手段40及びこれと同期駆動される排紙手段(排紙ローラ)41により、記録部5を通じて-y方向へ搬送される。
【0011】
記録部5は、搬送部としての搬送手段40と排紙手段41の間にあり、記録ヘッド(不図示)と、記録ヘッドを搭載してシート材の搬送方向と直交する方向に沿って往復移動するキャリッジ51と、が備えられている。インクタンク61には、印字を行う際に必要となるインクが収容されている。記録ヘッドは、インクタンク61から供給されるインクを、記録情報に基づいてシート材に吐出することで、画像記録を行う。記録部5と重力方向で対向する位置には、画像記録時のシート材を案内支持するためのプラテン42が配置されている。そして、画像が記録されたシート材は、排紙手段41を通じて装置本体外に設けられた排紙トレイ43上へ排出される。
【0012】
<アクセス動作>
図2、
図3は、本実施例に係る記録装置1の模式的斜視図である。カバー部材10と下筺体2の模式的斜視図である。
図2は、カバー部材10と下筺体2の外装部も図示しており、カバー部材10が下筺体2に対して閉じられた状態を示している。カバー部材10は、下筺体2に対して不図示の回動軸を介して連結されており、上記回動軸中心に下筺体2に対して下筐体2の上方を覆う閉位置と、下筐体2の上部を開放する開位置と、に回動可能に下筺体2に軸支されている。
図3は、ユーザが記録部5周辺やシート材の搬送路などで詰まってしまったシート材を取り除く際や、記録ヘッドの交換を行う際に、カバー部材10を+R方向へ開放し、下筺体2内部へアクセス可能となっている状態を示している。カバー部材10は、装置背面側の端部に対して装置正面側の端部が上方に位置するように傾斜した姿勢となることで、下筐体2の上部を開放する。カバー部材10には、原稿から画像を読み取る読取部110が備えられている。
【0013】
図3に示すように、カバー部材10は、下筐体2に含まれるフレーム部材7が備える軸受け部75(
図7(a)参照)に嵌合される、装置幅方向(x軸方向)に延びる回転軸を、装置背面側に有し、回動軸を中心に下筐体2に対して回動可能に構成されている。また、回動軸とは別に、カバー部材10下部にはステイ軸受102を形成されている。カバー部材10と下筐体2との間には、支柱部材としてのステイ20が組み付けられており、カバー部材10は、ステイ20に支えられることで、下筐体2に対して開位置を維持することができるように構成されている。ステイ20は、一端がカバー部材10に対して回転可能に取り付けられており、他端がフレーム部材7に対して所定のスライド方向に移動可能に取り付けられている。ステイ軸受102は、ステイ20の一端側に備えられた略x軸方向(略水平方向)に延びるステイ軸201と、所定の嵌合状態で係合している。また、ステイ20の他端側は、下筐体2のフレーム部材7が有する後述のレール部73と当接係合している。なお、ステイ軸受102は、長孔形状の軸孔にステイ軸201が係合するように構成されている。すなわち、ステイ軸201とステイ軸受102は、軸支ラジアル方向(ステイ軸201に垂直な面に沿った方向)の第1の方向に対して略嵌合状態となり、第1の方向に直角な軸支ラジアル方向の第2の方向に対して非嵌合状態になるように隙間を有している。これは、ステイ20一端側がカバー部材10と嵌合する位置と、ステイ20他端側がフレーム部材7又は後述する解放部材8と係合する位置とが、ステイ軸201の方向にずれているため、カバー部材10の開閉時にかじりが発生するのを回避するためである。ステイ軸201とステイ軸受102とを遊嵌させる方向は、カバー部材10のスムーズな開閉動作を実現することができるように適宜設定される。なお、回動軸と軸受部、ステイ軸受102とステイ軸201は、それぞれが設けられる部材を逆の構成にしても良い。すなわち、回動軸は、カバー部材10とステイ20の一端のいずれか一方に設けられ、軸受部は、カバー部材10とステイ20の一端のいずれか他方に設けられる構成であればよい。
【0014】
図4、
図5を参照して、カバー部材10の保持機構について説明する。
図4、
図5は、カバー部材10が開放状態で維持されている図である。
図5は、ステイ20の他端側がフレーム部材7に係止されることによって、カバー部材10の開放状態が維持されることを示すための図である。
