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特許7555926改善した安定性を有する糖コーティング固体形成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】改善した安定性を有する糖コーティング固体形成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/36 20060101AFI20240917BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240917BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240917BHJP
   A61K 9/42 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
A61K9/36
A23L5/00 F
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/42
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021533694
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 FR2019053106
(87)【国際公開番号】W WO2020128290
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】1873051
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーブル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルビアン、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】クロケット、セバスチャン
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0063253(KR,A)
【文献】特開昭49-019018(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136380(WO,A1)
【文献】特開2007-211006(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157264(WO,A1)
【文献】特表2003-526352(JP,A)
【文献】特表2004-531247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0269577(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02941965(EP,A1)
【文献】特開2013-010753(JP,A)
【文献】特公昭46-008719(JP,B1)
【文献】特開昭52-117413(JP,A)
【文献】特公昭46-040354(JP,B1)
【文献】特表2005-510255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72
A23L 5/00-5/30
A61K 47/00-47/69
A23L 29/00-29/10
A23G 1/00-9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンニトール及び脂肪酸を含む少なくとも1つの糖コーティング層を含むことを特徴と
前記糖コーティング層が、少なくとも40.0%のマンニトールを含み、この割合が前記糖コーティング層の総乾燥重量に対するマンニトールの乾燥重量として表され、
前記糖コーティング層が、1.0%~60.0%の脂肪酸を含み、この割合が前記糖コーティング層の総乾燥重量に対する脂肪酸の乾燥重量として表され、
前記糖コーティング層のマンニトール/脂肪酸の乾燥重量比が1~7であり、
前記脂肪酸は、16個~18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸から選択される、糖コーティング固体形成物。
【請求項2】
前記糖コーティング層が、少なくとも50.0%のマンニトールを含み、この割合が前記糖コーティング層の総乾燥重量に対するマンニトールの乾燥重量として表されていることを特徴とする、請求項に記載の糖コーティング固体形成物。
【請求項3】
前記糖コーティング層が、1.0%~40.0%の脂肪酸を含み、この割合が前記糖コーティング層の総乾燥重量に対する脂肪酸の乾燥重量として表されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の糖コーティング固体形成物。
【請求項4】
前記糖コーティング層が、少なくとも1つの結合剤を更に含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の糖コーティング固体形成物。
【請求項5】
前記糖コーティング層のマンニトール/結合剤の乾燥重量比が、1より大きいことを特徴とする、請求項に記載の糖コーティング固体形成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の糖コーティング固体形成物を調製する方法であって、前記方法が、
糖コーティング液を移動コア床上に噴霧する工程(a)であって、前記コアが、有孔回転ドラムを備えたチャンバ内に置かれ、前記噴霧が、少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる、工程(a)と、
工程(a)に付随する、前記噴霧された糖コーティング液を乾燥させる少なくとも1つの工程(b)と、
得られた糖コーティング固体形成物を回収する工程(c)と
を含み、
前記糖コーティング液が、マンニトール及び脂肪酸を含むことを特徴とする、
方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法であって、前記糖コーティング液が、85%未満の濃度の結晶性材料を有し、この割合が前記糖コーティング液の総重量に対する前記糖コーティング液の結晶性材料の乾燥重量に相当することを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記糖コーティング液が、85%未満の乾燥材料の含有量を有することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の糖コーティング固体形成物を調製するためのマンニトールと脂肪酸との組み合わせの、前記固体形成物の安定性を改善するための使用。
