(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】センサを備えた産業用マニピュレータのグリッパ、及び産業用マニピュレータのグリッパの複数のジョーの間における部品の存在を検出する方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
B25J15/08 W
(21)【出願番号】P 2021558760
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 IB2020051170
(87)【国際公開番号】W WO2020225613
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102019000006668
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515189966
【氏名又は名称】ジマティック エセ.エッレ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】GIMATIC S.r.l.
【住所又は居所原語表記】Via Enzo Ferrari 2/4 25030 Roncadelle (BS) Italia
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【氏名又は名称】大谷 元
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ベランディ,ジュゼッペ
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-172735(JP,A)
【文献】特開平11-320472(JP,A)
【文献】特開2009-119596(JP,A)
【文献】独国実用新案第202018104903(DE,U1)
【文献】独国特許出願公開第102015213402(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0182668(US,A1)
【文献】特開2018-118373(JP,A)
【文献】特許第3825449(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用マニピュレータのためのグリッパ(100,200,300,400)であって、本体(101,201,301,401)と、前記本体(101,201,301,401)に取り付けられ、部品(P)を保持したり解放したりするように作動可能な複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)と、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)のアクチュエータ(103,203,303,440)と、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の間における部品(P)の存在を検出するように構成されたセンサ(112,212,312,412)とを備え、
前記センサ(112,212,312,412)は、前記アクチュエータ(103,203,303,440)と前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)のうちの1つのジョーとの間に機能的に介装され、
前記センサ(112,212,312,412)は、磁気素子(120,220,320,420)と、前記磁気素子(120,220,320,420)を検出するための電子回路(116,216,316,416)とを備え、前記電子回路(116,216,316,416)は、ジョー(106,206,306,406)に固定され、前記磁気素子(120,220,320,420)は、前記1つのジョー(106,206,306,406)が加える力に応じ、前記電子回路(116,216,316,416)に対して移動可能であることを特徴とする、
グリッパ(100,200,300,400)。
【請求項2】
前記複数のジョーは、部品(P)を保持するように意図された遠位端(106''~107'',206''~207'',306''~307'',406''~407'')と、前記アクチュエータ(103,203,303,440)によって互いに対して移動可能な、反対側の近位端または肩部(106'~107',206'~207',306'~307',406'~407')とを備え、前記センサ(112,212,312,412)は、前記アクチュエータ(103,203,303,440)と前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)のうちの1つのジョーの近位端(106',206',306',406')との間に機能的に介装される、請求項1に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項3】
前記電子回路(116,216,316,416)は、ジョー(106,206,306,406)の近位端(106',206',306',406')において、当該ジョー(106,206,306,406)に取り付けられ、
前記磁気素子(120,220,320,420)は、
前記アクチュエータ(440)に取り付けられ、前記1つのジョー(106,206,306,406)によって加えられる力に応じ、前記磁気素子(420)が前記電子回路(416)から最大距離にある第1の位置と、前記磁気素子(420)が前記電子回路(416)から最小距離にある第2の位置との間で、前記電子回路(416)に対し、前記アクチュエータ(440)と共に移動可能であるか、或いは
前記電子回路(116,216,316,416)と前記アクチュエータ(103,203,303)との間に介装された部材(118,218,318,418)に取り付けられ、前記1つのジョー(106,206,306,406)によって加えられる力に応じ、前記磁気素子(120,220,320,420)が前記電子回路(116,216,316,416)から最大距離にある第1の位置と、前記磁気素子(120,220,320,420)が前記電子回路(116,216,316,416)から最小距離にある第2の位置との間で、移動可能である、
請求項1に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項4】
前記電子回路(116,216,316,416)から最小距離となる前記磁気素子(120,220,320,420)の位置は、部品(P)を把持している前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)に対応、即ち、部品(P)が前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の間に保持されている状態に対応する、請求項3に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項5】
前記センサ(112,212,312)は、磁気素子(120,220,320)を検出するための電子回路(116,216,316)のハウジングを画定する第1の部材(113,213,313)と、前記磁気素子(120,220,320)を収容する第2の部材(118,218,318)と、前記第1の部材(113,213,313,413)と前記第2の部材(118,218,318)との間に介装される弾性部材(121,221,321)とを備え、前記第2の部材(118,218,318)は、ジョー(106,206,306,406)によって加えられる力に応じ、前記第1の部材(113,213,313,413)に対して移動可能であり、前記弾性部材(121,221,321)は対抗力を生じる、請求項1~4のいずれか1項に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項6】
前記第1の部材(113,213,313)は、ジョー(106,206,306,406)に固定されるか、または当該ジョー(106,206,306,406)と一体に形成され、前記第2の部材(118,218,318)は、前記第1の部材(113,213,313)にヒンジ結合され、前記1つのジョー(106,206,306,406)によって力が加えられる結果、及び前記弾性部材(121,221,321)によって対抗力が加えられる結果、前記第1の部材(113,213,313)に対して回動可能である、請求項5に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項7】
前記第1の部材(113,213,313)は、ジョー(106,206,306)の近位端(106',206',306')において、当該ジョー(106,206,306)に固定され、前記1つのジョー(106,206,306,406)は、前記第1の部材(113,213,313)に対して前記第2の部材(118,218,318)を回動させ、部品(P)が前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307)の間に保持されると、前記第1の部材(113,213,313)と前記第2の部材(118,218,318)との角度が最小となり、前記弾性部材(121,221,321)が圧縮される、請求項6に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項8】
前記センサ(112,212,312)の前記第2の部材(118,218,318)は、前記アクチュエータ(103,203,303)の一部(110,210,310)に当接する摺動ブロックである、請求項5~7のいずれか1項に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項9】
