(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】窓ガラスの防曇構造
(51)【国際特許分類】
B60S 1/02 20060101AFI20240917BHJP
B60J 1/20 20060101ALI20240917BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240917BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20240917BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240917BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240917BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240917BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240917BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240917BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B60S1/02 400Z
B60J1/20 C
B32B17/10
B32B27/06
B32B7/022
B32B7/027
B32B7/12
C09J7/30
C09J201/00
C03C27/12 Z
(21)【出願番号】P 2021542881
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2020031807
(87)【国際公開番号】W WO2021039707
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2019158890
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523220503
【氏名又は名称】セントラル硝子プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】久保田 将
(72)【発明者】
【氏名】高信 尚史
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】金田 武幸
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/155066(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/123916(WO,A1)
【文献】特開2010-147860(JP,A)
【文献】特表2012-508906(JP,A)
【文献】特開2013-224978(JP,A)
【文献】特開2019-139110(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108335781(CN,A)
【文献】粘弾性評価,粘着物性評価技術,日本,日東電工株式会社,2017年11月18日,https://web.archive.org/web/20171118223703/https://www.nitto.com/jp/ja/rd/base/analyze/adhesion/
【文献】樹脂ウインドウのデフォッガー(曇り止め)に最適な透明フィルムヒータ,vol.8 透明導電性のAgスタックフィルムが実現する多彩なアプリケーション,日本,TDK株式会社,2019年08月02日,https://www.jp.tdk.com/tech-mag/front_line/008
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
B32B 17/10
B32B 27/06
B32B 7/022
B32B 7/027
B32B 7/12
C09J 7/30
C09J 201/00
C03C 27/12
B60S 1/02
B32B 27/18
C09J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照
射と受光を行
う、又は、光の受光を行うことで室外からの情報を取得する情報取得装置を室内に配置可能な移動体における、窓ガラスの防曇構造であって
、
前記情報取得装置から照射された
光と前記情報取得装置が受光する光が通過する
、又は、前記情報取得装置が受光する光が通過する、情報取得領域を有する窓ガラスと、
前記窓ガラスの前記情報取得領域に接着された、樹脂フィルム及び曇り防止手段を有する曇り防止シートと、
前記曇り防止シートの前記樹脂フィルムと前記窓ガラスを接着する、透明樹脂接着層と、を備え、
前記透明樹脂接着層を構成する樹脂のTgが-20~-50℃であり、せん断貯蔵弾性率が0.5×10
5Pa~2.0×10
5Paであることを特徴とする窓ガラスの防曇構造。
【請求項2】
