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特許7555814情報処理装置、水処理システム、指標値算出方法および指標値算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、水処理システム、指標値算出方法および指標値算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20240917BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240917BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20240917BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
C02F1/00 V
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020212804
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022099053
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小松 一登
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/011791(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/026829(WO,A1)
【文献】特開2007-221280(JP,A)
【文献】特開2017-113382(JP,A)
【文献】特開2019-200646(JP,A)
【文献】特開2009-294101(JP,A)
【文献】特許第5327393(JP,B1)
【文献】特開2018-030003(JP,A)
【文献】特開2006-235938(JP,A)
【文献】特開2019-066230(JP,A)
【文献】特開2008-059270(JP,A)
【文献】特開2012-181280(JP,A)
【文献】特開2016-125947(JP,A)
【文献】特開2020-003282(JP,A)
【文献】韓国登録特許第2106330(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00 - 17/00
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
G06N 20/00 - 20/20
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の期間に計測された、管理対象物の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する計測値判定部と、
前記期間における前記異常値の数および前記正常値の数の少なくとも何れかに基づいて、前記期間における前記管理対象物の状態を示す指標値を算出する指標値算出部と、を備え
前記計測値判定部は、前記期間とは異なる期間に前記管理対象物について計測された複数の計測値を用いた教師なし学習により構築された判定モデルを用いて前記判定を行い、
前記判定モデルを構築するモデル構築部を備え、
前記モデル構築部は、
前記指標値を算出する処理の対象となる処理対象期間の直前の所定期間において計測された複数の計測値を用いて前記判定モデルを構築し、
前記判定モデルの構築を、前記処理対象期間が変わる毎に、変わった後の当該処理対象期間の直前の所定期間において計測された複数の計測値を用いて行う、情報処理装置。
【請求項2】
任意の期間に計測された、管理対象物の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する計測値判定部と、
前記期間における前記異常値の数および前記正常値の数の少なくとも何れかに基づいて、前記期間における前記管理対象物の状態を示す指標値を算出する指標値算出部と、を備え、
前記計測値判定部は、前記期間とは異なる期間に前記管理対象物について計測された複数の計測値を用いた教師なし学習により構築された判定モデルを用いて前記判定を行い、
前記判定モデルを構築するモデル構築部を備え、前記モデル構築部は、前記指標値を算出する処理の対象となる処理対象期間の直前の所定期間において計測された複数の計測値を用いて前記判定モデルを構築し、
前記直前の所定期間は、前記処理対象期間と同じ長さに区切られた単位期間を複数含んでおり、
前記指標値算出部は、前記単位期間ごとに指標値を算出するものであり、
前記モデル構築部は、
前記直前の所定期間に含まれる複数の単位期間のうち、前記単位期間における管理対象物の状態が正常であることを示す指標値が算出された各単位期間において計測された複数の計測値を用いて、前記判定モデルを構築する、情報処理装置。
【請求項3】
前記指標値と所定の閾値とを比較することにより前記管理対象物の状態異常を検知する異常検知部と、
ユーザの入力操作に応じて前記閾値を変更する閾値変更部と、を備える請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記指標値算出部は、前記指標値の算出における各異常値の寄与度を、当該異常値の各正常値からの乖離度に応じたものとして前記指標値を算出する、請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記指標値算出部は、前記指標値の算出における各異常値の寄与度を、前記正常値と前記異常値とを所定の座標系に配置したときの、各正常値に対する前記異常値の方向に応じたものとして前記指標値を算出する、請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記正常値と前記異常値とを所定の座標系に配置したときの各正常値に対する前記異常値の方向、および前記異常値の各正常値からの距離の少なくとも何れかに応じて前記管理対象物に生じた事象を判定する事象判定部を備える、請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記正常値と前記異常値とを所定の座標系に配置したときの各正常値に対する前記異常値の方向、および前記異常値の各正常値からの距離の少なくとも何れかに応じて緊急度を判定する緊急度判定部を備える、請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
原動機による駆動機構を備えた複数の機器により汚水を浄化する水処理システムであって、
前記機器のそれぞれに設けられたセンサと、
請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置と、を含み、
前記情報処理装置は、前記センサによって計測した計測値を取得し、取得した当該計測値を用いて複数の前記機器のそれぞれについて、当該機器の状態を示す指標値を算出する、水処理システム。
【請求項9】
1または複数の情報処理装置が実行する指標値算出方法であって、
任意の期間に計測された、管理対象物の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する計測値判定ステップと、
前記期間における前記異常値の数および前記正常値の数の少なくとも何れかに基づいて、前記期間における前記管理対象物の状態を示す指標値を算出する指標値算出ステップと、を含み、
前記計測値判定ステップでは、前記期間とは異なる期間に前記管理対象物について計測された複数の計測値を用いた教師なし学習により構築された判定モデルを用いて前記判定を行い、
前記判定モデルを構築するモデル構築ステップを含み、
前記モデル構築ステップでは、
前記指標値を算出する処理の対象となる処理対象期間の直前の所定期間において計測された複数の計測値を用いて前記判定モデルを構築し、
前記判定モデルの構築を、前記処理対象期間が変わる毎に、変わった後の当該処理対象期間の直前の所定期間において計測された複数の計測値を用いて行う、指標値算出方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための指標値算出プログラムであって、前記計測値判定部前記指標値算出部、および前記モデル構築部としてコンピュータを機能させるための指標値算出プログラム。
【請求項11】
1または複数の情報処理装置が実行する指標値算出方法であって、
任意の期間に計測された、管理対象物の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する計測値判定ステップと、
前記期間における前記異常値の数および前記正常値の数の少なくとも何れかに基づいて、前記期間における前記管理対象物の状態を示す指標値を算出する指標値算出ステップと、を含み、
前記計測値判定ステップでは、前記期間とは異なる期間に前記管理対象物について計測された複数の計測値を用いた教師なし学習により構築された判定モデルを用いて前記判定を行い、
前記判定モデルを構築するモデル構築ステップを含み、前記モデル構築ステップでは、前記指標値を算出する処理の対象となる処理対象期間の直前の所定期間において計測された複数の計測値を用いて前記判定モデルを構築し、
前記直前の所定期間は、前記処理対象期間と同じ長さに区切られた単位期間を複数含んでおり、
前記指標値算出ステップでは、前記単位期間ごとに指標値を算出し、
