(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】植物におけるゲノム編集
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20240917BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240917BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20240917BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20240917BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240917BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20240917BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20240917BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20240917BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240917BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20240917BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240917BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20240917BHJP
C12N 15/82 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
C12N15/87 Z ZNA
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/52 Z
C12N15/54
C12N15/55
C12N15/90 100Z
A01H1/00 A
A01H5/00 A
C12Q1/02
C12N9/00
C12N9/10
C12N9/22
C12N15/82 Z
(21)【出願番号】P 2020564830
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 US2019033976
(87)【国際公開番号】W WO2019227023
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-20
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユーロン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】アニー・サルタリコス
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ダフ
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0073035(US,A1)
【文献】国際公開第2018/085693(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/87
C12N 15/09
C12N 15/52
C12N 15/54
C12N 15/55
C12N 15/90
A01H 1/00
A01H 5/00
C12Q 1/02
C12N 9/00
C12N 9/10
C12N 9/22
C12N 15/82
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物のゲノムを編集する方法であって、
a)
乾燥成熟植物種子から胚を切除し、それにより乾燥切除成熟植物胚外植片を生成する工程と、
b)ガイドRNAを含むリボ核タンパク質に含まれる部位特異的ヌクレアー
ゼでコーティングされた粒子を
前記乾燥切除成熟植物胚外植片に送達する
工程と、
c)胚形成カルスまたはカルス培養物を形成せずに前記
乾燥切除成熟植物胚外植片から植物を再生する
工程と
を含み、前記再生された植物は、前記再生された植物の少なくとも1つの細胞
のゲノムにおける前記部位特異的ヌクレアーゼの標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含
む、前記方法。
【請求項2】
前記粒子がタングステン粒子、白金粒子または金粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子が0.5μm~1.5μmの間のサイズを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子が0.6μm、0.7μm、または1.3μmのサイズを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記部位特異的ヌクレアーゼでコーティングされた複数の粒子が前記
乾燥切除成熟植物胚外植片に送達される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記
乾燥切除成熟植物胚外植片に送達される粒子の量が50μg~5000μgの間、または50μg~2000μgの間、または50μg~1000μgの間、または50μg~500μgの間、または100μg~500μgの間である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、
d)前記部位特異的ヌクレアーゼの標的部位にてまたはその近傍で前記編集または部位特異的組込みを含む少なくとも1つの細胞を有する再生された植物を同定する
工程
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記同定する工程が、表現型または形質に基づいて前記編集または部位特異的組込みを有する再生された植物を同定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記同定することが、分子アッセイに基づいて前記編集または部位特異的組込みを有する再生された植物を同定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記リボ核タンパク質が、1:8、または1:6、または1:4、または1:2、または1:1、または2:1、または4:1、または6:1、または8:1の部位特異的ヌクレアーゼタンパク質のガイドRNAに対する比を有する、請求項
1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記部位特異的ヌクレアーゼがCas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Csn1、Csx12、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、CasX、CasY、CasZもしくはアルゴノートタンパク質、またはそのホモログもしくは修飾型である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記部位特異的ヌクレアーゼがCas9タンパク質である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記Cas9タンパク質がStreptococcus pyogenes由来である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記部位特異的ヌクレアーゼがCpf1タンパク質である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記部位特異的ヌクレアーゼがRNA誘導型ヌクレアーゼではない、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記部位特異的ヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、または転写活性化因子様のエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子がさらにポリヌクレオチド分子でコーティングされる、請求項1~
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチド分子がドナーテンプレートである、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記ドナーテンプレートが、テンプレート媒介修復を介して前記部位特異的ヌクレアーゼの標的部位にてまたはその近傍で前記植物のゲノムに変異を導入するための前記変異を含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記ドナーテンプレートが、挿入配列と、前記部位特異的ヌクレアーゼの標的部位にてまたはその近傍で前記植物のゲノムに前記挿入配列を組み込むための少なくとも1つの相同配列とを含む、請求項
18または
19に記載の方法。
【請求項21】
前記挿入配列が、植物で発現可能なプロモーターに作動可能に連結されたコード配列または転写可能なDNA配列を含む導入遺伝子を含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記導入遺伝子が
、対象とする遺伝子を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記導入遺伝子が
、タンパク質のコード配列を含む、請求項
21または
22に記載の方法。
【請求項24】
前記導入遺伝子が、非コードRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項25】
前記導入遺伝子がマーカー遺伝子を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチド分子がマーカー遺伝子を含む、請求項
17~
24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記マーカー遺伝子が
、選択可能なマーカー遺伝子である、請求項
25または
26に記載の方法。
【請求項28】
前記選択可能なマーカー遺伝子が、アデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)遺伝子、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt、hphまたはaphIV)、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)遺伝子、またはビアラホス耐性(bar)またはホスフィノスリシンN-アセチルトランスフェラーゼ(pat)遺伝子を含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記選択可能なマーカー遺伝子がアデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子を含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項30】
前記マーカー遺伝子が
、スクリーニング可能なマーカー遺伝子である、請求項
25または
26に記載の方法。
【請求項31】
前記スクリーニング可能なマーカー遺伝子が緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子またはβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を含む、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチド分子が
、ドナーテンプレート領域と
、コード配列または転写可能なDNA配列を含む導入遺伝子とを含み、前記導入遺伝子が前記ドナーテンプレート領域の外側に位置する、請求項
17または
26~
31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
さらに、
e)マーカー遺伝子を有する再生された植物を選択する
工程
を含み、前記マーカー遺伝子が前記部位特異的ヌクレアー
ゼと同時送達される、請求項1~
32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記マーカー遺伝子が
、選択可能なマーカー遺伝子である、請求項
33に記載の方法。
【請求項35】
前記選択する工程が、前記成熟胚外植片、またはそこから再生された苗条及び/または根の培養物または植物を選択剤で処理することを含む、請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
前記選択可能なマーカー遺伝子がアデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子である、請求項
34に記載の方法。
【請求項37】
前記植物が双子葉植物である、請求項1~
36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記植物がダイズ植物である、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
前記成熟胚外植片が、前記送達工程に先立って、以下:(i
)導入遺伝子またはマーカー遺伝子を含むポリヌクレオチド、(
ii)非コードRNA分子またはガイドRNAをコードする導入遺伝子を含むポリヌクレオチド、及び/または(
iii)ドナーテンプレートの1以上を含む、請求項1~
38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記成熟胚外植片が、3%~25%の範囲内の含水率を有する、請求項1~
39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記成熟胚外植片が、3%~25%の範囲内での含水率を有する植物種子から切除される、請求項1~
40のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月24日に出願された米国仮出願第62/676,161号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の援用
Microsoft Windowsの操作システムで測定すると3キロバイトであり、2019年5月22日に作成された「MONS423WO_ST25.txt」と名付けられたファイルに含まれている配列表は、電子申請によって本明細書と共に提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、部位特異的ヌクレアーゼでコーティングされたマイクロプロジェクタイル粒子による植物におけるゲノム編集のための組成物、及びそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
正確なゲノム編集技術は、遺伝子の発現と機能を操作するための強力なツールであり、農業を改善する可能性があると期待されている。当該技術分野では、植物のゲノムを効果的且つ効率的に編集するために使用できる新規の組成物及び方法の開発が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態は、部位特異的ヌクレアーゼでコーティングされたまたはそれを適用された粒子を成熟植物胚外植片に送達すること、及び成熟植物胚外植片から植物を再生することを含む植物細胞のゲノムを編集する方法に関するものであり、その際、再生された植物は、再生された植物の少なくとも1つの細胞のゲノムにおける部位特異的ヌクレアーゼの標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む。特定の実施形態では、粒子はタングステン、白金または金の粒子である。特定の実施形態では、粒子は約0.5μm~約1.5μmの間のサイズを有する。さらなる実施形態では、粒子は、約0.6μm、約0.7μm、または約1.3μmのサイズを有する。追加の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼでコーティングされたまたはそれを適用された複数の粒子が外植片に送達される。種々の実施形態では、外植片に送達される粒子の量は、約50μg~約5000μgの間、または約50μg~約5000μgの間、または約50μg~約2000μgの間、または約50μg~約1000μgの間、または約50μg~約500μgの間、または約100μg~約500μgの間である。
【0006】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、部位特異的ヌクレアーゼの標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む少なくとも1つの細胞を有する再生された植物を同定することを含む。特定の実施形態では、同定する工程は、表現型または形質に基づいて編集または部位特異的組込みを有する再生された植物を同定することを含む。他の実施形態では、同定する工程は、分子アッセイに基づいて編集または部位特異的組込みを有する再生された植物を同定することを含む。
【0007】
特定の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼはリボ核タンパク質である。いくつかの実施形態では、リボ核タンパク質はガイドRNAを含む。追加の実施形態では、リボ核タンパク質は、約1:8または約1:6、または約1:4、または約1:2、または約1:1、または約2:1、または約4:1、または約6:1、または約8:1の部位特異的ヌクレアーゼタンパク質のガイドRNAに対する比を有する。種々の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼは、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Csn1、Csx12、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1(Cas12aとしても知られる)、CasX、CasY、CasZ、もしくはアルゴノートタンパク質、またはそれらのホモログもしくは修飾型である。特定の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼはCas9タンパク質である。さらなる実施形態では、Cas9タンパク質はStreptococcus pyogenesに由来する。他の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼはCpf1タンパク質である。さらに他の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼは核酸誘導型ヌクレアーゼではない。さらに他の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、または転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。
【0008】
