(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】生分解性容器及びプレート材料、並びにそれらの製造の方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240917BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240917BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20240917BHJP
B32B 9/02 20060101ALI20240917BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20240917BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240917BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
B32B27/36
C08L67/00
C08G63/12
B32B9/02
B65D65/46
C08L1/02 ZBP
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2021541313
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2020051238
(87)【国際公開番号】W WO2020152082
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-19
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521314792
【氏名又は名称】プランティクス ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】アルバーツ,アルバート ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】ティ,フェリー ルドヴィク
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,ライツァー ヤン ウィレム
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0061554(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0065392(US,A1)
【文献】特開2011-000743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101865(US,A1)
【文献】特表2011-518235(JP,A)
【文献】特開2003-013391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0276400(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 9/02
B32B 27/36
B65D 65/46
C08L 1/02
C08L 67/00
C08L 101/16
C08G 63/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系材料の層を含む生分解性容器又はプレート材料であって、該セルロース系材料の層は、セルロース系材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステルとを含む複合表面層が備えられており、ここで、該ポリカルボン酸が、少なくとも50重量%のトリカルボン酸を含
み、ここで、該セルロース系材料の層におけるセルロース材料と該複合表面層におけるセルロース材料とが連続しており、且つ、ここで、ポリエステル含有複合表面層とポリエステルを含まないセルロース系材料の合計に基づいて計算して、前記生分解性容器又はプレート材料の横断面において、当該横断面の1~90%がポリエステル含有複合表面層であり、及び該横断面の99~10%がポリエステルを含まないセルロース系材料である、上記生分解性容器又はプレート材料。
【請求項2】
前記セルロース系材料が、少なくとも50重量%のセルロース材
料を含む、請求項1の記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項3】
疎水性、乾燥強度、及び湿潤強度の1以上を改善するための1以上の添加剤、及び/又は1以上の充填剤若しくは結合剤を含む、請求項1又は2に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項4】
前記脂肪族ポリアルコールが、グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールから選択されるトリアルコール、及び1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール及び1,2-エタンジオールから選択されるジアルコー
ルの群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項5】
前記ポリアルコールが、少なくとも50モル
%のグリセロール、キシリトール、ソルビトール、又はマンニトー
ルからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項6】
該ポリカルボン酸は、ポリカルボン酸の全量に基づいて計算して、少なくとも70重量
%のトリカルボン酸を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項7】
前記トリカルボン酸が、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸(シス及びトランスの両方)、及び3-カルボキシ-シス,シス-ムコン酸の群か
ら選択さ
れる、請求項1~6のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項8】
前記脂肪族ポリカルボン酸が、イタコン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及びセバシン酸の群から選択されるジカルボン酸を
含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項9】