前記モデル構築ステップでは、前記直前の所定期間に含まれる複数の単位期間のうち、前記単位期間における管理対象物の状態が正常であることを示す指標値が算出された各単位期間において計測された複数の計測値を用いて、前記判定モデルを構築する、指標値算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、水処理システム、指標値算出方法および指標値算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業上利用されている各種機器や設備等については、定期的な状態確認やメンテナンスにより、異常やその兆候の有無が確認されている。例えば、下水処理場などの水処理施設では、多数の機器により水の浄化処理を行っているが、それら機器のそれぞれについて定期的に手作業で点検を行うことが一般的である。
【0003】
しかしながら、手作業での点検は人的負担が大きいという問題がある。このような問題を解決するための技術としては、例えば下記の特許文献1が挙げられる。特許文献1には、大規模工場やプラント等に設置されているモータ等の回転機器用のモニタリング装置が開示されている。このモニタリング装置は、回転機器の近傍に設置した無線子機で計測したデータを無線親機に送信し、無線親機が当該データと過去のデータとを比較して異常の有無を検出する構成となっている。この構成によれば、人手によらず回転機器のモニタリングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-066230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術には、回転機器の状態をユーザに分かりやすく伝えるという点で改善の余地がある。例えば、回転機器のモニタリングを24時間行った場合、その期間中に計測されたデータの数はかなり多くなり、それらのデータと過去のデータとの比較結果も同様にかなり多いものとなる。
【0006】
このため、上述のような比較結果をそのまま出力した場合には、ユーザが、そのような膨大なデータから回転機器の状態を認識することは難しくなる。これは回転機器に限られず、任意の管理対象物について共通して生じる問題点である。
【0007】
本発明の一態様は、管理対象物の状態をユーザに容易に認識させることができる情報処理装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、任意の期間に計測された、管理対象物の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する計測値判定部と、前記期間における前記異常値の数および前記正常値の数の少なくとも何れかに基づいて、前記期間における前記管理対象物の状態を示す指標値を算出する指標値算出部と、を備えている。
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水処理システムは、原動機による駆動機構を備えた複数の機器により汚水を浄化する水処理システムであって、前記機器のそれぞれに設けられたセンサと、情報処理装置と、を含み、前記情報処理装置は、前記センサによって計測した計測値を取得し、取得した当該計測値を用いて複数の前記機器のそれぞれについて、当該機器の状態を示す指標値を算出する。
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る指標値算出方法は、1または複数の情報処理装置が実行する指標値算出方法であって、任意の期間に計測された、管理対象物の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する計測値判定ステップと、前記期間における前記異常値の数および前記正常値の数の少なくとも何れかに基づいて、前記期間における前記管理対象物の状態を示す指標値を算出する指標値算出ステップと、を含む。
【0011】
本発明の各態様に係る情報処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報処理装置をコンピュータにて実現させる情報処理装置の指標値算出プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、管理対象物の状態をユーザに容易に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図2】本開示の一実施形態に係る水処理システムの構成例を示す図である。
図3】計測値データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図4】ある期間に計測された複数の計測値を、x、y、z要素ごとの2次元の座標系にプロットした2次元グラフである。
図5】ある期間に計測された複数の計測値を、3次元の座標系にプロットした3次元グラフである。
図6】判定結果情報のデータ構造の一例を示す図である。
図7】処理結果テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
図8】本開示の一実施形態に係る情報処理装置が実行する指標算出方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本開示の一実施形態に係る情報処理装置が実行する閾値変更処理の流れを示すフローチャートである。
図10】重み係数を決めるために、ある期間の異常値群をプロットするための3次元座標系の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
<水処理システムの構成>
本実施形態に係る水処理システム100の概要を図2に基づいて説明する。図2は、水処理システム100の構成例を示す図である。水処理システム100は、複数の機器により汚水を浄化するシステムである。水処理システム100は、管理対象物としての上述の機器のそれぞれに設けられた、機器の状態を計測するセンサと、情報処理装置1と、を含む。水処理システム100は、さらに、クラウドサーバ2と、無線親機3とを含んでいてもよい。
【0015】
水処理システム100に含まれる複数の機器の少なくとも一部は、モータまたはエンジンなどの原動機による駆動機構を備えた機器である。センサは、一例として、そのような原動機による駆動機構を備えた機器の振動、例えば振動加速度を計測する振動センサである。本実施形態では、振動センサは、水処理システム100に含まれる機器の1台につき、1つ設けられることとするが、機器1台につき、複数の振動センサが設けられていてもよい。また、機器には、機器の振動以外の状態を計測するセンサが設けられていてもよく、機器1台に、複数種類のセンサが設けられていてもよい。例えば、1台の機器に、振動センサ、温度センサ、電流計、圧力センサおよび騒音センサのうちから1つ以上のセンサが設けられていてもよい。
【0016】
(設備概要)
本実施形態では、一例として、水処理システム100は、汚水を浄化するための設備として、沈砂池101、調整槽102、最初沈澱池103、生物反応槽104、最終沈澱池105、凝集沈澱池106、汚泥濃縮槽107、ホッパ室108および脱臭設備109などを含んでいる。
【0017】
(汚水を浄化するための機器)
本実施形では、一例として、水処理システム100は、原動機による駆動機構を備えた機器として、ポンプ111、最初沈澱池掻寄機112、曝気ブロワ113、撹拌機114、最終沈澱池掻寄機115、凝集沈澱池掻寄機116、汚泥濃縮槽掻寄機117、汚泥脱水機118、水処理室ファン119およびホッパ室ファン120を含む。
【0018】
ポンプ111は、沈砂池101に設置されている機器であり、沈砂池101において土砂が沈められた後の汚水をくみ上げて、調整槽102に送る。
【0019】
最初沈澱池掻寄機112は、最初沈澱池103に設置されている機器であり、最初沈澱池103に沈澱した汚泥をかき集めて汚泥濃縮槽107に送る。
【0020】
曝気ブロワ113は、生物反応槽104に空気を送り込む機器である。撹拌機114は、生物反応槽104に貯められた汚水と活性汚泥とを混合撹拌する機器である。生物反応槽104では、曝気ブロワ113および撹拌機114によって、微生物を含む活性汚泥と汚水とが混合され、汚水中の汚れが微生物によって分解される。
【0021】
最終沈澱池掻寄機115は、最終沈澱池105に設置されている機器であり、最終沈澱池105に沈澱した汚泥をかき集めて汚泥濃縮槽107に送る。
【0022】
凝集沈澱池掻寄機116は、凝集沈澱池106に設置されている機器であり、凝集沈澱池106に沈澱した汚泥をかき集めて汚泥濃縮槽107に送る。凝集沈澱池106で分離した上澄み液が水処理システム100の処理水となる。
【0023】
汚泥濃縮槽掻寄機117は、汚泥濃縮槽107に設置されている機器であり、汚泥濃縮槽107に沈澱した汚泥をかき集めてホッパ室108の汚泥脱水機118に送る。
【0024】
汚泥脱水機118は、ホッパ室108に設置されている機器であり、汚泥濃縮槽掻寄機117によって集められた汚泥の脱水を行う。脱水された汚泥は、ケーキホッパに投入され、焼却炉等へと搬出される。
【0025】
水処理室ファン119は、沈砂池101から汚泥濃縮槽107までの水を処理するための各設備が配置された空間から収集された、臭気を含む空気を脱臭設備109に送る。ホッパ室ファン120は、ホッパ室108の空間から収集された、臭気を含む空気を脱臭設備109に送る。水処理室ファン119およびホッパ室ファン120によって、悪臭を含む空気は、脱臭設備109の水洗脱臭塔に集められ、活性炭等を使った吸着塔を通って残りの臭気が吸着された後、臭突から大気中に放出される。
【0026】
(機器の状態を計測するセンサ)
本実施形態では、一例として、水処理システム100は、上述の各機器の回転軸、ケーシングまたは原動機にそれぞれ設けられた振動センサ21~30を含む。各振動センサ21~30は、例えば、3軸振動センサであって、各機器の振動加速度を、x軸、y軸およびz軸ごとに計測し、振動強度に変換する。
