(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】金属有機構造体
(51)【国際特許分類】
C07C 63/49 20060101AFI20240917BHJP
C07C 63/66 20060101ALI20240917BHJP
C07C 63/74 20060101ALI20240917BHJP
C07C 63/72 20060101ALI20240917BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240917BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
C07C63/49 CSP
C07C63/66
C07C63/74
C07C63/72
B01D53/04
B01J20/22 A
(21)【出願番号】P 2021519424
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2020018825
(87)【国際公開番号】W WO2020230756
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019090662
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019172510
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和1年9月25日に第30回基礎有機化学討論会実行委員会事務局が発行した「第30回基礎有機化学討論会(第49回構造有機化学討論会・第69回有機反応化学討論会)要旨集」にて公開 (2)令和1年9月25日に「第30回基礎有機化学討論会」においてポスター発表にて公開 (3)令和1年11月14日に日本吸着学会が発行した「第33回日本吸着学会研究発表会講演要旨集」にて公開 (4)令和1年11月14日に「第33回日本吸着学会研究発表会」において口頭発表にて公開 (5)令和2年3月5日に「日本化学会第100春季年会2020」のウェブサイトにて公開 (6)令和2年3月5日に澤本光男が発行した「日本化学会第100春季年会予稿集DVD」にて公開 (7)令和2年3月5日に「日本化学会 第100春季年会(2020)(CSJ100th)」の電子抄録Webサイト(Confit)、及び電子抄録アプリにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 真生
(72)【発明者】
【氏名】菅又 功
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼沢 大地
(72)【発明者】
【氏名】飯濱 照幸
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/098001(WO,A1)
【文献】特開2018-058814(JP,A)
【文献】CRANE, AK et al.,New metal-organic frameworks from triptycene: structural diversity from bulky bridges,Dalton Transactions,2013年,Vol. 42,pp. 8026-8033
【文献】CRANE, AK et al.,Metal-organic frameworks from novel flexible triptycene- and pentiptycene-based ligands,CrystEngComm,2013年,Vol. 15,pp. 9811-9819
【文献】CHEN, Z et al.,Reticular Access to Highly Porous acs-MOFs with Rigid Trigonal Prismatic Linkers for Water Sorption,Journal of the American Chemistry,2019年02月08日
【文献】CHEN, Z et al.,Balancing volumetric and gravimetric uptake in highly porous materials for clean energy,Science,2020年04月17日,Vol. 368,pp. 297-303
【文献】CHANDRASEKHAR, P et al.,Orthogonal self-assembly of a trigonal triptycene triacid: signaling of exfoliation of porous 2D met,Journal of Materials Chemistry A,2017年,Vol. 5,pp. 5402-5412
【文献】CHANDRASEKHAR, P et al.,Robust MOFs of "tsg" Topology Based on Trigonal Prismatic Organic and Metal Cluster SBUs: Single Cry,Chemistry - A European Journal,2017年,Vol. 23,pp. 7297-7305
【文献】LI, P et al.,Interpenetration Isomerism in Triptycene-Based Hydrogen-Bonded Organic Frameworks,Angewandte Chemie,2018年12月11日,Vol. 58,pp. 1664-1669
【文献】CHEN, Z et al.,Ligand-Directed Reticular Synthesis of Catalytically Active Missing Zirconium-Based Metal-Organic Frameworks,Journal of the American Chemical Society,2019年07月25日,Vol. 141,pp. 12229-12235
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 63/49
C07C 63/66
C07C 63/74
C07C 63/72
B01D 53/04
B01J 20/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価金属イオンと、式[I]
【化1】
[式[I]中、
X
1~X
3は、
式[V-1]又は式[V-2’]、
【化2】
(式[V-2’]中、Z
1
は、単結合、-C≡C-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2
-又は-C(=O)-を示す。
R
31
は、C1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基、3~6員ヘテロシクリル基、C1~6アルコキシ基、C6~10アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ハロゲノ基、C1~6ハロアルキル基、C6~10ハロアリール基、C1~6ハロアルコキシ基、C1~6アルキルチオ基、C6~10アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、C1~6アルキルスルフィニル基、C6~10アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、C1~6アルキルスルホニル基、C6~10アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基又は式[VI]で表される基を示す。)
【化3】
(式[VI]中、R
41
及びR
42
は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C6~10アリール基、C1~6アルキルカルボニル基又はC6~10アリールカルボニル基を示す。)
nは、R
31
の数を示しかつ0、1、2、3又は4であり、nが2以上のとき複数のR
31
は互いに同じでも異なってもよい。)で表される官能基を示し、X
1
、X
2
及びX
3
は同一であり、
aは、X
1の数を示しか
つ2であり
、a1は、R
1の数を示しかつ
0であり
、
bは、X
2の数を示しか
つ2であり
、b1は、R
2の数を示しかつ
0であり
、
cは、X
3の数を示しか
つ2であり
、c1は、R
3の数を示しかつ
0であ
る。
Y
1
、Y
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲノ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基を示す。ただし、多価金属イオンが、3価の金属イオンの場合、Y
1、Y
2は、それぞれ独立して、ハロゲノ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基を示す。]
で表されるカルボン酸イオンを含み、前記カルボン酸イオンと前記多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体。
【請求項2】
多価金属イオンが、元素の周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである請求項1に記載の金属有機構造体。
【請求項3】
多価金属イオンが、Zn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである請求項1又は2に記載の金属有機構造体。
【請求項4】
さらに、式[I]で示すカルボン酸イオン以外の有機配位子を構成成分として含む請求項1~
3のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
【請求項5】
ガスを請求項1~
4のいずれか1項に記載の金属有機構造体に接触させ、前記ガスを前記金属有機構造体の内部に吸着させる工程を有するガス貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な金属有機構造体や、係る金属有機構造体を用いたガス吸着方法に関する。
本願は、2019年5月13日に出願された日本国特許出願第2019-90662号及び2019年9月24日に出願された日本国特許出願第2019-172510号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
金属有機構造体(以下「MOF」ということがある。)は、金属イオンとそれらを連結する架橋性の有機配位子を組み合わせることで内部に空間(つまり細孔)を持つ高分子構造を有する固体状の物質であり、ガスの貯蔵や分離などの機能をもつ多孔性材料として、この十数年高い興味が持たれてきた。
架橋性の有機配位子としては、酸素ドナー配位子及び窒素ドナー配位子が多く用いられてきた。
【0003】
架橋性の有機配位子としてトリプチセン骨格を有するトリプチセン-9,10-ジカルボン酸、硝酸亜鉛及びジピリジルから得られるMOFが、ジアセチレン、酢酸アミル等の低分子化合物を吸着することが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、トリプチセンの各ベンゼン環に4-カルボキシフェニル基を各2つずつ対称に配置されたヘキサキス(4-カルボキシフェニル)トリプチセンが、カルボン酸基間の水素結合を介して分子内に細孔をもつ高分子構造の構造体を形成し、それらが、窒素分子、二酸化炭素分子を吸着することが知られている(非特許文献1参照)。
【0005】
さらに、トリプチセンの各ベンゼン環に4-カルボキシフェニル基を各2つずつ対称に配置されたヘキサキス(4-カルボキシフェニル)トリプチセンを有機配位子として、Fe3+、Cr3+及びSc3+の3価の金属イオンとのMOFが、3580m2/g~4280m2/gのBET比表面積を有し、水分子を吸着することが知られている(非特許文献2参照)。
【0006】
一方、水素社会の到来を迎えて、MOFで水素を吸着する研究も盛んにおこなわれている。例えば、下記構造を有するトリカルボン酸イオンと亜鉛クラスターイオンからなるMOFが、室温、90気圧下でMOF全体の6質量%の量の水素を吸着できることが知られている(特許文献2参照)。
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開2009/0098001号パンフレット
【文献】特開2018-058814号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】J.F.Stoddart, et al, Angew. Chem. Int. Ed., 2019, 58,1664-1669.
