(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 43/00 20220101AFI20240917BHJP
G16Y 30/00 20200101ALI20240917BHJP
【FI】
H04L43/00
G16Y30/00
(21)【出願番号】P 2021159018
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】中原 正隆
(72)【発明者】
【氏名】奥井 宣広
(72)【発明者】
【氏名】窪田 歩
【審査官】前田 健人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-052637(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073557(WO,A1)
【文献】特開2017-212617(JP,A)
【文献】特開2017-005402(JP,A)
【文献】特開2006-148778(JP,A)
【文献】特開2007-208861(JP,A)
【文献】特開2001-144755(JP,A)
【文献】特開2014-183478(JP,A)
【文献】特開2008-176753(JP,A)
【文献】特開2017-028434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0198801(US,A1)
【文献】国際公開第2018/150503(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113067804(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/00-43/55
G16Y 30/00-30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報取得デバイスが生成した通信データを取得する通信データ取得部と、
生成された前記通信データを記憶する記憶部と、
前記通信データのうちの第1通信データと、前記第1通信データよりも過去に生成されて前記記憶部に記憶された第2通信データとの相関を演算する相関演算部と、
前記相関演算部の演算結果に基づいて、前記第1通信データの送信要否を判定する判定部と、
前記判定部が送信すると判定した前記第1通信データを外部装置に送信する送信部と、
を備え
、
前記判定部は、外部装置が、マルウェアに感染している可能性が高い通信データを要求しているか、低い通信データを要求しているかにさらに基づいて、前記第1通信データの送信要否を判定する
通信装置。
【請求項2】
前記通信データを正規化するデータ正規化部
をさらに備え、
前記相関演算部は、前記データ正規化部が正規化した前記第1通信データと、前記データ正規化部が正規化した前記第2通信データとの相関を演算する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記データ正規化部は、
前記通信データが、前記情報取得デバイスが送信する本来のデータに近しいか否かを判定することにより、前記通信データを正規化する
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記データ正規化部は、
前記情報取得デバイスの種類、前記通信データの宛先、前記通信データの送信頻度の少なくとも1つに基づいて、前記通信データを正規化する
請求項2または請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記判定部は、
前記情報取得デバイスの種類、前記通信データの宛先、前記通信データの送信頻度の少なくとも1つに基づいて、前記第1通信データの送信要否を判定する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記判定部は、
前記第1通信データのうち、前記第2通信データとの演算結果が相対的に高い前記第1通信データを、送信すると判定する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記判定部は、
前記第1通信データのうち、前記第2通信データとの演算結果が相対的に低い前記第1通信データを、送信すると判定する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の拠点サーバと、それらを束ねる統括サーバで構成され、統括サーバが拠点サーバから収集したデータを処理する分散型データ処理システムがある。こうした分散型データ処理システムにおいて、各拠点サーバのデータをそのまま統括拠点が収集することはコストが増大するという課題がある。
【0003】
この課題に対して、統括拠点で拠点サーバから収集するデータの属性をもとにデータ転送量の削減をする方法が提案されている。各拠点サーバで収集したデータは統括サーバで全拠点データとして束ねられる。各拠点のデータは列ごとに統合可否が判定される。統括サーバは各拠点のデータを列ごとに結合することで多くの拠点で統合可能と判断されていた列を見つけ、次回以降の送信時に統合してから送るようにすることで、データ転送量を削減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術では、各拠点サーバで収集されたデータは、全て統括サーバに送信されるため、拠点サーバと統括サーバ間の通信量が増大するという課題があった。