【0027】
各振動センサを個々に区別する必要がある場合に備えて、各振動センサを、当該振動センサが設けられている機器にちなんで以下のように呼称する。各振動センサを区別する必要が無い場合には、単に、振動センサとまとめて呼ぶことにする。
【0028】
ポンプセンサ21は、ポンプ111の振動を計測する振動センサである。最初沈澱池掻寄機センサ22は、最初沈澱池掻寄機112の振動を計測する振動センサである。ブロワセンサ23は、曝気ブロワ113の振動を計測する振動センサである。撹拌機センサ24は、撹拌機114の振動を計測する振動センサである。最終沈澱池掻寄機センサ25は、最終沈澱池掻寄機115の振動を計測する振動センサである。凝集沈澱池掻寄機センサ26は、凝集沈澱池掻寄機116の振動を計測する振動センサである。濃縮槽掻寄機センサ27は、汚泥濃縮槽掻寄機117の振動を計測する振動センサである。脱水機センサ28は、汚泥脱水機118の振動を計測する振動センサである。水処理室ファンセンサ29は、水処理室ファン119の振動を計測する振動センサである。ホッパ室ファンセンサ30は、ホッパ室ファン120の振動を計測する振動センサである。
【0029】
なお、図示されていないが調整槽102には調整槽ブロワが設置されていてもよく、調整槽ブロワにも振動センサが設けられていてもよい。
【0030】
(機器を管理するための装置群)
本実施形態に係る水処理システム100は、各機器に設けられた振動センサから取得された計測値を情報処理して、各機器の状態を把握し、各機器を管理することができる。機器を管理するために、水処理システム100は、一例として、情報処理装置1と、クラウドサーバ2と、無線親機3とを含む。
【0031】
無線親機3は、各機器に設けられた各振動センサ21~30と無線で通信して、各振動センサが計測した計測値を取得する。無線親機3は、例えば、インターネットなどの広域通信網を含む通信ネットワークを介して、クラウドサーバ2に、取得した計測値を保存する。無線親機3は、各振動センサから、例えば、10分に1回の間隔で計測値を受信する。無線親機3は、受信する度に計測値をクラウドサーバ2に送信してもよいし、ある程度の期間、貯めておいた複数の計測値をまとめてクラウドサーバ2に送信してもよい。無線親機3は、1つの振動センサからの計測値を、ある程度の期間分(例えば、1時間分)まとめて送信してもよい。あるいは、無線親機3は、ほぼ同時に計測された各振動センサからの計測値が、センサ全種類分そろったときに、例えば、振動センサ21から振動センサ30までの10個の計測値を受信したときに、これらをまとめて送信してもよい。
【0032】
クラウドサーバ2は、各振動センサによって計測された計測値、いわゆる生データを記憶するものである。クラウドサーバ2は、大量の計測値を記憶しておくための大容量の記憶装置を備えていることが好ましい。例えば、上述の例では、計測値は、機器の振動センサごとに10分につき1個、つまり、1日あたりに144個取得される。水処理システム100は、機器を10台含んでいるので、1日に1440個の計測値がクラウドサーバ2に記憶されることになる。本実施形態では、振動センサは、x、y、および、zの要素ごとに振動強度を計測するものであり、振動センサから出力される1つの計測値は、x軸の振動加速度を示すxの要素値、y軸の振動加速度を示すyの要素値、および、z軸の振動加速度を示すzの要素値を含んで構成される。クラウドサーバ2は、このような計測値群を、何日分にも亘って長期に保存しておけることが好ましい。
【0033】
クラウドサーバ2は、無線親機3および情報処理装置1がアクセス可能なように、上述の通信ネットワークを介して、無線親機3および情報処理装置1のそれぞれに接続されている。
【0034】
情報処理装置1は、管理対象物である機器について、ある期間において計測された複数の計測値を情報処理して、機器の状態を示す指標値を算出する装置である。以下では、指標値を算出する情報処理の対象となる機器を、処理対象機器、指標値を算出する情報処理の対象となる計測値が計測された期間を処理対象期間と称する。つまり、情報処理装置1は、処理対象機器につき、処理対象期間において計測された計測値を用いて、該処理対象期間における処理対象機器の状態を示す指標値を算出する装置である。情報処理装置1の構成については図1を参照して後に詳述する。
【0035】
上述の水処理システム100によれば、1つの処理対象機器の、1つの処理対象期間につき、該処理対象機器の状態を示す指標値が1つ示される。振動センサから出力される膨大な量の計測値の1つ1つに対して、異常値か正常値かの判定結果をそのまま示す場合と比べて、管理対象物である機器の状態をユーザに容易に認識させることができる。
【0036】
したがって、水処理システム100に含まれる各機器に対して、手作業で定期検査を行っていた従来技術と比べて、水処理システム100の維持管理の省力化が可能になると共に、継続的な管理により手作業では困難な継続的な監視を行うことも可能になる。
【0037】
<情報処理装置の構成>
情報処理装置1のより詳細な構成について図1に基づいて説明する。図1は、情報処理装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0038】
図1に示すように、情報処理装置1は、情報処理装置1の各部を統括して制御する制御部10と、情報処理装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11とを備えている。また、情報処理装置1は、情報処理装置1に対するユーザの入力操作を受け付ける操作部12と、情報処理装置1が情報をユーザに提示するための表示部13とを備えている。さらに、情報処理装置1は、クラウドサーバ2等の他の装置と通信するための不図示の通信部を備えている。
【0039】
制御部10は、計測値判定部42および指標値算出部43を備えている。制御部10は、さらに必要に応じて、モデル構築部41、閾値変更部44、変化検知部45(異常検知部)、事象判定部46、緊急度判定部47および情報提示部48を備えていてもよい。制御部10が備える上述の各部のうち、モデル構築部41は、機器の診断に用いられるモデルを生成するための機械学習フェーズで処理を実行する部材に分類される。そして、計測値判定部42、指標値算出部43、閾値変更部44、変化検知部45、事象判定部46、緊急度判定部47および情報提示部48は、上述のモデルを用いて機器を診断する診断フェーズで処理を実行する部材に分類される。
【0040】
記憶部11には、判定モデル51、判定結果情報52、指標値53、閾値54および変化記録55が記憶されている。一例として、指標値53および変化記録55は、処理結果テーブル50という1つのテーブルを構成するように記憶部11に記憶されていてもよい。
【0041】
(機械学習フェーズ)
モデル構築部41は、処理対象期間の各計測値を異常値か正常値か判定するための判定モデル51を構築する。本実施形態では、一例として、処理対象期間とは異なる期間に管理対象物である機器について計測された複数の計測値を用いて、教師なし学習により判定モデルを構築してもよい。以下では、判定モデル51を構築するために参照される複数の計測値が計測された期間を学習対象期間と称する。
【0042】
例えば、計測値判定部42がOne-Class SVM(Support Vector Machine)により各計測値を異常値か正常値か判定する場合、モデル構築部41はOne-Class SVMの識別境界を機械学習で決定すればよい。この場合、モデル構築部41は、学習対象期間に計測された計測値群のうち所定割合の計測値が外れ値として分類されるような識別境界を決定する。モデル構築部41は、決定した識別境界を判定モデル51として記憶部11に記憶させる。本実施形態では、計測値は、x、y、zの3つの要素を含むので、識別境界としての判定モデル51は、3次元座標系において、正常値を包含するような空間、つまり、立体的形状として定義されてもよい。
【0043】
モデル構築部41は、処理対象期間とは異なる学習対象期間に同一の機器について計測された別の計測値群を用いて、当該機器の判定モデル51を構築する。例えば、本実施形態では、モデル構築部41は、図2に示す汚水を浄化するための機器10台(111~120)のそれぞれについて判定モデル51を構築する。具体例を挙げると、モデル構築部41は、ポンプ111のための判定モデル51を構築するために、学習対象期間においてポンプセンサ21から計測された複数の計測値を、クラウドサーバ2内の計測値データベース(以下、計測値DB)201から読み出して使用する。
【0044】
さらに、モデル構築部41は、学習対象期間を、処理対象期間の直前の所定期間とし、該直前の所定期間において計測された複数の計測値を用いて判定モデル51を構築してもよい。例えば、処理対象期間が、某日0時から24時までの1日であるとき、これを基準日とすると、モデル構築部41は、学習対象期間を、基準日の1週間前の日から該基準日の前日までの7日間としてもよい。そして、モデル構築部41は、この7日間に計測された複数の計測値を判定モデル51の構築に用いてもよい。これにより、処理対象期間より過去の直近の期間における状態と比較して、機器の状態に変化が生じたことを適切に捉えることができる。
【0045】