【文献】J.F.Stoddart, et al, J. Am. Chem. Soc., 2019, 141, 2900-2905.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
水素分子、窒素分子、二酸化炭素等のガスを実用的なレベルで吸着できるMOFは、未だ知られていない。
本発明は、水素分子、窒素分子、二酸化炭素等のガスを吸着できる新規のMOFを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、トリプチセンを母核とした3次元的な空間の広がりを有する有機配位子と多価金属イオンを用いて得られるMOFが、高い水素分子、窒素分子、二酸化炭素等のガス吸着能を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示す事項で特定される次のとおりのものである。
[1]多価金属イオンと、式[I]
【化2】
[式[I]中、
X
1~X
3は、それぞれ独立に、式[II]
【化3】
(式[II]中、Zは、単結合又は多価連結基を示し、kは、1~4のいずれかの整数を示し、*が記載された位置でベンゼン環と結合していることを意味し、以下においても同様の意味を有する。)で表される官能基を示し、
R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基、3~6員ヘテロシクリル基、C1~6アルコキシ基、C6~10アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ハロゲノ基、C1~6ハロアルキル基、C6~10ハロアリール基、C1~6ハロアルコキシ基、C1~6アルキルチオ基、C6~10アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、C1~6アルキルスルフィニル基、C6~10アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、C1~6アルキルスルホニル基、C6~10アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基又は式[III]で表される基を示す。
【化4】
(式[III]中、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C6~10アリール基、C1~6アルキルカルボニル基又はC6~10アリールカルボニル基を示す。)
aは、X
1の数を示しかつ0、1、2、3又は4であり、aが2以上のとき複数のX
1は互いに同じでも異なってもよい。
a1は、R
1の数を示しかつ0、1、2、3又は4であり、a1が2以上のとき複数のR
1は互いに同じでも異なってもよい。
bは、X
2の数を示しかつ0、1、2、3又は4であり、bが2以上のとき複数のX
2は互いに同じでも異なってもよい。
b1は、R
2の数を示しかつ0、1、2、3又は4であり、b1が2以上のとき複数のR
2は互いに同じでも異なってもよい。
cは、X
3の数を示しかつ0、1、2、3又は4であり、cが2以上のとき複数のX
3は互いに同じでも異なってもよい。
c1は、R
3の数を示しかつ0、1、2、3又は4であり、c1が2以上のとき複数のR
3は互いに同じでも異なってもよい。
ただし、a+b+cは2以上である。
Y
1、Y
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲノ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基を示す。ただし、多価金属イオンが3価金属イオンの場合、Y
1、Y
2は、それぞれ独立に、ハロゲノ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基を示す。]
で表されるカルボン酸イオンを含み、前記カルボン酸イオンと前記多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体。
[2]多価金属イオンが、元素の周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである[1]に記載の金属有機構造体。
[3]多価金属イオンが、Zn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである[1]又は[2]に記載の金属有機構造体。
[4]式[I]中のZの多価連結基が、2価又は3価の連結基である[1]~[3]のいずれか1つに記載の金属有機構造体。
[5]式[I]中のZの多価連結基は、無置換若しくは置換基(ただし、カルボキシ基は除く)を有するアルカンから誘導される2~4価の連結基、無置換若しくは置換基(ただし、カルボキシ基は除く)を有するエテンから誘導される2~4価の連結基、エチニレン基、無置換若しくは置換基(ただし、カルボキシ基は除く)を有するアリールから誘導される2~4価の連結基、無置換若しくは置換基(ただし、カルボキシ基は除く)を有するヘテロアリールから誘導される2~4価の連結基及びそれらの組合せからなる連結基群Aから選ばれる連結基、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-C(=O)-、下記式[IV-1]~[IV-3]
【化5】
(式中、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C6~10アリール基、C1~6アルキルカルボニル基又はC6~10アリールカルボニル基を示す。)で表される連結基及びそれらの組合せからなる連結基群Bから選ばれる連結基、又は連結基群Aから選ばれる連結基と連結基群Bから選ばれる連結基との組み合わせを示し、ただし、式[II]中のカルボン酸イオン基(CO
2
-)は、式[II]のZ中の炭素原子に結合している[1]~[4]のいずれか1つに記載の金属有機構造体。
[6]式[I]中、式[II]が、式[V-1]又は式[V-2]、
【化6】
(式[V-2]中、Z
1は、単結合、-C≡C-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-又は-C(=O)-を示す。
R
31は、C1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基、3~6員ヘテロシクリル基、C1~6アルコキシ基、C6~10アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ハロゲノ基、C1~6ハロアルキル基、C6~10ハロアリール基、C1~6ハロアルコキシ基、C1~6アルキルチオ基、C6~10アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、C1~6アルキルスルフィニル基、C6~10アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、C1~6アルキルスルホニル基、C6~10アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基又は式[VI]で表される基を示す。
【化7】
(式[VI]中、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C6~10アリール基、C1~6アルキルカルボニル基又はC6~10アリールカルボニル基を示す。)
nは、R
31の数を示しかつ0、1、2、3又は4であり、nが2以上のとき複数のR
31は互いに同じでも異なってもよい。
n1は、CO
2
-の数を示しかつ1又は2である。)である[1]~[5]のいずれか1つに記載の金属有機構造体。
[7]さらに、式[I]で示すカルボン酸イオン以外の有機配位子を構成成分として含む[1]~[6]のいずれか1つに記載の金属有機構造体。
[8]ガスを[1]~[7]のいずれか1つに記載の金属有機構造体に接触させ、前記ガスを前記金属有機構造体の内部に吸着させる工程を有するガス貯蔵方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のMOFを用いることにより、従来よりも多くの水素分子、二酸化炭素分子を吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で得られた金属有機構造体1の77Kにおける窒素吸着等温線を示す。
【
図2】実施例1で得られた金属有機構造体1の77Kにおける水素吸着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の金属有機構造体は、多価金属イオンと式[I]で表される有機配位子中のカルボン酸イオン基が結合してなる金属有機構造体である。
本発明に用いられる多価金属イオンは、元素周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであるのが好ましく、Zn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Sc、Cr、Al及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであるのが好ましい。また、多価金属イオンのうち、2価又は4価の金属イオンが好ましく、Zn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属イオンが好ましく、さらにCo、Ni、Cu、Zr及びZnから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンであるのが好ましい。
【0016】
これらの多価金属イオンは、種々の塩の形で供給される。具体的には、Zn(NO3)2・6H2O、Zn(NO3)2・4H2O、ZrCl4、ZrOCl2、Ni(NO3)2・6H2O、Mg(NO3)2・6H2O、Cu(NO3)2・xH2O、Cu(NO3)2・2.5H2O、Co(NO3)2・6H2O、Cr(NO3)3・9H2O、CrCl3・6H2O、Al(NO3)e・9HeO等を例示することができる。
【0017】
本発明に用いられる有機配位子は、式[I]で表されるカルボン酸イオンを含む。
式[I]中、X1~X3は、それぞれ独立に、式[II]で表される官能基を示す。式[II]中、Zは、単結合又は多価連結基を示す。
単結合とは、ベンゼン環上にカルボン酸イオン基(CO2
-)が直接結合することを意味する。
多価連結基は、2価以上であり、ベンゼン環とカルボン酸イオン基を連結することのできる連結基であれば、特に制限されない。中でも2価又は3価の連結基が好ましい。
【0018】
また、その構造も、ベンゼン環とカルボン酸イオン基を連結することのできる構造であれば特に制限されないが、中でも、無置換若しくは置換基(ただし、カルボキシ基は除く)を有するアルカンから誘導される2~4価の連結基、無置換若しくは置換基(ただし、カルボキシ基は除く)を有するエテンから誘導される2~4価の連結基、エチニレン基、無置換若しくは置換基(ただし、カルボキシ基は除く)を有するアリールから誘導される2~4価の連結基、無置換若しくは置換基(ただし、カルボキシ基は除く)を有するヘテロアリールから誘導される2~4価の連結基及びそれらの組合せからなる連結基群Aから選ばれる連結基、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-C(=O)-、下記式[IV-1]~[IV-3]
