(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】発電用エンジンシステム及びマルチコプタ
(51)【国際特許分類】
F02D 41/04 20060101AFI20240917BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240917BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240917BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240917BHJP
F02D 41/12 20060101ALI20240917BHJP
F02P 5/145 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
F02D41/04
B64C27/08
B64C39/02
B64D27/24
F02D41/12
F02P5/145 C
(21)【出願番号】P 2021143262
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶間 弘和
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-101106(JP,A)
【文献】実開平04-093767(JP,U)
【文献】特開2019-203485(JP,A)
【文献】特開昭62-240445(JP,A)
【文献】特開2020-189542(JP,A)
【文献】特開2001-032739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/04
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 27/24
F02D 41/12
F02P 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンへ吸気が流れる吸気通路と、
前記吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータにより開閉動作する吸気量調節弁と、
前記エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記エンジンの運転状態に応じて前記吸気量調節弁を開閉動作させるために前記ステップモータをステップ数に基づき制御するエンジン制御手段と
を備え、発電に使用される発電用エンジンシステムにおいて、
前記エンジンの回転数を検出するための回転数検出手段を更に備え、
前記エンジン制御手段は、前記吸気量調節弁を閉弁させるために前記ステップモータを制御するとき、前記エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、前記エンジンに供給される前記燃料と前記吸気との混合気の空燃比がリーンとなるように前記燃料供給手段を制御するリーン制御を実行し
、
前記エンジン制御手段は、前記回転数検出手段により検出される現在の回転数と前記目標回転数との差が大きくなるほど、前記空燃比がよりリーンとなるように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記エンジンの暖機後は暖機前よりも前記空燃比がよりリーンとなるように前記燃料供給手段を制御する
ことを特徴とする発電用エンジンシステム。
【請求項2】
請求項
1に記載の発電用エンジンシステムにおいて、
前記エンジンに供給される前記燃料と前記吸気との混合気に点火するための点火手段を更に備え、
前記エンジン制御手段は、前記リーン制御を実行すると同時に、前記エンジンにおける前記混合気の点火時期を進角させるように前記点火手段を制御する進角制御を更に実行する
ことを特徴とする発電用エンジンシステム。
【請求項3】
エンジンと、
前記エンジンへ吸気が流れる吸気通路と、
前記吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータにより開閉動作する吸気量調節弁と、
前記エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記エンジンの運転状態に応じて前記吸気量調節弁を開閉動作させるために前記ステップモータをステップ数に基づき制御するエンジン制御手段と
を備え、発電に使用される発電用エンジンシステムにおいて、
前記エンジン制御手段は、前記吸気量調節弁を閉弁させるために前記ステップモータを制御するとき、前記エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、前記エンジンに供給される前記燃料と前記吸気との混合気の空燃比がリーンとなるように前記燃料供給手段を制御するリーン制御を実行し、
前記エンジンに供給される前記燃料と前記吸気との混合気に点火するための点火手段を更に備え、
前記エンジンは、一連の吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程を含むエンジンサイクルをもって動作し、
前記エンジン制御手段は、前記リーン制御の実行が確定した時点で前記エンジンサイクルに対する前記燃料の供給タイミングが既に決定されている場合に、前記エンジンにおける前記混合気の点火時期を遅角させるように前記点火手段を制御する遅角制御を更に実行する
ことを特徴とする発電用エンジンシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の発電用エンジンシステムにおいて
、
前記エンジン制御手段は、前記回転数検出手段により検出される
前記現在の回転数と
前記目標回転数との差が所定の第1基準値以上となる場合は、前記エンジンに対する前記燃料の供給をカットするように前記燃料供給手段を制御する燃料カット制御を更に実行する
ことを特徴とする発電用エンジンシステム。
【請求項5】
エンジンと、
前記エンジンへ吸気が流れる吸気通路と、
前記吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータにより開閉動作する吸気量調節弁と、
前記エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記エンジンの運転状態に応じて前記吸気量調節弁を開閉動作させるために前記ステップモータをステップ数に基づき制御するエンジン制御手段と
を備え、発電に使用される発電用エンジンシステムにおいて、
前記エンジン制御手段は、前記吸気量調節弁を閉弁させるために前記ステップモータを制御するとき、前記エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、前記エンジンに供給される前記燃料と前記吸気との混合気の空燃比がリーンとなるように前記燃料供給手段を制御するリーン制御を実行し、
前記エンジンの回転数を検出するための回転数検出手段を更に備え、
前記エンジン制御手段は、前記回転数検出手段により検出される現在の回転数と前記目標回転数との差が所定の第1基準値以上となる場合は、前記エンジンに対する前記燃料の供給をカットするように前記燃料供給手段を制御する燃料カット制御を更に実行し、
前記エンジン制御手段は、前記回転数検出手段により検出される
前記現在の回転数と
前記目標回転数との差が前記第1基準値以上、かつ、所定の第2基準値以下となる場合は、前記エンジンに対する前記燃料の供給を間欠的にカットするように前記燃料供給手段を制御する間欠燃料カット制御を更に実行する
ことを特徴とする発電用エンジンシステム。
【請求項6】
複数のロータと、前記各ロータを回転駆動するためのモータと、前記モータへ供給する電力を充放電可能に構成されるバッテリとを備え、前記各ロータを前記モータで回転させることにより飛行するマルチコプタにおいて、
請求項1乃至
5のいずれかに記載された発電用エンジンシステムと、
前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と
を備え、
前記発電機は、発電した電力を前記各モータへ供給可能に構成されると共に、前記バッテリへ充電可能に構成される
ことを特徴とするマルチコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、例えば、マルチコプタなどの小型電動移動体に搭載される発電用エンジンシステム及びそれを備えたマルチコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電用エンジンシステムに関する技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される技術が知られている。この技術は、車両に搭載され、車両で使用される電力を発電する発電機を駆動するための内燃機関(エンジン)に係り、エンジンに供給される吸気を調節する吸気弁システムに関する。この吸気システムは、吸気通路に設けられ、ステップモータにより駆動される弁体を備えたポペット式の弁装置(スロットル装置)と、スロットル装置の開度を制御するためにステップモータをステップ数に基づき制御する制御部(ECU)とを備える。すなわち、この特許文献1には、ステップモータを駆動源とするポペット式のスロットル装置を備えた発電用エンジンシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術では、スロットル装置がステップモータを駆動源としていることから、直流モータを駆動源とするスロットル装置と比べ、応答性と分解能が良くなかった。そのため、エンジンの運転に応答遅れが生じるおそれがあった。特に、エンジンの減速又はアイドルへの移行時に、スロットル装置の応答性の遅さから、エンジンが過剰トルクになる傾向があった。ここで、エンジンの減速又はアイドルへの移行時に、この種の過剰トルクを抑制するために、エンジンの点火時期を遅角制御することが考えられる。しかし、点火時期を遅角制御したのでは、エンジンの燃費悪化を招くおそれがあった。