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特許7555833摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、および摩擦攪拌接合装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、および摩擦攪拌接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
B23K20/12 342
B23K20/12 340
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021005049
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109641
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 稔尚
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-876(JP,A)
【文献】特開2004-105975(JP,A)
【文献】特開2009-166204(JP,A)
【文献】特開2019-195889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸ヘッドに支持された主軸に装着される本体と、
前記本体に回転自在に支持されかつ接合ツールを装着可能な加工軸と、
前記本体に設置された複数のエアモータと、
複数の前記エアモータの回転を前記加工軸に伝達する伝達機構と、を有する摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記エアモータは前記加工軸に対して対称に配置され、
前記伝達機構は、前記加工軸に接続されたセンターギアと、前記エアモータに接続されかつ前記センターギアの外周に噛合された複数のモータギアとを有する摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記本体に設置されて外部から供給される駆動エアを複数の前記エアモータに分配しかつ外部信号で流量調整可能な駆動エア分配器を有する摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項4】
請求項3に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記駆動エアは、前記主軸を通して供給されるセンタースルーエアである摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記本体の外周に回転自在に装着され、かつ前記主軸ヘッドに接続可能な固定部を有し、
前記駆動エアは、前記主軸ヘッドおよび前記固定部を通して供給される外部エアである摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記加工軸または前記エアモータの回転状態を検出する回転検出器を有する摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記加工軸は、前記主軸の軸線と交差方向に配置されている摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項8】
請求項7に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記加工軸は、前記主軸の軸線と交差方向の配置が、前記加工軸に前記接合ツールを装着した際に前記接合ツールの加工部位が前記主軸の軸線上となる位置とされている摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記加工軸は、前記主軸の軸線上に同軸配置されている摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントに装着された前記接合ツールと、を有する摩擦攪拌接合ヘッド。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合アタッチメントと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントに装着された前記接合ツールと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントが装着された前記工作機械と、を有する摩擦攪拌接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、および摩擦攪拌接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用の工作機械に摩擦攪拌接合用の接合ツールを装着し、摩擦攪拌接合装置として用いることがなされている(特許文献1参照)。
前述した特許文献1では、接合するワークの表面に対して接合ツールの回転軸が垂直に配置されていた。これに対し、接合ツールの回転軸を傾斜させ、その先端側が移動方向の前側に変位するような姿勢とすることにより、ワークへの進入性および軟化した材料の抑え込み性を高めることがなされている。