また、モデル構築部41は、上述の某日の翌日が処理対象期間となれば、該某日の翌日を基準日とし、学習対象期間を、該基準日の1週間前の日から該基準日の前日、つまり、上述の某日までの7日間としてもよい。このように、モデル構築部41は、学習対象期間の長さが一定となるように、判定モデルの構築に使用する計測値群を計測値DB201から抽出してもよい。これにより、常に一定期間分過去の直近の期間における機器の状態と比較して、処理対象期間における機器の状態がどうであったのかを、相対的に診断することが可能となる。つまり、処理対象期間において直近の機器の状態と比べて何らかの変化があった場合にその変化を適切に捉えることができる。
【0046】
とりわけ、機器において変化が生じる頻度に規則性がある場合には、そのような変化を適切に捉えることができる。学習対象期間は、管理対象物についてあらかじめ判明している性質に基づいて適宜決定することができる。例えば、管理対象物において検知したい変化が起こる頻度があらかじめ判明している場合、その頻度に基づいて、学習対象期間を決定することができる。上述の例では、学習対象期間を、処理対象期間である基準日より過去の直近の1週間としている。これにより、基準日の機器の状態と、直近1週間分の機器の状態とを比較することができるので、1週間から10日に1回程度の頻度で変化が生じるような性質の機器について、当該変化を捉えることができる。季節ごとに生じるような変化を捉えたい場合には、モデル構築部41は、学習対象期間を3ヶ月程度としてもよい。月ごとに生じるような変化を捉えたい場合には、モデル構築部41は、学習対象期間を30日程度としてもよい。
【0047】
(診断フェーズ)
計測値判定部42は、処理対象期間(任意の期間)に計測された、処理対象機器(管理対象物)の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する。
【0048】
計測値判定部42は、モデル構築部41によって構築された判定モデル51を用いて、正常値であるか異常値であるかを判定する。本実施形態では、一例として、モデル構築部41が構築した判定モデル51は、One-Class SVMの識別境界である。計測値判定部42は、処理対象期間における計測値が、識別境界によって定義された正常範囲に含まれる場合に、該計測値を正常値と判定し、反対に、計測値が上述の正常範囲を外れる場合に、該計測値を異常値と判定する。
【0049】
計測値判定部42は、計測値DB201から抽出した処理対象期間の各計測値に対して、異常値か正常値かの判定結果を付加し、判定結果情報52として記憶部11に記憶させる。
【0050】
指標値算出部43は、処理対象期間における異常値の数および正常値の数の少なくとも何れかに基づいて、処理対象期間における処理対象機器の状態を示す指標値53を算出する。
【0051】
例えば、指標値算出部43は、指標値53として、処理対象期間における処理対象機器の異常の度合いを示す異常度を算出してもよい。あるいは、指標値算出部43は、処理対象期間における処理対象機器の正常の度合いを示す正常度を算出してもよい。
【0052】
指標値算出部43は、指標値53を、例えば、以下のようにして算出してもよい。
【0053】
(1)指標値算出部43は、処理対象期間における計測値群のうちの異常値の数と正常値の数との比に基づいて指標値53を算出してもよい。
【0054】
(2)処理対象期間における振動センサにより計測回数は一定であるとして、指標値算出部43は、処理対象期間における異常値の数に基づいて指標値53を算出してもよい。
【0055】
(3)指標値算出部43は、単位時間当たりの異常値の数に基づいて指標値53を算出してもよい。
【0056】
(4)処理対象期間における振動センサにより計測回数は一定であるとして、指標値算出部43は、処理対象期間における正常値の数に基づいて指標値53を算出してもよい。
【0057】
(5)指標値算出部43は、単位時間当たりの正常値の数に基づいて指標値53を算出してもよい。
【0058】
変化検知部45は、指標値53と所定の閾値とを比較することにより、処理対象機器の状態異常を検知する。より具体的には、変化検知部45は、処理対象期間において、処理対象機器に普段とは異なる変わった事象が生じたか否かを判断することにより、処理対象期間における処理対象機器の状態異常を検知する。以下では、普段とは異なる変わった事象のことを変化事象と称する。
【0059】
例えば、変化検知部45は、算出された指標値53が、所定の閾値以上である場合に、機器に変化事象が生じたと判断し、指標値53が所定の閾値未満である場合に、機器に変化事象は生じなかった(普段通りに稼働した)と判断してもよい。
【0060】
本開示において、「変化事象が生じた」ことを「異常あり」、「変化事象が生じなかった」ことを「正常」または「異常なし」と表現する。しかし、変化検知部45が検知する「異常」は、障害(failure)、エラー(error)、不具合(defect)またはトラブル(trouble)などのように否定的な変化事象を意味するとは限らない。変化検知部45が検知する「異常」には、処理対象機器の運転設定値の変更等、作業員が何らかの目的で意図的に引き起こした事象、故障に直結しない例外的に発生した事象などのように中立的な変化事象が含まれ得る。検知された「異常」の詳細または緊急性を判断する役割は、後述するように、事象判定部46または緊急度判定部47が担う。
【0061】
変化検知部45が参照する上述の所定の閾値は、例えば、閾値54として、あらかじめ記憶部11に記憶されていてもよい。閾値54は、ユーザによって任意の値に変更されてもよい。閾値変更部44は、ユーザの入力操作に応じて閾値54を変更する。閾値変更部44は、情報提示部48を介して、閾値を変更するためのユーザインタフェース(UI)部品を含むUI画面を表示部13に表示させてもよい。
【0062】
変化検知部45は、ユーザが指定した変更後の閾値に基づく状態異常の検知結果を模擬的に出力してもよい。閾値変更部44は、変更前の閾値54に基づいて変化検知部45が出力した状態異常の検知結果と、変更後の閾値によって変化検知部45が模擬的に出力した状態異常の検知結果とを、上述のUI画面に追加してもよい。
【0063】
これにより、計測値が正常値であるか異常値であるかを判定するためのアルゴリズムについて高度な知識を有していないユーザであっても、異常検知の基準を容易に調整することができる。
【0064】
事象判定部46は、計測値判定部42によって判定された、
(1)正常値と異常値とを所定の座標系に配置したときの各正常値に対する異常値の方向、
(2)異常値の各正常値からの距離、
(3)x、y、zの各要素値のうち、特定の要素値の指標値、および、
(4)x、y、zの各要素値のうち、2以上の要素値間での指標値の比較結果、の少なくとも何れかに応じて、機器に生じた変化事象を判定する。判定される変化事象は、一例として、軸受の破損、ボルトの緩み、歯車の摩耗、および、経年劣化などである。
【0065】
緊急度判定部47は、計測値判定部42によって判定された正常値と異常値とを所定の座標系に配置したときの各正常値に対する異常値の方向、および異常値の各正常値からの距離の少なくとも何れかに応じて、緊急度を判定する。
【0066】
緊急度は、変化検知部45によって検知された変化事象の危機的な異常であることの度合いを示す。一例として、緊急度が高い値であるほど、変化事象が、すぐにでも対処が必要な危機的な異常であることを意味する。緊急度が低い値であれば、そのような変化事象は、対処を必須としないか、または、即時に対応せずとも、次の定期点検で確認する程度の軽度の異常であると理解される。
【0067】
本実施形態では、一例として、緊急度判定部47は、すべての異常値のうち、xの要素値が所定以上である異常値の割合を緊急度として算出してもよい。あるいは、緊急度判定部47は、すべての異常値のうち、正常値群との距離が所定以上である異常値の割合を緊急度として算出してもよい。
【0068】
他の例では、緊急度判定部47は、事象判定部46によって判定された変化事象の種類に応じて緊急度を判定してもよい。例えば、記憶部11に、どの変化事象のときに、緊急度をどのレベルと判定するのかを定義した判定規則を記憶させておく。緊急度判定部47は、判定規則を参照し、例えば、事象判定部46が判定した変化事象が「ボルトの緩み」である場合に、緊急度を最上レベルの「A:危険」と判定してもよい。緊急度判定部47は、事象判定部46が判定した変化事象が「歯車の摩耗」である場合に、緊急度を中位レベルの「B:注意」と判定してもよい。緊急度判定部47は、事象判定部46が判定した変化事象が「センサ自身の一時的な異常」である場合に、緊急度を最下レベルの「C:問題なし」と判定してもよい。
【0069】
さらに、緊急度判定部47は、上述の所定の危機的な異常の条件を満たす異常値の割合を意味する数値で表された緊急度を、所定の規則にしたがって、「危険」、「注意」および「問題なし」などのように言語化された緊急度に置き換えてもよい。これにより、ユーザは、緊急度を容易に認識することができる。例えば、緊急度判定部47は、異常値の割合が「80%以上」の場合、緊急度を「危険」と判定し、異常値の割合が「40%以上80%未満」の場合、緊急度を「注意」と判定し、異常値の割合が「40%未満」の場合、緊急度を「問題なし」と判定してもよい。
【0070】
さらに他の例では、緊急度判定部47は、事象判定部46によって判定された変化事象の種類に基づく重み付けを行った上で、異常値の割合に基づいて緊急度を算出してもよい。
【0071】
情報提示部48は、上述の診断フェーズにおいて、制御部10の各部が実行した処理の結果を、ユーザが視認可能なUI画面として表示部13に表示させる。例えば、情報提示部48は、記憶部11に記憶された判定結果情報52、指標値53、および変化記録55などを表示部13に表示させる。
【0072】
これにより、管理対象物である、水処理システム100内の各機器の状態をユーザに容易に認識させることができる。
【0073】
