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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
A47K3/28
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020209143
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096184
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健介
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-064359(JP,A)
【文献】特開2010-220919(JP,A)
【文献】国際公開第2006/035792(WO,A1)
【文献】特開2005-279080(JP,A)
【文献】実開平05-009659(JP,U)
【文献】特開昭51-018147(JP,A)
【文献】特開2013-183789(JP,A)
【文献】中国実用新案第210700686(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
B05B 1/00-3/18
B05B 7/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワー通水路から供給される湯水を外部に散水する中空円板状のヘッド本体を備えるシャワーヘッドであって、
前記ヘッド本体の天板部を成し、中心部から軸方向に筒状に延び出して前記シャワー通水路と接続される接続管部を有する本体板と、
前記ヘッド本体の底板部を成し、前記接続管部から前記ヘッド本体内に供給される湯水を外部に散水する複数の散水孔と、前記接続管部の管口を成す接続口と軸方向に対向する位置に複数の前記散水孔よりも大きな孔径を成すように形成される排水孔と、が空けられた散水板と、
前記接続管部の管内に設けられて、前記排水孔を軸方向の移動により開閉する開閉弁体と、を有し、
前記開閉弁体が、前記シャワー通水路からの湯水の供給が止められる止水時にはバネ力により前記排水孔を開いて前記ヘッド本体内の残留水と前記接続管部を通る前記シャワー通水路内の残留水とを排出し、散水時には、前記接続管部に流れ込む湯水の供給圧により前記排水孔をバネ力に抗して閉じると共に前記接続管部との隙間から湯水を前記ヘッド本体内に流すシャワーヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のシャワーヘッドであって、
前記ヘッド本体が、前記散水板を鉛直下方に向けることができるシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッドに関する。詳しくは、シャワー通水路から供給される湯水を外部に散水するシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、浴室の壁に固定されて使用者に頭上からシャワー水を散水する、いわゆるオーバーヘッド式のシャワー装置が開示されている。このシャワー装置は、シャワーヘッドの内部に逆止弁が取り付けられており、止水時にシャワー通水路が遮断される構成とされる。それにより、止水時に、シャワーヘッドからの散水が短時間で止められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-29573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、止水時にシャワーヘッドからの散水自体は止められるものの、シャワーヘッド内に残留水が留まりやすい。すなわち、シャワーヘッドが斜めに向けられている場合には、止水時に内部の残留水が重力作用により外部へと抜けやすい。しかし、シャワーヘッドが真っ直ぐ下方に向けられている場合には、シャワーヘッド内の残留水が表面張力の作用により内部に留まりやすくなる。
