(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240917BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240917BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20240917BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240917BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240917BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/013
C08L91/00
C08L9/00
C08L9/06
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2021563243
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2020017908
(87)【国際公開番号】W WO2020218601
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/017583
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】早矢仕 恬子
(72)【発明者】
【氏名】ヌリー, クリスティーヌ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-534380(JP,A)
【文献】国際公開第2019/016885(WO,A1)
【文献】特開2015-083649(JP,A)
【文献】特開2016-204503(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043699(WO,A1)
【文献】特開2013-249359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物であって、少なくとも
- エラストマーマトリックス;
- 補強性無機充填剤を含む補強性充填剤;及び
-
10~150phrの間の炭化水素樹脂と、
5~65phrの間の植物油及び少なくとも1種のシラン官能基を担持する
1~25phrの液状ジエンポリマーを含む
10~90phrの間の液状可塑剤とを含む可塑化剤;
をベースとして含み、
前記液状ジエンポリマーは、少なくとも1種のオルガノシラン化合物と、少なくとも1個のヒドロキシル官能基を含む液状ポリブタジエンとを反応させることにより製造された液状ジエンポリマーであり、
ここで、炭化水素樹脂の量(単位、phr)が、前記液状ジエンポリマーの量よりも多く;
植物油の量(単位、phr)が、前記液状ジエンポリマーの量(単位、phr)の1/3よりも多
く;
前記エラストマーマトリックスは、50~100phrの少なくとも1種のSiOR官能基を有する1種のスチレン-ブタジエンコポリマー(Rは水素原子または炭化水素基である)と、0~50phrの間の第二のジエンエラストマーとを含み;
前記オルガノシラン化合物は、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、又はそれらの組合せから選択され;
前記少なくとも1個のヒドロキシル官能基を含む液状ポリブタジエンはヒドロキシル末端液状ポリブタジエンである、
ゴム組成物。
【請求項2】
前記液状ジエンポリマーが、-60℃より低いガラス転移温度を有する、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記液状ジエンポリマーが、6000g/mol未満の数平均モル質量を有する、請求項1
又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記液状ジエンポリマーが、1,2-ビニル、1,4-トランス、及び1,4-シスである1,3-ブタジエン由来のモノマー単位を含み、前記液状ジエンポリマーの中に存在する1,3-ブタジエン由来のモノマー単位全体の中の1,2-ビニルの比率が、40mol%未満であり、前記液状ジエンポリマーの中に存在する1,3-ブタジエン由来のモノマー単位全体の中の1,4-トランス及び1,4-シスを合計した比率が、60mol%より大である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記炭化水素樹脂の量(単位、phr)が、前記植物油の量よりも多い、請求項1~
4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記炭化水素樹脂の量(単位、phr)が、前記植物油と前記液状ジエンポリマーとを合計した量(単位、phr)よりも多い、請求項1~
5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
タイヤトレッドであって、請求項1~
6のいずれか1項に記載のゴム組成物を含む、タイヤトレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、たとえばゴム物品のため、特にはタイヤ、靴、又はキャタピラートラックのため、より特にはタイヤのため、さらにより特にはタイヤトレッドのためのゴム組成物である。
【背景技術】
【0002】
公知の方法(たとえば、下記の特許文献1)においては、液状ジエンポリマーが、耐久性を改良する目的で、ゴム物品のゴム組成物において使用されてきた。
【0003】
しかしながら、液状ジエンポリマーによるその改良は、そのゴム組成物のヒステリシス性能にとっては不利となる可能性もあり、そのため、それらの物品の製造業者が常に目標として来たのは、性能のバランス(耐久性能対ヒステリシス性能)の改良である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
欧州特許第1035164号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研究の過程において、本願発明者は、耐久性能とヒステリシス性能との間で、予想もされなかったような改良されたバランスを可能とする、特定のゴム組成物を見出した。
【0006】
本記述においては、特に断らない限り、示したすべてのパーセントは、質量%(wt%)である。
【0007】
「エラストマーマトリックス」という表現は、対象の組成物において、前記ゴム組成物の中に存在するエラストマーのすべてを意味していると理解されたい。
【0008】
略称の「phr」は、考慮対象のゴム組成物の中のエラストマーマトリックス100質量部あたりの、質量部を意味している。
【0009】
本記述においては、特に断らない限り、それぞれのTgDSC(ガラス転移温度)は、標準のASTM D3418-08に従って、DSC(示差走査熱量測定)による公知の方法で測定したものである。
【0010】
「aとbとの間(between a and b)」という表現で表される各種の値の間隔は、「a」より大きく、且つ「b」よりも小さい値の範囲(すなわち、両端のa及びbは含まれない)を示しているが、それに対して、「aからb(from a to b)」という表現で表される各種の値の間隔は、「a」から「b」までの値の範囲(すなわち、両端のa及びbを含む)を表している。
【0011】
「をベースとして含む(based on)」という表現は、本出願においては、使用された各種の成分の混合物、反応生成物、又は両方(それらの成分の内のいくつかは、組成物の各種の製造段階、特に加硫(硬化)の際に、少なくとも部分的には、相互に反応することが可能であるか、又は反応させようとされている)を含む組成物を意味していると理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様は、少なくとも、エラストマーマトリックス、補強性無機充填剤を含む補強性充填剤;並びに炭化水素樹脂と、植物油及び少なくとも1個のシラン官能基を担持する液状ジエンポリマーを含む液状可塑剤とを含む可塑剤をベースとして含む、ゴム組成物であって、ここで、炭化水素樹脂の量(単位、phr)が、その液状ジエンポリマーの量よりは多く、そして、植物油の量(単位、phr)が、その液状ジエンポリマーの量(単位、phr)の1/3よりも多い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
その特定のゴム組成物は、耐久性能とヒステリシス性能との間の性能のバランスの改良を可能とする。
【0014】
下記の態様、実施態様及び変法(いずれも、その好ましい範囲、事項、又は両方を含む)はそれぞれ、特に断らない限り、本発明の他の態様、他の実施態様及び他の変法のいずれか一つに適用することもできる。
【0015】
「ジエン」タイプのエラストマー(又は、大ざっぱに「ゴム」、この二つの用語は、同義語とみなされる)は、公知の方法に従って、ジエンモノマー(2個の炭素-炭素二重結合を担持するモノマー、共役又は非共役)から、少なくとも部分的に誘導される(1種又は複数の)エラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)と、理解するべきである。