ポリエステル含有複合表面層とポリエステルを含まないセルロース系材料の合計に基づいて計算して、生分解性容器又はプレート材料の
横断面において
、該横断面の2~50%はポリエステルを含む複合表面層であり、及び該横断面の98~50%はポリエステルを含まないセルロース系材料で
ある、請求項1~8のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項10】
生分解性容器又はプレート材料中に存在するポリエステル樹脂の量が、0.5~90重量%の範
囲にある、請求項1~9のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項11】
植木鉢、又は包装材
料である、請求項1~10のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の生分解性容器又はプレート材料を製造する方法であって、
セルロース系材料の表面を、ポリエステル、又はそれの前駆体であるポリカルボン酸とポリアルコールを含む液体媒体と、前記セルロース系材料が前記液体媒体で部分的に、不完全に含浸されるまで、接触させる工程、ここで、該ポリエステルは、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導され、該ポリカルボン酸が、少なくとも50重量%のトリカルボン酸を含む、及び
硬化工程
を含む、前記方法。
【請求項13】
前記セルロース系材料の前記表面を前記液体媒体と接触させる前記工程が、浸漬、噴霧、フロー処理、ロール処理、ブラッシング、又はカスケード処理を通じて行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化工程が、80~250
℃の生成物温度で実施される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
乾燥工程が前記硬化工程の前に行わ
れる、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記セルロース材料が、未使用の若しくは使用済みの紙、未使用の若しくは使用済みのボール紙、任意の形態の木材若しくは他の植物材料、又はそれらの組み合わせとして得られたものである、請求項2の記載の生分解性容器又はプレート材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性容器及びプレート材料、並びにそれらの製造の方法に関する。本発明は、特に、下記の特性、すなわち、軽量、高(湿潤)強度、望ましい柔軟度、水、油及び脂肪に対する良好な(一時的)耐性、並びに魅力的な視覚的及び触覚的特性、の1以上を示す、生分解性容器及びプレート材料に関する。
【背景技術】
【0002】
販売されている多くの製品は、何らかのパッケージング形態で販売されている。パッケージングは、該製品を外部環境から保護すること、及び該製品を一緒に保持することが意図されている。該パッケージングは、そのライフサイクルのある時点で廃棄されるであろう。製品のエコロジカル・フットプリントを制限する為には、製品は、バイオベースであり、非毒性であり、リサイクル可能であり、それが環境に入る場合には生分解性であることが非常に望ましい。生分解性は、例えばASTM D5511及びASTM D5538において定義されている。他方では、パッケージング材料(packaging material)は、廃棄される前には環境の影響に耐えることができる必要があり、該パッケージング材料は、パッケージされた製品に応じて、水分、液体の水、油及び脂肪の1以上からの影響、並びに機械力に、長期間耐えることができる必要がありうる。加えて、その使用に応じて、魅力的な視覚的特性及び触覚的特性が重要でありうる。
【0003】
特には複雑なパッケージング材料の例は、植木鉢である。多くの植物が、プラスチック植木鉢、例えばポリプロピレンのプラスチック植木鉢、で、消費者に販売されている。これらの植木鉢は、消費者に販売される場合、有用な寿命が相対的に短い。なぜならば、植物は、鉢から取り出され、地面若しくは別の容器に植えられるか、又は該植物自体が、例えばキッチン用ハーブ、並びに多くの屋内及び屋外用の植物の場合には相対的に短い生命を有するからである。これらの場合、該鉢それ自体又は該植物の残りを伴う該鉢は、廃棄される。従って、迅速な廃棄は、廃棄物をほとんど出さず、廃棄するときに取扱いが容易である材料が求められるということを暗に意味している。他方では、植物が鉢の中で育てられる場合、該鉢は、該植物が生育する条件だけでなく、輸送、保存及び使用中によく見られる条件にも耐えることができる必要がある。
【0004】
記述された要件を満たす植木鉢についての要求は、欧州特許出願公開第3199018号明細書において広範に論じられている。該問題は、特別な樹脂のポリマーを用いる表面紙の処理により、リサイクル又は非リサイクルの白色板紙又は褐色クラフト紙を防水することにより構成された、生分解性の紙の器を提供することによって解決されることが示されている。しかしながら、この特許出願は、提案された該特別な樹脂の性質の説明を有していない。
【0005】
米国特許出願公開第2018000017号明細書は、特に苗木の生育を意図された生分解性植木鉢を記載する。該鉢は、特には、苗木が植木鉢内で生育し、該苗木が成熟に近づくと、該苗木を該鉢から取り出す必要なしに該鉢が該苗木と共に地面に植えられる状況を意図されている。この参考文献は、該鉢の引張強度、疎水性、及び真菌増殖耐性を改善する為に、添加剤、例えばワックスエマルション、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、又はその組み合わせ、が供された生分解性植木鉢を記載する。
【0006】
この参考文献において提案された材料は、幾つかの不利点を有する。第一に、それら材料は水における溶解度が低い。このことは、該植木鉢に対して疎水性を付与することに寄与しうるが、それはまた均質な製品を形成することを困難にしうる。
【0007】
