(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240917BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240917BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240917BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240917BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20240917BHJP
H03K 3/013 20060101ALN20240917BHJP
H03K 3/037 20060101ALN20240917BHJP
H03K 19/003 20060101ALN20240917BHJP
H03K 3/356 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
H01L27/04 D
H01L21/88 Z
H03K3/013
H03K3/037 B
H03K19/003 130
H03K3/356 D
(21)【出願番号】P 2021548323
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019301
(87)【国際公開番号】W WO2021059579
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019177834
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中西 和幸
(72)【発明者】
【氏名】平田 昭夫
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-092963(JP,A)
【文献】特開2012-009515(JP,A)
【文献】特開平08-306867(JP,A)
【文献】特開2018-107626(JP,A)
【文献】特開2008-102666(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/768
H01L 21/822
H01L 21/3205
H01L 23/522
H01L 27/04
H03K 3/013
H03K 3/037
H03K 19/003
H03K 3/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線と、
前記第1配線と接続されず、かつ、前記第1配線と同じ信号レベルを伝達するために設けられた第2配線と、
前記第1配線および前記第2配線と異なる配線である他の配線と、
を備え、
配線層内において、前記第1配線と前記第2配線との距離は、前記第1配線と前記他の配線との距離より大きく、かつ、前記第2配線と前記他の配線との距離より大き
く、
前記第1配線と前記第2配線とは、前記配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、前記並行区間において前記他の配線を挟み、
前記他の配線は、前記配線層内において前記他の配線の本体部分か
ら延伸された延伸部分を含み、
前記延伸部分は、前記配線層内の前記並行区間内において前記第1配線と前記第2配線との間に挟まれる
半導体装置。
【請求項2】
第1配線と、
前記第1配線と接続されず、かつ、前記第1配線と同じ信号レベルを伝達するために設けられた第2配線と、
前記第1配線および前記第2配線と異なる配線である他の配線と、
を備え、
配線層内において、前記第1配線と前記第2配線との距離は、前記第1配線と前記他の配線との距離より大きく、かつ、前記第2配線と前記他の配線との距離より大きく、
前記第1配線と前記第2配線とは、前記配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、前記並行区間において前記他の配線を挟み、
前記他の配線は、前記他の配線の本体部分に接続されたビアから延伸された延伸部分を含み、
前記延伸部分は、前記配線層内の前記並行区間内において前記第1配線と前記第2配線との間に挟まれる
半導体装置。
【請求項3】
第1配線と、
前記第1配線と接続されず、かつ、前記第1配線と同じ信号レベルを伝達するために設けられた第2配線と、
前記第1配線および前記第2配線と異なる配線である他の配線と、
を備え、
配線層内において、前記第1配線と前記第2配線との距離は、前記第1配線と前記他の配線との距離より大きく、かつ、前記第2配線と前記他の配線との距離より大きく、
前記第1配線と前記第2配線とは、前記配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、前記並行区間において前記他の配線を挟み、
前記他の配線は、前記配線層内において前記他の配線の本体部分から分岐して延伸された延伸部分を有し、
前記延伸部分は、前記配線層内の前記並行区間内において前記第1配線と前記第2配線との間に挟まれる
半導体装置。
【請求項4】
前記延伸部分の端部は、前記配線層内において接続されない開放端である
請求項
1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記延伸部分は、前記配線層内において前記第1配線の端部を迂回し、さらに前記並行区間内に配置される
請求項
1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
第3配線と、
前記第1配線と接続されず、かつ、前記第3配線と同じ信号レベルを伝達するために設けられた第4配線と、を備え、
前記他の配線は、前記第3配線である
請求項
1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1配線から第4配線の一部分は、前記配線層内において第1配線、第3配線、第2配線、第4配線の順に並ぶ
請求項
6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ビアは、前記延伸部分と、前記配線層とは異なる配線層における前記他の配線の本体部分とを接続する
請求項
2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記延伸部分の長さは、前記半導体装置のデザインルールの最小寸法よりも大きい
請求項
1から8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1配線および前記第2配線は、DICE(Dual Interlocked storage CEll)ラッチ回路の構成要素である
請求項1から
9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1配線および前記第2配線は、BISER(Built in Soft Error Resiliency)フリップフロップ回路の構成要素である
