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特許7555781無機シート材付き無機繊維集合体、無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法及び排ガス浄化装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】無機シート材付き無機繊維集合体、無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法及び排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20240917BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240917BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240917BHJP
   F16J 15/08 20060101ALI20240917BHJP
   D04H 1/4209 20120101ALI20240917BHJP
【FI】
F01N3/28 311N
F01N3/28 311P
B01D53/94 300
C09K3/10 Q ZAB
C09K3/10 R
F16J15/08 E
F16J15/08 L
D04H1/4209
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020173524
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064727
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小栗 睦基
(72)【発明者】
【氏名】向後 雄太
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-081236(JP,A)
【文献】特開平08-334015(JP,A)
【文献】特表2018-535358(JP,A)
【文献】国際公開第2010/004637(WO,A1)
【文献】特開2012-149605(JP,A)
【文献】特開2008-051004(JP,A)
【文献】特開2008-309072(JP,A)
【文献】特開平11-190211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
B01D 53/94
C09K 3/10
F16J 15/08
D04H 1/4209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状かつ単層の無機繊維集合体と、
前記無機繊維集合体よりも通気抵抗が高い無機シート材とからなり、
前記無機シート材は、前記無機繊維集合体の表面の少なくとも一部に配置されており、
前記無機シート材は、箔状体及び板状体からなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項2】
前記無機シート材は、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、スズ、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属からなる請求項1に記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項3】
前記無機シート材は、アルミナ、シリカ、ガラス及び生体溶解性材料からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料からなる請求項1に記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項4】
前記無機シート材は、通気性を有する材料からなる請求項1~のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項5】
前記無機シート材付き無機繊維集合体に、上下方向から圧力を加え、前記無機繊維集合体が密度0.3g/cmとなるまで圧縮し、20分緩和後の前記無機シート材付き無機繊維集合体の上下方向の厚さが圧縮時の上下方向の厚さの120%以上である請求項1~のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項6】
前記無機繊維集合体は、長手方向と短手方向とを有する平面視矩形の形状であり、第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、長手方向に沿って形成される第1側面と、前記第1側面と対向する第2側面とを有している請求項1~のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項7】
前記無機シート材は、少なくとも前記第1主面、前記第2主面、前記第1側面及び前記第2側面のいずれかの一部に配置されている請求項に記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項8】
前記無機繊維集合体には、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている請求項1~のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項9】
前記無機シート材は、前記貫通孔の内壁に配置されている請求項に記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項10】
前記無機シート材付き無機繊維集合体は、
排ガス処理体と、前記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、前記排ガス処理体及び前記金属ケーシングとの間に配置される保持シール材とからなる排ガス浄化装置の前記保持シール材として使用される請求項1~のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項11】
前記無機繊維集合体は、長手方向と短手方向とを有する平面視矩形の形状であり、第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、長手方向に沿って形成される第1側面と、前記第1側面と対向する第2側面とを有しており、
下記ガス流量試験において、前記無機シート材付き無機繊維集合体を用いた場合の排ガス流入口側のガスの圧力が10kPaの時の排ガス流入口側のガスの流量(L/min)が、前記無機シート材が配置されていない前記無機繊維集合体を用いた場合の排ガス流入口側のガスの圧力が10kPaの時の排ガス流入口側のガスの流量(L/min)の80%以下である請求項1~10のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
ガス流量試験:
無機シート材付き無機繊維集合体及び無機シート材が配置されていない無機繊維集合体を準備する。
通気性の無い試験用円柱体を準備し、無機繊維集合体の第1側面が円を形成するように無機シート材付き無機繊維集合体及び無機シート材が配置されていない無機繊維集合体を、それぞれ試験用円柱体の側面に巻き付け、巻付体を作製する。
次に、排ガス流入口と排ガス排出口とを有する円筒状の金属ケーシングを準備し、無機シート材が、無機繊維集合体よりも排ガス流入口側に配置され、無機繊維集合体の充填密度(GBD)が、0.26g/cmとなるように、各巻付体を金属ケーシングに圧入する。
次に、金属ケーシングの排ガス流入口から空気を流し、排ガス流入口側のガスの圧力(kPa)及び排ガス流入口側のガスの流量(L/min)を測定する。
【請求項12】
前記無機シート材付き無機繊維集合体は、ガスケットとして使用される請求項1~のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体を製造する方法であって、
無機繊維を集合した後、ニードルパンチングを行い、シート状かつ単層の無機繊維集合体を準備する無機繊維集合体準備工程と、
無機シート材を前記無機繊維集合体の表面の少なくとも一部に配置する無機シート材配置工程とを含み、
前記無機シート材付き無機繊維集合体では、前記無機シート材は、前記無機繊維集合体よりも通気抵抗が高く、
前記無機シート材は、箔状体及び板状体からなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項14】
さらに、前記無機繊維集合体にバインダを添着するバインダ添着工程と、
前記バインダが添着された前記無機繊維集合体を乾燥させる乾燥工程を含む請求項13に記載の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項15】
前記バインダ添着工程の後、前記乾燥工程を行い、その後、前記無機シート材配置工程を行う請求項14に記載の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項16】
前記バインダ添着工程の後、前記無機シート材配置工程を行い、その後、前記乾燥工程を行う請求項14に記載の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項17】
前記無機シート材配置工程の後、前記バインダ添着工程を行い、その後、前記乾燥工程を行う請求項14に記載の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項18】
前記バインダ添着工程と前記無機シート材配置工程とを同時に行い、その後、前記乾燥工程を行う請求項14に記載の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項19】
請求項1~12のいずれかに記載の無機シート材付き無機繊維集合体を製造する方法であって、
無機繊維とバインダとを混合して無機繊維-バインダ混合液とする無機繊維-バインダ混合液作製工程と、
前記無機繊維-バインダ混合液を抄造及び脱水して無機繊維集合体とする抄造工程とを含み、