【0005】
残留水がシャワーヘッド内に留まると、時間経過と共に残留水が冷えてしまい、次回使用時にシャワーヘッドから使用者の頭上に向けて冷水が散水されることとなる。そこで、本発明は、止水時にヘッド本体内の残留水を外部に適切に排出することが可能なシャワーヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のシャワーヘッドは次の手段をとる。すなわち、シャワーヘッドは、シャワー通水路から供給される湯水を外部に散水するシャワーヘッドである。このシャワーヘッドは、シャワー通水路と接続される接続口を備える中空状のヘッド本体と、ヘッド本体の底板部を成す散水板と、開閉弁体と、を有する。散水板は、ヘッド本体内に供給される湯水を外部に散水する複数の散水孔と、複数の散水孔よりも孔径の大きな排水孔と、が空けられた構成とされる。
【0007】
開閉弁体は、散水板に空けられた排水孔を開閉するものであり、シャワー通水路からの湯水の供給が止められる止水時にはバネ力により排水孔を開き、散水時にはヘッド本体内に掛けられる湯水の供給圧により排水孔をバネ力に抗して閉じる構成とされる。
【0008】
上記構成によれば、止水時に開かれる大径の排水孔により、止水時には、ヘッド本体内の残留水を外部に適切に排出することができる。上記排水孔は、散水時には開閉弁体により閉じられる。したがって、散水時には、排水孔より湯水を外部に漏出させることなく、複数の散水孔のみから外部に適切に散水することができる。
【0009】
また、本発明のシャワーヘッドは、更に次のように構成されていてもよい。開閉弁体が、接続口を開閉せず、排水孔のみを開閉する。
【0010】
上記構成によれば、止水時に、ヘッド本体内の残留水のみならず、接続口より上流側の残留水も排水孔から外部に適切に排出することができる。
【0011】
また、本発明のシャワーヘッドは、更に次のように構成されていてもよい。散水板が、円板状とされる。排水孔が、散水板の中心部に設けられて、接続口と孔軸方向に対向する配置とされる。開閉弁体が、孔軸方向に動いて排水孔を開閉する。
【0012】
上記構成によれば、接続口から供給される湯水の供給圧が開閉弁体に掛かりやすくなるため、散水時には、開閉弁体により排水孔を適切に閉じることができる。
【0013】
また、本発明のシャワーヘッドは、更に次のように構成されていてもよい。ヘッド本体が、散水板を鉛直下方に向けることができる。
【0014】
上記構成によれば、ヘッド本体が、止水時に表面張力の作用により内部に残留水が溜まりやすい向きに向けることが可能な構成であっても、排水孔により残留水を外部に適切に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るシャワーヘッドが適用されたシャワー装置の概略構成を表す正面図である。
図2】シャワー装置の右側面図である。
図3】シャワーヘッドを上側から見た斜視図である。
図4】シャワーヘッドを下側から見た斜視図である。
図5】シャワーヘッドを下側から見た部分断面斜視図である。
図6図5に対応する断面図である。
図7】シャワーヘッドを上側から見た分解斜視図である。
図8】シャワーヘッドを下側から見た分解斜視図である。
図9】散水時の図5に対応する断面図である。
図10】止水時の図5に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
《第1の実施形態》
(シャワーヘッド10の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシャワーヘッド10の構成について、図1図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図10のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0018】