いくつかの実施形態は、ガイド核酸またはガイド核酸をコードする核酸でコーティングされたまたはそれを適用された粒子を成熟植物胚外植片に送達することと、成熟植物胚外植片から植物を再生することとを含む、植物のゲノムを編集する方法に関するものであり、その際、成熟植物胚外植片はCRISPR関連タンパク質を発現し、再生された植物は再生された植物の少なくとも1つの細胞のゲノムにおけるCRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む。いくつかの態様において、CRISPR関連タンパク質は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Csn1、Csx12、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1(Cas12aとしても知られる)、CasX、CasY、及びCasZから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、粒子はタングステン、白金または金の粒子である。いくつかの実施形態では、方法はさらに、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む少なくとも1つの細胞を有する再生された植物を同定することを含む。いくつかの実施形態では、方法はドナーテンプレートを成熟植物胚に送達することを含む。いくつかの実施形態では、ドナーテンプレートは、挿入配列と、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で植物のゲノムに挿入配列を組み込むための少なくとも1つの相同配列とを含む。いくつかの実施形態では、ドナーテンプレートはCRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体のための標的部位を含む。いくつかの実施形態では、方法は選択可能なマーカー遺伝子を成熟植物胚に送達することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態は、CRISPR関連タンパク質またはCRISPR関連タンパク質をコードする核酸でコーティングされたまたはそれを適用された粒子を成熟植物胚外植片に送達することと、成熟植物胚外植片から植物を再生することとを含む、植物のゲノムを編集する方法に関するものであり、その際、成熟植物胚外植片はガイド核酸を発現し、再生された植物は再生された植物の少なくとも1つの細胞のゲノムにおけるCRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質はCas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Csn1、Csx12、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1(Cas12aとしても知られる)、CasX、CasY、及びCasZから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、粒子は、タングステン、白金または金の粒子である。いくつかの実施形態では、方法はさらに、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む少なくとも1つの細胞を有する再生された植物を同定することを含む。いくつかの実施形態では、方法はドナーテンプレートを成熟植物胚に送達することを含む。いくつかの実施形態では、ドナーテンプレートは、挿入配列と、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で植物のゲノムに挿入配列を組み込むための少なくとも1つの相同配列とを含む。いくつかの実施形態では、ドナーテンプレートはCRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体のための標的部位を含む。いくつかの実施形態では、方法は選択可能なマーカー遺伝子を成熟植物胚に送達することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態は、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体またはCRISPR関連タンパク質とガイド核酸とをコードする1以上の核酸でコーティングされたまたはそれを適用された粒子を成熟植物胚外植片に送達することと、成熟植物胚外植片から植物を再生することとを含む、植物のゲノムを編集する方法に関するものであり、その際、再生された植物は再生された植物の少なくとも1つの細胞のゲノムにおけるCRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む。いくつか実施形態では、CRISPR関連タンパク質はCas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Csn1、Csx12、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1(Cas12aとしても知られる)、CasX、CasY、及びCasZから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、粒子はタングステン、白金または金の粒子である。いくつかの実施形態では、方法はさらに、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む少なくとも1つの細胞を有する再生された植物を同定することを含む。いくつかの実施形態では、方法はドナーテンプレートを成熟植物胚に送達することを含む。いくつかの実施形態では、ドナーテンプレートは、挿入配列と、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で植物のゲノムに挿入配列を組み込むための少なくとも1つの相同配列とを含む。いくつかの実施形態では、ドナーテンプレートはCRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体のための標的部位を含む。いくつかの実施形態では、方法は選択可能なマーカー遺伝子を成熟植物胚に送達することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態は、ゲノム編集試薬またはゲノム編集試薬をコードする1以上の核酸でコーティングされたまたはそれを適用された粒子を成熟植物胚外植片に送達することと、成熟植物胚外植片から植物を再生することとを含む、植物のゲノムを編集する方法に関するものであり、その際、再生された植物は再生された植物の少なくとも1つの細胞のゲノムにおけるゲノム編集試薬の標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬はCRISPR関連タンパク質である。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Csn1、Csx12、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1(Cas12aとしても知られる)、CasX、CasY、及びCasZから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬はガイド核酸である。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬は、CRISPR関連タンパク質及びガイドRNAを含むリボ核タンパク質(RNP)である。いくつかの実施形態では、これは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、または転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。いくつかの実施形態では、粒子はタングステン、白金または金の粒子である。いくつかの実施形態では、方法はさらに、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で編集または部位特異的組込みを含む少なくとも1つの細胞を有する再生された植物を同定することを含む。いくつかの実施形態では、方法はドナーテンプレートを成熟植物胚に送達することを含む。いくつかの実施形態では、ドナーテンプレートは、挿入配列と、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体の標的部位にてまたはその近傍で植物のゲノムに挿入配列を組み込むための少なくとも1つの相同配列とを含む。いくつかの実施形態では、ドナーテンプレートはCRISPR関連タンパク質/ガイド核酸複合体のための標的部位を含む。いくつかの実施形態では、方法は選択可能なマーカー遺伝子を成熟植物胚に送達することを含む。
【0012】
追加の実施形態では、粒子はポリヌクレオチド分子でさらにコーティングされるまたはそれを適用される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド分子はドナーテンプレートである。特定の実施形態では、ドナーテンプレートは、テンプレート媒介修復を介して部位特異的ヌクレアーゼの標的部位にてまたはその近傍で植物のゲノムに変異を導入するための変異を含む。他の実施形態では、ドナーテンプレートは、挿入配列と、部位特異的ヌクレアーゼの標的部位にてまたはその近傍で植物のゲノムに挿入配列を組み込むための少なくとも1つの相同配列とを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、挿入配列は、植物で発現可能なプロモーターに作動可能に連結されたコード配列または転写可能なDNA配列を含む導入遺伝子を含む。特定の実施形態では、導入遺伝子は対象とする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子はタンパク質コード配列を含む。他の実施形態では、導入遺伝子は非コードRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む。さらに他の実施形態では、導入遺伝子はマーカー遺伝子を含む。さらに他の実施形態では、ポリヌクレオチド分子はマーカー遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子は選択可能なマーカー遺伝子である。種々の実施形態では、選択可能なマーカー遺伝子は、アデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)遺伝子、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt、hphまたはaphIV)、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)遺伝子、またはビアラホス耐性(bar)またはホスフィノスリシンN-アセチルトランスフェラーゼ(pat)遺伝子を含む。特定の実施形態では、選択可能なマーカー遺伝子は、アデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子を含む。代替の実施形態では、マーカー遺伝子はスクリーニング可能なマーカー遺伝子である。種々の実施形態では、スクリーニング可能なマーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子またはβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド分子は、ドナーテンプレート領域と、コード配列または転写可能なDNA配列を含む導入遺伝子とを含み、導入遺伝子はドナーテンプレート領域の外側に位置する。
【0014】
追加の実施形態では、方法はさらに、マーカー遺伝子を有する再生された植物を選択することを含み、マーカー遺伝子は部位特異的ヌクレアーゼと同時送達される。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子は選択可能なマーカー遺伝子である。特定の実施形態では、選択する工程は、成熟胚外植片、またはそれに由来する苗条及び/または根の培養物または再生された植物を選択剤で処理することを含む。特定の実施形態では、選択可能なマーカー遺伝子はアデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子である。
【0015】
特定の実施形態では、植物は双子葉植物である。いくつかの実施形態では、植物はダイズ植物である。他の実施形態では、植物は単子葉植物である。さらなる実施形態では、成熟胚外植片は、送達する工程に先立って、以下:(i)ガイド核酸、(ii)導入遺伝子またはマーカー遺伝子を含むポリヌクレオチド、(iii)非コードRNA分子またはガイド核酸をコードする導入遺伝子を含むポリヌクレオチド及び/または(iv)ドナーテンプレートのうちの1以上を含む。いくつかの実施形態では、成熟胚外植片は乾燥切除された外植片である。他の実施形態では、成熟胚外植片は、湿式、乾式湿式または湿式の切除胚外植片である。さらに他の実施形態では、成熟胚外植片は約3%~約25%の範囲内の含水率を有する。さらに他の実施形態では、成熟胚外植片は約3%~約25%の範囲内の含水率を有する植物種子から切除される。
【0016】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、且つ本開示のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本開示は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1以上を参照することによって、さらに良好に理解されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】様々な量のコーティングされた金粒子またはタングステン粒子によるGUSタンパク質の送達後の染色結果を示す図である。
【
図2】様々なサイズのコーティングされたタングステン粒子によるGUSタンパク質の送達後の染色結果を示す図である。
【
図3】示されるsgRNA(標識されたcrRNA)及びFLAプライマーの標的または結合部位を伴った、第11及び第18染色体でのダイズの2つのPDS遺伝子座の対応する配列部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ゲノム編集技術を用いた遺伝子機能の解析及び作物の改良は農業の改良に極めて有望である。しかしながら、ゲノム編集のツール及び試薬は通常、DNAの形形態で培養可能な植物細胞に送達される。ゲノム編集のツール及び試薬で形質転換されている植物の細胞及び組織は、その再生能力で制限される可能性があり、多くの植物生殖質はこれらの培養方法に適さない可能性がる。実際、多くの作物植物や栽培品種は、カルス組織、浮遊培養、またはプロトプラストを効果的に形成することができない。したがって、既存のゲノム編集法は、外植片の種類及び培養要件に応じて、種及び遺伝子型に依存してもよく、多くの場合、農学的に重要な作物の商業的ではない遺伝資源や栽培品種に限定され、望ましい遺伝的背景にゲノム編集または部位特異的組込みを遺伝子移入するには、それはさらに多くの優れたドナー株との複数回の戻し交雑を必要とする。
【0019】
本開示は、外植片への微粒子銃による送達のために粒子上に予め構築されてもよい及び/またはコーティングされてもよいヌクレアーゼタンパク質及び/またはリボヌクレオタンパク質(RNP)としてゲノム編集試薬を成熟または乾燥切除胚外植片(DEE)に送達する方法を提供することによって、当該技術分野における欠陥を克服する。「乾燥切除外植片」は、成熟した乾燥種子から採取または切除された成熟胚外植片である。植物の種子はその成熟過程で自然に乾燥する。以下でさらに記載されているように、他の種類の外植片は、例えば、乾燥種子を濡らすこと、吸水等の後のようなそれらの処理に応じて成熟種子から採取または切除されてもよく、外植片は乾燥種子から切除された後、濡らしてもよいし、吸水等をしてもよい。前のカルス形成工程を経ることなく、ヌクレアーゼ及び/またはリボ核タンパク質(RNP)を胚分裂組織のような分裂組織の1以上の細胞に送達することによって、編集または部位特異的組込みが生成されてもよい。本方法に従って標的とされる外植片の1以上の細胞にゲノム編集試薬を送達するのに先立ってカルス段階の必要性を回避することによって、以前の方法での遺伝子型及び種の依存性を減らしてもよくまたは排除してもよく、ヌクレアーゼ、ガイド核酸及び/またはRNPのようなゲノム編集の効果的な送達が達成されてもよい。したがって、ゲノム編集試薬送達のための現在開示されている方法は、挿入配列または導入遺伝子の標的化された編集または部位特異的組込みを含有する所望の生殖質の植物の直接再生を可能にしてもよい、農学的に重要な作物種の優良生殖質系統を含む種々の植物生殖質に直接実行され得る。
【0020】
配列または導入遺伝子の所望の編集または部位特異的組込みを伴う乾燥切除外植片は、本開示のゲノム編集法に従って生成されてもよく、それはほんの少しだけの培養工程及び/または再生工程で所望の編集または部位を含有する成体R0植物にかなり正常に発達させることができてもよい。そのようなR0植物は、胚形成培養またはカルス培養を必要とせずに外植片から発生させるまたは再生することができる。本開示の方法によって作製されたR0植物における標的化された編集または部位特異的組込みは、生殖系列においてさらに伝達されて、ゲノム編集されたR1種子及び植物ならびに所望の編集または部位特異的組込みを有する種子及び植物のその後の世代を作り出すことができる。
【0021】
ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸、またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬を導入するのに先立って、乾燥切除外植片を広範に培養することなくゲノム編集されたR0植物を生成する能力は、現在開示の方法がさらに迅速且つ効率的に実施されるようにするので、ゲノム編集作物の大規模な商業生産におけるその実施の潜在性を可能にする。乾燥切除外植片を種子から採取し、ゲノム編集または部位特異的組込みの標的としてほぼそのまま使用してもよい。いくつかの実施形態によれば、乾燥切除外植片は、成熟乾燥種子から採取されてもよく、おそらく最小限の濡れ、水和または前培養の工程のみで編集するための標的として使用されてもよい。したがって、保存可能な乾燥種子由来の乾燥切除外植片は、挿入配列または導入遺伝子のゲノム編集または部位特異的組込みの標的として都合よく利用されてもよい。乾燥切除外植片の代わりに、「濡れ」または「乾燥した濡れ」胚外植片(例えば、刺激したまたは発芽した胚外植片を含む)をゲノム編集の標的として使用してもよい。そのような「濡れ」胚外植片は、編集された酵素を受け取る前に、濡れ、水和、吸水、または他の最小限の培養工程に供される乾燥切除外植片である。同様に、吸水または水和した種子に由来する「濡れ切除」外植片も標的として使用されてもよい。「濡れ」胚外植片は、種子からの切除後に水和または吸水し、「濡れ切除」胚外植片は、すでに水和または吸水した種子から切除される。
【0022】
I.形質転換の方法
本開示の実施形態は、外植片の少なくとも1つの細胞にてゲノム編集または部位特異的組込みを作り出すための外植片の少なくとも1つの細胞への微粒子銃粒子媒介送達のために、核酸誘導型ヌクレアーゼ及び別のガイドRNAとして予め構築され、または提供されてもよい、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬を導入することを含む、植物の乾燥種子由来の乾燥切除外植片(DEE)のゲノムを編集する方法を提供する。本開示の方法は、ゲノム編集試薬の送達に先立って外植片を広範に培養することなく、回収された種子由来の乾燥切除胚外植片を標的とすることによって実施されてもよい。そのような外植片は、保存可能な乾燥種子から切除されてもよく、または「濡れ」、「乾燥した濡れ」、または「濡れ切除」された胚外植片であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、植物種子から切除された乾燥外植片は任意で、例えば、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬の送達に先立って、水性媒体にて限られた時間、前培養されてもよい。そのような前培養培地は、種々の塩(複数可)(例えば、MSの基礎塩類、B5塩等)、例えば、種々の浸透圧調節物質(複数可)、糖(複数可)、抗微生物剤(複数可)等のような他の成分を含んでもよい。前培養培地は、固体または液体であってもよく、さらに、オーキシン(複数可)、サイトカイニン(複数可)等を含む1以上の植物成長調節剤または植物ホルモンを含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、複数の外植片が同じ培地または容器内で一緒に前培養されてもよい。例えば、さらに多くの外植片を外植片の種類、容器、皿等のサイズに応じて一緒に前培養してもよいが、例えば、約25の外植片、約50の外植片、約75の外植片、または約100の外植片のような2~100の外植片の範囲を同じ前培養培地上またはその中に置いてもよい。いくつかの実施形態によれば、前培養培地は、例えば、2,4-D、インドール酢酸(IAA)、ジカンバ、1-ナフタレン酢酸(NAA)のようなオーキシン、及びサイトカイニンまたは類似の成長調節剤、例えば、チジアズロン(TDZ)、6-ベンジルアミノプリン(BAP)、ゼアチンまたはゼアチンリボシド等を含んでもよい。そのような前培養または前培養する工程は、外植片を編集する及び/または再生する能力を高めてもよい。前培養培地におけるオーキシンとサイトカイニン(または同様の成長調節剤)の相対量は、外植片からのカルス形成を回避しながら(長期間にわたって)、編集及び/または再生の成功が向上するように制御されてもよいし、または予め決定されてもよい。いくつかの実施形態によれば、前培養培地は、2,4-Dのようなオーキシン及びTDZのようなサイトカイニンの双方を含んでもよい。例えば、前培養培地における(存在するならば)TDZのようなサイトカイニンの濃度は、ゼロ(0)~約5ppm、例えば約0.3~約4ppm(100万分の1)、約0.5~約3ppm、約1~約2、または他の中間濃度範囲内の範囲にあってもよい。特定の態様では、前培養培地におけるサイトカイニンの濃度は、0、約0.1ppm、約0.2ppm、約0.3ppm、約0.4ppm、約0.5ppm、約0.6ppm、約0.7ppm、約0.8ppm、約0.9ppm、約1.0ppm、約1.25ppm、約1.5ppm、約1.75ppm、約2ppm、約2.5ppm、約3ppm、約3.5ppm、約4ppm、約4.5ppmまたは約5ppmであってよい。TDZの場合、濃度は、好ましくは2ppm未満、または約0.7~約1.3ppm、または約0.5~約1ppm、または約0.3ppmまたは約1.5ppmの範囲であってもよい。特定の態様では、TDZの濃度は、約0.1ppm、約0.2ppm、約0.3ppm、約0.4ppm、約0.5ppm、約0.6ppm、約0.7ppm、約0.8ppm、約0.9ppm、約1.0ppm、1.1ppm、約1.2ppm、約1.3ppm、約1.4ppm、約1.5ppm、約1.6ppm、約1.7ppm、約1.8ppm、または約1.9ppmである。2,4-Dのようなオーキシンの濃度は、ゼロ(0)~約2ppm、または約0.1ppm~約1ppm、または約0.1ppm~約0.5ppmの範囲、またはその他の中間濃度範囲の範囲内であってもよい。特定の態様では、オーキシンの濃度は、約0.1ppm、約0.2ppm、約0.3ppm、約0.4ppm、約0.5ppm、約0.6ppm、約0.7ppm、約0.8ppm、約0.9ppm、約1.0ppm、約1.1ppm、約1.2ppm、約1.3ppm、約1.4ppm、約1.5ppm、約1.6ppm、約1.7ppm、約1.8ppmまたは約1.9ppmである。