【0019】
【0020】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C6~10アリール基、C1~6アルキルカルボニル基又はC6~10アリールカルボニル基を示す。)で表される連結基及びそれらの組合せからなる連結基群Bから選ばれる連結基、又は連結基群Aから選ばれる連結基と連結基群Bから選ばれる連結基との組み合わせを好ましく例示することができる。ただし式[II]中のカルボン酸イオン基(CO2
-)は、式[II]のZ中の炭素原子に結合しているものとする。
【0021】
ここで、本発明において、「無置換(unsubstituted)」の用語は、母核となる基のみであることを意味する。「置換」との記載がなく母核となる基の名称のみで記載しているときは、別段の断りがない限り「無置換」の意味である。
一方、「置換基を有する」とは、「置換(substituted)」と同義であり、母核となる基のいずれかの水素原子が、母核と同一又は異なる構造の官能基(置換基)で置換されていることを意味する。したがって、「置換基」は、母核となる官能基に結合した他の官能基である。置換基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。2つ以上の置換基は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
「C1~6」などの用語は、母核となる基の炭素原子数が1~6個などであることを表している。この炭素原子数には、置換基の中に在る炭素原子の数を含まない。例えば、置換基としてエトキシ基を有するブチル基は、C2アルコキシC4アルキル基に分類する。
【0022】
「置換基」は化学的に許容され、本発明の効果を有する限りにおいて特に制限されない。以下に「置換基」となり得る基を例示する。
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのC1~6アルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基などのC2~6アルケニル基;
エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基などのC2~6アルキニル基;
【0023】
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、キュバニル基などのC3~8シクロアルキル基;
フェニル基、ナフチル基などのC6~10アリール基;
ベンジル基、フェネチル基などのC6~10アリールC1~6アルキル基;
3~6員ヘテロシクリル基;
3~6員へテロシクリルC1~6アルキル基;
【0024】
水酸基;
メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1~6アルコキシ基;
ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基などのC2~6アルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基などのC2~6アルキニルオキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基などのC6~10アリールオキシ基;
ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのC6~10アリールC1~6アルコキシ基;
チアゾリルオキシ基、ピリジルオキシ基などの5~6員ヘテロアリールオキシ基;
チアゾリルメチルオキシ基、ピリジルメチルオキシ基などの5~6員ヘテロアリールC1~6アルキルオキシ基;
【0025】
ホルミル基;
アセチル基、プロピオニル基などのC1~6アルキルカルボニル基;
ホルミルオキシ基;
アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基などのC1~6アルキルカルボニルオキシ基;
ベンゾイル基などのC6~10アリールカルボニル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基などのC1~6アルコキシカルボニル基;
メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、i-プロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基などのC1~6アルコキシカルボニルオキシ基;
カルボキシ基;
【0026】
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基などのハロゲノ基;
フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル基、パーフルオロイソプロピル基、4-フルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、1-クロロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、4-クロロブチル基、パークロロヘキシル基、2,4,6-トリクロロヘキシル基などのC1~6ハロアルキル基;
2-クロロ-1-プロペニル基、2-フルオロ-1-ブテニル基などのC2~6ハロアルケニル基;
4,4-ジクロロ-1-ブチニル基、4-フルオロ-1-ペンチニル基、5-ブロモ-2-ペンチニル基などのC2~6ハロアルキニル基;
トリフルオロメトキシ基、2-クロロ-n-プロポキシ基、2,3-ジクロロブトキシ基などのC1~6ハロアルコキシ基;
2-クロロプロペニルオキシ基、3-ブロモブテニルオキシ基などのC2~6ハロアルケニルオキシ基;
クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基などのC1~6ハロアルキルカルボニル基;
【0027】
アミノ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのC1~6アルキル置換アミノ基;
アニリノ基、ナフチルアミノ基などのC6~10アリールアミノ基;
ベンジルアミノ基、フェネチルアミノ基などのC6~10アリールC1~6アルキルアミノ基;
ホルミルアミノ基;
アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基、i-プロピルカルボニルアミノ基などのC1~6アルキルカルボニルアミノ基;
メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n-プロポキシカルボニルアミノ基、i-プロポキシカルボニルアミノ基などのC1~6アルコキシカルボニルアミノ基;
アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、N-フェニル-N-メチルアミノカルボニル基などの無置換もしくは置換基を有するアミノカルボニル基;
イミノメチル基、(1-イミノ)エチル基、(1-イミノ)-n-プロピル基などのイミノC1~6アルキル基;
N-ヒドロキシ-イミノメチル基、(1-(N-ヒドロキシ)-イミノ)エチル基、(1-(N-ヒドロキシ)-イミノ)プロピル基、N-メトキシ-イミノメチル基、(1-(N-メトキシ)-イミノ)エチル基などの置換もしくは無置換のN-ヒドロキシイミノC1~6アルキル基;
メトキシイミノ基、エトキシイミノ基、n-プロポキシイミノ基、i-プロポキシイミノ基、n-ブトキシイミノ基などのC1~6アルコキシイミノ基;
アミノカルボニルオキシ基;
エチルアミノカルボニルオキシ基、ジメチルアミノカルボニルオキシ基などのC1~6アルキル置換アミノカルボニルオキシ基;
【0028】
メルカプト基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1~6アルキルチオ基;
トリフルオロメチルチオ基、2,2,2-トリフルオロエチルチオ基などのC1~6ハロアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基などのC6~10アリールチオ基;
チアゾリルチオ基、ピリジルチオ基などの5~6員ヘテロアリールチオ基;
【0029】
メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、t-ブチルスルフィニル基などのC1~6アルキルスルフィニル基;
トリフルオロメチルスルフィニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルフィニル基などのC1~6ハロアルキルスルフィニル基;
フェニルスルフィニル基などのC6~10アリールスルフィニル基;
チアゾリルスルフィニル基、ピリジルスルフィニル基などの5~6員ヘテロアリールスルフィニル基;
【0030】
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基などのC1~6アルキルスルホニル基;
トリフルオロメチルスルホニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基などのC1~6ハロアルキルスルホニル基;
フェニルスルホニル基などのC6~10アリールスルホニル基;
チアゾリルスルホニル基、ピリジルスルホニル基などの5~6員ヘテロアリールスルホニル基;
メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、t-ブチルスルホニルオキシ基などのC1~6アルキルスルホニルオキシ基;
トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニルオキシ基などのC1~6ハロアルキルスルホニルオキシ基;
【0031】
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基などのトリC1~6アルキル置換シリル基;
トリフェニルシリル基などのトリC6~10アリール置換シリル基;
シアノ基;
ニトロ基。
【0032】
また、これらの「置換基」は、当該置換基中のいずれかの水素原子が、異なる構造の置換基で置換されていてもよい。その場合の「異なる構造の置換基」としては、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等を挙げることができる。
【0033】
また、上記の「3~6員ヘテロシクリル基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~4個のヘテロ原子を環の構成原子として含むものである。ヘテロシクリル基は、単環及び多環のいずれであってもよい。多環ヘテロシクリル基は、少なくとも一つの環がヘテロ環であれば、残りの環が飽和脂環、不飽和脂環又は芳香族炭化水素環のいずれであってもよい。「3~6員ヘテロシクリル基」としては、3~6員飽和ヘテロシクリル基、5~6員ヘテロアリール基、5~6員部分不飽和ヘテロシクリル基などを挙げることができる。
【0034】
