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特許7555932成形用樹脂シートおよびそれを用いた成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】成形用樹脂シートおよびそれを用いた成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240917BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240917BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240917BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240917BHJP
【FI】
B32B27/36 102
B32B27/30 A
B32B7/023
B32B7/027
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021539217
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029751
(87)【国際公開番号】W WO2021029266
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2019146934
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 敦大
(72)【発明者】
【氏名】野中 健太
(72)【発明者】
【氏名】高崎 雅登
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124920(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150646(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/060100(WO,A1)
【文献】特開2014-157289(JP,A)
【文献】特開2015-132691(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031072(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 51/00-51/46
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層の少なくとも一方の面に、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層を有し、高硬度樹脂層の少なくとも片側表面にハードコート層またはハードコートアンチグレア層を積層した樹脂シートであって、
前記ポリカーボネート樹脂(a1)および前記高硬度樹脂のガラス転移点が、以下の関係を満たし:
-10℃≦(高硬度樹脂のガラス転移点)-(ポリカーボネート樹脂(a1)のガラス転移点)≦40℃
前記樹脂シートの543nmの波長で測定した際の面内リタデーションが4000nm以上であり、
前記樹脂シートの片側表面に接着剤を含む接着剤層により、543nmの波長で測定した際の面内リタデーションが50nm以下の樹脂フィルム(X)を貼合した成形用樹脂シート。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂(a1)が芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1に記載の成形用樹脂シート。
【請求項3】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂が下記一般式(4a)で表される構成単位を含む、請求項2に記載の成形用樹脂シート。
【化1】
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂(a1)の含有量が前記基材層の全質量に対して75~100質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項5】
前記高硬度樹脂が以下の樹脂(B1)~(B6)からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート:
・樹脂(B1):下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合体、または該共重合体と樹脂(B2)とのアロイ
【化2】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり;R2は炭素数1~18のアルキル基である。)
【化3】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり;R4は炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である。);
・樹脂(B2):(メタ)アクリル酸エステル構成単位を6~77質量%、スチレン構成単位を15~71質量%、および不飽和ジカルボン酸構成単位を8~23質量%含む共重合体(D)、該共重合体(D)同士のアロイ、または該共重合体(D)と他の高硬度樹脂とのアロイ、または、該共重合体(D)とアクリル樹脂とのアロイ;
・樹脂(B3):下記一般式(6)で表される構成単位(c)と、任意に下記一般式(7)で表される構成単位(d)とを含む共重合体;
【化4】
【化5】
・樹脂(B4):スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を60~90質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む共重合体(G)、または該共重合体(G)と前記樹脂(B2)とのアロイ;
・樹脂(B5):下記一般式(8)で表される構成単位(e)を含む樹脂。
【化6】
・樹脂(B6):スチレン構成単位を50~95質量%、不飽和ジカルボン酸単位を5~50質量%含む共重合体とアクリル樹脂とのアロイ。
【請求項6】
前記高硬度樹脂の含有量が前記高硬度樹脂層の全質量に対して70~100質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項7】
前記基材層と前記高硬度樹脂層の合計厚みが0.5mm~3.5mmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項8】
前記基材層と前記高硬度樹脂層の合計厚みに占める前記基材層の厚みの割合が75%~99%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項9】
前記成形用樹脂シートのヘーズが2~30%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項10】
前記成形用樹脂シートにおけるハードコート層表面の鉛筆硬度が2H以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項11】
前記成形用樹脂シートにおける樹脂フィルム(X)がポリカーボネート樹脂(a1)を含むポリカーボネートフィルムからなる請求項1~10のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項12】
前記成形用樹脂シートにおける樹脂フィルム(X)がポリカーボネートフィルムにセンサー電極を施工したフィルムタッチセンサーからなる請求項1~10のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項13】
前記成形用樹脂シートにおける接着剤層が光学粘着シートである請求項1~12のいずれか1項に記載の成形用樹脂シート。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の成形用樹脂シートを用いて成形された樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用樹脂シートおよびそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
計器カバーなどの自動車内装品や家電、OA機器、パーソナルコンピュータ、小型携帯機器などの表示面の構成部品には、ガラス板、透明樹脂板などが使用され、これを保持する枠部品などに樹脂製の成形体が用いられている。他方、携帯電話端末などに用いられるタッチパネル型表示面の構成部品には、射出成形樹脂からなる枠部品に、透明シート、特に、ガラス板を両面粘着テープなどで接着したものが用いられている。タッチパネル型表示面としては、応答速度の点からは厚みが薄いものほど好ましく、強度の点からはある程度以上の厚さが必要であるため、高弾性率の材料が選択される。また、耐擦り傷性や指紋ふき取り性なども要求される。
【0003】
上記のような用途に使用される樹脂成形体は、樹脂シートを成形することにより製造することができるが、用途に応じた特性を付与すべく、種々の工夫がなされている。例えば、樹脂シートをハードコート層、加飾シート等で修飾したり、異なる組成を有する樹脂層を積層して樹脂シートを構成したり、使用する樹脂の組成を工夫したりということがなされている。
【0004】
加飾シートとしては、例えばアクリル系樹脂が用いられており、ハードコート層を有するものや、印刷等の意匠を設けた上に、更にフィルムを貼り合わせたものなども用いられている。
例えば、特許文献1には、表面側から順に、透明アクリル系樹脂シート層、絵柄印刷インキ層、ABS樹脂シート層およびABS樹脂バッカー層が積層された化粧シートが開示されている。特許文献2には、ポリカーボネート樹脂層の表面にメタクリル樹脂およびアクリルゴム粒子からなる層が積層されてなる多層フィルムが開示されており、その多層フィルムの一方の面に加飾が施され、その加飾面に熱可塑性樹脂シートが積層された加飾シートが開示されている。さらに、その加飾面に熱可塑性樹脂を射出成形することによって製造された加飾成形品も開示されている。
【0005】
特許文献3には、樹脂基材上に熱硬化型もしくは紫外線硬化型のハードコート層を設けたシートを用いて成形された樹脂成形品が開示されている。
また、特許文献4には、基材フィルムの片面に特定組成のハードコート塗料を用いて形成した層を有する加飾用ハードコートフィルムが開示されており、基剤フィルム上に印刷層を設けてよいことも記載されている。この加飾フィルムは、熱成形が可能である。特許文献4に記載の加飾フィルムは、成形用樹脂と一体化され、加飾成形品となる。
特許文献5は、ポリカーボネート系樹脂組成物を主成分とする基材層の片面に、アクリル系樹脂を主成分とする被覆層を備えた積層シートを開示している。
【0006】
また、表示面の構成部品は外光の反射を散らして、表示を見やすくするためにアンチグレア層を設ける場合もある。アンチグレア処理は表面に微細な構造や形状を付与することにより施される。
表示面が曲がった形状であると、ガラス板を前面板部品として使用する場合はガラス板を曲げてからアンチグレア処理を施す必要がある。これはガラスの曲げ温度にアンチグレア層が耐えられず消失してしまうからである。しかしながら、曲面に均一にアンチグレア処理をするのは困難である。一方で樹脂板を使用する場合はあらかじめ平板にアンチグレア処理をしたものを曲げることができる。樹脂板の曲げ温度はガラスの曲げ温度よりも著しく低く、アンチグレア層が消失しないため、曲面にアンチグレア処理をする必要がない利点がある。
【0007】
カーナビゲーションシステムやスマートフォンなどの表示面はタッチパネル機能が付与されている場合が多いが、表示面が曲面形状の場合、曲面の樹脂前面板にタッチセンサーを貼合することはとても難易度が高い。したがって樹脂板を曲面形状に賦形する前に、平板の状態でタッチセンサーをあらかじめ貼合した後、樹脂板とタッチセンサーを同時に賦形する方法が曲面の前面板にタッチセンサーを貼合する必要が無くなり製造工程としては非常に生産性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-334609号公報
【文献】特開2009-234184号公報
【文献】特公平4-40183号公報
【文献】特開2010-284910号公報
【文献】特開2009-196153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らが樹脂前面板とタッチセンサーの組合せについて検討した結果、高リタデーションの樹脂前面板と低リタデーションの樹脂フィルムタッチセンサーが好適であった。これは、上記以外のリタデーションの組合せであると、偏光サングラス装着時にカーナビゲーションシステムやスマートフォンを見ると、色むらや着色が発生し視認性が悪化するためである。
【0010】
高リタデーションの樹脂前面板と低リタデーションの樹脂フィルムタッチセンサーの組合せ以外でも、樹脂前面板の遅相軸と樹脂フィルムタッチセンサーの遅相軸が平行もしくは垂直の関係で貼合すれば色むらや着色は発生しないが、賦形時に軸がずれてしまう可能性が高い。
【0011】
ここで、本発明者らは、高リタデーションの樹脂前面板のリタデーションは3500nm以上が良く、4000nmがさらに良く、また、低リタデーションの樹脂フィルムタッチセンサーのリタデーションは100nm以下が良く、50nm以下がさらに良いことを見出した。
【0012】
樹脂板を曲げる際は金型、木型、樹脂型などを用いて加熱された樹脂板をプレスして熱曲げすることが多い。
【0013】
用途により適した特性を有する樹脂成形体を製造することができる樹脂シートまたはフィルムを追及することは、尽きることのない課題である。
【0014】
本発明は、硬度が高く、成形時に外観異常が生じにくく、偏光サングラス着用時でも色むらや着色が抑制された成形用樹脂シートおよびそれを用いた樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、ポリカーボネート樹脂を基材として含む成形用樹脂シートであって、表面にハードコート層を設けた樹脂シートと、樹脂シートに貼合する樹脂フィルムタッチセンサーについて鋭意研究した。その結果、ポリカーボネート樹脂層とハードコート層との間に高硬度樹脂層を設け、さらにはポリカーボネート樹脂および高硬度樹脂としてそれぞれのガラス転移点が所定の関係を満たすものを選択することにより、硬度が高く、成形時にクラック、フローマーク等の外観異常が生じにくい樹脂シートを提供できることを見出した。また、樹脂シートのリタデーションと貼合する樹脂フィルムタッチセンサーのリタデーションを選択することにより、フィルムセンサー付き成形用樹脂シートを熱賦形後でも、偏光サングラス着用時に色むらや着色を抑制することが可能となった。すなわち、本発明は、例えば以下のとおりである。
【0016】
<1> ポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層の少なくとも一方の面に、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層を有し、高硬度樹脂層の少なくとも片側表面にハードコート層またはハードコートアンチグレア層を積層した樹脂シートであって、
前記ポリカーボネート樹脂(a1)および前記高硬度樹脂のガラス転移点が、以下の関係を満たし:
-10℃≦(高硬度樹脂のガラス転移点)-(ポリカーボネート樹脂(a1)のガラス転移点)≦40℃
前記樹脂シートの543nmの波長で測定した際の面内リタデーションが4000nm以上であり、
前記樹脂シートの片側表面に接着剤を含む接着剤層により、543nmの波長で測定した際の面内リタデーションが50nm以下の樹脂フィルム(X)を貼合した成形用樹脂シート。
<2> 前記ポリカーボネート樹脂(a1)が芳香族ポリカーボネート樹脂である上記<1>に記載の成形用樹脂シート。
<3> 前記芳香族ポリカーボネート樹脂が下記一般式(4a)で表される構成単位を含む、上記<2>に記載の成形用樹脂シート。
【化1】
<4> 前記ポリカーボネート樹脂(a1)の含有量が前記基材層の全質量に対して75~100質量%である、上記<1>~<3>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<5> 前記高硬度樹脂が以下の樹脂(B1)~(B6)からなる群より選択される、上記<1>~<4>のいずれかに記載の成形用樹脂シート:
・樹脂(B1):下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合体、または該共重合体と樹脂(B2)とのアロイ
【化2】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり;R2は炭素数1~18のアルキル基である。)
【化3】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり;R4は炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である。);
・樹脂(B2):(メタ)アクリル酸エステル構成単位を6~77質量%、スチレン構成単位を15~71質量%、および不飽和ジカルボン酸構成単位を8~23質量%含む共重合体(D)、該共重合体(D)同士のアロイ、または該共重合体(D)と他の高硬度樹脂とのアロイ、または、該共重合体(D)とアクリル樹脂とのアロイ;
・樹脂(B3):下記一般式(6)で表される構成単位(c)と、任意に下記一般式(7)で表される構成単位(d)とを含む共重合体;
【化4】
【化5】
・樹脂(B4):スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を60~90質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む共重合体(G)、または該共重合体(G)と前記樹脂(B2)とのアロイ;
・樹脂(B5):下記一般式(8)で表される構成単位(e)を含む樹脂。
【化6】
・樹脂(B6):スチレン構成単位を50~95質量%、不飽和ジカルボン酸単位を5~50質量%含む共重合体とアクリル樹脂とのアロイ。
<6> 前記高硬度樹脂の含有量が前記高硬度樹脂層の全質量に対して70~100質量%である、上記<1>~<5>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<7> 前記基材層と前記高硬度樹脂層の合計厚みが0.5mm~3.5mmである、上記<1>~<6>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<8> 前記基材層と前記高硬度樹脂層の合計厚みに占める前記基材層の厚みの割合が75%~99%である、上記<1>~<7>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<9> 前記成形用樹脂シートのヘーズが2~30%である、上記<1>~<8>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<10> 前記成形用樹脂シートにおけるハードコート層表面の鉛筆硬度が2H以上である、上記<1>~<9>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<11> 前記成形用樹脂シートにおける樹脂フィルム(X)がポリカーボネート樹脂(a1)を含むポリカーボネートフィルムからなる上記<1>~<10>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<12> 前記成形用樹脂シートにおける樹脂フィルム(X)がポリカーボネートフィルムにセンサー電極を施工したフィルムタッチセンサーからなる上記<1>~<10>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<13> 前記成形用樹脂シートにおける接着剤層が光学粘着シートである上記<1>~<12>のいずれかに記載の成形用樹脂シート。
<14> 上記<1>~<13>のいずれかに記載の成形用樹脂シートを用いて成形された樹脂成形品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、硬度が高く、成形時に外観異常が生じにくく、偏光サングラス着用時でも色むらや着色が抑制された成形用樹脂シートおよびそれを用いた樹脂成形品を提供することができる。本発明では、ポリカーボネート樹脂を含む基材層に高硬度樹脂層を設け、更に外側にハードコート層またはハードコートアンチグレア層を設けたので傷つきにくく、防眩性があり視認性もよく、熱曲げしやすい樹脂板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について製造例や実施例等を例示して詳細に説明するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意の方法に変更して行なうこともできる。
【0019】
本発明の成形用樹脂シート(以下、単に「樹脂シート」とも称する)は、ポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、ハードコート層またはハードコートアンチグレア層とを具備し、高硬度樹脂層は、基材層とハードコート層またはハードコートアンチグレア層との間に位置する。基材層と高硬度樹脂層の間、高硬度樹脂層とハードコート層またはハードコートアンチグレア層の間には、それぞれさらなる層が存在していてもよい。さらなる層としては、接着剤層、プライマー層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらなる層は存在していなくてもよく、1つの実施形態として、ポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、基材層の少なくとも一方の面上に積層された高硬度樹脂層と、高硬度樹脂層上に積層されたハードコート層またはハードコートアンチグレア層とを具備する樹脂シートが提供される。
【0020】
高硬度樹脂層およびハードコート層またはハードコートアンチグレア層は、基材層の少なくとも一方の側に設ければよく、他方の側の構成に特に制限はない。また、高硬度樹脂層を基材層の両側に設けてもよく、その場合、一方または両方の高硬度樹脂層上にハードコート層またはハードコートアンチグレア層を設けることができる。高硬度樹脂層を基材層の両側に設ける場合には、2つの高硬度樹脂層で同じ高硬度樹脂を使用することが、反りの少ない安定した樹脂シートを得るために望ましい。
【0021】
本発明の成形用樹脂シートは、上述したように基材層とハードコート層またはハードコートアンチグレア層の間に高硬度樹脂層を設け、さらには基材層中のポリカーボネート樹脂(a1)と高硬度樹脂層中の高硬度樹脂のガラス転移点が所定の関係を満たすことにより、硬度が高く、成形する際にクラック、フローマーク等の外観異常が生じにくい樹脂シートを得ることができる。特に熱成形時に外観異常が生じにくく、このような樹脂シートは、熱成形時の条件(温度、加熱時間等)を広く設定することができるため、熱成形に適した樹脂シートであると言える。また、熱成形に適した樹脂シートの成形前に樹脂フィルムタッチセンサーをあらかじめ貼合しておくことで、成形後の曲面を有する前面板にタッチセンサーを貼合する困難な工程を省略することができる。このため、曲面を有するディスプレイ前面板の生産性を向上させることが可能となる。
【0022】
本発明のように硬度の高いハードコート層またはハードコートアンチグレア層を表面に有する樹脂シート、特にポリカーボネート樹脂を基材として用いた樹脂シートは、通常のガラス板と比較して耐衝撃性に優れ、安全性が高く、軽量である。また、通常のガラス板よりも曲げ易く、少しの曲げで割れることはない。これは、樹脂シートにおけるハードコート層またはハードコートアンチグレア層が、ある程度の柔軟性を有するためであると考えられる。
基材層とハードコートアンチグレア層との間に高硬度樹脂層を設けることにより、樹脂シートの硬度をさらに高めることができる。ポリカーボネート樹脂層上に直接ハードコートアンチグレア層を設けた場合には、弾性率が低く座屈しやすいという問題が生じ得るが、高硬度樹脂層を設けることによりこのような問題も解決することができる。
【0023】
本発明において、基材層中のポリカーボネート樹脂(a1)と高硬度樹脂層中の高硬度樹脂のガラス転移点は、以下の関係を満たす。
-10℃≦(高硬度樹脂のガラス転移点)-(ポリカーボネート樹脂(a1)のガラス転移点)≦40℃
従来、異なる種類の樹脂層を積層し、その上にハードコート層を設ける場合には、各層に含まれる樹脂のガラス転移点(Tg)や溶融粘度が異なり、クラック等の不具合が生じないように熱成形することが難しいという問題があった。しかしながら、本発明によると、上記のような関係を満たすポリカーボネート樹脂(a1)および高硬度樹脂を使用することにより、このような問題も解決することができる。
【0024】
多層構造の樹脂シートを所望の形状に熱成形する際には、通常、層中に最も多く含まれる樹脂の成形温度に合わせて成形する。例えば、ポリカーボネート樹脂を基材層として使用した樹脂シートの場合、耐衝撃性が良好なポリカーボネート樹脂が最も多く含まれることが通常であるため、ポリカーボネート樹脂に合わせた成形温度にて熱成形を実施する。本発明の樹脂シートは、上記関係を満たすポリカーボネート樹脂(a1)および高硬度樹脂を使用しているため、ポリカーボネート樹脂に適した成形温度で熱成形を行った場合にも外観異常の問題が生じにくい。したがって、本発明の樹脂シートは、従来のものよりも熱成形に適した樹脂シートであると言える。
【0025】
ポリカーボネート樹脂(a1)および高硬度樹脂のガラス転移点は、-5℃≦(高硬度樹脂のガラス転移点)-(ポリカーボネート樹脂(a1)のガラス転移点)≦30℃であることが好ましく、0℃≦(高硬度樹脂のガラス転移点)-(ポリカーボネート樹脂(a1)のガラス転移点)≦30℃であることがより好ましい。高硬度樹脂のTgがポリカーボネート樹脂(a1)のTgよりも極端に低いと、熱成形時に高硬度樹脂がゴム状態または溶融状態となり、動きやすくなる。このような場合、高度に架橋された構造を有し、熱がかかっても硬いままであるハードコートアンチグレア層が、動きやすくなった高硬度樹脂の動きに追従できずクラックが生じ易くなる。一方、高硬度樹脂のTgがポリカーボネート樹脂(a1)のTgと比較して高すぎると、高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂の粘度の差が大きくなり、これらを積層する際に界面が荒れてしまい、フローマークが生じ得る。
【0026】
本発明の樹脂シートは、硬度が要求される曲げ形状を有する成形品の製造に好適に使用することができる。例えば、平面部と連続した曲げ部を有する構成部品を首尾よく製造することができるため、新規なデザインや機能を有する製品を提供することもできる。
従来の樹脂シートでは、上記のような形状を有する成形品を製造しようとした場合、熱プレス成形、真空成形、圧空成形、TOM成形などの熱成形時にクラックが生じるなどの不具合が多く発生していた。そこで、熱成形時のクラック発生を抑制するために、ハードコートの硬さを低下させるなどの工夫をする必要があった。しかしながら、ハードコートの硬さを低下させた場合、熱成形性は向上するものの、ハードコートが軟らかいため傷が付きやすい、耐薬品性が低下するという新たな問題が生じていた。
【0027】
それに対して本発明によれば、上述したようにクラックの発生が抑制されるため、ハードコートの硬さを低下させることなく、熱形成可能な樹脂シートを提供することができる。本発明の樹脂シートは、硬いハードコートアンチグレア層を表層に設けることができるため、傷が付きにくく、耐薬品性も高い。このような特性を利用して、本発明の樹脂シートは、パソコン、携帯電話などの表示面の構成部品、自動車外装用および内装用部材、携帯電話端末、パソコン、タブレット型PC、カーナビなどにおける曲面を有する筐体や前面板などに使用することが可能である。
【0028】
以下、本発明による樹脂シートの各構成部材について説明する。
1.基材層
基材層とは、主としてポリカーボネート樹脂(a1)を含む樹脂層である。基材層に含まれるポリカーボネート樹脂(a1)は、1種類であっても2種類以上であってもよい。基材層中のポリカーボネート樹脂(a1)の含有量は、基材層の全質量に対して75~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。ポリカーボネート樹脂の含有量を増やすことで、耐衝撃性が向上する。
【0029】
ポリカーボネート樹脂(a1)としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合、即ち、-[O-R-OCO]-単位(ここで、Rは、脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含んでいてもよく、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい)を含むものであれば特に限定されるものではないが、芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましく、特に下記式(4a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。このようなポリカーボネート樹脂を使用することで、耐衝撃性により優れた樹脂シートを得ることができる。
【0030】
【化7】
具体的には、ポリカーボネート樹脂(a1)として、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。
【0031】
近年、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点を制御する目的で、下記一般式(4)で表されるような1価フェノールを末端停止剤として付加したポリカーボネート樹脂も使用されている。本発明においても、このように末端停止剤を付加したポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【化8】
(式中、Rは、炭素数8~36のアルキル基または炭素数8~36のアルケニル基を表し;R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、または置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数6~12のアリール基を表し;ここで、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である。)
本明細書中において、「アルキル基」および「アルケニル基」は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0032】
より好ましくは、一般式(4)で表される1価フェノールは、下記一般式(5)で表される。
【化9】
(式中、Rは、炭素数8~36のアルキル基または炭素数8~36のアルケニル基を表す。)
【0033】
一般式(4)または一般式(5)におけるRの炭素数は、特定の数値範囲内であることがより好ましい。具体的には、Rの炭素数の上限値として36が好ましく、22がより好ましく、18が特に好ましい。また、Rの炭素数の下限値として、8が好ましく、12がより好ましい。
【0034】
一般式(4)または一般式(5)で示される1価フェノールの中でも、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸2-ヘキシルデシルエステルのいずれかもしくは両方を末端停止剤として使用することが特に好ましい。
【0035】
例えば、一般式(5)においてRが炭素数16のアルキル基である1価フェノールを末端停止剤として使用した場合、ガラス転移温度、溶融流動性、成形性、耐ドローダウン性等に優れたポリカーボネート樹脂を得ることができ、また、ポリカーボネート樹脂製造時の1価フェノールの溶剤溶解性にも優れるため、特に好ましい。
【0036】
一方、一般式(4)または一般式(5)におけるRの炭素数が増加しすぎると、1価フェノール(末端停止剤)の有機溶剤溶解性が低下する傾向があり、ポリカーボネート樹脂製造時の生産性が低下することがある。
一例として、Rの炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性が高く、経済性も良い。Rの炭素数が22以下であれば、1価フェノールは、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。このような1価フェノールを使用したポリカーボネート樹脂としては、例えば、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)等が挙げられる。