【請求項10】
湿度に対する固体形成物の安定性を改善するための、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、改善した安定性、特により高い耐湿性を有する新規の糖コーティング固体形成物、並びに同形成物を調製するために特に有用な糖コーティング方法である。
【背景技術】
【0002】
粉末及び錠剤などの固体形成物は、湿度を吸収する傾向のある物質で構成されている場合、吸湿性であると呼ばれる。この湿度は、製品の重量、それらの固体性、及びそれらの品質に影響を及ぼす。これらの湿度感受性成分を保護することにより、環境における相対湿度レベルが高すぎることに起因する不必要な損失が回避される。
【0003】
この目的のために、製造、輸送及び貯蔵の各領域における湿度の制御、特定のパッケージング、医薬形成物の修正の、いくつかのレベルにおいて作用させることが可能である。
【0004】
医薬形成物に関して、従来の保護技術は、保護エンベロープ内の吸湿性物質からなるこれらの固体コアを、例えば、封入技術(ハードカプセル又はソフトカプセル中に)、フィルムコーティング技術又は糖コーティング技術によってコーティングする又は包含することからなる。
【0005】
糖コーティングは、菓子又は医薬品において特に使用される操作であり、これは、固体又は粉末状製品の表面上に、多少なりとも硬質又は軟質の結晶化コーティングを作り出すことからなる。固体形成物(コア)のコーティングは、その軸を中心に回転するコーターと呼ばれるタンク内で実施され、その内部には、今後のエンベロープの構成材料(「糖コーティング液又はシロップ」)が液体状態で分配される表面上に、移動質量を形成する複数のコアが存在する。硬質で結晶質コーティングは、この液体を適用し、それによって提供される水を蒸発させることによって得られる。
【0006】
フィルムコーティングでは、フィルム形成特性を有するポリマーに基づく組成物が、結晶性材料の組成物の代わりに適用される。この組成物は、湿度バリアとして機能することができる薄膜を形成する。この目的のために選択されるポリマーは、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)及びこれらの誘導体などの合成ポリマーである。この方法は、糖コーティングよりも速いが、糖衣錠の特徴的な外観及び質感を提供しない。
【0007】
糖コーティングシロップは、主に、1種又は更には何種かの結晶性材料からなり、かつ、従来、アラビアガム又はゼラチンなどの結合剤、着色剤、TiOなどの不透明化剤、タルク、シリカ、炭酸カルシウムなどの鉱物充填剤、強力甘味料、香料、ビタミン及び活性成分を含有している。
【0008】
結晶性材料として、マンニトールは、その低い吸湿性に起因して、湿度バリアを作り出すための理想的な候補であり得る。加えて、マンニトールは、活性成分に対して反応性が低いため、医薬品において選択される賦形剤になる。
【0009】
しかしながら、マンニトールコーティングは技術的な問題に直面しているため、この物質は糖コーティングに現在使用されていない。結晶性のものであるが、マンニトールは水への溶解度が低い。しかしながら、糖コーティング方法では、噴霧されたシロップは、糖コーティング層を形成することができるように、高い含有量の結晶性材料を有する必要がある。従来のマルチトール又はスクロースコーティングの場合、少なくとも70%の乾燥材料が必要とされる。このような乾燥材料は、高温であってもマンニトールで得ることができない。
【0010】
興味深いことに、特定の安定性を示す合成起源のマンニトールコーティング組成物及びフィルム形成ポリマー(ポリビニルアルコール(PVA)及びその誘導体)もまた開示されている(米国特許第8,846,089号(湧永製薬))。しかしながら、このようにしてコーティングされた固体形成物の安定性は、依然として改善される必要がある。
【0011】
したがって、改善した安定性を得ることを可能にする固体形成物をコーティングするための手段を提供するための、満たされていない必要性があった。
【0012】
本発明の主題
したがって、本発明の目的は、良好な安定性、特に良好な耐湿性を有し、かつ効果的であるか又は従来技術のものよりも更に良好である、コーティング固体形成物を提供することである。
【0013】
本発明の別の好ましい目的は、コーティングがPVAなどの合成起源の材料の使用を必要としない固体形成物を提供することである。
【0014】
本発明の説明
本出願人は、非常に良好な耐湿性を有する、マンニトール系組成物でコーティングされた固体形成物を製造することに成功した。これらのコーティング組成物は、PVAなどの合成起源のフィルム形成ポリマーの使用を必要とせず、更に、改善した安定性を呈している。
【0015】
このコーティングは、マンニトールと、脂肪酸、特にステアリン酸との組み合わせを使用することを特徴とする。
【0016】
本出願人は、固体形成物を糖コーティングする方法であって、
糖コーティング液を移動コア床上に噴霧する工程(a)であって、このコアが、有孔回転ドラムを備えたチャンバ内に置かれ、この噴霧が、少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる、工程(a)と、
工程(a)に付随する、この噴霧された糖コーティング液を乾燥させる少なくとも1つの工程(b)と、
得られた糖コーティング固体形成物を回収する工程(c)と
を含み、
この糖コーティング液が、マンニトール及び脂肪酸を含むことを特徴とする、
方法を開発することによってこれを達成した。
【0017】
得られたコーティングは、優れた湿度バリアを提供する。以下の実施例で実証されるように、このバリア効果は、前述の米国特許第8,846,089号(湧永製薬)で使用される、マンニトール及びPVAを使用するコーティング組成物で得られるものよりもはるかに良好である。
【0018】
以下の実施例から、具体的には、コーティングされた錠剤の断面で撮影された写真から見られるように、前述の米国特許第8,846,089号に従って得られたコーティング層の構造は、本発明の技術で得られた構造とは異なると思われる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本出願人は、この構造的差異がこの性能における差異を説明することができるという意見を採る。
