(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】印刷システムおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20240917BHJP
B42C 19/06 20060101ALI20240917BHJP
B65H 20/30 20060101ALI20240917BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20240917BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B41J29/38 501
B41J29/38 206
B42C19/06
B65H20/30
B65H37/04
G06F3/12 311
G06F3/12 360
G06F3/12 364
(21)【出願番号】P 2021046821
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥田 邦廣
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晋
(72)【発明者】
【氏名】野村 星也
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-266024(JP,A)
【文献】特開平11-231580(JP,A)
【文献】特開2012-096852(JP,A)
【文献】特開2020-055695(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0003733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B42C 19/06
B65H 20/30
B65H 37/04
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のジョブに基づく連続印刷を実行することができ印刷後の印刷媒体を1または複数の後加工機からなる後加工機群に送出する印刷装置を含む印刷システムであって、
前記印刷媒体を搬送する、前記印刷装置の内部に設けられた搬送機構と、
前記印刷装置による印刷の実行に要する1セットあたりの時間である印刷所要時間が前記後加工機群において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間である最小加工時間よりも短いジョブに基づく印刷が実行されたときに印刷後の印刷媒体を一時的に保持するための、前記印刷装置と前記後加工機群との間に設けられた印刷媒体バッファと、
各ジョブについての前記印刷所要時間を算出する印刷所要時間算出部と、
各ジョブについて、前記最小加工時間と前記印刷所要時間との差に基づいて1セットあたりの前記印刷媒体バッファの消費量の増減量を算出する増減量算出部と、
前記増減量算出部によって算出された増減量を累積することによって前記印刷媒体バッファの消費量の予測値を求める予測値算出部と、
前記搬送機構が前記印刷媒体を搬送する搬送速度を前記予測値に基づいて制御する搬送制御部と
を備えることを特徴とする、印刷システム。
【請求項2】
前記予測値算出部は、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブについて前記増減量算出部によって算出された増減量を累積することによって前記予測値を求めることを特徴とする、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記搬送制御部は、前記予測値が予め定められた閾値以上になると、前記搬送速度を低下させることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記閾値は、前記印刷媒体バッファが前記印刷媒体を保持することのできる最大容量に定められていることを特徴とする、請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記後加工機群は、
前記印刷装置による印刷後の印刷媒体を断裁する断裁機と、
前記断裁機による断裁後の印刷媒体を1セット分ずつまとめることによってブックブロックを作成するブックブロック作成機と
を含み、
前記最小加工時間は、前記ブックブロック作成機において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記ブックブロック作成機は、丁合機であることを特徴とする、請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記予測値算出部は、前記ブックブロック作成機によって1セット分の処理が行われる毎に、前記予測値を求めることを特徴とする、請求項5または6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記予測値算出部は、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブのうち前記ブックブロック作成機による処理が終了しているジョブについて、前記ブックブロック作成機による処理が行われた時の搬送速度に基づいて前記印刷所要時間算出部により算出された印刷所要時間を用いて前記増減量算出部によって算出された増減量と、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブのうち前記ブックブロック作成機による処理が終了していないジョブについて、現在の搬送速度に基づいて前記印刷所要時間算出部により算出された印刷所要時間を用いて前記増減量算出部によって算出された増減量とを累積することによって、前記予測値を求めることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記搬送制御部によって前記搬送速度が変更されると、前記予測値算出部は、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブのうち前記ブックブロック作成機による処理が終了しているジョブについて、前記ブックブロック作成機による処理が行われた時の搬送速度に基づいて前記印刷所要時間算出部により算出された印刷所要時間を用いて前記増減量算出部によって算出された増減量と、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブのうち前記ブックブロック作成機による処理が終了していないジョブについて、変更後の搬送速度に基づいて前記印刷所要時間算出部により算出された印刷所要時間を用いて前記増減量算出部によって算出された増減量とを累積することによって、前記予測値を求めることを特徴とする、請求項5から8までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項10】
前記印刷装置には、前記搬送速度として、第1速度と、前記第1速度よりも低い速度である第2速度とが用意され、
前記搬送制御部は、前記予測値に基づいて前記搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に低下させた後には、前記搬送速度が前記第1速度である場合でも前記印刷媒体バッファの消費量を減少させるジョブに基づく印刷後の印刷媒体が前記ブックブロック作成機で処理される時に前記搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に高めることを特徴とする、請求項5から9までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記印刷装置には、前記搬送速度として、第1速度と、前記第1速度よりも低い速度である第2速度とが用意され、
前記搬送制御部は、前記搬送速度を前記第1速度で維持した場合の前記予測値が予め定められた閾値以上になると、前記搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に低下させた場合の前記予測値が前記閾値以上とはならない1以上の搬送速度低下タイミングのうちの最も遅いタイミングで、前記搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に低下させることを特徴とする、請求項5から8までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項12】
前記搬送制御部は、前記予測値に基づいて前記搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に低下させた後には、前記搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に高めた場合の前記予測値が前記閾値以上とはならない搬送速度上昇タイミングのうちの最も早いタイミングで、前記搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に高めることを特徴とする、請求項11に記載の印刷システム。
【請求項13】
前記搬送制御部は、前記印刷媒体バッファまたは前記後加工機群から前記印刷装置に対して前記搬送機構の停止または前記搬送速度の低下の指示があっても、現在の搬送速度を維持した場合の前記予測値が予め定められた閾値以上でなければ現在の搬送速度を維持することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項14】
複数のジョブに基づく連続印刷を実行することができ印刷後の印刷媒体を1または複数の後加工機からなる後加工機群に送出する印刷装置を含む印刷システムにおける印刷方法であって、
前記印刷システムは、
前記印刷媒体を搬送する、前記印刷装置の内部に設けられた搬送機構と、
前記印刷装置による印刷の実行に要する1セットあたりの時間である印刷所要時間が前記後加工機群において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間である最小加工時間よりも短いジョブに基づく印刷が実行されたときに印刷後の印刷媒体を一時的に保持するための、前記印刷装置と前記後加工機群との間に設けられた印刷媒体バッファと
を備え、
前記印刷方法は、
各ジョブについての前記印刷所要時間を算出する印刷所要時間算出ステップと、
