(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸架橋物、ヒアルロン酸水和ゲル、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20240917BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240917BHJP
A61L 27/20 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
C08J3/12 Z CEP
A61L27/20
(21)【出願番号】P 2021532294
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 KR2019017210
(87)【国際公開番号】W WO2020116999
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0156801
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0161388
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ・クウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ロル・シン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】バク・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヨン・キム
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-523303(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131298(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0073419(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0004159(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0008556(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/08
C08J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を4ないし6時間架橋反応させる段階と、
前記架橋剤の添加によってヒアルロン酸が架橋している水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、
ヒアルロン酸粒子を含む前記水溶液を6ないし24時間架橋する段階
を含み、
前記水溶液にエタノールを添加する間、前記エタノールは、20mL/minないし1,000mL/minの速度で添加され、
ヒアルロン酸架橋物が、D90が80μm以下である粒度分布を示し、
前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性が30ないし200Paであり、粘性が10ないし100Paである、
粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造する方法。
【請求項2】
前記エタノールを添加する間、混合液全体体積に対するエタノールの体積変化速度は、0.5%(v/v)/minないし35%(v/v)/minである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記架橋剤を、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物1gに対し、10μLないし500μLの量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液と、該水溶液に添加されるエタノールとの体積比は、1:1ないし10である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
製造されたヒアルロン酸架橋物をエタノール、またはエタノールを含む溶液で洗浄する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒアルロン酸架橋物は、
D10が2.5μmないし6μm、D50が8μmないし20μm、及びD90が25μmないし80μmである粒度分布を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を4ないし6時間架橋反応させる段階と、
前記架橋剤の添加によってヒアルロン酸が架橋している水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、
前記ヒアルロン酸粒子を含む水溶液の架橋反応を6ないし24時間持続させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造する段階と、
前記製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物を水和させる段階と、を含み、
前記水溶液にエタノールを添加する間、前記エタノールは、20mL/minないし1,000mL/minの速度で添加され、
前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルが、D90が240μm以下である粒度分布を示し、
前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性が30ないし200Paであり、粘性が10ないし100Paである、
架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法。
【請求項8】
前記水和させる段階は、
前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を、水、または水を含む溶液に添加する、請求項7に記載の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法。
【請求項9】
前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、水、または水を含む溶液1mLに対し、5mgないし15mgに添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを、フィルタを使用して濾過する段階をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、
D10が25μmないし40μm、D50が70μmないし110μm、D90が190μmないし240μmである粒度分布を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法であって、前記方法は、
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を4ないし6時間架橋反応させる段階と、
前記架橋剤の添加によってヒアルロン酸が架橋している水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、
前記ヒアルロン酸粒子を含む水溶液の架橋反応を6ないし24時間持続させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造する段階と、
前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を水和させて架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得る段階と、
前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを濾過する段階と、
を含み、
前記水溶液にエタノールを添加するとき、前記エタノールは、20mL/minないし1,000mL/minの速度で添加され、
濾過後に得られた前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルが、D90が120μm以下である粒度分布を示し、
濾過後に得られた前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性が30ないし200Paであり、粘性が10ないし100Paである、
架橋されたヒアルロン酸水和ゲル
の製造方法。
【請求項13】
濾過後に得られた架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D10が10μmないし30μm、D50が35μmないし65μm、D90が80μmないし120μmである粒度分布を示す、請求項12に記載の架橋されたヒアルロン酸水和ゲル
の製造方法。
【請求項14】
前記架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、ジビニルスルホン(DVS)、またはそれらの混合物である、請求項12に記載の架橋されたヒアルロン酸水和ゲル
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸架橋物、ヒアルロン酸水和ゲル、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸とからなる反復単位(repeating unit)が線形で連結されている生体高分子物質であり、動物の胎盤、眼球の遊離液、関節の滑液、または鶏の鶏冠などに多く存在することと知られている。また、ヒアルロン酸は、ストレプトコッカス属微生物(例:Streptococcus equi. Streptococcus zooepidemecus)またはストレプトコッカス属微生物による発酵によっても生産されることが知られている。
【0003】
現在、米国では、1回投与だけで、6ヵ月間効果が持続されるヒアルロン酸架橋物注射剤であるSynvisc-one(登録商標)が市販されている。Synvisc-one(登録商標)は、鶏冠のヒアルロン酸を、ホルマリン含有水溶液で抽出しながら得られたヒアルロン酸架橋物を含み、ヒアルロン酸に連結されたタンパク質が、ホルマリンによって弱く架橋され、低い粘弾性を有する(特許文献1)。前述の弱く架橋されたヒアルロン酸は、さらに、架橋剤ジビニルスルホン(DVS)によってさらに架橋され、増大された粘弾性を有するヒアルロン酸架橋物と組み合わされ、人体の関節腔に適用するのに適する粘弾性を有する複合ヒアルロン酸架橋物(Synvisc-one(登録商標))を構成する。
【0004】
しかし、従来のヒアルロン酸架橋物の場合、濾過を行うことができず、ゲルに含まれた異物の除去に多くの努力が必要となり、該架橋剤の洗浄のために、大量の洗浄バッファが要求された。それに加え、従来のヒアルロン酸架橋物は、製造バッチごとに製造されたヒアルロン酸の粘弾性のような流変学的特性において、偏差が甚だしく、品質の均一性に多くの問題があった。従って、品質管理が容易ではなく、量産のために複雑な工程が必要であり、多くの費用が必要となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4,713,448号明細書
【文献】大韓民国公開公報10-2017-0090965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、経済的であり、量産に最適化された粉末状のヒアルロン酸架橋物の製造方法に係わるものである。
【0007】
本発明は、他の一態様は、経済的であり、量産に最適化された粉末状のヒアルロン酸架橋物に係わるものである。
【0008】
本発明のさらに他の一態様は、すぐれた流変学(レオロジー)的特性を示し、品質均一性にすぐれる架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法に係わるものである。
【0009】
本発明のさらに他の一態様は、すぐれた流変学的特性を示し、品質均一性にすぐれる架橋されたヒアルロン酸水和ゲルに係わるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、経済的であり、量産に最適化された粉末状のヒアルロン酸架橋物の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の前記粉末状のヒアルロン酸架橋物の製造方法は、
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を架橋反応させる段階と、
前記水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、を含む。