前記電子回路(116,216,316,416)に対する前記磁気素子(120,220,320,420)の位置は、少なくとも1つのジョー(106,206,306,406)の位置と、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307)の間に保持される部品(P)の存在の可能性との両方に依存する、請求項1~8のいずれか1項に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項10】
前記磁気素子(120,220,320,420)は、対応するジョー(106,206,306,406)に取り付けられ、当該対応するジョー(106,206,306,406)に対して変位可能であって、
前記磁気素子(120,220,320,420)は、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の閉動の際、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)が閉じて部品(P)に当接するまで、前記対応するジョー(106,206,306,406)と共に一体的に移動し、
前記磁気素子(120,220,320,420)は、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の間に部品(P)が把持されている限り、前記アクチュエータ(103,203,303,440)が加える力に応じ、前記対応するジョー(106,206,306,406)に対して回動可能である、請求項1~9のいずれか1項に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項11】
前記アクチュエータ(103,203,303,440)は、前記本体(101,201,301,401)内に画定された対応するシリンダ(102,202,302,402)内に供給される加圧流体の作用下及び弾性戻し部材(111,211,311,411)の作用下で、前記シリンダ(102,202,302,402)内で縦方向に沿って往復移動可能な少なくとも1つのエアピストン(103,203,303,403',403'')を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項12】
前記アクチュエータは、空気圧式、油圧式、または電気式である、請求項1~11のいずれか1項に記載のグリッパ(100,200,400)。
【請求項13】
前記複数のジョー(106~107,206~207,406~407)は、ピン(108~109,208~209,408~409)上で揺動可能であり、それぞれが、部品(P)の保持を意図した遠位端(106''~107'',206''~207'',406''~407'')と、前記アクチュエータ(103,203,303,440)が押圧力を加える近位端または肩部(106'~107',206'~207',406'~407')とを備え、前記遠位端(106''~107'',206''~207'',406''~407'')は、前記ピン(108~109,208~209,408~409)に関して前記近位端(106'~107',206'~207',406'~407')とは反対側にあり、前記複数のジョーは、前記遠位端(106''~107'',206''~207'',406''~407'')が拡がると共に前記近位端(106'~107',206'~207',406'~407')が互いに近付く開位置と、前記遠位端(106''~107'',206''~207'',406''~407'')が互いに近付くと共に前記近位端(106'~107',206'~207',406'~407')が拡がる閉位置との間で揺動し、部品(P)を把持しているときの前記複数のジョー(106~107,206~207,406~407)の位置は、前記開位置と前記閉位置とに対して中間となる位置である、請求項1~12のいずれか1項に記載のグリッパ(100,200,400)。
【請求項14】
少なくとも1つのジョー(306,307)が、ガイド(301')に沿って平行移動可能であり、ピン(308,309)上で揺動して前記ガイド(301')に沿う両方向に押す力を前記少なくとも1つのジョー(306,307)に及ぼすように対応するアーム(330,331)を備え、近位端(306',307')は、前記アーム(330,331)によって画定され、前記センサ(312)は、前記アクチュエータ(303)と前記アーム(330,331)との間に機能的に介装される、請求項1~12のいずれか1項に記載のグリッパ(300)。
【請求項15】
前記アクチュエータ(103,203,303,440)は、前記複数のジョー(106~107,206~207,406~407)の近位端(106'~107',206'~207',406'~407')の間に挿入または移動して、前記近位端(106'~107',206'~207',406'~407')を拡げることが可能な、少なくとも1つのエアピストン(103,203,303,403',403'')を備える、請求項1~14のいずれか1項に記載のグリッパ(100,200,300,400)。
【請求項16】
産業用マニピュレータのためのグリッパ(100,200,300,400)の複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の間における部品(P)の存在を検出する方法であって、
本体(101,201,301,401)と、前記本体(101,201,301,401)に取り付けられ、部品(P)を保持したり開放したりするように作動可能な複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)と、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)のアクチュエータ(103,203,303,440)と、センサ(112,212,312,412)とを備えたグリッパ(100,200,300,400)を設けるステップと、
前記アクチュエータ(103,203,303,440)を用い、開位置、閉位置、及び部品(P)の把持位置の間で前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)を動かし、部品(P)を捕捉して保持するステップと、
前記センサ(112,212,312,412)を用い、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の位置を示す信号を生成するステップとを備え、
前記センサ(112,212,312,412)は、前記アクチュエータ(103,203,303,440)と
、対応するジョーと称される、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)のうちの1つのジョー(106,206,306,407)との間に機能的に介装され、前記1つのジョー(106,206,306,407)が部品(P)を把持しているときに信号を発生し、
前記センサ(112,212,312,412)は、磁気素子(120,220,320,420)と、前記磁気素子(120,220,320,420)を検出するための電子回路(116,216,316,416)とを備え、前記電子回路(116,216,316,416)は、ジョー(106,206,306,406)に固定され、前記磁気素子(120,220,320,420)は、前記1つのジョー(106,206,306,406)が加える力に応じ、前記電子回路(116,216,316,416)に対して移動可能であることを特徴とする、
方法。
【請求項17】
前記センサ(112,212,312,412)は、前記アクチュエータ(103,203,303,440)が、閉じた前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)に対応した位置にあるとき、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の前記閉位置からの前記1つのジョー(106,206,306,407)のずれを検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記磁気素子(120,220,320,420)は、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の閉動の際、前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)が閉じて部品(P)に当接するまで、前記対応するジョー(106,206,306,406)と共に一体的に動き、前記磁気素子(120,220,320,420)と前記電子回路(116,216,316,416)との間の距離は、不変、即ち一定に維持され、
前記磁気素子(120,220,320,420)は、部品(P)が前記複数のジョー(106~107,206~207,306~307,406~407)の間に把持されている限り、前記アクチュエータ(103,203,303,440)が加える力に応じ、前記対応するジョー(106,206,306,406)に対して回動可能であり、前記磁気素子(120,220,320,420)と前記電子回路(116,216,316,416)との間の距離は、最小となるまで減少する、
請求項16または17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用マニピュレータのためのグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
産業オートメーションの分野では、操作の対象物を把持するために組み付けられたグリッパを有するのが一般的なロボットマニピュレータの使用が知られている。
【0003】
産業用マニピュレータのためのグリッパには、一般的に、グリッパ本体に取り付けられた2つ以上のジョー、即ちグリッパフィンガが設けられている。これらのジョーは、操作対象の部品にいかなる圧力も加えない開位置、即ち解放位置と、取扱い中に部品が誤って解放されないようにするのに十分な圧力を、操作対象の部品に加える閉位置、即ち把持位置との間で、互いに離れたり近付いたりするように動くことができる。
【0004】
