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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】ベルト型バッグ
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/00 20060101AFI20240917BHJP
   A45C 11/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
A45F3/00 510
A45C11/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021075690
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169943
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄二
(72)【発明者】
【氏名】八木 剛
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-135800(JP,A)
【文献】特開2003-245113(JP,A)
【文献】実開昭60-56320(JP,U)
【文献】米国特許第5727720(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/00
A45C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行品を収納し得るバッグ本体と、
長尺状に形成されて着用者の腰部周囲に巻き付け可能であるとともに前記バッグ本体に接続されるベルト部と、を備え、
前記バッグ本体および前記ベルト部は、不使用時に広げた状態の平面視で全体が弧状をなすような角度で互いに接続されていることにより、着用者の骨盤の高さに巻き付けられた場合に骨盤の傾斜角度に沿うように構成され、
前記ベルト部は、少なくとも一部が伸縮性を有する部材で形成されているとともに、縦幅の上端が着用者の腸骨上端の高さに位置するように腰部周囲に巻き付けた場合に身体の正面側に位置する正面部分が着用者の上前腸骨棘を覆うことができる縦幅を少なくとも有し、
前記バッグ本体は、その縦幅が前記ベルト部の前記正面部分の縦幅より広いことを特徴とするベルト型バッグ。
【請求項2】
前記バッグ本体は、扁平の袋状に形成されているとともに、その輪郭が平面視において上底より下底が長い台形状に形成され、前記ベルト部の縦幅の上端が着用者の腸骨上端の高さに位置するように腰部周囲に巻き付けた場合に前記バッグ本体の上底もまた着用者の腸骨上端の高さに位置することを特徴とする請求項1に記載のベルト型バッグ。
【請求項3】
前記ベルト部は、着用者の左右に位置する左ベルトおよび右ベルトを含むとともに、前記左ベルトの長手方向の一端と前記右ベルトの長手方向の一端を着用者の身体の正面側で互いに連結可能であり、
前記左ベルトおよび前記右ベルトは、着用者の身体の正面側に位置する正面非伸縮部と、前記正面非伸縮部と前記バッグ本体の間を接続する側方伸縮部と、をそれぞれ有し、
前記左ベルトおよび前記右ベルトが身体の側方から正面側の方向へ引っ張られて互いに連結された位置に応じて前記側方伸縮部が伸長し、前記側方伸縮部の収縮力に応じて前記ベルト部および前記バッグ本体が着用者の腰部周囲に押圧されることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト型バッグ。
【請求項4】
前記左ベルトおよび前記右ベルトのうち少なくとも一方の正面非伸縮部における長手方向にわたって全体的に設けられる面ファスナーと、他方の少なくとも先端部に設けられる面ファスナーとが身体の側方から正面側の方向へ引っ張られて互いに連結された位置に応じて前記側方伸縮部が伸長し、前記側方伸縮部の収縮力に応じて前記ベルト部および前記バッグ本体が着用者の腰部周囲に押圧されることを特徴とする請求項3に記載のベルト型バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト型バッグに関する。特に、ランニング等の運動時に使用するベルト型バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なランニング用ウエストバッグが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5947037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のランニング用ウエストバッグは、ランニング中の身体の揺れに伴ってバッグも大きく揺れることにより、ランニング動作を阻害したり、不快感の原因になったりしていたため、着用者にとって大きな負担となっていた。このような揺れを抑えるために、腰ベルトを強く締めると腹部が過度に圧迫され、さらに着用者に負担を与えることになっていた。
