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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240917BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20240917BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240917BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20240917BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240917BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/88 J
H01L27/04 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021044887
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144046
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光雄
(72)【発明者】
【氏名】小幡 進
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和人
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 尚之
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-002689(JP,A)
【文献】特開2020-119936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0243751(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/3205
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料を含み、一方の主面が互いに隣接した第1領域及び第2領域を有する基板上に、前記第1領域及び前記第2領域を被覆し、前記第1領域を被覆した部分に複数の開口が又は複数の島状部を規定する1以上の開口が設けられ、前記第2領域を被覆した部分は連続膜である第1層を形成することと、
貴金属を含んだ触媒層を、めっき法により、前記主面のうち前記複数の開口又は前記1以上の開口内で露出した部分の上に形成することと、
前記触媒層のうち前記第1領域と前記第2領域との境界に隣接した部分を被覆し、前記触媒層のうち前記境界から離間した部分を露出させた第2層を形成することと、
前記触媒層及び前記第2層の存在下、酸化剤と弗化水素とを含んだエッチング剤で、前記基板をエッチングすることと
を含んだエッチング方法。
【請求項2】
前記第1層に、前記複数の開口として、幅方向に配列した複数のスリットを設ける請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記基板は、前記触媒層及び前記第2層に加え、前記第1層の存在下でエッチングする請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記第2層は、前記第1領域上に位置した部分の幅が20乃至100μmの範囲内になるように形成する請求項1乃至3の何れか1項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
半導体材料を含み、一方の主面が互いに隣接した第1領域及び第2領域を有する基板上に、前記第1領域を被覆し、複数の開口が又は複数の島状部を規定する1以上の開口が設けられた第1部分と、前記第2領域を被覆した連続膜である第2部分とを含んだマスク層であって、前記第1領域と前記第2領域との境界に隣接した位置における前記第2部分の前記主面を基準とした高さは、前記第1部分の前記主面を基準とした高さと比較してより大きいマスク層を形成することと、
貴金属を含んだ触媒層を、めっき法により、前記主面のうち前記複数の開口又は前記1以上の開口内で露出した部分の上に形成することと、
前記触媒層及び前記マスク層の存在下、酸化剤と弗化水素とを含んだエッチング剤で、前記基板をエッチングすることと
を含んだエッチング方法。
【請求項6】
前記マスク層に、前記複数の開口として、幅方向に配列した複数のスリットを設ける請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記マスク層の形成は、
前記基板上に、前記第1領域及び前記第2領域を被覆し、前記第1領域を被覆した部分に前記複数の開口が又は前記複数の島状部を規定する前記1以上の開口が設けられ、前記第2領域を被覆した部分は連続膜である第1層を形成することと、
前記第1層のうち前記第1領域を被覆した前記部分を露出させ、前記第1層のうち前記第2領域を少なくとも前記境界に隣接した位置で被覆した第2層を形成することと
を含んだ請求項5又は6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記第1部分の前記主面からの前記高さに対する、前記境界に隣接した位置における前記第2部分の前記主面からの前記高さの比は、2乃至5の範囲内にある請求項5乃至7の何れか1項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記第2部分のうち前記主面を基準とした高さが最も大きい部分から、前記複数の開口又は前記1以上の開口までの、前記主面に平行な方向における距離に対する、前記第2部分の前記第1部分を基準とした高さの比は、1乃至4の範囲内にある請求項5乃至8の何れか1項に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記触媒層として、前記貴金属を含んだ粒子からなる粒状層を形成する請求項1乃至9の何れか1項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のエッチング方法により、前記基板に1以上の凹部を形成することを含む構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のエッチング方法により、前記基板に1以上の凹部を形成することと、
前記1以上の凹部の側壁上に下部電極を形成することと、
前記下部電極上に誘電体層を形成することと、
前記誘電体層上に上部電極を形成することと
を含んだ半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MacEtch(Metal-Assisted Chemical Etching)法は、貴金属を触媒として用いて、半導体表面をエッチングする方法である。MacEtch法によれば、例えば、高アスペクト比の凹部を半導体基板に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-527103号公報