このような接合ツールの回転軸の傾斜姿勢は、接合ツールを含む摩擦攪拌接合ヘッドや接合ツールを装着可能な摩擦攪拌接合アタッチメントに屈曲ジョイントを含む傾斜機構を設けて実現されるほか、工作機械の主軸を傾斜状態に調整することで実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-127881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1では、摩擦攪拌接合を行う材料の接合線は直線であり、この接合線に沿って回転する接合ツールを移動させていた。
これに対し、より複雑な形状に対する摩擦攪拌接合が求められている。例えば、途中で屈曲する接合線や、曲線状の接合線などに対して、摩擦攪拌接合の適用が望まれている。
しかし、屈曲する接合線や曲線状の接合線に対する摩擦攪拌接合では、前述した接合ツールを傾斜姿勢とする方式がそのまま適用できないという問題がある。
【0005】
すなわち、屈曲する接合線や曲線状の接合線に対して摩擦攪拌接合を行う場合、当然ながら回転する接合ツールを接合線に沿って移動させる。例えば、X軸方向の接合線に沿って摩擦攪拌接合を行う場合、接合ツールの回転軸をX軸方向に傾斜させた状態で、接合ツールをX軸方向へ移動させる。
ここで、接合線が直角に折れ曲がっていたとすると、接合ツールの移動方向は動作プログラムによって容易に変更できるが、接合ツールの回転軸の傾斜姿勢は変更できない。その結果、接合ツールは、X軸と直交方向へ移動する際に、回転軸がX軸方向に傾斜した姿勢のままになるという不都合が生じる。
このような不都合を回避するために、接合ツールの移動方向だけでなく、接合ツールの傾斜方向についても容易に変更できることが求められていた。
【0006】
さらに、ワークの上面に対する摩擦攪拌接合とは別に、ワークの側面に対する摩擦攪拌接合が要望されている。このような側面への摩擦攪拌接合には、主軸を側面に正対させる手法のほか、垂直な主軸にアングルヘッドおよび接合ツールを装着し、側面の向きに応じて接合ツールの向きを変える手法が用いられる。しかし、主軸の向きやアングルヘッドの向きを変更するために、工作機械の位置制御が煩雑になる等の不都合がある。
このようなワーク側面の摩擦攪拌接合においても、アングルヘッドの向きを容易に変更できることが求められていた。
【0007】
前述した接合ツールの傾斜方向の向き変え、あるいはアングルヘッドの向き変えを容易に行うために、本願の出願人は、主軸により向き変えが可能な摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、摩擦攪拌接合装置、および摩擦攪拌接合方法を開発した(特願2020-075490)。
この技術では、工作機械の主軸に装着される本体に、接合ツールを装着可能な加工軸を回転自在に支持し、加工軸を回転駆動する回転駆動部を設け、接合ツールの回転を回転駆動部によって行うことで、主軸の回転を本体の向き変えに利用できるようにしている。
この際、回転駆動部として、主軸の軸心を通して供給されるエアで回転するエアモータが用いられていた。
【0008】
しかし、エアモータによる駆動では、接合ツールに十分な回転トルクが得にくく、安定した摩擦攪拌接合を行うための改善が必要であった。
さらに、エアモータではエア流量によりトルクが変動し、エアモータを制御するために供給するエア流量を調整するだけではトルクの安定化ができなかった。
【0009】
本発明の目的は、接合ツールをエアモータで駆動する際に十分なトルクが得られる摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、および摩擦攪拌接合装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、接合ツールをエアモータで駆動する際にトルクを安定化できる摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、および摩擦攪拌接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
工作機械の主軸ヘッドに支持された主軸に装着される本体と、前記本体に回転自在に支持されかつ接合ツールを装着可能な加工軸と、前記本体に設置された複数のエアモータと、複数の前記エアモータの回転を前記加工軸に伝達する伝達機構と、を有する摩擦攪拌接合アタッチメント。
【0011】
このような本発明では、複数のエアモータのトルクを伝達機構で合成して加工軸に伝達することができる。従って、エアモータの個々のトルクが十分に大きくなくとも、接合ツールにおいて十分なトルクを得ることができる。とくに、必要に応じてエアモータの数を増加させることで、接合ツールにおけるトルクを更に増加させることができる。
さらに、本発明では、エアモータを複数にすることで接合ツールでのトルク増加が可能であるため、減速によるトルク増加が必要ない。このため、伝達機構での増速が可能であり、接合ツールの回転速度の高速化が可能となる。
【0012】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、前記エアモータは前記加工軸に対して対称に配置され、前記伝達機構は、前記加工軸に接続されたセンターギアと、前記エアモータに接続されかつ前記センターギアの外周に噛合された複数のモータギアとを有することが好ましい。
