IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新コスモス電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガス検知器 図1
  • 特許-ガス検知器 図2
  • 特許-ガス検知器 図3
  • 特許-ガス検知器 図4
  • 特許-ガス検知器 図5
  • 特許-ガス検知器 図6
  • 特許-ガス検知器 図7
  • 特許-ガス検知器 図8
  • 特許-ガス検知器 図9
  • 特許-ガス検知器 図10
  • 特許-ガス検知器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】ガス検知器
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20240917BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
G01N27/16 A
G01N27/12 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021005692
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110353
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 祐一
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166822(JP,A)
【文献】特開2016-166821(JP,A)
【文献】特開2001-074683(JP,A)
【文献】特開2001-281194(JP,A)
【文献】特開2004-286726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導入部から流入した被検知ガスの濃度を検知するガス検知器であって、
前記ガス導入部と排気口とを接続するガス流路と、
前記ガス流路に導入された前記被検知ガスを検知する第1ガス検知部と、
前記ガス流路の前記第1ガス検知部より下流において、前記被検知ガスを検知する第2ガス検知部と、
前記第1ガス検知部の検知結果に応じて前記第2ガス検知部を保護する制御を行う制御手段と、
前記ガス流路の前記第1ガス検知部と前記第2ガス検知部との間に設けられ、ガスの流動遅延を生じさせる遅延機構と、を備え、
前記遅延機構は、遅延部と、前記ガス流路を絞る流量制限部とを含む、ガス検知器。
【請求項2】
前記流量制限部は、
ガス流入開口およびガス流出開口と、
前記ガス流入開口および前記ガス流出開口の間に設けられ、前記ガス流入開口および前記ガス流出開口の両方より幅広の空間部とを有する、請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
前記流量制限部は、前記ガス流路の内部に設置され前記ガス流入開口が形成された第1制限部材と、前記ガス流路の内部に設置され前記ガス流出開口が形成された第2制限部材と、を含み、
前記空間部は、前記ガス流路における前記第1制限部材と前記第2制限部材との間の間隔部分により構成されている、請求項2に記載のガス検知器。
【請求項4】
前記遅延部は、長尺部により構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項5】
前記第1ガス検知部と前記第2ガス検知部とは、検知対象成分に対する感度特性が異なり、
前記第1ガス検知部および前記第2ガス検知部の両方の出力に基づいて、前記被検知ガスに含まれるガス種が検知される、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項6】
前記第1ガス検知部および前記第2ガス検知部よりも高濃度の前記被検知ガスを検知する高濃度ガス検知部をさらに備え、
前記ガス流路は、
前記第1ガス検知部、前記第2ガス検知部および前記遅延機構が設けられた低濃度検知流路と、
前記高濃度ガス検知部が設けられた高濃度検知流路と、を含むように分岐し、
前記高濃度検知流路は、前記低濃度検知流路に対して、前記遅延機構の前記流量制限部により増大した圧力を逃がす圧力逃がし部として機能する、請求項1~5のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第2ガス検知部を活性化および不活性化のいずれかの状態に切り替えることにより前記第2ガス検知部を保護するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高濃度ガスからガス検知部を保護する機能を備えたガス検知器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ガス搬送路に、主ガス検知素子と、主ガス検知素子よりも上流側の位置に配置される前置ガス検知素子と、前置ガス検知素子および主ガス検知素子の間に配置された保護機構と、を設けたガス検知装置が開示されている。主ガス検知素子は、電力供給を受けた検知状態において高濃度ガスに曝されると、素子が劣化する(検知精度が低下する)。そこで、上記特許文献1では、前置ガス検知素子に、主ガス検知素子よりも高濃度ガス耐久性がある素子が設けられるとともに、前置ガス検知素子により高濃度ガスを検知した場合、主ガス検知素子により高濃度ガスを検出しないように構成されている。そして、前置ガス検知素子が高濃度ガスを検知してから、その高濃度ガスが主ガス検知素子に到達するまでの時間を確保するために、保護機構として長尺部、大径のバッファー部などのガスの到達を遅延させる構造が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-281194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上記特許文献1では、上流側の前置ガス検知素子と下流側の主ガス検知素子との間に長尺部、大径のバッファー部などを設けて下流側の主ガス検知素子への高濃度ガスの到達を遅延させ、下流側の主ガス検知素子を保護する制御を行うための遅延時間を確保している。しかし、十分な遅延時間を確保するためには、長尺部の長さを大きくするか、バッファー部の容積を大きくする必要が生じるため、装置が大型化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、高濃度ガスに対するガス検知部の保護機能を維持しながら、装置の小型化を図ることが可能なガス検知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面によるガス検知器は、ガス導入部から流入した被検知ガスの濃度を検知するガス検知器であって、ガス導入部と排気口とを接続するガス流路と、ガス流路に導入された被検知ガスを検知する第1ガス検知部と、ガス流路の第1ガス検知部より下流において、被検知ガスを検知する第2ガス検知部と、第1ガス検知部の検知結果に応じて第2ガス検知部を保護する制御を行う制御手段と、ガス流路の第1ガス検知部と第2ガス検知部との間に設けられ、ガスの流動遅延を生じさせる遅延機構と、を備え、遅延機構は、遅延部と、ガス流路を絞る流量制限部とを含む。なお、「ガス流路を絞る」とは、流量制限部における流路断面積を、流量制限部の直前の流路断面積よりも小さくすることを意味する。
【0008】
この発明の一の局面によるガス検知器では、上記のように、ガス流路の第1ガス検知部と第2ガス検知部との間に設けられ、ガスの流動遅延を生じさせる遅延機構に、遅延部と、ガス流路を絞る流量制限部とを設ける。これにより、流量制限部を通過するガスの流量が低減されるので、被検知ガスが第1ガス検知部に到達してから、流量制限部を通過するまでの遅延時間を長くすることができ、その分、遅延部の長さまたは容積を小さくできる。そして、流量制限部はガス流路を絞るだけでよいので、流量制限部が専有する体積を小さくできる。この結果、長尺部やバッファー部などの遅延部だけを設ける場合と比べて、同等の遅延時間をより小さな合計体積(遅延部および流量制限部の合計体積)で実現することができるので、高濃度ガスに対するガス検知部の保護機能を維持しながら、装置の小型化を図ることができる。
