(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】電気流体力学的流れユニットによる電子部品の冷却
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240917BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H05K7/20 M
H05K7/20 B
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2021554757
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020056370
(87)【国際公開番号】W WO2020182820
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-28
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】518251479
【氏名又は名称】エイピーアール、テクノロジーズ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】APR TECHNOLOGIES AB
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】アル、ビョルネクレット
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル、ニルソン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト、トーシュルンド
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-109451(JP,A)
【文献】特開2015-231013(JP,A)
【文献】特開2017-027873(JP,A)
【文献】特表2014-502752(JP,A)
【文献】特開2015-094568(JP,A)
【文献】特表2019-506123(JP,A)
【文献】国際公開第2017/127017(WO,A1)
【文献】特開2002-316873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品の熱管理のための構成であって、
前記発熱部品は、筐体の内部に配置され、かつ、誘電性液体と熱的に接触しており、前記構成は、前記筐体の内部に配置された第1電気流体力学的流れユニットすなわち第1EHD流れユニットを含み、
前記第1EHD流れユニットは、第1電極と、前記第1電極からオフセットして配置された第2電極と、を含み、
前記第1EHD流れユニットは、前記第1電極と前記第2電極との間における前記誘電性液体の流れを制御するように構成されているものであり、前記筐体を少なくとも部分的に規定するように構成された筐体壁をさらに含み、前記筐体壁は、前記発熱部品の1つに対して取り付けられるように構成され、且つ、前記発熱部品を搭載したインターポーザに対して取り付けられるように構成され、これにより、前記筐体を規定する
ものであり、
前記筐体の内部に配置された第2EHD流れユニットをさらに含み、前記第2EHD流れユニットは、第1電極と、前記第1電極からオフセットして配置された第2電極と、を含み、
前記第1EHD流れユニットは、前記発熱部品に向けて前記流れを案内するように構成され、
前記第2EHD流れユニットは、前記発熱部品から離間するように前記流れを案内するように構成されており、
前記第1EHD流れユニットの前記第1電極と前記第1EHD流れユニットの前記第2電極との少なくとも一方は、前記発熱部品上に配置されている、構成。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極との少なくとも一方は、前記発熱部品の表面上に設けられた導電層によって形成されている、
請求項1に記載の構成。
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極とのうちの前記少なくとも一方は、前記発熱部品上に設けられたグラフェン層によって形成されている、
請求項1または2に記載の構成。
【請求項4】
前記第1電極と前記第2電極との少なくとも一方は、前記筐体壁の内部上に配置されている、
請求項1に記載の構成。
【請求項5】
前記第2電極は、コレクタ電極として動作するように構成され、前記発熱部品上と前記筐体壁の内部上との両方に配置されており、
前記第1
EHD流れユニットの前記第1電極は、前記筐体壁の前記内部上に配置された前記コレクタ電極と比較して、前記発熱部品上に配置された前記コレクタ電極に対して、より近くに配置されたエミッタ電極を形成し、
前記第1
EHD流れユニットの前記第1電極は、前記発熱部品上に配置された前記コレクタ電極と比較して、前記筐体壁の前記内部上に配置された前記コレクタ電極に対して、より近くに配置されたエミッタ電極を形成している、