請求項1から
9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラッチ回路を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置において、ロジック回路中のラッチ回路(フリップフロップ回路とも呼ばれる)におけるソフトエラーが問題となっている。ソフトエラーとは、宇宙線等の粒子線がラッチ回路へ衝突することにより、ノイズが入りラッチの状態を反転させる一時的なエラーを指す。
【0003】
ソフトエラー耐性の高い回路として、例えば、特許文献1の
図2に示されるラッチ回路は、4つのインバーター回路を備え、二重化された冗長な回路構成を有する。各インバーター回路のPMOSトランジスタとNMOSトランジスタのゲートへは同じデータが入力されるが、異なるノードに接続されている。それら4つのノードのうちどれか1つにソフトエラーとなり得るノイズが入っても、他のノードにより復帰させることができる。
【0004】
また、特許文献2は、大規模集積回路(LSI)において電気的不良を高い感度と短い検査時間で検出する検査方法に関して、平行な一対の櫛歯状導体を有するコの字状の第1の配線と、第1の配線に対して入れ子状に配置され且つ平行な一対の櫛歯状導体を有するコの字状の第2の配線とを有する基本配線パターンを具備する半導体装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5369771号公報
【文献】特開2007-103598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術によれば、同じ信号レベルになる冗長な配線ペアがショートした場合には、ソフトエラー耐性が悪化しているにも拘わらず、検査段階で当該ショートを検出できないという問題がある。
【0007】
本開示は、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減する半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る半導体装置は、第1配線と、前記第1配線と接続されず、かつ、前記第1配線と同じ信号レベルを伝達するために設けられた第2配線と、前記第1配線および前記第2配線と異なる配線である他の配線と、を備え、配線層内において、前記第1配線と前記第2配線との距離は、前記第1配線と前記他の配線との距離より大きく、かつ、前記第2配線と前記他の配線との距離より大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の半導体装置によれば、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る半導体装置に形成される回路例を示す図である。
【
図2】
図2は、配線層内における配線レイアウトの第1例を示す図である。
【
図3】
図3は、配線層内における配線レイアウトの第2例を示す図である。
【
図4】
図4は、配線層内における配線レイアウトの第3例を示す図である。
【
図5】
図5は、配線層内における配線レイアウトの第4例を示す図である。
【
図6】
図6は、配線層内における配線レイアウトの第5例を示す図である。
【
図7】
図7は、配線層内における配線レイアウトの第6例を示す図である。
【
図8】
図8は、配線層内における配線レイアウトの第7例を示す図である。
【
図9】
図9は、配線層内における配線レイアウトの第8例を示す図である。
【
図10】
図10は、配線層間における配線レイアウトの第1例を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、配線層間における配線レイアウトの第2例の変形例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態1に係る半導体装置に形成される他の回路例を示す図である。
【
図14】
図14は、比較例におけるラッチ回路のショート例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
本開示者は、「背景技術」の欄において記載した、ソフトエラー耐性の高い回路に関し、以下の問題が生じることを見出した。この問題について
図14を用いて具体的に説明する。
【0012】
図14は、比較例におけるラッチ回路のショート例を示す説明図である。
図14の(a)に示すラッチ回路は、4つのPMOSトランジスタと4つのNMOSトランジスタを備える。直列接続されたPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとのペアは、インバーター回路を構成する。
【0013】
通常のラッチ回路はインバーター回路を2つ備えるのに対して、
図14の(a)は、4つのインバーター回路を備える。
図14の(a)のラッチ回路は、二重化された冗長な構成によりソフトエラー耐性を向上させている。
【0014】
図14の(a)において、4つのインバーター回路は、4つの配線w1~w4により接続されている。配線w1と配線w3とは、冗長な配線ペアであり、同じ信号レベルになるが独立した配線である。同様に、配線w2と配線w4とは、冗長な配線ペアであり、同じ信号レベルになるが独立した配線である。
【0015】
同図では、冗長な配線ペアの配線w1および配線w3を細い線で描き、ローレベルである例を示している。また、他の冗長な配線ペアの配線w2および配線w4を太い線で描き、ハイレベルである例を示している。
【0016】
各インバーター回路のPMOSトランジスタとNMOSトランジスタのゲートへは同じ信号レベルが入力されるが、異なる配線に接続されている。つまり、PMOSトランジスタのゲートには冗長な配線ペアの一方が接続される。NMOSトランジスタのゲートには冗長な配線ペアの他方が接続される。このように、4つのインバーター回路でループが構成されているため、1つのインバーター回路の出力が反転しても、他の3つのインバーター回路によって正しい値が保たれる構造となっている。こうして同図のラッチ回路はソフトエラー耐性を高めている。
【0017】
図14の(b)は、破線枠sh1に示すように、配線w1と配線w3とがショートしたことを示す。また、
図14の(c)は、破線枠sh2に示すように、配線w2と配線w4とがショートしたことを示す。このようなショートは、ラッチ回路を含む半導体装置の製造プロセスにおいて、例えば、金属粒子などの導電性の異物の混入によって起こり得る。
【0018】
図14の(b)および(c)ではいずれも、冗長な配線ペアがショートしている。つまり、破線枠sh1および破線枠sh2でショートした配線ペアは、相互に接続されない独立した配線であるが、ラッチ回路の動作では常に同じ信号レベルになる。それゆえ、