図5に示すように、ステイ20は、他端側に略-x方向(略水平方向)に突出するボス部である保持部21を有している。保持部21は、上述したステイ軸201と略平行である。一方、フレーム部材7は、ステイ20の保持部21とx軸方向と直交する方向に当接可能な保持当接部71を有している。保持当接面711は、カバー部材10の自重とステイ20の回転方向に対して、保持部21と対向する位置に、レール部73の一部として設けられている。保持当接面711が保持部21を係止し、フレーム部材7に対してステイ20の他端側が固定されることで、カバー部材10は、下筐体2に対して開放状態(開姿勢)が維持される。すなわち、保持当接面711は、カバー部材10の閉状態から開状態への移動は許容して、開状態から閉状態への移動は規制するように、
ステイ20の保持部21と係合するように構成されている。
【0015】
<開放部材(切替部材)>
図6(a)、
図6(b)は、本実施例における切替部材としての開放部材8の斜視図である。
図7(a)、
図7(b)は、フレーム部材7の側面図と断面図である。
図8(a)、
図8(b)は、フレーム部材7に対して開放部材8が取り得る二つのポジションを示す、
図7のj-j断面図である。
【0016】
図6に示すように、開放部材8は、フレーム部材7と当接して第一のポジションと第二のポジションへの上下動を案内するポジション案内部81と、後述のフレーム部材7の付勢部72からの付勢を受けて第二のポジションを維持する被付勢部82とを備える。フレーム部材7は、ポジション案内部81に係合する案内突起部78(
図9参照)を有している。開放部材8は、案内突起部78によって、フレーム部材7の側面に対するy軸方向の位置が決められるとともに、フレーム部材7の側面に対する上下方向のスライド移動範囲が規制される。フレーム部材7はまた、開放部材8の側面に当接して開放部材8のスライド移動をガイドするガイド突起79が側面から突出している(
図9参照)。
【0017】
また、開放部材8は、カバー部材10の開放状態から更にカバー部材10を+R方向へ回動させた際に、ステイ20の保持部21と当接して第一のポジションから第二のポジション方向へと力を受ける第1の被作用部としてのポジション切り替え部83を備える。また、カバー部材10が開放状態から-R方向へ回動する際のステイ20の移動を案内するレール接続部84を備える。レール接続部84は、後述のガイド部乃至ガイドレール部としてのレール部73とともに、ステイ20の保持部21の移動をガイドするガイド経路を形成する切替レール部である。レール接続部84とレール部73は、保持部21の突出方向に互いにずれた配置で、該突出方向と直交する略水平方向に保持部21がスライド移動可能に係合するガイド経路を形成する。レール接続部84は、開放部材8が第一のポジションにあるときは、レール部73に対して下方ずれた配置となり(第1の相対位置)、後述する係止部としての保持当接面711がガイド経路に露出する第1のガイド経路を、レール部73とともに形成する。すなわち、保持当接面711がレール部73とレール接続部84との間の段差をつなぐようなガイド経路が形成される。このガイド経路においては、カバー部材10が閉状態から開かれる際に保持部21が保持当接面711に到達する乃至保持当接面711を越える位置まで移動すると、保持当接面711が保持部21を規制可能な状態となる。また、開放部材8が第二のポジションにあるときは、レール部73と略同じ高さになり(第2の相対位置)、保持当接面711がガイド経路から退避する第2のガイド経路を、レール部73とともに形成する。
【0018】
また、開放部材8は、ステイ20が後述のレール部73に沿ってy方向移動中に付勢部72の付勢を解除する方向にステイ20から力を受ける第2の被作用部としての解除部85を備える。また、カバー部材10を閉状態から開放方向回動させた際に保持部21が突き当たる突き当て部86を備えている。
【0019】
図7に示すように、フレーム部材7は、カバー部材10を開放状態で維持するステイ20の姿勢を当接することにより維持する当接部71と、開放部材8の第二のポジションを保持する付勢部72を備える。また、カバー部材の開閉時に連動して回動するステイ20の保持部21の上下位置を規制し案内を行う略水平に伸びたレール部73と、ステイ20の+y方向の移動を規制する規制部74と、カバー部材10を軸支する軸受け部75とを備えている。
【0020】
図8(a)は、開放部材8が自重により落ちている状態であり、この状態を本実施例では第一のポジション(第1位置)とする。
図8(b)は、開放部材8が付勢部72を乗り
