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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】フルオロエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/16 20060101AFI20240917BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20240917BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240917BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
C08L27/16
C08K5/3432
C08K5/13
C08K3/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021556423
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2020058435
(87)【国際公開番号】W WO2020188125
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】19163926.9
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボスソロ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】アルバーノ, マルゲリータ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-003099(JP,A)
【文献】特表2018-514627(JP,A)
【文献】特開昭62-089754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロエラストマー組成物[組成物(C)]であって、
- フッ化ビニリデン(VDF)及びVDFとは異なる少なくとも1つの更なる(パー)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つのフッ化ビニリデン系フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]と、
- 少なくとも1つの芳香族ポリヒドロキシ化化合物[化合物(OH)]と、
- 少なくとも1つの塩基性化合物[塩基(B)]と、
- 芳香族環4級化窒素原子を有し、且つ、少なくとも水素原子を有し前記芳香族環4級化窒素原子に対してオルト又はパラ位にある環状芳香族炭素のsp-混成炭素に共有結合している中心炭素原子を有する少なくとも2つの基[基(アルファ-H)]を含む、少なくとも1つのピリジニウム型塩[塩(P)]と、
- 有機P、As、Se又はS-オニウム化合物、アミノ-ホスホニウム誘導体、ホスホラン、及びジホスフィン-イミニウム化合物からなる群から選択される、塩(P)とは異なる少なくとも1つの促進剤[促進剤(A)]と、を含み、
前記塩(P)は、式(P-1)から(P-12):
(式中:
- J及びJ’のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して出現ごとに、C-R (R は、H又はC ~C 12 炭化水素基である)又はNであり、
- Eは、N又は式C-R° の基であり、
- Zは、1~12の炭素原子を含む二価の炭化水素基であり、
- Wは、結合である、又は1~12の炭素原子を含む二価の炭化水素基及び1~12の炭素原子を含む二価のフルオロカーボン基からなる群から選択される架橋基であり、
- 式(P-11)及び(P-12)で、記号:
で略記された基は、環において、1つ以上の更なる窒素原子、任意選択的に4級化窒素原子を含み得る、ピリジニウム型芳香族環に縮合した芳香族単核又は多核環を示し、
- R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 10 、R 11 、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 、R 16 、R 17 、R 18 、R 19 、R 20 、R 21 、R 22 、R 23 、R 24 、R 25 、R 26 、R 27 、R 28 H、 29 、R 30 、R 31 、R 32 、R 33 、R 34 、R 35 、R 36 及びR° のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して出現ごとに-H又は式:
(式中、R 及びR は、互いに等しく又は異なり、独立して、H又は炭化水素C ~C 基である)の基[基(アルファ-H)]であり、
- yは、互いに等しく又は異なり、独立して、酸素、又はとりわけ脂肪族基又は芳香族基であり得、N、O、S及びハロゲンから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含み得るC ~C 12 炭化水素基であり、
- A (m-) は、m価のアニオンであり、但し、
(i)塩(P)が式(P-1)のものである場合、R 、R 、及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(ii)塩(P)が式(P-2)のものである場合、R 及びR は、基(アルファ-H)であり、
(iii)塩(P)が式(P-3)のものである場合、R 、R 、R 、及びR の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(iv)塩(P)が式(P-4)のものである場合、R 、R 10 、R 11 、R 12 、及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(v)塩(P)が式(P-5)のものである場合、R 13 、R 14 、及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(vi)塩(P)が式(P-6)のものである場合、R 15 、R 16 、R 17 、及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(vii)塩(P)が式(P-7)のものである場合、R 18 、R 19 、R 20 、R 21 、及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(viii)塩(P)が式(P-8)のものである場合、R 22 、R 23 、R 24 、及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(ix)塩(P)が式(P-9)のものである場合、R 25 、R 26 、R 27 、及びR 28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(x)塩(P)が式(P-10)のものである場合、R 29 、R 30 、R 31 、R 32 、及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(xi)塩(P)が式(P-11)のものである場合、R 33 、R 34 、及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(xii)塩(P)が式(P-12)のものである場合、R 35 、R 36 及びR° の少なくとも2つは、基(アルファ-H)である)
のいずれかに従う化合物からなる群から選択され、
前記塩基(B)は、
i)二価の金属酸化物、
ii)金属の水酸化物、
iii)3よりも高いpK を有する弱酸の金属塩、からなる群から選択される無機塩基である、且つ/或いは
前記塩基(B)は、
(j)一般式(B1m)又は(B1d)に従う非芳香族アミン又はアミド:
bm -[C(O)] -NR (B1m)
N-[C(O)] t’ -R dm -[C(O)] t” -NR (B1d)
(式中:
- t、t’及びt’’のそれぞれは、互いに及び出現ごとに等しく又は異なり、ゼロ又は1であり、
- R のそれぞれは、独立して、H又はC ~C 12 炭化水素基であり、
- R bm は、1~30の炭素原子を有する一価の炭化水素非芳香族基であり、
- R dm は、1~30の炭素原子を有する二価の炭化水素非芳香族基である)、並びに
(jj)一般式(B2m)又は(B2d)に従う脂環式2級又は3級アミン:
(式中:
- Cyは、少なくとも4つの炭素原子を含み、任意選択的に1つ又は複数のエチレン性不飽和二重結合を含み、任意選択的に1つ又は複数のカテナリー窒素原子を含む二価の脂肪族基であって、それに結合されている窒素原子と環を形成する二価の脂肪族基を表し、
- Cy’は、少なくとも5つの炭素原子を含み、任意選択的に1つ又は複数のエチレン性不飽和二重結合を含み、任意選択的に1つ又は複数のカテナリー窒素原子を含む三価の脂肪族基であって、それに結合されている窒素原子と環を形成する三価の脂肪族基を表す)、
(jjj)一般式(B3)に従う芳香族アミン又はアミド:
Ar -{[C(O)] -NR (B3)
(式中:
- tは、互いに及び出現ごとに等しく又は異なり、ゼロ又は1であり、
- wは、1~4の整数であり、
- R のそれぞれは、独立して、H又はC ~C 12 炭化水素基であり、
- Ar は、S及びOからなる群から選択される1つ又は複数のカテナリーヘテロ原子を場合により含む単核又は多核芳香族基である)、
(jv)ヘテロ芳香族環に含まれた少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロ芳香族アミン、
(v)式(B4)又は(B5):
(式中:
- R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、H又はC ~C 12 炭化水素基である)のグアニジン誘導体、並びに
