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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20240917BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
F16F15/08 K
F16F1/38 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021101132
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000364
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】岡村 健
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071749(JP,A)
【文献】特開2012-172721(JP,A)
【文献】特開2007-263347(JP,A)
【文献】特開2012-237336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
F16F 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体側または振動源側の一方を構成する第1部材に固定される筒状の外筒と、
前記外筒の内周面に連結されるゴム状弾性体の防振基体と、
前記防振基体が外周面に連結されることで前記外筒の内周側に配置される筒状の内筒であって、前記支持体側または前記振動源側の他方を構成する第2部材に固定される内筒と、
前記内筒の軸方向端部側の外周面を覆うゴム状弾性体のゴム膜と、
前記ゴム膜の外周面に装着され、前記第1部材または前記外筒と前記第2部材との衝突時の衝撃を緩和する環状のストッパゴムと、を備え、
前記ストッパゴムは、前記ストッパゴムの内周面における軸方向外側の端部に凹む凹部を備え、
前記ゴム膜は、前記ゴム膜の外周面から前記凹部に向けて突出し、前記凹部に嵌め込まれる凸部を備え、
前記凸部は、前記凸部の頂から軸方向内側に向かうにつれて縮径する第1傾斜面と、前記凸部の頂から軸方向外側に向かうにつれて縮径する第2傾斜面と、を備え、
軸方向に対する前記第2傾斜面の傾斜よりも、軸方向に対する前記第1傾斜面の傾斜が大きいことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記凸部が前記凹部に嵌め込まれた前記ストッパゴムの装着状態において、前記凸部の頂が前記凹部の内面に非接触であることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記第1傾斜面は、軸を含む平面で切断した断面視において前記内筒側へ向けて凹む湾曲面であり、
前記第1傾斜面に接触する前記凹部の内面は、前記第1傾斜面に沿う湾曲面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記ゴム膜の周方向における一部に1箇所、又は、前記ゴム膜の周方向における複数箇所に形成され、
周方向を向く前記凹部の内面が前記凸部に接触することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防振装置。
【請求項5】
前記凸部は、前記ゴム膜の周方向における一部に1箇所形成されることを特徴とする請求項4記載の防振装置。
【請求項6】
前記ストッパゴムは、前記ゴム膜の外周面に装着され、内周面に前記凹部が形成される筒状の筒部と、その筒部の外周面から径方向に張り出して前記第1部材または前記外筒と前記第2部材との衝突時の衝撃を緩和する張出部と、を備え、
前記筒部は、前記筒部の内周面の軸方向内側の端部から軸方向外側に延びる溝を備え、
前記ゴム膜は、前記ゴム膜の外周面から径方向外側へ突出し前記溝に嵌め込まれる突出部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の防振装置。
【請求項7】
前記突出部は、前記凸部を含む仮想平面であって軸と直交する仮想平面と重なる位置から前記内筒の軸方向中央側に向けて延びることを特徴とする請求項6記載の防振装置。
【請求項8】
前記筒部は、前記溝の軸方向外側の端部を閉塞する閉塞部を備えることを特徴とする請求項7記載の防振装置。
【請求項9】
前記張出部は、前記張出部の径方向寸法が他の部位よりも小さく形成される切欠き部を備え、
前記内筒の内周面は、前記切欠き部を所定方向に向けた状態で前記内筒を前記第2部材に固定するための楕円状に形成され、
前記凹部、前記溝、及び、前記切欠き部は、各々が周方向において異なる位置に形成されることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の防振装置。
【請求項10】
前記凸部および前記突出部は、前記内筒の軸方向一端側の外周面を覆うゴム膜と、前記内筒の軸方向他端側の外周面を覆うゴム膜との各々に形成され、
前記凹部および前記溝は、同一形状の前記ストッパゴムを前記内筒の軸方向両端側に装着可能な位置に形成されることを特徴とする請求項9記載の防振装置。
【請求項11】