各ジョブについて、前記最小加工時間と前記印刷所要時間との差に基づいて1セットあたりの前記印刷媒体バッファの消費量の増減量を算出する増減量算出ステップと、
前記増減量算出ステップで算出された増減量を累積することによって前記印刷媒体バッファの消費量の予測値を求める予測値算出ステップと、
前記搬送機構が前記印刷媒体を搬送する搬送速度を前記予測値に基づいて制御する搬送制御ステップと
を含むことを特徴とする、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムおよび印刷方法に関し、より詳しくは、印刷から製本までの工程を一貫して行うことができるように構成された印刷システムおよび当該印刷システムにおける印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、書籍などの印刷製本を行うための装置として、基材(印刷媒体)に対して印刷を行う印刷装置と、印刷後の基材に対して「後加工」と呼ばれる処理を施す後加工機とが知られている。印刷装置としては、近年ではデジタル印刷装置(例えば、インクジェットプリンタ)の採用が多くなっている。製本用に使用されるデジタル印刷装置では、典型的には、ロール紙と呼ばれる長尺帯状の印刷用紙(連続紙)が基材として採用されている。後加工機としては、印刷装置による印刷後の連続紙を指定サイズに切断するシートカッター機(断裁機)、指定サイズに切断された印刷用紙から折り丁を作成する折り機、複数の折り丁をまとめる丁合機、丁合された状態の折り丁群に綴じ加工を施す綴じ機、本の三方向(天、地、小口)の仕上げ裁ちを行う三方断裁機などが知られている。なお、最終成果物の種類によって、使用される後加工機は異なる。
【0003】
ところで、印刷製本に関しては、近年、多品種小ロット生産が行われることが多くなっている。多品種小ロット生産が行われると、少品種大量生産が行われる場合に比べて人の作業が必要となる頻度が高くなる。人の作業が必要になると、コストは増加するし、作業ミスに起因する不良品等の発生確率も高くなる。そこで、近年、印刷から製本までの工程のインライン化が進んでいる。インライン化したシステムによれば、印刷から製本までの工程を一貫して自動的に行うことができる。このため、多品種小ロット生産が行われる場合であっても、作業ミスに起因する不良品等の発生を抑制することができる。また、従来に比較して納期の短縮やコストの低減も可能となる。
【0004】
ここで、本明細書で用いる「印刷速度」、「搬送速度」という用語について説明する。印刷速度は、印刷用紙の搬送方向についての単位時間あたりの印刷距離(印刷用紙に対して印刷が行われる部分の距離)を表す。搬送速度は、印刷用紙の搬送の制御に着目した際に用いる用語であって、印刷用紙の搬送方向についての単位時間あたりの当該印刷用紙の移動距離(搬送機構が単位時間あたりに印刷用紙を搬送する距離)を表す。通常に印刷が行われている時には、印刷速度と搬送速度とは等しい。本明細書で説明する印刷装置には設定可能な速度として複数の印刷速度が用意されていて、選択された印刷速度に応じてインク吐出量の制御や搬送速度の制御が行われる。
【0005】
なお、本発明に関連して、以下の先行技術文献が知られている。特開2010-72313号公報には、画像形成装置と折り装置と製本装置とからなる製本装置システムに関し、製本不良や機器の停止を未然に防ぐ技術が開示されている。また、特開2015-174331号公報には、画像形成装置と後加工装置とからなる画像形成システムに関し、後加工の種類に起因する問題の発生を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-72313号公報
【文献】特開2015-174331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
印刷後の連続紙を元にして製本のための後加工を行う工程に関し、或る1セット(一冊)の処理から次の1セット(一冊)の処理に移行するための切り替え機構には時間的制約がある。典型的には、印刷装置の下流側に設けられた複数の後加工機のうち断裁後の印刷用紙を1セット分ずつまとめることによってブックブロックを作成する装置(便宜上、「ブックブロック作成機」という。)において時間的制約は大きくなる。印刷装置と後加工機とが直接に接続された構成(インライン化された構成)が採用されている場合には、印刷速度(搬送速度)に応じて後加工機に印刷用紙が供給されるので、例えばページ数の少ない書籍についての印刷後の印刷用紙が後加工機に供給された際に、印刷用紙の供給速度に当該後加工機での処理が間に合わないことがある。そこで、印刷装置と後加工機との処理速度の差を吸収するために、
図20に示すように、ブックブロック作成機93を含む後加工機群92と印刷装置90との間に印刷後の印刷用紙を一時的に保持するためのウェブバッファ91が設けられている。
【0008】
ウェブバッファ91が設けられている構成において、ウェブバッファ91の消費量が予め定められた閾値以上になると(換言すれば、ウェブバッファ91の空き容量が予め定められた閾値以下になると)、ウェブバッファ91から印刷装置90に対して減速や停止を要求する指示が送られる。このような指示に応じて印刷装置90は印刷速度(搬送速度)を変化させる必要がある。
【0009】
図21は、従来の一動作例について説明するための図である。
図21のA部にウェブバッファ91の空き容量の変化を示し、
図21のB部に搬送速度の変化を示している。A部に関し、B91はウェブバッファ91の最大容量を表し、B92は定常状態時の空き容量を表し、B93は印刷装置90に対して減速を要求することになる空き容量を表し、B94は印刷装置90に対して停止を要求することになる空き容量を表している。また、B部に関し、V91は通常運転時の搬送速度を表し、V92は減速運転時の搬送速度を表し、V93は印刷停止時の搬送速度を表している。
【0010】
時刻t90に印刷装置90の運転が開始した後、搬送速度は徐々に速くなる。時刻t91には、搬送速度はV91となり、ウェブバッファ91の空き容量はB92となる。時刻t92になると、ウェブバッファ91の空き容量が減少し始める。時刻t93にウェブバッファ91の空き容量がB93になると、ウェブバッファ91から印刷装置90に対して減速を要求する指示が送られる。これにより、時刻t93に搬送速度が低下し始め、時刻t94に搬送速度はV92となる。その後、時刻t95にウェブバッファ91の空き容量がB94になると、ウェブバッファ91から印刷装置90に対して停止を要求する指示が送られる。これにより、時刻t95に搬送速度がさらに低下し始める。このように搬送速度が低下したことによって、時刻t96にウェブバッファ91の空き容量が増加し始める。そして、時刻t97にウェブバッファ91の空き容量がB92となり、ウェブバッファ91から印刷装置90に対して加速を要求する指示が送られる。これにより、時刻t97から搬送速度は徐々に速くなる。
【0011】
図21に示した例では、印刷装置90の運転中に搬送速度は大きく変動している。これに関し、印刷装置90にとっては、指示された時間内に指示された速度に搬送速度を変化させることは必ずしも容易ではない。また、搬送速度の大きな変動すなわち印刷速度の大きな変動は、ヘッドから吐出されるインク量の変化、搬送速度の変化に乾燥ヒーターの制御が追いつかないことに起因する乾燥むら、インク滴の着弾ずれ、搬送速度を制御するためのサーボモータの共振などを引き起こす。その結果、印刷品質が低下する。特に、1回の連続印刷が実行される際の処理対象にページ数の少ない書籍のジョブが多数含まれていると、印刷速度(搬送速度)が頻繁に変化するので、印刷品質の低下が顕著になるとともに生産性が低下する。
【0012】
なお、特開2010-72313号公報および特開2015-174331号公報には、印刷装置と後加工機との処理速度の差を緩和することやウェブバッファについては何ら記載されていない。
【0013】
以上のような状況に鑑み、本発明は、印刷装置と後加工機との処理速度の差を緩和するために搬送速度(印刷媒体を搬送する速度)を制御することに起因する印刷品質の低下や生産性の低下を抑制することのできる印刷システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、複数のジョブに基づく連続印刷を実行することができ印刷後の印刷媒体を1または複数の後加工機からなる後加工機群に送出する印刷装置を含む印刷システムであって、
前記印刷媒体を搬送する、前記印刷装置の内部に設けられた搬送機構と、
前記印刷装置による印刷の実行に要する1セットあたりの時間である印刷所要時間が前記後加工機群において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間である最小加工時間よりも短いジョブに基づく印刷が実行されたときに印刷後の印刷媒体を一時的に保持するための、前記印刷装置と前記後加工機群との間に設けられた印刷媒体バッファと、
各ジョブについての前記印刷所要時間を算出する印刷所要時間算出部と、
各ジョブについて、前記最小加工時間と前記印刷所要時間との差に基づいて1セットあたりの前記印刷媒体バッファの消費量の増減量を算出する増減量算出部と、
前記増減量算出部によって算出された増減量を累積することによって前記印刷媒体バッファの消費量の予測値を求める予測値算出部と、
前記搬送機構が前記印刷媒体を搬送する搬送速度を前記予測値に基づいて制御する搬送制御部と
を備えることを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記予測値算出部は、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブについて前記増減量算出部によって算出された増減量を累積することによって前記予測値を求めることを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記搬送制御部は、前記予測値が予め定められた閾値以上になると、前記搬送速度を低下させることを特徴とする。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、
前記閾値は、前記印刷媒体バッファが前記印刷媒体を保持することのできる最大容量に定められていることを特徴とする。
【0018】
第5の発明は、第1から第4までのいずれかの発明において、
前記後加工機群は、
前記印刷装置による印刷後の印刷媒体を断裁する断裁機と、