図14の(b)および(c)ではいずれも、ラッチ回路は正常に動作し異常を示さない。しかしながら、ショートにより配線ペアの冗長性を失っているので、ソフトエラー耐性が悪化しているという問題がある。
【0019】
さらに、破線枠sh1および破線枠sh2のショートは、半導体装置の製造工程における検査段階で検出不可能である。すなわち、破線枠sh1および破線枠sh2のショートに起因するソフトエラーの耐性が悪化したことを検出不可能であるという問題がある。
【0020】
そこで、本開示は、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減する半導体装置を提供する。
【0021】
このような問題を解決するために、本開示の一態様に係る半導体装置は、第1配線と、前記第1配線と接続されず、かつ、前記第1配線と同じ信号レベルを伝達するために冗長に設けられた第2配線と、前記第1配線および前記第2配線と異なる配線である他の配線と、を備え、配線層内において、前記第1配線と前記第2配線との距離は、前記第1配線と前記他の配線との距離より大きく、かつ、前記第2配線と前記他の配線との距離より大きい。
【0022】
これによれば、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。なぜなら、配線間距離と同じくらいの大きさの異物が混入した場合に、第1配線と第2配線とのショートよりも、第1配線または第2配線と他の配線とのショートの方が生じやすくなるからである。その結果、検出不可能なショートの発生が抑制され、言い換えれば、冗長な配線ペアのショートの発生が抑制される。
【0023】
異物混入により第1配線または第2配線と他の配線とがショートした場合は、異常動作を引き起こす確率が高いので、工場出荷前の検査段階で、ショートを検出可能である。
【0024】
このように、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0025】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0026】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本開示の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
【0027】
(実施の形態1)
[1 半導体装置の回路例]
図1は、実施の形態1に係る半導体装置に形成される回路例を示す図である。
【0028】
同図の回路例は、第1~第4の反転回路i1~i4を有するラッチ回路L1を備える。第1~第4の反転回路i1~i4は、4つの第1型MOSトランジスタpt1~pt4と、4つの第2型MOSトランジスタnt1~nt4とを備える。このラッチ回路L1は、冗長な配線ペアを有する回路の一例として、いわゆるDICE(Dual Interlocked storage CEll)ラッチ回路を示している。
【0029】
第1の反転回路i1は、第1型MOSトランジスタpt1と、第2型MOSトランジスタnt1と、第1型MOSトランジスタpt1のドレインおよび第2型MOSトランジスタnt1のドレインに接続された出力ノードo1とを有する。
【0030】
第2の反転回路i2は、第1型MOSトランジスタpt2と、第2型MOSトランジスタnt2と、第1型MOSトランジスタpt2のドレインおよび第2型MOSトランジスタnt2のドレインに接続された出力ノードo2とを有する。
【0031】
第3の反転回路i3は、第1型MOSトランジスタpt3と、第2型MOSトランジスタnt3と、第1型MOSトランジスタpt3のドレインおよび第2型MOSトランジスタnt3のドレインに接続された出力ノードo3とを有する。
【0032】
第4の反転回路i4は、第1型MOSトランジスタpt4と、第2型MOSトランジスタnt4と、第1型MOSトランジスタpt4のドレインおよび第2型MOSトランジスタnt4のドレインに接続された出力ノードo4とを有する。
【0033】
第1~第4の反転回路i1~i4の第1型MOSトランジスタのそれぞれのソースは、電位VDDの電源線に接続され、第2型MOSトランジスタのそれぞれのソースは、電位VSSのGND線に接続される。
【0034】
なお、第1型は、P型およびN型の一方の導電型を意味する。第2型は、P型およびN型の他方の導電型を意味する。
図1の例では、第1型はP型、第2型はN型である。以下では、第1型をP、第2型をNと表記することがある。また、第1型MOSトランジスタをPMOSトランジスタ、第2型MOSトランジスタをNMOSトランジスタと表記することがある。
【0035】
第1~第4の反転回路は、4つの配線w11、w12、w21、w22により接続されている。配線w11と配線w12とは、冗長な配線ペアであり、同じ信号レベルになるが、相互に接続されない独立した配線である。同様に、配線w21と配線w22とは、冗長な配線ペアであり、同じ信号レベルになるが、相互に接続されない独立した配線である。なお、冗長な配線ペアを構成する各配線は、配線層内の金属配線部分だけでなく、配線層間のビアコンタクトと、トランジスタのゲート、ソースおよびドレインの各電極と、回路素子の各端子電極等を含む一連の導電体を意味する。以下では、ビアコンタクトは、単にビアと記すことがある。
【0036】
配線w11は、第1の反転回路i1の出力ノードo1と、第2の反転回路i2の第1型MOSトランジスタpt2のゲートg2および第4の反転回路i4の第2型MOSトランジスタnt4のゲートとを接続する。
【0037】
配線w21は、第2の反転回路i2の出力ノードo2と、第3の反転回路i3の第1型MOSトランジスタpt3のゲートg3および第1の反転回路i1の第2型MOSトランジスタnt1のゲートとを接続する。
【0038】
配線w12は、第3の反転回路i3の出力ノードo3と、第4の反転回路i4の第1型MOSトランジスタpt4のゲートg4および第2の反転回路i2の第2型MOSトランジスタnt2のゲートとを接続する。
【0039】
配線w22は、第4の反転回路i4の出力ノードo4と、第1の反転回路i1の第1型MOSトランジスタpt1のゲートg1および第3の反転回路i3の第2型MOSトランジスタnt3のゲートとを接続する。
【0040】
このような接続により、4つのインバーター回路でループが構成される。そのため、1つのインバーター回路の出力がソフトエラーにより反転しても、他の3つのインバーター回路によって正しい値が保たれる構造となっている。こうして、同図のラッチ回路L1はソフトエラー耐性を高めている。
【0041】
図1に示したラッチ回路L1は、半導体装置内の半導体基板上に形成された半導体回路の一部を構成する。半導体基板上に形成された半導体回路は、複数のp型不純物領域、複数のn型不純物領域、複数の配線層、配線層間をつなぐ複数のコンタクト等を含む。
【0042】
図1のラッチ回路L1の構成要素である冗長な配線ペアは、1つ以上の配線層に形成される。本実施の形態では、半導体装置の製造プロセスにおいて、異物の混入等による冗長な配線ペアにショートが発生しにくいように冗長な配線ペアが配置されている。