挑戦的なパッケージング材料の別の例は、食品の為のパッケージング、特に水分、油若しくは脂肪、又はその組み合わせ、と接触するパッケージングである。このパッケージングは、パッケージされた食品の消費期限にわたって、これらの物質の影響に耐えることができる必要がある。他方では、該パッケージングは一般的に、単回使用の為であり、それ故に廃棄物の制限を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の基礎となる問題は、生分解性容器又はプレート材料、特に生分解性パッケージング容器、幾つかの実施態様においては生分解性植木鉢、を提供することであり、それらは下記の特性、すなわち、軽量、高(湿潤)強度、望ましい柔軟度、水、油及び脂肪に対する良好な(一時的)耐性、並びに魅力的な視覚的及び触覚的特性の1以上、特にはそれらの組み合わせ、を示す。本発明は、この問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従う生分解性容器又はプレート材料は、下記の特性、すなわち、軽量、高(湿潤)強度、望ましい柔軟度、水、油及び脂肪に対する良好な(一時的)耐性、並びに魅力的な視覚的及び触覚的特性の1以上、特にそれらの組み合わせ、を示す。
【0010】
本発明は、セルロース系材料の層を含む生分解性容器又はプレート材料であって、該セルロース系材料の層は、セルロース系材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステルとを含む複合表面層が備えられており、ここで、該ポリカルボン酸が、少なくとも50重量%のトリカルボン酸を含む、上記生分解性容器又はプレート材料に関する。
【0011】
紙ベースの製品の製造においてジオールと二酸とのポリエステルを使用することが記載されていることに留意されたい。
【0012】
国際公開第2018/067006号パンフレットは、生分解性脂肪族ポリエステル、例えばPBS(ポリブチレンスクシネート)、PHB(ポリヒドロキシブチレート)、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、PCL(ポリカプロラクトン)、PLA(ポリ乳酸)、PGA(ポリグリコール酸)、PHBH(3-ヒドロキシブチレート及び3-ヒドロキシヘキサノエートのコポリマー)及びPHBV(3-ヒドロキシブチレート及び3-ヒドロキシバレレートのコポリマー)、好ましくはPBS(ポリブチレンスクシネート)、を好ましくは0.5~20重量%の範囲で含む、モールドパルプ材料由来の生分解性で且つ堆肥化可能な食品パッケージングユニットを記載する。
【0013】
国際公開第2009/118377号パンフレットは、少なくとも二酸及び少なくともジオールから誘導された単位を含み、長鎖の分岐を有し、及びゲルを含まない、生分解性ポリエステルを記載する。該ポリエステルは、紙ベースのラミネート製品において使用される。
【0014】
米国特許出願公開第20130101865号明細書は、紙又は板紙から作られたパッケージング材料のバリア性を改善する為のコーティングとしての、少なくとも1つの生分解性ポリエステルの水性分散液の使用を記載する。該ポリエステルは特に、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリラクチドとポリ-C2~C4-アルキレングリコールとのブロックコポリマー、ポリカプロラクトンとポリ-C2~C4-アルキレングリコールとのブロックコポリマー、又は少なくとも1つの脂肪族若しくは脂環式ジカルボン酸若しくはその1つのエステル形成誘導体と少なくとも1つの脂肪族若しくは脂環式ジオール成分とから構成されたコポリエステルである。
【0015】
しかしながら、ジオール及びジカルボン酸のポリエステルの使用は、特に、得られた材料の乾燥及び湿潤強度に関して不十分な結果をもたらすことが見出された。
【0016】
国際公開第2012/140237号パンフレットは、バイオフィラー(biofiller)、並びに2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸とから誘導された少なくとも2重量%のポリエステルマトリックスポリマーを含む複合材料を記載することに留意されたい。この参考文献は、中密度繊維板(MDF:medium density fiberboard)、高密度繊維板(HDF:high-density fiberboard)、合板、配向性ストランドボード(OSB:oriented strand board)、パーティクルボード、及びFormicaのような紙-樹脂複合材からの、代替としての複合材料を提供することに向けられている。該材料は、その耐火特性に起因して、建築材料として極めて好適であることが示されている。該材料は、フィラーとマトリックスポリマーとを混合することによって、型に該フィラーを供給し、そして該マトリックスポリマーを添加することによって、又はフィラーの層に該マトリックスポリマーを含浸することによって、調製される。実施例において、多量のポリマーが使用されている。この参考文献は、セルロース系材料とポリエステルとを含む複合表面層が備えられた、セルロース系容器又はプレート材料を含む生分解性容器又はプレート材料を提供することを開示していない。
【0017】
国際公開第2012/140238号パンフレットは、コーティングとしての、又はラミネートの製造における、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステルポリマーの使用を記載する。この場合にも、この参考文献は、ポリエステルの複合表面層が備えられた、セルロース系材料を含む生分解性パッケージング材料を提供することを開示していない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明及びそれらの関連付けられた利点を有する本発明の好ましい実施態様は、下記においてより詳細に論じられるであろう。
【0019】
該セルロース系材料は、セルロース系材料と特定のポリエステルとを含む複合表面層を備えられている。複合表面層の存在は、本発明の非常に重要な特徴である。それは、本発明に従う生分解性容器又はプレート材料の横断面を見る場合に、該材料の一部が該ポリエステルを含み、該材料の一部が該ポリエステルを含んでいないことを意味する。言い換えれば、ポリエステルを含む複合表面層は、ポリエステルを含まない層と区別されることができる。このポリエステルを含まない層は、該材料の両面が、ポリエステルを含む複合表面層を備えられている場合には、コア層でありうる。物体材料の片面だけにポリエステルを含む複合表面層が備えられた場合には、該ポリエステルを含まない層はまた、該物体の片面上に存在しうる。ポリエステルを含む複合表面層とポリエステルを含まない層の組み合わせは、望ましい特性、特に(湿潤)強度、バリア特性、及び柔軟性の組み合わせ、を有する製品を結果として生じることが見出された。
【0020】