【0009】
上記一の局面によるガス検知器において、好ましくは、流量制限部は、ガス流入開口およびガス流出開口と、ガス流入開口およびガス流出開口の間に設けられ、ガス流入開口およびガス流出開口の両方より幅広の空間部とを有する。このように構成すれば、ガス流入開口とガス流出開口との2箇所でガス流路を絞ることができる。すなわち、上流側のガス流入開口において流量制限されたガスを、空間部で拡散(減圧)させてから、ガス流出開口においてもう一度流量制限することができる。この結果、流量制限部における遅延効果を向上させることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、流量制限部は、ガス流路の内部に設置されガス流入開口が形成された第1制限部材と、ガス流路の内部に設置されガス流出開口が形成された第2制限部材と、を含み、空間部は、ガス流路における第1制限部材と第2制限部材との間の間隔部分により構成されている。このように構成すれば、ガス流路中に内径を拡大させた拡径部分を設けることなく、空間部を形成することができる。そのため、空間部を設ける場合でも流量制限部の専有体積が増大することを抑制できる。そして、空間部の容積を、第1制限部材と第2制限部材との間隔の大きさによって容易に最適化できるので、流量制限部の専有体積を必要最小限にすることが容易になる。
【0011】
上記一の局面によるガス検知器において、好ましくは、遅延部は、長尺部により構成される。ここで、「長尺部」とは、ガス流路の経路長を大きくした部分のことである。このように構成すれば、チャンバー部などの大容積空間を形成する場合と比べて、装置の大型化を抑制しつつ遅延時間を大きくすることができる。すなわち、まとまった専有空間が必要なチャンバー部と比べて、ガス流路の経路設計は自由度が高いため、たとえば装置内のデッドスペースを有効利用することが容易である。そのため、装置の大型化を抑制できる。
【0012】
上記一の局面によるガス検知器において、好ましくは、第1ガス検知部と第2ガス検知部とは、検知対象成分に対する感度特性が異なり、第1ガス検知部および第2ガス検知部の両方の出力に基づいて、被検知ガスに含まれるガス種が検知される。このように構成すれば、単にガス濃度を検知するだけでなく、ガス種の識別も可能な高機能なガス検知器を提供できる。この場合でも、検知対象成分に対する感度特性が異なることを利用して、相対的に高濃度ガス耐性が高い検知素子を第1ガス検知部に設け、相対的に高濃度ガス耐性が低い検知素子を第2ガス検知部に設けることにより、第2ガス検知部を高濃度ガスから保護することができる。
【0013】
上記一の局面によるガス検知器において、好ましくは、第1ガス検知部および第2ガス検知部よりも高濃度の被検知ガスを検知する高濃度ガス検知部をさらに備え、ガス流路は、第1ガス検知部、第2ガス検知部および遅延機構が設けられた低濃度検知流路と、高濃度ガス検知部が設けられた高濃度検知流路と、を含むように分岐し、高濃度検知流路は、低濃度検知流路に対して、遅延機構の流量制限部により増大した圧力を逃がす圧力逃がし部として機能する。このように構成すれば、第2ガス検知部で検知すると第2ガス検知部が劣化してしまう高濃度の被検知ガスを、高濃度ガス検知部により検知できるので、広い濃度範囲の被検知ガスを検知可能なガス検知器を提供できる。さらに、低濃度検知流路に対して分岐した高濃度検知流路を、圧力逃がし部として機能させることによって、低濃度検知流路に圧力逃がし用のリリーフ構造を別途設ける必要がないため、装置構成の簡素化および装置の小型化を図ることができる。
【0014】
上記一の局面によるガス検知器において、好ましくは、制御手段は、第2ガス検知部を活性化および不活性化のいずれかの状態に切り替えることにより第2ガス検知部を保護するように構成されている。このように構成すれば、第1ガス検知部において高濃度ガスが検知された場合に第2ガス検知部を不活性化するだけで、高濃度ガスから第2ガス検知部を保護することができる。そのため、たとえば高濃度ガスが第2ガス検知部に到達しないようにバイパス流路に切り替える流路切り替え構造などを設ける必要がないので、装置が大型化することを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、高濃度ガスに対するガス検知部の保護機能を維持しながら、装置の小型化を図ることが可能なガス検知器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ガス検知器の構成を示す模式図である。
図2】ガス検知器の制御に関わる構成を示すブロック図である。
図3】第2ガス検知部を保護する処理を説明するための図である。
図4】流量制限部の構成例を示したガス流路の模式的な断面図である。
図5】流量制限部の作用を説明するための図である。
図6】ガス検知器の動作制御の流れを説明するためのフロー図である。
図7】第1および第3ガス検知部の感度特性を模式的に示したグラフ(A)、第2および第4ガス検知部の感度特性を模式的に示したグラフ(B)である。
図8】遅延部の変形例(A)~(C)を示す模式図である。
図9】遅延機構の変形例(A)~(C)を示す模式図である。
図10】制御手段の第1の変形例を示した模式図である。
図11】制御手段の第2の変形例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1図5を参照して、一実施形態によるガス検知器100の構成について説明する。
【0019】
(ガス検知器の全体構成)
ガス検知器100は、図1に示すように、ガス導入部11から流入した被検知ガス1を検知するガス検知器である。ガス検知器100は、検査箇所に存在する被検知ガス1をガス導入部11から取得して、取得した被検知ガス1の濃度を検出する。被検知ガスとは、ガス検知器100が検知すべきガスである。
【0020】
ガス検知器100は、少なくとも、ガス流路10と、第1ガス検知部21と、第2ガス検知部22と、制御部30と、遅延機構40と、を備える。本実施形態のガス検知器100は、被検知ガス1の濃度に応じて、第2ガス検知部22を高濃度の被検知ガス1から保護する動作を行うように構成されている。なお、制御部30は、特許請求の範囲の「制御手段」の一例である。
【0021】
また、図1に示す例では、ガス検知器100は、第1ポンプ51、第2ポンプ52、高濃度ガス検知部60および希釈部70をさらに備えている。図1に示した各部(第1ガス検知部21、第2ガス検知部22、制御部30、遅延機構40、第1ポンプ51、第2ポンプ52、高濃度ガス検知部60、希釈部70)は、ガス検知器100の筐体5内に収容されている。筐体5は、箱状形状を有するガス検知器100の外装である。
【0022】
ガス流路10は、ガス導入部11と排気口12とを接続している。ガス流路10は、ガスを流通させるための管部材(ガスチューブなど)の組み合わせにより構成されている。ガス流路10は、一端(上流端)がガス導入部11と接続し、他端(下流端)が排気口12と接続している。ガス導入部11は、筐体5から外部に開口するように設けられた吸引口である。ガス導入部11は、図示しないガス導入管を接続可能なコネクタを構成している。ガス導入管をガス導入部11に接続することにより、ガス検知器100から離れた検査箇所のガス(被検知ガス1)をガス流路10に導入できる。排気口12は、筐体5から外部に開口するように設けられている。第1ポンプ51によって、外部の被検知ガス1がガス導入部11から吸引され、ガス流路10を通じて排気口12へ送り出される。
【0023】