【0019】
有利には、本発明のコーティング組成物は、二酸化チタンの使用を必ずしも必要としない。実際に、このようにコーティングされた固体形成物、特に白色の固体形成物は、経時的に黄色化しない。
【0020】
本発明の方法は、様々な固体形成物(錠剤、チューイングガムなど)に適用され、製造業者に、複数の可能性、特に、湿度感受性物質を含む糖コーティング固体形成物を製造することができる可能性を提供する。
【0021】
本発明の方法では、乾燥と噴霧とは付随して行われる。驚くべきことに、コアを連続的に加湿するにもかかわらず、これらは侵食されない。
【0022】
これは特に驚くべきことであり、その理由は、この方法中に無意味ではない時間に噴霧を必ず停止する必要があることが、今までは糖コーティングにおいて受け入れられてきたからである。そうでなければ、コアは連続的に加湿されるため、コーティングに使用される物質が結晶化することができず、固体形成物は浸食して分解し、コアは互いに付着する(粘着現象)。しかしながら、この現象は、非常に吸湿性であるコアにおいても本発明の方法では観察されず、つまり、大量の水を誘引し保持している。
【0023】
したがって、従来の糖コーティングとは異なり、本発明の方法は、糖コーティング液が(従来のマルチトールコーティングのために少なくとも70%の)高い乾燥材料の含有量を有することを必要としない。これもまた、先の段落で挙げられたものと同じ理由(コアの著しい加湿化)で、当技術分野の一般知識と逆行する。
【0024】
低乾燥材料を使用することができるという事実は、一定数の利点を有する。第1に、それは、低温でコーティング液を使用する可能性を与え、したがって、熱不安定成分を、これらの液体中に又は糖コーティングされるコア組成物中に導入する可能性を与える。実際に、従来、糖コーティングにおいて高温が使用されている場合、高温は、糖コーティング溶液が溶液中に高含有量の結晶性材料を有することを可能にする。この高乾燥材料は本発明の方法において必須ではないので、糖コーティング液の温度は低下させ得る。
【0025】
第2に、これは、水への溶解度が低い結晶性材料で、マンニトールの場合に正確に糖コーティング操作を実施することを可能にする。
【0026】
本出願人によって開発された方法は、従来の糖コーティング方法よりもはるかに適応性があり、その実装において特に簡便であり得る。
【0027】
最後に、本発明の方法は、その実行中にそのパラメータの大きな修正(乾燥温度、糖コーティング液の配合など)を必ずしも必要とするものではなく、比較的簡便かつ省スペースな設備で実施することができる。
【0028】
最後に、本発明の方法に関しては、本出願人の名前における仏国特許出願第1755557号を挙げることができる。本特許出願は、まだ公開されていないが、本発明の方法に近い方法を開示しており、有利には、マンニトールで固体形成物を糖コーティングすることを可能にする。しかしながら、この特許出願は、脂肪酸の使用について言及していない。
【発明の概要】
【0029】
本発明の第1の目的は、マンニトール及び脂肪酸を含む少なくとも1つの糖コーティング層を含むことを特徴とする、固体の糖コーティング形成物である。
【0030】
本発明の目的はまた、本発明の糖コーティング固体形成物の調製に特に有用である、固体形成物を糖コーティングする方法であって、
糖コーティング液を移動コア床上に噴霧する工程(a)であって、このコアが、有孔回転ドラムを備えたチャンバ内に置かれ、この噴霧が、少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって確実にされる、工程(a)と、
工程(a)に付随する、この噴霧された糖コーティング液を乾燥させる少なくとも1つの工程(b)と、
このようにして得られた糖コーティング固体形成物を回収する工程(c)と
を含み、
この糖コーティング液が、マンニトール及び脂肪酸を含むことを特徴とする、方法でもある。
【0031】
本発明の目的はまた、特に本発明による糖コーティングする方法における、固体形成物をコーティングするためのマンニトールと脂肪酸との組み合わせの、この固体形成物の安定性を改善するための使用でもある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】糖コーティング層の破面-走査電子顕微鏡×135。糖コーティング液Man_1
【0033】
図2】糖コーティング層の破面-走査電子顕微鏡×135。糖コーティング液Man_pva_1
【0034】
図3】糖コーティング層の破面-走査電子顕微鏡×135。糖コーティング液Man_st.ac
【0035】
図4】糖コーティング層の破面-走査電子顕微鏡×1080。糖コーティング液Man_1
【0036】
図5】糖コーティング層の破面-走査電子顕微鏡×1080。糖コーティング液Man_pva_1
【0037】
図6】糖コーティング層の破面-走査電子顕微鏡×1080。糖コーティング液Man_st.ac_1
【0038】
図7】30℃及び75℃の雰囲気中、5%糖コーティングでの、異なる糖コーティング液を用いてコーティングした錠剤の経時的な水取り込み量。
【0039】
図8】30℃及び75℃の雰囲気中、10%糖コーティングでの、異なる糖コーティング液を用いてコーティングした錠剤の経時的な水取り込み量。
【0040】
図9】30℃及び75℃の雰囲気中、20%糖コーティングでの、異なる糖コーティング液を用いてコーティングした錠剤の経時的な水取り込み量。
【発明を実施するための形態】
【0041】
したがって、本発明の目的は、マンニトール及び脂肪酸を含む少なくとも1つの糖コーティング層を含む糖コーティング固体形成物である。
【0042】
糖コーティングにおいて、用語「固体形成物」は、糖コーティングされた物質の任意の固体の提示物(「糖コーティング固体形成物」)、又は糖コーティング操作を受けることができる任意の固体の提示物(「コア」)を意味すると、従来、理解されている。典型的な例は、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、ペレット、ミクロスフェア、顆粒、種子、クッキー、朝食シリアル、チューイングガムなどの菓子、ボイルドキャンディ、チューイングキャンディ、グミ、チョコレート、果実及び野菜、又は粉末及び/若しくは結晶の形態の製品である。これらの固体形成物は、例えば、食品、医薬品、獣医、又は化粧品の各用途のために意図され得る。これらは、ヒト、成人若しくは子ども用、又は動物用であることが意図され得る。これらはまた、化学的又は農薬的使用を目的とする製品であってもよいが、本発明の文脈において摂取されることが意図される固体形成物が好ましい。好ましくは、これらの固体形成物は錠剤から選択される。