【文献】特開2011-101009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、触媒を使用したエッチングにおいて、加工不良を生じ難くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面によれば、半導体材料を含み、一方の主面が互いに隣接した第1領域及び第2領域を有する基板上に、前記第1領域及び前記第2領域を被覆し、前記第1領域を被覆した部分に複数の開口が又は複数の島状部を規定する1以上の開口が設けられ、前記第2領域を被覆した部分は連続膜である第1層を形成することと、貴金属を含んだ触媒層を、めっき法により、前記主面のうち前記複数の開口又は前記1以上の開口内で露出した部分の上に形成することと、前記触媒層のうち前記第1領域と前記第2領域との境界に隣接した部分を被覆し、前記触媒層のうち前記境界から離間した部分を露出させた第2層を形成することと、前記触媒層及び前記第2層の存在下、酸化剤と弗化水素とを含んだエッチング剤で、前記基板をエッチングすることとを含んだエッチング方法が提供される。
【0006】
他の側面によれば、半導体材料を含み、一方の主面が互いに隣接した第1領域及び第2領域を有する基板上に、前記第1領域を被覆し、複数の開口が又は複数の島状部を規定する1以上の開口が設けられた第1部分と、前記第2領域を被覆した連続膜である第2部分とを含んだマスク層であって、前記第1領域と前記第2領域との境界に隣接した位置における前記第2部分の前記主面を基準とした高さは、前記第1部分の前記主面を基準とした高さと比較してより大きいマスク層を形成することと、貴金属を含んだ触媒層を、めっき法により、前記主面のうち前記複数の開口又は前記1以上の開口内で露出した部分の上に形成することと、前記触媒層及び前記マスク層の存在下、酸化剤と弗化水素とを含んだエッチング剤で、前記基板をエッチングすることとを含んだエッチング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1及び第2実施形態に係る方法によって製造可能なコンデンサの一例を示す上面図。
図2図1に示すコンデンサのII-II線に沿った断面図。
図3】第1実施形態に係るコンデンサの製造方法における一工程を示す断面図。
図4】第1実施形態に係るコンデンサの製造方法における他の工程を示す断面図。
図5図4の工程によって得られる構造を示す上面図。
図6】第1実施形態に係るコンデンサの製造方法における更に他の工程を示す断面図。
図7】第1実施形態に係るコンデンサの製造方法における更に他の工程を示す断面図。
図8図7の工程によって得られる構造を示す上面図。
図9】第1実施形態に係るコンデンサの製造方法における更に他の工程を示す断面図。
図10】第1実施形態に係るコンデンサの製造方法における更に他の工程を示す断面図。
図11図9及び図10の工程によって得られる構造を示す断面図。
図12】第2層を省略した場合に得られる構造の一例を示す電子顕微鏡写真。
図13】第2層を設けた場合に得られる構造の一例を示す電子顕微鏡写真。
図14】第2実施形態に係るコンデンサの製造方法における一工程を示す断面図。
図15図14の工程によって得られる構造を示す上面図。
図16】第2実施形態に係るコンデンサの製造方法における他の工程を示す断面図。
図17】第2実施形態に係るコンデンサの製造方法における更に他の工程を示す断面図。
図18】第2実施形態に係るコンデンサの製造方法の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るエッチング方法は、半導体材料を含み、一方の主面が互いに隣接した第1領域及び第2領域を有する基板上に、前記第1領域及び前記第2領域を被覆し、前記第1領域を被覆した部分に複数の開口が又は複数の島状部を規定する1以上の開口が設けられ、前記第2領域を被覆した部分は連続膜である第1層を形成することと、貴金属を含んだ触媒層を、めっき法により、前記主面のうち前記複数の開口又は前記1以上の開口内で露出した部分の上に形成することと、前記触媒層のうち前記第1領域と前記第2領域との境界に隣接した部分を被覆し、前記触媒層のうち前記境界から離間した部分を露出させた第2層を形成することと、前記触媒層及び前記第2層の存在下、酸化剤と弗化水素とを含んだエッチング剤で、前記基板をエッチングすることとを含む。
【0010】
第1実施形態に係る構造体の製造方法は、上記エッチング方法により、前記基板に1以上の凹部を形成することを含む。
【0011】
第1実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上記エッチング方法により、前記基板に1以上の凹部を形成することと、前記1以上の凹部の側壁上に下部電極を形成することと、前記下部電極上に誘電体層を形成することと、前記誘電体層上に上部電極を形成することとを含む。
【0012】
以下、上記のエッチング方法を利用して、構造体として、半導体装置の一例であるコンデンサを製造する方法について記載する。
【0013】
図1及び図2に、第1実施形態に係る方法によって製造可能なコンデンサの一例を示す。
図1及び図2に示すコンデンサ1は、図2に示すように、導電基板CSと、導電層20bと、誘電体層30とを含んでいる。
【0014】
なお、各図において、X方向は導電基板CSの主面に平行な方向であり、Y方向は導電基板CSの主面に平行であり且つX方向に垂直な方向である。また、Z方向は、導電基板CSの厚さ方向、即ち、X方向及びY方向に垂直な方向である。
【0015】
導電基板CSは、シリコンなどの半導体材料を含んでいる。導電基板CSは、少なくとも導電層20bと向き合った表面が導電性を有している基板である。導電基板CSの少なくとも一部は、コンデンサの下部電極としての役割を果たす。
【0016】
導電基板CSは、第1主面S1と、第2主面S2と、第1主面S1の縁から第2主面S2の縁まで延びた端面とを有している。ここでは、導電基板CSは、扁平な略直方体形状を有している。導電基板CSは、他の形状を有していてもよい。
【0017】
第1主面S1、ここでは導電基板CSの上面は、第1領域A1と第2領域A2とを含んでいる。第1領域A1は、導電基板CSのうち後述する凹部TRが設けられた部分に相当している。第2領域A2は、第1領域A1と高さが等しい。第2領域A2は、第1領域A1と隣接している。ここでは、第1領域A1は矩形形状を有しており、第2領域A2は第1領域A1を取り囲んでいる。
【0018】
導電基板CSのうち第1領域A1に対応した部分には、一方向に伸びた形状を各々が有し、幅方向に配列した複数の凹部TRが設けられている。凹部TRは、第1領域A1において開口している。凹部TRは、互いから離間している。ここでは、凹部TRは、Y方向に各々が伸び、X方向に配列した複数のトレンチである。
【0019】
導電基板CSのうち、隣り合った凹部TRの一方と他方とに挟まれた部分は、凸部である。凸部は、Y方向に伸びた形状を各々が有し、X方向に配列している。即ち、導電基板CSのうち第1領域A1に対応した部分には、凸部として、Y方向及びZ方向に伸びた形状を各々が有し、X方向に配列した複数の壁部が設けられている。