請求項1に記載の構成。
【請求項6】
前記筐体壁と熱的に接触している熱交換器をさらに含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の構成。
【請求項7】
前記熱交換器と前記筐体壁の外部との間に配置された熱界面材料すなわちTIMをさらに含む、
請求項6に記載の構成。
【請求項8】
前記TIMは、グラフェンを含む、
請求項7に記載の構成。
【請求項9】
デバイスであって、
熱管理のための
請求項1に記載の構成と、
前記筐体の内部に配置された複数の発熱部品と、を含む、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、熱管理の分野に関し、より具体的には、小規模な発熱部品の熱管理の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電子システムの性能は、多くの場合、利用可能な熱管理技術によって制限されている。より小さな部品で、消費電力がより大きいということは、より小さな面積でより大きな発熱があることを意味する。その結果、部品を適切な温度範囲に維持するためには、より効率的な熱管理が必要とされる。言い換えれば、体積的な要求とエネルギとの両方の観点から、効率を向上させる必要性が高まっている。
【0003】
これらの問題点に対処する1つの試みは、浸漬冷却の使用であり、この場合、冷却対象をなす電子デバイスに対して直接的に接触している誘電性流体が、ポンプユニットを使用して循環されることとなる。ポンプユニットは、電子デバイス上へと誘電性流体を能動的に圧送するように配置され得る。しかしながら、このためには、電子デバイスに向けて流れを案内するためのノズルが必要となり、この技術は、高価であることと嵩張ることとが知られている。そのため、発熱部品に関連した熱管理のための、より小型でより効率的な技術が要望されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明における少なくともいくつかの実施形態の目的は、上述の欠点を克服することあるいは少なくとも軽減することである。特に、目的は、熱管理流体の流れの効率を向上させ得る構成を提供することである。格別の目的は、電気流体力学的システムすなわちEHDシステム内を循環する誘電性流体の効率を向上させることである。
【0005】
これらの関心事の1つまたは複数に対してより良好に対処するために、独立請求項で規定されている特徴点を有した構成が提供される。好ましい実施形態は、従属請求項に規定されている。
【0006】
第1の態様によれば、熱管理のための構成が開示され、発熱部品は、筐体の内部に配置され、かつ、例えば誘電性液体などの熱管理流体と熱的に接触している。
【0007】
構成は、筐体の内部に配置された第1電気流体力学的流れユニットすなわち第1EHD流れユニットを含む。第1EHD流れユニットは、第1電極と、第1電極からオフセットして配置された第2電極と、を含む。第1流れユニットは、第1電極と第2電極との間における熱管理流体の流れを制御するように構成されてもよく、これにより、筐体内における流体の流れに影響を与えることができる。流れユニットは、例えば、流体を発熱部品に向けて案内するように、および/または、流体を発熱部品から離間するように案内するように、配置されてもよい。発熱部品は、例えば、プロセッサ、例えばフリップチップデバイスなどの形態の電子回路またはチップ、テープボンディングされたデバイス、ワイヤボンディングされたデバイス、その他の態様でボンディングされたデバイス、プリント回路基板、あるいは、そのような基板上に実装されたデバイス、を含んでもよい。一例では、発熱部品は、バッテリまたはキャパシタであってもよい。
【0008】
いくつかの実施形態は、同じ構成の内部で複数の部品を同時に冷却し得るよう、同じ筐体の内部に配置された複数の発熱部品を含んでもよい。
【0009】
第1流れユニットは、この流れユニットの第1電極と第2電極との間に電圧差を印加することによって活性化されてもよい。電極によって生成される電界は、流体に流れを引き起こしてもよい。流れユニットを非活性化またはオフとすることにより、流れユニットは、さらに、流れユニットを通過する流れを低減または停止させ得る動作モードへと移行されてもよい。この効果は、流体の制御をひいては冷却効果をさらに増大させるために、使用されてもよい。流れユニットは、例えば、電極どうしの間の電圧差を低減または停止することによって、あるいは、流れユニットを通過する流れを打ち消す電圧差を印加することによって、非活性化されてもよい。
【0010】
第1電極は、また、「エミッタ」または「エミッタ電極」と称されてもよく、他方、第2電極は、「コレクタ」または「コレクタ電極」と称されてもよい。使用時には、エミッタは、電子を流体内へと放出するように構成されてもよく、および/または、エミッタの近くで、流体の粒子または不純物などの物質を負に帯電させるように構成されてもよい。
【0011】