【0043】
好ましくは、本発明による糖コーティング層は、少なくとも40.0%のマンニトール、好ましくは少なくとも50.0%、好ましくは少なくとも60.0%、好ましくは少なくとも65.0%、好ましくは少なくとも70.0%、好ましくは少なくとも75.0%、好ましくは少なくとも80.0%、好ましくは少なくとも81.0%、好ましくは少なくとも82.0%を含み、これらの割合はこの糖コーティング層の総乾燥重量に対するマンニトールの乾燥重量として表されている。
【0044】
本発明の脂肪酸は、他の種類の塩の形態であってもよく、又はこれらでなくてもよい。好ましくは、本発明による糖コーティング層の脂肪酸は、飽和脂肪酸から選択される。好ましくは、本発明の脂肪酸は、5個~25個の炭素原子、好ましくは10個~20個の炭素原子、好ましくは12個~24個の炭素原子、好ましくは14個~22個の炭素原子、好ましくは16個~20個の炭素原子、例えば16個~18個の炭素原子を有する脂肪酸から選択される。好ましくは、本発明の脂肪酸は、パルミチン酸及び/又はステアリン酸を含む。更に好ましくは、本発明において有用な脂肪酸は、ステアリン酸を、脂肪酸の総乾燥重量に対して、好ましくは少なくとも50乾燥重量%の含有量で含む。好ましくは、この含有量は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%である。更に好ましくは、ステアリン酸は、糖コーティング液中の唯一の脂肪酸である。
【0045】
好ましくは、本発明による糖コーティング層は、1.0%~60.0%の脂肪酸、好ましくは1.0%~40.0%、好ましくは2.0%~30.0%、好ましくは5.0%~30.0%、好ましくは10.0%~20.0%、好ましくは12.0%~18.0%、好ましくは14.0%~16.0%、例えば15%を含み、これらの割合はこの糖コーティング層の総乾燥重量に対する脂肪酸の乾燥重量として表されている。
【0046】
好ましくは、本発明による糖コーティング層は、1.0%~60.0%のステアリン酸、好ましくは1.0%~40.0%、好ましくは2.0%~30.0%、好ましくは5.0%~30.0%、好ましくは10.0%~20.0%、好ましくは12.0%~18.0%、好ましくは14.0%~16.0%、例えば15%を含み、これらの割合はこの糖コーティング層の総乾燥重量に対するステアリン酸の乾燥重量として表されている。
【0047】
好ましくは、本発明の目的は、
40.0乾燥重量%~99.0乾燥重量%のマンニトールと、
1.0乾燥重量%~60.0乾燥重量%の脂肪酸と
を含み、これらの割合がこの糖コーティング層の総乾燥重量に対する乾燥重量として表されている、少なくとも1つの糖コーティング層を含む糖コーティング固体形成物である。
【0048】
好ましくは、本発明による糖コーティング層のマンニトール/脂肪酸の乾燥重量比は、99以下、好ましくは80以下、好ましくは50以下、好ましくは40以下、好ましくは30以下、好ましくは20以下、好ましくは15以下、好ましくは15未満、好ましくは10以下である。この比は、好ましくは少なくとも1に等しく、好ましくは少なくとも2に等しく、好ましくは少なくとも3に等しく、好ましくは少なくとも4に等しく、例えば4~7、又は5~7の範囲から選択される。
【0049】
好ましくは、ステアリン酸を使用する場合、本発明による糖コーティング層のマンニトール/ステアリン酸の乾燥重量比は、99以下、好ましくは80以下、好ましくは50以下、好ましくは40以下、好ましくは30以下、好ましくは20以下、好ましくは15以下、好ましくは15未満、好ましくは10以下である。この比は、好ましくは少なくとも1に等しく、好ましくは少なくとも2に等しく、好ましくは少なくとも3に等しく、好ましくは少なくとも4に等しく、例えば4~7、又は5~7の範囲から選択される。
【0050】
好ましくは、本発明の糖コーティング固体形成物は、1%より大きい糖コーティングの割合を有する。「質量増加」としても知られる糖コーティングのこの割合(糖コーティング%)は、従来、以下のように決定されている:
【数1】
【0051】
好ましくは、この糖コーティングの割合は、3%より大きく、好ましくは4%以上、好ましくは5%以上である。好ましくは、糖コーティングの割合は、60%未満、好ましくは55%未満、好ましくは50%未満、好ましくは45%未満、好ましくは40%未満、好ましくは35%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満である。この質量増加は、例えば、3%~30%の範囲、又は3%~25%の範囲、又は5%~20%の範囲で選択される。
【0052】
本発明による糖コーティング層は、特に、得られた糖コーティング固体形成物の安定性に関して、本発明において求められる特性に反しない限り、マンニトール及び脂肪酸以外の物質を含んでもよい。このような他の化合物は、例えば、
結合剤、例えばアラビアガム、ポリビニルアルコール(PVA)、加水分解ヒドロキシプロピル化デンプンなどのデンプン誘導体、
マンニトール以外の結晶性材料、
顔料などの着色物質、例えば、二酸化チタン又は炭酸カルシウムなどの不透明化剤、
香料、甘味料、
対象とする活性剤、例えば、医薬品、栄養、機能性食品、又は植物検疫剤
である。
【0053】
したがって、好ましくは、本発明の目的は、
40.0乾燥重量%~99.0乾燥重量%のマンニトールと、
1.0乾燥重量%~60.0乾燥重量%の脂肪酸と、
0.0乾燥重量%~49.0乾燥重量%の他の成分、具体的には上で定義したもの(これらの割合の合計は100.0%に等しい)
からなる、少なくとも1つの糖コーティング層を備えた糖コーティング固体形成物である。
【0054】