【0020】
なお、凹部又は凸部の「長さ方向」は、導電基板の厚さ方向に垂直な平面への凹部又は凸部の正射影の長さ方向である。
【0021】
凹部TRの開口部の長さは、一例によれば、10乃至500μmの範囲内にあり、他の例によれば、50乃至100μmの範囲内にある。
【0022】
凹部TRの開口部の幅、即ち、幅方向に隣り合った凸部間の距離は、0.3μm以上であることが好ましい。この幅又は距離を小さくすると、より大きな電気容量を達成できる。但し、この幅又は距離を小さくすると、凹部TR内に、誘電体層30と導電層20bとを含んだ積層構造を形成することが難しくなる。
【0023】
凹部TRの深さ又は凸部の高さは、一例によれば、10乃至300μmの範囲内にあり、他の例によれば、50乃至100μmの範囲内にある。
【0024】
幅方向に隣り合った凹部TR間の距離、即ち、凸部の厚さは、0.1μm以上であることが好ましい。この距離又は厚さを小さくすると、より大きな電気容量を達成できる。但し、この距離又は厚さを小さくすると、凸部の破損を生じ易くなる。
【0025】
なお、ここでは、凹部TRの長さ方向に垂直な断面は矩形状である。これら断面は矩形状でなくてもよい。例えば、これら断面は、先細りした形状を有していてもよい。
【0026】
導電基板CSは、基板10と導電層20aとを含んでいる。
基板10は、導電基板CSと同様の形状を有している。基板10は、半導体材料を含んだ基板、例えば、半導体基板である。基板10は、シリコン基板などのシリコンを含んだ基板であることが好ましい。そのような基板は、半導体プロセスを利用した加工が可能である。
【0027】
導電層20aは、基板10上に設けられている。ここでは、導電層20aは、コンデンサの下部電極としての役割を果たす。導電層20aは、例えば、導電性を高めるために不純物がドーピングされたポリシリコン、又は、モリブデン、アルミニウム、金、タングステン、白金、ニッケル及び銅などの金属若しくは合金からなる。導電層20aは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0028】
導電層20aの厚さは、0.05μm乃至1μmの範囲内にあることが好ましく、0.1μm乃至0.3μmの範囲内にあることがより好ましい。導電層20aが薄いと、導電層20aに不連続部を生じるか、又は、導電層20aのシート抵抗が過剰に大きくなる可能性がある。導電層20aを厚くすると、製造コストが増加する。
【0029】
ここでは、一例として、基板10はシリコン基板などの半導体基板であり、導電層20aは、半導体基板の表面領域に不純物を高濃度にドーピングした高濃度ドーピング層であるとする。この場合、凸部は、十分に薄ければ、それらの全体が不純物で高濃度にドーピングされ得る。
【0030】
また、基板10の導電率が高い場合には、導電層20aを省略し、基板10を導電基板CSとして用いてもよい。例えば、基板10が、P型又はN型の不純物がドープされた半導体からなる半導体基板又は金属基板である場合、導電層20aは省略することができる。この場合、基板10の少なくとも表面領域、例えば、基板10の全体が導電層20aの役割を果たす。
【0031】
導電層20bは、コンデンサの上部電極としての役割を果たす。導電層20bは、第1領域A1上に設けられており、凹部TRの側壁及び底面を覆っている。
【0032】
導電層20bは、例えば、導電性を高めるために不純物がドーピングされたポリシリコン、又は、モリブデン、アルミニウム、金、タングステン、白金、ニッケル及び銅などの金属若しくは合金からなる。導電層20bは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0033】
導電層20bの厚さは、0.05μm乃至1μmの範囲内にあることが好ましく、0.1μm乃至0.3μmの範囲内にあることがより好ましい。導電層20bが薄いと、導電層20bに不連続部を生じるか、又は、導電層20bのシート抵抗が過剰に大きくなる可能性がある。導電層20bが厚いと、導電層20a及び誘電体層30を十分な厚さに形成することが難しい場合がある。
【0034】
なお、図2では、導電層20bは、凹部TRが、導電層20bと誘電体層30とによって完全に埋め込まれるように設けられている。導電層20bは、導電基板CSの表面に対してコンフォーマルな層であってもよい。即ち、導電層20bは、略均一な厚さを有する層であってもよい。この場合、凹部TRは、導電層20bと誘電体層30とによって完全には埋め込まれない。
【0035】
誘電体層30は、導電基板CSと導電層20bとの間に介在している。誘電体層30は、導電基板CSの表面に対してコンフォーマルな層である。誘電体層30は、導電基板CSと導電層20bとを互いから電気的に絶縁している。
【0036】
誘電体層30は、例えば、有機誘電体又は無機誘電体からなる。有機誘電体としては、例えば、ポリイミドを使用することができる。無機誘電体としては、強誘電体も用いることができるが、例えば、シリコン窒化物、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、チタン酸化物、及びタンタル酸化物などの常誘電体が好ましい。これらの常誘電体は、温度による誘電率の変化が小さい。そのため、常誘電体を誘電体層30に使用すると、コンデンサ1の耐熱性を高めることができる。
【0037】
誘電体層30の厚さは、0.005μm乃至0.5μmの範囲内にあることが好ましく、0.01μm乃至0.1μmの範囲内にあることがより好ましい。誘電体層30が薄いと、誘電体層30に不連続部を生じ、導電基板CSと導電層20bとが短絡する可能性がある。また、誘電体層30を薄くすると、例え短絡していなくても耐圧が低くなり、電圧を印加した際に短絡する可能性が高まる。誘電体層30を厚くすると、耐圧は高くなるが電気容量が小さくなる。
【0038】
誘電体層30のうち第2領域A2上に位置した部分は、第1領域A1を取り囲むように開口している。即ち、誘電体層30は、この位置で、導電層20aを露出させている。ここでは、誘電体層30のうち、第1主面S1上に設けられた部分は、枠形状に開口している。
【0039】
このコンデンサ1は、絶縁層60と、第1内部電極70aと、第2内部電極70bと、第1外部電極70cと、第2外部電極70dとを更に含んでいる。
【0040】
第1内部電極70aは、第1領域A1上に設けられている。第1内部電極70aは、導電層20bと電気的に接続されている。ここでは、第1内部電極70aは、第1主面S1の中央に位置した矩形状の電極である。
【0041】
第2内部電極70bは、第2領域A2上に設けられている。第2内部電極70bは、誘電体層30に設けられた開口の位置で、導電基板CSと接触している。これにより、第2内部電極70bは、導電基板CSへ電気的に接続されている。ここでは、第2内部電極70bは、第1内部電極70aを取り囲むように配置された枠形状の電極である。
【0042】