前記窓ガラスは、中間膜及び前記中間膜を介して対向して配置された、前記移動体の室外側に配置される第一ガラス板と、前記移動体の室内側に配置される第二ガラス板とを備え、
前記第一ガラス板は、前記室外側に露出される第一主面と、前記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
前記第二ガラス板は、前記室内側に露出される第四主面と、前記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
前記防曇構造は、前記第二ガラス板の前記第四主面に、前記曇り防止シートが前記透明樹脂接着層を介して接着されている構造である請求項1に記載の防曇構造。
【請求項3】
前記情報取得領域の周囲に黒セラミック層が設けられており、前記透明樹脂接着層は前記情報取得領域と前記黒セラミック層の境界部分を跨いで設けられており、前記透明樹脂接着層の厚さが100μm以上である請求項1又は2に記載の防曇構造。
【請求項4】
前記情報取得領域と前記黒セラミック層の境界部分において、前記透明樹脂接着層、前記窓ガラス及び前記黒セラミック層の間には空気が存在しない請求項3に記載の防曇構造。
【請求項5】
前記樹脂フィルムのTgが50~150℃であり、引張弾性率が2.0×10
9Pa~5.0×10
9Paである請求項1~4のいずれかに記載の防曇構造。
【請求項6】
前記樹脂フィルムの厚さが50~150μmである請求項5に記載の防曇構造。
【請求項7】
前記曇り防止シートが、前記樹脂フィルムに抵抗金属層が設けられた構造であり、前記抵抗金属層への通電により発熱して前記窓ガラスの曇りを防止する請求項1~6のいずれかに記載の防曇構造。
【請求項8】
前記曇り防止シートが、PETフィルムの全面に銀層が設けられた構造である請求項7に記載の防曇構造。
【請求項9】
前記曇り防止シートが、前記樹脂フィルムに吸水層が設けられた構造であり、前記吸水層が曇りの原因となる水蒸気を吸収して前記窓ガラスの曇りを防止する請求項1~6のいずれかに記載の防曇構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラスの防曇構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転技術に関する研究開発が進んでいるが、自動運転においては自動車の車内に配置したカメラにより撮影した映像に基づき車両周囲の状況を把握することが重要である。
自動車の車内に配置したカメラは、自動車の窓ガラス越しに映像を撮影することとなるが、自動車の窓ガラスに曇りが発生すると周囲の状況把握に必要な映像の撮影に支障が生じるため、カメラ前における窓ガラスの曇りを防止することが必要となる。
【0003】
これまで、カメラ前の窓ガラスの曇りを防止するための技術としては、特許文献1に記載の技術が知られている。
特許文献1では、カメラ本体を支持するブラケットと窓ガラスを接合する接合部に、窓ガラスを加熱する加熱手段を設けることが開示されている。加熱手段は、カメラ本体の撮像範囲に対応する開口部の周囲に設けられる。また、加熱手段としては通電加熱する熱線が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、カメラ本体の撮像範囲に対応する開口部の周囲に加熱手段が設けられることになる。この場合、曇り発生に応じて加熱手段に通電してから、開口部全体に加熱手段からの熱が伝わるのに時間を要するので、曇り発生に対する応答性が不充分となるという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明者らは、曇り発生に対する応答性を高めるために、カメラ本体の撮像範囲に対応する開口部(以下、本明細書では情報取得領域ともいう)の周囲に加熱手段を設けるのではなく、情報取得領域の全体に曇り防止のための構造を設けることについて検討した。
【0007】
本発明者らは上記検討の過程で、曇り防止手段を有する曇り防止シートを準備し、これを通常用いられている窓ガラスの情報取得領域に貼り付けることで、窓ガラスの曇り防止をすることとした。
【0008】
まず、曇り防止シートとして、樹脂フィルムに抵抗金属層が設けられたシートを準備した。この曇り防止シートは抵抗金属層に通電することによって抵抗金属層全体が速やかに面発熱するので、情報取得領域に貼り付けて通電することによって、曇り発生に対する応答性が充分に高くなる。
【0009】
この曇り防止シートの貼り付けに際しては、曇り防止シートの貼り付けにより窓ガラスの透明性が損なわれないことが必要となる。
窓ガラスの透明性が確保できるように曇り防止シートを貼り付けるための接着剤として、本発明者らは、合わせガラス用中間膜に使用されるCOP(シクロオレフィンポリマー)を使用することを検討した。
検討を重ねた結果、COPの厚さを合わせガラス用中間膜に使用する場合の通常の厚さよりもだいぶ薄くすることで一見して透明性が損なわれない貼り付けを行うことができ、窓ガラスの防曇構造を得ることができた。
【0010】