【0024】
前培養培地及び/または外植片の周囲の温度にある程度応じて、前培養工程の期間は変化してもよい。一般に、前培養工程の期間もまた、約1または2時間~約5日の範囲、例えば約12時間~約60時間、または約12時間~約48時間のような範囲の範囲内またはその中での他の時間の範囲に制御されてもよいし、または限定されてもよい。前培養工程の時間の量を制限することは、植物成長調節剤の存在にもかかわらず、カルス形成を回避してもよい。最適な前培養期間も植物の再生頻度を改善してもよい。前培養工程の間、外植片を同じ培地で維持してもよく、または1回以上新鮮な培地(単数)/培地(複数)に移してもよい。任意の前培養工程の照明条件及び/または温度条件も制御されてもよい。例えば、外植片は前培養工程中の16/8の明暗周期曝露、またはおそらく他の種々の明暗周期のサイクルまたは期間に曝露されてもよい。あるいは、前培養工程は暗いまたは低い光の条件下で行われてもよい。外植片の前培養培地及び周囲の温度も、約18℃~約35℃、または約25℃~約30℃、または約28℃で変化してもよく、中間範囲及び中間値のすべてを含む。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、前培養工程が実施されるかどうかにかかわらず、形質転換のための乾燥切除外植片は任意で、前培養及び/またはゲノム編集試薬への暴露に先立って、水和媒体または吸水媒体に限られた時間曝されてもよい。そのような水和または水和する工程は、乾燥種子または乾燥させた種子に由来する外植片が編集または部位特異的組込みを受けやすくしてもよい。実際、水和工程または吸水工程は形質転換に先立って、別の前培養工程なしで行われてもよい。水和媒体は、水のみから成ってもよく、またはさらに糖(複数可)(例えば、スクロース等)、ポリエチレングリコール(PEG)のような1以上の既知の浸透圧調節物質(複数可)を含んでもよい。例えば、水和媒体は約10%のスクロース及び/または約20%のPEGを含んでもよい。理論に束縛されることなく、浸透圧調節物質は外植片の水和速度を調節してもよく、または遅くしてもよい。種々の塩、等のような他の成分も水和媒体に含まれもよい。水和工程の期間は一般に短くてもよく、例えば約2分~約12時間、または約20分~約6時間、または約30分~約2時間、または約1時間であってもよい。水和工程または吸水工程は、外植片の発芽、または少なくとも観察可能な発芽または発生の変化が起こらないように、時間的に十分に短くてもよい。あるいは、胚外植片はゲノム編集試薬の送達に先立って、発芽のために刺激されてもよく、または発芽させられてもよい。例えば、胚外植片は、発芽が停止した状態で外植片を濡らしてから乾燥させる(そして、「乾燥した濡れ」胚外植片を作製する)ことによって、発芽について刺激されてもよい。さらに、「濡れ切除」胚(水和種子または濡れ種子から切除された胚外植片)も形質転換の標的として使用されてもよい。水和工程及び/または前培養工程のいずれかの前に、最中に及び/または後で、種々のすすぎ工程も実施されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、これらの工程のいずれかまたは双方が編集の標的として使用される外植片の含水率及び/または種類に任意で依存していてもよいが、水和工程及び/または前培養工程(複数可)を含めて特に成熟種子及び/または乾燥(または乾燥させた)種子から採取されたもののような乾燥(または乾燥させた)外植片のための編集を改善してもよい。しかしながら、これらの外植片はすでに十分なレベルの水和または含水率を有してもよいので、特に「濡れ」または「濡れ切除」の胚外植片を標的として使用する場合、水和工程及び/または前培養工程は任意であってもよく、且つ含まれなくてもよいし、または実施されなくてもよい。
【0027】
水和工程及び/または前培養工程(複数可)が実施されようとされまいと、外植片は、例えば、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬による形質転換に供されてもよく、RNPは微粒子銃による送達のために粒子上に予め構築されて、および/またはコーティングされて、少なくとも1つのゲノム編集した細胞を有する外植片を生成してもよい。ゲノム編集試薬の送達に続いて、外植片は次いで、選択圧のもとで植物に成長させ、発達させ、再生させて、外植片のゲノム編集細胞の成長及び発達について選択してもよい。特定の実施形態では、例えば、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸および/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬でコーティングされた粒子は、選択可能なマーカー遺伝子を含むDNA分子と同時形質転換または同時送達されるので、対応する選択剤の存在下でゲノム編集した細胞の生存、成長、発及び達が有利に働いてもよい。いくつかの実施形態によれば、ヌクレアーゼ、RNP、または編集酵素は、植物細胞のゲノムへの挿入配列または導入遺伝子(例えば、対象とする遺伝子)の部位特異的組込みのためにドナーテンプレート分子と同時形質転換または同時送達されてもよい。部位特異的組込みのためのドナーテンプレート分子は、選択の基礎として使用されてもよい選択可能なマーカー遺伝子をさらに含んでもよい。
【0028】
本開示の特定の実施形態によれば、例えば、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬をその表面上に有する、またはそれでコーティングされた粒子は、外植片の粒子媒介衝撃を介して標的外植片の少なくとも1つの細胞に導入される。そのような粒子媒介衝撃は、ヘリウム粒子銃、電気粒子銃、等のような当該技術分野において既知の任意の好適な粒子銃装置を利用してもよい。衝撃に先立って、例えば、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬のコピー、及び任意でマーカー遺伝子及び/またはドナーテンプレートの構築物もしくは分子で粒子に負荷してもよいし、またはコーティングしてもよい。粒子自体は、例えば、金またはタングステンのビーズ等のような、当該技術分野で既知の好適な種類の粒子またはビーズを含んでもよい。粒子銃の衝撃条件は当該技術分野で周知であり、例えば、ヘリウム粒子銃について、種々の従来の遮蔽物、破裂板、等が使用されてもよい。電気銃は、形質転換に必要な時間の量を短縮し、プロセスで使用する消耗品を少なくすることで、いくつかの利点を提供してもよい。
【0029】
粒子の衝撃については、乾燥胚外植片を、外植片を所定の位置に保持することができ、衝撃用に好適な方向に向けることができる標的の培地または基材上に置いてもよい。そのような標的の培地または基材は、例えば、寒天のようなゲル化剤、及び培地または基材の粘度を制御するためのカルボキシメチルセルロース(CMC)を含有してもよい。水和培地、前培養培地またはすすぎ培地のような液体における外植片の配置は、外植片の拡散及び位置決めを円滑にしてもよい。特定の実施形態に係る粒子衝撃の対象となる外植片は、外植片の分裂組織が衝撃の粒子を優先的に受け取るように配置されてもよい。例えば、外植片は、それらの分裂組織が上を向くように表面上に配置されて、衝撃中にコーティングされた粒子を優先的に受け取ってもよい。各外植片は、種々の圧力、力にて及び/または1回以上、コーティングされた粒子で衝撃を与えられてもよい。
【0030】
選択可能なマーカー遺伝子が、例えば、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬と同時送達される本開示の実施形態によれば、標的とされる外植片は衝撃後選択培地、または衝撃後の後培養の選択培地(または一連の選択培地)の上で(またはその中で)培養されて、根のような植物または植物の一部に再生または発達する選択可能なマーカー遺伝子を含有する外植片の細胞及び組織が植物または根及び/または苗条のような植物の一部に再生するまたは発生するようにしてもよいし、またはそれを選択してもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、例えば、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬とともに同時送達されて、選択可能なマーカー遺伝子とともにゲノム編集試薬を受け取っている可能性が高い細胞を選択してもよい。一般に、選択培地には、外植片の少なくとも1つの細胞に送達される選択可能なマーカー遺伝子の発現に基づいて外植片の細胞の生存、成長、増殖及び/または発生にバイアスをかける、またはそれに有利に働く選択剤を含有するであろう(選択可能なマーカー遺伝子は、受容細胞(複数可)及びその子孫細胞で発現される場合、選択剤に対する耐性を提供する)。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、衝撃を受けた外植片は選択圧を受けなくてもよく、最終的に、発達したまたは再生された植物は標的部位における編集または変異の存在についてスクリーニングされてもよい。
【0031】
しかしながら、いくつかの実施形態によれば、外植片は任意で、標的外植片の衝撃直後の第1の期間、選択剤を欠いている第1の衝撃後または培養後の休止培地上で(またはその中で)培養されて、外植片が回復し、及び/または選択可能なマーカー遺伝子の発現を開始するようにしてもよい。そのような休止工程は、約1時間~約24時間、または約6時間~約18時間、または約10時間~約15時間(例えば、約12時間または一晩)の範囲の期間であってもよい。編集された植物の回復は非選択的な回復期間を有することによって改善されてもよいが(例えば、休止培地での培養)、選択の開始が遅すぎる場合(例えば、衝撃後18~24時間を超える場合)、編集された植物が回復する頻度は低下してもよい。後培養培地、選択培地または休止培地のそれぞれは例えば、塩、糖、植物成長調節剤、等のような標準的な植物組織培養培地成分を含んでもよく、これらの培地で培養することは、標準の温度または様々な温度(例えば、28℃)及び照明条件(例えば、16/8時間の明暗周期)で実施されてもよい。しかしながら、第1の後培養工程または休止工程は、編集頻度及び選択スキーム、例えば、使用される特定の選択可能マーカー遺伝子及び選択剤に応じて、選択前に含まれてもよいし、または省略されてもよい。
【0032】
初期の回復及び第1の非選択的休止培地上での外植片の培養に続いて、外植片は任意で増強工程を受けてもよい。これらの実施形態によれば、外植片は、ポリエチレングリコール(PEG)等及び/または硝酸カルシウム[Ca(NO3)2]等のようなカルシウム含有塩化合物のような浸透圧調節物質を含む第2の衝撃後培地または増強培地等に曝され、その上に(または中に)置かれてもよい。例えば、それらの濃度は変化してもよいが、硝酸カルシウムの濃度は約0.1Mであってもよく、PEGの濃度は約20%であってもよい。この増強培地はまた、選択剤を欠いてもよい。衝撃を受けた外植片を増強培地に曝露することは、コーティングされた粒子及び/または予め構築されたヌクレアーゼ及びマーカー遺伝子構築物(使用されれば)を外植片細胞の中にさらに追い込むように機能してもよい。外植片は、約30分~約2時間または約1時間の範囲のような短い期間だけ増強培地の中または上に配置されてもよく、その後、さらなる培養工程または選択工程に先立ってすすぎ工程が続いてもよい。
【0033】
上記で言及されたように、衝撃を受けた外植片は選択剤を含有する1以上の選択培地と接触させて、同時衝撃に使用される選択可能なマーカー遺伝子構築物の発現を有する細胞の生存、成長、増殖及び/または発生にバイアスをかけてもよい。選択可能なマーカー遺伝子は一般に、選択可能なマーカー遺伝子が選択剤による選択に対する耐性を付与するように、選択に使用される選択剤とペアにされるであろう。例えば、選択可能なマーカー遺伝子は、選択剤としてのスペクチノマイシンまたはストレプトマイシンに対する耐性を付与するアデニリルトランスフェラーゼ遺伝子(aadA)であってもよい。
【0034】
植物の選択可能マーカー遺伝子または導入遺伝子は対応する選択剤に耐性を付与する任意の遺伝子を含んでもよいので、植物の選択可能マーカー導入遺伝子で形質転換された植物細胞が選択剤によって課される選択圧を許容し、且つそれに耐えてもよい。結果として、選択可能なマーカー遺伝子を受容する外植片の細胞は、選択のもとで成長、増殖、発達等をするのに有利に働く。植物の選択可能マーカー遺伝子は、選択剤に耐性を付与するために一般的に使用されるが、追加のスクリーニング可能マーカーまたはレポーター遺伝子(複数可)も使用されてもよい。そのようなスクリーニング可能なマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子には、例えば、β-グルクロニダーゼ(GUS、例えば、米国特許第5,599,670号に記載されているような)または緑色蛍光タンパク質及びその変異体(例えば、米国特許第5,491,084号及び同第6,146,826号に記載されているGFP)が挙げられてもよい。植物、植物の一部または植物細胞で検出可能である種々のスクリーニング可能なマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ、他の非GFP蛍光タンパク質、及び植物、植物の一部または種子で検出可能な表現型(例えば、フィトネンシンターゼ等)を付与する遺伝子は当該技術分野で知られている。スクリーニング可能なマーカーの追加例には、その発現が形質転換細胞を同定するための手段として検出され得る分子(複数可)の分泌を引き起こす、オピンシンターゼ遺伝子のような分泌可能なマーカーが挙げられてもよい。
【0035】
植物の選択可能マーカー遺伝子は、グリホサート及びグルホシネートのような除草剤に対する耐性または抵抗性を提供または付与するタンパク質をコードする遺伝子を含んでもよい。有用な植物選択可能マーカー遺伝子は当該技術分野で知られており、ストレプトマイシンまたはスペクチノマイシンに対する耐性または耐性を付与するタンパク質をコードするもの(例えば、アデニリルトランスフェラーゼ、aadA、またはspec/strep)、カナマイシン(例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼまたはnptII)、ハイグロマイシンB(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、hpt、hphまたはaphIV)、ゲンタマイシン(例えば、aac3及びaacC4)、及びクロラムフェニコール(例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼまたはCAT)に対して抵抗性または耐性を付与するタンパク質をコードするものが挙げられてもよい。除草剤への抵抗性または耐性を付与するタンパク質をコードする既知の植物選択可能マーカー遺伝子の追加例には、例えば、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸(EPSP)シンターゼ(例えば、米国特許第5,627,061号;同第5,633,435号;同第6,040,497号及び同第5,094,945号に記載されたようなグリホサート耐性のEPSPS)をコードする転写可能なDNA分子;グリホサート酸化還元酵素及びグリホサート-N-アセチルトランスフェラーゼをコードする転写可能なDNA分子(GOX;例えば、米国特許第5,463,175号に記載されている;米国特許公開番号第2003/0083480号に記載されているGAT);フィトエン不飽和化酵素(例えば、ノルフルラゾン耐性についてMisawa,et al.,Plant Journal,4:833-840(1993)及びMisawa,et al.,Plant Journal,6:481-489(1994)に記載されたようなcrtI)をコードする転写可能なDNA分子;及びビアラホス耐性(bar)遺伝子またはホスフィノスリシンN-アセチルトランスフェラーゼ(pat)遺伝子(例えば、グルホシネートとビアラホス耐性についてのDeBlock,et al.,EMBO Journal,6:2513-2519(1987))が挙げられる。
【0036】
選択工程(複数可)を受けるために、外植片は選択剤を含有する1以上の選択培地と接触させてもよく、またはその上に(またはその中に)配置してもよい。選択圧を適用することに加えて、選択培地は、衝撃を受けた外植片からの苗条、根及び/または植物全体の再生または発達を同時に提供してもよい。あるいは、再生培地は、選択剤が存在しない状態で1以上の苗条及び/または根の発生または再生に使用されてもよい。再生培地及び/または選択培地は、例えば、塩(例えば、MS塩またはB5塩)、糖(複数可)等のような種々の標準的な植物組織培養成分を含有してもよい。再生培地及び/または選択培地には任意で、苗条及び/または根(そして最終的には植物全体)の発達、伸長または再生を促進または支援してもよいオーキシン及び/またはサイトカイニンのような植物成長調節剤(複数可)が含められてもよい。再生工程及び/または選択工程(複数可)は、標準の温度または変化した温度(例えば、28℃)及び照明条件(例えば、16/8の明期)の範囲内で実施されてもよい。衝撃を受けた外植片からの選択培地でのゲノム編集されたR0植物のそのような発達は、発芽及び植物の発達の正常のプロセスに非常に類似しているかもしれないが、選択圧に応答して分裂組織の再編成がいくつか生じて、苗条及び/または根及び成体植物の植物部分を形成してもよい。重要なことに、衝撃工程の前にカルス相が回避されるだけでなく、外植片は、形質転換後に外植片から胚形成カルスを形成することなく、衝撃後にゲノム編集されたR0植物にさらに発達してもよいし、または再生してもよい。
【0037】
本開示の実施形態によれば、外植片は、緑色の苗条が形成されるまで第1の選択培地(または一連の選択培地)で培養されてもよく、次いでそれを採取または切断して、新しい選択培地に移してもよい。移す過程または継代培養する過程は1回または数回(例えば、2、3、4、または5回)繰り返されて、複数回の移動、継代培養及び/または選択を提供してもよい。選択圧のもとでの外植片からの苗条の複数回の移動、継代培養及び/または選択は、後に発達したまたは再生されたゲノム編集R0植物全体にわたるゲノム編集細胞の数、比率および/遍在を拡大してもよいし、または増やしてもよいと考えられている。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、上記に記載されている選択培地の1以上のような選択培地でもあってもよい再生培地は発根培地としても機能して、移動させたまたは継代培養した苗条(複数可)からの根(複数可)の形成及び発達を生じさせまたは可能にしてもよく、それはオーキシン及び/またはサイトカイニンのような1以上の植物成長調節剤(複数可)を含んでもよい。発根培地(単数)/培地(複数)はまた、それぞれ選択培地であってもよく、1以上の植物成長調節剤(複数可)に加えて選択剤を含んでもよい。衝撃を受けた外植片から発達したまたは再生された(選択圧のもとでの一連の移動または継代培養を介して)発根した植物体は、最終的にゲノム編集されたR0植物の継続的な発達のためにPlantCon(商標)または他の好適な容器及び/または鉢植えの土壌に移されてもよく、その後、ゲノム編集されたR1種子はそれらのゲノム編集されたR0植物から回収されてもよい。選択圧のもとで最初に衝撃を受けた外植片に由来する緑の苗条の数回の逐次継代培養(及び最終的な発根)だけで、さらにゲノム編集したR1植物や種子を生産する稔性植物に発達させてもよいゲノム編集したR0植物体を形成するのに十分であってもよい。本開示は、異なる植物生殖質における合理的な頻度でのゲノム編集植物の生産を提供することによって、当該技術分野における重要な進歩及び改善を表す。実際、本開示の方法は、衝撃のために乾燥切除外植片を準備し、その後、衝撃を受けた外植片からゲノム編集されたR0植物を発生させるまたは再生するプロセス全体を通して任意の段階でのカルス相の必要性を回避する。本開示とは対照的に、ゲノム編集のための既存の方法は一般に、特定の外植片の種類、及びさらに広範な培養工程を受け入れられる植物の生殖質及び栽培品種に限定されてきた。
【0039】