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ステップモータを駆動源とする吸気量調節弁を備えた発電用エンジンシステムにおいて、吸気量調節弁を閉弁させるときにその動作に応答遅れがあっても、エンジンの燃費悪化を招くことなくエンジンの過剰トルクを抑制することを可能とした発電用エンジンシステム及びマルチコプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、エンジンと、エンジンへ吸気が流れる吸気通路と、吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータにより開閉動作する吸気量調節弁と、エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段と、エンジンの運転状態に応じて吸気量調節弁を開閉動作させるためにステップモータをステップ数に基づき制御するエンジン制御手段とを備え、発電に使用される発電用エンジンシステムにおいて、前記エンジンの回転数を検出するための回転数検出手段を更に備え、前記エンジン制御手段は、前記吸気量調節弁を閉弁させるために前記ステップモータを制御するとき、前記エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、前記エンジンに供給される前記燃料と前記吸気との混合気の空燃比がリーンとなるように前記燃料供給手段を制御するリーン制御を実行し、前記エンジン制御手段は、前記回転数検出手段により検出される現在の回転数と前記目標回転数との差が大きくなるほど、空燃比がよりリーンとなるように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記エンジンの暖機後は暖機前よりも空燃比がよりリーンとなるように前記燃料供給手段を制御することを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、エンジン制御手段は、吸気量調節弁を閉弁させるためにステップモータを制御するとき、エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、換言すると、吸気量調節弁の開度が目標の開度に到達するまでの間、エンジンに供給される燃料と吸気との混合気の空燃比がリーンとなるようにリーン制御を実行する。従って、空燃比がリーン化した混合気の燃焼エネルギーはストイキの混合気の燃焼エネルギーより低下することになり、吸気量調節弁を閉弁させるときのエンジンの出力が抑制される。また、エンジン制御手段は、回転数検出手段により検出される現在の回転数と前記目標回転数との差が大きくなるほど、換言すると、吸気量調節弁の現在の開度と目標の開度との差が大きくなるほど、空燃比がよりリーンとなるように燃料供給手段を制御する。従って、吸気量調節弁の現在の開度と目標の開度との差の大きさに応じてリーン化した混合気が燃焼に供され、その燃焼エネルギーが低下する。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、エンジンに供給される燃料と吸気との混合気に点火するための点火手段を更に備え、エンジン制御手段は、リーン制御を実行すると同時に、エンジンにおける混合気の点火時期を進角させるように点火手段を制御する進角制御を更に実行することを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、エンジン制御手段は、エンジンでリーン制御を実行すると同時に、混合気の点火時期を進角させるように進角制御を更に実行する。従って、リーン制御によって混合気の燃焼エネルギーが低下すると共に、点火時期の進角制御によって混合気の失火限界が広げられる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、エンジンと、エンジンへ吸気が流れる吸気通路と、吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータにより開閉動作する吸気量調節弁と、エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段と、エンジンの運転状態に応じて吸気量調節弁を開閉動作させるためにステップモータをステップ数に基づき制御するエンジン制御手段とを備え、発電に使用される発電用エンジンシステムにおいて、エンジン制御手段は、吸気量調節弁を閉弁させるためにステップモータを制御するとき、エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、エンジンに供給される燃料と吸気との混合気の空燃比がリーンとなるように燃料供給手段を制御するリーン制御を実行し、エンジンに供給される燃料と吸気との混合気に点火するための点火手段を更に備え、エンジンは、一連の吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程を含むエンジンサイクルをもって動作し、エンジン制御手段は、リーン制御の実行が確定した時点でエンジンサイクルに対する燃料の供給タイミングが既に決定されている場合に、エンジンにおける混合気の点火時期を遅角させるように点火手段を制御する遅角制御を更に実行することを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、エンジン制御手段は、吸気量調節弁を閉弁させるためにステップモータを制御するとき、エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、換言すると、吸気量調節弁の開度が目標の開度に到達するまでの間、エンジンに供給される燃料と吸気との混合気の空燃比がリーンとなるようにリーン制御を実行する。従って、空燃比がリーン化した混合気の燃焼エネルギーはストイキの混合気の燃焼エネルギーより低下することになり、吸気量調節弁を閉弁させるときのエンジンの出力が抑制される。また、エンジン制御手段は、リーン制御の実行が確定した時点でエンジンサイクルに対する燃料の供給タイミングが既に決定されている場合に、エンジンにおける混合気の点火時期を遅角させる遅角制御を更に実行する。従って、空燃比のリーン制御がタイミング的に間に合わなかった場合には、点火時期の遅角制御によって混合気の燃焼エネルギーが低下する。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、エンジン制御手段は、回転数検出手段により検出される現在の回転数と所定の目標回転数との差が所定の第1基準値以上となる場合は、エンジンに対する燃料の供給をカットするように燃料供給手段を制御する燃料カット制御を更に実行することを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、エンジン制御手段は、エンジンの現在の回転数と目標回転数との差が所定の第1基準値以上となる場合は、エンジンに対する燃料の供給をカットする燃料カット制御を更に実行する。従って、現在の回転数と目標回転数との差が所定の第1基準値以上となり、空燃比のリーン制御により対応できない場合には、エンジンに対する燃料の供給をカットすることでエンジンの出力が空燃比のリーン制御よりも大きく抑制される。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、エンジンと、エンジンへ吸気が流れる吸気通路と、吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータにより開閉動作する吸気量調節弁と、エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段と、エンジンの運転状態に応じて吸気量調節弁を開閉動作させるためにステップモータをステップ数に基づき制御するエンジン制御手段とを備え、発電に使用される発電用エンジンシステムにおいて、エンジン制御手段は、吸気量調節弁を閉弁させるためにステップモータを制御するとき、エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、エンジンに供給される燃料と吸気との混合気の空燃比がリーンとなるように燃料供給手段を制御するリーン制御を実行し、エンジンの回転数を検出するための回転数検出手段を更に備え、エンジン制御手段は、回転数検出手段により検出される現在の回転数と目標回転数との差が所定の第1基準値以上となる場合は、エンジンに対する燃料の供給をカットするように燃料供給手段を制御する燃料カット制御を更に実行し、エンジン制御手段は、回転数検出手段により検出される現在の回転数と目標回転数との差が第1基準値以上、かつ、所定の第2基準値以下となる場合は、エンジンに対する燃料の供給を間欠的にカットするように燃料供給手段を制御する間欠燃料カット制御を更に実行することを趣旨とする。
【0017】
上記技術の構成によれば、エンジン制御手段は、吸気量調節弁を閉弁させるためにステップモータを制御するとき、エンジンの回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、換言すると、吸気量調節弁の開度が目標の開度に到達するまでの間、エンジンに供給される燃料と吸気との混合気の空燃比がリーンとなるようにリーン制御を実行する。従って、空燃比がリーン化した混合気の燃焼エネルギーはストイキの混合気の燃焼エネルギーより低下することになり、吸気量調節弁を閉弁させるときのエンジンの出力が抑制される。また、エンジン制御手段は、エンジンの現在の回転数と目標回転数との差が所定の第1基準値以上となる場合は、エンジンに対する燃料の供給をカットする燃料カット制御を更に実行する。従って、現在の回転数と目標回転数との差が所定の第1基準値以上となり、空燃比のリーン制御により対応できない場合には、エンジンに対する燃料の供給をカットすることでエンジンの出力が空燃比のリーン制御よりも大きく抑制される。エンジン制御手段は、エンジンの現在の回転数と目標回転数との差が第1基準値以上、かつ、所定の第2基準値以上下となる場合は、エンジンに対する燃料の供給を間欠的にカットする間欠燃料カット制御を更に実行する。従って、現在の回転数と目標回転数との差が第1基準値以上、かつ、第2基準値以下となり、空燃比のリーン制御ではエンジンの出力抑制量が足りず、燃料カットでは出力抑制量が大き過ぎる場合には、エンジンに対する燃料の供給を間欠的にカットすることで混合気の燃焼が間欠的に中断され、程よいエンジンの出力抑制が可能となる。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、複数のロータと、各ロータを回転駆動するためのモータと、モータへ供給する電力を充放電可能に構成されるバッテリとを備え、各ロータをモータで回転させることにより飛行するマルチコプタにおいて、請求項1乃至5のいずれかに記載された発電用エンジンシステムと、エンジンにより駆動されて発電する発電機とを備え、発電機は、発電した電力を各モータへ供給可能に構成されると共に、バッテリへ充電可能に構成されることを趣旨とする。
【0019】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の作用に加え、発電用エンジンシステムのエンジンにより発電機が駆動されて発電し、その発電した電力がマルチコプタを飛行させるために各モータへ供給される。また、その発電した電力がバッテリへ充電されて充電量が補充される。従って、エンジンが停止して発電機を駆動できなくなっても、バッテリに充電された電力を各モータへ供給することで、マルチコプタの飛行が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の技術によれば、ステップモータを駆動源とする吸気量調節弁を備えた発電用エンジンシステムにおいて、吸気量調節弁を閉弁させるときにその動作に応答遅れがあっても、エンジンの燃費悪化を招くことなくエンジンの過剰トルクを抑制することができ、エンジンでの燃料消費量を抑制することができる。また、吸気量調節弁の応答遅れの程度に合わせてエンジンの過剰トルクを抑制することができ、エンジンでの燃料消費量を抑制することができる。
