(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】墨出し用治具および墨出し実施方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/02 20060101AFI20240917BHJP
B25H 7/04 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
G01C15/02
B25H7/04 A
(21)【出願番号】P 2021024412
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信也
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-104600(JP,U)
【文献】実開昭57-009489(JP,U)
【文献】特開2015-055079(JP,A)
【文献】実開平05-020880(JP,U)
【文献】実開昭53-004400(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/02
B25H 7/04
G01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、
前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、
前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、
前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材と を具備し、
前記可動部は、
当該可動部を傾けることで前記開口部に対する着脱が可能となるように構成されている、
墨出し用治具。
【請求項2】
複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、
前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、
前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、
前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材と を具備し、
前記平面部材は、
相互に着脱可能な複数の平面部材から成り、
前記複数の平面部材を分離させることで前記可動部の前記開口部に対する着脱が可能となるように構成されている、
墨出し用治具。
【請求項3】
複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、
前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、
前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、
前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材と を具備し、
前記平面部材は、
前記開口部の長手方向の端部において当該開口部の短手方向の寸法が拡大している開口拡大部を有し、
前記開口拡大部を通じて前記可動部の前記開口部に対する着脱が可能となるように構成されている、
墨出し用治具。
【請求項4】
複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、
前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、
前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、
前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材と を具備し、
前記複数個の開口部は、短手方向の寸法が異なる2つ以上の開口部を含む、
墨出し用治具。
【請求項5】
複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、
前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、
前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、
前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材と を具備する墨出し用治具であって、
当該墨出し用治具と異なる別の墨出し用治具との連結を可能にする連結部をさらに具備する、
墨出し用治具。