【0043】
次に、1つの配線層内における冗長な配線ペアの配線レイアウトについて説明する。
【0044】
[2.1 配線層内における配線レイアウトの第1例]
図2は、半導体装置の配線層内における配線レイアウトの第1例を示す図である。同図は、
図1のラッチ回路L1が形成された半導体基板を平面視した図である。また、
図2は、1つの配線層内に形成される複数の配線のうち、一部分を模式的に拡大した図である。
図2では、4つの配線11、12、21、22のレイアウトを示す。
【0045】
配線11と配線12とは、冗長な配線ペアを示す。具体的には、配線12は、配線11と接続されず、かつ、配線11と同じ信号レベルを伝達するために冗長に設けられた配線である。配線11と配線12とは例えば、
図1の配線w11とw12とに対応する。
【0046】
配線21は、配線11および配線12と異なる他の配線である。配線22も、配線11および配線12と異なる配線である。
【0047】
図中のaは、配線11と配線12との距離を示す。b1は、配線11と配線21との距離を示す。b2は、配線12と配線21との距離を示す。b3は、配線11と配線22との距離を示す。b4は、配線12と配線22との距離を示す。なお、これらの距離はいずれも、配線間の最小距離である。
【0048】
これらの配線のレイアウトは、次の関係を満たす。
【0049】
配線11と配線12との距離aは、配線11と配線21との距離b1よりも大きい。
【0050】
配線11と配線12との距離aは、配線12と配線21との距離b2よりも大きい。
【0051】
配線11と配線12との距離aは、配線11と配線22との距離b3よりも大きい。
【0052】
配線11と配線12との距離aは、配線12と配線22との距離b4よりも大きい。
【0053】
この関係を満たすことにより、異物が混入した場合に、冗長な配線ペアである配線11と配線12とのショートよりも、配線11または配線12と他の配線(21、22)とのショートの方が生じやすくなるからである。その結果、検出不可能なショートの発生が抑制され、言い換えれば、冗長な配線ペアのショートの発生が抑制される。
【0054】
配線11または配線12と他の配線(21、22)とのショートの方が生じやすいので、ショートを検出可能である。したがって、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0055】
図2では、上記の関係を満たすために、配線22は、配線22の本体部分に接続されたビアv2から延伸された延伸部分e1を含む。延伸部分e1の端部は、配線層内において接続されない開放端であってもよい。
【0056】
なお、
図2の配線21と配線22とは、例えば、
図1の配線w21とw22とに対応する配線であってもよい。あるいは、配線21および配線22のそれぞれは、電源線であってもよいし、グラウンド線であってもよい。
【0057】
[2.2 配線層内における配線レイアウトの第2例]
図3は、配線層内における配線レイアウトの第2例を示す図である。同図は、1つの配線層内に形成される複数の配線のうち、一部分を模式的に拡大した図である。
図3では、配線11、12、21のレイアウトを示す。図中のv1は、配線21と他の配線層の配線とを接続するビアコンタクトを示す。e1は、配線21の延伸部分を指す。
【0058】
配線11と配線12とは、冗長な配線ペアを示す。配線21は、配線11および配線12と異なる他の配線である。冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、並行区間に渡って他の配線21を挟んでいる。
【0059】
図3の配線レイアウト例は、
図2と同様に次の関係を満たしている。
【0060】
配線11と配線12との距離aは、配線11と配線21との距離b1よりも大きい。
【0061】
配線11と配線12との距離aは、配線12と配線21との距離b2よりも大きい。
【0062】
図3では、冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線11と配線12とが並行して配置された並行区間に渡って他の配線21を挟むように配置されている。そのために、配線21は、延伸部分e1を有する。つまり、配線21は、配線21の本体部分に接続されたビアv1から延伸された延伸部分e1を含む。この延伸部分e1は、上記の並行区間内において配線11と配線12との間に配置される。また、延伸部分e1の端部は、配線層内において接続されない開放端であってもよい。
【0063】
図3の配線レイアウト例によれば、異物が混入した場合に、冗長な配線ペアである配線11と配線12とがショートする前に、配線11または配線12と他の配線21とがショートしやすい。言い換えれば、冗長な配線ペアのショートが、検出可能な他のショートに置き換わる確率が高い。これにより、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0064】
なお、
図3の配線21は、例えば、
図1の配線w21とw22の一方に対応する配線であってもよいし、電源線であってもよいし、グラウンド線であってもよい。
【0065】
[2.3 配線層内における配線レイアウトの第3例]
図4は、配線層内における配線レイアウトの第3例を示す図である。同図は、1つの配線層内に形成される複数の配線のうち、一部分を模式的に拡大した図である。
図4では、配線11、12、21のレイアウトを示す。図中のv1は、配線21と他の配線層の配線とを接続するビアコンタクトを示す。
【0066】
配線11と配線12とは、冗長な配線ペアを示す。配線21は、配線11および配線12と異なる他の配線である。冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、並行区間に渡って他の配線21を挟んでいる。
【0067】
図4の配線レイアウト例も、
図2と同様に次の関係を満たしている。
【0068】
配線11と配線12との距離aは、配線11と配線21との距離b1よりも大きい。
【0069】
配線11と配線12との距離aは、配線12と配線21との距離b2よりも大きい。
【0070】
図4では、冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線11と配線12とが並行して配置された並行区間に渡って他の配線21を挟むように配置されている。そのために、配線21は、延伸部分e1~e3を有する。つまり、配線21は、配線21の本体部分に接続されたビアv1から延伸された延伸部分e1~e3を含む。延伸部分e1~e3は、連続する1本の配線であり、配線層内において配線11の端部を迂回するように配置される。延伸部分e3の一部は、並行区間に渡って配線11と配線12とに挟まれるように配置される。また、延伸部分e3の端部は、配線層内において接続されない開放端であってもよい。また、