【0012】
一具体例において、前記架橋反応は、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液に架橋剤を添加し、10℃ないし40℃、例えば、25℃ないし35℃で、2ないし8時間、例えば、4ないし6時間、50ないし350rpm、例えば、150ないし350rpm、例えば、250rpmで撹拌しながら、架橋反応させるものでもある。
【0013】
本発明の前記方法において、前記水溶液にエタノールを添加するとき、前記エタノールの投入速度は、20mL/minないし1,000mL/minでもある。
【0014】
本発明の前記方法において、前記水溶液上にエタノールを添加する間、混合液全体体積に対するエタノールの体積変化速度は、0.5%(v/v)/minないし35%(v/v)/minでもある。
【0015】
本発明の実施例において、前記水溶液は、架橋剤を、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物1gに対し、10μlないし500μlの量で含んでもよい。
【0016】
本発明の実施例において、前記水溶液と、該水溶液に添加されるエタノールとの体積比は1:1ないし10でもある。
【0017】
本発明の実施例において、ヒアルロン酸粒子を含む水溶液を架橋反応させる段階を追加して含んでもよい。前記段階は、水溶液の中に添加された架橋剤による架橋反応を持続させる段階でもある。前記段階において、ヒアルロン酸の粒子を含む水溶液は、水溶液内で反応して残った架橋剤と追加して架橋反応することができる。
【0018】
一具体例において、前記追加の架橋反応は、ヒアルロン酸の粒子を含む水溶液を、15ないし30℃、例えば、25℃で、24時間以下の間、50ないし350rpm、例えば、250rpmで撹拌しながら、架橋反応させるものでもある。前記追加の架橋反応における撹拌速度は、エタノール添加前の、架橋反応における撹拌速度と同一にすることができる。
【0019】
本発明の実施例において、前記架橋反応後、ヒアルロン酸粒子に固体化させて得たヒアルロン酸架橋物、または水溶液中に残った架橋剤と追加して架橋反応させて得たヒアルロン酸架橋物を、エタノール、またはエタノールを含む溶液で洗浄する段階をさらに含んでもよい。
【0020】
本発明の実施例において、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、D90が80μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0021】
本発明の実施例において、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、D10が2.5μmないし6μm、D50が8μmないし20μm及びD90が25μmないし80μmである粒度分布を示すことができる
【0022】
本発明は、前述の方法によって製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物を提供する。
【0023】
本発明の実施例において、前記ヒアルロン酸架橋物は、市販製品、例えば、Synvisc-one(登録商標)と類似した粘弾性を示し、同等以上の安定性、及び同等以上の架橋変形率(MoD:degree of modification)を示すことができる。本発明の実施例において、前記ヒアルロン酸架橋物は、天然ヒアルロン酸(HA)またはSynvisc-one(登録商標)より、ペンダント架橋変形率(pendant MoD)(%)、交差結合架橋変形率(crosslink MoD)(%)及び総架橋変形率(total MoD)(%)の上昇を示すことができる。
【0024】
本発明の実施例において、ヒアルロン酸(HA)の架橋変形率(MoD:degree of modification)分析は、HPLCシステムを利用することができる。前記分析方法において、多糖類(polysaccharide)であるHA(グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンとの反復構造)が、ヒアルロン酸分解酵素(hyaluronidase)によって分解され、さらに小さいポリマー(polymer)が形成され、架橋剤によって変形されたHAと、未変形のHAは、クロマトグラム差と変形率とを相対比較して区分することができる。前記分析方法において、ヒアルロン酸分解酵素(Streptomyces hyalurolyticusから得たヒアルロニダーゼ(hyaluronidase))を利用し、pH5.0、36℃条件において、ヒアルロン酸(HA)を分解(digestion)した後、Dionex CarboPac PA100(Thermo Scientific社)HPLCカラムを利用し、UV吸光度(232nm)で分解された糖ユニット(saccharide unit)を測定することができる。ヒアルロン酸が分解酵素によって完全分解されれば、四量体(tetramer)と六量体(hexamer)とになり、架橋結合されたヒアルロン酸は、四量体及び六量体より若干大きい糖ユニット、そしてそれ以上のオリゴマー(oligomer)に分離され、クロマトグラムを示すことができる。各クロマトグラムの面積でもって、変形率(MoD)を求めることができ、八量体(octamer)以上のオリゴマーのピークは、交差結合架橋変形率(crosslink MoD)(%)で区分することができ、四量体と六量体との主ピークを除いた八量体より小さいオリゴマーのピークは、ペンダント架橋変形率(pendant MoD)(%)で区分することができ、この二つを合わせ、総架橋変形率(total MoD)(%)とすることができる。
【0025】
該ヒアルロン酸架橋物は、架橋反応が多く起こるほど、架橋変形率(MoD:degree of modification)(%)の上昇を示すことができ、また過多な架橋反応によって製造されたヒアルロン酸は、十分な水を吸収することができない構造にもなる。本発明の実施例において、前記ヒアルロン酸架橋物は、0.1%ないし10%の総架橋変形率(total MoD)(%)を示すことができる。また、前記架橋変形率を満足するヒアルロン酸架橋物は、十分な水を吸収することができる構造を有し、十分な水和を示すことができる粘弾性値を示すことができる。
【0026】
本発明は、すぐれた流変学的特性を示しながら、品質均一性にすぐれる架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法を提供する。
【0027】
本発明の前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法は、
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を架橋反応させる段階と、
前記水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、
前記ヒアルロン酸の粒子を含む水溶液の架橋反応を持続させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造する段階と、
前記製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物を水和させる段階と、を含む。
【0028】
本発明の前記方法において、前記水溶液上に前記エタノール添加するとき、エタノールの投入速度が20mL/minないし1,000mL/minになるようにも添加される。
【0029】
本発明の前記方法において、前記水溶液上にエタノールを添加する間、混合液全体体積に対するエタノールの体積濃度変化速度は、0.5%(v/v)/minないし35%(v/v)/minでもある。
【0030】
本発明の実施例において、前記水和させる段階は、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を水、または水を含む溶液に添加する段階でもある。
【0031】
本発明の実施例において、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、水、または水を含む溶液1mLに対し、5mgないし15mgで添加されうる。
【0032】
本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D90が240μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0033】
本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D10が25μmないし40μm、D50が70μmないし110μm、D90が190μmないし240μmである粒度分布を示すことができる。
【0034】
本発明の実施例において、前記方法は、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを、フィルタを使用して濾過する段階をさらに含んでもよい。
【0035】
本発明の実施例において、前記濾過後の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D90が120μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0036】
本発明の実施例において、前記濾過後の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D10が10μmないし30μm、D50が35μmないし65μm、D90が80μmないし120μmである粒度分布を示すことができる。
【0037】
本発明は、前述の方法によって製造された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを提供する。
【0038】
本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性が30ないし200Paであり、粘性が10ないし100Paでもある。
【0039】
本発明は、無定形の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを提供する。前記ヒアルロン酸水和ゲルは、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図5の通りでもある。
【0040】
本発明の実施例において、前記ヒアルロン酸水和ゲルは、D90が120μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0041】
本発明の実施例において、前記ヒアルロン酸水和ゲルの粒度分布は、D10が10μmないし30μmであり、D50が35μmないし65μmであり、D90が80μmないし120μmでもある。
【0042】
本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性が30ないし200Paであり、粘性が10ないし100Paでもある。
【0043】
本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性が100ないし150Paであり、粘性が10ないし60Paでもある。
【0044】
本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、25℃で、8ヵ月保管するとき、弾性低下率が30%以下でもある。本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、30℃で、8ヵ月保管するとき、弾性低下率が25%以下でもある。本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、40℃で、8ヵ月保管するとき、弾性低下率が40%以下でもある。本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、60℃で、8ヵ月保管するとき、弾性低下率が90%以下でもある。
【0045】
本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、25℃で、8ヵ月保管するとき、粘性低下率が35%以下でもある。本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、30℃で、8ヵ月保管するとき、粘性低下率が20%以下でもある。本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、40℃で、8ヵ月保管するとき、粘性低下率が18%以下でもある。本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、60℃で、8ヵ月保管するとき、粘性低下率が50%以下でもある。
【0046】