【請求項6】
前記可動部は、
前記孔プレートを保持する孔プレート保持部と、
前記開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部とそれぞれ嵌合するガイド部と
を有する、
請求項
1乃至5のいずれか1項に記載の墨出し用治具。
【請求項7】
前記複数個の開口部は、短手方向の寸法が等しい2つ以上の開口部を含む、
請求項
1乃至6のいずれか1項に記載の墨出し用治具。
【請求項8】
前記孔プレート保持部は、当該孔プレート保持部に対する前記孔プレートの長手方向の動きを抑制するストッパを有する、
請求項
6に記載の墨出し用治具。
【請求項9】
前記可動部に載置される孔プレートの候補として、孔の数もしくは孔の配置が異なる2種類以上の孔プレートが備えられる、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の墨出し用治具。
【請求項10】
複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材とを具備する墨出し用治具を、架台の脚部底面に直接合わせ、前記可動部を動かすことで、前記架台の脚部底面の孔の位置に前記孔プレートの孔の位置を合わせ、その状態で前記可動部を前記固定部材で前記平面部材に固定することと、
前記可動部が前記平面部材に固定された前記墨出し用治具を、前記架台の設置床面に置き、前記孔プレートの孔を通じて墨出しを行うことと
を含む、墨出し実施方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、墨出し用治具および墨出し実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ある施設において機器を載置するための架台の据付を行う場合には、設置床面にてアンカーボルト用の墨出しを行う必要がある。そのためには、施工図に記載された寸法を基に、作業者が設置床面にて計測を行い、墨出しポイントを確定するという手順をとる。
【0003】
墨出しポイントの確定に際しては、現場ごとの床面(例えば、コンクリート面)のフロアレベルや、架台の寸法精度及び直角精度の影響により、施工図と現物との間に孔位置の誤差が生じる可能性があるため、実際には現物の架台を設置床面に仮置きすることで墨出しポイントを確認するようにしている。墨出しポイントを確認した後、仮置きした架台を別の場所へ移動し、アンカーボルト打設を行ったのちに、改めて正式に架台を設置するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手法では、現場ごとの床面のフロアレベルや架台の寸法精度及び直角精度の影響による墨出し誤差の発生、架台の仮置き及び再設置に伴う作業効率の低下、重量物移動作業に伴う作業者負担の増加といった問題がある。また、スケールや曲尺、水平器などを使用して墨出しポイントを設定するには、作業者の熟練度の高さが要求される。
【0006】
発明が解決しようとする課題は、熟練者でなくとも容易に高精度の墨出しを実施できる墨出し治具および墨出し実施方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の墨出し用治具は、複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材とを具備し、前記可動部は、当該可動部を傾けることで前記開口部に対する着脱が可能となるように構成されている。
また、実施形態の墨出し用治具は、複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材とを具備し、前記平面部材は、相互に着脱可能な複数の平面部材から成り、前記複数の平面部材を分離させることで前記可動部の前記開口部に対する着脱が可能となるように構成されている。
また、実施形態の墨出し用治具は、複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材とを具備し、前記平面部材は、前記開口部の長手方向の端部において当該開口部の短手方向の寸法が拡大している開口拡大部を有し、前記開口拡大部を通じて前記可動部の前記開口部に対する着脱が可能となるように構成されている。
また、実施形態の墨出し用治具は、複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材とを具備し、前記複数個の開口部は、短手方向の寸法が異なる2つ以上の開口部を含む。