本開示の実施形態によれば、1以上の選択工程(複数可)は、単一の選択培地で実施されてもよく、またはさらに好ましくは、一連の選択工程または選択培地で実施されてもよい。選択培地における選択剤の量または濃度は使用される特定の選択剤に応じて変化してもよい。例えば、選択可能マーカー遺伝子aadAに使用されるスペクチノマイシンの量は、約50ppm~約250ppm、または約100ppmまたは約150ppmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態によれば、選択剤の量または濃度は、選択期間全体を通じて一定のままであってもよく、または選択剤の量または濃度は選択期間にわたって増大してもよく、または増加してもよい。段階的なアプローチでは、選択可能なマーカー遺伝子のさらに強力な発現を達成してより強い選択圧に耐えられるようになるまで、形質転換外植片細胞(複数可)が回復するまでの時間を長くしてもよい。しかしながら、選択可能なマーカー遺伝子の発現は最初の選択圧の時間までに十分であってもよいので、段階的選択アプローチは不要になるであろう。どちらのアプローチでも、外植片を定期的に新しい選択培地に移してもよく、もしくは継代培養してもよく、または選択培地を定期的に交換して新しい選択培地で新たにしてもよい。いくつかの実施形態によれば、外植片は次の培地に移すまたは継代培養する前に、ほぼ数日(例えば、2日または3日)から数週間(例えば、3~4週間)、または約1週間~約3週間、または約2週間前の範囲の期間、選択培地のそれぞれの中または上に保持されてもよい。選択剤としてのスペクチノマイシンの使用を含む具体的な実施形態によれば、スペクチノマイシンの濃度は、約50ppm~約500ppmまで段階的に増やしてもよく、または代わりに、スペクチノマイシンの量濃度は相対的に一定に保ってもよい(例えば、約100ppm、約150ppm、または約200ppm)。
【0040】
本開示の方法は、広範な培養を必要とすることなく、1以上の衝撃を受けた外植片からのゲノム編集植物の候補の再生及び/または発生を可能にするので、1以上のゲノム編集した細胞を含む苗条及び植物を同定し、成長させる効率を高め、且つ所望の変種または生殖質のゲノム編集した植物を生産するのに必要なコスト及び労力を減らす。例えば、選択可能なマーカーを使用して推定形質転換体が同定された後、植物体は選択剤の存在下または非存在下で発根培地のような土壌または代用土壌に配置されてもよい。選択されたまたは再生された外植片から伸長する苗条は、分子技術を使用して標的部位でのゲノム編集の存在について分析されてもよい。ゲノム編集されたR0植物はさらに、ゲノム編集されるその後の子孫の植物及び種子を生産することができる、ゲノム編集されたR1植物及び種子を生じることができる。ゲノム編集されたR0植物は、選択圧がほとんどまたはまったくない本開示の方法によって生産されてもよいが、適当な選択剤によって選択を維持することは1以上の培養工程または再生工程にわたって維持されてもよい。所望の標的部位で1以上のゲノム編集を有すると判定されたR1植物は別の植物と交配されてもよく、次世代におけるゲノム編集(複数可)または変異(複数可)の遺伝形質に関して固定された変異(複数可)または編集(複数可)を有するホモ接合性ゲノム編集植物が次世代で選択されてもよい(子孫植物における編集(複数可)または変異(複数可)の分離がなく、且つ自己交配による子孫のホモ接合性の安定した維持を伴って)。上記に記載されているように、最初の培養後及び/またはR0植物の残りの寿命の間、選択圧は別の方法として継続されてもよい(例えば、定期的等)(例えば、局所スプレー、土壌または種子散布等)が、R0植物におけるゲノム編集された細胞の成長、生存、発生等は外植片の培養工程、継代培養工程、苗条伸長工程及び/または発根工程(複数可)の間に選択剤を用いて選択圧をかけることにより選択的または優先的に達成されまたは有利に働き、選択マーカー遺伝子の同時送達によってゲノム編集(複数可)または変異(複数可)を有するその細胞の割合がさらに高いR0植物を生産してもよい。
【0041】
種々の組織培養培地は、適切に補充された場合、切除された植物組織からの成熟植物の形成を含む、植物組織の成長及び発達を支援することが知られている。これらの組織培養培地は、市販の調製物として購入することもでき、当業者によって特注で調製され及び改変されることもできる。そのような培地の例には、Murashige及びSkoog,Physiol.Plant,15:473-497,1962);Chu,et al.,(Scientia Sinica,18:659-668,1975);Linsmaier及びSkoog,(Physiol.Plant,18:100-127,1965);Uchimiya及びMurashige,Plant Physiol.57:424-429,1976;Gamborg,et al.,Exp.Cell Res.50:151-158,1968;Duncan,et al.,Planta,165:322-332,1985;McCown及びLloyd,HortScience,16:453,1981;Nitsch及びNitsch,Plant Physiol.44:1747-1748,1969;ならびにSchenk及びHildebrandt,Can.J.Bot.50:199-204,1972に記載されたもの、または適切に補完されるこれら培地の派生物が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、粒子衝撃、選択及び再生に使用するための栄養素及び植物成長調節剤のような培地及び培地補完物が通常、特定の標的作物または対象とする品種に対して最適化されることを知っている。組織培養培地は、グルコース、スクロース、マルトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース及び/またはデキストロースのような、しかし、これらに限定されない炭水化物、または炭水化物の比率で補完されてもよい。試薬は市販されており、多くの供給業者から購入することができる(例えば、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO;及びPhytoTechnology Laboratories,Shawnee Mission,KSを参照)。これらの組織培養培地は、休止培地として、または選択剤をさらに添加した選択培地として、及び/または1以上の植物成長調節剤を補充すれば再生培地として使用されてもよい。
【0042】
本開示の実施形態はまた、標的部位にてまたはその近傍で1以上の編集(複数可)または変異(複数可)を含む、本開示の方法によって生成されるゲノム編集された植物、植物の一部及び種子も提供する。植物の一部には限定されないが、果実、種子、胚乳、胚珠、花粉、葉、茎、及び根が含まれる。本開示の特定の実施形態では、植物または植物の一部は種子である。
【0043】
II. 形質転換可能な外植片
本開示の方法はさらに、粒子衝撃に先立って、任意の好適な手動のまたは自動化された方法によって、植物種子から植物胚の少なくとも一部を切除または切除するための工程(複数可)を含んでもよい。本開示の実施形態によれば、衝撃と、例えば、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸、及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬の送達とのために外植片の分裂組織細胞を標的とすることは、ゲノム編集された植物の効果的な作成及び発達または再生に必要であると考えられているので、好適な胚外植片はさらに、胚の分裂組織または分裂組織、または分裂組織の少なくとも一部、または胚外植片の少なくとも1つの分裂組織細胞を含む。胚外植片は、それが胚芽分裂組織の少なくとも一部を保持している限り、子葉(複数可)、胚軸(複数可)、幼根、等のような1以上の胚組織を欠いてもよい。それらは粒子衝撃に先立って水和工程及び/または前培養工程を必要としてもよいが、本開示の多くの実施形態によれば、乾燥種子から切除された成熟胚外植片の使用が好まれてもよい。
【0044】
植物種子から胚外植片を作製するまたは切除するための任意の好適な方法は本開示の実施形態と併せて使用されてもよい。これらの方法は自動化されてもよく、及び/または手動で実施されてもよく、単一化プロセスまたは一括プロセスを含んでもよい。多くの実施形態によれば、胚外植片は、乾燥成熟植物種子から採取されたまたは切除された成熟胚外植片(またはその一部)であってもよい。所与の植物種について、所与の植物種の未熟胚から成熟胚への移行は、段階的であってもよいが、成熟した種子または胚を受粉後の特定の日数(DAP)以上であるという点で定義して同じ種の植物の未熟な種子または胚を区別してもよい。一般に、未熟胚から成熟胚への移行には、当該技術分野で知られているように、種子及び胚の(他の発生変化に加えて)乾燥または脱水の自然過程が伴う。
【0045】
種子及び胚の発生または成熟は乾燥を伴うので、本開示の方法で使用される成熟した種子または胚の外植片はその含水率という点でも定義されてもよい。さらに、胚外植片は、それが切除される種子の含水率という点でも定義されてもよい。例えば、本発明の方法に従って使用される種子または胚の外植片は当初、約3%~約25%、または約4%~約25%、または約3%または4%~約20%でのもしくはその範囲内の含水率、または植物の特定の種に応じた任意の百分率値にてもしくはその範囲内で、またはそのような境界百分率範囲の範囲内、たとえば、約5%~約20%、約5%~約15%、約8%~約15%及び約8%~約13%の範囲内での含水率を有してもよい実際、植物の種子は、種子及び胚が生存可能なままであり、粒子衝撃及び発生または再生に適格である限り、本開示の方法の実施形態で使用する前に胚外植片の切除に先立って人工的に乾燥させてもよく、または脱水してもよい。種子の乾燥は種子からの胚外植片の切除及び/または保管を円滑にしてもよい。代わりにまたはさらに、種子は、例えば、切除工程の間に胚の生存率を促進し、胚を軟化し、胚への損傷を低減し、及び/または胚の生存率を維持するために外植片の切除に先立って水和されてもよいし、または吸水してもよい。しかしながら、種子または外植片の水和は、種子または外植片がその後乾燥するまたは脱水されるとしても、種子または外植片の保存性を低下させてもよいし、または排除してもよい。
【0046】
胚外植片、及び予め水和されてもよい、刺激されてもよいまたは発芽させてもよい乾燥の、乾燥させた及び/または成熟の種子から胚外植片を切除する方法のさらなる説明については、例えば、米国特許第8,466,345号、同第8,362,317号及び同第8,044,260号ならびに米国特許公開番号第2016/0264983号を参照のこと。使用される種子の種類及び種子から胚外植片を機械的に切除する正確な方法に関係なく、滅菌、選抜除去、等のような追加の工程及びプロセスを実施して、粒子衝撃に使用される外植片を調製し、及び/または濃縮してもよい。その切除後、しかし、粒子衝撃工程に先立って、乾燥のまたは乾燥した胚外植片は、水和されてもよく、刺激されてもよく、及び/または発芽させてもよい。
【0047】
本開示で使用される胚外植片は、現在の方法で使用する1日未満前、例えば、使用の約2、6、12、18または22時間前を含む、使用の約1~24時間前に種子から取り外されていてもよい。しかしながら、他の実施形態によれば、種子及び/または外植片は、種子及び/または外植片の生存率を維持するために使用される保管条件に応じて、使用に先立って数日、数週間、数ヵ月、さらには数年を含む長期間保管されてもよい。ゲノム編集に好適な胚外植片を作成するまたは切除するための供給源として乾燥成熟種子を使用することの利点と利益は、乾燥成熟種子及び/または外植片が、乾燥条件下で保存可能(発芽せず、生存可能なままであり、保管中の形質転換に適格である)あってもよいことである。そのような乾燥保管条件は、十分に低い水分レベルまたは湿度を有する環境または周囲状況に保管されるものとして定義されてもよいので、保管された種子及び/または外植片は、本発明の形質転換法で使用するのに先立って所望の長さの期間、たとえば、約1時間~約2年間または約24時間~約1年間、またはそれらの境界時間範囲の中での特定の時間もしくは時間の範囲で、発芽せず、生存可能なままであり、形質転換に適格なままである。保存可能な種子または外植片を使用することにより、ドナー植物を必要とせずに種子または外植片の原材料の確実な供給が利用できてもよい。乾燥成熟種子を保管する能力は、乾燥成熟の種子及び胚の自然な特性に関係する。言い換えれば、乾燥成熟の種子及び/または胚の外植片は、その休止状態、静止状態、または低代謝状態または低活動状態という点でも定義されてもよい。したがって、本開示の方法に従って使用される乾燥の種子または外植片は、その低代謝状態という点でも、及び/または種子または胚の後の水和及び発芽までの代謝的または発生的な静止または静止状態によっても定義されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、胚外植片または種子の水和または発芽は、種子からの胚外植片の切除の前または後のいずれかに実施されてもよい。言い換えれば、前培養の工程とは別に、種子を吸水または水和して、胚外植片の切除に先立って種子が発芽及び/または発生を開始できるようにし、または乾燥胚外植片が代わりに種子から切除され、その後、吸水または水和して胚外植片の発芽及び/または発生を誘発してもよい。次に、刺激したまたは発芽させた種子を、粒子衝撃工程に先立つ光への時間量及び/または限定された曝露によって制御されてもよい、標的組織の事前緑化を行うことなく粒子衝撃に供してもよい。しかしながら、上記に記載されているように、発芽または胚のさらなる発生を伴わないで、水和工程を代わりに使用して、乾燥した胚外植片を水和し、「濡れた」外植片が粒子衝撃と、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬の送達とをさらに受けやすくしてもよい(例えば、水和工程または吸水工程は、衝撃に先立って胚外植片の顕著な発生上の変化及び/または発芽が生じないように時間的に制限されてもよい)。
【0049】
本明細書で提供されている方法の実施形態と共に使用するための外植片は、例えば、トウモロコシ、コムギ、イネ、ソルガム、カラスムギ、オオムギ、サトウキビ、アフリカアブラヤシ、スイッチグラス植物、綿、キャノーラ、テンサイ、アルファルファ、ダイズ、及び他のFabaceaeやleguminous植物のような農業作物種を含む多種多様な単子葉(単子葉)植物及び双子葉(双子葉)植物に由来する外植片を含んでもよい。
【0050】
III.ゲノム編集
本開示の細胞、植物、植物の一部及び種子は、部位特異的組込みまたはゲノム編集を用いたゲノム修飾を介して生産される。ゲノム編集を介した植物ゲノムの標的修飾は、改良された形質を有する作物を作り出すために使用することができる。ゲノム編集を使用して、植物のゲノムの所望の標的部位にて1以上の編集(複数可)または変異(複数可)を作り出し、例えば、1以上の遺伝子の発現及び/または活性を変化させてもよく、または植物ゲノムの所望の位置に挿入配列もしくは導入遺伝子を組み込んでもよい。本明細書で使用されるとき、「部位特異的組込み」は、植物ゲノムへのポリヌクレオチド(例えば、挿入配列、調節要素または導入遺伝子)の標的化された組込みまたは挿入を可能にするゲノム編集の方法及び技術を指す。本明細書で提供されているように、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸、及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬または1以上のゲノム編集試薬をコードする1以上の核酸は、外植片の分裂組織細胞のような外植片の受容細胞に送達されてもよい。ゲノム編集試薬をコードする導入遺伝子(複数可)を受容細胞に形質転換することなく、統合することなくまたは組み込むことなく、ヌクレアーゼタンパク質、ガイド核酸及び/またはリボ核タンパク質(RNP)のようなゲノム編集試薬を外植片の受容細胞に送達する能力は、粒子衝撃を介してゲノム編集試薬を受容細胞に送達することによって非トランスジェニック受容細胞のゲノムに変更を加えることを可能にする(受容細胞のゲノムを導入遺伝子で形質転換することなく)。
【0051】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、核酸誘導型ヌクレアーゼ、TALEエンドヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、またはそれらの任意の組み合わせのような好適なゲノム編集試薬は、本明細書で提供されている方法に従って外植片の細胞にタンパク質またはリボ核タンパク質(RNP)として送達されて、外植片細胞及び/またはその子孫細胞のゲノム内の標的部位にてゲノム編集または部位特異的組込みを生じてもよい。クラスター化規則的散在型ショートパリンドロームリピート(CRISPR)酵素のような誘導型ヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼの場合、ヌクレアーゼはガイドRNAと一緒に同時送達されて、ヌクレアーゼを標的部位に向けてもよく、それはRNA誘導型ヌクレアーゼと複合体形成してリボ核タンパク質(RNP)を形成してもよい。部位特異的ヌクレアーゼはまた、保存されたアミノ酸を共有し、それぞれのタンパク質配列に関してさらに高い同一性パーセント(例えば、配列比較の長さにわたってそのタンパク質配列にて少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性)を有する任意の既知の部位特異的ヌクレアーゼのホモログまたは修飾型を含んでもよい。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集試薬は、ゲノム編集試薬によって作り出された二本鎖切断(DSB)またはニックの修復を介して所望の標的部位でゲノムに所望の編集、変異または挿入を行うためのテンプレートとして機能するドナーテンプレート分子と共に同時送達されてもよい。いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集試薬は、選択可能またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子を含むDNA分子と共に同時送達されてもよい。いずれの場合にも、ゲノム編集試薬は、任意でドナーテンプレート分子及び/または選択可能またはスクリーニング可能なマーカーをコードするDNA分子に加えて、外植片の受容細胞への微粒子銃送達または粒子送達に使用される粒子に適用されてもよく、またはコーティングされてもよい。いくつかの実施形態によれば、ゲノム編集試薬は、外植片の1以上の受容細胞への微粒子銃送達または粒子送達に使用される粒子に適用されてもよく、またはコーティングされてもよく、その際、外植片の1以上の受容細胞は、粒子衝撃に先立って、受容細胞のゲノムに安定して形質転換されてもよい1以上のDNA分子(複数可)及び/または導入遺伝子(複数可)を含み、そのようなDNA分子(複数可)及び/または導入遺伝子(複数可)は、以下:(i)所望の標的部位にてゲノムに編集、変異または挿入を行うためのテンプレートとして役立つドナーテンプレート分子、(ii)選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカー遺伝子、及び/または(iii)誘導型ヌクレアーゼを所望の標的部位に向けるガイド核酸の1以上を含む、またはコードする。
【0053】
ゲノム編集試薬は誘導型ヌクレアーゼであってもよい。いくつかの実施形態によれば、誘導型ヌクレアーゼは、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas10、Cpf1(Cas12aとしても知られる)、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、CasX、CasY、CasZ、及びそれらのホモログがまたは修飾型、アルゴノート(アルゴノートタンパク質の非限定例としては、Thermus thermophilusアルゴノート(TtAgo)、Pyrococcus furiosusアルゴノート(PfAgo)、Natronobacterium gregoryiアルゴノート(NgAgo)及びそれらのホモログがまたは修飾型が挙げられる)から成る群から選択されるCRISPR関連タンパク質であってもよい。いくつかの実施形態によれば、誘導型エンドヌクレアーゼはCas9またはCpf1酵素である。誘導型ヌクレアーゼは、ガイド核酸の有無にかかわらずタンパク質として送達されてもよく、ガイド核酸は、誘導型ヌクレアーゼ酵素と複合体を形成し、タンパク質/ガイド核酸複合体として送達されてもよい。
【0054】