しかしながら、好ましくは本発明において、結合剤が使用される場合、マンニトール/結合剤の乾燥重量比は、好ましくは1より大きく、好ましくは2より大きく、好ましくは3より大きく、好ましくは5より大きく、好ましくは10より大きく、好ましくは15より大きく、好ましくは20より大きく、好ましくは30より大きく、好ましくは40より大きく、好ましくは50より大きく、好ましくは80より大きく、好ましくは99より大きい。更に好ましくは、本発明において有用な糖コーティング液は結合剤を含まず、少なくとも合成起源の結合剤、特にPVAを含まない。
【0055】
マンニトール以外の結晶性材料は、従来、モノマー及び二量体、好ましくはキシリトール、スクロース、エリスリトール、デキストロース、イソマルト、マルチトール、又は任意にこれらの組み合わせから選択される糖及びポリオールから従来、選択されている。しかしながら、好ましくは、本発明による糖コーティング層は、20.0%未満、好ましくは10.0%未満、より好ましくは5.0%未満、より好ましくは1.0%未満のキシリトール、及び/又はスクロース、及び/又はエリスリトール、及び/又はイソマルト、及び/又はマルチトール、及び/又は糖、及び/又はマンニトール以外のポリオールを含み、これらの割合はこの糖コーティング層の総乾燥重量に対するこれらの物質の乾燥重量として表されている。
【0056】
従来、糖コーティングにおける用語「結晶性材料」は、それらが溶解している溶媒の蒸発によって結晶化することができる物質を意味すると理解されている。糖コーティングによって標的化された結晶質コーティングを形成するのは、これらの結晶性材料である。
【0057】
概ね、本発明による糖コーティング層は、5.0%未満、好ましくは4.0%未満、好ましくは3.0%未満、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.0%未満の顔料及び/又は着色剤の量を含み、これらの割合はこの糖コーティング層の総乾燥重量に対する顔料及び/又は着色剤の乾燥重量として表されている。
【0058】
概ね、本発明による糖コーティング層は、20.0%未満、好ましくは18.0%未満、好ましくは15.0%未満、好ましくは10.0%未満、好ましくは5.0%未満、好ましくは4.0%未満、好ましくは3.0%未満、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.0%未満の不透明化剤、特に二酸化チタンの量を含み、これらの割合はこの糖コーティング層の総乾燥重量に対する不透明化剤の乾燥重量として表されている。有利な実施形態では、本発明の糖コーティング固体形成物の糖コーティング層は、二酸化チタンを含まず、又はより一般的には不透明化剤を含まない。糖コーティング層が不透明化剤又は二酸化チタンを含まない場合、本発明の糖コーティング固体形成物は、好ましくは白色である。
【0059】
本発明の別の目的は、特に本発明による糖コーティング固体形成物の調製に有用である、糖コーティングする方法であって、
糖コーティング液を移動コア床上に噴霧する工程(a)であって、このコアが、有孔回転ドラムを備えたチャンバ内に置かれ、この噴霧が、少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって確実にされる、工程(a)と、
工程(a)に付随する、この噴霧された糖コーティング液を乾燥させる少なくとも1つの工程(b)と、
得られた糖コーティング固体形成物を回収する工程(c)と
を含み、
この糖コーティング液が、マンニトール及び脂肪酸を含む、方法である。
【0060】
本発明の方法を実施するために使用される設備は、典型的には、糖コーティング液噴霧用装置へ糖コーティング液を輸送するための少なくとも1つの出口を含む、糖コーティング液の貯蔵用ユニットを備える。糖コーティング液は、噴霧装置を介して、チャンバ内に収容されたコア床に適用され、このチャンバは、このコア床の移動用の回転ドラムを備える。より正確には、ドラムは、有孔回転ドラムであり、選択された噴霧装置は、少なくとも1つの圧縮空気ノズルを備える。設備は、糖コーティング液を乾燥させるためのドラムチャンバに、空気入口を更に備える。乾燥空気は、特に、回転ドラムの穿孔を介して、特にチャンバから空気を吸引することによって、コア床を通って排出される。
【0061】
本発明に有用な設備の要素は市販されており、それらの構成は、当業者にとって特定の困難を表すものではない。
【0062】
本発明において有用な糖コーティング液は、マンニトール及び脂肪酸を含む。好ましくは、本発明の糖コーティング液は、その組成が本発明の糖コーティング固体形成物のために上に開示したものである乾燥材料を有する。
【0063】
典型的には、特に糖コーティング液が水性液体である場合、本発明の糖コーティング液は、85%未満の濃度の結晶性材料、特にマンニトールを有し、この割合はこの糖コーティング液の総重量に対する糖コーティング液の結晶性材料の乾燥重量に相当する。好ましくは、この濃度は、70%以下、好ましくは60%以下、好ましくは60%未満、更には55%以下、更には50%以下、更には45%以下、更には40%以下、更には35%以下、更には30%以下、更には25%以下、更には20%に等しい。この濃度は、概ね、10%より大きく、又は更には少なくとも15%に等しい。この濃度は、例えば、16%~18%の範囲から選択される。
【0064】
好ましくは、本発明の糖コーティング液は、乾燥材料の含有量を、重量により、85%未満、好ましくは80%未満、好ましくは75%未満、好ましくは70%以下、好ましくは60%以下、好ましくは60%未満、更には55%以下、更には50%以下、含む。この乾燥材料は、概ね、10%より大きく、好ましくは少なくとも15%に等しく、より好ましくは少なくとも18%に等しい。この乾燥材料は、例えば、15%~50%、好ましくは18%~40%、好ましくは18%~35%の範囲から選択される。以下の実施例から分かるように、この乾燥材料は、良好には35%未満、更には30%以下、更には25%以下、例えば18%~22%の範囲であってもよい。
【0065】
本発明に従って使用される糖コーティング液は、典型的には極性であり、好ましくは、大部分の溶媒として、最も優先的には唯一の溶媒として水を含む。
【0066】
有利な実施形態では、簡便性の理由から、かつこれが可能であるため、本発明による糖コーティング方法は、単一の糖コーティング液を組み入れ、すなわち、糖コーティング液は、糖コーティングの持続時間にわたって一定の配合物を有する。
【0067】