このような本発明では、加工軸を中心に本体の重量バランスがとりやすく、伝達機構のトルクバランスも整えることができる。
【0013】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、前記本体に設置されて外部から供給される駆動エアを複数の前記エアモータに分配しかつ外部信号で流量調整可能な駆動エア分配器を有することが好ましい。
このような本発明では、単一経路からの駆動エアを複数のエアモータで共用できるとともに、外部の制御装置により各エアモータの回転状態を制御することができる。
【0014】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、前記駆動エアは、前記主軸を通して供給されるセンタースルーエアであることが好ましい。
このような本発明では、駆動エア供給のための構成を簡素化できる。
【0015】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、前記本体の外周に回転自在に装着され、かつ前記主軸ヘッドに接続可能な固定部を有し、前記駆動エアは、前記主軸ヘッドおよび前記固定部を通して供給される外部エアであることが好ましい。
このような本発明では、主軸を通したセンタースルーエアの限界を超える流量の駆動エアを供給することができる。また、センタースルーエアの供給機構がない工作機械であっても、主軸ヘッドにエア供給配管を設置する簡単な施工だけで本発明を適用できる。
本発明において、駆動エアとして、外部エアとセンタースルーエアとを併用してもよい。
【0016】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、前記加工軸または前記エアモータの回転状態を検出する回転検出器を有することが好ましい。
このような本発明では、回転状態を検出して駆動エアの流量制御にフィードバックすることで、接合ツールの回転状態およびトルクの安定化を図ることができる。
本発明の回転検出器としては、ロータリーエンコーダや角度センサ、回転カウンタなどの既存の機器を適宜選択することができる。エアモータないし加工軸は伝達機構で連携されているため、エアモータでの回転検出はエアモータのいずれか1個だけでよい。
【0017】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、前記加工軸は、前記主軸の軸線と交差方向に配置されていることが好ましい。
このような本発明では、例えば垂直方向の主軸に装着することで、加工軸および接合ツールを水平方向に支持することができ、ワーク側面の摩擦攪拌接合を行うことができる。そして、主軸により本体の向きを変えることで、加工軸および接合ツールの向きを変更することができる。
【0018】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、前記加工軸は、前記主軸の軸線と交差方向の配置が、前記加工軸に前記接合ツールを装着した際に前記接合ツールの加工部位が前記主軸の軸線上となる位置とされていることが好ましい。
このような本発明では、主軸ないし接合ツールがどの向きであっても、常に接合ツールの加工部位が主軸の軸線上となる。従って、接合ツールの向きに関わりなく、ワークに対する加工位置の指定が容易に行え、制御プログラムの作成なども容易にできる。
【0019】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、前記加工軸は、前記主軸の軸線上に同軸配置されていることが好ましい。
このような本発明では、主軸により本体の向きを変えることで、加工軸および接合ツールの向き、例えば接合ツールが傾斜した向きを、任意の向きに変更することができる。
さらに、加工軸が主軸の軸線と同軸上にあれば、主軸に直接接合ツールを装着した場合と比べて、接合ツールの軸線方向の位置のみが異なり、ワーク表面に対する位置は同じである。従って、主軸に直接接合ツールを装着した場合の制御プログラムを基にして、軸線方向の数値修正など最小限の変更だけで転用することができる。
【0020】
前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと、前記摩擦攪拌接合アタッチメントに装着された前記接合ツールと、を有することを特徴とする摩擦攪拌接合ヘッド。
このような本発明では、前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと同様な効果を得ることができる。
【0021】
前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと、前記摩擦攪拌接合アタッチメントに装着された前記接合ツールと、前記摩擦攪拌接合アタッチメントが装着された工作機械と、を有することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
このような本発明では、前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと同様な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接合ツールをエアモータで駆動する際に十分なトルクが得られる摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、および摩擦攪拌接合装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態の工作機械を示す斜視図。