前記突出部は、前記内筒の楕円状の内周面の長軸方向に沿って突出することを特徴とする請求項9又は10に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関し、特に、ストッパゴムの脱落を抑制しつつ、ストッパゴムの装着の作業性を向上できる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内筒の外周面を覆うゴム膜にストッパゴムを装着する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ゴム膜の外周面に凹部7を形成する一方、サイドストッパ5(ストッパゴム)の内周面に凸条8を形成し、凹部7に凸条8を嵌め込むことでサイドストッパ5を内筒1に装着する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-118367号公報(例えば、段落0011,0012、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、凹部7と凸条8との引っ掛かりによってサイドストッパ5の脱落は比較的生じ難くできるものの、凹部7に凸条8を嵌め込んでストッパゴムを装着する際の作業性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ストッパゴムの脱落を抑制しつつ、ストッパゴムの装着の作業性を向上できる防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の防振装置は、支持体側または振動源側の一方を構成する第1部材に固定される筒状の外筒と、前記外筒の内周面に連結されるゴム状弾性体の防振基体と、前記防振基体が外周面に連結されることで前記外筒の内周側に配置される筒状の内筒であって、前記支持体側または前記振動源側の他方を構成する第2部材に固定される内筒と、前記内筒の軸方向端部側の外周面を覆うゴム状弾性体のゴム膜と、前記ゴム膜の外周面に装着され、前記第1部材または前記外筒と前記第2部材との衝突時の衝撃を緩和する環状のストッパゴムと、を備え、前記ストッパゴムは、前記ストッパゴムの内周面における軸方向外側の端部に凹む凹部を備え、前記ゴム膜は、前記ゴム膜の外周面から前記凹部に向けて突出し、前記凹部に嵌め込まれる凸部を備え、前記凸部は、前記凸部の頂から軸方向内側に向かうにつれて縮径する第1傾斜面と、前記凸部の頂から軸方向外側に向かうにつれて縮径する第2傾斜面と、を備え、軸方向に対する前記第2傾斜面の傾斜よりも、軸方向に対する前記第1傾斜面の傾斜が大きい。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の防振装置によれば、次の効果を奏する。ストッパゴムは、その内周面における軸方向外側の端部に凹む凹部を備え、ゴム膜は、その外周面から凹部に向けて突出し凹部に嵌め込まれる凸部を備える。凸部は、その頂から軸方向内側に向かうにつれて縮径する第1傾斜面と、凸部の頂から軸方向外側に向かうにつれて縮径する第2傾斜面と、を備えるので、凸部の第1傾斜面とストッパゴムの凹部との引っ掛かりによってストッパゴムの脱落を規制できる。
【0008】
軸方向に対する第2傾斜面の傾斜よりも第1傾斜面の傾斜が大きいので、上記のストッパゴムの脱落を効果的に抑制できる。一方、軸方向に対する第1傾斜面の傾斜よりも第2傾斜面の傾斜が小さいので、ストッパゴムに内筒(ゴム膜)を挿入する際の第2傾斜面による抵抗を低減できる。よって、ストッパゴムの脱落を抑制しつつ、ストッパゴムの装着の作業性を向上できるという効果がある。
【0009】
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。凸部が凹部に嵌め込まれたストッパゴムの装着状態において、凸部の頂が凹部の内面に非接触であるので、凹部に凸部が嵌め込まれたか否かを容易に判別できる。即ち、ストッパゴムの装着状態において、例えば凸部の頂が凹部の内面に接触する構成であると、ストッパゴムに内筒(ゴム膜)を挿入している挿入途中と、凸部が凹部に嵌まり込む挿入完了位置とのそれぞれにおいて、凸部の頂が凹部の内面に接触した状態となる。よって、ストッパゴムに内筒を挿入している時の感触(抵抗)に変化が生じ難くなるため、凹部に凸部が嵌め込まれたか否かの感触が得られ難くなる。
【0010】
これに対して請求項2の構成によれば、ストッパゴムに内筒を挿入している挿入途中と、凸部が凹部に嵌まり込んだ時との感触(抵抗の大きさ)の変化を大きくできるので、凹部に凸部が嵌め込まれたか否かを容易に判別できる。よって、ストッパゴムの装着の作業性を向上できるという効果がある。
【0011】
請求項3記載の防振装置によれば、請求項1又は2に記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1傾斜面は、軸を含む平面で切断した断面視において内筒側へ向けて凹む湾曲面であり、第1傾斜面に接触する凹部の内面は、第1傾斜面に沿う湾曲面である。これにより、凸部の第1傾斜面と凹部の内面との接触面積を大きく確保しつつ、それらの摩擦による抵抗を大きくできるので、凹部から凸部が抜けることを抑制できる。よって、ストッパゴムの脱落を抑制できるという効果がある。
【0012】
請求項4記載の防振装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。凸部は、ゴム膜の周方向における一部に1箇所、又は、ゴム膜の周方向における複数箇所に形成され、周方向を向く凹部の内面が凸部に接触するので、周方向におけるストッパゴムの回転を凹部と凸部との引っ掛かりによって規制できる。よって、ストッパゴムを周方向で位置決めできるという効果がある。
【0013】
請求項5記載の防振装置によれば、請求項4記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。凸部は、ゴム膜の周方向における一部に1箇所形成されるので、凸部(ゴム膜)を加硫成形する際に第1傾斜面がアンダーカットになった場合であっても、凸部の脱型性を確保できる。よって、軸方向に対する第2傾斜面の傾斜よりも第1傾斜面の傾斜が大きい場合であっても、凸部を備えるゴム膜を容易に加硫成形できるという効果がある。