ジョーの動きのタイプに応じ、ジョーが、それぞれのガイド内またはガイド上で直線的に移動するリニアグリッパと、ジョーが、それぞれのピボット軸の周りで回動するアンギュラグリッパとに区別される。
【0005】
ジョーは、一般的に空気圧式、液圧式、または電気式で、グリッパ本体内に収容されたアクチュエータ装置によって動作する。
【0006】
グリッパには、通常、磁気式とするのが一般的なセンサを装備していることがあり、当該センサの機能は、ジョーの間に部品が存在することを示す電気信号の生成である。センサを使用することで、グリッパが作業対象の部品を捕捉していない場合や、部品が誤って落下した場合を識別することができる。現在、2つの構成が知られている。
【0007】
空気圧式グリッパで使用される第1の構成では、グリッパ本体の内部を移動するエアピストンに磁気素子が組み込まれ、この磁気素子の位置を専用のセンサが検出することにより、エアピストンの位置を間接的に検出する。部品がグリッパのジョーの間に正しく挿入されると、間にクランプされた部品によって規定される程度を超えてジョーが近付くことができないため、エアピストンがストロークの終点まで到達しない。部品が誤ってジョーから外れたときや、部品が捕捉されなかったときは、ジョーが互いに当接するまで完全に閉じて、エアピストンが、それぞれの限界停止位置に達することが可能となり、この状態では、センサが発した信号によりアラームが生成される。
【0008】
このような方法の1つの制約は、標準的なセンサよりも高価な低ヒステリシス磁気センサ、またはアナログセンサを使用する必要があることであり、そうしなければ、センサによる検出の精度が、エアピストンのわずかな動きを識別する上で十分ではない。実際のところ、標準的かつ安価で、一般的に使用される磁気センサは、デジタルセンサであり、このセンサは、検出した磁界の磁束強度が、例えば25ガウスといった閾値を超えた場合にのみ信号を生成し、磁界の磁束強度が、例えば20ガウスといった、より低い閾値を下回るとオフする。このようなヒステリシスにより、標準的な磁気センサは、あまり正確なものではなくなる(センサの磁気素子の長いストロークが必要となる)。これが、より高価な低ヒステリシス磁気センサを採用する理由である。
【0009】
主にスプルースグリッパで使用される第2の構成では、磁気センサがジョーの1つ、即ちジョーの1つそのものに配置され、作業対象の部品が磁気センサと対向するジョーとの間に把持されたままとなる。この場合、この磁気センサは、それぞれのジョーに対して静止した部材と、当該静止した部材に対して移動可能な部材とで製造される。部品がグリッパで捕捉されると、磁気センサの可動部材が、静止部材に向かって押され、これに対応して磁気センサが電気信号を発生する。ジョーが開いて部品が解放されると、磁気センサの可動部材が、弾性部材の押圧力により、静止部材から離れるように移動する。
【0010】
このような方法の欠点は、磁気センサがジョーに取り付けられているため、当該ジョーの周囲で利用可能な空間を制限し、特にグリッパの開き角度を制限することになる。更に、磁気センサは、1つのジョーにあって、反対側のジョーに対向しているので、グリッパは対称的ではなく、このため、部品を捕捉したり解放したりするときに、磁気センサのサイズを考慮しなければならないので、グリッパが装着されているロボットアームのプログラミングが困難となる可能性がある。
【0011】
日本特許出願公開第2009-172735号公報には、部品の取り扱うための専用のグリッパが記載されており、このグリッパには、ばねの変形を検出して、ジョーの間に部品があるか否かを識別するセンサが設けられており、ジョーが部品に圧力を加えると、ばねが圧縮されるようになっている。
【0012】
米国特許出願公開第2017/182668号明細書には、プレートまたはシートを保持するための空気圧式グリッパが記載されている。アクチュエータは、カム式の伝達機構を用いてジョーを移動させるエアピストンである。伝達機構に電子センサが配置され、この電子センサが、ジョーの位置を検出し、プレートが把持された状態や、プレートがジョーの間にない状態を識別する。
【0013】
米国特許出願公開第2018/207807号明細書には、ペトリ皿、即ち、全てが互いに等しい所定の直径の部品を取り扱うように専用に構成された電気式グリッパが記載されている。このグリッパは、過剰な力がペトリ皿に加わるのを防止する補償機構を備えている。ジョーの間にペトリ皿が存在することを検出するため、光学センサが補償機構及びジョーに予め配置される。
【0014】
日本特許第3825449号公報には、センサがジョーに配置されたグリッパが記載されている(段落28、
図3、光学センサ43及び光学センサ44)。
【0015】
米国特許第6,145,904号及び米国特許出願公開第2009/127879号明細書には、空気圧で操作され、平行なジョーを有した、当業者に公知のグリッパが記載されている。
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、ジョーの間における部品の存在を検出するセンサを備えた産業用マニピュレータのためのグリッパとして、従来の解決策の欠点を克服するだけでなく、製造も簡単なグリッパを提供することである。
【0017】
従って、本発明の第1の態様は、請求項1に記載のグリッパに関わるものである。
【0018】
より詳細には、グリッパは、本体と、前記本体に取り付けられ、部品を保持したり解放したりするように作動可能な複数のジョーと、前記複数のジョーのアクチュエータと、前記複数のジョーの間における部品の存在を検出するように構成されたセンサとを備える。前記センサは、保持しようとする部品の収容を意図する空間において、複数のジョーの間には配置されず、アクチュエータと複数のジョーのうちの1つのジョーとの間に機能的に介装される点で有利である。
【0019】
即ち、本発明に係るグリッパにおいて、センサは、ジョーの先の方ではなく、ジョーの手前側、具体的には1つのジョーとアクチュエータとの間に配置される。
【0020】
機能的に介装されるとの表現は、以下のような意味を有する。つまり、グリッパのその他の構成要素に対して物理的にとられる位置に関係なく、センサは、1つのジョーとアクチュエータとの間でその機能を実行し、即ち、センサは、2つのジョーの間でも、ジョーと捕捉しようとする部品との間でもなく、1つのジョーとアクチュエータとの間で相互作用する。
【0021】
このような構成によれば、次のような利点がある。
【0022】
まず第1に、ジョーの間のスペースがセンサに占有されず、これにより取り戻された(占有されていない)スペースは、部品を捕捉して保持するのに使用することができる。更に、特定の部品を保持するために、より迅速にジョーを開閉することができる。
【0023】
もう1つの利点は、捕捉された部品が、ジョーから等しい距離にある横方向の平面上、即ちグリッパの中心軸線上に実質的に保持されるように、グリッパを作成することが可能となり、産業用マニピュレータの作業が容易になることである。
【0024】
また、もう1つの利点は、高温であったり、汚れていたりする可能性がある捕捉された部品が、センサに触れないため、結果的に、センサの耐用年数が長くなることである。
【0025】
提案する解決策は、アンギュラグリッパと、平行ジョーを有したグリッパとの両方に、低コストで容易に実装することができる。
【0026】
前記複数のジョーは、部品を保持するように意図された遠位端と、前記アクチュエータによって互いに対して移動可能な、反対側の近位端または肩部とを備えるのが好ましい。前記アクチュエータは、少なくとも1つのジョーの近位端に作用する(例えば、1つのジョーが静止していてもよいし、全てのジョーが可動であってもよい)。前記センサは、前記アクチュエータと、これら複数のジョーのうちの1つのジョーの近位端との間に機能的に介装され、例えば、アクチュエータに対するジョーの近位端の位置を示す信号を生成するように構成され、この信号は、複数のジョーの間に部品があるか否かも示す。
【0027】
前記センサは、磁気式であるのが好ましく、更には、磁気素子と、例えばホール効果に基づき、前記磁気素子を検出するための電子回路とを備えるのが好ましい。前記電子回路は、ジョーに固定され、前記磁気素子は、前記アクチュエータによって加えられる力に応じ、前記電子回路に対して移動可能である。
【0028】
一態様において、前記電子回路は、ジョーの近位端において、当該ジョーに取り付けられ、前記磁気素子は、前記アクチュエータ、例えば、リニアアクチュエータのエアピストンまたはロッドに取り付けられ、前記センサが取り付けられたジョーによって加えられる力に応じ、特に、前記アクチュエータが作動したときに、前記センサが取り付けられたジョーによって加えられる力に応じ、前記磁気素子が前記電子回路から最大距離にある第1の位置と、前記磁気素子が前記電子回路から最小距離にある第2の位置との間で、前記電子回路に対し、前記アクチュエータと共に移動可能である。
【0029】
これに代わる態様において、前記電子回路は、ジョーの近位端で当該ジョーに取り付けられ、前記磁気素子は、前記電子回路と前記アクチュエータとの間に介装された専用の部材に取り付けられ、前記センサが取り付けられたジョーによって加えられる力に応じ、前記磁気素子が前記電子回路から最大距離にある第1の位置と、前記磁性素子が前記電子回路から最小距離にある第2の位置との間で、移動可能である。
【0030】
前記電子回路から最小距離となる前記磁気素子の位置は、前記複数のジョーの部品把持位置に対応、即ち、部品が前記複数のジョーの間に保持されている状態に対応するのが好ましい。従って、前記電子回路は、前記磁気素子が第2の位置にあること、即ち、最小距離にあることを検出すると、グリッパによって部品が正しく保持されていることを確認する信号を生成し、前記磁気素子が遠ざかっていることを検出すると、例えば、ジョーの開位置または閉位置に対応するが、把持されている部品がないといった、別の状態に対応する信号が生成されるか、または信号が生成されない。
【0031】
磁気素子は、それぞれのジョーに対して移動可能に配置されることにより、以下のようになるのが好ましい。