グアニジン(B4)及び(B5)の対応する塩、
(vj)金属アルコキシレート、からなる群から選択される有機塩基である、
フルオロエラストマー組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
(1)式(P-1)の塩(P)は、式(P-1-a)~(P-1-e):
(式中:
- R及びRは、請求項1に定義された意味を有し、
は、請求項1に定義された意味を有し、
- R及びRのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、H又はC~C12炭化水素基であり、
- A及びmは、請求項1に定義された意味を有する)に従うものであり、且つ/又は
(2)式(P-2)の塩(P)は、式(P-2-a):
(式中:
- R及びRは、請求項1に定義された意味を有し、
は、請求項1に定義された意味を有し、
- R及びRのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、H又はC~C12炭化水素基であり、
- A及びmは、請求項1に定義された意味を有する)に従うものであり、且つ/又は
(3)式(P-3)の塩(P)は、式(P-3-a):
(式中:
- R及びRは、請求項1に定義された意味を有し、
は、請求項1に定義された意味を有し、
- A及びmは、請求項1に定義された意味を有する)に従うものであり、且つ/又は
(4)式(P-4)の塩(P)は、式(P-4-a):
(式中:
- R及びRは、請求項1に定義された意味を有し、
- wは、1~12整数であり、
- A及びmは、請求項1に定義された意味を有する)に従うものであり、且つ/又は
(5)式(P-5)の塩(P)は、式(P-5-a):
(式中:
- R及びRは、請求項1に定義された意味を有し、
は、請求項1に定義された意味を有し、
- A及びmは、請求項1に定義された意味を有する)に従うものであり、且つ/又は
(6)式(P-11)の塩(P)は、式(P-11-a):
(式中:
- R及びRは、請求項1に定義された意味を有し、
は、請求項1に定義された意味を有し、
- A及びmは、請求項1に定義された意味を有する)に従うものであり、且つ/又は
(7)式(P-12)の塩(P)は、式(P-12-a):
(式中:
- R及びRは、請求項1に定義された意味を有し、
は、請求項1に定義された意味を有し、
- A及びmは、請求項に定義された意味を有する)に従うものである、請求項に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記塩基(B)として、1つ又は複数の有機塩基、1つ又は複数の無機塩基、或いは有機塩基と無機塩基の混合物が使用される、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記化合物(OH)は、
- ジヒドロキシ、トリヒドロキシ及びテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレン、及びアントラセン、並びに
- 式(B):
(式中:
- Z’は、少なくとも1つの塩素又はフッ素原子で任意選択的に置換された二価C~C13アルキル又はアルキリデン基、C~C13脂環式、C~C13芳香族又はアリールアルキレン基、チオ(-S-)、オキシ(-O-)、カルボニル(-C(O)-)、スルフィニル(-S(O)-)及びスルホニル基(-SO-)からなる群から選択され、
- xは0又は1であり、
- uは、互いに等しく又は異なり、独立して出現ごとに少なくとも1の整数であり、
- フェニル環は、塩素、フッ素、臭素、-CHO、C~Cアルコキシ基、-COOR10基(式中、R10はH又はC~Cアルキル、C~C14アリール、C~C12シクロアルキルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意選択的に置換され得る)のビスフェノールからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの促進剤は、
- 式(O):
{[RQ] n-
(式中:
- Qは、リン光体、ヒ素、アンチモン、硫黄からなる群から選択され、
- Xは、有機又は無機アニオンであり、
- nはXアニオンの原子価であり、
- R、R、R、Rのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、
~C20アルキル基、C~C20アリール基、C~C20アリールアルキル基、C ~C20アルケニル基、
塩素、フッ素、臭素から選択されるハロゲン、
シアノ基、式-OR又は-COOR(式中、Rは、アルキル、アリール、アリールアルキル又はアルケニルである)の基からなる群から選択され、、R、R、Rから選択される2つの基は、Qと環状構造を形成し得、
但し、Qが硫黄原子であるときR、R、R、Rラジカルのうちの1つは存在していない)に従うP、As、Se又はS-オニウム化合物、
- 式(AP-1)又は(AP-2)に従うアミノホスホニウム誘導体:
{[P(NR 4-nq-(AP-1)
{[R 3-r(NRP-E-P(NR 3-r2+}{Yq-2/q(AP-2)
(式中:
- R、R及びRのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、
~C18アルキル基、~Cシクロアルキル基、C~C18アリール基、~C18アリールアルキル基、
1つ又は複数のヒドロキシル又は酸素エーテル基を含むC~C18オキシアルキル基からなる群から選択され、
、R及びRは、ハロゲン、CN、OH、カルバルコキシ基を任意選択的に含むことができ、R及びRは、窒素原子と複素環を形成することができ、
- Eは、C~C二価アルキレン、オキシアルキレン又はC~C12アリーレンラジカルであり、
- nは、1~4の整数であり、
- rは、1~3の整数であり、
- qはアニオンYの原子価であり、
- Yは、原子価qを有する有機又は無機のアニオンであり、Yは、ハロゲン化物、過塩素酸塩、硝酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、ハロ酢酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、フェネート、ビスフェネート、水酸化物から選択することができ、Y、複合アニオンであり得る)、
-式(Ph):
(式中:
- Ar’のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、任意選択的に置換されたアリール基であり、
- R10及びR11のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、-H、-CN、C~Cアルキル、-O-C(O)-R12基、-C(O)-R12基、-NR13C(O)-R12基からなる群から選択され、R12はC~C(シクロ)アルキル基であり、R13はH又はC~C(シクロ)アルキル基であり、
10及びR11は、P=C結合の炭素原子と一緒に環状基を場合により形成する)に従うホスホラン、並びに
- 式(I)に従うジホスフィン-イミニウム化合物:
[(R14P=N=P(R14z-(I)
(式中:
- R14は、互いに出現ごとに等しく又は異なり、O、N、S、ハロゲンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む1つ又は複数の基を任意選択的に含む、C~C12炭化水素基からなる群から選択され、
- Xは、原子価zのアニオンであり、zは、一般に1又は2の整数である)からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記フルオロエラストマー(A)は、前記フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、少なくとも15モル%のVDFに由来する繰り返し単位を含み、且つ/又は前記フルオロエラストマー(A)は、前記フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、多くとも85モル%のVDFに由来する繰り返し単位を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項7】
VDFとは異なる前記少なくとも1つの更なる(パー)フッ素化モノマーは、
(a)C パーフルオロオレフィン、
(b)VDFとは異なる水素含有C~Cオレフィン、
(c)C ~Cクロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-フルオロオレフィン、
(d)式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(パー)フルオロアルキル基である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、
(e)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC~C12((パー)フルオロ)-オキシアルキルである)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル、
(f)式:
(式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、フッ素原子、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC~Cフルオロ-又はパー(ハロ)フルオロアルキルである)を有する(パー)フルオロジオキソール、
(g)式:
CFX=CXOCFOR”