ヒアルロン酸は、温度、酵素のような要因により、重合体鎖(polymer chain)が分解、低減され、粘弾性、流変学的特性(rheological properties)が低減され、それにより、粘性補充(viscosupplementation)性能が低下してしまう。それと比べ、架橋されたヒアルロン酸は、分解抵抗性が向上され、非架橋ヒアルロン酸対比で、体内維持期間が向上されうる。本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、ヒアルロン酸対比で、分解抵抗性が向上され、非架橋ヒアルロン酸対比で、分解抵抗性が向上されうる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の粉末状のヒアルロン酸架橋物は、架橋程度が均一であり、少量の洗浄液で容易に洗浄が可能であり、品質均一性にすぐれる。また、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を使用して製造された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、小さい気孔サイズを有するフィルタを使用して濾過が可能であり、異物を容易に除去することができ、品質均一性にすぐれる。従って、本発明による粉末状のヒアルロン酸架橋物、及びそれを使用して製造された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、量産に適して経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】原料物質であるヒアルロン酸ナトリウム、及び実施例1-1ないし1-3による粉末状態のヒアルロン酸架橋物の粒度分布を示す図である。
図1において、縦軸は、重量密度(%)であり、横軸は、粒度(μm)を示す。
【
図2】実施例6及び実施例10による架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの粒度分布を示す図である。
図2において、縦軸は、チャネル(%)であり、横軸は、粒度(μm)を示す。
【
図3】実施例2による粉末状態のヒアルロン酸架橋物のX線粉末回折分析結果を示す図である。
図3において、縦軸は、強度(cps)を示し、横軸は、2θ(°)を示す。
【
図4】実施例6による架橋されたヒアルロン酸水和ゲルのX線粉末回折分析結果を示す図である。
図4において、縦軸は、強度(cps)を示し、横軸は、2θ(°)を示す。
【
図5】実施例10による濾過後の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルのX線粉末回折分析結果を示す図である。
図5において、縦軸は、強度(cps)を示し、横軸は、2θ(°)を示す。
【
図6】実施例12によるヒアルロン酸水和ゲルについて測定した時間及び温度変化による弾性(2.5Hz、25℃におけるPa)を示す。
【
図7】実施例12によるヒアルロン酸水和ゲルについて測定した時間及び温度変化による粘性(2.5Hz、25℃におけるPa)を示す。
【
図8】実施例13によるヒアルロン酸水和ゲルについて測定した時間及び温度変化による弾性(2.5Hz、25℃におけるPa)を示す。
【
図9】実施例13によるヒアルロン酸水和ゲルについて測定した時間及び温度変化による粘性(2.5Hz、25℃におけるPa)を示す。
【
図10】比較製品(Synvisc-one(登録商標))について測定した時間及び温度変化による弾性(2.5Hz、25℃におけるPa)を示す。
【
図11】比較製品(Synvisc-one(登録商標))について測定した時間及び温度変化による粘性(2.5Hz、25℃におけるPa)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0050】
本発明で使用される全ての技術用語は、異なって定義されない以上、本発明の関連分野で当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それと類似しているか、あるいは同等なものも、本発明の範疇に含まれる。本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容全部は、本明細書に参照により援用される。
【0051】
本明細書において、DXがYであるというのは、粉末状のヒアルロン酸、ヒアルロン酸ゲル、または架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの粒子サイズを、累積曲線によって示すとき、粒子サイズが小さい順に累積し、X%(%は、数、体積または重量を基準に計算される)になる点の粒子サイズがYであるということを意味する。例えば、D10は、粉末状のヒアルロン酸、ヒアルロン酸ゲル、または架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの粒子サイズを小さい順に累積し、10%になる点の粒子の粒子サイズを表現し、D50は、粉末状のヒアルロン酸、ヒアルロン酸ゲル、または架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの粒子サイズを小さい順に累積し、50%になる点の粒子の粒子サイズを表現し、D90は、粉末状のヒアルロン酸、ヒアルロン酸ゲル、または架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの粒子サイズを小さい順に累積し、90%になる点の粒子の粒子サイズを表現する。
【0052】
粒子サイズ分布DXが、数、体積または重量のうちいずれを基準に、全体累積粒子中の百分率を示すかということは、該粒子サイズ分布測定に使用する方法によって異なる。該粒子サイズ分布を測定する方法と、それに係わる百分率の類型は、当該分野の当業者に公知である。例えば、周知のレーザ回折法によって粒子サイズ分布を測定する場合、DXにおけるX値は、体積平均によって計算された百分率を示すことができる。特定方法によって得られた粒子サイズ分布測定結果は、一般的な実験により、経験を基にし、他の技術から得たところと相関関係にもあるということは、当該分野の当業者であるならば、熟知しているであろう。例えば、該レーザ回折法は、粒子の体積に感応し、体積平均粒度を提供するが、それは、密度が一定である場合、重量平均粒度に相当する。
【0053】
本明細書において粘弾性は、保存弾性率(G’(storage modulus))と損失弾性率(G”(loss modulus))とを意味する。前記粘弾性は、回転型レオメータで測定され、動的粘弾性測定は、直径が20mmであるジオメトリを利用し、該ジオメトリとプレート(plate)との測定距離(GAP)は、0.5mmであり、温度は、25℃に分析終了前まで一定に維持し、コントロールプログラム(control program)でもって周波振動(frequency oscillation)を利用し、周波数の範囲を0.1~10Hzに設定し、保存弾性率及び損失弾性率を測定する。本明細書においては、保存弾性率(G’(storage modulus))で弾性で表記し、損失弾性率(G”(loss modulus))は、損失されたエネルギーを粘性で示すことができる。
【0054】
本発明の粉末状のヒアルロン酸架橋物の製造方法は、
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を架橋反応させる段階と、
前記水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、を含む。
【0055】
前記方法において、水溶液にエタノールを添加するとき、前記エタノールは、一定時間にわたって徐々に添加される。
【0056】
本発明の製造方法によれば、水溶液にエタノールを一定時間にかけて徐々に添加することにより、均一な粒子サイズを有する微細な粒子状の固体ヒアルロン酸が形成され、前記固体状態のヒアルロン酸粒子が架橋剤と反応し、均一な架橋反応が進められる。それにより、架橋度が均一である粉末状のヒアルロン酸架橋物が形成され、それぞれの製造工程において、粉末レベルの微細粒子サイズを有しながら、粒子サイズ(粒度)、粘性及び弾性のような物理的物性に適し、均一なヒアルロン酸架橋物が得られるのである。その結果、最適の効果を示す粒度、粘性及び弾性を有するヒアルロン酸架橋物を再現性あるように反復して量産されるのである。
【0057】
前記水溶液にエタノールを投入する速度は、エタノール添加によって生成される固体のヒアルロン酸が粒子状に生成されうるようにも調整される。具体的には、前記エタノール投与速度による全体反応液のエタノール濃度変化速度を調節し、所望する固体のヒアルロン酸粒子サイズ及び物理的特性を有するヒアルロン酸架橋物を生産することができる。
【0058】
本発明の実施例において、前述のヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階は、前述のヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を塩基性物質を含むアルカリ水溶液に添加しても製造される。
【0059】
本明細書において、前記ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸自体、ヒアルロン酸の塩、またはそれらの混合物を称するのである。従って、ヒアルロン酸を含む水溶液は、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を意味しうる。また、ヒアルロン酸粒子は、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を使用して形成された粒子を意味しうる。
【0060】
前記ヒアルロン酸の塩は、生体適用に適する任意の塩形態でもあり、具体的には、アルカリ塩、アルカリ土類金属塩、アミノ酸塩、有機塩基との塩、またはそれらの混合物でもある。例えば、ヒアルロン酸の塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルト、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩、ヒアルロン酸ジエタノールアミン、ヒアルロン酸シクロヘキシルアミン、及びそれらの任意の組み合わせによって構成された群のうちからも選択される。一具体例において、前記ヒアルロン酸の塩は、ヒアルロン酸ナトリウムでもある。
【0061】
前記ヒアルロン酸またはその塩の分子量は、約100,000Daないし約6,000,000Daでもあり、一具体例において、前述のヒアルロン酸またはヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、約100,000Daないし約6,000,000Da、具体的には、約500,000Daないし約6,000,000Da、さらに具体的には、約1,000,000Daないし約4,000,000Daでもある。
【0062】
前記ヒアルロン酸は、当該技術分野に公知された任意のヒアルロン酸を含み、任意の原料から得たヒアルロン酸を利用することができる。前記ヒアルロン酸は、動物(例:動物胎盤、鶏冠)由来のでもあり、発酵時、ヒアルロン酸を生産することができる任意の微生物(例:ブドウ球菌属(Staphylococcus)微生物、ストレプトコッカス属(Streptococcus)微生物)由来のヒアルロン酸でもある。
【0063】
一具体例において、前記ヒアルロン酸は、微生物由来のヒアルロン酸であり、例えば、ストレプトコッカス属(Streptococcus)微生物由来のヒアルロン酸である。微生物由来のヒアルロン酸は、動物起源ヒアルロン酸のウイルス問題、あるいは原料品質の均一性問題から自由でもあり、医薬品として製造するとき、品質管理の側面ですぐれるという長所がある。
【0064】
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液は、ヒアルロン酸架橋物の製造にも使用されることが公知である任意の塩基性物質を含むアルカリ水溶液でもある。例えば、前記アルカリ水溶液は、pH9~13のアルカリ水溶液でもあり、前記アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム含有水溶液、水酸化カリウム含有水溶液またはアンモニア含有水溶液でもあり、一具体例において、前記アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム含有水溶液でもある。
【0065】
本発明の実施例において、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液は、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を、水溶液全体体積を基準に、約0.5%(w/v)ないし5%(w/v)になるように含んでもよく、具体的には、約1%(w/v)ないし4%(w/v)になるように含んでもよい。一具体例において、前述のヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液は、ヒアルロン酸ナトリウムを、約2%(w/v)になるように含んでもよい。