しかし、このようにして得た窓ガラスの防曇構造は、正面から観察した場合は透明に見えるものの、窓ガラスの角度を視線に対して斜めにしていくと筋が見えるものとなっていた。
このような構造であると、ウインドシールドが搭乗者の視線に対して斜めに配置される車種(典型的にはスポーツカー)において、窓ガラスの透明性が不充分となることから、さらなる改善の必要があった。
【0011】
本発明は、上記を踏まえて、曇り発生に対する応答性が高く、かつ、情報取得領域における透明性に優れた窓ガラスの防曇構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、COPを使用した場合に窓ガラスの透明性が不充分となる理由についてさらに検討した。
COPは合わせガラス用中間膜として使用される接着剤である。合わせガラスの作製時にはオートクレーブを行うことが通常であり、COPはオートクレーブの加熱により接着力を発揮する仕様となっている。
【0013】
本発明者らがさらに検討したところ、COPにより窓ガラスと貼り付けられる曇り防止シートを構成する樹脂フィルム(例えばPETフィルム)はCOPの接着力を発揮させるために加熱するとしわが生じるということが分かった。
このことから、本発明者らは加熱を要さずに曇り防止シートを接着することが必要であると考え、COP以外の接着剤について鋭意検討したところ、特定のTgとせん断貯蔵弾性率を有する樹脂を含む透明樹脂接着層を使用して曇り防止シートを室温で接着することによって、情報取得領域における透明性に優れた窓ガラスの防曇構造を得ることができることを見出し、本発明に想到した。
【0014】
すなわち、本発明の窓ガラスの防曇構造は、光の照射及び/又は受光を行うことで室外からの情報を取得する情報取得装置を室内に配置可能な移動体における、窓ガラスの防曇構造であって、
上記防曇構造は、
上記情報取得装置から照射された光及び/又は上記情報取得装置が受光する光が通過する情報取得領域を有する窓ガラスと、
上記窓ガラスの上記情報取得領域に接着された、樹脂フィルム及び曇り防止手段を有する曇り防止シートと、
上記曇り防止シートの上記樹脂フィルムと上記窓ガラスを接着する、透明樹脂接着層と、を備え、
上記透明樹脂接着層を構成する樹脂のTgが-20~-50℃であり、せん断貯蔵弾性率が0.5×105Pa~2.0×105Paであることを特徴とする。
【0015】
本発明の窓ガラスの防曇構造では、Tgが-20~-50℃であり、せん断貯蔵弾性率が0.5×105Pa~2.0×105Paである樹脂を含む透明樹脂接着層によって窓ガラスと曇り防止シートを接着する。
この透明樹脂接着層は室温による接着を行うことが可能であり、室温による接着であれば曇り防止シートを構成する樹脂フィルムにしわが生じることを防止することができるので、情報取得領域における透明性に優れた窓ガラスの防曇構造を提供することができる。
【0016】
本発明の防曇構造では、上記窓ガラスは、中間膜及び上記中間膜を介して対向して配置された、上記移動体の室外側に配置される第一ガラス板と、上記移動体の室内側に配置される第二ガラス板とを備え、
上記第一ガラス板は、上記室外側に露出される第一主面と、上記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
上記第二ガラス板は、上記室内側に露出される第四主面と、上記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
上記防曇構造は、上記第二ガラス板の上記第四主面に、上記曇り防止シートが上記透明樹脂接着層を介して接着されている構造であることが好ましい。
【0017】
窓ガラスに曇りが生じる面は典型的には第二ガラス板の第四主面である。そのため、第二ガラス板の第四主面に防曇構造を設けることにより曇り発生に対する応答性を高めることができる。
【0018】
本発明の防曇構造では、上記情報取得領域の周囲に黒セラミック層が設けられており、上記透明樹脂接着層は上記情報取得領域と上記黒セラミック層の境界部分を跨いで設けられており、上記透明樹脂接着層の厚さが100μm以上であることが好ましい。
【0019】
情報取得領域の周囲に黒セラミック層が設けられていると、黒セラミック層の厚み分だけ段差が生じる。黒セラミック層で囲まれた情報取得領域の全体に曇り防止シートを設ける場合、透明樹脂接着層を情報取得領域と黒セラミック層の境界部分を跨いで設ける必要がある。この際、透明樹脂接着層の厚さが100μm以上であると黒セラミック層の厚みによる段差の影響が緩和されて曇り防止シートの情報取得領域への密着性が良好になる。
【0020】
本発明の防曇構造では、上記情報取得領域と上記黒セラミック層の境界部分において、上記透明樹脂接着層、上記窓ガラス及び上記黒セラミック層の間には空気が存在しないことが好ましい。
【0021】
本発明の防曇構造では、上記樹脂フィルムのTgが50~150℃であり、引張弾性率が2.0×109Pa~5.0×109Paであることが好ましい。
【0022】
