(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】押出装置および押出装置用排水部
(51)【国際特許分類】
B29C 48/76 20190101AFI20240917BHJP
B29B 7/84 20060101ALI20240917BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240917BHJP
B01D 43/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B29C48/76
B29B7/84
C08J3/20 Z CER
C08J3/20 CEZ
B01D43/00 Z
(21)【出願番号】P 2020173748
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岡 佑介
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正通
(72)【発明者】
【氏名】福田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】福井 亮太
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-039529(JP,A)
【文献】特開2005-111847(JP,A)
【文献】特開2005-280254(JP,A)
【文献】特開2020-163627(JP,A)
【文献】特開2000-318006(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-24/02
B01D 24/06
B01D 24/16
B01D 24/26-24/28
B01D 24/32
B01D 24/36-25/12
B01D 25/172
B01D 25/19
B01D 25/22-27/06
B01D 27/08-27/10
B01D 29/00-29/01
B01D 29/07
B01D 29/085
B01D 29/11-29/13
B01D 29/17-29/21
B01D 29/25-29/33
B01D 29/37-29/39
B01D 29/44-29/50
B01D 29/60-29/66
B01D 29/72-29/74
B01D 29/88-33/00
B01D 33/04-33/048
B01D 33/06
B01D 33/09
B01D 33/13-33/17
B01D 33/21
B01D 33/25-33/29
B01D 33/327-33/333
B01D 33/44
B01D 33/58
B01D 33/70
B01D 33/80-35/00
B01D 35/02-35/147
B01D 35/16-35/30
B01D 36/00-37/02
B01D 37/04
B01D 43/00
B01D 57/00-57/02
B03C 1/025-1/03
B03C 1/032-1/034
B29B 7/00-11/14
B29B 13/00-15/06
B29C 31/00-31/10
B29C 37/00-37/04
B29C 45/00-45/24
B29C 45/46-45/63
B29C 45/70-45/72
B29C 45/74-48/96
B29C 71/00-71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分および固形分を含む原料を供給する原料供給部と、
前記原料を加圧しながら前方に押し出す筒状の押出部と、
前記押出部の途中に取り付けられ、前記原料から分離された水分を外部に排出する排水部と、
を有し、
前記排水部は、
前記押出部に連通するシリンダ部と、
前記シリンダ部に収容され、前記原料から分離された水分を選択的に外部に排出するスリットを備えるセパレータ部材と、
を含み、
前記セパレータ部材は、
第1面を有する第1板部と、
前記第1面と対向する第2面を有し、前記第1板部上に積層される第2板部と、
を含み、
前記スリットは、前記第1面および前記第2面の間に形成され、
前記第1板部および前記第2板部のそれぞれは、前記シリンダ部に面する内面を有し、
前記第1面および前記第2面のうち少なくとも一方の表面粗さは、前記第1板部および前記第2板部のうち、一方の前記内面の表面粗さよりも粗い、押出装置。
【請求項2】
請求項1において、