【0005】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、揺れにくく安定感のあるベルト型バッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のベルト型バッグは、携行品を収納し得るバッグ本体と、長尺状に形成されて着用者の腰部周囲に巻き付け可能であるとともにバッグ本体に接続されるベルト部と、を備える。バッグ本体およびベルト部は、不使用時に広げた状態の平面視で全体が弧状をなすような角度で互いに接続されていることにより、着用者の骨盤の高さに巻き付けられた場合に骨盤の傾斜角度に沿うように構成され、ベルト部は、少なくとも一部が伸縮性を有する部材で形成されているとともに、縦幅の上端が着用者の腸骨上端の高さに位置するように腰部周囲に巻き付けた場合に身体の正面側に位置する正面部分が着用者の上前腸骨棘を覆うことができる縦幅を少なくとも有する。バッグ本体は、その縦幅がベルト部の正面部分の縦幅より広い。
【0007】
ここでいう「弧状」は、輪郭が厳密に円弧を描くことを意味する趣旨ではなく、バッグ本体およびベルト部が一直線に接続されずに所定の角度で接続されることで全体として湾曲した形を描くように接続されていれば足りる趣旨である。これにより、バック本体およびベルト部が一直線に接続されるよりも骨盤の傾斜角度に沿ってフィットして巻き付けやすく構成することができる。このベルト型バッグを平均的な体格の着用者の腰部周囲に正しく巻き付けたときに、着用者の腸骨上端と上前腸骨棘がベルト部により覆われる程度にベルト部が広い縦幅を有するように構成される。このように、ベルト部およびバッグ本体の縦幅が十分大きく、着用者の身体への接触面積が十分広くなるように構成することで、骨盤周囲に安定して固定することができる。また、骨盤の位置にベルト型バッグを巻き付けて固定できることは、腹部周囲より下方の位置に装着できることを意味し、腹部の過度な圧迫を避けることができる。また、「骨盤の傾斜角度に沿う」は、バッグ本体およびベルト部が骨盤の傾斜角度に対して厳密に同じ角度で沿うことを要求する趣旨ではなく、個人差もある骨盤の傾斜角度に概ね沿うものであれば足りる趣旨である。このように、概ね骨盤の傾斜角度に沿って安定して固定できることにより、骨盤を引き締めて走行中の骨盤角度の安定化を図ることができる。
【0008】
バッグ本体は、扁平の袋状に形成されているとともに、その輪郭が平面視において上底より下底が長い台形状に形成され、ベルト部の縦幅の上端が着用者の腸骨上端の高さに位置するように腰部周囲に巻き付けた場合にバッグ本体の上底もまた着用者の腸骨上端の高さに位置してもよい。ここでいう「扁平の袋状」は、あくまで不使用時の形状が概ね扁平であれば足り、その形状に厳密さを要求する趣旨ではなく、携行品を収納したときにはその携行品の形状やバッグ本体の伸縮性に応じて変形することは妨げない。また、バッグ本体の輪郭が平面視において「台形状に形成され」ることも、厳密な台形状であることを要求する趣旨ではなく、概ね台形に近い形状であれば足りる趣旨であり、角が丸く、辺が曲線を帯びたような台形状であってよい。ここでいう「腸骨上端の高さ」は、必ずしもその位置に厳密さを要求する趣旨ではなく、ベルト部の縦幅の上端とバッグ本体の上底とが概ね同じ高さに位置するような形で互いに接続されていれば足りる趣旨である。このようにバッグ本体が台形状に形成されることで、末広がりのように傾斜する骨盤付近の傾斜角度にフィットするように骨盤周囲に巻き付けて固定しやすくすることができる。
【0009】