本発明の概念は、発熱部品と直接的に接触させ得る熱管理流体の一例をなす誘電性液体と組み合わせて使用された時には、特に有利である。EHD流れユニットを使用することにより、例えばマニホールドおよびノズルを使用することなく、液体の流れを、特定の向きに案内することができる。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、構成は、上述した第1EHD流れユニットと同様の態様で構成され得る複数のEHD流れユニットを含んでもよい。よって、一実施形態によれば、構成は、筐体の内部に配置された第1および第2の電気流体力学的流れユニットすなわち第1および第2のEHD流れユニットをさらに含んでもよく、第1流れユニットは、発熱部品に向けて流れを案内するように構成されてもよく、第2流れユニットは、発熱部品から離間するように流れを案内するように構成されてもよい。
【0013】
本態様は、EHD流れユニットが部品に向けて流れを案内するようにしてならびに別のEHD流れユニットが部品から離間するように流れを案内するようにして複数のEHD流れユニットを筐体の内部に配置することにより、流れのより正確な制御をひいてはより効率的な冷却を達成し得るという点において、有利である。
【0014】
筐体の内部における流れユニットの数および構成は、達成されるべき所望の流れによって決定されてもよい。例えば、複数の流れユニットは、共通の平面内または異なる層内のいずれかで、グリッド構造として配置されてもよい。これにより、筐体内における複数の流体の流れに関する制御を改良することができ、発熱部品の特定の領域を、例えばその側面をまたは部品の底面をまたは一般的に高温スポットを、対象とすることができる。これは、また、必要であれば、特定の領域が、より少ない流れに曝され得ることを意味する。
【0015】
この特定の対象選定は、流れユニットを形成する電極の相対的な配向性によって可能となる。さらに、エミッタ電極とコレクタ電極との相対的な配向性は、部品へと向かう流れの角度に影響を与え得る、あるいは、いくつかの例では、部品上への流れの入射角度に影響を与え得る。流れの向きは、例えば、部品の表面に対して垂直であってもよく、あるいは、部品の表面に対して平行であってもよく、あるいは、それらの間の特定の角度であってもよい。流れユニットの向きおよび構成は、特定の用途に合わせて調整されてもよく、したがって、構成は、多数の異なる部品および熱管理要件に適応可能とされてもよい。
【0016】
上述したように、熱管理のための構成は、EHD効果によって加速され得る熱管理流体を使用して動作するように構成されてもよい。本発明の実施形態を使用して圧送し得るそのような流体の例には、すなわち液体および気体の例には、例えば、アセトン、アルコール、ヘリウム、窒素、および、例えばフロリナート(商標)またはノベック(商標)などのフルオロカーボン系流体、などの誘電体が含まれる。より具体的には、熱管理流体は、浸漬冷却技術に適した誘電性流体であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの流れユニットの第1電極と第2電極とのうちの少なくとも一方は、発熱部品上に配置されてもよい。これは、発熱部品の表面を、第1電極または第2電極のいずれかとして、流れユニットの一部として利用することを意味し、このことは、発熱部品の少なくとも一部が、コレクタ電極またはエミッタ電極のいずれかとして関与することを可能とする。これにより、部品上に配置された電極が、発熱部品に向けて流れを引き寄せ得ることのために、あるいは、発熱部品上へと流れを直接的に衝突させ得ることのために、冷却効果を増大させ得る。
【0018】
更なる実施形態では、電極は、発熱部品の表面上に導電層を設けることによって形成されてもよい。この導電層は、有利には、電子を放出/受領する能力が比較的良好な材料を含んでもよい。これに代えてあるいはこれに加えて、導電層は、部品に向けてのまたは部品からの熱伝達を改良するように構成されてもよい。さらに、層をなす材料は、圧送された流体に対して化学的に安定したものまたは不活性なものであってもよい。
【0019】
電子の放出/吸収を、および/または熱伝達を、改良するための層の例には、例えばグラファイトまたはグラフェンを含むような、2Dフィルムおよび3Dフィルムが含まれる。グラフェンは、例えば、2D層などの1つまたは複数の層として提供されてもよく、あるいは、発泡体として提供されてもよい。上述した電極に加えて、構成が、熱管理流体に向けての/熱管理流体からの熱伝達を改良するために設けられた層またはコーティングをさらに含んでもよいことは、理解されよう。このような層またはコーティングは、いくつかの例では、グラファイトまたはグラフェンを含んでもよく、発熱部品の表面上に、または筐体を規定する表面上に、配置されてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、筐体の壁部分が、電極として機能してもよい。これは、筐体構造のより多くの部分が、コレクタまたはエミッタのいずれかとして機能することができ、これにより、流れの効率を向上させ得るという利点を有している。これは、また、複数の別個の流れユニットを有した実施形態と比較して、すなわち、筐体壁の一部を形成しないおよび/または部品の一部を形成しない複数の流れユニットが筐体内部に配置された実施形態と比較して、空間効率の高い解決策として機能し得る。更なる実施形態は、発熱部品と壁部分との両方を電極として利用してもよい。