表面粗さを算術平均粗さRaとして表すと、前記第1面および前記第2面のうち少なくとも一方の表面粗さは、1.6a~25aである、押出装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1面および前記第2面のそれぞれの表面粗さは、前記第1板部および前記第2板部のうち、一方の前記内面の表面粗さよりも粗い、押出装置。
【請求項4】
請求項3において、
表面粗さを算術平均粗さRaとして表すと、前記第1面および前記第2面のそれぞれの表面粗さは、1.6a~25aである、押出装置。
【請求項5】
請求項1~4のうちのいずれか1項において、
前記セパレータ部材は、前記第1板部および前記第2板部を含む複数の板部を有し、
前記複数の板部のそれぞれは、前記スリットの周囲において一体に形成されている、押出装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記セパレータ部材は、金属材料から成る、押出装置。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか1項において、
前記スリットは、前記シリンダ
部に面する入口と、前記入口の反対側に位置する出口とを有し、前記入口から前記出口までの直線距離は、前記第1板部の厚さより長い、押出装置。
【請求項8】
請求項1~7のうちのいずれか1項において、
前記セパレータ部材は、複数の前記スリットを有し、
複数の前記スリットのそれぞれは、水平方向に延びる、押出装置。
【請求項9】
押出装置に取り付けられ、水分および固形分を含む原料から分離された水分を外部に排出する押出装置用の排水部であって、
前記排水部は、
シリンダ部と、
前記シリンダ部に収容され、前記原料から分離された水分を選択的に外部に排出するスリットを備えるセパレータ部材と、
を含み、
前記セパレータ部材は、
第1面を有する第1板部と、
前記第1面と対向する第2面を有し、前記第1板部上に積層される第2板部と、
を含み、
前記スリットは、前記第1面および前記第2面の間に形成され、
前記第1板部および前記第2板部のそれぞれは、前記シリンダ部に面する内面を有し、
前記第1面および前記第2面のうち少なくとも一方の表面粗さは、前記第1板部および前記第2板部のうち、一方の前記内面の表面粗さよりも粗い、押出装置用排水部。
【請求項10】
請求項9において、
表面粗さを算術平均粗さRaとして表すと、前記第1面および前記第2面のうち少なくとも一方の表面粗さは、1.6a~25aである、
押出装置用排水部。
【請求項11】
請求項9において、
前記第1面および前記第2面のそれぞれの表面粗さは、前記第1板部および前記第2板部のうち、一方の前記内面の表面粗さよりも粗い、
押出装置用排水部。
【請求項12】
請求項11において、
表面粗さを算術平均粗さRaとして表すと、前記第1面および前記第2面のそれぞれの表面粗さは、1.6a~25aである、
押出装置用排水部。
【請求項13】
請求項9~12のうちのいずれか1項において、
前記セパレータ部材は、前記第1板部および前記第2板部を含む複数の板部を有し、
前記複数の板部のそれぞれは、前記スリットの周囲において一体に形成されている、
押出装置用排水部。
【請求項14】
請求項13において、
前記セパレータ部材は、金属材料から成る、
押出装置用排水部。
【請求項15】
請求項9~14のうちのいずれか1項において、
前記スリットは、前記シリンダ
部に面する入口と、前記入口の反対側に位置する出口とを有し、前記入口から前記出口までの直線距離は、前記第1板部の厚さより長い、
押出装置用排水部。
【請求項16】
請求項9~15のうちのいずれか1項において、
前記セパレータ部材は、複数の前記スリットを有し、
複数の前記スリットのそれぞれは、水平方向に延びる、
押出装置用排水部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料を加圧しながら前方に押し出す筒状の押出部を備える押出装置および押出装置が備える押出装置用排水部に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂などの製造装置として、原料を加圧しながら前方に押し出す装置がある(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-39529号公報