本実施形態では、ガス流路10は、低濃度検知流路10aと、高濃度検知流路10bと、を含むように分岐している。ガス流路10は、それぞれの検知流路に設けられたガス検知部とガス導入部11との間に位置する分岐部15において、低濃度検知流路10aと高濃度検知流路10bとの2つの流路に分岐している。このため、ガス流路10は、上流端でガス導入部11と接続し、低濃度検知流路10aおよび高濃度検知流路10bの各下流端でそれぞれ別々の(合計2個の)排気口12および排気口13と接続している。低濃度検知流路10aは、相対的に低濃度の被検知ガス1を検知するための流路である。高濃度検知流路10bは、相対的に高濃度の被検知ガス1を検知するための流路である。ガス検知器100は、低濃度検知流路10aと高濃度検知流路10bとに分岐させてそれぞれの流路でガス検知を行うことにより、より広い濃度範囲での被検知ガス1の検知を、分岐なしの流路で実現するよりも短い検知時間(ガス導入してから検知結果が出力されるまでの時間)で行うことが可能である。
【0024】
ガス導入部11と分岐部15との間に、第1ポンプ51が配置されている。第1ポンプ51は、ガス導入部11からガス流路10内に被検知ガス1を吸引して、下流側の低濃度検知流路10aおよび高濃度検知流路10bへ送り出す。低濃度検知流路10aでは、第1ポンプ51から送り出された被検知ガス1が、第1ガス検知部21、遅延機構40、第2ガス検知部22を通過して、排気口12へ送り出される。
【0025】
低濃度検知流路10aは、分岐部15と排気口12とを接続する。低濃度検知流路10aには、第1ガス検知部21、第2ガス検知部22および遅延機構40が設けられている。低濃度検知流路10aの排気口12には、ガスの流入防止のための逆止弁が設けられている。
【0026】
高濃度検知流路10bは、低濃度検知流路10aと並列的に設けられており、分岐部15と排気口13とを接続する。高濃度検知流路10bには、高濃度ガス検知部60が設けられている。また、本実施形態では、高濃度検知流路10bには、希釈部70および第2ポンプ52が設けられている。
【0027】
〈低濃度検知流路〉
第1ガス検知部21は、ガス流路10に導入された被検知ガス1を検知するように構成されている。第2ガス検知部22は、ガス流路10の第1ガス検知部21より下流において、被検知ガス1を検知するように構成されている。
【0028】
第1ガス検知部21および第2ガス検知部22は、いずれも、ガス検知素子により構成されている。ガス検知素子は、被検知ガス1との接触により、被検知ガス1の濃度に応じた信号を出力する。ガス検知素子は、特に限定されないが、本実施形態では接触燃焼式ガス検知素子である。接触燃焼式ガス検知素子は、ヒータ電極を構成する貴金属線コイルに、燃焼触媒を担持させた金属酸化物からなる感応層が設けられた構造を有する。接触燃焼式ガス検知素子は、通電発熱により動作温度まで加熱された感応層が被検知ガス1に接触すると、触媒作用により被検知ガス1の接触燃焼を生じ、接触燃焼に伴う温度変化に起因して素子の電気抵抗値が変化する。この電気抵抗値の変化が、図示しない検出回路を介して、ガス濃度に応じた出力信号として制御部30により取得される。
【0029】
第1ガス検知部21と第2ガス検知部22とは、複数の検知対象成分に対して感度を有するとともに、検知対象成分に対する感度特性が異なる。本実施形態では、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)される。そして、第1ガス検知部21の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知される。このように、本実施形態のガス検知器100は、複数種類の被検知ガス1(ガス種)を区別して、被検知ガス1の濃度を検知可能に構成されている。ガス種および濃度の検知手法については、後述する。第2ガス検知部22は、第1ガス検知部21よりも高濃度ガス耐性が低いガス検知素子により構成されている。なお、高濃度ガス耐性とは、高濃度ガスに対する劣化のし難さである。
【0030】
遅延機構40は、ガス流路10(低濃度検知流路10a)の第1ガス検知部21と第2ガス検知部22との間の位置に設けられている。遅延機構40は、ガスの流動遅延を生じさせるように構成されている。
【0031】
本実施形態の遅延機構40は、原理の異なる複数種類の構造によって、ガスの流動遅延を生じさせる。すなわち、遅延機構40は、遅延部41と、ガス流路10を絞る流量制限部42とを含んでいる。遅延部41と流量制限部42とは、いずれもガス流路10(低濃度検知流路10a)の一部を構成している流路部分である。本実施形態では、遅延機構40が、1つの遅延部41と、1つの流量制限部42とを含む。遅延部41が上流側(第1ガス検知部21側)に配置され、流量制限部42が下流側(第2ガス検知部22側)に配置されている。
【0032】
遅延部41は、長尺部により構成されている。長尺部は、第1ガス検知部21と第2ガス検知部22との間の経路長を、(本来必要とされる長さよりも)大きくした部分のことである。長尺部は、第1ガス検知部21と第2ガス検知部22との間に形成されるガス流路10(低濃度検知流路10a)の迂回部分、Uターン部分、ループ状(コイル状)部分などにより構成されうる。本実施形態では、遅延部41は、コイル状のガスチューブ(コイルチューブ)からなる長尺部によって構成されている。コイルチューブは、コイルのターン数を多くするほど、コイルの曲率半径を大きくするほど、経路長を大きくできる。経路長が大きい程、ガスの移動距離が長くなるので、遅延時間を長くできる。
【0033】
流量制限部42は、ガス流路10(低濃度検知流路10a)の流路断面積を小さくするように構成されている。流量制限部42は、いわゆるオリフィスにより構成されている。流量制限部42は、通過するガス流量を小さくすることにより、第2ガス検知部22へのガス到達タイミングを遅延させるように構成されている。低濃度検知流路10aは、流量制限部42の部分で、流路断面積が最小になっている。流量制限部42の詳細は、後述する。
【0034】
このように、低濃度検知流路10aでは、上流側から下流側へ向けて、分岐部15、第1ガス検知部21、遅延機構40、第2ガス検知部22、排気口12が、この順で配置されている。
【0035】
〈高濃度検知流路〉
高濃度検知流路10bでは、上流側から下流側へ向けて、希釈部70、高濃度ガス検知部60、第2ポンプ52、排気口13が、この順で配置されている。上記のように、低濃度検知流路10aにおいて流量制限部42が設けられている分、低濃度検知流路10a側では流路抵抗(圧力)が高くなる。分岐部15において圧力を平衡させるため、高濃度検知流路10bは、低濃度検知流路10aに対して、遅延機構40の流量制限部42により増大した圧力を逃がす圧力逃がし部として機能する。
【0036】
希釈部70は、高濃度検知流路10bに流入する被検知ガス1を外部空気と混合することによって希釈するように構成されている。希釈部70は、空気導入部71と、絞り弁72と、を含む。空気導入部71は、筐体5から外部に開口するように設けられた吸引口である。絞り弁72は、空気導入部71と分岐部15との間に設けられ、開度調整可能に構成されている。絞り弁72の開度調整により、分岐部15からの被検知ガス1と、空気導入部71からの外部空気との混合比率(つまり、被検知ガスの希釈割合)が調整できる。希釈部70は、たとえば、高濃度検知流路10bに流入する被検知ガス1を外部空気により25倍に希釈する。
【0037】
高濃度ガス検知部60は、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22よりも高濃度の被検知ガス1を検知するように構成されている。本実施形態では、高濃度ガス検知部60は、第3ガス検知部61および第4ガス検知部62の2つのガス検知部により構成されている。
【0038】