・複数のジョーが閉動する間、磁気素子は、それぞれのジョーに対して回動せず、複数のジョーが動いて捕捉しようとする部品に当接する点まで、磁気素子と電子回路との間の距離は変化せずに一定のままである。このような状況において、センサは、部品を把持したことを示す信号を生成しない。
・その後、捕捉しようとする部品に対して複数のジョーが接近し、複数のジョーの間に部品を固定するのに必要な力をアクチュエータが加えると、磁気素子とそれぞれのジョーとが相対回動し、磁気素子と電子回路との間の距離が減少し、場合によってはゼロまで、即ち磁気素子が電子回路に当接する点まで減少する。このような状況において、センサは、部品が把持されたという信号を生成する。
【0032】
このように、グリッパの作動中の誤検知信号、即ち、実際には部品がジョーの間にないのに、部品が把持されたことを示す信号を発生させるというリスクをおかさずに、必ずしも低ヒステリシス型である必要のない経済的なセンサを使用することが可能となる。
【0033】
例えば、前記センサは、電子回路のためのハウジング、例えば、位置を調整可能に前記電子回路を配置することができるハウジングを画定する第1の部材と、磁気素子を収容する第2の部材とを備える。更に、前記センサは、前記第1の部材と前記第2の部材との間に介装される弾性部材を備え、前記第2の部材は、前記センサが取り付けられた前記ジョーによって加えられる力に応じ、前記第1の部材に対して移動可能であり、前記弾性部材は、前記アクチュエータに対抗力を及ぼす。
【0034】
より好ましくは、前記センサの前記第1の部材が、ジョーに固定されるか、または当該ジョーと一体に形成され、前記第2の部材は、前記第1の部材にヒンジ結合され、前記第1の部材に対して回動可能であり、即ち、アクチュエータが作動するときに同じジョーによって力が加えられる結果、及び前記弾性部材によって対抗力が加えられる結果、揺動する。
【0035】
例えば、センサの第1の部材は、ジョーの近位端において、当該ジョーに固定され、前記1つのジョーは、前記第1の部材に対して前記第2の部材を回動させる。部品が前記複数のジョーの間に保持されると、前記第1部材と前記第2部材との角度が最小となり、前記弾性部材が圧縮される。
【0036】
前記センサの前記第2の部材は、前記アクチュエータの一部に当接する摺動ブロックであるのが好ましい。前記アクチュエータは移動可能であり、摺動ブロックに作用し、当該摺動ブロックに押圧力を加える。
【0037】
全般的に、前記アクチュエータは、空気圧式、油圧式、または電気式とすることができる。
【0038】
好ましくは、全般的に、前記電子回路に対する前記磁気素子の位置は、前記センサが取り付けられたジョーの位置に依存し、従って、前記複数のジョーの間に保持され得る部品のサイズ、及び前記アクチュエータの位置に依存する。
【0039】
本出願人は、センサが空気圧式である本発明の別の態様に関する分割特許出願の提出を留保する。この場合、センサは、
・グリッパのジョーと前記アクチュエータとの間で開口し、外部の低圧源または真空源との流体的連通を行うダクトであって、前記低圧源または真空源は、遠隔位置にあって、ゴムホースによって前記センサに接続することも可能であり、前記センサにおける圧力値(即ち、低圧値)を検出するための機器を予め配置可能である、ダクトと、
・前記センサが取り付けられた同じジョーによって加えられる力に応じ、前記ダクトの開位置と閉位置との間で移動可能なシャッタと
を備える。
【0040】
空気圧の前記センサは、ジョーの近位部または肩部において、当該ジョーに固定可能な第1の部材を備えるのが好ましい。前記ダクトは、前記第1の部材に画定される。前記センサは、前記第1の部材に取り付けられる第2の部材を更に備え、当該第2の部材は、前記センサの前記第1の部材が取り付けられた同じジョーによって加えられる力に応じ、前記開位置と前記閉位置との間で、前記第1の部材に対して移動可能である。
【0041】
例えば、前記センサの前記第2の部材は、前記第1の部材にヒンジ結合され、前記第1の部材が取り付けられた前記ジョーの角度位置に応じ、前記開位置と前記閉位置との間で前記第1の部材に対して回動可能である。
【0042】
本態様の動作は単純であり、部品Pを捕捉せずにジョーが閉じると、センサのダクトがシャッタによって閉鎖されず、ダクト自体において第1の低圧値が検出される一方、ジョーの間に部品が保持されると、シャッタがセンサのダクトを閉鎖し、第1の低圧値よりも大きい第2の低圧値がダクト自体において検出される。ダクト内における圧力(低圧)の差を検出することにより、部品が把持された状態と部品が不在の状態とを識別することができる。
【0043】
好ましい態様において、前記アクチュエータは、グリッパの本体内に画定された対応するシリンダ内に供給される加圧流体の作用下、及び弾性戻し部材の作用下で、前記シリンダ内で縦方向に沿って往復移動可能な少なくとも1つのエアピストンを備える。
【0044】
本発明に係るグリッパは、アンギュラグリッパであってもよく、この場合、前記複数のジョーは、ピン上で揺動可能であり、それぞれが、部品の保持を意図した遠位端と、前記アクチュエータが押圧力を加える近位端または肩部とを備える。前記遠位端は、前記ピンに関して前記近位端とは反対側にあり、前記複数のジョーは、前記遠位端が拡がると共に前記近位端が互いに近付く開位置と、前記遠位端が互いに近付くかまたは当接すると共に前記近位端が拡がる閉位置との間で揺動し、部品を把持しているときの前記複数のジョーの位置は、前記開位置及び前記閉位置に対して中間となる位置である。
【0045】
本発明に係るグリッパは、平行なジョーを有するグリッパとすることが可能であり、この場合には、少なくとも1つのジョーが、ガイドに沿って平行移動可能であり、ピン上で揺動して前記少なくとも1つのジョーを前記ガイド上で変位させるように対応したアームを備える。ジョーの前記近位端は、前記アームによって画定され、前記センサは、前記アクチュエータと前記アームとの間に機能的に介装される。
【0046】
全般的に、グリッパは、固定のジョー及び単一の可動ジョー、2つの可動ジョー、3つの可動ジョーなどを有することができる。
【0047】
前記アクチュエータは、前記複数のジョーの前記近位端の間に挿入または移動して、前記近位端を拡げることが可能な、少なくとも1つのエアピストンを備えるのが好ましい。或いは、アクチュエータは、油圧式または電気式である。
【0048】
本発明のもう1つの目的は、従来の解決策の欠点を克服するような、産業用マニピュレータのためのグリッパの複数のジョーの間における部品の存在を検出する方法を提供することである。
【0049】
従って、本発明の第2の態様は、請求項20に記載の方法に関するものである。
【0050】
より詳細には、本方法は、
・本体と、前記本体に取り付けられ、部品を保持したり解放したりするように作動可能な複数のジョーと、前記複数のジョーのアクチュエータと、センサとを備えたグリッパを設けるステップと、
・前記アクチュエータを用い、開位置、閉位置、及び部品の把持位置の間で前記複数のジョーを動かし、部品を捕捉して保持するステップと、
・前記センサを用い、部品が適切に把持されたことを示す信号を生成するステップと
を備える。
【0051】
グリッパに関する上述の利点を達成するため、即ち、部品が把持されたことを識別するために、前記センサは、前記アクチュエータに対する(少なくとも)1つのジョーの位置を検出するのが好ましい。
【0052】
実際には、前記センサが、前記アクチュエータと前記複数のジョーのうちの1つのジョーとの間に機能的に介装され、前記アクチュエータに対する前記1つのジョーの位置が、正しく把持された部品に対応するときに、前記センサが信号を生成する。
【0053】
前記センサは、前記アクチュエータが作動しているとき、即ち前記アクチュエータが、閉じた前記複数のジョーに対応した位置にあるとき、前記複数のジョーの閉位置からの前記1つのジョーのずれを検出する。このずれは、複数のジョーの間にある部品によって生じる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を用い、例示のみを目的として限定を伴うことなく記載された、本発明の好ましいが排他的ではない実施形態についての以下の明細書の考察により、一層明らかになるであろう。
【0055】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る産業用マニピュレータのためのグリッパの斜視図である。
【
図2】ジョーが開いた状態にあるときの、
図1に示すグリッパの部分断面斜視図である。
【
図2A】ジョーが閉じた状態にあるときの、
図1に示すグリッパの部分断面斜視図である。
【
図3】ジョーが完全に閉じた状態にあるときの、
図1に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図4A】ジョーが閉じて作業対象の第1の部品に当接した状態にあるときの、
図1に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図4B】ジョーが閉じて作業対象の第2の部品に当接した状態にあるときの、
図1に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図4C】ジョーが閉じて作業対象の第3の部品に当接した状態にあるときの、
図1に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図5】ジョーが開いた状態にあるときの、
図1に示すグリッパの分解斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る産業用マニピュレータのためのグリッパの斜視図である。
【
図7】ジョーが完全に閉じた状態にあるときの、
図6に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図8】ジョーが閉じて作業対象の部品に当接した状態にあるときの、
図6に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図9】ジョーが開いた状態にあるときの、