【文献】特開2001-322154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押出装置は、水分および固形分を含む原料を加圧しながら前方に押し出す機構を備える。原料を加圧すると、圧力によって原料に含まれる水分と固形分とが分離される。押出装置では、原料に含まれる固形分を2次原料として取り出すので、不要な水分を押出装置の系外に排出することが好ましい。ところが、水分の排出効率を考慮して、排水経路の経路断面積を大きくすると、原料の固形分の一部が水分に同伴されて漏出することが判った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される一実施の形態である押出装置は、水分および固形分を含む原料を供給する原料供給部と、前記原料を加圧しながら前方に押し出す筒状の押出部と、前記押出部の途中に取り付けられ、前記原料から分離された水分を外部に排出する排水部と、を有する。前記排水部は、前記押出部に連通するシリンダ部と、前記シリンダ部に収容され、前記原料から分離された水分を選択的に外部に排出するスリットを備えるセパレータ部材と、を含む。前記セパレータ部材は、第1面を有する第1板部と、前記第1面と対向する第2面を有し、前記第1板部上に積層される第2板部と、を含む。前記スリットは、前記第1面および前記第2面の間に形成され、前記第1板部および前記第2板部のそれぞれは、前記シリンダ部に面する内面を有する。前記第1面および前記第2面のうち少なくとも一方の表面粗さは、前記第1板部および前記第2板部のうち、一方の前記内面の表面粗さよりも粗い。
【0006】
また、他の実施の形態である押出装置用排水部は、押出装置に取り付けられ、水分および固形分を含む原料から分離された水分を外部に排出する押出装置用の排水部である。前記排水部は、前記押出部に連通するシリンダ部と、前記シリンダ部に収容され、前記原料から分離された水分を選択的に外部に排出するスリットを備えるセパレータ部材と、を含む。前記セパレータ部材は、第1面を有する第1板部と、前記第1面と対向する第2面を有し、前記第1板部上に積層される第2板部と、を含む。前記スリットは、前記第1面および前記第2面の間に形成され、前記第1板部および前記第2板部のそれぞれは、前記シリンダ部に面する内面を有する。前記第1面および前記第2面のうち少なくとも一方の表面粗さは、前記第1板部および前記第2板部のうち、一方の前記内面の表面粗さよりも粗い。
【発明の効果】
【0007】
本願において開示される押出装置によれば、原料に含まれる固形分がスリットから漏出することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施の形態である実施の形態の押出装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す押出部の内部構造の概要を示す透視平面図である。
【
図3】
図1に示す排水部において、水分が排出する仕組みを説明するための断面図である。
【
図6】
図5に示すスリットの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図7】
図6に示す変形例であるスリットの周辺を模式的に示す拡大図である。
【
図8】
図3に示すセパレータ部材を、水分の出口側から視た側面図である。
【
図9】
図8に対する変形例であるセパレータ部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を実施例や図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<押出装置>
図1は、本実施の形態の押出装置の構成例を示す模式図である。
図2は、
図1に示す押出部の内部構造の概要を示す透視平面図である。
図2は、
図1に示す押出装置100を上方から視た時に、押出部20の空間内に配置される駆動軸およびスクリューの一例を示す透視平面図である。
【0011】
図1に示す押出装置100は、例えばエラストマ、汎用性樹脂、あるいは、エンジニアリングプラスチックなどの製品を製造するシステムに組み込まれ、例えば、上記製品の原料となるペレットを製造するための前処理装置として利用される。押出装置100は、原料供給部10と、原料11を加圧しながら前方に押し出す筒状の押出部20と、押出部20の途中に取り付けられ、原料11から分離された水分を外部に排出する排水部30と、を有する。
図1に示す例では、排水部30は、押出部20の途中の2か所に設けられている。
【0012】
押出装置100は、押出部20のスクリュー22(
図2参照)を駆動する駆動部60を有する。駆動部60は、モータ61、カップリング62、および減速機63を備える。減速機63は、モータの回転速度を減速させてその減速の程度に応じてトルクを出力する装置である。
図2に示すように、本実施の形態の押出装置100は、2本の駆動軸21を備える。
図1に示す減速装置63は、モータ61の駆動力を2本の駆動軸21(