【0022】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、空燃比のリーン化限界を拡大することができ、エンジンの過剰トルクを更に抑制することができ、エンジンでの燃料消費量を更に低減することができる。
【0023】
請求項3に記載の技術によれば、ステップモータを駆動源とする吸気量調節弁を備えた発電用エンジンシステムにおいて、吸気量調節弁を閉弁させるときにその動作に応答遅れがあっても、エンジンの燃費悪化を招くことなくエンジンの過剰トルクを抑制することができ、エンジンでの燃料消費量を抑制することができる。また、空燃比のリーン制御がタイミング的に間に合わなかった場合でも、エンジンの過剰トルクを抑制することができる。
【0024】
請求項4に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、エンジンの過剰トルクが空燃比のリーン化により対応できる出力抑制レベルを超えている場合でも、エンジンの過剰トルクを抑制することができ、エンジンでの燃料消費量を抑制することができる。
【0025】
請求項5に記載の技術によれば、ステップモータを駆動源とする吸気量調節弁を備えた発電用エンジンシステムにおいて、吸気量調節弁を閉弁させるときにその動作に応答遅れがあっても、エンジンの燃費悪化を招くことなくエンジンの過剰トルクを抑制することができ、エンジンでの燃料消費量を抑制することができる。また、エンジンの過剰トルクが空燃比のリーン化により対応できる出力抑制レベルを超えている場合でも、エンジンの過剰トルクを抑制することができ、エンジンでの燃料消費量を抑制することができる。エンジンの過剰トルクが空燃比のリーン化により対応できる出力抑制レベルを超えている場合でも、エンジンの過剰トルクを過度な抑制を回避しながら程よく抑制することができ、エンストを回避しながらエンジンでの燃料消費量を抑制することができる。
【0026】
請求項6に記載の技術によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の効果に加え、発電機で発電した電力をバッテリに充電補充できる分だけマルチコプタの航続距離や滞空時間を延ばすことができる。また、エンジンでの燃料消費量を抑制できることから、その分だけマルチコプタの航続距離及び滞空時間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係り、マルチコプタの外観を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係り、マルチコプタの構成を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態に係り、発電用エンジンシステムとその関連機器の一部を示す概略構成図。
【
図4】第1実施形態に係り、第1のエンジン制御の内容を示すフローチャート。
【
図5】第1実施形態に係り、目標回転数差に応じたリーン係数を算出するために参照されるリーン係数マップ。
【
図6】第1実施形態に係り、空燃比に対するエンジンのトルクの関係を示すグラフ。
【
図7】第1実施形態に係り、空燃比に対する燃料消費量の関係を示すグラフ。
【
図8】第1実施形態に係り、空燃比に対する点火時期の関係を示すグラフ。
【
図9】第2実施形態に係り、第2のエンジン制御の内容を示すフローチャート。
【
図10】第3実施形態に係り、第3のエンジン制御の内容を示すフローチャート。
【
図11】第3実施形態に係り、目標回転数差に応じたリーン係数進角量を算出するために参照されるリーン進角量マップ。
【
図12】第4実施形態に係り、第4のエンジン制御の内容を示すフローチャート。
【
図13】第5実施形態に係り、第5のエンジン制御の内容を示すフローチャート。
【
図14】第5実施形態に係り、目標回転数差に応じた遅角量を算出するために参照される遅角量マップ。
【
図15】第5実施形態に係り、第5のエンジン制御に関する各種パラメータの変化を示すタイムチャート。
【
図16】第6実施形態に係り、第6のエンジン制御の内容を示すフローチャート。
【
図17】第6実施形態に係り、目標回転数差に対するエンジンの出力の関係を示すグラフ。
【
図18】第6実施形態に係り、目標回転数差に対する燃料消費量の関係を示すグラフ。
【
図19】第6実施形態に係り、目標回転数差に対する燃料噴射補正係数の関係を示すグラフ。
【
図20】第6実施形態に係り、目標回転数差に対する点火時期補正量の関係を示すグラフ。
【
図21】第7実施形態に係り、第7のエンジン制御の内容を示すフローチャート。
【
図22】第7実施形態に係り、目標回転数差に応じた間引き回転数を算出するために参照される間引き回転数マップ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発電用エンジンシステム及びマルチコプタを具体化したいくつかの実施形態について説明する。
【0029】
<第1実施形態>
【0030】
先ず、第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
[マルチコプタの構成等について]
図1に、この実施形態のマルチコプタ1の外観を斜視図により示す。
図2に、マルチコプタ1の構成をブロック図により示す。以下に、マルチコプタ1の構成等について、
図1、
図2を参照して詳細に説明する。
【0032】
マルチコプタは、ヘリコプターの一種であり、3つ以上のロータを搭載した回転翼機のことである。この実施形態のマルチコプタ1は、機体11と、エンジン発電ユニット12とを備える。機体11は、先端が二股に分かれた複数(この実施形態では4本)のアーム21と、複数のアーム21を放射状に片持ち支持するアームベース22と、アームベース22を支持する機体ベース23と、各アーム21の先端に設けられた複数(この実施形態では8個)のモータ24と、各モータ24により回転駆動される複数(この実施形態では8個)のロータ25とを含む。このマルチコプタ1は、複数のロータ25を対応する各モータ24により同時に回転させることで飛行するようになっている。
【0033】
アームベース22は、機体ベース23の上に設けられる。アームベース22の中には、バッテリ31、燃料タンク32、メインコントローラ33、フライトコントローラ34、パワーコントロールユニット35、エレクトリックスピードコントローラ36などが設けられる。また、アームベース22には、外部を撮像または録画する撮像部37が設けられる。撮像部37は、カメラ及び録画メモリ等を含む。
【0034】
機体ベース23の下側には、エンジン発電ユニット12が懸架される。エンジン発電ユニット12は、後述する発電用エンジンシステム15(エンジン41を含む)と、エンジン41により駆動されて発電する発電機(ジェネレータ)42とを含む。
【0035】
各モータ24は、エレクトリックスピードコントローラ36(インバータ(不図示)を含む)とパワーコントロールユニット35を介してジェネレータ42に電気的に接続される。この接続により、ジェネレータ42で発電された電力とバッテリ31から放電される電力が、パワーコントロールユニット35とエレクトリックスピードコントローラ36を介してモータ24に供給されるようになっている。
【0036】
バッテリ31は、電力を充放電可能な二次電池により構成される。バッテリ31は、パワーコントロールユニット35を介してジェネレータ42に電気的に接続され、ジェネレータ42で発電された電力を充電するようになっている。バッテリ31は、パワーコントロールユニット35とエレクトリックスピードコントローラ36を介して各モータ24に電気的に接続され、バッテリ31から放電する電力を各モータ24に供給するようになっている。バッテリ31には、バッテリ31の電流、電圧、温度をそれぞれ検出する各種センサ(図示略)が設けられ、これらセンサがその検出結果に関する電気信号をメインコントローラ33へ送るようになっている。
【0037】
燃料タンク32には、燃料(例えば、ガソリン)が貯留される。この燃料は、エンジン41を駆動するために使用される。燃料タンク32に設けられたレベルセンサ(図示略)は、燃料残量に関する電気信号をメインコントローラ33へ送るようになっている。
【0038】
メインコントローラ33は、小型のコンピュータとして構成され、マルチコプタ1に関する全ての動作を制御するようになっている。メインコントローラ33は、風向取得部45、回転制御部46、風力取得部47、機械制御部48及びエンジン制御部50を備える。ここで、例えば、エンジン制御部50は、ジェネレータ42での発電を制御するためにエンジン41の動作を制御するようになっている。
【0039】
フライトコントローラ34は、マルチコプタ1の飛行を制御する装置である。このフライトコントローラ34は、マルチコプタ1の飛行に関する推力をメインコントローラ33とエレクトリックスピードコントローラ36へ指令する電気信号を送る一方で、メインコントローラ33からバッテリ31の充電状態に関する電気信号を受け取るようになっている。フライトコントローラ34は、後述するリモコン30から操縦者の操作指令に関する電気信号を受け取り、後述する各種センサ28から検出結果に関する電気信号を受け取るようになっている。
【0040】
パワーコントロールユニット35は、各モータ24へ供給される電力を制御する装置である。このパワーコントロールユニット35は、ジェネレータ42で発電された電力を受給したり、バッテリ31との間で電力の供給及び受給を行ったり、エレクトリックスピードコントローラ36へ電力を供給したりするようになっている。パワーコントロールユニット35は、メインコントローラ33から充放電の切替指令に関する電気信号を受け取るようになっている。
【0041】
エレクトリックスピードコントローラ36は、各モータ24の回転数を制御する装置である。このエレクトリックスピードコントローラ36は、パワーコントロールユニット35を介して供給される電力を駆動電力として各モータ24に供給するようになっている。エレクトリックスピードコントローラ36は、フライトコントローラ34から推力指令に関する電気信号を受け取るようになっている。
【0042】
エンジン発電ユニット12は、エンジン41を含む発電用エンジンシステム15の一部及びジェネレータ42などを備える。エンジン41は、ジェネレータ42の駆動源であって、この実施形態では、レシプロタイプの小型ガソリンエンジンより構成される。すなわち、エンジン41は、各モータ24又はバッテリ31へ供給される電力をジェネレータ42で発電するために、ジェネレータ42を駆動するようになっている。また、後述する発電用エンジンシステム15を構成する各種部品57,60,62は、メインコントローラ33のエンジン制御部50から、発電を目的としたエンジン制御指令に関する電気信号を受け取るようになっている。
【0043】
この実施形態で、マルチコプタ1は、各種センサ28とリモコン30を備える。各種センサ28は、マルチコプタ1の高度、姿勢、緯度や経度、加速度及び障害物などをそれぞれ検出するためのセンサを含む。リモコン30は、マルチコプタ1の操縦者が持つ操作器であり、操縦者により操作されるジョイスティックからの操作に関する電気信号をマルチコプタ1へ送信したり、マルチコプタ1からの動作に関する電気信号を受信したりする送受信機などの機器を含む。