糖コーティング液の温度は、典型的には、結晶性材料、特にマンニトールが、噴霧されるべき糖コーティング液中で十分に可溶化されるように選択される。したがって、この温度はまた、液体中に存在する結晶性材料の量の関数でもある。本発明の方法では、この温度は、典型的には、20℃~90℃の範囲で選択される。好ましくは、この温度は、85℃未満、好ましくは80℃未満、好ましくは75℃未満、好ましくは70℃未満、更には65℃未満、更には60℃未満、更には55℃未満、更には50℃未満、更には45℃未満、更には40℃未満、更には35℃未満、更には30℃未満である。この温度は、概ね少なくとも15℃、更には少なくとも20℃である。これは、例えば、典型的には20℃~25℃の範囲の室温に相当する。
【0068】
有利な実施形態では、糖コーティング液は単一ジャケット貯蔵ユニット内に貯蔵され、かつ/又は本発明の方法において有用な設備は、糖コーティング液を加熱するための装置を有していない。実際に、本発明の方法が必ずしも高温の糖コーティング液の使用を必要としないため、これらの装置は、本発明の方法において義務的ではない。
【0069】
糖コーティング液を噴霧するために、使用される圧縮空気ノズルの数は、従来、製造業者の推奨に従って、糖コーティングチャンバの寸法に基づいて選択されている。このノズルの数は、典型的には、糖コーティングチャンバの40cm直径断面当たり1~2つである。このノズルの数は、例えば、1~10、例えば1~6の範囲である。
【0070】
好ましくは、噴霧のために、本発明の方法は、圧縮空気ノズルのみを使用する。
【0071】
好ましくは、本発明に従って使用されるノズルは、0.1mm~2.8mm、好ましくは0.1mm~2.5mm、好ましくは0.1mm~2.2mm、例えば0.3mm~2.0mm、又は0.5mm~1.8mm、又は0.5mm~1.5mm、又は0.5mm~1.2mm、又は0.5mm~1.0mmの範囲から選択される直径の孔を有する。
【0072】
好ましくは、噴霧流量は、0.5g/分/コアkg~20.0g/分/コアkg、好ましくは1.0g/分/コアkg~20.0g/分/コアkg、好ましくは2.0g/分/コアkg~20.0g/分/コアkg、例えば、2.0g/分/コアkg~15.0g/分/コアkg、又は更には2.0g/分/コアkg~10.0g/分/コアkgの範囲から選択される。
【0073】
有利な実施形態では、噴霧のために選択される流量は、糖コーティング方法中に増加される。具体的には、本発明者らは、特定の結晶性材料の場合に、糖コーティングの開始時の低流量の使用が、コアの表面上で起こる第1の結晶化フェーズを促進することを可能にすることを見出した。次いで、流量を増加させて糖コーティングを加速させ得る。
【0074】
噴霧のために、噴霧圧力及び圧潰圧力は、流量及びノズルの孔に基づいて調整され、かつ製造業者の推奨に従って調整される。この流量及びこのノズル孔は、典型的には、使用される設備のサイズに依存する。これらの噴霧圧力及び圧潰圧力は、典型的には、噴霧圧力の場合は0.5バール~4.0バール、好ましくは0.5バール~3.5バール、例えば0.7バール~2.5バールの範囲、及び/又は圧潰圧力の場合は0.7バール~3.5バールの範囲で選択される。
【0075】
本発明では、糖コーティング液は、回転ドラムによって移動させたコア床上に噴霧される。
【0076】
これらのコアの性質は、好ましくは、固体形成物について上で定義したものであり、これらは、例えば、錠剤又はチューイングガムである。これらのコアは、完全に裸であってもよく、又は1つ以上の層、例えば、グミング、フィルムコーティング、又は更には糖コーティングの各層でコーティングされていてもよく、これらの層は、好ましくは、本発明の糖コーティング方法に使用されるものと同じ設備において得られる。
【0077】
移動中にコア床を設定するために、ドラムの回転速度は、チャンバの寸法及び糖コーティングされるコアのサイズに基づいて選択される。これは、概ね、3rpm~30rpmの範囲、例えば、10rpm~20rpmの範囲で選択される。
【0078】
有利な実施形態では、特に簡便性及び/又はスペースの理由で、かつ本発明の方法がそれを可能にするという理由から、コア床の移動は、長手方向軸に沿ったこのコアの輸送を除外する。このことは、特に、糖コーティングされているコアが、1つのチャンバから別のチャンバへと輸送されないこと、すなわち、単一のチャンバ内で糖コーティングされること、及び/又はコア床が、それに沿って輸送される長手方向チャンバ内に糖コーティングされないことを意味する。
【0079】
乾燥のために、乾燥空気用に選択される温度は、好ましくは100℃未満、好ましくは80℃以下、好ましくは75℃以下、好ましくは70℃以下、更には65℃以下、更には60℃以下、更には55℃以下、更には50℃以下、更には45℃以下、更には40℃以下、更には35℃以下、更には30℃以下、更には25℃以下である。この乾燥温度は、概ね少なくとも15℃、好ましくは少なくとも20℃である。
【0080】
乾燥のために、流量は、50m/h~8,000m/hの範囲、例えば、100m/h~7,000m/hの範囲、例えば、100m/h~1,000m/hの範囲で選択され得る。
【0081】
乾燥空気の排出は、有利には、有孔回転ドラムの穿孔により空気を吸引することによって実施される。
【0082】
好ましくは、本発明において有用な回転ドラムの有孔壁の面積は、好ましくは、このドラムの壁の表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%を占める。最も優先的には、ドラムの壁は、その表面全体にわたって穿孔される。
【0083】
好ましくは、糖コーティングされるコア床の温度は、最大70℃、好ましくは最大60℃、好ましくは最大55℃、好ましくは最大50℃、好ましくは最大45℃、好ましくは最大40℃以下である。糖コーティングされるコア床のこの温度は、概ね、少なくとも10℃、更には少なくとも15℃、更には少なくとも20℃、更には少なくとも25℃である。糖コーティングされるコア床のこの温度は、好ましくは30℃~40℃の範囲、好ましくは32℃~38℃の範囲、例えば約35℃である。
【0084】
好ましくは、糖コーティングの開始前、すなわち噴霧が始まる前に、本発明の方法は、コア床を糖コーティングされるように加熱する工程を含む。この工程は、特に、コア床を、糖コーティングされるコアの温度に対応する標的温度に持ち込むことを目的とする。
【0085】
本発明の糖コーティング方法は、噴霧液の噴霧と乾燥とを付随して行う。
【0086】