ベルト部は、着用者の左右に位置する左ベルトおよび右ベルトを含むとともに、左ベルトの長手方向の一端と右ベルトの長手方向の一端を着用者の身体の正面側で互いに連結可能であり、左ベルトおよび右ベルトは、着用者の身体の正面側に位置する正面非伸縮部と、正面非伸縮部とバッグ本体の間を接続する側方伸縮部と、をそれぞれ有してもよい。左ベルトおよび右ベルトが身体の側方から正面側の方向へ引っ張られて互いに連結された位置に応じて側方伸縮部が伸長し、側方伸縮部の収縮力に応じてベルト部およびバッグ本体が着用者の腰部周囲に押圧されてもよい。左ベルトおよび右ベルトの長手方向において、側方伸縮部の方が正面非伸縮部より短くなるように形成してもよい。ベルト部全体が少しずつ分散して伸長するように形成させた場合と比べ、側方伸縮部が集中して伸ばされる分だけ強い収縮力が働くため、ベルト部およびバッグ本体は身体に密着しやすくなる。この態様によると、ベルト部およびバッグ本体が収縮力によって骨盤の位置に押圧されることで、骨盤の位置からその上方の腹部周囲へずれてしまうことを抑制でき、腹部の過度な圧迫を避けて固定することができる。また、骨盤の傾斜角度に沿って安定して固定できることにより、骨盤を引き締めて走行中の骨盤角度の安定化に基づく身体負担の軽減を図ることができる。
【0010】
左ベルトおよび右ベルトのうち少なくとも一方の正面非伸縮部における長手方向にわたって全体的に設けられる面ファスナーと、他方の少なくとも先端部に設けられる面ファスナーとが身体の側方から正面側の方向へ引っ張られて互いに連結された位置に応じて側方伸縮部が伸長し、側方伸縮部の収縮力に応じてベルト部およびバッグ本体が着用者の腰部周囲に押圧されてもよい。面ファスナーにより正面非伸縮部が全体的に伸縮せずに位置固定されるとともに、側方伸縮部が集中して伸ばされて強い収縮力が働き、ベルト部およびバッグ本体は身体に密着しやすくなる。この態様によると、ベルト部およびバッグ本体が収縮力によって骨盤の位置に押圧されることで、骨盤の位置からその上方の腹部周囲へずれてしまうことを抑制でき、腹部の過度な圧迫を避けて固定することができる。また、骨盤の傾斜角度に沿って安定して固定できることにより、骨盤を引き締めて走行中の骨盤角度の安定化に基づく身体負担の軽減を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、揺れにくく安定感のあるベルト型バッグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ベルト型バッグを平置きにした状態の平面図である。
図2】ベルト型バッグを平置きにした状態の底面図である。
図3】ベルト型バッグの装着状態を着用者の背面側から見た図である。
図4】ベルト型バッグの装着状態を着用者の正面側から見た図である。
図5】左正面非伸縮部と右正面非伸縮部の連結方法を着用者の正面側から見た図である。
図6】ベルト型バッグの装着状態を着用者の左側方から見た図である。
図7】ベルト型バッグの装着状態と着用者の骨盤および中殿筋の位置関係を左側方から見て模式的に示す図である。
図8】バッグ本体の背面側の生地構造を模式的に示す図である。
図9】バッグ本体の内部ポケットを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態、変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
図1は、ベルト型バッグを平置きにした状態の平面図である。ベルト型バッグ10は、バッグ本体20とベルト部30を備える。本実施形態におけるバッグ本体20は、スマートフォンやペットボトル、手袋等の携行品を収納し得る扁平の袋状に形成される。バッグ本体20は、その輪郭が平面視において上底より下底が長い台形状に形成される。バッグ本体20は、全体が通気性および軽量化のために薄いメッシュ生地にて形成され、生地そのものは伸縮性を有するが、後述する背面側生地の特性により、その伸縮性は(後述するベルト部30と比べると)限定的となっている。
【0015】
本実施形態におけるベルト部30は、バッグ本体20に接続され、着用者の腰部周囲に巻き付けることができる長尺部材である。ベルト部30は、左ベルト30aと右ベルト30bで構成される。左ベルト30aは、左正面非伸縮部31と左側方伸縮部33を含み、右ベルト30bは、右正面非伸縮部32と右側方伸縮部34を含む。なお、本実施形態におけるベルト部30は、左ベルト30aと右ベルト30bに分かれてそれぞれの一端がバッグ本体20に接続する形で構成されるが、変形例においては、一体的に形成された1本のベルト部にバッグ本体20が重ねられて取り付けられる形で構成されてもよい。