【0066】
本発明の実施例において、前記水溶液が、塩基性物質として水酸化ナトリウムを含み、ヒアルロン酸ナトリウムを添加して製造される場合、前記水溶液は、ナトリウムイオンを0.2M以上含んでもよい。
【0067】
本発明の実施例において、前記水溶液は、架橋剤をさらに含んでもよい。前記架橋剤は、1以上の官能基を有する化合物であり、具体的には、1以上のアルデヒド基、カルボジイミド基、エポキシ基またはビニルスルホン基を有する化合物でもある。さらに具体的には、前記架橋剤は、2以上のエポキシ基を有する化合物、またはジビニルソルホンでもある。例えば、前記架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDCI・HCl)、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミド-メト-p-トルエンスルホネート、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドヒドロクロリド、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE:1,4-butanediol diglycidyl ether)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE:ethylene glycol diglycidyl ether:)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,6-hexanediol diglycidyl ether)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(propylene glycol diglycidyl ether)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(polypropylene glycol diglycidyl ether)、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(polytetramethylene glycol diglycidyl ether)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(neopentyl glycol diglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル(tri-methylpropane polyglycidyl ether)、ビスエポキシプロポキシエチレン(1,2-(bis(2,3-epoxypropoxy)ethylene)、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル(pentaerythritol polyglycidyl ether)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)、またはそれらの混合物でもあり、一具現例として、前記架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジビニルスルホン、またはそれらの混合物でもある。一具現例として、前記架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)でもある。一具現例として、前記架橋剤は、ジビニルスルホン(DVS)でもある。
【0068】
本発明の実施例において、前記水溶液は、架橋剤を、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、またはそれらの混合物1モルに対し、0.005モルないし1モル、具体的には、0.01モルないし0.8モルで含んでもよい。
【0069】
本発明の実施例において、前記水溶液は、架橋剤を、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物1gに対し、約10μl~500μl、具体的には、約50μl~400μlで含んでもよい。
【0070】
本発明の実施例において、前記水溶液にエタノールを添加し、固体のヒアルロン酸粒子を含む混合液を製造する段階において、前記エタノールは、ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液1体積に対し、約1ないし約10体積で添加されうる。具体的には、前記混合液の製造時、前記水溶液と添加されるエタノールの体積比は、約1:1ないし10、さらに具体的には、約1:2ないし8でもある。前記範囲でエタノールが添加されることにより、前記固体形態のヒアルロン酸粒子を使用して製造されたヒアルロン酸ゲルに、すぐれた流変学的特性を示すことができ、関節炎の治療または予防に優秀な効果を示すことができる。
【0071】
本発明の実施例において、前述のヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液にエタノールを添加するとき、該エタノールの投入速度は、一定でもあり、あるいは変動されもする。具体的には、エタノール投入速度は、一定でもある。
【0072】
本発明の実施例において、前述のヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液にエタノールを添加する工程の間、前記水溶液とエタノールとの混合液は、継続して撹拌されうる。具体的には、前記エタノール添加工程の間、該混合液は、約50rpmないし300rpm、さらに具体的には、約50rpmないし250rpmで撹拌されうる。
【0073】
本発明の実施例において、前記混合液の撹拌速度は、一定でもあり、あるいは変動されもする。具体的には、前記混合液の撹拌速度は、一定でもある。
【0074】
本発明の実施例において、前記水溶液にエタノールを添加するとき、前記エタノールは、徐々に一定時間にわたっても添加される。ヒアルロン酸は、線形の高分子に、エタノールによって脱水されながら、糸(糸束)のような形態に抽出される特性がある。具体的には、前記水溶液に、エタノールは、纎維状(糸束)のヒアルロン酸固体、または塊状のヒアルロン酸固体が形成されないほど、徐々に添加されうる。さらに具体的には、水溶液に、エタノールは、ヒアルロン酸が粉末のように、微細粒子の形態に析出されうるように、徐々に添加されうる。前記エタノール添加速度が下記範囲を超える場合、纎維状のヒアルロン酸に抽出され、洗浄時、pH調節が不可能であり、洗浄が容易ではなく、最終生成物質が褐変されたり、粘弾性が低くなったりし、液体状態に生産されてしまう。前記水溶液にエタノールを添加するとき、前記エタノールの投入速度は、約20mL/minないし1,000mL/minでもある。具体的には、前記エタノールの投入速度は、約20mL/minないし700mL/minでもあり、さらに具体的には、前記エタノールの投入速度は、約20mL/minないし500mL/minでもある。前記速度でエタノールを投入するとき、ヒアルロン酸が塊にならず、粉末のように、微細粒子状に析出されうる。
【0075】
本発明の実施例において、前記エタノールの添加時、ヒアルロン酸含有水溶液及びエタノールを含む混合液の体積に対するエタノールの体積変化速度が、約0.5%(v/v)/minないし35%(v/v)/minになるようにも添加される。
【0076】
そのように、エタノールが、徐々に一定時間にわたって添加される場合、均一な微細粒子の形態で、ヒアルロン酸粒子が析出されうる。
【0077】
また、均一な微細粒子の形態で得られたヒアルロン酸は、架橋反応後、エタノール、またはエタノールを含む溶液で洗浄が可能であり、洗浄の間、粉末状のヒアルロン酸架橋物が膨潤される現象がほとんどないか、あるいはそれを最小化させることができる。従って、架橋剤または不純物の洗浄時、少量の洗浄液でも洗浄が十分に可能であり、ヒアルロン酸架橋物物性の均質性を向上させることができ、量産が可能であり、経済的である。
【0078】
本発明の実施例において、前記固体ヒアルロン酸の粒子と架橋剤が反応し、架橋反応が進められ、前記架橋反応により、微細な粒子である粉末状のヒアルロン酸架橋物が形成されうる。前記微細な粒子である粉末状のヒアルロン酸架橋物は、均一な粒子サイズを有し、架橋度が均一でもある。
【0079】
本発明の実施例において、前記固体状態のヒアルロン酸粒子と、前記架橋剤との架橋反応は、約20℃ないし40℃で、約6ないし24時間行われうる。前述のような反応条件により、ヒアルロン酸の分解を最小化させることができ、鎖長が長いヒアルロン酸架橋物が形成されうる。また、関節炎治療に適する架橋度を示し、すぐれた物性を有するヒアルロン酸架橋物が形成されうる。
【0080】
本発明の実施例において、微細粉末状のヒアルロン酸架橋物は、D90が約80μm以下でもある。
【0081】
本発明の実施例において、前記均一な微細粉末状のヒアルロン酸架橋物は、D10が約2.5μmないし6μmであり、D50が約8μmないし20μmであり、D90が約25μmないし80μmでもある。
【0082】
本発明の実施例において、前記微細粉末状であるヒアルロン酸架橋物の粒度は、レーザ粒度分析法によって測定され、具体的には、乾式法によっても遂行される。
【0083】
本発明の実施例において、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、無定形でもあり、X線粉末回折分析パターンがハローパターンを示すことができる。具体的には、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図3の通りでもある。
【0084】
本発明の実施例において、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、無定形であり、前記架橋物の粒子は、D10が約2.5μmないし6μmであり、D50が約8μmないし20μmであり、D90が約25μmないし80μmでもある。
【0085】
本発明の実施例において、前記架橋反応遂行後、混合液のpHを9未満に調節し、架橋反応を終了させることができる。例えば、前記架橋反応遂行後、塩酸(HCl)を添加し、混合液のpHを6以上9未満に調整し、架橋反応を終了させることができる。
【0086】
本発明の実施例において、前記架橋反応終了後、前記微細粒子である粉末状のヒアルロン酸架橋物は、濾過を介しても得られる。すなわち、本発明の粉末状のヒアルロン酸架橋物は、粉末形態を有するので、撹拌しない場合、溶液内に沈んでおり、単純な濾過工程を介して、容易に粉末状のヒアルロン酸架橋物を液体から分離して得られる。
【0087】
本発明の実施例において、前記方法は、粉末状のヒアルロン酸架橋物を洗浄する段階をさらに含んでもよい。前記洗浄により、粉末状のヒアルロン酸架橋物に残留している架橋剤及び不純物が除去されうる。前記洗浄は、エタノール、またはエタノールを含む溶液を使用し、1回以上行われ、例えば、前記洗浄は、約70%(w/w)、約95%(w/w)のエタノール水溶液を使用し、数回行われる。例えば、前記得られた粉末状のヒアルロン酸架橋物は、約70%(w/w)、約95%(w/w)のエタノール水溶液を、互いに交換しながら、3回ないし5回にわたっても洗浄される。
【0088】
本発明の実施例において、前記洗浄段階は、pH9未満の条件下で遂行され、具体的には、pH6以上pH9未満の条件下でも遂行される。
【0089】
本発明の前記洗浄段階は、従来方法と比較し、純粋な水、またはリン酸緩衝液のような水溶液緩衝液ではなく、エタノールまたはエタノール水溶液のようなエタノールを含む溶液を使用することにより、ヒアルロン酸架橋物が洗浄される間に膨潤される現象を抑制することができ、品質管理が容易であり、洗浄段階の間、膨潤がほとんどならないか、あるいは最小化され、少量の洗浄液で、十分に架橋剤及び不純物を除去することができ、容易に量産が可能である。
【0090】
本発明の実施例において、前記方法は、洗浄後、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を乾燥させる段階をさらに含んでもよい。前記乾燥は、真空乾燥でもあり、約35℃ないし約70℃で、約10ないし40時間行われうる。
【0091】
本発明は、
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を架橋反応させる段階と、
前記水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、を含み、