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、通信量を抑制可能な通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、情報取得デバイスが生成した通信データを取得する通信データ取得部と、生成された前記通信データを記憶する記憶部と、前記通信データのうちの第1通信データと、前記第1通信データよりも過去に生成されて前記記憶部に記憶された第2通信データとの相関を演算する相関演算部と、前記相関演算部の演算結果に基づいて、前記第1通信データの送信要否を判定する判定部と、前記判定部が送信すると判定した前記第1通信データを外部装置に送信する送信部と、を備え、前記判定部は、外部装置が、マルウェアに感染している可能性が高い通信データを要求しているか、低い通信データを要求しているかにさらに基づいて、前記第1通信データの送信要否を判定する通信装置である。
(2)本発明の一態様は、上記(1)に記載の通信装置において、前記通信データを正規化するデータ正規化部をさらに備え、前記相関演算部は、前記データ正規化部が正規化した前記第1通信データと、前記データ正規化部が正規化した前記第2通信データとの相関を演算する。
(3)本発明の一態様は、上記(2)に記載の通信装置において、前記データ正規化部は、前記通信データが、前記情報取得デバイスが送信する本来のデータに近しいか否かを判定することにより、前記通信データを正規化する。
(4)本発明の一態様は、上記(2)または(3)に記載の通信装置において、前記データ正規化部は、前記情報取得デバイスの種類、前記通信データの宛先、前記通信データの送信頻度の少なくとも1つに基づいて、前記通信データを正規化する。
(5)本発明の一態様は、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の通信装置において、前記判定部は、前記情報取得デバイスの種類、前記通信データの宛先、前記通信データの送信頻度の少なくとも1つに基づいて、前記第1通信データの送信要否を判定する。(6)本発明の一態様は、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の通信装置において、前記判定部は、前記第1通信データのうち、前記第2通信データとの演算結果が相対的に高い前記第1通信データを、送信すると判定する。
(7)本発明の一態様は、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の通信装置において、前記判定部は、前記第1通信データのうち、前記第2通信データとの演算結果が相対的に低い前記第1通信データを、送信すると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通信量を抑制可能な通信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の通信装置を含む通信システムの一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態の通信装置の構成例を示す図である。
【
図3】特徴量と本来のデータの対応を示す図である。
【
図4】第1通信データと正規化されたデータとを示す図である。
【
図5】第1通信データと正規化されたデータとを示す図である。
【
図9】AND、XOR、NXORの演算結果の一例を示す図である。
【
図10】通信装置の処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本実施形態の通信を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態の通信装置を含む通信システムの一例を示す図である。本実施形態の通信システム10は、通信装置100と、IoTデバイス200-1からIoTデバイス200-n(nは、1以上の整数)と、収集サーバ300とを備える。以下の説明において、IoTデバイス200-1からIoTデバイス200-nをそれぞれ区別しない場合には、IoTデバイス200と表現する。IoTデバイス200は、情報取得デバイスの一例である。収集サーバ300は、外部装置の一例である。
【0011】
IoTデバイス200は、通信装置100に接続される。通信装置100は、収集サーバ300に接続される。IoTデバイス200は、通信データを通信装置100に送信する。通信装置100は、通信データを収集サーバ300に送信する。
【0012】
IoTデバイス200は、各種情報を取得し、通信データを生成可能なデバイスである。IoTデバイス200として、例えばカメラ、スピーカ、コンセント、各種センサなどが挙げられる。IoTデバイス200は、取得したデータを通信データとして通信装置100に送信する。通信装置100は、受信した通信データを収集サーバ300に送信するか否かを判定する。通信装置100は、例えば、ホームゲートウェイや、生産管理を行う生産管理サーバなどである。通信装置100は、送信すると判定した通信データを収集サーバ300に送信する。収集サーバ300は、受信した通信データを収集する。収集サーバ300は、収集した通信データを用いて、各種解析や学習を行ってもよい。
【0013】
図2は、通信装置100の構成例を示す図である。通信装置100は、通信部110と、制御部120と、通信データ記憶部130とで構成される。通信部110は、IoTデバイス200および収集サーバ300と各種ネットワークを介して通信する。制御部120は、通信部110全体を制御する。通信データ記憶部130は、IoTデバイス200により過去に生成された通信データなどの各種データを記憶する。
【0014】
制御部120は、通信データ取得部121、データ正規化部122、相関演算部123、判定部124、および送信部125で構成される。
【0015】