【0016】
左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32は、非伸縮性の合成繊維で形成される。左正面非伸縮部31の装着時正面側のほぼ全面に面ファスナー31aが縫合され、縦幅の中心付近に帯状の補助ベルト31bの一端が横方向に縫合されている。補助ベルト31bの他端にもその裏面に面ファスナー31cが縫合されている。左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32には、携行品を収納するような収納部は設けられていない。ただし、変形例においては補助的に小物を収納し得る小型ポケットを左正面非伸縮部31または右正面非伸縮部32に付加してもよい。
【0017】
右正面非伸縮部32の長尺方向の先端に先端部32aが設けられる。先端部32aは、角に丸みを帯びた直角三角形に近い形状を有し、その裏面には本図に図示しない面ファスナーが縫合されており、ベルト型バッグ10の装着時に面ファスナー31aに貼り付けられる。右正面非伸縮部32のうち先端部32aを除いた部分である長尺部32dにおける縦幅の中心付近に、横方向に帯状面ファスナー32bが縫合される。帯状面ファスナー32bの右端と先端部32aの間には四角形の補助ベルト用孔部32cが設けられる。補助ベルト用孔部32cには、ベルト型バッグ10の装着時に補助ベルト31bが裏から通され、面ファスナー31cが帯状面ファスナー32bに貼り付けられる。
【0018】
左側方伸縮部33および右側方伸縮部34は、高い伸縮性を有する部材、例えばナイロン等の合成繊維のメッシュ生地で形成される。左側方伸縮部33および右側方伸縮部34は、対辺同士が平行でない四角形に近い形状にて形成される。すなわち、左側方伸縮部33と右側方伸縮部34は、上縁部33a,34aと下縁部33b,34bの間隔が左正面非伸縮部31との接続点からバッグ本体20との接続点に向けて広がる形状、および、前縁部33c,34cと後縁部33d,34dの間隔が上方から下方へ末広がりの形状となるように形成される。左側方伸縮部33の前縁部33cが上方から下方へ広がる分、前縁部33cを接線として隣接する左正面非伸縮部31の後縁部31dは、上方から下方へ窄まる形となる。同様に、右側方伸縮部34の前縁部34cが上方から下方へ広がる分、前縁部34cを接線として隣接する右正面非伸縮部32の後縁部32fは、上方から下方へ窄まる形となる。また、右正面非伸縮部32の先端形状は、対向する左正面非伸縮部31に最大まで締め付けて連結させるときに、先端部32aの縁部が左正面非伸縮部31の後縁部31dに接することを前提とする。そのため、後縁部31dの形状に沿うよう先端部32aの縁部も上方から下方へ窄まる形となる結果、左正面非伸縮部31は上底が下底より狭い逆台形状となる。
【0019】
左側方伸縮部33および右側方伸縮部34のそれぞれの上辺と下辺に相当する上縁部33a,34aと下縁部33b,34bは、いわゆるゴムバンドのような高い伸縮性を有する帯状部材、例えばポリウレタン等の合成繊維で形成される。上縁部33a,34aは、平面に広げた状態において概ね直線となるように左側方伸縮部33、右側方伸縮部34のメッシュ生地に縫合される。これに対し、下縁部33b,34bは、平面に広げた状態において下方へ膨らんだ曲線を描くように左側方伸縮部33、右側方伸縮部34のメッシュ生地に縫合される。上縁部33a,34aと下縁部33b,34bの間には、二重のメッシュ生地でサイドポケット33e,34eが形成され、その上部に開口部33f,34fが設けられる。サイドポケット33e,34eの開口部33f,34fには、着用者が指でつまんで開口部33f,34fを開口しやすくするためのストラップ33g,34gが設けられる。補助収納部33e,34eには、着用者が走りながら簡単に取り出したい携行品、例えばレース用のエネルギー補給ジェルやサプリメント等を収納するのに好適である。
【0020】
図のようにベルト型バッグ10を平面に広げた状態においては、全体形状が全体形状線12のように両端が上向きに反った弧状を描くように構成される。すなわち、バッグ本体20、左ベルト30a、右ベルト30bは、不使用時に広げた状態の平面視で全体が弧状をなすような角度で互いに接続されていることにより、着用者の骨盤の高さに巻き付けられた場合に骨盤の傾斜角度に沿うように構成される。
