(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】偏光子、偏光子の製造方法および該偏光子を含む光学積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240917BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240917BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240917BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/02 B
G02F1/1335 510
G02F1/13363
(21)【出願番号】P 2021103749
(22)【出願日】2021-06-23
(62)【分割の表示】P 2017176798の分割
【原出願日】2017-09-14
【審査請求日】2021-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】淵田 岳仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
(72)【発明者】
【氏名】高田 勝則
(72)【発明者】
【氏名】北村 ▲吉▼紹
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】井口 猶二
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-170369(JP,A)
【文献】特開2013-11847(JP,A)
【文献】特開2017-44882(JP,A)
【文献】特開平11-281817(JP,A)
【文献】特表2017-536562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される透過率パラメーターが0.8以上1.0以下であり、かつ、式(2)で表される色相パラメーターが5以下であって、厚みが8μm以下であ
り、二色性物質としてヨウ素を含む、偏光子:
【数1】
(式(1)中、T
420は波長420nmにおける平行透過率、T
550は波長550nmにおける平行透過率をそれぞれ表す)
【数2】
(式(2)中、aは平行色相a値、bは平行色相b値をそれぞれ表す)。
【請求項2】
請求項
1に記載の偏光子を製造する方法であって、熱可塑性樹脂基材とポリビニルアルコール系樹脂層との積層体に空中延伸処理、染色処理、水中延伸処理、および、乾燥収縮処理をこの順に施すことを含み、
該ポリビニルアルコール系樹脂層がハロゲン化物およびポリビニルアルコール系樹脂を含む、偏光子の製造方法。
【請求項3】
請求項
1に記載の偏光子と、実質的にλ/4板として機能する位相差層と、光拡散層とを含む、光学積層体。
【請求項4】
前記光拡散層が粘着剤および光拡散微粒子を含む、請求項
3に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記光拡散微粒子の平均粒子径が2μm~5μmである、請求項
4に記載の光学積層体。
【請求項6】
請求項
3から5のいずれかに記載の光学積層体を含む、液晶表示装置。
【請求項7】
反射型液晶表示装置である、請求項
6に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子、偏光子の製造方法および該偏光子を含む光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子は液晶表示装置等の表示装置に用いられている。近年、より優れた特性を有する偏光子が求められている。例えば、表示画像の色彩をより鮮明にするため、色相がニュートラル化された偏光子が求められている。しかしながら、偏光子の色相をニュートラル化する場合、偏光子の透過率が高くなる傾向がある。透過率が高い偏光子では耐久性の問題が生じ得る。また、特定の波長範囲に吸収極大を持つ二色性物質を用いて、色相ニュートラルな偏光子を得る方法が提案されている(特許文献1)。このような二色性物質を用いて色相をニュートラル化した場合であっても偏光子の透過率が高くなる傾向がある。そのため、透過率を高くすることなく、色相がニュートラル化された偏光子が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、透過率を高くすることなく、色相がニュートラル化された偏光子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の偏光子は、式(1)で表される透過率パラメーターが0.8以上であり、かつ、式(2)で表される色相パラメーターが5以下である。
【数1】
(式(1)中、T
420は波長420nmにおける平行透過率、T
550は波長550nmにおける平行透過率をそれぞれ表す)。
【数2】
(式(2)中、aは平行色相a値、bは平行色相b値をそれぞれ表す)。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚みは8μm以下である。
1つの実施形態においては、上記偏光子は二色性物質としてヨウ素を含む。
本発明の別の局面においては、偏光子の製造方法が提供される。この製造方法は、熱可塑性樹脂基材とポリビニルアルコール系樹脂層との積層体に空中延伸処理、染色処理、水中延伸処理、および、乾燥収縮処理をこの順に施すことを含む。このポリビニルアルコール系樹脂層はハロゲン化物およびポリビニルアルコール系樹脂を含む。
本発明の別の局面においては、光学積層体が提供される。本発明の光学積層体は、上記偏光子と、実質的にλ/4板として機能する位相差層と、光拡散層とを含む。
1つの実施形態においては、上記光拡散層は粘着剤および光拡散微粒子を含む。
1つの実施形態においては、上記光拡散微粒子の平均粒子径は2μm~5μmである。
本発明のさらに別の局面においては、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記光学積層体を含む。
1つの実施形態においては、上記液晶表示装置は反射型液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、色相がニュートラル化された偏光子を提供することができる。より詳細には、本発明の偏光子は、透過率パラメーターが0.8以上であり、かつ、色相パラメーターが5以下である。このようなパラメーターを満たす偏光子は、色相がニュートラル化されている。また、本発明の偏光子は、偏光子の厚みを薄くすることにより、色相をニュートラル化することできる。そのため、偏光子の透過率を高くすることなく色相のニュートラル化ができる。したがって、本発明によれば、所望の透過率を有し、かつ、色相がニュートラル化された偏光子を提供することができる。さらに、偏光子の耐久性の低下をも防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】加熱ロールを用いた乾燥収縮処理の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【
図3】正面白輝度(a)および正面黒輝度(b)の測定方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(550)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。なお、「Re(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(550)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。なお、「Rth(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
【0010】
A.偏光子
本発明の偏光子は透過率パラメーターが0.8以上であり、かつ、色相パラメーターが5以下である。偏光子がこのようなパラメーターを満たすことにより、色相がニュートラルである偏光子が得られる。
【0011】
透過率パラメーターは下記式(1)から算出される値である。式(1)において、T
420は波長420nmにおける平行透過率(H0)を、T
550は波長550nmにおける平行透過率(H0)をそれぞれ表す。本発明の偏光子の透過率パラメーターは0.8以上であり、好ましくは0.85以上である。透過率パラメーターが1に近いほど色相がニュートラル化されていることから好ましい。透過率パラメーターは、例えば、1.0以下である。平行透過率は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。偏光子の平行透過率は、例えば、分光光度計(日本分光社製、商品名「V-7100」)を用いて測定される。なお、これらの透過率は、JlS Z 8701-1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
【数3】
【0012】
色相パラメーターは下記式(2)から算出される値である。式(2)において、aは平行色相a値、bは平行色相b値をそれぞれ表す。本発明の偏光子の色相パラメーターは5以下であり、好ましくは4.5以下である。色相パラメーターが0に近いほど偏光子の色相がニュートラル化されていることから好ましい。色相パラメーターは、例えば、1.0以上である。なお、本明細書において、平行色相a値および平行色相b値とは、上記平行型積層偏光子を用いて測定した色相a値およびb値をいう。色相a値および色相b値はナショナルビューローオブスタンダーズ(NBS)による単体色相をいう。色相a値およびb値は、分光光度計(日本分光社製、商品名「V-7100」)を用いて測定することができる。
【数4】
【0013】
偏光子の厚みは、好ましくは8μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。偏光子の厚みがこのような範囲であることにより、色相がよりニュートラル化された偏光子が得られ得る。また、偏光子の厚みは、好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上である。