【0014】
請求項6記載の防振装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。ストッパゴムは、内筒の外周面に装着され、内周面に凹部が形成される筒状の筒部と、その筒部の外周面から径方向に張り出して第1部材または外筒と第2部材との衝突時の衝撃を緩和する張出部と、を備える。筒部は、その内周面に形成され、筒部の内周面の軸方向内側の端部から軸方向外側に延びる溝を備え、ゴム膜は、その外周面から径方向外側へ突出して溝に嵌め込まれる突出部を備える。これにより、突出部を軸方向から溝に挿入することにより、ストッパゴムの筒部への内筒の挿入を案内できるので、ストッパゴムの装着の作業性を向上できるという効果がある。更に、ストッパゴムの装着後は、溝と突出部との周方向での引っ掛かりによってストッパゴムの回転を規制できるという効果がある。
【0015】
請求項7記載の防振装置によれば、請求項6記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。突出部は、凸部を含む仮想平面であって軸と直交する仮想平面と重なる位置から軸方向内側に向けて延びるので、突出部と溝との嵌め込み長さを軸方向で長く確保できる。これにより、突出部と溝との嵌め合いによるストッパゴムの保持力を向上できるので、ストッパゴムの脱落を抑制できるという効果がある。
【0016】
請求項8記載の防振装置によれば、請求項7記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。筒部は、溝の軸方向外側の端部を閉塞する閉塞部を備えるので、筒部の軸方向外側の端部のゴム量を閉塞部によって確保できる。これにより、筒部の軸方向外側の部位、即ち、凹部が形成される領域での筒部の変形を抑制できるので、凹部から凸部が抜けることを抑制できる。よって、ストッパゴムの脱落を抑制できるという効果がある。
【0017】
請求項9記載の防振装置によれば、請求項6から8のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。張出部は、その径方向寸法が他の部位よりも小さく形成される切欠き部を備え、内筒の内周面は、切欠き部を所定方向に向けた状態で内筒を第2部材に固定するための楕円状に形成される。この所定方向とは、振動の入力によって内筒(ストッパゴム)が変位した時に、周囲の他部品とストッパゴムとの接触が懸念される方向である。
【0018】
切欠き部や溝が形成される領域の近傍に凹部を形成すると、凹部から凸部が抜け易くなる。これは、切欠き部や溝が形成される領域は、ゴム量が減少してストッパゴムに変形が生じ易くなるためである。これに対して請求項9では、凹部、溝、及び、切欠き部は、各々が周方向において異なる位置に形成されるので、溝や切欠き部の形成領域を避けた位置に凹部を配置できる。これにより、ストッパゴムに溝や切欠き部を形成した場合であっても、凹部から凸部が抜け難くなるため、ストッパゴムの脱落を抑制できるという効果がある。
【0019】
請求項10記載の防振装置によれば、請求項9記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。凸部および突出部は、内筒の軸方向一端側の外周面を覆うゴム膜と、軸方向他端側の外周面を覆うゴム膜との各々に形成される。凹部および溝は、同一形状のストッパゴムを内筒の軸方向両端側に装着可能な位置に形成されるので、内筒の軸方向両端側に装着されるストッパゴムを共通の金型で成形できるという効果がある。更に、内筒に装着されるストッパゴムが1種類になるため、ストッパゴムの装着間違いを防止できるという効果がある。
【0020】
請求項11記載の防振装置によれば、請求項9又は10に記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。突出部は、内筒の楕円状の内周面の長軸方向に沿って突出するので、内筒の内周面の楕円形状の向きを突出部によって容易に認識できる。これにより、内筒を第2部材に固定する際の内筒の向き(装着すべき姿勢)を容易に把握できるので、第2部材に対する内筒の組み付け作業の作業性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における防振装置の分解斜視図である。
図2】防振装置の組み付け状態を示す断面図である。
図3】(a)は、図2のIIIa部分を拡大した防振装置の部分拡大断面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb線における防振装置の部分拡大断面図である。
図4】は、図2のIV-IV線における防振装置の組み付け状態を示す断面図である。
図5】(a)は、軸方向視における防振装置の上面図であり、(b)は、図5(a)の矢印Vb方向視における防振装置の側面図である。
図6】(a)は、軸方向視におけるストッパゴムの上面図であり、(b)は、図6(a)のVIb-VIb線におけるストッパゴムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、防振装置1の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態における防振装置1の断面図であり、図2は、防振装置1の組み付け状態を示す断面図である。なお、図2では、防振装置1の軸Oに沿う平面で切断した断面を図示している。