図4の距離b1およびb2はそれぞれ、半導体装置の設計ルール上の配線間の最小間隔であってもよい。また、配線11と配線12との距離aは、設計ルール上の配線間の最小間隔よりも大きい。
【0071】
図4の配線レイアウト例によれば、異物が混入した場合に、冗長な配線ペアである配線11と配線12とがショートする前に、配線11または配線12と他の配線21とがショートしやすい。言い換えれば、冗長な配線ペアのショートが、検出可能な他のショートに置き換わる確率が高い。これにより、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0072】
なお、
図4の配線21は、例えば、
図1の配線w21とw22の一方に対応する配線であってもよいし、電源線であってもよいし、グラウンド線であってもよい。
【0073】
[2.4 配線層内における配線レイアウトの第4例]
図5は、配線層内における配線レイアウトの第4例を示す図である。同図は、1つの配線層内に形成される複数の配線のうち、一部分を模式的に拡大した図である。
図5では、配線11、12、21、22のレイアウトを示す。図中のv1は、配線21と他の配線層の配線とを接続するビアコンタクトを示す。
【0074】
配線11と配線12とは、冗長な配線ペアを示す。また、配線21と配線22とは、冗長な配線ペアを示す。配線11と配線12との配線ペアを第1冗長ペアと呼び、配線21と配線22との配線ペアを第2冗長ペアと呼ぶものとする。
図5では、4つの配線11、12、21、22は、第1冗長ペアの一方の配線11、第2冗長ペアの一方の配線21、第1冗長ペアの他方の配線12、第2冗長ペアの他方の配線22の順に並ぶように配置されている。つまり、2つの冗長ペアの配線が交互に配置され、同じ信号レベルの配線が隣り合わない配置になっている。
【0075】
図5の配線レイアウト例も、
図2と同様に次の関係を満たしている。
【0076】
配線11と配線12との距離aは、配線11と配線21との距離b1よりも大きい。
【0077】
配線11と配線12との距離aは、配線12と配線21との距離b2よりも大きい。
【0078】
図5の配線11、12、21、22のそれぞれは、配線の本体部分であってもよいし、延伸部分であってもよい。
【0079】
図5の配線レイアウト例によれば、異物が混入した場合に、冗長な配線ペアである配線11と配線12とがショートする前に、配線11または配線12と他の配線21または配線22とがショートしやすい。言い換えれば、冗長な配線ペアのショートが、検出可能な他のショートに置き換わる確率が高い。これにより、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0080】
なお、
図5の配線11と配線12とは、
図1の配線w11とw12とに対応する配線であり、配線21と配線22とは、
図1の配線w21とw22とに対応する配線であってもよい。
【0081】
[2.5 配線層内における配線レイアウトの第5例]
図6は、配線層内における配線レイアウトの第5例を示す図である。同図は、1つの配線層内に形成される複数の配線のうち、一部分を模式的に拡大した図である。
図6では、配線11、12、21のレイアウトを示す。図中のv1、v2は、配線21と他の配線層の配線とを接続するビアコンタクトを示す。e1は、配線21の延伸部分を指す。
【0082】
配線11と配線12とは、冗長な配線ペアを示す。配線21は、配線11および配線12と異なる他の配線である。冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、当該並行区間に渡って他の配線21を挟んでいる。
【0083】
図6の配線レイアウト例は、
図2と同様に次の関係を満たしている。
【0084】
配線11と配線12との距離aは、配線11と配線21との距離b1よりも大きい。
【0085】
配線11と配線12との距離aは、配線12と配線21との距離b2よりも大きい。
【0086】
図6では、冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線11と配線12とが並行して配置された並行区間に渡って他の配線21を挟むように配置されている。そのために、配線21は、延伸部分e1を有する。つまり、配線21は、配線21の本体部分から延伸された延伸部分e1を含む。この延伸部分e1は、上記の並行区間内において配線11と配線12との間に配置される。また、延伸部分e1の端部は、配線層内において接続されない開放端であってもよい。
【0087】
図6の配線レイアウト例によれば、異物が混入した場合に、冗長な配線ペアである配線11と配線12とのショートよりも、配線11または配線12と他の配線21とのショートの方が発生しやすい。言い換えれば、冗長な配線ペアのショートが、検出可能な他のショートに置き換わる確率が高い。これにより、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0088】
なお、
図6の配線21は、例えば、
図1の配線w21とw22の一方に対応する配線であってもよいし、電源線であってもよいし、グラウンド線であってもよい。
【0089】
[2.6 配線層内における配線レイアウトの第6例]
図7は、配線層内における配線レイアウトの第6例を示す図である。同図は、
図6と比べて、配線21の本体部分が他の配線層に属する点と、延伸部分e1が配線21の本体部分からビアv3を介して延伸されている点が異なる。以下、異なる点を中心に説明する。
【0090】
配線21の本体部分は、同図の破線で示すように、配線11および配線12が属する配線層とは異なる他の配線層に属する。
【0091】
延伸部分e1は、他の配線層に属する配線21の本体部分からビアv3を介して延伸されている。これにより、冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、当該並行区間に渡って他の配線21の延伸部分e1を挟んでいる。
【0092】
図7の配線レイアウト例によれば、
図6と同様に、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0093】
[2.7 配線層内における配線レイアウトの第7例]
図8は、配線層内における配線レイアウトの第7例を示す図である。同図は、
図3と比べて、電源配線が追記されている点が異なる。以下、異なる点を中心に説明する。
【0094】
配線21は、電源配線であり、電源配線の本体部分から延伸された延伸部分e1、e2を有する。電源配線は、例えば、配線層内でラッチ回路L1の全部または一部を囲むように配置された配線であってもよいし、他の配線層に形成されたシールド配線であってもよい。
【0095】
図8の配線レイアウト例によれば、
図3と同様に、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0096】
[2.8 配線層内における配線レイアウトの第8例]