第1内部電極70a及び第2内部電極70bは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。第1内部電極70a及び第2内部電極70bを構成している各層は、例えば、モリブデン、アルミニウム、金、タングステン、白金、銅、ニッケル、及びそれらの1以上を含んだ合金などの金属からなる。
【0043】
絶縁層60は、導電層20b及び誘電体層30のうち第1主面S1上に位置した部分と、第1内部電極70aと、第2内部電極70bとを覆っている。絶縁層60は、第1内部電極70aの一部の位置と、第2内部電極70bの一部の位置とで、部分的に開口している。
【0044】
絶縁層60は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。絶縁層60を構成している各層は、例えば、シリコン窒化物及びシリコン酸化物などの無機絶縁体、又は、ポリイミド及びノボラック樹脂などの有機絶縁体からなる。
【0045】
第1外部電極70cは、絶縁層60上に設けられている。第1外部電極70cは、絶縁層60に設けられた1以上の開口の位置で、第1内部電極70aと接触している。これにより、第1外部電極70cは、第1内部電極70aに電気的に接続されている。なお、図1において、領域70R1は、第1外部電極70cと第1内部電極70aとが接触している領域である。
【0046】
第2外部電極70dは、絶縁層60上に設けられている。第2外部電極70dは、絶縁層60に設けられた残りの開口の位置で、第2内部電極70bと接触している。これにより、第2外部電極70dは、第2内部電極70bに電気的に接続されている。なお、図1において、領域70R2は、第2外部電極70dと第2内部電極70bとが接触している領域である。
【0047】
第1外部電極70cは、第1金属層70c1と第2金属層70c2とを含んだ積層構造を有している。第2外部電極70dは、第1金属層70d1と第2金属層70d2とを含んだ積層構造を有している。
【0048】
第1金属層70c1及び70d1は、例えば、銅からなる。第2金属層70c2及び70d2は、それぞれ、第1金属層70c1及び70d1の上面及び端面を被覆している。第2金属層70c2及び70d2は、例えば、ニッケル又はニッケル合金層と金層との積層膜からなる。第2金属層70c2及び70d2は省略することができる。
【0049】
第1外部電極70c又は第1内部電極70aは、それらの間の界面に隣接する位置に、バリア層を更に含んでいてもよい。また、第2外部電極70d又は第2内部電極70bも、それらの間の界面に隣接する位置に、バリア層を更に含んでいてもよい。バリア層の材料としては、例えば、チタンを使用することができる。
【0050】
このコンデンサ1は、例えば、以下の方法により製造する。以下、図3乃至図11を参照しながら、コンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
【0051】
この方法では、先ず、図3に示す基板10を準備する。後述するように、ここでは、一例として、導電層20aは、基板10の表面領域へ不純物を高濃度にドーピングすることにより形成することとする。従って、基板10の一方の主面及び他方の主面は、それぞれ、図2を参照しながら説明した第1主面S1及び第2主面S2に相当する。
【0052】
第1主面S1は、図2を参照しながら説明した第1領域A1及び第2領域A2を有している。
【0053】
ここでは、一例として、基板10は単結晶シリコンウェハであるとする。単結晶シリコンウェハの面方位は特に問わないが、本例では、第1主面S1が(100)面であるシリコンウェハを用いる。基板10としては、第1主面S1が(110)面であるシリコンウェハを用いることもできる。
【0054】
次に、MacEtch(Metal-Assisted Chemical Etching)により、基板10に凹部を形成する。
【0055】
即ち、先ず、図3に示すように、基板10の第1主面S1上に、第1層90を形成する。
第1層90のうち第1領域A1を被覆した部分には、複数の開口が設けられている。ここでは、複数の開口は、幅方向に配列した複数のスリット90Sである。スリット90Sは、長さ方向がY方向に平行であり、X方向に配列している。また、第1層90のうち第2領域A2を被覆した部分は、連続膜である。第1層90は、第1主面S1のうち第1層90によって覆われた部分が、後述する貴金属と接触するのを防止する第1マスク層である。
【0056】
第1層90に設ける複数の開口は、スリット以外の形状を有していてもよい。例えば、第1層90には、複数の開口として、各々の開口部の形状が、円形、楕円形、又は多角形であり、互いに交差する2方向に配列した複数の貫通孔を設けてもよい。
【0057】
或いは、第1層90には、複数の開口を設ける代わりに、複数の島状部を規定する1以上の開口を設けてもよい。この場合、後述するエッチングによって、島状部に対応した位置にピラー状の凸部を生じさせることができる。
【0058】
第1層90の材料としては、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、及びノボラック樹脂などの有機材料や、酸化シリコン及び窒化シリコンなどの無機材料が挙げられる。
【0059】
第1層90は、例えば、既存の半導体プロセスによって形成することができる。有機材料からなる第1層90は、例えば、フォトリソグラフィによって形成することができる。無機材料からなる第1層90は、例えば、気相堆積法による無機材料層の成膜と、フォトリソグラフィによるマスクの形成と、エッチングによる無機材料層のパターニングとによって成形することができる。或いは、無機材料からなる第1層90は、基板10の表面領域の酸化又は窒化と、フォトリソグラフィによるマスク形成と、エッチングによる酸化物又は窒化物層のパターニングとによって形成することができる。
【0060】
次に、図4及び図5に示すように、貴金属を含んだ触媒層80を、めっき法により、第1主面S1のうちスリット90S内で露出した部分の上に形成する。
【0061】
触媒層80は、例えば、貴金属を含んだ不連続層である。ここでは、一例として、触媒層80は、貴金属を含んだ触媒粒子81からなる粒状層であるとする。
【0062】
貴金属は、例えば、金、銀、白金、ロジウム、パラジウム、及びルテニウムの1以上である。触媒層80及び触媒粒子81は、チタンなどの貴金属以外の金属を更に含んでいてもよい。
【0063】
触媒層80の形成に利用するめっき法は、例えば、電解めっき、還元めっき、又は置換めっきである。これら手法の中でも、置換めっきは、第1主面S1のうち第1層90によって覆われていない領域に、金属を直接的且つほぼ一様に析出させることができるため特に好ましい。
【0064】
但し、何れのめっき法であっても、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍の領域と、この境界から十分に離間した領域とは、めっき液からの金属の供給とその析出による金属の消費とのバランスが異なっている。具体的には、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍の領域では、この境界から十分に離間した領域と比較して、スリット90S内への金属の析出を生じ易い。それ故、触媒層80は、金属が適正な密度で析出した第1触媒部分80aと、金属が高い密度で析出した第2触媒部分80bとを含むことになる。後述するように、第2触媒部分80bは、加工不良を生じ易くする。