【0021】
図2は、ベルト型バッグを平置きにした状態の底面図である。本図に現れるバッグ本体20、左ベルト30a、右ベルト30bの各裏面は、装着時に着用者の身体ないし衣服に密着し得る面である。左ベルト30aの裏面は、左正面非伸縮部31の裏面と左側方伸縮部33の裏面を含む。右ベルト30bの裏面は、右正面非伸縮部32の裏面と右側方伸縮部34の裏面を含む。右正面非伸縮部32の先端である先端部32aの裏面には、面ファスナー32eが縫合されており、ベルト型バッグ10の装着時に左正面非伸縮部31の面ファスナー31aに貼り付けられる。
【0022】
バッグ本体20の裏面である背面部25は、2枚の薄いメッシュ生地の間に、シート状の立体ハニカム構造のクッションメッシュが挟まれて形成される。これにより、通気性を確保して熱が籠もりにくくするとともに、汗で濡れても効率的に湿気を拡散することができる。また、バッグ本体20に収納された携行品と着用者の身体の間にクッションメッシュが介在することで、携行品が直接的に身体へ当たる衝撃や不快感を抑制する。さらに、クッションメッシュの僅かな凹凸によって着用者の身体との間で摩擦力が向上し、ベルト型バッグ10がずれにくくすることができる。
【0023】
図のように裏面側においても、ベルト型バッグ10を平面に広げた状態においては、全体形状が全体形状線12のように両端が上向きに反った弧状を描くように構成される。すなわち、バッグ本体20、左ベルト30a、右ベルト30bは、不使用時に広げた状態の平面視で全体が弧状をなすような角度で互いに接続されていることにより、着用者の骨盤の高さに巻き付けられた場合に骨盤の傾斜角度に沿うように構成される。
【0024】
図3は、ベルト型バッグの装着状態を着用者の背面側から見た図である。バッグ本体20は、上底Wb1より下底Wb2が僅かに長い台形状に近い形状にて形成され、臀部上部の形状、すなわち臀部における骨盤近傍の末広がりとなる形状に沿いやすいように形成される。ここでいう台形状に近い形状は、角や辺が丸みを帯びたような台形状であってよい。このようにバッグ本体20が台形状に近い形状に形成されることで、末広がりのように傾斜している場合が多い骨盤の傾斜角度にフィットするように骨盤周囲に巻き付けて固定しやすくすることができる。
【0025】
バッグ本体20の下底Wb2の長さは、上底Wb1の長さの約1.08倍である。また、上底Wb1および下底Wb2の長さは、縦幅Hbの長さの約1.5倍~約1.6倍である。すなわち、バッグ本体20の縦幅Hbは、上底Wb1の約66%、下底Wb2の約62%である。着用者の背面側から見て、バッグ本体20は骨盤の横幅および縦幅、すなわち腸骨の横幅と腸骨上端から尾骨にかけての縦幅を概ね覆うことができる大きさを有し、大きな摩擦力によって骨盤位置に安定的に固定することができる。また、バッグ本体20が背面側の骨盤を全体的に覆って押圧することにより、骨盤を締め付けて骨盤の歪みや緩みを矯正し、腰の負担軽減を図ることができる。
【0026】
図4は、ベルト型バッグの装着状態を着用者の正面側から見た図である。左正面非伸縮部31は、ほぼ全面に面ファスナー31aが設けられており、先端部32aの裏面に設けられた面ファスナー32eを面ファスナー31aの適所、すなわち着用者の骨盤周囲の長さに応じた適切な締め付け具合となる位置に貼り付ける。これにより、左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32が着用者の身体の正面側で互いに連結される。先端部32aを面ファスナー31aの後縁部31d付近まで最大に締め付けて貼り付ける場合は、図のように面ファスナー31aは概ね右正面非伸縮部32に隠れて正面側からほぼ見えなくなる。逆に、図の締め付け具合より緩めた場合、すなわち先端部32aを図の位置より左方で面ファスナー31aに貼り付けた場合、面ファスナー31aの一部が右正面非伸縮部32に隠されず、正面側に露出する。
【0027】
先端部32aおよび補助ベルト31bの貼り付け場所に応じて、連結された左正面非伸縮部31および右正面非伸縮部32の横幅が可変となる。また、左正面非伸縮部31および右正面非伸縮部32の縦幅Hfは幅広に形成される。横幅が可変であることと、上縁部横幅Wf1(点Q1~Q2の長さ)が下縁部横幅Wf2(点P1~P2の長さ)より長いことから、縦幅Hfは上縁部横幅Wf1に対して約21~32%となり、下縁部横幅Wf2に対して約25~42%となる。