図6に示すグリッパの分解斜視図である。
【
図10】
図6に示すグリッパの詳細を示す斜視図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る産業用マニピュレータのためのグリッパの斜視図である。
【
図12】ジョーが開いた状態にあるときの、
図11に示すグリッパの部分的ファントム図法の立面斜視図である。
【
図13】ジョーが完全に閉じた状態にあるときの、
図11に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図14】ジョーが閉じて作業対象の部品に当接した状態にあるときの、
図11に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図16】ジョーが完全に開いた状態にあるときの、本発明の第4実施形態に係る産業用マニピュレータのためのグリッパの垂直断面図である。
【
図17】ジョーが完全に閉じた状態にあるときの、
図16に示すグリッパの垂直断面図である。
【
図18】ジョーが閉じて作業対象の部品に当接した状態にあるときの、
図16に示すグリッパの垂直断面図である。
【
図19】ジョーが開いた状態にあるときの、
図16に示すグリッパの斜視図である。
【
図21】本発明の第5実施形態に係る産業用マニピュレータのためのグリッパの斜視図である。
【
図22】ジョーが開いた状態にあるときの、
図21に示すグリッパの部分的ファントム図法の立面斜視図である。
【
図23】ジョーが完全に閉じた状態にあるときの、
図21に示すグリッパの部分断面立面図である。
【
図24】ジョーが閉じて作業対象の部品に当接した状態にあるときの、
図21に示すグリッパの部分断面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1~
図5は、本発明の第1実施形態に係る産業用マニピュレータのためのグリッパ100を示す。
【0057】
グリッパ100は、一般的なシリンダピストン結合に従って、移動可能なエアピストン103を内部に有するシリンダ102が画定された本体101を備える。圧縮空気が、ノズル105を介して供給される。このグリッパ100は、ピン108及びピン109を用いて本体101に取り付けられた2つのジョー106及びジョー107を備え、これにより、これらジョー106,107は、
図1、
図2、及び
図5に示すようにジョー106,107が拡げられた開位置と、
図3に示すようにジョー106,107が互いに当接する閉位置との間で揺動可能となっている。
図4A~
図4Cは、開位置と閉位置との間の中間位置を示しており、これは、部品把持位置と定義することができ、ジョー106,107は、わずかに拡がると共に、作業対象の部品Pに当接するまで閉じた状態にある。
【0058】
ジョー106,107の閉動は、楔状部110を有したエアピストン103によって生じ、圧縮空気がノズル105を介して供給され、エアピストン103が、ジョー106,107自体に近い方のシリンダ102の端部に向かって移動するとき、即ちエアピストン103が、閉死点と呼称し得る点に向かって移動するときに、ジョー106,107の間に入っていく楔状部110によって生じる。このような閉動を精度良く達成するため、ジョー106,107は、それぞれのピン108,109からエアピストン103の楔状部110に向かって延びる肩部106',107'(これは、近位端とも定義することができる)を、部品Pを捕捉して保持する機能を有した遠位端106'',107''とは反対側に備える。
【0059】
ばねまたはゴム要素といった弾性部材111が、ジョー106,107の間に挿入されており、エアピストン103がその初期位置に戻ったとき、即ち圧縮空気の供給が中断されたときに、グリッパを自動的に開動させる。ばね111は、ジョー106,107の遠位端106'',107''を拡げようとする押圧力を発生するものであって、即ち、エアピストン103の楔状部110によって加えられる押圧力がなくなると、ジョー106,107を開位置に戻そうとする。
【0060】
図に示す例では、エアピストン103が変位する縦方向に直交する方向に沿ってばね111が作用する。
【0061】
グリッパ100は、全般に符号112で示されるセンサを備え、当該センサ112の機能は、任意の時点でジョー106,107がとる位置を示す電気信号の生成である。当業者に公知の解決策とは異なり、グリッパ100では、センサ112が、エアピストン103には配置されておらず、またジョー106,107の遠位端106',107'のうちの一方にも配置されておらず、センサ112は、エアピストン103とジョー106,107のうちの一方との間、具体的には、エアピストン103の楔状部110とジョー106,107の肩部106',107'のうちの一方との間に機能的に介装されている。
【0062】
図1~
図5に示す例では、センサ112が、エアピストン103の楔状部110とジョー106の肩部106'との間に介装されている。
【0063】
センサ112は、磁気式であり、ここで、その構造及び動作について詳細に説明する。
【0064】
図5を参照すると、センサ112は、ジョー106に対して静止するために、当該ジョー106の肩部106'に固定されることを意図した第1の部材113を備え、換言すれば、センサ112の第1の部材113は、ピン108に対して肩部106'と共に一体的に回動するように意図されている。図示の例では、センサ112の第1の部材113が、対応してジョー106の肩部106に設けられた孔115に係合する突出部114を有する。
【0065】
センサ112の第1の部材113には、所定の距離にある磁気素子の存在を、ホール効果によって検出可能な電子回路116がある。この電子回路116に電力を供給し、センサ112が生成した電気信号を収集するために、配線117が設けられている。
【0066】
また、センサ112は、ジョー106の肩部106'を貫通し、センサ112の第1の部材113及び第2の部材118の両方を貫通して挿入されるピン119により、第1の部材113に揺動可能に取り付けられた第2の部材118を備え、この第2の部材118は、摺動ブロックと規定することができる。換言すれば、センサ112の第2の部材118は、ピン119を用い、第1の部材113にヒンジ結合される。
【0067】
このような構成により、第2の部材118は、第1の部材113に対して移動可能であり、従って、これら2つの部材113,118の間の最大可能角度に対応する遠位位置と、2つの部材113,118の間の最小可能角度に対応する近位位置との間で、ジョー106の肩部106'に対しても移動可能である。
【0068】
図5に最もよく示されているように、ペレットのような形をした磁気素子120が、第2の部材118内の専用座部120'に収容されている。磁気素子120は、第2の部材118と共に一体的に移動するので、センサ112の第1の部材113に取り付けられた電子回路116による磁気素子120の位置の検出は、第2の部材118の角度位置の間接的な測定に相当し、その結果、検出時点でジョー106がとる位置に一義的に依存したものとなる。第2の部材118は、エアピストン103の楔状部110に常に当接して、その面上で摺動ブロックとして作用し、このため、センサ112の第2の部材118は、楔状部110においてエアピストン103を摺動し易くする丸みを帯びた面を有するのが好ましい。
【0069】
ばねであるのが好ましい弾性部材121が、センサ112の2つの部材113,118の間に機能的に介装され、第2の部材118を第1の部材113から遠ざけようとする押圧力を常に発生するようになっている。閉死点に向かって動くときに、ジョー106,107の肩部106'と肩部107'との間に割り込み、従って、センサ112の第1の部材113に対する第2の部材118の相対的な動きを制限することによってばね121に対抗するのは、まさにエアピストン103である。
【0070】
換言すれば、グリッパ100が作動し、エアピストン103が圧縮空気によって押圧力を受けると、エアピストン103自体が、センサ112の第2の部材118に押圧力を加え、それによってばね121が加える力に対抗する。部品Pを把持する場合、ジョー106がとる新しい角度位置により、第2の部材118がピン119上で揺動し、これに対応して、第1の部材113と第2の部材118との間の角度が減少する。このような状況において、電子回路116は、磁気素子120の接近を検出する。磁気素子120が所定の相対位置に到達したこと、即ち、磁気素子120が生成した磁場の磁束強度が、実際にはセンサ112の第2の部材118の一義的な角位置に対応しており、従って、把持された部品の状況に対応する閾値に達したことを電子回路116が検出すると、センサ112は、対応する信号を生成する。
【0071】
グリッパ100が誤って部品Pを失うか、または部品Pが全く把持されていない場合、エアピストン103は、弾性部材121を圧縮させることなく、リミットストッパ122(閉死点)に当接して停止し、従って、正常に把持された部品Pに対応する信号を生成することはない。例えば、
図4A~
図4Cでは、エアピストン103の楔状部110が、
図3に示すものとは異なり、リミットストッパ122に当接していない。
【0072】
具体的には、
図2は、ジョー106,107が完全に開いた状態のグリッパ100を示しており、センサ112の第2の部材118と第1の部材113との間の角度が最大であり、磁気素子120が、電子回路116から最大の距離にある。
図3は、ジョー106,107が完全に閉じた状態のグリッパ100を示しており、センサ112の第2の部材118と第1の部材113との間の角度が最大であり、磁気素子120が、電子回路116から最大の距離にある。
図4A~
図4Cは、ジョー106,107が、中間となる部品Pの把持位置にあるグリッパ100を示しており、センサ112の第2の部材118と第1の部材113との間の角度が最小であり、磁気素子120は、閉位置からのジョー106の角度変位のために、正確に電子回路116に最も近い位置にある。
【0073】
