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特許7555937多段光パラメトリックモジュールおよびそのモジュールを組み込むピコ秒パルスレーザ発生源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】多段光パラメトリックモジュールおよびそのモジュールを組み込むピコ秒パルスレーザ発生源
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/39 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
G02F1/39
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021544625
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020015631
(87)【国際公開番号】W WO2020160116
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】62/799,504
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/799,512
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パンチョ・ツァンコフ
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ユシム
(72)【発明者】
【氏名】イゴール・サマルツェフ
(72)【発明者】
【氏名】パンカジ・カドワニ
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ・アヴドキン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ヴォーペル
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0026066(US,A1)
【文献】国際公開第2018/224503(WO,A1)
【文献】特表2017-513211(JP,A)
【文献】特開2014-183514(JP,A)
【文献】特開2009-177641(JP,A)
【文献】特開2005-007476(JP,A)
【文献】特開2014-032277(JP,A)
【文献】特開2006-324613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337508(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109326950(CN,A)
【文献】TZANKOV, Pancho et al.,Yb-Fiber Laser Pumped Optical Parametric Sources Using LBO Crystals,Conference on Lasers and Electro-Optics (CLEO),2019年05月05日,pp. 1-2,DOI: 10.1364/CLEO_AT.2019.JTu2A.95
【文献】MARHIC, Michel E. et al.,High-nonlinearity fiber optical parametric amplifier with periodic dispersion compensation,Journal of Lightwave Technology,1999年,Vol. 17, No. 2,p.210-215,DOI: 10.1109/50.744225
【文献】MAYER, B. W. et al.,Sub-4-Cycle Pulses Directly From an All-Collinear, High-Repetition-Rate, Mid-IR OPCPA,CLEO 2014,2014年,DOI: 10.1364/CLEO_SI.2014.STH4E.6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ波長λの直線偏波ポンプビームを受け取り、波長λの信号ビームおよび波長λのアイドラビームを発生させるように構成される、上流光パラメトリック増幅(OPA)段であって、ポンプビーム、信号ビーム、およびアイドラビームが単一の光経路に沿って伝播する、上流光パラメトリック増幅(OPA)段と、
前記光経路に沿って互いに光学的に結合される複数の中間OPA段であって、各後続OPA段が、先行するOPA段からの前記ポンプビームの次第に弱くなる部分、および先行するOPA段からの増幅信号ビームを受け取る、複数の中間OPA段と、
前記光経路に沿って前記中間OPA段と交番する複数の時間遅延補償(TDC)組立体であって、ポンプビームと信号ビームの間の群速度の不整合を補償し、前記ポンプビームおよび信号ビームを前記光経路に沿って案内する一方で、各パラメトリック相互作用後に前記アイドラビームの伝播を防ぐように構成される、複数の時間遅延補償(TDC)組立体と、
ポンプビームおよび増幅信号ビームを受け取り、前記信号ビームの前記波長λと異なる所望の出力波長λで出力ビームを生成するように構成される出力OPA段と、
を備える、多段光パラメトリック(OP)モジュール。
【請求項2】
前記信号ビームが、各々が光パラメトリック増幅器で構成される少なくとも2つ以上の中間OPA段で次第に増幅され、前記光パラメトリック増幅器が、LBO、BBO、BiBO、KTP、KTA、周期分極LiNbO(PPLN)、または周期分極LiTaO(PPLT)から選択される非線形結晶を各々が含む、請求項1に記載のOPモジュール。
【請求項3】
前記出力ビームを生成する前記出力OPA段は、少なくとも1つまたは複数の和周波数発生(SFG)パラメトリックデバイス、少なくとも1つまたは複数の2次高調波発生(SHG)パラメトリックデバイス、または前記SFGパラメトリックデバイスとSHGパラメトリックデバイスの組合せを含み、前記パラメトリックデバイスが前記非線形結晶を各々含む、請求項2に記載のOPモジュール。
【請求項4】
前記出力OPA段が、2つの離間した上流SFGデバイスおよび下流SFGデバイス、ならびに前記上流および下流SFGデバイス間の1/2波長板で構成される、請求項1に記載のOPモジュール。
【請求項5】
前記TDC組立体が、チャープミラー、ダイクロイックミラー、もしくは複屈折窓、または前記ミラーと複屈折窓の組合せで各々構成される、請求項1に記載のOPモジュール。
【請求項6】