樹脂フィルムのTgが50~150℃であると、樹脂フィルムの耐熱性はそこまで高くないが、そのような耐熱性が低めの樹脂フィルムを使用した場合でも、本発明の防曇構造に含まれる特定の透明樹脂接着層を使用することにより、曇り防止シートをそれほど加熱せずに(場合により全く加熱をせずに)常温で曇り防止シートを接着することができるので、樹脂フィルムにしわが生じることが防止される。
また、樹脂フィルムの引張弾性率が2.0×109Pa~5.0×109Paであると樹脂フィルムが硬くなりすぎることが無く、曲面であるガラス表面の形状に追従しやすくなる。
【0023】
本発明の防曇構造では、樹脂フィルムの厚さが50~150μmであることが好ましい。
樹脂フィルムの厚さが上記範囲であると、上記の引張弾性率を有することと合わせて、樹脂フィルムの剛性が低くなるため、樹脂フィルムにしわが入りにくくなる。
【0024】
本発明の防曇構造では、上記曇り防止シートが、上記樹脂フィルムに抵抗金属層が設けられた構造であり、上記抵抗金属層への通電により発熱して上記窓ガラスの曇りを防止することが好ましい。
また、上記曇り防止シートが、PETフィルムの全面に銀層が設けられた構造であることが好ましい。
このような曇り防止シートを使用すると、情報取得領域における窓ガラスの曇りを発熱により防止することができる。
【0025】
本発明の防曇構造では、上記曇り防止シートが、上記樹脂フィルムに吸水層が設けられた構造であり、上記吸水層が曇りの原因となる水蒸気を吸収して上記窓ガラスの曇りを防止することが好ましい。
このような曇り防止シートを使用すると、情報取得領域における窓ガラスの曇りを水蒸気を吸収することにより防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、曇り発生に対する応答性が高く、かつ、情報取得領域における透明性に優れた窓ガラスの防曇構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、情報取得装置を室内に配置可能な移動体における、窓ガラスの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す窓ガラスの情報取得領域に曇り防止シートを設けてなる、本発明の窓ガラスの防曇構造の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す窓ガラスの防曇構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の窓ガラスの防曇構造について図面を用いて説明する。
図1は、情報取得装置を室内に配置可能な移動体における、窓ガラスの一例を示す模式図である。
図2は、
図1に示す窓ガラスの情報取得領域に曇り防止シートを設けてなる、本発明の窓ガラスの防曇構造の一例を示す模式図である。
【0029】
図1には、窓ガラス10を示しており、窓ガラス10の周囲には黒セラミック層20が設けられている。
図1は、窓ガラス10を室外側から見た図である。
窓ガラス10の上部中央には黒セラミック層20が広く設けられていて、広く設けられた黒セラミック層20の中央は黒セラミック層20が設けられていない透明な領域となっている。この透明な領域の紙面奥側(室内側)には情報取得装置40が設けられている。
情報取得装置40は、光の照射及び/又は受光を行うことで室外からの情報を取得する装置であり、情報取得装置40から照射された光及び/又は情報取得装置40が受光する光が通過する領域が情報取得領域30である。
【0030】
図1において、情報取得領域30は黒セラミック層20に囲まれた領域とほぼ同じ領域となるが、情報取得領域30の周囲は黒セラミック層20で囲まれていなくてもよい。
本発明の窓ガラスの防曇構造は黒セラミック層を必須の構成要素とはしておらず、情報取得領域は、情報取得装置から照射された光及び/又は情報取得装置が受光する光が通過する領域として定められる。
すなわち、情報取得領域は、黒セラミック層に囲まれた領域と一致する必要はない。
【0031】
図2には、窓ガラス10の情報取得領域30に透明樹脂接着層60を介して曇り防止シート50を設けてなる、窓ガラスの防曇構造1を示している。
図2に示す防曇構造1では、曇り防止シート50は情報取得領域30の全体に接着されるとともに、情報取得領域30と黒セラミック層20の境界部分を跨いで設けられている。
透明樹脂接着層60は曇り防止シート50と窓ガラス10を接着する。
【0032】
図3は、
図2に示す窓ガラスの防曇構造の断面図である。
図3には、窓ガラスの防曇構造1として、窓ガラス10の情報取得領域30の周辺の領域のみを示している。
図3において、移動体の室内2と室外3は窓ガラス10によって隔てられている。
図3に示す移動体の例は乗用車であり、乗用車は室内2にルームミラー70を備えており、乗員から見てルームミラー70に隠れる位置に情報取得装置40としてのカメラが設けられている。
カメラは窓ガラス10を通過した光の受光を行うことにより室外3からの映像情報を取得する装置である。
図3には、カメラの撮像範囲、すなわち窓ガラスを通過した光の受光を行う範囲を2点鎖線で示している。この2点鎖線と窓ガラスの室内側の交点、すなわち両矢印Lで示す範囲が情報取得領域30となる。