前記抄造工程の後、前記無機繊維集合体に無機シート材を配置する無機シート材配置工程を含む、又は、前記抄造工程において、無機シート材の上で前記無機繊維集合体を抄造し、
前記無機シート材は、箔状体及び板状体からなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項20】
前記抄造工程の後、前記無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行い、
前記乾燥工程の後、前記無機シート材配置工程を行う請求項19に記載の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項21】
前記抄造工程の後、前記無機シート材配置工程を行い、
前記無機シート材配置工程の後、前記無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行う請求項19に記載の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【請求項22】
前記抄造工程では、前記無機シート材の上に前記無機繊維-バインダ混合液を配置してから、前記無機繊維-バインダ混合液を抄造及び脱水して前記無機繊維集合体を作製し、
前記抄造工程の後に、前記無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行う請求項19に記載の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機シート材付き無機繊維集合体、無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法及び排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、スス等のパティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される無機繊維集合体からなる保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。そのため、保持シール材には、圧縮されることによる反発力で発生する面圧を高め、排ガス処理体を確実に保持する機能が求められている。
【0004】
このような保持シール材として、特許文献1には、無機繊維表面が結合剤層で覆われており、前記結合剤層は、有機結合剤、無機粒子、及び、高分子系分散剤を含むことを特徴とする保持シール材が開示されている。
特許文献2には、反対側を向いた2つの主面と、前記主面の間に延在する少なくとも1つのエッジ面と、を備える排気ガス処理装置用の実装マットであって、前記少なくとも1つのエッジ面の少なくとも一部分は、無機粒子を含む保護コーティングを含み、前記無機粒子は、少なくとも1μmの平均直径を有する、排気ガス処理装置用の実装マットが開示されている。
【0005】
また、このような保持シール材を構成するような無機繊維集合体を、ガスケットとして使用する場合もある。
例えば、特許文献3には、少なくとも無機繊維、弾性物質、結合材を含むビータシート状ガスケットにおいて、セラミック系無機繊維を10~30重量%、有機質弾性物質を2~5重量%、無機質結合材を2~5重量%の割合で配合すると共に、更に5~30重量%の天然マイカと、60~80重量%の未膨張バーミキュライトとを配合してなる配合物にて構成したことを特徴とする高温用ガスケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/168089号
【文献】特表2018-505984号公報
【文献】特開平4-288388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排ガス浄化装置に流入した排ガスの大部分は排ガス処理体を通過し浄化されることになる。しかし、一部の排ガスは、排ガス処理体を通過せず排ガス処理体を保持する保持シール材に衝突する場合もある。
特許文献1及び2に記載の保持シール材(実装マット)では、排ガスが衝突する面には空隙が多く存在する。そのため、保持シール材(実装マット)に衝突した排ガスは、この空隙を通って排ガス浄化装置を通過してしまうことがあった。排ガスが、排ガス処理体を通過せず排ガス浄化装置を通過してしまうと、排ガスを浄化することができないという問題が生じる。そのため、保持シール材のシール性の向上が望まれている。
【0008】
また、特許文献3に記載された無機繊維からなるガスケットは、形状追従性が不十分である。そのため、特許文献3に記載されたガスケットが、配管のガスケットスペースに配置されて、熱により配管のガスケットスペースが膨張した際に、ガスケットとガスケットスペースの壁面との間に隙間が生じやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、シール性が高い無機シート材付き無機繊維集合体を提供することである。
【0010】
すなわち、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体は、シート状かつ単層の無機繊維集合体と、上記無機繊維集合体よりも通気抵抗が高い無機シート材とからなり、上記無機シート材は、無機繊維集合体の表面の少なくとも一部に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体は、無機繊維集合体よりも通気抵抗が高い無機シート材を有する。そのため、ガス等の気体は、無機シート材部分を通過しにくくなる。
そのため、ガス等の気体が無機シート材と衝突するように排ガス浄化装置等に本発明の無機シート材付き無機繊維集合体を配置するとシール性が向上する。
【0012】
なお、本明細書において、「無機繊維集合体の表面」とは、外部に面する無機繊維集合体の部分を意味し、無機繊維集合体に貫通孔が形成されている場合、その貫通孔の内壁を含む概念を意味する。
【0013】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、スズ、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属からなっていてもよい。
これらの材料は、強度があり耐熱性が高いので、ガス等が衝突したとしても破れにくく、シール性を維持することができる。
【0014】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、アルミナ、シリカ、ガラス及び生体溶解性材料からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料からなっていてもよい。
無機シート材がこれらの材料からなると、無機シート材付き繊維集合体は強度及び耐熱性が高くなる。
【0015】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、箔状体、板状体、織物、編物及び不織布からなる群から選択される少なくとも1種からなっていてもよい。
【0016】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、通気性を有する材料からなっていてもよい。
無機シート材は無機繊維集合体よりも通気抵抗が高いので、無機シート材に通気性があったとしても無機シート材付き無機繊維集合体のシール性は高くなる。
なお、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、通気性を有しなくてもよい。
【0017】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材付き無機繊維集合体に、上下方向から圧力を加え、上記無機繊維集合体が密度0.3g/cmとなるまで圧縮し、20分緩和後の上記無機シート材付き無機繊維集合体の上下方向の厚さが圧縮時の上下方向の厚さの120%以上であることが好ましい。
このような特徴を有する無機シート材付き無機繊維集合体は、充分な反発力及び形状追従性を有する。そのため、例えば、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体をガスケット用途で使用した場合、熱膨張により配管のガスケットスペースが広がったとしても、充分に追従することができる。
【0018】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機繊維集合体は、長手方向と短手方向とを有する平面視矩形の形状であり、第1主面と、上記第1主面に対向する第2主面と、長手方向に沿って形成される第1側面と、上記第1側面と対向する第2側面とを有していることが好ましい。
無機繊維集合体が平面視矩形であると、無機シート材付き無機繊維集合体を柱状の排ガス処理体に巻き付けやすくなる。
【0019】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、少なくとも上記第1主面、上記第2主面、上記第1側面及び上記第2側面のいずれかの一部に配置されていることが好ましい。
無機シート材が上記第1主面及び上記第2主面のいずれかの一部に配置されている場合には、無機シート材付き無機繊維集合体が巻き付けられた排ガス処理体を圧入して排ガス浄化装置を作製すると、無機シート材が無機繊維集合体側に押圧されるので、無機シート材の一部が無機繊維集合体の内部に埋まることになる。そのため、排ガス浄化装置に排ガスが流入し、排ガスが無機繊維集合体を通過する場合、無機繊維集合体に埋まった無機シート材が抵抗となる。その結果、排ガスが無機繊維集合体を通過しにくくなる。
また、無機シート材が無機繊維集合体の第1側面及び第2側面のいずれかの一部に配置されている場合には、無機シート材付き無機繊維集合体が巻き付けられた排ガス処理体を圧入して排ガス浄化装置を作製すると、排ガスが流入した際に、排ガスは無機シート材に衝突する。そのため、排ガスが無機シート材付き無機繊維集合体を通過しにくくなる。
【0020】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機繊維集合体には、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されていてもよい。