しかしながら、特に、得られた糖コーティング固体形成物の品質及び/又はこの方法の作業性に関連して、本発明で求められる特性にそれが反しない限り、乾燥の非存在下で分布の工程(「一時停止時間」)及び噴霧の工程を導入することが考えられる。
【0087】
好ましくは、その間に噴霧が任意に乾燥に付随して実施されない糖コーティング方法のフェーズは、糖コーティング方法の時間の50%未満、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満を占める。最も優先的には、糖コーティングは、乾燥の非存在下での噴霧フェーズを含まない。
【0088】
好ましくは、可能な一時停止時間(その間に噴霧も乾燥も存在しない2つの噴霧フェーズの間の時間)は、糖コーティング方法の時間の50%未満、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満を占める。最も優先的には、糖コーティングは一時停止時間を含まない。
【0089】
優先的に、糖コーティング(又は「質量増加」)の割合は、単位時間当たり、少なくとも0.05%/分、好ましくは少なくとも0.10%/分、好ましくは少なくとも0.13%/分、又は更には少なくとも0.15%/分である。
【0090】
本発明の方法は、特に得られた糖コーティング固体形成物の品質及び/又はこの方法の作業性に関連して、本発明で求められる特性に反しない限り、固体形成物を糖コーティングすることを目的とするもの以外の通常の工程を更に含んでもよい。挙げることができる他の工程の例としては、グミング、平滑化、研磨及び着色がある。有利には、そのような工程が実施される場合、それらは、本発明の糖コーティング方法で使用されるものと同じ設備で実施される。使用される組成物が、結晶化された物質、特に糖及び/又はポリオールの層が効果的に形成される量の結晶性材料を含んでいる場合、例えばグミング工程又は着色工程などの工程のうちのいくつかが、糖コーティング工程に時として同化され得ることが理解される。
【0091】
これらの他の通常の工程に関して、本発明の方法に従って実施される糖コーティングが、固体形成物の平滑化の良好なレベルを得ることを既に可能にしていると認めることは興味深い。着色はまた、糖コーティング液に着色剤を添加することによって直接実施されてもよい。
【0092】
本発明の方法はまた、プライミング工程を含んでもよい。このプライミング工程は、糖コーティングされることになる又は糖コーティング中の、優先的には糖コーティング中の、コア床上に、粉末状組成物を1回又は数回、適用することからなる。この粉末状組成物は、典型的には結晶質材料を含む。これらの結晶質材料は、典型的には、糖コーティング液の結晶性材料と同じ性質のものであるが、異なっていてもよい。適用される粉末状組成物の量は、典型的には、錠剤の重量に対して10%未満、好ましくは5%未満である。好ましくは、しかしながら、かつこれは本発明の方法では必須ではないため、後者はプライミング工程を実施しない。
【0093】
本発明に有用な設備は、特に得られた糖コーティング固体形成物の品質及び/又はこの方法の作業性に関連して、これが本発明において求められる特性に反しない限り、糖コーティング方法で従来使用されている他の要素を含んでもよい。
【0094】
この点において、糖コーティング中の粘着する外観を回避することを目的とする砕塊機の使用を背景技術が時として挙げていることを認めることは興味深い。このような砕塊機は、本発明の方法では必須ではない。したがって、好ましくは、かつ有利には本発明の方法の文脈において可能であるため、本発明に従って使用されるドラムのチャンバは砕塊機を備えていない。
【0095】
本発明の目的はまた、固体形成物をコーティングするためのマンニトールと脂肪酸との組み合わせの、この固体形成物の安定性を改善するための使用でもある。
【0096】
好ましくは、脂肪酸は、本発明の糖コーティング固体形成物のマンニトール及び脂肪酸を含む糖コーティング層について上で定義したものから選択される。
【0097】
好ましくは、使用されるこのマンニトール/脂肪酸の組み合わせの乾燥重量比は、本発明の糖コーティング固体形成物のマンニトール及び脂肪酸を含む糖コーティング層について上で開示したものである。
【0098】
固体形成物の安定性を改善するための使用は、特にこの固体形成物の安定性に関連して、本発明で求められる特性に反しない限り、本発明に有用なマンニトール/脂肪酸の組み合わせ以外の物質の使用も含んでもよく、これらの他の物質は、それらの利用される性質及び量と関連して、好ましくは、本発明の糖コーティング固体形成物のマンニトール及び脂肪酸を含む糖コーティング層について上に開示したようなものである。
【0099】
好ましくは、マンニトール/脂肪酸の組み合わせが使用されるコーティングは、糖コーティング層であり、好ましくは、本発明の糖コーティング固体形成物のマンニトール及び脂肪酸を含む糖コーティング層について上に開示したような糖コーティング層である。
【0100】
好ましくは、マンニトール/脂肪酸の組み合わせは、好ましくは上に開示したような本発明の糖コーティング方法に従って、糖コーティング方法において、好ましくは糖コーティング液中で使用される。
【0101】
好ましくは、本発明において有用なマンニトール/脂肪酸の組み合わせは、湿度に対する固体形成物の安定性を改善するために使用される。
【0102】
湿度に対する固体形成物の安定性を改善するこの能力は、所定の貯蔵時間後に、本発明のマンニトール/脂肪酸の組み合わせによってコーティングされた重量による固体形成物の水取り込み量を、これらの同じ未コーティング固体形成物と比較することによって、当業者によって容易に測定され得る。安定性試験では、例えば、固体形成物を30℃の温度で75%相対湿度の環境中に置くことが可能である(t0)。次いで、重量による水取り込み量が、t0+5時間、及び/又はt0+1日、及び/又はt0+3日、及び/又はt0+7日、及び/又はt0+9日、及び/又はt0+15日の時点にわたり測定される。例えば、以下の実施例に従って進めることが可能である。
【0103】
好ましくは、本発明において有用なマンニトール/脂肪酸の組み合わせは、少なくとも60%の相対湿度、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%を含む雰囲気中で、固体形成物の安定性を改善するために使用される。
【0104】