前記ポンプ波長λが515nm波長に中心がある緑色光範囲にあって前記出力波長λが443~467nm波長範囲の青色光にある、または前記ポンプ波長λが1030nm波長に中心があるIR光範囲にあって前記出力波長λが1700~2500nm範囲にある、請求項1に記載のOPモジュール。
【請求項7】
前記上流OPA段、中間OPA段、および出力OPA段ならびにTDC組立体が、角がある前記単一の光経路に沿って配置される、または、真っ直ぐな単一光に沿ってすべて直列である、請求項1に記載のOPモジュール。
【請求項8】
信号ビームからポンプビームおよび出力ビームを分離することを実現する、少なくとも1つの波長フィルタをさらに備える、請求項1に記載のOPモジュール。
【請求項9】
前記上流OPA段および中間OPA段が、角がある前記単一の光経路に沿って互いに離間され、
前記上流OPA段および中間OPA段が、前記単一の角がある光経路に沿った1つの方向および反対の平行でない方向に、前記ポンプビームおよび信号ビームが通過する光パラメトリック増幅器(OPA)を各々含み、
前記出力OPA段が、少なくとも1つまたは複数の和周波数発生(SFG)パラメトリックデバイス、少なくとも1つまたは複数の2次高調波発生(SHG)パラメトリックデバイス、または前記SFGパラメトリックデバイスとSHGパラメトリックデバイスの組合せを含み、前記出力OPA段が前記出力波長λoの2つの出力ビームを生成し、偏波組立体が、前記出力ビームのうちの1つの直線偏波を偏移して、組み合わせた交差偏波した出力ビームを設けるように、異なる偏波と前記出力ビームをさらに組み合わせるように構成される、請求項1に記載のOPモジュール。
【請求項10】
単一の光経路に沿ってポンプ波長λの直線偏波パルスポンプビームを発生するように動作可能な、psファイバレーザベース光ポンプと、
前記光ポンプから下流でポンプビームを受け取る波長変換パラメトリックモジュールであって、
前記波長変換パラメトリックモジュールは、
ポンプ波長λの直線偏波ポンプビームを受け取り、前記単一の光経路に沿って同軸で伝播する、波長λの信号ビームおよび波長λのアイドラビームを発生させるように構成される、上流光パラメトリック増幅(OPA)段、
前記光経路に沿って互いに光学的に結合される複数の中間OPA段であって、各後続OPA段が、先行するOPA段からの前記ポンプビームの次第に弱くなる部分、および先行するOPA段からの増幅信号ビームを受け取る、複数の中間OPA段、
前記光経路に沿って前記中間OPA段と交番する複数の時間遅延補償(TDC)組立体であって、ポンプビームと信号ビームの間の群速度の不整合を補償し、前記ポンプビームおよび信号ビームを前記光経路に沿って案内する一方で、各パラメトリック相互作用後に前記アイドラビームの伝播を防ぐように構成される、複数の時間遅延補償(TDC)組立体
で構成される、波長変換パラメトリックモジュールと、
ポンプビームおよび増幅信号ビームの一部を受け取り、所望の出力波長λoで出力ビームを生成するように構成される出力OPA段と、
を備える、ピコ秒(ps)単一モード(SM)パルスレーザ発生源。
【請求項11】
前記信号ビームが、各々が光パラメトリック増幅器で構成される少なくとも2つ以上の中間OPA段で次第に増幅され、前記光パラメトリック増幅器が、LBOまたはBBOまたはBiBOから選択される非線形結晶を各々が含む、請求項10に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項12】
前記出力ビームを生成する前記出力OPA段は、少なくとも1つまたは複数の和周波数発生(SFG)パラメトリックデバイス、少なくとも1つまたは複数の2次高調波発生(SHG)パラメトリックデバイス、または前記SFGパラメトリックデバイスとSHGパラメトリックデバイスの組合せを含み、前記パラメトリックデバイスが非線形結晶を各々含む、請求項10に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項13】
前記出力OPA段が、2つの離間した上流SFGデバイスおよび下流SFGデバイス、ならびに前記上流および下流SFGデバイス間の1/2波長板で構成される、請求項10に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項14】
前記TDC組立体が、チャープミラー、ダイクロイックミラー、もしくは複屈折窓、または前記ミラーと複屈折窓の組合せで各々構成される、請求項10に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項15】
前記ポンプ波長λが515nm波長に中心がある緑色光範囲にあって前記出力波長λが443~467nm波長範囲の青色光にあり、または前記ポンプ波長λが1030nm波長に中心があるIR光範囲にあって前記出力波長λが1700~2500nm範囲にあり、前記出力波長λの青色光psパルスが最高1000Wの平均パワーおよび1.5~3nmスペクトル線幅範囲を各々有する、請求項10に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項16】
前記上流OPA段、中間OPA段、および出力OPA段ならびにTDC組立体が、互いに直列である、または角がある前記単一の光経路の光に沿っている、請求項10に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項17】
信号ビームからポンプビームおよび出力ビームを分離することを実現する、少なくとも1つの波長フィルタをさらに備える、請求項10に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項18】
前記ファイバレーザベース光ポンプが、
基本波長λのpsパルスの入力列を提供するパルス領域またはバースト領域で動作するように構成される、Ybモードロックファイバレーザと、
パルス持続時間を伸ばし、伸張パルスの列を生成するように構成される、光パルス伸張器と、
前記光パルス伸張器に光学的に結合され、各パルスを複数の複製へとセグメント化するように構成される、パルス複製モジュールと、
前記パルス複製モジュールに光学的に結合され、各複製を増幅するように構成される、ファイバパワー増幅器と、
前記ファイバパワー増幅器に光学的に結合され、前記増幅した複製を前記基本波長のそれぞれのpsパルスに時間的に圧縮するように構成される、パルス圧縮器と、
前記ポンプ波長λの前記直線偏波パルスポンプビームを出力する、2次高調波発生器(SHG)と、
を備える、請求項10に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項19】