通信データ取得部121は、IoTデバイス200が生成した通信データを取得する。データ正規化部122は、通信データを正規化する。具体的に、データ正規化部122は、通信データが、IoTデバイス200が送信する本来のデータに近しいか否かを判定することにより、通信データを正規化する。「本来のデータ」の例については後述する。相関演算部123は、データ正規化部122が正規化した第1通信データと、データ正規化部122が正規化した第2通信データとの相関を演算する。第1通信データは、例えば現在取得した通信データである。
【0016】
判定部124は、相関演算部123の演算結果に基づいて、第1通信データの送信要否を判定する。送信部125は、判定部124が送信すると判定した第1通信データを外部装置に送信する。
【0017】
本実施形態におけるデータ正規化部122は、通信データを「0」または「1」に正規化する。例えば、IoTデバイス200から特徴量A、B、Cの通信データを受信するとしたとき、特徴量A、B、Cは、いずれも「0」または「1」に正規化される。通信データが、「本来のデータ」に近しくないとされた場合、「0」に正規化される。通信データが、「本来のデータ」に近しいとされた場合、「1」に正規化される。
【0018】
「本来のデータ」は、本実施形態では、IoTデバイス200がマルウェアに感染していない可能性が高い場合に送信される通信データである。正規化例について説明する。
【0019】
図3は、特徴量と本来のデータの対応を示す図である。
図3には、特徴量1~4と、それに対応する本来のデータとが示されている。
図3に示される対応を示すテーブル(以下、「正規化テーブル」という)は、通信データ記憶部130に記憶される。
図3において、特徴量1は、通信データを送信する宛先のIPアドレスである。特徴量2は、IoTデバイス200が使用するプロトコルである。特徴量3は、宛先のポート番号である。特徴量4は、IoTデバイス200が通信データを送信する送信頻度(回/日)である。
【0020】
図3の例では、特徴量1の本来のデータは「○○.127.56.1」である。特徴量2の本来のデータは、「FTP」である。特徴量3の本来のデータは「21」である。特徴量4の本来のデータは、「20回以下」である。
【0021】
データ正規化部122は、第1通信データを正規化テーブルを参照して正規化する。具体的な正規化例を
図4、
図5を用いて示す。
図4、
図5は、いずれも第1通信データと正規化されたデータとを示す図である。
図4における、第1通信データは、特徴量1が「○○.127.56.1」、特徴量2が「FTP」、特徴量3が「21」、特徴量4が「15」である。
図4の場合の第1通信データは、いずれも正規化テーブルに示されるデータである。したがって、データ正規化部122は、第1通信データを正規化して「1、1、1、1」を正規化データとする。このように、データ正規化部122は、IoTデバイス200の種類、通信データの宛先、通信データの送信頻度の少なくとも1つに基づいて、通信データを正規化する。なお、IoTデバイス200の種類について、種類ごとに送信頻度が異なることがあるため、その場合、送信頻度はIoTデバイス200の種類に基づくものといえる。
【0022】
図5における、第1通信データは、特徴量1が「XX.255.34.10」、特徴量2が「FTP」、特徴量3が「2035」、特徴量4が「227」である。
図5の場合の第1通信データのうち、正規化テーブルに示されるデータと一致するものは特徴量2のみである。したがって、データ正規化部122は、第1通信データを正規化して「0、1、0、0」を正規化データとする。
【0023】
このように、本実施形態では、通信データの特徴量が正規化テーブルの特徴量と一致している場合に「本来のデータに近しい」と判定するが、これに限るものではない。例えば、特徴量が数値で規定される場合、この数値の近傍(例えば±10%以内)のデータであれば、「本来のデータに近しい」と判定してもよい。または、本来のデータを複数用意して、用意されたデータのいずれかに一致した場合、または複数のデータの近傍の場合に「本来のデータに近しい」と判定してもよい。このように、「本来のデータに近しい」か否かの判定は、特徴量の傾向などに応じて適宜判定基準を設けてもよい。これは、通信データが「本来のデータ」か否かは、収集サーバ300により判定できればよく、その収集サーバ300が判定を行うことを目的とした正規化であるためである。
【0024】
次に、相関演算部123による演算例について説明する。以下の説明において、相関演算部123が演算して得られた結果を便宜的に相関値と表現する。本実施形態では、相関値が大きいほど、相関が大きいとは限らない。これを踏まえ、相関値の演算方法について説明する。
【0025】
相関演算部123は、相関値を、下記自己相関関数を用いて演算してもよい。
【数1】
【0026】
第1通信データは離散的であることから、上記式1に代えて、下記式を用いて計算してもよい。
【数2】
【0027】
図6は、第1通信データの一例を示す図である。
図6に示される第1通信データは、特徴量1~3を含む。そして時刻0からt分ごとに時刻9tまで受信した第1通信データを示している。
【0028】
図6に示される第1通信データを式2に当てはめる。具体的には、T’=0、T=8t、τ=tとする。この場合、特徴量1については、以下のようになる。
R(t)=0×1+1×1+1×1+1×0+0×0+0×0+0×1+1×1+1×1=4
【0029】
特徴量2、3も同様に自己相関を求めると、
図7に示されるように、特徴量1は「4」、特徴量2は「3」、特徴量3は「0」となる。これを用いて、相関演算部123は、相関値を演算する。例えば、相関演算部123は、L0ノルム、L1ノルム、L2ノルムなにより相関値を演算する。L1ノルムを採用した場合、相関演算部123は、単純に足して得られた7(=4+3+0)を相関値とする。L2ノルムの場合には、(4