第3ガス検知部61および第4ガス検知部62は、それぞれ、ガス検知素子により構成されている。本実施形態では、第3ガス検知部61は、第1ガス検知部21と同じガス検知素子により構成されている。第4ガス検知部62は、第2ガス検知部22と同じガス検知素子により構成されている。したがって、第3ガス検知部61と第4ガス検知部62とは、検知対象成分に対する感度特性が異なる。そして、第3ガス検知部61および第4ガス検知部62の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)される。そして、第3ガス検知部61の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知される。第4ガス検知部62は、第3ガス検知部61よりも高濃度ガス耐性が低い。
【0039】
本実施形態のガス検知器100では、高濃度ガスから第4ガス検知部62を保護する制御は行われない。つまり、高濃度検知流路10bでは、希釈部70により所定倍率(25倍)に希釈された被検知ガス1が導入されるため、第4ガス検知部62が実際に暴露されうる被検知ガス1の濃度は、低濃度検知流路10aにおいて第2ガス検知部22が暴露されうる被検知ガス1の濃度よりも低くなる。そのため、第4ガス検知部62に対する保護制御が不要となっており、高濃度検知流路10bには遅延機構40も設けられていない。なお、図1において、第4ガス検知部62が第3ガス検知部61に対して上流側に配置されているが、第4ガス検知部62が第3ガス検知部61に対して下流側に配置されていてもよい。
【0040】
第3ガス検知部61および第4ガス検知部62は、所定倍率(25倍)に希釈された被検知ガス1に対して信号出力を行う。第3ガス検知部61および第4ガス検知部62の出力に基づき、制御部30において、希釈倍率を考慮した実際の(希釈前の)被検知ガス1の濃度値が取得される。これにより、高濃度ガス検知部60では、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22による測定濃度範囲よりも高い上限濃度値の濃度範囲における被検知ガス1が検知可能となっている。
【0041】
一例として、本実施形態では、被検知ガス1は、燃料ガスである。ガス検知器100は、燃料ガスのうち、都市ガス、LPガス、メタンガスの3種のガス種および濃度が検知可能である。低濃度検知流路10aの第1ガス検知部21および第2ガス検知部22では、測定濃度範囲として、0%LEL~100%LELまでのLEL濃度値が検知される。高濃度検知流路10bの高濃度ガス検知部60では、測定濃度範囲として、0%VOL~100%VOLまでのVOL濃度値が検知される。LELは、爆発下限界(Lower Explosive Limit)の略語であり、100%LELがそのガス種における爆発下限界濃度値である。VOL濃度値は、単位体積当たりの被検知ガス1の割合(体積比)を百分率で示した値である。ガス種によるが、100%LELは、数%VOL程度である。
【0042】
第2ポンプ52は、高濃度検知流路10bの高濃度ガス検知部60と排気口13との間に配置されている。第2ポンプ52は、希釈部70における空気導入部71から高濃度検知流路10b内に外部空気を吸引するとともに、絞り弁72から被検知ガス1を高濃度検知流路10b内に吸引して、被検知ガス1を希釈させる。第2ポンプ52は、希釈された被検知ガス1を排気口13まで送り出す。
【0043】
〈制御系〉
ガス検知器100は、図2に示すように、上記した制御部30に加えて、記憶部31、電源部32、スピーカ33、表示操作部34を備えている。
【0044】
制御部30は、CPUなどのプロセッサを含んでいる。記憶部31は、半導体記憶素子などにより構成されている。制御部30(プロセッサ)は、記憶部31に記憶された動作プログラムを実行することにより、ガス検知器100の全体を制御する制御部として機能する。制御部30は、第1ポンプ51および第2ポンプ52の動作を制御する。制御部30は、第1ガス検知部21、第2ガス検知部22、高濃度ガス検知部60(第3ガス検知部61、第4ガス検知部62)に対する検知動作の制御を行う。すなわち、制御部30は、ガス検知タイミングで、第1ガス検知部21、第2ガス検知部22および高濃度ガス検知部60の各々に通電することにより、ガス検知部を活性化する制御を行う。そして、制御部30は、活性化状態におけるガス検知部の電気抵抗値を、そのガス検知部の出力(ガス検知結果)として取得する。また、制御部30は、ガス検知タイミング以外では、第1ガス検知部21、第2ガス検知部22および高濃度ガス検知部60の各々に通電しないことにより、ガス検知部を不活性化する制御を行う。ガス検知部を活性化するとは、通電発熱によりガス検知部の温度を所定の動作温度まで加熱することを意味する。ガス検知部を不活性化するとは、通電せずにガス検知部の温度を動作温度よりも低い温度にすることを意味する。
【0045】
電源部32は、ガス検知器100の各部(制御部30、記憶部31、スピーカ33、表示操作部34、第1ポンプ51、第2ポンプ52、各ガス検知部)への電力供給を行う。本実施形態のガス検知器100は、バッテリ式であり、電源部32は、電池および電力供給用の回路により構成されている。電源部32は、外部の商用電源に接続可能であってもよい。
【0046】
スピーカ33は、制御部30の制御の下、各種の音声を出力するように構成されている。表示操作部34は、たとえば液晶モニタなどの表示装置と、機械式ボタンまたはタッチパネルなどの入力装置とを含んで構成される。制御部30は、検知結果、ガス検知器100の状態(バッテリ残量やエラーの有無)などの各種情報を表示操作部34に表示させる。制御部30は、表示操作部34を介して検知動作の開始指示などの入力操作を受け付ける。検知結果は、被検知ガス1のガス種を示す情報、および、検知されたガス種の濃度情報を含む。制御部30は、たとえば検知したガス濃度値が、LEL範囲(0%LEL~100%LEL)内で表示可能であれば、濃度情報をLEL濃度値で表示させ、LEL範囲を越えた高濃度値の場合、濃度情報をVOL濃度値で表示させる。
【0047】
〈第2ガス検知部の保護制御〉
本実施形態では、制御部30は、第1ガス検知部21の検知結果に応じて第2ガス検知部22を保護する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部30は、第2ガス検知部22を活性化および不活性化のいずれかの状態に切り替えることにより第2ガス検知部22を保護するように構成されている。すなわち、図1に示したように、制御部30は、第1ポンプ51により被検知ガス1を低濃度検知流路10aの排気口12へ向けて流通させている状態で、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22を活性化する。これにより、制御部30は、先に被検知ガス1が到達する第1ガス検知部21の出力を取得する。取得した第1ガス検知部21の出力が、予め設定された閾値を越えた場合、制御部30は、第2ガス検知部22への通電を停止し、第2ガス検知部22を不活性化状態に切り替える。この結果、第1ガス検知部21および遅延機構40を通過した被検知ガス1に第2ガス検知部22が曝されるタイミングでは、第2ガス検知部22が不活性化状態となっており、第2ガス検知部22が高濃度ガスによって劣化することから保護される。
【0048】
保護制御における経時的な流れを、図3を参照して説明する。被検知ガス1の導入開始後、タイミングt1において、被検知ガス1が第1ガス検知部21に到達する。その後、タイミングt2において、制御部30により第1ガス検知部21の検知結果が取得される。そして、被検知ガス1が遅延機構40を通過した後、タイミングt3において、被検知ガス1が第2ガス検知部22に到達する。制御部30は、タイミングt2の検知結果に基づいて高濃度ガスが検知されると、タイミングt3までに、第2ガス検知部22を不活性化状態に切り替える。遅延機構40は、タイミングt3よりも前の時点で第2ガス検知部22を不活性化状態に切り替えることが可能なように、タイミングt1からタイミングt3までに要する時間長さを大きくする(タイミングt3を遅らせる)。