上述の請求項のいずれか1項に従う生分解性容器又はプレート材料において、ポリエステルを含む複合表面層及びポリエステルを含まないセルロース系材料の合計に基づいて計算して、該生分解性容器又はプレート材料の横断面において、該横断面の5~90%がポリエステルを含む複合表面層であり、及び該横断面の95~10%がポリエステルを含まないセルロース系材料であり、特に該横断面の20~80%がポリエステルを含む複合表面層であり、及び該横断面の80~20%がポリエステルを含まないセルロース系材料であり、好ましくは該横断面の30~70%がポリエステルを含む複合表面層であり、及び該横断面の70~30%がポリエステルを含まないセルロース系材料である。
【0021】
一つの実施態様において、該生分解性容器又はプレート材料の横断面において、ポリエステルを含む複合表面層及びポリエステルを含まないセルロース系材料の合計に基づいて計算して、該横断面の1~90%はポリエステルを含む複合表面層であり、及び該横断面の99~10%はポリエステルを含まないセルロース系材料である。該横断面の2~50%はポリエステルを含む複合表面層であり、及び該横断面の98~50%はポリエステルを含まないセルロース系材料であることが好まれうる。幾つかの実施態様において、該横断面の2~30%はポリエステルを含む複合表面層であり、及び該横断面の98~70%はポリエステルを含まないセルロース系材料であることが好まれうる。
【0022】
セルロース系材料の層、並びにセルロース系材料とポリエステルとを含む複合表面層に加えて、該生分解性容器又はプレート材料は、更なる層、例えばセルロースを含まないポリエステル層、を有することが可能である。
【0023】
本発明に従う生分解性容器又はプレート材料において、該セルロース系材料、並びにセルロース系材料とポリエステルとを含む該複合表面層は、セルロース繊維の規模で結合されている。以下に論じられている通り、該複合表面層は、セルロース系材料に、ポリエステル又はポリカルボン酸及びそのポリアルコール前駆体を含む液体媒体を含浸することによって与えられる。このことは、該セルロースベースの層におけるセルロース材料と該複合表面層におけるセルロース材料とが連続していることを意味する。
【0024】
従って、本発明において使用される出発材料は、セルロースベースの物体、特にセルロースベースの容器、例えば箱、鉢若しくは任意の他の容器、又はセルロースベースのプレート材料、に基づく。語「セルロース系」は、該物体が、例えば供給源、例えば未使用の若しくは使用済みの紙、未使用の若しくは使用済みのボール紙、任意の形態の木材若しくは他の植物材料、又はそれらの組み合わせ、から誘導された、少なくとも50重量%のセルロース材料を含むことを意味することが意図される。特に、該材料又は容器は、少なくとも70重量%、より特には少なくとも80重量%、のセルロース材料を含む。
【0025】
一つの実施態様において、該セルロース系材料は、木材パルプ化プロセスから直接的に得られる、いわゆるバージンパルプから誘導される。このパルプは、任意の植物材料に由来することができるが、ほとんどは木材に由来することができる。木材パルプは、軟材の木、例えばトウヒ、マツ、モミ、カラマツ及びツガ、並びに硬材、例えばユーカリ、ポプラ(popular)、アスペン及びカバノキ、に由来する。一つの実施態様において、該セルロース系材料は、リサイクル紙から誘導されたセルロース材料、例えば、再生された本、紙、新聞及び定期刊行物、鶏卵カートン、並びに他のリサイクル紙又はボール紙製品から得られたセルロースパルプ、を含む。セルロース供給源の組み合わせがまた使用されうる。
【0026】
該セルロース系材料は、当技術分野において知られている他の成分を含みうる。
【0027】
一つの実施態様において、該セルロース系材料は、該材料の耐水性又は疎水性を増大する化合物を含む。好適な化合物は、当技術分野において知られており、例えば、動物若しくは植物性脂肪及び油を加水分解することによって得られた脂肪酸から誘導されたアルキルケテン二量体(AKD:alkylketene dimers)、又はマレイン化された(maleated)アルケン、例えばイソ-オクタデセニルコハク酸無水物(ASA)、を包含する。
【0028】
該セルロース系材料はまた、より高価な成分の消費を抑える為に、又は複合材に特定の特性を付与する為に、無機フィラーを含みうる。無機フィラーは、当技術分野において知られており、例えば、チャイナクレイ(China clay)、炭酸カルシウム、二酸化チタン、及びタルクを含む。
【0029】
該セルロース系材料はまた、バインダーを含みうる。バインダーは、当技術分野において知られている。例は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カチオン性及びアニオン性ヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、加工デンプン、並びにデキストリンを包含する。
【0030】
一つの実施態様において、該セルロース系材料は、該材料が湿潤してもその強度を保持することを確実にするよう助ける、いわゆる湿潤強度添加剤を含む。湿潤強度添加剤は、当技術分野において知られており、エピクロロヒドリン、メラミン、ウレア、ホルムアルデヒド、及びポリイミンを包含する。
【0031】
一つの実施態様において、該セルロース系材料は、圧縮強度、破裂強度、引張破断強度、及び耐層間剥離の1以上を改善する為の乾燥強度付与剤としてまた示されている、いわゆる乾燥強度添加剤を含む。乾燥強度添加剤は、当技術分野において知られている。例は、カチオン性デンプン及びポリアクリルアミド(PAM)誘導体を包含する。
【0032】
これらの成分は、セルロース材料の製造分野で知られているので、それらの使用は当業者の範囲内にあり、更なる説明は必要とされない。
【0033】
本発明は、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステルを使用し、ここで、該ポリカルボン酸は、少なくとも50重量%のトリカルボン酸を含む。
【0034】
本発明の為の出発材料は、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリアルコール及び脂肪族ポリカルボン酸であり、ここで、該ポリカルボン酸は、少なくとも50重量%のトリカルボン酸を含む。
【0035】
本発明において使用される該脂肪族ポリアルコールは、少なくとも2個のヒドロキシ基、特には少なくとも3個のヒドロキシ基、を含む。一般的に、ヒドロキシ基の数は、10個以下、より特には8個以下、又は更には6個以下、特には2個又は3個、である。
【0036】