【0016】
これらのジエンエラストマーは、二つのカテゴリー、すなわち「実質的に不飽和」又は「実質的に飽和」に分類することができる。一般的に、「実質的に不飽和な(essentially unsaturated)」という表現は、15%(モル%)を越えるジエン由来(共役ジエン)の単位の含量を有する、少なくとも部分的には共役ジエンモノマーから得られたジエンエラストマーを意味していると理解されたい。したがって、たとえばブチルゴム、又はEPDMタイプのジエン/α-オレフィンコポリマーのようなジエンエラストマーは、上に挙げた定義にはあてはまらず、特に、「実質的に飽和な(essentailly saturated)」ジエンエラストマー(ジエン由来の単位の含量が低いか、又は極めて低い、必ず15%未満)と表すことができる。「実質的に不飽和な」ジエンエラストマーのカテゴリーの中でも、「高度に不飽和な(highly unsaturated)」ジエンエラストマーという表現は、特に、50%よりも高いジエン由来(共役ジエン)の単位の含量を有するジエンエラストマーを意味していると理解されたい。
【0017】
このことは、各種のタイプのジエンエラストマーにあてはまるが、ゴム物品(たとえば、タイヤ)関連の当業者ならば、本発明が、実質的に不飽和なジエンエラストマーに好適に採用されるということは、理解するであろう。
【0018】
これらの定義に従えば、本発明における組成物において使用することが可能な「ジエンエラストマー」という表現は、特に、以下のものを意味すると理解されよう:
(a)好ましくは4~12個の炭素原子を有する、共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる、各種のホモポリマー;
(b)1種又は複数の共役ジエンを相互に、又は1種又は複数の好ましくは8~20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物と、共重合させることによって得られる、各種のコポリマー。
【0019】
次のものは、共役ジエンとして特に適したものである:1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1~C5アルキル)-1,3-ブタジエンたとえば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、若しくは2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、又は2,4-ヘキサジエン。次のものは、たとえば、ビニル芳香族化合物として適したものである:スチレン、オルト-、メタ-若しくはパラ-メチルスチレン、市販の「ビニルトルエン」混合物、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、又はビニルナフタレン。
【0020】
本発明の好ましい実施態様においては、そのエラストマーマトリックスには、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成のポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びそれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種のジエンエラストマーが含まれ;そのようなコポリマーは、より好ましくは、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0021】
本発明の第二の態様は、そのエラストマーマトリックスが、少なくとも1種の、少なくとも1個のSiOR官能基(ここで、Rは、水素原子又は炭化水素基であり、好ましくはRが炭化水素基である)を担持する第一のジエンエラストマーを含む、第一の態様に従うゴム組成物である。
【0022】
その炭化水素基は、アルキル基、好ましくは1~12個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1~12個の炭素原子、さらにより好ましくは1~6個の炭素原子、特には1~4個の炭素原子を有する、分岐状、直鎖状、若しくは環状のアルキル基、より特にはメチル又はエチル基であってよい。
【0023】
第二の態様の好ましい実施態様においては、その第一のジエンエラストマーが、ポリブタジエン(BR)、合成のポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びそれらの組合せからなる群より選択される。そのようなコポリマーは、より好ましくは、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0024】
第二の態様の好ましい実施態様においては、その第一のジエンエラストマーが、各種の微細構造を有していてよいが、その微細構造は、使用された重合条件、特には、変性剤、ランダム化剤、又はその両方の有無、並びに採用された変性剤、ランダム化剤、又はその両方の量に依存する。このエラストマーは、たとえば、ブロック型、ランダム型(statistical)、逐次型(sequential)、又はミクロ逐次型のエラストマーであってよく、そして分散体の形態、又は溶液の形態で調製することができる。
【0025】
「炭化水素基(hydrocarbon radical)」という表現は、実質的に炭素原子及び水素原子からなる、一価の基を意味している。そのような基には、少なくとも1種のヘテロ原子が含まれていてもよく、そして、炭素原子及び水素原子によって形成される集合体が、炭化水素基の中の大多数の割合を占めていて、たとえばアルキル又はアルコキシアルキルを表すことは公知であり;好ましくは、炭素原子及び水素原子によって形成される集合体が、その炭化水素基全体、たとえばアルキルを表すのが好ましい。そのようなSiOR(Rは、アルキル又はアルコキシアルキルである)は、「アルコキシシラン」官能基と呼ばれる。それに対して、SiOH(Rが水素原子である)は、「シラノール」官能基と呼ばれる。
【0026】
一般的に、エラストマー、特にはジエンエラストマーによって担持される官能基は、エラストマー鎖末端に位置していてもよいし、或いはエラストマー鎖末端に位置していなくてもよい(すなわち、鎖末端から離れたところに位置している)。第一のケースは、たとえば、そのジエンエラストマーを、官能基を担持する重合開始剤を使用するか、又は官能化剤を使用して調製した場合に起きる。第二のケースは、たとえば、そのジエンエラストマーを、カップリング剤、又は官能基を担持するスター分岐化剤(star-branching agent)を使用して変性した場合に起きる。
【0027】
本発明の第三の態様は、その第一のジエンエラストマーが、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)、好ましくは溶液法のスチレン-ブタジエンコポリマー(これは、溶液中で調製したスチレンとブタジエンとのコポリマーである)である、第二の態様に従うゴム組成物である。
【0028】
第二の態様又は第三の態様の好ましい実施態様においては、そのSiOR官能基が、その第一のジエンエラストマーの鎖末端に位置している。
【0029】
その好ましい実施態様の、より好ましい実施態様においては、鎖末端に位置するSiOR官能基を担持する第一のジエンエラストマーが、欧州特許第0 778 311B1号明細書に記載されている手順によって、たとえば、リビングエラストマーの鎖の末端にあるカルボアニオンをヘキサメチルシクロトリシロキサンと反応させ、次いでプロトン供与体と反応させることによって調製される。
【0030】
第二の態様又は第三の態様のまた別の好ましい実施態様においては、そのSiOR官能基が、その第一のジエンエラストマーの鎖末端に位置していない。
【0031】
他の好ましい実施態様の第一の変法においては、その第一のジエンエラストマーに担持されたSiOR官能基がペンダント基であるが、このことは、そのSiOR官能基のケイ素原子が、第一のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素-炭素結合の間に挿入されている訳ではないと言っているのと同じことである。ペンダントしたSiOR官能基を担持しているジエンエラストマーは、たとえば、アルコキシシラン基を担持するシランによってエラストマー鎖をヒドロシリル化し、次いでそのアルコキシシラン官能基を加水分解することによって、SiOR官能基を得ることによって調製することができる。
【0032】
他の好ましい実施態様の第二の変法においては、その第一のジエンエラストマーに担持されたSiOR官能基が、ペンダント基ではなく、エラストマー鎖の中に位置している、すなわちエラストマー鎖の内部に存在し得るが、このことは、そのSiOR官能基のケイ素原子が、その第一のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素-炭素結合の間に挿入され得ると言っているのと同じことである。そのようなジエンエラストマーは、欧州特許第2 285 852B1号明細書に記載されている手順に従って調製することができる。この第二の変法は、他の好ましい実施態様よりも優先され、適用される。
【0033】