前記パルス複製モジュールが、1つまたは複数の時間遅延段を含み、各遅延段が、入力ビームスプリッタ、出力溶融ファイバ光カプラ、およびその間に配設されて隣接する複製間に時間遅延をもたらす光ファイバ遅延線を含み、前記時間遅延が各連続段で予め規定された量だけ増減され、前記予め規定された量がすべての段で均一であるまたは少なくとも1つの段で異なる、請求項18に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【請求項20】
前記光ポンプがファイバマスタ発振器およびパワー増幅器(MOPA)アーキテクチャを有し、前記ファイバマスタ発振器がリング共振器を有するYbモードロックファイバレーザであり、パワー増幅器がファイバ増幅器またはYb:YAGである、請求項18に記載のpsSMパルスレーザ発生源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピコ秒レーザに関する。特に、本開示は、複数の非線形結晶ベースパラメトリック増幅器(OPA)段で構成される光パラメトリックモジュールに基づく、高パワー擬似連続(QCW)ピコ秒レーザ、およびOPAモジュールを利用する用途に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの科学用途および産業用途では、調整可能な中心波長、可変スペクトル幅を有し、可視周波数範囲の異なるパルス持続時間を有する高い平均パワーパルスレーザを必要とする。赤外線周波数範囲の高パワー単一モード(SM)レーザが発展してきており、様々な産業で幅広く利用されている一方、一般的には高パワー青色レーザ、具体的には超高速高パワー青色レーザは、数百ワットと少なくとも1kWの間のいずれかの所望のパワー範囲では、まだ実施されていない。
【0003】
青色レーザ光を生成するための実用的な技術的手法は少ない。1つには、窒化ガリウム(GaN)に基づいて青色ダイオードレーザを製造することが挙げられる。GaNベースダイオードレーザは、寿命が長いものとしては知られておらず、光効率が制限されてしまう。
【0004】
長年にわたり、超高速青色レーザベース発生源の開発に対する最も効果的な手法は、非線形変換、すなわち、Kerrレンズモードロック(KLM)Ti-サファイアレーザ、Nd-YAGレーザ、モードロックEDFA、およびより近年ではナノ秒(ns)Ybファイバレーザを含む、モードロックレーザの周波数3倍化および4倍化に基づいていた。
【0005】
超高速青色レーザ発生源を開発する別の普及している手法は、パラメトリック非線形光デバイスに基づく。特に、緑色ポンプOPA、光パラメトリック発振器(OPO)、およびOP発生器(OPG)は、広い調整範囲および平均パワー拡張性に起因して、魅力的なレーザ発生源である。たとえば、同期ポンプ光パラメトリックデバイスは、広いスペクトル領域にわたって平均パワーを提供する、調整可能なコヒーレント放射の、実行可能な超高速発生源である。
【0006】
パラメトリックプロセス中のエネルギ変換則は、下記のとおりである。
【0007】
【数1】
【0008】
SHS/SHI-信号/アイドラの2次高調波発生は次式である。
【0009】
【数2】
【0010】
SFS/SFI-信号/アイドラおよびIRレーザ波長の和周波数発生(SFG)
【0011】
【数3】
【0012】
図1は、特許文献1に開示されるような、段階的和周波数パラメトリック増幅器に基づいた青色レーザ発生源の例示の概略図を図示する。この概略図は、既存の青色レーザ発生源を適正に表しており、複数のミラー9によって、2つの異なる光学的アームに沿った、基本周波数とポンプ周波数それぞれにおける光の画分を案内する、スプリッタ1を含む。和周波数調整可能発生器(SFG)14に一緒に光学的に組み合わせると、出力は、レーザ分野の当業者にはよく知られている様式で生成されるそれぞれの異なる周波数で、4つの光信号17、18、19、および20を含む。スプリッタ、コンバイナ、および複数のミラーを有して示される2つのアームの概略図は、大きい占有面積ならびに複雑な構成を有しており、これらは、パラメトリック増幅に基づいた、既知の青色レーザの大きな欠点である。
【0013】
パラメトリックプロセスで使用する様々なNLOの中でもとりわけ、三ホウ酸リチウムLiB3O5(LBO)NL結晶は、並外れた損傷抵抗性および無吸収性であること、結果として、他の手段では容易に損傷する場合がある高パワーパラメトリックデバイスに好適であることが判明している。他のホウ酸塩NL結晶(β型ホウ酸バリウム、BaB2O4またはBBO、およびホウ酸ビスマス、BiB3O6またはBiBO)および周期分極NL結晶(PPLT、PPLN、およびPPKTP)は同様に効果的であってよく、それらがより大きい非線形係数deffに主に起因して、パラメトリック増幅についてLBO結晶をしのぐ場合さえある。不運なことに、BBOおよびBIBOを使用するときの所望の最小パルスピークパワーは、採用される臨界位相整合条件に起因して、比較的高い。最も一般的な周期分極結晶は、光屈折性または光発色性損傷する傾向があり、このことによって平均パワーの変倍が制限される。さらに様々な用途だけが、高平均パワー青色光から恩恵を被ることができる。パラメトリック変換は、青色光生成に限定されない。パラメトリックプロセスによって生成される他の波長を、様々な産業で有利に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第7,106,498号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、光スプリッタおよびコンバイナを特徴として有さない小型構造を有する調整可能な超短パラメトリックモジュールを提供することが望ましい。
【0016】
開示されるパラメトリックモジュールと組み合わせたpsパルスファイバレーザ発生源を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の一態様によれば、多段光パラメトリック(OP)モジュールは、単一の光経路に沿って配置され、それぞれ、λの波長のポンプ光線、λの波長の信号光線、およびλの波長のIR光線と相互作用する、上流光パラメトリック増幅(OPA)段、複数の中間光パラメトリック増幅段、および出力光パラメトリック増幅段で構成される。OPA段は、各々が、単一の光経路に沿ってOPA段と交番する時間遅延補償(TDC)組立体を備える。TDC組立体は、各々が、ポンプビームと信号ビームの間の群速度の不整合を補償し、IRビーム、ポンプビーム、および信号ビームをOPA段間の光経路に沿って案内する一方で、各後続のパラメトリック相互作用後にアイドラビームの伝播を防ぐように構成される。
【0018】