【0049】
〈流量制限部の詳細〉
次に、流量制限部42の詳細な構成を説明する。図4に示すように、流量制限部42は、ガス流路10(低濃度検知流路10a)の内部に設けられている。流量制限部42は、ガス流入開口42aおよびガス流出開口42bと、空間部42cとを有する。
【0050】
ガス流入開口42aは、流量制限部42の入口であり、上流側(第1ガス検知部21側)の開口である。ガス流出開口42bは、流量制限部42の出口であり、下流側(第2ガス検知部22側)の開口である。ガス流入開口42aの開口面積およびガス流出開口42bの開口面積は、いずれも、ガス流路10(低濃度検知流路10a)の流路断面積よりも小さい。図4の例では、ガス流入開口42aおよびガス流出開口42bは、いずれも円形状を有し(円孔であり)、ガス流入開口42aの内径d1とガス流出開口42bの内径d2とが等しい。ガス流路10(低濃度検知流路10a)は円形の断面形状を有し、内径d0を有する。内径d1および内径d2は、内径d0よりも小さい。そのため、ガス流入開口42aおよびガス流出開口42bのそれぞれで、ガス流路10が絞られている。
【0051】
内径d1(内径d2)は、たとえば、内径d0の3/4以下である。内径d1(内径d2)は、内径d0の1/2以下でありうる。内径d1(内径d2)は、内径d0の1/4以下でありうる。
【0052】
空間部42cは、ガス流入開口42aおよびガス流出開口42bの間に設けられている。空間部42cは、ガス流入開口42aおよびガス流出開口42bの両方より幅広の空間となるように形成されている。図4の例では、空間部42cは、断面が円形状の円柱状空間であり、内径d3、長さLを有する。空間部42cの内径d3は、ガス流入開口42aの内径d1およびガス流出開口42bの内径d2よりも大きい。なお、図4では、内径d3は、ガス流路10(低濃度検知流路10a)の内径d0よりも小さい。
【0053】
より具体的には、流量制限部42は、ガス流路10の内部に設置されガス流入開口42aが形成された第1制限部材43と、ガス流路10(低濃度検知流路10a)の内部に設置されガス流出開口42bが形成された第2制限部材44と、を含む。そして、空間部42cは、ガス流路10における第1制限部材43と第2制限部材44との間の間隔部分により構成されている。
【0054】
図4の例では、流量制限部42は、さらに、ガス流路10(低濃度検知流路10a)の内面に嵌め合わされる内筒45を含んでいる。内筒45は、ガス流路10(低濃度検知流路10a)に合わせた円筒形状を有する。内筒45の外径は、ガス流路10(低濃度検知流路10a)の内径d0と略一致するか僅かに大きく形成され、内筒45の外周面がガス流路10の内面に密着している。この内筒45の内周に、第1制限部材43と第2制限部材44とが、それぞれ嵌め合わされている。
【0055】
第1制限部材43および第2制限部材44は、それぞれ、内筒45の内径に合わせた円形状を有する。第1制限部材43および第2制限部材44の外径は、内筒45の内径と略一致するか僅かに大きく形成され、第1制限部材43および第2制限部材44の外周縁が内筒45の内周面に密着している。
【0056】
第1制限部材43および第2制限部材44は、いずれも、中央に開口が形成されたオリフィス板である。つまり、ガス流入開口42aが第1制限部材43の中央を厚み方向に貫通している。ガス流出開口42bが第2制限部材44の中央を厚み方向に貫通している。第1制限部材43が内筒45の上流側(第1ガス検知部21側)の端部開口に嵌め合わされており、第2制限部材44が内筒45の下流側(第2ガス検知部22側)の端部開口に嵌め合わされている。これにより、第1制限部材43の開口がガス流入開口42aとして機能し、第2制限部材44の開口がガス流出開口42bとして機能する。図4の例では、第1制限部材43および第2制限部材44は、同一形状を有する。
【0057】
空間部42cは、第1制限部材43および第2制限部材44の間に形成された内筒45の内部空間である。したがって、図4の例では、空間部42cの内径d3が、内筒45の内径に一致している。空間部42cの長さLが、内筒45の長さから、第1制限部材43および第2制限部材44の厚みを差し引いた大きさに相当する。この構成では、第1制限部材43および第2制限部材44の表面を、それぞれ内筒45の上流側および下流側の各開口端面の位置に一致させるように内筒45に嵌め込み固定するだけで、一定の長さLを有する空間部42cを再現性良く形成できる。
【0058】
ガス流路10(低濃度検知流路10a)および内筒45は、樹脂材料によって形成されている。第1制限部材43および第2制限部材44は、たとえば真鍮などの金属材料によって形成されている。
【0059】
次に、図5を参照して、流量制限部42の遅延作用を説明する。図5の左列は、流量制限部42を設けた本実施形態の構成を示し、図5の右列は、流量制限部42を設けない比較例を示す。図5は、各列の上側から下側へ向けて、時間経過に伴う被検知ガス1の移動をコマ送りの形態で示したものである。図5では、流量制限部42を単一のオリフィス板として模式化して示している。
【0060】
比較例では、低濃度検知流路10aに絞りが設けられないので、概ね一定のガス流量Q2でガスが移動する。一方、本実施形態では、ガス流路10(低濃度検知流路10a)に流量制限部42が設けられることにより、比較例のガス流量Q2と比べて、流量制限部42におけるガス流量Q1が小さくなる。そのため、本実施形態では、少なくとも流量制限部42よりも上流側における気体の移動速度は、流量制限部42におけるガス流量Q1によって制限される。すなわち、第1ポンプ51の動作によって被検知ガス1が低濃度検知流路10aに送り込まれると、それまでに存在していた空気2が押し出されるが、この空気2の流量がガス流量Q1によって制限されるので、被検知ガス1の移動速度もガス流量Q1によって制限される。その結果、本実施形態では、比較例と比べて被検知ガス1が流量制限部42に到達するまでに要する時間が増大する(被検知ガス1の到達が遅延する)。このため、たとえば比較例と同等の遅延時間を実現する場合、流量制限部42により得られる遅延時間分だけ、遅延部41における経路長を短縮することができる。
【0061】
単純化すれば、流量制限部42の開口(内径d1、d2)を小さくして流量Q2を小さくするほど、流量制限部42による遅延効果は大きくなると考えられる。しかし、流量制限部42の上流側では、流量制限に伴って流路内の圧力が増大し、第1ポンプ51に要求される能力が大きくなる。流量制限部42の開口を小さくし過ぎて、第1ポンプ51が大型化すると、装置全体の小型化への寄与が小さくなる。そのため、流量制限部42の開口の大きさは、流量制限部42によって短縮される遅延部41の経路長と、第1ポンプ51のサイズおよび能力余裕と、を考慮して、装置全体の小型化に最適な値が決定されうる。
【0062】
(ガス検知器の動作)
次に、図6および図7を参照して、本実施形態のガス検知器100の動作制御について説明する。以下の制御は、制御部30によって実行される。なお、以下の説明において、ガス検知器100の各部の構成については、図1および図2を参照する。
【0063】
ステップS1において、制御部30は、第1ポンプ51および第2ポンプ52の駆動を開始する。制御部30は、たとえば表示操作部34に対する検知動作開始の操作入力を受け付けることにより、駆動開始の処理を実行する。
【0064】
ステップS2において、制御部30は、各ガス検知部(第1ガス検知部21、第2ガス検知部22、第3ガス検知部61、第4ガス検知部62)に通電し、各ガス検知部を活性化する制御を行う。
【0065】
