(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】ヒト又はブタ等の単胃の動物のアミノ酸要求を満たすことを可能とするアミノ酸組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20240917BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240917BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240917BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240917BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240917BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240917BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20240917BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20240917BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20240917BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240917BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20240917BHJP
A23K 20/142 20160101ALI20240917BHJP
A23K 50/30 20160101ALI20240917BHJP
A23K 20/147 20160101ALI20240917BHJP
A23K 20/174 20160101ALI20240917BHJP
A23K 20/20 20160101ALI20240917BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K38/16
A61K47/44
A61K47/04
A61P21/00
A61P21/02
A23L33/19
A23L33/175
A23L33/15
A23D9/00 516
A23L33/16
A23K20/142
A23K50/30
A23K20/147
A23K20/174
A23K20/20
(21)【出願番号】P 2021531203
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(86)【国際出願番号】 IB2019056528
(87)【国際公開番号】W WO2020031025
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】102018000007947
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521056319
【氏名又は名称】ヴェタグロ・インターナショナル・エッセ・エッレ・エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ピヴァ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107897541(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0006671(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106174598(CN,A)
【文献】特開2004-231643(JP,A)
【文献】国際公開第2017/114339(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/137357(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/108016(WO,A2)
【文献】特表2014-533740(JP,A)
【文献】特表2011-509287(JP,A)
【文献】Effect of microcapsulation on absorption processes in the pig,Livestock Production Science,1997年,Vol.51, No.1-3,53-61
【文献】Microencapsulated lysine and low-protein diets: Effects on performance, carcass characteristics and nitrogen excretion in heavy growing-finishing pigs,Journal of Animal Science,2013年,Vol.91, No.9,4226-4234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 38/16
A23L 31/00-33/29
A23D 9/00
A23K 10/00-50/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)混合物であって、(a)少なくとも1種のアミノ酸、又はそれの許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの塩、及び/又は(b)ホエータンパク質を含む又はそれらからなる活性成分の(i)混合物
;
(iii)放出制御脂質マトリックスであって、前記(iii)放出制御脂質マトリックスは、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、菜種油、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ビーズワックス及びそれらの混合物を含む又はそれらからなる群から選択され、
前記(iii)放出制御脂質マトリックスは、ヒュームドシリカ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム及び疎水性シリカを含む又はそれらからなる群から選択される(iii.1)少なくとも1種のコーティング添加剤を更に含む、放出制御脂質マトリックス
を含み、
任意選択で、
少なくとも1種の許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの(ii)添加剤及び/又は賦形剤、
を含む組成物であって、
活性成分の前記(i)混合物が前記(iii)放出制御脂質マトリックス中にカプセル化されており、 前記(iii)
放出制御脂質マトリックスが、前記(i)混合物に含まれる活性成分の胃保護及び腸内での放出制御を可能にし、したがって、2~24時間の範囲に含まれる期間にわたって活性成分の血中バイオアベイラビリティが一定であることを保証する、
組成物。
【請求項2】
前記(a)少なくとも1種のアミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、システイン、グルタミン及びそれらの混合物を含む又はそれらからなる群Aにおいて選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(a)少なくとも1種のアミノ酸はロイシンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(a)少なくとも1種のアミノ酸は、ロイシン、バリン及びイソロイシンの混合物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記(a)少なくとも1種のアミノ酸は、ロイシンと、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ヒスチジン及びグルタミンを含む又はそれらからなる群から選択される少なくとも1種以上のアミノ酸との混合物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
活性成分の前記(i)混合物は、少なくとも1種のビタミ
ン、少なくとも1種の有機酸又は無機酸、少なくとも1種の鉱物塩
、少なくとも1種の抗酸化剤、少なくとも1種のプロバイオティクス細菌株、少なくとも1種のプレバイオティクス、少なくとも1種の酵素及びそれらの混合物、を含む又はそれらからなる群Cにおいて選択される(c)少なくとも1種の非アミノ酸成分を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
医薬組成物、医療デバイス用の組成物、栄養補助組成物、栄養補助食品製品、食品製品、特別な医療目的向けの食品、飼料又は飼料添加物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
医薬として使用するためのものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
必要な状態にある単胃の対
象へのアミノ酸の供給による処置方法に使用するためのものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
必要な状態にある単胃の対象において
、タンパク質欠乏症の並びに前記タンパク質欠乏症に伴う病状、症状及び/又は障害の、処置方法に使用するためのものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
筋量の減少及び/又は筋力の減少の、並びに筋量及び/又は筋力の前記減少に伴う病状、症状及び/又は障害の、予防的及び/又は治癒的な処置方法に使用するためのものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