誘導型エンドヌクレアーゼについては、ガイドRNA(gRNA)のようなガイド核酸分子をさらに提供して、塩基対形成またはハイブリッド形成を介してエンドヌクレアーゼを植物のゲノムの標的部位に誘導し、標的部位にてまたはその近傍でDSBまたはニックを生じてもよい。ガイド核酸は、ガイド核酸分子として、またはプロモーターまたは植物で発現可能なプロモーターに作動可能に連結されたガイドRNAをコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、構築物またはベクターとして、植物の細胞または組織に形質転換されてもよいし、または導入されてもよい。プロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的または組織選択的プロモーター、発生段階プロモーター、または誘導性プロモーターであってもよい。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「ガイド核酸」という用語は、標的核酸における配列に相補性であるヌクレオチド配列を含む第1のセグメントと、誘導型ヌクレアーゼタンパク質と相互作用する第2のセグメントとを含む核酸を指す。いくつかの実施形態では、標的核酸における配列に相補性であるヌクレオチド配列を含むガイドの第1のセグメントは、CRISPR RNA(crRNAまたはcrRNAリピート)に相当する。いくつかの実施形態では、誘導型ヌクレアーゼタンパク質と相互作用する核酸配列を含むガイドの第2のセグメントは、トランス作用性CRISPR RNA(tracrRNA)に対応する。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、互いにハイブリッド形成し、本明細書では「二重ガイド」または「2分子ガイド」と呼ばれる2つの別々の核酸分子(標的核酸の配列に相補性であるポリヌクレオチド及び誘導型ヌクレアーゼタンパク質と相互作用するポリヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、二重ガイドは、DNA、RNAまたはDNAとRNAの組み合わせを含んでもよい。他の実施形態では、ガイド核酸は単一のポリヌクレオチドであり、本明細書では「単一分子ガイド」または「単一ガイド」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、単一ガイドは、DNA、RNAまたはDNAとRNAの組み合わせを含んでもよい。「ガイド核酸」という用語は包括的であり、二重分子ガイド及び単一分子ガイドの双方を指す。
【0056】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)は、当該技術分野で知られるようなゲノム標的部位(ガイドRNAの標的配列に対して)のセンス(+)鎖に対してすぐ下流(3’)のガイド核酸の標的配列に相補性のゲノム標的部位の配列の5’末端に直接隣接する且つその上流のゲノムに存在してもよい。例えば、Wu,X.et al.,“Target specificity of the CRISPR-Cas9 system,”Quant.Biol.2(2):59-70(2014)を参照のこと。標的部位に隣接するセンス(+)鎖上のゲノムのPAM配列(ガイドRNAの標的配列に対して)は5’-NGG-3’を含んでもよい。しかしながら、ガイド核酸の対応する配列(ガイド核酸の標的配列のすぐ下流(3’))は一般に、ゲノムのPAM配列に相補性でなくてもよい。
【0057】
ガイド核酸は通常、タンパク質をコードしない非コード核酸分子であってもよい。ガイド核酸のガイド配列は、例えば、長さ12~40のヌクレオチド、12~30のヌクレオチド、12~20のヌクレオチド、12~35のヌクレオチド、12~30のヌクレオチド、15~30のヌクレオチド、17~30のヌクレオチド、または17~25のヌクレオチド、または長さ約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25以上のヌクレオチドのような長さ少なくとも10のヌクレオチドであってもよい。ガイド配列は、ゲノムの標的部位でのDNA配列の少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25以上の連続するヌクレオチドに対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%または100%同一であってもよいし、または相補性であってもよい。
【0058】
ガイド配列に加えて、ガイド核酸はさらに、誘導型ヌクレアーゼと結合してもよい、または相互作用してもよい1以上の他の構造配列または足場配列(複数可)を含んでもよい。そのような足場配列または構造配列はさらに、他のRNA分子(例えば、tracrRNA)と相互作用してもよい。誘導型ヌクレアーゼを使用して植物のゲノム内の標的部位におけるゲノム編集及び部位特異的組込みのための標的化構築物及びガイド核酸を設計するための方法及び技術は当該技術分野で既知である。
【0059】
リコンビナーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、及びTALENのようないくつかの部位特異的ヌクレアーゼは、核酸誘導ではなく、代わりにそのタンパク質構造を頼ってそのDSBまたはニックを生じるための標的部位を決定する、またはそれらはDNA結合タンパク質のドメインまたはモチーフに融合される、繋がれる、または取り付けられる。部位特異的ヌクレアーゼ(または融合された/取り付けられた/繋がれたDNA結合ドメイン)のタンパク質構造は、部位特異的ヌクレアーゼを標的部位に向けてもよい。これらの実施形態の多くによれば、例えば、リコンビナーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、及びTALENのような非核酸誘導部位特異的ヌクレアーゼは、既知の方法に従って設計され、操作され、構築されて、標的となり、植物の内在性遺伝子のゲノム遺伝子座にてまたはその近傍で標的部位に結合し、そのようなゲノム遺伝子座でDSBまたはニックを作り出し、DSBまたはニックの修復を介して遺伝子の発現をノックアウトまたはノックダウンするが、それはドナーテンプレート分子によって誘導されてもよい細胞修復メカニズムを介してDSBまたはニックの部位での配列の変異または挿入を作り出すことにつながってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼはリコンビナーゼである。リコンビナーゼは、DNA認識モチーフに結合したセリンリコンビナーゼ、DNA認識モチーフに結合したチロシンリコンビナーゼ、または当該技術分野で既知の他のリコンビナーゼ酵素であってもよい。リコンビナーゼまたはトランスポザーゼは、DNA結合ドメインに結合したまたは融合したDNAトランスポザーゼまたはリコンビナーゼであってもよい。リコンビナーゼの非限定例には、本明細書に提供されるDNA認識モチーフに結合させたチロシンリコンビナーゼが挙げられ、Creリコンビナーゼ、Ginリコンビナーゼ、Flpリコンビナーゼ、及びTnp1リコンビナーゼから成る群から選択される。ある態様では、本明細書に提供されるCreリコンビナーゼまたはGinリコンビナーゼは、亜鉛フィンガーDNA結合ドメイン、またはTALE DNA結合ドメイン、またはCas9ヌクレアーゼに繋がれる。別の態様では、本明細書で提供されているDNA認識モチーフに結合させたセリンリコンビナーゼは、PhiC31インテグラーゼ、R4インテグラーゼ、及びTP-901インテグラーゼから成る群から選択される。別の態様では、本明細書に提供されるDNA結合ドメインに結合させたDNAトランスポザーゼは、TALE-piggyBac及びTALE-Mutatorから成る群から選択される。
【0061】
部位特異的ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であってもよい。ZFNは、制限エンドヌクレアーゼ(例えば、あるFokI)に由来してもよい切断ドメイン(または切断半ドメイン)に融合された操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインからなる合成タンパク質である。DNA結合ドメインは、標準的(C2H2)または非標準的(例えば、C3HまたはC4)であってもよい。DNA結合ドメインは、標的部位に応じて、1以上のジンクフィンガー(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上のジンクフィンガー)を含むことができる。DNA結合ドメインにおける複数のジンクフィンガーはリンカー配列(複数可)によって分離されてもよい。ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインの修飾によって二本鎖DNAのほぼすべての区間を切断するように設計することができる。ZFNは、標的部位DNA配列に結合するように操作されたジンクフィンガーアレイを含むDNA結合ドメインに融合した非特異的DNA切断ドメイン(例えば、FokIヌクレアーゼに由来)から構成される単量体から二量体を形成する。ZFNのDNA結合ドメインは通常、3~4(またはそれ以上)のジンクフィンガーで構成されてもよい。標的部位への部位特異的結合に寄与するジンクフィンガーαヘリックスの開始に対して-1位、+2位、+3位及び+6位のアミノ酸は、特定の標的配列に適合するように変更する及び特注することができる。他のアミノ酸はコンセンサス主鎖を形成して、異なる配列特異性を持つZFNを生成してもよい。
【0062】
特定の標的配列を標的とする及び結合するためのZFNを設計するための方法及び規則は当該技術分野で知られている。例えば、米国特許出願番号第2005/0064474号、同第2009/0117617号、及び同第2012/0142062号を参照のこと。FokIヌクレアーゼドメインはDNAを切断するために二量体化が必要であってもよいので、切断部位の反対のDNA鎖(5~7bp離れている)を結合するにはC末端領域を持つ2つのZFNを必要する。2つのZF結合部位が回文構造であるならば、ZFN単量体は標的部位を切断することができる。本明細書で使用されるとき、ZFNは広義であり、別のZFNの助けなしに二本鎖DNAを切断することができる単量体ZFNを含む。ZFNという用語は、同じ部位でDNAを切断するために一緒に機能するように操作されるZFNのペアの一方または双方のメンバーを指すのにも使用されてもよい。理論にとらわれることなく、ジンクフィンガードメインのDNA結合特異性は種々の方法の1つを使用して再操作できるので、特注したZFNを理論的に構築して、ほぼすべての標的配列(例えば、植物ゲノムにおける遺伝子にてまたはその近傍で)を標的とすることができる。ジンクフィンガードメインを操作するための公に利用可能な方法には、コンテキスト依存アセンブリ(CoDA)、オリゴマー化プール操作(OPEN)、及びモジュラーアセンブリが挙げられる。態様では、本明細書で提供されている方法及び/または組成物は、1以上、2以上、3以上、4以上、または5以上のZFNを含む。別の態様では、本明細書で提供されているZFNは標的化されたDSBまたはニックを生成することができる。
【0063】
部位特異的ヌクレアーゼは、TALEN酵素であってもよい。TALENは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメイン(例えば、FokI)に融合することにより生成される人工制限酵素である。TALENペアの各メンバーが標的部位に隣接するDNA部位に結合すると、FokI単量体が二量体化し、標的部位で二本鎖DNA切断を引き起こす。野生型のFokI切断ドメインのほかに、変異を伴ったFokI切断ドメインの変異体が、切断特異性及び切断活性を改善するために設計されている。FokIドメインは二量体として機能し、適切な方向と間隔で標的ゲノムにおける部位について固有のDNA結合ドメインを持つ2つの構築物を必要とする。TALENのDNA結合ドメインとFokI切断ドメインの間のアミノ酸残基の数、及び2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基の数は高レベルの活性を達成するためのパラメーターである。
【0064】
TALENは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに融合することによって生成される人工制限酵素である。いくつか態様では、ヌクレアーゼは、PvuII、MutH、TevI、FokI、AlwI、MlyI、SbfI、SdaI、StsI、CleDORF、Clo051、及びPept071から成る群から選択される。TALENペアの各メンバーが標的部位に隣接するDNA部位に結合すると、FokI単量体が二量体化し、標的部位で二本鎖DNA切断を引き起こす。本明細書で使用されるとき、TALENという用語は広義であり、別のTALENの助けなしに二本鎖DNAを切断することができる単量体のTALENを含む。TALENという用語は、同じ部位でDNAを切断するために一緒に機能するTALENのペアの一方または双方のメンバーも指す。
【0065】
転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、例えば、植物の遺伝子のゲノム遺伝子座にてまたはその近傍で事実上どのDNA配列にも結合するように操作することができる。TALEは、33~34のアミノ酸の13~28の反復単量体で構成される中央DNA結合ドメインを有する。各単量体のアミノ酸は、12位及び13位での超可変アミノ酸残基を除いて高度に保存されている。2つの可変アミノ酸は反復可変二残基(RVD)と呼ばれる。RVDのアミノ酸ペアNI、NG、HD、及びNNはそれぞれ、アデニン、チミン、シトシン、及びグアニン/アデニンを優先的に認識し、RVDの調節は連続したDNA塩基を認識することができる。アミノ酸配列とDNA認識の間のこの単純な関係は、適当なRVDを含有する反復セグメントの組み合わせを選択することによって特定のDNA結合ドメインの操作が可能している。
【0066】
野生型のFokI切断ドメインのほかに、変異を伴ったFokI切断ドメインの変異体が切断特異性及び切断活性を改善するように設計されている。FokIドメインは二量体として機能し、適切な方向と間隔で標的ゲノムにおける部位について固有のDNA結合ドメインを持つ2つの構築物を必要とする。TALENのDNA結合ドメインとFokI切断ドメインの間のアミノ酸残基の数、及び2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基の数は高レベルの活性を達成するためのパラメーターである。PvuII、MutH、及びTevIの切断ドメインは、TALEと共に使用するためのFokI及びFokI変異体に対する有用な代替である。PvuIIはTALEに結合すると高度に特異的な切断ドメインとして機能する(Yank,et al.2013.PLoS One.8:e82539を参照のこと)。MutHはDNAに鎖固有のニックを導入することができる(Gabsalilow,et al.2013,Nucleic Acids Research.41:e83を参照のこと)。TevIは標的とされる部位でDNAに二本鎖切断を導入する(Beurdeley,et al.,2013,Nature Communications.4:1762を参照のこと)。
【0067】
TALE結合ドメインのアミノ酸配列とDNA認識の関係によって設計可能なタンパク質が可能になる。DNAWorksのようなソフトウェアプログラムを使用してTALE構築物を設計することができる。TALE構築物を設計する他の方法は当業者に知られている。Doyle,et al.,Nucleic Acids Research,(2012),40:W117-122.;Cermak,et al.,Nucleic Acids Research,(2011),39:e82;及びtale-nt.cac.cornell.edu/aboutを参照のこと。別の態様では、本明細書で提供されているTALENは標的化されたDSBを生成することが可能である。
【0068】
部位特異的ヌクレアーゼはメガヌクレアーゼであってもよい。ホーミングエンドヌクレアーゼのLAGLIDADGファミリーのような微生物で一般的に同定されるメガヌクレアーゼは、高い活性と長い認識配列(>14bp)を持つ独特の酵素であり、標的DNAの部位特異的消化を生じる。天然に存在するメガヌクレアーゼの操作された型は通常、伸長されたDNA認識配列(例えば、14~40bp)を有する。いくつかの実施形態によれば、メガヌクレアーゼはI-CreI、I-CeuI、I-MsoI、I-SceI、I-AniI、及びI-DmoIから成る群から選択される足場または塩基酵素を含んでもよい。メガヌクレアーゼのDNA認識及び切断機能は単一のドメインにて絡み合っているので、メガヌクレアーゼの操作はZFN及びTALENよりも難題であり得る。変異誘発とハイスループットスクリーニングの特殊な方法を使用して、独特の配列を認識し、ヌクレアーゼ活性が向上した新規メガヌクレアーゼ変異体を作り出している。したがって、メガヌクレアーゼは、例えば、遺伝子のゲノム遺伝子座にてまたはその近傍で植物のゲノム標的配列に結合するように選択されてもよく、または操作されてもよい。別の態様では、本明細書で提供されているメガヌクレアーゼは標的化されたDSBを生成することができる。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、ドナーテンプレートは、部位特異的ヌクレアーゼと共に外植片の受容細胞に同時送達されて、部位特異的ヌクレアーゼによる受容細胞ゲノムの標的部位にて二本鎖切断(DSB)またはニックの修復中に所望の編集を生成するためのテンプレートとして役立ってもよい。あるいは、ドナーテンプレートは外植片の受容細胞にすでに存在してもよい。同様に、誘導型ヌクレアーゼについては、ガイド核酸をコードする転写可能なDNA配列または導入遺伝子も、誘導部位特異的ヌクレアーゼと共に外植片の受容細胞に同時送達されて受容細胞ゲノムにおける所望の遺伝子座または標的部位にて二本鎖切断(DSB)またはニックを行うように誘導型ヌクレアーゼを指図するガイド核酸として役立ってもよい。あるいは、ガイド核酸、及び/またはガイド核酸をコードする転写可能なDNA配列を含むDNA分子または導入遺伝子は外植片の受容細胞にてすでに存在してもよいし、またはそれによって発現されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、(i)部位特異的ヌクレアーゼ、ガイド核酸、及びドナーテンプレートは受容細胞への粒子銃送達のための粒子に適用されてもよく、またはコーティングされてもよい、または(ii)部位特異的ヌクレアーゼ及び/またはガイド核酸は受容細胞への微粒子銃送達のために粒子に適用されてもよく、またはコーティングされてもよく、且つドナーテンプレートは任意で受容細胞にて存在してもよく、または発現されてもよい、または(iii)部位特異的ヌクレアーゼ及び/またはドナーテンプレートは受容細胞への微粒子銃送達のために粒子に適用されてもよく、またはコーティングされてもよく、且つガイド核酸は任意で受容細胞にて存在してもよく、または発現されてもよい、または(iv)ガイド核酸及び/またはドナーテンプレートは受容細胞への微粒子銃による送達のために粒子に適用されてもよく、またはコーティングされてもよく、且つ部位特異的ヌクレアーゼは任意で受容細胞にて存在してもよく、または発現されてもよく、(i)、(ii)、(iii)、または(iv)いずれの場合にも、部位特異的ヌクレアーゼによって受容細胞ゲノムの所望の遺伝子座または標的部位に二本鎖切断(DSB)またはニックを入れて、受容植物細胞のゲノムにおける所望の位置でテンプレート化されたまたはテンプレート化されていない編集または変異を作り出してもよい。
【0071】
植物のゲノム内の任意の部位または遺伝子座は、導入遺伝子、構築物または転写可能なDNA配列のゲノム編集(または遺伝子編集)または部位特異的組込みを行うために選択される可能性があってもよい。ゲノム編集及び部位特異的組込みについては、選択されたゲノム遺伝子座にて、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、操作されたもしくは天然のメガヌクレアーゼ、TALE-エンドヌクレアーゼ、または誘導型ヌクレアーゼ(Cas9またはCpf1等)のような部位特異的ヌクレアーゼによって二本鎖切断(DSB)またはニックが先ず入れられてもよい。部位特異的組込みについて当該技術分野で知られている任意の方法が使用されてもよい。挿入配列を伴うドナーテンプレート分子の存在下で、DSBまたはニックはドナーテンプレートの相同性アーム(複数可)と植物ゲノムの間での相同組換えによって、または非相同末端結合(NHEJ)によって修復することができ、植物ゲノムへの挿入配列の部位特異的組込みを生じてDSBまたはニックの部位で標的化された挿入事象を作り出す。したがって、導入遺伝子、転写可能なDNA配列、構築物または配列がドナーテンプレートの挿入配列に位置するのであれば、導入遺伝子、転写可能なDNA配列、構築物または配列の部位特異的な挿入または組込みが達成されてもよい。
【0072】
DSBまたはニックの導入を用いて、植物のゲノムに標的化された変異を導入してもよい。このアプローチによれば、欠失、挿入、逆位及び/または置換のような変異は、DSBまたはニックの不完全な修復を介して標的部位に導入され、遺伝子のノックアウトまたはノックダウンを生じてもよい。そのような変異は、ドナーテンプレート分子を使用しなくても、標的とされた遺伝子座の不完全修復によって生成されてもよい。遺伝子の「ノックアウト」は、タンパク質の非発現または非機能性タンパク質の発現をもたらす、遺伝子の内在性遺伝子座にてまたはその近傍でDSBまたはニックを誘導することによって達成されてもよいのに対して、遺伝子の「ノックダウン」は、遺伝子のコード配列に影響を及ぼさない部位にてコードされたタンパク質の機能を排除する方法で不完全に修復される遺伝子の内在性遺伝子座にてまたはその近傍でDSBまたはニックを誘導することにより、同様の方法で達成されてもよい。例えば、内在性遺伝子座内のDSBまたはニックの部位は、遺伝子の上流または5’領域(例えば、プロモーター及び/またはエンハンサーの配列)にあってその発現のレベル影響を与えてもよいし、またはそれを低下させてもよい。同様に、遺伝子のそのような標的化されたノックアウトまたはノックダウンの変異は、DSBまたはニックの修復を介して標的部位にてまたは近傍で特定のまたは所望の変異を指示するドナーテンプレート分子によって生成されてもよい。ドナーテンプレート分子は、挿入配列の有無にかかわらず、DSBまたはニックの部位にてまたはその近傍での標的化されたゲノム配列と比べて1以上の欠失、挿入、逆位及び/または置換のような1以上の変異を含む相同配列を含んでもよい。例えば、遺伝子の標的化されたノックアウト変異は、遺伝子の少なくとも一部を置換、挿入、欠失、または反転することによって、例えば、遺伝子のコード配列にフレームシフトまたは時期尚早の停止コドンを導入することによって達成されてもよい。遺伝子の一部の欠失は、2つの標的部位でDSBまたはニックを生成し、標的部位が隣接する介在標的領域の欠失を引き起こすことによって導入されてもよい。