図1図2に示すように、本実施形態に係るシャワーヘッド10は、浴室の壁面Wに設置されるシャワー装置1に適用されている。詳しくは、シャワーヘッド10は、浴室の壁面Wに固定されて使用者に頭上からシャワー水を散水する、いわゆるオーバーヘッド式のシャワー構造を備えた構成とされる。
【0019】
上記シャワー装置1は、浴室の壁面Wに取り付けられる混合水栓2と、混合水栓2に壁面Wから湯水を供給する給湯管3A及び給水管3Bと、を備える。また、シャワー装置1は、混合水栓2から上方に延びるシャワー供給管4と、シャワー供給管4の先に取り付けられるシャワーヘッド10と、を有する。ここで、シャワー供給管4が、本発明の「シャワー通水路」に相当する。
【0020】
混合水栓2は、給湯管3A及び給水管3Bから供給される湯水の混合割合を内部で調節することが可能な温調機能を備える。また、混合水栓2は、上記混合した湯水の吐水/止水を切り替えることが可能な切替機能と、吐出する湯水の量を調節することが可能な吐出量の調節機能と、を備える。
【0021】
上記湯水の混合割合の調節は、水栓本体2Aの向かって左側の側部に取り付けられた略円筒型の温度調節ハンドル2Bの操作によって行われる。また、吐水/止水の切り替え及び吐出量の調節は、水栓本体2Aの向かって右側の側部に取り付けられた略円筒型の切替ハンドル2Cの操作によって行われる。
【0022】
具体的には、使用者が温度調節ハンドル2Bを所望の回転位置へと回すことで、水栓本体2Aの内部で混合される湯水の混合割合が、上記の回転位置に応じた設定温度となるように調節される。また、使用者が切替ハンドル2Cを所定の止水位置(図示位置)から上向きに回すことで、その回転移動量に応じた量の湯水が、水栓本体2Aに流路接続されたシャワー供給管4を通してシャワーヘッド10へと吐出される。
【0023】
上記シャワー装置1は、更に、シャワー供給管4の経路途中に設けられて、配管経路に残る冷えた残留水や使用初期の混合水栓2から吐出される冷水を外部へと排出することができる冷水排出装置5を有する。この冷水排出装置5は、混合水栓2から吐出される湯水をシャワーヘッド10から散水する際、配管内に残る使用初期の冷水がシャワーヘッド10から使用者に散水されることがないよう、配管内の冷水を外部に排出する構成とされる。
【0024】
具体的には、冷水排出装置5は、装置本体5Aの内部に、図示しない感温式の流路切替弁体とダイヤフラム式の流路切替弁体とを備えた構成とされる。上記冷水排出装置5は、混合水栓2から流れ込む湯水や装置本体5A内の残留水が所定温度より冷えた冷水となる時には、この冷水を各切替弁体の作動により装置本体5Aの背面から延びる冷水排出管5C(図2参照)から外部に排出する。
【0025】
また、冷水排出装置5は、混合水栓2から流れ込む湯水が所定温度以上の温水となる時には、この温水を各切替弁体の作動によりシャワー供給管4の流通経路へと流してシャワーヘッド10から散水させる。また、冷水排出装置5は、混合水栓2が止水された後、装置本体5A内及びそれより下流側(図示上方側)に延びるシャワー供給管4内の残留水が冷水となった時にも、この冷水を各切替弁体の作動に伴う重力作用により冷水排出管5Cから外部に排出する。
【0026】
なお、冷水排出装置5は、特開2020-099499号公報に開示された公知の構成と同一のものとなっている。したがって、冷水排出装置5の各部の具体的な構成についての説明は省略することとする。冷水排出装置5は、その装置本体5Aの手前側の側面に設けられたON/OFFハンドル5Bの回転操作により、冷水排出機能のON/OFFが切り替えられる構成とされる。
【0027】
すなわち、冷水排出装置5は、ON/OFFハンドル5Bが「ON」の位置に合わされることにより、冷水がシャワーヘッド10から散水されることを防止する機能オン状態に切り替えられる。また、冷水排出装置5は、ON/OFFハンドル5Bが「OFF」の位置に合わされることにより、冷水がシャワーヘッド10から散水されることを防止しない機能オフ状態に切り替えられる。
【0028】