また、実施形態の墨出し用治具は、複数個の長方形に開口された開口部を有する平面部材と、前記複数個の開口部のうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある前記平面部材の一部に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することが可能な可動部と、前記可動部に載置され、墨出しに使用する孔を有する孔プレートと、前記開口部の長手方向の任意の位置にて前記可動部を固定することが可能な固定部材とを具備する墨出し用治具であって、当該墨出し用治具と異なる別の墨出し用治具との連結を可能にする連結部をさらに具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る墨出し治具の使用例を示す概念図。
【
図2】墨出し用治具20の構成の一例を示す平面図。
【
図3A】
図2に示される墨出し用治具20の構成のうち、平面部材22の構成の一例を示す平面図。
【
図3B】
図3Aに示される平面部材22の構成の第1の変形例を示す平面図。
【
図3C】
図3Aに示される平面部材22の構成の第2の変形例を示す平面図。
【
図4】可動部レール24間に配置された可動部23の構成の一例を示す斜視図。
【
図5】孔プレート26が取り外された状態の可動部23の構成の一例を示す斜視図。
【
図6】孔プレート26の構成の第1の例を示す斜視図。
【
図7】孔プレート26の構成の第2の例を示す斜視図。
【
図8】孔プレート26の構成の第3の例を示す斜視図。
【
図9】別の墨出し用治具との連結を可能にする墨出し用治具20の構成の一例を示す平面図。
【
図10】
図2に示される墨出し用治具20の構成の変形例を示す平面図。
【
図11】墨出し用治具20を用いた墨出し実施方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る墨出し治具の使用例を示す概念図である。
【0011】
本実施形態では、ある施設において機器を載置するための架台10の据付を行うに際し、その設置床面にてアンカーボルト用の墨出しを行うものとする。その墨出しを行うにあたり、墨出し用治具20が使用される。
【0012】
図1に示される架台10は、据付を行う前のものであり、据付を行う現場から離れた場所において逆さの状態で配置された状態にある。架台10には架台本体1があり、その架台本体1には複数の脚部2が取り付けられている。各脚部2の脚部底面3には、架台10を床面に設置する際にボルトを通すための孔が設けられている。
【0013】
墨出し用治具20は、平面部材22と、複数個の可動部23とを備えている。
【0014】
平面部材22は、複数個の長方形に開口された開口部21A,21B,21C,及び21Dを有するほか、軽量化のために中央部に大きく開口された開口部21Xを有する。
【0015】
可動部23は、開口部21A,21B,21C,及び21Dのうちの少なくともいずれかの開口部において当該開口部の短手方向両側にある平面部材22の一部24(以下、「可動部レール24」と称す。)に嵌め込まれた状態で、当該開口部の長手方向へ移動することができるように構成されている。また、可動部23は、後述するように開口部21A,21B,21C,及び21Dに対する着脱を行えるように構成されている。
【0016】
さらに、可動部23には、後述するように墨出しに使用する孔を有する孔プレートが載置される。また、可動部23は、後述する固定部材により、当該開口部の長手方向の任意の位置にて固定することができるようになっている。
【0017】
墨出し用治具20を構成する個々の部材の材料には、プラスチックを使用してもよいし、金属を使用してもよい。プラスチックを利用した場合は、軽量化により作業者の負担を軽くすることができる。金属を使用した場合は、破損や衝撃に強く耐久性があることから長寿命化を図ることができる。
【0018】
墨出しを実施する準備の段階においては、墨出し用治具20は、
図1に示されるように架台10の脚部底面3に直接合わせられ、可動部23を動かすことで架台10の脚部底面3の孔の位置に後述する孔プレートの孔の位置が合わせられ、その状態で可動部23が固定部材で平面部材22に固定される。
【0019】
このようにして可動部23が平面部材22に固定された墨出し用治具20は、据付を行う現場へ持ち込まれ、架台10を設置すべき床面に置かれ、後述する孔プレートの孔を通じて墨出しを行えるようになっている。
【0020】
図2は、墨出し用治具20の構成の一例を示す平面図である。
【0021】
図2に示されるように、平面部材22には、開口部21A,21B,21C,及び21Dが、
図1に示される形態と同様の形態で設けられている。
【0022】
この
図2の例では、共通の構造を有する複数の可動部23が用いられ、開口部21Aに1つの可動部23、開口部21Bに1つの可動部23、開口部21Cに2つの可動部23、開口部21Dに2つの可動部23が取り付けられた場合の例が示されている。