前記断裁機による断裁後の印刷媒体を1セット分ずつまとめることによってブックブロックを作成するブックブロック作成機と
を含み、
前記最小加工時間は、前記ブックブロック作成機において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間であることを特徴とする。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、
前記ブックブロック作成機は、丁合機であることを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、第5または第6の発明において、
前記予測値算出部は、前記ブックブロック作成機によって1セット分の処理が行われる毎に、前記予測値を求めることを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、第5から第7までのいずれかの発明において、
前記予測値算出部は、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブのうち前記ブックブロック作成機による処理が終了しているジョブについて、前記ブックブロック作成機による処理が行われた時の搬送速度に基づいて前記印刷所要時間算出部により算出された印刷所要時間を用いて前記増減量算出部によって算出された増減量と、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブのうち前記ブックブロック作成機による処理が終了していないジョブについて、現在の搬送速度に基づいて前記印刷所要時間算出部により算出された印刷所要時間を用いて前記増減量算出部によって算出された増減量とを累積することによって、前記予測値を求めることを特徴とする。
【0022】
第9の発明は、第5から第8までのいずれかの発明において、
前記搬送制御部によって前記搬送速度が変更されると、前記予測値算出部は、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブのうち前記ブックブロック作成機による処理が終了しているジョブについて、前記ブックブロック作成機による処理が行われた時の搬送速度に基づいて前記印刷所要時間算出部により算出された印刷所要時間を用いて前記増減量算出部によって算出された増減量と、前記印刷媒体バッファを通過した印刷媒体に対応するジョブのうち前記ブックブロック作成機による処理が終了していないジョブについて、変更後の搬送速度に基づいて前記印刷所要時間算出部により算出された印刷所要時間を用いて前記増減量算出部によって算出された増減量とを累積することによって、前記予測値を求めることを特徴とする。
【0023】
第10の発明は、第5から第9までのいずれかの発明において、
前記印刷装置には、前記搬送速度として、第1速度と、前記第1速度よりも低い速度である第2速度とが用意され、
前記搬送制御部は、前記予測値に基づいて前記搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に低下させた後には、前記搬送速度が前記第1速度である場合でも前記印刷媒体バッファの消費量を減少させるジョブに基づく印刷後の印刷媒体が前記ブックブロック作成機で処理される時に前記搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に高めることを特徴とする。
【0024】
第11の発明は、第5から第8までのいずれかの発明において、
前記印刷装置には、前記搬送速度として、第1速度と、前記第1速度よりも低い速度である第2速度とが用意され、
前記搬送制御部は、前記搬送速度を前記第1速度で維持した場合の前記予測値が予め定められた閾値以上になると、前記搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に低下させた場合の前記予測値が前記閾値以上とはならない1以上の搬送速度低下タイミングのうちの最も遅いタイミングで、前記搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に低下させることを特徴とする。
【0025】
第12の発明は、第11の発明において、
前記搬送制御部は、前記予測値に基づいて前記搬送速度を前記第1速度から前記第2速度に低下させた後には、前記搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に高めた場合の前記予測値が前記閾値以上とはならない搬送速度上昇タイミングのうちの最も早いタイミングで、前記搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に高めることを特徴とする。
【0026】
第13の発明は、第1から第12までのいずれかの発明において、
前記搬送制御部は、前記印刷媒体バッファまたは前記後加工機群から前記印刷装置に対して前記搬送機構の停止または前記搬送速度の低下の指示があっても、現在の搬送速度を維持した場合の前記予測値が予め定められた閾値以上でなければ現在の搬送速度を維持することを特徴とする。
【0027】
第14の発明は、複数のジョブに基づく連続印刷を実行することができ印刷後の印刷媒体を1または複数の後加工機からなる後加工機群に送出する印刷装置を含む印刷システムにおける印刷方法であって、
前記印刷システムは、
前記印刷媒体を搬送する、前記印刷装置の内部に設けられた搬送機構と、
前記印刷装置による印刷の実行に要する1セットあたりの時間である印刷所要時間が前記後加工機群において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間である最小加工時間よりも短いジョブに基づく印刷が実行されたときに印刷後の印刷媒体を一時的に保持するための、前記印刷装置と前記後加工機群との間に設けられた印刷媒体バッファと
を備え、
前記印刷方法は、
各ジョブについての前記印刷所要時間を算出する印刷所要時間算出ステップと、
各ジョブについて、前記最小加工時間と前記印刷所要時間との差に基づいて1セットあたりの前記印刷媒体バッファの消費量の増減量を算出する増減量算出ステップと、
前記増減量算出ステップで算出された増減量を累積することによって前記印刷媒体バッファの消費量の予測値を求める予測値算出ステップと、
前記搬送機構が前記印刷媒体を搬送する搬送速度を前記予測値に基づいて制御する搬送制御ステップと
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
上記第1の発明によれば、各ジョブについて、印刷の実行に要する1セットあたりの時間である印刷所要時間と後加工機において1セットの処理に少なくとも必要な時間である最小加工時間との差に基づいて、1セットあたりの印刷媒体バッファの消費量の増減量が算出される。そして、その増減量を累積することによって印刷媒体バッファの消費量の予測値が求められ、印刷媒体の搬送速度が当該予測値に基づいて制御される。以上より、後加工機や印刷媒体バッファからの要求(減速や停止の要求)によることなく、印刷媒体バッファの消費量の変化を考慮して印刷装置が主体的に搬送速度を制御することが可能となる。これにより、搬送速度の変動を従来よりも小さくすることが可能となる。また、予測値に基づいて搬送速度を制御することにより、従来よりも早いタイミングで搬送速度を低下させることが可能となり、その結果、印刷停止の可能性が低減される。以上より、印刷品質の低下や生産性の低下が抑制される。さらに、印刷媒体バッファの消費量ができるだけ小さくなるように搬送速度を制御することもできるので、従来に比較して最大容量の小さな印刷媒体バッファを採用することが可能となる。これにより、コスト低減の効果が得られる。以上のように、印刷装置と後加工機との処理速度の差を緩和するために印刷媒体の搬送速度を制御することに起因する印刷品質の低下や生産性の低下を抑制することのできる印刷システムが実現される。
【0029】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0030】
上記第3の発明によれば、閾値を適宜に設定することにより、後加工機や印刷媒体バッファから印刷装置に対して減速や停止の指示が送られる前に搬送速度を低下させることが可能となる。これにより、搬送速度の大きな変動が抑制される。
【0031】
上記第4の発明によれば、印刷媒体バッファが枯渇状態になることが抑制される。
【0032】
上記第5の発明によれば、ブックブロックを作成する処理に要する最低時間が比較的長いことに起因するブックブロック作成機でのエラーの発生を防止しつつ、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0033】
上記第6の発明によれば、ブックブロックを作成する処理に要する最低時間が比較的長いことに起因する丁合機でのエラーの発生を防止しつつ、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0034】
上記第7の発明によれば、搬送速度を変化させるタイミングを細かく制御することが可能となるので、より効果的に印刷品質の低下や生産性の低下が抑制される。
【0035】
上記第8の発明によれば、ブックブロック作成済みジョブに起因する印刷媒体バッファの消費量が精度良く求められる。これにより、印刷品質の低下や生産性の低下が効果的に抑制される。
【0036】
上記第9の発明によれば、搬送速度の変化を考慮して印刷媒体バッファの消費量が予測される。これにより、印刷品質の低下や生産性の低下が効果的に抑制される。
【0037】
上記第10の発明によれば、搬送速度の加速が印刷媒体バッファの枯渇状態を引き起こすことが防止される。
【0038】
上記第11の発明によれば、搬送速度の減速は減速可能なタイミングのうちのできるだけ遅いタイミングで行われるので、生産性の低下が効果的に抑制される。
【0039】
上記第12の発明によれば、搬送速度の加速は加速可能なタイミングのうちのできるだけ早いタイミングで行われるので、生産性の低下が効果的に抑制される。
【0040】
上記第13の発明によれば、従来と比較して、生産性が向上する。
【0041】
上記第14の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。
【
図2】上記実施形態における印刷装置の一構成例を示す模式図である。
【
図3】上記実施形態における印刷速度制御部の概略機能構成を示すブロック図である。