図9は、配線層内における配線レイアウトの第8例を示す図である。同図は、1つの配線層内に形成される複数の配線のうち、一部分を模式的に拡大した図である。
図9では、配線11、12、21、22のレイアウトを示す。図中のv1は、配線21と他の配線層の配線とを接続するビアコンタクトを示す。v2は、配線22と他の配線層の配線とを接続するビアコンタクトを示す。e1は、配線21の延伸部分を示す。e2は、配線22の延伸部分を示す。
【0097】
配線11と配線12とは、冗長な配線ペアを示す。配線21は、配線11および配線12と異なる他の配線である。配線22は、配線11および配線12と異なる別の他の配線である。この配線21と配線22とは、冗長な配線ペアではない。冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、当該並行区間の大部分に渡って他の配線21と、別の他の配線22とを挟んでいる。他の配線21と別の他の配線22とは、間隔d1を開けて同じ直線上に配置されている。
【0098】
図9の配線レイアウト例は、
図2と同様に次の関係を満たしている。
【0099】
配線11と配線12との距離aは、配線11と配線21または配線22との距離b1よりも大きい。
【0100】
配線11と配線12との距離aは、配線12と配線21または配線22との距離b2よりも大きい。
【0101】
さらに、
図9では、配線11と配線12との距離aは、配線21と配線22との距離d1よりも大きい。言い換えれば、配線11と配線12とが隣り合って並行する区間(つまり他の配線を挟んでいない区間)の距離d1は、配線11と配線12との距離aよりも小さい。
【0102】
図9では、冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、配線11と配線12とが並行して配置された並行区間の大部分に渡って配線21または配線22を挟むように配置されている。そのために、配線21は、延伸部分e1を有し、配線22は、延伸部分e2を有する。つまり、延伸部分e1、e2の端部は、配線層内において接続されない開放端であってもよい。
【0103】
図9の配線レイアウト例によれば、
図3と同様に冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0104】
なお、
図9の配線21は、例えば、電源線であってもよいし、グラウンド線であってもよい。配線22も、例えば、電源線であってもよいし、グラウンド線であってもよい。
【0105】
図2~
図9では、1つの配線層内における冗長な配線ペアの配置レイアウト例を示した。以下では、異なる配線層における冗長配線ペアの配置レイアウトについて説明する。
【0106】
[3.1 配線層間における配線レイアウトの第1例]
図10は、配線層間における配線レイアウトの第1例を示す図である。同図の(a)は、ラッチ回路L1が形成された半導体基板を平面視した配線レイアウトを示す。同図の(b)は、(a)のA-A線の断面を示し、3つの配線層M1~M3を含む。同図では、配線層M1~M3に形成された配線のうち、冗長な配線ペアに関連する部分を模式的に拡大した図である。
図10では、冗長な配線ペアの配線11と配線12とを示す。
【0107】
図10に示すように、冗長な配線ペアの配線11と配線12とは、異なる配線層に属する。つまり、配線11は、配線層M3に属し、配線12は、配線層M2とM1に属し、ビアコンタクトを含む。
【0108】
異なる配線層における冗長な配線ペアは、次の関係を満たすように配置される。すなわち、配線11と配線12の配線層が異なっている場合、配線11と配線12との距離aは、隣り合う配線層間の層間距離cよりも大きい。同図において配線11と配線12との距離としてa1、a2、a3の3つを記してあるが、配線11と配線12との距離aは最小となるa1またはa3である。配線11と配線12とは、a>cを満たすように配置される。
【0109】
より詳しく説明すると、
図10において、半導体装置の平面視において配線11と配線12とは重なる部分を有し、交差している。配線12は、重なる部分に対応する第1部分配線12bと、第1部分配線12bの一端に接続される第2部分配線12aと、第1部分配線12bの他端に接続される第3部分配線12cと、を有する。第1部分配線12bは、配線層M1に属する。第2部分配線12aおよび第3部分配線12cは、配線層M1とは異なる配線層M2に属し、第1部分配線12bとビアコンタクトv1、v2を介して接続される。配線11は、配線層M1から配線層M2よりも離れた配線層M3に属する。この配置レイアウトにより、上記の関係(つまりa>c)を容易に満たすことができる。
図10では、重なる部分における配線11と配線12との距離a2は、層間距離cの2倍以上を満たすように配置されている。
【0110】
図10の配置レイアウトによれば、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。なぜなら、層間距離cと同じくらいの大きさの異物が混入した場合に、配線11と配線12とのショートが生じにくくなっている。これにより、冗長な配線ペアのショートの発生が抑制される。
【0111】
なお、
図10の配線層M1~M3は、この配置順であれば、複数の配線層のうちの任意の3つであってもよい。ただし、層間距離cは、
図10の配線層M2と配線層M3の間の距離とは限らず、隣り合う2つの配線層間の最小距離である。
【0112】
[3.2 配線層間における配線レイアウトの第2例]
図11Aは、配線層間における配線レイアウトの第2例を示す図である。同図の(a)は、ラッチ回路L1が形成された半導体基板を平面視した配線レイアウトを示す。同図の(b)は、(a)のB-B線の断面を示し、2つの配線層M2、M3を含む。同図では、配線層M2、M3に形成された配線のうち、冗長な配線ペアに関連する部分を模式的に拡大した図である。
図11Aでは、冗長な配線ペアの配線11と配線12とを示す。
【0113】
同図の(a)の平面視において、配線11と配線12とが重ならないように、配線12は配線11の端部を迂回するように配置されている。
【0114】
この配置レイアウトにより、上記の関係(つまりa>c)を容易に満たすことができる。
【0115】
図11Aの配置レイアウトによれば、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。なぜなら、層間距離cと同じくらいの大きさの異物が混入した場合に、配線11と配線12とのショートが生じにくくなっている。これにより、冗長な配線ペアのショートの発生が抑制される。
【0116】
[3.3 配線層間における配線レイアウトの第2例]
図11Bは、配線層間における配線レイアウトの第2例の変形例を示す図である。同図は、