該ポリアルコールは、2~15個の炭素原子を有する。より特には、該ポリアルコールは、3~10個の炭素原子を有する。
【0037】
該ポリアルコールは、N又はSヘテロ原子を有していないことが好ましい。より特には、該ポリアルコールは、ヒドロキシ基以外の非炭素基を含まないことが好ましい。より特には、該ポリアルコールは、C、H、及びO原子のみを含む脂肪族ポリアルカノールである。
【0038】
本発明の好ましい実施態様において、該ポリアルコールは、その炭素原子の数と比較して相対的に多数のヒドロキシ基を含む。例えば、ヒドロキシ基の数及び炭素原子の数の比は、1:4(すなわち、4個の炭素原子当たり1個のヒドロキシ基、又は1個のジアルコールにつき8個の炭素原子)~1:0.5(すなわち、1個の炭素原子当たり2個のヒドロキシ基)の範囲である。特に、ヒドロキシ基の数及び炭素原子の数の比は、1:3~1:0.75、より特には1:2~1:0.75、の範囲である。特に好ましいポリアルコールの基は、該比が1:1.5~1:0.75の範囲である基である。ヒドロキシ基と炭素原子との比が1:1である化合物が、特に好ましいと考えられる。
【0039】
好適なポリアルコールの例は、グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールから選択されるトリアルコール、並びに1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール及び1,2-エタンジオールから選択されるジアルコールを包含する。グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールの群から選択された化合物の使用が好ましく、グリセロールの使用が特に好ましい。
【0040】
グリセロールの優先度は、下記に基づく。第一に、グリセロールは、特に全て90℃を十分に上回る融点を有するキシリトール、ソルビトール、及びマンニトールと比較して容易な処理を可能にする20℃の融点を有する。更に、グリセロールは、高い質のポリマーをもたらし、従って、容易に入手可能な供給源の材料の使用を、良好な処理条件及び高品質の生成物と組み合わせることが見出された。種々のタイプのアルコールの混合物がまた使用されうる。
【0041】
該ポリアルコールは、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%、より特には少なくとも90モル%、又は更には少なくとも95モル%、の、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、又はマンニトール、特にグリセロール、からなることが好ましい。一つの実施態様において、該ポリアルコールは、グリセロールから本質的になる。
【0042】
グリセリドとモノアルコールのエステル交換反応によるバイオディーゼルの製造の副産物であるグリセロールの使用は、本発明の特定の実施態様である。好適なモノアルコールは、C1~C10モノアルコール、特にC1~C5モノアルコール、より特にC1~C3モノアルコール、特にメタノール、を包含する。該グリセリドは、グリセロールと脂肪酸とのモノエステル、ジエステル及びエステル(mono-di- and esters)であり、該脂肪酸は一般的に、10~18個の炭素原子を有する。関連するグリセロールを有するバイオディーゼルを製造する為の好適な方法は、当技術分野において知られている。
【0043】
本発明において使用される該脂肪族ポリカルボン酸は、3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸であり、該ポリカルボン酸は、少なくとも50重量%のトリカルボン酸を含む。
【0044】
本発明において使用される該脂肪族ポリカルボン酸は、少なくとも2個のカルボン酸基を含み、但し、該ポリカルボン酸は、少なくとも50重量%のトリカルボン酸を含む。本発明において使用される該脂肪族ポリカルボン酸は特に、少なくとも3個のカルボン酸基を含む。一般的に、カルボン酸基の数は、10個以下、より特に8個以下、又は更には6個以下、である。
【0045】
該ポリカルボン酸は、3~15個の炭素原子を有する。より特には、該ポリカルボン酸は、3~10個の炭素原子を有する。
【0046】
該ポリカルボン酸は、N又はSヘテロ原子を有していないことが好ましい。より特には、該ポリカルボン酸は、カルボン酸基以外の非炭素基を含まないことが好ましい。より特に、該ポリカルボン酸は、C、H、及びO原子のみを含む脂肪族ポリカルボン酸である。
【0047】
一つの実施態様において、ジカルボン酸が使用される。該ジカルボン酸は、それが使用される場合には、2個のカルボン酸基、一般的には最大15個の炭素原子、を有する任意のジカルボン酸でありうる。好適なジカルボン酸の例は、イタコン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びセバシン酸を包含する。イタコン酸及びコハク酸が好まれうる。
【0048】
本発明において、トリカルボン酸が使用される。該トリカルボン酸は、3個のカルボン酸基、一般的には最大15個の炭素原子、を有する任意のトリカルボン酸でありうる。例は、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸(シス及びトランスの両方)、及び3-カルボキシ-シス,シス-ムコン酸を包含する。クエン酸の使用が、費用及び入手可能性の両方の理由で好ましいと考えられる。
【0049】
適用できる場合には、該ポリカルボン酸は、全体的に又は部分的には無水物、例えばクエン酸無水物、の形態で用意されうる。
【0050】
トリカルボン酸の使用は、魅力的な特性を有するポリエステルを結果として生じることが見出された。それ故に、該ポリカルボン酸は、ジカルボン酸、他のポリカルボン酸、及びそれらの混合物との組み合わせであるかどうかに関わりなく、少なくとも50重量%のトリカルボン酸を含む。一つの実施態様において、該ポリカルボン酸は、ポリカルボン酸の全量に基づいて計算して、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%、又は更には少なくとも95重量%、のトリカルボン酸を含む。一つの実施態様において、該ポリカルボン酸は、トリカルボン酸から本質的になり、ここで、語「本質的に」は、他の酸が、材料の特性に影響を及ぼさない量で存在しうることを意味する。
【0051】