図2】前記第1実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントを示す図。
図3】前記第1実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントの回転駆動部および制御装置を示す図。
図4】前記第1実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントの伝達機構を示す図。
図5】本発明の第2実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントの回転駆動部および制御装置を示す図。
図6】本発明の第3実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントを示す図。
図7】本発明の第4実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントを示す図。
図8】本発明の第5実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
図1において、本実施形態の摩擦攪拌接合装置1は、縦型主軸を有する汎用の工作機械2に、本発明に基づく摩擦攪拌接合アタッチメント10と、摩擦攪拌接合用の汎用の接合ツール20と、を装着して構成される。摩擦攪拌接合アタッチメント10および接合ツール20により本発明の摩擦攪拌接合ヘッド19が構成される。
【0025】
工作機械2は、ワーク9が固定されるテーブル3と、先端に工具を装着可能な主軸4と、主軸4を回転自在に支持する主軸ヘッド5と、主軸ヘッド5を任意位置へ移動させる移動機構6と、を備えている。
移動機構6は、水平なガイドバー61に支持されたスライダ62を有し、主軸ヘッド5はスライダ62から下向きに支持されている。スライダ62に対して主軸ヘッド5を昇降させることで、主軸4の先端をZ軸方向の指定された位置に移動可能である。また、ガイドバー61に沿ってスライダ62を移動させることで、主軸4の先端をX軸方向の指定された位置に移動可能である。
【0026】
主軸4は、軸線Rが垂直(Z軸方向)とされ、主軸ヘッド5内の駆動モータにより軸線R廻りに回転可能(C軸方向の回転動作Rs)、かつ指定された角度位置に停止可能である。
主軸4には摩擦攪拌接合ヘッド19が装着され、すなわち摩擦攪拌接合アタッチメント10を介して接合ツール20が装着されている。
テーブル3は、ベッド7に設置された駆動機構により、垂直な軸線廻り(C軸方向)に回転可能、かつ指定された角度位置に停止可能である。
これらのテーブル3、主軸4、主軸ヘッド5および移動機構6は、それぞれベッド7の上面に設置され、全体を開閉自在なカバー8で囲うことができる。
工作機械2には、コンピュータシステムを用いた制御装置30が接続され、制御装置30により移動機構6の移動制御、および主軸4の回転制御が実行される。
【0027】
図2において、摩擦攪拌接合アタッチメント10は、工作機械2の主軸4に装着される本体11と、回転自在に支持されて先端に接合ツール20を装着可能な加工軸14と、加工軸14を回転駆動する回転駆動部15と、本体11に回転自在に装着されかつ主軸ヘッドに接続可能な固定部16と、を有する。
【0028】
本体11は、規格に基づくテーパーシャンク111で主軸4に装着可能であるとともに、軸心に沿ってセンタースルーホール112を有し、センタースルーホール112には主軸4からセンタースルーエアが供給可能である。
本体11は、テーパーシャンク111と反対側に、軸線Rと交差方向に張り出す拡張部113を有する。拡張部113には、センタースルーホール112に連通する拡張エア通路114が形成され、拡張エア通路114を通してセンタースルーホール112から回転駆動部15へと駆動エアが供給可能である。
【0029】
加工軸14は、拡張部113の軸線Rに向かう側に設置され、軸線Rと交差する軸線Ccを中心に回転可能(回転動作Rc)である。加工軸14に装着された接合ツール20の加工部位である先端Tcは軸線R上に配置される。
回転駆動部15は、外部から供給される駆動エアにより回転する複数のエアモータを有し、加工軸14を回転駆動可能である。回転駆動部15の詳細は後述する。
【0030】
固定部16は、本体11から離れた先端にサブシャンク161を有し、サブシャンク161を介して主軸ヘッド5に接続可能である。
固定部16には外部エア通路162が形成され、外部エア通路162にはサブシャンク161を通して主軸ヘッド5から外部エアが供給される。外部エア通路162の反対側はセンタースルーホール112に接続され、主軸ヘッド5からの外部エアは、主軸4からのセンタースルーエアと合流され、回転駆動部15へと供給可能である。
【0031】
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10においては、主軸4からセンタースルーホール112を通して回転駆動部15にセンタースルーエアを供給することで、回転駆動部15により加工軸14および接合ツール20が回転駆動され(回転動作Rc)、接合ツール20によるワーク9の側面などに対する摩擦攪拌接合が可能である。