【0073】
本明細書で使用されるとき、組換えポリヌクレオチド、DNAまたはRNAのドナーテンプレートまたは配列であってもよい「ドナー分子」、「ドナーテンプレート」、または「ドナーテンプレート分子」(まとめて「ドナーテンプレート」)は、相同な核酸テンプレートまたは配列(例えば、相同配列)及び/または植物細胞のゲノムのニックまたは二本鎖DNA切断の修復を介した、植物細胞のゲノムへの部位特異的な標的化された挿入または組換えのための挿入配列を有する核酸分子として定義される。ドナーテンプレートは、標的化された組込みのための1以上の相同配列(複数可)及び/または挿入配列を含む別個のDNA分子であってもよいし、またはドナーテンプレートは、1以上の他の発現カセット、遺伝子/導入遺伝子及び/または転写可能なDNA配列をさらに含むDNA分子の配列部分(例えば、ドナーテンプレート領域)であってもよい。例えば、「ドナーテンプレート」は、導入遺伝子または抑制構築物の部位特異的組込みのために、または例えば、挿入、欠失、置換等のような変異を植物のゲノム内の標的部位に導入するためのテンプレートとして使用されてもよい。本明細書で提供されている標的化されたゲノム編集技術は、1以上、2以上、3以上、4以上、または5以上のドナー分子またはドナーテンプレートの使用を含んでもよい。「ドナーテンプレート」は、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの分子またはプラスミドであってもよい。ドナーテンプレートの「挿入配列」は、植物細胞のゲノムへの標的化された挿入のために設計された配列であり、任意の好適な長さであってもよい。例えば、ドナーテンプレートの挿入配列は、長さ2~50,000の間、2~10,000の間、2~5000の間、2~1000の間、2~500の間、2~250の間、2~100の間、2~50の間、2~30の間、15~50の間、15~100の間、15~500の間、15~1000の間、15~5000の間、18~30の間、18~26の間、20~26の間、20~50の間、20~100の間、20~250の間、20~500の間、20~1000の間、20~5000の間、20~10,000の間、50~250の間、50~500の間、50~1000の間、50~5000の間、50~10,000の間、100~250の間、100~500の間、100~1000の間、100~5000の間、100~10,000の間、250~500の間、250~1000の間、250~5000、または250~10,000の間のヌクレオチドまたは塩基対であってもよい。ドナーテンプレートはまた、相同組換えを介して植物のゲノム内の標的部位への変異または挿入配列の組込みを指示するために2つの相同性アームのような少なくとも1つの相同性配列または相同性アームを有してもよく、その際、相同性配列または相同性アーム(複数可)は、植物のゲノム内の標的部位にてまたはその近傍での配列と同一であるもしくは相補性である、または同一性パーセントもしくは相補性パーセントを有する。ドナーテンプレートが相同性アーム(複数可)及び挿入配列を含む場合、相同性アーム(複数可)は、ドナーテンプレートの挿入配列に隣接するまたはそれを取り囲むであろう。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、ドナーテンプレートは、挿入配列またはテンプレートが介在する修復の部位特異的組込みためのドナーテンプレートとして機能する組換えポリヌクレオチド分子または構築物の「ドナーテンプレート領域」を含んでもよく、その際、組換えポリヌクレオチド分子または構築物はさらに、ドナーテンプレートとは無関係であってもよいドナーテンプレート領域の外側の他の要素をさらに含む。例えば、組換えポリヌクレオチド分子または構築物は、「ドナーテンプレート領域」及び選択可能マーカー及び/または標的遺伝子の抑制のためのガイドRNAまたはRNA分子のような非コードRNA分子をコードする転写可能なDNA配列のような1以上の導入遺伝子(複数可)を含んでもよい。
【0075】
ドナーテンプレートの挿入配列は、転写された非コードRNAまたはmRNA配列及び/または翻訳されたタンパク質配列をそれぞれコードする1以上の遺伝子または配列を含んでもよい。ドナーテンプレートの転写された配列または遺伝子は、タンパク質または非コードRNA分子をコードしてもよい。非コードRNA分子は、例えば、ガイドRNAまたは抑制のために遺伝子を標的とするRNA分子(例えば、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA鎖、逆方向反復等)であってもよい。ドナーテンプレートの挿入配列は、機能的遺伝子または全遺伝子配列を含まないポリヌクレオチド配列を含んでもよく(例えば、ドナーテンプレートは、プロモーター配列のような調節配列、または遺伝子もしくはコード配列のほんの一部を単純に含んでもよい)、または識別可能な遺伝子発現要素または活発に転写された遺伝子配列を含有しなくてもよい。さらに、ドナーテンプレートは線状または環状であってもよく、一本鎖または二本鎖であってもよい。ドナーテンプレートは、導入遺伝子から発現されるDNA分子またはRNA分子として細胞に送達されてもよい。ドナーテンプレートは、裸の核酸分子として、または1以上の送達剤(例えば、リポソーム、タンパク質、ポロキサマー、タンパク質でカプセル化されたT鎖、等)との複合体として細胞に送達されてもよい。本明細書で提供されているドナーテンプレートの挿入配列は、非コーディングまたはタンパク質コーディングであってもよいRNA分子に転写されてもよい転写可能なDNA配列を含んでもよく、転写可能なDNA配列は、例えば構成的プロモーター、誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーターのようなプロモーター及び/または他の調節配列に作動可能に連結されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、ドナーテンプレートは挿入配列を含まなくてもよく、代わりに、植物のゲノム内の標的部位にて、例えば、植物のゲノム内の遺伝子にてまたはその近傍でゲノム配列に比べて挿入、欠失、置換、等のような1以上の変異を含む1以上の相同配列を含んでもよい。あるいは、ドナーテンプレートは、コードDNA配列または転写可能なDNA配列を含まない挿入配列を含んでもよく、その際、挿入配列は、植物のゲノム内の標的部位にて、例えば、植物のゲノム内の遺伝子にてまたはその近傍で1以上の変異を導入するのに使用される。
【0077】
本明細書で提供されているドナーテンプレートは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10の遺伝子(複数可)または導入遺伝子(複数可)及び/または転写可能なDNA配列(複数可)を含んでもよい。あるいは、ドナーテンプレートは、遺伝子、導入遺伝子、または転写可能なDNA配列を含まなくてもよい。限定されることなく、ドナーテンプレートの遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列には、例えば、殺虫剤耐性遺伝子、除草剤耐性遺伝子、窒素利用効率遺伝子、水利用効率遺伝子、収量向上遺伝子、栄養品質遺伝子、DNA結合遺伝子、選択可能なマーカー遺伝子、RNAiまたは抑制構築物、部位特異的ゲノム修飾酵素遺伝子、CRISPR/Cas9系の単一のガイドRNA、ジェミニウイルスベースの発現カセット、または植物ウイルス発現ベクター系が挙げられてもよい。他の実施形態によれば、ドナーテンプレートの挿入配列は、抑制のために内在性遺伝子を標的としてもよい非コードRNA分子をコードするタンパク質コード配列または転写可能なDNA配列を含んでもよい。ドナーテンプレートは、例えば、構成的プロモーター、組織特異的または組織選択的プロモーター、発生段階プロモーター、または誘導性プロモーターのような、コード配列、遺伝子または転写可能なDNA配列に作動可能に連結されたプロモーターを含んでもよい。ドナーテンプレートは、リーダー、エンハンサー、プロモーター、転写開始部位、5’-UTR、1以上のエクソン(複数可)、1以上のイントロン(複数可)、転写終結部位、領域または配列、3’-UTR、及び/またはポリアデニル化シグナルを含んでもよく、それらはそれぞれが、非コードRNA、ガイドRNA、mRNA及び/またはタンパク質をコードするコード配列、遺伝子(または導入遺伝子)、または転写可能なDNA配列に作動可能に連結されてもよい。
【0078】
本実施形態によれば、組換えドナーテンプレートポリヌクレオチド分子の一部(例えば、挿入配列)は、ゲノム編集を介して植物ゲノム内の所望の部位または遺伝子座に挿入されてもよく、または組み込まれてもよい。ドナーテンプレートの挿入配列は、抑制のために内在性遺伝子を標的とする、タンパク質をコードする導入遺伝子または非コードRNA分子をコードする転写可能なDNA配列のような導入遺伝子または構築物を含んでもよい。ドナーテンプレートはまた、挿入配列に隣接する1または2の相同性アームを有して相同組換え及び/または相同組換え修復を介して標的挿入事象を促進してもよい。各相同性アームは、植物細胞のゲノムの範囲内での標的DNA配列の少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2500、または少なくとも5000の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%または100%同一であってもよいし、または相補性であってもよい。いくつかの実施形態によれば、その挿入配列が抑制のために内在性遺伝子を標的とする非コードRNA分子をコードする導入遺伝子または転写可能なDNA配列のような導入遺伝子または構築物を含んでもよい、その挿入配列の部位特異的なまたは標的化された組込みのための組換えDNAドナーテンプレート分子、及び/または植物のゲノムへのその相同配列(複数可)の組換えは、部位特異的ヌクレアーゼタンパク質またはRNPと共に同時送達されてもよい。組換えDNAドナーテンプレートはまた、選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカー遺伝子及び/またはガイド核酸をコードする導入遺伝子を含んでもよく、その際、マーカー遺伝子及びガイド核酸をコードする導入遺伝子は、それぞれ、植物で発現可能なプロモーター及び/または他の発現調節要素に作動可能に連結されてもよい。
【0079】
本明細書で使用されるとき、ゲノム編集または部位特異的組込みのための「標的部位」は、植物ゲノム内のポリヌクレオチド配列及び/またはその相補性なDNA鎖の核酸主鎖に修飾導入するためにゲノム修飾酵素によって結合される植物ゲノム内のポリヌクレオチド配列の位置を指す。標的部位は、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも29、または少なくとも30の連続したヌクレオチドを含んでもよい。核酸誘導型ヌクレアーゼの「標的部位」は、標的部位における二本鎖核酸(DNA)分子または染色体の相補鎖のいずれかの配列を含んでもよい。部位特異的ヌクレアーゼは、例えば、非コードガイド核酸(例えば、限定することなく、本明細書にさらに記載されるようなCRISPR RNA(crRNA)または単一ガイドRNA(sgRNA))を介して標的部位に結合してもよい。本明細書で提供されている非コードガイド核酸は、標的部位に相補性(例えば、標的部位にて二本鎖核酸分子のいずれかの鎖または染色体に相補性)であってもよい。完全な同一性または相補性は非コードガイド核酸が標的部位に結合するまたはハイブリッド形成するのに必要とされなくてもよいことが十分に理解されるであろう。例えば、標的部位とガイド核酸との間の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、または少なくとも8つのミスマッチ(またはそれ以上)は容認されてもよい。「標的部位」は、また、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)等のようなガイド核酸によって誘導されなくてもよい他の任意の部位特異的ヌクレアーゼによって結合されて且つ切断されて、ポリヌクレオチド配列及び/またはその相補性なDNA鎖に二本鎖切断(または一本鎖ニック)を導入する、植物ゲノム内のポリヌクレオチド配列の位置も指す。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「標的領域」または「標的化された領域」は2以上の標的部位が隣接するポリヌクレオチド配列または領域を指す。限定することなく、いくつかの実施形態では、標的領域は2つの標的部位での二本鎖切断またはニックの修復に続いて、変異、欠失、挿入または逆位に供されてもよい。本明細書で使用されるとき、ポリヌクレオチドの配列または分子の標的領域を説明するために使用される場合の「隣接される」は、標的領域の両側に1つの標的部位を持つ、標的領域を囲むポリヌクレオチドの配列または分子の2以上の標的部位を指す。
【0081】
本明細書で提供されるのは、本明細書に記載されている種々の培養工程及び処理工程と併せて、部位特異的ヌクレアーゼタンパク質またはRNPを成熟切除外植片及び/または乾燥切除外植片の少なくとも1つの細胞に送達することによって、ゲノム編集した植物またはトランスジェニック植物を発生させるまたは再生する、トランスジェニックのまたはゲノム編集された植物、植物の一部及び種子を作製する方法である。さらに、提供されるのは、本方法に従って作製されたトランスジェニックのまたはゲノム編集された植物、植物の一部及び種子である。本開示の一態様によれば、部位特異的ヌクレアーゼによる粒子衝撃に供した外植片から発生させたまたは再生された植物またはその子孫植物は、発生させたまたは再生された植物またはその子孫植物は、編集もしくは変異によって生成されたマーカー、形質もしくは表現型に基づいて、または発生させたもしくは再生された植物もしくはその子孫植物、植物の一部もしくは種子における挿入配列、導入遺伝子等の部位特異的組込みによってスクリーニングまたは選択することができる。所与の変異、編集、形質、または表現型が劣性であるならば、形質または変異についてホモ接合性の植物を作るには初代R0植物からの1以上の世代または交配(例えば、自殖)が必要とされてもよいので、その形質または表現型を観察することができる。R1種子からまたはその後の世代で育った植物のような子孫植物は、ヘテロ接合体、ホモ接合体と野生型の植物の間での区別を可能にする、例えば、SNPアッセイ、DNA配列決定、熱増幅またはPCR及び/またはサザンブロッティングのような既知の接合性アッセイを使用して接合性について調べることができる。
【0082】
さらなる実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼによる粒子衝撃に供した外植片から発生させたまたは再生された植物、またはその子孫植物、または前述の植物の一部または種子の1以上の組織または細胞は、分子アッセイに基づいてスクリーニングまたは選択されて、挿入配列、導入遺伝子等の編集または変異、または部位特異的組込みの存在を検出することができる。部位特異的相互作用によって導入された編集または変異または導入遺伝子の存在を検出するのに使用されてもよいアッセイには、例えば、サザンブロッティング及びノーザンブロッティング、PCR、FLA、及びDNA配列決定のような分子生物学アッセイ;例えば、タンパク質産物の存在を検出すること、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウエスタンブロット)によるような、または酵素機能または試験管内分析によるような生化学的アッセイが挙げられる。あるいは、部位特異的ヌクレアーゼによる粒子衝撃に供した外植片から発生させたまたは再生された植物、またはその子孫植物または種子は、所望のまたは予測される表現型または形質であってもよい表現型または形質に基づいてスクリーニングまたは選択することができる。
【0083】
IV. 定義
以下の定義は、本明細書で使用される本開示の関連する実施形態を参照してこれらの用語の意味を定義し、明確にし、且つ本開示を理解する際に当業者を導くために提供される。特に明記しない限り、用語は、関連技術、特に分子生物学及び植物形質転換の分野における従来の意味及び使用法に従って理解されるべきである。
【0084】
「胚」は、成体植物の全部または一部に発達することができる前駆組織(例えば、分裂組織)からなる植物種子の一部である。「胚」はさらに、植物胚の一部を含んでもよい。
【0085】
「分裂組織」または「分裂組織」は、未分化細胞または分裂組織細胞を含み、これらは、分化して、例えば、苗条、茎、根、葉、種子、等のすべてまたは一部のような植物の一部、組織または構造の1以上の種類を生成することができる。
【0086】
「再生」及び「再生する」という用語は、1以上の培養工程を介して1以上の植物細胞から植物を成長させるまたは発生させるプロセスを指す。
【0087】
ポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)分子、タンパク質、構築物、ベクター等に関する「組換え」という用語は、作動可能に連結されているが互いに異種である少なくとも2つのポリヌクレオチドまたはタンパク質の配列を含むポリヌクレオチド分子、タンパク質、構築物のような、ヒトの介入なしでの同じ方法では自然界では一緒に存在しない2以上のポリヌクレオチド配列またはタンパク質配列の組み合わせを含む、ポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)分子、タンパク質、構築物等を含む、人工であり、自然界には通常見られない、及び/または自然界には通常見られない状況で存在するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)分子またはタンパク質、構築物等を指す。例えば、「組換え」という用語は、同じ分子(例えば、プラスミド、構築物、ベクター、染色体、タンパク質等)における2以上のDNAまたはタンパク質の配列の任意の組み合わせを指すことができ、そのような組み合わせは、人為的であり、自然界には通常見られない。この定義で使用されるとき、「自然界には通常見られない」という語句は、ヒトが導入しないと自然界には見られないことを意味する。組換えのポリヌクレオチドまたはタンパク質の分子、構築物等は、(i)自然界で互いに近接して存在する他のポリヌクレオチドまたはタンパク質の配列(複数可)から分離されている、及び/または(ii)互いに本来近接していない他のポリヌクレオチドまたはタンパク質の配列(複数可)に隣接する(または隣接する)ポリヌクレオチドまたはタンパク質の配列(複数可)を含むことができる。そのような組換えポリヌクレオチド分子、タンパク質、構築物等は、遺伝子操作されている及び/または細胞の外で構築されているポリヌクレオチドまたはタンパク質の分子または配列を指すこともできる。例えば、組換えDNA分子は、任意の操作されたまたは人工のプラスミド、ベクター等を含むことができ、線状または環状のDNA分子を含むことができる。そのようなプラスミド、ベクター等は、原核生物の複製開始点及び選択可能なマーカー、ならびにおそらく植物の選択可能なマーカー遺伝子等に加えて、1以上の導入遺伝子または発現カセットを含む種々の維持要素を含有することができる。
【0088】
本明細書で使用されるとき、「ゲノム編集試薬」という用語は、配列特異的様態でヌクレオチド配列を修飾することができる任意の酵素を指す。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬は一本鎖切断を誘導することによってゲノムを修飾する。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬は二本鎖切断を誘導することによってゲノムを修飾する。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬はシチジンデアミナーゼを含む。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬は、アデニンデアミナーゼを含む。本開示では、ゲノム編集試薬には、エンドヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、デアミナーゼ、ヘリカーゼ、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬は配列特異的ヌクレアーゼである。