上記冷水排出装置5は、シャワー供給管4の混合水栓2から上方に延びる第1管部4Aの経路途中に設けられる。そのため、冷水排出装置5は、混合水栓2の止水時には、それ(冷水排出装置5)より下流側(図示上方側)に延びる第1管部4A内の残留水が冷水となった場合に、この冷水を重力作用により冷水排出管5Cから外部に排出する。
【0029】
詳しくは、冷水排出装置5は、上記止水時には、それより下流側(図示上方側)に延びる第1管部4A内の冷えた残留水と、第1管部4Aの上端から手前側へと略水平状に延びる第2管部4B内の冷えた残留水と、をそれぞれ重力作用により冷水排出管5Cから外部に排出する。しかし、冷水排出装置5は、シャワー供給管4の第2管部4Bの手前側の先端部に接続されるシャワーヘッド10内の残留水は、排出することができない構成とされる。
【0030】
その理由は、シャワーヘッド10が、第2管部4Bの先端部に吊り下げ状に接続されているためである。そのため、シャワーヘッド10内の残留水は、重力作用が働いても、第2管部4Bや第1管部4Aには引き込まれずに、シャワーヘッド10から下に流れ落ちるように排出されることとなる。しかし、上記重力作用にも拘らず、シャワーヘッド10内の残留水が、表面張力の作用によりシャワーヘッド10内に留まることがあると、次回使用時に冷水となって使用者に散水されてしまうおそれがある。
【0031】
特に、シャワーヘッド10が散水面(下面)を下方に真っ直ぐ向けた状態で使用される場合、シャワーヘッド10内で残留水の表面張力が釣り合いやすくなる。そのため、シャワーヘッド10内に残留水が留まりやすくなる。すなわち、シャワーヘッド10が散水面(下面)を手前側に斜めに向けた状態で使用される場合(図2の仮想線状態の場合)には、散水面が斜めを向いていることで、傾斜した散水面の上の方の散水孔12Aから浴室内の空気が入り込んで、シャワーヘッド10内での残留水の表面張力の釣り合いが崩れやすくなる。
【0032】
しかし、シャワーヘッド10が散水面(下面)を下方に真っ直ぐ向けた状態では、上記のような空気の入り込みが生じにくいため、表面張力の釣り合いが崩れにくくなる。その結果、シャワーヘッド10内に残留水が留まりやすくなる。そこで、このような問題を生じないよう、本実施形態のシャワーヘッド10は、上記のように散水面(下面)を下方に真っ直ぐ向けた状態で使用されても、止水時に内部の残留水を適切に外部に排出することができる構成とされる。
【0033】
(シャワーヘッド10の詳細構成について)
以下、シャワーヘッド10の各部の具体的な構成について、詳しく説明する。図3図4に示すように、シャワーヘッド10は、略円盤状に組み付けられた構造体から成る。具体的には、シャワーヘッド10は、図1図2で前述したシャワー供給管4の第2管部4Bの先端部に流路接続される管継手14を備えるヘッド本体10Aと、シャワーヘッド10の周囲側面及び天板の意匠面を成す略円筒容器形状のヘッドカバー10Bと、を有する。
【0034】
上記シャワーヘッド10は、図4図6に示すように、その下面に、ヘッド本体10Aの底板部を成す略円板状の散水板12が露出する構成とされる。上記散水板12は、その円板上の所々の箇所に、ヘッド本体10A内に供給される湯水を外部に散水するための複数の丸孔状の散水孔12Aが貫通して形成された構成とされる。また、散水板12は、その中心部に、止水時の残留水の排出用の孔として機能する丸孔状の排水孔12Bが形成された構成とされる。
【0035】
上記シャワーヘッド10は、図2に示すように、上記ヘッド本体10Aの管継手14が、シャワー供給管4の第2管部4Bの先端部に対し、ボールジョイント6を介して下方から流路接続されている。それにより、シャワーヘッド10は、シャワー供給管4の第2管部4Bに対して、上記ボールジョイント6を支点にその散水面(下面)を手前側に斜めに向けたり下方に真っ直ぐ向けたりする手動による角度調節を行える構成とされる。
【0036】