3~6員飽和ヘテロシクリル基としては、アジリジニル基、エポキシ基、ピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、チアゾリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基などを挙げることができる。
【0035】
5員ヘテロアリール基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基などを挙げることができる。
6員ヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基などを挙げることができる。
ただし、Zの多価連結基において、多価連結基の母核となる骨格の置換基には、カルボキシ基は含まないものとする。
【0036】
Z中、アルカンから誘導される2~4価の連結基とは、アルカンを母核として、アルカンを構成する炭素上の任意の水素2~4個を結合手に変換したものであり、具体的には、以下に示す連結基を例示することができる。なお、結合手とは、他の官能基と結合を形成することのできる電子が配置されている状態を意味し、炭素上に記載されている「-」は、結合手を表す。また、どの結合手とカルボン酸イオン基及びトリプチセンのベンゼン環が結合するかは、任意に決めることができる。以下同様である。
【0037】
【0038】
Z中、エテンから誘導される2~4価の連結基とは、エテンを母核として、アルカンを構成する炭素上の任意の水素2~4個を結合手に変換したものであり、具体的には、以下に示す連結基を例示することができる。
【0039】
【0040】
Z中、アリールから誘導される2~4価の連結基とは、アリールを母核として、アリールを構成する炭素上の任意の水素2~4個を結合手に変換したものであり、具体的には、以下に示す連結基を例示することができる。
【0041】
【0042】
Z中、ヘテロアリールから誘導される2~4価の連結基とは、ヘテロアリールを母核として、ヘテロアリールを構成するヘテロ原子上又は炭素上の任意の水素2~4個を結合手に変換したものであり、具体的には、以下に示す連結基を例示することができる。
【0043】
【0044】
Z中の連結基群Aの中のそれらの組合せとは、アルカンから誘導される2価~4価の連結基、エテンから誘導される2~4価の連結基、エチニレン基、アリールから誘導される2~4価の連結基及びヘテロアリールから誘導される2~4価の連結基からなる群から化学的に許容される範囲で、2以上を選択し、結合手で結合して全体として多価の連結基を構成する組合せを意味する。
上記のように組み合わせた場合に、連結基の価数は特に制限されないが、2価又は3価が好ましい。そのような組合せとして、具体的には、以下に示す連結基を例示することができる。
【0045】
【0046】
式[IV-1]~[IV-3]中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C6~10アリール基、C1~6アルキルカルボニル基又はC6~10アリールカルボニル基を示す。
【0047】
「C1~6アルキル基」は、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。「C1~6アルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、i-ヘキシル基などを挙げることができる。
【0048】
「C6~10アリール基」は、単環及び多環のいずれであってもよい。多環アリール基は、少なくとも一つの環が芳香環であれば、残りの環が飽和脂環、不飽和脂環又は芳香環のいずれであってもよい。
「C6~10アリール基」としては、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基などが挙げられる。
【0049】
「C1~6アルキルカルボニル基」としては、アセチル基、プロピオニル基などを挙げることができる。
「C6~10アリールカルボニル基」としては、ベンゾイル基、1-ナフチルカルボニル基などを挙げることができる。
【0050】
連結基群Bにおけるそれらの組合せとして具体的には、以下に示す連結基を例示することができる。
【0051】
【0052】
連結基群Aから選ばれる連結基と連結基群Bから選ばれる連結基との組み合わせとして、具体的に、以下に示す連結基を例示することができる。
【0053】
【0054】
式[II]で表される官能基中、特に、式[V-1]又は式[V-2]で表される官能基を好ましく例示することができる。
式[V-2]中、R31は、C1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基、3~6員ヘテロシクリル基、C1~6アルコキシ基、C6~10アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ハロゲノ基、C1~6ハロアルキル基、C6~10ハロアリール基、C1~6ハロアルコキシ基、C1~6アルキルチオ基、C6~10アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、C1~6アルキルスルフィニル基、C6~10アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、C1~6アルキルスルホニル基、C6~10アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基又は式[VI]で表される基を示す。
【0055】
「C1~6アルキル基」、「C6~10アリール基」としては、R21において例示した具体例と同様ものを例示することができる。
「C3~8シクロアルキル基」、「3~6員ヘテロシクリル基」、「C1~6アルコキシ基」、「C6~10アリールオキシ基」、「ヘテロアリールオキシ基」、「ハロゲノ基」、「C1~6ハロアルキル基」、「C1~6ハロアルコキシ基」、「C1~6アルキルチオ基」、「C6~10アリールチオ基」、「ヘテロアリールチオ基」、「C1~6アルキルスルフィニル基」、「C6~10アリールスルフィニル基」、「ヘテロアリールスルフィニル基」、「C1~6アルキルスルホニル基」、「C6~10アリールスルホニル基」、「ヘテロアリールスルホニル基」として、「置換基」において例示した具体例と同様のものを例示することができる。
「C6~10ハロアリール基」として、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基などを挙げることができる。
【0056】
式[VI]中、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C6~10アリール基、C1~6アルキルカルボニル基又はC6~10アリールカルボニル基を示し、具体的には、R21において例示した具体例と同様のものを例示することができる。
式[VI]として、具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのC1~6アルキル置換アミノ基;アニリノ基、ナフチルアミノ基などのC6~10アリールアミノ基;アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基、i-プロピルカルボニルアミノ基などのC1~6アルキルカルボニルアミノ基;ベンゾイルアミノ基などを挙げることができる。
【0057】
式[V-2]で表される基として、以下のような官能基を例示することができる。
【0058】
【0059】
式[I]中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基、3~6員ヘテロシクリル基、C1~6アルコキシ基、C6~10アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ハロゲノ基、C1~6ハロアルキル基、C6~10ハロアリール基、C1~6ハロアルコキシ基、C1~6アルキルチオ基、C6~10アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、C1~6アルキルスルフィニル基、C6~10アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、C1~6アルキルスルホニル基、C6~10アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基又は式[III]で表される基を示す。
また、式[III]中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、C1~6アル
キル基、C6~10アリール基、C1~6アルキルカルボニル基又はC6~10アリールカルボニル基を示す。
R1~R3として、具体的には、R31において例示した具体例、「置換基」において例示した具体例及び式[VI]において例示した具体例と同様ものを例示することができる。
【0060】
式[I]中、Y1、Y2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲノ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基を示し、具体的には、R21において例示した具体例及び「置換基」において例示した具体例と同様のものを例示することができる。ただし、多価金属イオンが3価の金属イオンの場合、Y1、Y2は、それぞれ独立に、ハロゲノ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基を示す。
【0061】
式[I]で表されるカルボン酸イオンとして、具体的には、以下のような構造を例示することができる。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
本発明の金属有機構造体は、式[I]で表わされるカルボン酸イオンである有機配位子(以下、式[I]で表される有機配位子という)以外の有機配位子を含むことができる。そのような有機配位子として、具体的には、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、5-シアノイソフタル酸、1,3,5-トリメシン酸、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、1,3,5-トリメシン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、3,5-ジカルボキシピリジン、2,4-ジカルボキシピラジン、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、9,10-アントラセンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、[1,1’:4’,1”]ターフェニル-3,3”,5,5”-テトラカルボン酸、ビフェニル-3,3”,5,5”-テトラカルボン酸、3,3’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルメタン、1,3,5-トリス(4’-カルボキシ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)トリアジン、1,2-ビス(4-カルボキシ-3-ニトロフェニル)エテン、1,2-ビス(4-カルボキシ-3-アミノフェニル)エテン、trans,trans-ムコン酸、フマール酸、ベンツイミダゾール、イミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピラジン、4,4’-ジピリジル、1,2-ジ(4-ピリジル)エチレン、2,7-ジアザピレン、4,4’-アゾビスピリジン、ビス(3-(4-ピリジル)-2,4-ペンタンジオナト)銅等を例示することができる。