さらに、主軸4により本体11を回転駆動すること(回転動作Rs)で、ワーク9の側面の向きに応じて接合ツール20の向きDiを変更可能である。主軸4により本体11を回転させた場合でも、固定部16はサブシャンク161で回り止めされており、主軸ヘッド5に対して固定される。
【0032】
図3において、回転駆動部15は、複数例えば2個のエアモータ151,152と、伝達機構153と、拡張エア通路114から供給される駆動エアをエアモータ151,152に分配する駆動エア分配器154と、加工軸14の回転状態を検出する回転検出器155と、を有する。
【0033】
エアモータ151,152は、供給された外部エアの圧力をトルク(回転力)に変換する圧力モータであり、ベーン型やタービン型などの比較的高速回転するものが好ましいが、ラジアルピストン型ほかの形式であってもよい。
伝達機構153は、エアモータ151,152の回転を加工軸14に伝達するものであり、例えば噛み合い式の歯車機構が用いられる。
【0034】
図4において、エアモータ151,152は加工軸14の軸線Ccを挟んで対称に、互いに並列配置されている。加工軸14にはセンターギア156が固定され、エアモータ151,152の回転軸にはそれぞれモータギア157,158が固定されている。モータギア157,158は、それぞれセンターギア156を挟んで反対側からセンターギア156に噛合されている。
従って、エアモータ151,152のトルクはモータギア157,158からセンターギア156に伝達されて合成され、加工軸14のトルクとして取り出される。
これらのセンターギア156およびモータギア157,158により伝達機構153が構成されている。
【0035】
駆動エア分配器154は、外部信号で流量調整可能な開度調整弁などで構成され、拡張エア通路114から供給される駆動エアをエアモータ151,152に分配し、かつエアモータ151,152への駆動エアの流量を個別に調整可能である。
回転検出器155は、加工軸14の周面に臨む位置に設置された光学式カウンタやロータリーエンコーダで構成され、加工軸14の回転状態を検出して外部信号として出力可能である。
【0036】
制御装置30には、回転検出器155からの出力信号から加工軸14の回転速度を検出する回転検出部31が設置されている。
さらに、制御装置30には駆動エア制御部32が設置されており、ワーク9に対する加工内容に応じて駆動エア分配器154による駆動エア流量を調整可能である。この際、駆動エア制御部32は、回転検出部31で検出される回転速度を参照し、加工内容に応じた接合ツール20の回転状態が得られるように駆動エア分配器154に対する調整を行う。
これらの駆動エア制御部32および回転検出部31により、回転駆動部15による加工軸14ないし接合ツール20の回転駆動を所望の状態としかつ安定化できる。
【0037】
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10、摩擦攪拌接合ヘッド19、および摩擦攪拌接合装置1によれば、下記に示す効果が得られる。
本実施形態では、複数(2個)のエアモータ151,152のトルクを伝達機構153で合成して加工軸14に伝達することができる。従って、エアモータ151,152の個々のトルクが十分に大きくなくとも、接合ツール20において十分なトルクを得ることができる。本実施形態では2個のエアモータ151,152を用いたが、必要に応じてエアモータの数を増加させることで、接合ツール20におけるトルクを更に増加させることができる。
さらに、本実施形態では、エアモータ151,152を複数にすることで接合ツール20でのトルク増加が可能であるため、減速によるトルク増加が必要ない。このため、伝達機構153での増速が可能であり、接合ツール20の回転速度の高速化が可能となる。
【0038】
本実施形態では、2個のエアモータ151,152を加工軸14に対して対称に配置するとともに、加工軸14に接続されたセンターギア156と、エアモータ151,152に接続されかつセンターギア156の外周に噛合された複数のモータギア157,158とで伝達機構153を構成した。このため、回転駆動部15において、加工軸14を中心に本体11の拡張部113における重量バランスがとりやすく、伝達機構153のトルクバランスも整えることができる。
【0039】
本実施形態では、外部から供給される駆動エアを複数のエアモータ151,152に分配するために、外部信号で流量調整可能な駆動エア分配器154を設けた。このため、単一経路である拡張エア通路114からの駆動エアを、複数のエアモータ151,152で共用できるとともに、外部の制御装置30の駆動エア制御部32により各エアモータ151,152の回転状態を制御することができる。
【0040】
本実施形態では、駆動エアとして、主軸4を通して供給されるセンタースルーエアと、主軸ヘッド5から固定部16を経由して供給される外部エアとを併用した。このため、既存のセンタースルーエアを用いることで駆動エア供給のための構成を簡素化できるとともに、固定部16からの外部エアにより、センタースルーエアの限界を超える流量の駆動エアを供給することができる。