越えて付勢部72に当接し、第一のポジションより重力方向上方向に維持されている状態であり、この状態を本実施例では第二のポジション(第2位置)とする。図中の付勢部72は、片持ち梁で、先端に突起形状721を備える、いわゆるスナップフィットである。突起形状721は、開放部材8が第一のポジションと第二のポジション間を移動する際に、被付勢部82と接触し力を受けることで、被付勢部82から水平方向に逃げる方向に付勢部72全体が撓み、開放部材8の二つのポジション間の移動を可能にしている。すなわち、開放部材8は、カバー部材10の開閉動作において付勢部72の付勢力に抗する力を受けて移動することで、二つのポジション間を移動可能に構成されている。なお、付勢部72は、開放部材8の自重とステイ20の自重では微小変形程度の撓みしか生じないように構成されており、開放部材8は、所定の外力が付与されない限り、第二のポジションから第一のポジションへは移動できないように構成されている。すなわち、カバー部材10の自重乃至はカバー部材10を持ち上げる力が、ステイ20を介して開放部材8に加わることにより、開放部材8のポジション移動を可能にする撓みが発生するように構成されている。
【0021】
図9~
図18を参照して、カバー部材10の開閉及び保持の流れについて説明する。
【0022】
図9は、カバー部材10が開放状態で保持されている時のカバー部材10、開放部材8、ステイ20、フレーム部材7の側面断面図(
図9(a))と開放部材8周りの拡大図(
図9(b))である。
図10は、カバー部材10を
図9に図示した開放状態で保持されている状態から更に+R方向への回動させた際のカバー部材10、開放部材8、ステイ20、フレーム部材7の側面断面図(
図10(a))と開放部材8周りの拡大図(
図10(b))である。
図11は、
図10でのステイ20を不図示としたフレーム部材7と第一のポジションにいる開放部材8を表し、+x方向から-x方向へと断面を取った断面斜視図である。
【0023】
図12は、カバー部材10を
図10から更に+R方向へ回動させ、開放部材8が第二のポジションへと移動した際のカバー部材10、開放部材8、ステイ20、フレーム部材7の側面断面図(
図12(a))と開放部材8周りの拡大図(
図12(b))である。
図13は、
図12でのステイ20を不図示としたフレーム部材7と第二のポジションにいる開放部材8を表し、+x方向から-x方向へと断面を取った断面斜視図である。
【0024】
図14は、カバー部材10を
図12の状態から-R方向へ回動させた際のカバー部材10、開放部材8、ステイ20、フレーム部材7の側面断面図(
図14(a))と開放部材8周りの拡大図(
図14(b))である。
図15は、カバー部材10を
図14の状態から-R方向へ更に回動させ、開放部材8が第二のポジションから第一のポジションへと移動した際のカバー部材10、開放部材8、ステイ20、フレーム部材7の側面断面図(
図15(a))と開放部材8周りの拡大図(
図15(b))である。
図16は、カバー部材10が閉状態時のカバー部材10、開放部材8、ステイ20、フレーム部材7の側面断面図(
図16(a))と開放部材8周りの拡大図(
図16(b))である。
【0025】
図9に示すように、ステイ20の保持部21は、フレーム部材7の保持当接面711と接触しており、カバー部材10の自重を保持部21が保持当接面711からの反力を受けることで開放状態を維持しており、開放部材8は第一のポジションに位置している。保持当接面711は、ステイ軸受け102よりも図中の-y方向に位置している。この開放保持状態からカバー部材10を+R方向へ回動させることにより、ステイ20の保持部21は、自重により
図9の破線21aへと+y方向に移動し、
図10の状態となる。なお、ステイ軸受け102と保持当接面711がそれぞれ設けられる部材は互いに逆の関係であってもよい。すなわち、位置関係が逆に構成されていてもよい。
【0026】
図10に示すように、保持部21は、フレーム部材7の規制部74と当接し、+y方向への移動が規制されることにより、更にカバー部材10が+R方向(開方向)へ回動されると図中の矢印Za方向に開放部材8を伴って移動し
図12の状態となる。
図12に示すように、保持部21は開放部材8のポジション切り替え部83と当接しながら+z方向へと移動し、被付勢部82が付勢部72を乗り越えて、開放部材8を第一のポジションから第二のポジションへと移動させる。
【0027】
図11に示すように、第一のポジションにある開放部材8のレール接続部84は、フレーム部7のレール部73とは不連続である。
図13に示すように、開放部材8は第二のポジションにおいてレール接続部84がフレーム部材7のレール部73と略連続した面を形成し、保持部21がレール部73へと移動するまでの案内を行う。