【0067】
式[I]で表される有機配位子と、式[I]以外の有機配位子を混合して用いる場合の混合モル比は特に制限されないが、例えば、ピラー分子によって架橋して、ピラードレイヤー型のような3次元構造を構築する場合のピラー分子であれば、式[I]で表される有機配位子に対して、式[I]以外の有機配位子を過剰に用いるのが好ましい。
【0068】
本発明の金属有機構造体の製造方法として、特に制限されず、溶媒拡散法、溶媒撹拌法、水熱法等の溶液法、反応溶液にマイクロ波を照射して系全体を短時間に均一に加熱するマイクロ波法、反応容器に超音波を照射することにより、反応容器中で圧力の変化が繰り返し起こり、この圧力の変化により、溶媒が気泡を形成し崩壊するキャビテーションと呼ばれる現象がおき、その際に約5000K、10000barもの高エネルギー場が局所的に形成される結晶の各生成の反応場となる超音波法、溶媒を用いずに、金属イオン発生源と有機配位子を混合する固相合成法、結晶水程度の水を添加して金属イオン発生源と有機配位子を混合するLAG(liquid assisted grinding)法等のいずれの方法も用いることができる。
【0069】
例えば、金属イオンの発生源となる金属化合物と溶媒とを含有する第一溶液、式[I]の原料となるカルボン酸と溶媒とを含有する第二溶液、及び、必要に応じて、他の有機配位子と溶媒とを含有する第三溶液をそれぞれ調製する工程と、第一溶液と、第二溶液及び第三溶液を混合して反応液を調製し、この反応液を加熱することで、金属有機構造体を得る工程とを備える。第一~第三溶液は別々に調製する必要はなく、例えば、上記金属化合物、式[I]の原料となるカルボン酸、他の有機配位子、溶媒とを一度に混合して1つの溶液を調製してもよい。
【0070】
上記金属化合物と式[I]の原料となるカルボン酸、必要に応じて他の有機配位子との混合モル比は、得られる金属有機構造体の細孔サイズ、表面特性に応じて任意に選択することができるが、式[I]の原料となるカルボン酸、必要に応じて他の有機配位子に対して金属化合物を2モル以上、さらに3モル以上用いるのが好ましい。
また、反応液中の上記金属イオンの濃度は、25~200mol/Lの範囲が好ましい。
【0071】
式[I]で表される有機配位子の反応液中の濃度は、10~100mol/Lの範囲が好ましい。
式[I]以外の有機配位子の反応液中の濃度は、25~100mol/Lであるのが好ましい。
【0072】
用いられる溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)、N,N-ジエチルホルムアミド(以下、「DEF」という。)、N,N-ジメチルアセトアミド及び水からなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、DMF、DEF又はジメチルアセトアミドのいずれかを単独で用いるか、あるいはDMF/水混合溶媒、DEF/水混合溶媒又はN,N-ジメチルアセトアミド/水混合溶媒を用いることが好ましい。
また、必要に応じてギ酸、酢酸等の酸成分を添加することもできる。
【0073】
反応液の加熱温度は、80℃以上であることが好ましく、100~140℃であることがより好ましい。反応温度が100℃以上であると、目的の金属有機構造体が生成しやすい傾向にある。また、反応温度が140℃を以下であると、DMF、DEF等の溶媒が分解しにくい。
【0074】
本発明の金属有機構造体を用いたガスの貯蔵方法は、特に制限されないが、本発明の金属有機構造体とガスを接触させ、前記ガスを前記金属有機構造体の内部に吸着させる工程を有する方法が好ましく、接触させる方法は、特に制限されない。例えば、タンク中に、本発明のガス金属有機構造体を充填してガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法、タンクの内壁を構成する表面に本発明の金属有機構造体を担持させてガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法、タンクを本発明の金属有機構造体を含む材料で成形してガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法などが挙げられる。
【0075】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に範囲に限定されない。
【実施例1】
【0076】
(金属有機構造体の製造)
【0077】
【0078】
4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-(9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサ安息香酸(以下、「有機配位子1」という。)(101mg)と硝酸亜鉛六水和物(190mg)をDEF(2mL)に溶解させた。室温で10分撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、24時間加熱した。室温冷却し、生成した結晶をろ別し、DEFで洗浄後、クロロホルムで洗浄した。クロロホルムに24時間浸漬した。濾別後、固体を真空乾燥し、金属有機構造体1(61.4mg)を得た。
【実施例2】
【0079】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃とした以外は実施例1と同様に行い、金属有機構造体2(92.0mg)を得た。
【実施例3】
【0080】
DEFの代わりにDMFとした以外は実施例1と同様に行い、金属有機構造体3(75.3mg)を得た。
【実施例4】
【0081】
DEFの代わりにDMFにする以外実施例2と同様1に行い、金属有機構造体4(97.9mg)を得た。
【実施例5】
【0082】
10mL遠沈管に有機配位子1(61.6mg)にDMF(0.8mL)、トリエチルアミン(0.05mL)混合溶液を加え、室温で15分撹拌し溶液1とした。別の10mL遠沈管に酢酸亜鉛二水和物(104.5mg)にDMF(1.0mL)を加え、室温で15分撹拌し溶液2とした。溶液2を溶液1に加え、室温で2.5時間撹拌した。DMF(5.0mL)を加え、遠心分離した。デカンテーション後、DMFに浸漬させた。翌日、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムで洗浄した。遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに48時間浸漬させた。遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに48時間浸漬させた。遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに72時間浸漬させた。遠心分離し、デカンテーション後、150℃で6時間減圧乾燥し金属有機構造体5(78.3mg)を得た。
【実施例6】
【0083】
20mLバイアルに有機配位子1(100.9mg)とオキシ塩化ジルコニウム八水和物(102.2 mg)をDMF (5.2 mL)に溶解させた。さらに、ギ酸(0.7mL)を加えた。120℃のオーブンで24時間加熱した。室温に冷却後、DMFで洗浄し、遠心分離し、デカンテーションの操作を3回行った。24時間DMFに浸漬させ、遠心分離し、デカンテーションの操作を3回行った。24時間、メタノールに浸漬させ、遠心分離し、デカンテーションの操作を3回行ったのち、150℃で6時間減圧乾燥して金属有機構造体6(127.9mg)を得た。
【実施例7】
【0084】
有機配位子1(101.6mg)と硝酸亜鉛六水和物(93.3mg)、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)(17.0mg)にDMF2.1mLを加え、室温で10分間撹拌した。ろ過後、オートクレーブに移し、120℃のオーブンで48時間加熱した。室温に冷却し、デカンテーションした。DMF10mLを加え、室温で30分間撹拌後、24時間DMFに浸漬させた。デカンテーション後、クロロホルム10mLを加え、室温で30分間撹拌した。デカンテーション後、48時間、クロロホルムに浸漬させた。遠心分離し、デカンテーション後、150℃で6時間減圧乾燥して金属有機構造体7(73.6mg)を得た。
【実施例8】
【0085】
50mLナスフラスコに有機配位子1(100.3mg)とエタノール(0.34mL)を加え溶液3とした。別の50mLナスフラスコに硝酸銅ヘミ五水和物(142.5mg)を水(4.1mL)に溶解させ溶液4とした。溶液3に溶液4を加え、得られた溶液をオートクレーブに移し、140℃のオーブンで24時間加熱した。室温に冷却後、遠心分離、デカンテーションした。水で洗浄し、遠心分離、デカンテーションの操作を3回行った。エタノールで洗浄し、遠心分離し、デカンテーションの操作を3回行ったのち150℃で6時間減圧乾燥して金属有機構造体8(62.1mg)を得た。
【実施例9】
【0086】
オートクレーブに有機配位子1(100.4mg、0.103mmol)、硝酸マグネシウム六水和物(79.4mg,、0.310mmol)加え、テトラヒドロフラン(以下、「THF」という。):水:1M水酸化ナトリウム水溶液=7:3:2である混合溶媒(2.5 mL)を加えた。100℃のオーブンで24時間加熱した。室温に冷却後、遠心分離、デカンテーションした。DMFにより洗浄、遠心分離、デカンテーションの操作を3回行った。クロロホルムで洗浄し、加圧ろ過を行った。クロロホルムに24時間浸漬させ、加圧ろ過後、150℃で6時間減圧乾燥して金属有機構造体9(40.2mg)を得た。
【実施例10】
【0087】
硝酸銅三水和物(73.4mg)と、有機配位子1(101.7mg)をDMF(2.1mL)に溶解させた。室温で10分間撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、36時間加熱した。室温に冷却し、DMFを加え、遠心分離し、デカンテーションした。クロロホルムを加え、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を真空乾燥し、金属有機構造体10(97.2mg)を得た。
【実施例11】
【0088】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃とした以外は実施例10と同様に行い、金属有機構造体11(72.6mg)を得た。
【実施例12】
【0089】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例10と同様に行い、金属有機構造体12(78.3mg)を得た。
【実施例13】
【0090】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例11と同様に行い、金属有機構造体13(92.8mg)を得た。
【0091】
[参考例1]