本発明の別の実施態様において、該酸は、酸の全量に基づいて計算して、少なくとも2重量%、特には少なくとも5重量%、より特には少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、のジカルボン酸を含む。
【0052】
トリカルボン酸、特にクエン酸、の使用は、特にトリアルコール、例えばグリセロール、の使用との組み合わせで、高品質の複合材料の形成を結果として生じることが見出された。
【0053】
理論によって束縛されるものではないが、本発明者らは、三酸の使用、特にトリオールと組み合わされた三酸の使用、が、なぜ高品質の複合材料の形成を結果として生じるかについて、幾つかの理由があると考える。第一に、特にトリオールと組み合わされた三酸の使用は、高架橋ポリマーを作成して、増大された強度を結果として生じる。
【0054】
更に、三酸が使用され、好ましくはトリオールがまた使用される場合、酸又はヒドロキシ基が、該セルロース系材料上の活性基と物理的又は化学的に相互作用する可能性が大きい。このことは、該セルロース系材料及び該ポリマーの改善された結合をもたらすが、それは、複合材料の作成において非常に重要な要望である。相互作用の程度は、三酸及びトリアルコールの量の選択によって、並びに重合度を選択することによって制御されることができる。
【0055】
該ポリアルコールと該ポリカルボン酸とのモル比は、使用される1以上のアルコールにおける反応基の数と1以上の酸における反応基の数との比によって制御される。一般的に、OH基の数と酸基の数との比は、5:1~1:5である。より特には、該比は、2:1~1:2、より特には1.5:1~1:1.5、より好ましくは1.1:1~1:1.1、でありうる。理論的モル比は、1:1である。
【0056】
該ポリマーは、該アルコールと該酸とを組み合わせて液相を形成することによって形成される。これは、化合物の性質に応じて、例えば、該酸が、該アルコール、特にグリセロール、に溶解する温度に、成分の混合物を加熱することによって、行われることができる。これは、化合物の性質に応じて、例えば、20~200℃、例えば40~200℃、例えば60~200℃、又は90~200℃、の範囲の温度で行われうる。一つの実施態様において、該混合物は、100~200℃、特に100~150℃、の温度、より特に100~140℃、の範囲の温度で、5分~2時間、より特に10分~45分間、加熱され及び混合されうる。
【0057】
任意的に、好適な触媒が、該ポリエステルの調製の為に使用されることができる。ポリエステルの製造の為に好適な触媒は、当技術分野において知られている。好ましい触媒は、重金属を含まない触媒である。有用な触媒は、強酸、例えば塩酸、ヨウ化水素酸及び臭化水素酸、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、塩素酸(HClO3)、ホウ酸、過塩素酸(HClO4)トリフルオロ酢酸、及びトリフルオロメタンスルホン酸であるが、これらに限定されない。触媒、例えば酢酸Zn及び酢酸Mn、がまた使用されることができるが、それらはあまり好ましくないものでありうる。
【0058】
任意的に、反応混合物の重合及び冷却後に、該混合物は、該ポリエステル溶液を安定化する為に、揮発性塩基、例えばアンモニア又は有機アミン、で(部分的に)中和されることができる。好ましいアミンは、臭いの少ないアミン、例えば2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノールであるが、これらに限定されない。
【0059】
セルロース系材料の層を含む該生分解性容器又はプレート材料であって、該セルロース系材料の層は、セルロース系材料と、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステルとを含む複合表面層が備えられているところの上記の生分解性容器又はプレート材料は、一般的に、セルロース系材料の表面を、ポリエステル、又はそれの前駆体であるポリカルボン酸とポリアルコールを含む液体媒体と、該セルロース系材料が液体媒体で部分的に、不完全に含浸されるまで、接触させ、続いて硬化工程を行うことによって調製される。
【0060】
セルロース系材料の層、並びにセルロース系材料及びポリエステルを含む複合表面層を含む物体をうることが意図される場合、製造条件は、該液体媒体が該セルロース材料の全体に染み込まないように選択されることが重要である。この効果は、とりわけ、下記のパラメータ、によって制御される:すなわち、液体媒体の量、該液体媒体の粘度、該液体媒体に含浸される該セルロース材料の吸収能力、及び吸収された媒体における該ポリマーの重合速度。
【0061】
該液体媒体の粘度は、該媒体における該ポリエステルの重合度及び温度によって決定される。該ポリマーの重合速度は、触媒の存在及び温度によって決定される。これらのパラメータを考慮すると、好適な接触条件を選択することは、当業者の範囲内である。
【0062】
例えば、セルロース系材料は、該ポリエステルの水性溶液と室温で接触させられうる。セルロース系材料を、高められた温度で液体形態の該ポリエステルと接触させることがまた可能である。セルロース系材料を、ポリアルコール、ポリカルボン酸、及び重合触媒を含む液体と、重合条件下で接触させることがまた可能である。
【0063】
ポリエステル又はポリエステル前駆体を含む該液体媒体は、当技術分野において知られている方法、例えば浸漬(dipping)、噴霧(spraying)、フロー処理(flowing)、ロール処理(rolling)、ブラッシング(brushing)、又はカスケード処理(cascading)、によって該パッケージング上に施与されうる。噴霧は特には、少量の、例えば1~10重量%の範囲、の樹脂の均質層の施与に好適であり、該セルロース材料が、多量の樹脂を急速に吸収する傾向を有する場合、例えば該セルロース材料が、高多孔性を有し、又は相対的に親水性である場合、例えばサイジング剤が使用されない場合には、好適であることが判っている。
【0064】
浸漬は、不均質構造、例えば角度、角部、凹み、及び突起部、を有する表面の為に、特に魅力的であることが判っている。
【0065】