【0044】
この本実施形態のマルチコプタ1では、各モータ24とバッテリ31とエンジン41によりシリーズ式のハイブリッドシステムが構成される。すなわち、このマルチコプタ1では、エンジン41がジェネレータ42による発電のみに使用され、各モータ24が各ロータ25を回転駆動するために使用され、バッテリ31がジェネレータ42で発電された電力を充放電するために使用される。このようにして、マルチコプタ1は、エンジン41の動力によりジェネレータ42を動作させて発電し、発電した電力で各モータ24を動作させて各ロータ25を回転させることで飛行するようになっている。また、このマルチコプタ1は、エンジン41の動力によってジェネレータ42で発電された電力のうち、各モータ24へ供給されて余った余剰電力を、バッテリ31に一旦蓄え、必要に応じてバッテリ31から各モータ24へ供給するようになっている。
【0045】
上記のように構成したマルチコプタ1は、各モータ24に電力を供給し、複数のロータ25をそれぞれ回転させることで各種飛行を実現するようになっている。すなわち、マルチコプタ1は、各ロータ25の回転数を制御することで、各ロータ25により発生する揚力をマルチコプタ1に作用する重力とバランスさせてホバリング飛行を実現する。マルチコプタ1は、各ロータ25により発生する揚力をマルチコプタ1に作用する重力よりも大きくすることで、上昇飛行を実現し、各ロータ25により発生する揚力をマルチコプタ1に作用する重力よりも小さくすることで、下降飛行を実現する。また、マルチコプタ1は、各ロータ25の回転数を制御し、各ロータ25により発生する揚力に不均衡を生じさせることで前進・後進・左右移動飛行を実現する。更に、マルチコプタ1は、相対回転する各ロータ25の回転数に差を設けることで、旋回(回転)飛行を実現する。
【0046】
ここで、メインコントローラ33は、パワーコントロールユニット35へ充放電の切替指令に関する電気信号を送ることで、ジェネレータ42で発電された電力の各モータ24への供給とバッテリ31への充電を制御すると共に、バッテリ31に充電された電力の各モータ24への放電を制御するようになっている。
【0047】
[発電用エンジンシステムについて]
次に、発電用エンジンシステム15について説明する。
図3に、この実施形態の発電用エンジンシステム15とその関連機器の一部を概略構成図により示す。以下に、発電用エンジンシステム15の構成について、
図3を参照して詳細に説明する。
【0048】
この発電用エンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)15は、単気筒で構成されるエンジン41を備える。エンジン41は、4サイクルのレシプロエンジンであり、燃焼室を含む1つの気筒52及びクランクシャフト53の他、周知の構成要素を含む。エンジン41には、気筒52に吸気を導入するためにエンジン41へ吸気が流れる吸気通路54と、気筒52から排気を導出するための排気通路55とが設けられる。吸気通路54の入口には、エアクリーナ56が設けられる。吸気通路54の途中には、サージタンク54aが設けられ、そのサージタンク54aの上流側にはスロットル装置57が設けられる。スロットル装置57は、吸気通路54を流れる吸気量を調節するために開閉動作する。スロットル装置57は、ポペット式弁より構成され、弁座に対し往復駆動する弁体(図示略)と、その弁体を開度可変に駆動するためのステップモータ58とを含む。この実施形態のエンジンシステム15には、弁体の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサが設けられていない。スロットル装置57は、弁体で流路を開閉することにより、吸気通路54を流れる吸気量を調節するようになっている。スロットル装置57は、この開示技術における吸気量調節弁の一例に相当する。一方、排気通路55には、排気を浄化するための触媒59が設けられる。
【0049】
吸気通路54には、同通路54に燃料を噴射するための1つのインジェクタ60が設けられる。インジェクタ60は、前述した燃料タンク32から供給される燃料(ガソリン)を噴射するように構成される。燃料タンク32及びインジェクタ60は、この開示技術において、エンジン41に燃料を供給するための燃料供給手段の一例を構成する。この実施形態のエンジン41は、一連の吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程を含むエンジンサイクルをもって動作する。吸気通路54では、エンジンサイクルの吸気行程で導入された吸気と、インジェクタ60から吸気通路54に噴射された燃料とにより可燃性の混合気が形成される。
【0050】
エンジン41には、気筒52に対応して1つの点火プラグ61とイグニションコイル62が設けられる。点火プラグ61は、イグニションコイル62から出力される点火信号を受けてスパーク動作する。両部品61,62は、この開示技術において、エンジン41の気筒52に供給される燃料と吸気との混合気に点火するための点火手段の一例を構成する。気筒52において、混合気は、エンジンサイクルの圧縮行程で点火プラグ61のスパーク動作により爆発・燃焼し、その爆発行程が経過する。燃焼後の排気は、排気行程で気筒52から排気通路55へ排出される。排気は、触媒59を流れて浄化され、外部へ排出される。これら一連のエンジンサイクルを720℃Aのクランク角をもって周期的に繰り返すことで、エンジン41のクランクシャフト53が回転し、エンジン41に出力が得られる。
【0051】
エンジン41に対応して設けられる各種センサ等71,72,73は、エンジン41の運転状態を検出するための手段を構成する。エンジン41に設けられたエンジン温センサ71は、エンジン41のシリンダブロックの温度をエンジン温度THEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン41に設けられた回転数センサ72は、クランクシャフト53の回転数をエンジン回転数NEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。サージタンク54aに設けられた吸気圧センサ73は、サージタンク54a(吸気通路54)における吸気圧力PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。ここで、各種センサ等71~73のうち、回転数センサ72は、この開示技術において、エンジン41の回転数を検出するための回転数検出手段の一例に相当する。
【0052】
このエンジンシステム15は、エンジン41の運転を制御するための前述したエンジン制御部50を含む。エンジン制御部50には、各種センサ等71~73がそれぞれ接続される。また、エンジン制御部50には、スロットル装置57のステップモータ58、各インジェクタ60及びイグニションコイル62がそれぞれ接続される。エンジン制御部50は、この開示技術において、エンジン41の運転状態に応じてスロットル装置57を開閉動作させるためにステップモータ58をステップ数に基づき制御するエンジン制御手段の一例に相当する。周知のようにエンジン制御部50は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を含む。
【0053】
この実施形態で、エンジン制御部50は、エンジン41を運転するために、各種センサ等71~73からの電気信号に基いてスロットル装置57(ステップモータ58)、各インジェクタ60及びイグニションコイル62をそれぞれ制御するようになっている。
【0054】
ここで、この実施形態のスロットル装置57は、弁体を開閉駆動するためにステップモータ58が使用されるので、その開閉の応答性が遅く、吸気流量の分解能が低く、その分だけエンジン41の出力を抑制又は低減させる時間が長くなり、燃料消費が多くなる。そこで、このエンジン制御部50は、スロットル装置57の応答性等の課題に対処するために、第1のエンジン制御を実行するようになっている。
【0055】
[第1のエンジン制御について]
次に、エンジン制御部50が実行する第1のエンジン制御について説明する。
図4に、第1のエンジン制御の内容をフローチャートにより示す。
【0056】
処理がこのルーチンへ移行すると、エンジン制御部50は、ステップ100で、エンジン41へのアイドル要求(エンジン41をアイドル運転させる要求)が有るか否かを判断する。エンジン制御部50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ110へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ100へ戻す。
【0057】
ステップ110では、エンジン制御部50は、回転数センサ72から現在のエンジン回転数NEを取得する。
【0058】
次に、ステップ120で、エンジン制御部50は、目標エンジン回転数TNEを取得する。エンジン制御部50は、例えば、バッテリ31の充電残量に応じて目標エンジン回転数TNEを算出し、その算出結果を取得することができる。
【0059】
次に、ステップ130で、エンジン制御部50は、現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの差を目標回転数差ΔNEとして算出する。この目標回転数差ΔNEは、スロットル装置57の現在の開度と目標の開度との差、延いてはステップモータ58の現在のステップ数と目標ステップ数との差に相当する。
【0060】
次に、ステップ140で、エンジン制御部50は、燃料の噴射量TAUを取得する。エンジン制御部50は、例えば、エンジン温度THE、エンジン回転数NE及び吸気圧力PMに基づき噴射量TAUを算出し、その算出結果を取得することができる。
【0061】
次に、ステップ150で、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが所定の第1の基準値ΔN1以上か否かを判断する。第1の基準値ΔN1は、例えば「100rpm」である。エンジン制御部50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ160へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を200へ移行する。
【0062】
ステップ200では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが所定の第5の基準値ΔN5よりも小さいか否かを判断する。第5の基準値ΔN5は、例えば「-200rpm」である。エンジン制御部50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ210へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を230へ移行する。
【0063】