無機繊維集合体に貫通孔が形成されていると、センサ、電極等を配置することができ、またバイパス流路にもなる。
【0021】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、上記貫通孔の内壁に配置されていてもよい。
無機シート材が、貫通孔の内壁に配置されている場合であっても、シール性が向上する効果を得ることができる。
【0022】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体は、排ガス処理体と、上記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、上記排ガス処理体及び上記金属ケーシングとの間に配置される保持シール材とからなる排ガス浄化装置の上記保持シール材として使用されることが好ましい。
上記の通り、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体はシール性が高い。そのため、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体を排ガス浄化装置の保持シール材として使用すると、排ガスが保持シール材を通過することを抑制することができる。
【0023】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機繊維集合体は、長手方向と短手方向とを有する平面視矩形の形状であり、第1主面と、上記第1主面に対向する第2主面と、長手方向に沿って形成される第1側面と、上記第1側面と対向する第2側面とを有し、少なくとも上記無機シート材は、上記第1主面、上記第2主面、上記第1側面及び上記第2側面のいずれかの一部に配置されており、下記ガス流量試験において、上記無機シート材付き無機繊維集合体を用いた場合の排ガス流入口側のガスの圧力が10kPaの時の排ガス流入口側のガスの流量(L/min)が、上記無機シート材が配置されていない上記無機繊維集合体を用いた場合の排ガス流入口側のガスの圧力が10kPaの時の排ガス流入口側のガスの流量(L/min)の80%以下であることが好ましい。
ガス流量試験:
無機シート材付き無機繊維集合体及び無機シート材が配置されていない無機繊維集合体を準備する。
通気性の無い試験用円柱体を準備し、無機繊維集合体の第1側面が円を形成するように無機シート材付き無機繊維集合体及び無機シート材が配置されていない無機繊維集合体を、それぞれ試験用円柱体の側面に巻き付け、巻付体を作製する。
次に、排ガス流入口と排ガス排出口とを有する円筒状の金属ケーシングを準備し、無機シート材が、無機繊維集合体よりも排ガス流入口側に配置され、無機繊維集合体の充填密度(GBD)が、0.26g/cmとなるように、各巻付体を金属ケーシングに圧入する。
金属ケーシングの排ガス流入口から空気を流し、排ガス流入口側のガスの圧力(kPa)及び排ガス流入口側のガスの流量(L/min)を測定する。
【0024】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体が、上記パラメータを有するということは、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体を排ガス浄化装置の保持シール材として用いた場合に、シール性が高くなることを意味している。
【0025】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体は、ガスケットとして使用されることが好ましい。
上記の通り、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体はシール性が高い。そのため、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体をガスケットとして用いると、ガス等が漏れることを防ぐことができる。
【0026】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法は、上記本発明の無機シート材付き無機繊維集合体を製造する方法であって、無機繊維を集合した後、ニードルパンチングを行い、シート状かつ単層の無機繊維集合体を準備する無機繊維集合体準備工程と、無機シート材を上記無機繊維集合体の表面の少なくとも一部に配置する無機シート材配置工程とを含み、上記無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、上記無機繊維集合体よりも通気抵抗が高いことを特徴とする。
【0027】
ニードルパンチングを行って得られたニードルマットを用いることにより、上記本発明の無機シート材付き無機繊維集合体を製造することができる。
【0028】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、さらに、上記無機繊維集合体にバインダを添着するバインダ添着工程と、上記バインダが添着された上記無機繊維集合体を乾燥させる乾燥工程を含むことが好ましい。
バインダ添着工程及び乾燥工程を行うことにより、無機繊維集合体にバインダを付着させることができる。
バインダとしては、有機バインダ及び無機バインダが挙げられる。
有機バインダは、無機繊維集合体から繊維の脱落、飛散の抑止ができる。
無機バインダは、無機繊維の表面に付着することで、無機繊維集合体の面圧を向上させることができる。そのため、製造された無機シート材付き無機繊維集合体を排ガス浄化装置に用いた場合、排ガス処理体を好適に保持することができる。
なお、ニードルマットを無機繊維集合体とする場合、無機繊維集合体は有機バインダ及び無機バインダを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0029】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、上記バインダ添着工程の後、上記乾燥工程を行い、その後、上記無機シート材配置工程を行ってもよい。
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、上記バインダ添着工程の後、上記無機シート材配置工程を行い、その後、上記乾燥工程を行ってもよい。
また、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、上記無機シート材配置工程の後、上記バインダ添着工程を行い、その後、上記乾燥工程を行ってもよい。
また、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、上記バインダ添着工程と上記無機シート材配置工程とを同時に行い、その後、上記乾燥工程を行ってもよい。
すなわち、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、バインダ添着工程及び無機シート材配置工程の順番は特に限定されない。
【0030】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法は、上記本発明の無機シート材付き無機繊維集合体を製造する方法であって、無機繊維とバインダとを混合して無機繊維-バインダ混合液とする無機繊維-バインダ混合液作製工程と、上記無機繊維-バインダ混合液を抄造及び脱水して無機繊維集合体とする抄造工程とを含み、上記抄造工程の後、上記無機繊維集合体に無機シート材を配置する無機シート材配置工程を含む、又は、上記抄造工程において、無機シート材の上で上記無機繊維集合体を抄造することを特徴とする。
【0031】
抄造して得られる抄造マットを用いることにより、上記本発明の無機シート材付き無機繊維集合体を製造することができる。
【0032】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、上記抄造工程の後、上記無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行い、上記乾燥工程の後、上記無機シート材配置工程を行ってもよい。
また、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、上記抄造工程の後、上記無機シート材配置工程を行い、上記無機シート材配置工程の後、上記無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
すなわち、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、乾燥工程及び無機シート材配置工程の順番は特に限定されない。
【0033】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、上記抄造工程の際に、上記無機シート材の上に上記無機繊維-バインダ混合液を配置してから、上記無機繊維-バインダ混合液を抄造及び脱水して上記無機繊維集合体を作製し、上記抄造工程の後に、上記無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
このような方法で無機シート材付き無機繊維集合体を製造すると、無機繊維集合体を作製する工程と、無機シート材を配置する工程とを同時に行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体が用いられた排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図3A図3Aは、ガス流量試験において巻付体を作成する工程を模式的に示す斜視図である。
図3B図3Bは、ガス流量試験において巻付体を金属ケーシングに圧入する様子を模式的に示す側面図である。
図3C図3Cは、ガス流量試験においてガスの流量及びガスの圧力を測定する様子を模式的に示す断面図である。