【0065】
そこで、この方法では、図6乃至図8に示すように、第2層95を形成する。第2層95は、ここでは、スリット90Sの長さ方向に沿って伸びた部分95Aと、スリット90Sの配列方向に沿って伸びた部分95Bとを含んでいる。
【0066】
第2層95は、後述するエッチング剤100が第2触媒部分80bへ到達するのを防止する第2マスク層である。第2層95は、触媒層80のうち第1領域A1と第2領域A2との境界に隣接した部分を被覆し、触媒層80のうち上記境界から離間した部分を露出させるように形成する。これにより、第2層95で、第1触媒部分80aの少なくとも一部を被覆することなしに、第2触媒部分80bを被覆する。
【0067】
第2層95は、第1領域A1上に位置した部分の幅、即ち、図8では幅D1及びD2が、好ましくは20乃至100μmの範囲内になるように、より好ましくは20乃至50μmの範囲内になるように形成する。この幅を大きくすると、第2触媒部分80bの全体を第2層95で確実に被覆することができる。但し、この幅を大きくすると、第1触媒部分80aのうち第2層95によって被覆される部分が広くなる。
【0068】
なお、幅D1及びD2は、互いに等しくてもよい。或いは、幅D1及びD2は、異なっていてもよい。例えば、幅D1は、幅D2と比較して、より大きくてもよい。
【0069】
また、第2層95は、厚さが好ましくは0.1乃至10μmの範囲内になるように、より好ましくは0.5乃至1μmの範囲内になるように形成する。第2層95を厚くすると、第2触媒部分80bの全体を第2層95で確実に被覆することができる。但し、第2層95を厚くすると、高コストになる。
【0070】
第2層95の材料としては、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、及びノボラック樹脂などの有機材料や、酸化シリコン及び窒化シリコンなどの無機材料が挙げられる。
【0071】
第2層95は、例えば、既存の半導体プロセスによって形成することができる。有機材料からなる第2層95は、例えば、フォトリソグラフィによって形成することができる。無機材料からなる第2層95は、例えば、気相堆積法による無機材料層の成膜と、フォトリソグラフィによるマスクの形成と、エッチングによる無機材料層のパターニングとによって成形することができる。第2層95の材料は、有機材料であることが好ましい。
【0072】
第2層95の成膜に伴い、第1触媒部分80aのうち第2層95によって被覆されるべきでない部分に、第2層95の材料が付着する可能性がある。そのような付着物は、触媒活性を低下させる。従って、第2層95を形成した後に、例えば、エッチングによって、第1触媒部分80aの露出部から付着物を除去することが好ましい。例えば、第2層95の材料として有機材料を使用した場合、アッシングを行うことが好ましい。なお、この処理を図6の構造に対して行うと、図7に示すように、第2層95は薄くなる。
【0073】
次に、貴金属の触媒としての作用のもとで基板10をエッチングして、第1主面S1に凹部を形成する。
【0074】
具体的には、図9に示すように、基板10をエッチング剤100でエッチングする。例えば、基板10を液状のエッチング剤100に浸漬させて、エッチング剤100を基板10と接触させる。
【0075】
エッチング剤100は、酸化剤と弗化水素とを含んでいる。
エッチング剤100における弗化水素の濃度は、1mol/L乃至20mol/Lの範囲内にあることが好ましく、5mol/L乃至10mol/Lの範囲内にあることがより好ましく、3mol/L乃至7mol/Lの範囲内にあることが更に好ましい。弗化水素濃度が低い場合、高いエッチングレートを達成することが難しい。弗化水素濃度が高い場合、過剰なサイドエッチングを生じる可能性がある。
【0076】
酸化剤は、例えば、過酸化水素、硝酸、AgNO、KAuCl、HAuCl、KPtCl、HPtCl、Fe(NO、Ni(NO、Mg(NO、Na、K、KMnO及びKCrから選択することができる。有害な副生成物が発生せず、半導体素子の汚染も生じないことから、酸化剤としては過酸化水素が好ましい。
【0077】
エッチング剤100における酸化剤の濃度は、0.2mol/L乃至8mol/Lの範囲内にあることが好ましく、2mol/L乃至4mol/Lの範囲内にあることがより好ましく、3mol/L乃至4mol/Lの範囲内にあることが更に好ましい。
【0078】
エッチング剤100は、緩衝剤を更に含んでいてもよい。緩衝剤は、例えば、弗化アンモニウム及びアンモニアの少なくとも一方を含んでいる。一例によれば、緩衝剤は、弗化アンモニウムである。他の例によれば、緩衝剤は、弗化アンモニウムとアンモニアとの混合物である。
エッチング剤100は、水などの他の成分を更に含んでいてもよい。
【0079】
このようなエッチング剤100を使用した場合、基板10のうちエッチング剤100が到達可能であり且つ触媒粒子81と近接している領域においては、基板10の材料、ここではシリコンが酸化される。そして、これによって生じた酸化物は、弗化水素酸により溶解除去される。これに対し、基板10のうち触媒粒子81が近傍に存在していない領域では、上記の反応は生じない。また、基板10のうち触媒粒子81が近傍に存在している領域であっても、第2層95によってエッチング剤100が到達できない領域でも、上記の反応は生じない。そのため、エッチング剤100が到達可能であり且つ触媒粒子81と近接している部分のみが選択的にエッチングされる。
【0080】
触媒粒子81は、エッチングの進行とともに、第2主面S2へ向けて移動し、そこで上記と同様のエッチングが行われる。その結果、図10に示すように、第1触媒部分80aのうち第2層95によって被覆されていない部分の位置では、第1主面S1から第2主面S2へ向けて、第1主面S1に対して垂直な方向にエッチングが進む。
【0081】
このようにして、図11に示す凹部TRを第1主面S1に形成する。
【0082】
その後、第1層90、第2層95及び触媒層80を基板10から除去する。なお、第1層90は、触媒層80を形成した後であって、第2層95を形成する前に、基板10から除去しておいてもよい。
【0083】
次に、基板10上に、図2に示す導電層20aを形成して、導電基板CSを得る。上記の通り、導電層20aは、コンデンサの下部電極である。導電層20aは、例えば、基板10の表面領域へ不純物を高濃度にドーピングすることにより形成することができる。ポリシリコンからなる導電層20aは、例えば、LPCVD(low pressure chemical vapor deposition)によって形成することができる。金属からなる導電層20aは、例えば、電解めっき、還元めっき、又は置換めっきによって形成することができる。
【0084】