2+3
2+0
2)の平方根を演算して得られた5を相関値とする。なお、τ=tとしたが、あくまでも一例であり、任意の値であってよい。
【0030】
式1、式2に代えて、下記式を用いて相関値を演算してもよい。
【数3】
【0031】
式3におけるMは、特徴量の次元である。例えば特徴量が3つの場合、M=3となる。例えば、
図8に示されるように、特徴量がM種類あり、式3におけるtを時刻t3とし、τ=nとする。
【0032】
このとき、fi(t3)(i=1~M)は、1、0、1、1、…、0、1となる。またfi(t3+n)(i=1~M)は、1、0、0、1、…、0、0となる。したがって、式3は、1×1+0×0+1×0+1×1+…+0×0+1×0となる。
【0033】
このように、fの値が0か1しかとらないため、式3は、結果的に各特徴量ごとにANDをとり、その値の総和となる。なお、τ=nとしたが、あくまでも一例であり、任意の値であってよい。また、ANDに代えて、XOR、NXORであってもよい。
【0034】
図9は、AND、XOR、NXORの演算結果の一例を示す図である。
図9に示される演算結果は、第1通信データを(0、1、0、0)とし、第2通信データを(1、1、1、1)とした場合の演算結果を示している。
【0035】
ANDの場合、演算結果は、(0、1、0、0)となり、相関値は1となる。ANDは、いずれも1ではない限り1とはならないため、相関値が最も小さくなりやすい。一方、XORの場合、演算結果は、(1、0、1、1)となり、相関値は3となる。XORは、異なっている場合に1となることから、1が多いほど異なっていることとなる。したがって、XORの場合に、相関値が大きいほど第1通信データと第2通信データとが異なることを示している。NXORは、XORの否定であるので、XORとは逆に、相関値が大きいほど第1通信データと第2通信データとが一致していることを示している。
【0036】
なお、XORの場合、0と0とを演算すると0となり、また1と1とを演算した場合も0となることから、第1通信データと第2通信データとが0で一致していても、1と1とを演算した場合と同じ結果となる。すなわち、第1通信データと第2通信データとが一致はしているが、いずれも0の場合はマルウェアに感染している可能性が高いこととから、0であっても(一致していても)好ましくない。
【0037】
したがって、判定部124は、相関演算部123がどのような演算方法で相関値を演算するかによって、判定方法が異なる。ANDの場合には、相関値が大きいほどマルウェアに感染している可能性が低いと考えられる。XORの場合には、相関値が大きく、かつ「本来のデータ」に0が少ない場合にマルウェアに感染している可能性が低いと考えられる。NXORの場合には、XORとは逆に相関値が小さく、かつ「本来のデータ」に0が少ない場合にマルウェアに感染している可能性が低いと考えられる。このように、相関値の高低は、演算方法によって意味が異なる。そのため、判定部124は、閾値と比較して大きい場合に送信すると判定するか、閾値と比較して小さい場合に送信すると判定するかを演算方法などに応じて予め定めておく。
【0038】
このように判定部124は、演算方法によって判定方法が異なるが、さらに、収集サーバ300が、マルウェアに感染している可能性が高い方の通信データを要求しているか、低い方の通信データを要求しているかによっても判定方法が異なる。例えば、収集サーバ300が通信データを用いて学習する場合に、学習対象にばらつきを持たせたい場合には、マルウェアに感染している可能性が低い通信データである程度学習したのちに、マルウェアに感染している可能性が高い通信データで学習した方がよい。一方、マルウェアに感染している可能性が低い通信データで学習を強化させたい場合には、マルウェアに感染している可能性が低い通信データのみで学習させた方がよい。
【0039】
ここで、演算方法Aを、ANDまたはNXORによる演算方法とし、演算方法Bを、XORの演算方法による演算とする。また、要求Xを、収集サーバ300がマルウェアに感染している可能性が低い通信データを要求していることとする。要求Yを、収集サーバ300がマルウェアに感染している可能性が高い通信データを要求していることとする。
【0040】
このとき、判定部124は、演算方法Aかつ要求Xの場合、または演算方法Bかつ要求Yの場合には、閾値と比較して相関値が大きい場合に通信データを送信すると判定する。一方、判定部124は、演算方法Aかつ要求Yの場合、または演算方法Bかつ要求Xの場合には、閾値と比較して相関値が小さい場合に通信データを送信すると判定する。
【0041】
以上説明したように、判定部124は、情報取得デバイスの種類、
図3に示される各特徴量を正規化されたものに基づいて判定することから、通信データの宛先、通信データの送信頻度の少なくとも1つに基づいて、第1通信データの送信要否を判定する。また、判定部124は、第1通信データのうち、第2データとの演算結果が相対的に高い(閾値と比較して大きい)第1通信データを、送信すると判定する。さらに、判定部124は、第1通信データのうち、第2データとの演算結果が相対的に低い(閾値と比較して小さい)第1通信データを、送信すると判定する。
【0042】
このように、演算結果が相対的に高い場合や低い場合に送信可能とすることで、演算方法と収集サーバ300の要求に応じて、柔軟に対応することができる。なお、IoTデバイス200が予めマルウェアに感染している可能性が高いことが分かっている場合には、通信データのほとんどは異常なデータと考えられるため、ANDを演算方法としている場合に、「1」となるものが多い方が本来のデータに近しくないと考えられる。そこで、IoTデバイス200が予めマルウェアに感染している可能性が高いことが分かっている場合には、過去の通信データと似ている通信データの方を送信するようにしてもよい。