図11Aと比べて、配線31を備える点が異なっている。以下、異なる点を中心に説明する。配線31は、配線11または配線12の隣に配置され、ビアコンタクトv1と、延伸部分e1を含む。ビアコンタクトv1は、他の配線層M4の配線31部分と配線層M3の配線31とを接続する。延伸部分e1は、ビアコンタクトv1から延伸されている。また、次のような延伸ルールを設けてもよい。すなわち、ビアv1から延伸部分e1の端部までの長さe1は、半導体装置の設計ルールにおける配線の最小寸法よりも大きい。なお、この延伸ルールは他の図面の延伸部分に適用してもよい。
【0117】
図11Bでは、配線31の延伸部分e1は、冗長な配線ペアの一方の配線と同じ配線層内で隣り合い、他方の配線と異なる配線層間で隣り合うように配置されている。また、距離aは、配線11と配線31との距離よりも大きく、かつ、配線12と配線31との距離よりも大きい。
【0118】
配線設計CADによっては、もし、配線31なしで
図11Aを実現しようとすれば、冗長ペアの間には最小限の配線のみを活用しなければならないという限定がつくことがあり、レイアウトが困難な場合がある。配線11または配線12の隣に配線31を適宜配置すれば、冗長な配線ペアの配置を容易に設計できる。結果的に、
図11Bのような冗長な配線ペアのレイアウトを容易にすることができる。
【0119】
[4 半導体装置の他の回路例]
次に、冗長な配線ペアを有する他の回路例について説明する。
【0120】
図12は、実施の形態1に係る半導体装置に形成される他の回路例を示す図である。同図の半導体装置は、ソフトエラー耐性を組み込んだ回路として、BISER(Built in Soft Error Resilience)型のフリップフロップ回路の構成例を示す。
【0121】
同図のフリップフロップ回路は、遅延回路DLと、インバーターIVと、マスターラッチML0、ML1と、マスターC要素CMと、スレーブラッチSL0、SL1と、スレーブC要素CSと、マスター弱保持回路WMと、スレーブ弱保持回路WSとを備え、2重化されたマスタースレーブ構造になっている。
図12中の冗長な配線ペアは、スレーブラッチSL0の出力Qnに接続される配線、および、スレーブラッチSL1の出力Qnに接続される配線である。
【0122】
遅延回路DLは、マスターラッチML0への入力データDを時間τだけ遅延してマスターラッチML1に出力する。
【0123】
インバーターIVは、クロック信号Cpを反転したクロック信号Cnを出力する。
【0124】
マスターラッチML0は、クロック信号Cpおよびクロック信号Cnに同期して、入力データDをラッチして、データQpを出力する。出力データQpは、データDと同じ論理レベルの非反転出力データである。
【0125】
マスターラッチML1は、クロック信号Cpおよびクロック信号Cnに同期して、遅延された入力データDをラッチして、データQpを出力する。出力データQpは、データDと同じ論理レベルの非反転出力データである。
【0126】
マスターC要素CMは、2入力1出力の反転回路であり、2入力が確定した同じ論理レベルであるとき当該論理レベルの反転したレベルを出力し、2入力が確定した同じ論理レベルでないときハイインピーダンスになる。
【0127】
マスター弱保持回路WMは、ウィークキーパー(Weak Keeper)回路であり、マスターC要素CMが出力する論理レベルを保持し、マスターC要素CMの出力がハイインピーダンスであるときは、ハイインピーダンスになる直前に保持していた論理レベルを出力する。
【0128】
スレーブラッチSL0は、クロック信号Cpおよびクロック信号Cnに同期して、入力データDをラッチして、データQnを出力する。出力データQnは、データDを反転した論理レベルのデータである。
【0129】
スレーブラッチSL1は、クロック信号Cpおよびクロック信号Cnに同期して、入力データDをラッチして、データQnを出力する。出力データQnは、データDを反転したデータである。
【0130】
スレーブC要素CSは、2入力1出力の反転回路であり、2入力が確定した同じ論理レベルであるとき当該論理レベルの反転した論理レベルを出力し、2入力が確定した同じ論理レベルでないときハイインピーダンスになる。スレーブC要素CSの回路例を
図13に示す。同図のスレーブC要素CSは、2つのPMOSトランジスタと、2つのNMOSトランジスタとで構成される。2つのPMOSトランジスタと2つのNMOSトランジスタとは直列に接続される。なお、マスターC要素CMも
図13と同じでよい。
【0131】
スレーブ弱保持回路WSは、ウィークキーパー(Weak Keeper)回路であり、スレーブC要素CSが出力する論理レベルと同じ論理レベルを保持し、スレーブC要素CSの出力がハイインピーダンスであるときはハイインピーダンスになる直前に保持していた論理レベルを出力する。
【0132】
このようなフリップフロップ回路において、もし 2組のマスター・スレ-ブラッチのうちの一方がソフトエラーによって反転した場合、マスターC要素CMまたはスレーブC要素CSの出力はハイインピーダンスとなるが、マスター弱保持回路WMまたはスレーブ弱保持回路WSが保持している論理レベルによって正しいデータを保つことができる。
【0133】
図12のフリップフロップ回路における冗長な配線ペアは、スレーブラッチSL0の出力端子とスレーブC要素CSの2つの入力端子のうちの一方とを接続する配線と、スレーブラッチSL1の出力端子とスレーブC要素CSの2つの入力端子のうちの他方とを接続する配線とからなる。言い換えれば、スレーブラッチSL0の出力配線およびスレーブラッチSL1の出力配線は、冗長な配線ペアである。
【0134】
この配線ペアは、
図2~
図11Bで説明した配置レイアウトの関係を満たす。これにより、
図12のフリップフロップ回路内の冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0135】
なお、
図12中のマスターラッチML0の出力配線およびマスターラッチML1の出力配線は、冗長な配線ペアと同じ扱いをしてもよい。すなわち、
図2~
図11Bで説明した配置レイアウトの関係を満たしてもよい。
【0136】
マスターラッチML1の入力データDは、マスターラッチML0の入力データDよりも時間τだけ遅れている。これにより、マスターラッチML1の出力データQpは、マスターラッチML0の出力データQpよりも時間τだけ遅れる。本明細書では、「冗長な配線ペアは、同じ信号レベルになるが、相互に接続されない独立した配線である」と定義される。マスターラッチML0の出力配線およびマスターラッチML1の出力配線は、この定義を満たさない。しかし、マスターラッチML0の出力配線およびマスターラッチML1の出力配線は、
図14に示した配線ショートの問題が生じ得るし、また、遅延時間τ以外は冗長な配線ペアの定義にほぼ該当する。このことから、マスターラッチML0の出力配線およびマスターラッチML1の出力配線は、
図2~
図11Bで説明した配置レイアウトの関係を満たすことによって、ソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。
【0137】