ステップS3において、制御部30は、第1ガス検知部21において高濃度ガスを検知したか否かを判断する。すなわち、制御部30は、第1ガス検知部21の出力が閾値を上回ったか否かを判断する。
【0066】
ステップS3において第1ガス検知部21の出力が閾値を上回ったと判断した場合、制御部30は、ステップS4において、第2ガス検知部22を不活性化する制御を行う。つまり、制御部30は、第2ガス検知部22への通電を停止する。これにより、第2ガス検知部22が高濃度ガスから保護される。
【0067】
一方、ステップS3において第1ガス検知部21の出力が閾値を上回っていないと判断した場合、制御部30は、ステップS5において、第2ガス検知部22の活性化(通電)を継続する制御を行う。
【0068】
ステップS6において、制御部30は、各ガス検知部(第1ガス検知部21、第2ガス検知部22、第3ガス検知部61、第4ガス検知部62)からの出力に基づき、検知結果のデータ処理を行う。
【0069】
本実施形態では、たとえば、第1ガス検知部21(第3ガス検知部61)が、図7(A)に示す感度特性を有し、第2ガス検知部22(第4ガス検知部62)が、図7(B)に示す感度特性を有する。感度特性のグラフは、横軸がガス濃度を示し、縦軸がガス検知部の出力を示す。
【0070】
図7では、ガス検知部が感度を有するガス種について、第1ガス種~第3ガス種として示す。被検知ガス1が燃料ガスである本実施形態では、第1ガス種がメタンであり、第2ガス種が都市ガスのうちメタン以外の可燃性ガス成分であり、第3ガス種がLPガスの主成分であるプロパンである。
【0071】
図7(A)に示すように、第1ガス検知部21(第3ガス検知部61)は、第1ガス種~第3ガス種のいずれに対しても、検知濃度範囲では、線形な感度特性を有するが、第3ガス種の出力が第1ガス種および第2ガス種の半分以下の出力となる。一方、図7(B)に示すように、第2ガス検知部22(第4ガス検知部62)は、検知濃度範囲で、各ガス種に対して線形な感度特性を有するものの、第1ガス種、第2ガス種、第3ガス種の順で傾きが大きくなる。このため、制御部30は、第1ガス検知部21(第3ガス検知部61)の出力と第2ガス検知部22(第4ガス検知部62)の出力とを比較することにより、導入された被検知ガス1が、第1ガス種、第2ガス種、第3ガス種のいずれを含むかを、識別する。たとえば制御部30は、第1ガス検知部21の出力と第2ガス検知部22の出力との比の値に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種を識別する。そして、制御部30は、第1ガス検知部21(第3ガス検知部61)の出力に基づいて、識別したガス種についてのガス濃度を取得する。なお、図7(A)の例では、第1ガス検知部21の第3ガス種に対する出力が第1ガス種、第2ガス種よりも低いため、制御部30は、第3ガス種と識別された場合に、第1ガス検知部21の出力補正を行いガス濃度を算出する。ただし、第3ガス種と識別された場合でも、高濃度側の第3ガス検知部61の出力補正は行われない。
【0072】
ステップS6では、低濃度検知流路10aでの検知結果と、高濃度検知流路10bでの検知結果との、各々のデータ処理を行う。すなわち。制御部30は、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22の両方の出力に基づくガス種の識別結果と、第1ガス検知部21の出力に基づくLEL濃度値の検知結果とを取得する。また、制御部30は、第3ガス検知部61および第4ガス検知部62の両方の出力に基づくガス種の識別結果と、第3ガス検知部61および希釈割合に基づくVOL濃度値の検知結果と、を取得する。なお、制御部30がステップS4で第2ガス検知部22を保護する制御を行った場合(つまり、高濃度ガスであった場合)、第2ガス検知部22の出力に基づく検知結果は取得されない。
【0073】
ステップS7において、制御部30は、取得した検知結果(ガス種および濃度値)を、表示操作部34に出力(表示)する制御を行う。以上により、ガス検知器100の検知動作が完了する。
【0074】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
本実施形態では、上記のように、ガス流路10の第1ガス検知部21と第2ガス検知部22との間に設けられ、ガスの流動遅延を生じさせる遅延機構40に、遅延部41と、ガス流路10を絞る流量制限部42とを設ける。これにより、流量制限部42を通過するガスの流量が低減されるので、被検知ガス1が第1ガス検知部21に到達してから、流量制限部42を通過するまでの遅延時間を長くすることができ、その分、遅延部41の長さまたは容積を小さくできる。そして、流量制限部42は、ガス流路10を絞るだけでよいので、流量制限部42が専有する体積を小さくできる。この結果、長尺部やバッファー部などの遅延部41だけを設ける場合と比べて、同等の遅延時間を、より小さな合計体積(遅延部41および流量制限部42の合計体積)で実現することができるので、高濃度ガスに対するガス検知部の保護機能を維持しながら、装置の小型化を図ることができる。
【0076】
なお、本願発明者による実証試験に用いた装置構成では、遅延部41だけを設ける場合と比べて、遅延部41の経路長を70%程度に短縮できた。流量制限部42はガス流路10の内部に設けられ実質的な専有体積増加が発生しないため、装置の小型化の効果が確認された。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、流量制限部42は、ガス流入開口42aおよびガス流出開口42bと、ガス流入開口42aおよびガス流出開口42bとの間に設けられ、ガス流入開口42aおよびガス流出開口42bの両方より幅広の空間部42cとを有する。これにより、ガス流入開口42aとガス流出開口42bとの2箇所でガス流路10を絞ることができる。すなわち、上流側のガス流入開口42aにおいて流量制限されたガスを、空間部42cで拡散(減圧)させてから、ガス流出開口42bにおいてもう一度流量制限することができる。この結果、流量制限部42における遅延効果を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、流量制限部42は、ガス流路10の内部に設置されガス流入開口42aが形成された第1制限部材43と、ガス流路10の内部に設置されガス流出開口42bが形成された第2制限部材44と、を含み、空間部42cは、ガス流路10における第1制限部材43と第2制限部材44との間の間隔部分により構成されている。これにより、ガス流路10中に内径を拡大させた拡径部分を設けることなく、空間部42cを形成することができる。そのため、空間部42cを設ける場合でも流量制限部42の専有体積が増大することを抑制できる。そして、空間部42cの容積を、第1制限部材43と第2制限部材44との間隔の大きさによって容易に最適化できるので、流量制限部42の専有体積を必要最小限にすることが容易になる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、遅延部41は、長尺部により構成される。これにより、チャンバー部などの大容積空間を形成する場合と比べて、装置の大型化を抑制しつつ遅延時間を大きくすることができる。すなわち、まとまった専有空間が必要なチャンバー部と比べて、ガス流路10の経路設計は自由度が高いため、たとえば装置内のデッドスペースを有効利用することが容易である。そのため、装置の大型化を抑制できる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、第1ガス検知部21と第2ガス検知部22とは、検知対象成分に対する感度特性が異なり、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知される。これにより、単にガス濃度を検知するだけでなく、ガス種の識別も可能な高機能なガス検知器100を提供できる。