筋量及び/又は筋力の前記減少に伴う前記病状、症状及び/又は障害は、サルコペニア、筋萎縮、筋ジストロフィー及び筋異化の中から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
単胃の動
物向けの飼料又は飼料用添加剤を調製するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは少なくとも2種のアミノ酸、及びそれらの塩を含む組成物を調製する方法に関する。更に、本発明はまた、少なく1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1つのホエータンパク質及び放出制御脂質マトリックスを含む、ヒトに又は動物に使用するための、好ましくは単胃の動物のための組成物に関し、ここで、前記組成物は前記方法によって得ることができる。更に本発明はまた、アミノ酸の供給による又はタンパク質欠乏症の並びに前記タンパク質欠乏症からもたらされる病状、症状及び/若しくは障害の治療的及び非治療的処置方法における、ヒトに又は動物に使用するための、好ましくは単胃の動物のための前記組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格筋量の発達及び維持は、筋肉タンパク質合成(MPSと略す、肥大に基づいてのプロセス)及び筋肉タンパク質の分解(MPBと略す、萎縮に基づいてのプロセス)の各プロセスの合計によって決定される。MPSとMPBの間の恒常的平衡によって決定される、ヒトの筋量の保持と発達は、代謝上の健常性及び自律動作、又は一般には生活のより良い質を維持するのに不可欠な要素である([1] Dideriksenら、2013)。MPSとMPBの間のこういった平衡は、一部の慢性疾患、筋肉の使用不足、及び老化を含めて、種々の要因によって妨げられる場合がある。実際、高齢者の死亡率及び罹患率の上昇並びに生活の質の低下の主たる原因の一つは、筋量と筋力の喪失(サルコペニア)である([2] Nowson and O'connell、2015)。ボランティア対象でアミノ酸(AA)を静脈内投与すると、高アミノ酸血症及び高インスリン血症を促進することによって、MPSを刺激することが検証されている([3] Philips、2014)。しかし、筋肉タンパク質合成は「飽和性」であるとされるプロセスであり、したがって、食物を通して取り込むタンパク質源のアミノ酸組成及び必須アミノ酸(EAA)の量が極めて重要であることが判明している。ヒトでは、9種のEAAがある、すなわち、身体がde novoで合成することができず、したがって、食物を通して獲得しなければならないAA:ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン及びバリン、がある([4] DRI、2006)。ブタに関しては、EAAのこのリストに、アルギニン、システイン及びチロシンを追加する必要がある。ヒトの9種のEAAのうち、最近の研究によって、分岐鎖AA(BCAA)の1つであるロイシンが、ヒトとブタの両方で、分子mTORC1の経路のシグナル伝達カスケードを活性化することによってMPSにおいて極めて重要な役割を演じることが、実証されてきた。実際、このAAは、様々なAAの内で主要な同化シグナルとされてきた(Boheら、2003)。食後期(食事の1~4時間後)の間、MPSが高く、その結果、筋肉のタンパク質のバランスは正になるが、一方、空腹期ではMPSの速度はより低く、タンパク質のバランスは負である([5] Jagerら、2017)。更に、EAAの血中濃度は、安静時及び運動後での筋肉のタンパク質合成の速度を調節することが実証されてきた([5] Jagerら、2017)。
【0003】
現在、ヒト又は動物のタンパク質添加用の市販の組成物(医薬組成物、栄養補助食品、食品、飼料、飼料添加物、栄養補助組成物)は、実際の定性的/定量的要求と解釈される、特定のAAを参照しておらず且つ各対象の特異性について考慮していない。実際、MPSとMPBの間の適切な平衡を維持するためには、タンパク質及び個々のアミノ酸(AA)の要求が、種々の要因、何よりも年齢に関連して対象毎に異なることを考慮することが重要である([4] DRI、2006)。例えば、高齢の対象(75歳超)では、mTORC1経路でのインバランスの発生を伴う、いわゆる「同化抵抗性」があるが([6] Mitchellら、2016)、そのタンパク質摂取量は減少しており、これは、対象のタンパク質要求に関連して推奨される一日量が考慮に入れていない側面である([2] Nowson and O'Connell 2015)。別の影響要因は、座っている割合の程度であり、スポーツに取り組む個人の場合は、運動の種類(有酸素又は抵抗)である。実際、運動、特に抵抗運動は、食物とともにMPSの駆動体の1つである([7] Stokesら、2018);したがって、スポーツに取り組む個人のアミノ酸要求は異なる。男性と女性の間にも違いがある。文献では、アミノ酸要求が月経周期の相に基づいて変化することが実証された少数の研究を例外として([8] Elangoら、2008)、アミノ酸要求を特定することを目標とした研究の大部分は主に男性対象に関して行われてきた。更に、係る要求は、妊娠や授乳等の例外的な条件下で異なる([4] DRI、2006)。更に、人種によって筋繊維の種類の優勢に違いがあることはよく知られており、人種上の遺伝学に基づいてAA組成を調査することを目標としたいかなる研究もないが、筋繊維の優勢的なタイプに関連してAA要求が異なる可能性が高い。
【0004】
こういった違いが示すところは、各対象の異なる真のニーズを標的とするとともに上記のすべてのパラメーターを考慮に入れる、特定のAAの添加を規定する必要があること、である。更に、量がより多く且つ定常性である血中のアミノ酸を確保し、このことによって、主要な食事間の変動を制限することで24時間にわたってアミノ酸の血中バイオアベイラビリティがより一定であることを可能にすることできれば、非常に有用であろう。
【0005】
ヒト対象又は単胃の動物へのアミノ酸の投与には種々の問題があることが、文献で強調されている。具体的には、遊離アミノ酸は高度に酸性であり、したがって、これを経腸的に投与する場合、胸焼けや胃潰瘍を誘発することによって問題を引き起こすおそれがある。更に、トリプトファンは胃でのpH(pH2~3)等の酸性pHで、特に空腹時に分解する。したがって、胃管の壁への損傷を引き起こすことも分解を受けることもなくアミノ酸が胃内を通過することを可能とする保護された形態のアミノ酸の需要が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Gorissenら(Amino Acids、50:1685~1695ページ、2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明が対処する技術的問題とは、定性的及び定量的観点の両方から、ヒト対象又は動物対象へと、アミノ酸の具体的な供給を提供するのに適した組成物(医薬組成物、栄養補助食品、食品、飼料、飼料添加物又は栄養補助組成物)の開発及び調製を可能にする効果的な解決策を提供することであり、この供給とは、前記対象の特有のニーズ(例えば、年齢、性別、人種若しくは品種/筋繊維の種類の遺伝学、健康状態、係る身体活動、特有の血液値)に適合するものである。前記技術的問題を解決するために、本発明は、下に詳述のように、体調及び対象又は対象の群のニーズのタイプに基づいて、質及び量の観点から各対象又は対象の群について特にそのために選択されるアミノ酸を含む組成物を調製することを可能にする方法を提供する。
【0009】
更に、本発明は、副作用がなく、調製が容易であり、費用効果が良い、本発明の方法によって得られる組成物を提供する。
【0010】
加えて、本発明が対処し解決する技術的問題とは、筋量の正常な発達を支援するために又はその増大を助力するために、単胃の対象、好ましくはヒト対象又はブタにアミノ酸及び/又はタンパク質の供給を提供するのに適した組成物を提供することである。
【0011】
加えて、本発明が対処し解決する技術的問題とは、主要な食事間のアミノ酸及び/又はタンパク質の血中レベルの変動を制限するために、アミノ酸及び/又はタンパク質の血中バイオアベイラビリティが2~24時間の期間にわたって一定であるように、前記対象にアミノ酸及び/又はタンパク質を供給することである。
【0012】
最後に、本発明が対処し解決する技術的問題とは、胃管の壁に損傷を引き起こすことなく及び/又は胃管で分解を受けることなく、経腸的に投与することができるアミノ酸及び/又は胃保護性のタンパク質を提供することである。
【0013】
以下の詳細な説明から明らかになるこれらの目的及び更にその他の目的は、添付の特許請求の範囲で特許請求されている技術的特徴のおかげで、本発明の方法及び組成物によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
申請者は、研究開発の懸命なフェーズに続いて、対象にアミノ酸を十分に供給するニーズを満たすことができる組成物を提供するために、どのようにアミノ酸(質及び量)を選択して製剤化するかを、前記対象又は対象の群に関するいくつかのパラメーターに基づいて、決定する方法を見いだした。
【0015】
本発明の主題は、少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは少なくとも2種のアミノ酸、又はそれらの許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの塩を含む組成物(簡潔に言えば、ヒトに又は動物に使用するための、好ましくは単胃の動物のための本発明の組成物)を調製する方法(簡潔に言えば、本発明の方法)であって、