該セルロース系材料上への該ポリエステルの施与後に、得られた含浸材料は、該ポリエステルの重合度を増大する為に硬化工程に付される。該硬化工程の最も重要な点は、該ポリエステルが、反応温度、例えば80~250℃、特に100~200℃、の生成物温度にあるということである。硬化は、当技術分野において知られている加熱装置で、例えば80℃~450℃までのオーブン温度を有するオーブン内で、行われることができる。様々なタイプのオーブンが使用され得、例えばベルトオーブン、対流式オーブン、マイクロ波オーブン、赤外線オーブン、誘導オーブン、熱風オーブン、従来のベーキングオーブン及びそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されるものでない。硬化は、所望の施与に応じて単一工程又は複数工程で行われることができる。硬化時間は、施与、並びに使用されるオーブン及び温度のタイプに応じて、5秒~2時間の範囲である。所望の施与及び所望の特性に応じて好適な硬化条件を選択することは、当業者の範囲内である。
【0066】
従って所望の場合には、該含浸材料は、該硬化工程が行われる前に乾燥工程に付されうる。一般的に室温で、例えば15℃又は20℃~100℃の温度で行われる該乾燥工程は、複合材から水を除去する為に行われる。該乾燥工程は、該複合材における水の量、層の厚さ、及び温度に応じて、例えば0.25時間~3日間、行われることができる。
【0067】
該生分解性容器又はプレート材料中に存在するポリエステル樹脂の量は一般的に、0.5~90重量%の範囲である。所望の特性を有する材料を得る為に必要とされる量よりも多い樹脂は、追加の重量及び費用をもたらすだけである故に、そのような必要とされる量よりも多い樹脂を使用しないことが好ましい。樹脂の量は、50重量%以下、特に30重量%以下、幾つかの実施態様において、20重量%以下、又は更には15重量%以下、であることが好まれうる。本発明の効果をうる為には、一般的に少なくとも0.5重量%、特には少なくとも1重量%、のポリエステル樹脂が必要とされるであろう。
【0068】
先に示されている通り、本発明に従う生分解性容器又はプレート材料は、軽量、高(湿潤)強度、望ましい柔軟度、水、油及び脂肪に対する良好な(一時的)耐性、並びに魅力的な視覚的及び触覚的特性の1以上、特に組み合わせ、を示す。それにより、該生分解性容器又はプレート材料は、多くの施与に好適である。例えば、該生分解性容器又はプレート材料は例えば、併せてプラスチック市場の約40%を占めるパッケージング及び消耗品の為に、ほとんどの化石系(単回使用)プラスチックの代替として使用されることができる。プラスチック廃棄物を低減すること及びCO2排出を減少させることは、環境保護活動の場合にはEUの最優先事項である。新しい法律は、化石系(非生分解性)プラスチックの代替物を使用するように産業界を強制している。
【0069】
本発明に従う材料の為の特定の使用は、植木鉢、並びに脂肪又は水分を含む材料、例えば肉、魚、野菜及び他の食製品、の為のパッケージング容器を包含するが、これらに限定されない。食品パッケージングの為の該材料を使用する状況において、本発明において使用される該ポリエステルが、ヒト、動物及び環境の為に安全であることに留意することは価値のあることである。
【0070】
本発明は、下記の実施例によって説明されるが、それらに限定されるものでなく又はそれらによって限定されるものでもない。
【0071】
実施例1
ポリオールとポリカルボン酸ポリエステル前駆体との溶液の調製
水道水12kgが、50l容器内で90℃に加熱された。クエン酸一水和物(純度>99%)25kgが、撹拌下で添加された。溶液が38℃の温度で得られた。99%の純粋グリセロール12.5kgが、この溶液に添加された。該溶液が室温に冷やされ、50%の水濃度が得られるまで、水道水で更に希釈された。0.5重量%のホウ酸が、触媒として添加された。
【0072】
実施例2
ポリエステルプレポリマーの溶液の調製
純度>99%グリセロール1.0kg及びクエン酸(純度>99%)2.0kgが、撹拌され且つ加熱された反応器内に入れられた。また、ホウ酸(0.5m/m、>99%純度)9gが添加された。該混合物は、135℃になるまで約15分間加熱され、そしてその温度で15分間維持され、引き続き、水道水で含水量50%まで希釈され、更に冷やされた。
【0073】
実施例3
リサイクル紙に基づくセルロースベースの植木鉢の部分的含浸
0.5%のアルキルコハク酸無水物を含む、主に印刷されていない書籍用リサイクル紙から再生されたセルロース繊維パルプから作成された円筒形の成型植木鉢が、出発材料として使用された。該鉢は、高さ9cm、上部の直径11cm及び底部の直径7cmであった。平均重量は14.2グラムであった。
【0074】
上述された鉢は、実施例2に記載されているポリエステルプレポリマーの溶液中に室温で6秒間浸漬された。湿潤した該鉢は、室温で4時間乾燥され、そして内部温度190℃を有する換気オーブン内で20分間硬化された。最終製品の温度は180℃であった。硬化の後、該鉢は、平均16.7グラムと秤量され、ポリエステル含量は15重量%であった。該鉢の壁の横断面は、2つの樹脂含有層の間に樹脂を含まない層の存在を示した。
【0075】
下記の表は、出発鉢及びポリエステル樹脂が備えられた鉢についての、乾燥強度、室温で、水中に5分間浸した後の強度、及び室温でヒマワリ油中に10秒間浸した後の強度を示す。測定毎に4個の鉢が使用された。強度は、プレート圧縮試験と共に万能試験機(UTM)(Testrometic、M350-20CT)を使用し、該鉢が上下逆に置かれた場合(上プレートに対する底部及び底部圧縮プレートに対する上部)のピーク力を測定して決定された。
【0076】
【0077】
該表から、含浸された鉢が、該出発材料よりも高い強度を有することが分かる。
【0078】
更に、室温で水中に5分間浸した後の該含浸された鉢の強度は、該水中に浸す前の該含浸された鉢の強度と比較して、約30%低下し、許容可能な強度を保持した。それとは対照的に、含浸されていない鉢は、室温で水中に5分間浸すと崩壊し、許容可能な強度の保持を示さなかった。
【0079】
室温でヒマワリ油中に10秒間浸した後の該含浸された鉢の強度は、未変化のままであった。それとは対照的に、含浸されていない鉢は、室温でヒマワリ油中に10秒間浸すと、浸す前の該鉢と比較して30%の強度の低下を示した。
【0080】
該含浸された鉢は、該含浸されていない鉢よりも剛直であったが、まだいくらかの柔軟性を示した(該鉢の上部の端は、該鉢が破損する前は、互いの方向に2~3cm動かされることができる)。
【0081】
含浸の適用は、水及び油について大幅に改善された機械的(湿潤)強度を結果として生じた。その上、該鉢の色は、オフホワイト色から魅力的な淡褐色に変化した。
【0082】
実施例4
バージンペーパーに基づくセルロースベースの植木鉢の部分的含浸
出発材料として、鉢は、実施例3において使用された鉢と同じサイズ、形状及び重量で調製された。該鉢は、0.5重量%のアルキルコハク酸無水物で改変されたバージンセルロース繊維に基付いていた。該鉢は、高さ9cm、上部の直径11cm及び底部の直径7cmであった。該鉢は、平均14.5グラムと秤量された。