この場合でも、検知対象成分に対する感度特性が異なることを利用して、相対的に高濃度ガス耐性が高い検知素子を第1ガス検知部21に設け、相対的に高濃度ガス耐性が低い検知素子を第2ガス検知部22に設けることにより、第2ガス検知部22を高濃度ガスから保護することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22よりも高濃度の被検知ガス1を検知する高濃度ガス検知部60をさらに備え、ガス流路10は、第1ガス検知部21、第2ガス検知部22および遅延機構40が設けられた低濃度検知流路10aと、高濃度ガス検知部60が設けられた高濃度検知流路10bと、を含むように分岐し、高濃度検知流路10bは、低濃度検知流路10aに対して、遅延機構40の流量制限部42により増大した圧力を逃がす圧力逃がし部として機能する。これにより、第2ガス検知部22で検知すると第2ガス検知部22が劣化してしまう高濃度の被検知ガス1を、高濃度ガス検知部60により検知できるので、広い濃度範囲の被検知ガス1を検知可能なガス検知器100を提供できる。さらに、低濃度検知流路10aに対して分岐した高濃度検知流路10bを、圧力逃がし部として機能させることによって、低濃度検知流路10aに圧力逃がし用のリリーフ構造を別途設ける必要がないため、装置構成の簡素化および装置の小型化を図ることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、第2ガス検知部22を活性化および不活性化のいずれかの状態に切り替えることにより第2ガス検知部22を保護するように構成されている。これにより、第1ガス検知部21において高濃度ガスが検知された場合に第2ガス検知部22を不活性化するだけで、高濃度ガスから第2ガス検知部22を保護することができる。そのため、たとえば高濃度ガスが第2ガス検知部22に到達しないようにバイパス流路に切り替える流路切り替え構造などを設ける必要がないので、装置が大型化することを抑制できる。
【0083】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0084】
たとえば、上記実施形態では、流量制限部42がガス流入開口42aおよびガス流出開口42bと、空間部42cとを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、流量制限部42に空間部42cを設けなくてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、流量制限部42が第1制限部材43と第2制限部材44とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、流量制限部42が単一の制限部材(オリフィス板など)によって構成されていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、第1制限部材43と第2制限部材44とを内筒45内に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。制限部材が、内筒45を介さずに、ガス流路10の内面に直接設けられていてもよい。つまり、流量制限部42が内筒45を有していなくてもよい。この他、第1制限部材43と第2制限部材44と内筒45とを別部品として構成するのではなく、第1制限部材43と第2制限部材44と内筒45とを単一の成形品として形成してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、第1制限部材43の内径d1と第2制限部材44の内径d2とが等しい例を示したが、本発明はこれに限られない。第1制限部材43の内径d1と第2制限部材44の内径d2は異なっていてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、ガス流入開口42aとガス流出開口42bとの間の空間部42cの内径d3が、ガス流路10の内径d0よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、空間部42cの内径d3が、ガス流路10の内径d0と同じか、ガス流路10の内径d0よりも大きくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、遅延機構40において、コイル状のガスチューブ(コイルチューブ)からなる長尺部によって遅延部41を構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。遅延部41は、たとえば図8(A)~(C)に示した構成であってもよい。
【0090】
図8(A)に示した遅延部41aは、複数回にわたってUターンするように折り返された長尺部によって構成されている。図8(B)に示した遅延部41bは、接続先に対して迂回する長尺部によって構成されている。遅延部41bは、下流側の流量制限部42の周りを迂回した後で流量制限部42に接続する長尺部により構成されている。図8(C)に示した遅延部41cは、長尺部ではなくガス流路10よりも幅広のバッファー部により構成されている。バッファー部は、所定の遅延時間に応じた内容積を有するガスチャンバである。
【0091】
また、上記実施形態では、遅延機構40が、上流側(第1ガス検知部21側)に配置された1つの遅延部41と、下流側(第2ガス検知部22側)に配置された1つの流量制限部42とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。遅延機構40は、複数の遅延部41を含んでいてもよく、複数の流量制限部42を含んでいてもよい。遅延機構40は、たとえば図9(A)~(C)に示した構成であってもよい。
【0092】
図9(A)では、遅延機構40aが、上流側(第1ガス検知部21側)に配置された1つの流量制限部42と、下流側(第2ガス検知部22側)に配置された1つの遅延部41とを含む。つまり、遅延部41および流量制限部42の数は上記実施形態と同じであるが、遅延部41および流量制限部42の位置関係が上記実施形態とは逆転している。図9(B)では、遅延機構40bが、1つの遅延部41と、複数(2つ)の流量制限部42とを含む。流量制限部42が、遅延部41に対して上流側(第1ガス検知部21側)と下流側(第2ガス検知部22側)とに、1つずつ配置されている。図9(C)では、遅延機構40cが、複数(2つ)の遅延部41と、1つの流量制限部42とを含む。小型の(経路長の短い)遅延部41が、流量制限部42に対して上流側(第1ガス検知部21側)と下流側(第2ガス検知部22側)とに、1つずつ配置されている。この他、遅延機構40が、複数の遅延部41と複数の流量制限部42とを備えていてもよいが、装置構成の簡素化および装置の小型化の観点から、遅延部41および流量制限部42の数は少ない方が好ましい。
【0093】
また、上記実施形態では、制御部30が、第2ガス検知部22を活性化および不活性化のいずれかの状態に切り替えることにより第2ガス検知部22を保護する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記実施形態とは異なる方法で、第2ガス検知部22を保護してもよい。
【0094】
たとえば図10に示す変形例では、第1ガス検知部21を通過した被検知ガス1が、第2ガス検知部22を通過する経路110aと、被検知ガス1が第2ガス検知部22を介さずに排気口12へ送られる経路110bと、に切り替える流路切替弁111が設けられている。この変形例では、経路110bに高濃度ガス検知部60が配置されているが、高濃度ガス検知部60が設けられていなくてもよい。制御部30は、第1ガス検知部21の検知結果に応じて流路切替弁111を切り替えることにより、第2ガス検知部22を保護する制御を行う。制御部30は、第1ガス検知部21により高濃度ガスが検知されなかった場合、被検知ガス1が経路110aに送られるように流路切替弁111を切り替え、第1ガス検知部21により高濃度ガスが検知された場合、被検知ガス1が経路110bに送られるように流路切替弁111を切り替える。この結果、第2ガス検知部22が高濃度ガスから保護される。この変形例では、制御部30および流路切替弁111が、特許請求の範囲の「制御手段」の一例である。