- ヒト対象又は動物、好ましくは単胃の動物について、性別、年齢、人種若しくは品種又は人種若しくは品種に基づいた筋線維のアミノ酸組成、係るスポーツ活動の種類、行われる作業の種類、毎日の食物を含む又はそれらからなる群から選択される少なくとも第1のパラメーター、又は前記第1の複数のパラメーターのうちの2つ以上のセット、を評価する工程及び/又は定量化する工程;並びに/又は
- ヒト対象又は動物、好ましくは単胃の動物について、血漿窒素濃度、血中クレアチニン、血中クレアチンホスホキナーゼ、身体活動後の血中乳酸若しくは乳酸塩、1日の歩数、又は唾液試料若しくは遺伝的特徴から得られたパラメーターを含む又はそれらからなる群から選択される少なくとも第2のパラメーター、又は前記第2の複数のパラメーターのセット、を評価する工程及び/又は定量化する工程;これに続いて、
- 前記少なくとも第1のパラメーター又は前記第1の複数のパラメーターのセットに基づいて、及び前記少なくとも第2のパラメーター又は前記第2の複数のパラメーターのセットに基づいて、少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは少なくとも2種のアミノ酸を選択する工程;これに続いて、
- 前記少なくとも第1のパラメーター又は前記第1の複数のパラメーターのセットに基づいて、及び前記少なくとも第2のパラメーター又は前記第2の複数のパラメーターのセットに基づいて、前記少なくとも1種のアミノ酸の、好ましくは前記少なくとも2種のアミノ酸の、第1の量、を選択する工程;これに続いて、
- 先行する工程において選択及び定量化された、前記少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは前記少なくとも2種のアミノ酸を、前記対象又は動物に投与するのに適した組成物に、製剤化する工程、
を含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法は、前記少なくとも第1のパラメーター又は前記第1の複数のパラメーターのセットのみが評価されること;又は、前記少なくとも第2のパラメーター又は前記第2の複数のパラメーターのセットのみが評価されること、
を想定してもよい。好ましくは、本発明の方法は、前記少なくとも第1のパラメーター又は前記第1の複数のパラメーターのセットが評価されることも、前記少なくとも第2のパラメーター又は前記第2の複数のパラメーターのセットが評価されることも、両方想定してもよい。
【0017】
前記第2の複数のパラメーターの評価(又は測定)は、当業者に知られている標準的な方法に従って実行される。
【0018】
クレアチニンは筋肉に主に見られるタンパク質である。検査で腎臓の損傷を除外した後の前記タンパク質の増加は、激しい身体活動に依存する可能性がある。
【0019】
クレアチンホスホキナーゼ(CPK)は、クレアチンが関連するエネルギーメカニズムに介入し、筋肉(MMタイプ)、心臓(MB)、脳(BB)に存在する。クレアチンホスホキナーゼは、筋線維の損傷や疲労:激しい運動、捻挫若しくは怪我、外科的介入、又は、最も重症の場合では、心筋梗塞、神経筋疾患又は甲状腺の異常がある場合、一般に筋肉(骨格筋や心筋)によって血中に放出される。
【0020】
乳酸又は乳酸塩は、乳酸嫌気性代謝の副産物である。これは細胞にとって有毒な化合物であり、血流でのこの化合物の蓄積はいわゆる筋疲労の発現と相関している。
【0021】
したがって、有利には、当該アミノ酸は、筋繊維のAA組成を研究することによって及び/又は対象又は動物の唾液試料又は血液試料又は血液検査の分析によって得られた、ヒト対象又は動物、好ましくは単胃の動物の真の個々の要求に関する研究に基づいて選択及び定量化される。好ましい実施形態では、前記組成は、当業者に知られている標準的な方法を実行することで、唾液試料を収集して単一の個体のDNAを収集することによって、並びに/又は、同化プロセスに関与する及び/若しくは筋線維の組成に相関性である及び/若しくは特定の病状に相関性である遺伝子の存在を決定することによって、決定することができる。前記第1のパラメーター及び/又は第2のパラメーターに基づいた真のタンパク質要求に関する研究は、窒素バランス法若しくは指標アミノ酸酸化(IAAO)法、又は個々の必須AAの酸化を測定する方法を含めて様々な方法を使用して、実施することができる([9] LARN、2017)。後者の2つの方法は、より具体的なAA要求を規定するのに最も適切と考えられる方法である。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明に関して少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは少なくとも2種のアミノ酸、及びそれらの量を選択する工程に加えて、
前記少なくとも第1のパラメーター及び/又は前記少なくとも第2のパラメーターを評価する工程、これに続いて:
- 前記少なくとも第1のパラメーター若しくは前記第1の複数のパラメーターのセットに基づいて、及び/又は前記少なくとも第2のパラメーター若しくは前記第2の複数のパラメーターのセットに基づいて、1種以上の有機酸若しくは無機酸、1種以上の芳香族成分、少なくとも1種のビタミン、少なくとも1種の鉱物塩、少なくとも1種の抗酸化剤、少なくとも1種のプロバイオティック細菌株の中から選択される少なくとも1種の非アミノ酸成分、又は前記複数の非アミノ酸成分のセット、を選択する工程;これに続いて、
- 前記少なくとも第1のパラメーター若しくは前記第1の複数のパラメーターのセットに基づいて及び/又は前記少なくとも第2のパラメーター若しくは前記第2の複数のパラメーターのセットに基づいて、前記少なくとも1種の非アミノ成分又は前記複数の非アミノ酸成分の前記セットの第2の量を、選択する工程;
- 前記少なくとも2種のアミノ酸と一緒に、前記第2の量の前記少なくとも1種の非アミノ酸成分又は前記複数の非アミノ酸成分のセットを前記組成物に製剤化する工程、
が後続する。
【0023】
上記のように、本発明の文脈において、「非アミノ酸成分」という用語は、有機酸又は無機酸、芳香族成分、ビタミン、鉱物塩、抗酸化剤、プロバイオティクス細菌株、プレバイオティクス及び酵素群を含む又はそれらからなる群Cにおいて選択される非アミノ酸性の化合物を意味する。
【0024】
有利には、前記ビタミンは、A、B、C、D、及び/又はKの各群のビタミンである;好ましくは、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12及びそれらの混合物を含む又はそれらからなる群において選択されるB群のビタミンである。
【0025】
有利には、前記1種の鉱物塩は、例えば、Fe、Se、Mg、Ca、K、Zn若しくはCu等の金属のカチオンの有機塩又は無機塩である。
【0026】
有利には、前記1種の抗酸化剤は、N-アセチルシステイン(NAC)、コエンザイムQ10(CoQ10)、L-アセチルカルニチン等の中から選択される。
【0027】
本発明の主題は、
(i)混合物(簡潔に言えば、本発明の混合物又は活性成分の混合物)であって、(a)少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは少なくとも2種のアミノ酸、若しくはそれらの許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの塩、及び/又は(b)ホエータンパク質を含む又はそれらからなる(i)混合物、
並びに、任意選択で、
少なくとも1種の許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの(ii)添加剤及び/又は賦形剤、
を含む、好ましくは本発明の方法によって得られる組成物に更に関する。
【0028】
更に、本発明の組成物は、下に記載の(iii)脂質マトリックスを含み、任意選択でコーティング添加剤(iii.1)を含む。
【0029】
一実施形態では、前記(i)混合物及び(iii)脂質マトリックス、並びに任意選択で(ii)添加剤及び/又は(iii.1)コーティング添加剤(以下に定義)を含む、本発明の組成物に含まれる前記少なくとも1種のアミノ酸又は前記少なくとも2種のアミノ酸は、主に、ヒトやブタ等の単胃の対象に必須のアミノ酸である;本発明の組成物は、2種以上の必須アミノ酸、例えば、3種、4種、又は5種を好ましくは含む。前記(a)少なくとも1種の必須又は非必須アミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、システイン、トリプトファン、グルタミン及びそれらの混合物;好ましくは、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ヒスチジン又はロイシン;より好ましくは、ロイシン、バリン及びヒスチジン;更により好ましくはロイシン、を含む又はそれらからなる群Aにおいて選択される。
【0030】
一実施形態では、前記群Aは、リジン及び/又はトリプトファンを含まない。
【0031】
一実施形態では、本発明の組成物がスルファメタジン又はスルファジミジン(SMT)(IUPAC名4-アミノ-N-(4,6-ジメチルピリミジン-2-イル)ベンゼンスルホンアミド、CAS no. 57-68-1)を含む場合、前記群Aはトリプトファンを含まない。
【0032】
一実施形態では、本発明の(iii)脂質マトリックスが長鎖脂肪酸、好ましくはステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸及びミリスチン酸の混合物を含む又はそれらからなる場合、前記群Aはトリプトファンを含まない。
【0033】
前記(i)混合物及び(iii)脂質マトリックス、並びに任意選択で(ii)添加剤及び/又は(iii.1)コーティング添加剤を含む本発明の組成物の一実施形態では、前記(a)少なくとも1種のアミノ酸は、以下を含む又は以下からなる混合物の群Bから選択されるアミノ酸の混合物である:
- (B.1)ロイシン、バリン及びイソロイシン(BCAA);