さらに、センタースルーエアの供給機構がない工作機械2であっても、主軸ヘッド5にエア供給配管を設置する簡単な施工だけで本発明を適用できる。
【0041】
本実施形態では、加工軸14の回転状態を検出する回転検出器155を設置したため、加工軸14の回転状態を検出してエアモータ151,152への駆動エアの流量制御にフィードバックすることで、接合ツール20の回転状態およびトルクの安定化を図ることができる。
【0042】
本実施形態では、加工軸14が、主軸4の軸線Rと交差方向(軸線Ccの向き)に配置されている。このため、例えば垂直方向(Z軸方向)の主軸4に装着することで、加工軸14および接合ツール20を水平方向(XY平面方向)に支持することができ、ワーク9側面の摩擦攪拌接合を行うことができる。そして、主軸4により本体11の向きを変えることで、加工軸14および接合ツール20の向きDiを変更することができる。
【0043】
本実施形態では、加工軸14の軸線Cc方向の配置が、加工軸14に接合ツール20を装着した際に接合ツール20の加工部位である先端Tcが主軸4の軸線R上となる位置とされている。このため、主軸4ないし接合ツール20の向きDiがどの方向であっても、接合ツール20の加工部位である先端Tcが主軸4の軸線R上となる。従って、接合ツール20の向きDiに関わりなく、ワーク9に対する加工位置の指定が容易に行え、制御プログラムの作成なども容易にできる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図5には本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Aは、前述した第1実施形態と略同じ構成を有するが、回転駆動部15の構成が異なる。このため、同じ構成についての重複する説明は省略し、相違する部分について説明する。
【0045】
図5において、本実施形態の回転駆動部15Aは、前述した第1実施形態と同様に複数のエアモータ151A,152Aと、駆動エア分配器154と、回転検出器155と、を有する。
前述した第1実施形態ではエアモータ151,152が並列に配置され、各々の回転が歯車式の伝達機構153で合流されていた。これに対し、エアモータ151A,152Aは直列に配置されている。そして、加工軸14が延長されてエアモータ151A,152Aの中心を順次貫通されており、この加工軸14の延長部分によりエアモータ151A,152Aのトルクが合成されて加工軸14に伝達される。このような加工軸14の延長部分により伝達機構153Aが構成されている。
このような本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10A、摩擦攪拌接合ヘッド19、および摩擦攪拌接合装置1によっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0046】
〔第3実施形態〕
図6には本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Bは、前述した第1実施形態と略同じ構成を有するが、固定部16が省略されている点が異なる。このため、同じ構成についての重複する説明は省略し、相違する部分について説明する。
【0047】
図6において、本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Bには前述した第1実施形態のような固定部16がなく、回転駆動部15に供給される駆動エアはセンタースルーホール112からのセンタースルーエアだけである。従って、本実施形態では、前述した第1実施形態における外部エア通路162からの外部エアが利用できないが、固定部16がない分構造を簡素にでき、その他の効果については第1実施形態と同様である。
【0048】
〔第4実施形態〕
図7には本発明の第4実施形態が示されている。
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Cは、前述した第1実施形態と略同じ構成を有するが、本体11に拡張部113がなく、加工軸14および回転駆動部15は主軸4と略同軸で下向きに設置されている点が異なる。このため、同じ構成についての重複する説明は省略し、相違する部分について説明する。
【0049】
図7において、加工軸14回転駆動部15は本体11の下端に下向きに設置されている。この際、加工軸14および回転駆動部15は、主軸4の軸線Rに対して傾斜して設置されている。
加工軸14の回転中心の軸線Ccは、本体11に対して0~5度程度の角度Atに傾けられ、この軸線Ccの先端側が傾斜した側が、摩擦攪拌接合アタッチメント10Cの前側Dcとされている。
【0050】
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Cにおいては、回転駆動部15により加工軸14および接合ツール20が回転駆動され(回転動作Rc)、接合ツール20によるワーク9の摩擦攪拌接合を行うことができる。
この際、主軸4により本体11を回転駆動すること(回転動作Rs)で、ワーク9における接合ツール20の移動方向に応じて摩擦攪拌接合アタッチメント10Cの前側Dcの向き変えを行うことができる。
本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様な効果が得られるとともに、接合ツール20の角度Atの傾きを接合ツール20の移動方向に応じて適切に調整でき、ワーク9に対して安定した摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0051】
