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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】渦巻ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
F04D29/44 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021212179
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096418
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】橋本 靖志
(72)【発明者】
【氏名】作田 実
(72)【発明者】
【氏名】野口 真
(72)【発明者】
【氏名】細見 弘樹
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-283689(JP,A)
【文献】特開2001-295791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体に収容されている羽根車と、を備え、
前記筐体が、前記羽根車を収容する空間を画定する本体部と、前記本体部から延出するノズル部と、を有し、前記本体部と前記ノズル部とにわたって流路が延びている渦巻ポンプであって、
前記筐体の内側の少なくとも前記ノズル部に仕切壁が設けられ、
前記流路が、前記仕切壁によって、前記羽根車側の第一流路と、前記筐体の内壁側の第二流路と、に区分され、
前記ノズル部の前記本体部からの遠位端における前記ノズル部の断面積が、前記本体部に接続されている近位端における前記ノズル部の断面積より大きく、
前記仕切壁の前記ノズル部に設けられている部分の少なくとも一部に、前記ノズル部の中心軸を通る任意の断面における前記仕切壁の幅が、前記近位端における当該幅より大きい拡大部分が設けられ
前記拡大部分のうち、前記仕切壁の断面積が最大値を取る最大部分が、前記近位端と前記遠位端との中央より前記遠位端の側に設けられている渦巻ポンプ。
【請求項2】
筐体と、前記筐体に収容されている羽根車と、を備え、
前記筐体が、前記羽根車を収容する空間を画定する本体部と、前記本体部から延出するノズル部と、を有し、前記本体部と前記ノズル部とにわたって流路が延びている渦巻ポンプであって、
前記筐体の内側の少なくとも前記ノズル部に仕切壁が設けられ、
前記流路が、前記仕切壁によって、前記羽根車側の第一流路と、前記筐体の内壁側の第二流路と、に区分され、
前記ノズル部の前記本体部からの遠位端における前記ノズル部の断面積が、前記本体部に接続されている近位端における前記ノズル部の断面積より大きく、
前記仕切壁の前記ノズル部に設けられている部分の少なくとも一部に、前記ノズル部の中心軸を通る任意の断面における前記仕切壁の幅が、前記近位端における当該幅より大きい拡大部分が設けられ、
前記ノズル部の断面積が、前記近位端から前記遠位端にわたって単調増加している渦巻ポンプ。
【請求項3】
前記仕切壁が、前記ノズル部の前記遠位端の近傍まで延びており、かつ、当該遠位端の近傍における前記仕切壁の断面積が、前記拡大部分における前記仕切壁の断面積の最大値より小さい請求項1又は2に記載の渦巻ポンプ。
【請求項4】
前記ノズル部において、前記第一流路の断面積および前記第二流路の断面積が、いずれも単調増加している請求項1~3のいずれか一項に記載の渦巻ポンプ。
【請求項5】
前記仕切壁が、前記本体部と前記ノズル部とにわたって設けられている請求項1~のいずれか一項に記載の渦巻ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦巻ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
流体を付勢するポンプの一態様として、渦巻ポンプが汎用されている。渦巻ポンプは、筐体と、筐体に収容されている羽根車と、を備え、回転する羽根車の遠心力によって径方向外側に付勢された流体が、筐体の内壁に沿って吐出口に案内されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-44197号公報
【文献】特開2008-8154号公報
【文献】特開2014-214741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