- (B.2)ロイシンと、群Aから選択される少なくとも1種以上のアミノ酸、好ましくはリジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ヒスチジン及びグルタミンの中から選択される1種以上のアミノ酸、例えば、混合物:ロイシンとリジン;ロイシンとメチオニン;ロイシンとスレオニン;ロイシンとトリプトファン;ロイシンとバリン;ロイシンとイソロイシン;ロイシンとヒスチジン;ロイシンとグルタミン;ロイシンとリジンと、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ヒスチジン及びグルタミンの中から選択される1種;ロイシンとメチオニンと、リジン、スレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ヒスチジン及びグルタミンの中から選択される1種;ロイシンとスレオニンと、リジン、メチオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ヒスチジン及びグルタミンの中から選択される1種;ロイシンとトリプトファンと、リジン、メチオニン、スレオニン、バリン、イソロイシン、ヒスチジン及びグルタミンの中から選択される1種;ロイシンとバリンと、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、イソロイシン、ヒスチジン及びグルタミンの中から選択される1種;ロイシンとイソロイシンと、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン及びグルタミンの中から選択される1種;ロイシンとヒスチジンと、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン及びグルタミンの中から選択される1種;ロイシンとグルタミンと、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン及びヒスチジンの中から選択される1種;ロイシンとイソロイシンとバリンと、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジン及びグルタミンの中から選択される1種;
- (B.3)ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、スレオニン及びトリプトファン;
- (B.4)ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン及びヒスチジン;
- (B.5)リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン;
- (B.6)リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン及びバリン。
【0034】
前記対象がヒト対象である場合、前記群Bから選択されるアミノ酸の前記混合物は、 (B.1)、(B.2)、(B.3)及び(B.4)の中から選択されることが好ましい。
【0035】
前記対象がブタである場合、前記群Bから選択されるアミノ酸の前記混合物は、(B.5)と(B.6)の間で選択されることが好ましい。
【0036】
好ましくは、群Bの前記二成分混合物では、例えば、群(B.1)のもの:ロイシンとリジン、ロイシンとメチオニン、ロイシンとスレオニン、ロイシンとトリプトファン、ロイシンとバリン、ロイシンとイソロイシン、ロイシンとヒスチジン、ロイシンとグルタミンでは、2種のアミノ酸は、1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:3~3:1の範囲に含まれる質量による互いに対する比、更により好ましくは1:1の質量による互いに対する比、であることが好ましい。
【0037】
本発明の文脈では、「アミノ酸」という用語は、L-α-アミノ酸に関するものであり、すなわち、そのアミノ基及びカルボキシル基が、L立体配置で、正確にはα-炭素と呼ばれる同じ炭素原子に結合し、したがって、アキラルであるグリシンを唯一の例外として、それぞれの光学活性を備えるものである。アミノ酸は、タンパク質の構成単位(タンパク質原性)であり、様々なアミノ酸が結合している状態で種類、数及び順序に応じて、膨大な数のタンパク質を得ることが可能である。自然界では、古典的に20種のタンパク質原性アミノ酸が知られている。我々の身体は、タンパク質を作るのに必要なアミノ酸の一部については合成することできるが、その他のアミノ酸を構築することはできず、したがって、これらは「必須アミノ酸」(EAA)と定義され、食品を通して導入する必要がある。
【0038】
「ホエータンパク質」又はホエータンパク質(複数)は、チーズ製造の副産物を構成する液体物質である牛乳のホエーから単離されるタンパク質の混合物である。牛乳のタンパク質は、約20%のホエータンパク質と80%のカゼインタンパク質からなり、一方、人乳のタンパク質は、60%のホエーと40%のカゼインからなる。ホエータンパク質は一般に、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、血清アルブミン、及びその他の微量画分の混合物であり、pHとは無関係でその天然の形態で可溶性である。ホエーのタンパク質画分(ホエーに含有される乾物の約10%)は、主要な4つのタンパク質画分及び微量な6つのタンパク質画分を含む。ホエーの主たるタンパク質画分は、β-ラクトグロブリン(約65%)、α-ラクトアルブミン(約25%)、及び血清アルブミン(約8%)であり、一方、ホエーの微量画分(約2%)は、ラクトフェリン、免疫グロブリン、グリコマクロペプチド、ラクトペルオキシダーゼ及びリゾチームである。更に、ホエータンパク質は、40~50%の必須アミノ酸(EAA)からなり、これらのアミノ酸の豊富な供給源とされている。
【0039】
Gorissenら(Amino Acids、50:1685~1695ページ、2018)で報告された、ホエータンパク質のアミノ酸組成を下に示す。
【0040】
【0041】
前記(i)、(iii)及び任意選択で(ii)を含む本発明の組成物の一実施形態では、前記(a)少なくとも1種のアミノ酸、若しくは前記少なくとも2種のアミノ酸、及び/又は前記(b)ホエータンパク質は、組成物の総質量に対して1%~90%、好ましくは10%~50%、更により好ましくは15%~45%の範囲に含まれる質量濃度(%)で本発明の組成物中に、全体として((a)のみ若しくは(b)のみ又は(a)及び(b))存在する。
【0042】
本発明の組成物は、(i)混合物に加えて、並びに任意選択で(ii)添加剤及び/又は賦形剤に加えて、(iii)コーティングマトリックス(又は本発明の放出制御脂質コーティングマトリックス又は放出制御脂質マトリックス又は脂質マトリックス)を更に含み、ここで、前記(iii)コーティングマトリックスは、本発明で定義されるものに従って及び本発明の調製方法に従って、前記(i)混合物を包埋し若しくは組み込み若しくは分散し及び/又はマイクロカプセル化する。
【0043】
まとめると、本発明の組成物は:
- (i)混合物であって、混合物の前記群A若しくは群Bから選択されるアミノ酸若しくはそれらの許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの塩の(a)少なくとも1種若しくは混合物、及び/又は(b)ホエータンパク質を、含む又はそれらからなる(i)混合物;
- (iii)本発明の文脈で定義される放出制御脂質マトリックスであって、本発明で定義されるものに従って及び本発明の調製方法に従って、前記(i)混合物を包埋し若しくは組み込み若しくは分散し;
並びに、任意選択で、前記(iii.1)少なくとも1種のコーティング添加剤(下に記載)を含む、前記(iii)脂質マトリックス、
を含むとともに、任意選択で、
前記組成物は、
- (ii)少なくとも1種の許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの添加剤及び/又は賦形剤、
を含む。
【0044】
一実施形態では、本発明の組成物は、前記(i)及び(iii)、並びに任意選択で(ii)及び/又は(iii.1)を含み、(a)少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは少なくとも2種のアミノ酸、及び/又は1つの(b)前記ホエータンパク質に加えて、有機酸又は無機酸、芳香族成分、ビタミン、鉱物塩、抗酸化剤、プロバイオティック細菌株、プレバイオティクス及び酵素を含む又はそれらからなる、上で定義の、群Cにおいて選択される(c)少なくとも1種の非アミノ酸成分、も含む。
【0045】
前記(iii)コーティングマトリックスの存在下では、前記(c)非アミノ酸成分は、(i)混合物に含めることができ、それ自体も、前記(iii)脂質コーティングによって/中にマイクロカプセル化し又は包埋し又は組み込み又は分散させることができ、或いは、前記(c)非アミノ酸成分は、組成物に含めることができるが、(iii)コーティングマトリックスによってマイクロカプセル化又は包埋された(i)混合物には含めることができない。存在する場合、群Cにおいて選択される前記(c)非アミノ酸成分は、(i)混合物に含まれることが好ましく、したがってそれ自体もまた、前記(iii)脂質マトリックスによって/中に包埋し、組み込み、又は分散される。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は:
- 前記(i)混合物であって、前記群A若しくは群Bから選択されるアミノ酸若しくはそれらの塩の(a)少なくとも1種若しくは混合物、及び/又は(b)ホエータンパク質、を含む又はそれらからなる前記(i)混合物;
- 前記(iii)放出制御脂質マトリックス(及び任意選択で(iii.1));並びに
- A、B、C、D、及び/又はKの各群のビタミンの中から選択される少なくとも1種の(c)ビタミン、好ましくは、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12及びそれらの混合物を含む又はそれらからなる群において選択されるB群のビタミン、