【
図4】上記実施形態における印刷制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】上記実施形態において、印刷速度のセルフ制御に関わる機能構成を示すブロック図である。
【
図6】上記実施形態において、ウェブバッファの消費量の予測値の算出について説明するための図である。
【
図7】上記実施形態において、連続印刷の処理の進行状態の表し方について説明するための図である。
【
図8】上記実施形態において、第1の制御例の手順を示すフローチャートである。
【
図9】上記実施形態において、第1の制御例の具体例の説明に用いるジョブの情報を示す図である。
【
図10】上記実施形態において、第1の制御例の具体例について説明するための図であるである。
【
図11】上記実施形態において、第1の制御例の具体例について説明するための図であるである。
【
図12】上記実施形態において、第1の制御例の具体例について説明するための図であるである。
【
図13】上記実施形態における一動作例について説明するための図である。
【
図14】上記実施形態において、第2の制御例の手順を示すフローチャートである。
【
図15】上記実施形態に関し、第2の制御例における減速タイミングの計算について説明するための図である。
【
図16】上記実施形態に関し、第2の制御例における加速タイミングの計算について説明するための図である。
【
図17】上記実施形態において、第2の制御例の具体例の説明に用いるジョブの情報を示す図である。
【
図18】上記実施形態において、第2の制御例の具体例について説明するための図であるである。
【
図19】上記実施形態において、第2の制御例の具体例について説明するための図であるである。
【
図20】従来例に関し、印刷後の印刷用紙を一時的に保持するためのウェブバッファが設けられていることについて説明するための図である。
【
図21】従来の一動作例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0044】
<1.全体構成>
図1は、本実施形態に係る印刷システム1の全体構成を示すブロック図である。この印刷システム1は、印刷装置10と印刷ワークフロー管理装置30とRIPサーバ40とウェブバッファ50と後加工機群60とによって構成されている。後加工機群60は、印刷後の印刷用紙(印刷媒体)に対して後加工を施すための複数の装置からなる。
【0045】
印刷装置10は、概略的には、印刷機本体とそのコントローラである印刷制御装置とによって構成されている。本実施形態における印刷装置10は、インクジェットプリンタであって、連続紙であるロール紙に対する印刷(連帳印刷)を行う。
【0046】
印刷ワークフロー管理装置30は、この印刷システム1で印刷を行うための一連の処理の管理(すなわち、印刷ワークフローの管理)を行う。なお、これに関し、印刷ワークフローを管理するためのアプリケーションソフトウェア(印刷ワークフロー管理システム)がインストールされたパソコン等のコンピュータが、印刷ワークフロー管理装置30として機能する。印刷ワークフロー管理装置30には、入稿データを構成する各ページをシート上にどのように配置するのかを雛型として定義した複数の台割テンプレートが保持されている。各ジョブは、複数の台割テンプレートのうちの1つに対応付けられる。
【0047】
RIPサーバ40は、入稿データを用いて面付け処理を行うことによって生成されたベクター形式のデータにRIP処理(ラスタライズ処理)を施す。
【0048】
ウェブバッファ50は、
図1に示すように、印刷装置10と後加工機群60との間に設けられている。印刷装置10による印刷後の連続紙は、ウェブバッファ50を介して、後加工機群60に含まれるシートカッター機61に供給される。ウェブバッファ50は、印刷装置10と後加工機群60との処理速度の差を吸収するために、適宜、印刷後の印刷用紙を一時的に保持する。より詳しくは、ウェブバッファ50は、印刷装置10による印刷の実行に要する1セット(一冊)あたりの時間(以下、「印刷所要時間」という。)が後加工機群60において1セット(一冊)の処理の開始時点から次の1セット(一冊)の処理の開始時点までに少なくとも必要な時間(以下、「最小加工時間」という)よりも短いジョブに基づく印刷が実行されたときに、印刷後の印刷用紙を一時的に保持する。なお、本実施形態においては、ウェブバッファ50によって印刷媒体バッファが実現される。
【0049】
後加工機群60は、シートカッター機(断裁機)61、折り機62、丁合機63、綴じ機64、および三方断裁機65からなる。シートカッター機61は、印刷装置10による印刷後の連続紙を指定サイズに切断する。折り機62は、指定サイズに切断された印刷用紙から折り丁を作成する。丁合機63は、複数の折り丁をまとめる。綴じ機64は、丁合された状態の折り丁群に綴じ加工を施す。三方断裁機65は、本の三方向(天、地、小口)の仕上げ裁ちを行う。なお、ここで示した後加工機群60の構成は一例であって、これには限定されない。ところで、丁合機63は、シートカッター機(断裁機)61による断裁後の印刷用紙を1セット分ずつまとめることによってブックブロックを作成するブックブロック作成機として機能する。そこで、以下においては、丁合機63で行われる処理のことを「ブックブロック作成処理」という。
【0050】
印刷装置10と印刷ワークフロー管理装置30とRIPサーバ40とは、LANなどのネットワーク7によって通信可能に接続されている。印刷対象のデータである入稿データは、このネットワーク7を経由して、図示しないクライアントコンピュータ等から送られてくる。
【0051】
<2.印刷装置の構成>
図2は、印刷装置10の一構成例を示す模式図である。上述したように、この印刷装置10は、印刷機本体200とそのコントローラである印刷制御装置100とによって構成されている。
【0052】
印刷機本体200は、印刷用紙(ここではロール紙)PAを供給する用紙送出部21と、印刷用紙PAの表面への印刷を行う第1の印刷機構20aと、第1の印刷機構20aから出力された印刷用紙PAの表面と裏面とを反転させる反転ユニット27と、印刷用紙PAの裏面への印刷を行う第2の印刷機構20bとを備えている。第1の印刷機構20aは、印刷用紙PAを内部へと搬送するための第1の駆動ローラ22aと、第1の印刷機構20aの内部で印刷用紙PAを搬送するための複数個の支持ローラ23aと、印刷用紙PAにインクを吐出して印刷を行う印刷部24aと、印刷後の印刷用紙PAを乾燥させる乾燥部25aと、印刷用紙PAを第1の印刷機構20aの内部から出力するための第2の駆動ローラ26aとを備えている。印刷部24aは、例えば、C色(シアン色)、M色(マゼンタ色)、Y色(黄色)、およびK色(黒色)のインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド列によって構成されている。第2の印刷機構20bの構成については、第1の印刷機構20aの構成と同様であるので、説明を省略する。なお、第1の印刷機構20aの構成要素については符号の末尾に“a”を付し、第2の印刷機構20bの構成要素については符号の末尾に“b”を付している。
【0053】
印刷制御装置100は、以上のような構成の印刷機本体200の動作を制御する。印刷制御装置100に印刷出力の指示コマンドが与えられると、印刷制御装置100は、印刷用紙PAが用紙送出部21から内部へと搬送されるよう、印刷機本体200の動作を制御する。そして、第1の印刷機構20aおよび第2の印刷機構20bのそれぞれにおいて、まず印刷部24a,24bによって印刷用紙PAへの印刷が行われ、次に乾燥部25a,25bによって印刷用紙PAの乾燥が行われる。
【0054】
ところで、本実施形態における印刷装置10には、設定可能な印刷速度として、2つの印刷速度(第1速度および第2速度)が用意されている。第1速度は、通常運転時の速度である。第2速度は、第1速度よりも低い速度である。このように2つの印刷速度が用意されているので、印刷制御装置100には、印刷速度を制御するための印刷速度制御部140が設けられている。
図3は、印刷速度制御部140の概略機能構成を示すブロック図である。印刷速度制御部140は、全体制御部141と印刷制御部142と搬送制御部143と乾燥制御部144とを含んでいる。全体制御部141は、設定された印刷速度に応じて、印刷制御部142、搬送制御部143、および乾燥制御部144の動作を制御する。印刷制御部142は、印刷速度に応じて、印刷部24a,24bからのインクの吐出タイミングやインクの吐出量を制御する。搬送制御部143は、搬送機構が印刷用紙PAを搬送する速度(搬送速度)を制御する。なお、本実施形態においては、用紙送出部21と、第1の印刷機構20aに含まれる第1の駆動ローラ22a、支持ローラ23a、および第2の駆動ローラ26aと、第2の印刷機構20bに含まれる第1の駆動ローラ22b、支持ローラ23b、および第2の駆動ローラ26bとによって、搬送機構が実現される。搬送制御部143による搬送速度の制御は、第1の駆動ローラ22a、第2の駆動ローラ26a、第1の駆動ローラ22b、および第2の駆動ローラ26bの回転速度を制御することによって行われる。乾燥制御部144は、印刷速度に応じて、乾燥部25a,25bが印刷用紙PAを乾燥させる際の温度(乾燥温度)を制御する。
【0055】
従来より、印刷速度の制御は、印刷対象のジョブの情報JI、オペレータによる指示SO、ウェブバッファ50や後加工機群60からの指示SPなどに基づいて行われている。本実施形態においては、それらに加えて、ウェブバッファ50の消費量の予測結果に基づく印刷速度の制御が行われる。以下、便宜上、その制御のことを「印刷速度のセルフ制御」といい、当該制御を実現する機能的構成要素を「セルフ制御部」という。セルフ制御部150は
図3に示すように全体制御部141に含まれており、セルフ制御部150の処理に基づき印刷制御部142、搬送制御部143、および乾燥制御部144の動作が制御される。但し、以下では、
図3で符号6を付した太点線の部分に着目して説明を行う。
【0056】
なお、ここではカラー印刷を行うインクジェットプリンタの構成を例示したが、モノクロ印刷を行うインクジェットプリンタが採用されている場合にも本発明を適用することができる。また、ここでは水性インクを用いるインクジェットプリンタの構成を例示したが、例えばラベル印刷向けインクジェットプリンタのようにUVインク(紫外線硬化インク)を用いる印刷装置が採用されている場合にも本発明を適用することができる。さらに、印刷後の印刷媒体が印刷装置からウェブバッファを介して後加工機に送られる構成が採用されていれば、インクジェットプリンタ以外の印刷装置(例えば、レーザープリンタ)が用いられている場合にも本発明を適用することができる。以上のように、印刷装置の種類については特に限定されない。