【0021】
一実施形態によれば、複数の流れユニットは、1つまたは複数の電極を共有してもよい。例えば、1つの電極が、エミッタユニットとして使用される多数の電極に対してのコレクタユニットとして、機能してもよい。1つのエミッタ電極と複数のより小さなコレクタ電極とを利用するという逆の構成も、また、可能である。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、複数の流れユニットは、発熱部品と筐体壁の内部との両方に配置されたコレクタ電極を含むように、配置されてもよい。その場合、エミッタ電極は、コレクタ電極との距離を変更しつつ、コレクタどうしの間に配置されてもよい。エミッタ電極とコレクタ電極との間の距離は、流れが発生する向きを決定してもよい。よって、壁に対してより近くに配置されたエミッタ電極は、その壁へと向かう流れを引き起こしてもよく、これにより、その壁上に配置されたコレクタ電極を有した流れユニットを形成してもよい。発熱部品に対してより近くに配置されたエミッタ電極は、その発熱部品へと向けて案内する流れユニットでありかつそのコレクタ電極がその発熱部品上に配置された流れユニットを、形成してもよい。言い換えれば、エミッタ電極とコレクタ電極との間の距離が、流れユニットの向きを規定してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、電極は、様々な表面構造を含んでもよい。表面は、表面積を増大させるよう、例えば、ピークのような形状であってもよく、または、大きな表面粗さを有していてもよい。電極と通過流体との間の比較的大きな接触面は、電極と流体との間の相互作用を促進してもよい。例えば、これは、イオンまたは電子の注入または吸収だけでなく、熱伝導も容易とし得る。
【0024】
いくつかの実施形態によると、筐体は、例えば筐体壁などの閉塞性バリアによって取り囲まれた容積として規定されてもよい。筐体壁は、基板に対して取り付けられてもよく、あるいは、発熱部品上に取り付けられてもよく、それゆえ、取り囲まれた容積を規定するバリアの一部を形成してもよい。いくつかの実施形態によれば、筐体壁は、ファンアウト基板またはハイブリッド基板/キャリアとも称され得るインターポーザでありかつ冷却対象をなす部品を保持し得るインターポーザに対して、取り付けられるように構成されてもよい。インターポーザは、デバイスの小さなピッチの接点を保持するとともにより大きなピッチの接点に対しての接続を提供するアダプタとして、機能してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、取り囲まれた容積は、流体が循環することによって部品から筐体壁へと熱を伝達し得る閉塞システムを形成してもよい。他の実施形態によれば、筐体壁には、ポンプまたは熱交換器などの外部部材に対して熱管理流体を循環させるための導入口および導出口が設けられていてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、筐体は、筐体から熱を伝達するための熱交換器であるとともに、例えば炭素繊維構造または流体チューブなどの熱交換器に対して、熱的に接触しているように構成されてもよい。熱交換器は、例えば、部品から離間する向きに伝達された熱を放散するために、筐体の頂部上に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、熱伝達を改良するために、グラフェンなどの熱界面材料が、筐体壁と熱交換器との間に配置されてもよい。
【0027】
本発明の更なる目的、特徴点、および利点は、以下の詳細な開示、図面、および添付の特許請求の範囲を検討した際に、明瞭となるであろう。本発明の異なる特徴点が、異なる請求項に記載されていたとしても、以下に説明するもの以外の実施形態において組み合わせ得ることは、当業者であれば理解されよう。
【0028】
本発明に関する、上記のならびに追加的な、目的、特徴、および利点は、本発明の実施形態に関する以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明を通して、より良好に理解されよう。以下のような添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、筐体と、発熱部品と、筐体内に配置された複数の流れユニットと、を含む熱管理システムを示す概略的な断面図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、流れユニットに関し、発熱部品に関連した例示的な構成を示している。
【
図4】