を含む。
【0047】
本発明の組成物は:
- 前記群A又は群B(B.1、B.2、B.3、B.4、B.5又はB.6等の)、好ましくは、ロイシン、ロイシンとリジン、ロイシンとメチオニン、ロイシンとスレオニン、ロイシンとトリプトファン、ロイシンとバリン、ロイシンとイソロイシン、ロイシンとヒスチジン、ロイシンとグルタミン、又はロイシン、イソロイシンとバリンの混合物から選択される、前記(a)アミノ酸若しくはそれらの塩の少なくとも1種又は混合物;
- 前記(iii)放出制御脂質マトリックス及び任意選択で(iii.1));並びに
- B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12及びそれらの混合物を含む又はそれらからなる群において選択されるB群のビタミン、を好ましくは含む。有利には、この実施形態では、前記(a)アミノ酸若しくはそれらの塩の少なくとも1種又は混合物と前記B群のビタミンとは、1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:3~3:1の範囲に含まれる、更により好ましくは1:1の質量比((a):ビタミンB)である。
【0048】
前記(iii)コーティングマトリックスは、対象への投与後のアミノ酸の放出制御を可能にする(要するに、放出制御コーティングマトリックス)。
【0049】
対象への投与後にアミノ酸若しくはアミノ酸の混合物の及び/又はホエータンパク質の放出制御を可能にする前記(iii)コーティングマトリックスは:
- C10~C30、好ましくはC14~C24の範囲に含まれる数の炭素原子を有する、少なくとも1種の飽和若しくは不飽和、遊離若しくはエステル化脂肪酸、及び/又は
- C6~C30、好ましくはC14~C24の範囲に含まれる炭素数を有する、飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸の鎖を有する少なくとも1種のトリグリセリド、及び/又は
- C16~C36、好ましくはC24~C36の範囲に含まれる数の炭素原子を有するワックスの少なくとも1種又は混合物;
以下、単純化するために、放出制御脂質コーティングマトリックスと呼ぶが;及び、任意選択で、
- 下に説明の少なくとも1種のコーティング添加剤(iii.1)、
を含む又はそれらからなる。
【0050】
前記(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスは、(i)混合物(すなわち、(a)及び/又は(b)、及び任意選択で(c))に存在する成分を時間に応じて、及び経腸的に投与された場合に消化過程に応じて、放出することができる。有利には、前記(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスは、血中でアミノ酸のより多くの量及び定常性を確保することができ、24(又は18)時間期間にわたってアミノ酸及び/又はホエータンパク質及び/又は非アミノ酸成分(c)の血中バイオアベイラビリティがより一定であることを可能にし、有利には、主要な食事間で同じように変動を制限する。
【0051】
前記(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスとともに/中にマイクロカプセル化し又は包埋し又は組み込み又は分散されている(i)混合物は、特許文書EP1391155A1の項[0048]~[0049]及び[0077](要するに、本発明の調製方法)に記載の製造方法によって製造される;前記項は、参照により本明細書に組み込まれる。要するに、本発明の前記調製方法は:
- 工程(I)、本発明の実施形態のいずれか1つによる前記(iii)放出制御脂質マトリックスを調製する工程、並びに、存在する場合、均質な塊(I)が得られるように前記(ii)少なくとも1種の添加剤及び/又は賦形剤を調製する工程(およそ80℃~120℃の温度)、これに続いて、
- 工程(II)、本発明の実施形態のいずれか1つによる、活性成分の前記(i)混合物(すなわち、(a)及び/又は(b)、及び任意選択で(c))を、前記均質な塊(I)中で、塊(II)が得られるように、分散させる工程(およそ55℃~70℃の温度)、これに続いて、
- 工程(III)、低温室(15℃未満の温度)で、好ましくは比較的球形の粒子の形態で本発明の組成物が得られるように、塊(II)を噴霧する工程であって、前記(i)混合物(すなわち、(a)及び/又は(b)並びに、任意選択で(c))に含まれる活性成分、及び存在する場合、前記(ii)添加剤は、前記(iii)放出制御脂質マトリックスによって/中に分散され又は組み込まれ又は包埋される、噴霧する工程
を含む。
【0052】
言い換えれば、本発明の調製方法から得られる本発明の組成物は、前記(iii)放出制御脂質マトリックスに分散している、(a)及び/又は(b)及び存在する場合(c)、及び任意選択で(ii)、の凝集体である。
【0053】
結果として、本発明の文脈において、「(iii)コーティングマトリックス、ここで、前記(iii)コーティングマトリックスは、前記(i)混合物を包埋し又は組み込み又は分散し及び/又はマイクロカプセル化している」という表現は、(iii)放出制御脂質マトリックスに分散して、(i)混合物に含まれる成分、すなわち(a)及び/又は(b)及び存在する場合は(c)、の凝集体を意味する。
【0054】
「(iii)コーティングマトリックス、ここで、前記(iii)コーティングマトリックスは、前記(i)混合物を包埋し又は組み込み又は分散させ及び/又はマイクロカプセル化している」という表現は、前記(iii)放出制御脂質マトリックスのフィルムでコーティングされている、(i)混合物に含まれる成分、すなわち(a)及び/又は(b)及び存在する場合は(c)、を特定しない。更に、「(iii)コーティングマトリックス、ここで、前記(iii)コーティングマトリックスは、前記(i)混合物を包埋し又は組み込み又は分散させ及び/又はマイクロカプセル化している」という表現は、(iii)放出制御脂質マトリックスで又は(iii)のフィルムでコーティングされた錠剤、丸薬等の形の形態にある、(i)混合物に含まれる成分、すなわち(a)及び/又は(b)及び存在する場合は(c)、を特定しない。
【0055】
本発明の組成物の利点、特に本発明の混合物又は組成物に含まれる活性成分の長期(2時間~24時間)の血中バイオアベイラビリティは、
前記(iii)放出制御脂質マトリックスの物理化学的特性と、
(i)混合物(すなわち(a)及び/又は(b)及び存在する場合は(c))の活性成分が、(iii)脂質マトリックスに組み込まれ又は分散し又は包埋されることを可能にするという、本発明の特有の調製方法と
の両方からもたらされている。
【0056】
実際、前記(iii)放出制御脂質マトリックスは、(i)混合物(すなわち、(a)及び/又は(b)及び存在する場合は(c))に含まれる活性成分の腸内での放出制御を提供することに加えて、前記(iii)マトリックスは胃の酸性pH(pH2~3)で安定であるので、活性成分の胃保護にも有利である。
【0057】
結果として、前記(iii)脂質マトリックスは、前記活性成分(すなわち、(a)及び/又は(b)、及び存在する場合、(c))を組み込み及び/又は包埋することによって、分解を受けることなく、及び胃管の壁に損傷を引き起こすアミノ酸、酸性物質がない状態で、活性成分が胃を通過することを可能にする。本発明の組成物が、そのpHが胃におけるよりも高い値(pH6~7.5)を有する腸に到達すると、前記(iii)脂質マトリックスはゆっくりと溶解し、その結果、活性成分の放出制御が可能となり、したがって、2時間から24時間までに含まれる時間範囲で一定した血中バイオアベイラビリティが可能となる。更に、腸はリパーゼに富んでいるという酵素上の資性を備え、このリパーゼが、脂質マトリックスを消化することにより、活性成分の放出制御を可能にする。
【0058】
組成物に含まれる活性成分の胃保護における脂質マトリックスの有効性を実証する目的で、第1の群のブタ及び第2の群のブタの消化管の様々なセクションの内容物におけるソルビン酸及びバニリン(マーカー)の存在について計測する研究を実施したが、第1の群のブタには、ソルビン酸といった天然の酸及びバニリンといった香料を含み、脂質マトリックスにカプセル化された組成物を経口投与し、第2の群のブタには、遊離形態の(脂質マトリックスにカプセル化されていない)同じ成分を投与した。この研究によって明らかであることは、脂質マトリックスが胃を避けることを可能とし、腸レベルでの徐放ができるため、2種のマーカー、ソルビン酸とバニリンが脂質マトリックスにカプセル化された形態で投与された場合のみ様々な腸のセクションに存在し、この場合、マーカーが吸収され、血中で利用可能になり、その結果、血中でのバイオアベイラビリティが向上することである。
【0059】
更に、研究用マーカーとしてスルファメタジンを使用して、脂質マトリックスによる活性成分のカプセル化に続いて活性成分のバイオアベイラビリティが経時的に延長することを実証するための研究を実施した。具体的には、用量1g/ブタで、脂質マトリックスでカプセル化されたスルファメタジンを含む組成物をブタの第1の群に経口投与し、遊離形態のスルファメタジンを含む組成物(脂質マトリックスにカプセル化されていない)を第2の群に投与した。投与して8時間後、脂質マトリックスに組み込まれたスルファメタジンの吸収画分は、遊離形態でのスルファメタジンよりも31.8±13%小さいことが示された。脂質マトリックスにカプセル化された形態では、スルファメタジンの吸収は24時間で完了し、一方、遊離形態では10時間で完了し、したがって、このことより、脂質マトリックスでカプセル化された形態について、時間-放出制御の効果及び24時間にわたる一定した血中バイオアベイラビリティの効果が明らかである。
【0060】