この場合、情報取得領域は黒セラミック層20に囲まれた領域とは一致しておらず、黒セラミック層20に囲まれた領域より上側が狭い領域である。
【0033】
情報取得領域30には、曇り防止シート50が透明樹脂接着層60を介して接着されている。
曇り防止シート50は、樹脂フィルム51及び曇り防止手段としての抵抗金属層52からなり、抵抗金属層52が透明樹脂接着層60により窓ガラス10に接着されている。
曇り防止シート50は、情報取得領域30の全体に接着されるとともに、情報取得領域30と黒セラミック層20の境界部分を跨いで設けられている。
また、情報取得領域30と黒セラミック層20の境界部分において、透明樹脂接着層60、窓ガラス10及び黒セラミック層20の間(
図3で点Pで示す位置)には空気が存在していない。これは、透明樹脂接着層60が窓ガラス10及び黒セラミック層20の段差を埋めて接着されていることを意味している。
また、
図3には、曇り防止シート50の抵抗金属層52が透明樹脂接着層60により窓ガラス10に接着されている形態を示したが、抵抗金属層52と樹脂フィルム51の位置関係は逆でもよい。すなわち、曇り防止シート50の樹脂フィルム51が透明樹脂接着層60により窓ガラス10に接着されていてもよい。
【0034】
以下、上記のような構成の窓ガラスの防曇構造を構成する各要素について詳細に説明する。
本発明の窓ガラスの防曇構造を備える移動体としては、車(乗用車、トラック、バス等)、電車、汽車、船、飛行機等が挙げられる。これらの中では乗用車であることが好ましい。
また、窓ガラスの種類としては乗用車のウインドシールド(フロントガラス)、バックウインドウ(リヤガラス)等が挙げられる。特に、ウインドシールドが搭乗者の視線に対して斜め(鋭角気味)に配置される車種(典型的にはスポーツカー)において本発明の防曇構造を適用することが好ましい。
【0035】
情報取得装置の配置位置は、
図3に示すようなルームミラーの裏側であってもよいが、この位置に限定されるものではない。
情報取得装置としては、ミリ波レーダー、カメラ、LiDAR等が挙げられ、光を受光することにより室外からの情報を取得する装置(カメラ等)であってもよく、光を照射し、その反射光を受光することにより室外からの情報を取得する装置(ミリ波レーダー、LiDAR等)であってもよい。
情報取得装置が照射及び/又は受光する光としては、可視光線、赤外線、紫外線、電波(ミリ波、マイクロ波等)等が挙げられる。
なお、本明細書における光には電波も含まれる。
本発明の防曇構造は曇り発生の影響を軽減するものであり、曇りの影響を受けやすい可視光線の受光を確実に行うことに特に適している。そのため、情報取得装置が可視光線を受光して室外からの情報を取得するカメラであることが好ましい。
【0036】
窓ガラスは、合わせガラスであることが好ましい。
具体的には、窓ガラスが、中間膜及び中間膜を介して対向して配置された、移動体の室外側に配置される第一ガラス板と、移動体の室内側に配置される第二ガラス板とを備え、第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、第一主面の反対側の第二主面とを備え、第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、第四主面の反対側の第三主面とを備える構造であることが好ましい。
【0037】
図3には、窓ガラス10が合わせガラスであることを示している。
具体的には、窓ガラス10は、中間膜14及び中間膜14を介して対向して配置された、移動体の室外3側に配置される第一ガラス板11と、移動体の室内2側に配置される第二ガラス板12とを備えている。
第一ガラス板11は、室外側に露出される第一主面111と、第一主面の反対側の第二主面112とを備え、第二ガラス板12は、室内側に露出される第四主面124と、第四主面124の反対側の第三主面123とを備えている。
【0038】
合わせガラスを構成する第一ガラス板、第二ガラス板及び中間膜の材料、厚さ等は、自動車用合わせガラスとして通常される構成のものを使用することが好ましく、特に限定されるものではない。
【0039】
窓ガラスには、情報取得装置から照射された光及び/又は情報取得装置が受光する光が通過する情報取得領域が設けられている。情報取得領域は、光が透過できるように黒セラミック層が設けられていない領域であり、また、可視光透過率の高い透明なガラスからなる領域である。
また、情報取得領域は、通常は情報取得装置の正面に位置し、室内側のガラス板の領域として定められる。窓ガラスが
図3に示すような合わせガラスである場合、第二ガラス板の第四主面において情報取得領域が定められる。
【0040】
黒セラミック層は、情報取得領域の周囲に設けられることが好ましい。黒セラミック層は、黒セラミック層印刷用インクを窓ガラスに印刷し焼成することにより形成される。黒セラミック層は、窓ガラスの周囲に形成された黒色または濃色の不透明層であり、窓ガラスをその周囲で保持しているウレタンシーラントの紫外線による劣化を防止する。また、通電用電極(バスバー)などの導電体が黒セラミック層に重ねて形成されることにより、窓ガラスの周辺に取り付けられているバスバーや給電点、アンテナ線の端子などが車外から透視できなくなり、外観意匠の完成度が高まるといった作用効果を備える。