図4は、一実施形態に基づいて電極表面を増大させた熱管理システムを示す概略的な図である。
【
図5】
図5は、電極が設けられた発熱部品の一実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
すべての図は、概略的であり、また、一般に縮尺どおりではなく、さらに、本発明を説明するために必要な部分のみを一般に示しており、それに対して、他の部分は、省略されるかまたは示唆するに留める場合がある。
【0031】
図1は、インターポーザ150に対して取り付けられた発熱部品110と、筐体120を規定する筐体壁と、を含む熱管理システム100を示している。発熱部品110は、例えば、本図に示すようなフリップチップ、ワイヤボンディングされた部品、または、例えばプロセッサなどの、テープ自動ボンディングされたデバイス、を含んでもよい。いくつかの例では、発熱部品は、キャパシタまたはバッテリであってもよい。筐体120の内部には、熱管理流体が設けられてもよい。熱管理流体は、冷却物質であってもよく、例えば、誘電性ガス、沸騰液体、または誘電性液体130、を含む冷却物質であってもよい。熱管理流体が沸騰液体として利用される場合には、筐体壁は、ガスを筐体から逃がし得る多孔質構造または毛細管構造を形成する部分を、例えば天井などとして、有し得る。
【0032】
図示の実施形態は、誘電性流体130が筐体120の内部で循環する閉塞システムを示唆しているけれども、他の実施形態は、流体を筐体130から導出して筐体130内へと導入するように循環させ得る導入口および導出口を含んでもよい。
【0033】
筐体130内では、流れユニット140、141、142、143を使用して、流体を流動させてもよい。流れユニット140は、第1電極および第2電極を含んでもよく、電極上に電圧を印加することにより、流れFを発生させてもよい。電極どうしの間の電界を減少または停止することにより、流れFを減少または停止させてもよく、これにより、冷却効果を低下させて、発熱部品110に関する最適温度を実現することができる。この実施形態では、流れユニット140~143は、発熱部品110と筐体壁121との間に配置されている。しかしながら、他の実施形態では、発熱部品110の周囲および/または下方に配置された流れユニットを含み得ることは、理解されよう。いくつかの例では、部品110の下方での流体の流れをさらに増大させるよう、1つまたは複数の流れユニット110が、発熱部品110の半田バンプどうしの間に配置されてもよい。
【0034】
本実施形態では、1つおきの流れユニット140、142が、発熱部品110へと向かう流れF1を生成するようにして、かつ、残りの流れユニット141、143が、部品110から離間する向きF2の流体の流れを生成するようにして、複数の流れユニットが配置されている。さらに、熱交換器160が、筐体壁121と熱的に接触した状態で配置されてもよい。熱交換器160は、流体から熱エネルギを除去するための、ヒートパイプ、ヒートシンクまたは同様の構造、を形成してもよい。他の実施形態では、熱交換器160を壁の内部に設けてもよく、外部のポンプ構成に対して接続してもよい。
【0035】
図2A、
図2B、および
図2Cは、
図1に関連して説明した構成と同様に構成され得る熱管理システム100の実施形態を示している。これらの例では、流れユニット140は、エミッタ電極と称され得る第1電極140aと、コレクタ電極と称され得る第2電極140bと、を含む。図示の構成では、すべての流れユニットは、誘電性液体130内に浸漬されてもよい。図示のように、筐体120は、筐体壁121と発熱部品110とによって規定されてもよく、筐体壁121は、発熱部品110上に密封的に取り付けられ得る。
【0036】
図2Aは、1つのユニットとして互いに一緒に配置された第1電極140aおよび第2電極140bを含む第1流れユニット140を示している。電極140aおよび140bに対して印加された電圧は、誘電性流体を、発熱部品110に向けて、F方向に流れさせてもよい。
【0037】
図2Bは、2つの流れユニット140、141(破線で示す)を示しており、それぞれの流れユニット140、141の第1電極140a、141aは、第2電極140/141bから分離されており、結果として生じる流れFは、部品に向けて案内されている。この実施形態では、第1電極すなわちエミッタ電極は、部品110と筐体壁121との間に配置されており、他方、第2電極すなわちコレクタ電極140/141bは、発熱部品110の表面上に配置されている。電圧が印加された時には、第1電極140a、141aは、発熱部品110に向けて、誘電性流体の流れFを生成することができる。さらに、
図2Bでは、流れユニット140および141は、1つの共有された第2電極140/141bを有するものとして図示されており、このことは、第2電極140/141bが、複数の第1電極140a、141aのためのコレクタとして機能し得ることを意味している。
【0038】