めっき液は、被めっき金属の塩を含んだ液体である。めっき液としては、硫酸銅五水和物と硫酸とを含んだ硫酸銅めっき液、ピロリン酸銅とピロリン酸カリウムとを含んだピロリン酸銅めっき液、及び、スルファミン酸ニッケルと硼素とを含んだスルファミン酸ニッケルめっき液などの一般的なめっき液を使用することができる。
【0085】
導電層20aは、被めっき金属の塩と界面活性剤と超臨界又は亜臨界状態の二酸化炭素とを含んだめっき液を用いためっき法により形成することが好ましい。このめっき法では、界面活性剤は、超臨界二酸化炭素からなる粒子と、被めっき金属の塩を含んだ溶液からなる連続相との間に介在させる。即ち、めっき液中で、界面活性剤にミセルを形成させ、超臨界二酸化炭素はこれらミセルに取り込ませる。
【0086】
通常のめっき法では、凹部の底部近傍への被めっき金属の供給が不十分となることがある。これは、凹部の深さDと幅又は径Wとの比D/Wが大きい場合に、特に顕著である。
【0087】
超臨界二酸化炭素を取り込んだミセルは、狭い隙間にも容易に入り込むことができる。そして、これらミセルの移動に伴い、被めっき金属の塩を含んだ溶液も移動する。それ故、被めっき金属の塩と界面活性剤と超臨界又は亜臨界状態の二酸化炭素とを含んだめっき液を用いためっき法によれば、厚さが均一な導電層20aを容易に形成することができる。
【0088】
上記の通り、ここでは、一例として、導電層20aは、基板10の表面領域へ不純物を高濃度にドーピングすることにより形成することとする。即ち、ここでは、基板10の第1主面S1側の表面領域を、導電層20aとして使用する。
【0089】
次に、導電層20a上に、誘電体層30を形成する。誘電体層30は、例えば、CVD(chemical vapor deposition)によって形成することができる。或いは、誘電体層30は、導電層20aの表面を、酸化、窒化、又は酸窒化することにより形成することができる。
【0090】
次いで、誘電体層30上に、導電層20bを形成する。導電層20bは、上記の通り、コンデンサの上部電極である。導電層20bとしては、例えば、ポリシリコン又は金属からなる導電層を形成する。そのような導電層20bは、例えば、導電層20aについて上述したのと同様の方法により形成することができる。
【0091】
次に、誘電体層30に、開口部を形成する。ここでは、誘電体層30のうち第1主面S1上に位置した部分を、枠形状に開口させる。この開口部は、例えば、フォトリソグラフィによるマスクの形成と、エッチングによるパターニングとによって形成することができる。
【0092】
次いで、金属層を成膜し、これをパターニングして、第1内部電極70a及び第2内部電極70bを得る。第1内部電極70a及び第2内部電極70bは、例えば、スパッタリングやめっきによる成膜と、フォトリソグラフィとの組み合わせにより形成することができる。
【0093】
その後、絶縁層60を形成する。絶縁層60は、第1内部電極70aの一部及び第2内部電極70bの一部に対応した位置で開口させる。絶縁層60は、例えば、CVDによる成膜と、フォトリソグラフィとの組み合わせにより形成することができる。
【0094】
次に、絶縁層60上に、第1外部電極70c及び第2外部電極70dを形成する。具体的には、先ず、第1金属層70c1及び70d1を形成する。次に、第2金属層70c2及び70d2を形成する。第1金属層70c1及び70d1並びに第2金属層70c2及び70d2は、例えば、スパッタリングやめっきによる成膜と、フォトリソグラフィとの組み合わせにより形成することができる。
【0095】
その後、このようにして得られた構造をダイシングする。以上のようにして、図1及び図2に示すコンデンサ1を得る。
【0096】
このコンデンサ1では、第1主面S1に凹部TRを設け、誘電体層30と導電層20bとを含んだ積層構造は、第1主面S1だけでなく、凹部TR内にも設けている。それ故、このコンデンサ1は、大きな電気容量を達成し得る。
【0097】
上述した方法では、触媒を使用したエッチングにおける加工不良を生じ難い。これについて、以下に説明する。
【0098】
図4及び図5を参照しながら説明したように、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍の領域では、この境界から十分に離間した領域と比較して、スリット90S内への貴金属の析出を生じ易い。その結果、触媒層80は、貴金属が適正な密度で析出した第1触媒部分80aと、貴金属が高い密度で析出した第2触媒部分80bとを含むことになる。
【0099】
これは、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍の領域と、この境界から十分に離間した領域とは、めっき液からの金属の供給とその析出による金属の消費とのバランスが異なっているためである。より詳細には、これは、第1層90には第2領域A2の位置にスリット90Sは設けられておらず、それ故、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍に位置しためっき液が金属を供給すべき領域の面積は、この境界から十分に離間しためっき液が金属を供給すべき領域の面積と比較して小さいためである。
【0100】
第2層95を形成することなしに、図9及び図10を参照しながら説明したエッチングを行った場合、第1触媒部分80aが形成された領域では、エッチングは、第1主面S1に対して垂直な方向へ進行する。しかしながら、この場合、第2触媒部分80bが形成された領域では、第1主面S1に対して傾いた方向へエッチングが進行する、エッチングの進行方向にばらつきを生じる、及び、第1主面S1に対して垂直な方向へのエッチングが効率的に行われないなどの加工不良を生じる。その結果、例えば、図12に示す構造が得られる。
【0101】
第2層95を形成すると、第2触媒部分80bへのエッチング剤100の供給は妨げられる。それ故、第2層95に対応した位置ではエッチングは進行せず、上記の加工不良は生じない。従って、例えば、図13に示す構造が得られる。
【0102】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るエッチング方法は、半導体材料を含み、一方の主面が互いに隣接した第1領域及び第2領域を有する基板上に、前記第1領域を被覆し、複数の開口が又は複数の島状部を規定する1以上の開口が設けられた第1部分と、前記第2領域を被覆した連続膜である第2部分とを含んだマスク層であって、前記第1領域と前記第2領域との境界に隣接した位置における前記第2部分の前記主面を基準とした高さは、前記第1部分の前記主面を基準としたと比較してより大きいマスク層を形成することと、貴金属を含んだ触媒層を、めっき法により、前記主面のうち前記複数の開口又は前記1以上の開口内で露出した部分の上に形成することと、前記触媒層及び前記マスク層の存在下、酸化剤と弗化水素とを含んだエッチング剤で、前記基板をエッチングすることとを含む。
【0103】
第2実施形態に係る構造体の製造方法は、上記エッチング方法により、前記基板に1以上の凹部を形成することを含む。
【0104】