上記シャワーヘッド10は、管継手14とボールジョイント6との嵌め合いによる摺動摩擦抵抗力により、上記角度調節されたそれぞれの位置にて保持される構成とされる。ヘッド本体10Aは、図7図8に示すように、その天板部を成す略円板状の本体板11と、底板部を成す略円板状の散水板12と、散水板12の中心部に空けられた排水孔12Bを開閉する開閉弁体13と、前述した管継手14と、を有する。本体板11と散水板12は、それぞれ、射出成形された樹脂部品から成る。
【0037】
ヘッド本体10Aは、図5図6に示すように、上記本体板11と散水板12とが互いに中空の円盤形状を成すように上下に組み付けられて構成される。上記本体板11は、図7図8に示すように、その円板本体の中央部に、周囲部に対して上側に円筒容器状に凹んだ凹面部11Aが形成された構成とされる。凹面部11Aは、本体板11と同心の円筒を成す形に形成されている。上記本体板11は、その円板本体の一般面部が全域に亘って板厚一定の形で延びる形状とされている。
【0038】
また、本体板11の中心部には、本体板11から高さ方向の両側に略円筒状に突出する接続管部11Bが形成されている。接続管部11Bは、その内部に丸孔状に貫通する接続口11Cが形成された構成とされる。上記接続管部11Bは、図7に示すように、その本体板11から上方に突出する円筒部分の外周部に、管継手14の下側の円筒部分が上方から螺合されて連結される構成とされる。上記連結により、接続管部11Bが、管継手14と互いに一体的に流路接続される(図6参照)。
【0039】
また、接続管部11Bは、図8に示すように、その本体板11から下方に突出する円筒部分の下端部に、周方向の4箇所の部位から下方に突出する凸部11Dが形成された構成とされる。各凸部11Dは、図6に示すように、接続管部11B内に設けられる開閉弁体13の円板状の弁座13Bを外周側から支持する部位とされる。
【0040】
図5及び図8に示すように、本体板11の外周部には、外周部に沿って下方に円筒状に突出する周縁筒部11Eが形成されている。周縁筒部11Eは、散水板12の外周縁近傍に沿って上方に円筒状に突出するように形成された嵌合筒部12Cの外周部にOリングを介してシールされた状態に嵌められる部位とされる。
【0041】
また、本体板11の円板上の所々の箇所には、下方に向かって丸孔状の溝を形成する締結溝11Fが形成されている。これら締結溝11Fは、本体板11の凹面部11Aの外周縁に沿った周方向の4箇所と、本体板11の外周縁に沿った周方向の4箇所と、にそれぞれ形成されている。
【0042】
これら締結溝11Fは、図7に示すように、それらの中心部に丸孔状に貫通する孔が形成された構成とされる。これら締結溝11Fは、散水板12の対応する各箇所から上方に突出する各小筒部12Dをそれぞれ内部に嵌合させて、これらに上方から差し込まれるビスBによりこれらを一体的に締結できるようにする締結用の部位とされる。
【0043】
図6に示すように、本体板11の接続管部11Bの管内には、開閉弁体13の軸部13Aを高さ方向にのみ摺動可能となるようにガイドするガイド部11Gが形成されている。ガイド部11Gは、接続管部11Bの管壁と一体的に繋がって形成されている。具体的には、ガイド部11Gは、その中心部に形成された円筒部分に開閉弁体13の丸棒状の軸部13Aが下方から通されて、同円筒部分により軸部13Aを高さ方向に移動可能なように外周側から支持する構成とされる。
【0044】
散水板12は、図5に示すように、本体板11よりもひとまわり大きな円板状を成す形に形成されている。上記散水板12は、その円板本体の一般面部が全域に亘って板厚一定の形で延びる形状とされている。
【0045】
上記散水板12は、図4で前述したように、その円板上の所々の箇所に複数の丸孔状の散水孔12Aが形成され、中心部にも丸孔状の排水孔12Bが形成された構成とされる。各散水孔12Aは、散水板12の中心部のまわりに複数の同心円を描くように周方向に並んで形成されている。排水孔12Bは、各散水孔12Aよりも大きな孔径を備える構成とされる。
【0046】