渦巻ポンプが使用される設備は多岐にわたるため、吐出口を接続すべき配管等の寸法も多岐にわたる。一方、渦巻ポンプを効率よく供給する等の観点から求められた理想的なポンプの吐出口の寸法と、これを接続すべき先の配管等の寸法とが合致しない場合があった。このような場合は、配管径を調整するための調整ノズル部を介してポンプと接続先とを接続することになるが、当該調整ノズル部において流路の断面積が変化することによって渦が生じ、これによってポンプの効率が低下する場合があった。
【0005】
そこで、吐出口の理想的な寸法と接続先の寸法とが異なる場合であっても、ポンプの効率が低下しにくい渦巻ポンプの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る渦巻ポンプは、筐体と、前記筐体に収容されている羽根車と、を備え、
前記筐体が、前記羽根車を収容する空間を画定する本体部と、前記本体部から延出するノズル部と、を有し、前記本体部と前記ノズル部とにわたって流路が延びている渦巻ポンプであって、前記筐体の内側の少なくとも前記ノズル部に仕切壁が設けられ、前記流路が、前記仕切壁によって、前記羽根車側の第一流路と、前記筐体の内壁側の第二流路と、に区分され、前記ノズル部の前記本体部からの遠位端における前記ノズル部の断面積が、前記本体部に接続されている近位端における前記ノズル部の断面積より大きく、前記仕切壁の前記ノズル部に設けられている部分の少なくとも一部に、前記ノズル部の中心軸を通る任意の断面における前記仕切壁の幅が、前記近位端における当該幅より大きい拡大部分が設けられ、前記拡大部分のうち、前記仕切壁の断面積が最大値を取る最大部分が、前記近位端と前記遠位端との中央より前記遠位端の側に設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る渦巻ポンプは、筐体と、前記筐体に収容されている羽根車と、を備え、
前記筐体が、前記羽根車を収容する空間を画定する本体部と、前記本体部から延出するノズル部と、を有し、前記本体部と前記ノズル部とにわたって流路が延びている渦巻ポンプであって、前記筐体の内側の少なくとも前記ノズル部に仕切壁が設けられ、前記流路が、前記仕切壁によって、前記羽根車側の第一流路と、前記筐体の内壁側の第二流路と、に区分され、前記ノズル部の前記本体部からの遠位端における前記ノズル部の断面積が、前記本体部に接続されている近位端における前記ノズル部の断面積より大きく、前記仕切壁の前記ノズル部に設けられている部分の少なくとも一部に、前記ノズル部の中心軸を通る任意の断面における前記仕切壁の幅が、前記近位端における当該幅より大きい拡大部分が設けられ、前記ノズル部の断面積が、前記近位端から前記遠位端にわたって単調増加していることを特徴とする。
【0008】
れらの構成では、ノズル部を本体部側の近位端から接続先側の遠位端にかけて拡径させて、接続先との寸法合わせを実現するのと同時に、部分的に仕切壁を拡大することによって、ノズル部の拡径に伴って流路の断面積が急峻に増加することを防いでいる。これによって、吐出口の寸法と接続先の寸法とが異なる場合であっても、ポンプの効率が低下しにくい。そして、これらの構成によれば、ノズル部における渦の発生を、一層防止できる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0010】
本発明に係る渦巻ポンプは、一態様として、前記仕切壁が、前記ノズル部の前記遠位端の近傍まで延びており、かつ、当該遠位端の近傍における前記仕切壁の断面積が、前記拡大部分における前記仕切壁の断面積の最大値より小さいことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ノズル部における渦の発生を、一層防止できる。
【0012】
本発明に係る渦巻ポンプは、一態様として、前記ノズル部において、前記第一流路の断面積および前記第二流路の断面積が、いずれも単調増加していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ノズル部における渦の発生を、一層防止できる。
【0014】
本発明に係る渦巻ポンプは、一態様として、前記仕切壁が、前記本体部と前記ノズル部とにわたって設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、いわゆるダブルボリュートポンプにおいて、ノズル部における渦の発生を防止できる。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る渦巻ポンプの断面図である。