(式中、R”は、直鎖又は分枝鎖のC ~C(パー)フルオロアルキル~C環状(パー)フルオロアルキル及び1~3のカテナリー酸素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の、C~C(パー)フルオロオキシアルキルの中から選択され、X=F、Hである)を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)、からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
フルオロエラストマー(A)は、以下のモノマー組成物(モル%単位で):
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%、ビス-オレフィン(OF)0~5%、
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5~50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~20%、ビス-オレフィン(OF)0~5%、
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20~30%、C~C非フッ素化オレフィン(Ol)10~30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18~27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%、
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33~75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15~45%、フッ化ビニリデン(VDF)5~30%、ヘキサフルオロプロペンHFP0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%、
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)5~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%を有するフルオロエラストマーからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ルオロエラストマー(A)の100重量部当たり(phr)少なくとも0.1重量部の量の、及び/又はフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり多くとも10重量部の量の塩(P)を含み、且つ/又は
ルオロエラストマー(A)の100重量部当たり(phr)少なくとも0.2重量部の量の、及び/又はフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり多くとも25重量部の量の前記塩基(B)を含み、且つ/又は
ルオロエラストマー(A)の100重量部当たり少なくとも0.5重量部、及び/又は多くとも15重量部の量の前記化合物(OH)を含み、且つ/又は
ルオロエラストマー(A)の100重量部当たり少なくとも0.05重量部、及び/又はフルオロエラストマー(A)の100重量部当たり多くとも8重量部の量の前記促進剤(A)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
ルオロエラストマー(A)の100重量部当たり少なくとも10重量部、及び/又は多くとも50重量部の量の、少なくとも1つの強化充填剤を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)を使用することを含む、造形品の製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)から得られる硬化品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月20日付けで出願された欧州特許出願公開第19163926.9号の優先権を主張し、当出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フルオロエラストマー硬化性組成物、これの硬化方法、及びこれに由来する硬化品に関する。
【背景技術】
【0003】
加硫処理したフルオロエラストマーは、耐熱性、耐化学薬品性、耐候性などの幾つかの望ましい特性のために、様々な用途で、特にオイルシール、ガスケット、シャフトシール、Oリングなどのシーリング品の製造用に使用されてきた。
【0004】
それにもかかわらず、「重合したままの」フルオロエラストマーは、最終部品において示されるべき必要なシーリング及び機械的特性を確保するために硬化/架橋プロセス(いわゆる「加硫」)を受けることが必要とされる。
【0005】
幾つかの技術が、期待される性能をもたらすことができる三次元硬化構造の構築を確実にするために開発されており、基本的な化学は一般に、フルオロエラストマーポリマー鎖間の連結を提供するために架橋剤を必要とする。イオン硬化システムは、ポリヒドロキシ芳香族化合物(典型的にはビフェノール)に基づいており、塩基性化合物とオニウム促進剤の存在下で、鎖内の酸性水素原子の置換を介して「イオン」化学反応を行う。
【0006】
イオン硬化性化合物の例は、米国特許第4734460号明細書(NIPPON MEKTRON)1988年3月29日に記載されており、フルオロエラストマー、二価金属の酸化物又は水酸化物、ポリヒドロキシ芳香族化合物、及び式:
(Rは、アラルキル基であり、R’は、アルキル、アリール又はアラルキル基であり、nは、1~5であり、Xは、アニオンであり、0.1~10phr、好ましくは0.1~2phrの量で使用される)の4級アンモニウム塩を含む特定の組成物を開示している。可能なオニウム塩の長いリストの中で、1-ベンジル-2,4,6-トリメチルピリジニウムクロリドが言及されている。
【0007】
近年、国際公開第2016/180660A号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY SPA)2016年11月17日は、イオン硬化の代替として、環4級化ピリジニウム型窒素に対してオルト又はパラ位にある少なくとも2つの基に反応性水素原子を有する特定のピリジニウム型塩の反応性に依存する、新しい硬化システムを提案している。
【0008】
フルオロエラストマーが自動成形に完全に受け入れられるためには、破損部品、表面の気泡(blister)、及び/又は境界での誇大なバリ(flash)を可能な限り低く、及び/又はバリ又は他の欠陥を除去するための最小限の後処理で処理及び硬化する能力。
【0009】
従って、射出成形の処理速度を上げると、射出成形の動作が改善され、特に成形部品の気泡及びバリが少なくなるフルオロゴムの溶液におけるこの領域での継続的な探求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
出願人は、特定のフルオロエラストマー配合物が、特定のピリジニウム型の塩及び特定のイオン硬化成分の組み合わせ作用によって射出成形及び硬化されることができ、改善された加工性を提供し、高い製造速度でより少ない気泡及びバリを有する部品の製造を可能にすることを見出した。
【0011】
従って、本発明の第1目的は、
- フッ化ビニリデン(VDF)に及びVDFとは異なる少なくとも1つの更なる(パー)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つのフッ化ビニリデン系フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]と、
- 少なくとも1つのポリヒドロキシ化化合物[化合物(OH)]と、
- 少なくとも1つの塩基性化合物[塩基(B)]と、
- 芳香族環4級化窒素原子を有し、且つ、少なくとも水素原子を有し前述の芳香族環4級化窒素原子に対してオルト又はパラ位にある環状芳香族炭素のsp-混成炭素に共有結合している中心炭素原子を有する少なくとも2つの基[基(アルファ-H)]を含む、少なくとも1つのピリジニウム型塩[塩(P)]と、
- 有機P、As、Se又はS-オニウム化合物、アミノ-ホスホニウム誘導体、ホスホラン、及びジホスフィン-イミニウム化合物からなる群から選択される、塩(P)とは異なる少なくとも1つの促進剤[促進剤(A)]と、
を含むフルオロエラストマー組成物[組成物(C)]である。
【0012】
出願人は、驚くべきことに、ポリヒドロキシ化化合物、塩基及び促進剤を伴うイオン硬化を、環4級化ピリジニウム型窒素を含み、反応性水素原子を含む前述の環4級化ピリジニウム型窒素に対してオルト又はパラ位にある少なくとも2つの基を有する塩(P)と組み合わせる場合、前述の混合架橋システムの存在下での成形及び架橋は、従来の機器で、優れた成形及び離型性能で、高収率で且つ実質的に成形ファウリング(mold fouling)なしで、気泡とバリが大幅に減少した、改善された方法で進行することが証明されたことを見出した。
【0013】
この理論に拘束されることなく、出願人は、これが、ポリヒドロキシ化化合物、従ってO原子を介したイオン結合、及び塩(P)、従ってC原子を介したイオン結合の両方を介した二重架橋メカニズムの効果であると考えている。実際、塩(P)は、硬化条件下で、対応するカルバニオンを生成するのに適した反応性を持つ基(アルファ-H)に水素原子を有し、一方、ポリヒドロキシ化化合物は、同じ条件下で、対応する「フェノラート」/「アルコレート」-型のオキシ-アニオンを提供することが知られており、このように形成されたカルバニオン及びオキシアニオンの両方が、フルオロエラストマーポリマー鎖の活性化及びグラフト化を確実にするのに十分な反応性/求核特性を有する。
【0014】
従って、塩(P)は、4級化窒素原子に対してオルト又はパラ位にある前述の基(アルファ-H)を含むことが重要である:塩(P)に類似しているが、オルト又はパラ位にある1つの基(アルファ-H)のみを有する、又はメタ位にある前述の基(アルファ-H)を有する化合物は、効果的ではない。環4級化ピリジニウム型窒素に対してオルト又はパラ位にある少なくとも2つの基を有することができない、従って塩(P)とは異なり、効果的でない化合物の例は、式(Ex-10c)~(Ex-13c)のものである:
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的のためには、用語「フルオロエラストマー」[フルオロエラストマー(A)]は、真のエラストマーを得るためのベース構成成分としての機能を果たすフルオロポリマー樹脂を示すことを意図し、前述のフルオロポリマー樹脂は、10重量%超、好ましくは30重量%超の、少なくとも1つのフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(本明細書では以下、(パー)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位と、任意選択的に、フッ素原子を含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(本明細書では以下、水素化モノマー)に由来する繰り返し単位とを含む。
【0016】
真のエラストマーは、ASTM、Special Technical Bulletin、184号規格により、室温でその固有長さの2倍まで伸張させることができ、且つ5分間張力下に保持した後に解放した時点で同時にその初期長さの10%以内まで復帰する材料として定義される。
【0017】
フルオロエラストマー(A)は、一般に、非晶質生成物、即ち低い結晶化度(20体積%未満の結晶相)及び室温未満のガラス転移温度(T)を有する生成物である。ほとんどの場合、フルオロエラストマー(A)は、有利には10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃未満、更により好ましくは-5℃未満のTを有する。
【0018】
フルオロエラストマー(A)は、典型的には、フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、少なくとも15モル%、好ましくは少なくとも20モル%、より好ましくは少なくとも35モル%のVDFに由来する繰り返し単位を含む。
【0019】
フルオロエラストマー(A)は、典型的には、フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、多くとも85モル%、好ましくは多くとも80モル%、より好ましくは多くとも78モル%のVDFに由来する繰り返し単位を含む。
【0020】
フルオロエラストマー(A)に含まれている繰り返し単位がそれらに由来する、適切な(パー)フッ素化モノマーの非限定的な例はとりわけ、
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、C~Cパーフルオロオレフィン、
(b)フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH=CH-R(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレンなどの、VDFとは異なる水素含有C~Cオレフィン、
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC~Cクロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-フルオロオレフィン、
(d)式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(パー)フルオロアルキル基、例えばCF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、
(e)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC~C12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル、
(f)式:
(式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、フッ素原子、任意選択的に、1つ以上の酸素原子を含むC~Cフルオロ-又はパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば、-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)を有する(パー)フルオロジオキソール、
(g)式:
CFX=CXOCFOR”
(式中、R”は、直鎖又は分枝鎖の、C~C(パー)フルオロアルキル、C~C環状(パー)フルオロアルキル、及び1~3のカテナリー酸素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の、C~C(パー)フルオロオキシアルキルの中から選択され、X=F、Hであり、好ましくは、XはFであり、R”は、-CFCF(MOVE1)、CFCFOCF(MOVE2)、又は-CF(MOVE3)である)を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(本明細書では以下、MOVE)である。
【0021】
一般に、フルオロエラストマー(A)は、VDFに由来する繰り返し単位とHFPに由来する繰り返し単位とを含むであろう。
【0022】
フルオロエラストマー(A)は、任意選択的に更に、フッ素を含まない1つ又は複数のモノマー(本明細書では以下、水素化モノマー)に由来する繰り返し単位を含み得る。水素化モノマーの例はとりわけ、C~C非フッ素化オレフィン(Ol)、特に、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの、C~C非フッ素化アルファ-オレフィン(Ol)、ジエンモノマー、スチレンモノマー、C~C非フッ素化アルファ-オレフィン(Ol)であり、より具体的にはエチレン及びプロピレンが、塩基への増加した耐性を達成するために選択されるであろう。
【0023】
任意選択的に、フルオロエラストマー(A)は、一般式:
(式中、R、R、R、R、R及びRは、互いに等しく又は異なり、H、ハロゲン、又は場合により1つ以上の酸素基を含む、C~Cの任意選択的にハロゲン化された基であり、Zは、酸素原子を任意選択的に含む、直鎖又は分枝鎖のC~C18の任意選択的にハロゲン化されたアルキレン又はシクロアルキレンラジカル、又は例えば欧州特許出願公開第661304A号明細書(AUSIMONT SPA)1995年7月5日に記載されているような、(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである)を有する少なくとも1つのビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位を含み得る。
【0024】
ビス-オレフィン(OF)は、式(OF-1)、(OF-2)、及び(OF-3):
(式中、jは、2~10、好ましくは4~8の整数であり、R1、R2、R3、R4は、互いに等しく又は異なり、H、F、又はC1~5アルキル又は(パー)フルオロアルキル基である)、
(式中、Aのそれぞれは、互いに及び出現ごとに等しく又は異なり、F、Cl、及びHから独立して選択され、Bのそれぞれは、互いに及び出現ごとに等しく又は異なり、F、Cl、H及びORから独立して選択され、Rは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化されることができる分岐又は直鎖アルキルラジカルであり、Eは、エーテル結合が挿入されることができる、任意選択的にフッ素化された、2~10の炭素原子を有する二価基であり、好ましくは、Eは、mが3~5の整数である、-(CF-基であり、(OF-2)型の好ましいビス-オレフィンは、FC=CF-O-(CF-O-CF=CFである)、
(式中、E、A、及びBは、上で定義されたものと同じ意味を有し、R5、R6、R7は、互いに等しく又は異なり、H、F又はC1~5アルキル又は(パー)フルオロアルキル基である)に従うものからなる群から好ましくは選択される。
【0025】
本発明の組成物に適切なフルオロエラストマー(A)は、VDF及びHFPに由来する繰り返し単位に加えて、以下:
- 上に詳述された少なくとも1つのビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位、
- VDF及びHFPとは異なる少なくとも1つの(パー)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位、及び
- 少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位のうちの1つ以上を含み得る。
【0026】
本発明の目的に適するフルオロエラストマー(A)の具体的なモノマー組成物の中で、以下のモノマー組成物(モル%単位で):
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%、ビス-オレフィン(OF)0~5%、
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5~50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~20%、ビス-オレフィン(OF)0~5%、
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20~30%、C~C非フッ素化オレフィン(Ol)10~30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18~27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%、