【0057】
<3.印刷制御装置のハードウェア構成>
図4は、印刷制御装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4に示すように、印刷制御装置100は、本体110、補助記憶装置121、光ディスクドライブ122、表示部123、キーボード124、およびマウス125などを備えている。本体110は、CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、出力インタフェース部117、およびネットワークインタフェース部118を含んでいる。CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、出力インタフェース部117、およびネットワークインタフェース部118は、システムバスを介して互いに接続されている。第1ディスクインタフェース部113には補助記憶装置121が接続されている。第2ディスクインタフェース部114には光ディスクドライブ122が接続されている。表示制御部115には、表示部(表示装置)123が接続されている。入力インタフェース部116には、キーボード124およびマウス125が接続されている。出力インタフェース部117には、通信ケーブルを介して印刷機本体200が接続されている。ネットワークインタフェース部118にはネットワーク7が接続されている。補助記憶装置121は磁気ディスク装置などである。光ディスクドライブ122には、CD-ROMやDVD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての光ディスク8が挿入される。表示部123は液晶ディスプレイなどである。表示部123は、オペレータが所望する情報を表示するために使用される。キーボード124およびマウス125は、この印刷制御装置100に対して作業者が指示を入力するために使用される。
【0058】
補助記憶装置121には、印刷制御プログラム(印刷機本体200による印刷処理の実行を制御するためのプログラム)Pが格納されている。CPU111は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラムPをメモリ112に読み出して実行することにより、印刷制御装置100の各種機能を実現する。メモリ112は、RAMおよびROMを含んでいる。メモリ112は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラムPをCPU111が実行するためのワークエリアとして機能する。なお、印刷制御プログラムPは、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわち、ユーザーは、例えば、印刷制御プログラムPの記録媒体としての光ディスク8を購入して光ディスクドライブ122に挿入し、光ディスク8から印刷制御プログラムPを読み出して補助記憶装置121にインストールする。また、これに代えて、ネットワーク7を介して送信される印刷制御プログラムPをネットワークインタフェース部118で受信して、それを補助記憶装置121にインストールするようにしてもよい。
【0059】
<4.機能構成>
図5は、印刷速度のセルフ制御に関わる機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように、上述したセルフ制御部150は、最小加工時間設定部151と印刷所要時間算出部152と増減量算出部153と予測値算出部154とを含んでいる。
【0060】
最小加工時間設定部151は、例えばオペレータによるデータの入力に基づき、上述した最小加工時間MTの設定を行う。ところで、本実施形態では、丁合機63でブックブロックを作成する処理が行われるので、後加工の工程において時間的なボトルネックとなるのは丁合機63の工程である。従って、本実施形態においては、ブックブロック作成機としての丁合機63において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間が最小加工時間MTとして設定される。
【0061】
印刷所要時間算出部152は、各ジョブについて、上述した印刷所要時間PTを算出する。以下、印刷所要時間PTを算出する具体的な手順の一例を説明する。まず、処理対象のジョブについてのページ数の情報が取得される。次に、処理対象のジョブに対応付けられている台割テンプレートから1シートに割り付けられるページ数(以下、「割り付けページ数」という。)の情報とシート長の情報とが抽出される。そして、ページ数の情報と割り付けページ数の情報とシート長の情報とに基づいて、1セットあたりの印刷長が算出される。その後、1セットあたりの印刷長と印刷速度とに基づいて、印刷所要時間PTが求められる。ページ数をNpと表し、割り付けページ数をNaと表し、シート長をLsと表すと、1セットあたりの印刷長Lpは以下の式(1)で算出される。さらに、印刷速度をVと表すと、印刷所要時間PTは以下の式(2)で算出される。
Lp=(Np/Na)×Ls ・・・(1)
PT=LP/V ・・・(2)
【0062】
増減量算出部153は、各ジョブについて、最小加工時間設定部151によって設定された最小加工時間MTと印刷所要時間算出部152によって算出された印刷所要時間PTとの差に基づいて1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量Zを算出する。1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量Zは以下の式(3)で算出される。なお、増減量Zの値が正であることは、ウェブバッファ50の消費量が増加する(ウェブバッファ50の空き容量が減少する)ことを意味し、増減量Zの値が負であることは、ウェブバッファ50の消費量が減少する(ウェブバッファ50の空き容量が増加する)ことを意味する。
Z=(MT-PT)×V ・・・(3)
【0063】
予測値算出部154は、増減量算出部153によって算出された増減量Zを累積することによってウェブバッファ50の消費量の予測値PVを求める。なお、特に限定はされないが、予測値算出部154による予測値PVの算出は、例えば、丁合機63での1セット分のブックブロック作成処理が終了する毎に行われる。
【0064】
搬送制御部143は、予測値算出部154によって求められた予測値PVに基づいて搬送機構210に制御信号CSを与えることによって、搬送速度を制御する。詳しくは、用紙送出部21と第1の駆動ローラ22aと支持ローラ23aと第2の駆動ローラ26aと第1の駆動ローラ22bと支持ローラ23bと第2の駆動ローラ26bとによって構成される搬送機構210に搬送制御部143が制御信号CSを与えることによって、第1の駆動ローラ22a、第2の駆動ローラ26a、第1の駆動ローラ22b、および第2の駆動ローラ26bの回転速度が制御される。これにより、搬送速度が制御される。
【0065】
印刷所要時間算出部152による上記印刷所要時間PTの算出、増減量算出部153による上記増減量Zの算出、および予測値算出部154による上記予測値PVの算出について、
図6を参照しつつ更に詳しく説明する。
図6には、或る時点の連続印刷の状態(ジョブの状態)を模式的に示している。
図6では、1セット分のジョブを連続紙の一部に見立てた矩形で表している(
図7、
図10~
図12、
図15、
図16、
図18、および
図19についても同様)。これに関し、実際には1セットあたりの印刷長はジョブのサイズによって異なるが、便宜上、
図6では全てのジョブの印刷長が同じであるように示している。また、
図6では、印刷装置10、ウェブバッファ50、および丁合機(ブックブロック作成機)63のそれぞれの位置を矢印で模式的に示している。
【0066】
図6に関し、符号71を付したジョブは、ブックブロック作成処理が終了した直後のジョブである。従って、符号75を付した矢印の部分に記しているジョブ(符号71を付したジョブおよび該ジョブよりも印刷順序が先のジョブ)については、ブックブロック作成処理が終了している。符号72を付したジョブは、ブックブロック作成処理の実行中のジョブである。符号73を付したジョブは、対応する用紙部分がウェブバッファ50から出力された直後のジョブである。符号74を付したジョブは、対応する用紙部分がウェブバッファ50から出力される直前のジョブである。なお、説明の便宜上、以下においては、符号75を付した矢印の部分に記しているジョブの状態を「ブックブロック作成済み状態」といい、符号76を付した矢印の部分に記しているジョブの状態を「ブックブロック完成待ち状態」という。
【0067】
本実施形態においては、予測値算出部154は、ウェブバッファ50を通過した印刷用紙に対応するジョブについて増減量算出部153によって算出された増減量Zを累積することによって予測値PVを求める。すなわち、ブックブロック作成済み状態のジョブおよびブックブロック完成待ち状態のジョブについて増減量Zを累積することによって予測値PVが求められる。その際、ブックブロック作成済み状態のジョブについては、ブックブロック作成処理が行われた時の搬送速度(印刷速度)に基づいて印刷所要時間算出部152により算出された印刷所要時間PTを用いて増減量Zが算出され、ブックブロック完成待ち状態のジョブすなわちブックブロック作成処理が終了していないジョブについては、現在の搬送速度(印刷速度)に基づいて印刷所要時間算出部152により算出された印刷所要時間PTを用いて増減量Zが算出される。
【0068】