図2参照)に分配して伝達する機能を備える。カップリング62は、モータ61と減速機63との間に配置され、モータ61および減速機63はカップリング62を介して接続されている。カップリング62は、トルクの異常を検出すると、モータ61と減速機63との接続を解除するトルクリミッタ機能を備える。
【0013】
原料供給部10に供給される原料11は、例えば以下のように調整される。まず、微粒子が液体中に分散したスラリーを準備する。次に、スラリー中に凝集剤を投入し、ある程度の塊として粒子化する。次に、凝集した粒子と、粒子が入った液体とを分離して、
図1に示す原料11を得る。原料11として用いられる粒子は、水分および固形分を含む。一例を挙げれば、原料供給部10から供給される原料11は、30%程度の水分を含んでいる。一方、押出部20の出口から排出される製品の含水率は、例えば1%未満である。
【0014】
押出装置100は、原料11に含まれる水分を絞り出す。押出装置100の出口には、例えばダイス50およびカッター(図示は省略)が取り付けられ、カッターの出口からは、ペレットが排出される。このペレットは、例えば、2次原料として機能性フィラーなどと混錬され、付加価値が付与された機能性ペレットが得られる。この機能性ペレットは、汎用性樹脂、あるいは、エンジニアリングプラスチックを用いた様々な製品に利用される。
【0015】
押出装置100の押出部20は、押出部の延在方向であるY方向に沿って延びる駆動軸21と、駆動軸の周囲を回転する複数のスクリュー22と、を有する。複数のスクリュー22は、被搬送物を第1の速度で前方に送り出すように回転するスクリュー、被搬送物を第1の速度よりも遅い速度で前方に送り出すように回転するスクリュー、被搬送物を後方に押し返すように回転するスクリュー、および被搬送物が前方に搬送されることを阻害するように配置されるスクリューを含む。押出部20では上記した様々な種類のスクリュー22を組み合わせることにより、押出部20内の一部分(加圧部23)で被搬送物を加圧する構造になっている。
図2に示す例では、押出装置100は、原料11(
図1参照)の押出方向であるX方向に延びる2本の駆動軸21を有する二軸押出装置である。ただし、以下で説明する排水部30の構造は、1本の駆動軸21を有する単軸押出装置に適用することもできる。
【0016】
排水部30は、原料11の進行方向(押し出し方向)において、加圧部23よりも上流側に配置される。加圧部23により原料11の水分と固形分が分離され、固形分は、加圧部23の前方に押し出され、水分は排水部30から押出部20の外部に排出される。
図2に示す例では、加圧部23および排水部30は、X方向において、それぞれ2か所に設けられている。ただし、
図1に示す原料供給部10から供給される原料11に含まれる水分の大部分は、最初の排水部30から押出装置100の外部に排出される。
【0017】
<排水部>
次に、
図1に示す排水部の構造について説明する。
図1に排水部30は、押出装置100に取り付けられ、水分および固形分を含む原料11から分離された水分を外部に排出する押出装置用排水部である。
図3は、
図1に示す排水部において、水分が排出する仕組みを説明するための断面図である。
図4は、
図3に対する検討例を示す断面図である。
図3は、
図2に示すA-A線に沿った断面図である。
【0018】
図3に示すように排水部30は、押出部20(
図1参照)に連通するシリンダ部31と、シリンダ部31に収容され、原料11(
図1参照)から分離された水分を選択的に外部に排出するスリット32を備えるセパレータ部材33と、を含む。また、排水部30は、セパレータ部材33をシリンダ部31と対向する位置に固定するための固定板34を含む。固定板34は、排水部30のケーシング35に例えばネジ止め固定される。セパレータ部材33の一部分は固定板34に押さえられている。シリンダ部31の内部からセパレータ部材33に圧力が加わった場合、セパレータ部材33がケーシング35の外側に突出する方向に力が印加されるが、セパレータ部材33が固定板34に押さえられているのでこれを防止できる構造になっている。
【0019】
図4に示す排水部40は、シリンダ部41の構造は、
図3に示す排水部30のシリンダ部31と同様である。また、重複する説明は省略するが、固定板34およびケーシング35の構造は、
図3に示す例と同様である。排水部40が備えるセパレータ部材43は、スリット42の形状および構造が
図3に示すセパレータ部材33と相違する。
【0020】
排水部40のセパレータ部材43が有するスリット42は、三角形の断面形状を有し、シリンダ部41からの距離に比例してスリット42の開口面積が大きくなるように配置されている。