本開示のさらなる態様によれば、光ポンプは、光パラメトリックモジュールをポンピングする、直線偏波(LP)psファイバレーザ発生源で構成される。有利なことに、限定はしないが、開示される発生源は、赤色、緑色、および青色光を同時に出力するために使用することができる。psレーザ発生源は、1μmスペクトル範囲の基本波長で出力を生成するために、チャープパルス増幅(CPA)技法を使用するモードロックpsファイバレーザで構成される。所望の基本波長を適切に選択することによって、発生源は、100Wを超える平均パルスパワーで、赤色光と青色光を同時に出力することができる。たとえば、基本波長は、1030nm、1048nm、1060nmおよび1071nmからなるグループから選択することができる。
【0019】
上の態様は、各々が、以下の具体的な記載および請求項に詳細に記載されるように、互いにすべてが構造的に組み合わせることが可能な多くの特徴によって特徴づけられる。各態様の特徴は、レーザ分野の当業者には容易に理解可能な方法で組み合わせることができる。
【0020】
本開示の上記および他の態様および特徴は、以下の図と組み合わせてより容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】知られている従来技術にしたがった青色レーザの光概略図である。
図2】本発明のファイバ光源の概略図である。
図3A図2の本発明のファイバレーザ発生源に組み込まれる赤色光を生成するOPAモジュールの概略図である。
図3B図3Aの赤色光生成モジュールと組み合わせた、パラメトリック青色光生成モジュールの一例を示す図である。
図3C図3Aの赤色光生成モジュールと組み合わせた、青色光生成モジュールの別の例を示す図である。
図3D】OPAモジュールのさらに別の例を示す図である。
図3E】本発明のOPAモジュールのさらなる例を示す図である。
図4A】1つの具体的な例にしたがった、本発明の青色レーザの詳細光概略図である。
図4B】別の例にしたがった、本発明の青色レーザの詳細光概略図である。
図5】開示されるRG光源の青-赤波長の関係を図示する図である。
図6】開示されるpsファイバレーザベースポンプモジュールの光概略図である。
図7】本発明の態様にしたがったパルス複製モジュールの一例の概略図である。
図8】本発明の態様にしたがったパルス複製モジュールの別の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、開示されるシステムへの参照が詳細に行われる。可能な場合には、同じまたは同様の部品またはステップを言及するのに、図面および記載中で、同じまたは同様の参照番号が使用される。図面は、簡略化した形式であって、正確な尺度からは遠い。利便性および明瞭性だけのため、「接続する(connect)」、「結合する(couple)」、「組み合わせる(combine)」という用語および同様の用語は、それらの屈折形態と一緒に、直接で直ちに接続することを必ずしも示しておらず、介在する要素またはデバイスを通した接続をやはり含む。
【0023】
図2は、互いに光学的に結合される少数のモジュールを含む本発明の光源10を概略的に図示する図である。ファイバレーザ発生源モジュール12は、光経路に沿って、たとえば1030nm、1048nm、1060nm、または1071nmから選択される基本波長λで伝播するpsIRパルスの列を生成するように動作可能である。IRビームは、IR光の一部を、ポンプ波長λ=λf/2でポンプ光へと変換することによって、SHを生成するために、ポンプ14のNLOと相互作用する。ポンプ14は、ファイバレーザ発生源12をやはり含み、それぞれλおよびλの波長で、ポンプ光および残りのIR光を出力するポンプモジュール16の中にパッケージ化することができる。パラメトリックNLOモジュール18は、ポンプモジュール16から受け取った出力を処理し、それぞれ信号波長、ポンプ波長、および青色波長で、赤色光、緑色光、および青色光を出力するように構成される。下で開示されるように、様々な構造の例が、本発明の概念を説明する。開示される例のすべてに共通なのは、以下の図により良好に図示されるような、単一の光経路に沿って配置されるいくつかのOPA段を含むNLOモジュール18の光概略図である。
【0024】
図3A図3Cは、図2のNLO16の動作原理および構造を図示する。特に、図3Aは、各々がLBO結晶を含む4つのOPA段を図示する。上流OPA1は、777~854nm波長範囲の信号ビーム、すなわち赤色光を生成するように構成され、信号ビームは、後続の中間OPA2~OPA3段を通る光経路に沿って案内され、漸次増幅される。ファイバレーザ発生源12のピークパワーが数MWに制限されるために、示される概略図は、そこを伝播して発生する光成分の十分な増幅を実現するため、少なくとも3個以上の上流および中間LBO OPA段を含むことが必要である。レーザ発生源は、ここでは示されずに下で開示されるが、2次高調波発生器(SHG)(図示せず)へと結合されるpsIRパルスを出力し、その後、IR光がフィルタ除外される一方で、量子ノイズとともにポンプ波長λで生成された緑色光が、上流LBO OPA段1へと結合される。結果として、後者は、緑色ポンプ光線、それぞれ、信号波長λでの生成した赤色信号ビームおよびアイドラ波長λでのアイドラビームを出力する。
【0025】
超高速OPAは、LBO結晶の出力におけるポンプビームと信号パルスビーム間の群速度の不整合の時間遅延補償(TDC)を必要とする。したがって、LBO OPA段2の中で赤色信号ビームをさらにパラメトリック増幅する前に、伝播する緑色/ポンプおよび赤色信号ビームが、隣接するLBO OPA段間のすべてのOPA段とインラインに配置されるTDCに入射する。要約すると、OPAモジュール18は、光経路に沿って互いに交番する、複数のOPA段およびTDCで構成される。
【0026】
TDCは、チャープミラー、(アイドラを捨てる)ダイクロイックミラー、および様々な材料から作られ様々な温度で配置される複屈折窓を含むことができる構成要素の光学系である。その結果、たとえば、チャープミラーと材料分散の組合せを使用して、LBOの温度を変えることだけで、スペクトル調整を達成することができる。
【0027】
上で開示される動作は、示される4つの連続して配置される段OPA1~OPA4中で赤色信号が増幅されるたびに繰り返される一方で、各OPA段で生成されるアイドラは、後続のOPA段の前に、指定されるTDC1~TDC3によって捨てられる。当業者なら認めるように、アイドラが後続のOPA段へ結合される場合には、意味のあるパラメトリック相互作用が生じない。示される概略図の出力において、発生源の光は、ダイクロイックミラーなどといったスペクトルフィルタへと入射する。スペクトルフィルタは、増幅赤色信号に対して透過性であり、緑色ポンプ光を指定される出力に反射する。
【0028】
図3Bは、図3Aの構成を有するOPAブロックを図示するが、図2の本発明のモジュール18の、出力青色光生成OPA段の一例を表す。特に、図3Aの概略図にしたがって増幅される、信号波長λの赤色信号ビームは、2次高調波すなわち青色光線を生成する出力LBO SHGへとさらに結合される。追加のダイクロイックミラーは、赤色信号ビームを透過するが、生成した青色光線を反射する。