さらに、情報提示部48は、閾値変更部44の指示にしたがって、閾値54を変更するためのUI部品を含むUI画面を表示部13に表示させてもよい。
【0074】
<データ構造>
(計測値DB)
図3は、計測値を格納する計測値DB201のデータ構造の一例を示す図である。図3には、1レコード分、すなわち、計測値1つ分のデータ構造を示す。計測値DB201は、一例として、日付、時刻、機器、センサID、および、計測値の各項目を有する構成である。
【0075】
項目「日付」は、計測値が振動センサによって計測された日を示す。項目「時刻」は、計測値が振動センサによって計測された時刻を示す。項目「機器」は、振動センサが設けられている水処理システム100内の管理対象物としての機器の識別情報を示す。項目「センサID」は、振動センサの識別情報を示す。なお、水処理システム100において、機器と振動センサとが1対1で対応していることが予め決まっている場合には、項目「センサID」は省略されてもよい。項目「機器」に示されている機器の識別情報によって、振動センサも一意に特定することができるからである。
【0076】
項目「計測値」は、振動センサの計測値を示す。本実施形態では、振動センサは3軸センサであり、計測値は、x、y、zの3つの要素値を含む。そのため、本項目は、要素値のそれぞれを格納するためのサブ項目、すなわち、「要素xの要素値」、「要素yの要素値」および「要素zの要素値」を含む。計測値は、一例として、振動センサから出力された3方向の振動加速度を示すデータであり、情報処理によって加工が施されていない、いわゆる生データである。ただし、生データに限らず、本項目に格納されるデータは、振動センサまたはクラウドサーバ2等が生データを加工することによって得られる加工データであってもよい。
【0077】
モデル構築部41は、管理対象である処理対象機器と、学習対象期間とが決定されると、条件に合うレコードを計測値DB201から抽出する。具体的には、モデル構築部41は、項目「機器」が上述の処理対象機器を指し、項目「日付」が上述の学習対象期間に含まれる計測値の群を計測値DB201から抽出する。モデル構築部41は、抽出した計測値群を機械学習に用いることにより、識別境界を決定し、判定モデル51を構築する。
【0078】
計測値判定部42は、管理対象である処理対象機器と、診断の対象である処理対象期間とが決定されると、条件に合うレコードを計測値DB201から抽出する。具体的には、計測値判定部42は、項目「機器」が上述の処理対象機器を指し、項目「日付」が上述の処理対象期間に含まれる計測値の群を計測値DB201から抽出する。計測値判定部42は、抽出した計測値の個々について、判定モデル51を参照して、それが正常値であるか異常値であるかを判定する。
【0079】
(判定モデル)
図4は、ある期間に計測された複数の計測値を、x、y、z要素ごとの2次元の座標系にプロットすることにより得られる2次元グラフである。図5は、ある期間に計測された複数の計測値を、3次元の座標系にプロットすることにより得られる3次元グラフである。モデル構築部41は、学習対象期間における生データを処理して、図4に示すような2次元グラフまたは図5に示すような3次元グラフを作成してもよい。このように判定モデル51を構築するための中間処理で作成された2次元グラフおよび3次元グラフは記憶部11に記憶され、制御部10の他の部材によって参照されてもよい。
【0080】
図4に示す2次元グラフのうち、上段のグラフは、最初沈澱池掻寄機112について、10月22日から10月29日までの期間に計測された計測値のうちx軸の要素値を時系列に配置したグラフである。中段のグラフは、同機器の同期間について、y軸の要素値を時系列に配置したグラフである。下段のグラフは、同機器の同期間について、z軸の要素値を時系列に配置したグラフである。
【0081】
一例として、モデル構築部41は、「10月29日」が処理対象期間として決定された場合には、この日より過去の直近7日間「10月22日~10月28日」を学習対象期間と決定してもよい。他の例では、モデル構築部41は、すでに、変化検知部45によって「異常あり」と判定されている単位期間を学習対象期間から除いてもよい。例えば、モデル構築部41は、「10月24日」と「10月26日」とを学習対象期間から除いてもよい。モデル構築部41は、除いた分、10月22日よりさらに過去の単位期間のうち、「異常あり」と判定されていない単位期間(例えば、10月20日および10月21日)を学習対象期間に含めてもよい。
【0082】
モデル構築部41は、決定した学習対象期間「10月22日~10月28日」において、最初沈澱池掻寄機112について計測された計測値を、計測値DB201から抽出し、抽出した各計測値を用いて判定モデル51を構築する。モデル構築部41は、One-Class SVM(Support Vector Machine)を採用し、例えば、図5に示すように、学習対象期間に計測された計測値群のうち所定割合の計測値が外れ値として分類されるような識別境界を決定する。判定モデル51としての識別境界は、図5に示す例では、2次元の領域のように見えるが、実際には、立体的形状として定義される。モデル構築部41は、決定した識別境界を、判定モデル51として記憶部11に記憶する。
【0083】
(判定結果情報)
図6は、判定結果情報52のデータ構造の一例を示す図である。判定結果情報とは、計測値判定部42によって判定された判定結果、つまり、異常値か正常値かを示すラベルが関連付けられた、処理対象期間の計測値の群である。本開示に対する理解を容易にするために、判定結果情報52を可視化すると、例えば、図6に示す3次元グラフのようになる。なお、判定結果情報52は、例えば、図3に示すような計測値のレコード1つ1つに、異常値か正常値かを示すフラグが関連付けられているものであってもよい。
【0084】
計測値判定部42は、処理対象期間「10月29日」に最初沈澱池掻寄機112について計測された計測値を計測値DB201から抽出する。計測値判定部42は、計測値の個々について、x、y、zの3つの要素値によって定まる3次元座標系における計測値の位置と、同じ3次元座標系において定義された判定モデル51としての識別境界の位置とを比較する。計測値判定部42は、計測値が、識別境界から外れる場合に、該計測値を異常値と判定し、識別境界内に収まっている場合に、該計測値を正常値と判定する。計測値判定部42は、異常値か正常値かの判定結果を示すラベルを計測値に関連付けて判定結果情報52として記憶する。例えば、計測値521は、識別境界から外れているため、計測値判定部42はこれを異常値と判定し、異常値を示すラベルを計測値521に関連付ける。例えば、計測値522は、識別境界内に含まれているため、計測値判定部42はこれを正常値と判定し、正常値を示すラベルを計測値522に関連付ける。
【0085】
図面を簡略化する目的で、図6には、計測値の点を14個しか示していないが、具体的には、最初沈澱池掻寄機センサ22が処理対象期間「10月29日」において計測した計測値は、144個ある。
【0086】
計測値判定部42が、抽出した「10月29日」のすべての計測値について、異常値か正常値かの判定を行い、判定結果のラベルを関連付けると、計測値ごとのラベルを含む判定結果情報52が記憶部11に記憶される。
【0087】
(処理結果テーブル)
図7は、処理結果テーブル50のデータ構造の一例を示す図である。図7には、処理対象期間1つ分、すなわち、水処理システム100の全機器の1日分の処理結果についてデータ構造を示す。処理結果テーブル50は、一例として、計測日、機器、センサID、指標値、変化事象有無、発生事象、および、緊急度の各項目を有する構成である。項目「指標値」は、記憶部11に記憶されている指標値53に対応し、項目「変化事象有無」、項目「発生事象」および項目「緊急度」は、記憶部11に記憶されている変化記録55に対応している。
【0088】
項目「計測日」は、処理対象期間を示す。項目「機器」は、処理対象機器の識別情報、例えば、機器名を示す。項目「センサID」は、振動センサの識別情報を示す。本実施形態では、機器1台につき設けられる振動センサは1つであるので、この場合には、項目「センサID」を省略してもよい。
【0089】
項目「指標値」は、指標値算出部43によって算出された指標値53を示す。指標値算出部43は、処理対象期間および処理対象機器ごとに算出した指標値を、項目「計測日」および項目「機器」に関連付けて、項目「指標値」のカラムに格納する。
【0090】
項目「変化事象有無」は、変化検知部45によって実行された状態異常の検知結果を示す。図示の例では、「あり」は、変化事象、すなわち、異常が検知されたことを示す。「なし」は、異常が検知されなかったことを示す。変化検知部45は、指標値53と閾値54とを比較した結果、変化事象が認められた場合には、「あり」を示す値を、項目「変化事象有無」のカラムに格納する。
【0091】
項目「発生事象」は、事象判定部46によって判定された変化事象の種類を示す。事象判定部46は、変化検知部45によって検知された変化事象が歯車の摩耗であると判定した場合、「歯車摩耗」を示す値を、項目「発生事象」のカラムに格納する。同様に、事象判定部46は、ボルトの緩みが生じていると判定した場合、「ボルト緩み」を示す値を、上述のカラムに格納する。また、事象判定部46は、軸受の破損が生じていると判定した場合、「軸受破損」を示す値を、上述のカラムに格納する。また、事象判定部46は、センサ自身に異常が生じていると判定した場合、「センサ異常」を示す値を、上述のカラムに格納する。
【0092】