【0089】
一態様では、ゲノム編集試薬は、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、アルゴノート(アルゴノートタンパク質の非限定例としては、Thermus thermophilusアルゴノート(TtAgo)、Pyrococcus furiosusアルゴノート(PfAgo)、Natronobacterium gregoryiアルゴノート(NgAgo)が挙げられる)、誘導型ヌクレアーゼ、例えば、CRISPR関連ヌクレアーゼ(CRISPR関連ヌクレアーゼの非限定例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas10、Cpf1(Cas12aとしても知られる)、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、CasX、CasY、そのホモログ、またはその修飾型が挙げられる)から選択されるエンドヌクレアーゼである。
【0090】
いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬は、デアミナーゼに作動可能に連結されたDNA結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインはCRISPR関連タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬はウラシルDNAグリコシラーゼ(UGI)を含む。いくつかの実施形態では、デアミナーゼはシチジンデアミナーゼである。いくつかの実施形態では、デアミナーゼはアデニンデアミナーゼである。いくつかの実施形態では、デアミナーゼはAPOPECデアミナーゼである。いくつかの実施形態では、デアミナーゼは活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)である。いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、Cas9ヌクレアーゼ、Cpf1ヌクレアーゼ、触媒的に不活性なCas9ヌクレアーゼ、触媒的に不活性なCpf1ヌクレアーゼ、Cas9ニッカーゼ、またはCpf1ニッカーゼである。
【0091】
いくつかの実施形態では、ゲノム編集試薬はリコンビナーゼである。リコンビナーゼの非限定例としては、本明細書で提供されているDNA認識モチーフに結合させたチロシンリコンビナーゼが挙げられ、Creリコンビナーゼ、Ginリコンビナーゼ、Flpリコンビナーゼ、及びTnp1リコンビナーゼから成る群から選択される。態様では、本明細書で提供されているCreリコンビナーゼまたはGinリコンビナーゼは、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、またはTALE DNA結合ドメイン、またはCas9ヌクレアーゼに繋がれる。別の態様では、本明細書で提供されているDNA認識モチーフに結合されたセリンリコンビナーゼは、PhiC31インテグラーゼ、R4インテグラーゼ、及びTP-901インテグラーゼから成る群から選択される。別の態様では、本明細書に提供されるDNA結合ドメインに結合させたDNAトランスポザーゼは、TALE-piggyBac及びTALE-Mutatorから成る群から選択される。
【0092】
「作動可能に連結された」という用語は、プロモーターまたは他の調節要素と、遺伝子(または導入遺伝子)の関連する転写可能なDNA配列またはコード配列との間の機能的連結を指すので、プロモーター等が作動してまたは機能して少なくとも特定の細胞(複数可)、組織(複数可)、発生段階(複数可)及び/または条件(複数可)にて、関連する転写可能なDNA配列またはコード配列の転写及び発現を開始する、支援する、それに影響する、引き起こす、及び/または促進する。
【0093】
当該技術分野で一般に理解されているように、「プロモーター」という用語は一般に、RNAポリメラーゼ結合部位、転写開始部位、及び/またはTATAボックスを含有する、且つ関連する転写可能なポリヌクレオチドの配列及び/または遺伝子(または導入遺伝子)の転写及び発現を支援するまたは促進するDNA配列を指す。プロモーターは、既知のまたは天然に存在するプロモーター配列または他のプロモーター配列から合成で生成する、変化させるまたは由来することができる。プロモーターはまた、2以上の異種配列の組み合わせを含むキメラプロモーターも含むことができる。したがって、本開示のプロモーターは、組成が類似しているが、本明細書で既知のまたは提供されている他のプロモーター配列(複数可)と同一ではないプロモーター配列の変異体を含むことができる。プロモーターは、構成的、発生的、組織特異的、誘導性等のプロモーターに作動可能に連結された関連するコード配列または転写可能な配列または遺伝子(導入遺伝子を含む)の発現パターンに関する種々の基準に従って分類することができる。植物のすべてまたはほとんどの組織で発現を促進するプロモーターは、「構成的」プロモーターと呼ばれる。発生の特定の期間または段階で発現を促進するプロモーターは、「発生的」プロモーターと呼ばれる。他の植物組織と比較して植物の特定の組織における発現の増強を促進するプロモーターは、「組織増強」または「組織優先」プロモーターと呼ばれる。したがって、「組織優先」プロモーターは、植物の特定の組織(複数可)で比較的高いまたは優先的な発現を引き起こすが、植物の他の組織(複数可)ではさらに低いレベルの発現を伴う。植物の特定の組織(複数可)内で発現し、他の植物組織ではほとんどまたはまったく発現しないプロモーターは、「組織特異的」プロモーターと呼ばれる。「誘導性」プロモーターは、寒さ、干ばつもしくは光のような環境刺激、または創傷もしくは化学的適用のような他の刺激に応答して転写を開始するプロモーターである。プロモーターは、異種、同種、キメラ、合成等のようなその起源という点で分類することもできる。
【0094】
本明細書で使用されるとき、「植物で発現可能なプロモーター」は、植物の細胞または組織においてその関連する転写可能なDNA配列、コード配列または遺伝子の転写及び発現を開始する、支援する、それに影響する、引き起こす及び/または促進することができるプロモーターを指す。
【0095】
関連するポリヌクレオチド配列(例えば、転写可能なDNA配列またはコード配列または遺伝子)に関するプロモーターまたは他の調節配列に関して「異種」という用語は、ヒトの導入がない自然界でそのような関連するポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されていないプロモーターまたは調節配列である。-例えば、プロモーターまたは調節配列は、関連するポリヌクレオチド配列とは異なる起源を有する、及び/またはプロモーターまたは調節配列はプロモーターまたは調節配列で形質転換される植物種にて天然には存在しない。同様に、関連するポリヌクレオチド配列、例えば導入遺伝子、コード配列または転写可能なDNA配列に関して「異種プロモーター」または「異種植物発現プロモーター」は、隣接して存在しない及び/またはヒトの導入がない自然界での関連するポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されるプロモーターまたは植物発現プロモーターを意味する。
【0096】
いくつかの実施形態では、特定の実施形態を説明する文脈で(特に、以下のクレームの文脈で)使用される、「a」、「an」、及び「the」という用語、ならびに同様の参照は、本明細書に特段に示されない限り、単数及び複数の双方を網羅すると解釈することができる。いくつかの実施形態では、「または(or)」という用語は、代替案のみを指す、または代替案を相互に排除するように明白に指示されない限り、「及び/または」を意味するのに本明細書で使用される。
【0097】
「~を備える(comprise)」、「~を有する(have)」、「~を含む(include)」なる用語は、オープンエンドの接続動詞である。「~を備える(comprises)」、「~を備えている(comprising)」、「~を有する(has)」、「~を有している)(having)」、「~を含む(includes)」、及び「~を含んでいる(including)」のようなこれらの動詞の1以上のいずれの語形または時制もまたオープンエンドである。例えば、1以上の工程を「備える」、「有する」または「含む」任意の方法は、それらの1以上の工程のみを有することに限定されず、他の列記されていない工程も包含することができる。同様に、1以上の特徴を「備える」、「有する」または「含む」任意の組成物または装置は、それらの1以上の特徴のみを有することに限定されず、他の列記されていない特徴も包含することができる。
【0098】
2以上のヌクレオチド配列またはタンパク質配列を参照して本明細書で使用されるような「同一性パーセント」、「同一性%」または「同一性パーセントの」という用語は、(i)比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することと、(ii)双方の配列において同一の核酸塩基(ヌクレオチド配列について)またはアミノ酸残基(タンパク質について)が生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得ることと、(iii)一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割ることと、(iv)この商に100%を乗じて、同一性パーセントを得ることによって算出される。「同一性パーセント」が特定の比較ウィンドウが指定されていない参照配列に関連して算出されているならば、同一性パーセントは、配列比較領域上の一致する位置の数を参照配列の全長で割ることによって決定される。例えば、「比較ウィンドウ」は、配列比較の領域として定義することができ、その場合、「同一性パーセント」は「配列比較同一性パーセント」とも呼ばれる。したがって、本明細書で使用されるとき、2つの配列(クエリと対象)が最適に並べられる場合(その配列比較のギャップを考慮して)、クエリ配列の「同一性パーセント」は、その長さ(または比較ウィンドウ)にわたるクエリ配列内の位置の総数で割って、その後100%を乗じた2つの配列間の同一位置の数に等しい。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、粒子複合体または組成物の組成物及び製剤は、植物のゲノムを編集するために、おそらく他の成分と共に、「有効量」または「有効濃度」の部位特異的ヌクレアーゼを含んでもよい。粒子/ヌクレアーゼの組成物または製剤の有効量または有効な濃度は、例えば、予め構築されたヌクレアーゼの組成物または製剤が適用される粒子の種類、サイズ及び量、所望のゲノム編集の効率、組成物または製剤における他の成分の同一性及び量、特定の植物種、使用される植物材料の種類(例えば、乾燥切除外植片、濡れ切除胚、等)、及び組成物または製剤が植物材料に適用される特定の条件(例えば、温度、培養等)のような多数の因子に左右されてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態における組成物はさらに、粒子/ヌクレアーゼの組み合わせとの併用で農学的に許容される担体または材料を含んでもよい。本明細書で使用されるとき、担体または材料に関して「農学的に許容される」という用語は、場合によっては、担体または材料が(i)粒子/ヌクレアーゼ組成物が使用される少なくとも目的で粒子/ヌクレアーゼ組成物の他の成分と適合性であること、(ii)粒子/ヌクレアーゼを植物材料(例えば、乾燥切除外植片)に効果的に且つ生存可能に送達するために粒子/ヌクレアーゼ組成物に含めることができること、及び(iii)組成物が適用される植物材料に有害ではない(少なくとも、それが植物材料に適用される、または関連する方法及び量において)ことを意味する。
【0101】
本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で特段に指示されない限り、または文脈によって特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書の特定の実施形態に関して提供されている任意の及びすべての例または例示的な言語(例えば、「例えば」)の使用は、単に本開示を例示することを意図しており、別段の主張がない限り、本開示の範囲を限定するものではない。
【0102】
本開示を詳細に説明してきたが、添付のクレームにてさらに定義されているような本開示の精神及び範囲を逸脱することなく、修正、変形、及び均等な実施形態が可能であることが明らかであろう。さらに、以下を含む本開示における実施例はすべて非限定例として提供されることが十分に理解されるべきである。
【実施例】
【0103】
実施例1.ダイズ外植片の衝撃のためのビーズ及び担体シートの調製
以下は、外植片に衝撃を与えるためのビーズ及び担体シートの調製のためのプロトコールの実施例である。PDS1000ヘリウム粒子銃を用いたダイズ種子由来の乾燥切除胚外植片の衝撃のための粒子またはビーズ及び担体シートは、次のプロトコールに従って調製される。50mgの金またはタングステンの粒子を清浄なDNA分解酵素/RNA分解酵素を含まない試験管に測り入れる。100%エタノール1mlで超音波処理して洗浄した後、簡単な遠心分離により粒子を沈殿させて、エタノールを除去する。粒子を1mlの100%エタノールに再懸濁し、後で使用するために―20℃で保管する。使用に先立って、粒子を超音波処理によって再懸濁する。42μlの金またはタングステンの粒子を新しい試験管に移し、遠心分離により沈殿させ、エタノールを除去する。500μlの滅菌水を加え、超音波処理により粒子を再懸濁する。粒子を遠心分離によって沈殿させ、水を取り除く。25μlの水を試験管に加え、超音波処理によって再懸濁する前に、粒子をピペットチップで洗浄する。
【0104】
タンパク質、DNA及び/またはRNAを試験管に加える(例えば、約2.6μgのDNA)。タンパク質、DNA及び/またはRNAを加えた直後に氷冷滅菌水を加え、混合物の最終容量を245μlにする。混合物を所定の容量にした直後250μlの氷冷2.5MのCaCl2溶液と50μlの滅菌した0.1Mのスペルミジンを加える。次いで、この溶液を低速ボルテックスで混合する。粒子のコーティングを達成するために、試験管を氷上で少なくとも45分間インキュベートする。いくつかの実験ではより良い結果を得るために、溶液を5~10分ごとに混合する。低速遠心分離により、例えば、Eppendorfの5815マイクロ遠心分離機を800~1000rpmで2分間使用することによって粒子を沈殿させる。沈殿物をエタノール1mlで洗浄し、粒子をピペットチップで洗浄し、遠心分離により沈殿させる。エタノールを除去し、100%エタノール36μlを添加して、低速ボルテックスで粒子を再懸濁する。この調製物5μlをヘリウム粒子銃による各衝撃に使用する。電気銃(Accell)については、この調製物はシンチレーションバイアルにて36μlのビーズ/粒子の調製物を10組み合わせ、100%EtOHを加えて20mlの最終容量を生じる。
【0105】
上記の超音波処理工程は45~55kHzで1分間実施することができ;ビーズをコーティングする前の遠心分離工程はIEC微量遠心管にて5000rpm(2300g)で10秒間実施することができ;ビーズのDNAコーティング後の遠心分離工程はIEC微量遠心管にて1000rpm(100g)で2分間実施することができる。
【0106】
実施例2.粒子衝撃のためのダイズ外植片の前培養
以下は、衝撃のために外植片を前培養するためのプロトコールの実施例である。乾燥切除ダイズ胚外植片は粒子衝撃の前に前培養される。成熟胚外植片は、例えば、米国特許第8,362,317号に一般的に記載されているように乾燥ダイズ種子から切除される。外植片を、衝撃用に秤量し、20%PEG4000(Lynx3017;例えば、米国特許出願公開番号第2016/0264983を参照のこと)または10%スクロース培地で1時間再水和し、よくすすぐ。Lynx1595(例えば、米国特許出願公開番号第2016/0264983を参照のこと)培地(または30ppmのCleary’sを含むLynx1595)もこの工程では使用することができる。プレート当たりおよそ50の外植片をEJW1培地またはEJW2培地(例えば、米国特許出願公開番号第2016/0264983を参照のこと)で前培養する。EJW(LIMS4859)培地では、およそ0.5ppmから2ppmの範囲のTDZレベルも使用される。外植片は16/8の明暗周期または暗所にて28℃で1~2日間前培養される。外植片は約3日間前培養されてもよい。
【0107】
実施例3.外植片の粒子衝撃
以下のプロトコールはPDS1000ヘリウム粒子銃で使用することができる。停止スクリーン、破裂ディスク、マクロ担体ホルダーのような銃成分は、70%EtOH(または担体シート用のイソプロパノール)を使用して約1分間消毒する。破裂ディスク(例えば、1350psiディスクを含む、例えば、約650~2200psiの範囲で使用するディスク)を破裂ディスク保持キャップに負荷し、ガス加速チャンバーにねじ込む。停止スクリーンは真ちゅう製の調整可能なネストに配置される。上記に記載されているヘリウム銃調製物5μlが、各衝撃用の各担体シート上に分配される。担体シートは裏返される前に風乾し、真ちゅう製のネストのストッパーまたは保持の上に配置する。マクロ担体発射アセンブリを組み立て、破裂ディスクの真下に配置する。破裂ディスクとマクロ担体発射アセンブリの間のギャップ距離は約1cmである。
【0108】
前培養したダイズ外植片を標的プレート培地#42(TPM42)に配置し、衝撃を与えるが、分裂組織は中央と上を向いている。TPM42培地は、2Lの蒸留水を4Lのビーカーに計量し、16gの洗浄済み寒天を加え、その後、それを25分間オートクレーブにかけ寒天を溶解することによって調製する。TPM42は低粘度用の8%カルボキシメチルセルロース(CMC)(または高粘度用の2%カルボキシメチルセルロース(CMC))と0.4%の洗浄済み寒天とを含有してもよい。溶液をわずかに冷却し、4Lの混合器に注ぎ、次いで320gのCMC(低粘度)または80gのCMC(高粘度)を2Lの水と共に加える。混合物を混合し、4Lのプラスチック製ビーカーに移し、それを次いで30分間オートクレーブにかけ、混合して4本の1Lビンに分ける。次に、TPM42溶液をさらに25分間オートクレーブにかけ、プレートに注ぐ前に約60℃に冷却する。60mmのプレート当たり約12~15mlを注いで約300の標的プレートを作成してもよく、それを4℃または―20℃で保存してもよい。
【0109】
以下は、ACCELL電気粒子銃を使用するためのプロトコールの例である。ビーズ調製物を室温にし、ボルテックスする。0.5ミル、3.2cm2のマイラーシートを任意で除湿ユニット内の小さなプラスチック皿に置き、320μlのビーズ調製物をシートに置く。各シートを風乾する。前培養したダイズ外植片をTPM42プレートに配置し、分裂組織は中央と上を向いている。最初の衝撃のエネルギーにおける矛盾に起因して最初にブランクの衝撃を実施する。標的は担体シートの上に直接配置されている保持スクリーンの上に配置される。部分的なヘリウム真空(13.5インチHg)のもとで、17.5~20kVにてコンデンサーを放電することによって10μlの水滴が蒸発する。蒸発する液滴によって作り出される衝撃波はシートを保持スクリーンに押し込み、それは、ほとんどのマイラーを停止するが、金のビーズがダイズ外植片分裂組織に入るようにする。衝撃間で、ポイント間に鉱物油を一滴浮遊させてから、それらをきれいにするために取り除く。前と同様に、10μlの水をポイント間で浮遊させる。アークチャンバーをPVCブロックで覆い、マイラーシートを正方形の開口部に配置し、スクリーンフードをシートとポイントの上に配置する。スクリーンをシートの上に並べる。対象となる皿を、分裂組織がその上を向くように保持スクリーンの上に逆さまに置き、重りを皿に置く。装置をベルジャーで覆い、真空にする。15秒後、真空は13.5インチHgになり、銃が発射される。
【0110】
実施例4.粒子衝撃後の外植片の培養
衝撃を受けた外植片をEJW1培地にて一晩表面に置く(他の前培養培地も使用されてもよい)。一例では、16/8の明暗周期でプレートを28℃にてインキュベートする。外植片を50~500ppmのスペクチノマイシン含有B5培地(スペクチノマイシンレベルが変更されたLIMS 3485;例えば、米国特許出願公開番号第2016/0264983を参照のこと)にて表面に置くまたは埋め込み、再生プロセス全体を通して16/8の明暗周期にて28℃で保持する。一例では、B5培地中の250ppmのスペクチノマイシンが使用される。aadA選択可能マーカー遺伝子の存在は、選択剤としてのスペクチノマイシンに対する抵抗性または耐性を提供する。24.5gのB5カスタム培地ミックスには、3.21gのGamborgのB5培地、20gのスクロース、及び1.29gのグルコン酸カルシウムが含まれる。苗条/緑色化について培養物をモニターし、必要に応じて継代培養する。
【0111】
実施例5:タンパク質送達に対する発射当たりの金/タングステン粒子のサイズと量の影響
以下の試験のために、実施例1のビーズ調製プロトコールを以下のように改変した。2500rpmで約10秒間遠心分離した後、金またはタングステンの粒子を500μlの滅菌水で3回洗浄し、粒子を50μlの滅菌水の最終容量に再懸濁した。表1はこの試験の処理群を示す。