〔第5実施形態〕
図8には本発明の第5実施形態が示されている。
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Dは、前述した第1実施形態と略同じ構成を有するが、固定部16が省略されている点が異なるとともに、本体11に拡張部113がなく、加工軸14および回転駆動部15は主軸4と略同軸で下向きに設置されている点が異なる。このため、同じ構成についての重複する説明は省略し、相違する部分について説明する。
【0052】
このような本実施形態では、前述した第3実施形態のように、固定部16がない分構造を簡素にでき、その他の効果については第1実施形態と同様である。さらに、前述した第4実施形態のように、接合ツール20の角度Atの傾きを接合ツール20の移動方向に応じて適切に調整でき、ワーク9に対して安定した摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0053】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、回転駆動部15に2個のエアモータ151,152を並列配置し(図3参照)、回転駆動部15Aに2個のエアモータ151A,152Aを直列配置した(図5参照)が、エアモータの数は3以上であってもよい。回転駆動部15のようにエアモータを並列に配置する場合、図4のセンターギア156の周囲に均等配置していけばよい。回転駆動部15Aのようにエアモータを直列に配置する場合は、単純に増設してゆけばよい。
【0054】
前述した第1実施形態、第2実施形態、第4実施形態では、それぞれ固定部16を通して外部エアを受け、センタースルーホール112からのセンタースルーエアと合流させるとしたが、固定部16からの外部エアだけを駆動エアとして回転駆動部15,15Aを駆動してもよい。例えば、工作機械2にセンタースルーエアの供給機能がない場合であっても、主軸ヘッド5に外部エアの供給設備を増設するだけで、第1実施形態、第2実施形態、第4実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10,10A,10Cを利用可能である。
さらに、第1実施形態、第2実施形態、第4実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10,10A,10Cにおいては、センタースルーホール112を省略し、固定部16からの外部エアだけで回転駆動部15,15Aを駆動してもよい。
【0055】
前記各実施形態では、駆動エア分配器154により、外部制御で各エアモータ151,152(または各エアモータ151A,152A)への駆動エア供給をバランス調整するとしたが、単なる分岐管を用いてもよく、駆動エア分配器154は省略してもよい。
【0056】
前記各実施形態では、回転検出器155により加工軸14の回転状態を検出したが、いずれかの回転検出器155は各エアモータ151,152のいずれかの軸の回転を検出してもよい。回転検出器155としては、ロータリーエンコーダや角度センサ、回転カウンタなどの既存の機器を適宜選択することができる。
なお、回転検出器155により回転検出を行うことは必須ではなく、外部から非接触で接合ツール20の回転を検出する手段を併用できる場合など、回転検出器155は省略してもよい。
【0057】
前述した第1ないし第3の実施形態において、加工軸14を主軸4の軸線Rと交差方向の軸線Ccで配置し、加工軸14に接合ツール20を装着した際に接合ツール20の加工部位である先端Tcが主軸4の軸線R上となる位置としたが、これとは異なる位置に接合ツール20が配置されていてもよい。ただし、主軸4ないし接合ツール20の向きDiがどの方向であっても、常に接合ツール20の加工部位である先端Tcが主軸4の軸線R上となる、という効果は得られない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、および摩擦攪拌接合装置に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1…摩擦攪拌接合装置、2…工作機械、3…テーブル、4…主軸、5…主軸ヘッド、6…移動機構、7…ベッド、8…カバー、9…ワーク、10,10A,10B,10C,10D…摩擦攪拌接合アタッチメント、11…本体、111…テーパーシャンク、112…センタースルーホール、113…拡張部、114…拡張エア通路、14…加工軸、15,15A…回転駆動部、151,152,151A,152A…エアモータ、153,153A…伝達機構、154…駆動エア分配器、155…回転検出器、156…センターギア、157,158…モータギア、16…固定部、161…サブシャンク、162…外部エア通路、19…摩擦攪拌接合ヘッド、20…接合ツール、30…制御装置、31…回転検出部、32…駆動エア制御部、61…ガイドバー、62…スライダ、At…角度、Cc…軸線、Dc…前側、Di…向き、R…軸線、Rc…回転動作、Rs…回転動作、Tc…先端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8