【0023】
但し、これは1つの例示であり、この例に限られるものではない。例えば開口部21A,21B,21C,及び21Dにそれぞれ取り付けられる可動部23の数は、架台10の脚部2の数や位置、脚部底面3の孔の数や位置に応じて、適宜、変えても良い。個々の可動部23についても、適宜、構造を変えてもよい。
【0024】
図3Aは、
図2に示される墨出し用治具20の構成のうち、平面部材22の構成の一例を示す平面図である。
【0025】
図3Aに示される平面部材22は、例えば単一の部材からなる。
【0026】
開口部21A,21B,21C,及び21Dの配置位置、長手方向の長さ、短手方向の幅は、架台10の脚部2の数や位置、脚部底面3の孔の数や位置に応じて、適宜、変えても良い。
【0027】
図3Aの例では、開口部21Aの短手方向の幅をW1とした場合に、他の開口部21B,21C,及び21Dも短手方向の幅がW1と同じになるように構成されている。そのようにした場合、個々の可動部23の構造を共通化することができ、製造コストを抑えることができる。
【0028】
但し、この例に限定されるものではなく、開口部毎に短手方向の幅が異なるようにしてもよい。そのようにした場合、対象となる架台10の種類が変わっても対応がしやすくなる。
【0029】
各開口部の幅W1もしくは可動部23は、例えば、後述するように可動部23を傾けたときにだけ各開口部に対する着脱が可能で且つ可動部23を傾けずに水平にした状態では各開口部に対する着脱ができないように構成される。
【0030】
このような構造により、可動部23が取り付けられた墨出し用治具20を壁などに立て掛けたりあるいは運搬したりしているときに、可動部23が外れて紛失してしまうようなことを防ぐことができる。
【0031】
図3Bは、
図3Aに示される平面部材22の構成の第1の変形例を示す平面図である。
【0032】
図3Bの例が
図3Aの例と異なる点は、平面部材22が、相互に着脱可能な複数の平面部材22A,22B,22C,22D,及び22Eから成り、これら複数の平面部材を分離させることで可動部23の各開口部に対する着脱が可能となるように構成されている点である。
【0033】
例えば、平面部材22A,22B,及び22Cは、図示しない連結部材により一体化されていてもよい。この場合、一体化された平面部材22A,22B,及び22Cに対し、平面部材22Dが着脱可能に構成されるとともに、平面部材22Eが着脱可能に構成される。
【0034】
なお、個々の平面部材どうしの着脱を可能にする方式としては、凹状部と凸状部とを結合させる方式、磁石を使用する方式、留め金を使用する方式など、様々なものが挙げられるが、いずれの方式を採用してもよい。
【0035】
このような構造により、可動部23を傾けることなく、いずれかの平面部材を分離させることで、可動部23の着脱を行うことができる。
【0036】
図3Cは、
図3Aに示される平面部材22の構成の第2の変形例を示す平面図である。
【0037】
図3Cの例が
図3Aの例と異なる点は、平面部材22が、開口部21A,21B,21C,及び21Dのそれぞれの長手方向の端部において当該開口部の短手方向の寸法が拡大している開口拡大部21Xを有し、開口拡大部21Xを通じて可動部23の各開口部に対する着脱が可能となるように構成されている点である。
【0038】
可動部23は、当該可動部23が開口拡大部21Xの位置にあるときは、可動部レール24から外れた状態にあり、水平にした状態で上へ移動させることで取り出せる。可動部23を平面部材22に取り付ける際には、可動部23を水平にした状態で開口拡大部21Xに挿入し、該当する開口部の中ほどまで可動部レール24に沿って移動させる。
【0039】
このような構造により、可動部23を傾けることなく、開口拡大部21Xを通じて可動部23の着脱を行うことができる。
【0040】
図4は、可動部レール24間に配置された可動部23の構成の一例を示す斜視図である。
【0041】
図4に示されるように、可動部23は、墨出しに使用する孔26aを有する孔プレート26を保持する孔プレート保持部23a及び23bと、上述した平面部材22における長方形の開口部の短手方向両側にある可動部レール24とそれぞれ嵌合するガイド部23dとを有する。ガイド部23dには、固定部材25を通すための孔23cが設けられている。固定部材25は、可動部23を開口部の長手方向の任意の位置にて固定したりその固定状態を解除したりするために使用される。この固定部材25は、例えばネジにより実現され、取手部25aおよび押え部25bを有する。なお、孔プレート保持部23a及び23bに保持される孔プレート26は、当該墨出し用治具が逆さになったときに、自重により又は力を加えることで鉛直方向に移動するが、孔プレート保持部23a及び23bの上下にはそれぞれストッパ(横に延在する壁)が備えられており、該ストッパにより孔プレート26が孔プレート保持部23a及び23bの外側に飛び出すことなく、孔プレート保持部23a及び23bに収まる構造となっている。