項目「緊急度」は、緊急度判定部47によって判定された緊急度を示す。緊急度判定部47は、異常値と判定された異常値の集合のうち、危機的な異常の条件を満たす異常値の割合に基づく数値を、緊急度として、項目「緊急度」のカラムに格納してもよい。あるいは、緊急度判定部47は、上述の異常値の割合、および、事象判定部46によって判定された変化事象の種類の少なくともいずれかに基づいて決定された、緊急度のレベルに対応する言葉を、項目「緊急度」のカラムに格納してもよい。
【0093】
<指標算出処理>
図8は、情報処理装置1が実行する指標算出方法の処理の流れを示すフローチャートである。以下の一連の処理は、学習対象期間、または、処理対象期間におけるすべての計測値が取得された後、自動的に開始されてもよいし、ユーザの開始指示にしたがって開始されてもよい。なお、S101~S110の一連の処理は、管理対象物である機器ごとに行われる。本実施形態では、水処理システム100において機器が10台あるので、機器10台分について、S101~S110が繰り返される。
【0094】
ステップS101では、モデル構築部41は、学習対象期間に取得された計測値群を計測値DB201から抽出する。本実施形態では、管理対象物としての機器は10台あるので、機器ごとに10個の計測値群を取得する。
【0095】
ステップS102では、モデル構築部41は、機器ごとの計測値群を用いて、判定モデル51を構築する。本実施形態では、モデル構築部41は、One-Class SVMの識別境界を、判定モデル51として、機器ごとに決定する。
【0096】
なお、上述の学習フェーズ、具体的には、S101およびS102は、処理対象期間の計測値が出そろうよりも前に、前日の時点であらかじめ実行されていても構わない。S103以降の診断フェーズは、処理対象期間の計測値が出そろった後に実行される。
【0097】
ステップS103では、計測値判定部42は、処理対象期間に取得された計測値群を計測値DB201から抽出する。本実施形態では、機器ごとに10個の計測値群を取得する。
【0098】
ステップS104(指標値判定ステップ)では、計測値判定部42は、1つの機器についての計測値群において、同機器の判定モデル51を参照して、計測値ごとに、異常値か正常値かを判定する。計測値判定部42は、1つの機器についてすべての計測値について異常値か正常値かを判定した結果を判定結果情報52として記憶部11に記憶する。計測値判定部42は、機器ごとに10個の判定結果情報52を生成する。
【0099】
ステップS105(指標値算出ステップ)では、指標値算出部43は、判定結果情報52に基づいて、機器ごとに、処理対象期間における指標値53を算出する。具体的には、指標値算出部43は、1つの処理対象期間かつ1つの処理対象機器についての計測値の集合に対して、該集合内の異常値の数および正常値の数の少なくともいずれか1つに基づいて指標値53を算出する。指標値算出部43は、処理対象期間において、処理対象機器ごとに算出した指標値53を処理結果テーブル50に格納する。
【0100】
ステップS106では、変化検知部45は、機器ごとに、算出された指標値53を閾値54と比較して、各機器について、処理対象期間に変化事象があったか否かを判定する。例えば、変化検知部45は、指標値53が閾値54以上であれば、変化事象があったと判断し、S106のYESからS107へ処理を進める。一方、変化検知部45は、指標値53が閾値54未満であれば、変化事象がなかったと判断し、S106のNOからS108へ処理を進める。
【0101】
ステップS107では、変化検知部45は、変化事象「あり」と判断したことに基づいて、処理対象期間における処理対象機器の状態異常を検知する。変化検知部45は、変化事象「あり」を示す検知結果を、変化記録55として、処理結果テーブル50に格納する。S107で変化事象「あり」と判断された場合、必要に応じて、後述するS109およびS110が実行されてもよい。
【0102】
ステップS108では、変化検知部45は、変化事象「なし」と判断したことに基づいて、処理対象期間における処理対象機器の状態は正常であったと判断する。
【0103】
ステップS109では、事象判定部46は、変化事象「あり」と判断された機器についての計測値の集合に注目して、該集合内の正常値と異常値との3次元座標系における位置関係に基づいて変化事象を判定する。例えば、事象判定部46は、各異常値が正常値群から正と負いずれの方向にずれているのかに基づいて変化事象を判定してもよい。事象判定部46は、各異常値が正常値群からどのくらいの距離離れているのかに基づいて変化事象を判定してもよい。あるいは、事象判定部46は、方向と距離との両方に基づいて変化事象を判定してもよい。事象判定部46は、判定した変化事象の種類を、変化記録55として処理結果テーブル50に記憶する。
【0104】
ステップS110では、緊急度判定部47は、変化事象「あり」と判断された機器についての計測値の集合に注目して、該集合内の正常値と異常値との3次元座標系における位置関係に基づいて変化事象の緊急度を判定する。緊急度判定部47は、各異常値の正常値群に対するずれの方向、および、各異常値の正常値群との距離の少なくともいずれかに基づいて緊急度を判定してもよい。緊急度判定部47は、判定した緊急度を、変化記録55として処理結果テーブル50に記憶する。
【0105】
ステップS111では、情報提示部48は、処理結果テーブル50に格納された、指標値53、および、変化記録55を示すUI画面を生成して、表示部13に表示させる。変化記録55は、変化事象有無、発生した変化事象の種類、および、変化事象の緊急度を含む。情報提示部48は、指標値53および変化記録55を表示部13に表示させることに代えて、あるいは、加えて、指標値53および変化記録55を、ユーザが操作するユーザ端末装置宛てに送信してもよい。例えば、情報提示部48は、指標値53および変化記録55を含む電子メール等を、上述のユーザ端末装置に送信してもよい。
【0106】
<閾値変更処理>
図9は、情報処理装置1が実行する閾値変更処理の流れを示すフローチャートである。以下の一連の処理は、情報処理装置1が、任意のタイミングにおいて、閾値を変更することを指示するユーザ操作を受け付けたことに応じて開始される。
【0107】
ステップS201では、閾値変更部44は、任意のタイミングで、閾値を変更することを指示するユーザ操作を受け付ける。例えば、閾値変更部44は、情報提示部48が閾値54を変更するためのUI画面を表示部13に表示させた後、該UI画面を介して、閾値を変更することを指示するユーザ操作を受け付ける。閾値変更部44は、上述のユーザ操作を受け付けると、S201のYESからS202へ処理を進める。
【0108】
ステップS202では、閾値変更部44は、上述のユーザ操作にしたがって、記憶部11に記憶されている閾値54を変更し、一連の閾値変更処理が終了する。
【0109】
他の例では、閾値54が変更された後、情報処理装置1は、図8に示すS106に処理を戻して、変更後の閾値54に基づいてS106以降の処理を繰り返し実行してもよい。
【0110】
<作用効果>
上述の構成および方法によれば、処理対象期間における異常値の数および正常値の数の少なくとも何れかに基づいて管理対象物である機器の状態を示す指標値が算出される。したがって、正常値/異常値の判定結果をそのまま出力する場合と比べて、機器の状態をユーザに容易に認識させることができる。
【0111】
〔実施形態2〕
指標値算出部43は、指標値53の算出における各異常値の寄与度を当該異常値の各正常値からの乖離度に応じたものであるとして、指標値53を算出してもよい。すなわち、指標値算出部43は、異常値について、単に個数の多さだけでなく、異常値それぞれの異常の程度、例えば正常値との乖離度、を加味して指標値53を算出してもよい。
【0112】
一例として、指標値算出部43は、異常値の、One-Class SVMにおける識別境界までの最短距離に基づいて、異常値それぞれの重み係数(寄与度)を決定してもよい。
【0113】
具体例を挙げると以下のとおりである。処理対象機器Aについて、処理対象期間Aにおいて計測された計測値群からなる集合Aに注目する。集合Aの計測値総数は10個であるとする。10個の計測値のうち、計測値判定部42によって異常値と判定された計測値は4個であったとする。実施形態1に係る指標値算出部43によれば、集合Aの指標値53は、例えば、異常値の割合に基づいて、
指標値(異常度)=4/10=0.4
と算出され得る。
【0114】
一方、本実施形態では、指標値算出部43は、異常値と判定された計測値のそれぞれについて、乖離度として、識別境界との最短距離を特定する。指標値算出部43は、異常値の個数に対して最短距離に応じた重み係数を適用する。例えば、指標値算出部43は、4個の異常値のうち、識別境界と著しくかけ離れた異常値の個数(2個)に対して、重み係数1.5を適用してもよい。さらに、指標値算出部43は、識別境界とある程度離れた異常値の個数(1個)に対して、重み係数1.2を適用してもよい。さらに、指標値算出部43は、識別境界近隣に位置する異常値の個数(1個)に対して、重み係数0.8を適用してもよい。したがって、指標値算出部43は、集合Aの指標値53を、
指標値(異常度)=(1.5×2+1.2×1+0.8×1)/10=0.5
と算出してもよい。
【0115】
他の例では、指標値算出部43は、集合Aの正常値群の3次元座標系における重心座標を求めてもよい。そして、指標値算出部43は、異常値と判定された計測値のそれぞれについて、乖離度として、上述の重心座標との距離を特定する。指標値算出部43は、重心座標との距離に応じた重み係数を異常値の個数に適用する。上述の例と同様に、重心座標との距離が長い異常値ほど、大きい重み係数がその異常値の個数に適用され得る。
【0116】