第二の態様、第三の態様、好ましい実施態様、又はより好ましい実施態様よりも、さらにより好ましい実施態様においては、その第一のジエンエラストマーが、少なくとも1種のアミン官能基、好ましくは少なくとも1種の第三級アミン官能基をさらに担持している。
【0034】
そのさらにより好ましい実施態様の特定の実施態様においては、その第一のジエンエラストマーに担持されたアミン官能基が、第三級アミン官能基である。第三級アミン官能基について説明すれば、C1~C10アルキル基、好ましくはC1~C4アルキル、より好ましくはメチル又はエチル基を用いて置換されたアミンである。
【0035】
その特定の実施態様のさらに特定の実施態様においては、その第一のジエンエラストマーに担持されたアミン官能基が、ペンダント基である。公知のように、そのアミン官能基がペンダントした位置にあるということは、そのアミン官能基の窒素原子が、その第一のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素-炭素結合の間に挿入されていないということを意味している。
【0036】
その特定の実施態様のまた別のさらに特定の実施態様においては、その第一のジエンエラストマーで、そのSiOR官能基がアミン官能基を担持するようになっている。そのようなジエンエラストマーは、欧州特許第2 285 852B1号明細書に記載の操作手順に従って、エラストマー鎖に、アミン官能基を担持するアルコキシシラン基を導入するカップリング剤によってジエンエラストマーを変性することによって得ることができる。たとえば、次のものが、カップリング剤として適している:C1~C10、好ましくはC1~C4ジアルキル基を有する、N,N-ジアルキルアミノプロピルトリアルコキシシラン;化合物の3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシランが、本発明のどの実施態様においても、最も特に好ましい。
【0037】
第二の態様、第三の態様、好ましい実施態様、より好ましい実施態様、さらにより好ましい実施態様、特定の実施態様、又はさらに特定の実施態様の、なおもさらに特定の実施態様においては、その第一のジエンエラストマーが、-40℃未満(特には、-100℃~-40℃の間)、有利には-45℃未満(特には、-90℃~-45℃の間)のガラス転移温度(TgDSC)を有している。
【0038】
第二の態様、第三の態様、好ましい実施態様、より好ましい実施態様、さらにより好ましい実施態様、特定の実施態様、さらに特定の実施態様、又はなおもさらに特定の実施態様の有利な実施態様においては、そのエラストマーマトリックスが、場合によっては、その第一のジエンエラストマーとは異なる少なくとも1種の第二のジエンエラストマーを含んでいる、すなわち、そのエラストマーマトリックスが、第一のジエンエラストマーとは異なる第二のジエンエラストマーをまったく含まないか、又は、そのエラストマーマトリックスが、第一のジエンエラストマーとは異なる、少なくとも1種の第二のジエンエラストマーをさらに含み、そしてここで、その第一のジエンエラストマーの量が20~100phr、好ましくは50~100phrの間、より好ましくは55~95phr、さらにより好ましくは60~90phr、特には65~85phrであり、そしてここで、その第二のジエンエラストマーの量が、0~80phr、好ましくは0~50phrの間、より好ましくは5~45phr、さらにより好ましくは10~40phr、特には15~35phrである。
【0039】
その有利な実施態様の、より有利な実施態様においては、その第二のジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びそれらの組合せからなる群より選択され、好ましくはポリブタジエン及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0040】
本発明におけるゴム組成物は、補強性充填剤をベースとして含む。
【0041】
ゴム物品を製造するために使用することが可能で、ゴム組成物を補強する性能で知られている各種のタイプの補強性充填剤、たとえば、補強性有機充填剤たとえばカーボンブラック、又は補強性無機充填剤たとえばシリカを使用することができるが、公知の方法では、それらにカップリング剤が組み合わされる。
【0042】
本発明の好ましい実施態様においては、その補強性充填剤の量は、95phrより大(たとえば、95~315phrの間)、好ましくは105phrより大(たとえば、105~295phrの間)、より好ましくは115phrより大(たとえば、115~275phrの間)、さらにより好ましくは125phrより大(たとえば、125~255phrの間)、特には135phrより大(たとえば、135~235phrの間)、より特には145phrより大(たとえば、145~215phrの間)、さらにより特には155phrより大(たとえば、155~195phrの間)、有利には165phrより大(たとえば、165~175phrの間)である。
【0043】
本発明におけるゴム組成物の中の補強性充填剤は、補強性無機充填剤を含み、好ましくはその補強性充填剤が、主として補強性無機充填剤を含む、すなわち、その補強性充填剤には、100質量%の補強性充填剤あたり、質量で、50%より大、より好ましくは60%より大、さらにより好ましくは70%より大、特には80%より大、より特には90%より大の補強性無機充填剤が含まれる。
【0044】
「補強性無機充填剤(reinforcing inorganic filler)」という表現は、本明細書においては、ゴム物品(たとえば、タイヤ)の製造を目的としたゴム組成物を、中間のカップリング剤以外の手段を使用することなく、それ自体で補強することが可能な、別の言い方をすれば、慣用されるタイヤグレードのカーボンブラックから、その補強の役割を置き換えることが可能な、カーボンブラックと対照させて「白色充填剤」、「クリア充填剤」、さらには「非黒色充填剤」とも呼ばれている、その色及びその由来(天然か、合成か)とは無関係に、無機若しくは鉱物質の各種充填剤を意味していると理解されたい。そのような充填剤は、一般的には、公知の方法で、その表面にヒドロキシル(-OH)基を有していることを特徴としている。
【0045】
この充填剤の存在している物理的形態は、重要ではなく、粉体、マイクロビーズ、顆粒、ビーズ、又は各種その他の適切な圧縮した形態などであってよい。言うまでもないことであるが、各種の補強性無機充填剤、好ましくは高分散性のシリカ質の充填剤、アルミナ質の充填剤、又はその両方を組み合わせた補強性無機充填剤については、以後において説明する。
【0046】
シリカ質タイプ(好ましくはシリカ(SiO2))、アルミナ質タイプ(好ましくはアルミナ(Al2O3))、又はその両方の鉱物質充填剤は、補強性無機充填剤として特に好適である。
【0047】
本発明の第四の態様は、第一~第三の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その補強性無機充填剤の量が、90phrより大(たとえば、90~310phrの間)、好ましくは100phrより大(たとえば、100~290phrの間)、より好ましくは110phrより大(たとえば、110~270phrの間)、さらにより好ましくは120phrより大(たとえば、120~250phrの間)、特には130phrより大(たとえば、130~230phrの間)、より特には140phrより大(たとえば、140~210phrの間)、さらにより特には150phrより大(たとえば、150~190phrの間)、有利には160phrより大(たとえば、160~170phrの間)のものである。
【0048】
本発明の第五の態様は、第一~第四の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その補強性無機充填剤が、主としてシリカを含んでいる、すなわち、その補強性無機充填剤が、100質量%の補強性無機充填剤あたり、質量で、50%より大、好ましくは75%より大、より好ましくは100%のシリカを含んでいるものである。その補強性無機充填剤には、単一のタイプのシリカを含んでいてよいし、或いは数種のシリカのブレンド物を含んでいてもよい。使用されるシリカは、当業者には公知の各種補強性シリカ、特に、いずれも、450m2/g未満、好ましくは20~400m2/g、より好ましくは50~350m2/g、さらにより好ましくは100~300m2/g、特には150~250m2/gのBET表面積及びCTAB比表面積を有する、特には、各種の沈降法シリカ又は熱分解法シリカであってよい。そのようなシリカは、被覆されていても、されていなくてもよい。
【0049】
BET表面積は、公知の方法に従って、すなわちブルナウアー・エメット・テラー法を使用したガス吸着法により測定されるが、その方法は、The Jouranal of American Chemical Society,Vol.60,p.309(1938年2月)、さらに詳しくは、仏国標準NF ISO 9277(1996年12月)(多点容量法(5点);ガスは、窒素、脱気は、160℃で1時間、相対圧力範囲p/poは0.05~0.17)に記載されている。CTAB比表面積は、仏国標準NF T45-007(1987年11月)(方法B)に従って求める。
【0050】