第2実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上記エッチング方法により、前記基板に1以上の凹部を形成することと、前記1以上の凹部の側壁上に下部電極を形成することと、前記下部電極上に誘電体層を形成することと、前記誘電体層上に上部電極を形成することとを含む。
【0105】
以下、上記のエッチング方法を利用して、構造体として、半導体装置の一例であるコンデンサを製造する方法について記載する。
【0106】
第2実施形態に係る方法によると、例えば、第1実施形態において例示したコンデンサ1を製造することができる。第2実施形態では、このコンデンサ1を、以下の方法によって製造する。
【0107】
即ち、先ず、図14に示すように、基板10の第1主面S1上に、マスク層98を形成する。基板10は、第1実施形態において説明したものと同様である。
【0108】
マスク層98は、第1部分98aと第2部分98bとを含んでいる。
第1部分98aは、マスク層98のうち第1領域A1を被覆した部分である。第1部分98aには、複数の開口が設けられている。ここでは、複数の開口は、幅方向に配列した複数のスリット90Sである。スリット90Sは、長さ方向がY方向に平行であり、X方向に配列している。
【0109】
第1部分98aに設ける複数の開口は、スリット以外の形状を有していてもよい。例えば、第1部分98aには、複数の開口として、各々の開口部の形状が、円形、楕円形、又は多角形であり、互いに交差する2方向に配列した複数の貫通孔を設けてもよい。
【0110】
或いは、第1部分98aには、複数の開口を設ける代わりに、複数の島状部を規定する1以上の開口を設けてもよい。この場合、後述するエッチングによって、島状部に対応した位置にピラー状の凸部を生じさせることができる。
【0111】
第2部分98bは、マスク層98のうち第2領域A2を被覆した部分である。第2部分98bは、連続膜である。第1領域A1と第2領域A2との境界に隣接した位置における第2部分98bの第1主面S1を基準とした高さH2又はH2は、第1部分98aの第1主面S1を基準とした高さH1と比較してより大きい。
【0112】
マスク層98は、ここでは、図14及び図15に示す第1層90及び第2層96の積層体である。上記の第1部分98aは、第1層90のうち第1領域A1を被覆している部分である。また、第2部分98bは、第2層96と、第1層90のうち第2領域A2を被覆している部分との組み合わせである。
【0113】
第1層90は、第1主面S1上に形成する。第1層90は、第1実施形態において説明したものと同様である。即ち、第1層90は、第1実施形態において説明したものと同様の役割を果たす。
【0114】
第1層90は、第1領域A1及び第2領域A2を被覆している。
第1層90のうち第1領域A1を被覆した部分には、複数の開口が設けられている。ここでは、複数の開口は、幅方向に配列した複数のスリット90Sである。スリット90Sは、長さ方向がY方向に平行であり、X方向に配列している。
【0115】
第1層90に設ける複数の開口は、スリット以外の形状を有していてもよい。例えば、第1層90には、複数の開口として、各々の開口部の形状が、円形、楕円形、又は多角形であり、互いに交差する2方向に配列した複数の貫通孔を設けてもよい。或いは、第1層90には、複数の開口を設ける代わりに、複数の島状部を規定する1以上の開口を設けてもよい。
【0116】
第1層90のうち第2領域A2を被覆した部分は、連続膜である。第1層90のうち第2領域A2を被覆した部分は、第1層90のうち第1領域A1を被覆した部分と高さが等しい。
【0117】
第1層90の材料には、例えば、第1実施形態において例示したものを使用することができる。第1層90は、例えば、第1実施形態において説明したのと同様の方法により形成することができる。
【0118】
第2層96は、第1層90上に形成する。第2層96は、第1層90のうち第1領域A1を被覆した部分を露出させている。そして、第2層96は、第1層90のうち第2領域A2を少なくとも第1領域A1と第2領域A2との境界に隣接した位置で被覆している。ここでは、第2層96は、第1領域A1を取り囲んだ枠形状を有している。
【0119】
第2層96の材料には、例えば、第1実施形態において第2層95について例示したものを使用することができる。第2層96は、例えば、第1実施形態において第2層95について説明したのと同様の方法により形成することができる。
【0120】
後述するように、第2層96は、触媒層80を形成するためのめっき処理において、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍の領域で、めっき液から第1主面S1へ金属が過剰に供給されるのを防止する。これにより、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍のスリット90S内と、この境界から十分に離間したスリット90S内とで、触媒金属の密度をほぼ等しくすることができる。
【0121】
マスク層98は、一体に形成してもよい。例えば、先ず、第1層90上に感光性樹脂層を形成する。感光性樹脂としては、例えば、ポジ型のフォトレジストを使用する。次に、感光性樹脂層に対して、例えば、グレーティングマスクを使用した露光を行うか、又は、2回以上の露光を行う。これにより、感光性樹脂層内に、露光量が異なる第1及び第2露光部と、未露光部とを生じさせる。その後、現像等を行うことにより、一体に形成されたマスク層98が得られる。
【0122】
第1部分98aの第1主面S1を基準とした高さH1に対する、上記境界に隣接した位置における第2部分98bの第1主面S1を基準とした高さH2又はH2の比は、2乃至5の範囲内にあることが好ましく、2乃至3の範囲内にあることがより好ましい。
【0123】
ここでは、高さH1は、第1層90の厚さである。また、高さH2は、上記境界のうちスリット90Sの長さ方向に沿って伸びた部分に隣接した位置における、第2部分98bの第1主面S1を基準とした高さである。即ち、ここでは、高さH2は、第2層96のうちスリット90Sの長さ方向に沿って伸びた部分96Aの、第1主面S1を基準とした高さである。そして、高さH2は、上記境界のうちスリット90Sの配列方向に沿って伸びた部分に隣接した位置における、第2部分98bの第1主面S1を基準とした高さである。即ち、ここでは、高さH2は、第2層96のうちスリット90Sの配列方向に沿って伸びた部分96Bの、第1主面S1を基準とした高さである。
【0124】
また、第2部分98bのうち第1主面S1を基準とした高さが最も大きい部分から、複数の開口又は1以上の開口までの、第1主面S1に平行な方向における距離D又はDに対する、第2部分98bの第1部分98aを基準とした高さH又はHの比は、1乃至4の範囲内にあることが好ましく、2乃至4 )の範囲内にあることがより好ましい。
【0125】
ここでは、距離Dは、第2層96のうちスリット90Sの長さ方向に沿って伸びた部分96Aからスリット90Sまでの、スリット90Sの配列方向における距離である。また、距離Dは、第2層96のうちスリット90Sの配列方向に沿って伸びた部分96Bからスリット90Sまでの、スリット90Sの長さ方向における距離である。