以上のように、予測値算出部154は、ウェブバッファ50を通過した印刷用紙に対応するジョブのうちブックブロック作成処理が終了しているジョブについて、ブックブロック作成処理が行われた時の搬送速度に基づいて印刷所要時間算出部152により算出された印刷所要時間PTを用いて増減量算出部153によって算出された増減量Zと、ウェブバッファ50を通過した印刷用紙に対応するジョブのうちブックブロック作成処理が終了していないジョブについて、現在の搬送速度に基づいて印刷所要時間算出部152により算出された印刷所要時間PTを用いて増減量算出部153によって算出された増減量Zとを累積することによって、ウェブバッファ50の消費量の予測値PVを求める。これを実現するために、印刷所要時間算出部152は、各ジョブについて、ブックブロック完成待ち状態である時の搬送速度すなわちウェブバッファ50を通過してからブックブロック作成処理が終了するまでの搬送速度に基づく印刷所要時間PTと、ブックブロック作成処理が行われた時の搬送速度に基づく印刷所要時間PTとを算出する。従って、各ジョブについて、ウェブバッファ50を通過してからブックブロック作成処理が終了するまでの搬送速度が一定であれば1つの搬送速度に基づいて印刷所要時間PTが算出され、ウェブバッファ50を通過してからブックブロック作成処理が終了するまでの期間に搬送速度の変化があれば搬送速度毎に印刷所要時間PTが算出される。
【0069】
また、以下では、図面において、連続印刷の処理の進行状態を例えば
図7に示すように表現する。
図7に関し、矩形内にはジョブ名を記している。これに関し、例えば「J2」というジョブ名のジョブは2つ存在する。これは、「J2」というジョブ名のジョブに基づく印刷の部数(セット数)が2であることを意味する。この場合、同じジョブに基づく印刷が2回繰り返される。
図6と同様、ブックブロック完成待ち状態のジョブを符号76を付した矢印の部分に記している。すなわち、
図7は、符号772を付したジョブから符号773を付したジョブまでの4つのジョブがブックブロック完成待ち状態であることを表している。また、連続印刷の処理は左方に記したジョブから右方に記したジョブへと順次に行われるものとする。従って、符号771を付したジョブは、ブックブロック作成処理が終了した直後のジョブであり、符号774を付したジョブは、対応する用紙部分がウェブバッファ50から出力される直前のジョブである。
【0070】
<5.実施例>
以下、印刷速度のセルフ制御に関し、2つの例(第1の制御例および第2の制御例)を説明する。上述したように、印刷装置10には、設定可能な印刷速度として、通常運転時の速度である第1速度と、第1速度よりも低い速度である第2速度とが用意されている。なお、印刷速度が第1速度に設定された時には搬送速度も第1速度となるよう搬送機構210の動作が制御され、印刷速度が第2速度に設定された時には搬送速度も第2速度となるよう搬送機構210の動作が制御される。
【0071】
以下では、ウェブバッファ50を通過した印刷用紙に対応するジョブのうちブックブロック作成処理が終了しているジョブについてのウェブバッファ50の消費量の増減量Zの累積値を「第1累積値」といい、ウェブバッファ50を通過した印刷用紙に対応するジョブのうちブックブロック作成処理が終了していないジョブについてのウェブバッファ50の消費量の増減量Zの累積値を「第2累積値」という。第1累積値には符号n1を付し、第2累積値には符号n2を付す。第1累積値n1と第2累積値n2との和が予測値PVに相当する。また、第1累積値n1と第2累積値n2との和(予測値PV)の比較対象となる閾値に符号Nを付す。
【0072】
<5.1 第1の制御例>
図8に示すフローチャートを参照しつつ、第1の制御例の手順について説明する。なお、ここでは、互いにサイズ(1セットあたりの印刷長)の異なる複数種類のジョブに基づく連続印刷が実行されるものとして説明する。
【0073】
連続印刷の実行開始後、第1速度で印刷が実行される。換言すれば、第1速度で印刷用紙が搬送されている状態で印刷装置10による印刷が行われる。そして、連続印刷の先頭のジョブについてブックブロック作成処理が行われた後、
図8に示すフローの処理が開始される。
【0074】
まず、閾値Nが適宜の値に設定され、第1累積値n1および第2累積値n2が0に設定される(ステップS100)。閾値Nについては、例えば、ウェブバッファ50が印刷用紙を保持することのできる最大容量(最大の長さ)に設定される。
【0075】
その後、第1速度で印刷が実行されている状態で、丁合機63での1セット分のブックブロック作成処理が終了する毎に、第1累積値n1および第2累積値n2の更新(ステップS110)と、第1累積値n1と第2累積値n2との和と閾値Nとの比較(ステップS120)とが行われる。
【0076】
ステップS110では、印刷所要時間算出部152と増減量算出部153と予測値算出部154とによって、第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。第1累積値n1は、ブックブロック作成処理が終了しているジョブについて増減量算出部153により算出された増減量Zを予測値算出部154が累積することによって求められる。その増減量Zは、ブックブロック作成処理が行われた時の搬送速度に基づいて印刷所要時間算出部152により算出された印刷所要時間PTを用いて、増減量算出部153によって算出される。第2累積値n2は、ウェブバッファ50を通過した印刷用紙に対応するジョブのうちブックブロック作成処理が終了していないジョブについて増減量算出部153により算出された増減量Zを予測値算出部154が累積することによって求められる。その増減量Zは、第1速度に基づいて印刷所要時間算出部152により算出された印刷所要時間PTを用いて、増減量算出部153によって算出される。
【0077】
ステップS120では、第1累積値n1と第2累積値n2との和と閾値Nとが比較される。その結果、第1累積値n1と第2累積値n2との和が閾値N未満であれば、第1速度で印刷が実行されている状態で処理はステップS110に戻る。一方、第1累積値n1と第2累積値n2との和が閾値N以上であれば、処理はステップS130に進む。上述したように、第1累積値n1と第2累積値n2との和は、ウェブバッファ50の消費量の予測値PVに相当する。すなわち、ステップS120では、現在の搬送速度(ここでは、第1速度)を維持した場合にウェブバッファ50の消費量が閾値N以上となるか否かの判定が行われる。
【0078】
ステップS130では、搬送制御部143が搬送機構210の動作を制御することによって、搬送速度が第1速度から第2速度へと減速する。これにより、第2速度で印刷が実行される。すなわち、第2速度で印刷用紙が搬送されている状態で印刷装置10による印刷が行われる。そして、第2速度で印刷が実行されている状態で、丁合機63での1セット分のブックブロック作成処理が終了する毎に、第1累積値n1および第2累積値n2の更新(ステップS140)と、次にブックブロック作成処理を行うジョブが搬送速度(印刷速度)を第1速度に戻してもウェブバッファ50の消費量を減少させるジョブであるか否かの判定(ステップS150)とが行われる。
【0079】
ステップS140では、ステップS110と同様にして、第1累積値n1および第2累積値n2の算出が行われる。但し、第2累積値n2の算出の元となる増減量Zは、第2速度に基づいて印刷所要時間算出部152により算出された印刷所要時間PTを用いて、増減量算出部153によって算出される。
【0080】
ステップS150では、次にブックブロック作成処理を行うジョブについて、第1速度に基づいて印刷所要時間算出部152により算出された印刷所要時間PTと最小加工時間設定部151によって設定された最小加工時間MTとを比較することによって、ウェブバッファ50の消費量を減少させるジョブであるか否かの判定が行われる。印刷所要時間PTが最小加工時間MTよりも大きければ、当該ジョブはウェブバッファ50の消費量を減少させるジョブである旨の判定が行われ、処理はステップS160に進む。一方、印刷所要時間PTが最小加工時間MT以下であれば、当該ジョブはウェブバッファ50の消費量を減少させるジョブではない旨の判定が行われ、第2速度で印刷が実行されている状態で処理はステップS140に戻る。
【0081】
ステップS160では、搬送制御部143が搬送機構210の動作を制御することによって、搬送速度が第2速度から第1速度へと加速する。これにより、第1速度で印刷が実行され、処理はステップS110に戻る。
【0082】
以上のように、第1の制御例によれば、第1速度を維持するとウェブバッファ50の消費量が閾値N以上になると予測されるときに搬送速度が第1速度から第2速度へと減速し、その後、第1速度に加速してもウェブバッファ50の消費量を減少させるジョブの処理が丁合機63で行われる時に搬送速度が第2速度から第1速度へと加速する。
【0083】
次に、第1の制御例の具体例を説明する。ここでは、
図9に示す4種類のジョブ(ジョブJa、ジョブJb、ジョブJc、およびジョブJd)に基づく連続印刷が行われるケースに着目する。上記第1速度に相当する速度は120mpmであり、上記第2速度に相当する速度は90mpmである。搬送速度の制御に関し、実際には減速および加速には或る程度の時間を要するが、ここでは説明の便宜上、減速および加速は瞬時に行われるものと仮定する(第2の制御例の具体例についても同様)。上記閾値Nについては20に設定されているものと仮定する。ブックブロック完成待ち状態となる用紙部分の距離(すなわち、
図6で符号76を付した部分の距離)は24mであると仮定する。なお、増減量の単位については省略する。
【0084】
連続印刷の開始後、印刷速度が120mpmに設定された状態(すなわち、搬送速度が120mpmに設定された状態)でジョブJaに基づく印刷が行われる。ジョブJaについては、印刷速度120mpmでの1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量は0である。従って、丁合機63でジョブJaについてのブックブロック作成処理が行われている期間中、印刷速度(搬送速度)は120mpmで維持される。
【0085】
処理の進行状態が模式的に
図10に示す状態になった時すなわち96セット目のジョブJa(符号701を付したジョブ)に対してブックブロック作成処理が終了した時には、第1累積値n1は0であって、第2累積値n2も0である。
【0086】
その後、処理の進行状態が模式的に
図11に示す状態になった時、1セット目のジョブJb(符号702を付したジョブ)についてブックブロック作成処理が終了している。ジョブJbについては、印刷速度120mpmでの1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量は2である。従って、この時、第1累積値n1は2である。また、この時、6セット分のジョブJbがブックブロック完成待ち状態であるので、第2累積値n2は12である。第1累積値n1と第2累積値n2との和は14であるので、印刷速度(搬送速度)は120mpmで維持される。
【0087】