当業者の理解するところであろうが、また別の性質、特には有機的な性質を有する補強性充填剤、たとえばカーボンブラックも、本セクションに記載した補強性無機充填剤と等価のものとして使用可能であろうが、ただし、その補強性充填剤は、無機層たとえばシリカを用いて被覆されているか、そうでなければ、その表面に、充填剤とエラストマーとの間での結合を生成させるための、カップリング剤の使用を必要とする、官能性のサイト、特にヒドロキシルを含んでいなければならない。例としては、たとえば、国際公開第96/37547号パンフレット及び国際公開第99/28380号パンフレットに記載されているような、ゴム物品(たとえば、タイヤ)のためのカーボンブラックを挙げることができる。
【0051】
本発明の第六の態様は、第一~第五の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その補強性充填剤が、カーボンブラックをさらに含み、そしてカーボンブラックの量が、10phr未満(たとえば、0~10phrの間)、好ましくは9phr未満(たとえば、1~9phrの間)、より好ましくは8phr未満(たとえば、2~8phrの間)のものである。
【0052】
示した範囲の内であれば、カーボンブラックの着色性(黒色着色剤)及び抗UV性のメリットが得られ、さらには、補強性無機充填剤によって得られる典型的な性能、すなわち、低ヒステリシス性(転がり抵抗の抑制)及び濡れ時の高グリップ性に悪影響を及ぼすこともない。
【0053】
補強性無機充填剤をエラストマーマトリックスたとえば、ジエンエラストマーにカップリングさせるためには、補強性無機充填剤(その粒子状物質の表面)とエラストマーマトリックスたとえば、ジエンエラストマーとの間の化学的性質、物理的性質、又はその両方の満足のいく組合せを得る目的で、公知の方法で、カップリング剤(すなわち結合剤)を使用することができる。そのカップリング剤は、少なくとも二官能である。特には、少なくとも二官能のオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンを使用することができる。
【0054】
具体的には、たとえば国際公開第03/002648号パンフレット、国際公開第03/002649号パンフレット、及び国際公開第2004/033548号パンフレットに記載されているような、シランポリスルフィド(それらの、特定の構造に応じて、「対称」又は「非対称」と呼ばれる)を使用することができる。
【0055】
特に好適なシランポリスルフィドは、次の一般式(I)に相当するものである:
Z-A-Sx-A-Z (I)
式中:
- xは、2~8の整数(好ましくは2~5)であり;
- Aは、二価の炭化水素基(好ましくは、C
1~C
18アルキレン基又はC
6~C
12アリーレン基、より特にはC
1~C
10、特にはC
1~C
4のアルキレン、特にはプロピレン)であり;
- Zは、次の式の一つに相当し:
[Chem.1]
【化1】
式中:
- R
1基(非置換であっても、置換されていてもよく、そして相互に同じであっても異なっていてもよい)は、C
1~C
18アルキル、C
5~C
18シクロアルキル、又はC
6~C
18アリール基(好ましくは、C
1~C
6アルキル、シクロヘキシル、又はフェニル基、特にはC
1~C
4アルキル基、より特にはメチル、エチル、又はその両方)を表し、
- R
2基(非置換であっても、置換されていてもよく、そして相互に同じであっても異なっていてもよい)は、C
1~C
18アルコキシル基又はC
5~C
18シクロアルコキシル基(好ましくは、C
1~C
8アルコキシル及びC
5~C
8シクロアルコキシルから選択される基、より好ましくはC
1~C
4アルコキシルから選択される基、特にはメトキシル及びエトキシル)を表し、これらは、先の定義の制限を受けることなく、特に適している。
【0056】
上の式(I)に相当するアルコキシシランポリスルフィドの混合物の場合、特に市販されている組合せの場合には、その指数xの平均値は、2~5の間の分数、より好ましくはほぼ4である。しかしながら、本発明は、たとえば、アルコキシシランジスルフィド(x=2)を用いて、有利に実施することができる。
【0057】
より特には、シランポリスルフィドの例としては、以下のものが挙げられる:ビス((C1~C4)アルコキシル(C1~C4)アルキルシリル(C1~C4)アルキル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィド、又はテトラスルフィド)、たとえば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド。これらの化合物の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(略してTESPT、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2)、又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(略してTESPD、式[(C2HSO)3Si(CH2)3S]2)が、特に使用される。好ましい例としては、ビス(モノ(C1~C4)アルコキシルジ(C1~C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィド、又はテトラスルフィド)、より特には、国際公開第02/083782号パンフレット(又は米国特許第7,217,751号明細書)に記載されている、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0058】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤としては、特には、以下のものが挙げられる:国際公開第02/30939号パンフレット(又は米国特許第6,774,255号明細書)及び国際公開第02/31041号パンフレット(又は米国特許出願公開第2004/051210号明細書)に記載されているような、二官能のPOS(ポリオルガノシロキサン)、又はヒドロキシシランポリスルフィド(上の式(I)で、R2=OH)、又は、たとえば、国際公開第2006/125532号パンフレット、国際公開第2006/125533号パンフレット、及び国際公開第2006/125534号パンフレットに記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持しているシラン若しくはPOS。
【0059】
その他のシランスルフィドの例としては、たとえば、米国特許第6,849,754号明細書、国際公開第99/09036号パンフレット、国際公開第2006/023815号パンフレット、国際公開第2007/098080号パンフレット、国際公開第2008/055986号パンフレット、及び国際公開第2010/072685号パンフレットに記載されているような、たとえば、少なくとも1個のチオール(-SH)官能基を担持するシラン(メルカプトシランと呼ばれる)、少なくとも1個のブロックされたチオール官能基を担持するシラン、又はその両方が挙げられる。
【0060】
言うまでもないことであるが、特に、先に挙げた国際公開第2006/125534号パンフレットに記載されているような、先に述べたカップリング剤の組合せも使用することができる。
【0061】
本発明の好ましい実施態様においては、カップリング剤の含量は、補強性無機充填剤、特にはシリカの100質量%あたり、0.5~15質量%である。
【0062】
本発明の好ましい実施態様においては、本発明におけるゴム組成物のトレッドのゴム組成物は、50phr未満(たとえば、0~50phrの間)、好ましくは40phr未満(たとえば、1~40phrの間)、より好ましくは30phr未満(たとえば、2~30phrの間)のカップリング剤をベースとして含む。
【0063】
本発明におけるゴム組成物は、可塑化剤をベースとして含む。
【0064】
可塑化剤の役割は、エラストマー及び補強性充填剤を希釈することによって、マトリックスを軟化させることである。
【0065】
本発明の好ましい実施態様においては、可塑化剤の量は、45phrより大(たとえば、45~205phrの間)、好ましくは55phrより大(たとえば、55~195phrの間)、より好ましくは65phrより大(たとえば、65~185phrの間)、さらにより好ましくは75phrより大(たとえば、75~175phrの間)、特には85phrより大(たとえば、85~165phrの間)、特には95phrより大(たとえば、95~155phrの間)、より特には105phrより大(たとえば、105~145phrの間)、さらにより特には115phrより大(たとえば、115~135phrの間)である。
【0066】
本発明におけるゴム組成物における可塑化剤には、液状可塑剤が含まれる。
【0067】
その液状可塑剤は、定義により、20℃では液状であり、そしてそのTgDSCは、定義により、-20℃未満、好ましくは-30℃未満、より好ましくは-40℃未満である。
【0068】
各種のエキステンダーオイル(芳香族性又は非芳香族性には関係ない)、エラストマーマトリックス(たとえば、ジエンエラストマー)に関してその可塑性について公知の各種の液状可塑化剤を、液状可塑剤として使用することができる。周囲温度(20℃)大気圧下で、本来的に固体である可塑化炭化水素樹脂とは対照的に、大気圧下周囲温度(20℃)で、これらの可塑剤又はこれらの油は、多少なりとも粘性を有しているが、液体(すなわち、念のため言えば、それらの容器の形状に合わせた形をとる性能を有する物質)である。