図2】第一の変形例に係る渦巻ポンプのノズル部の断面図である。
図3】第二の変形例に係る渦巻ポンプのノズル部の断面図である。
図4】第三の変形例に係る渦巻ポンプのノズル部の断面図である。
図5】第四の変形例に係る渦巻ポンプのノズル部の断面図である。
図6】第五の変形例に係る渦巻ポンプのノズル部の断面図である。
図7】変形例に係る渦巻ポンプの断面図である。
図8】比較例に係る渦巻ポンプのノズル部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る渦巻ポンプの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る渦巻ポンプを、水を付勢する目的で使用される渦巻ポンプ1(以下、単に「ポンプ1」と称する。)に適用した例について説明する。
【0019】
〔渦巻ポンプの構成〕
ポンプ1は、筐体2と、筐体2に収容されている羽根車3と、を備える(図1)。なお、ポンプ1の構成要素は筐体2および羽根車3のみではなく、たとえば羽根車3を駆動させるためのモータが備えられているが、説明を簡単にするため、筐体2および羽根車3の他の構成要素については説明および図示を省略する。これらの他の構成要素については、当技術分野において通常使用される仕様が適用されうる。
【0020】
筐体2は、羽根車3を収容する空間を画定する本体部4と、本体部4から延びるノズル部5と、を有する。本体部4は略円筒状の形状を有し、ノズル部5は当該円筒状の形状の接線方向に延出している。ポンプ1の動作は、概して、羽根車3によってポンプ1の一次側から吸引された水が、羽根車3の径方向外側に向けて付勢され、本体部4の内壁に沿ってノズル部5に案内され、ノズル部5の遠位端51から吐出される、という態様である。
【0021】
本体部4とノズル部5とにわたって、流路6が延びている。流路6は、羽根車3によって付勢された流体を、ノズル部5の遠位端51まで案内する役割を果たす。また、筐体2の内側の、本体部4とノズル部5とにわたって、仕切壁7が設けられている。流路6は、仕切壁7によって、羽根車側(径方向内側)の第一流路61と、筐体2の内壁側(径方向外側)の第二流路62と、に区分される。なお、第一流路61は、当分野において、ボリュート側流路などの名称で呼ばれる場合がある。また、第二流路62は、当分野において、バイパス側流路などの名称で呼ばれる場合がある。
【0022】
ノズル部5は、本体部4から遠い側の端部である遠位端51と、本体部4に接続されている端部である近位端52と、を有する。遠位端51は、ポンプ1の吐出口として機能する部位であり、通常は、ポンプ1の二次側に接続される構造物(配管や機器などである。
)に接続される。そのため、遠位端51におけるノズル部5の断面積は、当該構造物の寸法を考慮して決定される。本実施形態にかかるポンプ1では、遠位端51におけるノズル部5の断面積が、近位端52におけるノズル部5の断面積より大きい。なお、本実施形態の説明における「断面積」の用語は、特に断らない限り、流路6と直交する断面における断面積をいうものとする。また、ノズル部5の断面積とは、断面においてノズル部5の内壁により画定される領域の面積をいい、第一流路61の断面積、第二流路62の断面積、および、仕切壁7の断面積、の合計である。
【0023】
本実施形態では、近位端52から遠位端51にわたって、ノズル部5の断面積が単調増加している。より詳細には、ノズル部5は、近位端52から遠位端51にわたって拡径する円錐台状の形状を有する。この円錐台状の形状を反映して、図1の断面図では、ノズル部5の外壁が、近位端52から遠位端51に向けて拡大する直線として描かれている。
【0024】
仕切壁7は、本体部4とノズル部5にわたって一体に設けられている部材である。ただし、本体部4に設けられている部分とノズル部5に設けられている部分とが、それぞれ異なる特徴を有するので、以下では両者をそれぞれ説明する。なお、本実施形態に係るポンプ1のように、本体部4とノズル部5にわたって延びる仕切壁7を有する渦巻ポンプを、ダブルボリュートポンプと称する場合がある。
【0025】
本体部4における仕切壁7は、概ね、本体部4および羽根車3と中心を共有する円弧に沿って延びている。これによって、本体部4における流路6(第一流路61および第二流路62)が、羽根車3と中心を共有する円弧状に画定される。本体部4における仕切壁7の断面積は、略一定である。なお、略一定であるとは、少なくとも設計上において断面積が一定であることを意味し、誤差を含めて一定であることを求めない。また、工業製品としてのポンプ1を製造するにあたって通常適用される変形(丸みづけなど)によって、細部における断面積が主たる部分と異なるとしても、「略一定」の範疇である。