4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-(9,10-ジブロモ-9,10-ジヒドロ- 9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサ安息香酸(以下、「有機配位子2」という。)の製造
【0092】
(工程1)2,3,6,7,9,10,14,15-オクタブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10[1’,2’]-ベンゼノアントラセンの合成
2つ口フラスコに9,10-ジブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10[1’,2’]-ベンゼノアントラセン(0.504g)と、鉄粉(80.6mg)と、1,2-ジクロロエタン(6mL)を加え、そこに臭素(0.37mL)と、1,2-ジクロロエタン(6mL)の混合溶液をゆっくり滴下した。80℃で1時間撹拌後、室温に戻し、チオ硫酸ナトリウム水溶液でクエンチ後、吸引ろ過し、2,3,6,7,9,10,14,15-オクタブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10[1’,2’]-ベンゼノアントラセン(0.574g)をオフホワイト固体として得た。
【0093】
(工程2)有機配位子2の合成
シュレンクに工程1で得られた2,3,6,7,9,10,14,15-オクタブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10[1’,2’]-ベンゼノアントラセン (0.502 g)、炭酸セシウム(3.91g)、4-メトキシカルボニルフェニルボロン酸(2.13g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.233g)を加えた後、THF(50mL)を加えた。2日間撹拌しながら加熱還流後、室温に戻し、溶媒を減圧留去した。ジクロロメタンで抽出後、無水硫酸マグネシウムで脱水し、自然ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、固体を得た。得られた固体を酢酸エチルに溶解させた後、ヘキサンを加えて固体を沈殿させた。得られた固体をナスフラスコに移し、そこに水酸化カリウム(0.933g)を加え、メタノール/THF/水の混合溶媒(1:1:1 合計150mL)を加え、終夜撹拌しながら加熱還流した。室温に戻して、濃塩酸を加えた後、有機溶媒を減圧留去した。析出した固体を吸引ろ過して有機配位子2(0.168g)を無色固体として得た。
【実施例14】
【0094】
硝酸亜鉛六水和物(66.7mg)と、参考例1で得られた有機配位子2(41.3mg)をDMF(0.71mL)に溶解させた。室温で10分間撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、48時間加熱した。室温に冷却し、DMFを加え、遠心分離し、デカンテーションした。クロロホルムを加え、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を真空乾燥し、金属有機構造体14(26.0mg)を得た。
【実施例15】
【0095】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃にしたこと、加熱する時間を24時間にしたこと以外は実施例14と同様に行い、金属有機構造体15(30.9mg)を得た。
【実施例16】
【0096】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例14と同様に行い、金属有機構造体16(29.9mg)を得た。
【実施例17】
【0097】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例15と同様に行い、金属有機構造体17(24.0mg)を得た。
【実施例18】
【0098】
有機配位子2(90.6mg、0.080mmol)、四塩化ジルコニウム(111.9mg、0.48mmol)、DMF(6.3mL)、水(0.1ml、72eq.)、酢酸(0.87g、180eq.)をスクリューキャップバイアルに入れ、超音波処理を行った。その後、密閉し、120℃で、24時間加熱した。室温に冷却し、遠心分離し、デカンテーションして固体を得た。その固体にDMFを加え、遠心分離し、デカンテーションする操作を3回繰り返した。アセトンに溶媒を変更し、同様の操作を3回繰り返し、固体を洗浄した後にアセトンに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を150℃で6時間程度真空乾燥し、金属有機構造体18(131.3mg)を得た。
【0099】
(参考例2)
4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-((9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサキス(エチン-2,1-ジイル))ヘキサ安息香酸(以下、「有機配位子3」という。)の合成
【0100】
【0101】
(工程1)4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-((9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサキス(エチン-2,1-ジイル))ヘキサ安息香酸ヘキサメチルの合成
100mLシュレンクに2,3,6,7,14,15-ヘキサブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン(0.737g、1.01mmol)、CuI(43.0mg、0.226mmol)、PdCl2(PPh3)2(98.6mg、0.104mmol)、PPh3(53.5mg、0.204mmol)、4-エチニル安息香酸メチル(1.30g、8.14mmol)を加え、脱気したトリエチルアミン22mLを加えた。2日間撹拌しながら加熱還流後、溶媒を減圧留去した。ジクロロメタンに溶解させ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン~酢酸エチル)を用いて精製後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去して固体を得た。得られた固体を酢酸エチル、ヘキサンで再沈殿させ、吸引ろ過して4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-((9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサキス(エチン-2,1-ジイル))ヘキサ安息香酸ヘキサメチルを茶色固体(0.504g、0.419mmol)として得た(収率41.5%)。
【0102】
(工程2)有機配位子3の合成
300mLナスフラスコに4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-((9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサキス(エチン-2,1-ジイル))ヘキサ安息香酸ヘキサメチル(0.413g、0.343mmol)と水酸化カリウム(1.58g、28.1mmol)を加え、MeOH、THF、H2Oの混合溶媒(1:1:1;合計150mL)を加え、終夜撹拌しながら加熱還流した。室温に戻した後、濃塩酸を加え、有機溶媒を減圧留去した。析出した固体を吸引ろ過して有機配位子3を茶色固体(0.291g、0.260mmol)として得た(収率75.8%)。
【0103】
(参考例3)
4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-((9,10-ジブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサキス(エチン-2,1-ジイル))ヘキサ安息香酸(以下、「有機配位子4」という。)の合成
【0104】
【0105】
(工程1)4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-((9,10-ジブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサキス(エチン-2,1-ジイル))ヘキサ安息香酸ヘキサメチルの合成
100mLシュレンクに2,3,6,7,9,10,14,15-オクタブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン(0.917g、1.04mmol)、CuI(41.5mg、0.278mmol)、PdCl2(PPh3)2(74.5mg、0.106mmol)、PPh3(57.3mg、0.204mmol)、4-エチニル安息香酸メチル(1.30g、8.10mmol)を加え、脱気したトリエチルアミン22mLを加えた。2日間撹拌しながら加熱還流後、溶媒を減圧留去した。ジクロロメタンに溶解させ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン~酢酸エチル)を用いて精製後、溶媒をロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去して固体を得た。得られた固体を酢酸エチル、ヘキサンで再沈殿させ、吸引ろ過して4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-((9,10-ジブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサキス(エチン-2,1-ジイル))ヘキサ安息香酸ヘキサメチルを茶色固体(1.19g、0.847mmol)として得た(収率84.0%)。
【0106】
(工程2)有機配位子4の合成
300mLナスフラスコに4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-((9,10-ジブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサイル)ヘキサキス(エチン-2,1-ジイル))ヘキサ安息香酸ヘキサメチル(0.899g、0.660mmol)と水酸化カリウム(0,767g、11.7mmol)を加え、MeOH、THF、H2Oの混合溶媒(1:1:1;合計150mL)を加え、終夜撹拌しながら加熱還流した。室温に戻した後、濃塩酸を加え、有機溶媒を減圧留去した。析出した固体を吸引ろ過して有機配位子4を茶色固体(0.767g、0.600mmol)として得た(収率90.9%)。
【0107】
(参考例4)
9,10-ジブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキ
サカルボン酸(以下、「有機配位子5」という。)の合成
【0108】
【0109】
(工程1)9,10-ジブロモ-2,3,6,7,14,15-ヘキサメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセンの合成