【0069】
本発明の好ましい実施態様においては、その液状可塑剤の量が、10phrより大(たとえば、10~90phrの間)、好ましくは20phrより大(たとえば、20~80phrの間)、より好ましくは30phrより大(たとえば、30~70phrの間)、さらにより好ましくは40phrより大(たとえば、40~60phrの間)である。
【0070】
本発明におけるゴム組成物における可塑化剤の中の液状可塑剤には、液状ジエンポリマーが含まれる。
【0071】
その液状ジエンポリマーが、ジエンポリマーであり、そして定義により、20℃では液状である。
【0072】
本発明の第七の態様は、第一~第六の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その液状ジエンポリマーの量が、多くとも25phr(たとえば、1~25phr)、好ましくは多くとも20phr(たとえば、3~20phr)、より好ましくは多くとも15phr(5~15phr)のものである。
【0073】
本発明の第八の態様は、第一~第七の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その液状ジエンポリマーが、-60℃未満(たとえば、-100℃~-60℃の間)、好ましくは-65℃未満(たとえば、-95℃~-65℃の間)、より好ましくは-70℃未満(たとえば、-90℃~-70℃の間)、さらにより好ましくは-75℃未満(たとえば、-85℃~-75℃の間)のガラス転移温度を有するものである。
【0074】
本発明の好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマーが、25000g/mol未満、好ましくは20000g/mol未満、より好ましくは15000g/mol未満、さらにより好ましくは10000g/mol未満の数平均モル質量を有する。本発明の第九の態様は、第一~第八の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その液状ジエンポリマーが、6000g/mol未満(たとえば、500~6000g/molの間)、好ましくは5500g/mol未満(たとえば、1000~5500g/molの間)、より好ましくは5000g/mol未満(たとえば、1500~5000g/molの間)、さらにより好ましくは4000g/mol未満(たとえば、2000~4000g/molの間)の数平均モル質量を有するものである。
【0075】
数平均モル質量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0076】
ヒドロキシル末端ポリブタジエンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の場合においては、その測定を、40℃で、テトラヒドロフラン(THF)中、濃度1g/L、流量0.3mL/分で実施することができる。クロマトグラフ分離は、PSS SDV Micro 5μ/4.6×30mmプレカラム、及びPSS SDV Micro linear 5μ/4.6×250mm(2×)分離カラムを使用して、実施することができる。RI検出器の手段によって検出することができる。キャリブレーションは、ポリブタジエン標準の手段により実施することができる(PSS-Kit ポリブタジエン-1,4、Mp 83 1-106000、パーツ番号:PSS-bdfkit、Mn:1830/4330/9300/18000/33500)。
【0077】
シラン末端ポリブタジエンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の場合においては、その測定を、室温で、テトラヒドロフラン(THF)中、濃度5g/L、流量1mL/分で実施することができる。クロマトグラフ分離は、スチレン-ジビニルベンゼンカラム(2×3cm、5μm、直列;1×30cm、5μm、100Å)の組合せを使用して、実施することができる。RI検出器の手段によって検出することができる。キャリブレーションは、ポリスチレン標準、及びマーク・ホウインク定数(a=0.73;k=0.0266mL/g)を介して得られた絶対分子量の手段により、実施することができる。
【0078】
本発明の好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマーが、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状スチレン-ブタジエンコポリマー、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0079】
その好ましい実施態様の、より好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマーが、好ましくは、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0080】
その好ましい実施態様の、また別のより好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマーが、好ましくは、液状ポリブタジエン、液状スチレン-ブタジエンコポリマー、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0081】
本発明の第十の態様は、第一~第九の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その液状ジエンポリマーが、1,2-ビニル、1,4-トランス、及び1,4-シスである1,3-ブタジエン由来のモノマー単位を含み、そしてその液状ジエンポリマーの中に存在する1,3-ブタジエン由来のモノマー単位全体における1,2-ビニルの割合が、40mol%未満(たとえば、0~40mol%の間)、好ましくは35mol%未満(たとえば、5~35mol%の間)、より好ましくは30mol%未満(たとえば、10~30mol%の間)であり、そしてその液状ジエンポリマーの中に存在する1,3-ブタジエン由来のモノマー単位全体における1,4-トランス及び1,4-シスの割合が、60mol%より大(たとえば、60~100mol%の間)、好ましくは65mol%より大(たとえば、65~95mol%の間)、より好ましくは70mol%より大(70~90mol%の間)である。
【0082】
第十の態様の好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマーの中に存在する1,3-ブタジエン由来のモノマー単位全体における1,4-トランスの割合が、30mol%より大(たとえば、30~90mol%の間)、好ましくは35mol%より大(たとえば、35~85mol%の間)、より好ましくは40%より大(たとえば、40~80mol%の間)、さらにより好ましくは45%より大(たとえば、45~75mol%の間)、特には50mol%より大(たとえば、50~70mol%の間)である。
【0083】
上述の微細構造(1,2-ビニル含量;1,4-シス含量;及び1,4-トランス含量)の特徴は、その液状ジエンポリマーの合成が完了した後で、1H、13C若しくはその両方を用いた核磁気共鳴(NMR)、たとえば、13C NMR(90.5628MHz;緩和剤:Cr(acac)3;溶媒:重水素化クロロホルム(CDCl3)、Bruker 360MHz)によって求めることができる。
【0084】
本発明の第十一の態様は、第一~第十の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その液状ジエンポリマーが、液状ポリブタジエンであるものである。
【0085】
第十一の態様の好ましい実施態様においては、「液状ポリブタジエン」という用語は、本明細書で使用するとき、それぞれ少なくとも2個の共役二重結合を有するモノマー単位を重合させることによって得ることが可能な反応生成物を意味していると理解されたく、ここで、好ましい順に、そのモノマー単位の少なくとも80、85、90、95、98、99、又は99.9%が、1,3-ブタジエンである。
【0086】
本発明におけるゴム組成物の中の可塑化剤の中の液状可塑剤の中の液状ジエンポリマーは、少なくとも1種のシラン官能基を担持している。
【0087】
本明細書に記載の液状ジエンポリマーは、シラン官能基、ヒドロキシル官能基、無水物官能基(たとえば、無水マレイン酸官能基)、及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む少なくとも1種の官能基を担持している。
【0088】
本発明の好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマーが、1.0より大(たとえば、1.0~4.0)、好ましくは少なくとも2.0(2.0~3.0)の平均官能価を有している。その平均官能価は、その液状ジエンポリマーの数平均モル質量(Mn)、及び官能基数(たとえば、シラン基の数、ヒドロキシル基の数、及び無水基の数)から、計算することができる。
【0089】