その後、処理の進行状態が模式的に
図12に示す状態になった時、1セット目から4セット目までのジョブJb(符号703を付した部分のジョブ)についてブックブロック作成処理が終了している。従って、この時、第1累積値n1は8である。また、この時、6セット分のジョブJbがブックブロック完成待ち状態であるので、第2累積値n2は12である。以上より、第1累積値n1と第2累積値n2との和は20である。閾値Nは20であるので、「N>n1+n2」は成立しない。従って、印刷速度(搬送速度)は120mpmから90mpmに減速する。
【0088】
その後、丁合機63での1セット分のブックブロック作成処理が終了する毎に、次にブックブロック作成処理を行うジョブが印刷速度(搬送速度)を120mpmに高めてもウェブバッファ50の消費量を減少させるジョブであるか否かの判定が行われる。そして、丁合機63での次の処理対象がジョブJd(
図9参照)となった時に、印刷速度(搬送速度)が90mpmから120mpmへと加速する。
【0089】
図13に、上記具体例におけるウェブバッファ50の空き容量の変化(A部を参照)および搬送速度の変化(B部を参照)の例を示す。A部およびB部の双方に関し、本実施形態における変化を太実線で表し、従来例による変化を太点線で表している。A部に関し、B1は定常状態時の空き容量を表し、B2はウェブバッファ50が印刷装置10に対して減速を要求することになる空き容量を表し、B3はウェブバッファ50が印刷装置10に対して停止を要求することになる空き容量を表している。B部に関し、V1は第1速度(120mpm)を表し、V2は第2速度(90mpm)を表し、V3は印刷可能な最低の搬送速度を表し、V4は印刷停止時の搬送速度を表している。なお、符号78の矢印で示す欄にはブックブロック作成処理の実行中のジョブの推移を表し、符号79の矢印で示す欄には印刷装置10による印刷実行中のジョブの推移を表している。
【0090】
印刷速度(搬送速度)を120mpmで維持して印刷が行われている状態下、時刻t11になると、ジョブJbについてのブックブロック作成処理が開始される。ジョブJbについては印刷速度120mpmでの1セットあたりの印刷時間が上述した最小加工時間MTよりも短いので、時点t11以降、ウェブバッファ50の空き容量が徐々に低下する。時点t12になると、ウェブバッファ50の消費量の予測値PV(第1累積値n1と第2累積値n2との和)が閾値N以上となり、搬送速度の減速が開始される。時刻t13に搬送速度の減速が完了し、ウェブバッファ50の空き容量の低下が緩やかになる。その後、時刻t14になると、ジョブJdについてのブックブロック作成処理が開始される。ジョブJdについては印刷速度120mpmでの1セットあたりの印刷時間が上述した最小加工時間MTよりも長い。すなわち、ジョブJdは、搬送速度を120mpmに戻してもウェブバッファ50の空き容量を増加させるジョブ(ウェブバッファ50の消費量を減少させるジョブ)である。従って、時刻t14になると、搬送速度の加速が開始される。そして、時刻t15に、ウェブバッファ50の空き容量は定常状態時の空き容量となる。
【0091】
ここで、
図13のB部に着目すると、従来例(太点線を参照)よりも本実施形態(太実線を参照)の方が搬送速度の変動が小さいことが把握される。上述したように、搬送速度の変動が大きいと、様々な要因により印刷品質が低下する。この点、本実施形態によれば、従来例に比べて搬送速度の変動が小さくなるので、搬送速度を制御することに起因する印刷品質の低下が抑制される。
【0092】
<5.2 第2の制御例>
図14に示すフローチャートを参照しつつ、第2の制御例の手順について説明する。なお、ここでも、互いにサイズ(1セットあたりの印刷長)の異なる複数種類のジョブに基づく連続印刷が実行されるものとして説明する。
【0093】
ステップS200~S220については、第1の制御例におけるステップS100~S120(
図8参照)と同様の処理が行われる。ステップS220において第1累積値n1と第2累積値n2との和が閾値N以上であれば、処理はステップS230に進む。
【0094】
ステップS230では、減速タイミングの計算が行われる。これについて、
図15を参照しつつ説明する。減速タイミングの計算が行われる時点において、処理の進行状態が模式的に
図15に示す状態になっていると仮定する。なお、
図15では、処理対象のジョブのセットを識別するための符号を矩形内に記している。
図15に示す状態は、ジョブJ00についてブックブロック作成処理が終了した直後の状態である。8セット分のジョブ(ジョブJ01~J08)がブックブロック完成待ち状態となっている。
【0095】
まず、ジョブJ08までのブックブロック作成処理を搬送速度が第1速度(例えば120mpm)で維持された状態で行ってジョブJ09についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を第1速度から第2速度(例えば90mpm)に低下させると仮定した場合の第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。次に、ジョブJ07までのブックブロック作成処理を搬送速度が第1速度で維持された状態で行ってジョブJ08についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を第1速度から第2速度に低下させると仮定した場合の第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。次に、ジョブJ06までのブックブロック作成処理を搬送速度が第1速度で維持された状態で行ってジョブJ07についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を第1速度から第2速度に低下させると仮定した場合の第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。以上のようにして、搬送速度を低下させる仮のタイミングを徐々に早くしながら、その仮のタイミング毎に第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。そして、第1累積値n1と第2累積値n2との和が最初に閾値N未満となるタイミングが減速タイミングとして決定される。
【0096】
減速タイミングの計算の終了後、第1速度で印刷用紙が搬送されている状態で印刷装置10による印刷が行われる。そして、ステップS230で決定された減速タイミングになると、搬送制御部143が搬送機構210の動作を制御することによって、搬送速度が第1速度から第2速度へと減速する(ステップS240)。これにより、第2速度で印刷が実行される。すなわち、第2速度で印刷用紙が搬送されている状態で印刷装置10による印刷が行われる。
【0097】
ステップS250では、加速タイミングの計算が行われる。これについて、
図16を参照しつつ説明する。加速タイミングの計算が行われる時点において、処理の進行状態が模式的に
図16に示す状態になっていると仮定する。
図15と同様、処理対象のジョブのセットを識別するための符号を矩形内に記している。
図16に示す状態は、ジョブJ10についてブックブロック作成処理が終了した直後の状態である。8セット分のジョブ(ジョブJ11~J18)がブックブロック完成待ち状態となっている。
【0098】
まず、ジョブJ11についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を第2速度から第1速度(例えば120mpm)に上昇させると仮定した場合の第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。次に、ジョブJ12についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を第2速度から第1速度に上昇させると仮定した場合の第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。次に、ジョブJ13についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を第2速度から第1速度に上昇させると仮定した場合の第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。以上のようにして、搬送速度を上昇させる仮のタイミングを徐々に遅くしながら、その仮のタイミング毎に第1累積値n1および第2累積値n2が算出される。そして、第1累積値n1と第2累積値n2との和が最初に閾値N未満となるタイミングが加速タイミングとして決定される。但し、第1累積値n1と第2累積値n2との和が閾値N未満となるタイミングが存在しないこともある。
【0099】
加速タイミングの計算が行われた後、加速可能であるか否かの判定が行われる(ステップS260)。詳しくは、直前のステップS250において第1累積値n1と第2累積値n2との和が閾値N未満となるタイミングが存在したか否かの判定が行われる。そして、第1累積値n1と第2累積値n2との和が閾値N未満となるタイミングが存在していれば、加速可能であると判定され、処理はステップS270に進む。一方、第1累積値n1と第2累積値n2との和が閾値N未満となるタイミングが存在しなければ、第2速度で印刷が実行されている状態で処理はステップS250に戻る。ステップS250およびステップS260の処理は、加速可能なタイミング(第1累積値n1と第2累積値n2との和が閾値N未満となるタイミング)が得られるまで、丁合機63での1セット分のブックブロック作成処理が終了する毎に行われる。
【0100】
ステップS260で加速可能である旨の判定がなされたときには、ステップS250で決定された加速タイミングまでは、第2速度で印刷用紙が搬送されている状態で印刷装置10による印刷が行われる。そして、ステップS250で決定された加速タイミングになると、搬送制御部143が搬送機構210の動作を制御することによって、搬送速度が第2速度から第1速度へと加速する(ステップS270)。これにより、第1速度で印刷が実行され、処理はステップS210に戻る。
【0101】
ステップS220~S240の処理から把握されるように、第2の制御例によれば、搬送制御部143は、搬送速度を第1速度で維持した場合の上記予測値PV(第1累積値n1と第2累積値n2との和)が予め定められた閾値N以上になると、搬送速度を第1速度から第2速度に低下させた場合の上記予測値PV(第1累積値n1と第2累積値n2との和)が閾値N以上とはならない1以上の搬送速度低下タイミングのうちの最も遅いタイミングで、搬送速度を第1速度から第2速度に低下させる。