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33~75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15~45%、フッ化ビニリデン(VDF)5~30%、ヘキサフルオロプロペンHFP0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%、
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%を有するフルオロエラストマーを挙げることができる。
【0027】
前述の通り、組成物(C)は、上で詳述されたように、少なくとも1つの塩(P)を含む。一般に、塩(P)は、式(P1)から(12):
(式中:
- J及びJ’のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して出現ごとに、C-R(Rは、H又はC~C12炭化水素基である)又はNであり、
- Eは、N又は式C-R°の基であり、
- Zは、1~12の炭素原子を含む二価の炭化水素基であり、
- Wは、結合である、又は1~12の炭素原子を含む二価の炭化水素基(好ましくは1~6の炭素原子を含む二価の脂肪族基)及び1~12の炭素原子を含む二価のフルオロカーボン基(好ましくは1~6の炭素原子を含む二価のパーフルオロ脂肪族基)からなる群から選択される架橋基であり、
- 式(P-11)及び(P-12)で、記号:
で略記された基は、環において、1つ以上の更なる窒素原子、任意選択的に4級化窒素原子を含み得る、ピリジニウム型芳香族環に縮合した芳香族単核又は多核環を示し、
- R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R10 、R11 、R12 、R13 、R14 、R15 、R16 、R17 、R18 、R19 、R20 、R21 、R22 、R23 、R24 、R25 、R26 、R27 、R28 H、29 、R30 、R31 、R32 、R33 、R34 、R35 、R36 及びR°のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して出現ごとに-H又は式:
(式中、R及びRは、互いに等しく又は異なり、独立して、H又は炭化水素C~C基である)の基[基(アルファ-H)]であり、
- Yは、互いに等しく又は異なり、独立して、酸素、又はとりわけ脂肪族基又は芳香族基であり得、N、O、S及びハロゲンから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含み得るC~C12炭化水素基であり、
- A(m-)は、m価のアニオンであり、
但し、
(i)塩(P)が式(P-1)のものである場合、R 、R 、及びR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(ii)塩(P)が式(P-2)のものである場合、R 及びR は、基(アルファ-H)であり、
(iii)塩(P)が式(P-3)のものである場合、R 、R 、R 、及びR の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(iv)塩(P)が式(P-4)のものである場合、R 、R10 、R11 、R12 、及びR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(v)塩(P)が式(P-5)のものである場合、R13 、R14 、及びR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(vi)塩(P)が式(P-6)のものである場合、R15 、R16 、R17 、及びR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(vii)塩(P)が式(P-7)のものである場合、R18 、R19 、R20 、R21 、及びR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(viii)塩(P)が式(P-8)のものである場合、R22 、R23 、R24 、及びR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(ix)塩(P)が式(P-9)のものである場合、R25 、R26 、R27 、及びR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(x)塩(P)が式(P-10)のものである場合、R29 、R30 、R31 、R32 、及びR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(xi)塩(P)が式(P-11)のものである場合、R33 、R34 、及びR28 の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
(xii)塩(P)が式(P-12)のものである場合、R35 、R36 及びR°の少なくとも2つは、基(アルファ-H)であり、
- 少なくとも1つの促進剤)のいずれかに従う化合物からなる群から選択される。
【0028】
式(P-1)の好ましい塩(P)は、式(P-1-a)~(P-1-e):
(式中:
- R及びRは、上に定義された意味を有し、好ましくは、R及びRは、Hであり、
- Yは、上に定義された意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり、
- R及びRのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、H又はC~C12炭化水素基であり、
- A及びmは、上に定義された意味を有する)に従うものである。
【0029】
より好ましくは、式(P-1)の塩(P)は、式(P-1-g)~(P-1-p):
(式中、A及びmは、上に詳述された意味を有する)のいずれかを有するものである。
【0030】
式(P-2)の好ましい塩(P)は、式(P-2-a):
(式中:
- R及びRは、上に定義された意味を有し、好ましくは、R及びRは、Hであり、
- Yは、上に定義された意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり、
- R及びRのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、H又はC~C12炭化水素基であり、
- A及びmは、上に定義された意味を有する)に従うものである。
【0031】
より好ましくは、式(P-2)の塩(P)は、式(P-2-b):
(式中、A及びmは、上に詳述された意味を有する)を有するものである。
【0032】
式(P-3)の好ましい塩(P)は、式(P-3-a):
(式中:
- R及びRは、上に定義された意味を有し、好ましくは、R及びRは、Hであり、
- Yは、上に定義された意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり、
- A及びmは、上に定義された意味を有する)に従うものである。
【0033】
より好ましくは、式(P-3)の塩(P)は、式(P-3-b):
(式中、A及びmは、上に詳述された意味を有する)を有するものである。
【0034】
式(P-4)の好ましい塩(P)は、式(P-4-a):
(式中:
- R及びRは、上に定義された意味を有し、好ましくは、R及びRは、Hであり、
- wは、1~12、好ましくは1~6の整数であり、最も好ましくは3に等しく、
- A及びmは、上に定義された意味を有する)に従うものである。
【0035】
より好ましくは、式(P-4)の塩(P)は、式(P-4-b)又は(P-4-c):
(式中、A及びmは、上に詳述された意味を有し、w=3である)を有するものである。
【0036】
式(P-5)の好ましい塩(P)は、式(P-5-a):
(式中:
- R及びRは、上に定義された意味を有し、好ましくは、R及びRは、Hであり、
- Yは、上に定義された意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり、
- A及びmは、上に定義された意味を有する)に従うものである。
【0037】
より好ましくは、式(P-5)の塩(P)は、式(P-5-b)又は(P-5-c):
(式中、A及びmは、上に詳述された意味を有する)を有するものである。
【0038】
式(P-11)の好ましい塩(P)は、式(P-11-a):
(式中:
- R及びRは、上に定義された意味を有し、好ましくは、R及びRは、Hであり、
- Yは、上に定義された意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり、
- A及びmは、上に定義された意味を有する)に従うものである。
【0039】
より好ましくは、式(P-11)の塩(P)は、式(P-11-b):
(式中、A及びmは、上に詳述された意味を有する)を有するものである。
【0040】
式(P-12)の好ましい塩(P)は、式(P-12-a):
(式中:
- R及びRは、上に定義された意味を有し、好ましくは、R及びRは、Hであり、
- Yは、上に定義された意味を有し、好ましくは、Yは、メチルであり、
- A及びmは、上に定義された意味を有する)に従うものである。
【0041】
より好ましくは、式(P-12)の塩(P)は、式(P-12-b):
(式中、A及びmは、上に詳述された意味を有する)を有するものである。
【0042】
式(P-1)~(P-12)におけるアニオンAの選択は、特に重要ではないが、それにもかかわらず、アリールスルホネート、特にトシレート(p-トルエンスルホネート)、フッ素を含まないアルキルスルホネート、例えばメシレート(メタンスルホネート)、及びフッ素含有(とりわけパーフッ素化)アルキルスルホネート、例えばトリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)など、C~C(フルオロ)アルキル鎖を有する(フルオロ)アルキルスルホネート、ハライド(ヨージド、ブロミド、クロリド)からなる群から選択されるアニオンが、合成上の観点からそれらの即座の入手可能性のために特に好ましくあり得ることが理解される。