【0029】
図3Cは、出力青色光および赤色光の両方の偏波を利用する、出力青色光生成OPA段の別の例を示す。特に、出力OPA段は、光経路に沿って互いから離間される2つのSHGで構成され、2重1/2波長板を含む第4のTDC4の側面に位置する。モジュール18の出力において、交差偏波した青色光と残りの赤色光は、図2の発生源10の出力においてこれらの光を分離する後続のダイクロイックミラーに入射する。図3Bおよび図3CのNLOモジュール18の概略図は、下で開示されるようなRGBエンジンで有利に利用される、緑色光、赤色光、および青色光それぞれ用に別個の出力を設けることに留意されたい。
【0030】
図3Dおよび図3Eそれぞれの概略図は、基本波長λにおけるIR光を利用するNLOモジュール18のどこかが異なる構成を図示しており、その一部は、ここには示さないが、ポンプ波長における緑色光線を生成するように構成される上流SHGに残る。特に図3D図3A図3Cそれぞれの構成と同様に構成される多段NLOモジュール18を図示する。IR光は、図3Aのものと同一に構築されたOPAブロックに入射し、パラメトリック作用による影響を受けずにすべてのOPA段を通って伝播する。こうして、この図に示されるように、OPAブロックの出力は、IR光線、信号赤色光線、およびポンプ緑色光線を含み、そのすべては、赤色光とIR光の両方には透過性であるが、緑色光を反射する出力上流ダイクロイックミラーに入射する。IR光線および赤色光線は、結合されるIR光と赤色光を混合することの結果として、青色光を生成するSFG段へと結合される。光経路に沿ってSFGから下流に離間される、出力下流ダイクロイックミラーは、青色光を反射し、IR光線および赤色光線の残りの部分を透過する。こうして、発生源10は、赤色光線、緑色光線、および青色光線それぞれによって通過される3つの出力ポートを含む。
【0031】
図3Eは、図3Cのように、有利なことに、赤色光線、青色光線、およびIR光線の直交偏波方向を利用する可能性を提供する。これは、離間した上流出力と下流出力、LBO SFG1およびLBO SFG2およびTDC4の組合せによって実現される。後者は、3重1/2波長板ならびに他のミラーを含み、SFG1とSFG2の間に配置される。上流出力SFGは、IR光線と赤色光線を混合し、青色光線出力がもたらされる。3つの光すべては、直線偏波光の偏波方向を偏移させる3重1/2波長板に入射する。下流SFGは、このSFGの入力における青色光の偏波に直交する偏波方向を有する青色光の和周波数発生を実現する。下流SFGの出力において、交差偏波した光が、青色光線を反射し赤色/IR光線を透過する出力ダイクロイックミラーに入射する。
【0032】
上で議論した図3A図3Eを参照すると、開示される概略図は、インラインに配置されて、図示される配置構成全体にわたって、一緒に単一の光経路を規定する、交番するOPAとTDCによって特徴づけられるのを理解するのは簡単である。上で議論した構造の実験位相は、非常に有望な結果をもたらした。たとえば、50%の変換効率で、図3A図3Cの超高速OPAは、標準のファイバレーザによって容易に達成される、50~500nJのパルスエネルギによってポンピングすることができる。通常使用される周期分極材料の代わりに低吸収率高損傷閾値のLBOバルクNLOを使用して、光源10の上で議論した概略図(図2)が、近い将来に、1.5~3nmスペクトル範囲のスペクトル線幅を有する1kW超の青色光パルス出力を作り出すことができるのは十分に可能である。
【0033】
図4Aは、443~467nm波長範囲で発生源青色出力を発生させる、光源10の例示的な詳細光概略図を図示する。図示される概略図は、単一の直線で角がある光経路を提供するように構築される。しかし、レーザ分野の当業者は、図3A図3Eに示されるものと同様のインラインアーキテクチャを有して図3D図3Eの概略図と同一に構成されるように、示される概略図を容易に再構成することができる。
【0034】
特に、レーザモジュール12は、1030nmの基本波長λでpsパルスのIR光、および、ポンプ波長λ=515nmで緑色ポンプ信号を生成する。2次高調波発生期間に、IR光の一部は、図2のSHG14中のポンプ信号に伝達される。基本波長およびポンプ波長におけるpsパルスの列は、パルスの各々を、NLOモジュール18の上流段を構成するOPG/Aパラメトリックデバイスの両方として機能する第1のNLO26の中心領域へと向ける合焦レンズL2に入射する。第1の非線形結晶26は、緑色ポンプビームと相互作用して、それぞれ、第3の信号波長λおよび第4の信号波長λで、赤色光信号ビームおよびアイドラビームを生成する。その一部が上流SHG(図示せず)との相互作用後に残る、基本波長の組合せが、OPG26の出力とSFS46の入力の間で自由に伝播し、上流OPA段のNLO26とポンプ信号ビームの間の相互作用後にλの波長のポンプ信号ビームの部分、およびλの波長の生成した赤色光信号ビームが、第1のダイクロイックミラー28に入射する。ダイクロイック凹面鏡28はアイドラに対して透過性であるが、1つの方向に対して反対で平行でない方向にポンプ光線および信号光線を反射し、その結果、反射光が、OPAとして働く同じNLO26に入射する。ダイクロイックミラー28は、したがって、反射したポンプ光線と赤色光線の間の群速度の不整合を補償するTDC組立体の一部である。反射光は、上流OPA段のNLO26を通して反対方向に伝播し、こうしてNLO26中のものと類似のプロセスを他の方向で繰り返す。
【0035】
反射光が第1のNLO26と相互作用すると、信号波長λの赤色信号ビームがさらに増幅される。波長λのアイドラビームが再び生成され、さらに減衰した緑色ポンプビームおよび増幅した赤色光線とともに、同軸で伝播する。ダイクロイック平面鏡30に入射すると、ミラー30を通って伝播する新たに発生したアイドラを除いたすべての波長の光線は、モジュール18の少なくとも1つの中間OPA段に向けて反射される。
【0036】
反射光線は、光を凹面鏡34に案内する平面鏡32にさらに入射して反射される。凹面鏡34は、光を中間OPA段の第2の非線形結晶を通して1つの方向に反射する。ポンプ信号と第2のNLO36間の相互作用が、λの赤色信号をさらに増幅し、これが次いで残りのポンプ信号、赤色信号、およびアイドラとともにダイクロイック曲面鏡38に入射する。アイドラは、このミラーを通して透過される。反射光は、第2のNLO36を通して反対方向に伝播し、こうして上流OPA段中のものと類似のプロセスを繰り返す。結果として、それぞれλ、λ、λ、およびλの増幅した赤色信号、ポンプの第3の部分、アイドラ、およびIRは、平面鏡40に入射し、アイドラを除くすべての光を下流段へと向ける。