一般式(4)または一般式(5)におけるRの炭素数が小さすぎると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が十分に低い値とはならず、熱成形性が低下することがある。
【0037】
本発明において、ポリカーボネート樹脂(a1)の重量平均分子量は、樹脂シートの耐衝撃性および成形条件に影響し得る。つまり、重量平均分子量が小さすぎる場合は、樹脂シートの耐衝撃性が低下するおそれがある。重量平均分子量が高すぎる場合は、ポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層を形成する時に過剰な熱源を必要とする場合がある。また、選択する成形法によっては高い温度が必要になるので、ポリカーボネート樹脂(a1)が高温にさらされることになり、その熱安定性に悪影響を及ぼすことがある。ポリカーボネート樹脂(a1)の重量平均分子量は、15,000~75,000が好ましく、20,000~70,000がより好ましい。さらに好ましくは20,000~65,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0038】
当業者であれば、使用する高硬度樹脂のガラス転移点(Tg)を考慮して、公知のポリカーボネート樹脂の中から上記関係を満たすようなTgを有するポリカーボネート樹脂(a1)を適宜選択して使用することができる。ポリカーボネート樹脂(a1)のTgは90~190℃であることが好ましく、100~170℃であることがより好ましく、110~150℃であることが特に好ましい。なお、本明細書において、ガラス転移点とは、示差走査熱量測定装置を用いて、試料10mg、昇温速度10℃/分で測定し、中点法で算出した温度である。
【0039】
基材層は、ポリカーボネート樹脂(a1)に加え、他の樹脂を含んでいてもよい。そのような樹脂としては、ポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として主にテレフタル酸を含んでいることが好ましく、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
例えば、主成分であるエチレングリコール80~60モル%に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールを20~40モル%(合計100モル%)含むグリコール成分が重縮合してなるポリエステル樹脂(所謂「PETG」)が好ましい。基材層における樹脂は、ポリカーボネート樹脂(a1)のみであることが好ましいが、その他の樹脂を含む場合には、その量は基材層の全質量に対して0~25質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましい。
【0040】
基材層は、さらに添加剤等を含んでいてもよい。添加剤としては、樹脂シートにおいて通常使用されるものを使用することができ、そのような添加剤としては、例えば、抗酸化剤、抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機フィラーや無機フィラーのような強化材などが挙げられる。添加剤と樹脂を混合する方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。添加剤の量は、基材層の全質量に対して0~10質量%であることが好ましく、0~7質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることが特に好ましい。
【0041】
基材層の厚みは、0.3~10mmであることが好ましく、0.3~5mmであることがより好ましく、0.3~3.5mmであることが特に好ましい。
【0042】
2.高硬度樹脂層
高硬度樹脂層は、主として高硬度樹脂を含む樹脂層である。本明細書において、高硬度樹脂とは、基材となるポリカーボネート樹脂よりも硬度の高い樹脂であり、鉛筆硬度がHB以上の樹脂を意味する。高硬度樹脂の鉛筆硬度は、HB~3Hであることが好ましく、H~3Hであることがより好ましく、2H~3Hであることが特に好ましい。高硬度樹脂層に含まれる高硬度樹脂は、1種類であっても2種類以上であってもよい。当業者であれば、使用するポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg)を考慮して、公知の高硬度樹脂の中から「-10℃≦(高硬度樹脂のガラス転移点)-(ポリカーボネート樹脂(a1)のガラス転移点)≦40℃」の関係を満たすようなTgを有する高硬度樹脂を適宜選択して使用することができる。高硬度樹脂は、以下に示す樹脂(B1)~(B6)の少なくとも1つから選択されることが好ましい。
【0043】
<樹脂(B1)>
樹脂(B1)とは、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合体、あるいは該共重合体と以下で説明する樹脂(B2)とのアロイである。
【0044】
【化10】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり;R2は炭素数1~18のアルキル基である。)
【化11】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり;R4は炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である。)
本明細書中において、「炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。
【0045】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)において、R2は炭素数1~18のアルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)のうち、好ましいのはR2がメチル基またはエチル基である(メタ)アクリル酸エステル構成単位であり、更に好ましいのはR1がメチル基であり、R2がメチル基であるメタクリル酸メチル構成単位である。
【0046】
一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)において、R3は水素原子またはメチル基であり、水素原子であることがより好ましい。R4は、シクロヘキシル基または炭素数1~4の炭化水素基で置換されたシクロヘキシル基であり、置換基を有さないシクロへキシル基であることが好ましい。
従って、脂肪族ビニル構成単位(b)のうち、より好ましいのはR3が水素原子であり、R4がシクロヘキシル基である脂肪族ビニル構成単位である。
【0047】
樹脂(B1)は、(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)を1種または2種以上含有していてもよく、脂肪族ビニル構成単位(b)を1種または2種以上含有していてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と脂肪族ビニル構成単位(b)との合計含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、特に好ましくは98~100モル%である。
【0048】
すなわち、樹脂(B1)は、(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)および脂肪族ビニル構成単位(b)以外の構成単位を含有していてもよい。その量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)および脂肪族ビニル構成単位(b)以外の構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合した後に該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して樹脂(B1)を製造する過程において生じる、水素化されていない芳香族二重結合を含む芳香族ビニルモノマー由来の構成単位などが挙げられる。
【0050】
また、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の含有量は、樹脂(B1)中の全構成単位に対して好ましくは65~80モル%であり、より好ましくは70~80モル%である。樹脂(B1)中の全構成単位に対する(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が65モル%以上であると、基材層との密着性や表面硬度に優れた樹脂層を得ることができる。また、80モル%以下であれば、樹脂シートの吸水による反りが発生しづらい。
【0051】
また、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量は、樹脂(B1)中の全構成単位に対して好ましくは20~35モル%であり、より好ましくは20~30モル%である。脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量が20モル%以上であれば、高温高湿下でのそりを防ぐことができ、また、35モル%以下であれば、基材層との界面での剥離を防ぐことができる。
なお、本明細書において、「共重合体」は、ランダム、ブロックおよび交互共重合体のいずれの構造であってもよい。
【0052】
樹脂(B1)の製造方法は、特に限定されないが、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと少なくとも1種の芳香族ビニルモノマーとを重合した後、該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して得られたものが好適である。なお、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸および/またはアクリル酸を示す。
この際に使用される芳香族ビニルモノマーとしては、具体的にはスチレン、α-メチルスチレン、p-ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、クロロスチレン、およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらの中で好ましいのはスチレンである。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーの重合には、公知の方法を用いることができるが、例えば、塊状重合法や溶液重合法などにより製造することができる。
塊状重合法は、上記モノマーおよび重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的に供給し、100~180℃で連続重合する方法などにより行われる。上記モノマー組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を含んでいてもよい。
【0054】
重合開始剤としては、特に限定されないが、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、過酸化ベンゾイル、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルプロポキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
連鎖移動剤は必要に応じて使用し、例えば、α-メチルスチレンダイマーが挙げられる。
【0055】
溶液重合法に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーを重合した後の水素化反応に用いられる溶媒は、上記の重合溶媒と同じであっても異なっていてもよい。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
【0057】
上記のようにして(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合した後、該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化することにより、本発明に用いられる樹脂(B1)が得られる。
水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、水素圧力3~30MPa、反応温度60~250℃でバッチ式あるいは連続流通式で行うことができる。温度を60℃以上とすることにより反応時間がかかり過ぎることがなく、また250℃以下とすることにより分子鎖の切断やエステル部位の水素化を起こすことが少ない。
【0058】
水素化反応に用いられる触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウムなどの金属またはそれら金属の酸化物、塩もしくは錯体化合物を、カーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土などの多孔性担体に担持した固体触媒などが挙げられる。
【0059】
樹脂(B1)は、芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合の70%以上が水素化されたものであることが好ましい。即ち、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位中に含まれる芳香族二重結合の未水素化率は、30%未満であることが好ましい。未水素化率が30%未満であることにより、透明性に優れた樹脂を得ることができる。未水素化率は、より好ましくは10%未満であり、さらに好ましくは5%未満である。
【0060】
樹脂(B1)の重量平均分子量は、特に制限はないが、強度および成型性の観点から、50,000~400,000であることが好ましく、70,000~300,000であることがより好ましい。
【0061】
樹脂(B1)のガラス転移点は、110~140℃の範囲であることが好ましく、110~135℃であることがより好ましく、110~130℃であることが特に好ましい。ガラス転移点が110℃以上であることにより、本発明で提供される樹脂シートが熱環境あるいは湿熱環境において変形や割れを生じることが少ない。一方、140℃以下であることにより、鏡面ロールや賦形ロールによる連続式熱賦形、あるいは鏡面金型や賦形金型によるバッチ式熱賦形によって成形する場合に加工性に優れる。
【0062】
樹脂(B1)として、具体的には、オプティマス7500、6000(三菱ガス化学製)が挙げられる。
【0063】
高硬度樹脂として樹脂(B1)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)を使用することが好ましい。樹脂(B1)として、一般式(1)で表される構成単位(R1、R2がともにメチル基;メタクリル酸メチル)を75モル%、一般式(2)で表される構成単位(R3が水素原子、R4がシクロヘキシル基)を25モル%含む共重合体を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(4a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用し、末端停止剤として一般式(5)で表される1価フェノール(R1の炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。
【0064】
<樹脂(B2)>