ステップ210では、エンジン制御部50は、スロットル装置57をステップモータ58で1stepだけ開弁させた後、処理をステップ230へ移行する。このステップ210では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが、すなわち、現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの乖離が第1の基準値ΔN1より小さい範囲(不感帯)であることから、エンジン回転数NEを上げるためにスロットル装置57を1stepだけ開弁させるのである。
【0064】
一方、ステップ160では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが所定の第2の基準値ΔN2以下か否かを判断する。第2の基準値ΔN2は、例えば「500rpm」である。エンジン制御部50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ170へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を220へ移行する。
【0065】
ステップ220では、エンジン制御部50は、スロットル装置57をステップモータ58で1stepだけ閉弁させた後、処理をステップ230へ移行する。このステップ230では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが、すなわち、現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの乖離が第2の基準値ΔN2より大きい場合に、エンジン回転数NEを下げるためにスロットル装置57を1stepだけ閉弁するのである。
【0066】
そして、ステップ200、ステップ210又はステップ230から移行してステップ230では、エンジン制御部50は、後述するリーン係数Krを「1.0」に設定した後、処理をステップ180へ移行する。
【0067】
一方、ステップ160から移行してステップ170では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEに応じた空燃比のリーン係数Krを算出する。エンジン制御部50は、例えば、
図5に示すリーン係数マップを参照することにより、第2の基準値ΔN2以下の目標回転数差ΔNEに応じたリーン係数Krを算出することができる。
図5のマップにおいて、実線は、エンジン41の冷間時のデータを示し、破線は、エンジン41の暖機後(例えば、エンジン温度THEが「60℃」以上となる場合)のデータを示す。このマップでは、目標回転数差ΔNEが「0」より小さい負の値となる場合は、リーン係数Krが「1.0」となり、目標回転数差ΔNEが「0」より大きくなるほど、リーン係数Krが「1.0」より小さくなるように設定される。ここで、エンジン回転数NEは、スロットル装置57の開度、つまりはステップモータ58のステップ数の大きさを反映している。従って、このマップでは、現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの差が大きくなるほど、空燃比がよりリーンとなるように、リーン係数Krが設定されている。
【0068】
次に、ステップ180で、エンジン制御部50は、噴射量TAUにリーン係数Krを乗算することで最終噴射量FTAUを求める。
【0069】
そして、ステップ190で、エンジン制御部50は、インジェクタ60を最終噴射量FTAUで制御する。すなわち、エンジン制御部50は、噴射量TAUをリーン係数Krで補正した最終噴射量FTAUに基づきインジェクタ60を制御することで、エンジン41の空燃比をリーンにするためのリーン制御を実行する。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ100へ戻す。
【0070】
上記した第1のエンジン制御によれば、エンジン制御部50は、スロットル装置57を閉弁させるためにステップモータ58を制御するとき、エンジン41の回転数が所定の目標回転数に到達するまでの間、換言すると、スロットル装置57の開度が目標開度に到達するまでの間、エンジン41に供給される混合気の空燃比がリーンとなるようにインジェクタ60を制御するリーン制御を実行するようになっている。
【0071】
また、第1のエンジン制御によれば、エンジン制御部50は、回転数センサ72により検出される現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの差が大きくなるほど、空燃比がよりリーンとなるようにインジェクタ60を制御するようになっている。
【0072】
[発電用エンジンシステム及びマルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の発電用エンジンシステム15の構成によれば、エンジン制御部50は、スロットル装置57を閉弁させるためにステップモータ58を制御するとき、エンジン回転数NEが所定の目標エンジン回転数TNEに到達するまでの間、換言すると、スロットル装置57の開度が目標の開度に到達するまでの間、エンジン41に供給される燃料と吸気との混合気の空燃比がリーンとなるようにリーン制御を実行する。従って、空燃比がリーン化した混合気の燃焼エネルギーはストイキの混合気の燃焼エネルギーより低下することになり、スロットル装置57を閉弁させるときのエンジン41の出力が抑制される。このため、ステップモータ58を駆動源とするスロットル装置57を備えた発電用エンジンシステム15において、スロットル装置57を閉弁させるときにその動作に応答遅れがあっても、エンジン41の燃費悪化を招くことなくエンジン41の過剰トルクを抑制することができる。この結果、エンジン41での燃料消費量を抑制することができる。
【0073】
また、この実施形態の発電用エンジンシステム15の構成によれば、エンジン制御部50は、回転数センサ72により検出される現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの差が大きくなるほど、換言すると、スロットル装置57の現在の開度と目標の開度との差が大きくなるほど、空燃比がよりリーンとなるようにインジェクタ60を制御する。従って、スロットル装置57の現在の開度と目標の開度との差の大きさに応じてリーン化した混合気が燃焼に供され、その燃焼エネルギーが低下する。このため、スロットル装置57の応答遅れの程度に合わせてエンジン41の過剰トルクを抑制することができる。この結果、エンジン41での燃料消費量を更に抑制することができる。
【0074】
図6~
図8には、空燃比に対するエンジン41のトルクの関係(
図6)、空燃比に対する燃料消費量の関係(
図7)及び空燃比に対する点火時期の関係(
図8)をそれぞれグラフに示す。
図6~
図8において、破線は第1実施形態(E1)の場合を示し、バツ印が失火点MFを示す。
図6、
図7に破線で示すように、第1実施形態(E1)では、空燃比が失火点MFへ向けてリーン化するほど、エンジン41のトルクが低下し、燃料消費量が低減することがわかる。
【0075】
更に、この実施形態のマルチコプタ1の構成によれば、発電用エンジンシステム15のエンジン41によりジェネレータ42が駆動されて発電し、その発電した電力がマルチコプタ1を飛行させるために各モータ24へ供給される。また、その発電した電力がバッテリ31へ充電されて充電量が補充される。従って、エンジン41が停止してジェネレータ42を駆動できなくなっても、バッテリ31に充電された電力を各モータ24へ供給することで、マルチコプタ1の飛行が可能となる。このため、ジェネレータ42で発電した電力をバッテリ31に充電補充できる分だけマルチコプタ1の航続距離及び滞空時間を延ばすことができる。また、エンジン41での燃料消費量を抑制できることから、その分だけマルチコプタ1の航続距離及び滞空時間を延ばすことができる。
【0076】
<第2実施形態>
【0077】
次に、第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0078】
この実施形態では、第2のエンジン制御の点で第1実施形態の第1のエンジン制御と構成が異なる。
【0079】
[第2のエンジン制御について]
次に、エンジン制御部50が実行する第2のエンジン制御について説明する。
図9に、第2のエンジン制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートでは、ステップ170の代わりにステップ175が設けられ、ステップ175とステップ180との間にステップ240が設けられ、ステップ220の後にステップ230の代わりにステップ250とステップ260が設けられる点で第1実施形態の
図4に示すフローチャート(第1のエンジン制御)と構成が異なる。
【0080】
処理がこのルーチンへ移行すると、エンジン制御部50は、ステップ100~150の処理を実行し、ステップ150の判断結果が肯定となる場合に、ステップ160の処理を実行する。そして、ステップ160の判断結果が肯定となる場合は、ステップ175にて、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEに応じた空燃比の第1リーン係数Kr1を算出する。エンジン制御部50は、例えば、
図5に示すリーン係数マップに準ずるマップを参照することにより、第2の基準値ΔN2以下の目標回転数差ΔNEに応じた第1リーン係数Kr1を算出することができる。
【0081】
次に、ステップ240で、エンジン制御部50は、第1リーン係数Kr1をリーン係数Krとして設定した後、処理をステップ180へ移行する。
【0082】
一方、ステップ160の判断結果が否定となる場合は、ステップ220の処理を実行すると処理をステップ250へ移行する。
【0083】
そして、ステップ250では、エンジン制御部50は、第2の基準値ΔN2より大きい目標回転数差ΔNEに応じた空燃比の第2リーン係数Kr2を算出する。
【0084】
次に、ステップ260で、エンジン制御部50は、第2リーン係数Kr2をリーン係数Krとして設定した後、処理をステップ180へ移行する。
【0085】
従って、上記した第2のエンジン制御によれば、エンジン制御部50は、第1のエンジン制御と異なり、ステップ160で、目標回転数差ΔNEが第2の基準値ΔN2より大きくなってスロットル装置57を1stepだけ閉弁した場合は、その目標回転数差ΔNEに応じたリーン係数Krを求め、そのリーン係数Krを最終噴射量FTAUの算出に反映させて、インジェクタ60からの燃料噴射量に反映させるようになっている。
【0086】
[発電用エンジンシステム及びマルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、スロットル装置57を1stepだけ閉弁した場合は、その分だけ目標回転数差ΔNEが減少することになる。従って、エンジン制御部50は、減少した目標回転数差ΔNEに応じたリーン係数Krを求め、そのリーン係数Krを最終噴射量FTAUの算出に反映させる。このため、エンジン41の空燃比をスロットル装置57の開度減少に合わせてリーン化することができる。この結果、エンジン41の過剰トルクをより好適に抑制することができ、エンジン41での燃料消費量をより好適に抑制することができる。