【0042】
図5は、孔プレート26が取り外された状態の可動部23の構成の一例を示す斜視図である。
【0043】
図5に示されるように、可動部23のガイド部23dは、可動部レール24を上下から挟み込むような形状を有する。
【0044】
すなわち、可動部23は、ガイド部23dが可動部レール24を上下から挟み込む形となるように配置される。ガイド部23dの孔23cにはねじ切り(図示せず)が施されており、固定部材25の取手部25aを右に回すことで固定部材25が下方へ移動し、押え部25bが可動部レール24を下へ押し付け、この押え部25bとその下側にあるガイド部23dとで可動部レール24を挟む形で可動部23を固定するようになっている。可動部23が固定された状態は、取手部25aを左に回すことで解除される。
【0045】
また、孔プレート保持部23a及び23bは、
図5に示されるように手前に見える保持部23aと奥に見える保持部23bにより孔プレート26を保持する構成としてもよい。それぞれの保持部は、孔プレート26の開口部長手方向の動きを抑制するストッパ(縦に延在する壁)を有する。
図5の例では、手前に見える保持部23aの上下の隙間を孔プレート26の厚さより広くすることで孔プレート26の取り出しが容易な構造となっている。また、孔プレート26を、奥に見える保持部23bのストッパに寄せながら孔プレート保持部23a及び23bに置くようにすることで、当該孔プレート保持部23a及び23bへの装着がしやすくなる。但し、この例に限定されるものではない。
【0046】
図5中に示される幅W2及び幅W3は、それぞれ、可動部23において孔プレート26が孔プレート保持部23a及び23bに載置される部分の短手方向の幅及び長手方向の幅に相当する。幅W4は、可動部レール24の短手方向の幅に相当する。幅W5は、上記した幅W2と可動部レール24の短手方向の幅W4とを合わせた幅に相当する。幅W6は、可動部23の全幅に相当する。
【0047】
可動部23において孔プレート26が載置される部分の短手方向の幅W2及び長手方向の幅W3は、孔プレート26を緩みなく且つ窮屈すぎずに無理なく孔プレート保持部23a及び23bに取り付けたり取り外したりできる寸法に設計されている。
【0048】
また、幅W2と幅W4とを合わせた幅W5は、上述したように可動部23を傾けた状態での着脱を可能にする場合は、上述した幅W1に応じて(例えば幅W1よりも小さくなるように)設定される。
【0049】
本実施形態では、個々の可動部23に載置される孔プレート26の候補として、孔26aの数もしくは孔26aの配置が異なる2種類以上の孔プレート26が備えられる。
図6乃至
図8に、各種の孔プレート26の構成の例を示す。
【0050】
図6は、孔プレート26の構成の第1の例を示す斜視図である。
図7は、孔プレート26の構成の第2の例を示す斜視図である。
図8は、孔プレート26の構成の第3の例を示す斜視図である。
【0051】
図6乃至
図8に示される個々の孔プレート26は、それぞれ、短手方向の幅11及び長手方向の幅W12が、前述した孔プレート26が載置される部分の短手方向の幅W2及び長手方向の幅W3と同等かこれにより少し小さくなるように構成される。これにより、孔プレート26は緩みなく且つ窮屈すぎずに無理なく孔プレート保持部23a及び23bに取り付けたり取り外したりすることができる。
【0052】
図6の例では、2つの孔26aが孔プレート26の長手方向に配列するように設けられている。
図7の例では、1つの孔26aが孔プレート26の中央に設けられている。
図8の例では、2つの孔26aが孔プレート26の短手方向に配列するように設けられている。
【0053】
このように各種の孔プレート26を用意しておくことで、架台10の脚部底面3の孔の数や位置に応じて、適切に対応することができる。
【0054】
図9は、別の墨出し用治具との連結を可能にする墨出し用治具20の構成の一例を示す平面図である。
【0055】
図9に示されるように、墨出し用治具20は、墨出し用治具20と異なる別の墨出し用治具20との連結を可能にする連結部31A,31B,32A,及び32Bを有する。
【0056】
墨出し用治具20の連結部31A及び32Aは、当該墨出し用治具20の左側に別の墨出し用治具20(図示ぜず)と連結する場合、それに備えられる連結部(連結部31B及び32Bと同じ構造の連結部)との連結を実現できる。また、墨出し用治具20の連結部31B及び32Bは、当該墨出し用治具20の右側に別の墨出し用治具20(図示ぜず)と連結する場合、それに備えられる連結部(連結部31A及び32Aと同じ構造の連結部)との連結を実現できる。