図4A図4Aは、無機繊維集合体の側面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4B図4Bは、貫通孔を有する無機繊維集合体の側面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4C図4Cは、無機繊維集合体の主面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4D図4Dは、貫通孔を有する無機繊維集合体の主面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4E図4Eは、貫通孔を有する無機繊維集合体の貫通孔の内壁に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4F図4Fは、貫通孔を有する無機繊維集合体の貫通孔の内壁、及び、無機繊維集合体の主面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図5A図5Aは、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図5B図5Bは、図5AのA-A線断面図である。
図6図6は、排ガス流入口側のガスの流量(L/min)をyとし、排ガス流入口側のガスの圧力(kPa)をxとして、ガス流量試験の結果をプロットしたグラフである。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体の一例を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体が用いられた配管の一例を模式的に示す断面図である。
【0035】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0036】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体は、シート状かつ単層の無機繊維集合体と、上記無機繊維集合体よりも通気抵抗が高い無機シート材とからなり、上記無機シート材は、上記無機繊維集合体の表面の少なくとも一部に配置されていることを特徴とする。
【0037】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体は、無機繊維集合体よりも通気抵抗が高い無機シート材を有する。そのため、ガス等の気体は、無機シート材部分を通過しにくくなる。
そのため、ガス等の気体が無機シート材と衝突するように排ガス浄化装置等に本発明の無機シート材付き無機繊維集合体を配置するとシール性が向上する。
【0038】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体は、上記構成を有しさえすれば、上記本発明の効果を奏する範囲で、他のいかなる構成を有していてもよい。
【0039】
以下、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の各態様を、図面を用いて説明する。
【0040】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体は、排ガス浄化装置の保持シール材として使用される無機シート材付き無機繊維集合体である。
なお、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体を備える排ガス浄化装置も本発明の一態様である。
【0041】
図1は、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体が用いられた排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【0042】
図1に示す無機シート材付き無機繊維集合体10は、シート状かつ単層の無機繊維集合体20と、無機繊維集合体20よりも通気抵抗が高い無機シート材30とからなる。
【0043】
なお、本明細書において「シート状かつ単層」とは、2枚以上が積層されて形成された無機繊維集合体でなく、表面と、表面と対向する裏面と、表面及び裏面を接続する側面を有する無機繊維集合体のことを意味する。
【0044】
図1に示す無機繊維集合体20は、長手方向Lと短手方向Sとを有する平面視矩形の形状であり、第1主面21と、第1主面21に対向する第2主面22と、長手方向Lに沿って形成される第1側面23と、第1側面23と対向する第2側面24と、短手方向Sに沿って形成される第1端部25と、第1端部25と対向する第2端部26とを有する形状である。
第1端部25及び第2端部26には、それぞれ、凸部25a及び凹部26aが形成されている。
凸部25a及び凹部26aは、第1端部25及び第2端部26が接触するように無機シート材付き無機繊維集合体10を巻いた際に、互いに篏合する形状である。
また、無機シート材30は、第1側面23の全体を覆うように配置されている。
【0045】
なお、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、無機シート材が、第1側面23の長手方向の一部のみを覆うように配置されていてもよく、第1側面23の厚さ方向の一部のみを覆うように配置されていてもよい。
【0046】
また、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、第1端部及び第2端部が接触するように無機シート材付き無機繊維集合体を巻いた際に、第1側面が同一平面上に位置し、かつ、第2側面が同一平面上に位置できるように第1端部及び第2端部が形成されていることが好ましい。
例えば、第1端部及び第2端部には、凸部及び凹部が形成されておらず、直線状の形状であってもよい。また、第1端部及び第2端部は互いに平行であり、短手方向に対し斜めの直線状の形状であってもよい。また、第1端部及び第2端部には、それぞれ、互いに対応する切欠部及び突出部が形成されていてもよい。切欠部及び突出部としては、例えば、L字状の切欠部及び突出部や、半円形の切欠部及び突出部の形状が挙げられる。
【0047】
図2に示すように、排ガス浄化装置1は、排ガス処理体40と、排ガス処理体40を収容する金属ケーシング50と、排ガス処理体40及び金属ケーシング50との間に配置される無機シート材付き無機繊維集合体10からなる。つまり、無機シート材付き無機繊維集合体10は保持シール材として機能する。
また、金属ケーシング50は、排ガス流入口51と、排ガス排出口52とを有しており、無機繊維集合体20の第1側面23が排ガス流入口51側に、無機繊維集合体20の第2側面24が排ガス排出口側に位置するように配置されている。
なお、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体が用いられた排ガス浄化装置では、無機繊維集合体の第1側面が排ガス排出口側に、無機繊維集合体の第2側面が排ガス流入口側に位置するように配置されていてもよい。
【0048】
排ガス浄化装置1では、排ガスGは、排ガス流入口51から流入する。この際、殆どの排ガスGは排ガス処理体40を通過することにより浄化される。
【0049】
この際、一部の排ガスGは保持シール材に衝突する。保持シール材が従来の無機繊維集合体であり、無機シート材が配置されていないと、排ガスGが無機繊維集合体の内部を通り排ガス排出口52から抜けてしまうことがある。
【0050】
一方、排ガス浄化装置1では、排ガスGが、保持シール材である無機シート材付き無機繊維集合体10に衝突する際は、まず無機シート材30に衝突する。
無機シート材30は通気抵抗が高いので、排ガスGは、無機シート材30に侵入しにくくなり、無機繊維集合体20に到達しにくい。
そのため、排ガスGが無機繊維集合体20の内部を通って排ガス排出口52から抜けてしまうことを防ぐことができる。
【0051】
次に、無機シート材付き無機繊維集合体10を含む排ガス浄化装置1の各構成の好ましい態様について説明する。
【0052】
(無機繊維集合体)
無機繊維集合体20としては、限定されないが、ニードルパンチング処理されたニードルマット、湿式による抄造法で得られたマット等を使用することができる。
【0053】
無機繊維集合体20を構成する無機繊維は、平均繊維径が3~50μmであることが好ましく、平均繊維長が100~100000μmであることがより好ましい。
また、無機繊維集合体20を構成する無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
無機繊維集合体20を構成する無機繊維が上記形状及び材質であると、無機繊維集合体20の面圧を充分に向上させることができ、無機繊維集合体20が用いられた排ガス浄化装置において、排ガス処理体が脱落しにくくなる。
【0054】
無機繊維集合体20の厚さは、2.0~30mmであることが好ましい。
無機繊維集合体の厚さが30mmを超えると、無機繊維集合体の柔軟性が失われるので、無機繊維集合体を排ガス処理体に巻き付ける際に扱いづらくなる。また、無機繊維集合体に巻きジワや割れが生じやすくなる。
無機繊維集合体の厚さが2.0mm未満であると、無機繊維集合体の面圧が排ガス処理体を保持するのに充分でなくなる。そのため、排ガス処理体が抜け落ちやすくなる。また、排ガス処理体に体積変化が生じた場合、無機繊維集合体は排ガス処理体の体積変化を吸収しにくくなる。そのため、排ガス処理体にクラック等が発生しやすくなる。
【0055】
無機繊維集合体20の目付量(単位面積当たりの重量)は、200~4000g/mであること好ましく、1000~3500g/mであることがより好ましい。
無機繊維集合体の目付量が200g/m未満であると、保持力が充分ではなくなり、無機繊維集合体の目付量が4000g/mを超えると、無機繊維集合体の嵩が低くなりにくい。そのため、このような無機繊維集合体を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体が脱落しやすくなる。
【0056】
無機繊維集合体20の嵩密度(巻き付ける前の無機繊維集合体の嵩密度)は、0.10~0.30g/cmであることが好ましく、0.10~0.25g/cmであることがより好ましい。
無機繊維集合体の嵩密度が0.10g/cm未満であると、無機繊維のからみ合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、無機繊維集合体の形状を所定の形状に保ちにくくなる。
また、無機繊維集合体の嵩密度が0.30g/cmを超えると、無機繊維集合体が硬くなるため、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、無機繊維集合体が割れやすくなる。