【0014】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは41%以上、さらに好ましくは42.0%以上、さらに好ましくは42.5%以上、特に好ましくは43.0%以上である。単体透過率は、例えば、50%以下である。
【0015】
偏光子の波長420nmにおける平行透過率(H0)は好ましくは20%~40%であり、より好ましくは22%~38%である。このような特性を有することにより、より色相がニュートラル化された偏光子が得られる。平行透過率(H0)は、上記の通りである。なお、この透過率は、JlS Z 8701-1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
【0016】
偏光子の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。なお、偏光度(P)は、単体透過率(Ts)、平行透過率(Tp)および直交透過率(Tc)を測定し、次式により算出される。ここで、Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。
偏光度(P)(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0017】
偏光子のNBSによる単体色相aは-1.2~0であり、好ましくは-1.0~0である。また、偏光子のNBSによる単体色相bは0~3.0であり、好ましくは0~2.5である。偏光子の単体色相a値および単体色相b値を0に近づけるほど、表示画像の色彩が鮮やかな表示装置が得られ得る。したがって、単体色相a値および単体色相b値の理想的な値は0である。
【0018】
本発明の偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)を含む樹脂フィルムから構成される。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。
【0019】
上記PVA系樹脂のケン化度は、通常、85モル%以上、好ましくは95.0モル%以上、より好ましくは99.0モル%以上である。また、ケン化度は、100モル%以下であり、好ましくは99.95モル%以下であり、さらに好ましくは99.93モル%である。偏光子に含まれるPVA系樹脂がこのようなケン化度を満足することにより、優れた加湿信頼性を達成し得る。なお、ケン化度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
【0020】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000~10000であり、好ましくは1200~6000、さらに好ましくは2000~5000である。なお、平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
【0021】
偏光子は、代表的には、二色性物質を含む。二色性物質の具体例としては、ヨウ素、有機染料が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。二色性物質としては、好ましくは、ヨウ素が用いられる。
【0022】
B.偏光子の製造方法
上記偏光子は、任意の適切な方法により製造することができる。偏光子は、例えば、樹脂フィルムに膨潤処理、延伸処理、染色処理、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等の各種処理を施すことにより得られる。1つの実施形態においては、各種処理を施す際、樹脂フィルムは、基材上に形成された樹脂層であってもよい。基材と樹脂層との積層体は、例えば、上記樹脂フィルムの形成材料を含む塗布液を基材に塗布する方法、基材に樹脂フィルムを積層する方法等により得ることができる。
【0023】
本発明の偏光子の製造方法では、好ましくは熱可塑性樹脂基材とポリビニルアルコール系樹脂との積層体に空中延伸処理、染色処理、水中延伸処理、および、乾燥収縮処理をこの順に施す。この積層体において、PVA系樹脂層は、ハロゲン化物およびPVA系樹脂を含むことが好ましい。また、本発明の偏光子の製造方法は、任意の適切な他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理等が挙げられる。これらの処理は、偏光子の製造方法の任意の適切な段階で行われ得る。
【0024】
B-1.積層体の作製
上記積層体は任意の適切な方法により得られる。例えば、熱可塑性樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とPVA系樹脂とを含むPVA系樹脂層を形成することにより得られる。PVA系樹脂層は任意の適切な方法により形成され得る。好ましくは長尺状の熱可塑性樹脂基材の片側に、ハロゲン物およびPVA系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥させることに形成される。長尺状の熱可塑性樹脂を用いることにより、積層体を搬送しながら連続して処理に供することができる。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味する。
【0025】
B-1-1.熱可塑性樹脂基材
上記熱可塑性樹脂基材の形成材料としては、任意の適切な形成材料(熱可塑性樹脂)が採用され得る。例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ノルボルネン系樹脂、非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂である。
【0026】
1つの実施形態においては、非晶質の(結晶化していない)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。中でも、非晶性の(結晶化しにくい)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が特に好ましく用いられる。非晶性のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸および/またはシクロヘキサンジカルボン酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールおよび/またはジエチレングリコールをさらに含む共重合体が挙げられる。
【0027】
好ましい実施形態においては、熱可塑性樹脂基材は、イソフタル酸ユニットを有するポリエチレンテレフタレート系樹脂で構成される。このような熱可塑性樹脂基材は延伸性に極めて優れるとともに、延伸時の結晶化が抑制され得るからである。これは、イソフタル酸ユニットを導入することで、主鎖に大きな屈曲を与えることによるものと考えられる。
【0028】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、テレフタル酸ユニットおよびエチレングリコールユニットを有する。イソフタル酸ユニットの含有割合は、全繰り返し単位の合計に対して、好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは1.0モル%以上である。延伸性に極めて優れた熱可塑性樹脂基材が得られるからである。一方、イソフタル酸ユニットの含有割合は、全繰り返し単位の合計に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましく10モル%以下である。このような含有割合に設定することで、後述の乾燥収縮処理において結晶化度を良好に増加させることができる。
【0029】
上記熱可塑性樹脂基材の厚みは、好ましくは20μm~300μm、さらに好ましくは50μm~200μmである。厚みが20μm未満であると、PVA系樹脂層の形成が困難になるおそれがある。厚みが300μmを超えると、例えば、後述の水中延伸処理において、熱可塑性樹脂基材が水を吸収するのに長時間を要するとともに、延伸に過大な負荷を要するおそれがある。熱可塑性樹脂基材の表面には、表面改質処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよく、易接着層が形成されていてもよい。このような処理によれば、熱可塑性樹脂基材と樹脂層との密着性に優れた積層体が得られ得る。
【0030】
熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。積層体を延伸する場合、樹脂層(PVA系樹脂)の結晶化を抑制しながら、延伸性を十分に確保することができるからである。その結果、優れた偏光特性を有する偏光子を製造することができる。一方、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度は、好ましくは60℃以上である。このような熱可塑性樹脂基材を用いることにより、上記PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、熱可塑性樹脂基材が変形(例えば、凹凸、タルミ、シワ等の発生)するなどの不具合を防止し、良好に積層体を作製することができる。また、PVA系樹脂層の延伸を、好適な温度(例えば、60℃程度)で良好に行うことができる。なお、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度は、例えば、構成材料に変性基を導入することおよび/または結晶化材料を用いて加熱することにより調整することができる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて求められる値である。
【0031】