さらに他の例では、指標値算出部43は、集合Aの異常値1個につき、各々の正常値との距離を求めて、これら距離の平均値である平均距離を、該異常値の乖離度としてもよい。指標値算出部43は、平均距離に応じた重み係数を異常値の個数に適用する。上述の例と同様に、平均距離が長い異常値ほど、大きい重み係数がその異常値の個数に適用され得る。
【0117】
上述の構成によれば、異常値の異常の程度が大きいほど、また、そのような異常値が多いほど、指標値(異常度)の値が高くなるように算出される。こうして、より実情に即した指標値53を算出することができる。
【0118】
〔実施形態3〕
指標値算出部43は、指標値53の算出における各異常値の寄与度を、正常値と異常値とを所定の座標系に配置したときの、各正常値に対する異常値の方向に応じたものであるとして、指標値53を算出してもよい。すなわち、指標値算出部43は、異常値について、単に個数の多さだけでなく、各異常値が正常範囲から外れている方向、例えば、正常範囲を超えて異常なのか、正常範囲を下回って異常なのか、を加味して指標値53を算出してもよい。
【0119】
(計測値の1要素に着目した場合)
本実施形態では、指標値算出部43は、計測値を構成するx、y、zの要素値のうちの1つの要素値に着目する。指標値算出部43は、異常値の要素値の、正常値群の要素値とのずれの方向に基づいて、異常値の個数に適用する重み係数を決定する。
【0120】
例えば、ある処理対象機器Bにおいて、危機的な異常が発生するときには、ある特定の軸の要素値が上限を超えて高くなる傾向にあるということが分かっているとする。この場合、指標値算出部43は、上述の要素値が正常範囲の上限を超えている異常値の個数に、より大きい重み係数を適用し、該要素値が正常範囲の下限を下回っている異常値の個数には、より小さい重み係数を適用する。
【0121】
具体例を挙げると以下のとおりである。処理対象機器Bについて、処理対象期間Bにおいて計測された計測値群からなる集合Bに注目する。集合Bの計測値総数は10個であるとする。10個の計測値のうち、計測値判定部42によって異常値と判定された計測値は3個であったとする。各異常値の要素値(例えば、x値)は、それぞれ、1.2、-1.8、2.0であったとする。そして、正常値のx値についての下限は-1.0、上限は1.0であったとする。
【0122】
指標値算出部43は、正常値の上限1.0を超える異常値の個数には、より大きい重み係数1.5を適用し、正常値の下限-1.0を下回る異常値の個数には、より小さい重み係数1.0を適用してもよい。
【0123】
上述の具体例では、指標値算出部43は、集合Bの指標値53を、
指標値(異常度)=(1.5×2+1.0×1)/10=0.4
と算出することができる。
【0124】
(計測値の3要素に着目した場合)
指標値算出部43は、計測値の3つの要素に着目して、異常値の正常値群とのずれの方向に基づいて重み係数を決定してもよい。図10は、集合Bの各計測値がプロットされる3次元座標系を示す図である。図10を参照して、指標値算出部43が、重み係数を考慮して指標値53を算出する手順を説明する。
【0125】
本実施形態では、一例として、x、y、zの軸ごとに、3次元座標系を複数の空間に仕切るための閾値が予め設定されている。この閾値は、異常値がどの空間に属するのかを分類するために使用される閾値である。以下では、この閾値を、分類閾値と称し、変化事象の有無を判定するときに用いられる閾値54と区別する。
【0126】
図10に示す分類閾値THxは、3次元座標系をx軸方向に2分する分類閾値である。以下では、分類閾値THx未満の空間を「左」の空間、分類閾値THx以上の空間を「右」の空間と称する。分類閾値THyは、3次元座標系をy軸方向に2分する分類閾値である。以下では、分類閾値THy未満の空間を「奥」の空間、分類閾値THy以上の空間を「手前」の空間と称する。分類閾値THzは、3次元座標系をz軸方向に2分する分類閾値である。以下では、分類閾値THz未満の空間を「下段」の空間、分類閾値THz以上の空間を「上段」の空間と称する。
【0127】
以上のとおり、3つの分類閾値が定められることにより、3次元座標系は、
(1)下段左奥の第1空間(X<THx かつ Y<THy かつ Z<Thx)、
(2)下段右奥の第2空間(X≧THx かつ Y<THy かつ Z<Thx)、
(3)下段左手前の第3空間(X<THx かつ Y≧THy かつ Z<Thx)、
(4)下段右手前の第4空間(X≧THx かつ Y≧THy かつ Z<Thx)、
(5)上段左奥の第5空間(X<THx かつ Y<THy かつ Z≧Thx)、
(6)上段右奥の第6空間(X≧THx かつ Y<THy かつ Z≧Thx)、
(7)上段左手前の第7空間(X<THx かつ Y≧THy かつ Z≧Thx)、
(8)上段右手前の第8空間(X≧THx かつ Y≧THy かつ Z≧Thx)、
の8個の空間に仕切られる。
【0128】
一例として、第1空間には、重み係数1.3、第2空間には、重み係数1.2、第3空間には、重み係数1.1、第4空間には、重み係数1.0、第5空間には、重み係数1.2、第6空間には、重み係数1.0、第7空間には、重み係数1.0、そして、第8空間には、重み係数0.8が定義されているものとする。
【0129】
なお、分類閾値および空間ごとの重み係数は、機器が異常であるときに観測される計測値の傾向などを考慮して適宜定められているものとする。
【0130】
具体例を挙げると以下のとおりである。集合Bにおいて総数10個の計測値群のうち、計測値判定部42によって異常値と判定された計測値は4個であったとする。この4個の異常値のそれぞれが有するx、y、zの要素値に基づいて、4個の異常値を3次元座標系にプロットすると、第1空間に1個、第2空間に2個、第4空間に1個の異常値が配置されたとする。
【0131】
上述の具体例では、指標値算出部43は、集合Bの指標値53を、
指標値(異常度)=(1.3×1+1.2×2+1.0×1)/10=0.47
と算出することができる。
【0132】
別の方法として、指標値算出部43は、異常値を構成するx、y、zの3つの要素値について、異常な要素値の数と、正常値群とのずれの方向を加味して決定された重み係数とに基づいて、指標値53の元になる総合値を算出してもよい。そして、指標値算出部43は、総合値を要素値の数である3で割ることにより、最終的に、指標値53を算出してもよい。
【0133】
具体例を挙げると以下のとおりである。集合Bにおいて総数10個の計測値群のうち、計測値判定部42によって異常値と判定された計測値が1個あったとする。この1個の異常値の、各要素値は、(x,y,z)=(1.0,0.5,-1.0)であるとする。
【0134】
そして、重み係数は、各要素値のずれの方向に応じて、xの値が1以上の場合、重み係数は1.2、xの値が1未満の場合、重み係数は1.0、yの値が1以上の場合、重み係数は0.8、yの値が1未満の場合、重み係数は1.3、zの値が1以上の場合、重み係数は1.1、zの値が1未満の場合、重み係数は0.8、と定義されているものとする。
【0135】
上述の具体例では、指標値算出部43は、集合Bの指標値53を、
指標値(異常度)=(1.2/3+1.3/3+0.8/3)/10=0.11
と算出することができる。
【0136】
〔変形例〕
(学習対象期間の選定)
実施形態1で示した例のように、学習対象期間としての上述の「直前の所定期間」は、処理対象期間と同じ長さに区切られた単位期間を複数含んでいる。実施形態1の具体例では、処理対象期間は、単位期間1日であって、学習対象期間は、7日間、つまり、単位期間7個分に相当する。
【0137】
指標値算出部43は、単位期間ごとに日々指標値を算出することができる。つまり、学習対象期間に含まれている過去の単位期間それぞれについて、既に指標値が算出されていてもよい。また、過去の単位期間それぞれについて、既に変化事象の有無が判定されていてもよい。
【0138】
そこで、モデル構築部41は、直前の所定期間に含まれる複数の単位期間のうち、単位期間における機器の状態が正常であることを示す指標値が算出された各単位期間において計測された複数の計測値を用いて、判定モデル51を構築してもよい。つまり、モデル構築部41は、異常度が高く異常が検知された日を学習対象期間から除いて、異常度が低く異常なしと判定された日の計測値群を判定モデル51の構築に用いてもよい。
【0139】
これにより、正常値と判定されるための基準がより厳しい判定モデル51が構築される。このような判定モデル51を用いて、処理対象期間における各計測値の正常/異常の判定が行われるので、処理対象期間における機器の普段と異なる些細な変化も精度よく捉えることができる。
【0140】
(水処理システムの構成例)
上述の各実施形態で説明した水処理システム100の装置構成は一例であり、様々な装置構成により同様の機能を有する水処理システムを構築することができる。そして、上述の各実施形態で説明した各処理の実行主体も一例に過ぎない。上述の各処理は、水処理システムを構成する各装置に適宜割り当てればよい。
【0141】
例えば、情報処理装置1のモデル構築部41が実行する学習フェーズは、計測値DB201を備えるクラウドサーバ2、または、計測値DB201にアクセス可能な情報処理装置1とは別の装置が行うようにしてもよい。
【0142】
あるいは、情報処理装置1の変化検知部45、事象判定部46および緊急度判定部47のすべてまたは一部は、情報処理装置1の記憶部11にアクセス可能な情報処理装置1とは別の装置、例えば、ユーザが操作するユーザ端末装置が備えていてもよい。
【0143】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1(特に制御部10に含まれる各部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0144】