【0057】
無機繊維集合体20は、有機バインダや無機バインダを含んでいてもよい。
有機バインダとしては、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、エアロゲル、ヒュームドシリカ、チタン粒子等が挙げられる。
有機バインダは、無機繊維集合体から繊維の脱落、飛散の抑止ができる。
無機バインダは、無機繊維の表面に付着することで、無機繊維集合体の面圧を向上させることができる。これにより、排ガス処理体を好適に保持することができる。
なお、ニードルマットを無機繊維集合体とする場合、無機繊維集合体は有機バインダ及び無機バインダを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0058】
無機繊維集合体には、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されていてもよい。
無機繊維集合体に貫通孔が形成されていると、センサ、電極等を配置することができ、またバイパス流路にもなる。
【0059】
(無機シート材)
無機シート材を構成する材料は、無機シート材の通気抵抗が、無機繊維集合体の通気抵抗が高ければ、通気性を有さない材料からなっていてもよく、通気性を有する材料からなっていてもよい。
無機シート材は無機繊維集合体よりも通気抵抗が高いので、無機シート材に通気性があったとしても無機シート材付き無機繊維集合体のシール性は高くなる。
【0060】
また、無機シート材を構成する材料は、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、スズ、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属からなっていてもよい。また、アルミナ、シリカ、ガラス及び生体溶解性材料からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料からなっていてもよい。
【0061】
無機シート材が金属からなる場合、強度があり耐熱性が高いので、ガス等が衝突したとしても破れにくく、シール性を維持することができる。
無機シート材が金属からなる場合、無機シート材は、金属から形成されているシート状のものであれば特に限定されず、例えば、箔状の金属箔、板状の金属板、金属繊維を織って得られる織物、金属繊維を編んで得られる編物、金属繊維を集合させた不織布を含む。
【0062】
無機シート材が金属からなる箔状体である場合、箔状体の厚さは、1~300μmであることが好ましい。
箔状体の厚さが1μm未満であると、箔状体は破れやすくなる。
箔状体の厚さは300μmを超えると、曲がりにくくなり扱いにくくなる。
【0063】
また、箔状体は、銅からなることがより好ましい。
銅は柔軟性が高いので、銅が用いられた無機シート材付き無機繊維集合体を湾曲等させた際に、無機シート材が破れたりする等の破損が生じにくくなる。
【0064】
無機シート材がアルミナ、シリカ、ガラス及び生体溶解性材料からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料からなる場合、無機シート材付き繊維集合体はは強度及び耐熱性が高くなる。
この場合、無機シート材の形状は、シート状のものであれば、特に限定されず、例えば、箔状体、板状体、織物、編物、不織布等が挙げられる。
また、無機シート材は、セラミックからなることが好ましく、板状のセラミック板、セラミック繊維を織って得られる織物、セラミック繊維を編んで得られる編物、セラミック繊維を集合させた不織布であることが好ましい。
【0065】
無機シート材がセラミック繊維から構成される場合、セラミック繊維の繊維径は3~50μmであることが好ましい。
【0066】
無機シート材を構成する材料は、通気性を有する材料からなっていてもよい。
無機シート材は無機繊維集合体よりも通気抵抗が高いので、無機シート材に通気性があったとしても無機シート材付き無機繊維集合体のシール性は高くなる。
なお、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、上記無機シート材は、通気性を有しなくてもよい。
【0067】
(無機シート材付き無機繊維集合体)
無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機シート材30は、接着剤により無機繊維集合体に接着されていることが好ましい。
接着剤としては、特に限定されず、無機系接着剤であってもよく、有機系接着剤であってもよい。
【0068】
無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機シート材30が、無機繊維集合体20の第1側面23の全体を覆うように配置されていたが、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、無機シート材が無機繊維集合体20の第1側面23の一部のみを覆うように配置されていてもよく、無機繊維集合体の第2側面24の一部又は全部を覆うように配置されていてもよい。また、無機シート材が、無機繊維集合体20の全面を覆うように配置されていてもよい。
いずれの態様であっても、無機シート材が配置されていることにより、排ガス浄化装置において排ガスGが無機繊維集合体20を通って排ガス排出口52から抜けてしまうことを防ぐことができる。
【0069】
なお、無機繊維集合体20の全面に無機シート材を配置すると、無機シート材付き無機繊維集合体10を排ガス処理体40に巻き付けにくくなる。そのため、無機繊維集合体20の第1主面21及び第2主面22の一部を露出するように、無機シート材が配置されていることが好ましい。
さらに、無機繊維集合体20の第1側面23から第2側面24までの方向において、無機繊維集合体20の第1主面21の5~95%の領域は露出していることがより好ましく、無機繊維集合体20の第1側面23から第2側面24までの方向において、無機繊維集合体20の第2主面22の5~95%の領域は露出していることがより好ましい。
【0070】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、無機繊維集合体に貫通孔が形成されている場合、貫通孔の内壁に無機シート材が配置されていてもよい。この場合、無機シート材は、貫通孔の内壁の全面に配置されていてもよく、一部のみに配置されていてもよい。
無機シート材が、貫通孔の内壁に配置されている場合であっても、シール性が向上する効果を得ることができる。
なお、無機シート材は、貫通孔の内壁に加え、無機繊維集合体の第1主面及び/又は第2主面の一部や、無機繊維集合体の第1側面及び/又は第2側面の一部に配置されていてもよい。
【0071】
無機シート材付き無機繊維集合体10は、無機シート材付き無機繊維集合体10に、上下方向から圧力を加え、無機繊維集合体20が密度0.3g/cmとなるまで圧縮し、20分緩和後の無機シート材付き無機繊維集合体10の上下方向の厚さが圧縮時の上下方向の厚さの120%以上であることが好ましく、150%以上となることがより好ましい。
このような特徴を有する無機シート材付き無機繊維集合体10は、充分な反発力及び形状追従性を有する。そのため、排ガス処理体をしっかりと保持することができる。
【0072】
無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機繊維集合体20は、長手方向Lと短手方向Sとを有する平面視矩形の形状であり、第1主面21と、第1主面21に対向する第2主面22と、長手方向に沿って形成される第1側面23と、第1側面23と対向する第2側面24とを有しており、無機シート材付き無機繊維集合体10は、下記ガス流量試験において、無機シート材付き無機繊維集合体10を用いた場合の排ガス流入口側のガスの圧力が10kPaの時の排ガス流入口側のガスの流量(L/min)が、無機シート材30が配置されていない無機繊維集合体20を用いた場合の排ガス流入口側のガスの圧力が10kPaの時の排ガス流入口側のガスの流量(L/min)の80%以下であることが好ましい。
【0073】
<ガス流量試験>
図3Aは、ガス流量試験において巻付体を作成する工程を模式的に示す斜視図である。
図3Bは、ガス流量試験において巻付体を金属ケーシングに圧入する様子を模式的に示す側面図である。
図3Cは、ガス流量試験においてガスの流量及びガスの圧力を測定する様子を模式的に示す断面図である。
ガス流量試験では、図3Aに示すように、まず通気性の無い試験用円柱体45を準備し、無機繊維集合体20の第1側面23が円を形成するように無機シート材付き無機繊維集合体10を試験用円柱体45の側面に巻き付け、巻付体46を作製する。
なお、図3Aに示す無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機シート材30が第1側面23に配置されている。
【0074】
次に、図3Bに示すように、排ガス流入口51と排ガス排出口52とを有する円筒状の金属ケーシング50を準備し、無機シート材30が、無機繊維集合体20よりも排ガス流入口51側に配置され、無機繊維集合体20の充填密度(GBD)が、0.26g/cmとなるように、巻付体46を金属ケーシング50に圧入する。
【0075】
次に、図3Cに示すように、金属ケーシング50の排ガス流入口51からガスGを流し、排ガス流入口51側のガスの流量及び排ガス流入口51側のガスの圧力を測定する。
【0076】
また、無機シート材付き無機繊維集合体10を用いる代わりに、無機シート材30が配置されていない無機繊維集合体20を用いて巻付体を作製し、同様の方法で、排ガス流入口51側のガスの流量及び排ガス流入口51側のガスの圧力を測定する。
【0077】
無機シート材付き無機繊維集合体10が上記パラメータを有するということは、無機シート材付き無機繊維集合体10を排ガス浄化装置1の保持シール材として用いた場合に、シール性が高くなることを意味している。
【0078】
また、上記ガス流量試験において、無機シート材付き無機繊維集合体10を用いた場合に、排ガス流入口側のガスの流量(L/min)をyとし、排ガス流入口側のガスの圧力(kPa)をxとした際に、下記式(1)を満たすことが好ましい。