図7に示すように、散水板12の外周縁近傍には、同外周縁に沿って上方に円筒状に突出する嵌合筒部12Cが形成されている。この嵌合筒部12Cは、散水板12の外周縁より僅かに内側の位置に沿って形成されている。上記嵌合筒部12Cは、図5で前述したように、本体板11の外周部に形成された周縁筒部11Eの内周部に嵌められて、ヘッド本体10Aの内部の周囲側面を形成する部位とされる。
【0047】
また、図7に示すように、上記散水板12の円板上の所々の箇所には、上方に円筒状に突出する小筒部12Dが形成されている。これら小筒部12Dは、前述した本体板11に形成された各締結溝11Fの形成箇所に対応する各箇所に形成されている。各小筒部12Dは、図5に示すように、散水板12の嵌合筒部12Cが本体板11の周縁筒部11Eに嵌められる組み付けにより、各締結溝11F内に嵌められた状態にセットされる。
【0048】
そして、上記組み付けの後、各小筒部12Dが本体板11の各締結溝11Fに上方から差し込まれるビスBにより各締結溝11Fと締結されることにより、散水板12と本体板11とが互いに一体的に組み付けられる。この組み付けにより、本体板11を天板部とし、散水板12を底板部とする、中空円盤形状のヘッド本体10Aが形成される。詳しくは、本体板11と散水板12とは、互いの円板形状の中心部が同一軸線上の位置に並ぶように組み付けられ、本体板11の中心部に形成された接続口11Cが、散水板12の中心部に形成された排水孔12Bと孔軸方向(高さ方向)に対向する配置となる構成とされる。
【0049】
上記組み付けられたヘッド本体10Aは、図9に示すように、管継手14と接続された接続管部11Bの接続口11Cから湯水が内部に取り込まれる。そして、ヘッド本体10A内に取り込まれた湯水は、中心部の接続口11Cから本体板11と散水板12との間を通って外周側へと流されながら、散水板12の所々の箇所に空けられた各散水孔12Aより外部へと散水される。
【0050】
開閉弁体13は、図5図8に示すように、高さ方向に延びる丸棒状の軸部13Aと、軸部13Aの下端部近傍に形成されたフランジ状に広がる弁座13Bと、弁座13Bの下面部に接合されたゴムパッキン13Cと、を有する。更に、開閉弁体13は、軸部13Aに上方から通される圧縮コイルばねから成るスプリング13Dと、軸部13Aの上端部近傍に装着される抜け止め用の留め輪13Eと、を有する。
【0051】
上記開閉弁体13は、図5図6に示すように、軸部13Aが、接続管部11B内に形成されたガイド部11Gの円筒部分に下方から通されてセットされる。上記セットの後、開閉弁体13は、軸部13Aにスプリング13Dが上方から通されると共に留め輪13Eが上端部に装着される。
【0052】
上記スプリング13Dと留め輪13Eの装着により、開閉弁体13は、スプリング13Dがガイド部11Gの円筒部分の下縁部に形成されたフランジ状の座の部分と留め輪13Eとの間に押し挟まれた状態にセットされる。それにより、開閉弁体13は、常時は、上記スプリング13Dの付勢力により、ガイド部11Gの座の部分を支点に上方に引き上げられた状態に保持される構成とされる。
【0053】
詳しくは、開閉弁体13は、上記押し上げにより、弁座13Bの下面部に接合されたゴムパッキン13C及び軸部13Aの下端部を散水板12より上方に引き上げた状態とされて保持される。それにより、開閉弁体13は、その直下に位置する散水板12の排水孔12Bから上方に引き離されて、排水孔12Bを開いた状態、すなわち排水孔12Bをヘッド本体10Aの内部空間と連通させた状態に保持するようになっている。
【0054】
上記開閉弁体13は、図9に示すように、ヘッド本体10A内に混合水栓2(図1図2参照)から吐出される湯水が流れ込むことにより、接続口11C内にある弁座13Bに湯水の供給圧が直上から掛けられて下方に押圧される。それにより、開閉弁体13は、軸部13Aの下端部を排水孔12B内に入り込ませると共に、弁座13Bの下面部に接合されたゴムパッキン13Cを排水孔12Bの上部周縁に押し付けて排水孔12Bを閉じる。
【0055】