図4に示すセパレータ部材43の場合、水分の排出効率を考慮して、水分を排出する際の抵抗(静圧)が小さくなるような構造になっている。ところが、本願発明者の検討によれば、セパレータ部材43を用いた場合、スリット42から水分に同伴されて固形分の一部が漏出してしまうことが判った。排水部40から原料11(
図1参照)の固形分が漏出すると、原料の歩留低下の原因になる。また、排水部40に固形分が堆積してスリット42が詰まれば、水分を排出する経路が失われるので、製造工程を中断し、排水部40を洗浄する必要が生じる。したがって、原料11の脱水処理を効率的に行う観点から、排水部40からの固形分の漏出を抑制する必要がある。
【0021】
図5は、
図3のB部の拡大断面図である。
図6は、
図5に示すスリットの周辺を模式的に示す拡大図である。
図7は、
図6に示す変形例であるスリットの周辺を模式的に示す拡大図である。
図5に示すように、本実施の形態の排水部30が備えるセパレータ部材33は、面36tを有する板部36と、面と36tに対向する面37bを有し、板部36上に積層される板部37と、を含む。スリット32は、面36tおよび面37bの間に形成される。
【0022】
このように、互いに対向する面36tおよび37bの間にスリット32が形成されている場合、水分の排出経路としてのスリット32の静圧は、
図4に示すスリット42の静圧と比較して大きい。このように静圧が大きいスリット32から水分を排出する場合、原料11(
図1参照)の固形分が水分に同伴されて漏れ出ることを抑制できる。面36tおよび37bは、互いに対向した状態でシリンダ部31に面する入口32Aから入口32Aの反対側に位置する出口32B(
図3参照)まで延びている。このため、スリット32の静圧の程度は、入口32Aから出口32Bまでの経路距離の長さを調整することにより制御可能である。
図3に示す入口32Aから出口32Bまでの直線距離は、板部36(
図5参照)の厚さ(
図3および
図5のZ方向の長さ)より長い。
【0023】
また、面36tおよび面37bのうち少なくとも一方には粗面化処理が施されている。
図5および
図6では、面36tおよび面37bの両方に粗面化処理が施されている例を示している。また、
図7では、変形例として、面36tは粗面化されず、面37bが粗面化された例を示している。面36tおよび面37bの少なくとも一方が粗面化されていることは以下のように表現できる。すなわち、板部36および板部37のそれぞれは、シリンダ部31に面する内面33sを有する。内面33sには粗面化処理が施されていない。内面33sの表面粗さを基準とすると、面36tおよび面37bのうち少なくとも一方の表面粗さは、板部36および板部37のうち、一方の内面33sの表面粗さよりも粗い。
図5に示す例では、面36tおよび面37bのそれぞれの表面粗さは、板部36の内面33sの表面粗さ、および板部37の内面33sの表面粗さよりも粗い。
【0024】
本実施の形態のように、積層された板部36および37のうち、互いに対向する面36tおよび面37bのうち、少なくとも一方を粗面化すれば、板部36と板部37との間にスリット32を形成することができる。粗面化された面36tおよび37bにより形成されるスリット32は、水分の流路としての経路断面積が複雑に変化するので、面36tおよび37bの両方が平坦面である場合と比較して、経路の静圧を増大させることができる。
【0025】
スリット32の静圧が大きい場合、水分と固形分との比較において、相対的に粘度が高い固形分は、スリット32に侵入せず、粘度が低い水分が選択的にスリット32内に侵入する。この結果、固形分がスリット32を介して外部に漏れ出ることを回避できる。
【0026】
粗面化された場合の面36tおよび面37bのそれぞれの表面粗さについて算術平均粗さRaとして表すと、面36tおよび面37bのそれぞれの表面粗さは、1.6a~25a(1.6a以上、25a以下)であることが好ましい。算術平均粗さRaは、以下のように計測される。まず、対象となる計測区間(長さ)における表面の凹凸を計測する。次に、計測された凹凸の平均値を基準線として、計測区間に沿って、基準線と凹凸曲線との差分を積分する。この積分結果を計測区間の長さで除した値が算術平均粗さRaである。
【0027】
面36tおよび面37bのうち、いずれか一方の表面粗さが、1.6a~25a(1.6a以上、25a以下)である場合、板部36と板部37との間の隙間(すなわちスリット32)が、凹凸面の高低差のみによって形成されている場合でも、水分を排出するための経路を確保することができる。スリット32を形成するためには、面36tおよび面37bは、離間している必要がある。ただし、面36tおよび面37bの少なくとも一方に粗面化処理を施すことによりスリット32の静圧を向上させる効果を得るためには、面36tと面37bとの離間距離が小さい方が好ましい。例えば、