【0023】
また、以下の説明においては、防振装置1の軸O方向両端側(図1及び図2の上側および下側)を「軸O方向外側」とし、防振装置1の軸O方向中央側を「軸O方向内側」、軸Oと直交する方向を「径方向」、軸O回りの方向を「周方向」と記載して説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、防振装置1は、自動車のモータやエンジン等の振動源(図示せず)から車体等の支持体(図示せず)への振動伝達を抑制するための防振装置である。防振装置1は、第1ブラケット100(図2参照)を介して支持体側に取付けられる外筒2を備える。なお、外筒2を振動源側に(後述する内筒4を支持体側に)取付ける構成でも良い。
【0025】
外筒2は、アルミニウム合金などの金属材料を用いて円筒状に形成される。第1ブラケット100の圧入孔101(図2参照)に外筒2が圧入されることにより、第1ブラケット100に防振装置1が組み付けられる。
【0026】
外筒2の内周面には、ゴム状弾性体の防振基体3が加硫接着されており、この防振基体3を介して外筒2の内周側に内筒4が連結される。防振基体3は、外筒2及び内筒4を径方向で連結する連結部30と、その連結部30に連なって内筒4の外周面を覆う膜部31と、を備え、これらの連結部30及び膜部31が周方向に連続して形成される。膜部31は、連結部30から軸O方向外側に延びて内筒4の外周面の略全体を覆っている。
【0027】
内筒4は、振動源側の第2ブラケット200に固定される部材である。内筒4は、アルミニウム合金などの金属材料を用いて円筒状に形成され、外筒2と同軸上に配置される。内筒4の内周側に挿入される軸状の軸部材300により、第2ブラケット200に内筒4が締結固定される。なお、軸部材300は、ボルトやリベットなどの締結手段が例示されるが、図2では、軸部材300による締結構造の図示を省略して模式的に図示している。
【0028】
第2ブラケット200(振動源側)に内筒4が取付けられることにより、振動源が防振装置1を介して支持体(第1ブラケット100)に支持される。振動源の振動によって第2ブラケット200が軸O方向に変位すると、外筒2(第1ブラケット100)に第2ブラケット200が接触することがある。かかる接触時の衝撃(異音)を緩和するためのストッパゴム5が内筒4に装着される。
【0029】
ストッパゴム5は、軸O方向に延びる円筒状の筒部50と、その筒部50の外周面からフランジ状に(径方向外側に)張り出す張出部51と、を備える略円環状の部材である。筒部50及び張出部51は、ゴム状弾性体を用いて一体的に形成される。
【0030】
筒部50の内径は、膜部31の外径と同一に(又は僅かに小さく)形成されており、筒部50の軸O方向内側の端面50a側から内筒4(膜部31)を挿入することにより、膜部31の外周面にストッパゴム5が装着される。この筒部50への内筒4の挿入は、膜部31から突出する突出部32(図1又は図5参照)と、ストッパゴム5に形成される溝52(図1参照)と、によって案内される。
【0031】
突出部32は、膜部31の外周面から径方向外側に突出しており、膜部31(防振基体3)と一体的に加硫成形される。一方、ストッパゴム5の筒部50の内周面には、突出部32が嵌め込まれる溝52が形成される。溝52は、筒部50の軸O方向内側の端面50aから軸O方向外側に延びているため、溝52の軸O方向内側の開放部分から突出部32を挿入することにより、筒部50への内筒4の挿入を案内できる。よって、ストッパゴム5の装着の作業性を向上できる。また、ストッパゴム5の装着後には、溝52と突出部32との周方向での引っ掛かりによってストッパゴム5の回転を規制できる。なお、このストッパゴム5の回転の規制(周方向での位置決め)は、張出部51に形成された切欠き部53(図1参照)の向きを定めるためであるが、この切欠き部53の詳細については後述する。
【0032】
ストッパゴム5を内筒4に装着することにより、筒部50の内周面に凹む凹部54に対し、膜部31の外周面から突出する凸部33が嵌め込まれる。これにより、かかる装着状態からのストッパゴム5の脱落が凸部33と凹部54との引っ掛かりによって規制される(図2参照)。なお、以下の説明においては、内筒4(膜部31)にストッパゴム5が装着され、凹部54に凸部33が嵌め込まれた状態を「ストッパゴム5の装着状態」と記載して説明する。
【0033】
次いで、図3を参照して、凸部33及び凹部54の詳細構成について説明する。図3(a)は、図2のIIIa部分を拡大した防振装置1の部分拡大断面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb線における防振装置1の部分拡大断面図である。
【0034】
図3に示すように、凸部33は、その頂(径方向外側の端部)から軸O方向内側(図3(a)の下側)に向かうにつれて縮径する第1傾斜面33aと、凸部33の頂から軸O方向外側(図3(a)の上側)に向かうにつれて縮径する第2傾斜面33bと、を備える。
【0035】
第1傾斜面33aは、軸Oを含む平面で切断した断面視において、軸O方向内側ほど内筒4に近付く傾斜面であり、第2傾斜面33bは、かかる断面視において、軸O方向外側ほど内筒4に近付く傾斜面である。第1傾斜面33a及び第2傾斜面33bの接続部分は、径方向外側に凸の湾曲面33cになっている。この湾曲面33cの径方向外側の端部が凸部33の頂である。
【0036】
凸部33が嵌め込まれる凹部54は、筒部50の内周面において、軸O方向外側の端面50bを切欠くように形成される。よって、凹部54には、軸O方向外側を向く内面54aと、周方向を向く一対の内面54bと、径方向内側を向く内面54cと、が形成される。