熱可塑性樹脂基材は、好ましくは、その吸水率が0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。熱可塑性樹脂基材は、水を吸収し、水が可塑剤的な働きをして可塑化し得る。その結果、延伸応力を大幅に低下させることができ、高倍率に延伸することができる。一方、熱可塑性樹脂基材の吸水率は、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。このような熱可塑性樹脂基材を用いることにより、製造時に熱可塑性樹脂基材の寸法安定性が著しく低下して、得られる偏光子の外観が悪化するなどの不具合を防止することができる。また、水中延伸時に熱可塑性樹脂基材が破断したり、熱可塑性樹脂基材からPVA系樹脂層が剥離したりするのを防止することができる。なお、熱可塑性樹脂基材の吸水率は、例えば、構成材料に変性基を導入することにより調整することができる。吸水率は、JIS K 7209に準じて求められる値である。
【0032】
熱可塑性樹脂基材は、予め(後述するPVA系樹脂層を形成する前)、延伸されていてもよい。1つの実施形態においては、熱可塑性樹脂基材は、長尺状の熱可塑性樹脂基材の横方向(長手方向と直交する方向)に延伸されている。横方向は、好ましくは、後述の積層体の延伸方向に直交する方向である。なお、本明細書において、「直交」とは、実質的に直交する場合も包含する。ここで、「実質的に直交」とは、90°±5.0°である場合を包含し、好ましくは90°±3.0°、さらに好ましくは90°±1.0°である。
【0033】
熱可塑性樹脂基材の延伸温度は、ガラス転移温度(Tg)に対し、好ましくはTg-10℃~Tg+50℃である。熱可塑性樹脂基材の延伸倍率は、好ましくは1.5倍~3.0倍である。
【0034】
熱可塑性樹脂基材の延伸方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、固定端延伸であってもよく、自由端延伸であってもよい。延伸方式は、乾式延伸であってもよく、湿式延伸であってもよい。熱可塑性樹脂基材の延伸は、一段階で行ってもよく、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、上述の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。
【0035】
B-1-2.塗布液
塗布液は、上記のとおり、ハロゲン化物とPVA系樹脂とを含む。上記塗布液は、代表的には、上記ハロゲン化物および上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。PVA系樹脂としては、A項に開示したものを用いることができる。塗布液のPVA系樹脂の含有量は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部である。このような含有量であれば、熱可塑性樹脂基材に密着した均一な塗布膜を形成することができる。
【0036】
上記ハロゲン化物としては、任意の適切なハロゲン化物が採用され得る。例えば、ヨウ化物および塩化ナトリウムが挙げられる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、およびヨウ化リチウムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはヨウ化カリウムである。
【0037】
塗布液におけるハロゲン化物の含有量は、好ましくは、PVA系樹脂100重量部に対して5重量部~20重量部であり、より好ましくはPVA系樹脂100重量部に対して10重量部~15重量部である。PVA系樹脂100重量部に対するハロゲン化物の含有量が20重量部を超えると、ハロゲン化物がブリードアウトし、最終的に得られる偏光子が白濁する場合がある。
【0038】
塗布液の溶媒としては、任意の適切なものを用いることができる。例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらの中でも、好ましくは水である。溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
塗布液は、上記PVA系樹脂およびハロゲン化物以外の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては任意の適切な添加剤を用いることができる。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるPVA系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用され得る。
【0040】
B-2.空中延伸処理
上記の通り、積層体には空中延伸処理、染色処理、水中延伸処理、および、乾燥収縮処理がこの順に施される。一般に、PVA系樹脂層が延伸されることによって、PVA系樹脂中のポリビニルアルコール分子の配向性が高くなるが、延伸後のPVA系樹脂層を、水を含む液体に浸漬すると、ポリビニルアルコール分子の配向が乱れ、配向性が低下する場合がある。特に、水中延伸としてホウ酸水中延伸を採用し、熱可塑性樹脂の延伸を安定させるために比較的高い温度で上記積層体をホウ酸水中で延伸する場合、上記配向度低下の傾向が顕著である。例えば、PVAフィルム単体のホウ酸水中での延伸が60℃で行われることが一般的であるのに対し、A-PET(熱可塑性樹脂基材)とPVA系樹脂層との積層体の延伸は70℃前後という高い温度で行われる。この場合、延伸初期のPVAの配向性が水中延伸により配向性が上がる前の段階で低下し得る。これに対して、ハロゲン化物を含むPVA系樹脂層と熱可塑性樹脂基材との積層体をホウ酸水中で延伸する前に、空気中で高温延伸(補助延伸)することにより、補助延伸後の積層体のPVA系樹脂層中のPVA系樹脂の結晶化が促進され得る。その結果、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および、配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。
【0041】
特に、高い光学特性を得るためには、空中延伸(補助延伸)とホウ酸水中延伸を組み合わせる、2段延伸の方法が選択される。2段延伸のように、補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂基材の結晶化を抑制しながら延伸することができる。そのため、後のホウ酸水中延伸において熱可塑性樹脂基材の過度の結晶化により延伸性が低下するという問題を解決し、積層体をより高倍率に延伸することができる。さらには、熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂を塗布する場合、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度の影響を抑制するために、通常の金属ドラム上にPVA系樹脂を塗布する場合と比べて塗布温度を低くする必要がある。その結果、PVA系樹脂の結晶化が相対的に低くなり、十分な光学特性が得られないという問題が生じ得る。これに対して、補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVA系樹脂を塗布する場合でも、PVA系樹脂の結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVA系樹脂の配向性を事前に高めることで、後の染色工程や水中延伸工程で水に浸漬した時に、PVA系樹脂の配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。
【0042】
空中延伸(以下、空中補助延伸ともいう)の延伸方法は、固定端延伸(例えば、テンター延伸機を用いて延伸する方法)でもよく、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。高い光学特性を得るためには、自由端延伸が積極的に採用され得る。1つの実施形態においては、空中延伸処理は、上記積層体をその長手方向に搬送しながら、加熱ロール間の周速差により延伸する加熱ロール延伸工程を含む。空中延伸処理は、代表的には、ゾーン延伸工程と加熱ロール延伸工程とを含む。なお、ゾーン延伸工程と加熱ロール延伸工程の順序は限定されず、ゾーン延伸工程が先に行われてもよく、加熱ロール延伸工程が先に行われてもよい。ゾーン延伸工程は省略されてもよい。1つの実施形態においては、ゾーン延伸工程および加熱ロール延伸工程がこの順に行われる。また、別の実施形態では、テンター延伸機において、フィルム端部を把持し、テンター間の距離を流れ方向に広げることで延伸される(テンター間の距離の広がりが延伸倍率となる)。この時、幅方向(流れ方向に対して、垂直方向)のテンターの距離は、任意に近づくように設定される。好ましくは、流れ方向の延伸倍率に対して、自由端延伸により近くなるように設定され得る。自由端延伸の場合、幅方向の収縮率=(1/延伸倍率)1/2で計算される。
【0043】
空中補助延伸は、一段階で行ってもよく、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。空中補助延伸における延伸方向は、好ましくは、水中延伸の延伸方向と略同一である。
【0044】
空中補助延伸における延伸倍率は、好ましくは2.0倍~3.5倍である。空中補助延伸と水中延伸とを組み合わせる場合の最大延伸倍率は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上、より好ましくは5.5倍以上、さらに好ましくは6.0倍以上である。本明細書において「最大延伸倍率」とは、積層体が破断する直前の延伸倍率をいい、別途、積層体が破断する延伸倍率を確認し、その値よりも0.2低い値をいう。
【0045】