樹脂(B2)とは、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を6~77質量%、スチレン構成単位を15~71質量%、および不飽和ジカルボン酸構成単位を8~23質量%含む共重合体(D)または共重合体(D)同士のアロイである樹脂、更には、共重合体(D)と樹脂(B2)以外の高硬度樹脂とのアロイである樹脂、または、共重合体(D)とアクリル樹脂とのアロイである樹脂である。樹脂(B2)以外の高硬度樹脂としては、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体などが挙げられる。また、アクリル樹脂としてはポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルとの共重合体などがあげられる。また、市販品を用いることも可能であり、具体例としては三菱ケミカル(株)のアクリペット、住友化学(株)のスミペックス、(株)クラレのパラペット、アルケマのアルトグラスなどが例示できる。アロイにする場合には、高硬度樹脂のTg低下を避けるため、より高Tgである樹脂同士のアロイが良い。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等が挙げられ、特にメタクリル酸メチルが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体は、2種以上を混合して使用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して6~77質量%であり、20~70質量%であることが好ましい。
【0066】
スチレン構成単位としては、特に限定されず、任意の公知のスチレン系単量体を用いることが出来る。入手の容易性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が好ましい。これらの中でも、相溶性の観点からスチレンが特に好ましい。これらのスチレン系単量体は、2種以上を混合して使用しても良い。
スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して15~71質量%であり、20~66質量%であることが好ましい。
【0067】
不飽和ジカルボン酸構成単位を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられ、スチレン系単量体との相溶性の観点から無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和ジカルボン酸無水物単量体は2種以上を混合して使用しても良い。
不飽和ジカルボン酸構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して8~23質量%であり、10~23質量%であることが好ましい。
【0068】
上記(メタ)アクリル酸エステル構成単位、スチレン構成単位および不飽和ジカルボン酸構成単位の合計含有量は、樹脂(B2)の全構成単位に対して好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、特に好ましくは98~100モル%である。
すなわち、樹脂(B2)は、上記(メタ)アクリル酸エステル構成単位、スチレン構成単位および不飽和ジカルボン酸構成単位以外の構成単位を含有していてもよい。その量は、樹脂(B2)の全構成単位に対して10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0069】
その他の構成単位としては、例えば、N-フェニルマレイミドなどが挙げられる。
樹脂(B2)の製造方法は、特に限定されないが、塊状重合法や溶液重合法が挙げられる。
【0070】
樹脂(B2)として、具体的には、レジスファイ R100、R200、R310(デンカ製)、デルペット980N(旭化成ケミカル製)、hw55(ダイセルエボニック製)等が挙げられる。
【0071】
樹脂(B2)の重量平均分子量は、特に制限はないが、50,000~300,000であることが好ましく、80,000~200,000であることがより好ましい。
【0072】
樹脂(B2)のガラス転移点は、90~150℃であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましく、115~150℃であることが特に好ましい。
【0073】
高硬度樹脂として樹脂(B2)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(4a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(5)で表される1価フェノール(R1の炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス製)等が挙げられる。樹脂(B2)としてメタクリル酸メチル構成単位6~26質量%、スチレン構成単位55~21質量%、無水マレイン酸構成単位15~23質量%で構成される共重合体(R100、R200、またはR310;デンカ製)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用する態様が好ましい。また、樹脂(B2)としてメタクリル酸メチル構成単位6質量%、スチレン構成単位71質量%、無水マレイン酸構成単位23質量%で構成される共重合体(R310;デンカ製)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用する態様が特に好ましい。
【0074】
<樹脂(B3)>
樹脂(B3)は、下記一般式(6)で表される構成単位(c)と、任意に下記一般式(7)で表される構成単位(d)とを含む共重合体である。樹脂(B3)は、構成単位(d)を含んでいても含んでいなくてもよいが、含んでいることが好ましい。
【化12】
【化13】
【0075】
樹脂(B3)の全構成単位における構成単位(c)の割合は、50~100モル%であることが好ましく、60~100モル%であることがより好ましく、70~100モル%であることが特に好ましい。樹脂(B3)の全構成単位における構成単位(d)の割合は、0~50モル%であることが好ましく、0~40モル%であることがより好ましく、0~30モル%であることが特に好ましい。
【0076】
構成単位(c)と構成単位(d)の合計含有量は、樹脂(B3)に対して好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、特に好ましくは98~100モル%である。
【0077】
樹脂(B3)は、構成単位(c)および構成単位(d)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位を含む場合、その量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
その他の構成単位としては、例えば、下記一般式(4a)で表される構成単位などが挙げられる。
【化14】
【0078】
樹脂(B3)の製造方法は、特に限定されないが、モノマーとしてビスフェノールCを使用することを除いて上述したポリカーボネート樹脂(a1)の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0079】
樹脂(B3)として、具体的には、ユーピロン KH3410UR、KH3520UR、KS3410UR(三菱エンジニアリングプラスチック社製)等が挙げられる。
【0080】
樹脂(B3)の重量平均分子量は、15,000~75,000が好ましく、20,000~70,000がより好ましく、25,000~65,000が特に好ましい。
【0081】
樹脂(B3)のガラス転移点は、105~150℃であることが好ましく、110~140℃であることがより好ましく、110~135℃であることが特に好ましい。
【0082】
高硬度樹脂として樹脂(B3)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(4a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(5)で表される1価フェノール(R1の炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)が挙げられる。特に、樹脂(B3)としてユーピロンKS3410UR(三菱エンジニアリングプラスチックス製)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)を使用することが好ましい。
【0083】
高硬度樹脂として樹脂(B3)を使用する場合、高硬度樹脂層に含まれる他の樹脂としては、構成単位(c)を含まず、構成単位(d)を含む樹脂が好ましく、構成単位(d)のみからなる樹脂がより好ましい。具体的には、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。他の樹脂を含む場合、樹脂(B3)は、高硬度樹脂層に含まれる全樹脂に対して、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上の割合で含まれる。
【0084】
<樹脂(B4)>
樹脂(B4)は、スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を60~90質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む共重合体(G)、または共重合体(G)と上記樹脂(B2)とのアロイである。アロイの場合には、高硬度樹脂層のTg低下を避けるため、より高Tg同士の樹脂のアロイが良い。
【0085】
スチレン構成単位としては、特に限定されず、任意の公知のスチレン系単量体を用いることが出来るが、入手の容易性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が好ましい。これらの中でも、相溶性の観点からスチレンが特に好ましい。共重合体(G)は、これらのスチレン構成単位を2種以上含んでいてもよい。スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して5~20質量%であり、5~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位としては、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等に由来する構成単位が挙げられ、特にメタクリル酸メチルに由来する構成単位が好ましい。また、共重合体(G)は、これらの(メタ)アクリル酸エステル構成単位を2種類以上含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステル構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して60~90質量%であり、70~90質量%であることが好ましく、80~90質量%であることがより好ましい。
【0087】
樹脂(B4)におけるN-置換型マレイミド構成単位としては、N-フェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミドなどのN-アリールマレイミド等に由来する構成単位が挙げられ、アクリル樹脂との相溶性の観点からN-フェニルマレイミドに由来する構成単位が好ましい。共重合体(G)は、これらのN-置換型マレイミド構成単位を2種以上含んでいてもよい。N-置換型マレイミド構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して5~20質量%であり、5~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0088】
スチレン構成単位、(メタ)アクリル酸エステル構成単位、およびN-置換型マレイミド構成単位の合計含有量は、樹脂(B4)に対して好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、特に好ましくは98~100モル%である。
樹脂(B4)は、上記構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位を含む場合、その量は、樹脂(B4)の全構成単位に対して10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0089】
その他の構成単位としては、例えば、下記一般式(1)に由来する構成単位、一般式(2)に由来する構成単位などが挙げられる。
【化15】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり;R2は炭素数1~18のアルキル基である。)
【化16】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり;R4は炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である。)
【0090】
樹脂(B4)の製造方法は、特に限定されないが、溶液重合、塊状重合などによって製造することができる。
【0091】
樹脂(B4)として、具体的には、デルペット PM120N(旭化成ケミカル社製)が挙げられる。
【0092】
樹脂(B4)の重量平均分子量は、50,000~250,000であることが好ましく、100,000~200,000がより好ましい。
【0093】
樹脂(B4)のガラス転移点は、110~150℃であることが好ましく、115~140℃であることがより好ましく、115~135℃であることが特に好ましい。
【0094】
高硬度樹脂として樹脂(B4)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(4a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(5)で表される1価フェノール(R1の炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)が挙げられる。特に、樹脂(B4)としてスチレン構成単位7質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位86質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位7質量%からなるデルペットPM-120Nを使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用するのが好ましい。
【0095】
<樹脂(B5)>
樹脂(B5)は、下記一般式(8)で表される構成単位(e)を含む樹脂である。
【化17】
【0096】
樹脂(B5)の全構成単位における構成単位(e)の割合は、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、95~100モル%であることが特に好ましい。
樹脂(B5)は、構成単位(e)以外の構成単位を含んでいてもよいが、構成単位(e)からなるポリカーボネート樹脂であることが好ましい。その他の構成単位を含む場合、その量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。
【0097】
その他の構成単位としては、例えば、下記一般式(6)で表される構成単位、一般式(7)で表される構成単位などが挙げられる。
【化18】
【化19】
【0098】
樹脂(B5)の製造方法は、特に限定されないが、モノマーとしてビスフェノールAPを使用することを除き、上述したポリカーボネート樹脂(a1)の製造方法と同様の方法で製造することができる。
樹脂(B5)として、具体的には、ユピゼータ FPC0220(三菱ガス化学社製)が挙げられる。
【0099】
樹脂(B5)の重量平均分子量は、10,000~1,000,000であることが好ましく、15,000~50,000がより好ましい。
【0100】
樹脂(B5)のガラス転移点は、120~200℃であることが好ましく、130~190℃であることがより好ましく、140~190℃であることが特に好ましい。
【0101】
高硬度樹脂として樹脂(B5)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(4a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス製)が挙げられる。特に、樹脂(B5)としてユピゼータFPC0220(三菱ガス化学製)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス製)を使用することが好ましい。
【0102】