【0087】
<第3実施形態>
【0088】
次に、第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0089】
この実施形態では、第3のエンジン制御の点で前記各実施形態の第1及び第2のエンジン制御と構成が異なる。
【0090】
[第3のエンジン制御について]
次に、エンジン制御部50が実行する第3のエンジン制御について説明する。
図10に、第3のエンジン制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートでは、ステップ130とステップ140との間にステップ300が設けられ、ステップ190の後にステップ310~ステップ330が設けられ、ステップ220とステップ330との間に、ステップ230の代わりにステップ340~ステップ360が設けられる点で第1実施形態の
図4に示すフローチャート(第1のエンジン制御)と構成が異なる。
【0091】
処理がこのルーチンへ移行すると、エンジン制御部50は、ステップ100~ステップ130の処理を実行した後、ステップ300で、混合気を点火させる基準点火時期AOPを取得する。エンジン制御部50は、例えば、エンジン温度THE、エンジン回転数NE及び吸気圧力PMに基づき基準点火時期AOPを算出し、その算出結果を取得することができる。
【0092】
その後、エンジン制御部50は、ステップ140~ステップ160の処理を実行し、ステップ160の判断結果が肯定となる場合は、ステップ170~ステップ190の処理を実行した後、ステップ310へ移行する。そして、ステップ310では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEに応じた点火時期のリーン進角量Kaを算出する。エンジン制御部50は、例えば、
図11に示すリーン進角量マップを参照することにより、目標回転数差ΔNEに応じたリーン進角量Kaを算出することができる。
図11のマップにおいて、実線は、エンジン41の冷間時のデータを示し、破線は、エンジン41の暖機後(例えば、エンジン温度THEが「60℃」以上となる場合)のデータを示す。このマップでは、目標回転数差ΔNEが「0」より小さい負の値となる場合は、リーン進角量Kaが「0」となり、目標回転数差ΔNEが「0」より大きくなるほど、リーン進角量Kaが「0」より大きくなるように設定される。このマップでも、現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの差が大きくなるほど、エンジン41における混合気の点火時期の進角量が多くなるように、リーン進角量Kaが設定されている。
【0093】
次に、ステップ320で、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPにリーン進角量Kaを加算することで最終点火時期FAOPを求める。
【0094】
そして、ステップ330で、エンジン制御部50は、点火プラグ61を最終点火時期FAOPで制御する。すなわち、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPをリーン進角量Kaで補正した最終点火時期FAOPに基づき点火プラグ61を制御することで、エンジン41の点火時期を進角させるための点火時期の進角制御を実行する。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ100へ戻す。
【0095】
また、ステップ200、ステップ210又はステップ220から移行してステップ340では、エンジン制御部50は、噴射量TAUを最終噴射量FTAUとして設定する。
【0096】
次に、ステップ350で、エンジン制御部50は、インジェクタ60を最終噴射量FTAUで制御する。
【0097】
次に、ステップ360で、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPを最終点火時期FAOPとして設定した後、処理をステップ330へ移行する。
【0098】
上記した第3のエンジン制御では、エンジン制御部50は、第1のエンジン制御の内容に加え、エンジン41でリーン制御を実行すると同時に、混合気の点火時期を進角させるように点火プラグ61を制御する進角制御を更に実行するようになっている。このように空燃比のリーン制御に加え点火時期の進角制御を実行するのは、リーン空燃比ほど要求点火時期が進角側にずれるので、点火時期を進角させることでエンジン41でリーン空燃比による運転を可能にするためである。点火時期を進角するのは、進角しないと、リーン化による失火限界が狭くなり、リーン化によるエンジン41の出力抑制可能な範囲が狭くなってしまうからである。
【0099】
[発電用エンジンシステム及びマルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の発電用エンジンシステム15の構成によれば、第1実施形態と異なり次のような作用及び効果が得られる。すなわち、エンジン制御部50は、リーン制御を実行すると同時に、エンジン41における混合気の点火時期を進角させるように進角制御を更に実行する。従って、リーン制御によって混合気の燃焼エネルギーが低下すると共に、点火時期の進角制御によって混合気の失火限界が広げられる。このため、この実施形態では、第1実施形態と比べ、空燃比のリーン化限界を拡大することができ、エンジン41の過剰トルクを更に抑制することができ、エンジン41での燃料消費量も更に低減することができる。
【0100】
図6~
図8において、実線は第3実施形態(E3)を示す。
図6~
図8に示すように、第3実施形態(E3)では、空燃比をリーン化させると共に、点火時期を進角させることで、第1実施形態(E1)に比べ、リーン化による失火点MFの限界が拡大され、燃焼を改善できることがわかる。更に、第1実施形態(E1)に比べ、エンジン41のトルク(出力)が更に抑制可能となり、エンジン41の燃料消費量が更に低減できることがわかる。
【0101】
<第4実施形態>
【0102】
次に、第4実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0103】
この実施形態では、第4のエンジン制御の点で第3実施形態の第3のエンジン制御と構成が異なる。
【0104】
[第4のエンジン制御について]
次に、エンジン制御部50が実行する第4のエンジン制御について説明する。
図12に、第4のエンジン制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートでは、ステップ130とステップ140との間にステップ300が設けられ、ステップ190の後にステップ310~ステップ330が設けられ、ステップ230とステップ320との間にステップ370~ステップ390が設けられる点で第2実施形態における
図9のフローチャート(第2のエンジン制御)と構成が異なる。
【0105】
処理がこのルーチンへ移行すると、エンジン制御部50は、ステップ100~ステップ130の処理を実行した後、ステップ300で、混合気を点火させる基準点火時期AOPを取得する。エンジン制御部50は、例えば、エンジン温度THE、エンジン回転数NE及び吸気圧力PMに基づき基準点火時期AOPを算出し、その算出結果を取得することができる。
【0106】
その後、エンジン制御部50は、ステップ140~ステップ150の処理を実行し、ステップ150の判断結果が肯定となり、ステップ160~ステップ190までの処理を実行すると処理をステップ310へ移行する。
【0107】
ステップ310では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEに応じた点火時期のリーン進角量Kaを算出する。エンジン制御部50は、例えば、
図11に示すリーン進角量マップを参照することにより、目標回転数差ΔNEに応じたリーン進角量Kaを算出することができる。
【0108】
次に、ステップ320で、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPにリーン進角量Kaを加算することで最終点火時期FAOPを求める。
【0109】
そして、ステップ330で、エンジン制御部50は、点火プラグ61を最終点火時期FAOPで制御する。すなわち、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPをリーン進角量Kaで補正した最終点火時期FAOPに基づき点火プラグ61を制御することで、エンジン41の点火時期を進角させるための点火時期の進角制御を実行する。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ100へ戻す。
【0110】
一方、エンジン制御部50は、ステップ100~ステップ150の処理を実行し、ステップ150の判断結果が否定となり、ステップ200~ステップ230までの処理を実行すると処理をステップ370へ移行する。
【0111】
ステップ370では、エンジン制御部50は、噴射量TAUにリーン係数Krを乗算することで最終噴射量FTAUを求める。
【0112】
次に、ステップ380で、エンジン制御部50は、インジェクタ60を最終噴射量FTAUで制御する。すなわち、エンジン制御部50は、噴射量TAUをリーン係数Krで補正した最終噴射量FTAUに基づきインジェクタ60を制御することで、エンジン41の空燃比をリーンにするためのリーン制御を実行する。
【0113】
次に、ステップ390で、エンジン制御部50は、点火時期のリーン進角量Kaを「1.0」に設定した後、処理をステップ320へ移行する。
【0114】
従って、上記した第4のエンジン制御では、エンジン制御部50は、第2のエンジン制御の内容に加え、エンジン41でリーン制御を実行すると同時に、混合気の点火時期を進角させるように点火プラグ61を制御する進角制御を更に実行するようになっている。このように空燃比のリーン制御に加え点火時期の進角制御を実行するのは、リーン空燃比ほど要求点火時期が進角側にずれるので、点火時期を進角させることでエンジン41でリーン空燃比による運転を可能にするためである。点火時期を進角するのは、進角しないと、リーン化による失火限界が狭くなり、リーン化によるエンジン41の出力抑制可能な範囲が狭くなってしまうからである。
【0115】
[発電用エンジンシステム及びマルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の発電用エンジンシステム15の構成によれば、第3実施形態の作用及び効果に加え、スロットル装置57を1stepだけ閉弁した場合は、その分だけ目標回転数差ΔNEが減少することになる。従って、エンジン制御部50は、減少した目標回転数差ΔNEに応じたリーン係数Krを求め、そのリーン係数Krを最終噴射量FTAUの算出に反映させる。このため、エンジン41の空燃比をスロットル装置57の開度減少に合わせてリーン化することができる。この結果、エンジン41の過剰トルクを好適に抑制することができ、エンジン41での燃料消費量を好適に抑制することができる。
【0116】
<第5実施形態>
【0117】