脂質マトリックスからの放出のマーカーとして、アミノ酸の代わりにソルビン酸、バニリン、及びスルファメタジンを使用したが、その理由は、食物性アミノ酸、腸剥離からの細胞及び微生物増殖の含有量が高いことを考慮すると、分析を受けている組成物によって放出される制限アミノ酸の存在を腸レベルで決定することは分析上ほぼ不可能であるためである。
【0061】
要するに、本発明の組成物を介して単胃の対象、好ましくはヒト対象又はブタの食物へ適切なアミノ酸及び/又はタンパク質を添加することによって、投与されるアミノ酸/タンパク質の効率が向上し、その結果、対象の腸内の未消化タンパク質の過剰が低減し、したがって潜在的な感染性病状の発症を制限することも、前記対象によって排出される窒素が低減し、したがって家畜によって生じる環境インパクトを制限することも、両方とも可能になるということである。
【0062】
更に、本発明の組成物によって制限アミノ酸又はタンパク質の要求を満たすことは、単胃の対象の食物中のタンパク質の百分率を減少する助けとなり、その結果、前記対象が動物、例えばブタである場合、飼料のコストに関して経済的利点をもたらす。
【0063】
更に、本発明の組成物は副作用がなく、したがって、小児対象、高齢者及び妊婦も含めて、広範囲の動物又はヒト対象に投与することができる。
【0064】
最後に、本発明の組成物は、調製が容易であり、費用効果が良い。
【0065】
本発明の文脈において、「対象」という用語は、ヒト対象又は単胃の動物、好ましくはヒト対象又はブタを意味する。
【0066】
本発明の文脈において、「単胃の」という用語は、その胃が化学的及び酵素的消化が行われる単一の室を有する動物を意味する。対照的に、多胃動物又は反芻動物は、胃が異なる4つの室:反芻胃、ハチノ巣胃、葉胃及び皺胃(胃粘膜を備える唯一のものであるので、単胃の動物の胃と同等のもの)、から構成されている。この群に属するのは、ラクダ科(3室の胃を備える)及び厳密な意味で反芻動物(ウシ科、シカ科、キリン科等)である。反芻胃で行われる反芻及び微生物消化のおかげで、多胃動物は植物飼料を消化するより良好な能力を有する。
【0067】
「トリグリセリド」(又はトリアシルグリセロール)とは、グリセロールの中性エステルであり、この場合、ヒドロキシル基の水素原子の代わりに3つの長鎖脂肪酸の鎖が存在する。トリグリセリドの一般的な構造における脂肪酸鎖の長さは炭素原子数が5個から28個の炭素原子とすることができるが、17個と19個が最も一般的である。
【0068】
「脂肪酸」(FAと略す)という用語は、脂肪族モノカルボン酸を意味し、これは、限定されないが、偶数の炭素原子を持つ長鎖であり、非分岐であり且つ非環式である(すなわち、閉環を形成する鎖を有さない分子からなる)ことが、広く受け入れられている。脂肪酸は、飽和(その分子がC-C単結合のみ有する場合)であっても不飽和(脂肪酸がC=C二重結合を有する場合)であってもよい。
【0069】
「ワックス」という用語は、高分子量一価アルコールとの長鎖脂肪酸エステルを意味する。ワックスは、植物起源のものであっても動物起源(ビーズワックス)のものであってもよい。ビーズワックスは、例えば、炭化水素14%、モノエステル35%、ジエステル14%、トリエステル3%、ヒドロキシモノエステル4%、ヒドロキシポリエステル8%、酸エステル1%、酸ポリエステル2%、遊離酸12%、遊離アルコール1%、未同定6%を含めて、様々な化合物で構成されている。ビーズワックスの主成分は、脂肪族アルコールの長鎖(30~32個の炭素原子)によって形成されるパルミテート、パルミチン酸、ヒドロキシパルミテート及びオレイン酸エステルであり、ここで、2つの主成分であるトリアコンチルパルミテート(ミリシルパルミテート)CH3(CH2)29O-CO-(CH2)14CH3とセロチン酸CH3(CH2)24COOHとの間の比は6:1である。ビーズワックスは、62℃と64℃の間に含まれる融点を有する。15℃での密度は0.958と0.970g/cm3の間の範囲にある。ビーズワックスは、ヨーロッパ型とオリエンタル型の大きな2つカテゴリーに分類できる。鹸化数は、ヨーロッパ型で3~5、オリエンタル型で8~9である。
【0070】
有利には、(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスに含まれる前記脂肪酸は、植物起源及び/又は動物起源の水素化脂肪酸であっても非水素化脂肪酸であってもよい。
【0071】
有利には、(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスに含まれる前記トリグリセリドは、植物起源及び/又は動物起源の水素化トリグリセリドであっても非水素化トリグリセリドであってもよい。
【0072】
有利には、(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスに含まれる前記ワックスは、植物起源及び/又は動物起源のものとすることができ、好ましくはビーズワックスとすることができる。
【0073】
好ましい実施形態では、前記(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスは、植物起源及び/又は動物起源の少なくとも1種の水素化脂肪酸及び/又は植物起源及び/又は動物起源の少なくとも1種の水素化トリグリセリド及び/又は少なくとも1種のワックス、及び、任意選択で、前記コーティング添加剤(iii.1)の内の少なくとも1種を含む又はそれらからなり;好ましくは、植物起源の少なくとも1種の水素化脂肪酸及び/又は植物起源の少なくとも1種の水素化トリグリセリド及び/又は動物起源の少なくとも1種のワックスを含む又はそれらからなる。
【0074】
水素化植物トリグリセリドは、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、菜種油、ピーナッツ油、オリーブ油及び大豆油を含む群から選択される。
【0075】
動物起源のトリグリセリド、好ましくは水素化されたものは、鶏脂、水素化鶏脂、牛脂及び豚脂の中から選択される。
【0076】
組成物は、組成物の総質量に対して10%~80%、好ましくは40%~60%、より好ましくは45%~55%の範囲、に含まれる質量による量(%)で、その種々の実施形態で前記(iii)コーティングマトリックス(放出制御脂質コーティングマトリックス)を、好ましくは含むことができる。
【0077】
本発明の一実施形態では、前記(i)及び(iii)、並びに任意選択で、(ii)及び/又は(iii.1)を含む本発明の組成物は、組成物の総質量に対して1%~90%、好ましくは10%~50%の範囲、より好ましくは15%~45%の範囲に含まれる質量%で、本発明の実施形態のいずれか1つによる、(a)及び/又は(b)及び、任意選択で(c)、を含む前記(i)混合物と、組成物の総質量に対して10%~80%、好ましくは40%~60%、より好ましくは45%~55%の範囲に含まれる質量%で、本発明の実施形態のいずれか1つによる、前記(iii)放出制御脂質マトリックスと、を含む。(iii)の前記%は、(iii)に含まれる成分とは無関係に、例えば(iii.1)を含んで又は(iii.1)含まないで、(iii)の合計%を表す。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は:
- (i)混合物であって、ロイシン又はその塩、及び任意選択で、前記群A又は群Bから選択される1種以上のアミノ酸を含む又はそれらからなる(i)混合物;
- 好ましくはパーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、菜種油、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ビーズワックス及びそれらの混合物の中から選択される、少なくとも1種の脂肪酸及び/又はトリグリセリド及び/又はワックス又はそれらの混合物を含む又はそれらからなる、本発明の文脈で定義される(iii)放出制御脂質マトリックスであって、
(i)混合物の活性成分を包埋し又は組み込み又は分散し、(i)混合物の活性成分に胃保護、腸内での活性成分の放出制御及び2から24時間までに含まれる期間にわたる活性成分の一定の血中バイオアベイラビリティをもたらし;並びに、任意選択で
(iii.1)を含む、(iii)放出制御脂質マトリックス
を含み、
並びに、任意選択で、
前記組成物は、(ii)を含み;ここで
前記(i)及び(iii)は本発明で定義の質量%で存在する。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は:
- (i)混合物であって、ロイシンとイソロイシンとバリン又はそれらの塩の混合物、及び任意選択で、前記群A又は群Bから選択される1種以上のアミノ酸、を含む又はそれらからなる(i)混合物;
- 好ましくはパーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、菜種油、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ビーズワックス及びそれらの混合物の中から選択される、少なくとも1種の脂肪酸及び/又はトリグリセリド及び/又はワックス又はそれらの混合物を含む又はそれらからなる、本発明の文脈で定義される(iii)放出制御脂質マトリックスであって、
(i)混合物の活性成分を包埋し又は組み込み又は分散し、(i)混合物の活性成分に胃保護、腸内での活性成分の放出制御及び2から24時間までに含まれる期間にわたる活性成分の一定の血中バイオアベイラビリティをもたらし;並びに、任意選択で
(iii.1)を含む、(iii)放出制御脂質マトリックス
を含み、
並びに、任意選択で、
前記組成物は、(ii)を含み;ここで
前記(i)及び(iii)は本発明で定義の質量%で存在する。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は:
- (i)混合物であって、(b)ホエータンパク質及び、任意選択で、前記群A又は群Bから選択される1種以上のアミノ酸を含む又はそれらからなる(i)混合物;
- 好ましくはパーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、菜種油、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ビーズワックス及びそれらの混合物の中から選択される、少なくとも1種の脂肪酸及び/又はトリグリセリド及び/又はワックス又はそれらの混合物を含む又はそれらからなる、本発明の文脈で定義される(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスであって、
(i)混合物の活性成分を包埋し又は組み込み又は分散し、(i)混合物の活性成分に胃保護、腸内での活性成分の放出制御及び2から24時間までに含まれる期間にわたる活性成分の一定の血中バイオアベイラビリティをもたらし;並びに、任意選択で
(iii.1)を含む、(iii)放出制御脂質コーティングマトリックス
を含み、
並びに、任意選択で、
前記組成物は、(ii)を含み;ここで
前記(i)及び(iii)は本発明で定義の質量%で存在する。
【0081】
その種々の実施形態で前記(iii)コーティングマトリックス(放出制御脂質コーティングマトリックス)に/でマイクロカプセル化し又は包埋し又は組み込み又は分散された(i)混合物は、本発明の調製方法によって、100μm~2000μm、好ましくは200μm~1500μm、より好ましくは250μm~1000μmの範囲に含まれる粒径(平均粒径)を有する球状粒子を形成する。具体的には、本発明の組成物がヒト対象向けである場合、前記平均粒径は、100μm~1000μmの範囲に含まれることが好ましい。本発明の組成物が代わりにブタ向けである場合、前記平均粒径は、500μm~2000μm、より好ましくは500μm~1500μm又は500μm~1000μmの範囲に含まれることが好ましい。
【0082】
本発明の(iii)コーティングマトリックス(放出制御脂質コーティングマトリックス)は、上に例示のその種々の実施形態では、1種以上のコーティング添加剤(iii.1)を更に含むことができる。コーティング添加剤(iii.1)は、ヒュームドシリカ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム及び疎水性シリカを含む又はそれらからなる群から選択される。使用するコーティング添加剤(iii.1)は、マトリックスの粘度を高め、その透過性を低下する働きをする。本発明の(iii)コーティングマトリックスは、(iii)コーティングマトリックスの総質量に対して、0.1%~30%、好ましくは1%~20%、より好ましくは5%~10%の範囲に含まれる質量による総量で、複数のコーティング添加剤(iii.1)を、好ましくは含む。
【0083】
本発明の組成物は、(i)混合物及び(iii)コーティングマトリックスに加えて、少なくとも1種の医薬品グレード若しくは食品グレードの(ii)添加剤及び/又は賦形剤も、すなわち、医薬品の使用又は食品の使用に適した治療活性がない物質も含むことができる。本発明の文脈において、医薬品の使用又は食品の使用に許容される成分は、当業者に知られているすべての補助物質を、例えば、非限定的な一例として、希釈剤、溶剤(水、グリセリン、エチルアルコールを含めて)、可溶化剤、増粘剤、甘味料、香料、着色剤、潤滑剤、界面活性剤、抗菌剤、抗酸化剤、防腐剤、pHを安定化するための緩衝剤及びそれらの混合物を含む。そのような物質の非限定的な例は、マルトデキストリン、リン酸塩緩衝液、水酸化ナトリウム等の塩基、キサンタンガム、グアーガム、フルクトース、及び天然又は人工の香料である。
【0084】
本発明の主題は、本発明の実施形態のいずれか1つによる(i)、(iii)並びに任意選択で(ii)及び/又は(iii.1)を含む本発明の組成物を含む又はそれらからなる、医薬組成物、栄養補助組成物、栄養補助食品製品又は食品製品又は特別な医療目的向けの食品、飼料、飼料添加物又は医療デバイス用の組成物、に更に関する。
【0085】
本発明の文脈において、「医療デバイス」という用語は、1997年2月24日のItalian Legislative Decree第46号に準拠する、又は新しいMedical Device Regulation (EU) 2017/745 (MDR)に準拠する意味の範囲内で使用されるものである。
【0086】
前記(i)及び(iii)並びに任意選択で(ii)及び/又は(iii.1)を含む本発明の組成物を含む、前記医薬組成物、栄養補助組成物、栄養補助食品製品又は食品製品又は特別な医療目的向けの食品、飼料、飼料添加物又は医療デバイス用の組成物の好ましい実施形態では、(i)混合物は、ロイシン若しくはロイシンと、イソロイシンとバリンとの混合物又はホエータンパク質及び、任意選択で、前述の群A又は群Bにおいて選択される少なくとも1種のアミノ酸、を含む又はそれらからなる。
【0087】
本発明の組成物は、非限定的な一例として、溶液、二相液体系、懸濁液若しくはシロップとして液体形態であっても、ゲル、クリーム若しくはフォームとして半固体形態であっても、粉末、顆粒、フレーク、凝集体、カプセル、錠剤、バー及び同等の形態として固体形態であってもよい。
【0088】
本発明の組成物は、好ましくは顆粒、マイクロ顆粒、フレーク又は粉末としての固体形態で;更により好ましくは、錠剤、カプセル又はソフトゲルカプセルとしての医薬形態で;例えば、飲み込まれるカプセルに挿入される、ヒト若しくは動物向けの栄養補助剤に挿入される、又はヒト若しくは動物向けの完全食に挿入される、マイクロカプセル若しくはマイクロ顆粒の形態で、経口(経腸)での使用向けのものであることが好ましい。或いは、本発明の組成物は、懸濁剤、例えば、懸濁液中の顆粒、マイクロ顆粒又は粉末としての液体形態で、経口での使用向けのものである。
【0089】
本発明の組成物が錠剤形態である場合、(i)混合物(すなわち、(a)及び/又は(b)、及び任意選択で(c))に含まれる活性成分と前記活性成分を包埋し又は組み込んだ(iii)脂質マトリックスの間で形成する凝集体は、錠剤を形成するように処理される、ということである。
【0090】
錠剤形態の本発明の組成物は、本発明の(iii)脂質マトリックスでコーティングされた錠剤ではない。
【0091】
特に明記しない限り、組成物又は混合物が1種以上の成分又は物質を「含む」という表示は、具体的に示されたもの又は複数のものに加えてその他の成分又は物質が存在してもよいことを意味する。
【0092】
本発明の主題は、本発明の実施形態のいずれか1つによる(i)及び(iii)並びに任意選択で(ii)及び/又は(iii.1)を含み、本発明の上記の調製方法(工程(I)、(II)及び(III))に従って得られる/得ることができる本発明の組成物に関する。
【0093】
本発明の主題は、医薬として使用するための、医薬組成物、栄養補助組成物、栄養補助食品製品又は食品製品又は特別な医療目的向けの食品、飼料、飼料添加物又は医療デバイス用の組成物として、本発明の実施形態のいずれか1つによる、前記(i)及び(iii)、並びに任意選択で(ii)及び/又は(iii.1)を含む本発明の組成物に関する。
【0094】
本発明の主題は、単胃の対象、好ましくはヒト対象又はブタへのアミノ酸の供給による処置方法に使用するための、医薬組成物、栄養補助組成物、栄養補助食品製品又は食品製品又は特別な医療目的向けの食品、飼料、飼料添加物又は医療デバイス用の組成物として、本発明の実施形態のいずれか1つによる、前記(i)及び(iii)、並びに任意選択で(ii)及び/又は(iii.1)を含む本発明の組成物に、更に関する。
【0095】
「アミノ酸の供給」という用語は、対象が属する種の平均的な発達と比較して、対象の正常な発達又はより大きい又はより急速な発達のためのアミノ酸(又はタンパク質又はそれらのアナログ)の平均的な1日の供給を意味する。
【0096】
本発明の主題は、必要な状態にある対象において、タンパク質欠乏症の並びに前記タンパク質欠乏症に伴う病状、症状及び/又は障害の予防的及び/又は治癒的な処置方法に使用するための、上記の実施形態による前記(i)及び(iii)、並びに任意選択で(ii)及び/又は(iii.1)を含む本発明の組成物に、更に関する。
【0097】
軽度のタンパク質欠乏症は:代謝効率の低下(例えば、出血を起こしやすい、創傷治癒が遅い等)、血中の小体要素の減少、体重減少(筋肉の減少の影響として)、筋量の減少、早期疲労、集中力の困難及び学習の困難、不機嫌、筋肉及び/又は関節及び/又は骨の疼痛、血糖値の変動、及び感染症へのより大きな感受性、を引き起こすおそれがある。
【0098】
それほど多くはないが、軽度のタンパク質欠乏症は:不安(神経伝達物質の合成の変化に起因する)、運動機能の低下(トレーニング刺激の補償の低下)、睡眠の変調(これはトリプトファンとセロトニンの合成の変調によって引き起こされる可能性があるという一部の仮説)及び消化のインバランス(タンパク質により消化酵素の自然合成が可能になる)も引き起こすおそれがある。
【0099】
更に、タンパク質欠乏症は、筋肉の消耗(エネルギーを生成するための筋肉タンパク質の自己消化で構成される)、筋量と筋力の低下並びに、爪、髪、皮膚、酵素、神経伝達物質、ホルモン及び免疫グロブリン等のタンパク質ベースのすべての成分の深刻な減少といった、重度の症状又は障害又は病状を生み出すおそれがある。
【0100】
一実施形態では、本発明の組成物は、必要な状態にある対象において、筋量の減少及び/又は筋力の減少の、並びに、例えば、サルコペニア、筋萎縮、筋ジストロフィー又は筋異化等の、前記筋量の減少及び/又は筋力の減少に伴う病状、症状及び/又は障害の予防的及び/又は治癒的な処置方法に使用するためのものである。
【0101】