高硬度樹脂として樹脂(B5)を使用する場合、高硬度樹脂層に含まれる他の樹脂としては、構成単位(e)を含まず、樹脂(B3)で説明した構成単位(d)を含む樹脂が好ましく、構成単位(d)のみからなる樹脂がより好ましい。具体的には、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。他の樹脂を含む場合、樹脂(B5)は、高硬度樹脂層に含まれる全樹脂に対して、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上の割合で含まれる。
【0103】
<樹脂(B6)>
樹脂(B6)は、スチレン構成単位を50~95質量%、不飽和ジカルボン酸構成単位を5~50質量%含む共重合体(H)、または共重合体(H)と上記樹脂(B1)とのアロイ、または共重合体(H)とアクリル樹脂とのアロイである。アロイの場合には、高硬度樹脂層のTg低下を避けるため、より高Tg同士の樹脂のアロイが良い。
【0104】
スチレン構成単位としては、樹脂(B4)で記載のスチレン系単量体を用いることができる。共重合体(H)は、これらのスチレン構成単位を2種以上含んでいてもよい。スチレン構成単位の含有量は、共重合体(H)の全質量に対して50~95質量%であり、60~90質量%であることが好ましく、65~87質量%であることがより好ましい。
【0105】
不飽和ジカルボン酸構成単位を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられ、スチレン系単量体との相溶性の観点から無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和ジカルボン酸無水物単量体は2種以上を混合して使用しても良い。
不飽和ジカルボン酸構成単位の含有量は、共重合体(H)の全質量に対して5~50質量%であり、10~40質量%であることが好ましく、13~35質量%であることがより好ましい。
【0106】
共重合体(H)は、上記構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位を含む場合、その量は、樹脂(H)の全構成単位に対して10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0107】
その他の構成単位としては、例えば、下記一般式(1)に由来する構成単位、一般式(2)に由来する構成単位などが挙げられる。
【化20】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり;R2は炭素数1~18のアルキル基である。)
【化21】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり;R4は炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である。)
【0108】
共重合体(H)の製造方法は、特に限定されないが、溶液重合、塊状重合などによって製造することができる。
【0109】
共重合体(H)として、具体的には、XIBOND140、XIBOND160(ポリスコープ社製)が挙げられる。
【0110】
共重合体(H)の重量平均分子量は、50,000~250,000であることが好ましく、100,000~200,000がより好ましい。
【0111】
スチレン構成単位、および不飽和ジカルボン酸構成単位からなる共重合体(H)の含有量は、樹脂(B6)に対して好ましくは10~90質量%であり、より好ましくは20~85質量%であり、特に好ましくは30~80質量%である。
【0112】
樹脂(B6)のガラス転移点は、110~150℃であることが好ましく、115~140℃であることがより好ましく、115~137℃であることが特に好ましい。
【0113】
高硬度樹脂として樹脂(B6)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(4a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(5)で表される1価フェノール(R1の炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)が挙げられる。特に、樹脂(B6)としてスチレン構成単位78質量%、無水マレイン酸構成単位22質量%からなるXIBOND160とアクリル樹脂とのアロイを使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用するのが好ましい。
【0114】
高硬度樹脂層に含まれる高硬度樹脂は、1種類であっても2種類以上であってもよく、樹脂(B1)~(B6)から2種類以上を選択する場合は、同じまたは異なるカテゴリーから選択することができ、さらに樹脂(B1)~(B6)以外の高硬度樹脂を含んでいてもよい。高硬度樹脂層中の高硬度樹脂の含有量は、70~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0115】
高硬度樹脂層は、上記で説明したような高硬度樹脂に加え、他の樹脂を含んでいてもよい。そのような樹脂としては、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィン(コ)ポリマー樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、各種エラストマーなどが挙げられる。高硬度樹脂層における樹脂は、高硬度樹脂のみであることが好ましいが、その他の樹脂を含む場合、その量は高硬度樹脂層に対して35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0116】
高硬度樹脂層は、さらに添加剤等を含んでいてもよい。添加剤としては、上記「1.基材層」において記載したのと同様の添加剤を使用することができ、その量についても同様である。
【0117】
高硬度樹脂層の厚さは、成形用樹脂シートの表面硬度や耐衝撃性に影響する。つまり、高硬度樹脂層が薄すぎると表面硬度が低くなり、厚すぎると耐衝撃性が低下する。高硬度樹脂層の厚みは、好ましくは10~250μmであり、より好ましくは30~200μmであり、特に好ましくは60~150μmである。
【0118】
3.基材層と高硬度樹脂層の積層
上述したとおり、基材層と高硬度樹脂層の間にはさらなる層が存在していてもよいが、ここでは、基材層上に高硬度樹脂層を積層する場合について説明する。その積層方法は特に限定されず、他の層が存在する場合にも同様に積層することができる。例えば、個別に形成した基材層と高硬度樹脂層とを重ね合わせて、両者を加熱圧着する方法;個別に形成した基材層と高硬度樹脂層とを重ね合わせて、両者を接着剤によって接着する方法;基材層と高硬度樹脂層とを共押出成形する方法;予め形成しておいた高硬度樹脂層に、基材層をインモールド成形して一体化する方法、などの各種方法がある。これらのうち、製造コストや生産性の観点から、共押出成形する方法が好ましい。
【0119】
共押出の方法は特に限定されない。例えば、フィードブロック方式では、フィードブロックで基材層の片面上に高硬度樹脂層を配置し、Tダイでシート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。また、マルチマニホールド方式では、マルチマニホールドダイ内で基材層の片面上に高硬度樹脂層を配置し、シート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。この際、成形ロールとシート引き取りロールの回転速度(m/min)比を制御し、シートを一軸方向に延伸しながら冷却する。延伸倍率は1.0~1.5倍でコントロールし、樹脂シートの面内リタデーションを制御する。本発明の樹脂シートの543nmの波長で測定した際の面内リタデーションは4000nm以上であり、4500~10000nmが好ましく、5500~8000nmがより好ましい。樹脂シートの面内リタデーションが4000nm以上であることにより、樹脂シートを液晶パネル前面板として張り合わせた後、偏光サングラスを装着して液晶ディスプレイを見ても、着色や色むらが発生しにくくなり好ましい。
【0120】
基材層と高硬度樹脂層の合計厚みは、好ましくは0.5~3.5mm、より好ましくは0.5~3.0mm、特に好ましくは1.2~3.0mmである。合計厚みを0.5mm以上とすることにより、シートの剛性を保つことができる。また、3.5mm以下とすることにより、シートの下にタッチパネルを設置する場合等にタッチセンサーの感度が悪くなるのを防ぐことができる。基材層と高硬度樹脂層の合計厚みに占める基材層の厚みの割合は、好ましくは75%~99%であり、より好ましくは80~99%であり、特に好ましくは85~99%である。上記範囲とすることにより、硬度と耐衝撃性を両立できる。
【0121】
4.ハードコート層、ハードコートアンチグレア層
本発明の樹脂シートは、ハードコート層またはハードコートアンチグレア層を具備する。ハードコート層、ハードコートアンチグレア層と高硬度樹脂層の間にさらなる層が存在していてもよいが、好ましくは、ハードコート層、ハードコートアンチグレア層は高硬度樹脂層上に積層される。ハードコート層、ハードコートアンチグレア層は、アクリル系ハードコートで作製されることが好ましい。本明細書において、「アクリル系ハードコート」とは、重合基として(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーまたはオリゴマーまたはプレポリマーを重合して架橋構造を形成した塗膜を意味する。アクリル系ハードコートの組成としては、(メタ)アクリル系モノマー2~98質量%、(メタ)アクリル系オリゴマー2~98質量%および表面改質剤0~15質量%を含むことが好ましく、さらに、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系オリゴマーと表面改質剤との総和100質量部に対して、0.001~7質量部の光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0122】
ハードコート層、ハードコートアンチグレア層は、より好ましくは、(メタ)アクリル系モノマーを5~50質量%、(メタ)アクリル系オリゴマーを50~94質量%および表面改質剤を1~10質量%含み、特に好ましくは、(メタ)アクリル系モノマーを20~40質量%、(メタ)アクリル系オリゴマーを60~78質量%および表面改質剤を2~5質量%含む。
光重合開始剤の量は、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系オリゴマーと表面改質剤との総和100質量部に対して、0.01~5質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることが特に好ましい。
【0123】
(1)(メタ)アクリル系モノマー
(メタ)アクリル系モノマーとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基が官能基として存在するものであれば使用でき、1官能モノマー、2官能モノマー、または3官能以上のモノマーであって良い。
【0124】
1官能モノマーとしては(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが例示でき、2官能および/または3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキシド付加物トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が例示できる。
ハードコートアンチグレア層は、(メタ)アクリル系モノマーを1種類または2種類以上含んでいてよい。
【0125】
(2)(メタ)アクリル系オリゴマー
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、2官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー〔以下、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーともいう〕、2官能以上の多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー〔以下、多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーともいう〕、2官能以上の多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー〔以下、多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーともいう〕などが挙げられる。ハードコートアンチグレア層は、(メタ)アクリル系オリゴマーを1種類または2種類以上含んでいてよい。
【0126】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物;ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られるイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物等が挙げられる。
【0127】
ウレタン化反応に用いられる1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0128】
ウレタン化反応に用いられるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのジまたはトリのポリイソシアネート、あるいはジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートが挙げられる。
【0129】
ウレタン化反応に用いられるポリオール類としては、一般的に芳香族、脂肪族および脂環式のポリオールのほか、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。通常、脂肪族および脂環式のポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブチリオン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0130】
ポリエステルポリオールとしては、上述したポリオール類とポリカルボン酸との脱水縮合反応により得られるものが挙げられる。ポリカルボン酸の具体的な化合物としては、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、トリメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。これらのポリカルボン酸は、無水物であってもよい。また、ポリエーテルポリオールとしては、ポリアルキレングリコールのほか、上述したポリオール類またはフェノール類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールが挙げられる。
【0131】
また、多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル酸、ポリカルボン酸およびポリオールを使用した脱水縮合反応により得られる。脱水縮合反応に用いられるポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。これらのポリカルボン酸は、無水物であってもよい。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブチリオン酸、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0132】
多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる。ポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0133】
(3)表面改質剤
本発明で使用される表面改質剤とは、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水撥油剤、無機粒子、有機粒子などのハードコートアンチグレア層の表面性能を変えるものである。