前記エタノールは、前記水溶液に、一定時間にわたり、徐々に添加される方法によって製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物を提供する。
【0092】
前記方法は、ヒアルロン酸粒子を含む水溶液を架橋反応させる段階を追加して含むものでもある。前記段階は、ヒアルロン酸粒子を含む水溶液の架橋反応を持続させるものでもある。
【0093】
前記方法によって製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物は、微細粒子であり、取り扱いが容易であり、架橋度が均質である。また、洗浄段階の間、膨潤されず、粉末のように、微細粒子状をそのまま維持しており、洗浄が容易であり、量産が可能である。
【0094】
また、洗浄段階の間、粉末状態の架橋物に対するNaOH、未反応物BDDEのような架橋剤の洗浄が容易であり、pH調節が可能であり、追って、最終ゲルの適切な粘弾性を誘導することができ、pHによるヒアルロン酸架橋物の変性である褐変反応を最小化させ、かつ抑制することができる。
【0095】
本発明の粉末状のヒアルロン酸架橋物の粒度分布は、D90が約80μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0096】
本発明の前記均一な微細粉末状のヒアルロン酸架橋物は、D10が約2.5μmないし6μm、D50が約8μmないし20μm、D90が約25μmないし80μmである粒度分布を示すことができる。
【0097】
本発明の実施例において、前記微細粉末状のヒアルロン酸架橋物の粒度は、レーザ粒度分析法によって測定され、具体的には、乾式法によっても遂行される。
【0098】
本発明の粉末状のヒアルロン酸架橋物は、無定形でもあり、X線粉末回折分析パターンがハローパターンを示すことができる。具体的には、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図3の通りでもある。
【0099】
前記粉末状のヒアルロン酸架橋物の製造方法、及び前記ヒアルロン酸架橋物の物性は、前述の通りである。
【0100】
本発明は、すぐれた流変学的特性を示し、異物除去が容易であり、経済的であり、量産に最適化された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法を提供する。
【0101】
本発明の前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法は、
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を架橋反応させる段階と、
前記水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、
前記ヒアルロン酸の粒子を含む水溶液の架橋反応を持続させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造する段階と、
前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を水和させる段階と、を含む。
【0102】
前記方法で水溶液にエタノールを添加するとき、前記エタノールは、前記水溶液に、一定時間にわたり、徐々に添加される。
【0103】
前記粉末状のヒアルロン酸架橋物の製造方法、及びヒアルロン酸架橋物の物性は、前述の通りである。
【0104】
本発明の製造方法によって製造された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、関節炎の予防または治療に最適化された流変学的特性を示す。また、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、フィルタで濾過が可能であるので、異物除去が容易であり、医薬品に製剤化するとき、不純物管理が容易であり、経済性及び量産面で顕著にすぐれた長所を有する。また前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、品質均一性にすぐれ、バッチ別に製造された架橋されたヒアルロン酸ゲルの流変学的特性がほぼ同一であり、均質した物性を示し、再現性にすぐれる。
【0105】
本発明の実施例において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの弾性率(G’(storage modulus))及び粘性率G”(loss modulus))は、人体関節補充液としての使用に適する範囲を示すことができる。
【0106】
前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性は、約30ないし200Paであり、粘性は、約10ないし100Paでもあり、具体的には、弾性は、約100ないし150Paであり、粘性は、約10ないし60Paでもある。本発明の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性は、約30ないし200Paであり、粘性は、約10ないし100Paでもあり、フィルタを介する濾過工程遂行が可能である。
【0107】
本発明の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性は、約30ないし200Paであり、粘性は、約10ないし100Paでもあり、粒度は、D90が240μm以下でもあり、さらに具体的には、D10が約25μmないし40μm、D50が約70μmないし110μm、D90が約190μmないし240μmである粒度分布、あるいはD10が約10μmないし30μm、D50が約35μmないし65μm、D90が約80μmないし120μmである粒度分布を示すことができ、フィルタを介する濾過工程遂行が可能である。
【0108】
前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法において、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造する段階は、前述の通りである。
【0109】
本発明の実施例において、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を水和させる段階は、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を、水、または水を含む溶液と混合する段階でもある。ここで、前記水を含む溶液は、緩衝液でもあり、具体的には、リン酸緩衝液でもある。
【0110】
前記粉末状のヒアルロン酸架橋物は、前述の水、または水を含む溶液に対し、約5mg/mLないし約15mg/mLの濃度で添加されうる。前記粉末状のヒアルロン酸架橋物が、水、または水を含む溶液に前述の濃度で添加される場合、架橋されたヒアルロン酸ゲルが関節炎治療に適する粘性及び弾性を示し、濾過可能なほどの流変学的特性を示し、異物除去が容易であり、それによる品質管理が容易であり、注射器充填時、適切な注射圧力を示すことができる。
【0111】
本発明の実施例において、前記方法は、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを均質化させる段階をさらに含んでもよい。前記均質化は、均質器を利用して行われ、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、均質器を利用し、約7,000rpm以下、例えば、約2,000ないし約7,000rpmで、約3分間ないし約20分間均質化されうる。
【0112】
本発明の実施例において、前記方法は、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを、約5μmないし30μmの気孔サイズ(pore size)を有するフィルタで濾過する段階をさらに含んでもよい。前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、小さい気孔サイズを有するフィルタを介して濾過することができ、ヒアルロン酸水和ゲルから異物を容易に除去することができ、品質管理が容易であり、異物飽和による危険性を低くすることができ、水和ゲルの物理的な特徴が大きく変化されずに維持されながら、粒度及び粒度分布の均質性を向上させることができ、高い品質向上を示すことができる。
【0113】
本発明の実施例において、前記フィルタを利用した濾過は、減圧状態または真空状態で行われ、具体的には、約80kPaから20kPaまでの圧力下でも行われる。
【0114】
本発明の実施例において、前記フィルタを利用した濾過は、1回以上行われ、具体的には、1回または2回行われうる。フィルタを介する濾過工程の遂行回数が増加しても、ヒアルロン酸水和ゲルの特性は、同一に維持され、粒度が低下されうる。
【0115】
本発明の実施例において、前記フィルタを介する濾過工程遂行前のヒアルロン酸水和ゲルは、D90が約240μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0116】
本発明の実施例において、フィルタを介する濾過工程遂行前のヒアルロン酸水和ゲルは、D10が約25μmないし40μm、D50が約70μmないし110μm、D90が約190μmないし240μmである粒度分布を示すことができる。
【0117】
本発明の実施例において、前記フィルタを介する濾過工程遂行前の架橋化されたヒアルロン酸水和ゲルは、無定形でもあり、X線粉末回折分析パターンがハローパターンを示すことができる。具体的には、前記ヒアルロン酸水和ゲルは、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図4の通りでもある。
【0118】
本発明の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、無定形であり、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図4の通りであり、D90が240μm以下である粒度分布を示すことができ、さらに具体的には、D10が約25μmないし40μm、D50が約70μmないし110μm、D90が約190μmないし240μmである粒度分布を示すことができる。前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、フィルタを介する濾過工程遂行が可能である。
【0119】
本発明の実施例において、前記フィルタを利用した濾過工程後の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D90が約120μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0120】
本発明の実施例において、前記フィルタを利用した濾過工程後のヒアルロン酸水和ゲルは、D10が約10μmないし30μm、D50が約35μmないし65μm、D90が約80μmないし120μmである粒度分布を示すことができる。
【0121】
本発明の実施例において、前記フィルタを介する濾過工程遂行後の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、無定形でもあり、X線粉末回折分析パターンがハローパターンを示すことができる。具体的には、前記ヒアルロン酸水和ゲルは、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図5の通りでもある。
【0122】
本発明の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、無定形であり、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図5の通りであり、D90が120μm以下である粒度分布を示すことができ、さらに具体的には、D10が約10μmないし30μm、D50が約35μmないし65μm、D90が約80μmないし120μmである粒度分布を示すことができる。前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、フィルタを介する濾過工程遂行が可能である。
【0123】
本発明において前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの粒度は、レーザ粒度分析法によって測定されたものでもある。
【0124】
本発明において、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの粒度は、湿式法によって測定されたものでもある。
【0125】
本発明の実施例において、前記濾過する段階は、均質化させる段階後にも遂行される。
【0126】
本発明の実施例において、前記方法は、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを滅菌する段階をさらに含んでもよい。前記滅菌は、約100℃以上で約10分以上行われ、具体的には、約121℃以上で約15分以上行われうる。