本明細書に記載の官能基は、シラン官能基、ヒドロキシル官能基、及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む。
【0090】
本発明の好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマーが、フリーラジカル重合によって製造された液状ジエンポリマーである。
【0091】
本明細書に記載の液状ジエンポリマーは、ペルオキシド、水、及び有機溶媒の存在下に、1,3-ブタジエンを重合させることにより製造された少なくとも1個のヒドロキシル官能基を含む液状ポリブタジエンであり、好ましくは、その液状ポリブタジエンが、欧州特許第12169794号明細書に記載されているような、ヒドロキシル末端の液状ポリブタジエンである。
【0092】
その好ましい実施態様の、より好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマーが、欧州特許第3294574号明細書に記載されているような、少なくとも1種のオルガノシラン化合物(好ましくは、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、又はそれらの組合せ)を、少なくとも1個のヒドロキシル官能基を含む液状ポリブタジエン(好ましくは、ヒドロキシル末端液状ポリブタジエン)、好ましくはトリエトキシシラン末端液状ポリブタジエンと反応させることにより製造された、少なくとも1個のシラン官能基を含む液状ポリブタジエンである。
【0093】
本発明において、その液状ジエンポリマーは、シラン官能基である官能基を担持している。
【0094】
本発明におけるゴム組成物の中の可塑化剤の中の液状可塑剤には、植物油が含まれ、そして植物油の量(単位、phr)が、液状ジエンポリマーの量(単位、phr)の1/3よりは多い。
【0095】
その植物油は、植物から誘導された油であって、定義により、20℃で液状である。
【0096】
本発明の好ましい実施態様においては、植物油の量(単位、phr)が、液状ジエンポリマーの量よりは多く、好ましくは植物油の量(単位、phr)が、液状ジエンポリマーの量(単位、phr)の倍よりも多い。
【0097】
本発明の第十二の態様は、第一~第十一の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その植物油の量が、5phrより大(たとえば、5~65phrの間)、好ましくは10phrより大(たとえば、10~60phrの間)、より好ましくは15phrより大(たとえば、15~55phrの間)、さらにより好ましくは20phrより大(たとえば、20~50phrの間)、特には25phrより大(たとえば、25~45phrの間)、より特には30phrより大(たとえば、30~40phrの間)のものである。
【0098】
本発明の第十三の態様は、第一~第十二の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その植物油が、アマニ油、サフラワー油、ダイズ油、トウモロコシ油、綿実油、カブ種油、ヒマシ油、キリ油、パイン油、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ブドウ種子油、及びそれらの組合せからなる群より選択され、好ましくはヒマワリ油及びそれらの組合せからなる群より選択され、より好ましくは質量で、60%より大、さらに好ましくは70%より大、特には80%より大、より特には90%より大、さらにより特には100%のオレイン酸を含むヒマワリ油であるものである。
【0099】
本発明の好ましい実施態様においては、その液状可塑剤が、場合によっては、液状ジエンポリマー又は植物油以外の少なくとも1種の液状可塑剤を含む、すなわち、その液状可塑剤が、液状ジエンポリマー以外の液状可塑剤をまったく含まないか、又は液状ジエンポリマー以外の少なくとも1種の液状可塑剤を含む。
【0100】
その好ましい実施態様の、より好ましい実施態様においては、液状ジエンポリマー又は植物油以外の液状可塑剤の量(単位、phr)が、液状ジエンポリマーのそれよりも少ない。
【0101】
その好ましい実施態様の、より好ましい実施態様においては、液状ジエンポリマー又は植物油以外の液状可塑剤の量(単位、phr)が、植物油のそれよりも少ない。
【0102】
その好ましい実施態様の、より好ましい実施態様においては、その液状ジエンポリマー以外の液状可塑剤が、官能基を一切含まない液状ジエンポリマー、ポリオレフィン系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、残留芳香族抽出物(DAE)オイル、中間抽出溶媒和化合物(MES)オイル、処理残留芳香族抽出物(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(RAE)オイル、処理残留芳香族抽出物(TRAE)オイル、安全残留芳香族抽出物(SRAE)オイル、鉱油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤及びそれらの組合せからなる群より選択され、好ましくは、MESオイル、TDAEオイル、ナフテン系オイル、及びそれらの組合せからなる群より選択され、より好ましくは、MESオイル、TDAEオイル、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0103】
本発明におけるゴム組成物の中の可塑化剤には、炭化水素樹脂が含まれ、その炭化水素樹脂の量(単位、phr)は、液状ジエンポリマーのそれよりも多い。
【0104】
本発明の好ましい実施態様においては、炭化水素樹脂の量(単位、phr)は、液状ジエンポリマーの量(単位、phr)の2倍よりも多く、好ましくは炭化水素樹脂の量(単位、phr)が、液状ジエンポリマーの量(単位、phr)の3倍よりも多い。
【0105】
本発明の第十四の態様は、第一~第十三の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その炭化水素樹脂の量が、10phrより大(たとえば、10~150phrの間)、好ましくは15phrより大(たとえば、15~145phrの間)、より好ましくは20phrより大(たとえば、20~140phrの間)、さらにより好ましくは25phrより大(たとえば、24~135phrの間)、特には、30phrより大(たとえば、30~130phrの間)、より特には35phrより大(たとえば、35~125phrの間)、さらにより特には40phrより大(たとえば、40~120phrの間)、有利には、45phrより大(たとえば、45~115phrの間)、より有利には50phrより大(たとえば、50~110phrの間)、さらにより有利には55phrより大(たとえば、55~105phrの間)、特別には、60phrより大(たとえば、60~100phrの間)、より特別には65phrより大(たとえば、65~95phrの間)、さらにより特別には70phrより大(たとえば、70~90phrの間)、のものである。
【0106】
本発明の第十五の態様は、第一~第十四の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その炭化水素樹脂の量(単位、phr)が、植物油のそれよりも多いものである。
【0107】
本発明の第十六の態様は、第一~第十五の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その炭化水素樹脂の量(単位、phr)が、植物油及び液状ポリマーの合計量(単位、phr)よりも多いものである。
【0108】
本発明の好ましい実施態様においては、その炭化水素樹脂の量(単位、phr)が、液状可塑剤の合計量(単位、phr)よりも多い。
【0109】
その炭化水素樹脂は、当業者には周知のポリマーであって、実質的に炭素及び水素をベースとして含み、したがって、本来的に、ゴム組成物、たとえば、ジエンエラストマー組成物とは混和性を有する。それらは、脂肪族タイプ、又は芳香族タイプ、又はさらには脂肪族/芳香族タイプ(すなわち、脂肪族モノマー、芳香族モノマー、又はその両方をベースとして含むもの)であってよい。それらは、天然であっても又は合成であってもよく、そして、石油ベースであっても、そうでなくてもよい(そのような場合には、石油樹脂の名称でも知られている)。それらが、完全な炭化水素である、すなわちそれらが、炭素原子及び水素原子のみを含んでいるのが好ましい。
【0110】
その炭化水素樹脂が、「可塑化性」を有していて、以下の特性の少なくとも一つ、より好ましくは全部を示すのが好ましい:
- TgDSCが、20℃より高(たとえば、20℃~100℃の間)、好ましくは30℃より高(たとえば、30℃~100℃の間)、より好ましくは40℃より高(たとえば、40℃~100℃の間);
- 数平均分子量(Mn)が、400~2000g/molの間(より好ましくは、500~1500g/molの間);
- 多分散性指数(PI)が、3未満、より好ましくは2未満(注:PI=Mw/Mn、ここでMwは、質量平均分子量)。
【0111】