【0041】
黒セラミック層は、窓ガラスの室内側の面に設けられることが好ましい。窓ガラスが
図3に示すような合わせガラスである場合、黒セラミック層は第二ガラス板の第四主面に設けられることが好ましい。
また、黒セラミック層の厚さは50μm以下であることが好ましい。黒セラミック層の厚さがこの範囲であると、透明樹脂接着層の厚さを黒セラミック層の厚さより大きくすることによって、透明樹脂接着層により黒セラミック層の厚み分の段差の影響を緩和して曇り防止シートを貼り付けることができる。
【0042】
また、黒セラミック層は、第一ガラス板の第二主面に設けられていてもよい。黒セラミック層を第一ガラス板の第二主面に設ける場合、第二主面に設ける黒セラミック層の幅を、第四主面に設けられる黒セラミック層の幅より大きくすることが好ましい。
ここでいう黒セラミック層の幅とは、ガラス板の外周を起点とした幅である。
第二主面に設ける黒セラミック層の幅を大きくすることによって、第四主面において透明樹脂接着層、窓ガラス及び黒セラミック層の間に気泡(空気)が存在したり、透明樹脂接着層と黒セラミック層の境界部分において歪みが生じていたとしても、車外から当該気泡や歪みが見えないようにすることができる。
ただし、第二主面に設ける黒セラミック層の幅を大きくすると、情報取得領域が狭くなるので、黒セラミック層の幅を必要以上に大きくしないことが好ましい。
【0043】
曇り防止シートは、窓ガラスの情報取得領域に透明樹脂接着層を介して接着されたシートであり、移動体の室内の曇りを防止する機能を有する。
曇り防止シートは樹脂フィルムと曇り防止手段を備える。
【0044】
曇り防止シートを構成する樹脂フィルムとしては、そのTgが50~150℃であり、引張弾性率が2.0×109Pa~5.0×109Paである樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムのTgは熱流束DSCによってJIS K 7121:2012に準拠して求めた値を意味する。
また、樹脂フィルムの引張弾性率はJIS K 7127:1999に従って、20℃において求めた値である。
樹脂フィルムの例としては、PETフィルム、PENフィルム、PCフィルム等が挙げられる。
また、樹脂フィルムの厚さが50~150μmであることが好ましい。
【0045】
本発明の防曇構造で使用する曇り防止シートは加熱無しで窓ガラスに貼り付けることができるので、耐熱性の低い樹脂フィルムを使うことができる。また、剛性が低い(柔らかく、変形が大きい)樹脂フィルムを使うことができる。
Tgが上記範囲である樹脂フィルムには耐熱性が低い樹脂フィルムが含まれている。
また、樹脂フィルムの引張弾性率と厚さが上記範囲であると剛性が低い樹脂フィルムとなる。剛性が低い樹脂フィルムを使用すると黒セラミック層の厚み分の段差に追従させて曇り防止シートの貼り付けを行うことができるため好ましい。
【0046】
曇り防止手段としては抵抗金属層が挙げられる。この場合、曇り防止シートは樹脂フィルムに抵抗金属層が設けられた構造であり、抵抗金属層が通電により発熱して窓ガラスの曇りを防止する。
抵抗金属層としては、銀(Ag)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)及び金属ナノワイヤからなる群からなる少なくとも1種の導電材料を含む層が挙げられる。
金属ナノワイヤとしては銀又は銀以外の貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)を含むものが好ましい。
具体的には、曇り防止シートがPETフィルムの全面に銀層(Ag層)が設けられた構造であることが好ましい。この銀層は樹脂フィルム上にスパッタリングにより設けられたものであることが好ましい。
また、抵抗金属層の表面、及び/又は、抵抗金属層と樹脂フィルムの間に、抵抗金属層及び樹脂フィルムとは別の材料からなる保護膜が設けられていてもよい。
曇り防止シートが樹脂フィルムに抵抗金属層が設けられた構造であると、抵抗金属層が速やかに面発熱して窓ガラスの表面がすぐに温まるために曇り防止の応答性が高い。また、防曇機能の持続性が高い。
抵抗金属層の厚さは、抵抗金属層の導電性と透明性の関係から、50~100nmであることが好ましい。
【0047】
また、他の曇り防止手段としては吸水層が挙げられる。この場合、曇り防止シートは樹脂フィルムに吸水層が設けられた構造であり、吸水層が曇りの原因となる水蒸気を吸収して窓ガラスの曇りを防止する。
吸水層は吸水性樹脂からなることが好ましい。吸水性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂及びポリビニルアルコール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を使用することができる。
【0048】
曇り防止シートは、窓ガラスの移動体の室内側の面に接着されることが好ましい。
窓ガラスが