【0043】
まとめて、本発明の組成物に特に有用であることが分かった例示的な化合物は、式(Ex-1)~(Ex-9)を有する下にリストアップされるものである:
【0044】
本発明の組成物は一般に、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2、より好ましくは少なくとも0.3重量部(phr)の量の塩(P)を含む。
【0045】
本発明の組成物は一般に、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり多くとも10、好ましくは多くとも5、より好ましくは多くとも3重量部の量の塩(P)を含む。
【0046】
本発明の組成物(C)に使用されるのに適切な塩基(B)は、特に限定されない。1つ又は複数の有機塩基、1つ又は複数の無機塩基、或いは有機及び無機塩基の混合物(B)を使用することができる。
【0047】
塩基(B)は、好ましくは無機塩基である。無機塩基[塩基(IB)]の中で、とりわけ、
i)二価の金属酸化物、特にアルカリ土類金属の酸化物又はZn、Mg、Pb、Caの酸化物、具体的にはMgO、PbO及びZnOなど、
ii)金属の水酸化物、特に一価及び二価の金属の水酸化物、具体的にはアルカリ及びアルカリ土類金属の水酸化物、特にCa(OH)、Sr(OH)、及びBa(OH)からなる群から選択される水酸化物、
(iii)3よりも高いpKを有する弱酸の金属塩、特に炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩及び亜リン酸塩からなる群から選択される弱酸の金属塩、特に炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩及び亜リン酸塩のNa、K、Ca、Sr、Ba塩を挙げることができる。
【0048】
無機塩基の中で、二価金属酸化物、特にアルカリ土類金属の酸化物又はZn、Mg、Pb、Caの酸化物、具体的にはMgO、PbO及びZnO、より具体的にはMgOなどが、特に効果的であることが見出された。
【0049】
無機塩基の混合物を使用することができ、2つ以上の塩基(IB)が使用されるのに対し、上で詳述されたように、この複数は、2つ以上の二価金属酸化物(i)の組み合わせであり得る、又は、上で詳述されたように、1つ又は複数の二価金属酸化物と1つ又は複数の金属の水酸化物(ii)の組み合わせであり得る。MgOとCa(OH)の組み合わせは、このような組み合わせの例示的な実施形態である。
【0050】
有機塩基[塩基(OB)]の中で、とりわけ、
(j)一般式(B1m)又は(B1d)に従う非芳香族アミン又はアミド:
bm-[C(O)]-NR (B1m)
N-[C(O)]t’-Rdm-[C(O)]t”-NR (B1d)
(式中:
- t、t’及びt’’のそれぞれは、互いに及び出現ごとに等しく又は異なり、ゼロ又は1であり、
- Rのそれぞれは、独立して、H又はC~C12炭化水素基であり、
- Rbmは、1~30の炭素原子を有する一価の炭化水素非芳香族基であり、
- Rbmは、1~30の炭素原子を有する二価の炭化水素非芳香族基である)、並びに
(jj)一般式(B2m)又は(B2d)に従う脂環式2級又は3級アミン:
(式中:
- Cyは、少なくとも4つの炭素原子を含み、任意選択的に1つ又は複数のエチレン性不飽和二重結合を含み、任意選択的に1つ又は複数のカテナリー窒素原子を含む二価の脂肪族基であって、それに結合されている窒素原子と環を形成する二価の脂肪族基を表し、
- Cy’は、少なくとも5つの炭素原子を含み、任意選択的に1つ又は複数のエチレン性不飽和二重結合を含み、任意選択的に1つ又は複数のカテナリー窒素原子を含む三価の脂肪族基であって、それに結合されている窒素原子と環を形成する三価の脂肪族基を表す)、
(jjj)一般式(B3)に従う芳香族アミン又はアミド:
Ar-{[C(O)]-NR (B3)
(式中:
- tは、互いに及び出現ごとに等しく又は異なり、ゼロ又は1であり、
- wは、1~4の整数であり、
- Rのそれぞれは、独立して、H又はC~C12炭化水素基であり、
- Arは、S及びOからなる群から選択される1つ又は複数のカテナリーヘテロ原子を場合により含む、単核又は多核芳香族基である)、
(jv)ヘテロ芳香族環に含まれた少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロ芳香族アミン、特にピリジン誘導体、
(v)式(B4)又は(B5):
(式中:
- R、R、R、R、R、R、R及びRのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、H又はC~C12炭化水素基である)のグアニジン誘導体、並びに前述のグアニジン(B4)及び(B5)の対応する塩、特に対応するN-4級化ハロゲン化水素塩(好ましくは塩酸塩)、

(vj)金属アルコキシレート、好ましくは脂肪族アルコールのアルコキシレートを挙げることができる。
【0051】
式(B1m)及び(B1d)の塩基の中で、
- Rbmは、場合により1つ又は複数のエチレン性不飽和二重結合を含む、6~30の炭素原子を有する一価の脂肪族直鎖基であり、
- Rdmは、場合により1つ又は複数のエチレン性不飽和二重結合を含む、6~30の炭素原子を有する二価の脂肪族直鎖基であるものが、特に好ましい。
ものが特に好ましい。
【0052】
前述の非芳香族アミン又はアミドの中で、
- 式CH(CH17-NHのオクタデシルアミン、
- 式HN-C(O)-(CH11-CH=CH-(CHCHのエルカアミド、
- 式HN-C(O)-(CH-CH=CH-(CHCHのオレアミド、
- 式HN-(CH-NHのヘキサメチレンジアミン、
- N,N-ジメチルオクチルアミン、
- N,N-ジメチルドデシルアミン、
- トリオクチルアミン、
- トリヘキシルアミンを特に挙げることができる。
【0053】
前述の脂環式2級又は3級アミンの中で、下式の1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)を挙げることができる:
【0054】
式(B-4)の前述のグアニジン誘導体の例示的実施形態は、とりわけ、グアニジン塩酸塩及びジ-o-トリルグアニジンである。
【0055】
前述の金属アルコキシレートの例示的実施形態は、とりわけ、カリウムターブチレート、ナトリウムエチレート及びナトリウムメチレートである。
【0056】
前述のヘテロ芳香族アミンの例示的実施形態は、とりわけ、トリメチルピリジン異性体である。
【0057】
上で詳述されたように、組成物(C)が少なくとも1つの無機塩基を含むことが一般に好ましいが、組成物(C)が、1つ又は複数の無機塩基と組み合わせて、又は無機塩基を含まずに、少なくとも1つの有機塩基を含む実施形態も又、本発明の範囲内である。
【0058】
塩基(B)の量は、使用される塩基(B)の性質及び塩基性を考慮に入れて当業者によって調整されるであろう。
【0059】
それにもかかわらず、組成物(C)は一般に、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり0.2~25、好ましくは1~20重量部の前述の塩基(B)(上に詳述された、有機及び/又は無機)を含むことが理解される。
【0060】
特定の好ましい実施形態によれば、組成物(C)は、少なくとも1つの無機塩基、より具体的には、上で詳述されたように、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり少なくとも2、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも5及び/又は多くとも18、好ましくは多くとも17、より好ましくは多くとも15部の前述の塩基(IB)の量で、少なくとも1つの二価金属酸化物(i)を含む。
【0061】
特定の実施形態によれば、組成物(C)は、少なくとも1つの有機塩基と、少なくとも1つの無機塩基とを含む。これらの状況で、組成物(C)は一般に、0.1~10、好ましくは6~16重量部の前述の無機塩基及び/又は一般に、0.1~10、好ましくは6~16重量部の前述の有機塩基を含み、これらの重量部は、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して言及される。
【0062】
前述のように、組成物(C)は、少なくとも1つのポリヒドロキシ化化合物を含む。芳香族又は脂肪族ポリヒドロキシ化化合物又はその誘導体を使用することができ、その例は、とりわけ欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING)(1989年4月10日)、及び米国特許第4233427号明細書(RHONE POULENC IND)(1980年11月11日)に記載されている。これらの中で、特にジヒドロキシ、トリヒドロキシ及びテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレン又はアントラセン、式(B):
(式中:
- Z’は、少なくとも1つの塩素又はフッ素原子で任意選択的に置換された二価C~C13アルキル又はアルキリデン基、C~C13脂環式、C~C13芳香族又はアリールアルキレン基、チオ(-S-)、オキシ(-O-)、カルボニル(-C(O)-)、スルフィニル(-S(O)-)及びスルホニル基(-SO-)からなる群から選択され、
- xは、0又は1であり、
- uは、互いに等しく又は異なり、独立して出現ごとに少なくとも1、好ましくは1又は2の整数であり、
- フェニル環は、塩素、フッ素、臭素、-CHO、C~Cアルコキシ基、-COOR10基(式中、R10はH又はC~Cアルキル、C~C14アリール、C~C12シクロアルキルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意選択的に置換され得る)のビスフェノールが挙げられる。