【0127】
本発明の実施例において、前記滅菌は、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを注射器に充填する前に行われるか、あるいは注射器に充填した後に行われ、具体的には、前記架橋されたヒアルロン酸ゲルを注射器に充填した後にも行われる。
【0128】
本発明は、
ヒアルロン酸、その塩、またはそれらの混合物を含む水溶液を製造する段階と、
前記水溶液に架橋剤を添加し、ヒアルロン酸を架橋反応させる段階と、
前記水溶液にエタノールを添加し、ヒアルロン酸を粒子に固体化させる段階と、
前記ヒアルロン酸の粒子を含む水溶液の架橋反応を持続させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造する段階と、
前記粉末状のヒアルロン酸架橋物を水和させる段階と、を含む方法によって製造された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを提供する。
【0129】
前記方法により、水溶液上にエタノールを添加するとき、前記エタノールは、前記水溶液上に、一定時間にわたり、徐々に添加されうる。
【0130】
前記ヒアルロン酸水和ゲルは、退行性関節炎による痛症の緩和、予防及び治療に最適化された流変学的特性を示す。また、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、小さい気孔サイズを有するフィルタで濾過が可能であるので、異物除去が容易であり、医薬品及び医療機器に対して製剤化するとき、不純物管理が容易であり、経済性及び量産面で顕著にすぐれた長所を有する。また、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、品質均一性にすぐれ、バッチ別に製造された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの流変学的特性がほぼ同一であり、均質した物性を示し、再現性にすぐれる。
【0131】
本発明の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D90が約240μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0132】
本発明の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D10が約25μmないし40μm、D50が約70μmないし110μm、D90が約190μmないし240μmである粒度分布を示すことができる。
【0133】
本発明の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、無定形でもあり、X線粉末回折分析パターンがハローパターンを示すことができる。具体的には、前記ヒアルロン酸水和ゲルは、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図4の通りでもある。
【0134】
本発明の実施例によれば、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、約5μmないし30μmの気孔サイズ(pore size)を有するフィルタによっても濾過される。
【0135】
本発明の濾過後の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D90が約120μm以下である粒度分布を示すことができる。
【0136】
本発明の濾過後の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、D10が約10μmないし30μm、D50が約35μmないし65μm、D90が約80μmないし120μmである粒度分布を示すことができる。
【0137】
本発明の濾過後の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、無定形でもあり、X線粉末回折分析パターンがハローパターンを示すことができる。具体的には、前記濾過の後のヒアルロン酸水和ゲルは、X線粉末回折パターン(XRD)が、
図5の通りでもある。
【0138】
本発明において、前記粉末状のヒアルロン酸架橋物粒子、及び架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの製造方法、並びに粉末状のヒアルロン酸架橋物粒子の物性、及び架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの物性は、前述の通りである。
【0139】
本発明の実施例において、前記濾過段階後に得られたヒアルロン酸水和ゲルは、弾性は、30ないし200Paであり、粘性は、10ないし100Paでもあり、具体的には、弾性は、100ないし150Paであり、粘性は、10ないし60Paでもある。
【0140】
本発明は、前記架橋されたヒアルロン酸水和ゲルが充填された注射器を提供する。前記注射器は、人体に適用するとき、注射に適する圧力を示すことができ、架橋されたヒアルロン酸ゲルのすぐれた流変学的特性により、退行性関節炎による痛症の緩和、予防及び治療のすぐれた効果を示すことができる。
【実施例】
【0141】
以下、下記実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、下記実施例は、本発明について説明するためのものであるのみ、本発明の範囲は、それらに限定されるものではない。
【0142】
実施例1
実施例1-1
0.2~0.3M NaOH水溶液(pH>9)に、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE:butanediol diglycidyl ether)を混合し、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA、分子量:1.0~4.0MDa)の濃度が2%(w/v)になるように反応物を製造した。このとき、BDDEとヒアルロン酸ナトリウムとの比率は、100μl(BDDE)/1g(HA)であった。
【0143】
前記反応物を常温で撹拌し、ヒアルロン酸ナトリウムを溶解させ、ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液(Na-HA solution)250mLを製造し、25ないし35℃で、4ないし6時間250rpmで撹拌しながら、架橋反応させた。前記ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液に、ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液とエタノールとの体積比が1:5になるまでエタノールを添加し、このとき、エタノールをヒアルロン酸ナトリウムが塊にならないように、20mL/min速度で添加した。
【0144】
該ヒアルロン酸ナトリウムが粉末状に析出された後、25℃で、24時間以下の間、250rpmで撹拌しながら、架橋反応させた。この架橋反応後、2.0M以下のHCl溶液を投入し、pHを調整(pH6.0~9.0未満)し、反応を終了させた。フィルタリングを介し、固形化されたヒアルロン酸架橋物を回収した。固形化されたヒアルロン酸架橋物に対し、95%(w/w)エタノールと70%(w/w)エタノールとを交互に交換して数回洗浄した。洗浄後、回収された架橋されたヒアルロン酸は、60℃以下で、24時間以下の間、真空乾燥させ、エタノール及び水分を除去し、粉末状のヒアルロン酸架橋物を得た。
【0145】
実施例1-2
ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液に、エタノールを80mL/minの速度で添加したことを除いては、実施例1-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を得た。
【0146】
実施例1-3
ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液に、エタノールを200mL/minの速度で添加したことを除いては、実施例1-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を得た。
実施例2
ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液とエタノールとの体積比が1:3になるまで、ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液に、エタノールを添加した点を除いては、実施例1-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0147】
実施例3
ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液とエタノールとの体積比が1:7になるまで、ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液に、エタノールを添加した点を除いては、実施例1-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0148】
実施例4
架橋剤として、BDDEの代わりに、DVSを、100μl(DVS)/1g(HA)になるように添加し、ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液とエタノールとの体積比が1:3になるまで、ヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液に、エタノールを添加した点を除いては、実施例1-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0149】
実施例5
実施例1-1で製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物を、PBS(phosphate buffered saline)に10~15mg/mLで添加して水和ゲルを得た。前記水和ゲルを均質器で、7,000rpm以下にて均質化した。前記均質化されたゲルに対し、121℃で、20分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0150】
実施例6
実施例2で製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物をPBS(phosphate buffered saline)に10~15mg/mLに溶解させて水和ゲルを得た。前記水和ゲルを均質器で、7,000rpm以下にて均質化した。前記均質化されたゲルに対して121℃で、20分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
実施例7
実施例3で製造された粉末状の架橋ヒアルロン酸を、PBS(phosphate buffered saline)に10~15mg/mLに溶解させて水和ゲルを得た。前記ゲルを均質器で、7,000rpm以下にて均質化した。前記均質化された水和ゲルに対し、121℃で、20分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0151】
実施例8
実施例4で製造された粉末状の架橋ヒアルロン酸を、PBS(phosphate buffered saline)に10~15mg/mLに溶解させて水和ゲルを得た。前記ゲルを均質器で、7,000rpm以下に均質化した。前記均質化された水和ゲルに対し、121℃で、20分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0152】
実施例9
実施例2で製造された粉末状の架橋ヒアルロン酸を、PBS(phosphate buffered saline)に6~8mg/mLに溶解させて水和ゲルを得た。前記ゲルを均質器で、7,000rpm以下に均質化した。前記均質化された水和ゲルに対し、121℃で、20分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸ゲルを得た。
【0153】
実施例10
実施例2と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物を、PBS(phosphate buffered saline)に10~15mg/mLに溶解させて水和ゲルを得た。前記ゲルを均質器で、7,000rpm以下にて均質化した。前記均質化された水和ゲルを、減圧濾過装置においてS.S濾過装置(solid suspension filtering with joint)を使用して濾過し、このとき、フィルタは、25μm以下のnylon filter paperを使用し、約80kPa圧力以下で濾過を進めた。濾過された水和ゲルに対し、20分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0154】