【0095】
また、図11に示す変形例では、第1ガス検知部21と第2ガス検知部22との間の接続箇所122に、希釈ガス(外部空気)を導入するための希釈部121が設けられている。希釈部121は、空気取り入れ口を含む空気導入部121aと、空気導入部121aからガス流路10へ希釈ガスの導入および導入停止を切り替える切替弁121bと、を含む。制御部30は、第1ガス検知部21の検知結果に応じて切替弁121bを切り替えることにより、第2ガス検知部22を保護する制御を行う。制御部30は、第1ガス検知部21により高濃度ガスが検知されなかった場合、希釈ガスが導入されないように切替弁121bを閉じ、第1ガス検知部21により高濃度ガスが検知された場合、希釈ガスが接続箇所122へ導入されるように切替弁121bを開く。この結果、第2ガス検知部22への劣化を抑制可能な濃度まで高濃度ガスが希釈されるので、第2ガス検知部22が高濃度ガスから保護される。この変形例では、制御部30および切替弁121bが、特許請求の範囲の「制御手段」の一例である。
【0096】
また、上記実施形態では、ガス流路10に低濃度検知流路10aと高濃度検知流路10bとを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図11にも示したように、高濃度検知流路10bを設けなくてもよい。したがって、本発明では、高濃度ガス検知部60を設けなくてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、高濃度ガス検知部60が第3ガス検知部61と第4ガス検知部62とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、高濃度ガス検知部60が単一のガス検知部(ガス検知素子)により構成されていてもよいし、高濃度ガス検知部60が3つ以上のガス検知部を含んでいてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、1つの第1ガス検知部21と、1つの第2ガス検知部22とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。3つ以上のガス検知部を含むようにしてもよく、この場合、設けられる検知部に応じて1つのガス検知部(第2ガス検知部)を保護する制御を行ってもよく、2つ以上のガス検知部(第2ガス検知部)を保護する制御を行ってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、高濃度検知流路10bが、遅延機構40の流量制限部42により増大した圧力を逃がす圧力逃がし部として機能する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、高濃度検知流路10bを圧力逃がし部として機能させる代わりに、流量制限部42の上流側に、リリーフ弁などの圧力逃がし部を設けてもよい。この場合、高濃度検知流路10bと低濃度検知流路10aとが分岐流路である必要はなく、高濃度検知流路10bと低濃度検知流路10aとが、流体的に接続されていない互いに独立した流路であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガス種の識別を行わない構成でもよい。つまり、同一のガス種に対して、第1ガス検知部21が相対的に高濃度範囲の検知を行い、第2ガス検知部22が相対的に低濃度範囲の検知を行うように構成されていてもよい。この場合でも、低濃度範囲のガスに対して高感度な第2ガス検知部22を高濃度ガスから保護するために、上記実施形態と同様の遅延機構40を設けてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、被検知ガス1が燃料ガスである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明において、被検知ガスの種類は、特に限定されない。被検知ガス中の高濃度の成分に起因して第2ガス検知部22の劣化が促進される場合には、本発明が適用可能である。
【0102】
また、上記実施形態では、第2ガス検知部22を含む各ガス検知部が、接触燃焼式ガス検知素子により構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。各ガス検知部は、たとえば半導体式ガス検知素子など、接触燃焼式ガス検知素子以外の他の種類のガス検知素子により構成されていてもよい。また、図7に示したガス検知部の感度特性も、あくまでも一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0103】
また、上記実施形態では、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)され、第1ガス検知部21の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明において、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)され、第1ガス検知部21および第2ガス検知部22の両方の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知されてもよい。この他、第2ガス検知部22の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知されてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、第3ガス検知部61および第4ガス検知部62の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)され、第3ガス検知部61の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明において、第3ガス検知部61および第4ガス検知部62の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)され、第3ガス検知部61および第4ガス検知部62の両方の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知されてもよい。この他、第4ガス検知部62の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知されてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、第1制限部材43および第2制限部材44は、金属材料で形成される例を示したが、本発明はこれに限らず、樹脂材料など他の材料で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 被検知ガス
10 ガス流路
10a 低濃度検知流路
10b 高濃度検知流路
11 ガス導入部
12、13 排気口
21 第1ガス検知部
22 第2ガス検知部
30 制御部(制御手段)
40、40a、40b、40c 遅延機構
41、41a、41b、41c 遅延部
42 流量制限部
42a ガス流入開口
42b ガス流出開口
42c 空間部
43 第1制限部材
44 第2制限部材
60 高濃度ガス検知部
100 ガス検知器
111 流路切替弁(制御手段)
121b 切替弁(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11