図3に示すような合わせガラスである場合、第二ガラス板の第四主面に、曇り防止シートが透明樹脂接着層を介して接着されていることが好ましい。
曇り防止手段が抵抗金属層の場合は、曇り防止シートを第一ガラス板と第二ガラス板の間の中間膜に設けることも可能であり、中間膜において抵抗金属層を発熱させて窓ガラスの曇りを取ることができる。しかし、この場合は中間膜から第二ガラス板の第四主面までの熱伝導に時間を要するので曇り防止の応答性が低下する。従って、曇り防止の応答性の観点からは第二ガラス板の第四主面に、抵抗金属層を備える曇り防止シートを設けることが好ましい。
また、曇り防止手段が吸水層の場合は、移動体の室内側の水蒸気を吸収する必要があるので、窓ガラスの移動体の室内側の面(合わせガラスの場合は第二ガラス板の第四主面)に設ける。
【0049】
透明樹脂接着層は、窓ガラスの情報取得領域において曇り防止シートの抵抗金属層又は樹脂フィルムと窓ガラスを接着する。
透明樹脂接着層は樹脂を含んでおり、透明樹脂接着層を構成する樹脂のTgが-20~-50℃であり、せん断貯蔵弾性率が0.5×105Pa~2.0×105Paである。
透明樹脂接着層を構成する樹脂のTgは熱流束DSCによってJIS K 7121:2012に準拠して求めた値を意味する。
また、透明樹脂接着層を構成する樹脂のせん断貯蔵弾性率はJIS K 7244-6:1999に従って、20℃において求めた値である。
透明樹脂接着層としては、OCA(Optical Clear Adhesive)フィルムとして市販されている光学粘着シートであって、上記のTg及びせん断貯蔵弾性率の規定を満たす樹脂を含むものを使用することができる。
【0050】
透明樹脂接着層を構成する樹脂としては、例えば、樹脂としてアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を使用することができる。これらの中ではアクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系単量体からなる(メタ)アクリル系共重合体を含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル系共重合体を架橋可能な官能基(架橋性基)を有することが好ましい。架橋性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基などが挙げられる。
(メタ)アクリル系単量体としては、アルキル部分の炭素数が1~10であるアルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等)が好ましい。
【0051】
また、透明樹脂接着層を構成する樹脂は添加剤(架橋剤、安定化剤、難燃剤、粘着付与剤)等を含んでいてもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を使用することができる。
【0052】
透明樹脂接着層の厚さは特に限定されないが5~250μmであることが好ましい。また、透明樹脂接着層が情報取得領域と黒セラミック層の境界部分を跨いで設けられるときには、透明樹脂接着層の厚さが黒セラミック層の厚さよりも大きいことが好ましい。また、透明樹脂接着層の厚さが100μm以上であることが好ましい。
透明樹脂接着層の厚さが黒セラミック層の厚さよりも大きいと、黒セラミック層の厚みによる段差の影響が緩和されて曇り防止シートの情報取得領域への密着性が良好になる。とくに、透明樹脂接着層の厚さが100μm以上であると黒セラミック層の厚みによる段差の影響がより緩和されて曇り防止シートの情報取得領域への密着性が良好になる。
また、情報取得領域と前記黒セラミック層の境界部分において、透明樹脂接着層、窓ガラス及び黒セラミック層の間に空気が存在しないことが好ましい。透明樹脂接着層が窓ガラス及び黒セラミック層の段差を埋めて接着されていると、情報取得領域における透明性がより向上する。
なお、透明樹脂接着層の厚さは、情報取得領域となる部分での厚さとして定める。透明樹脂接着層が黒セラミック層と重なる部分での厚さは透明樹脂接着層の厚さとはしない。
【0053】
次に、本発明の窓ガラスの防曇構造を製造する方法について説明する。
窓ガラスを準備し、情報取得装置を配置する予定の位置から、窓ガラスにおける情報取得領域を区画する。
窓ガラスの周囲、及び、情報取得領域の周囲に、必要に応じて黒セラミック層を形成しておく。
【0054】
樹脂フィルム及び曇り防止手段を有する曇り防止シートを準備し、さらに、透明樹脂接着層を含む接着フィルムを準備する。当該接着フィルムは、離型フィルムで透明樹脂接着層が挟まれたものであることが好ましい。
そして、上記接着フィルムの一方の離型フィルムを剥がして透明樹脂接着層を露出させ、曇り防止シートの曇り防止手段側又は樹脂フィルム側に貼り付けて、曇り防止シートと透明樹脂接着層が重なった複合フィルムを作製する。
【0055】
続いて、上記複合フィルムを窓ガラスの情報取得領域を含む大きさに切断し、透明樹脂接着層の表面に残っていた離型フィルムを剥がして透明樹脂接着層を露出させ、窓ガラスの情報取得領域を覆うように上記複合フィルムを窓ガラスに貼り付ける。