【0112】
【0113】
核局在化シグナル(NLS)の2つの融合コピーを有する約26μgのGUSタンパク質(β-グルクロニダーゼ)(10μlのGUS 2×NLS)を2μlのTransIT-2020とともに、再懸濁された粒子の各50μlバイアルに加え、GUS 2×NLSの最終濃度は発射当たり約8.7μgだった。バイアルをよく混合し、氷上で10~20分間インキュベートした。次いで、バイアルを8000×gで30秒間遠心分離し、90μlの滅菌水に再懸濁し、2秒間超音波処理した後、30μlを各マクロ担体に負荷した。衝撃に続いて、外植片を5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-グルクロン酸溶液に沈め(Jefferson,et al.,1987,EMBO J 6:3901-3907)、37℃で一晩インキュベートした。次いで、外植片をGUS発現について評価した。
【0114】
異なる量の金またはタングステンの粒子によるGUSタンパク質送達について染色した後の結果を
図1に提供し、約350μgの0.6um金粒子が調べた量すべてでどのタングステン粒子よりも強いGUSの発現を有したことを示す。異なるサイズのタングステン粒子(0.7または1.3μm)と発射当たり異なる量のGUSタンパク質(500-4000μg)によるGUSタンパク質発現の染色後の結果を
図2に示す。これらの結果は、発射当たりのタングステンの量が500から4000μgに増加するにつれて、0.7μmと1.3μmの双方のタングステン粒子サイズを使用した場合、GUSの発現が対応して減少したことを示している。
【0115】
実施例6.安定な再生に対するタングステン粒子の量の影響
Cas9に加えたガイドRNA(gRNA)リボ核タンパク質(RNP)のダイズ乾燥切除外植片へのタングステン媒介送達を介して編集された外植片細胞の安定した再生に対するタングステン粒子の量の影響を、アデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子を含むDNAとの同時衝撃の有無にかかわらず判定した。
【0116】
表2はこの試験の処理群を示す。
【0117】
【0118】
ガイドRNA-Cas9リボ核タンパク質(RNP)複合体を生成するために、20.6μgのCas9タンパク質(126pmol)と8.6μg(253pmol)のsgRNA(配列番号1で示されるような二重tracrRNA::crRNAヘテロ二重鎖T58805を有する単一ガイドRNA)を、1μLのRNA分解酵素阻害剤(RiboLock;Thermo Fisher Scientific)を含有する1×NEB緩衝液3(100mMのNaCl、50mMのトリス-HCl、10mMのMgCl
2、1mMのDTT、25℃でpH7.9)にて1:2のモル比(Cas9タンパク質のガイドRNAに対する比)で混合し、総量を30μlにして、室温で少なくとも1.5分間インキュベートした。同時送達のために、示された濃度でのaadAのPCR産物をプレミックスに加えた。ダイズには、それぞれ染色体(chr11)及び染色体(chr18)に位置するGmPDS11(Glyma.11G253000、配列番号2)及びGmPDS18(Glyma.18G003900、配列番号3)という2つのPDS遺伝子がある。gRNA T58805は、
図3に示される部位(標識されたcrRNA部位)にてGmPDS(Chr11)及びGmPDS(Chr18)の双方で保存された領域にて切断するようにCas9を導くように設計される。FLAプライマーの相補性部位も
図3に示されている。
【0119】
粒子衝撃及び植物の再生のために、示された量のタングステン粒子(Bio-Rad Laboratories)を滅菌水で3回洗浄した後、50μlの滅菌水に再懸濁した。次いで、2μlのTransIT(登録商標)2020(Mirus Bio LLC)及び30μlの上記で提供されたように調製したRNP複合体を粒子に加え、氷上で少なくとも10分間穏やかに混合した。次いで、コーティングされたタングステン粒子をマイクロ遠心管にて8000×gで30秒間沈殿させ、上清画分を除去した。沈殿物を短時間の超音波処理によって180μlの滅菌水に再懸濁した。超音波処理の直後に、コーティングされた粒子を6×マクロ担体(それぞれ30μl)に負荷し、およそ2~3時間風乾させた。粒子衝撃は上記に記載されているように実施された。
【0120】
衝撃を受けた外植片を、LIMS4859(選択なし)に一晩、次にLIMS3485(選択あり)またはLIMS3485(例えば、米国特許出願公開番号第2016/0264983号を参照のこと)に直接、表面に置き、苗条の再生まで28℃及び16/8の明暗周期で培養した。苗条を選択培地から回収し、次いで分子的特徴付けに供した。あるいは、苗条を切断し、LIMS4055培地(例えば、米国特許出願公開番号第2016/0264983号を参照のこと)で発根させ、その後、LIMS4790培地に移して伸長させた。
【0121】
LIMS4790の成分及び調製には、24.5グラムのB5カスタム培地ミックス、0.03グラムのClearys3336WPが含まれ、完全に混合されるまで攪拌すること、水を1000mlに追加すること、pHを5.6に調整すること、4グラムのAgargelを加えること、オートクレーブにかけること、及び0.8mlのカルベンシリン(250mg/ml)と1mlチメンチン(100mg/ml)と2mlのセフォタミン(100mg/ml)とを加えることが含まれる。
【0122】
表2の各処理について、送達効率の結果(形質転換頻度またはTF)を表3にて提供する。表3の結果は、さらに少ない量のタングステン粒子でさらに大きなaadAの送達効率または形質転換効率が得られたことを示している。合計128の外植片が各処理群で衝撃を受けた。これらの外植片から試料採取された苗条の総数が表3に提供されている一方で、aadA遺伝子が陽性の苗条に基づく形質転換頻度(TF)は、衝撃を受けた外植片の総数(TF=治療によるaadA陽性苗条/外植片128個)に比例した。aadAを含まない処理はaadA遺伝子の存在について試料採取されなかったが、aadAマーカー遺伝子及びPDS遺伝子座での編集の検出のために試料採取された苗条の数が提供されている。試料内のaadAの存在はリアルタイム定量PCRによって決定され、試料内の編集の存在はFLAによって検出され、配列決定によって確認された。各苗条から1つの試料のみが採取され、再生が発生した場合、各外植片から1つの苗条のみが試料採取された。
【0123】
【0124】
各処理でaadAが陽性の植物のサブセットをさらに、PDS遺伝子座を標的とするガイドRNA-Cas9リボ核タンパク質(RNP)複合体の同時送達に基づく編集事象の存在について調べた。衝撃後2週間の後に再生した植物体の葉の試料からゲノムDNAを抽出し、片側または両側のPDS遺伝子座での編集の存在を断片長分析(FLA)によって検出した。FLAは、PCR断片長での変動を野生型参照由来のアンプリコンと比較して、野生型参照と比較して1以上の変異を有する試料を同定する、PCRベースの分子分析である。製造元の指示に従って5’FAM標識プライマー、標準プライマー、及びPhusion(商標)ポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific)を使用してPCR反応を実施し、200~500bpのPCR断片を生成した。配列番号4及び5で示されるようなGmPDS遺伝子のFLAプライマーは、GmPDS11(Chr11におけるPDS遺伝子)について428bpのPCR断片とGmPDS18(Chr18におけるPDS遺伝子)について384bpのPCR断片を生じる。これらの予想サイズと異なるPCR断片は、変異または編集された対立遺伝子として見なされる、または検出される。1ulのPCR産物を0.5ulのマーカーと8.5ulのホルムアミドと合わせ、ABIシーケンサー(Life Technologies、NY)で実行し、断片長の変動を分析して、標的部位に変異がある植物を同定し、それをTOPOクローニング及び配列決定によって確認した。FLAによって検出されたような編集を有する植物試料の数を表4に示す。TOPOクローニングと確認配列決定については、PDS標的部位に隣接するゲノムDNAをPCRで増幅し、PCR(商標)BluntII-TOPO(登録商標)ベクター(ThermoFisher)にクローニングし、熱ショックによってE.coliのTOPO10株を形質転換し、50ug/mlのカナマイシンを含むLB寒天プレートにて37℃で一晩選択した。標準のM13F及びM13Rのプライマーを使用したPCR増幅のためにコロニーを摘み取った。PCR産物は、PDS遺伝子編集を確認するためにサンガー配列決定に供した。
【0125】
【0126】
編集を含有すると推定される2つの試料(RNP1009-6-4及びRNP1009-7-3)は、FLAに基づいて同定された。編集はTOPOクローニングとサンガー配列決定によって確認された。上記に記載されているように、FLAによって変異または編集を有すると同定された陽性試料由来のゲノムDNAを、PDS遺伝子標的部位についてのプライマーを用いたPCR増幅に供し、アンプリコンはTOPOベクターにサブクローニングし、コロニーを摘み取って配列決定した。RNP1009-6-4及びRNP1009-7-3の試料由来のアンプリコンには、標的遺伝子座での複数の編集が含まれ、最も一般的な編集は、ガイドRNAのゲノム標的部位の範囲内及びその近傍での不定期の塩基の変化と併せた3塩基対(bp)の欠失と1bpの挿入である。理論に束縛されることなく、この実験では、試料またはR0植物内のキメラの可能性に加えて、PDS遺伝子の2つのコピーをそれぞれ有する2つのPDS遺伝子座のために、単一の試料またはR0植物から複数の編集が得られてもよい。この試験では、すべてのaadA陽性試料全体で1.5%の試料編集頻度が得られ、1回の処理(RNP1009-7)で3.2%の試料編集頻度が得られた。しかしながら、さらに多くの外植片や試料を処理すると、及び/または調べると、他の処理で編集が得られてもよいことに注意することが重要である。
【0127】
実施例7.安定した再生と編集頻度に対する粒子サイズの影響
アデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子を含むDNAとの同時衝撃の有無にかかわらず、安定した再生と編集頻度に対するタングステン粒子サイズの影響を判定した。RNP複合体形成及びビーズの調製は、実施例6で上述したように実施した。外植片調製、微粒子銃送達及び編集された事象の再生については、実施例1~5で提供されたプロトコールを使用した。ある量の乾燥ダイズ外植片(例えば、約20g)を20%PEG4000(LIMS3017再水和培地)で1時間再水和し、よくすすいだ。プレート当たり約50の外植片をLIMS4859前培養培地にて(例えば、米国特許公開番号第2016/0264983号を参照のこと)28℃、16/8の明暗周期で1日、前培養した。外植片をヘリウム粒子銃による粒子衝撃に供した。ヘリウムタンクは開いたときに1700psiに設定し、外植片を衝撃が完了するまで約27インチHgの真空圧に供した。
【0128】
表面に置いた衝撃を受けた外植片を、LIMS4859(選択なし)に一晩置いた後、LIMS3485(選択あり)またはLIMS3485(米国特許出願公開番号第2016/0264983号)に直接置き、苗条の再生まで28℃及び16/8の明暗周期で培養した。苗条を選択培地から回収し、分子的特徴付けのためにさらに試料採取した。あるいは、苗条を切り取り、LIMS4055培地で発根させることができ(例えば、米国特許出願公開番号第2016/0264983号を参照のこと)、伸長のためにLIMS4790培地に移した。
【0129】
表5は、アデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子の有無にかかわらず、発射当たりのタングステン粒子の粒子サイズ及び量を変化させることによるこの試験の様々な処理群を示す。
【0130】
【0131】
送達効率の結果(形質転換頻度またはTF)を表6に示す。
【0132】
【0133】
この実験は、粒子の形質転換及び送達は他の処理で得られるが、さらに少ない量のタングステン粒子でさらに大きな送達効率が得られることを再び示した。再び、合計128の外植片が各処理群で衝撃を受けた。これらの外植片から試料採取された苗条の総数を表6に提供する一方で、形質転換頻度(TF)は、衝撃を受けた外植片の総数に比例した(TF=処理ごとのaadA陽性苗条/外植片128個)。実施例6と同様に、aadA陽性植物の間での編集頻度をFLAによって決定し、それはTOPOクローニング及び配列決定によっても確認された。結果を表7に示す。
【0134】
【0135】
3つの推定編集試料(RNP1008-6-3、RNP1008-7-18及びRNP1008-8-6)は、FLAに基づいて同定された。これらの陽性試料に編集が存在することは、TOPOクローニングとサンガー配列決定によって確認されたが、摘み取ったコロニーの間でのクローニングされたアンプリコンで最も一般的な編集は、標的遺伝子座の範囲内での及びその近傍での不定期な塩基の変化に併せた2bp、3bp、または7bpの欠失である。この試験では、すべてのaadA陽性試料にわたって2.5%の試料編集頻度が得られ、2つの処理(RNP1008-6及びRNP1008-7)で得られた試料編集頻度は3.3%だった。しかしながら再び、さらに多くの外植片または試料を処理する及び/または調べるならば、編集は他の処理で得られてもよい。
【0136】
実施例8.安定した再生及び編集頻度に対するaadA選択マーカーの量の影響
外植片の調製、微粒子銃による送達、及び編集された事象の再生についての手順は実施例7に記載されたとおりだった。この実験では、0.7umのタングステン粒子250ugと0.04pmolから0.16pmolに及ぶ量のaadAとを発射当たり使用した。表8に示すように、同時衝撃におけるaadA濃度は0.04pmole/発射から0.16pmole/発射に上昇するにつれて、形質転換頻度(TF)が上昇し、aadA導入遺伝子(PCRで検出される)の単一のコピーを有する試料の割合が低下した。この実験では、合計160の外植片が各処理群で衝撃を受けた。これらの外植片から試料採取された苗条の総数は表8に提供されている一方で、形質転換頻度(TF)は衝撃を受けた外植片の総数に比例した(TF=処理ごとのaadA陽性苗条/160の外植片)。
【0137】
FLAを使用したさらなる分子的特徴付けは実施例7に記載されているよう行った。編集されたPDS対立遺伝子を有するとFLAによって同定された植物はさらに、次世代配列決定によって確認され、編集結果を表9に示す。INS_#は#ヌクレオチドの挿入を伴う対立遺伝子を示し、及びDEL_#は#ヌクレオチドに欠失を伴う対立遺伝子を示す。試料編集頻度も上記に記載されているように算出した。この試験では、すべてのaadA陽性試料にわたって3.0%の試料編集頻度が得られ、3つの処理(RNP1011-3、RNP1011-4及びRNP1011-6)で試料編集頻度は3.8%から11.1%に及んだ。しかしながら再び、さらに多くの外植片または試料を処理する及び/または調べるならば、編集は他の処理で得られてもよい。
【0138】
【0139】
【0140】
実施例9.安定した再生及び編集頻度におけるCas9のgRNAに対する相対比の影響
外植片の調製、微粒子銃送達、及び編集された外植片の再生についての手順は実施例7に記載されているように実施した。この実験では、0.7umのタングステン粒子約125ugと0.8pmolのaadAを発射当たり使用した。RNP1014-1からRNP1014-6の処理では、衝撃を受けた外植片をLIMS3485にて直接表面に置くのに対して、RNP1014-7からRNP1014-12の処理では、衝撃を受けた外植片をLIMS4859(選択なし)にて一晩表面に置き、次いでLIMS3485(選択あり)に移した。これらの実験(RNP1013、RNP1014及びRNP1017)におけるCas9タンパク質とgRNAの相対量を、これらの処理についての形質転換頻度及び編集頻度と共に表10及び11に提供する。形質転換頻度及び試料編集頻度の計算は上記に記載されているとおりだった。RNP1013及びRNP1014の実験については、処理当たり合計96の外植片が使用され、RNP1017の実験では、処理当たり合計192の外植片が使用された。表12はさらに、配列決定によって決定されたようなaadA陽性試料の試料編集頻度と編集特性を提供する。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
実施例10.成熟種子外植片にCpf1、gRNA、及びssDNAを送達する
LbCpf1はTTTV PAM配列について優先性を示すので、標的部位GmTS1は、各標的配列の上流の適当なPAM配列の存在に基づいて選択した。crRNAは、LbCpf1タンパク質を標的部位に導くように設計した。精製されたLbCpf1タンパク質またはLbCpf1及び同族のcrRNAを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体を構築した。
【0145】
さらに、5’TEG修飾した長さ70-bpのssDNA(一本鎖DNA)テンプレートを設計した。TEG修飾したssDNAテンプレートは、Integrated DNA Technologies(IDT,product Product 1184,Mod Code:/5Sp9/)から注文した。このテンプレートは、GmTS1部位に隣接するDNA配列と同一になるように設計されている、それぞれ30-bpの5’相同性アームと30-bpの3’相同性アームが隣接するBamHI認識配列を含有する10bpシグネチャー配列を有する。GnTS1部位での対応する野生型配列は、5’と3’の相同性アームの間に8-bpの内在性配列を有する。この一本鎖DNAテンプレート(ssDNAテンプレート)をRNP複合体に加えた。具体的には、コーティング試薬としてTransIT-2020を用いて80pmolのssDNAテンプレート、104pmolのlbCpf1タンパク質、312pmolのgRNA、及び0.08pmolのaadAのDNAを0.6umの金粒子(Bio-Rad;約66ug/発射))にコーティングした。5分ごとに穏やかに混ぜながら、混合物を氷上で15分間以上維持した。次に、コーティングした金粒子(発射当たり10~15ul)をマイクロ担体ディスクに負荷し、1時間乾燥させた。
【0146】
乾燥切除ダイズ胚外植片を、LIMS3990(5.6までのpHで1グラム/LのKNO3、0.03グラム/LのClearys3336WP、3.9グラム/LのMES、30グラム/Lを含有するB5カスタム培地)で1時間再水和し、滅菌H2Oでよくすすぎ、LIMS4859培地にて28℃、16/8の明暗周期で1日、培養した。実施例3に従って、これらの前培養した成熟ダイズ胚外植片に衝撃を与えた。衝撃を与えた後、胚外植片を培地LIMS4859上に移し、28℃で暗所にて2日間培養した。
【0147】
次に、衝撃を受けた外植片を28℃及び16/8の明暗周期で約4週間LIMS3485(選択)に移し、その後、苗条再生まで(約4週間)28℃及び16/8の明暗周期でLIMS4790(発根)に移した。配列決定解析のために苗条組織からDNAを抽出した。aadAマーカー遺伝子が陽性であると特定された235の試料のうち、75の試料は、設計されたCpf1切断部位に小さな挿入または欠失を有した。たぶん、Cpf1切断部位に編集されたBamH1認識配列に加えて非相同の末端結合に起因した、設計されたCpf1bp切断部位に近い7bpから最大43bpに及ぶ1以上の挿入を有する2つの試料が同定された。
【0148】
実施例11.テンプレート編集用にCpf1、gRNA及びssDNAを送達する
実施例10に記載されている手順に従って、8pmolまたは80pmolのssDNAテンプレートを用いた実験の1つを実施した。表13に示すように、8pmolのssDNAテンプレートによって、aadA選択可能マーカー遺伝子が陽性である27の試料はCpf1切断部位にて変異(小さな挿入または欠失)を有することが同定され、試料の1つは、相同性アームによって定義された5’及び3’の接合部が隣接するBamHI認識配列を含有する10bpのシグネチャー配列を有することによる証拠としての完全なテンプレート編集の結果であることが同定された。
【0149】
【0150】
特定の実施形態を参照して本発明を開示してきたが、本明細書に開示され、添付のクレームによって提供されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、改変及び変形が可能であることは明らかであろう。さらに、本開示のすべての例は、本発明の実施形態を例示しているが、非限定例として提供されており、したがって、そのように例示された種々の態様を限定するものとして解釈されるべきではない本開示で引用されている参考文献はすべて、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明は、本開示、以下のクレームの文言、及びそれらの任意の同等物によって定義される全範囲を有することが意図されている。したがって、図面及び詳細な説明は、実例と見なされるべきであり、限定として見なされるべきではない。
【配列表】