【0028】
図5は、左正面非伸縮部と右正面非伸縮部の連結方法を着用者の正面側から見た図である。まず、本図(a)に示すように、左正面非伸縮部31の表面に右正面非伸縮部32の裏面を貼り付ける前に、右正面非伸縮部32の補助ベルト用孔部32cに左正面非伸縮部31の補助ベルト31bを裏から通して表に出す。次に、右正面非伸縮部32の先端部32a裏面にある面ファスナー32e(図示せず)を面ファスナー31aの適所に貼り付ける。本図(b)は、先端部32aの縁部を、後縁部31dに沿う位置まで締め付けて貼り付けた状態を示す。最後に、補助ベルト31bの裏面にある面ファスナー31cを帯状面ファスナー32bに貼り付けて、連結が完了する。
【0029】
このように、左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32を身体の左右から引っ張って正面側で交差させて連結することにより、より強固に締め付けることができる。また、非伸縮部材である左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32を身体の左右から引っ張ることで、身体の側方に位置する左側方伸縮部33、右側方伸縮部34を伸長させ、左側方伸縮部33、右側方伸縮部34の強い収縮力による身体への押圧力を発生させることができる。さらに、二重に面ファスナーで貼り付けることで、左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32をより確実に連結することができる。
【0030】
図6は、ベルト型バッグの装着状態を着用者の左側方から見た図である。着用者が非伸縮部材である左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32を身体の左右から引っ張って正面側で連結すると、非伸縮部材である左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32が身体の左右から正面側に引っ張られる。これにより、身体の側方に位置する左側方伸縮部33、右側方伸縮部34が伸長し、左側方伸縮部33、右側方伸縮部34の強い収縮力による身体側方への押圧力が発生する。ベルト型バッグ10全体としても骨盤周囲に強く締め付けられ、位置固定される。
【0031】
バッグ本体20の縦幅Hbは、ベルト部30の正面部分、すなわち左正面非伸縮部31および右正面非伸縮部32の縦幅Hfより広く、例えば縦幅Hfの約1.5倍~1.8倍となるように設計される。また、左正面非伸縮部31および右正面非伸縮部32の上端位置とバッグ本体20の上端位置を揃えた場合、バッグ本体20ないし左側方伸縮部33の下端点P’の位置は、左正面非伸縮部31および右正面非伸縮部32の下端点Pの位置より低い。さらに、左側方伸縮部33の下縁部33bは、左正面非伸縮部31および右正面非伸縮部32の下端点Pと、左側方伸縮部33の下端点P’とを結ぶ仮想線より下に位置する。図示しないが、右側方伸縮部34の下縁部34bもまた、左正面非伸縮部31および右正面非伸縮部32の下端点と、右側方伸縮部34の下端点とを結ぶ仮想線より下に位置する。
【0032】
このように左側方伸縮部33および右側方伸縮部34の面積を広くする分、補助収納部33e,34eの収納容量を大きく確保することができる。また、左側方伸縮部33および右側方伸縮部34の面積を広くする分、着用者の中殿筋を広く覆うことができ、その収縮力に応じた押圧力により中殿筋へ効果的に作用させることができる。さらに、下縁部33b,34bが直線ではなく伸縮性の高い素材で曲線状に形成されているため、骨盤周囲の長さの個人差を吸収し、骨盤周囲に合わせて長さを調整しやすい。
【0033】
図7は、ベルト型バッグの装着状態と着用者の骨盤および中殿筋の位置関係を左側方から見て模式的に示す。ベルト型バッグ10の装着状態は図6と同様である。いわゆる骨盤とは、左右一対の腸骨41、恥骨42、座骨43と、仙骨44、尾骨45との組合せを指す。ベルト部30は、その縦幅の上端が腸骨41の上端の高さに位置するように腰部周囲に巻き付けた場合に、バッグ本体20の上端もまた腸骨41の上端の高さ付近に位置することとなる。本実施形態においては、平均的な身体の着用者が上記のような高さにベルト型バッグ10を装着した場合を想定する。この場合に、ベルト部30、すなわち左正面非伸縮部31、右正面非伸縮部32、左側方伸縮部33、右側方伸縮部34は、腸骨41の上前腸骨棘41aと腸骨上端41bを覆うことができる程度の縦幅を少なくとも有することとなる。