【0126】
ここで、高さHは、上記境界のうちスリット90Sの長さ方向に沿って伸びた部分に隣接した位置における、第2部分98bの第1部分98aを基準とした高さである。即ち、ここでは、高さHは、第2層96のうちスリット90Sの長さ方向に沿って伸びた部分の厚さである。また、高さHは、上記境界のうちスリット90Sの配列方向に沿って伸びた部分に隣接した位置における、第2部分98bの第1部分98aを基準とした高さである。即ち、ここでは、高さHは、第2層96のうちスリット90Sの配列方向に沿って伸びた部分の厚さである。
【0127】
これら比を大きくすると、触媒層80を形成するためのめっき処理において、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍の領域で、めっき液から第1主面S1への金属の供給量が減少する。
【0128】
高さH1は、0.1乃至10μmの範囲内にあることが好ましく、0.5乃至1μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0129】
高さH2及びH2は、0.2乃至20μmの範囲内にあることが好ましく、1乃至3μmの範囲内にあることがより好ましい。高さH2及びH2は、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0130】
高さH及びHは、0.1乃至10μmの範囲内にあることが好ましく、0.5乃至2μmの範囲内にあることがより好ましい。高さH及びHは、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0131】
距離D及びDは、0.05乃至0.5μmの範囲内にあることが好ましく、0.1乃至0.2μmの範囲内にあることがより好ましい。距離D及びDは、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0132】
以上のようにしてマスク層98を形成した後、図16に示すように、第1主面S1のうちスリット90S内で露出した部分の上に、触媒層80を形成する。触媒層80の材料には、例えば、第1実施形態において例示したものを使用することができる。触媒層80は、例えば、第1実施形態において説明したのと同様の方法により形成することができる。
【0133】
次いで、図17に示すように、触媒層80及びマスク層98の存在下、酸化剤と弗化水素とを含んだエッチング剤100で、基板10をエッチングする。これにより、第1主面S1に凹部TRを形成する。
【0134】
エッチング剤100には、例えば、第1実施形態において例示したものを使用することができる。このエッチングは、例えば、第1実施形態において説明したのと同様の方法により行う。
【0135】
次に、マスク層98及び触媒層80を基板10から除去する。その後、第1実施形態において説明したように、導電層20a、誘電体層30及び導電層20bを形成する。更に、第1実施形態において説明したように、第1内部電極70a、第2内部電極70b、絶縁層60、第1外部電極70c及び第2外部電極70dを形成し、ダイシングを行う。以上のようにして、図1及び図2に示すコンデンサ1を得る。
【0136】
このコンデンサ1では、第1主面S1に凹部TRを設け、誘電体層30と導電層20bとを含んだ積層構造は、第1主面S1だけでなく、凹部TR内にも設けている。それ故、このコンデンサ1は、大きな電気容量を達成し得る。
【0137】
上述したように、この方法では、第2層96は、触媒層80を形成するためのめっき処理において、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍の領域で、めっき液から第1主面S1へ金属が過剰に供給されるのを防止する。これにより、第1領域A1と第2領域A2との境界近傍のスリット90S内と、この境界から十分に離間したスリット90S内とで、触媒金属の密度をほぼ等しくすることができる。従って、第1実施形態と同様に、触媒を使用したエッチングにおける加工不良を生じ難くすることができる。
【0138】
第1及び第2実施形態において説明した方法には、様々な変形が可能である。
例えば、第1及び第2実施形態では、構造体の一例としてコンデンサについて説明したが、コンデンサについて上述した技術は、他の構造体に適用することも可能である。
【0139】
第1及び第2実施形態において説明した方法では、触媒層80を形成するのに先立ち、第1領域A1のうちスリット90Sに対応した部分の高さを、第1領域A1の残りの部分の高さと比較して、より高くしてもよい。例えば、第1領域A1のうち第1層90で被覆されない部分の高さを、エッチングによって低くしてもよい。或いは、第1領域A1のうちスリット90Sに対応した部分の高さを、エピタキシャル成長によって高くしてもよい。こうすると、エッチングの進行方向のばらつきが生じ難くなる。
【0140】
第2実施形態において説明した方法では、第1領域A1と第2領域A2との境界の全体に沿うように、第2層96を形成している。第2層96のうちスリット90Sの配列方向に沿って伸びた部分96Bは、図18に示すように、第2層96のうちスリット90Sの長さ方向に沿って伸びた部分96Aの近傍にのみ設けてもよい。
【0141】
凹部TRがトレンチである場合、隣り合った凹部TRに挟まれた凸部は隔壁形状を有している。この場合、凹部TRを形成するためのエッチングにおいて、或る凹部TRの位置で、その長さ全体に亘って加工不良を生じると、その凹部TRと隣接した凸部の倒壊を生じる可能性がある。一方、凹部TRを形成するためのエッチングにおいて、或る凹部TRの位置で、その端部の位置でのみ加工不良を生じても、その凹部TRと隣接した凸部の倒壊は生じ難い。
【0142】
従って、図18に示す構造を採用した場合であっても、凹部TRを形成するためのエッチングにおいて、隣り合った凹部TR間に挟まれた凸部の倒壊を生じ難くすることができる。
【0143】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0144】
1…コンデンサ、10…基板、20a…導電層、20b…導電層、30…誘電体層、60…絶縁層、70a…第1内部電極、70b…第2内部電極、70c…第1外部電極、70c1…第1金属層、70c2…第2金属層、70d…第2外部電極、70d1…第1金属層、70d2…第2金属層、80…触媒層、80a…第1触媒部分、80b…第2触媒部分、81…触媒粒子、90…第1層、90S…スリット、95…第2層、95A…部分、95B…部分、96…第2層、96A…部分、96B…部分、98…マスク層、98a…第1部分、98b…第2部分、100…エッチング剤、A1…第1領域、A2…第2領域、CS…導電基板、D1…幅、D2…幅、D…距離、D…距離、H1…高さ、H2…高さ、H2…高さ、H…高さ、H…高さ、S1…第1主面、S2…第2主面、TR…凹部。
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