空中補助延伸の延伸温度は、熱可塑性樹脂基材の形成材料、延伸方式等に応じて、任意の適切な値に設定することができる。延伸温度は、好ましくは熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上であり、より好ましくは熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)+10℃以上、さらに好ましくはTg+15℃以上である。一方、延伸温度は、好ましくは170℃以下である。このような温度で延伸することで、PVA系樹脂の結晶化が急速に進むのを抑制して、当該結晶化による不具合(例えば、延伸によるPVA系樹脂層の配向を妨げる)を抑制することができる。
【0046】
B-3.不溶化処理
必要に応じて、空中補助延伸処理の後、染色処理および水中延伸処理の前に、積層体に不溶化処理を施す。上記不溶化処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬することにより行う。不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与し、水に浸漬した時のPVAの配向低下を防止することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部~4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃~50℃である。
【0047】
B-4.染色処理
染色処理は、好ましくは二色性物質を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、二色性物質を含む染色液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法、PVA系樹脂層に当該染色液を塗工する方法、当該染色液をPVA系樹脂層に噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法である。二色性物質が良好に吸着し得るからである。
【0048】
二色性物質としてヨウ素を用いる場合、染色液としては、ヨウ素水溶液が好ましく用いられる。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部~5.0重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウムが好ましく用いられる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~10重量部、より好ましくは0.3重量部~5重量部である。染色液としてヨウ化カリウムを含むヨウ素水溶液を用いる場合、ヨウ素水溶液におけるヨウ素およびヨウ化カリウムの含有量の比は好ましくは1:5~1:20であり、より好ましくは1:5~1:10である。
【0049】
染色液の染色時の液温は、好ましくは20℃~50℃である。浸漬により染色を行う場合、浸漬時間は、好ましくは5秒~5分、より好ましくは30秒~90秒である。なお、染色条件(濃度、液温、浸漬時間)は、最終的に得られる偏光子の偏光度または単体透過率が所望の範囲となるように、設定することができる。
【0050】
B-5.架橋処理
必要に応じて、上記染色処理の後、水中延伸処理の前に、PVA系樹脂層に架橋処理を施す。上記架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与し、後の水中延伸で、高温の水中へ浸漬した際のPVAの配向低下を防止することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部~5重量部である。また、上記染色処理後に架橋処理を行う場合、ホウ酸水溶液がヨウ化物を含むことが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部~5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃~50℃である。
【0051】
B-6.水中延伸処理
水中延伸処理は、積層体を延伸浴に浸漬させて行う。水中延伸処理によれば、上記熱可塑性樹脂基材および/またはPVA系樹脂層のガラス転移温度(代表的には、80℃程度)よりも低い温度で延伸し得、PVA系樹脂層を、その結晶化を抑えながら、高倍率に延伸することができる。その結果、優れた光学特性を有する偏光子を製造することができる。
【0052】
積層体の延伸方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸でもよく、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。好ましくは、自由端延伸が選択される。積層体の延伸は、一段階で行ってもよく、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、各段階の延伸倍率の積である。
【0053】
水中延伸は、好ましくは、ホウ酸水溶液中に積層体を浸漬させて行う(ホウ酸水中延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、PVA系樹脂層に、延伸時にかかる張力に耐え得る剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA系樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、PVA系樹脂層に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性を有する偏光子を製造することができる。
【0054】
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸水溶液のホウ酸濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部~10重量部であり、より好ましくは2.5重量部~6重量部であり、さらに好ましくは3重量部~5重量部である。ホウ酸濃度を1重量部以上とすることにより、PVA系樹脂層の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光子を製造することができる。なお、ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
【0055】
好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物をさらに配合する。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。ヨウ化物の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部~15重量部、より好ましくは0.5重量部~8重量部である。
【0056】
延伸温度(延伸浴の液温)は、好ましくは40℃~85℃、より好ましくは60℃~75℃である。このような温度であれば、PVA系樹脂層の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。具体的には、上述のように、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、PVA系樹脂層の形成との関係で、好ましくは60℃以上である。この場合、延伸温度が40℃を下回ると、水による熱可塑性樹脂基材の可塑化を考慮しても、良好に延伸できないおそれがある。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、PVA系樹脂層の溶解性が高くなり、優れた光学特性が得られないおそれがある。積層体の延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒~5分である。
【0057】
水中延伸による延伸倍率は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは3.0倍以上である。積層体の総延伸倍率は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上であり、さらに好ましくは5.5倍以上である。このような高い延伸倍率を達成することにより、光学特性に極めて優れた偏光子を製造することができる。このような高い延伸倍率は、水中延伸方式(ホウ酸水中延伸)を採用することにより、達成し得る。
【0058】
B-7.洗浄処理
好ましくは、水中延伸処理の後、乾燥収縮処理の前に、洗浄処理を施す。上記洗浄処理は、代表的には、樹脂フィルムをヨウ化カリウム水溶液に浸漬することにより行う。
【0059】
B-8.乾燥収縮処理
上記乾燥収縮処理は、ゾーン全体を加熱して行うゾーン加熱により行ってもよく、搬送ロールを加熱する(いわゆる加熱ロールを用いる)ことにより行ってもよい(加熱ロール乾燥方式)。好ましくは、その両方を用いる。加熱ロールを用いて乾燥させることにより、効率的に積層体の加熱カールを抑制して、外観に優れた偏光子を製造することができる。具体的には、加熱ロールに積層体を沿わせた状態で乾燥することにより、上記熱可塑性樹脂基材の結晶化を効率的に促進させて結晶化度を増加させることができ、比較的低い乾燥温度であっても、熱可塑性樹脂基材の結晶化度を良好に増加させることができる。その結果、熱可塑性樹脂基材は、その剛性が増加して、乾燥によるPVA系樹脂層の収縮に耐え得る状態となり、カールが抑制される。また、加熱ロールを用いることにより、積層体を平らな状態に維持しながら乾燥できるので、カールだけでなくシワの発生も抑制することができる。
【0060】
乾燥収縮処理は、好ましくは積層体を長手方向に搬送しながら加熱することにより行う。この時、積層体は、乾燥収縮処理により幅方向に収縮し得る。その結果、光学特性を向上させることができる。収縮により、PVAおよびPVA/ヨウ素錯体の配向性を効果的に高めることができるからである。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は、好ましくは1%以上であり、より好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは4%以上である。また、積層体の幅方向の収縮率は好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは6%以下である。