図12の保持部21は、カバー部材10が-R方向へ回動した際に保持部21が破線21bの位置まで略水平移動する。保持部21は、接続部84とレール部73を-y方向に移動するにあたり
図14に図示するように解除部85と当接する位置まで移動する。そして、当接後はカバー部材10の自重を伴い開放部材8を第二のポジションから第一のポジションへと移動する図中のZb方向へ力を付勢する。開放部材8は前述の被付勢部82からの力を受け付勢部72が解除され、開放部材8が
図15に示すように第一のポジションへと移動し、自重で第一のポジションが維持される。カバー部材10を
図15から更に-R方向へ回動させると保持部21は-y方向へレール部73と当接しながら移動し、
図16に図示するようにカバー部材10が閉じ切った状態でレール部73内に収まる。
【0028】
図17は、カバー部材10を閉状態から開放状態へと回動させきった状態のカバー部材10、開放部材8、ステイ20、フレーム部材7の側面断面図(
図17(a))と開放部材8周りの拡大図(
図17(b))である。
【0029】
保持部21は、カバー部材の閉状態から+R方向へ回動させていくと、レール部73に沿って+y方向へ移動し、
図17に示すように開放部材8の突き当て部86に突き当たる。保持部21が突き当たった後にカバー部材10を-R方向へ回動させると、保持部21は自重で+y方向と-z方向へ回動し、
図9の状態へと移行する。
【0030】
図18を参照して、組立等でカバー部材10が閉状態で開放部材8が第二のポジションで設置された場合について説明する。
図18は、カバー部材10を閉状態から開放状態へ回動させる途中の状態におけるカバー部材10、開放部材8、ステイ20、フレーム部材7の側面断面図(
図18(a))と開放部材8周りの拡大図(
図18(b))である。カバー部材10を閉状態から+R方向へ回動させると保持部21が-y方向から+y方向へと略水平方向に解除部85と当接する位置まで移動する。当接後はカバー部材10を持ち上げる力を伴い開放部材8を第二のポジションから第一のポジションへと移動する方向へ力を付勢する。
【0031】
上記のように本構成における画像形成装置では、安定した開状態の維持と開閉動作のみで開状態の解除を行うことができる。
【0032】
本実施例では、保持部21が、レール部73等にガイドされる被ガイド部であり、開放部材8をポジションチェンジさせる作用部であり、かつ保持当接面711に係止される被係止部である、3つの機能を有しているが、かかる構成に限定されるものではない。これらの機能部は、それぞれ別部材、別部位で構成してもよい。
【0033】
また、本実施例では、ステイ20が装置内側に位置し、その外側に、フレーム部材7、開放部材8が順次配置される構成となっているが、かかる構成に限定されない。例えば、ステイ20がフレーム部材7と開放部材8の間に挟まれる構成として、ステイ20とフレ
ーム部材7との間の作用構成と、ステイ20と開放部材8との間の作用構成と、フレーム部材7と開放部材8との間の作用構成と、をそれぞれ別個に構成してもよい。
【0034】
また、本実施例では、ステイ21によるカバー部材10の保持機構を、装置幅方向(x軸方向)の片側にのみ設ける構成を示したが、反対側にも同様の構成も設けてもよい。
【0035】
また、本実施例では、記録媒体や原稿などに対して所定の処理を行う処理装置としての記録装置に本発明を適用した例を示した。そして、記録媒体に対して所定の処理を行う第1の処理部としての記録部5と搬送部(搬送手段40)とが筐体(下筐体2)に設けられ、原稿に対して所定の処理を行う第2の処理部としての読取部110がカバー部材10に設けられた構成を示した。しかしながら、処理装置の構成例、処理部の構成例はこれに限定されるものではない。例えば、処理装置として原稿から画像を読み取る読取装置に本発明を適用してもよく、その場合、読取部110は筐体としての下筐体2に設けられてよい。
【0036】
また、本実施例では、記録装置として、液体吐出式の記録装置に本発明を適用した例を説明したが、例えば、電子写真方式の画像形成装置、画像読取装置等に対しても本発明は適用可能である。すなわち、装置内部にアクセスすべくカバー部材を開放状態にする構成を有する装置に対して本発明は好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
2…下筐体、7…フレーム部材、8…開放部材、10…カバー部材、20…ステイ、21…保持部、72…付勢部、73…レール部、82…被付勢部、83…切り替え部、84…レール接続部、85…解除部