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特許7555966太陽エネルギ瓦、太陽エネルギシステム、及び日射からエネルギを得る方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】太陽エネルギ瓦、太陽エネルギシステム、及び日射からエネルギを得る方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/18 20180101AFI20240917BHJP
   H02S 20/25 20140101ALI20240917BHJP
   F24S 20/40 20180101ALI20240917BHJP
   F24S 20/69 20180101ALI20240917BHJP
   F24S 25/40 20180101ALI20240917BHJP
【FI】
E04D13/18 ETD
H02S20/25
F24S20/40
F24S20/69
F24S25/40
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021567967
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020063711
(87)【国際公開番号】W WO2020229686
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】102019112799.8
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517002591
【氏名又は名称】マイアー ブルガー (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Meyer Burger (Germany) GmbH
【住所又は居所原語表記】An der Baumschule 6-8, D-09337 Hohenstein-Ernstthal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ハーケンバーグ,ピーター
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第02912206(DE,A1)
【文献】国際公開第2008/137966(WO,A2)
【文献】実開昭58-013318(JP,U)
【文献】特開2006-022481(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02529095(DE,A1)
【文献】実開昭60-016968(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
H02S 20/25
F24S 20/40
F24S 20/69
F24S 25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽エネルギ瓦であって、形状が従来の瓦の形状に実質的に相当し、隣接する太陽エネルギ瓦と熱的及び/または電気的な伝導性を有して結合可能な太陽エネルギ瓦において、
屋根構造の少なくとも一部の領域に配置するための下面(2)と、
前記下面(2)とは反対側にある上面(8)であって、前記上面(8)の少なくとも一部の領域が、太陽エネルギ利用モジュールによって形成される上面(8)と、
2つの対向する側壁(5,6)と、
2つの前記側壁(5,6)を接続する後面(7)と、
前記後面(7)に対向し、2つの前記側壁(5,6)を接続する前面(4)と
を備え、
2つの前記側壁(5,6)、前記後面(7)、及び前記前面(4)は、共に前記下面(2)と前記上面(8)とを接続することにより、2つの前記側壁(5,6)、前記後面(7)、前記前面(4)、前記下面(2)、及び前記上面(8)の間にキャビティ(10)を形成し、
前記下面(2)は、前記前面(4)の領域において、周囲(U)から前記キャビティ(10)内へのアクセスを提供する下部開口を有し、前記上面(8)は、前記後面(7)の領域において、周囲(U)から前記キャビティ(10)内へのアクセスを提供する上部開口を有
前記上面(8)は、前記前面(4)から前記後面(7)へと延びる前後方向(L)に移動可能に構成されたカバーを有する、
太陽エネルギ瓦。
【請求項2】
日射から電気エネルギを得るための太陽光発電瓦(1)として構成され、前記太陽エネルギ利用モジュールは、太陽光発電モジュールとして構成されることを特徴とする、請求項1に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項3】
日射から熱エネルギを得るための太陽熱エネルギ瓦として構成され、前記太陽エネルギ利用モジュールは、太陽熱エネルギモジュールとして構成されることを特徴とする、請求項1に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項4】