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリアルキルシロキサン、アルキル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、変性ポリエーテル、シリコン変性アクリルなどが挙げられる。
【0134】
帯電防止剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、グリセリン脂肪酸エステル有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤などが挙げられる。
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、シリコン粒子銀粒子、ガラス粒子などが挙げられる。
有機粒子としては、例えば、アクリル粒子、シリコン粒子などが挙げられる。
界面活性剤および撥水撥油剤としては、例えば、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマーなどのフッ素を含有した界面活性剤および撥水撥油剤が挙げられる。
【0135】
(4)光重合開始剤
ハードコート層、ハードコートアンチグレア層は、光重合開始剤を含んでいてよい。本明細書において、光重合開始剤とは光ラジカル発生剤を指す。
【0136】
本発明で使用することができる単官能光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン[ダロキュアー2959:メルク社製];α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン[ダロキュアー1173:メルク社製];メトキシアセトフェノン、2,2'-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン[イルガキュア-651]、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン系開始剤;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系開始剤;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどを例示することができる。
【0137】
(5)ハードコート層、ハードコートアンチグレア層の形成方法
ハードコート層、ハードコートアンチグレア層の形成方法は特に限定されないが、例えば、ハードコートアンチグレア層の下に位置する層(例えば高硬度樹脂層)上にハードコート液を塗布した後、光重合させることにより形成することができる。
【0138】
ハードコート液(重合性組成物)を塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビートコート法、捌け法などが挙げられる。
【0139】
光重合における光照射に用いられるランプとしては、光波長420nm以下に発光分布を有するものが用いられ、その例としては低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。この中でも、高圧水銀灯またはメタルハライドランプは開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光し、得られる高分子の粘弾性的性質を架橋により低下させるような短波長の光や、反応組成物を加熱蒸発させるような長波長の光を多く発光しないために好ましい。
【0140】
上記ランプの照射強度は、得られるポリマーの重合度を左右する因子であり、目的製品の性能毎に適宜制御される。通常のアセトフェノン基を有する開裂型の開始剤を配合した場合、照度は0.1~300mW/cmの範囲が好ましい。特に、メタルハライドランプを用いて、照度を10~40mW/cmとすることが好ましい。
【0141】
光重合反応は、空気中の酸素または反応性組成物中に溶解する酸素により阻害される。そのため、光照射は酸素による反応阻害を消去し得る手法を用いて実施することが望ましい。そのような手法の1つとして、反応性組成物をポリエチレンテレフタレートやテフロン製のフィルムによって覆って酸素との接触を断ち、フィルムを通して光を反応性組成物へ照射する方法がある。また、窒素ガスや炭酸ガスのような不活性ガスにより酸素を置換したイナート雰囲気下で、光透過性の窓を通して組成物に光を照射してもよい。
【0142】
光照射をイナート雰囲気下で行なう場合、その雰囲気酸素濃度を低レベルに保つために、常に一定量の不活性ガスが導入される。この不活性ガスの導入により、反応性組成物表面に気流が発生し、モノマー蒸発が起こる。モノマー蒸発のレベルを抑制するためには、不活性ガスの気流速度は、不活性ガス雰囲気下を移動するハードコート液が塗布された積層体に対する相対速度として1m/sec以下であることが好ましく、0.1m/sec以下であることがより好ましい。気流速度を上記範囲にすることにより、気流によるモノマー蒸発は実質的に抑えられる。
【0143】
ハードコート層、ハードコートアンチグレア層の密着性を向上させる目的で、塗布面に前処理を行うことがある。処理例として、サンドブラスト法、溶剤処理法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線処理法、樹脂組成物によるプライマー処理法などの公知の方法が挙げられる。
【0144】
ハードコート層、ハードコートアンチグレア層は、UV光(254nm)の照射出力が20mW/cmのメタルハライドランプを用いて紫外線照射した場合に、鉛筆硬度が2H以上であることが好ましい。
【0145】
ハードコート層、ハードコートアンチグレア層の膜厚としては、1μm以上40μm以下が望ましく、2μm以上10μm以下がより望ましい。膜厚が1μm以上であることにより十分な硬度を得ることができる。また、膜厚が40μm以下であることにより、曲げ加工時のクラックの発生を抑制することができる。なお、ハードコートアンチグレア層の膜厚は、断面を顕微鏡等で観察し、塗膜界面から表面までを実測することにより測定可能である。
【0146】
ハードコート層、ハードコートアンチグレア層は、アクリル系ハードコートを鏡面型もしくはアンチグレア型と高硬度樹脂との間に塗装しUV光を照射し硬化させた後、鏡面型、アンチグレア型から脱型することで作製することができる。鏡面型を使用した場合は樹脂シートが鏡面のハードコート層を持つことになり、アンチグレア型を使用した場合は樹脂シートがハードコートアンチグレア層を持つことになる。鏡面型、アンチグレア型の材料はUV光を透過するものであれば良く、材料としてはガラス、透明樹脂などである。
【0147】
ハードコート層、ハードコートアンチグレア層は、さらに修飾されてもよい。例えば、反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理のいずれか一つ以上を施すことができる。これらの処理方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、反射低減塗料を塗布する方法、誘電体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法などが挙げられる。
【0148】
本発明の樹脂シートの鉛筆硬度は、2H以上であることが好ましく、例えば2H~4Hであり、3H~4Hであることが特に好ましい。ここでいう樹脂シートの鉛筆硬度は、ハードコートアンチグレア層の表面に対して角度45度、荷重750gで次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を意味する(JIS K 5600-5-4に準拠した鉛筆ひっかき硬度試験)。
【0149】
5.樹脂フィルム(X)
本発明は、樹脂シートの片側表面に接着剤を含む接着剤層により、543nmの波長で測定した際の面内リタデーションが50nm以下の樹脂フィルム(X)を貼合した成形用樹脂シートである。好ましくは面内リタデーションが45nm以下であり、より好ましくは面内リタデーションが3~45nmの樹脂フィルム(X)を貼合することである。面内リタデーションが50nm以下の樹脂フィルム(X)を貼合することによって、樹脂シートと貼合した後の熱成形時に樹脂フィルム(X)と樹脂シートの遅相軸同士または遅相軸と進相軸の組合せが成形によりずれてしまっても、成形用樹脂シートを液晶パネル前面板として張り合わせた後、偏光サングラスを装着して液晶ディスプレイを見ても、着色や色むらが発生しにくくなり好ましい。
本発明の好ましい態様は、ポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層側に樹脂フィルム(X)を貼合することである。また、本発明の別の好ましい態様は、樹脂フィルム(X)がポリカーボネート樹脂(a1)を含むポリカーボネートフィルムからなるものである。更に、本発明の別の好ましい態様は、樹脂フィルム(X)が基材フィルムにセンサー電極を施工したフィルムタッチセンサーからなるものである。上記基材フィルムとしては、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂などを使用することができ、ポリカーボネート樹脂を好ましく使用することができる。上記センサー電極としては、ITOなどで作製された透明電極を配置した抵抗膜方式センサー、静電容量方式センサーなどが挙げられる。
【0150】
6.接着剤
接着剤は透明な光学糊であればよく、リンテック社の光学粘着シート(OCA:Optically Clear Adhesive)(Opteriaシリーズ)、日東電工社の光学用透明粘着シートLUCIACSシリーズ、積水化学工業社の高透明両面テープ、旭化成社のディスプレイ光学接着シリコーンなどを接着剤層として使用することが好ましい。
【0151】
本発明の樹脂シートのヘーズは、2~30%であることが好ましく、4~25%であることがより好ましい。上記ヘーズは、村上色彩技術研究所製HR-100型を用いてJIS K 7136に準拠し測定した値である。
【0152】
本発明の一実施形態によると、上述した成形用樹脂シートを用いて成形された樹脂成形品が提供される。成形方法は特に限定されないが、本発明の樹脂シートの特性から、熱成形が適している。熱成形は、当該分野で通常使用される方法で行うことができ、例えば、熱プレス成形、圧空成形、真空成形、TOM成形が挙げられる。成形温度は、100℃から200℃であることが好ましい。
【実施例
【0153】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は実施例の態様に制限されるものではない。
<ガラス転移点(Tg)、融点の測定>
日立ハイテクサイエンス製示差走査熱量計DSC7020を使用し、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で、実施例および比較例で使用したポリカーボネート樹脂および高硬度樹脂のガラス転移点および保護フィルムの融点を測定した。測定に使用した樹脂の重量は10~20mgである。
【0154】
<樹脂シートの鉛筆硬度の測定>
実施例および比較例で製造した樹脂シートを、JIS K 5600-5-4に準拠した鉛筆ひっかき硬度試験にて評価した。ハードコートアンチグレア層の表面に対して角度45度、荷重750gで次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。硬度が2H以上を合格とした。
【0155】
<曲げ形状を有する成形品の作製と成形後ハードコートクラックの評価>
実施例および比較例で製造した樹脂シートを熱成形した。実施例1~3、5~15、比較例1~6、8~11については、クリアランス(金型上下で成形シートを挟み込む隙間)が2mmで成形Rが50mmの熱プレス用金型を用い、実施例4および比較例7については、クリアランスが3.5mmで成形Rが100mmの熱プレス用金型を用いた。熱プレス金型にかかる圧力は0.6MPaであった。金型の材質はアルミである。熱成形時の金型の温度は、実施例1~5、7~11、13~15、比較例1~4、9、10では124℃、実施例6、12、比較例5~8、11では143℃とした。
【0156】
得られた成形品について、50mmR部分または100mmR部分のクラックの有無を確認した。なお、クリアランスが2mmの熱プレス用金型を使用して、基材層と高硬度樹脂層の合計厚みが0.5mm、1.2mmまたは1.5mmである樹脂シートを成形する場合は、それぞれ、1.5mm、0.8mm、0.5mmの単層ポリカーボネートシートを下に敷き、合計で2mm厚となるようにして熱プレス成形した。
【0157】
<フローマーク>
実施例および比較例で製造したハードコートをする前の高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層の積層体について、3波長蛍光灯下で目視にて外観検査を行い、うろこ状模様、白濁の有無を確認した。うろこ状模様および白濁がいずれも観察されなかった場合には「フローマーク無し」と評価し、うろこ状模様または白濁のいずれかが観察された場合には「フローマーク有り」と評価した。
【0158】
<面内リタデーションの測定>
フォトニックラティス社の複屈折評価装置WPA-200-Lを使用し、樹脂シートまたは樹脂フィルムのリタデーションを測定した。測定波長は543nmである。3500nmを超えるリタデーション域の測定には付属の標準レンズでは測定できないため、高位相差測定用レンズK4 FUJINON1:1.4/16mm HF16HA-1Bを使用した。
【0159】
<樹脂シートのヘーズの測定>
村上色彩技術研究所製HR-100型を用いてJIS K 7136に準拠し評価した。
【0160】
実施例1:R100(Tg124℃)/低TgPC(Tg125℃)/1.2mmt
軸径35mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、各押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B2)(メタクリル酸メチル構成単位21質量%、スチレン構成単位64質量%、および無水マレイン酸構成単位15質量%の共重合体;レジスファイ R100(デンカ製))を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0161】
押し出された高硬度樹脂およびポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、240℃の温度で高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂を積層した。さらにそれを温度240℃のTダイに導入してシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却延伸し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。延伸倍率は1.3倍であった。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。
【0162】
上記で得られた積層体の高硬度樹脂層側に、ハードコートアンチグレア層を形成した。ハードコートアンチグレア層の材料は、以下のとおりである。
・U6HA:6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業(株)製)60質量%、
・4EG-A:PEG200#ジアクリレート(共栄社化学(株)製)35質量%、
および
・RS-90:含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマー(DIC(株)製)5質量%の混合物100質量部に対して、
・光重合開始剤:I-184(BASF(株)製〔化合物名:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン〕)を1質量部。
【0163】
上記材料をバーコーターにて積層体に塗布し、その上からヘーズが10%の2mm厚のすりガラス板の凹凸面を被せ、ガラス板上からメタルハライドランプ(20mW/cm)を5秒間当ててハードコートを硬化させ、ハードコートアンチグレア層を付着させた後、すりガラス板を剥離し、樹脂シートを作製した。ハードコートアンチグレア層の膜厚は6μmであった。樹脂シートのヘーズは9%、面内リタデーションは6200~6500nmであった。
【0164】