y<5.0x・・・(1)
【0079】
無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機シート材30が、無機繊維集合体20の第1側面23に配置されていたが、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、無機シート材が、無機繊維集合体の第2側面に配置されていてもよい。
【0080】
また、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体では、無機シート材が、無機繊維集合体の第1主面及び第2主面の一部に配置されていてもよい。
この場合、無機シート材付き無機繊維集合体が巻き付けられた排ガス処理体を圧入して排ガス浄化装置を作製すると、無機シート材が無機繊維集合体側に押圧されるので、無機シート材の一部が無機繊維集合体の内部に埋まることになる。そのため、排ガス浄化装置に排ガスが流入し、排ガスが無機繊維集合体を通過する場合、無機繊維集合体に埋まった無機シート材が抵抗となる。その結果、排ガスが無機繊維集合体を通過しにくくなる。
【0081】
本発明の無機シート材付き無機繊維集合体における無機シート材の配置の態様について以下に図面を用いて例示する。
図4Aは、無機繊維集合体の側面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4Aに示すように、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体10では、第1側面23及び第2側面24の一部に無機シート材30が配置されていてもよい。
【0082】
図4Bは、貫通孔を有する無機繊維集合体の側面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4Bに示すように、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機繊維集合体20が貫通孔27を有し、第1側面23及び第2側面24の一部に無機シート材30が配置されていてもよい。
【0083】
図4Cは、無機繊維集合体の主面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4Cに示すように、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体10では、第1主面21の一部に無機シート材30が配置されていてもよい。
【0084】
図4Dは、貫通孔を有する無機繊維集合体の主面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4Dに示すように、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機繊維集合体20が貫通孔27を有し、第1主面21の一部に無機シート材30が配置されていてもよい。
【0085】
図4Eは、貫通孔を有する無機繊維集合体の貫通孔の内壁に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4Eに示すように、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機繊維集合体20が貫通孔27を有し、貫通孔27の内壁28の一部に無機シート材30が配置されていてもよい。
【0086】
図4Fは、貫通孔を有する無機繊維集合体の貫通孔の内壁、及び、無機繊維集合体の主面に無機シート材が配置された本発明の無機シート材付き無機繊維集合体の例を模式的に示す斜視図である。
図4Fに示すように、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体10では、無機繊維集合体20が貫通孔27を有し、貫通孔27の内壁28の一部に無機シート材30が配置されており、第1主面21及び第2主面22の一部に無機シート材30が配置されていてもよい。
【0087】
(排ガス処理体)
図5Aは、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。図5Bは、図5AのA-A線断面図である。
図5A及び図5Bに示すように、排ガス浄化装置1に含まれる排ガス処理体40は、多数のセル41がセル壁42を隔てて長手方向に並設された円柱状のものである。
また、排ガス処理体40は、各々のセル41におけるいずれか一方が封止材43によって目封じされた排ガスフィルタ(ハニカムフィルタ)である。
【0088】
図5Bに示すように、内燃機関から排出され排ガス処理体40に流入した排ガスGは、排ガス処理体40の排ガス流入側端面に開口した一のセル41に流入し、セル41を隔てるセル壁42を通過することになる。この際、排ガス中のPMがセル壁42で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス排出側端面に開口した他のセル41から流出し、外部に排出される。
【0089】
なお、図5A及び図5Bに示す排ガス処理体40は、セル41のいずれか一方の端部が封止材43で封止されているフィルタであるが、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルの端部が封止されていなくてもよい。このような排ガス処理体は、触媒担体として好適に使用することが可能となる。
【0090】
排ガス処理体40は、炭化ケイ素や窒化ケイ素などの非酸化物多孔質セラミックからなっていてもよく、サイアロン、アルミナ、コーデェライト、ムライト等の酸化物多孔質セラミックからなっていてもよい。これらの中では、炭化ケイ素であることが好ましい。
【0091】
排ガス処理体40が炭化ケイ素質の多孔質セラミックである場合、多孔質セラミックの気孔率は特に限定されないが、35~60%であることが好ましい。
気孔率が35%未満であると、排ガス処理体がすぐに目詰まりを起こすことがあり、一方、気孔率が60%を超えると、排ガス処理体の強度が低下して容易に破壊されることがある。
【0092】
また、多孔質セラミックの平均気孔径は5~30μmであることが好ましい。
平均気孔径が5μm未満であると、PMが容易に目詰まりを起こすことがあり、一方、平均気孔径が30μmを超えると、PMが気孔を通り抜けてしまい、PMを捕集することができず、フィルタとして機能することができないことがあるからである。
なお、上記気孔率及び気孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)等による測定の従来公知の方法により測定することができる。
【0093】
排ガス処理体40の断面におけるセル密度は、特に限定されないが、好ましい下限は、31.0個/cm(200個/inch)、好ましい上限は、93.0個/cm(600個/inch)である。また、より好ましい下限は、38.8個/cm(250個/inch)、より好ましい上限は、77.5個/cm(500個/inch)である。
【0094】
排ガス処理体40には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が好ましく、この中では、白金がより好ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0095】
(金属ケーシング)
金属ケーシング50は、略円筒形である。
金属ケーシング50の内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、無機シート材付き無機繊維集合体10が巻き付けられた排ガス処理体40の直径より若干短くなっていることが好ましい。
【0096】
金属ケーシング50は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなることが好ましい。
【0097】
次に、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法及び当該無機シート材付き無機繊維集合体を用いた排ガス浄化装置の製造方法について説明する。
【0098】
本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、無機繊維集合体をニードルパンチング法で作製する方法や、抄造法により作製する方法を採用することができる。
【0099】
まず、無機繊維集合体をニードルパンチング法で作製する方法について説明する。
無機繊維集合体をニードルパンチング法で作製する無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法は、無機繊維を集合した後、ニードルパンチングを行い、シート状かつ単層の無機繊維集合体を準備する無機繊維集合体準備工程と、無機繊維集合体よりも通気抵抗が高い無機シート材を準備し、無機シート材を無機繊維集合体の表面の少なくとも一部に配置する無機シート材配置工程とを含む。
【0100】
(無機繊維集合体準備工程)
本工程では、まず、塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して無機繊維を作製する。続いて、上記無機繊維を集合及び圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、これにニードルパンチングを行い、その後、焼成処理を施すことによりシート状かつ単層の無機繊維集合体を準備することができる。
【0101】
なお、ニードルパンチングを行い無機繊維集合体を準備する場合、無機繊維の平均長は、1~150mmであることが好ましく、10~80mmであることがより好ましい。
無機繊維の平均繊維長が1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、無機繊維同士の交絡が不充分となり、無機繊維集合体の強度が得られにくくなり、無機繊維集合体の形状保持性が低下しやすくなる。
繊維の平均繊維長が150mmを超えると、繊維の繊維長が長すぎるため、無機繊維集合体を構成する繊維本数が減少するため、緻密性が低下する。
【0102】
また、無機繊維集合体を、打ち抜き型やカッター等で切断することにより平面視矩形にしてもよい。
【0103】