【0063】
Z’がC~C13二価アルキル基であるとき、それは、例えば、メチレン、エチレン、クロロエチレン、フルオロエチレン、ジフルオロエチレン、1,3-プロピレン、テトラメチレン、クロロテトラメチレン、フルオロテトラメチレン、トリフルオロテトラメチレン、2-メチル-1,3-プロピレン、2-メチル-1,2-プロピレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘキサフルオロイソプロピリデンであり得る。
Z’がC~C13二価アルキリデン基であるとき、それは、例えば、エチリデン、ジクロロエチリデン、ジフルオロエチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、トリフルオロイソプロピリデン、ヘキサフルオロイソプロピリデン、ブチリデン、ヘプタクロロブチリデン、ヘプタフルオロブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン、1,1-シクロヘキシリデンであり得る。
Z’がC~C13脂環式基であるとき、それは、例えば、1,4-シクロヘキシレン、2-クロロ-1,4-シクロヘキシレン、2-フルオロ-1,4-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、シクロペンチレン、クロロシクロペンチレン、フルオロシクロペンチレン、及びシクロへプチレンであり得る。
Z’がC~C13芳香族又はアリールアルキレン基であるとき、それは、例えば、m-フェニレン、p-フェニレン、2-クロロ-1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、o-フェニレン、メチルフェニレン、ジメチルフェニレン、トリメチルフェニレン、テトラメチルフェニレン、1,4-ナフチレン、3-フルオロ-1,4-ナフチレン、5-クロロ-1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン及び2,6-ナフチレンであり得る。
【0064】
前述のように、ジヒドロキシベンゼンの中で、ポリヒドロキシ化化合物は、カテコール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2,5-ジメチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノンからなる群から選択されることができる。
【0065】
前述のように、ジヒドロキシナフタレンの中で、ポリヒドロキシ化化合物は、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、特に1,5-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択されることができる。
【0066】
式(B)のポリヒドロキシ化化合物の中で、ビスフェノールAFとして知られるヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4-ヒドロキシベンゼン)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、及びビスフェノールAとして知られるイソプロピリデンビス(4-ヒドロキシベンゼン)が好ましく、ビスフェノールAFが特に好ましい。
【0067】
前述のポリヒドロキシ化化合物の誘導体を使用できることも理解され、特に、前述のポリヒドロキシ化化合物の対応するアニオンによって形成される金属塩を挙げることができ、
この場合、ヒドロキシル基の1つ以上は、金属、典型的にはアルカリ又はアルカリ土類金属の1つ又は複数のカチオン(中性に到達するために必要とされる)で脱プロトン化されており、その例は、特に、ビスフェノールAFの二カリウム塩及びビスフェノールAFの一ナトリウム一カリウム塩である。
【0068】
更に加えて、前述のポリヒドロキシ化化合物のヒドロキシレートの有機P、As、Se又はS-オニウム塩、アミノ-ホスホニウム塩及びジホスフィン-イミニウム塩、即ち、前述のポリヒドロキシ化化合物のアニオンによって形成される塩を使用することができ、この場合、1つ以上のヒドロキシル基が脱プロトン化されており、促進剤(A)として使用される1つ以上のカチオンも使用することができる。
【0069】
ポリドロキシル化化合物の量は、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり、一般に少なくとも0.5重量部、好ましくは少なくとも1重量部、及び/又は一般に多くとも15重量部、好ましくは多くとも10重量部である。
【0070】
組成物(C)は、有機P、As、Se又はS-オニウム化合物、アミノ-ホスホニウム誘導体、ホスホラン、及びジホスフィン-イミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの促進剤を含む。
【0071】
本発明の組成物において適している有機オニウム化合物は、一般に、式(O):
{[RQ] n-
(式中:
- Qは、リン光体、ヒ素、アンチモン、硫黄、好ましくはリン光体からなる群から選択され、
- Xは、有機又は無機アニオンであり、好ましくは、ハロゲン化物、サルフェート、アセテート、ホスフェート、ホスホネート、水酸化物、アルコキシド、フェナート、ビスフェナートからなる群から選択され、
- nは、Xアニオンの原子価であり、
- R、R、R、Rのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、
~C20アルキル基、C~C20アリール基、C~C20アリールアルキル基、C~C20アルケニル基、
塩素、フッ素、臭素から選択されるハロゲン、
シアノ基、式-OR又は-COOR(式中、Rはアルキル、アリール、アリールアルキル又はアルケニルである)の基からなる群から選択されるもう一方からのものであり、R、R、R、Rから選択される2つの基がQと環状構造を形成し得、
但し、Qが硫黄原子であるとき、R、R、R、Rラジカルのうちの1つは存在していない)に従う。
【0072】
組成物(C)での使用に適したアミノ-ホスホニウム誘導体は、一般に、式(AP-1)又は(AP-2)に従う:
{[P(NR 4-nq-(AP-1)
{[R 3-r(NRP-E-P(NR 3-r2+}{Yq-2/q(AP-2)
(式中:
- R、R及びRのそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、
~C18アルキル基(好ましくはC~C12アルキル基)、C~Cシクロアルキル基、C~C18アリール基(好ましくはC~C12アリール基)、C~C18アリールアルキル基(好ましくはC~C12アリールアルキル基)、
1つ又は複数のヒドロキシル又は酸素エーテル基を含むC~C18オキシアルキル基からなる群から選択され、
、R及びRは、ハロゲン、CN、OH、カルバルコキシ基を任意選択的に含むことができ、R及びRは、窒素原子と複素環を形成することができ、
- Eは、C~C二価アルキレン、オキシアルキレン又はC~C12アリーレンラジカルであり、
- nは、1~4の整数であり、
- rは、1~3の整数であり、
- qは、アニオンYの原子価であり、好ましくは1~2の整数であり、
- Yは、原子価qを有する有機又は無機のアニオンであり、Yは、ハロゲン化物、過塩素酸塩、硝酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、ハロ酢酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、フェネート、ビスフェネート、水酸化物から選択することができ、又、Yは、例えば、ZnCl 2-、CdCl 2-、NiBr 2-、HgI などの複合アニオンであり得る)。
【0073】
組成物(C)に適したホスホランは、一般に式(P)に従う:
(式中:
- Ar’のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、任意選択的に置換されたアリール基、好ましくは任意選択的に置換されたフェニル基又は任意選択的に置換されたナフチル基であり、
- R10及びR11のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、-H、-CN、C~Cアルキル、-O-C(O)-R12基、-C(O)-R12基、-NR13-C(O)-R12基からなる群から選択され、R12はC~C(シクロ)アルキル基であり、R13はH又はC~C(シクロ)アルキル基であり、
10及びR11は、P=C結合の炭素原子と一緒に環状基を場合により形成する)。
【0074】
組成物(C)に適したジホスフィン-イミニウム化合物は、一般に式(I)に従う:
[(R14P=N=P(R14z-(I)
(式中:
- R14は、互いに出現ごとに等しく又は異なり、O、N、S、ハロゲンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む1つ又は複数の基を任意選択的に含む、C~C12炭化水素基からなる群から選択され、
- Xは、原子価zのアニオンであり、zは、一般に1又は2の整数である)。
【0075】
使用され得る促進剤の例には、とりわけ欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING)1989年10月4日及び米国特許第3876654号明細書(DUPONT)1975年4月8日に記載されているような4級アンモニウム又はホスホニウム塩、とりわけ米国特許第4259463号明細書(MONTEDISON SPA)1981年3月31日に記載されているようなアミノホスホニウム塩、とりわけ米国特許第3752787号明細書(DUPONT)1973年8月14日に記載されているようなホスホラン、欧州特許出願公開第0120462A号明細書(MONTEDISON SPA)1984年10月3日に記載されているような又は欧州特許出願公開第0182299A号明細書(ASAHI CHEMICAL)1986年5月28日に記載されているようなジホスフィン-イミニウム化合物が挙げられる。