【0037】
凹部54に凸部33を嵌め込むことにより、凸部33の第1傾斜面33aと凹部54の内面54aとが接触するため、第1傾斜面33aと内面54aとの引っ掛かりによって内筒4(膜部31)からのストッパゴム5の脱落を規制できる。軸O方向に対する第2傾斜面33bの傾斜(傾きの度合い)よりも第1傾斜面33aの傾斜が大きいため、ストッパゴム5が軸O方向外側に変位した際に凹部54の内面54aに第1傾斜面33aが引っ掛かり易くなる。よって、ストッパゴム5の脱落を効果的に抑制できる。
【0038】
一方、軸O方向に対する第1傾斜面33aの傾斜よりも第2傾斜面33bの傾斜が小さいため、ストッパゴム5の筒部50に内筒4を挿入する際の第2傾斜面33bによる抵抗を低減できる。つまり、第2傾斜面33bのテーパが緩やかであるため、筒部50の内周側に凸部33を押し込み易くできる。よって、ストッパゴム5の装着の作業性を向上できる。
【0039】
また、凸部33の第1傾斜面33aは、軸Oを含む平面で切断した断面視において内筒4側へ向けて凹む湾曲面であり、凹部54の内面54aは、第1傾斜面33a側に向けて凸の湾曲面である。これにより、第1傾斜面33aに沿って内面54aを接触させることができるので、第1傾斜面33aと内面54aとの接触面積を大きく確保しつつ、それらの摩擦による抵抗を大きくできる。よって、ストッパゴム5の脱落を抑制できる。
【0040】
なお、第1傾斜面33aが湾曲面である場合の「軸O方向に対する傾斜(傾きの度合い)」とは、軸Oを含む平面で切断した断面視において、膜部31の外周面および第1傾斜面33aの接続位置(変曲点)と、第1傾斜面33a及び湾曲面33cの接続位置(変曲点)とを結ぶ直線の軸Oに対する傾きである。
【0041】
ここで、ストッパゴム5(筒部50)の内周側に内筒4を挿入する際、凸部33の湾曲面33c(凸部33の頂)が筒部50の内周面に接触するため、かかる挿入途中においては抵抗(凸部33を押し込む時の感触)が生じる。この場合、例えば、ストッパゴム5の装着状態で凸部33の湾曲面33cが凹部54の内面54cに接触する構成であると、ストッパゴム5に内筒4を挿入している挿入途中と、凸部33が凹部54に嵌まり込む挿入完了位置とのそれぞれにおいて、湾曲面33cが内面54cに接触した状態となる。よって、ストッパゴム5に内筒4を挿入している時と、挿入完了時とで感触(抵抗)に変化が生じ難くなるため、挿入完了位置に達したか否かの感触が得られ難くなる。
【0042】
これに対して本実施形態では、膜部31からの凸部33の突出寸法よりも、筒部50の内周面からの凹部54の深さが深く形成される。よって、ストッパゴム5の装着状態において、凸部33の湾曲面33c(凸部33の頂)が凹部54の内面54cに非接触となる。これにより、ストッパゴム5に内筒4を挿入している挿入途中と、凸部33が凹部54に嵌まり込む挿入完了位置とで感じる感触(抵抗)に変化を与えることができる。つまり、内筒4の挿入時に凸部33と筒部50との接触によって生じる挿入抵抗が、挿入完了位置に達した時に開放される(クリック感が得られる)ので、凹部54に凸部33が嵌め込まれたか否かを容易に判別できる。よって、ストッパゴム5の装着の作業性を向上できる。
【0043】
凸部33を含む防振基体3(膜部31や図2に示す連結部30)は、金型を用いて一体的に加硫成形される。この加硫成形に用いられる金型は公知のものが採用できるので詳細な説明を省略するが、かかる金型は、軸O方向で型抜きを行う上型および下型を備えるものが一般的である(例えば、特開2012-202460号公報の図3参照)。このような金型を用いて防振基体3を加硫成形する場合、凸部33の第1傾斜面33aがアンダーカットになる。よって、例えば、凸部33を周方向で連続して形成する構成や、凸部33を周方向に複数形成する構成であると、金型に対して無理抜きとなる箇所が広範囲になるため脱型性が低下する。
【0044】
これに対して本実施形態では、凸部33は、膜部31の周方向における一部に1箇所のみ形成されるので、防振基体3を加硫成形する際に第1傾斜面33aがアンダーカットになった場合であっても、凸部33の脱型性を確保できる。即ち、軸O方向に対する第2傾斜面33bの傾斜に比べ、第1傾斜面33aの傾斜が大きい場合であっても、凸部33を備える防振基体3を容易に加硫成形できる。
【0045】
更に、凸部33は、膜部31の周方向における一部に1箇所形成され、ストッパゴム5の装着状態においては、凹部54の一対の内面54bに凸部33が接触する。これにより、一対の内面54bと凸部33との引っ掛かりによってストッパゴム5の回転を規制できる。このストッパゴム5の回転の規制により、ストッパゴム5の切欠き部53(図1参照)が常に所定の方向を向くように構成される。この構成について、図4図6を参照して説明する。
【0046】
図4は、図2のIV-IV線における防振装置1の組み付け状態を示す断面図である。図5(a)は、軸O方向視における防振装置1の上面図であり、図5(b)は、図5(a)の矢印Vb方向視における防振装置1の側面図である。図6(a)は、軸O方向視におけるストッパゴム5の上面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb-VIb線におけるストッパゴム5の断面図である。なお、図5では、ストッパゴム5を取り外した状態の防振装置1を図示している。
【0047】
図4に示すように、切欠き部53が形成される部位を除き、ストッパゴム5の張出部51の外径は外筒2の外径(圧入孔101の内径)よりも大きく形成される。これは、上述した通り、外筒2の軸O方向端部(圧入孔101の周囲)を張出部51で覆うことにより、外筒2(第1ブラケット100)と第2ブラケット200との接触時の衝撃(異音)を張出部51によって緩和するためである。