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、100μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.1mm、面内リタデーションは20nm以下であった。
【0165】
実施例2:R100(Tg124℃)/低TgPC(Tg125℃)/2mmt
単軸押出機でのポリカーボネート樹脂の押し出しにおける吐出速度を83.0kg/hとし、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体の厚みを2mm(高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μm)とした。延伸倍率は1.17倍であった。ハードコートアンチグレア層を実施例1と同様に形成し樹脂シートとした。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例1と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0166】
実施例3:R100(Tg124℃)/低TgPC(Tg125℃)/0.5mmt
単軸押出機での高硬度樹脂(B2)およびポリカーボネート樹脂の押し出しにおける吐出速度を、それぞれ4.8kg/hおよび35.0kg/hとし、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体の厚みを0.5mm(高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μm)とした。延伸倍率は1.5倍であった。ハードコートアンチグレア層を実施例1と同様に形成し樹脂シートとした。面内リタデーションは4100~4500nmであった。樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例1と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0167】
実施例4:R100(Tg124℃)/低TgPC(Tg125℃)/3.5mmt
単軸押出機での高硬度樹脂(B2)およびポリカーボネート樹脂の押し出しにおける吐出速度を、それぞれ1.3kg/hおよび72.0kg/hとし、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体の厚みを3.5mm(高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μm)とした。延伸倍率は1.1倍であった。ハードコートアンチグレア層を実施例1と同様に形成し樹脂シートとした。面内リタデーションは6800~7000nmであった。樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例1と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0168】
実施例5:R310(Tg141℃)/低TgPC(Tg125℃)/2mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B2)(メタクリル酸メチル構成単位6質量%、スチレン構成単位71質量%、および無水マレイン酸構成単位23質量%の共重合体;レジスファイ R310(デンカ製))を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度83.0kg/hの条件で押し出した。
【0169】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.17倍であった。
ハードコートアンチグレア層は、実施例1と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例1と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0170】
実施例6:R310(Tg141℃)/S-1000(Tg147℃)/2mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B2)(メタクリル酸メチル構成単位6質量%、スチレン構成単位71質量%、および無水マレイン酸構成単位23質量%の共重合体;レジスファイ R310(デンカ製))を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユーピロンS-1000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を連続的に導入し、シリンダ温度280℃、吐出速度83.0kg/hの条件で押し出した。
【0171】
押し出された高硬度樹脂およびポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、280℃の温度で高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂を積層した。さらにそれを温度280℃のTダイに導入してシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却延伸し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.17倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例1と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0172】
実施例7:PM120N(Tg120℃)/低TgPC(Tg125℃)/1.5mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B4)(スチレン構成単位7質量%、メタクリル酸メチル構成単位86質量%、およびN-フェニルマレイミド構成単位7質量%の共重合体;デルペット PM120N(旭化成ケミカル製))を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータ T-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度62.0kg/hの条件で押し出した。
【0173】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは1.5mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.23倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例1と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0174】
実施例8:R200(Tg126℃)/低TgPC(Tg125℃)/2mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B2)(メタクリル酸メチル構成単位26質量%、スチレン構成単位55質量%、無水マレイン酸構成単位19質量%の共重合体;レジスファイ R200(デンカ製))を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度83.0kg/hの条件で押し出した。
【0175】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.17倍であった。
ハードコートアンチグレア層の材料は実施例1と同様で、バーコーターにて積層体に塗布し、その上からヘーズが30%の2mm厚のすりガラスの凹凸面を被せ、ガラス上からメタルハライドランプ(20mW/cm)を5秒間当ててハードコートを硬化させ、ハードコートアンチグレア層を付着させた後、すりガラス板を剥離し、樹脂シートを作製した。ハードコートアンチグレア層の膜厚は6μmであった。樹脂シートのヘーズは29%であり、樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例1と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0176】
実施例9:C-PC(KH3410UR)(Tg118℃)/低TgPC(Tg125℃)/2mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、高硬度樹脂(B3)(ポリカーボネート樹脂;ユーピロン KH3410UR(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製))を連続的に導入し、シリンダ温度270℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度83.0kg/hの条件で押し出した。
【0177】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.17倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例8と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例1と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0178】
実施例10:R100とPM120Nとのアロイ(Tg123℃)/低TgPC(Tg125℃)/1.2mmt
メタクリル酸メチル構成単位21質量%、スチレン構成単位64質量%、および無水マレイン酸構成単位15質量%の共重合体(レジスファイ R100(デンカ製))75質量%、ならびにスチレン構成単位7質量%、メタクリル酸メチル構成単位86質量%、およびN-フェニルマレイミド構成単位7質量%の共重合体(デルペット PM120N;旭化成ケミカル製)25質量%を、スクリュー径26mmの押し出し機(TEM-26SS、L/D≒40;東芝機械製)に導入し、240℃で溶融混練して高硬度樹脂(B4)を得た。
【0179】
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に上記の高硬度樹脂(B4)を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0180】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.3倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例8と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0181】
実施例11:R310(Tg141℃)/低TgPC(Tg125℃)/0.5mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B2)(メタクリル酸メチル構成単位6質量%、スチレン構成単位71質量%、および無水マレイン酸構成単位23質量%の共重合体;レジスファイ R310(デンカ製))を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度8kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度35.0kg/hの条件で押し出した。
【0182】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で100μmであった。延伸倍率は1.5倍であった。
ハードコートアンチグレア層の材料は実施例1と同様で、バーコーターにて積層体に塗布し、その上からヘーズが4%の2mm厚のすりガラスの凹凸面を被せ、ガラス上からメタルハライドランプ(20mW/cm)を5秒間当ててハードコートを硬化させ、ハードコートアンチグレア層を付着させた後、すりガラス板を剥離し、樹脂シートを作製した。ハードコートアンチグレア層の膜厚は6μmであった。樹脂シートのヘーズは2%であり、面内リタデーションは4100~4500nmであった。
樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例10と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0183】
実施例12:FPC0220(Tg184℃)/E2000(147℃)/1.2mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B5)(一般式(8)で示される構成単位を含むポリカーボネート樹脂;ユピゼータFPC0220(三菱ガス化学製))を連続的に導入し、シリンダ温度300℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユーピロンE2000;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度280℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0184】
押し出された高硬度樹脂およびポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、280℃の温度で高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂を積層した。さらにそれを温度280℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却延伸し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.3倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例11と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例10と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
第一保護フィルム及び第二保護フィルムは実施例1と同様に貼合した。
【0185】
実施例13:MS-H(Tg115℃)/低TgPC(Tg125℃)/1.2mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B1)(一般式(1)におけるR1およびR2が共にメチル基であり、一般式(2)におけるR3が水素原子で、R4がシクロヘキシル基である樹脂;(メタ)アクリル酸エステル構成単位75モル%、脂肪族ビニル構成単位25モル%からなり、重量平均分子量は120,000)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0186】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.3倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例11と同様に形成した。
樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
樹脂シートへのポリカーボネートフィルムの貼合方法は実施例10と同様に行い、成形用樹脂シートを作製した。
【0187】
実施例14:V040とSt-MAH樹脂とのアロイ(Tg136℃)/低TgPC(Tg125℃)/1.2mmt
スチレン構成単位78質量%、無水マレイン酸構成単位22質量%の共重合体(XIBOND160(ポリスコープ製))75質量%、ならびにアクリル樹脂(アルトグラスV040(アルケマ製)25質量%を、スクリュー径26mmの押し出し機(TEM-26SS、L/D≒40;東芝機械製)に導入し、240℃で溶融混練して高硬度樹脂(B6)を得た。
【0188】
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に上記の高硬度樹脂(B6)を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0189】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.3倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例8と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0190】