当該貼り付けにはラミネートローラーを使用することが好ましい。
上記工程により、窓ガラスの情報取得領域に曇り防止シートが透明樹脂接着層を介して接着された、本発明の窓ガラスの防曇構造を得ることができる。
【0056】
上記工程における曇り防止シートの接着は、室温で行うことができる。
接着剤としてCOPを使用する場合と異なり、接着の際に加熱を必要としないので曇り防止シートを構成する樹脂フィルムにしわが生じることがない。
そのため、情報取得領域における透明性に優れた窓ガラスの防曇構造を得ることができる。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
窓ガラスとして、
図1に示すようなパターンの黒セラミック層を有する窓ガラスを準備した。当該窓ガラスは合わせガラスであり、室内側に配置されるための第二ガラス板の第四主面に黒セラミック層が設けられている。黒セラミック層の厚さは5~40μmである。
【0058】
樹脂フィルム及び曇り防止手段を有する曇り防止シートとして、Agスタックフィルム(TDK株式会社製)を準備した。
樹脂フィルムはPETフィルム(厚さ:125μm、Tg:70℃、引張弾性率:4.0×109Pa)であり、曇り防止手段としてスパッタリングにより形成された銀層(厚さ70nm)が設けられている。
樹脂フィルムの引張弾性率はJIS K 7127:1999に従って20℃において求めた値である。
【0059】
また、透明樹脂接着層を有する接着フィルムとして日東電工株式会社製のOCAフィルムを準備した。この接着フィルムは、透明樹脂接着層の両面に離型フィルムが設けられてなるものである。
当該透明樹脂接着層は、厚さ:150μm、樹脂のTg:-35℃、樹脂のせん断貯蔵弾性率:1.4×105Paである。
樹脂のTgは熱流束DSCによってJIS K 7121:2012に準拠して求めた値である。
樹脂のせん断貯蔵弾性率はJIS K 7244-6:1999に従って、20℃において求めた値である。
【0060】
OCAフィルムの一方の離型フィルムを剥がして透明樹脂接着層を露出させ、Agスタックフィルムの銀層側に貼り付けて複合フィルムを得た。
この複合フィルムを、
図1に示す窓ガラスの黒セラミック層20に囲まれた情報取得領域30を覆い、情報取得領域30と黒セラミック層20の境界部分を跨ぐことのできる大きさに切断した。
続いて、複合フィルムにおけるOCAフィルムのもう一方の離型フィルムを剥がして透明樹脂接着層を露出させ、
図1に示す黒セラミック層20に囲まれた情報取得領域30を覆い、情報取得領域30と黒セラミック層20の境界部分を跨ぐように透明樹脂接着層を窓ガラスに貼り付けた。
当該貼り付けは室温(20℃)で、ラミネートローラーを用いて行った。
【0061】
(比較例1)
実施例1においてOCAフィルムに代えてCOPフィルム(厚さ:50μm、樹脂のTg:140℃、樹脂のせん断貯蔵弾性率:3.0×108Pa)を準備した。
窓ガラス、COPフィルムにAgスタックフィルムの銀層側を重ねて加圧しながら150℃で加熱して窓ガラスとAgスタックフィルムの接着を行った。
【0062】
(比較例2)
実施例1においてOCAフィルムの代わりの接着剤としてアクリル系の液体粘着剤を準備した。当該液体粘着剤をAgスタックフィルムの銀層側に塗布して、液体粘着剤の塗布面を窓ガラスと重ねてラミネートローラーを用いて接着した。
使用したアクリル系の液体粘着剤は樹脂のTg:-40℃、樹脂のせん断貯蔵弾性率:3.0×103Paである。
【0063】
(外観の観察)
実施例1と比較例1、2でそれぞれ窓ガラスに接着した、曇り防止シートとしてのAgスタックフィルムの透明性を目視観察した。
比較例1においては、正面から観察した場合は透明に見えるものの、窓ガラスの角度を視線に対して斜めにしていくと筋が見えるものとなっていた。
比較例2においては、不均一な膜厚に起因する凹凸により、特に斜めから見た時の外観が悪化した。
実施例1においては、いずれの角度から見ても筋が見えることが無く、透明な接着状態が得られていた。
また、実施例1においては情報取得領域(窓ガラスの第四主面)と黒セラミック層の境界部分において空気が入っておらず、黒セラミック層の厚みによる段差の影響を緩和して良好な密着性が得られていることも観察できた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によると、カメラ等の情報取得装置の前の情報取得領域における窓ガラスの曇りを防止することができ、曇り発生に対する応答性が高く、かつ、情報取得領域における透明性に優れた窓ガラスの防曇構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 窓ガラスの防曇構造
2 移動体の室内
3 移動体の室外
10 窓ガラス
11 第一ガラス板
12 第二ガラス板
14 中間膜
20 黒セラミック層
30 情報取得領域
40 情報取得装置(カメラ)
50 曇り防止シート
51 樹脂フィルム
52 抵抗金属層
60 透明樹脂接着層
70 ルームミラー
111 第一主面
112 第二主面
123 第三主面
124 第四主面