【0048】
このように、張出部51が径方向に張り出しているため、振動の入力時に内筒4が径方向(図4の左右方向)に変位すると、第1ブラケット100(又はその他の周囲の他部品)に張出部51が接触することがある。このような接触を抑制するための切欠き部53が張出部51に形成される。
【0049】
切欠き部53が形成されていない領域における張出部51の径方向寸法は一定であるが、かかる領域に比べ、切欠き部53が形成される領域では張出部51の径方向寸法が小さく形成される。そして、第1ブラケット100との接触が懸念される方向に切欠き部53を配置するために、内筒4は第2ブラケット200に対して周方向で位置決めされた状態で固定される。
【0050】
具体的には、図4及び図5に示すように、内筒4の内周面40は、横断面が楕円形(長孔)に形成される。また、図示は省略するが、軸部材300(図4参照)も内筒4の内周面40に対応して横断面が楕円形に形成されており、第2ブラケット200の軸O方向一側(図4の上側)又は他側(図4の下側)の部位に軸部材300が溶接などによって固定される。よって、内筒4の内周面40に挿入した軸部材300によって内筒4を第2ブラケット200に締結することにより、第2ブラケット200に対して内筒4を周方向で位置決めできる。
【0051】
一方、上述した突出部32及び溝52の引っ掛かりや、凸部33及び凹部54(図6参照)の引っ掛かりにより、内筒4に対してストッパゴム5が周方向で位置決めされる。これにより、第1ブラケット100などの周囲の他部品との接触が懸念される方向に切欠き部53が常に配置されるため(図4参照)、かかる接触による異音の発生を抑制できる。
【0052】
また、突出部32は、内筒4の楕円形状の内周面40の長軸方向(図5(a)の左右方向)に突出しているため、軸部材300(図4参照)を内筒4の内周側に挿入する際に、楕円形状の内周面40の向きを突出部32によって容易に認識できる。よって、内筒4を第2ブラケット200に固定する際の内筒4の向き(装着すべき姿勢)を容易に把握できるので、第2ブラケット200に対する内筒4の組み付け作業の作業性を向上できる。
【0053】
ここで、凸部33を含む平面であって軸Oと直交する平面を仮想平面V1(図5(b)参照)と定義すると、突出部32は、仮想平面V1と重なる位置から軸O方向内側に延び、防振基体3の連結部30(図4参照)に連なる位置まで比較的長く形成される。これと同様に、ストッパゴム5の筒部50(溝52)も、ストッパゴム5の装着状態において膜部31の軸O方向外側の端部から連結部30の近傍まで延びている。これにより、突出部32と溝52との嵌め込み長さを軸O方向で長く確保できるので、突出部32と溝52との摩擦による抵抗を増大できる。よって、突出部32と溝52との嵌め合いによるストッパゴム5の保持力を確保できるので、ストッパゴム5の脱落を抑制できる。
【0054】
更に、凹部54を含む仮想平面V1(図6参照)に重なる位置まで溝52が形成されるため、軸O方向外側(凹部54が形成される側)からストッパゴム5を視た時、即ち、図1に示すような斜めの方向からストッパゴム5を視た場合においても溝52の形成位置を容易に把握できる。よって、突出部32を溝52に嵌め込む作業の作業性が向上する。
【0055】
この一方で、凹部54を含む仮想平面V1に重なる位置に溝52を形成すると、凹部54が形成される領域(軸O方向における凹部54の形成位置)でのゴム量が減少するため、凹部54から凸部33が抜け易くなる。これは、ゴム量が少ない領域はストッパゴム5に変形が生じ易くなるためである。この変形は、例えば図4の状態から内筒4(ストッパゴム5)が軸O方向に変位して張出部51が外筒2に押さえ付けられ、ストッパゴム5が抜け落ちる力が加わった時の筒部50の変形である。
【0056】
これに対して本実施形態では、図6に示すように、ストッパゴム5の筒部50には、溝52の軸O方向外側の端部を閉塞する閉塞部55が形成されるので、筒部50の軸O方向外側の端部のゴム量を閉塞部55によって確保できる。これにより、筒部50の軸O方向外側の部位、即ち、凹部54が形成される軸O方向位置において、上記のような筒部50の変形を抑制できる。つまり、凹部54を含む仮想平面V1に重なる位置に溝52を形成した場合であっても、凹部54から凸部33が抜けることを抑制できる。よって、ストッパゴム5の脱落(防振装置1の組み付け状態における筒部50の軸O方向での変位)や周方向での位置ずれを抑制できる。更に、溝52の軸O方向外側の端部を閉塞部55で閉塞することにより、ストッパゴム5が表裏を逆にして(間違った向きで)内筒4に装着されることを抑制できる。
【0057】
このように、ストッパゴム5のゴム量が少ない領域は変形が生じ易い部位となる。よって、図6(a)に示すように、切欠き部53が形成される領域R1や、溝52が形成される領域R2は、ストッパゴム5が比較的変形し易い領域となる。
【0058】
領域R1は、軸O方向視において、切欠き部53の周方向両端部(張出部51の径方向寸法が小さくなり始める変曲点)と軸Oとを結ぶ2本の仮想線V2の間の領域であって、切欠き部53が存在する領域である。また、領域R2は、軸O方向視において、筒部50の内周面における溝52の周方向両端部と軸Oとを結ぶ2本の仮想線V3の間の領域であって、溝52が存在する領域である。
【0059】