図2Cでは、第2電極140b、141bは、図において上下の両方に設けられている、すなわち、筐体壁121の内部または天井と、発熱部品110の上面上と、の両方に設けられている。第1電極140a、141aは、筐体壁121の天井と、部品110の上面と、の間に設けられてもよい。流れユニット140は、流れF1を、下向きにすなわち部品110に向けて案内しており、他方、流れユニット141は、流れF2を、上向きにすなわち筐体の天井に向けて案内している。
【0039】
流れF1、F2の異なる向きは、少なくとも2つの異なる独立したメカニズムによって達成され得る。第1メカニズムは、電子放出構造であり、電子放出を容易とする表面構造を有するものとして図示された第1電極140aによって図示されている。この実施形態では、それらは、下向きのチップまたはニードルとして図示されており、電極140aの放出方向を決定している。
【0040】
第2メカニズムは、電極どうしの間の相対距離である。第1電極141aは、第2電極140b、141bに対しての距離によって決定される流れ方向を有している。第1電極140a、141aと第2電極140b、141bとの間の最短距離が、流れFの向きを規定する。
図2Cでは、電極141aは、部品上に配置されたコレクタ電極140bと比較して、筐体の天井に配置されたコレクタ電極141bに対して、より近くに位置しており、したがって、部品から離間する向きに流れを案内する流れユニット141を形成している。
【0041】
図3Aおよび
図3Bは、これまでの図に図示した実施形態と同様に構成され得る熱管理システム100の実施形態を示している。本実施例では、流れユニットの配置は、熱管理流体130の流れFを、発熱部品110に向けて案内するためのおよび発熱部品110から離間するように案内するための異なる代替構成を表している。
【0042】
図3Aは、電極140a~142bが、筐体壁121の内面上におよび発熱部品110上に取り付けられている実施形態を示している。この実施形態では、壁部分121と部品110との両方に、第1電極140a~142aと第2電極140b~142bとの両方が設けられている。発熱部品110上の電極は、中央に位置した第2電極141bと、この第1電極141bの両サイドに位置した2つの第1電極140a、142aと、を含んでもよい。筐体壁121上では、逆の構成が利用され、両サイドに第2電極140b、142bが配置され、第1電極141aは、中央に位置している。その結果、3つの別個の流れユニットが形成されている。これにより、発熱部品へと向かう流れF2と、発熱部品から離間する流れF1と、が生成され得る。
【0043】
図3Bは、流れFが発熱部品110に対して平行に案内されている実施形態を示している。この実施形態は、部品110の上流側が下流側と比較して冷却をより必要とする場合に好適であり得る変形例を示している。この図は、部品の両側方に位置した電極140a、140bを図示しており、これらの電極は、筐体の内壁に対して取り付けられてもよい。第1電極140aは、流れを部品110に向けて案内してもよく、第2電極140bは、流れを部品110から離間するように案内してもよい。同様に、平行な流れの向きFは、発熱部品上に配置された電極を使用することによっても、得ることができる。
【0044】
図4は、これまでに説明したいずれかの実施形態と同様の態様で構成され得る熱管理システム100を示す概略的な図である。
図4では、筐体壁121は、流れユニットの効率を向上させるように構成され得る。これは、例えば、筐体壁121のうちの、第1電極140aを含む部分に、粗い形状を設けることによって達成してもよく、これにより、この電極140aの表面積を増大させることができる。この増大は、潜在的に、流れF1を促進させることができる。さらに、ピークなどの特定の形状は、流れをさらに促進させることができる。この特定の実施形態では、発熱部品110は、筐体の壁部分の全体を含み、この発熱デバイス110は、第1電極141aと第2電極140bとの両方として機能してもよい。さらに、熱交換器160が、筐体壁121と熱的に接触した状態で配置されてもよい。熱交換器160は、例えば、筐体からひいては発熱デバイスから間接的に熱エネルギを放散させるための、ヒートパイプまたはヒートシンクであってもよい。筐体壁121と熱交換器160との間には、この実施形態では、熱伝達を増強させるために、例えばグラフェンなどの熱界面材料170が配置されてもよい。
【0045】
図5は、冷却対象をなす発熱部品110を示す平面図である。この部品110は、これまでの図に図示したものと同様の実施形態の一部を形成してもよい。この実例では、部品110は、複数の流れユニットの一部として利用されてもよい。部品上には、第1電極141a~144aおよび第2電極140bに関する例示的なレイアウトが図示されている。この実施形態では、第2電極すなわちコレクタ電極140bは、部品の中央に配置され、他方、放出する第1電極141a~144aは、部品の側辺に沿って配置されている。これは、例えば、発熱部品の中央領域を冷却するという利点をもたらすことができ、熱管理流体の管状の流れを生成することができる。