それらの炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、Mn、及びPI)は、立体排除イオンクロマトグラフィー(SEC)によって測定される:溶媒 テトラヒドロフラン;温度 35℃;濃度 1g/L;流量 1mL/分;溶液 注入前に0.45μmの多孔度を有するフィルターを通して濾過;標準ポリスチレンを用いてムーアキャリブレーション;直列接続した3本1組の「Waters」カラム(「Styragel」HR4E、HR1、及びHR0.5);示差屈折計(「Waters 2410」)及びそれに付属のオペレーティングソフトウェア(「Waters Empower」)により検出。
【0112】
本発明の第十七の態様は、第一~第十六の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物であって、その炭化水素樹脂が、シクロペンタジエン(略して「CPD」)ホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(略して「DCPD」)ホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、C5留分ホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、C9留分ホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、アルファ-メチルスチレンホモポリマー若しくはコポリマー樹脂、及びそれらの組合せからなる群より選択されたものである。上記のコポリマー樹脂の中でも、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、(D)CPD/C9留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C5留分/ビニル-芳香族コポリマー樹脂、C9留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、及びそれらの組合せからなる群より選択されるものを使用するのが、より好ましい。
【0113】
「テルペン」という用語は、本明細書においては、公知のように、α-ピネン、β-ピネン、及びリモネンモノマーを総称したものであって;リモネンモノマーを使用するのが好ましいが、この化合物は、公知のように、三つの可能な異性体の形態で存在している:L-リモネン(左旋性鏡像異性体)、D-リモネン(右旋性鏡像異性体)、又はジペンテン(右旋性と左旋性の鏡像異性体のラセミ体)。スチレン、α-メチルスチレン、オルト-、メタ-若しくはパラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分から(或いはより一般的には、C8~C10留分から)得られる各種のビニル芳香族モノマーが、たとえば、ビニル芳香族モノマーとして適している。そのビニル芳香族化合物が、スチレン、又はC9留分から(或いはより一般的には、C8~C10留分から)得られるビニル芳香族モノマーであるが好ましい。そのビニル芳香族化合物が、考慮対象のコポリマーの中で、モル分率で表して微小モノマーであるのが好ましい。
【0114】
その他の好ましい樹脂の例としては、フェノール変性したα-メチルスチレン樹脂も挙げることができる。これらフェノール-変性樹脂を特徴づけるためには、公知のように、「ヒドロキシル価」(標準のISO 4326に従って測定し、mgKOH/gの単位で表される)と呼ばれている数値が使用されるということを思い出してほしい。α-メチルスチレン樹脂、特にフェノールで変性したものは、当業者には周知であり、市場で入手することが可能である。
【0115】
本発明におけるゴム組成物は、特にゴム物品(たとえば、タイヤ、靴、又はキャタピラートラック)のため、より特にはタイヤのため、さらにより特にはタイヤトレッドのために、エラストマー組成物において一般的に使用される通常の添加剤の全部又は一部をベースとして含んでいてよく、そのようなものとしては、たとえば、以下のものが挙げられる:保護剤、たとえば抗オゾン性ワックス、化学的抗オゾン剤、抗酸化剤、補強性樹脂、メチレン受容体(たとえば、フェノール性ノボラック樹脂)若しくはメチレン供与体(たとえば、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)又はヘキサメトキシメチルメラミン(H3M))、硫黄又は硫黄の供与体、ペルオキシド、ビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系、加硫促進剤、加硫活性化剤、又はその両方。
【0116】
その組成物にはさらに、カップリング剤が使用された場合のカップリング活性化剤、補強性無機充填剤を被覆するための薬剤、又は、より一般的には、公知のようにして、ゴムマトリックスの中での充填剤の分散を改良すること、及びその組成物の粘度を低下させること、原料状態でのそれらの加工性を改良することを可能とする加工助剤、をベースとして含むことができる;それらの薬剤は、たとえば、加水分解性のシラン、たとえばアルキルアルコキシシラン、ポリオール、ポリエーテル、アミン、又は、ヒドロキシル化されるか若しくは加水分解性のポリオルガノシロキサンである。
【0117】
本発明におけるゴム組成物は、適切なミキサーの中で、当業者には周知の、2段の連続調製段階を使用して製造することができる:110℃~190℃の間、好ましくは130℃~180℃の間の最高温度までの高温での熱機械的作業すなわち混練の第一の段階(「非製造」段階と呼ばれる)、それに続く、より低い温度、典型的には110℃未満、たとえば40℃~100℃での機械的作業の、仕上げ段階(その間に、架橋系又は加硫系が組み入れられる)である、第二の段階(「製造」段階と呼ばれる)。
【0118】
そのような組成物を製造するために使用可能なプロセスには、たとえば、そして好ましくは、次のステップが含まれる:
- 第一のステージ(「非製造」ステージ)において、ミキサーの中で、エラストマーマトリックスたとえば、ジエンエラストマー、補強性充填剤、可塑化剤を均質混合するが、そのすべてを、(たとえば、1段又は複数のステップで)熱機械的に混練して、110℃~190℃の間の最高温度に到達させる;
- その配合した混合物を冷却して、100℃未満の温度とする;
- 次いで、第二のステージ(「製造」ステージと呼ばれる)において、架橋系を組み入れる;
- すべてを混練して、110℃未満の最高温度とする;
- そのようにして得られたゴム組成物を、押出成形又はカレンダー成形して、特には、タイヤトレッドの形態とする。
【0119】
本発明の好ましい実施態様においては、第一の(非製造)段階を、単一の熱機械的ステージで実施するが、その際に、必要とされるすべての成分を、適切なミキサー、たとえば標準的なインターナルミキサーの中へ導入し、それに続けて、第二のステップにおいて、たとえば、1~2分間混練させた後で、架橋系は除いて、他の添加剤、任意成分のさらなる充填剤-被覆剤又は加工助剤を添加する。この非製造段階における、全混練時間は、好ましくは、1~15分の間である。
【0120】
そのようにして得られた混合物を冷却してから、一般的には、外部ミキサーたとえば、開放型ロール機の中で、低温(たとえば、40℃~100℃の間)で、架橋系を組み入れ、次いで、そのように組み合わせた混合物を、数分間、たとえば2~15分の間、混合する(第二の(製造)段階)。
【0121】
その架橋系には、好ましくは、硫黄及び一次加硫促進剤、特にはスルフェンアミドタイプの促進剤がベースとして含まれる。この加硫系に追加されるのが、各種の公知の二次促進剤又は加硫活性化剤たとえば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)などであるが、それらは、第一の非製造段階の間、製造段階の間、又はその両方に組み入れられる。硫黄の含量は、好ましくは0.5~10.0phrの間、より好ましくは0.5~3.0phrの間であり、そして一次促進剤の含量は、好ましくは0.5~5.0phrの間である。
【0122】
硫黄の存在下における、エラストマーマトリックス、たとえば、ジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用することが可能な各種の化合物、特には、チアゾールタイプ及びそれらの誘導体の促進剤、チウラムタイプの促進剤、又は亜鉛ジチオカルバメートを、促進剤(一次又は二次)として使用することができる。それらの促進剤は、より好ましくは、以下のものからなる群より選択される:2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(略して「MBTS」)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(略して「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」)、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(「ZBEC」)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)、及びそれらの組合せ。
【0123】
そのようにして得られた最終組成物を、次いで、カレンダー成形して、たとえば、特に実験室でのキャラクタリゼーションのためのシート又はプラックの形態とするか、或いはそうでなければ、押出成形して、積層品又は、物品、たとえばタイヤトレッド、靴底及びキャタピラートラックのトレッドとして直接使用することが可能なゴム型出し部品の形態とする。