後者の場合、情報処理装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0145】
〔付記事項〕
本開示の情報処理装置1は、任意の期間(処理対象期間)に計測された、管理対象物(機器)の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する計測値判定部42と、前記期間における前記異常値の数および前記正常値の数の少なくとも何れか(判定結果情報52)に基づいて、前記期間における前記管理対象物の状態を示す指標値53を算出する指標値算出部43と、を備える。
【0146】
上述の構成によれば、任意の期間における異常値の数および正常値の数の少なくとも何れかに基づいて管理対象物の状態を示す指標値を算出する。したがって、正常値/異常値の判定結果をそのまま出力する場合と比べて、管理対象物の状態をユーザに容易に認識させることができる。
【0147】
上述の情報処理装置1において、前記計測値判定部は、前記期間とは異なる期間に前記管理対象物について計測された複数の計測値を用いた教師なし学習により構築された判定モデル51(識別境界)を用いて前記判定を行ってもよい。
【0148】
上述の構成によれば、計測値の実際の変動の態様に応じた妥当な判定を行うことができる。
【0149】
上述の情報処理装置1は、さらに、前記判定モデルを構築するモデル構築部41を備え、前記モデル構築部は、前記指標値を算出する処理の対象となる処理対象期間の直前の所定期間(学習対象期間)において計測された複数の計測値を用いて前記判定モデルを構築してもよい。
【0150】
上述の構成によれば、計測値の実際の変動の態様に応じた妥当な判定を行うことができる。具体的には、処理対象期間より過去の直近の期間における状態と比較して変化したことを適切に捉えることができる。
【0151】
上述の情報処理装置1において、前記直前の所定期間は、前記処理対象期間と同じ長さに区切られた単位期間を複数含んでおり、前記指標値算出部は、前記単位期間ごとに指標値を算出するものであり、前記モデル構築部は、前記直前の所定期間に含まれる複数の単位期間のうち、前記単位期間における管理対象物の状態が正常であることを示す指標値が算出された各単位期間において計測された複数の計測値を用いて、前記判定モデルを構築してもよい。
【0152】
上述の構成によれば、正常値と判定されるための基準がより厳しい判定モデルが構築される。このような判定モデルを用いて、各計測値の異常値か正常値かの判定が行われるので、処理対象期間より過去の直近の期間における状態と比較して変化したことをより精度よく捉えることができる。
【0153】
上述の情報処理装置1は、さらに、前記指標値と所定の閾値54とを比較することにより前記管理対象物の状態異常を検知する異常検知部(変化検知部45)と、ユーザの入力操作に応じて前記閾値を変更する閾値変更部44と、を備えていてもよい。
【0154】
上述の構成によれば、管理対象物の状態異常を自動で検知することができる。また、異常検知の基準となる閾値をユーザの入力操作に応じて変更するので、計測値が正常値であるか異常値であるかを判定するためのアルゴリズムについて高度な知識を有していないユーザであっても、異常検知の基準を容易に調整することができる。
【0155】
上述の情報処理装置1において、前記指標値算出部は、前記指標値の算出における各異常値の寄与度(個数に適用する重み係数)を、当該異常値の各正常値からの乖離度に応じたものとして前記指標値を算出してもよい。
【0156】
上述の構成によれば、指標値の算出における各異常値の寄与度を乖離度に応じたものとして指標値を算出するので、乖離度を考慮した指標値を算出することができる。例えば、指標値の大きさが管理対象物の異常度を示す場合、乖離度の大きい異常値ほど寄与度を大きくしてもよい。これにより、乖離度を考慮した妥当な値の指標値を算出することができる。なお、一例として、指標値が異常値の個数に基づき算出される以上である場合には、寄与度は、例えば、異常値の個数に適用する重み係数として実現される。
【0157】
上述の情報処理装置1において、前記指標値算出部は、前記指標値の算出における各異常値の寄与度を、前記正常値と前記異常値とを所定の座標系に配置したときの、各正常値に対する前記異常値の方向に応じたものとして前記指標値を算出してもよい。
【0158】
上述の構成によれば、所定の座標系において、異常値が各正常値に対して何れの方向に位置するかを考慮した指標値を算出することができる。例えば、正常範囲の上限を超える異常値(乖離方向が正の異常値)と、正常範囲の下限を下回る異常値(乖離方向が負の異常値)のうち、前者の寄与度を重くしてもよい。これにより、正常範囲の上限を超える異常値が計測されるという特徴のある異常を早期に検知することが可能になる。
【0159】
上述の情報処理装置1は、さらに、前記正常値と前記異常値とを所定の座標系に配置したときの各正常値に対する前記異常値の方向、および前記異常値の各正常値からの距離の少なくとも何れかに応じて前記管理対象物に生じた事象を判定する事象判定部46を備えていてもよい。
【0160】
管理対象物に故障や動作不良等の何らかの変化事象が生じた場合、その変化事象の影響が、所定の座標系において特徴として表れることがある。例えば、上述の影響は、所定の座標系において、異常値が各正常値に対して何れの方向に位置するか、あるいは、異常値が各正常値からどの程度離れているか、などの特徴として表れ得る。よって、上述の構成によれば、そのような特徴に着目することにより、管理対象物に生じた変化事象を自動で判定することができる。
【0161】
上述の情報処理装置1は、さらに、前記正常値と前記異常値とを所定の座標系に配置したときの各正常値に対する前記異常値の方向、および前記異常値の各正常値からの距離の少なくとも何れかに応じて緊急度を判定する緊急度判定部47を備えていてもよい。
【0162】
管理対象物の状態に異常が検知されたケースにおいて、緊急に措置が必要なケースもあれば、それほど措置を急ぐ必要がないケースもある。そして、上述のような緊急性の違いは、所定の座標系において、特徴として表れることがある。例えば、上述の違いは、異常値が各正常値に対して何れの方向に位置するか、あるいはどの程度離れているか、などの特徴として表れ得る。よって、上述の構成によれば、そのような特徴に着目することにより、妥当な緊急度を自動で判定することができる。
【0163】
本開示の水処理システム100は、原動機による駆動機構を備えた複数の機器(111~120)により汚水を浄化する水処理システムであって、前記機器のそれぞれに設けられたセンサ(21~30)と、上述のいずれかの情報処理装置1と、を含み、前記情報処理装置は、前記センサによって計測した計測値を取得し、取得した当該計測値を用いて複数の前記機器のそれぞれについて、当該機器の状態を示す指標値53を算出する。
【0164】
上述の構成によれば、水処理システムに含まれる複数の機器の状態を、指標値によってユーザに容易に認識させることができる。よって、手作業で各機器の定期検査を行っていた従来技術と比べて、水処理システムの維持管理の省力化が可能になる。その上、継続的に取得されている計測値群の分析を継続的に実施することにより、手作業では困難な機器の状態監視を継続的に行うことも可能になる。
【0165】
本開示の指標値算出方法は、1または複数の情報処理装置が実行する指標値算出方法であって、任意の期間に計測された、管理対象物の状態に関する複数の計測値のそれぞれについて、当該計測値が正常値であるか異常値であるかを判定する計測値判定ステップ(S104)と、前記期間における前記異常値の数および前記正常値の数の少なくとも何れかに基づいて、前記期間における前記管理対象物の状態を示す指標値を算出する指標値算出ステップ(S105)と、を含む。上述の方法によれば、上述の情報処理装置1と同様の効果を奏する。
【0166】
本開示の指標値算出プログラムは、情報処理装置1としてコンピュータを機能させるための指標値算出プログラムであって、前記計測値判定部42および前記指標値算出部43としてコンピュータを機能させるための指標値算出プログラムである。
【0167】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0168】
1 情報処理装置、2 クラウドサーバ、3 無線親機、10 制御部、21 ポンプセンサ(センサ)、22 最初沈澱池掻寄機センサ(センサ)、23 ブロワセンサ(センサ)、24 撹拌機センサ(センサ)、25 最終沈澱池掻寄機センサ(センサ)、26 凝集沈澱池掻寄機センサ(センサ)、27 濃縮槽掻寄機センサ(センサ)、28 脱水機センサ(センサ)、29 水処理室ファンセンサ(センサ)、30 ホッパ室ファンセンサ(センサ)、41 モデル構築部、42 計測値判定部、43 指標値算出部、44 閾値変更部、45 変化検知部(異常検知部)、46 事象判定部、47 緊急度判定部、48 情報提示部、50 処理結果テーブル、51 判定モデル、52 判定結果情報、53 指標値、54 閾値、55 変化記録、100 水処理システム、111 ポンプ(管理対象物、機器)、112 最初沈澱池掻寄機(管理対象物、機器)、113 曝気ブロワ(管理対象物、機器)、114 撹拌機(管理対象物、機器)、115 最終沈澱池掻寄機(管理対象物、機器)、116 凝集沈澱池掻寄機(管理対象物、機器)、117 汚泥濃縮槽掻寄機(管理対象物、機器)、118 汚泥脱水機(管理対象物、機器)、119 水処理室ファン(管理対象物、機器)、120 ホッパ室ファン(管理対象物、機器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10