(無機シート材配置工程)
無機シート材配置工程では、まず無機シート材を準備する。
無機シート材として好ましい構成はすでに説明しているので、ここでの説明は省略する。
なお、無機シート材は、カッター等で所望の形状にすることができる。
【0104】
次に、準備した無機繊維集合体の表面の少なくとも一部に、無機シート材を配置する。
無機シート材を配置する方法としては、特に限定されず、接着剤で接着してもよい。接着剤としては、無機系接着剤であってもよく、有機系接着剤であってもよい。
【0105】
本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、製造後の無機シート材付き無機繊維集合体において、無機シート材が、無機繊維集合体よりも通気抵抗が高くなるようにする。
無機シート材の通気抵抗を無機繊維集合体よりも高くする方法としては、無機シート材の種類やその構成材料、無機繊維集合体に使用する無機繊維の種類や、無機繊維集合体のかさ密度等を調整する方法が挙げられる。
【0106】
以上の工程を経て、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体を製造することができる。
【0107】
また、無機繊維集合体をニードルパンチング法で作製する上記無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、さらに、無機繊維集合体にバインダを添着するバインダ添着工程と、バインダが添着された無機繊維集合体を乾燥させる乾燥工程とを行ってもよい。
各工程について、以下に説明する。
なお、無機繊維集合体をニードルパンチング法で作製する場合、バインダ添着工程を行わなくてもよい。つまり、ニードルマットを無機繊維集合体とする場合、無機繊維集合体は有機バインダ及び無機バインダを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0108】
(バインダ添着工程)
本工程では、無機繊維集合体にバインダを添着させる。
バインダは、有機バインダであってもよく、無機バインダであってもよい。
有機バインダとしては、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、エアロゲル、ヒュームドシリカ、チタン粒子等が挙げられる。
【0109】
(乾燥工程)
本工程では、バインダが添着された無機繊維集合体を乾燥する。
乾燥条件は、特に限定されないが、50~300℃、1~20分であることが好ましい。
【0110】
バインダ添着工程及び乾燥工程を行うことにより、無機繊維集合体にバインダを付着させることができる。
有機バインダを添着させた場合は、無機繊維集合体から繊維の脱落、飛散の抑止ができる。
無機バインダを添着させた場合は、無機繊維の表面に付着することで、無機繊維集合体の面圧を向上させることができる。そのため、製造された無機シート材付き無機繊維集合体を排ガス浄化装置に用いた場合、排ガス処理体を好適に保持することができる。
【0111】
バインダ添着工程及び乾燥工程を行う場合、バインダ添着工程の後、乾燥工程を行い、その後、無機シート材配置工程を行ってもよい。
また、バインダ添着工程の後、無機シート材配置工程を行い、その後、乾燥工程を行ってもよい。
また、無機シート材配置工程の後、バインダ添着工程を行い、その後、乾燥工程を行ってもよい。
また、バインダ添着工程と無機シート材配置工程とを同時に行い、その後、乾燥工程を行ってもよい。
すなわち、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、バインダ添着工程及び無機シート材配置工程の順番は特に限定されない。
【0112】
次に、無機繊維集合体を抄造法で作製する方法について説明する。
無機繊維集合体を抄造法で作製する無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法は、無機繊維とバインダとを混合して無機繊維-バインダ混合液とする無機繊維-バインダ混合液作製工程と、無機繊維-バインダ混合液を抄造及び脱水して無機繊維集合体とする抄造工程を含む。
また、この方法では、抄造工程を行った後に、無機繊維集合体に無機シート材を配置する無機シート材配置工程を含んでいてもよい。
また、この方法では、抄造工程において、無機シート材の上で無機繊維集合体を抄造してもよい。
以下、各工程について説明する。
【0113】
(無機繊維-バインダ混合液作製工程)
無機繊維を開繊し、開繊した無機繊維と、バインダとを混合し、無機繊維-バインダ混合液を作製する。
バインダとしては、有機バインダ及び無機バインダの両方を用いる。
有機バインダとしては、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、エアロゲル、ヒュームドシリカ、チタン粒子等が挙げられる。
また、無機繊維-バインダ混合液には、必要に応じて水等のその他の成分を加えてもよい。
【0114】
無機繊維-バインダ混合液を作製する際の無機繊維の平均繊維長は、0.1~20mmであることが好ましい。
無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、後の工程を経て得られる無機繊維集合体としての形状保持性が低下してしまう。さらに、繊維集合体にしたときに無機繊維同士に好適な絡み合いが起こらず、充分な面圧を得ることが困難になる。
無機繊維の平均繊維長が20mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、後述する抄造工程で無機繊維同士の絡み合いが強くなりすぎるため、無機繊維集合体としたときに無機繊維が不均一に集積しやすくなり、せん断強度も低下しやすくなる。
【0115】
(抄造工程)
底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に無機繊維-バインダ混合液を流し込んだ後に、混合液中の水を、メッシュを介して脱水することにより無機繊維集合体を作製する。
【0116】
次に、無機繊維集合体を抄造法で作製する無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法において、無機繊維集合体に無機シート材を配置する方法を説明する。
無機繊維集合体を抄造法で作製する無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、上記抄造工程の後、無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行い、乾燥工程の後、無機シート材を無機繊維集合体に配置する無機シート材配置工程を行ってもよい。
【0117】
また、無機繊維集合体を抄造法で作製する無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、抄造工程の後、無機シート材を無機繊維集合体に配置する無機シート材配置工程を行い、無機シート材配置工程の後、無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
【0118】
上記方法における乾燥工程では、抄造工程で作製した無機繊維集合体を加熱加圧してもよい。加熱加圧の際、熱風を無機繊維集合体に通気させて乾燥する熱処理をしてもよく、熱処理をせずに湿潤状態としてもよい。
熱処理をする場合には、有機バインダの熱による劣化を防ぐため、加熱温度や熱風温度は100~250℃であることが好ましい。100~250℃の範囲においては、有機バインダの劣化を抑制しつつ、水分を無機繊維集合体からとばすことができる。加熱温度や熱風温度が100℃未満の場合、無機繊維集合体の中央部まで温度が伝わらず、乾燥時間が長くなる。また、250℃を超えると、有機バインダを劣化させてしまい、繊維間の拘束力を低減させるため、無機繊維集合体の厚みが制御しにくくなる。
【0119】
つまり、無機繊維集合体を抄造法で作製する無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、抄造工程の後、乾燥工程及び無機シート材配置工程の順番は特に限定されない。
【0120】
また、無機繊維集合体を抄造法で作製する無機シート材付き無機繊維集合体の製造方法では、抄造工程の際に、無機シート材の上に無機繊維-バインダ混合液を配置してから、無機繊維-バインダ混合液を抄造及び脱水して前記無機繊維集合体を作製し、抄造工程の後に、無機繊維集合体を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
この方法では、無機繊維集合体を抄造すると同時に、無機繊維集合体に無機シート材を配置することができる。
なお、この方法を行う場合、無機シート材は、液体成分が通過可能な程度の通液性を有することが好ましい。
【0121】
次に、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体を用いた排ガス浄化装置の製造方法について説明する。
当該排ガス浄化装置の製造方法は、巻き付け工程及び圧入工程を含む。
【0122】
(巻き付け工程)
本工程では、従来公知の方法で準備した排ガス処理体に、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体を巻き付け、巻付体を作製する。
【0123】
(圧入工程)
次に、作製した巻付体を、金属ケーシングに圧入する。
この際、無機シート材が、無機繊維集合体よりも金属ケーシングの排ガス流入口側に位置するように圧入してもよく、無機シート材が、無機繊維集合体よりも金属ケーシングの排ガス排出口側に位置するように圧入してもよい。
【0124】
以上の工程を経て、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置を製造することができる。
【0125】
(実施例)
以下、本発明の第1実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0126】
(実施例1)
(1)無機繊維集合体準備工程
Al含有量が70g/lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して平均繊維径が5.1μmである無機繊維前駆体を作製した。