そして、本実施形態では、切欠き部53が軸Oを挟んで溝52とは反対側に形成されるため、領域R1,R2同士が周方向で重ならないように構成され、かかる領域R1,R2を避けた位置に凹部54が形成される。即ち、溝52、切欠き部53、及び、凹部54の各々が周方向において異なる位置に形成されるので、比較的ゴム量が多い領域に凹部54を配置できる。これにより、凹部54の形成領域の近傍でストッパゴム5に変形が生じることを抑制できるので、ストッパゴム5に溝52や切欠き部53を形成した場合であっても、凹部54から凸部33が抜けることを抑制できる。
【0060】
また、突出部32及び凸部33(図5参照)は、内筒4の軸O方向両側を覆う膜部31の各々に形成されているが、本実施形態では、内筒4の軸O方向両側に同一形状のストッパゴム5を装着できるように構成されている。
【0061】
具体的には、図5に示すように、突出部32は、周方向において凸部33から90°ずれた位置に形成される。また、内筒4の軸O方向中央を通る平面であって軸Oに直交する平面を仮想平面V4(図5(b)参照)とすると、内筒4の軸O方向一端側(図5(b)の上側)に位置する突出部32及び凸部33と、他端側(図5(b)の下側)に位置する突出部32及び凸部33とが仮想平面V4を対称面とする面対称となる位置に形成される。
【0062】
そして、図6に示すように、ストッパゴム5には一対の凹部54が形成されており、これら一対の凹部54は、溝52から90°ずれた位置で互いに(軸Oを挟んで)対面している。つまり、溝52及び凹部54は、同一形状のストッパゴム5を内筒4(膜部31)の軸O方向両端側に装着可能な位置に形成されているため、内筒4の軸O方向両側に装着されるストッパゴム5を共通の金型で成形できる。更に、内筒4に装着されるストッパゴム5が1種類になるため、ストッパゴム5の装着間違いを防止できる。
【0063】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0064】
上記実施形態では、周方向における1箇所に突出部32及び溝52が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、突出部32や溝52は省略しても良いし、周方向における複数箇所に突出部32や溝52を形成しても良い。なお、突出部32や溝52を省略する場合には、張出部51よりも下方に位置する筒部50を省略しても良い。
【0065】
上記実施形態では、突出部32が仮想平面V1と重なる位置から軸O方向内側に向けて延びる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、突出部32の軸O方向外側の端部が仮想平面V1よりも軸O方向内側に位置する構成でも良い。
【0066】
上記実施形態では、内筒4の内周面40が楕円形に形成され、その楕円の長軸方向に沿って突出部32が突出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、かかる楕円の短軸方向に突出部32を突出させても良いし、長軸方向および短軸方向とは異なる方向に突出部32を突出させても良い。
【0067】
上記実施形態では、ストッパゴム5の装着状態で湾曲面33c(凸部33の頂)が凹部54の内面54cに非接触である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ストッパゴム5の装着状態で湾曲面33c(凸部33の頂)が凹部54の内面54cに接触する(食い込む)構成でも良い。
【0068】
上記実施形態では、凸部33の頂が湾曲面33cである場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、凸部33の頂(第1傾斜面33a及び第2傾斜面33bの接続部分)が軸O方向に延びる平坦面であっても良いし、第1傾斜面33aから第2傾斜面33bにかけて複数の凹凸を形成しても良い。
【0069】
上記実施形態では、第1傾斜面33aが内筒4へ向けて凹む湾曲面であり、凹部54の内面54aが第1傾斜面33aに沿う湾曲面である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1傾斜面33aや凹部54の内面54aを軸Oに対して傾斜する平坦面としても良いし、凹部54の内面54aを径方向に延びる平坦面としても良い。
【0070】
上記実施形態では、凸部33が膜部31の周方向における一部に1箇所形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、膜部31の周方向における複数箇所に凸部33を形成しても良いし、膜部31の周方向全周にわたって連続する凸部33を形成しても良い。いずれの場合においても、凸部33を嵌め込むことが可能な位置に(凸部33に対応した形状の)凹部54をストッパゴム5に形成すれば良い。
【0071】
上記実施形態では、ストッパゴム5の装着状態で凸部33の周方向両端が凹部54の内面54bに接触する場合、即ち、凸部33及び凹部54の周方向における寸法が略同一である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ストッパゴム5の装着状態で凸部33の周方向両端が凹部54の内面54bに非接触である構成、即ち、凸部33よりも凹部54の周方向寸法が大きい構成でも良い。また、凸部33よりも凹部54の周方向寸法が僅かに小さい構成でも良い。
【0072】
上記実施形態では、第2傾斜面33bが平坦面である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2傾斜面33bを内筒4側やそれとは反対側に凸の湾曲面に形成しても良い。第2傾斜面33bが湾曲面である場合の「軸O方向に対する傾斜(傾きの度合い)」とは、軸Oを含む平面で切断した断面視において、膜部31の外周面および第2傾斜面33bの接続位置(変曲点)と、第2傾斜面33b及び湾曲面33cの接続位置(変曲点)とを結ぶ直線の軸Oに対する傾きである。