なお、実施の形態では冗長な配線ペアとして、二重化された例を示したが、三重以上の多重化された複数の配線のうちの2つの配線の組み合わせのそれぞれを、配線ペアとみなしてもよい。この場合、配線ペアとみなされる2つの配線は、
図2~
図11Bで説明した配置レイアウトの関係を満たせばよい。
【0138】
以上説明してきたように実施の形態における半導体装置は、第1配線11と、第1配線11と接続されず、かつ、第1配線11と同じ信号レベルを伝達するために設けられた第2配線12と、第1配線11および第2配線12と異なる配線である他の配線と、を備え、配線層内において、第1配線11と第2配線12との距離aは、第1配線11と他の配線との距離より大きく、かつ、第2配線12と他の配線との距離より大きい。
【0139】
これによれば、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。なぜなら、配線間距離と同じくらいの大きさの異物が混入した場合に、第1配線と第2配線とのショートよりも、第1配線または第2配線と他の配線とのショートの方が生じやすくなるからである。その結果、検出不可能なショートの発生が抑制され、言い換えれば、冗長な配線ペアのショートの発生が抑制される。
【0140】
ここで、第1配線11と第2配線12とは、配線層内において、並行して配置された並行区間を有し、並行区間において他の配線を挟んでもよい。
【0141】
ここで、他の配線は、配線層内において当該他の配線の本体部分から延伸された延伸部分e1を含み、延伸部分e1は、配線層内の並行区間内において第1配線11と第2配線12との間に挟まれてもよい。
【0142】
ここで、他の配線は、当該他の配線の本体部分に接続されたビアから延伸された延伸部分e1を含み、延伸部分e1は、配線層内の並行区間内において第1配線11と第2配線12との間に挟まれてもよい。
【0143】
ここで、他の配線は、配線層内において当該他の配線の本体部分から分岐して延伸された延伸部分e1を有し、延伸部分e1は、配線層内の並行区間内において第1配線11と第2配線12との間に挟まれてもよい。
【0144】
ここで、延伸部分e1の端部は、配線層内において接続されない開放端であってもよい。
【0145】
ここで、延伸部分e1~e3は、配線層内において第1配線11の端部を迂回し、さらに並行区間内に配置されてもよい。
【0146】
ここで、半導体装置は、さらに、第3配線と、第1配線11と接続されず、かつ、第3配線と同じ信号レベルを伝達するために設けられた第4配線と、を備え、他の配線は、第3配線であってもよい。
【0147】
ここで、第1配線11から第4配線の一部分は、配線層内において第1配線11、第3配線、第2配線12、第4配線の順に並んでもよい。
【0148】
これによれば、第1冗長ペアの一方の配線、第2冗長ペアの一方の配線、第1冗長ペアの他方の配線、第2冗長ペアの他方の配線の順に並ぶので、冗長ペアのショートを防止または低減できる。
【0149】
ここで、ビアは、延伸部分と、上記の配線層とは異なる配線層における他の配線21、22の本体部分とを接続してもよい。
【0150】
ここで、延伸部分の長さは、半導体装置のデザインルールの最小寸法よりも大きくてもよい。
【0151】
ここで、第1配線11と第2配線12とは、配線層内において他の配線21、22と、別の他の配線とを挟むように並行して配置された区間を含み、区間内における他の配線21、22と別の他の配線との距離d1は、第1配線11と第2配線12との距離よりも小さくてもよい。
【0152】
ここで、第1配線11および第2配線12は、DICE(Dual Interlocked storage CEll)ラッチ回路を構成してもよい。
【0153】
ここで、第1配線11および第2配線12は、BISER(Built in Soft Error Resiliency)フリップフロップ回路を構成してもよい。
【0154】
また、実施の形態における半導体装置は、複数の配線層と、第1配線11と、第1配線11と接続されず、かつ、第1配線11と同じ信号レベルを伝達するために設けられた第2配線12と、を備え、第1配線11と第2配線12とは異なる配線層に属し、第1配線11と第2配線12との距離a1は、隣り合う配線層の層間距離cより大きい。
【0155】
これによれば、冗長な配線ペアのショートに起因するソフトエラー耐性の悪化を低減することができる。なぜなら、配線間の距離と同じくらいの大きさの異物が混入した場合に、第1配線と第2配線とのショートが生じにくくなっている。言い換えれば、冗長な配線ペアのショートの発生が抑制される。
【0156】
ここで、半導体装置の平面視において第1配線11と第2配線12とが重なる部分を有し、重なる部分における第1配線11と第2配線12との距離は、層間距離cの2倍以上であってもよい。
【0157】
ここで、半導体装置の平面視において第1配線11と第2配線12とは重なる部分で交差し、第2配線12は、重なる部分に対応する第1部分配線12bと、第1部分配線12bの一端に接続される第2部分配線12aと、第1部分配線12bの他端に接続される第3部分配線12cと、を有し、第1部分配線12bは、第1配線層M1に属し、第2部分配線12aおよび第3部分配線12cは、第1配線層M1とは異なる第2配線層M2に属し、第1部分配線12bとビアコンタクトv1、v2を介して接続され、第1配線11は、第1配線層M1から第2配線層M2よりも離れた第3配線層M3に属してもよい。
【0158】
ここで、半導体集積回路の平面視において第1配線11と第2配線12とが重ならないように、第2配線12は第1配線11の端部を迂回するように配置されてもよい。
【0159】
ここで、半導体装置は、さらに、第1配線11および第2配線12の少なくとも一方と、配線層間または配線層内で対向する第3配線31を備え、第3配線31は、ビアコンタクトv1から延伸された延伸部分e1を有していてもよい。
【0160】
ここで、延伸部分e1の長さは、半導体装置のデザインルールの最小寸法よりも大きくてもよい。
【0161】
以上、一つまたは複数の態様に係る半導体装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本開示は、ラッチ回路またはフリップフロップ回路を備える半導体装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0163】
11、12、21、22 配線
e1~e3 延伸部分
g1~g4 ゲート
i1 第1の反転回路
i2 第2の反転回路
i3 第3の反転回路
i4 第4の反転回路
nt1~nt4 NMOSトランジスタ
o1~o4 出力ノード
pt1~pt4 PMOSトランジスタ
v1~v3 ビア
w11、w12、w21、w22 配線
CM マスターC素子
CS スレーブC素子
L1 ラッチ回路
M1~M3 配線層
ML0、ML1 マスターラッチ
SL0、SL1 スレーブラッチ
WM マスター弱保持回路
WS スレーブ弱保持回路