【0127】
続いて、上記アルミナ繊維前駆体を圧縮して連続したシート状物を作製した。
得られたシート状物に対して、以下に示す条件を用いて連続的にニードルパンチング処理を行ってニードルマットを作製した。
まず、ニードルが21個/cmの密度で取り付けられたニードルボードを準備した。次に、このニードルボードをシート状物の一方の表面の上方に配設し、ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って一回上下させることによりニードルパンチング処理を行い、ニードルマットを作製した。この際、ニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させた。
【0128】
得られたニードルマットを最高温度1250℃で連続して焼成し、アルミナとシリカとを72重量部:28重量部で含む無機繊維からなる焼成シート状物を製造した。無機繊維の平均繊維径は、5.1μmであり、無機繊維の繊維径の最小値は、3.2μmであった。このようにして得られた焼成シート状物は、嵩密度が0.15g/cmであり、目付量が1500g/mであった。
得られた焼成シート状物を切断して、シート状の無機繊維集合体を作製した。
得られた無機繊維集合体は、長手方向の長さが364mmであり、短手方向の長さが50mmである平面視矩形の形状であった。
【0129】
(2)無機シート材準備工程
無機シート材として、厚さ0.04μmの無機繊維集合体よりも通気抵抗が高いステンレス鋼のシートを準備した。
【0130】
(3)無機シート材配置工程
無機繊維集合体の長手方向に沿って形成される一方の側面に、ステンレス鋼からなる無機シート材を配置し、実施例1に係る無機シート材付き無機繊維集合体を製造した。
【0131】
(実施例2)
ステンレス鋼からなる無機シート材に変えて、厚さが0.03μmの銅箔を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る無機シート材付き無機繊維集合体を製造した。
【0132】
(比較例1)
ステンレス鋼からなる無機シート材を配置しない以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る無機繊維集合体を製造した。
【0133】
<ガス流量試験>
以下の方法に基づき、排ガス流入口側のガスの流量(L/min)、及び、排ガス流入口側のガスの圧力(kPa)を測定した。
通気性の無い直径が103mmの試験用円柱体を準備し、無機繊維集合体の側面が円を形成するように実施例1及び2に係る無機シート材付き無機繊維集合体、並びに、比較例1に係る無機繊維集合体を試験用円柱体の側面に巻き付け、巻付体を作製した。
次に、各巻付体を金属ケーシングに圧入した。この際、金属ケーシングと試験用円柱体の間の距離(狭設GAP)が4.0mmとなり、無機繊維集合体の充填密度(GBD)が、0.26g/cmとなるようにした。また、実施例1及び2に係る無機シート材付き無機繊維集合体については、排ガス流入口側に無機シート材が配置された側面が位置するようにした。
次に、金属ケーシングの排ガス流入口から空気を流し、排ガス流入口側のガスの流量(L/min)及び排ガス流入口側のガスの圧力(kPa)を測定した。
結果を表1及び図6に示す。
図6は、排ガス流入口側のガスの流量(L/min)をyとし、排ガス流入口側のガスの圧力(kPa)をxとして、ガス流量試験の結果をプロットしたグラフである。
【0134】
【表1】
【0135】
図6に示す通り、ガス流量試験では、実施例1及び2に係る無機シート材付き無機繊維集合体は、下記式(1)を満たす。
y<5.0x・・・(1)
以上の結果から、実施例1及び2に係る無機シート材付き無機繊維集合体を排ガス浄化装置の保持シール材として用いると、シール性が高くなることが判明した。
そのため、実施例1及び2に係る無機シート材付き無機繊維集合体を用いて排ガス浄化装置を製造すると、金属ケーシングの排ガス流入口から流入した排ガスが無機シート材付き無機繊維集合体の内部を通り、金属ケーシングの排ガス排出口から排出されることを防ぐことができることが判明した。
【0136】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体は、ガスケットとして使用される無機シート材付き無機繊維集合体である。
【0137】
図7は、本発明の第2実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体の一例を模式的に示す斜視図である。
図8は、本発明の第2実施形態に係る無機シート材付き無機繊維集合体が用いられた配管の一例を模式的に示す断面図である。
【0138】
図7に示す無機シート材付き無機繊維集合体110は、シート状かつ単層の無機繊維集合体120と、無機繊維集合体120よりも通気抵抗が高い無機シート材130とからなる。
【0139】
図7に示す無機シート材付き無機繊維集合体110はリング状であり、無機繊維集合体120の内側面121に無機シート材130が配置されている。
【0140】
図8に示すように、円筒状の配管160は第1配管161と、第2配管162とからなる。
第1配管161の端部161aには第1フランジ163が形成されており、第2配管162の端部162aには第2フランジ164が形成されている。また、第2配管162の端部162aには、無機シート材付き無機繊維集合体110を収容するガスケットスペース165が形成されている。
配管160では、第1配管161の端部161aと、第2配管162の端部162aが接触するように、第1配管161と第2配管162とが接続されている。
さらに第1フランジ163と第2フランジ164とは固定具166により固定されている。
【0141】
配管160には、無機シート材付き無機繊維集合体110が配置されている。配管160にガスが通る際は、無機シート材付き無機繊維集合体110の内側にガスが衝突することになる。
無機シート材付き無機繊維集合体110には、無機シート材130が配置されているので、ガスが通りにくい。
そのため、配管160では、第1配管161及び第2配管162の接続部においてガスが漏れにくくなる。
【0142】
なお、無機シート材付き無機繊維集合体110では、無機シート材130は、接着剤により無機繊維集合体120に接着されていてもよく、別の手段で固定されていてもよい。
接着剤としては、特に限定されず、無機系接着剤であってもよく、有機系接着剤であってもよい。
【0143】
無機シート材付き無機繊維集合体110は、無機シート材付き無機繊維集合体110に、上下方向から圧力を加え、無機繊維集合体120が密度0.3g/cmとなるまで圧縮し、20分緩和後の無機シート材付き無機繊維集合体110の上下方向の厚さが圧縮時の上下方向の厚さの120%以上であることが好ましく、150%以上となることがより好ましい。
このような特徴を有する無機シート材付き無機繊維集合体110は、充分な反発力及び形状追従性を有する。そのため、熱などにより第2配管162が膨張し、ガスケットスペース165が変形して広くなったとしても、無機シート材付き無機繊維集合体110は、その形状に追従することができる。
【0144】
無機シート材付き無機繊維集合体110の形状はリング状であるが、本発明の無機シート材付き無機繊維集合体がガスケット用途で使用される場合、その形状は、配管の形状に合わせ適宜設定することが好ましい。
【0145】
無機シート材付き無機繊維集合体110では、無機繊維集合体120の内側面121の全体に無機シート材130が配置されていたが、無機シート材130は、無機繊維集合体120の外側面に配置されていてもよい。また、無機繊維集合体120の内側面及び外側面の一部のみに無機シート材130が配置されていてもよい。
いずれの態様であっても、第1配管161及び第2配管162の接続部においてガスが漏れにくくなる。
【0146】
次に、無機シート材付き無機繊維集合体110の各構成について説明する。
【0147】
(無機繊維集合体)
無機繊維集合体120としては、限定されないが、ニードルパンチング処理されたブランケット、湿式による抄造法で得られた無機繊維集合体を使用することができる。
【0148】
無機繊維集合体120は、シリカ-アルミナ系セラミックファイバー、アルミナ及びムライトの結晶質ファイバー、及びシリカファイバー等が用いられる。その他、耐熱性の要求が低い、例えば使用温度が300℃以下で用いるものについては極細のガラス繊維も使用することができる。
【0149】
無機繊維集合体120を構成する無機繊維の繊維径は3~50μmであることがより好ましい。
【0150】
無機繊維集合体120は、有機バインダや無機バインダを含んでいてもよい。
有機バインダとしては、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、エアロゲル、ヒュームドシリカ、チタン粒子等が挙げられる。
有機バインダは、無機繊維集合体から繊維の脱落、飛散の抑止ができる。
無機バインダは、無機繊維の表面に付着することで、無機繊維集合体の面圧を向上させることができる。これにより、排ガス処理体を好適に保持することができる。
【0151】
(無機シート材)
無機シート材130を構成する好ましい材料は、上記無機シート材30を構成する好ましい材料と同じである。
【符号の説明】
【0152】
1 排ガス浄化装置
10、110 無機シート材付き無機繊維集合体
20、120 無機繊維集合体
21 第1主面
22 第2主面
23 第1側面
24 第2側面
25 第1端部
25a 凸部
26 第2端部
26a 凹部
27 貫通孔
28 内壁
30、130 無機シート材
40 排ガス処理体
41 セル
42 セル壁
43 封止材
45 通気性の無い試験用円柱
46 巻付体
50 金属ケーシング
51 排ガス流入口
52 排ガス排出口
121 無機繊維集合体の内側面
160 配管
161 第1配管
161a 第1配管の端部
162 第2配管
162a 第2配管の端部
163 第1フランジ
164 第2フランジ
165 ガスケットスペース
166 固定具
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6
図7
図8