次に、第5実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0118】
この実施形態では、第5のエンジン制御の点で第3実施形態の第3のエンジン制御と構成が異なる。
【0119】
[第5のエンジン制御について]
次に、エンジン制御部50が実行する第5のエンジン制御について説明する。
図13に、第5のエンジン制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートでは、ステップ310~ステップ360が削除され、ステップ160とステップ170との間にステップ400~ステップ450が設けられ、ステップ200~ステップ220とステップ190との間にステップ460~ステップ480が設けられる点で第3実施形態における
図10のフローチャート(第3のエンジン制御)と構成が異なる。
【0120】
処理がこのルーチンへ移行すると、エンジン制御部50は、ステップ100~ステップ160の処理を実行し、ステップ160の判断結果が肯定とになる場合に処理をステップ400へ移行する。
【0121】
そして、ステップ400では、エンジン制御部50は、噴射タイマが未セットか否かを判断する。ここで、噴射タイマは、インジェクタ60から毎回燃料を噴射する際に、その噴射開始タイミングと噴射終了タイミングを決定するためにエンジン制御部50がセットする内部タイマのことである。すなわち、エンジン制御部50は、ステップ190で、インジェクタ60を最終噴射量FTAU(時間に換算される)で制御するときに、その噴射タイマによるカウントに基づき噴射開始タイミングと噴射終了タイミングを判断するようになっている。エンジン制御部50は、この判断結果が肯定となる場合は、今回の爆発行程でリーン制御及び進角制御が間に合うことから、処理をステップ410へ移行する。一方、エンジン制御部50は、この判断結果が否定となる場合、すなわち噴射タイマが既にセットされた後は、今回の爆発行程でリーン制御及び進角制御が間に合わないことから、処理をステップ440へ移行する。
【0122】
そして、ステップ410では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEに応じた点火時期のリーン進角量Kaを算出する。エンジン制御部50は、例えば、
図11に示すリーン進角量マップを参照することにより、目標回転数差ΔNEに応じたリーン進角量Kaを算出することができる。
【0123】
次に、ステップ420で、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPにリーン進角量Kaを加算することで最終点火時期FAOPを求める。
【0124】
次に、ステップ430で、エンジン制御部50は、点火プラグ61を最終点火時期FAOPで制御する。この場合、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPをリーン進角量Kaで補正した最終点火時期FAOPに基づき点火プラグ61を制御することで、エンジン41の点火時期を進角させるための点火時期の進角制御を実行することになる。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ170へ移行する。
【0125】
一方、ステップ400から移行してステップ440では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEに応じた点火時期の遅角量Karを算出する。エンジン制御部50は、例えば、
図14に示す遅角量マップを参照することにより、目標回転数差ΔNEに応じた遅角量Karを算出することができる。
図14のマップにおいて、実線は、エンジン41の冷間時のデータを示し、破線は、エンジン41の暖機後(例えば、エンジン温度THEが「60℃」以上となる場合)のデータを示す。このマップでは、目標回転数差ΔNEが「0」より小さい負の値となる場合は、遅角量Karが「0」となり、目標回転数差ΔNEが「0」より大きくなるほど、遅角量Karが「0」より大きくなるように設定される。このマップでも、現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの差が大きくなるほど、エンジン41における混合気の点火時期の遅角量Karが多くなるように設定される。
【0126】
次に、ステップ450で、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPから遅角量Karを減算することで最終点火時期FAOPを求める。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ430へ移行する。
【0127】
そして、ステップ430で、エンジン制御部50は、点火プラグ61を最終点火時期FAOPで制御する。この場合、エンジン制御部50は、基準点火時期AOPを遅角量Karで減算補正した最終点火時期FAOPに基づき点火プラグ61を制御することで、エンジン41の点火時期を遅角させる遅角制御を実行することになる。
【0128】
一方、ステップ200、ステップ210又はステップ220から移行してステップ460では、W制御部50は、基準点火時期AOPを最終点火時期FAOPとして設定する。
【0129】
次に、ステップ470で、エンジン制御部50は、点火プラグ61を最終点火時期FAOPで制御する。
【0130】
次に、ステップ480で、エンジン制御部50は、噴射量TAUを最終噴射量FTAUとして設定した後、処理をステップ190へ移行する。
【0131】
上記した第5のエンジン制御では、エンジン制御部50は、第3のエンジン制御の内容に加え、燃料を噴射するためにインジェクタ60を制御する際にセットする噴射タイマがセットされた後は、今回の爆発行程でのリーン制御が間に合わないことから、点火時期の遅角制御を実行することでエンジン41の出力を抑制するようにしている。すなわち、エンジン41は、一連の吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程を含むエンジンサイクルをもって動作する。そして、エンジン制御部50は、リーン制御の実行が確定した時点で、エンジンサイクルに対する燃料の噴射タイミング(供給タイミング)が既に決定されている場合(噴射タイマがセットされた後)に、エンジン41における混合気の点火時期を遅角させるようにインジェクタ60を制御する遅角制御を更に実行するようになっている。
【0132】
図15に、第5のエンジン制御に関する各種パラメータの変化をタイムチャートにより示す。
図15において、(A)はクランク角の変化(720℃Aを1サイクルとする)と、それに付随したエンジンサイクル(吸:吸気行程、圧:圧縮行程、爆:爆発行程、排:排気行程)、噴射I1~I6のタイミング(黒菱形で示す)及び点火のタイミング(星印で示す)を示す。
図15において、(B)はスロットル開度の変化を示し、実線で示す「RTA」は実際のスロットル開度を示し、破線で示す「TTA」は目標開度を示す。
図15において、(C)は空燃比の変化を示し、「SI」はストイキ(基準空燃比)を示し、「LA1,LA2」はそれぞれリーンを示す。
図15において、(D)は点火時期の変化を示す。
図15(A)及び(D)において、「B1,B2」はそれぞれ基準を示し、「A1,A2」はそれぞれ進角を示し、「D1」は遅角を示す。
【0133】
図15において、時刻t1の前後では、噴射I1に対しストイキSIの空燃比が反映され、空燃比のリーン化が間に合わない。そこで、時刻t2での点火には、点火時期の遅角D1が反映される。時刻t3,t5の前後では、噴射I2,I3に対しリーンLA1の空燃比が反映され、空燃比のリーン化が間に合うことになる。時刻t4,t6での点火には、点火時期の進角A1が反映される。時刻t7,t9の前後では、噴射I4,I5に対しリーンLA2の空燃比が反映され、空燃比のリーン化が間に合うことになる。時刻t8,t10での点火には、点火時期の進角A2が反映される。そして、時刻t11の前後では、噴射I6に対しストイキSIの空燃比が反映され、時刻t12での点火には、点火時期の基準B2が反映される。
【0134】
[発電用エンジンシステム及びマルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の発電用エンジンシステム15の構成によれば、第3実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得る。すなわち、エンジン制御部50は、リーン制御の実行が確定した時点で噴射タイマがセットされた後に、すなわち、エンジンサイクルに対する燃料の噴射タイミングが既に決定されている場合に、エンジン41における混合気の点火時期を遅角させる遅角制御を更に実行する。従って、空燃比のリーン制御がタイミング的に間に合わなかった場合には、点火時期の遅角制御によって混合気の燃焼エネルギーが低下する。このため、空燃比のリーン制御がタイミング的に間に合わなかった場合でも、エンジン41の過剰トルクを抑制することができる。
【0135】
<第6実施形態>
【0136】
次に、第6実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0137】
この実施形態では、第6のエンジン制御の点で前記各実施形態のエンジン制御と構成が異なる。
【0138】
[第6のエンジン制御について]
次に、エンジン制御部50が実行する第6のエンジン制御について説明する。
図16に、第6のエンジン制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートでは、ステップ130の後にステップ500~ステップ520が設けられる点で第1実施形態~第5実施形態における第1のエンジン制御~第5のエンジン制御(
図4、
図9、
図10、
図12及び
図13に示すフローチャート)と構成が異なる。
【0139】
処理がこのルーチンへ移行すると、エンジン制御部50は、ステップ100~ステップ130の処理を実行した後、ステップ500へ移行する。
【0140】
そして、ステップ500では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが所定の第3の基準値ΔN3以上か否かを判断する。第3の基準値ΔN3は、リーン制御では抑制できない目標回転数差に相当し、例えば「1000rpm」である。第3の基準値ΔN3は、この開示技術の第1基準値の一例に相当する。エンジン制御部50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ510へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を520へ移行する。
【0141】
そして、ステップ510では、エンジン制御部50は、燃料カットを実行する。すなわち、インジェクタ60からの燃料噴射を遮断する。つまり、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3以上となった場合は、リーン制御ではエンジン41の出力を抑制できないことから、燃料カットを実行するのである。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ100へ戻す。