【0061】
図1は、乾燥収縮処理の一例を示す概略図である。乾燥収縮処理では、所定の温度に加熱された搬送ロールR1~R6と、ガイドロールG1~G4とにより、積層体200を搬送しながら乾燥させる。図示例では、PVA樹脂層の面と熱可塑性樹脂基材の面を交互に連続加熱するように搬送ロールR1~R6が配置されているが、例えば、積層体200の一方の面(たとえば熱可塑性樹脂基材面)のみを連続的に加熱するように搬送ロールR1~R6を配置してもよい。
【0062】
搬送ロールの加熱温度(加熱ロールの温度)、加熱ロールの数、加熱ロールとの接触時間等を調整することにより、乾燥条件を制御することができる。加熱ロールの温度は、好ましくは60℃~120℃であり、より好ましくは65℃~100℃であり、さらに好ましくは70℃~80℃である。熱可塑性樹脂の結晶化度を良好に増加させて、カールを良好に抑制することができるとともに、耐久性に極めて優れた光学積層体を製造することができる。なお、加熱ロールの温度は、接触式温度計により測定することができる。図示例では、6個の搬送ロールが設けられているが、搬送ロールは複数個であれば特に制限はない。搬送ロールは、通常2個~40個、好ましくは4個~30個設けられる。積層体と加熱ロールとの接触時間(総接触時間)は、好ましくは1秒~300秒であり、より好ましくは1~20秒であり、さらに好ましくは1~10秒である。
【0063】
加熱ロールは、加熱炉(例えば、オーブン)内に設けてもよく、通常の製造ライン(室温環境下)に設けてもよい。好ましくは、送風手段を備える加熱炉内に設けられる。加熱ロールによる乾燥と熱風乾燥とを併用することにより、加熱ロール間での急峻な温度変化を抑制することができ、幅方向の収縮を容易に制御することができる。熱風乾燥の温度は、好ましくは30℃~100℃である。また、熱風乾燥時間は、好ましくは1秒~300秒である。熱風の風速は、好ましくは10m/秒~30m/秒程度である。なお、当該風速は加熱炉内における風速であり、ミニベーン型デジタル風速計により測定することができる。
【0064】
C.光学積層体の全体構成
本発明の光学積層体は、上記偏光子と光拡散層とを含む。光学積層体は、用途等に応じて任意の適切な他の層を含んでいてもよい。他の層としては、例えば、位相差層、表面処理層(例えば、反射防止層、アンチグレア層、ハードコート層)等が挙げられる。
【0065】
1つの実施形態においては、本発明の光学積層体は、上記偏光子と、実質的にλ/4板として機能する位相差層と、光拡散層とを含む。
図2は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。この光学積層体100は、偏光子10と実質的にλ/4板として機能する位相差層20と光拡散層30とを備える。上記の通り、偏光子10は、透過率パラメーターが0.8以上であり、かつ、色相パラメーターが5以下である。このような偏光子を備えることにより、優れた表示特性(例えば、鮮やかな色彩、優れた反射色相、および、視野角特性等)を有する液晶表示装置を提供し得る光学積層体が得られる。
【0066】
図示例では、光学積層体100には1つの光拡散層30のみが備えられているが、2以上の光拡散層が備えられていてもよい。例えば、偏光子10と位相差層20との間に光拡散層をさらに備えていてもよい。また、位相差層20は単一の層であってもよく、積層構造を有していてもよい。図示しないが、上記各層は接着層(接着剤層または粘着剤層)を介して積層され得る。1つの実施形態においては、光拡散層30は光拡散粘着剤層である。この実施形態においては、光拡散層が接着層としても機能する。また、光学積層体100は、任意の適切な他の層をさらに含んでいてもよい。他の層としては、上記のものが挙げられる。
【0067】
光学積層体の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。代表的には40μm~300μm程度である。
【0068】
C-1.光拡散層
光拡散層30は、光拡散素子で構成されてもよく、光拡散粘着剤または光拡散接着剤で構成されてもよい。光拡散素子は、マトリクスと当該マトリクス中に分散した光拡散性微粒子とを含む。光拡散素子は、光拡散硬化層(例えば、マトリクス用樹脂と光拡散性微粒子と必要に応じて添加剤とを含む分散液(光拡散層形成用塗工液)を任意の適切な基材上に塗工し、硬化および/または乾燥させて形成したもの)であってもよく、光拡散フィルム(例えば、市販のフィルム)であってもよい。光拡散粘着剤はマトリクスが粘着剤で構成され、光拡散接着剤はマトリクスが接着剤で構成される。
【0069】
光拡散層の光拡散性能は、例えば、ヘイズ値で表すことができる。ヘイズ値は光学積層体が用いられる用途に応じて任意の適切な値に設定され得る。例えば、反射型液晶表示装置に採用される場合、光拡散層のヘイズ値は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは80%~98%であり、さらに好ましくは85%~98%である。また、透過型液晶表示装置に採用される場合、光拡散層のヘイズ値は、好ましくは20%以上であり、より好ましくは20%~80%であり、さらに好ましくは20%~60%である。ヘイズ値を上記の範囲とすることにより、視野角特性に優れた表示装置を提供することができる。光拡散層のヘイズ値は、マトリクス(粘着剤)の構成材料、ならびに、光拡散性微粒子の構成材料、体積平均粒子径および配合量等を調整することにより制御することができる。
【0070】
光拡散層の全光線透過率は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。
【0071】
光拡散層の厚みは、構成および所望の光拡散性能等に応じて適切に調整することができる。具体的には、光拡散層の厚みは、好ましくは5μm~100μmであり、より好ましくは10μm~30μmである。
【0072】
1つの実施形態においては、光拡散層30は、光拡散粘着剤で構成されている。光拡散粘着剤は、代表的には、マトリクスとしての粘着剤と当該粘着剤中に分散した光拡散性微粒子とを含む。光拡散層を光拡散粘着剤で構成することにより、偏光子および/または位相差層等の他の構成部材を貼り合わせる際の接着層(粘着剤層または接着剤層)を省略することができるので、表示装置の薄型化に寄与し得る。
【0073】
粘着剤(マトリクス)としては、任意の適切なものを用いることができる。粘着剤の具体例としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられ、好ましくは、アクリル系粘着剤である。アクリル系粘着剤を用いることにより、耐熱性および透明性に優れた光拡散層が得られ得る。粘着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
アクリル系粘着剤としては、任意の適切なものを用いることができる。アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、好ましくは-60℃~-10℃であり、より好ましくは-55℃~-15℃である。アクリル系粘着剤の重量平均分子量は、好ましくは20万~300万であり、より好ましくは25万~280万である。このような特性を有するアクリル系粘着剤を用いることにより、適切な粘着性を得ることができる。
【0075】
アクリル系粘着剤の屈折率は、好ましくは1.40~1.65であり、より好ましくは1.45~1.60である。
【0076】
上記アクリル系粘着剤は、通常、粘着性を与える主モノマー、凝集性を与えるコモノマー、粘着性を与えつつ架橋点となる官能基含有モノマーを重合させて得られる。上記特性を有するアクリル系粘着剤は、任意の適切な方法で合成することができ、例えば、大日本図書(株)発行 中前勝彦著「接着・粘着の化学と応用」を参考に合成できる。また、特開2014-224964号公報に開示された光拡散粘着剤層に適用される粘着剤を用いてもよい。この文献の記載は本明細書に参考として援用される。
【0077】
光拡散層中における粘着剤の含有量は、好ましくは50重量%~99.7重量%であり、より好ましくは52重量%~97重量%である。
【0078】
光拡散性微粒子としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なものを用いることができる。具体例としては、無機微粒子、高分子微粒子などが挙げられる。光拡散性微粒子は、好ましくは高分子微粒子である。高分子微粒子の材質としては、例えば、シリコーン樹脂、メタアクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル)等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、粘着剤に対する優れた分散性および粘着剤との適切な屈折率差を有するので、拡散性能に優れた光拡散粘着剤層が得られ得る。好ましくは、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。光拡散性微粒子の形状は、例えば、真球状、扁平状、不定形状であり得る。光拡散性微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
1つの実施形態においては、光拡散性微粒子の屈折率は粘着剤の屈折率よりも低い。光拡散性微粒子の屈折率は、好ましくは1.30~1.70であり、より好ましくは1.40~1.65である。光拡散性微粒子の屈折率がこのような範囲であれば、粘着剤との屈折率差を所望の範囲とすることができる。その結果、所望のヘイズ値を有する光拡散層を得ることができる。
【0080】
光拡散性微粒子と粘着剤との屈折率差の絶対値は、好ましくは0を超えて0.2以下であり、より好ましくは0を超えて0.15以下であり、さらに好ましくは0.01~0.13である。
【0081】