好ましくは、本発明において有用なマンニトール/脂肪酸の組み合わせは、少なくとも15℃の温度、好ましくは少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、好ましくは少なくとも30℃の雰囲気中で、固体形成物の安定性を改善するために使用される。
【0105】
好ましくは、本発明において有用なマンニトール/脂肪酸の組み合わせは、これらの同じ未コーティング固体形成物(対照)と比較して、固体形成物の水取り込み量を減少させるために使用される。好ましくは、この水取り込み量の減少は、上記のような相対湿度及び/又は温度条件下で測定される。好ましくは、この水取り込み量の減少は、上記の時間で測定される。好ましくは、この水取り込み量の減少は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、更には少なくとも96%、更には少なくとも97%、更には少なくとも98%、更には少なくとも99%である。
【0106】
具体的には、この水取り込み量の減少は、以下のように計算される。
【数2】
[式中、
WU「水取り込み量、対照」は、対照の固体形成物で得られた質量増加を意味する。
WU「水取り込み量、試験」は、試験されるコーティング固体形成物で得られた質量増加を意味する。
【0107】
好ましくは、本発明において有用なマンニトール/脂肪酸の組み合わせは、湿度感受性物質を含む固体形成物の安定性を改善するために使用される。用語「湿度感受性物質」は、いわゆる吸湿性物質、すなわち湿度を吸収する傾向のある物質、及び/又はその活性が湿度によって損なわれる物質(例えば、その薬理活性が水の存在によって変化する医薬活性成分)を意味すると、従来、理解されている。
【0108】
本発明では、化合物の乾燥質量を参照する場合、その質量は可能性のある不純物を含み、その参照物は実際に、無水物質の重量を基準とすることが理解される。
【0109】
本発明は、以下の実施例の助けを借りて、より良く理解され、これは例示的かつ非限定的であることが意図される。
【実施例
【0110】
1.材料及び方法
1.1使用した設備
以下の特性を有する設備を使用した:
有孔回転ドラム、直径30.48cm、容量2L、
滑り止めバー×6、
圧縮空気噴霧ノズル1つ(Schlick 970/7-1 S75)、孔径0.8mm、
蠕動ポンプ(Watson Marlow model 323)、3ローラーヘッド(313 DW)、
チューブ:内径2mm、外径6mm。
1.2糖コーティング液
試験した糖コーティング液は、以下の配合物(乾燥%)を有した。
【0111】
【表1】
【0112】
これらの糖コーティング液は全て、単一ジャケット貯蔵タンク内に室温(20℃~25℃)で収容した。
本発明による、かつ不透明化剤を含まない糖コーティング液も試験したが、その結果は本明細書に提示していないことに留意されたい。興味深いことに、このように糖コーティングした固体形成物、特に白色のものは、経時的に黄色化しない。したがって、これらの不透明化剤を調合することが可能である。
1.3コア
以下のコアのバッチを、糖コーティング基材として使用した:900gのソルビトール錠剤、380mg(吸湿性)。
1.4糖コーティング
いくつかの試験を実施したところ、糖コーティング固体形成物の質量増加は多様となった。
噴霧を開始する前に、コア床の標的温度(この場合、35℃)に到達させるために、錠剤の床を加熱した(この場合、約2分間)。次いで、この方法を通して、噴霧と乾燥とを付随して実施した(一時停止時間なし)。糖コーティング液は室温(20℃~25℃)とした。糖コーティングの終了時に噴霧を停止し、タービンを減速させ、固体形成物を標的温度(約2分)に冷却するまで乾燥させた。
本方法を実施するための条件は、以下の通りとした。動作圧力:4バール、噴霧圧力:1.3バール、Jet圧潰圧力:1.3バール、差圧:-0.25ミリバール、ドラム回転速度:18rpm、乾燥空気の流量:100m/h、入口の空気の温度(乾燥):55℃、測定したコア床の温度:35℃(この温度は、必要に応じて乾燥温度及び/又は噴霧流量を調節するように更に制御する。この場合、そのような調整は必要なかった)、噴霧流量及びこの方法の時間:
【0113】
【表2】
【0114】
2.結果
2.1コーティング固体形成物の外観
対照の糖コーティング液Man_1、Man_pva_1及びMan_st.ac_1で得られた、20%の糖コーティングの割合を有する固体形成物を、電子顕微鏡下で観察した。写真を図1~6に示す。
2.2.安定性試験
項目1で得た錠剤のうちのいくつかを、75%相対湿度で30℃での雰囲気中に置いた(t0)。不安定性の対照として、裸の(未コーティング)ソルビトール錠剤もまた試験した。
錠剤の水取り込み量を、t0+5時間、t0+1日、t0+3日、t0+7日、t0+9日、t0+15日に評価した。結果を、図7図8及び図9に、それぞれ5%、10%及び20%の糖コーティングの割合の場合で提示する。
米国特許第8,846,089号の教示に従って、マンニトール及びPVAでコーティングした固体形成物が、改善した安定性を有すること、すなわち、対照と比較してコーティング固体形成物の経時的な水取り込み量が著しく減少することが観察される。
更に、コーティングのために使用する組成物が何であろうと、図1~7の比較は、糖コーティングの割合が高いほど安定性が高いことを示している。
質量増加のいずれでも(5%~20%)、マンニトール及び脂肪酸(ステアリン酸)を含む本発明の糖コーティング固体形成物の安定性は更に高い。本発明の糖コーティング固体形成物の経時的な水取り込み量は、マンニトール及びPVAでコーティングした対照の固体形成物又は固体形成物でt0+5hからt0+15日に観察した水取り込み量よりも著しく少ない。
糖コーティングの最も高い割合(20%、図7)について、本発明者らはまた、本出願人の名前において仏国特許出願第1755557号の対象であった方法に従って、マンニトール単独(糖コーティング液「Man_1」)による糖コーティングを試験した。まだ公開されていないこの特許出願は、脂肪酸の使用について言及されていないという事実を除いて、本発明と同様の方法を開示している。
PVAの添加は安定性の改善にわずかな影響しか有していないことが見出され、一方、ステアリン酸の添加は、水取り込み量の明確な目に見える減少を可能にすることが見出される。
したがって、本発明に従って実施する糖コーティングは、特に吸湿に関して、固体形成物の優れた保護を得ることを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9