本明細書の主題は、アミノ酸の供給による又はタンパク質欠乏症の並びに前記タンパク質欠乏症に伴う病状、症状及び/若しくは障害の予防的及び/又は治癒的な処置方法に更に関し、ここで、前記処置は、特に、筋量及び/又は筋力の減少の予防的及び/又は治癒的な処置のための、必要としている対象における上で定義の本発明の組成物の投与を含む。
【0102】
本発明の文脈において、「処置方法」とは、物質又は物質の混合物又はそれらの組み合わせの投与を含み、病状又は疾患及びそれに伴う症状又は障害を排除、低減/減少又は予防する目的を有する、介入を意味する。
【0103】
最後に、本発明の主題は、上記の実施形態による本発明の組成物の非治療的使用に関し、ここで、前記使用は、アミノ酸の供給による又はタンパク質欠乏症の及び必要な状態にある対象における前記タンパク質欠乏症に伴う障害の非治療的処置のためのものであり、ここで、前記非治療的使用は、前記組成物の投与を含み;前記タンパク質欠乏症に伴う前記障害は、筋量及び/又は筋力の減少であることが好ましい。
【0104】
最後に、本発明の主題は、単胃の動物、好ましくはブタ向けの飼料又は飼料用添加剤を調製するための、本発明の実施形態のいずれか1つによる(i)及び(iii)、並びに任意選択で(ii)及び/又は(iii.1)を含む、本発明の組成物の使用に関する。
【0105】
特に明記しない限り、「組成物又は混合物は、x~yの範囲に含まれる量で成分を含む」という表現は、前記成分が、前記範囲に存在するあらゆる量で組成物又は混合物中に存在し得ることを意味し、明確に述べられていなくとも、範囲のエンドポイントが含まれている。
【0106】
本発明の実施形態(FRn)を以下に開示する:
FR1. 少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは少なくとも2種のアミノ酸、又はそれらの許容される医薬品グレード又は食品グレードの塩を含む組成物を調製する方法であり、前記方法は、以下の工程を含む:
- ヒト対象又は動物、好ましくは単胃の動物について、性別、年齢、人種若しくは品種又は人種若しくは品種に基づいた筋線維のアミノ酸組成、係るスポーツ活動の種類、係る作業の種類、毎日の食物を含む又はそれらからなる群から選択される少なくとも第1のパラメーター、又は前記第1の複数のパラメーターのうちの2つ以上のセット、を評価する工程及び/又は定量化する工程;並びに/又は
- ヒト対象又は動物、好ましくは単胃の動物について、血漿窒素濃度、血中クレアチニン、血中クレアチンホスホキナーゼ、身体活動後の血中乳酸若しくは乳酸塩、1日の歩数、又は唾液試料若しくは遺伝的特徴から得られたパラメーターを含む又はそれらからなる群から選択される少なくとも第2のパラメーター、又は前記第2の複数のパラメーターのセット、を評価する工程及び/又は定量化する工程;これに続いて、
- 前記少なくとも第1のパラメーター又は前記第1の複数のパラメーターのセットに基づいて、及び前記少なくとも第2のパラメーター又は前記第2の複数のパラメーターのセットに基づいて、少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは少なくとも2種のアミノ酸を選択する工程;これに続いて、
- 前記少なくとも第1のパラメーター又は前記第1の複数のパラメーターのセットに基づいて、及び前記少なくとも第2のパラメーター又は前記第2の複数のパラメーターのセットに基づいて、前記少なくとも1種のアミノ酸の、好ましくは前記少なくとも2種のアミノ酸の、第1の量、を選択する工程;これに続いて、
- 先行する工程において選択及び定量化された、前記少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは前記少なくとも2種のアミノ酸を、前記対象又は動物に投与するのに適した組成物に、製剤化する工程。
【0107】
FR2. FR1に記載の方法、ここで、前記第1のパラメーター及び/又は第2のパラメーターは、筋線維のアミノ酸組成を分析することによって、及び/又は唾液試料若しくは血液試料の分析又は対象若しくは動物の血液検査を通して評価及び定量化される;前記第1のパラメーター及び/又は第2のパラメーターは、標準的な方法を実行することで、唾液試料を収集して単一の個体のDNAを収集することによって、並びに/又は、同化プロセスに関与する及び/又は筋線維の組成に相関性である及び/又は特定の病状に相関性である遺伝子の存在を決定することによって、決定することが好ましい。
【0108】
FR3. FR1又はFR2に記載の方法、ここで、前記第1のパラメーターを測定する工程及び前記第2のパラメーターを評価する工程は、以下の工程が更に後続する:
- 前記少なくとも第1のパラメーター又は前記第1の複数のパラメーターのセットに基づいて、及び/又は前記少なくとも第2のパラメーター又は前記第2の複数のパラメーターのセットに基づいて、1種以上の有機酸又は無機酸、1種以上の芳香族成分、少なくとも1種のビタミン、鉱物塩、抗酸化剤、植物性抽出物、プロバイオティック細菌株の中から選択される少なくとも1種の非アミノ酸成分及びそれらの混合物、を選択する工程;これに続いて、
- 前記少なくとも第1のパラメーター又は前記第1の複数のパラメーターのセットに基づいて、及び前記少なくとも第2のパラメーター又は前記第2の複数のパラメーターのセットに基づいて、前記少なくとも1種の非アミノ成分の第2の量を、選択する工程;これに続いて、
- 前記少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは前記少なくとも2種のアミノ酸又はそれらの塩と一緒に、前記第2の量で前記少なくとも1種の非アミノ酸成分を前記組成物に製剤化する工程。
【0109】
FR4.
(i)混合物であって、少なくとも1種のアミノ酸、好ましくは2種のアミノ酸、又はそれらの許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの塩を含む又はそれらからなる(i)混合物、並びに任意選択で、
(ii)少なくとも1種の許容される医薬品グレード若しくは食品グレードの添加剤及び/又は賦形剤、
を含む、FR1~FR3のいずれか1つに記載の方法により得られる組成物。
【0110】
FR5. FR4に記載の組成物、ここで、前記少なくとも1種のアミノ酸のうちの少なくとも1種、好ましくは前記少なくとも2種のアミノ酸又はそれらの塩は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン及びバリン;好ましくは、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン及びロイシン、より好ましくはロイシン、からなる群から選択される必須アミノ酸である。
【0111】
FR6. FR4又はFR5に記載の組成物、ここで、前記組成物は:
C10~C30、好ましくはC14~C24の範囲に含まれる炭素数を有する、少なくとも1種の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸、及び/又は
C6~C30、好ましくはC14~C24の範囲に含まれる炭素数を有する、飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸の鎖を有する少なくとも1種のトリグリセリド、及び/又は
C16~C36、好ましくはC24~C36の範囲に含まれる数の炭素原子を有するワックス;を含み又はそれらからなる(iii)コーティングマトリックス、
を更に含み、ここで、前記(iii)コーティングマトリックスは、前記(i)混合物を組み込み及び/又はマイクロカプセル化し、ここで、前記(iii)放出制御脂質コーティングマトリックスは、対象への投与後にアミノ酸の放出制御を可能にし、したがって、主要な食事間でアミノ酸の変動を制限することで、量がより多く且つ定常性である血中のアミノ酸及び24時間にわたってアミノ酸の血中バイオアベイラビリティがより一定であることを保証する。
【0112】
FR7. 実施形態FR4~FR6のいずれか1つに記載の組成物、ここで、前記(iii)コーティングマトリックスは、植物起源及び/又は動物起源、好ましくは植物起源の少なくとも1種の水素化脂肪酸;及び/又は植物起源及び/又は動物起源の水素化又は非水素化の少なくとも1種のトリグリセリド;動物起源のトリグリセリドは、鶏脂、水素化鶏脂、牛脂及び豚脂の中から選択されることが好ましい;及び/又はワックス、好ましくはビーズワックス、を含む又はそれらからなる。
【0113】
FR8. 実施形態FR4~FR7のいずれか1つに記載の組成物、ここで、前記組成物は、必要な状態にある対象において、タンパク質欠乏症の並びに前記タンパク質欠乏症に伴う病状、症状及び/又は障害の予防的及び/又は治癒的な処置方法に使用するためのものである。
【0114】
FR9. 実施形態FR4~FR8のいずれか1つに記載の使用のための組成物、ここで、前記組成物は、必要な状態にある対象において、筋量の減少及び/又は筋力の減少の、並びに、前記筋量の減少及び/又は筋力の減少に伴う病状、症状及び/又は障害の予防的及び/又は治癒的な処置方法で、ヒトに又は動物に使用するための、好ましくは単胃の動物のためのものである。
【0115】
FR10. FR4~FR9のいずれか1つに記載の使用のための組成物、ここで、前記組成物は、サルコペニアの予防的及び/又は治癒的な処置方法に使用するためのものである。
【0116】
FR11. 実施形態FR4~FR7のいずれか1つに記載の組成物の非治療的使用、ここで、前記使用は、タンパク質欠乏症及び前記タンパク質欠乏症に伴う障害の非治療的処置のためのものであり、
前記非治療的使用は、必要な状態にある対象への前記組成物の投与を含み;好ましくは、前記タンパク質欠乏症に伴う前記障害は、筋量及び/又は筋力の減少である。
【0117】
特に明記しない限り、組成物は、「x~yの範囲に含まれる」量で成分を含むという表現は、前記成分が、前記範囲に存在するあらゆる量で組成物中に存在し得ることを意味し、明確に述べられていなくとも、範囲のエンドポイントが含まれている。
参考文献