【0124】
その加硫(すなわち硬化)は、公知のようにして、一般的には110℃~190℃の間の温度で、十分な時間をかけて実施されるが、その時間は、特には、硬化温度、採用された加硫系、及び考慮の対象の組成物の加硫動力学に依存して、たとえば5~90分の間で変化させることができる。
【0125】
本発明の好ましい実施態様においては、物品に、第一~第十七の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物が含まれる。
【0126】
上述の好ましい実施態様の、より好ましい実施態様においては、その物品が、タイヤ、靴、コンベヤー、又はキャタピラートラック、たとえば、タイヤトレッド、靴底、コンベヤーベルト、及びキャタピラートラックのトレッドである。
【0127】
上述のより好ましい実施態様の、さらにより好ましい実施態様においては、その物品が、タイヤ、好ましくは、その中で第一~第十七の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物が、トレッド、サイドウォール、又はその両方の中に含まれているタイヤである。
【0128】
本発明のタイヤは、特には、乗用車(4×4(四輪駆動)車両及びSUV(多目的スポーツ車両)車両を含む)、並びに、特にはバン及び重作業車両(すなわち、バス又は、重作業用道路輸送車両(ローリー、トラクター、トレーラー))から選択される産業車両に装着させることが意図されている。
【0129】
本発明の第十八の態様は、第一~第十七の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物を含むタイヤトレッドである。
【0130】
第十八の態様の好ましい実施態様においては、そのタイヤトレッドが、半径方向で外側の部分と半径方向で内側の部分とを含む少なくとも二つの半径方向で重なりあった部分を含み、その半径方向で外側の部分は、路面と接触することを目的としており、その半径方向で外側の部分は、第一のゴム組成物で作られており、そしてその半径方向で内側の部分は、第一のゴム組成物とは異なる第二のゴム組成物で作られている。
【0131】
その好ましい実施態様の、より好ましい実施態様においては、その第一のゴム組成物が、第一~第十七の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物である。
【0132】
その好ましい実施態様の、また別のより好ましい実施態様においては、その第二のゴム組成物が、第一~第十七の態様のいずれか一つにおけるゴム組成物である。
【0133】
他のより好ましい実施態様の、実施態様においては、その半径方向で外側の部分が、そのタイヤの耐用期間の間、路面と接触状態にあるように意図されている。
【0134】
他のより好ましい実施態様の、また別の実施態様においては、その半径方向で外側の部分が、そのタイヤの耐用期間の間、路面と接触状態にあるようには意図されていない。
【0135】
半径方向とは、そのタイヤの回転軸に直角な方向と定義され、そして「半径方向で(radially)」という表現は、「半径方向で(in radial direction)」を意味している。「半径方向で内側(radially on the inside、radially inner、又はradially internal)、又は半径方向で外側(radially on the outside、radially outer、radially external)」という表現はそれぞれ、タイヤの回転軸から、半径方向の方向に、それぞれ「より近い」か、又は「より遠い」か、を意味している。
【0136】
「タイヤの耐用期間(the service life of the tire)」は、タイヤが使用される期間意味している(たとえば、そのタイヤの初期状態から最終状態までの期間であって、その最終状態とは、タイヤのトレッドの中の摩耗指標線(wear indicator bar)に達したことを意味する)。
【0137】
本発明は、原料状態(raw state、すなわち、硬化前)にあるゴム組成物、及び硬化された状態(すなわち、架橋又は加硫後)にあるゴム組成物に関する。
【0138】
以下の非限定的な例により、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0139】
本発明の効果を確認する目的で、6種のゴム組成物(C-1及びC-2(参照例)、C-3及びC-4(本発明実施例)、C-5及びC-6(比較例)として識別)について、(硬化後の耐久性の指標としての)引裂強度指数、及び(硬化後のヒステリシス性能の指標としての)tan(δ)maxを比較する。それらは、シリカ(補強性無機充填剤として)とカーボンブラックとのブレンド物を用いて強化した、SiOR官能基を担持するBRとSBRとのブレンド物(エラストマーマトリックスとして)、並びに、液状ポリブタジエン(液状ジエンポリマーとして)、ヒマワリ油(植物油として)、及びC5/C9炭化水素樹脂(炭化水素樹脂として)含む可塑化剤を、ベースとして含んでいる。それら3種のゴム組成物の配合を、表1に示すが、各種の原料の含量は、phrの単位で記載されている。
【0140】
それぞれのゴム組成物は、以下のようにして製造した:補強性充填剤、それに関連するカップリング剤、可塑化剤、エラストマーマトリックス、及び各種のその他の成分(加硫系は除く)を、順次、初期容器温度が約60℃のインターナルミキサーの中に導入して、ミキサーの充填率をほぼ70%とした(容積%)。次いで、熱機械的作業(非製造段階)を1ステージで実施したが、これは、165℃の最高落下温度(maximum dropping temperature)に達するまで、合計してほぼ3~4分続く。そのようにして得られた混合物を回収し、冷却してから、硫黄及びスルフェンアミドタイプの促進剤を、20~30℃で外部ミキサー(ホモフィニッシャー)で組み入れたが、その全体を、適切な時間(たとえば、5~12分の間)混合した(製造段階)。
【0141】
そのようにして得られたゴム組成物を、次いで、カレンダー成形して、それらの物理的又は機械的性質を測定するための、ゴムのシート(厚み、2~3mm)又は極薄シート(fine sheet)いずれかの形状にするか、又は、型出し部品の形態としたが、それらは、切断、組み合わせ、又はその両方を行って、たとえば、タイヤの中間仕上げ品、特にはタイヤトレッドのような所望の寸法として、直接使用することも可能である。
【0142】
引裂強度の測定としては、その硬化させたプラックから、厚み約2.5mmの試験サンプルを切り出した。試験する前に、そのサンプルに、(試験方向に対して直角方向に)ノッチを入れた。Instron 5565 Uniaxial Testing Systemを使用して、引張力と破断時伸びを測定した。クロスヘッド速度は、500mm/分であった。サンプルは、23℃で試験した。それらの結果は、100を基準に表されている、すなわち、参照例(C-1)又は(C-2)各々の破断時応力(MPa)×破断時伸び(%)に等しい引裂強度に、100の値が任意に、指数として割り当てられていて、ゴム組成物の値が、表1に示されている。この値が高いほど、その材料が、引き裂きを受けにくい、すなわち、耐久性が高い。
【0143】
それぞれのゴム組成物を、加熱した(典型的には160℃)熱盤を有するプレスの中に入れ、それらのゴム組成物を架橋させるに必要な時間(典型的には、数十分)、加圧し(典型的には16bar)、次いで、すなわち硬化後に、それぞれのゴム組成物のtan(δ)maxを、標準のASTM D5992-96に従って、粘度分析計(viscosity analyser)(Metravib VA4000)で測定した。加硫させた組成物(円筒状試験片、厚み4mm、断面積400mm2)のサンプルに、標準のASTM D1349-99に従って、所定の温度条件下、たとえば23℃で、10Hzの振動数の単純な正弦波の交番剪断応力をかけて、その応答を記録した。0.1%から100%へ(行きサイクル)、次いで100%から1%へ(戻りサイクル)の歪み振幅スイープを実施した。その戻りサイクルで、tan(δ)の最大値(23℃でのtan(δ)maxと規定する)を観察し、表示した。23℃でのtan(δ)maxの値は、ヒステリシス性能、従って転がり抵抗性を代表するものである。23℃でのtan(δ)maxが低いほど、ヒステリシス性能(転がり抵抗性に関連)が良好であり、従って、(tan(δ)max(C-1)/tan(δ)max(C-n)×100;ここでn=1~6;又はtan(δ)max(C-2)/tan(δ)max(C-n)×100;ここでn=1~6)の値が、100に設定した参照例(C-1)又は(C-2)各々よりも大きければ、性能が改良されたことを示している。
【0144】
表1からの結果は、本発明によるゴム組成物(C-3及びC-4)が、参照例又は比較例(C-1、C-2、C-5、及びC-6)のそれよりも、予想もされなかったような、改良された耐久性能とヒステリシス性能との間の性能のバランスを有しているということを示している。表1における耐久性とヒステリシス性能との間のバランスは、両方の性能を合計したものである。
【0145】
結論として、本発明におけるゴム組成物は、耐久性能とヒステリシス性能との間の性能のバランスの改良を可能とした。
【0146】