【0026】
ノズル部5における仕切壁7は、遠位端51側まで延びている。本体部4における仕切壁7と異なり、ノズル部5における仕切壁7の断面積は、一定ではない。ノズル部5における仕切壁7には、拡大部分71が設けられている。拡大部分71は、ノズル部5の中心軸を通る任意の断面における仕切壁7の幅が、近位端52における当該幅より大きい部分である。ここで、ノズル部5の中心軸とは、近位端52におけるノズル部5の断面の中心と、遠位端51におけるノズル部5の断面の中心と、を結ぶ軸である。また、ノズル部5の中心軸を通る任意の断面における仕切壁7の幅は、たとえば図1において仕切壁7を表す部分の上下方向の幅である。加えて、拡大部分71のうち最大の断面積を有する部分である最大部分72が、近位端52と遠位端51との中央より遠位端51の側に位置している。
【0027】
仕切壁7の断面積は、近位端52から最大部分72にわたって連続的に単調増加し、最大部分72から遠位端51にわたって連続的に単調減少している。最大部分72が、近位端52よりも遠位端51に近い位置に設けられているため、近位端52から最大部分72にわたる仕切壁7の断面積の増加率の絶対値は、最大部分72から遠位端51にわたる仕切壁7の断面積の増加率(負の値になる。)の絶対値より小さい。
【0028】
なお、仕切壁7の断面積の増加率とは、仕切壁7の断面積を近位端52(舌部)における仕切壁7の断面積で除して得られる断面積指数(無次元)を、近位端52からの距離をノズル部5の遠位端51における内径で除した距離指数(無次元)の関数として表したときの、当該関数の傾きである。仕切壁7の断面積の増加率の絶対値が比較的大きい場合、流路6(第一流路61および第二流路62)における水の流れが妨げられて、ポンプ出力の損失につながるおそれがある。この観点から、近位端52から最大部分72にわたる領域では、仕切壁7の断面積の増加率が、0以上15以下であることが好ましい。また、最大部分72から遠位端51にわたる領域では、仕切壁7の断面積の増加率が、-30以上0以下であることが好ましく、-30以上-10以下であることがより好ましい。
【0029】
仕切壁7の断面積に係る上記の構成と、ノズル部5の断面積に係る上述の構成と、によって、流路6(第一流路61および第二流路62)の断面積が、近位端52から最大部分72にかけて緩やかに増加し、最大部分72から遠位端51にかけて急峻に増加する。したがって、流路6の断面積は、増加の勾配が部位によって異なるものの、近位端52から遠位端51にわたって単調増加している。なお、本実施形態では、拡大部分71の範囲において、第一流路61の断面積と第二流路62の断面積とが略同一になるように、ノズル部5および仕切壁7の形状が調整されている。
【0030】
筐体2を構成する実体部分である本体部4、ノズル部5、および仕切壁7は、鋳造などの公知の方法によって一体に製造されうる。ただし、筐体2を製造する方法は特に限定されない。
【0031】
〔変形例〕
以下では、ノズル部および仕切壁の変形例について説明する。なお、いずれの変形例も、上記の実施形態と同様に、吐出口の寸法と接続先の寸法とが異なる場合であっても、ポンプの効率が低下しにくい渦巻ポンプを実現できる。
【0032】
図2に示す第一の変形例に係るノズル部5Aでは、最大部分73が、第二流路側に比べて第一流路側により迫り出す形状に形成されている。そのため、当変形例では、ノズル部5Aにおいて、第二流路の断面積が第一流路の断面積より大きい。
【0033】
図3に示す第二の変形例に係るノズル部5Bでは、ノズル部5Bの長さに対する拡大部分74の比率が、上記の実施形態より小さい。また、最大部分75が、仕切壁の遠位端に設けられている。
【0034】
図4に示す第三の変形例に係るノズル部5Cでは、最大部分76の断面積が、上記の実施形態より小さい。そのため、当変形例では、近位端から最大部分76に至る領域における流路6の断面積の変化率が、上記の実施形態より大きい。
【0035】