【0102】
また、ステップS250~S270の処理から把握されるように、第2の制御例によれば、搬送制御部143は、上記予測値PV(第1累積値n1と第2累積値n2との和)に基づいて搬送速度を第1速度から第2速度に低下させた後には、搬送速度を第2速度から第1速度に高めた場合の上記予測値PV(第1累積値n1と第2累積値n2との和)が閾値N以上とはならない搬送速度上昇タイミングのうちの最も早いタイミングで、搬送速度を第2速度から第1速度に高める。
【0103】
次に、第2の制御例の具体例を説明する。ここでは、
図17に示す5種類のジョブ(ジョブJa、ジョブJb、ジョブJc、ジョブJd、およびジョブJe)に基づく連続印刷が行われるケースに着目する。上記第1速度に相当する速度は120mpmであり、上記第2速度に相当する速度は90mpmである。なお、ブックブロック完成待ち状態となる用紙部分の距離(すなわち、
図6で符号76を付した部分の距離)は22mであると仮定する。
【0104】
連続印刷の開始後、印刷速度が120mpmに設定された状態(すなわち、搬送速度が120mpmに設定された状態)でジョブJaに基づく印刷、ジョブJbに基づく印刷、およびジョブJcに基づく印刷が順に行われる。
【0105】
ジョブJaについては、印刷速度120mpmでの1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量は2である。ジョブJbについては、印刷速度120mpmでの1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量は0である。ジョブJcについては、印刷速度120mpmでの1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量は5である。以上より、4セット目のジョブJcがブックブロック完成待ち状態となるまでは、第1累積値n1と第2累積値n2との和は閾値N未満で維持される。
【0106】
処理の進行状態が模式的に
図18に示す状態になった時、2セット目のジョブJb(符号821を付したジョブ)について丁合機63による処理が終了している。この時、第1累積値n1は2である。また、この時、3セット分のジョブJbおよび4セット分のジョブJcがブックブロック完成待ち状態であるので、第2累積値n2は20である。従って、第1累積値n1と第2累積値n2との和は閾値N以上となる。そこで、減速タイミングの計算(
図14のステップS230)が行われる。
【0107】
4セット目のジョブJc(符号824を付したジョブ)までのブックブロック作成処理を搬送速度が120mpmで維持された状態で行って1セット目のジョブJd(符号825を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を120mpmから90mpmに低下させると仮定した場合、第1累積値n1は2であって、第2累積値n2は20である。第1累積値n1と第2累積値n2との和は閾値N以上であるので、1セット目のジョブJd(符号825を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始タイミングを減速タイミングとして採用することはできない。
【0108】
ジョブJcについては、印刷速度90mpmでの1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量は3.5である。従って、3セット目のジョブJc(符号823を付したジョブ)までのブックブロック作成処理を搬送速度が120mpmで維持された状態で行って4セット目のジョブJc(符号824を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を120mpmから90mpmに低下させると仮定した場合、第1累積値n1は2であって、第2累積値n2は18.5である。第1累積値n1と第2累積値n2との和は閾値N以上であるので、4セット目のジョブJc(符号824を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始タイミングを減速タイミングとして採用することはできない。
【0109】
2セット目のジョブJc(符号822を付したジョブ)までのブックブロック作成処理を搬送速度が120mpmで維持された状態で行って3セット目のジョブJc(符号823を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を120mpmから90mpmに低下させると仮定した場合、第1累積値n1は2であって、第2累積値n2は17である。第1累積値n1と第2累積値n2との和は閾値N未満である。以上より、3セット目のジョブJc(符号823を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始タイミングが減速タイミングとして決定される。
【0110】
減速タイミングには、処理の進行状態は模式的に
図19に示す状態となる。この時までに、1セット分のジョブJa、5セット分のジョブJb、および2セット分のジョブJcのブックブロック作成処理が、搬送速度が120mpmで維持された状態で行われている。従って、この時、第1累積値n1は12である。このような状態の下、加速タイミングの計算(
図14のステップS250)が行われる。なお、ジョブJdについては、印刷速度120mpmでの1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量は1であり、ジョブJeについては、印刷速度120mpmでの1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量は-4である。
【0111】
3セット目のジョブJc(符号831を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を90mpmから120mpmに上昇させると仮定した場合、第1累積値n1は12であって、第2累積値n2は8である。第1累積値n1と第2累積値n2との和は閾値N未満ではないので、3セット目のジョブJc(符号831を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始タイミングを加速タイミングとして採用することはできない。
【0112】
4セット目のジョブJc(符号832を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始時に搬送速度を90mpmから120mpmに上昇させると仮定した場合、第1累積値n1は12であって、第2累積値n2は6.5である。第1累積値n1と第2累積値n2との和は閾値N未満である。以上より、4セット目のジョブJc(符号832を付したジョブ)についてのブックブロック作成処理の開始タイミングが加速タイミングとして決定される。
【0113】
<6.効果>
本実施形態によれば、各ジョブについて、印刷の実行に要する1セットあたりの時間である印刷所要時間PTと後加工機において1セットの処理に少なくとも必要な時間である最小加工時間MTとの差に基づいて、1セットあたりのウェブバッファ50の消費量の増減量Zが算出される。そして、その増減量Zを累積することによってウェブバッファ50の消費量の予測値PVが求められ、印刷用紙を搬送する搬送速度が当該予測値PVに基づいて制御される。例えば、予測値PVがウェブバッファ50の最大容量を考慮して設定された閾値N以上になると搬送速度が減速し、ウェブバッファ50の消費量の減少が予測されると搬送速度が加速する。以上のように、後加工機やウェブバッファ50からの要求(減速や停止の要求)によることなく、ウェブバッファ50の消費量の変化を考慮して印刷装置10が主体的に搬送速度を制御することが可能となる。これにより、搬送速度の変動を従来よりも小さくすることが可能となる。また、予測値PVに基づいて搬送速度を制御することにより、従来よりも早いタイミングで搬送速度を低下させることが可能となり、その結果、印刷停止の可能性が低減される。以上より、印刷品質の低下や生産性の低下が抑制される。また、後加工機やウェブバッファ50から印刷装置10に対して減速や停止の要求があっても、ウェブバッファ50の空き容量が枯渇状態にならないことが予想される場合には、減速することなく現状の搬送速度(印刷速度)を維持した状態で印刷を継続することが可能となる。これにより、従来と比較して、生産性が向上する。さらに、ウェブバッファ50の消費量ができるだけ小さくなるように搬送速度を制御することもできるので、従来に比較して最大容量の小さなウェブバッファ50を採用することが可能となる。これにより、コスト低減の効果が得られる。以上のように、本実施形態によれば、印刷装置10と後加工機との処理速度の差を緩和するために搬送速度(印刷用紙を搬送する速度)を制御することに起因する印刷品質の低下や生産性の低下を抑制することのできる印刷システム1が実現される。
【0114】
<7.その他>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では丁合機63において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間が最小加工時間MTとして設定されたが、本発明はこれに限定されない。後加工の工程において時間的なボトルネックとなる任意の後加工機での1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに少なくとも必要な時間を最小加工時間MTとして設定するようにしても良い。また、上記実施形態では2段階の速度間で搬送速度を変化させる例を示したが、3段階以上の速度間で搬送速度を変化させる構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0115】
1…印刷システム
10…印刷装置
50…ウェブバッファ
60…後加工機群
63…丁合機
100…印刷制御装置
140…印刷速度制御部
143…搬送制御部
150…セルフ制御部
151…最小加工時間設定部
152…印刷所要時間算出部
153…増減量算出部
154…予測値算出部
155…搬送制御部
200…印刷機本体
210…搬送機構