上述した解決策を採用することにより、産業用マニピュレータは、部品Pが落下した可能性があること、または部品Pを把持しなかったことを誤りなく判定することができる。いずれの場合も、センサ112の一致が得られず、マニピュレータが停止、即ち、グリッパ100が停止する。
【0074】
上述した解決策には、いくつかの利点がある。
【0075】
まず第1に、ジョー106,107の周囲の空間は完全に空いたままであって、センサ112は、ジョー106,107の遠位端106'',107''、即ち、作業対象の部品Pと相互作用する必要のあるジョー106,107の部分には取り付けられていない。このようにして、グリッパ100をより良好に使用することが可能となる。
【0076】
第2に、ジョー106,107の遠位端106'',107''の間にはセンサ112がなく、ジョー106,107が対称であって、処理中に部品が保持されるグリッパ100の縦方向軸線に対して鏡像のように動くので、グリッパ100は対称である。
【0077】
もう1つの利点は、センサ112を安価な構成部品で製造できることであり、実際に、センサ112の動作は、弾性部材121の存在に基づくものでもあるので、センサ112が低ヒステリシス型またはアナログ式である必要はない。より詳細には、グリッパ100が部品Pを把持する場合にのみ、ばね121が圧縮され得るように、ばね係数が選択され、グリッパ100が部品を捕捉しない場合には、エラーであるため、ばね121が圧縮されない。
【0078】
部品へのジョー106,107の閉動について、
図2、
図2A、
図3、及び
図4A~
図4Cを参照して説明するが、円形断面を有する一方、それぞれ異なる直径P'、直径P''、及び直径P'''を有した3つの部品を、グリッパ100が捕捉しなければならない場合を考察する。
【0079】
例えば、最初に、部品Pを捕捉する指令がグリッパ100に到着すると、そのジョー106,107が、
図2に示すように開いてもよいし、
図3に示すように閉じてもよい。
【0080】
図2に示す位置からのジョー106,107の閉動の際、ジョーが部品Pまで閉じない限り、センサ112の第2の部材118と第1の部材113との間の角度は最大であり、磁気素子120は、電子回路116から最も離れた位置にあることに注目すべきである。
【0081】
換言すれば、ジョー106,107の閉動中、これらジョーが両方とも作業対象の部品Pに当接しない限り、センサ112の第2の部材118、即ち摺動ブロックは、ジョー106と共に一体的に移動し、即ち、これらの部材は、ピン119上で互いに揺動しない。
【0082】
このような挙動は、弾性部材121の予荷重を超えない限り、エアピストン103の楔状部110により、センサ112の第2の部材118がジョー106に対してピン119上で回動できないという理由によるものであり、この予荷重を超過する状態は、ジョー106,107が動いて部品Pを把持し、エアピストン103の楔状部110が、ジョー106,107の肩部106',107'を離間させることに対応する方向に更に移動するときにのみ生じる。
【0083】
これにより、即ち、ジョー106,107が部品Pを把持する前に、ジョー106に対するセンサ112の第2の部材118の相対的な回動を阻止することにより、磁気素子120がセンサ112から離間した状態に保たれる。このような状況は、必ずしも低ヒステリシス型とせずに、安価なセンサ112を採用しているにもかかわらず、誤検知信号が回避されることから、好ましいものである。
【0084】
図2Aは、ジョー106,107が部品Pまで閉じるように動いているときのグリッパ100を示しており(3つの異なる直径の部品Pが概略的に示されている)、閉動の間、センサ112の第2の部材118と第1の部材113との間の角度は一定のままであり、好ましくは、ジョーが部品Pまで閉じた点に至るまで最大値に等しく、その後、この角度は、センサ112の第2の部材118が回動する限り、センサ112に直に当接した状態の磁気素子120に対応すると共にゼロの角度に対応するリミットストッパに到達するまで減少する。
【0085】
図4A~
図4Cは、ジョー106,107(特に、部分106'',107'')が、小径の部品P'、中径の部品P''、及び大径の部品P'''まで閉じたグリッパ100をそれぞれ示している。
【0086】
図示するように、3つの場合の全てにおいて、センサ112の第2の部材118と第1の部材113との間の角度はゼロであり、磁気素子120は、センサ112に当接した状態にあって、部品が把持されたという信号、即ち、部品P',P'',P'''がジョー106,107の間に取り込まれていることを示す信号が生成される。
【0087】
第1に、ジョー106とセンサ112の第2の部材118とが一体的に動いた後、相対的に回動するという事実により、部品P',P'',P'''の直径にかかわらず、センサ112により、誤検知なしで常に正しい信号を得ることができる。
【0088】
図6~
図9は、第1実施形態のグリッパ100に相当する、本発明の第2の実施形態に係るグリッパ200を示す。この構造的変形例においても、アクチュエータとして機能して本体201内に形成されるシリンダ202内で、縦方向に往復移動するエアピストン203によって加えられる力に応じ、2つのジョー206及びジョー207が、本体201に対してそれぞれのピン208及びピン209上で揺動する。
【0089】
基本的に予荷重をかけられたばねである弾性部材211が、ピン208,209に関してエアピストン203とは反対側の2つのジョー206,207の間に介装され、エアピストン203がシリンダ202内を戻るときに、ジョー206,207を開位置にする。換言すると、ばね211は、ジョー206,207の遠位端206'',207''に押圧力を加えて当該遠位端206'',207''を拡げようとし、エアピストン203は、ジョー206,207の肩部206',207'の間を直に摺動する楔状部210を用いて、肩部206',207'に押圧力を加え、ばね211によって加えられる力に抗して、これら肩部206',207'を拡げる。
【0090】
センサ212は、ジョー206の肩部206'に固定可能な第1の部材213と、ピン219を用いて第1の部材213にヒンジ結合された第2の部材218とを備える。センサ212の2つの部材213,218の間には、好ましくはばねである弾性部材221が介装されている。
図9に示されるような磁気素子220が、センサ212の第2の部材218に挿入され、磁気素子220を検出する電子回路216が、センサ212の第1の部材213に取り付けられている。
【0091】
第2の部材218は、摺動ブロックのように、エアピストン203の楔状部210との相互作用を意図した丸みを帯びた部分を有する。エアピストン203の往復運動は、第1の部材213に対するセンサ212の第2の部材218の回動を制限する。
【0092】
ジョー206,207が
図7に示す閉位置にあるとき、エアピストン203の楔状部210は、リミットストッパ222に当接して停止する。一方、
図8に示す部品Pの把持位置では、エアピストン203の楔状部210がリミットストッパ222に接していない。
【0093】
図6において、グリッパ200は、ばね211によって加えられる押圧力により、ジョー206,207が開いた状態で示されている。
図7において、グリッパ200は、エアピストン203によって加えられる押圧力により、ジョー206,207が閉じた状態で示されている。
図8において、グリッパ200は、ジョー206,207が部品Pの把持位置にある状態、即ち、部品Pが遠位端206'',207''によって保持された状態で示されている。
【0094】
グリッパ200の動作は、上述したグリッパ100の動作と同様である。
【0095】
図10は、グリッパ200のジョー206及びセンサ212の分解斜視図である。図示するように、センサ212の第1の部材213には、電子回路216(
図10では簡略化のために図示せず)が摺動可能に挿入されたスロット213'が設けられており、電子回路216の最終的な位置を調整して固定することができるようになっている。第1の部材213は、ピン208,209に平行な軸線に沿ってピン219の挿入を可能にする孔が形成されている。ジョー206の肩部206'は、フォーク状に形成されると共に、対向する孔215が設けられ、センサ212の第1の部材213の側部に設けられた弾性突起214が、これらの孔215に係合する。ピン219を収容して、第1の部材213とのヒンジ結合の達成を可能にするため、センサ212の第2の部材218を貫通して孔218'が設けられている。ばね221及び磁気素子220をそれぞれ収容する2つの座部226,223が、第2の部材218に設けられている。適切な規制面224は、センサ212が第1の部材213に正しく取り付けられたときに、第1の部材213がジョー206の肩部206'に対して回動するのを防止する。符号225は、センサ212、即ち第2の部材218の丸みを帯びた部分を示しており、摺動ブロックのように、ピストン213の楔状部210上を移動することを意図して、部品Pが把持されたときに、ジョー206によって加えられる力に応じ、第2の部材218が第1の部材213に対して相対的に回動するのを許容するようになっている。
【0096】
ジョー206とジョー207との間の空間は、この第2実施形態のグリッパ200においても完全に空いたままであって、センサ212は、ジョー206,207の遠位端206'',207''、即ち、作業対象の部品Pと相互作用する必要のあるジョー206,207の部分には取り付けられていない。
【0097】
また、センサ212は、低ヒステリシス型である必要がないため、安価な部品で製造することができる。グリッパ200が部品Pを把持する場合にのみ、ばね221が圧縮されるように、ばね係数が選択され、グリッパ200によって部品Pが捕捉されない場合は、エラーであるため、ばね221は圧縮されず、このような状況がセンサ212によって識別される。
【0098】
図11~