図6および
図7に示す例において、互いに対向する面36tと面37bとの離間距離の最大値である最大ギャップG32は、0.1mm以下であることが好ましい。なお、粗面化の程度によっては、
図7に示すように、面36tおよび面37bが対向する領域内において、面36tと面37bとが局所的に接触している場合もある。この場合でも、水分の流路としてのスリット32が形成されていれば、水分を排出することができる。
【0028】
図8は、
図3に示すセパレータ部材を、水分の出口側から視た側面図である。
図8に示すように、セパレータ部材33は、板部36および板部37を含む複数の板部38を有する。複数の板部38のそれぞれは、スリット32の周囲において、一体に形成されている。このように、複数の板部38のそれぞれを一体化するように形成することで、セパレータ部材33の強度が向上する。このため、
図3に示すシリンダ部31において、シリンダ部31の内圧を高く設定してもセパレータ部材33の損傷を防止することができる。シリンダ部31の内圧を高く設定すれば、スリット32に水分を圧入する圧力が大きくなる。この結果、スリット32の静圧を高くした場合でも、水分の排出効率の低下を抑制できる。
【0029】
また、セパレータ部材33は、例えばステンレス鋼などの金属材料から成る。セパレータ部材33の強度を向上させる観点からは、セパレータ部材33が金属材料から成ることが好ましい。
図3、
図5、および
図8に示すような構造のセパレータ部材33は、複数の板部38(
図8参照)を形成した後、一体化させる方法の他、所謂、三次元プリンタを用いて製造することもできる。スリット32の精度を考慮すると、三次元プリンタを用いて製造する方がより好ましい。なお、
図8に示すネジ穴39は、
図3を用いて説明した固定板34を介してセパレータ部材33をねじ止め固定するためのネジ穴である。また、セパレータ部材31は、ケーシング34(
図3参照)内において、図示しない位置決めピンにより、位置が固定されている。また、セパレータ部材33とケーシング34との間には、Oリングが配置され、セパレータ部材33の周囲からの水漏れを防止する構造になっている。
【0030】
図8に示す複数の板部38のそれぞれの厚さ(Z方向の長さ)は、例えば0.5~1.5mm程度である。
図2に示すスクリュー22の直径は、30~150mmである。また、
図8に示す平面において、複数のスリット32の水平方向の長さは、スクリュー22(
図2参照)の直径の1~2倍程度である。
【0031】
図9は、
図8に対する変形例であるセパレータ部材の側面図である。
図3および
図8を用いて説明したセパレータ部材33は、複数のスリット32を有し、複数のスリット32のそれぞれは、水平方向に延びている。
図9に示すセパレータ部材33E2が有する複数のスリット32のそれぞれは、水平方向に対して交差する方向に延びている点で相違する。
【0032】
図9に示すセパレータ部材33E2を用いた場合でも、原料11(
図1参照)の水分と固形分とを分離することはできる。ただし、
図3に示すように、駆動軸21およびスクリュー22の回転方向を考慮すると、
図3および
図8に示すように複数のスリット32のそれぞれが水平方向に延びるように配置されていることが好ましい。スクリュー22が回転することにより、シリンダ部31内の原料は、セパレータ部材33の内壁に押し付けられる。この時、
図3に示すように、複数のスリット32のそれぞれが水平方向に延びるように配置されている場合、スクリュー22の回転に伴って、原料は複数のスリット32に順次押し付けられる。この場合、一つのスリット32に長時間にわたって原料が押し付けられる場合と比較して、スリット32内に原料の固形分が詰まり難い。したがって、スリット32への固形分の詰まりを低減する観点からは、複数のスリット32のそれぞれが水平方向に延びるように配置されていることが好ましい。
【0033】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10 原料供給部
11 原料
20 押出部
21 駆動軸
22 スクリュー
23 加圧部
30,40 排水部
31,41 シリンダ部
32,42 スリット
32A 入口
32B 出口
33,33E2,43 セパレータ部材
33s 内面
34 固定板
35 ケーシング
36,37,38 板部
36t,37b 面
39 ネジ穴
50 ダイス
60 駆動部
61 モータ
62 カップリング
63 減速機
100 押出装置
G32 最大ギャップ