【0037】
以前のOPA段と同様に、下流段は、受け取った光をLBO NLO46を含むSFG(SHSと示される)を通して1つの方向に順次案内する、平面鏡42および曲面鏡44で構成される。後者は、波長λの以前に増幅した赤色光信号と、波長λの残りのIR光を混合して、波長λsso=(1/λ+l/λ-1の発生源信号出力を生成する。したがって、出力ps青色光は、443~467nm波長範囲の波長で平面鏡52を通して透過される。
【0038】
示されるように、それぞれポンプλ波長および信号λ波長の残りの赤色光およびIR光をさらに使用することができる。この光は、NLO46を通して反対方向に曲面鏡48から反射され、平面鏡50に入射する青色光を再び生成し、出力段の平面鏡54に向けてさらに反射される。1/2波長板56は、ミラー54と光連通しており、青色光の偏波を、ミラー48を通して通過した青色光の偏波に直交するように変えるように構成される。1/2波長板56から下流で、薄膜偏光器(TFP)58が、所望の443nmまたは467nmの中心波長の青色光出力を組み合わせる。一般的な出力OPA段は、様々なパラメトリックデバイスを単独で、または所望の出力波長を作り出すものと組み合わせて有することができる。したがって、和周波数、差周波数を含むすべてのタイプのパラメトリック生成、和周波数、差周波数を含む変換のタイプ、および2次高調波発生を、当業者が実現できる出力段を適切に構成することによって使用することができる。
【0039】
上で述べたように、すべてのOPA段は各々が単一パスLBO NLOを実現するように構成することができる。この修正形態では、図4Aの概略図は、図3A図3Eに示されるものと同一のインラインアーキテクチャであるが2倍のLBO NLOを有するものを提供するように再構成することができる。
【0040】
図4Bは、343nmの青色光線を出力する発生源10の、本発明のOPAモジュール18の別の例を図示する。図4Bで利用される発生源は、343nmポンプ波長で動作するpsUVファイバレーザ発生源(図示せず)を含む。図4Aの概略図と全体的に同様に構成される、モジュール18は、515nm波長のポンプビームを有して以前に開示されたモジュールのSFG NLOの代わりに、光パラメトリック増幅器を備える下流OPA段を有する。
【0041】
様々なタイプのNLO結晶を、本開示の文脈内で利用することができる。結晶は、空間的ウォークオフが存在すればWOC板によって補償することができるために、完全位相整合してもしなくてもよい。こうして、BBO、BIBO、KTP、KTA、周期分極LiNbO3(PPLN)、周期分極LiTaO3(PPLT)などといった、結晶タイプを図2および図3の概略図に実装することができる。しかし、出力パワーで100W以上を実現できる唯一の結晶はLBO(可能ならBIBO)である。というのは、LBOは、すべての他の代替NLO結晶よりも最低のバルク吸収率および最高の損傷閾値を有するためである。NLOは、非完全位相整合結晶であっても、そうでなくてもよい。空間的ウォークオフが存在する場合、当業者に知られているように補償することができる。各NLO結晶を、個々に熱的に制御して、最良の位相整合条件を実現する。
【0042】
上で開示したNLOモジュール18は、1つのレーザ発生源から3原色すべてを生成する必要がある、視覚ディスプレイ中のRGBエンジンで使用するときに、特に有利である。RGBエンジンの効率は、以下の主な考慮事項に基づく。第1に、原色の赤色、緑色、および青色は、人間の目が色域の90%超を検出することができるように選択するべきである。第2に、画像歪を引き起こすスペックル現象は、最小化されて望ましくは除去されるべきである。また、RGB光源は、高い壁コンセント効率および本明細書に開示されるようなファイバポンプの最小出力パワーにおける変換可視光の高い発光効率によって特徴づけるべきである。しかし、ディスプレイ産業は、図2の開示された発生源10からの恩恵を被る唯一のものではない。たとえば、図3A図3Eに示される同じパラメトリックモジュール18は、ポンプビームとしてIR光線を使用し、LBO結晶の代わりにBIBO結晶を使用して、1.7~2.5μm波長範囲の出力を提供するように提示してきた。構造的に、出力OPA段は、2つのSHGで構成することができる一方、残りのOPA段は、図4Aおよび図4Bのものと同様のパラメトリック増幅器で構成される。
【0043】
図2に戻って、ポンプモジュール16は、イッテルビウム(Yb)ドープしたモードロックpsファイバレーザ12を含む。大部分の産業用Ybファイバレーザは、約1030nmまたは1064nmのいずれかの(放出)基本波長λで動作する。これらの波長のいずれかの選択によって、下で議論されるように、NLOモジュール18の構成が決定する。
【0044】
図5は、SHG14が1030nm基本波長(図2)におけるYbファイバレーザ12からのIR信号と相互作用することによって生成される515nmポンプ波長での、式1、2、および3に基づいた、青色-赤色波長間の関係を図示する。曲線120は、それぞれのポンプ波長の光と相互作用する2つの2次高調波発生器(SHGおよびSHGi)の組合せを使用して決定される。あるいは、曲線120は、和周波数発生器(SFGおよびSFGi)の組合せを使用してモデル化することができる。さらに別の代替実施形態によれば、曲線120は、SFGパラメトリックデバイスとSHGパラメトリックデバイスの組合せを利用することによってモデル化される。この曲線120は、2つのSHGデバイスまたは2つのSFGデバイスを利用することによって、所望の赤色波長および青色波長を得ることができることを示す。青色光波長が、たとえば445nm波長に変えられるが、610nmアイドラ波長が依然として必要な場合、SFG段の組合せが曲線122に対応する。SHG段とSFG段の組合せに対応する曲線124は、610nmアイドラ波長が必要な場合には、この組合せを効率的なRGB10には使用できないことを示す。パラメトリックデバイスの様々な組合せによって、所望の波長をもたらすことができる。任意の所望の波長に適合させるために、図3A図3Eおよび図4A図4BのNLOモジュール18の構造的な可撓性を利用して非常に容易に得られる、パラメトリックメカニズムの1つまたは別の組合せを最終的に定めるのは、光源10の効率である。
【0045】