図15は、第3実施形態のグリッパ300を示している。これは、空気圧式のグリッパ300であり、即ち、そのアクチュエータは、グリッパ300の本体301に画定されたシリンダ302内を、縦方向に規定される方向に沿って移動するピストン303である。上述のグリッパ100及びグリッパ200とは異なり、グリッパ300では、ジョー306,307が回動せず、平行移動して互いに近づいたり離れたりする。換言すれば、グリッパ100及びグリッパ200は、アンギュラグリッパであり、グリッパ300は、平行なジョー306,307を有したグリッパである。
【0099】
ジョー306,307は、グリッパ300の本体301に固定された専用のガイド301'上を摺動することができる。ガイド301'は、ピストン303の縦方向の変位方向に直交して配向され、ピストン303の閉死点への変位により、ジョー306,307が互いに近付き、逆もまた同様であって、閉死点から離れるピストン303の動きにより、弾性部材311によって加えられる力のため、ジョー306,307が互いに離れる。
【0100】
ジョー306,307は、ピン308,309でグリッパ300のグリッパ本体301に枢着されたそれぞれの揺動アーム330,331によって、ガイド301'上を移動する。具体的には、揺動アーム330,331が、それぞれ、対応するジョー306、307に係合して2つの並進方向に押す力を及ぼす丸みを帯びた突起部332,333を備える。
【0101】
この実施形態のグリッパ300において、ジョー306,307の遠位端306'',307''は、図に示すガイド301'上の摺動ブロックにおいて特定され、近位端306',307'は、揺動アーム330,331において特定され、これら揺動アーム330,331は、ジョー306,307と一体となっていないとしても、本発明の目的から、ジョー306,307の一部とみなすことができる。
【0102】
図11は、ジョー306,307が開いた状態のグリッパ300を、立面斜視図で示している。この図は、ピストン303に対抗するばね311、及びガイド301'のほか、ピストン303とジョー306の近位端306'との間に機能的に介装されるセンサ312を示している。
図12は、グリッパ300を、立面斜視図で示すと共に、部分的にファントム図法で示しており、ピストン303は、その開死点(閉死点とは反対側)にあり、従って、その楔状部310によって揺動アーム330,331に押圧力を加えないため、ばね311は、揺動アーム330,331を拡げた状態に保持し、従って、ジョー306,307を開いた状態に保つ。
図13は、ジョー306,307が完全に閉じた状態にある構成の、グリッパ300の立面(縦)断面図であり、ピストン303は、その閉死点にあって、リミットストッパ322に当接し、その楔状部310が、揺動アーム330,331の間に挿入されることにより、当該ピストン303とピン308,309との間の領域で、これら揺動アーム330,331を拡げる。このような構成において、揺動アーム330,331の丸みを帯びた突起部332,333は、互いに最小距離にある。
図14は、ジョー306,307が、部品Pの把持位置にある状態、即ち、作業対象の部品Pに対し、対向する両側の部分から当該部品Pに当接した状態にある構成の、グリッパ300の立面(縦)断面図である。
【0103】
センサ312の第1の部材313が、ジョー306の近位端306'も画定する揺動アーム330に固定されていることを考慮すると、グリッパ300の動作は、以下の通りである。ピストン303が、その閉死点に向かって動くと、当該ピストン303が、センサ312の第2の部材318に対抗し、揺動アーム330に対して静止したままの第1の部材313に対するピン319上での第2の部材318の回動を制限する。第1の部材313に挿入されて当該第1の部材313に固定された電子回路316は、電子回路316自体に対する磁気素子320の位置を示す電気信号を生成する。ばね321は、グリッパ300が非作動状態にあるとき、即ち圧縮空気がピストン303に供給されなくなったときに、第2の部材318を初期位置に戻すように作用する。同様に、ばね311は、ピストン303が開死点に戻ると、ジョー306,307を再び開く。
【0104】
グリッパ100,200について既に述べたように、グリッパ300においても、センサ312の2つの部材313,318の間のばね321は、システムを有効にする一助となる。実際、
図13と
図14とを比較することにより、ジョー306,307が閉じた状態では、ばね321が圧縮されていないか、またはわずかに圧縮されただけである一方、ジョー306,307が部品Pを把持している状態では、ばね321が圧縮されているとの結論を導き出すことが可能である。上述のように、ばね321は、電子回路316及び磁気素子320と協働し、部品Pがジョー306,307の間に存在しない状態を、センサ312がエラーなしで検出できるようにする。実際、上述した構成により、ジョー306,307が実際に部品Pを把持した
図14に示す場合にのみ、ばね321が圧縮され、そうでない場合には、ばね321が、圧縮されないままであるか、または少しだけ圧縮されたままである。これは、部品Pが保持されているときに、ジョー306が閉位置に対して回動するためである。その結果、例えば試験を実施することによって、ばね321のばね係数を適切に選択することにより、低ヒステリシス部材を使用せずに、センサ312を製造することが可能となる。
【0105】
また、グリッパ300は、上述したグリッパ100,200と同様に、自動調芯型である。
図14は、部品Pが、グリッパ300の縦方向軸線に沿って保持されていることを示している。
【0106】
図16~
図20は、第4実施形態のグリッパ400を示す。このグリッパ400は、部品Pが保持される方向の縦方向軸線に直交する空気圧式のアクチュエータ440を備えたアンギュラグリッパである。即ち、
図16~
図18は、それぞれ、ジョー406,407が、開いた状態、閉じた状態、及び部品Pを把持した状態にあるグリッパ400を、立面縦断面図で示している。
図19は、ジョー406,407が開いた状態のグリッパ400を、立面斜視図で示す。
図20は、グリッパ400の分解図である。
【0107】
より詳細には、ジョー406,407はピン408,409上で回動可能となるように、即ち、揺動可能となるように、グリッパ400の本体401に取り付けられている。ノズル405を介し、圧縮空気が本体401に供給される。本体401の内部には、ノズル405に接続され、当該ノズル405に関して互いに反対側に配置されて対向する2つのチャンバ441及びチャンバ442に仕切られた容積部440があり、これらチャンバ441,442の内部で、それぞれのエアピストン403',403''が移動可能となっている。ノズル405を介して注入された圧縮空気は、エアピストン403',403''をそれぞれのチャンバ441,442内で互いに離間させ、これらエアピストン403',403''は、それぞれのチャンバ441,442内で摺動可能であり、伸縮式カップリングによって互いに結合されている。具体的には、エアピストン403''が、エアピストン403'内に摺動可能に一部が挿入されたシャフトを有する。
【0108】
エアピストン403'は、ジョー406の肩部406'に作用し、エアピストン403''は、ジョー407の肩部407'に作用することにより、グリッパ400が圧縮空気の供給によって作動すると、ピストン403',403''は、互いに離れていき、ジョー406,407の肩部406',407'を互いに拡げて、ピン408,409上でそれらジョー406,407を回動させ、当該ジョー406,407の遠位端406'',407''を互いに接近させる。上述のように、エアピストン403',403''は、グリッパ400の縦方向軸線に直交する方向に沿って移動する。
【0109】
グリッパ400に圧縮空気が供給されなくなると、弾性部材411(実際には、ばね)が、ジョー406,407を
図16及び
図19に示す開位置に戻す。ばね411は、エアピストン403',403''の移動方向に平行に配向される一方、ピン408,409に関してエアピストン403',403''とは明らかに反対側に配置されて、グリッパ400の本体401内の専用の取付座に収容されている。
【0110】
グリッパ400は、ジョー407に取り付けられ、具体的には、肩部407'に配置されたセンサ412を備える。
図20では、簡略化のためにセンサ412が省略されているが、
図16~
図19ではっきりと確認することができる。
【0111】
センサ412は、ジョー407の肩部407'と一体的に形成された第1の部材413を備え、この第1の部材413には、LED光インジケータ450を備えた電子回路416がある。センサ412の磁気素子420は、対応する座部に収容されてエアピストン403''に取り付けられ、エアピストン403''とジョー407の肩部407''との間に、ばね421が機能的に介装されている。ばね421は、ジョー407の肩部407'によってエアピストン403''に保持され、これにより、ばね421が誤ってはずれるのを防止している。
【0112】
センサ412の動作は、以下の通りである。ジョー406,407が開いた状態で
図16に示す非作動のグリッパ400の初期状態では、ばね421が圧縮されないか、またはわずかに圧縮されているだけであり、磁気素子420は、電子回路416から第1の距離にある。グリッパ400が作動、即ち圧縮空気が供給されると、エアピストン403',403''は、ジョー406,407を、
図17に示す閉位置に移動させ、エアピストン403',403''が、弾性リング436,437で限界停止位置に達するので、エアピストン403',403''の互いに離間する移動によってばね421が圧縮されることはない。
【0113】
換言すると、弾性リング436,437は、グリッパ400が無用に閉じる場合、即ち、部品Pがジョー406,407の間に捕捉されたり保持されたりしていない場合に、エアピストン403',403''を停止させ、磁気素子420によって電子回路416に力が加わるのを防止する。
【0114】
図18に示すように、グリッパ400が部品Pを捕捉すると、ばね421の圧縮により部品Pの大きさが補償され、この位置では、グリッパ400の肩部407'が、