【0142】
一方、ステップ520では、エンジン制御部50は、第1のエンジン制御~第5のエンジン制御のいずれかを実行する。ここでは、空燃比制御のベースとなるスロットル制御(スロットル装置57の制御)を実行する。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ100へ戻す。
【0143】
上記した第6のエンジン制御では、エンジン制御部50は、回転数センサ72により検出される現在のエンジン回転数NEと所定の目標エンジン回転数TNEとの差である目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3以上となる場合は、エンジン41に対する燃料の供給をカットするようにインジェクタ60を制御する燃料カット制御を更に実行するようになっている。
【0144】
[発電用エンジンシステム及びマルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の発電用エンジンシステム15の構成によれば、第1~第5の実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得る。すなわち、エンジン制御部50は、エンジン41の現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3以上となる場合は、エンジン41に対する燃料の供給をカットする燃料カット制御を更に実行する。従って、目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3以上となり、空燃比のリーン制御により対応できない場合には、エンジン41に対する燃料の供給をカットすることでエンジン41の出力が空燃比のリーン制御よりも大きく抑制される。このため、エンジン41の過剰トルクが空燃比のリーン化により対応できる出力抑制レベルを超えている場合でも、エンジン41の過剰トルクを抑制することができ、エンジン41での燃料消費量を抑制することができる。
【0145】
図17~
図20には、目標回転数差ΔNEに対するエンジン41の出力の関係(
図17)、目標回転数差ΔNEに対する燃料消費量の関係(
図18)、目標回転数差ΔNEに対する燃料噴射補正係数の関係(
図19)及び目標回転数差ΔNEに対する点火時期補正量の関係(
図20)をそれぞれグラフに示す。
図17~
図20において、破線は対比例を示し、実線は本実施形態を示す。
図17~
図20において、破線で示す対比例は、目標回転数差ΔNEが増加すると、燃料噴射補正係数が「1.0」のままで一定となり(
図19)、点火時期補正量が「基準」から遅角側へ増加する(
図20)。この結果、燃焼消費量は高いまま一定となり(
図18)、エンジン41の出力は低下する(
図17)ことがわかる。これに対し、
図17~
図20において、実線で示す本実施形態では、目標回転数差ΔNEが増加すると、空燃比のリーン化により燃料噴射補正係数が「1.0」から低下し(
図19)、点火時期補正量は「基準」から進角側へ増加する(
図20)。また、目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3以上になると、燃料カットによる間引き制御により、燃料噴射補正係数の低下が下げ止まり、かつ、微増した一定値となり(
図19)、点火時期補正量も下げ止まり、かつ、微増した一定値となる(
図20)。この結果、エンジン41の出力が低下する(
図17)と共に、燃焼消費量はリーン化による出力抑制時の燃費改善により低下する(
図18)ことがわかる。
【0146】
<第7実施形態>
【0147】
次に、第7実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0148】
この実施形態では、第7のエンジン制御の点で第6実施形態の第6のエンジン制御と構成が異なる。
【0149】
第6の実施形態では、エンジン41の過剰トルクが空燃比のリーン化により対応できる出力抑制レベルを超えている場合に、燃料カット制御を実行することで、その過剰トルクを抑制することができる。しかしながら、燃料カット制御を続けたのでは、エンジン41の出力を過剰に抑制し、エンストする懸念がある。そこで、第7実施形態では、以下に説明する第7のエンジン制御を実行することにした。
【0150】
[第7のエンジン制御について]
次に、エンジン制御部50が実行する第7のエンジン制御について説明する。
図21に、第7のエンジン制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートでは、ステップ510の代わりにステップ530~ステップ560が設けられる点で第6実施形態における
図16のフローチャート(第6のエンジン制御)と構成が異なる。
【0151】
処理がこのルーチンへ移行すると、エンジン制御部50は、ステップ100~ステップ500の処理を実行し、ステップ500の判断結果が肯定となる場合に処理をステップ530へ移行する。
【0152】
ステップ530では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが所定の第4の基準値ΔN4より小さいか否かを判断する。第4の基準値ΔN4は、第3の基準値ΔN3よりも大きく、リーン制御では抑制できない目標回転数差に相当し、例えば「1500rpm」である。第4の基準値ΔN4は、この開示技術の第2基準値の一例に相当する。エンジン制御部50は、この判断結果が肯定となる場合は処理を540へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を560へ移行する。
【0153】
そして、ステップ540では、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEに応じた間引き回転数NTを算出する。この間引き回転数NTは、間欠的に燃料カットを実行するための間隔を意味し、エンジン41の回転数で規定される。エンジン制御部50は、例えば、
図22に示す間引き回転数マップを参照することにより、目標回転数差ΔNEに応じた間引き回転数NTを算出することができる。このマップでは、目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3から第4の基準値ΔN4へ増加するにつれて、間引き回転数NTが最大値から「1」へ向けて小さくなるように設定される。
【0154】
次に、ステップ550で、エンジン制御部50は、間引き回転数NT毎に燃料カットを実行する。すなわち、エンジン制御部50は、エンジン41が間引き回転数NTだけ回転する毎にインジェクタ60からの燃料噴射を遮断する。換言すると、エンジン制御部50は、エンジン41に対する燃料の供給を間欠的にカットするようにインジェクタ60を制御する「間欠燃料カット制御」を実行するのである。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ100へ戻す。
【0155】
一方、ステップ530から移行してステップ560では、エンジン制御部50は、完全燃料カットを実行する。すなわち、エンジン制御部50は、毎回の噴射タイミングでインジェクタ60からの燃料噴射を遮断する。その後、エンジン制御部50は、処理をステップ100へ戻す。
【0156】
上記した第7のエンジン制御によれば、第6のエンジン制御と異なり、エンジン制御部50は、検出される現在のエンジン回転数NEと目標エンジン回転数TNEとの差である目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3以上、かつ、第4の基準値ΔN4より小さくなる場合は、エンジン41に対する燃料の供給を間欠的にカットするようにインジェクタ60を制御する間欠燃料カット制御を更に実行するようになっている。
【0157】
[発電用エンジンシステム及びマルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の発電用エンジンシステム15の構成によれば、第6実施形態とは異なり、エンジン制御部50は、目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3以上、かつ、第4の基準値ΔN4以下となる場合は、エンジン41に対する燃料の供給を間欠的にカットする間欠燃料カット制御を更に実行する。従って、目標回転数差ΔNEが第3の基準値ΔN3以上かつ、第4の基準値ΔN4以下となり、空燃比のリーン制御ではエンジン41の出力抑制量が足りず、燃料カットでは出力抑制量が大き過ぎる場合には、エンジン41に対する燃料の供給を間欠的にカットすることで混合気の燃焼が間欠的に中断され、程よいエンジン41の出力抑制が可能となる。このため、エンジン41の過剰トルクが空燃比のリーン化により対応できる出力抑制レベルを超えている場合でも、エンジン41の過剰トルクを過度な抑制を回避しながら程よく抑制することができ、エンストを回避しながらエンジン41での燃料消費量を抑制することができる。
【0158】
[別の実施形態について]
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0159】
(1)前記第7実施形態では、パターン2の燃料カット制御を、パターン1のリーン制御、パターン3のストイキ制御を経た3周期毎に実行することで間欠燃料カット制御を実行したが、パターン2の燃料カット制御を、他のパターン1を経た2周期毎に実行したり、他のパターン3を経た2周期毎に実行したりすることで間欠燃料カット制御を実行することもできる。
【0160】
(2)前記各実施形態では、発電用エンジンシステム15を、ジェネレータ42とバッテリ31を備え、エンジン41をジェネレータ42の駆動源として使用したハイブリッド式小型モビリティとしてのマルチコプタ1に具体化したが、マルチコプタ以外のハイブリッド式小型モビリティ(例えば、シングルロータヘリ、飛行機、船舶、自動車、列車等)に具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
この開示技術は、発電機とバッテリを備え、エンジンを発電機の駆動源として使用したハイブリッド式小型モビリティ(例えば、マルチコプタ)に適用することができる。
【符号の説明】
【0162】
1 マルチコプタ
15 発電用エンジンシステム
24 モータ
25 ロータ
31 バッテリ
32 燃料タンク(燃料供給手段)
33 メインコントローラ(電力制御手段)
41 エンジン
42 ジェネレータ(発電機)
50 エンジン制御部(エンジン制御手段)
54 吸気通路
57 スロットル装置(吸気量調節弁)
58 ステップモータ
60 インジェクタ(燃料供給手段)
61 点火プラグ(点火手段)
62 イグニションコイル(点火手段)
72 回転数センサ(回転数検出手段)
NE エンジン回転数
TNE 目標エンジン回転数
ΔNE 目標回転数差
ΔN3 第3の基準値(第1基準値)
ΔN4 第4の基準値(第2基準値)
AOP 点火時期