光拡散性微粒子の体積平均粒子径は、好ましくは1μm~5μmであり、より好ましくは2μm~5μmであり、さらに好ましくは3μm~5μmである。光拡散性微粒子の体積平均粒子径がこのような範囲であれば、所望のヘイズ値を有し、かつ、ニュートラルな色相を有する光拡散粘着剤層を得ることができる。例えば、光学積層体が反射型液晶表示装置に採用される場合、光拡散微粒子の体積平均粒子径は上記範囲であることが好ましい。また、光学積層体が透過型液晶表示装置に採用される場合、体積平均粒子径は2.5μm~5μmであることが好ましい。なお、体積平均粒子径は、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0082】
光拡散粘着剤における光拡散性微粒子の含有量は、好ましくは0.3重量%~50重量%であり、より好ましくは3重量%~48重量%である。光拡散性微粒子の配合量を上記の範囲にすることにより、優れた光拡散性能を有する光拡散粘着剤層を得ることができる。
【0083】
光拡散層は、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤が挙げられる。
【0084】
別の実施形態においては、光拡散層は光拡散素子で構成される。この場合、光拡散層は、代表的にはマトリクスと当該マトリクス中に分散した光拡散性微粒子とを含む。マトリクスは、例えば、電離線硬化型樹脂で構成される。電離線としては、例えば、紫外線、可視光、赤外線、電子線等が挙げられる。好ましくは紫外線であり、したがって、マトリクスは、好ましくは紫外線硬化型樹脂で構成される。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、脂肪族系(例えば、ポリオレフィン)樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。光拡散性微粒子については、光拡散粘着剤に用いられ得る光拡散性微粒子と同様の微粒子が用いられ得る。
【0085】
光拡散層は、例えば、粘着剤(あるいは接着剤またはマトリクス用樹脂)と光拡散性微粒子と必要に応じて添加剤とを含む分散液(光拡散層形成用塗工液)を任意の適切な基材上に塗工し、硬化および/または乾燥させることにより形成され得る。基材は、例えば、セパレーターであってもよく、上記偏光子または位相差フィルムであってもよい。このように光拡散層は塗工により形成され得るので、長尺状の位相差フィルムおよび長尺状の偏光子を用いれば、ロールトゥロールにより光学積層体を作製することができ、結果として、液晶表示装置の製造効率を向上させることができる。
【0086】
C-2.位相差層
位相差層は実質的にλ/4板として機能する位相差層である。位相差層20は実質的にλ/4板として機能する層であればよい。例えば、単一の層(いわゆる、λ/4板)であってもよく、複数の位相差板を組み合せてλ/4板としての光学補償機能を発揮する積層構造を有する層としてもよい。
【0087】
位相差層のNz係数は、好ましくは1~3、より好ましくは1~2.5、さらに好ましくは1~2である。このような関係を満たすことにより、より優れた反射色相を達成し得る。
【0088】
位相差層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。位相差層の厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0089】
1つの実施形態においては、位相差層は、好ましくは、nx>ny≧nzの屈折率特性を示す。位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは80nm~200nm、より好ましくは100nm~180nm、さらに好ましくは110nm~170nmである。
【0090】
位相差層は、その面内位相差がRe(450)<Re(550)の関係を満たす、いわゆる逆分散の波長依存性を有することが好ましい。このような関係を満たすことにより、優れた反射色相を達成することができる。Re(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1未満であり、より好ましくは0.8以上0.95以下である。
【0091】
位相差層は遅相軸を有する。位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは38°~52°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは約45°である。このような角度であれば、非常に優れた反射防止特性が実現され得る。
【0092】
位相差層は、代表的には、任意の適切な樹脂で形成された位相差フィルムである。この位相差フィルムを形成する樹脂としては、好ましくは、ポリカーボネート系樹脂が用いられる。ポリカーボネート系樹脂の詳細および具体例は、例えば、特開2014-026266号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0093】
位相差層は、例えば、上記ポリカーボネート系樹脂から形成されたフィルムを延伸することにより得られる。ポリカーボネート系樹脂からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。押出成形法またはキャスト塗工法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、位相差層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、ポリカーボネート系樹脂は、多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
【0094】
樹脂フィルム(未延伸フィルム)の厚みは、位相差層の所望の厚み、所望の光学特性、後述の延伸条件などに応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは50μm~300μmである。
【0095】
上記延伸は、任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、長さ方向、幅方向、厚さ方向、斜め方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。延伸の温度は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg-30℃~Tg+60℃であることが好ましく、より好ましくはTg-10℃~Tg+50℃である。
【0096】
上記延伸方法、延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数)を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0097】
1つの実施形態においては、位相差フィルムは、樹脂フィルムを一軸延伸もしくは固定端一軸延伸することにより作製される。固定端一軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長手方向に走行させながら、幅方向(横方向)に延伸する方法が挙げられる。延伸倍率は、好ましくは1.1倍~3.5倍である。
【0098】
別の実施形態においては、位相差フィルムは、長尺状の樹脂フィルムを長手方向に対して所定の角度θの方向に連続的に斜め延伸することにより作製され得る。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長手方向に対して角度θの配向角(角度θの方向に遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムが得られ、例えば、偏光子との積層に際してロールトゥロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。なお、角度θは、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度であり得る。
【0099】
斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の樹脂フィルムを連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
【0100】
上記延伸機において左右の速度をそれぞれ適切に制御することにより、上記所望の面内位相差を有し、かつ、上記所望の方向に遅相軸を有する位相差層(実質的には、長尺状の位相差フィルム)が得られ得る。
【0101】
上記フィルムの延伸温度は、位相差層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくはTg-30℃~Tg+30℃、さらに好ましくはTg-15℃~Tg+15℃、より好ましくはTg-10℃~Tg+10℃である。このような温度で延伸することにより、適切な特性を有する位相差層が得られ得る。なお、Tgは、フィルムの構成材料のガラス転移温度である。
【0102】
別の実施形態においては、位相差層は、フラットな波長分散特性を示す。この場合、位相差層のRe(450)/Re(550)は好ましくは0.99~1.03であり、Re(650)/Re(550)は好ましくは0.98~1.02である。この場合、位相差層は、積層構造を有し得る。具体的には、λ/2板として機能する位相差フィルムとλ/4板として機能する位相差フィルムとを所定の軸角度(例えば、50°~70°、好ましくは約60°)で配置することにより、理想的な逆波長分散特性に近い特性を得ることが可能であり、結果として、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0103】