実施例15:V020とSt-MAH樹脂とのアロイ(Tg132℃)/低TgPC(Tg125℃)/1.2mmt
スチレン構成単位78質量%、無水マレイン酸構成単位22質量%の共重合体(XIBOND160(ポリスコープ製))75質量%、ならびにアクリル樹脂(アルトグラスV020(アルケマ製)25質量%を、スクリュー径26mmの押し出し機(TEM-26SS、L/D≒40;東芝機械製)に導入し、240℃で溶融混練して高硬度樹脂(B6)を得た。
【0191】
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に上記の高硬度樹脂(B6)を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0192】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.3倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例8と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0193】
比較例1:MS-H(Tg115℃)/低TgPC(125℃)/0.5mmt
高硬度樹脂(B1)を単軸押出機で押し出す際の条件をシリンダ温度230℃、吐出速度8.0kg/hとし、ポリカーボネート樹脂を単軸押出機で押し出す際の吐出速度を35.0kg/hとし、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体の厚みを0.5mm(高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μm)とした。延伸倍率は1.5倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。樹脂シートの面内リタデーションは4100~4500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製NF-2000NS、500μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.5mm、面内リタデーションは300~400nmであった。
【0194】
比較例2:R100とPMMAとのアロイ(Tg115℃)/低TgPC(Tg125℃)/1.2mmt
メタクリル酸メチル構成単位21質量%、スチレン構成単位64質量%、および無水マレイン酸構成単位15質量%からなる共重合体(レジスファイ R100;デンカ製)75質量%、ならびにアクリル樹脂(パラペットHR-1000L(PMMA);クラレ(株)製)25質量%を、スクリュー径26mmの押し出し機(TEM-26SS、L/D≒40;東芝機械製)に導入し、240℃で溶融混練して高硬度樹脂(B2)を得た。
【0195】
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に上記の高硬度樹脂を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0196】
その後、実施例1と同様にTダイで押し出し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.3倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。
上記の樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製NF-2000NS、500μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.5mm、面内リタデーションは300~400nmであった。
【0197】
比較例3:R100(Tg124℃)/低TgPC(Tg125℃)/1.2mmt
軸径35mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、各押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B2)(メタクリル酸メチル構成単位21質量%、スチレン構成単位64質量%、および無水マレイン酸構成単位15質量%の共重合体;レジスファイ R100(デンカ製))を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0198】
押し出された高硬度樹脂およびポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、240℃の温度で高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂を積層した。さらにそれを温度240℃のTダイに導入してシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却延伸し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。延伸倍率は1.3倍であった。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。
上記の樹脂シートの面内リタデーションは3000~3500nmであった。上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、100μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.1mm、面内リタデーションは20nm以下であった。
【0199】
比較例4
実施例1と同様に高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。上記の樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製NF-2000(H11)、500μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.5mm、面内リタデーションは5000~6000nmであった。
【0200】
比較例5:MS-H(Tg115℃)/S1000(Tg147℃)/1.2mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B1)(一般式(1)におけるR1およびR2が共にメチル基であり、一般式(2)におけるR3が水素原子で、R4がシクロヘキシル基である樹脂;(メタ)アクリル酸エステル構成単位75モル%、脂肪族ビニル構成単位25モル%からなり、重量平均分子量は120,000)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユーピロンS-1000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を連続的に導入し、シリンダ温度280℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0201】
押し出された高硬度樹脂およびポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、270℃の温度で高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂を積層した。さらにそれを温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。延伸倍率は1.3倍であった。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。上記の樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0202】
比較例6:MS-H(Tg115℃)/S1000(Tg147℃)/2mmt
比較例5において、単軸押出機でのポリカーボネート樹脂の押し出しにおける吐出速度を83.0kg/hとし、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体の厚みを2mm(高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μm)とした。延伸倍率は1.17倍であった。ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。上記の樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0203】
比較例7:MS-H(Tg115℃)/S1000(Tg147℃)/3.5mmt
比較例5において、単軸押出機での高硬度樹脂(B1)およびポリカーボネート樹脂の押し出しにおける吐出速度を、それぞれ1.3kg/hおよび72.0kg/hとし、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体の厚みを3.5mm(高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μm)とした。延伸倍率は1.1倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。上記の樹脂シートの面内リタデーションは6800~7000nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0204】
比較例8:MS-H(Tg115℃)/S1000(Tg147℃)/0.5mmt
比較例5において、単軸押出機での高硬度樹脂(B1)およびポリカーボネート樹脂の押し出しにおける吐出速度を、それぞれ4.8kg/hおよび35.0kg/hとし、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体の厚みを0.5mm(高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μm)とした。延伸倍率は1.5倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。上記の樹脂シートの面内リタデーションは4100~4500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0205】
比較例9:PMMA(Tg105℃)/低TgPC(Tg125℃)/0.8mmt
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、各押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径32mmの単軸押出機に高硬度樹脂(アクリル樹脂;パラペットHR-1000L(PMMA);クラレ(株)製)を連続的に導入し、シリンダ温度250℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータ T-1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度32.0kg/hの条件で押し出した。
【0206】
押し出された高硬度樹脂およびポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、240℃の温度で高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂を積層した。さらにそれを温度240℃のTダイに導入してシート状に押し出し、上流側から温度110℃、140℃、185℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは0.8mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。延伸倍率は1.43倍であった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。上記の樹脂シートの面内リタデーションは5800~6300nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0207】
比較例10:FPC0220(Tg184℃)/T1380(125℃)/1.2mmt
実施例1と同じ多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B5)(一般式(8)で示される構成単位を含むポリカーボネート樹脂;ユピゼータFPC0220(三菱ガス化学製))を連続的に導入し、シリンダ温度300℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT1380;三菱ガス化学製)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0208】
押し出された高硬度樹脂およびポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、280℃の温度で高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂を積層した。さらにそれを温度280℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却延伸し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。延伸倍率は1.3倍であった。得られた積層体の厚みは1.2mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。上記の樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0209】
比較例11:S-1000(Tg147℃)単独/2mmt
高硬度樹脂の代わりに基材層に含まれるのと同じポリカーボネート樹脂を使用して、積層体を成形した。押出装置としては、実施例1と同じ多層押出装置を使用した。具体的には、軸径35mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユーピロンS-1000(三菱エンジニアリングプラスチックス社製);鉛筆硬度3B)を連続的に導入し、シリンダ温度280℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユーピロンS-1000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を連続的に導入し、シリンダ温度280℃、吐出速度83.0kg/hの条件で押し出した。
【0210】
押し出された上記ポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、280℃の温度で積層した。さらにそれを温度280℃のTダイに導入してシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却延伸し、ポリカーボネート樹脂の積層体を得た。延伸倍率は1.17倍であった。得られた積層体の厚みは2mmであった。
ハードコートアンチグレア層は実施例1と同様に形成した。上記の樹脂シートの面内リタデーションは6200~6500nmであった。
上記の樹脂シートの基材層側に接着剤(アクリル系OCA)にて樹脂フィルム(X)としてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学製FS-2000、200μmt)を貼合し成形用樹脂シートとした。ポリカーボネートフィルムの厚みは0.2mm、面内リタデーションは45nm以下であった。
【0211】
実施例および比較例で製造した樹脂シートについて、硬度、成形後クラックの有無、フローマーク、金型傷転写、及び保護フィルム融着の有無を評価した。その結果を以下の表1に示す。
【0212】
【表1】
【0213】
本発明の樹脂シートは、硬度に優れ、フローマークが無く、熱成形後にクラック等の外観異常が生じていないことが分かる。
【0214】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。