【0076】
4級ホスホニウム塩及びアミノホスホニウム塩が好ましく、テトラブチルホスホニウム、テトラブチルアンモニウム、式:
(特にその塩化物、1-クロロ-N,N-ジエチル-1,1-ジフェニル-1(フェニルメチル)ホスホラミンとしても知られている)の1,1-ジフェニル-1-ベンジル-N,N-ジエチル-ホスホルアミン及び式:
のベンジル(ジエチルアミノ)ジフェニルホスファニウムの塩がより好ましい。
【0077】
促進剤(A)とポリヒドロキシ化化合物を別々に使用する代わりに、1:2~1:5、好ましくは1:3~1:5のモル比で、促進剤(A)とポリヒドロキシ化化合物との間の付加物を組成物(C)に混合することによって、組成物(C)での同じ組み合わせを提供することも可能である。従って、前述の付加物において、カチオンは、促進剤(A)のいずれかの正に帯電した部位、特に、上で詳述されたように、有機オニウム化合物、前述のアミノ-ホスホニウム誘導体及びイミン化合物からなる群から選択されるものによって表され、アニオンは、ヒドロキシル基の1つ以上が脱プロトン化されている、前述のポリヒドロキシ化化合物によって表される。
【0078】
促進剤(A)とポリヒドロキシ化化合物との間の付加物は、一般に、促進剤(A)とポリヒドロキシ化化合物のブレンドを示されたモル比で溶融することによって、又は示された量のポリヒドロキシ化化合物の更なる量で補充された1:1付加物の混合物を溶融することによって得られる。任意選択的に、付加物に含まれるものと比較して、過剰の促進剤(A)も存在し得る。
【0079】
以下が、付加物の調製のためのカチオンとして特に好ましい:1,1-ジフェニル-1-ベンジル-N-ジエチルホスホラミン及びテトラブチルホスホニウム、特に好ましいアニオンは、2つの芳香族環が3~7の炭素原子のパーフルオロアルキル基から選択される2価のラジカルを介して結合されており、パラ位にあるOH基を有する、ビスフェノール化合物に由来するものである。前述の付加物の調製に適切な方法は、欧州特許出願公開第0684277A号明細書(AUSIMONT SPA)1995年11月29日に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0080】
組成物(C)は、一般に、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも0.3重量部、及び/又は一般に、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり多くとも8、好ましくは多くとも5、より好ましくは多くとも3重量部の量の促進剤(A)を含む。
【0081】
又次いで、強化充填材(例えば、カーボンブラック)、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤などの、他の従来の添加剤が、組成物(C)に添加されることができる。
【0082】
カーボンブラックは、好ましい強化充填材の1つである。使用される場合、強化充填剤、より具体的にはカーボンブラックが、組成物(C)に、フルオロエラストマー(A)の100重量部当たり少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20重量部、及び/又は多くとも50、好ましくは多くとも45、より好ましくは多くとも40重量部の量で存在し得る。
【0083】
本発明は又、造形品を製造するための、上に記載された、組成物(C)の使用方法にも関する。
【0084】
組成物(C)は、例えば成形(射出成形、押出し成形)、カレンダー仕上げ、又は押出しによって、所望の造形品へ加工することができ、造形品は有利には、相対的に柔らかく、弱いフルオロエラストマー(A)を、非粘着性の、強固な、不溶性の耐化学薬品性及び耐熱性の硬化フルオロエラストマーでできた完成品へと有利に変換させる、加硫(硬化)を、それ自体の加工中に及び/又は後続工程(後処理又はポスト硬化)において受ける。
【0085】
最後に、本発明は、上に詳述された、組成物(C)から得られる硬化品に関する。
【0086】
硬化品は、とりわけ、パイプ、継手、Oリング、ホースなどであり得る。
【0087】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0088】
ここで、本発明が以下の実施例に関連して説明され、その目的は、単に例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0089】
調製実施例1-式(Ex-1)の1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウムp-トルエンスルホネート
温度計、冷却器及び攪拌を備えた3つ口丸底フラスコにCHCl(85ml)及びメチル-p-トルエンスルホネート(25.50g)を入れた。次いで、2,4,6トリメチルピリジン(16.59g)を室温で滴加した。反応物を50℃で攪拌し、22時間後にそれを完了させた。液相を真空下での蒸発によって除去し、白色粉末を得て、これを攪拌下でジエチルエーテル(50ml)に分散させた。液相を濾別し、39.13gの純粋な生成物を93%の収率で白色粉末として回収した(融点161℃、1%の重量損失:266℃)。
H NMR(溶媒DO、TMS基準):+7.70ppm(d;2H;オルト-H;p-トルエンスルホネート);+7.55(s;2H;メタ-H;1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウム);+7.39(d;H;メタ-H;p-トルエンスルホネート);+4.0(s;3H;NCH;1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウム);+2.74(s;6H;オルト-CH3;1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウム);2.53(s;3H;パラ-CH;1,2,4,6-テトラメチル-ピリジニウム);+2.44ppm(s;3H;パラ-CH;p-トルエンスルホネート)。
【0090】
一般配合手順
上にリストアップされた調製実施例の塩(P)を、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.Aから商標名TECNOFLON(登録商標)N60HSで商業的に入手可能なVDF-HFPコポリマー(本明細書では以下、FKM-1)をベースフルオロエラストマー樹脂として使用して、他の原料と組み合わせてロール間で配合して硬化性配合物を調製した。
【0091】
GM102Eホスホニウム塩は、1-クロロ-N,N-ジエチル-1,1-ジフェニル-1-(フェニルメチル)ホスホラミンであり、Caffaro Industrie(本明細書では以下、GM 102E)から供給された。
MAGLITE(登録商標)DE、高表面積、高活性酸化マグネシウム(本明細書では以下、Maglite(登録商標)DE)は、Merckから入手した。
強化充填材、Carbon black N990MT(本明細書では以下、NT990MT)は、Cancarbから入手した。
ビスフェノールAF(又は2,2-ビス-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン)は、Sigma Aldrichから供給され、受け取ったままの状態で使用した。
【0092】
硬化動作の特性評価
硬化動作は、170℃又は190℃でのMoving Die Rheometer(MDR)によって、以下の特性を決定することによって特性評価した:
=最小トルク(ポンド×インチ)
=最大トルク(ポンド×インチ)
ts2は、スコーチ時間、即ち、トルクがMから2単位増加するのに必要な時間であり、txxは、Mのxx%に到達するために必要な時間である。
【0093】
Oリング(サイズクラス=214)は、12のキャビティを含むプレス金型で成形及び硬化され、次いで空気循環オーブンで以下に指定された条件(時間、温度)で後処理された。処方ごとに3回成形を繰り返し、36のOリング試験片を収集した。
引張り特性は、23℃でのASTM D412C規格に従って、プラークから打ち抜かれた試験片で決定された。
M50は、50%の伸びにおけるMPa単位での引張り強度である。
M100は、100%の伸びにおけるMPa単位での引張り強度である。
T.S.は、MPa単位での引張り強度である。
E.B.は、%単位での破断伸びである。
ショア(Shore)A硬度(3”)(HDS)は、ASTM D2240法に従って積み重ねられた3片のプラークに関して決定した。
圧縮永久歪(C-SET)は、70時間200℃でASTM D395、方法Bに従って、Oリング試験片(O-ring specimen)規格AS568A(タイプ214)に関して又は6mmのボタン(タイプ2)に関して決定した。
【0094】
成形されたOリングの目視検査が実施され、表面に気泡がないOリングがカウントされた。
【0095】
結果を下の表に要約する。
【0096】
表1は、実施例1の塩(P)を、前述のポリヒドロキシ化化合物及び促進剤(A)と組み合わせて得られた結果(実施例2の処方を参照)と、塩(P)の非存在下又は促進剤(A)の非存在下で得られた結果を比較している。
【0097】
【0098】
前述のデータは、塩(P)の添加が、同じ機械的特性と許容可能なC-Setを実質的に維持しながら、気泡を含む成形部品の数を劇的に減らすのに効果的であることを十分に実証している。促進剤(A)の非存在下で塩(P)を使用した場合、塩(P)の使用量を増やし、より高い硬化温度を採用したにもかかわらず、硬化速度は、絶対的には許容できず、Cセットの性能は劣るが、成形部品の品質は同様に向上することになる。