100mLシュレンクに2,3,6,7,9,10,14,15-オクタブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン(114mg、0.128mmol)、PdCl2(PPh3)2(42.6mg、0.0608mmol)を加え、脱水THFを15mL加えた。60°Cで30分撹拌後、1.09Mトリメチルアルミニウムヘキサン溶液(1.8mL、2.0mmol)を加え、撹拌しながら18時間加熱還流させた。0°Cに冷却後、1M塩化水素水溶液で反応を停止させた。クロロホルムで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)を用いて精製後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去させ、固体を得た。得られた固体をメタノールで洗浄し、吸引ろ過をして9,10-ジブロモ-2,3,6,7,14,15-ヘキサメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセンを無色固体(42.4mg、0.0854)として得た(収率66.7%)。
【0110】
(工程2)有機配位子5の合成
50mL二つ口フラスコに9,10-ジブロモ-2,3,6,7,14,15-ヘキサメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン(1.12g、2.26mmol)、過マンガン酸カリウム(19.0g、120mmol)、ピリジン5mL、水5mLを加え、撹拌しながら24時間加熱還流させた。室温に戻し、セライトろ過し、残渣を熱水で洗浄後、ろ液に濃塩酸を酸性になるまで加えた。酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去させ、有機配位子5を無色固体(575mg、0.851mmol)として得た(収率37.7%)。
【実施例19】
【0111】
硝酸亜鉛六水和物(98.8mg)と有機配位子3(60.9mg)をDMF(1.11mL)に溶解させた。室温で10分間撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、48時間加熱した。室温に冷却し、DMFを加え、遠心分離し、デカンテーションした。クロロホルムを加え、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を真空乾燥し、金属有機構造体19(36.0mg)を得た。
【実施例20】
【0112】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃にし、加熱する時間を24時間にしたこと以外は実施例19と同様に行い、金属有機構造体20(38.7mg)を得た。
【実施例21】
【0113】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例19と同様に行い、金属有機構造体21(46.1mg)を得た。
【実施例22】
【0114】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例20と同様に行い、金属有機構造体22(66.1mg)を得た。
【実施例23】
【0115】
硝酸亜鉛六水和物(143mg)と有機配位子4(100mg)をDMF(1.6mL)に溶解させた。室温で10分間撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、24時間加熱した。室温に冷却し、DMFを加え、遠心分離し、デカンテーションした。クロロホルムを加え、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を真空乾燥し、金属有機構造体23(101mg)を得た。
【実施例24】
【0116】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃にしたこと以外は実施例23と同様に行い、金属有機構造体24(103mg)を得た。
【実施例25】
【0117】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例23と同様に行い、金属有機構造体25(79.4mg)を得た。
【実施例26】
【0118】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例24と同様に行い、金属有機構造体26(125mg)を得た。
【実施例27】
【0119】
硝酸亜鉛六水和物(266mg)と有機配位子5(100mg)をDMF(3.0mL)に溶解させた。室温で10分間撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、24時間加熱した。室温に冷却し、DMFを加え、遠心分離し、デカンテーションした。クロロホルムを加え、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を真空乾燥し、金属有機構造体27(59.2mg)を得た。
【実施例28】
【0120】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃にしたこと以外は実施例27と同様に行い、金属有機構造体28(82.6mg)を得た。
【実施例29】
【0121】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例27と同様に行い、金属有機構造体29(73.1mg)を得た。
【実施例30】
【0122】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例28と同様に行い、金属有機構造体30(80.9mg)を得た。
【実施例31】
【0123】
有機配位子2の代わりに有機配位子5とした以外は実施例18と同様に行い、金属有機構造体31(78.3mg)を得た。
【実施例32】
【0124】
硝酸亜鉛六水和物(105mg)と9,10-dihydro-9,10-[1,2]benzenoanthracene-2,3,6,7,14,15-hexacarboxylicacid(以下、「有機配位子6」という。)(93.1mg)をDMF(1.2mL)に溶解させた。室温で10分間撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、24時間加熱した。室温に冷却し、DMFを加え、遠心分離し、デカンテーションした。クロロホルムを加え、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を真空乾燥し、金属有機構造体32(27.6mg)を得た。
【実施例33】
【0125】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃にしたこと、以外は実施例32と同様に行い、金属有機構造体33(35.0mg)を得た。
【実施例34】
【0126】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例32と同様に行い、金属有機構造体34(30.7mg)を得た。
【実施例35】
【0127】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例33と同様に行い、金属有機構造体35(33.2mg)を得た。
【実施例36】
【0128】
有機配位子2の代わりに有機配位子6とした以外は実施例18と同様に行い、金属有機構造体36(94.1mg)を得た。
【0129】
(参考例5)
4,4’,4’’,4’’’,4’’’’,4’’’’’-(9,10-dimethyl-9,10-dihydro-9,10-[1,2]benzenoanthracene-2,3,6,7,14,15-hexayl)hexabenzoic acid(以下、「有機配位子7」という。)の合成
【0130】
【0131】
(工程1)9,10-ジメチル-2,3,6,7,14,15-ヘキサブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10[1’,2’]-ベンゼノアントラセンの合成
9,10-ジメチルトリプチセン(7.48g、26.6mmol)と鉄粉(608mg)の1,2-ジクロロエタン溶液(270mL)に臭素(8.3mL、25.6g、160mmol)を滴下した。10時間加熱撹拌後、室温に戻し、チオ硫酸ナトリウム水溶液で反応を停止した。ジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して溶媒を減圧留去した。得られた固体をジクロロメタンで洗浄し、ろ過してオフホワイト固体として目的物(20.1g、26.6mmol、quant.)を得た。
【0132】
(工程2)有機配位子7の合成
窒素雰囲気下、100mLシュレンクに9,10-ジメチル-2,3,6,7,14,15-ヘキサブロモ-9,10-ジヒドロ-9,10-[1’,2’]-ベンゼノアントラセン(0.502g、0.566mmol)、炭酸セシウム(3.91g、12.0mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.233g、0.201mmol)と4-メトキシカルボニルフェニルボロン酸(2.13g、11.8mmol)、脱水THF(50mL)を加え、加熱還流しながら2日間撹拌。溶媒を減圧留去後、ジクロロメタンを加え、有機層を水で洗浄した。塩水で有機層を洗浄後、無水硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2→AcOEt)で精製後、溶媒を減圧留去した。得られた固体とKOH(0.933g、16.6mmol)を混合し、THF、MeOH、H2O(50/50/50、150mL)を加え、18時間撹拌しながら加熱還流した。室温に戻し、濃塩酸を加え、析出した固体を吸引ろ過して無色固体として目的物(0.168g、0.148mmol、26.1%)を得た。
【0133】
(参考例6)9,10-ジメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン-2,3,6,7,14,15-ヘキサカルボン酸(以下、「有機配位子8」という。)の合成
【0134】
【0135】
(工程1)2,3,6,7,9,10,14,15-オクタメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセンの合成
2,3,6,7,14,15-ヘキサブロモ-9,10-ジメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン(0.854g、1.13mmol)とPdCl2(PPh3)2(333mg、0.452mmol)のTHF(50mL)溶液を60℃で30分間撹拌した。そこに1.8Mトリメチルアルミニウムトルエン溶液(10.1mL、18.1mmol)を加え、撹拌しながら18時間加熱還流した。0℃まで温度を下げ、1M塩酸で反応を停止した。クロロホルムで抽出し、有機層を塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒を減圧留去した。得られた固体をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2:Hexane=1:3)にて精製後、溶媒を減圧留去した。メタノールで洗浄し、吸引ろ過して、無色固体として目的物(0.190g、0.518mmol、45.8%)を得た。