上記排水孔12Bが閉じられることで、排水孔12Bとヘッド本体10Aの内部空間との連通状態が遮断され、接続口11Cからヘッド本体10A内に取り込まれた湯水は、排水孔12Bから外部に流れ出ることなく、各散水孔12Aからのみ外部に散水される。上記開閉弁体13は、ヘッド本体10Aへの湯水の供給が継続されている間は、上記の供給圧を受け続けるため、排水孔12Bを閉じた状態を保ち続ける。
【0056】
上記開閉弁体13は、図10に示すように、ヘッド本体10Aへの湯水の供給が止められることにより、弁座13Bに掛かっていた湯水の供給圧が低下してスプリング13Dの付勢力により再び上方に引き上げられる。それにより、開閉弁体13は、再び排水孔12Bを開いた状態に切り替えられる。
【0057】
上記排水孔12Bが開かれることで、止水に伴うヘッド本体10A内の残留水が、各散水孔12Aからに加えて排水孔12Bからも外部に排出されるようになる。したがって、シャワーヘッド10が散水面(下面)を下方に真っ直ぐ向けた状態とされて、止水時に各散水孔12Aから外部の空気が入り込みにくい状況であっても、孔径の大きな排水孔12Bが開かれることで、ヘッド本体10A内での残留水の表面張力の釣り合いを崩して残留水を外部に適切に排出することができる。
【0058】
詳しくは、孔径の大きな排水孔12Bが開かれることで、各散水孔12Aに加えて孔径の大きな排水孔12Bからもヘッド本体10A内に外部の空気が取り込まれやすくなる。したがって、ヘッド本体10A内での残留水の表面張力の釣り合いを早期に崩して、各散水孔12Aと排水孔12Bとから残留水を外部にスピーディかつ的確に排出することができる。また、シャワーヘッド10が散水面を斜めに向けた状態とされている時にも、孔径の大きな排水孔12Bが開かれることで、各散水孔12Aに加えて孔径の大きな排水孔12Bからも残留水を外部にスピーディかつ的確に排出することができる。
【0059】
また、上記排水孔12Bが開かれた際、開閉弁体13は、接続口11Cを閉弁することなく開いた状態とする構成とされる。したがって、止水時には、ヘッド本体10A内の残留水のみならず、管継手14及びその上流側の通水路であるシャワー供給管4の第2管部4B(図2参照)内の残留水も、各散水孔12A及び排水孔12Bから外部に適切に排出することができる。
【0060】
したがって、図2で前述した冷水排出装置5との組み合わせにより、止水時にシャワー供給管4内の残留水に加え、シャワーヘッド10内の残留水も外部に適切に排出することができる。よって、次回使用時に、シャワーヘッド10から使用者に冷水が散水されてしまうことを適切に防止することができる。
【0061】
(まとめ)
以上をまとめると、第1の実施形態に係るシャワーヘッド10は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0062】
すなわち、シャワーヘッド(10)は、シャワー通水路(4)から供給される湯水を外部に散水するシャワーヘッド(10)である。このシャワーヘッド(10)は、シャワー通水路(4)と接続される接続口(11C)を備える中空状のヘッド本体(10A)と、ヘッド本体(10A)の底板部を成す散水板(12)と、開閉弁体(13)と、を有する。散水板(12)は、ヘッド本体(10A)内に供給される湯水を外部に散水する複数の散水孔(12A)と、複数の散水孔(12A)よりも孔径の大きな排水孔(12B)と、が空けられた構成とされる。
【0063】
開閉弁体(13)は、散水板(12)に空けられた排水孔(12B)を開閉するものであり、シャワー通水路(4)からの湯水の供給が止められる止水時にはバネ力により排水孔(12B)を開き、散水時にはヘッド本体(10A)内に掛けられる湯水の供給圧により排水孔(12B)をバネ力に抗して閉じる構成とされる。
【0064】
上記構成によれば、止水時に開かれる大径の排水孔(12B)により、止水時には、ヘッド本体(10A)内の残留水を外部に適切に排出することができる。上記排水孔(12B)は、散水時には開閉弁体(13)により閉じられる。したがって、散水時には、排水孔(12B)より湯水を外部に漏出させることなく、複数の散水孔(12A)のみから外部に適切に散水することができる。