図5に示す第四の変形例に係るノズル部5Dおよび図6に示す第五の変形例に係るノズル部5Eでは、第一流路側の外形と第二流路側の外形とが非対称になっている。具体的には、第二流路側におけるノズル部5D、5Eの外形は、上記の実施形態と同様に円錐台面である。一方、ノズル部5D、5Eの第一流路側には、第二流路側に比べて緩やかな勾配で拡大する近位端側領域53と、急峻に拡大する遠位端側領域54と、が設けられている。なお、ノズル部5Dでは仕切壁の第一流路側の面77が直線状に形成されており、ノズル部5Eでは第一流路側の面78が径方向外側に拡大している。
【0036】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る渦巻ポンプのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0037】
上記の実施形態では、仕切壁7が遠位端51の近傍まで延びている構成を例として説明した。しかし本発明において、仕切壁が遠位端の近傍まで延びていなくてもよく、たとえば仕切壁の端部がノズル部の中途に設けられていてもよい。なお、「遠位端の近傍まで延びている」とは、仕切壁の端部が遠位端と同一視しうる程度の位置にあることを意味するが、完全に同一であることを求めない。たとえば、仕切壁の端部が、ノズル部の遠位端における内径の15%以下、ノズル部の遠位端から引退していてもよい。
【0038】
上記の実施形態では、仕切壁7が本体部4とノズル部5にわたって延びている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る渦巻ポンプにおいて、仕切壁が少なくともノズル部に設けられていればよい。たとえば、仕切壁7がノズル部5のみに設けられており、本体部4には設けられていない渦巻ポンプ1A(図7)も、本発明の一態様でありうる。なお、渦巻ポンプ1Aは、いわゆるシングルボリュートポンプである。
【0039】
上記の実施形態では、最大部分72が、近位端52よりも遠位端51に近い位置に設けられている構成を例として説明した。しかし本発明において、最大部分が近位端に近い位置に設けられていてもよい。
【0040】
上記の実施形態では、近位端52から遠位端51にわたって、ノズル部5の断面積が単調増加している構成を例として説明した。しかし本発明において、ノズル部の断面積の変化傾向は、単調増加に限定されない。
【0041】
上記の実施形態では、流路6の断面積が近位端52から遠位端51にわたって単調増加している構成を例として説明した。しかし本発明において、ノズル部における流路の断面積の変化傾向は、単調増加に限定されない。
【0042】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例
【0043】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0044】
図1図6の各形状のノズル部を備える渦巻ポンプ(実施例1~6)について、運転時の水の流れを数値流体力学的にシミュレートした。各シミュレーションにおいて、近位端におけるノズル部の断面積を遠位端におけるノズル部の断面積の25%とし、遠位端におけるノズル部の直径を200mmとした。
【0045】
また、比較例として、図8の形状のノズル部8を有する渦巻ポンプについても同様の条件でシミュレーションを行った。比較例に係るノズル部8では、仕切壁9に拡大部分が設けられておらず、仕切壁9の断面積が近位端から遠位端にわたって実質的に一定である。
なお、比較例についてのシミュレーションにおいても、近位端におけるノズル部の断面積を遠位端におけるノズル部の断面積の25%とし、遠位端におけるノズル部の直径を200mmとした。
【0046】
シミュレーション結果に基づいて、実施例1~6および比較例の水力効率値を算出した。なお、各例において水力効率値を算出する流量点を同一とし、かつ、当該流量点をポンプ最高効率点流量より大水量側とした。各例の水力効率値を表1に示す。いずれの実施例においても、比較例に比べて高い水力効率値が得られており、本発明に係る渦巻ポンプの効率が高いことが示された。
【0047】
表1:実施例および比較対象の水力効率値
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、たとえば渦巻ポンプに利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 :渦巻ポンプ
2 :筐体
3 :羽根車
4 :本体部
5 :ノズル部
51 :遠位端
52 :近位端
6 :流路
61 :第一流路
62 :第二流路
7 :仕切壁
71 :拡大部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8