【0136】
(工程2)有機配位子8の合成
2,3,6,7,9,10,14,15-オクタメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-[1,2]ベンゼノアントラセン(0.154g、0.420mmol)と過マンガン酸カリウム(1.17g、7.40mmol)を混合し、t-BuOH(2mL)とH2O(2mL)の混合溶媒を加えた。撹拌しながら1日加熱した。セライトろ過し、ろ物を熱湯で洗浄した。ろ液を混合し、ろ液に濃塩酸を加え、固体を析出させた。吸引ろ過して無色固体として目的物(59.6mg、0.109mmol、26.6%)を得た。
【実施例37】
【0137】
有機配位子7(104mg、0.103mmol)と硝酸亜鉛六水和物(176mg、0.592mmol)をDMF(2.0mL)に溶解させた。室温で10分間撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、24時間加熱した。室温に冷却し、DMFを加え、遠心分離し、デカンテーションした。クロロホルムを加え、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を真空乾燥し、金属有機構造体37(76.2mg)を得た。
【実施例38】
【0138】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃にしたこと、以外は実施例37と同様に行い、白色結晶として金属有機構造体38(78.6mg)を得た。
【実施例39】
【0139】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例37と同様に行い、白色結晶として金属有機構造体39(48.5mg)を得た。
【実施例40】
【0140】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例38と同様に行い、金属有機構造体40(64.1mg)を得た。
【実施例41】
【0141】
有機配位子2の代わりに有機配位子7とし、四塩化ジルコニウム70.5mg(0.303mmol、3.7eq.)を用いた以外は実施例18と同様に行い、金属有機構造体41(85.7mg)を得た。
【実施例42】
【0142】
有機配位子8(52.7mg、0.0964mmol)と硝酸亜鉛六水和物(165mg、0.554mmol)をDMF(1.8mL)に溶解させた。室温で10分間撹拌し、ろ過後、溶液をスクリューキャップバイアルに入れ密閉し、90℃にて、24時間加熱した。室温に冷却し、DMFを加え、遠心分離し、デカンテーションした。クロロホルムを加え、遠心分離し、デカンテーション後、クロロホルムに24時間浸漬した。遠心分離、デカンテーション後、固体を真空乾燥し、無色固体として金属有機構造体42(8.0mg)を得た。
【実施例43】
【0143】
加熱する温度を90℃の代わりに120℃にしたこと、以外は実施例42同様に行い、無色固体として金属有機構造体43(13.2mg)を得た。
【実施例44】
【0144】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例42と同様に行い、無色固体として金属有機構造体44(2.8mg)を得た。
【実施例45】
【0145】
DMFの代わりにDEFとした以外は実施例43と同様に行い、金属有機構造体45(58.5mg)を得た。
【実施例46】
【0146】
有機配位子2の代わりに有機配位子8とする以外は実施例18と同様に行い、金属有機構造体46(104.1mg)を得た。
【実施例47】
【0147】
有機配位子2(113mg、0.10mmol)、硝酸クロム九水和物(131mg、0.33mmol)、水(5ml)をオートクレーブに入れ密閉し、220℃にて24時間加熱した。室温まで冷却し、遠心分離し、デカンテーションして固体を得た。その固体に水を加え、遠心分離し、デカンテーションする操作を3回繰り返した。固体にエタノールを20mL加え4時間加熱還流を行い、室温に戻したのちに遠心分離、デカンテーションすることで固体を得た。その固体を150℃にて6時間程度真空乾燥し、金属有機構造体47(41.1mg)を得た。
【実施例48】
【0148】
有機配位子2の代わりに有機配位子7を用いた以外は実施例47と同様に行い、金属有機構造体48(72.9mg)を得た。
【実施例49】
【0149】
有機配位子2の代わりに有機配位子8を用いた以外は実施例47と同様に行い、金属有機構造体49(27.6mg)を得た。
【実施例50】
【0150】
有機配位子2(114mg、0.10mmol)、塩化クロム六水和物(80mg、0.30mmol)、DMF(10ml)を10分間撹拌後に超音波を照射することで完全に溶解させた。その溶液をろ過し、オートクレーブに入れ密閉し、190℃で3日間加熱した。室温まで冷却し、遠心分離し、デカンテーションして固体を得た。その固体にDMFを加え、遠心分離し、デカンテーションする操作を3回繰り返した。DMFを加え終夜浸漬後、クロロホルムに溶媒を置換し、遠心分離、デカンテーションする同様の操作を3回繰り返した。得られた固体を二日間クロロホルムに浸漬し、遠心分離、デカンテーションすることで固体を得た。その固体を150℃で6時間程度真空乾燥し、金属有機構造体50(49.5mg)を得た。
【実施例51】
【0151】
有機配位子2(113mg、0.10mmol)、硝酸アルミニウム九水和物(113mg、0.30mmol)、水(10ml)を10分間撹拌後にオートクレーブに入れ密閉し、220℃にて42時間加熱した。室温まで冷却し、遠心分離し、デカンテーションして固体を得た。その固体に水を加え、遠心分離し、デカンテーションする操作を3回繰り返した。アセトンで洗浄後、DMFを加えて3日間浸漬した。その後、100℃のオーブンに入れ、3日間加熱した。室温に戻し、遠心分離、デカンテーションすることで固体を得た。その固体にDMFを加え、遠心分離、デカンテーションする操作を2回繰り返した後、溶媒をアセトンに置換して、遠心分離、デカンテーションをした。得られた固体を100℃にて6時間程度真空乾燥し、金属有機構造体51(87.1mg)を得た。
【実施例52】
【0152】
有機配位子2の代わりに有機配位子7を用いた以外は実施例50と同様に行い、緑色固体として金属有機構造体52(67.4mg)を得た。
【実施例53】
【0153】
有機配位子2の代わりに有機配位子8を用いた以外は実施例50と同様に行い、淡緑色固体として金属有機構造体53(60.2mg)を得た。
【0154】
(元素分析試験)
実施例1及び5~9で得られた金属有機構造体の元素分析を行った。結果を表1に示す。
【0155】
【0156】
(IRスペクトル測定)
実施例1~9及び14~33で得られた有機金属構造体1~9、14~17、19~30、32~35、37、40及び45のIRスペクトルを測定した。各有機金属構造体のカルボニル基の伸縮振動を示すピークを表2に示す。
【0157】
【0158】
(X線構造解析)
実施例1で得られた金属有機構造体1を以下に示す測定条件でX線構造解析を行った。
[測定条件]
実施例1で得られた金属有機構造体1の0.03×0.03×0.03mmの無色透明の結晶をマイクロマウントに一粒載せ、単結晶X線解析装置(D8 VENTURE、Bruker社製)を用いて回折実験を行った。0.78192Åの波長のX線を単結晶にあてることで得られた回折データを解析し、構造を決定した。その結果を表3に示す。
【0159】
【0160】
(BET比表面積測定及び水素貯蔵量測定)
実施例1~37、40、41、45及び46で得られた金属有機構造体1~37、40、41、45及び46について、BET比表面積及び77K-大気圧における水素貯蔵量を測定した。また、金属有機構造体1について298K-10MPaにおける水素貯蔵量も測定した。
BET比表面積及び77K-大気圧における水素貯蔵量の測定は、ガス吸着量測定装置Tristar-II(Micromeritics社製)を用い、298K-10MPaにおける水素貯蔵量は、ガス吸着量測定装置PTC特性評価装置(株式会社鈴木商館製)を用いて行った。
【0161】
BET比表面積は次の方法で算出した。実施例1~33で得られた金属有機構造体1~33の50mg程度を、ガラスセルの内部に入れた。ガラスセルの内部は135℃の温度で真空まで減圧し、6時間乾燥させた。ガラスセルをガス吸着量測定装置に装着し、液体窒素入りの恒温槽に浸漬した。ガラスセルに注入される窒素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された窒素の圧力が1.0×105Paとなるまで測定を行った。
77K常圧での水素貯蔵量は次の方法で算出した。窒素の測定後、水素へとガス種を変更し測定を行った。ガラスセルに注入される水素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された水素の圧力が1.0×105Paとなるまで測定を行った。
【0162】
298K、10MPaでの水素貯蔵量は次の方法で算出した。ステンレス製のサンプルセルの内部に、実施例1で得られた金属有機構造体1を220mg入れた。次いで、セル内部の温度を135℃とし真空まで減圧して、65時間その状態に保持した。このようにして、金属有機構造体1の内部に含有されるガス及び溶媒を除去した。セルを298Kの恒温槽に浸漬し、その状態でガス吸着量測定装置を用いてセル内に注入される水素の圧力を徐々に増加させた。内部の水素圧力が10MPaとなったのち、セル内に含有される水素の圧力を徐々に低下させた。
以上のようにして測定した結果を表4にまとめて示す。
【0163】
【0164】
【0165】
実施例1で得られた金属有機構造体1について、窒素吸着等温線(77K)を
図1に、水素吸着等温線(77K)を
図2に示す。
【0166】
実施例1、14~16、37、40及び45で得られた金属有機構造体1、14~16、37、40及び45については、273K及び298K、大気圧下での二酸化炭素の吸着量、二酸化炭素吸着熱を測定した。
二酸化炭素吸着量の測定は、ガス吸着量測定装置Tristar-II(Micromeritics社製)を用いたて、以下のように行った。
実施例1、14~16、37、40及び45で得られた金属有機構造体1、14~16、37、40及び45の50mg程度を、ガラスセルの内部に入れた。ガラスセルの内部は135℃の温度で真空まで減圧し、6時間乾燥させた。ガラスセルをガス吸着量測定装置に装着し、273K又は298Kの恒温槽に浸漬した。ガラスセルに注入される二酸化炭素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された二酸化炭素の圧力が1.0×105Paとなるまで測定を行った。その結果を表5に示す。
【0167】
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の金属有機構造体は、水素及び二酸化炭素を実用的な水準で吸着できる。その結果、水素社会到来に向けて水素の利用がより容易となり、大気中の二酸化炭素を削減することができる。