この実施形態において、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、任意の適切な角度に設定され得る。例えば、λ/2板として機能するフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とがなす角度が5°~30°、好ましくは約15°であり、λ/4板として機能するフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とがなす角度が60°~90°、好ましくは約75°となるよう配置され得る。このような角度であれば、非常に優れた反射防止特性が実現され得る。
【0104】
この実施形態において、位相差層は、上記のような特性を満足し得る任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。そのような樹脂の代表例としては、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。中でも、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネート系樹脂が好適に用いられ得る。
【0105】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα-オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0106】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
【0107】
上記環状オレフィン系樹脂フィルムとして市販のフィルムを用いてもよい。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0108】
D.光学積層体の用途
本発明の光学積層体は様々な表示装置に用いることができる。例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば、電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えば、グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
【0109】
E.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、上記光学積層体を含む。液晶表示装置としては、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投写型液晶表示装置等が挙げられる。
【0110】
本発明の液晶表示装置は好ましくは反射型液晶表示装置である。反射型液晶表示装置が上記光学積層体を含むことにより、より表示画像が鮮明な液晶表示装置が得られ得る。また、液晶表示装置の反射色相および視野角特性が向上し得る。1つの実施形態においては、本発明の反射型液晶表示装置は外光を効率よく利用できるため、屋外で使用される液晶表示装置として好適に用いることができる。また、上記の通り、本発明の液晶表示装置は反射色相および視野角特性に優れる。そのため、大型の液晶表示装置とした場合であっても、良好な視認性を確保し得る。大型の液晶表示装置として用いる場合、1枚の大型の表示装置として用いてもよく、複数の液晶表示装置を配置して(例えば、縦3枚×横4枚)、大型の液晶表示装置としてもよい。上記の通り、本発明の反射型液晶表示装置に用いられる光学積層体は、周縁部での偏光解消や光漏れが小さい傾向がある。そのため、大型の液晶表示装置にも好適に用いることができる。さらに、ベゼルが小さいまたは無い液晶表示装置にも好適に用いることができる。
【0111】
上記の通り、本発明の液晶表示装置は、大型の液晶表示装置として用いられ得る。1枚の大型液晶表示装置として用いる場合、例えば、表示画面のサイズが20インチ以上の液晶表示装置として用いることができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0113】
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG-205 type pds-2」)を用いて測定した。
(2)透過率
実施例1~2および比較例1で得られた偏光子の透過率を、分光光度計(日本分光社製、商品名「V-7100」)を用いて測定した。これらの透過率は、JlS Z 8701-1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。なお、保護フィルムの屈折率は1.50であり、偏光子の保護フィルムとは接していない表面の屈折率は1.53であった。
(3)透過率パラメーター
上記(2)と同様にして、波長420nmおよび波長520nmにおける平行透過率を測定した。測定した平行透過率の値を用いて、下記式から透過率パラメーターを算出した。
【数5】
(4)色相パラメーター
実施例1~2および比較例1で得られた偏光子の平行色相a値および平行色相b値を求めた。測定は、分光光度計(日本分光社製、商品名「V-7100」)を用いて行った。測定した値を用いて下記式から色相パラメーターを算出した。
【数6】
(5)平行色相a値およびb値
実施例1~2および比較例1で得られた偏光子の平行色相a値および平行色相b値を求めた。測定は、分光光度計(日本分光社製、商品名「V-7100」)を用いて行った。
(6)位相差
参考例2および3で得られた位相差フィルムの位相差をAxometrics社製のAxoscanを用いて測定した。測定波長は450nm、550nm、測定温度は23℃であった。なお、位相差フィルムから50mm×50mmのフィルム片を切り出して、測定サンプルとした。
(7)粘着剤の屈折率
透明基材上に塗工した拡散微粒子を含まない参考例1の粘着剤の屈折率を、アッベ屈折率計(DR-M2,アタゴ社製)により測定した。
(8)ヘイズ値
実施例3~4および比較例2で形成された光拡散層について、JIS 7136で定める方法により、ヘイズメーター(村上色彩科学研究所社製、商品名「HN-150」)を用いて測定した。
(9)色相変化
実施例3~4および比較例2で得られた光学積層体について、色相変化Δabを求めた。測定は、輝度計(トプコン社製、商品名「SR-UL1」)を用いた。測定は反射板(東レフィルム加工社製、商品名「セラピール DMS-X42」)の上に光学積層体を置き行った。出射光が光学積層体の鉛直方向となす角度が30°で入射するように、蛍光ランプ(200lx:照度計IM-5での測定値)を配置し、照射した。NBS(a,b)について、反射板のみで蛍光ランプから光を照射する条件で測定した色相(a
0、b
0)と光学積層体を反射板に置いた状態で測定した色相(a
x、b
x)の値を用いて下記式によりΔabを算出した。色相変化Δabは好ましくは3以下であり、より好ましくは2.5以下である。Δabが上記の範囲であることにより、光学積層体の色相がよりニュートラル化されていることを表す。
【数7】
(10)コントラスト
図3(a)に示すように、輝度計、光学積層体、ガラス、蛍光ランプを配置し、正面白輝度を測定した。より詳細には、ガラス(厚み1.3μm)の両面に同じ光学積層体を置き、光学積層体の鉛直方向となす角度が30°で入射するように、蛍光ランプ(200lx:照度計IM-5での測定値)を配置し、照射した。蛍光ランプを配置していない側の光学積層体の鉛直方向に出射した光を輝度計(トプコン社製、商品名「SR-UL1」、測定距離:500mm、測定角:2°)で測定した値を正面白輝度とした。
また、
図3(b)に示すように、輝度計、光学積層体、反射板、蛍光ランプを配置し、黒輝度を測定した。より詳細には、反射板(東レフィルム加工社製、商品名「セラピール DMS-X42」)の上に光学積層体を置き、光学積層体の鉛直方向となす角度が30°で入射するように、上記蛍光ランプを配置し、照射した。鉛直方向の反射光を輝度計で測定した値を正面黒輝度とした。
測定した正面白輝度を正面黒輝度で除し、コントラスト比を算出した。
【0114】
[実施例1]偏光子の作製1
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理(処理条件:55W・min/m2)を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加し、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
熱可塑性樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が任意の値となるように染色浴のヨウ素濃度を調整し、60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:水100重量部に対して、ホウ酸4.0重量部)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、70℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は2.5%であった。
上記で得られた各偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護フィルムとして、アクリル系フィルム(表面屈折率1.50、40μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線を保護フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離し、保護フィルム/偏光子の構成を有する10の偏光板を得た。
得られた偏光子の厚み、透過率パラメーター、色相パラメーター、透過率、平行色相aおよび平行色相bを表1に示す。
【0115】
【0116】
[実施例2]偏光子の作製2
得られる偏光子の厚みが3μmとなるよう、PVA水溶液(塗布液)を塗布した以外は実施例1と同様にして8の偏光板を得た。得られた偏光子の厚み、透過率パラメーター、色相パラメーター、透過率、平行色相aおよび平行色相bを表2に示す。
【0117】
【0118】
(比較例1)偏光子の作製3
厚み75μmのポリビニルアルコール系フィルム(PVAフィルム)(クラレ社製、商品名:VF-PS-N#7500)を、液温25℃の温水(膨潤浴)中に浸漬して膨潤させつつ、元長に対して延伸倍率が2.4倍になるように流れ方向に延伸した。