日射から電気エネルギ及び熱エネルギ得るための複合瓦として構成され、前記太陽エネルギ利用モジュールは、太陽光発電モジュール及び太陽熱エネルギモジュールの両方として構成されることを特徴とする、請求項1に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項5】
前記下部開口は、周囲(U)から前記キャビティ(10)内に流入する周辺空気のための流入開口(12)として形成され、前記上部開口は、前記キャビティ(10)から流出する周辺空気のための流出開口(11)として形成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項6】
前記下面(2)は、実質的に金属ベースプレート(3)によって形成され、前記金属ベースプレート(3)は、前記下部開口の領域に、少なくとも1つの金属板タブ(37)を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項7】
前記金属ベースプレート(3)は、前記下部開口の領域に、2つの金属板タブ(37)を有することを特徴とする、請求項6に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項8】
前記太陽エネルギ瓦の初期状態において、前記金属板タブ(37)は、金属ベースプレート(3)の基本面(E)に実質的に平行に延在し、前記金属板タブ(37)は、前記太陽エネルギ瓦が屋根に設置されるときに、前記基本面(E)に実質的に垂直に延在する垂直部(42)と、前記垂直部(42)に接続し、前記基本面(E)に実質的に平行に延在する水平部(43)とを有することを特徴とする、請求項6または7に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項9】
前記金属板タブ(37)は、一定間隔で配置された複数の孔(38)を有することを特徴とする、請求項6~のいずれか1項に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項10】
前記前面(4)は、設置状態において外部から前記キャビティ(10)にアクセス可能となるように、揺動可能に構成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の太陽エネルギ瓦。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の太陽エネルギ瓦を少なくとも2つ、互いに結合して備える太陽エネルギシステムであって、
設置状態において下側に配置された前記太陽エネルギ瓦の前記上部開口は、設置状態において上側に配置された前記太陽エネルギ瓦の前記下部開口と、少なくとも部分的に位置が合わせられている、太陽エネルギシステム。
【請求項12】
加熱された周辺空気によってもたらされる熱エネルギを用いる、特にヒートポンプまたは熱交換器の形態の消費機構が、設置状態において最上部に配置された前記太陽エネルギ瓦の前記上部開口に直接的に接続されることを特徴とする、請求項11に記載の太陽エネルギシステム。
【請求項13】
等電位化部材(41)が設けられ、前記等電位化部材(41)は、少なくとも2つの相互に結合された前記太陽エネルギ瓦の少なくとも2つの前記下面(2)を、少なくとも一部が貫通して延び請求項11または12に記載の太陽エネルギシステム。
【請求項14】
前記等電位化部材(41)が、設置状態において下側に配置された前記太陽エネルギ瓦の前記金属ベースプレート(3)を、設置状態において上側に配置された前記太陽エネルギ瓦の金属板タブ(37)に結合するように、前記等電位化部材(41)が配置されることを特徴とする、請求項6~9および13のいずれか1項に記載の太陽エネルギシステム。
【請求項15】
日射からエネルギを得ると共に、廃熱を利用する方法であって、
太陽エネルギ瓦、請求項1~11のいずれか1項に記載の太陽エネルギ瓦により、太陽エネルギ利用モジュールを使用して、日射から熱エネルギ及び/または電気エネルギを生成し、それによる前記太陽エネルギ利用モジュールの加熱によって生成された廃熱を、通過して流れる周辺空気に放出し、加熱された周辺空気を、特にヒートポンプまたは熱交換器の形態の消費機構に送給する、方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載の複数の太陽エネルギ瓦を、屋根構造の上に設け、設置状態において最下部に配置された前記太陽エネルギ瓦によって周辺空気を引き込み、引き込まれた周辺空気を、隣接する前記太陽エネルギ瓦のそれぞれの流出開口(11)及び流入開口(12)を通し、隣接する前記太陽エネルギ瓦の前記キャビティ(10)を通して送給し、加熱された周辺空気を、設置状態において最上部に配置された前記太陽エネルギ瓦から引き出し、消費機構に供給することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の太陽エネルギ瓦を、請求項11~14のいずれか1項に記載の太陽エネルギシステムに設ける、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽エネルギ瓦に関するものであり、その形状は、従来の瓦の形状に実質的に相当する。