【0043】
以上説明した通信装置100の処理の流れについて説明する。
図10は、通信装置100の処理の流れを示すフローチャートである。
図10において、通信データ取得部121は、第1通信データを取得する(ステップS101)。データ正規化部122は、第1通信データを正規化する(ステップS102)。データ正規化部122は、正規化した第1通信データを通信データ記憶部130に記憶する(ステップS103)。ここで記憶された正規化した第1通信データは、後に第2通信データとして用いられる。
【0044】
相関演算部123は、既に正規化されている第2通信データを通信データ記憶部130から取得する(ステップS104)。相関演算部123は、相関値を演算する(ステップS105)。判定部124は、上述した判定方法により、第1通信データを送信するか否かを判定する(ステップS106)。判定部124が第1通信データを送信すると判定した場合(ステップS106:YES)、送信部125は、第1通信データを収集サーバ300に送信して(ステップS107)、処理を終了する。判定部124が第1通信データを送信すると判定しなかった場合(ステップS106:NO)、送信部125が第1通信データを収集サーバ300に送信することなく処理を終了する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、通信量を抑制可能な通信装置を提供することができる。また、収集サーバ300が通信データを用いて学習する場合には、収集サーバ300が必要とする通信データ以外のデータを削減することができるので、収集サーバ300の処理を軽減することができる。
【0046】
なお、これにより、通信量を抑制可能な通信装置を提供できることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0047】
本実施形態では、正規化することで「0」および「1」のいずれか値とし、さらに演算方法をAND、XOR、NXORというCPUが高速に処理可能な単純な演算方法とすることで、演算リソースに余裕がないホームゲートウェイなどの装置であっても容易に本実施形態を実現できる。
【0048】
また、AND、XOR、NXORのいずれの演算方法を用いるかの判定方法として、IoTデバイス200の種類によって判定してもよい。また、IoTデバイス200の種類を特定する技術を用いて特定されたIoTデバイス200の種類によって判定してもよい。さらに、通信データの複雑さを示す指標を設定して演算方法を判定してもよい。例えば、通信データが比較的変化しやすいIoTデバイス200の場合、演算方法をANDとすると演算結果は0または0に近い値になりやすいため、AND以外の演算方法を用いてもよい。
【0049】
なお、上述した実施形態では、通信データが、「本来のデータ」に近しくないとされた場合、「0」に正規化され、通信データが、「本来のデータ」に近しいとされた場合、「1」に正規化されたが逆でもよい。すなわち、通信データが、「本来のデータ」に近しくないとされた場合、「1」に正規化され、通信データが、「本来のデータ」に近しいとされた場合、「0」に正規化されてもよい。
【0050】
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
なお、上述した通信システム10に含まれる通信装置100と、IoTデバイス200と、収集サーバ300とは、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各機能ブロックの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録する。この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、CPUが実行することで実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体のことをいう。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置を含む。
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、短時間の間、動的にプログラムを保持するものを含んでいてもよい。短時間の間、動的にプログラムを保持するものは、例えば、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線である。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、サーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。また、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記プログラムは、プログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。プログラマブルロジックデバイスは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)である。
【符号の説明】
【0051】
10…通信システム、100…通信装置、110…通信部、120…制御部、121…通信データ取得部、122…データ正規化部、123…相関演算部、124…判定部、125…送信部、130…通信データ記憶部、200…IoTデバイス、300…収集サーバ