実施例11
実施例2と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
製造された粉末状のヒアルロン酸架橋物を、PBS(phosphate buffered saline)に10~15mg/mLに溶解させて水和ゲルを得た。前記均質化された水和ゲルを減圧濾過装置においてS.S濾過装置(solid suspension filtering with joint)を使用し、2回順に濾過し、このとき、フィルタは、25μm以下のnylon filter paperを使用し、約80kPa圧力以下で濾過を進めた。濾過された水和ゲルに対し、121℃で、20分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0155】
比較例1
8~12%(w/w)の比率で、エタノールを含む0.8~1.2%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液に、ヒアルロン酸ナトリウムを加えて完全に溶解させた後、BDDEを、50~100μl/ヒアルロン酸ナトリウム1gの比率で加えて混合した。前記混合が完了すれば、反応温度約40~50℃、反応時間約6時間以下で、架橋反応を行った。反応が完了したヒドロゲル形態のヒアルロン酸架橋物を、PBS溶液(phosphate buffered saline)で透析した。透析後に得られたヒドロゲルを、BDDEを除去するために、蒸溜水で洗浄し、中性化されたヒドロゲルを、95%(w/w)エタノール水溶液で抽出し、粉末上のヒアルロン酸一次架橋物を得た。
【0156】
前記ヒアルロン酸一次架橋物に対し、二次架橋反応を行った。前記粉末上のヒアルロン酸一次架橋物は、0.8~1.2%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液中に、1:4~6の重量比で混合し、完全に溶解させた。得られた反応混合物に、BDDEを50~100μl/一次架橋物1gの比率で加えて混合した。前記混合が完了すれば、反応温度40~50℃で、約12時間以下で、架橋反応を行った。反応が完了した後、生成された二次架橋物を、PBS溶液で約12~24時間透析した。透析後に得られた粒子を、BDDEを除去するために、蒸溜水で洗浄し、中性化されたヒドロゲルを、95%(w/w)エタノール水溶液で抽出し、粉末上のヒアルロン酸二次架橋物を得た。
【0157】
前記ヒアルロン酸一次架橋物及びヒアルロン酸二次架橋物を、PBS中で、9:1の重量比で、最終濃度が2%(w/w)になるように、ゲル製造した後、前記ゲルに対し、物理的力を加え、500μmのメッシュシーブを通過させて粉砕する工程を遂行することにより、最終的なヒアルロン酸架橋物を得た。
【0158】
実験例1:ヒアルロン酸水和ゲルの粘弾性測定(1)
前述の実施例で製造された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルに対し、粘弾性を測定した。該粘弾性は、回転型レオメータであるKinexus Pro Rheometer(Malvern、Worchestershire、英国)を利用して測定した。
【0159】
動的粘弾性測定のために、直径が20mmであるジオメトリを利用し、該ジオメトリとプレート(Plate)との測定距離(GAP)は、0.5mmであり、温度は、25℃であり、分析終了前まで一定に維持した。コントロールプログラム(control program)でもって、周波振動(frequency oscillation)を利用し、周波数の範囲を0.1~10Hzに設定し、2.5Hzに該当する保存弾性率(G’(storage modulus))、損失弾性率(G”(loss modulus))を測定した。
【0160】
実施例による水和ゲルの粘弾性測定結果は、表1の通りであり、前記表1において、弾性は、保存弾性率(G’(storage modulus))を意味し、粘性は、損失弾性率(G”(loss modulus))を意味する。
【0161】
【0162】
実験例2:ヒアルロン酸水和ゲルの粘弾性測定(2)
実施例10及び比較例1の方法によって架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを、3回別途に製造した。前記それぞれの架橋されたヒアルロン酸水和ゲルに対し、実験例1のように粘弾性を測定し、その平均値及び標準偏差を下記表2に示した。
【0163】
【0164】
前記表2から確認されるように、実施例10の方法によれば、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの弾性及び粘性は、標準偏差がかなり低い値を示し、各バッチごとに、ほぼ一定の物性を示した。一方、比較例1の方法によれば、架橋されたヒアルロン酸ゲルの弾性及び粘性は、製造時ごとに大きい差を示した。」
【0165】
それにより、本発明によれば、均一な物性を有する架橋されたヒアルロン酸水和ゲルが製造されうるということが分かる。
【0166】
実験例3:粉末状のヒアルロン酸架橋物の粒度分析
実施例1-1ないし実施例1-3で使用された原料物質である粉末状のヒアルロン酸ナトリウム(分子量:1.0~4.0MDa)、及び実施例1-1ないし実施例1-3による粉末状のヒアルロン酸架橋物の粒度を、粒度分析器(Mastersizer 3000、Malvern社、英国)を利用し、乾式法で分析し、その結果は、前述の
図1及び表3の通りである。
【0167】
【0168】
前述の
図1及び表3から確認されるように、実施例1-1ないし1-3による粉末状態のヒアルロン酸架橋物は、原料物質であるヒアルロン酸ナトリウムよりさらに微細な粉末状態の架橋物として得られた。
【0169】
また、エタノール投入速度が速いほど、粒度が上昇する傾向を示し、粒度分布において、D90値が上昇することを確認することができる。
【0170】
実験例4:架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの粒度分析
実施例6、実施例10、実施例11の架橋されたヒアルロン酸水和ゲルに対し、粒度分析器(Microtrac、Montgomeryville、PA)を利用し、湿式法で粒度を測定し、その結果を
図2及び表4に示した。
【0171】
【0172】
前述の
図2及び表4によれば、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、濾過が可能であり、濾過を介して粒度が低下され、より均一な粒度分布を示した。
【0173】
それにより、濾過工程を介して架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、さらに均質化され、粒度均一性が向上されるということが分かる。
【0174】
実験例5:架橋されたヒアルロン酸ゲルのXRD構造分析
実施例2による粉末状態のヒアルロン酸架橋物と、実施例6及び10による架橋されたヒアルロン酸水和ゲルとの物理的な状態を、X線回折分析を介して確認した。測定されたXRDスペクトルから求めた面間距離(d)と、比例反射強度(I/Io)とを比較し、RIR(semi-quantitative)法により、結晶構造のピークを比較した。
【0175】
X線回折スペクトル測定の機器及び条件は、次の通りである:
<粉末X線回折スペクトル測定方法>
- 製造社:PANalytical社(Almelo、オランダ)
- モデル:X’pert pro MPD
- X線波長:CuKγの1.5405Å
【0176】
【0177】
前述の
図3ないし
図5から確認されるように、実施例2による粉末状態のヒアルロン酸架橋物と、実施例6及び10による架橋されたヒアルロン酸水和ゲルとが、いずれも無定形状態であるということを確認することができた。
【0178】
実施例2による粉末状態のヒアルロン酸架橋物は、2θ値が約22°~23°である位置において、緩慢なピークを示し、実施例6及び10による架橋されたヒアルロン酸水和ゲルは、2θ値が約28°である位置において、緩慢なピークを示した。
【0179】
実施例12
1% NaOH水溶液にエタノールを同量添加し、そこに、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA、分子量:1.0~4.0MDa)を添加し、混合物の濃度が3%(w/v)になるように混合した。そこに、BDDEを添加し、反応物を製造した。このとき、BDDEとヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)との比率は、100μL(BDDE)/1g(HA)であった。
【0180】
前記反応物を、30℃で、200rpm以下の速度で撹拌し、5時間架橋反応させた。そこに、反応物とエタノールとの体積比が1:5になるまで、100mL/min以下の速度でエタノールを投入した。ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)が粉末状に析出された後、沈澱された状態で16時間さらに架橋反応させた。該架橋反応後、1.2M HCl溶液を投入し、pHを調整(pH8以下)して反応を終了させ、エタノールで数回洗浄した。
【0181】
洗浄後、乾燥減量10%以下に乾燥させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を得た。PBS(phosphate buffered saline)に、前記ヒアルロン酸架橋物を、10mg/mLになるように添加して水和ゲルを得た。前記水和ゲルを均質器で、7,000rpm以下にて均質化した。前記均質化されたゲルに対し、121℃で、20分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0182】
実施例13
1%NaOH水溶液とエタノールとの混合液に、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)を添加し、混合物の濃度が2%(w/v)になるように混合し、そこに、BDDEを、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)に対し、比率125μl(BDDE)/1g(HA)で添加して反応物を製造したことを除いては、実施例12と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0183】
実験例6:架橋されたヒアルロン酸水和ゲルの保管安定性評価、粘弾性測定(3)
実施例12及び13で製造された架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを、それぞれ25℃、30℃、40℃、60℃で、8ヵ月間保管し、1ヵ月ごとに、周期的に粘弾性を測定した。該粘弾性の測定は、回転型レオメータであるKinexus Pro Rheometer(Malvern、Worchestershire、英国)を利用し、実験例1と同一条件で測定した。また、市販されているヒアルロン酸架橋物注射剤であるSynvisc-one(登録商標)(サノフィ社)を比較製品として使用し、同一条件で粘弾性を測定した。表5及び表6において、実験が終わって測定されていない(空欄=測定されず)の場合、*で表示した。
実施例12及び13、または比較製品による水和ゲルの弾性及び粘性の測定結果は、表5ないし表7と、
図6ないし
図11とに示した。
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
表5において弾性は、保存弾性率(G’(storage modulus)、2.5HzにおけるPa)を意味し、表6において、粘性は、損失弾性率(G”(loss modulus)、2.5HzにおけるPa)を意味する。表7は、実施例12及び13、または比較製品による水和ゲルを、それぞれ25℃、30℃、40℃、60℃で、8ヵ月間保管した後で測定した弾性低下率及び粘性低下率を示す。
【0188】
前述の表5及び表6、並びに
図6ないし
図11でのように、実施例12及び13による水和ゲルは、比較製品(Synvisc-one(登録商標))対比で、同等以上の安定性を示した。また、実施例12及び13、または比較製品による水和ゲルにおいて、保管条件の温度が高いほど粘弾性が低下する傾向を示し、粘性より弾性の低下率が高かった。
【0189】
実施例14
実施例14-1