図17に示す位置よりもエアピストン403''に近くなり、従って、磁気素子420が電子回路416に近付き、電子回路416が磁気素子420を検出して、部品Pが把持されたことを確認するべく、LED光インジケータ450を点灯する。各構成部材は、グリッパ400が非作動となることによって、
図16の初期位置に戻される。
【0115】
従って、グリッパ400においても、センサ412のばね421は、部品Pが捕捉されたときにのみ圧縮され、それ以外のジョー406,407の全ての状態においては、ばね421の実質的な圧縮が生じない。ばね421は、電子回路416及び磁気素子420と協働して、部品Pの把持状態を、効果的で、エラーのない、簡単な方法で識別する。
【0116】
グリッパ400においても、ジョー406,407の周囲の空間は、センサ412によって占有されないので、完全に使用可能な状態が維持される。クランプ400についても、センサ412は、高価なものとする必要はない。
【0117】
提示した例に基づき、産業用マニピュレータのグリッパのジョーの間における部品の存在を検出するための、以下のような方法を考察することが可能である。この方法は、磁気センサ112,212,312,412が、従来の解決策で設けられるような、ジョーの遠位端の間には存在せず、グリッパのアクチュエータとジョーの近位端または肩部との間に機能的に介装され、異なる位置であったとしても、作業対象の部品Pが正確に存在するという事実に基づくものである。
【0118】
センサ112,212,312,412は、ジョー106及びジョー107、ジョー206及びジョー207、ジョー306及びジョー307、ジョー406及びジョー407の相対位置に応じ、対応する電子回路116,216,316,416に対して移動可能な磁気素子120,220,320,420と、電子回路116,216,316,416に対する磁気素子120,220,320,420の接近に抗する弾性部材121,221,321,421とを有して構成される。弾性部材を正しく選択することにより、即ち、弾性部材が及ぼす適正な力を選択することにより、グリッパ100,200,300,400が実際に部品Pを保持するときにのみ、弾性部材121,221,321,421が圧縮されるように、グリッパが構成される。
【0119】
この方法は、以下の2つの主な利点を有する。
・磁気素子がピストンに配置されることにより、センサをアナログ式または低ヒステリシス型とする必要がある従来の解決策に対し、本発明に係る方法は、より安価なデジタル式のON-OFFセンサで実現することも可能である。なぜなら、弾性部材121,221,321,421が、正しい動作を保証するからである。即ち、弾性部材121,221,321,421により、部品Pが実際にグリッパのジョー106及びジョー107、ジョー206及びジョー207、ジョー306及びジョー307、ジョー406及びジョー407の間にあるときのみ、センサ112,212,312,412が部品Pの把持信号を生成することが保証されるからである。
・磁気素子がグリッパのジョーに配置される従来の解決法と比較して、本発明による方法は、アクチュエータに接して、よりかさばらない位置に、センサ112,212,312,412を配置することによって実現することができる。
【0120】
図1~
図20は、2つのジョーを有したグリッパ100,200,300,400の例を示すが、全般に、本発明は、1つのジョーのみを有したグリッパ、または2つ以上のジョー、例えば3つの放射状のジョーを有したグリッパにも適用可能である。
【0121】
図1~
図20は、空気圧式のアクチュエータを有したグリッパ100,200,300,400の例を示すが、全般に、本発明は、油圧式または電気式のアクチュエータを有したグリッパにも適用可能である。
【0122】
図21~
図25は、本発明の第5実施形態に係るグリッパ500を示しており、この実施形態に関し、出願人は、分割特許出願の提出を留保するものである。この場合においても、グリッパ500はアンギュラグリッパであって、本体501内に形成されるシリンダ502の中で、アクチュエータとして動作して縦方向に往復移動するエアピストン503が加える力に応じ、2つのジョー506及びジョー507が、それぞれのピン508,509上で本体501に対して揺動する。
【0123】
基本的には予荷重が加えられたばねである弾性部材511が、ピン508,509に関してエアピストン503とは反対側において、2つのジョー506,507の間に介装され、エアピストン503がシリンダ502内で戻るときに、ジョー506,507を開位置にする。換言すると、ばね511は、ジョー506,507の遠位端506'',507''に、これら遠位端506'',507''を拡げようとする押圧力を加え、エアピストン503は、肩部506',507'の間で直に摺動する楔状部510を用い、ばね511によって加えられる力に抗して、ジョー506,507の肩部506',507'に押圧力を加え、これら肩部506',507'を拡げる。
【0124】
グリッパ500は、空気式のセンサ512を備える。このとき、センサ512は、ジョー506の肩部506'に固定可能な第1の部材513と、ピン519を用いて第1の部材513にヒンジ結合された第2の部材518とを備える。好ましくはばねである弾性部材521が、センサ512の2つの部材513,518の間に介装されている。
【0125】
第1の部材513内には、ダクト513'が画定され、このダクト513'を、ノズルを介して外部真空源、例えば、吸引器または真空ポンプに接続可能とすることにより、ダクト513'内に低圧または真空を作り出すことができるようになっている。
【0126】
センサ512の第2部材518には、磁気素子を検出する電子回路を備えた上述の解決策とは異なり、好ましくは図示するように球体で、例えばゴムからなるシャッタ520が挿入されており、空気式のセンサ512では、ホール効果による磁気素子の検出が行われず、代わりに、後述するような、ダクト513'内の圧力値(具体的には低圧の圧力値)の検出が行われる。
【0127】
第2の部材518は、摺動ブロックのように、エアピストン503の楔状部510との相互作用を意図した丸みを帯びた部分を有する。エアピストン503の往復運動により、センサ512の第2の部材518が第1の部材513に対して回動し、従って、シャッタ520を、第1の部材513に対して変位させ、従って、ダクト513'に対して変位させる。
【0128】
ジョー506,507が、
図23に示す閉位置にあるとき、エアピストン503の楔状部510は、リミットストッパ522に当接して停止している。一方、
図24に示す部品Pの把持位置では、エアピストン503の楔状部510が、リミットストッパ522に接していない。
【0129】
図21及び
図22において、グリッパ500は、ばね511によって加えられる押圧力のために、ジョー506,507が開いた状態で示されている。
図23において、グリッパ500は、エアピストン503によって加えられた押圧力のために、ジョー506,507が閉じた状態で示されている。
図24において、グリッパ500は、ジョー506,507が部品Pの把持位置にある状態、即ち、部品Pが遠位端506'',507''によって保持された状態で示されている。
【0130】
図25は、グリッパ500の分解斜視図である。図示するように、第1の部材513には、ピン508,509に平行な軸線に沿ってピン519を挿入可能とする孔が設けられている。ジョー506の近位端、即ち肩部506'は、フォーク状に形成されると共に、対向する孔515が設けられ、センサ512の第1の部材513の側面に設けられた弾性突起514が、これらの孔515に係合する。センサ512の第2の部材518を貫通して孔518'が設けられ、ピン519を収容して、第1の部材513とのヒンジ結合を達成できるようになっている。ばね521及びシャッタ220をそれぞれ収容するための2つの座部が、第2の部材518に設けられる。適切な規制面524は、センサ512が正しく取り付けられたときに、第1の部材513がジョー506の肩部506'に対して回動するのを防止する。符号525は、センサ512の丸みを帯びた部分を示し、具体的には、摺動ブロックのように、エアピストン513の楔状部510上を移動することによって、第2の部材518を第1の部材513に対して相対的に回動させることを意図するものである。
【0131】
特に
図23及び
図24を参照すると、グリッパ500が作動するとき、即ちエアピストン503がジョー506,507を強制的に閉じるとき、以下の2つの状況が生じ得る。
・第1の場合では、
図23のように、グリッパ500が部品Pを捕捉してない。センサ512の第1の部材513と第2の部材518との間に、ある角度が画定され、シャッタ520は、ダクト513'を閉じない。ダクト513'内の低圧を検出するように構成された専用の外部機器は、例えば-0.3バールに相当する第1の値を検出する。
・第2の場合では、グリッパが、ジョー506とジョー507との間で部品Pを捕捉して保持している。センサ512の第2の部材518は、ジョー506によって加えられる押圧力により、第1の部材513に当接し、シャッタ520はダクト513'を閉じる。外部機器は、例えば-0.8バールに相当するダクト513'内の低圧の第2の値を検出する。
【0132】
従って、センサ512の動作は単純で、ダクト513'内の圧力(低圧)値の検出に基づくものであり、測定値の変動は、グリッパ500が部品Pを正しく捕捉した場合を、グリッパ500が部品Pを捕捉せずに無用に作動した場合から区別するものとなる。
【0133】
ジョー506,507の周囲の空間は、この第5実施形態500においても完全に空いたままであり、センサ512は、ジョー506,507の遠位端506'',507''には取り付けられず、即ち、作業対象の部品Pと相互作用する必要があるジョー506,507の部分には取り付けられていない。
【0134】
また、センサ512は、容易に入手可能な安価な部品で製造可能であり、更に、ダクト513'内の圧力値の計測は、センサ512に接続された外部の手段によって行うことができ、この外部の手段は、遠隔に配置されていてもよく、非常に正確であって、グリッパ500に取り付けられていないため、移動や応力の影響を受けにくいという利点がある。