【0073】
上記実施形態では、膜部31(突出部32及び凸部33が形成されるゴム膜)が防振基体3の連結部30と一体的に加硫成形される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、膜部31と連結部30とが分割されていても良い。
【0074】
上記実施形態では、張出部51に切欠き部53が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、切欠き部53を省略し、例えば張出部51の径方向寸法が周方向全周にわたって一定でも良いし、張出部51の径方向寸法が周方向で段階的または連続的に変化する構成でも良い。即ち、張出部51の形状は上記の形態に限定されるものではない。
【0075】
上記実施形態では、切欠き部53を所定方向に向ける(内筒4の組み付け方向を定める)ために内筒4の内周面40を楕円形に形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、内筒4の組み付け方向を定める必要が無い場合には、内筒4の内周面40を円形に形成しても良い。
【0076】
上記実施形態では、溝52及び切欠き部53の形成領域R1,R2が周方向で重ならず、且つ、かかる領域R1,R2を避けた位置に凹部54が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、領域R1,R2が周方向で重なる構成でも良いし、領域R1,R2内に凹部54が形成される構成でも良い。
【0077】
なお、領域R1,R2内に凹部54を形成する場合には、切欠き部53の形成領域R1内に凹部54を形成する構成が好ましい。これは、切欠き部53が形成される領域R1は、内筒4が軸O方向で変位した時に張出部51が外筒2に接触しない領域(凹部54から凸部33が抜ける力が加わり難い領域)であるためである。よって、かかる領域R1に凹部54(凸部33)を形成することにより、凹部54から凸部33が抜けることを抑制できる。
【0078】
上記実施形態では、内筒4の軸O方向一端側に位置する突出部32及び凸部33と、他端側に位置する突出部32及び凸部33とが仮想平面V4を対称面とする面対称となる位置に形成され、同一形状のストッパゴム5を内筒4の軸O方向両端側に装着可能な位置に溝52及び凹部54が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0079】
例えば、内筒4の軸O方向中央において軸O上に位置する点を対称点とし、内筒4の軸O方向一端側に位置する突出部32及び凸部33と、他端側に位置する突出部32及び凸部33とが点対称となる位置に形成される構成でも良い。また、内筒4の軸O方向一端側と他端側とで対称性を持たない位置に突出部32及び凸部33を形成しても良いし、軸O方向一端側のみに突出部32及び凸部33を形成しても良い。また、内筒4の軸O方向一端側と他端側とで異なる形状のストッパゴム5を装着する構成でも良い。
【0080】
上記実施形態では、溝52の軸O方向外側の端部が閉塞部55によって閉塞される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、閉塞部55を省略し、溝52の軸O方向外側の端部を開放する構成でも良い。
【0081】
上記実施形態では、ストッパゴム5の筒部50の外周面から張出部51が張り出す構成、即ち、筒部50の軸O方向寸法が張出部51よりも大きい場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ストッパゴム5の軸O方向寸法が径方向にわたって略一定の(ストッパゴム5が円盤状に形成される)構成でも良い。
【0082】
上記実施形態では、筒部50の内周面において、軸O方向外側の端面50bを切欠くことで凹部54が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、筒部50の軸O方向外側の端面50bよりも軸O方向内側の内周面に凹部54を形成しても良い。
【0083】
上記実施形態では、楕円形状の内周面40を備える内筒4を、軸部材300によって第2ブラケット200に締結固定する構成の詳細な説明を省略したが、かかる構成の一例を以下に説明する。例えば、軸部材300がボルトの場合には、ボルトの頭部側の軸部をおねじを有さない(内周面40の形状に対応する)楕円形状に形成する一方、ボルトの先端側の軸部におねじを形成する。この軸部材300の頭部側を第2ブラケット200の軸O方向一側(図4の上側)に溶接などによって固定し、その固定した軸部材300に内筒4を嵌め込む。そして、第2ブラケット200の軸O方向他側(図4の下側)の貫通孔に軸部材300の先端側を挿入してナットを締結する。これにより、内筒4を周方向で位置決めした状態で第2ブラケット200に固定できる。
【符号の説明】
【0084】
1 防振装置
2 外筒
3 防振基体
31 膜部(ゴム膜)
32 突出部
33 凸部
33a 第1傾斜面
33b 第2傾斜面
4 内筒
40 内周面
5 ストッパゴム
50 筒部
51 張出部
52 溝
53 切欠き部
54 凹部
54a~54c 凹部の内面
55 閉塞部
100 第1ブラケット(第1部材)
200 第2ブラケット(第2部材)
O 軸
V1 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6