Table 1(表1)は、478nmおよび610nm波長のそれぞれで青色および信号(赤色)出力を発生させるため、1030nm基本波長の高効率RGB発生源10によって使用されるパラメトリック動作のタイプおよび必要なデータを提供する。分かるように、RGB発生源10は、610nm波長の所望の発生源アイドラ出力を生成するため、1220nm波長のSHGを含むNLO18で構成される。しかし、478nm波長の発生源出力信号を生成するために、SHGメカニズムは、効率的には働かない。しかし、892nmの信号と相互作用するSFGデバイスを使用することによって、478nm発生源信号出力のRGB発生源10の効率的な動作が可能になる。表は、スペックルを回避するのを助ける、3nm、4nm、および5nm線幅それぞれでの、発生源信号、ポンプ、および発生源アイドラ出力についての線幅をやはり提供する。モジュール12のレーザ発生源の最小パワーでの、赤色、緑色、および青色信号それぞれに対する基本波長のIR光の変換効率は、8%と20%の間であり、これは非常に高いと考えられる一方で、出力赤色および青色信号平均パワーは、それぞれ、158W、106W、および114Wであって、これは中型2D映画館ではやはり異常である。赤色および特に青色スペクトル領域それぞれの、このタイプのプロジェクタにとって、変換効率およびパワーで匹敵するものはないと信じられる。
【0046】
【表1】
【0047】
Table 1(表1)に示される異なる波長の関係は、515nm波長のポンプ光を発生させる図2のポンプモジュール16に基づく。他のポンプ波長は、明らかに、光パラメトリックプロセスのエネルギ変換則に基づいたパラメトリックNLOモジュール18で利用することができる。Table 2(表2)は、1064nm波長のIR光のSHである、532nm波長の緑色光によってポンピングされるOPA/OPOから生成される信号赤色および青色波長を図示する。Table 2(表2)は、2D映画館で最も効率的な、1064nm発生源のRGB光源を表示する、データおよびパラメトリックメカニズムを提供する。
【0048】
【表2】
【0049】
図6は、パルス複製と組み合わせたチャープパルス増幅(CPA)アーキテクチャを有するpsファイバ発生源100に基づいたファイバレーザポンプモジュール12を図示する。発生源100は、全ファイバまたはYAGベース構造を含む様々な構成を有することができる。好ましくは、発生源は、こうしてpsパルスの列を出力する主発振器、およびファイバまたは他のタイプの増幅器またはブースタ150を含むMOPA構成を特徴とする。発生源100は、シードとブースタの間にすべて配置されるパルス伸張器130、パルス複製モジュール140、アイソレータ160、および、ファイバブースタ150に続くパルス圧縮器170でさらに構成される。入力レーザパルス112は、パルス伸張器130を使用して時間を伸ばされ、ブースタ150および任意選択の前置増幅器154を含む増幅段で増幅されて、パルス圧縮器170を使用して圧縮解除される。増幅の前に、パルス複製モジュール140を使用して伸張パルス132が複製される。
【0050】
パルス伸張器130は、パルス112の入力列のパルス持続時間を伸ばし、ピークパワーを減らした伸張パルス132の列を生成するように構成される。いくつかの実施形態によれば、パルス伸張器130は、初期パルス列112のパルスを数ナノ秒の程度のパルス持続時間に伸ばし、いくつかの事例では、10nsであってよい。伸張レーザパルス132の繰り返し率は、パルス複製モジュール140によって増加させることができ、パルス複製モジュール140は、伸張レーザパルス132の光の波形を時間的に複製して、修正パルス列148を生成する。パルス伸張器130によって出力される、伸張レーザパルス132の列の時間プロットは、tのパルス周期および1/tのパルス繰り返し率を有する。いくつかの実施形態によれば、パルス複製器140は、修正パルス列148のレーザエネルギが連続的に見える程度にtが減少されるように、伸張レーザパルスを複製するために使用することができる。修正パルス列148のほぼ連続波の特性は、パルス伸張器130によって実施される伸張と、パルス複製モジュール140によって実施される複製の両方の関数である。そのようなレーザ光を利用するシステムの例が、下でより詳細に議論される。パルス複製器140は、伸張レーザパルス132の繰り返し率を数十MHzおよび数GHzのレベルに増加させるように構成することができる。パルス伸張器130および/またはパルス複製モジュール140は、所望のピーク対平均パワー比率を有する修正パルス148を生成するように構成することができる。一例が下で議論される。
【0051】
パルス複製モジュール140は、入力溶融ファイバ光カプラおよび出力ファイバ光カプラを含む少なくとも2つのファイバ光カプラ、ならびに、入力溶融ファイバ光カプラと出力溶融ファイバ光カプラの間に配設される少なくとも1つの光ファイバ遅延線を備える全ファイバデバイスである。全ファイバ光カプラは、偏波保存性である。ファイバ光カプラは、単一モード非偏波保存性(PM)溶融ファイバ光カプラとして構成することもできる。パルス伸張器130およびパルス複製モジュール140の構成要素は、調整した(高い)繰り返し率でパルスを出力するように構成することができる。パルス圧縮器170は、チャープ増幅パルス153のパルス幅を圧縮する。パルス圧縮器の非限定の例としては、CVBGおよびTreacy圧縮器などといった格子圧縮器、ならびにMartinez圧縮器およびプリズム圧縮器が挙げられる。
【0052】
パルス圧縮器170から出力される増幅圧縮レーザパルス174は、高い繰り返し率および高い平均パワーを有する超短パルスレーザ光として特徴づけることができる。この出力についての具体的な用途としては、高い平均パワーのUVレーザ放射の発生が挙げられ、下で議論される。
【0053】
図5は、パルス複製モジュール440の第1の例の概略図である。この構成によれば、入力溶融ファイバ光カプラ442は、ファイバ光スプリッタとして構成される。出力ファイバ光カプラ443の結合領域を出る2つのファイバのうちの1つは、修正パルス列148を含む出力436を形成する。光ビームスプリッタ442が入力434を有し、この事例では、入力434は、光パルス伸張器130に結合され(図4)、出力カプラ443の出力436は、ファイバパワー増幅器150に接続され、さもなくばファイバパワー増幅器150に結合される。パルス複製モジュール440は、入力カプラ442と出力カプラ443の間に配設される少なくとも1つのファイバ光カプラ444をやはり含む。
【0054】
入力スプリッタ442の出力のうちの1つに、単一モードファイバの好適な長さ(すなわち、光ファイバ遅延線445)を使用して、遅延τが加えられ、その結果、対のうちの1つの足または出力セグメント(445)は、他の足446と異なる(より長い)光学路長を有することになる。このことによって、スプリッタ442の両方の出力ファイバ445および446にτだけ分離した2つのパルスが発生される。次いで、これらの2つの出力がカプラ444の中で組み合わせられると、2τの遅延がこれらの経路のうちの1つに入れられて、2組の4つのパルスが生成される。このプロセスは、所望の数の複製が得られるまで、2つの経路間の異なる遅延を倍にすることによって繰り返すことができる。次いで、2つの経路は、コンバイナ443を使用して組み合わされる。遅延τの長さは、パルスが重なり合い干渉するのを回避するために、レーザパルスの長さよりわずかに長く選択することができる。