【0083】
該鉢は、実施例1に記載されているポリオール及びポリ酸の溶液中に室温で6秒間浸漬された。湿潤した該鉢は、室温で4時間乾燥され、そして内部温度190℃を有する換気オーブン内で20分間硬化され、最終製品の温度は180℃であった。硬化の後、該鉢は、平均17.7グラムと秤量され、これはポリエステル含量の18重量%に対応する。該鉢の壁の横断面は、2つの樹脂含有層の間に樹脂を含まない層の存在を示した。該鉢は、含浸されていない鉢よりもはるかに剛直であったが、まだいくらかの柔軟性を示した(該鉢の上部の端は、該鉢が破損する前は、互いの方向に2~3cm動かされることができる)。更に、該鉢は、魅力的な褐色の外表面及び非常に良好な触覚性質を有していた。後者はおそらく、バージンペーパーの鉢の触覚特性が、リサイクル紙に基づく鉢の触覚特性よりも良好であるという事実に起因している。
【0084】
該含浸された鉢の強度は、含浸前の該鉢の強度(平均734N)よりも約80%高く(平均1332N)、実施例3に記載された含浸された鉢の強度よりも約20%高かった。後者は、該鉢がわずかに高い樹脂含量を有し、該バージンセルロースの繊維が、実施例3において使用されたリサイクル紙のものよりも長いことに起因しうる。
【0085】
先の実施例に記載される条件下で水又は油中に浸した後、該含浸された鉢は、それらの強度の大部分を保持し、一方、含浸されていない鉢は保持しなかった。
【0086】
実施例5
バージンセルロースベースの植木鉢の含浸-比較
比較用鉢は、バージンセルロース繊維の植木鉢が樹脂で完全に含浸されるような条件下で、該植木鉢に実施例1の溶液を含浸することによって調製された。湿潤した該鉢は、室温で4時間乾燥され、そして内部温度190℃を有する換気オーブン内で20分間硬化された(最終製品の温度180℃)。硬化の後、該容器は、41グラムと秤量され、ポリエステル含量は約65重量%であった。
【0087】
該鉢の壁の横断面は、樹脂を含まない層を示さなかった。該鉢は、複合材料から完全に作成されていた。該鉢は、悪くない褐色、高強度、及びセラミックの外観を有している。しかしながら、該鉢は柔軟性がほとんどなく、そのことは、該鉢を充填し、空にするのに不利益でありうる。更に、該鉢は非常に脆弱であった。更に、相対的に大きい重量は、より高い材料費用及び輸送費用のせいで該鉢の魅力を減じる。
【0088】
実施例6
紙ベースの食品トレイの部分的含浸
0.6重量%アルキルコハク酸無水物を含み、20.1グラムの重量の印刷されていないリサイクル紙から再生されたセルロース繊維から誘導された高密度の薄肉の熱成形繊維から作成された、滑らかな四角形の小型食品トレイ(上部L*Wは21*14cmであり、底部は17*10cmであり、高さは5.5cmである)が、実施例2に記載される溶液に室温で6秒間浸漬された。浸漬した後、湿潤した該トレイは、室温で4時間乾燥され、内部温度190℃を有する換気オーブン内で20分間硬化された(最終製品の温度180℃)。硬化の後、該鉢は、22.2グラムと秤量され、推定ポリエステル含量は10%であった。該トレイの壁の横断面は、2つの樹脂含有層の間に樹脂を含まない層の存在を示した。該トレイは、非含浸トレイよりも剛直であったが、まだいくらかの柔軟性を示した。上部層は、魅力的な光沢のある淡褐色の外観を有していた。
【0089】
含浸トレイの耐油性は、換気オーブン内で、50℃で2時間試験された。10滴の量のヒマワリ油が、それぞれ含浸トレイ及び非含浸トレイの底部に入れられた。該トレイ内に又はそれを通して油は浸透しなかったので、該含浸トレイは、良好な耐油性を示した。該トレイの表面上に完全に留まった該油及び該トレイの色は、未変化のままであった。該非含浸トレイ上では、該油は紙にすぐに浸透し、該油が適用された該トレイの上部及び底部に、暗色の「湿潤色素」が現れた。
【0090】
実施例7
中和された酸
実施例2に示されているポリエステル溶液100グラムに、AMPの商標名でAngus Chemieから商業的に入手可能な2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール1.0gを添加した。
【0091】
実施例3に記載されたものに類似の円筒形の小型植木鉢が、実施例3に記載された方法と同じ方法で処理され、そして材料の類似の特徴が得られた。この場合、該溶液へのAMPの添加は、該プレポリマー溶液を安定化させた。該鉢を硬化することに応じて、該塩基は蒸発し、そして該ポリエステルは、その最終的な重合度まで更に硬化する。
【0092】
実施例8
二酸及びジオールに基づくポリエステルとの比較
0.5%のアルキルコハク酸無水物を含む、主に印刷されていない書籍用リサイクル紙から再生されたセルロース繊維パルプから作成された円筒形の成型植木鉢が、出発材料として使用された。該鉢は、高さ8.4cm、上部の直径11cm及び底部の直径7cmであった。平均重量は13.7グラムであった。
【0093】
下記の個々の組成を有する2つの浸漬用溶液が調製された。
【0094】
【0095】
【0096】
前述された鉢が、溶液A又は溶液Bに室温で10秒間浸漬された。該溶液は45℃の温度であった。湿潤した該鉢は、室温で1時間乾燥され、そして内部温度190℃を有する換気オーブン内で20分間硬化された。
【0097】
浸漬、そして乾燥後の上記の鉢の重量は、下記に記載される通りであった。値は、6回の測定の平均である。括弧内の数字は、乾燥出発鉢の重量と比較した百分率の増大である。
【0098】
【0099】
水の取込みが、該鉢を水に10分間浸した後に決定された。値は、3回の測定の平均である。括弧内の数字は、乾燥出発鉢の重量と比較した百分率の増大である。
【0100】
【0101】
該湿潤植木鉢及び乾燥植木鉢の両方について、圧縮強度が実施例3に記載された通りに決定された。該乾燥鉢については、データは4回の測定の平均である。湿潤した該鉢については、データは2回の測定の平均であった。結果は、以下の通りであった。
【0102】
【0103】
上記の比較から、本発明に従う溶液Bを含浸した鉢は、乾燥状態及び湿潤状態の両方で、比較用の溶液Aを含浸した鉢よりも高い圧縮強度を有することが分かる。加えて、溶液Bを含浸した該鉢は、溶液Aを含浸した該鉢よりも低い水の取込みを有する。溶液Bを含浸した該鉢は、溶液Aを含浸した該鉢よりもより低い樹脂含量を有し、本発明に従うポリエステルで得られた効果を、更により驚くべきものにすることに留意されるべきである。