1% NaOH水溶液に、エタノールを6:4の比率で添加し、そこに、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA、分子量:1.0~4.0MDa)を添加し、混合物の濃度が2.5%(w/v)になるように混合した。そこに、BDDEを添加し、反応物を製造した。このとき、BDDEとヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)との比率は、100μl(BDDE)/1g(HA)であった。
【0190】
前記反応物を30℃で、170rpmの速度で撹拌し、5時間架橋反応させた。そこに、反応物とエタノールとの体積比が1:5になるまで、100mL/min以下の速度でエタノールを投入した。ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)が粉末状態に析出された後、沈澱された状態で16時間さらに架橋反応させた。該架橋反応後、1.2M HCl溶液を投入し、pHを調整(pH8以下)して反応を終了させ、エタノールで数回洗浄した。
【0191】
洗浄後、乾燥減量10%以下に乾燥させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を得た。PBS(phosphate buffered saline)に、前記ヒアルロン酸架橋物を10mg/mLになるように添加して水和ゲルを得た。前記水和ゲルを均質器で、7,000rpm以下にて均質化した。前記均質化されたゲルに対し、121℃で、21分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0192】
実施例14-2
BDDEを、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)に対し、比率120μl(BDDE)/1g(HA)で添加して反応物を製造したことを除いては、実施例14-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0193】
実施例14-2
BDDEを、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)に対し、比率140μl(BDDE)/1g(HA)で添加して反応物を製造したことを除いては、実施例14-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0194】
実施例15
実施例15-1
1% NaOH水溶液に、エタノールを6:4比率で添加し、そこに、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA、分子量:1.0~4.0MDa)を添加し、混合物の濃度が2.5%(w/v)になるように混合した。そこに、BDDEを添加し、反応物を製造した。このとき、BDDEとヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)との比率は、120μl(BDDE)/1g(HA)であった。
【0195】
前記反応物を、25℃で、170rpmの速度で撹拌し、5時間架橋反応させた。そこに、反応物とエタノールとの体積比が1:5になるまで、100mL/min以下の速度でエタノールを投入した。ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)が粉末状態に析出された後、沈澱された状態で、16時間さらに架橋反応させた。この架橋反応後、1.2MHCl溶液を投入し、pHを調整(pH8以下)して反応を終了させ、エタノールで数回洗浄した。
【0196】
洗浄後、乾燥減量10%以下に乾燥させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を得た。PBS(phosphate buffered saline)に、前記ヒアルロン酸架橋物を10mg/mLになるように添加して水和ゲルを得た。前記水和ゲルを均質器で、7,000rpm以下にて均質化した。前記均質化されたゲルに対し、121℃で、21分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0197】
実施例15-2
反応温度を30℃にし、反応物を架橋反応させたことを除いては、実施例15-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0198】
実施例15-3
反応温度を35℃にし、反応物を架橋反応させたことを除いては、実施例15-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0199】
実施例16
実施例16-1
1% NaOH水溶液に、エタノールを6:4比率で添加し、そこに、ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA、分子量:1.0~4.0MDa)を添加し、混合物の濃度が2.5%(w/v)になるように混合した。そこに、BDDEを添加し、反応物を製造した。このとき、BDDEとヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)との比率は、120μl(BDDE)/1g(HA)であった。
【0200】
前記反応物を、30℃で、50rpmの速度で撹拌し、5時間架橋反応させた。そこに、反応物とエタノールとの体積比が1:5になるまで、100mL/min以下の速度でエタノールを投入した。ヒアルロン酸ナトリウム(Na-HA)が粉末状態に析出された後、沈澱された状態で、16時間さらに架橋反応させた。該架橋反応後、1.2M HCl溶液を投入し、pHを調整(pH8以下)して反応を終了させ、エタノールで数回洗浄した。
【0201】
洗浄後、乾燥減量10%以下に乾燥させ、粉末状のヒアルロン酸架橋物を得た。PBS(phosphate buffered saline)に、前記ヒアルロン酸架橋物を10mg/mLになるように添加して水和ゲルを得た。前記水和ゲルを均質器で、7,000rpm以下に均質化した。前記均質化されたゲルに対し、121℃で、21分以下で滅菌を進め、架橋されたヒアルロン酸水和ゲルを得た。
【0202】
実施例16-2
反応物の撹拌速度を130rpmにしたことを除いては、実施例16-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0203】
実施例16-3
反応物の撹拌速度を200rpmにしたことを除いては、実施例16-1と同一方法で、粉末状のヒアルロン酸架橋物を製造した。
【0204】
実験例7:ヒアルロン酸架橋物の架橋度分析
ヒアルロン酸(HA)は、グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンとの反復結合された多糖類(polysaccharide)であり、ヒアルロン酸を、ストレプトマイセスヒアルロニダーゼ(Streptomyces hyaluronidase)で処理すれば、還元末端(non-reducing end)に、4,5-不飽和グルクロノシル残基(4,5-unsaturated glucuronosyl residue)を有するオリゴ糖(oligosaccharide)に分解されることが知られている。完全分解(complete digestion)された未変形HAは、テトラサッカライド(tetrasaccharide)(四量体(tetramer))とヘキササッカライド(hexasaccharide)(六量体(hexamer))との2つの生成物になり、オクタサッカライド(octasaccharide)(八量体(octamer))は、酵素分解の最小サイズ基質である。酵素分解が進められることにより、小単位のオリゴ糖にHAが分解されるが、BDDEなどの架橋剤によって変形されたHAは、酵素によって分解されても、架橋剤が結合されたオリゴ糖(HA-BDDE-HA、HA-BDDE)形態が生成されるので、HPLC分析時、未変形HAと、維持時間(retention time)に差が生じる。
【0205】
従って、ヒアルロン酸に架橋剤が結合して変形された程度を、架橋変形率(MoD:dgree of modification)とし、架橋剤の双方にヒアルロン酸が架橋されたもの(HA-BDDE-HA)を、交差結合架橋変形率(crosslink MoD)とし、架橋剤の一方にヒアルロン酸が架橋されたもの(HA-BDDE)をペンダント架橋変形率(pendant MoD)とした。
【0206】
ヒアルロン酸(HA)の分解(digestion)に使用されたヒアルロン酸分解酵素(Streptomyces hyalurolyticusから得たヒアルロニダーゼ)はMerck(Sigma Aldrich)社の製品を使用した。HPLC分析のためのカラムは、Dionex CarboPac PA100(Thermo Scientific社)を使用した。
【0207】
架橋剤によって変形されたHAは、ヒアルロン酸分解酵素を利用し、pH5.0、36℃条件で分解された。分解されたHAは、HPLCシステムを利用し、四量体(tetramer)、六量体(hexamer)、そしてそれ以上のオリゴマー(oligomer)を明確に分離することができた。232nmで、UV吸光度を介し、それぞれ分離されたピークの大きさを比較した。ヒアルロン酸が分解酵素によって完全分解されれば、四量体と六量体とになり、架橋結合されたヒアルロン酸は、四量体及び六量体より若干大きい糖ユニット、そしてそれ以上のオリゴマーなどに分離されたクロマトグラムを示す。各クロマトグラムの面積により、変形率(MoD)を求めることができ、八量体(octamer)以上のオリゴマーのピークは、交差結合架橋変形率(crosslink MoD)(%)、四量体(tetramer)と六量体(hexamer)との主ピークを除いた八量体より小さいオリゴマーのピークは、ペンダント架橋変形率(pendant MoD)(%)に区分し、その二つを合わせ、総架橋変形率(total MoD)(%)として求めた。
【0208】
実施例12で製造したヒアルロン酸架橋物、比較製品として使用したSynvisc-one(登録商標)(Sanofi社)、及び天然ヒアルロン酸(HA)の架橋度を分析し、表8に示した。また、実施例14-1~16-3で製造したヒアルロン酸架橋物の架橋度を分析し、表9に示した。
【0209】
【0210】
【0211】
前記表8に示すように、実施例12で製造したヒアルロン酸架橋物は、比較製品として使用したSynvisc-one(登録商標)と類似した粘弾性を示し、同等以上の安定性を示した。また、実施例12で製造したヒアルロン酸架橋物は、天然ヒアルロン酸(HA)より、ペンダント架橋変形率(pendant MoD)(%)、交差結合架橋変形率(crosslink MoD)(%)及び総架橋変形率(total MoD)(%)の上昇を示した。また、実施例12で製造したヒアルロン酸架橋物は、Synvisc-one(登録商標)と同等以上のペンダントMoD(%)、交差結合MoD(%)及び総MoD(%)を示した。
【0212】
前記表9に示すように、架橋反応が多く起こるほど、架橋変形率(MoD:degree of modification)(%)の上昇を示した。一般的に、該架橋反応は、架橋剤投入量(BDDE:HAモル比)が多いほど増大し、架橋反応が増大するほど、架橋変形率(または、変形度、架橋度)(MoD)(%)の上昇を示した。例えば、架橋剤(例えば、BDDE)濃度を異にさせて製造した実施例14-1~14-3によるヒアルロン酸架橋物の架橋度分析結果、架橋剤濃度が上昇するほど、架橋変形率(MoD)(%)の上昇を示した。
【0213】
また、前記表9に示すように、異なる反応温度で製造した実施例15-1~15-3によるヒアルロン酸架橋物の架橋度分析結果、反応温度が上昇するほど、架橋変形率(MoD)(%)の上昇を示した。一方、架橋反応時、撹拌速度(BDDE投入後、5時間以下)を異にさせて製造した実施例16-1~16-3によるヒアルロン酸架橋物の架橋度分析結果、撹拌速度による架橋変形率(MoD)(%)差は、大きくなかった。
【0214】
一般的に、架橋変形率(MoD)(%)値が大きいほど、粘弾性、すなわち、保存弾性率(G’(storage modulus)、2.5HzにおけるPa)によって表現される弾性と、損失弾性率(G”(loss modulus)、2.5HzにおけるPa)によって表現される粘性とが高くしめされるが、粘弾性値は、剤形のような他の要因にも影響を受けるために、常時一定傾向を示さなかった。
【0215】
以上、本発明につき、その望ましい実施例を中心に説明した。本発明が属する技術分野において当業者であるならば、本発明が、本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態に具現されうるということを理解することができるであろう。従って、該開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されなければならない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異は、本発明に含まれるものであると解釈されなければならないのである。