【0055】
パルス複製器440は、各連続段が伸張レーザパルス132に時間遅延をもたらすように、各々が光ファイバ遅延線445を含む複数の段449を備える。図5に示される例では、パルス複製器440は4つの段449、449、449、および449を含み、各段において、信号パワーが分割され、固定時間遅延で再び組み合わされる。複製の数が各段449(すなわち、50:50カプラ)で倍になるために、コンバイナ443へと伝播する2つの出力445および446は、各々が2の複製を含む。ここで、xは使用される段数である(この例では、x=4)。こうして、パルス複製器440は、多段受動パルス複製器として構成される。ここで、各連続段が伸張レーザパルス132に固定時間遅延をもたらす。時間遅延は、各連続段で予め規定された量だけ増減することができる。
【0056】
複製器440の最終段445および446の出力は、出力436において修正パルス列148として時間遅延複製パルスの列を生成するために、コンバイナ443中で組み合わされる。図6に見られるように、ファイバの足445および446の8個の複製パルスの各々は、16個のパルスを生成するためにコンバイナ443中で組み合わされる。これらの16個のパルスは、パルスのバーストとして構成され、したがって、修正パルス列148は、各々が16個のパルスを含む一連のパルスのバーストを含む。遅延線445~445の長さは、バースト繰り返し率(すなわち、バースト間時間間隔)を規定する。
【0057】
分かるように、パルス伸張器130およびパルス複製モジュール140の構成要素は、調整した繰り返し率でパルスを出力するように構成することができる。繰り返し率は、ピークパワーが不要な損傷を回避するのに十分低いが、効率的な周波数変換のために十分高いように選択することができる。ファイバカプラおよびパルス複製モジュールのファイバ遅延線は、様々なパルス形式を作成するために使用することができ、図8は、パルス複製モジュール540の別の例の概略図である。いくつかの実施形態によれば、パルス複製モジュールは、各々別個に構成できる一連のサブモジュールを含むことができる。たとえば、図5に示されるパルス複製モジュール540は、入力として、図7のパルス複製モジュール440からの出力を使用するが、複製モジュール540は、単独で使用すること、または他の構成を有するサブモジュールと組み合わせて使用することもできることを理解されたい。
【0058】
図6の複製モジュール440と同様の様式で、パルス複製モジュール540は、入力溶融ファイバ光カプラ542および出力ファイバ光カプラ543をやはり含む。入力カプラ542と出力カプラ543の間には、中間ファイバカプラ(544)、(547a)、および(547b)がある。各段549からの遅延線を隣接する(下流の)段に向ける代わりに、図6の構成に示されるように、少なくとも1つの遅延線が1つまたは複数の下流段をバイパスする。この例によれば、遅延線545は、第1の段549の出力における中間カプラ544から出力コンバイナ543に向けられ、それによって、第2の段549および第3の段549をバイパスして第4の段549の遅延線を形成する。そのため、各連続段に導入される時間遅延が増加し、すべてが互いに等しいとは限らない。図5に示されるように、この構成によって、9nsの合計持続時間(エンベロープ)を有する初期の16個のパルスバーストが、第4の段549~549を介して90nsのエンベロープを有する160個のパルスバーストに変換されることが可能になり、ここでは、各パルス持続時間が0.45nsであり、パルスは0.56nsだけ分離される。下のTable 1(表3)は、各段を概説する。
【0059】
【表3】
【0060】
図7および図8に示されるパルス複製器の例は、制限することを意味せず、他の構成がやはり本開示の範囲内である。
【0061】
こうして、少なくとも1つの例のいくつかの態様を記載してきたが、当業者には、様々な代替形態、修正形態、および改善形態が容易に想到されることを理解されたい。たとえば、本明細書に開示される例は、他の文脈でやはり使用することができる。そのような代替形態、修正形態、および改善形態は、本開示の部分であることが意図され、本明細書で議論される例の範囲内であることが意図される。したがって、上の記載および図面は、例のためだけにある。
【符号の説明】
【0062】
1 スプリッタ
9 ミラー
10 光源、発生源、RGB、高効率RGB発生源
12 ファイバレーザ発生源モジュール、レーザモジュール、Ybファイバレーザ
14 ポンプ、SHG
16 ポンプモジュール、NLO
17 光信号
18 光信号、パラメトリックNLOモジュール、OPAモジュール、多段NLOモジュール
19 光信号
20 光信号
26 第1のNLO、第1の非線形結晶、OPG
28 第1のダイクロイックミラー、ダイクロイック凹面鏡
30 ダイクロイック平面鏡
34 凹面鏡
36 第2のNLO
38 ダイクロイック曲面鏡
40 平面鏡
42 平面鏡
44 曲面鏡
46 SFS、LBO NLO
48 曲面鏡
50 平面鏡
52 平面鏡
54 平面鏡
56 1/2波長板
58 薄膜偏光器、TFP
100 psファイバ発生源
112 入力レーザパルス、初期パルス列
120 曲線
122 曲線
124 曲線
130 パルス伸張器
132 伸張レーザパルス
140 パルス複製モジュール、パルス複製器
148 修正パルス列
150 増幅器、ブースタ、ファイバブースタ
153 チャープ増幅パルス
154 前置増幅器
160 アイソレータ
170 パルス圧縮器
174 増幅圧縮レーザパルス
434 入力
436 出力
440 パルス複製モジュール、複製器
442 入力溶融ファイバ光カプラ、光ビームスプリッタ、入力スプリッタ
443 出力ファイバ光カプラ、コンバイナ
444 ファイバ光カプラ
445 光ファイバ遅延線、足、出力セグメント
445 出力ファイバ、遅延線
445 遅延線
445 遅延線
445 遅延線、出力、最終段
446 足
446 出力ファイバ
446 出力、最終段
449 段
449
449
449
449
540 パルス複製モジュール
542 入力溶融ファイバ光カプラ
543 出力ファイバ光カプラ、出力コンバイナ
544 中間ファイバカプラ
545 遅延線
547a 中間ファイバカプラ
547b 中間ファイバカプラ
549 段
549 第1の段
549 第2の段
549 第3の段
549 第4の段
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8