【0065】
また、開閉弁体(13)が、接続口(11C)を開閉せず、排水孔(12B)のみを開閉する。上記構成によれば、止水時に、ヘッド本体(10A)内の残留水のみならず、接続口(11C)より上流側の残留水も排水孔(12B)から外部に適切に排出することができる。
【0066】
また、散水板(12)が、円板状とされる。排水孔(12B)が、散水板(12)の中心部に設けられて、接続口(11C)と孔軸方向に対向する配置とされる。開閉弁体(13)が、孔軸方向に動いて排水孔(12B)を開閉する。上記構成によれば、接続口(11C)から供給される湯水の供給圧が開閉弁体(13)に掛かりやすくなるため、散水時には、開閉弁体(13)により排水孔(12B)を適切に閉じることができる。
【0067】
また、ヘッド本体(10A)が、散水板(12)を鉛直下方に向けることができる。上記構成によれば、ヘッド本体(10A)が、止水時に表面張力の作用により内部に残留水が溜まりやすい向きに向けることが可能な構成であっても、排水孔(12B)により残留水を外部に適切に排出することができる。
【0068】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0069】
1.本発明のシャワーヘッドは、浴室の壁面や天井に固定されて使用者に頭上からシャワー水を散水する、いわゆるオーバーヘッド式のシャワー構造から成るものの他、使用者が手で掴んで使用するハンド式のシャワー構造から成るものであっても良い。上記シャワーヘッドは、散水板を鉛直下方に向けられない、斜めの角度領域でのみ使用可能とされる構成であっても良い。
【0070】
2.シャワーヘッドに湯水を供給するシャワー通水路は、浴室の壁面に沿って浴室内に露出して設けられる管部材の他、浴室の壁や天井の内部(奥)を通るように埋設されて壁や天井を通してシャワーヘッドと接続される管部材から成るものであっても良い。
【0071】
3.散水板は、円板形状の他、三角形や四角形等の多角形の板形状や異形の板形状から成るものであっても良い。
【0072】
4.排水孔は、丸孔の他、三角形や四角形等の多角形の孔形状や異形の孔形状から成るものであっても良い。排水孔は、1つに限らず、複数設けられていても良い。また、排水孔は、必ずしも接続口と孔軸方向に対向する位置に配置されるものでなくても良く、散水板の周縁部等の接続口とは孔径方向にずれた位置に配置されるものであっても良い。
【0073】
5.開閉弁体は、排水孔の形成位置に対応して設けられるものであり、シャワー散水時にヘッド本体内に掛けられる湯水の供給圧により排水孔をバネ力に抗して閉じられるように設けられていれば良い。開閉弁体は、複数の排水孔をひとまとめに開閉できるように設けられていても良い。
【0074】
上記開閉弁体は、排水孔を開く動作により接続口を閉じ、湯水の供給圧により排水孔を閉じる動作により接続口を開くよう配置されていても構わない。但し、この場合には、止水時に接続口が閉じられるため、接続口から上流側の残留水を排水孔から排出できない構成となることに留意が必要となる。
【符号の説明】
【0075】
1 シャワー装置
2 混合水栓
2A 水栓本体
2B 温度調節ハンドル
2C 切替ハンドル
3A 給湯管
3B 給水管
4 シャワー供給管(シャワー通水路)
4A 第1管部
4B 第2管部
5 冷水排出装置
5A 装置本体
5B ON/OFFハンドル
5C 冷水排出管
6 ボールジョイント
10 シャワーヘッド
10A ヘッド本体
10B ヘッドカバー
11 本体板
11A 凹面部
11B 接続管部
11C 接続口
11D 凸部
11E 周縁筒部
11F 締結溝
11G ガイド部
12 散水板
12A 散水孔
12B 排水孔
12C 嵌合筒部
12D 小筒部
13 開閉弁体
13A 軸部
13B 弁座
13C ゴムパッキン
13D スプリング
13E 留め輪
14 管継手
B ビス
W 壁面
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10