【0034】
左側方伸縮部33、右側方伸縮部34は、中殿筋46を概ね覆うことができる大きさと形状を有する。左側方伸縮部33、右側方伸縮部34はその高い伸縮性により身体への押圧力が生じ、中殿筋に効果的に作用させることができる。このように、ベルト型バッグ10は骨盤の概ね上半分と中殿筋の大半を覆うような大きさと形状を有する。
【0035】
図8は、バッグ本体の背面側の生地構造を模式的に示す。バッグ本体20は、伸縮性のある薄いナイロン等の合成繊維のメッシュ生地で扁平な袋状に形成されるが、その背面部25の生地は2枚のメッシュ生地23a,23bの間に立体ハニカム構造のクッションメッシュ24を挟んで形成される。これにより、通気性を確保して熱が籠もりにくくするとともに、汗で濡れても効率的に湿気を拡散することができる。また、バッグ本体20に収納された携行品と着用者の身体の間にクッションメッシュ24が介在することで、携行品が直接的に身体へ当たる衝撃や不快感を抑制する。さらに、背面部25の表面にメッシュ生地23を介してクッションメッシュ24の僅かな凹凸が生じることから、着用者の骨盤周囲の衣服に密着した際に大きな摩擦力を生み、バッグ本体20をずれにくくしている。
【0036】
なお、バッグ本体20は背面部25には必ずしも伸縮性が高くないクッションメッシュ24を用いる結果、バッグ本体20全体の伸縮性も限定的となっている。そのため、バッグ本体20の伸縮性よりも左側方伸縮部33、右側方伸縮部34の伸縮性の方が高く、着用者が左正面非伸縮部31、右正面非伸縮部32を身体の左右から引っ張ったときに、バッグ本体20より左側方伸縮部33、右側方伸縮部34が伸長しやすい。言い換えれば、左側方伸縮部33、右側方伸縮部34が集中して伸長されることで、左側方伸縮部33、右側方伸縮部34に特に高い収縮力が働いて、身体への押圧力を発揮する。
【0037】
図9は、バッグ本体の内部ポケットを模式的に示す。バッグ本体20の内部には、内部ポケット26が設けられる。内部ポケット26は、少なくとも上端部がバッグ本体20の内側に縫合された合成繊維の撥水生地26bと、上方に開口部が形成されるように左右端部と下端部が撥水生地26bに縫合されたメッシュ生地26aとにより構成される。内部ポケット26は、主に鍵や小銭等の小物類を収納できる。
【0038】
鍵や小銭のようにバッグ本体20の大きさに対して十分小さい携行品を収納する場合には、バッグ本体20の大きな収納部そのものより、内部ポケット26に収納することで、走行時にバッグ本体20内で跳ね上がったり携行品同士が衝突したりして大きな揺れや衝突音の原因になることを抑制できる。
【0039】
以上、本発明について実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0040】
本実施形態においては、左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32とを交差させて二重の面ファスナーで連結するように構成した。変形例においては、左正面非伸縮部31と右正面非伸縮部32を一対の面ファスナーだけで連結する構成や、面ファスナー以外の締結具で連結する構成としてもよい。
【0041】
本実施形態においては、左側方伸縮部33、右側方伸縮部34の横幅が左正面非伸縮部31、右正面非伸縮部32の横幅より短い構成を例示したが、変形例においては左側方伸縮部33、右側方伸縮部34の横幅が左正面非伸縮部31、右正面非伸縮部32の横幅より長い構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 ベルト型バッグ、 20 バッグ本体、 22 ファスナー、 30 ベルト部、 30a 左ベルト、 30b 右ベルト、 31 左正面非伸縮部、 31a 面ファスナー、 31c 面ファスナー、 31f 先端部、 32 右正面非伸縮部、 32a 先端部、 32e 面ファスナー、 33 左側方伸縮部、 34 右側方伸縮部、 40 着用者、 41 腸骨、 41a 上前腸骨棘、 41b 腸骨上端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9