【0057】
図9の例では、横方向への連結を実現できる例を示したが、さらに縦方向への連結を実現できるように構成してもよい。
【0058】
このような構造により、墨出し用治具20単体として使用できるほか、複数の墨出し用治具20を連結させた状態で使用することができ、架台のサイズに応じた適切なサイズの墨出し用治具を構成することができる。
【0059】
図10は、
図2に示される墨出し用治具20の構成の変形例を示す平面図である。
【0060】
図2の例では平面部材22が正方形を成している場合の例を示したが、これに限定されることなく、平面部材22は例えば
図10のように長方形を成すように構成してもよい。
【0061】
図10の例では、開口部21E及び21Fが平面部材22の短手方向の両脇に配置され、開口部21E及び21Fの間において開口部21G,21H,21I,21J,及び21Kが平面部材22の長手方向に配列するように配置される。
【0062】
このような構成により、様々なサイズの架台に対応することができる。
【0063】
例えば、列盤のような連続した複数の架台枠がある場合は、
図10のような長方形の平面部材22を有する墨出し用治具20を使用することで、架台枠が横並びであっても架台枠ごとのずれを生じさせることなく複数箇所の墨出しポイントの設定を同時に行うことができる。
【0064】
次に、
図11を参照して、墨出し用治具20を用いた墨出し実施方法の一例を説明する。
【0065】
最初に、あらかじめ平面部材22の各開口部に必要な可動部23を遊嵌の状態で取り付けておいた墨出し用治具20を用意しておく。
【0066】
その墨出し用治具20を架台10の脚部底面3に直接合わせ(S11)、可動部23を動かすことで、架台10の脚部底面の孔の位置に前記孔プレート26の孔26aの位置を合わせ、その状態で可動部23を固定部材25で平面部材22に固定する(S12)。
【0067】
このようにして可動部23が平面部材22に固定された墨出し用治具20を、据付を行う現場へ持ち込み、架台10を設置すべき床面に(架台10の設置時と同様に架台10の脚部底面3に合わせた面の反対面が床面に接するように)置き、孔プレート26の孔26aを通じて例えばペンを入れることで墨出しを行う(S13)。
【0068】
本実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0069】
・架台の寸法精度及び直角精度と現場床面(例えば、コンクリート面)のフロアレベルの影響で発生する墨出し誤差の問題を解決できる。例えば、墨出し用治具20を架台10の脚部底面3に直接合わせて、架台10の脚部底面3の孔位置に孔プレート26の孔26aの位置を合わせて固定し、その墨出し用治具20を設置床面に置いて、孔プレート26の孔26aの位置で墨出しを行うことで、墨出し誤差をほぼ無くすことができるため、アンカーボルトの位置精度が向上し、品質を向上させることができる。
【0070】
・架台仮置き及び再設置に伴う作業効率の低下の問題を解決できる。例えば、架台10の仮置き及び再設置の必要がなくなるため、作業時間の短縮につながり、工事期間を短縮することができる。
【0071】
・実際にスケールや曲尺、水平器などを使用して墨出しポイントを設定するには作業員の熟練度の高さが要求されるという問題を解決できる。例えば、前述したように、墨出し用治具20を架台10の脚部底面3に直接合わせて、架台10の脚部底面3の孔位置に孔プレート26の孔26aの位置を合わせて固定し、その墨出し用治具20を設置床面に置いて、孔プレート26の孔26aの位置で墨出しを行うため、計測の必要が無く、作業者の熟練度に関わらず目的の墨出しポイントを設定できる。これにより計測の手間が減るため、作業時間を削減することができる。
【0072】
・重量物移動作業に伴う作業者負担の増加の問題を解決できる。例えば、架台10の仮置き及び再設置に伴う重量物移動の作業が減るため、作業者の負荷を軽減することができる。また、作業安全性を向上させることができる。
【0073】
以上詳述したように、実施形態によれば、熟練者でなくとも容易に高精度の墨出しを実施できる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1…架台本体、2…脚部、3…脚部底面、10…架台、20…墨出し用治具、21A,21B,21C,21D,21E,21F,21G,21H,21I,21J,21K,21X…開口部、22…平面部材、23…可動部、24…平面部材の一部(可動部レール)、25…固定部材、26…孔プレート。