次いで、上記フィルムを液温30℃の染色浴(ヨウ素:ヨウ化カリウムの重量比1:7の割合で、ヨウ化物が添加されたヨウ素水溶液)中に60秒間浸漬して、染色しながら、元長に対して延伸倍率が3.3倍になるように流れ方向に延伸した。また、染色浴のヨウ素含有量を水100重量部に対して、0.03重量部から0.1重量部に変え、得られる偏光子の透過率を調整した。
次いで、上記フィルムを液温30℃の水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸4重量部を配合し、ヨウ化カリウム3重量部を配合して得られた水溶液)に30秒間浸漬した。
次いで、上記フィルムを液温60℃の延伸浴(水100重量部に対して、ホウ酸4重量部を配合し、ヨウ化カリウム5重量部を配合して得られた水溶液)中に40秒間浸漬しながら、元長に対して延伸倍率が6倍になるように流れ方向に延伸した。
次いで、上記フィルムを液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウム3重量部を配合して得られた水溶液)に10秒間浸漬して洗浄し、さらに、50℃で4分間乾燥して偏光子を得た。
続いて、得られた偏光子の表面に、PVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z-200」、樹脂濃度:3重量%)を塗布して保護フィルム(厚み25μm)を貼り合わせ、これを60℃に維持したオーブンで5分間加熱し、偏光板(偏光子(透過率42.3%、厚み30μm)/保護フィルム)を得た。得られた偏光子の厚み、透過率パラメーター、色相パラメーター、透過率、平行色相aおよび平行色相bを表3に示す。
【0119】
【0120】
[評価]
実施例1~2で得られた偏光子は透過率パラメーターが0.8以上、色相パラメーターが5以下であり、いずれも色相がニュートラル化された偏光子であった。さらに、透過率に影響されることなく、色相がニュートラル化されていた。また、厚みが薄く、偏光子が用いられる表示装置の薄型化が可能なものであった。
【0121】
[参考例1]光拡散粘着剤の作製
アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)0.6部、および光拡散性微粒子としてのシリコーン樹脂微粒子(モメンティブ社製、商品名:トスパール145、体積平均粒子径4μm)29部を配合して、光拡散粘着剤の塗工液(固形分13.2%)を調製した。
【0122】
[参考例2]位相差フィルム1の作製
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。9,9-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BHEPF)、イソソルビド(ISB)、ジエチレングリコール(DEG)、ジフェニルカーボネート(DPC)、および酢酸マグネシウム4水和物を、モル比率でBHEPF/ISB/DEG/DPC/酢酸マグネシウム=0.348/0.490/0.162/1.005/1.00×10-5になるように仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後(酸素濃度0.0005~0.001vol%)、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。
【0123】
第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、反応液をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレット化を行い、BHEPF/ISB/DEG=34.8/49.0/16.2[mol%]の共重合組成のポリカーボネート樹脂Aを得た。このポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.430dL/g、ガラス転移温度は128℃であった。
【0124】
得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃)、Tダイ(幅900mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:125℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmのポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。
【0125】
(斜め延伸)
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂フィルムを、特開2014-194483号公報の実施例1に準じた方法で斜め延伸し、位相差フィルムを得た。なお、装置の詳細な構成については、特開2014-194483号公報の記載が本明細書に参考として援用される。位相差フィルムの具体的な作製手順は以下のとおりである:ポリカーボネート樹脂フィルム(厚み130μm、幅765mm)を延伸装置の予熱ゾーンで142℃に予熱した。予熱ゾーンにおいては、左右のクリップのクリップピッチは125mmであった。次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンC1に入ると同時に、右側クリップのクリップピッチの増大を開始し、第1の斜め延伸ゾーンC1において125mmから177.5mmまで増大させた。クリップピッチ変化率は1.42であった。第1の斜め延伸ゾーンC1において、左側クリップのクリップピッチについてはクリップピッチの減少を開始し、第1の斜め延伸ゾーンC1において125mmから90mmまで減少させた。クリップピッチ変化率は0.72であった。さらに、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンC2に入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始し、第2の斜め延伸ゾーンC2において90mmから177.5mmまで増大させた。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンC2において177.5mmのまま維持した。また、上記斜め延伸と同時に、幅方向にも1.9倍の延伸を行った。なお、上記斜め延伸は135℃で行った。
【0126】
(MD収縮処理)
次いで、収縮ゾーンにおいて、MD収縮処理を行った。具体的には、左側クリップおよび右側クリップのクリップピッチをともに177.5mmから165mmまで減少させた。MD収縮処理における収縮率は7.0%であった。
【0127】
以上のようにして、位相差フィルム1(厚み50μm)を得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は141nmであり、逆分散特性を示した。
【0128】
[参考例3]位相差フィルム2の作製
シクロオレフィン系の位相差フィルムA(カネカ社製、製品名「KUZ-フィルム#270」、厚み33μm、Re(550)=270nm、Re(450)/Re(550)=1.00、Nz係数=1.00)とシクロオレフィン系の位相差フィルムB(カネカ社製、製品名「KUZ-フィルム#140」、厚み28μm、Re(550)=140nm、Re(450)/Re(550)=1.00、Nz係数=1.00)とを、それぞれの遅相軸のなす角度が60°となるように厚みが23μmの光拡散粘着剤層(参考例3で得られた光拡散粘着剤組成物)を介して貼り合せて位相差フィルム2を作製した。
【0129】
[実施例3]光学積層体1の作製
実施例1で得られた透過率が43.4%の偏光子(実施例1-7の偏光子)を含む偏光板の偏光子側に、参考例1で得られた光拡散粘着剤組成物を乾燥後の厚みが23μmとなるよう塗布して光拡散粘着剤層を形成し、参考例2で得られた位相差フィルムを位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とが成す角度が45°となるよう配置し、貼り合わせた。次いで、位相差フィルムの偏光子が貼り合わせられていない面に光拡散粘着剤組成物を乾燥後の厚みが23μmとなるよう塗布して光拡散粘着剤層を形成した後、乾燥・硬化させ光学積層体1を得た。
得られた光学積層体のΔabは2.2であり、コントラスト比は263であった。また、光拡散層のヘイズは95.1%であった。
【0130】
[実施例4]光学積層体2の作製
実施例2で得られた透過率が43.4%の偏光子(実施例2-2の偏光子)を含む偏光板の偏光子側に、参考例1で得られた光拡散粘着剤組成物を乾燥後の厚みが23μmとなるよう塗布して光拡散粘着剤層を形成し、参考例3で得られた位相差フィルムを貼り合わせ、光学積層体2を得た。
得られた光学積層体のΔabは2.1であり、コントラスト比は260であった。また、光拡散層のヘイズは95.1%であった。
【0131】
(比較例2)光学積層体C1の作製
偏光子として、比較例1で得られた透過率が43.4%の偏光子(比較例1-2の偏光子)を含む偏光板を用いた以外は実施例3と同様にして、光学積層体C1を得た。
得られた光学積層体のΔabは4.6であり、コントラスト比は259であった。また、光拡散層のヘイズは95.1%であった。
【0132】
[評価]
実施例3および4で得られた光学積層体は、高いコントラスト比を有しており、反射色相にも優れるものであった。比較例2の光学積層体は、コントラストは高いものの反射色相に改善の余地があった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の偏光子は、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイ等の表示装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0134】
10 偏光子
20 位相差層
30 光拡散層
100 光学積層体