更に、本発明は、太陽エネルギシステムに関するほか、日射からエネルギを取得すると共に廃熱を利用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギ瓦とは、太陽光発電瓦、太陽熱エネルギ瓦、更には、太陽光発電及び太陽熱エネルギの形で両技術を使用する複合瓦(組合わせ瓦とも呼ばれる)のいずれかを意味するものと理解することができる。太陽光発電瓦は、太陽エネルギから電気エネルギを得るように構成され、このような目的のため、実際の作動の際、一般的に太陽の方に向けられる太陽光発電モジュールを、その上面に備える。一方、太陽熱エネルギ瓦は、日射から熱エネルギを得るように構成され、このような目的のため、実際の作動の際、一般的に太陽の方に向けられる太陽熱エネルギモジュールを、その上面に備える。本出願の記載において、太陽エネルギ利用モジュールという用語は、太陽光発電モジュール及び太陽熱エネルギモジュールの2つの具体例の総称として使用される。両技術を使用するための複合瓦として構成された太陽エネルギ瓦の場合、そのような太陽エネルギ利用モジュールは、実際の動作の際、一般的に太陽に向けられた上面に設けられ、当該太陽エネルギ利用モジュールは、太陽光発電モジュールと太陽熱エネルギモジュールとの両方を備える。そして、日射からの電気エネルギ及び熱エネルギの両方が、太陽エネルギ利用モジュールによって取り出され、または使用される。
【0003】
太陽熱エネルギ、特に温水の供給は、日射を利用するために広く使用されている技術である。流体の加熱には、ソーラパネルが使用される。日射は、パネルの吸収体表面に当たって当該パネルを加熱する。得られた熱は、一般的には液体または空気である通過媒体に伝達される。日射によって加熱された媒体は、通常、循環ポンプによって温水貯蔵タンクに導かれ、取り出された熱は、熱交換器を介し、加熱された媒体(例えば、キャリア液体)から温水貯蔵タンク内の水道水または飲料水に伝達される。媒体は、このプロセス中に冷却され、その後、コレクタ、即ち媒体用のコレクタに戻される。
【0004】
媒体として液体を使用する場合、不凍液混合物が特に適している。これに代えて、加熱する水自体をポンプでソーラパネルに送り込み、当該ソーラパネル内で加熱することができる。この場合、熱交換器を介して飲料水を加熱することもできる。
【0005】
太陽熱瓦や、太陽熱瓦を設置するための屋根表面の使用は公知である。一般的に使用されている瓦、屋根スレート、または屋根石材の代わりに、太陽熱瓦を使用することができる。また、太陽熱瓦は、太陽エネルギを吸収するための吸収体を備え、媒体、好ましくは流体を通過させることにより、これを加熱する。このような太陽熱瓦の設置は、市販の瓦を用いて覆う従来の屋根と比較して、高価であり比較的手間がかかる。重大な問題は、個々の太陽熱瓦を結合するために必要となる大きな設置労力である。通過媒体は、1つの太陽熱瓦から次の太陽熱瓦へと巡らせる必要があり、接続部分は適切に漏洩防止がなされていなければならない。従って、流動経路間の接続部分の形成を主たる要因として、必要とされる設置の労力及び時間が多大なものとなる。本出願では、隣接する太陽熱瓦間でのそのような接続、即ち、全般に、隣接する太陽熱エネルギ瓦間の流動経路または流体伝導経路の接続の生成は、隣接する太陽熱瓦間の熱伝導接続の生成とも称する。
【0006】
本出願の記載において、隣接する太陽エネルギ瓦に言及する場合、これは、通常、屋根に設置されたときに垂直方向に、即ち屋根の棟に向けて上方に、または屋根の樋に向けて下方に隣接する瓦を意味し、水平方向に左方または右方に隣接する瓦を意味するものではない。但し、水平方向(左方または右方)に隣接する瓦に言及する場合には、そのように指摘する。
【0007】
前述の太陽熱エネルギ瓦、及びその設置は、例えば、DE 2011 055 904 A1、及びDE 20 2013 002 407 U1に詳述されている。それらに記載されている瓦の設置は、特に追加の構成部材が必要であり、支持構造の変更が必要であるため、高価であり、手間のかかるものである。
【0008】
本発明は、このような状況の改善を意図するものである。但し、本発明は、特に太陽光発電技術の例を用い、具体的には太陽光発電瓦の例を用いて以下に説明する。但し、後述する効果は、太陽熱エネルギと太陽光発電との形で両技術を使用する太陽エネルギ瓦、即ち複合瓦(組合わせ瓦)にも当てはめることが可能である。
【0009】
太陽光発電も、日射を利用するために既に広く使用されている技術である。日射は、太陽電池を備えた太陽光発電モジュールに入射する。これらの太陽電池は、太陽光のエネルギを電気的に利用可能なエネルギに変換する。電気的に使用可能なエネルギへの太陽エネルギの変換はよく知られており、更なる説明は不要であろう。
【0010】
太陽熱集熱器を設置するための屋根表面の使用は広く普及している。市販の太陽熱集熱器は、既存の屋根に追加設置されるのが一般的である。この点で、それらは、高架式ソーラパネルとも呼ばれる。この場合、屋根ぶき材を貫通して屋根支持構造に固定部材を取り付けなければならない場合が多く、この固定は、暴風雨に耐え、好ましくは耐腐食性でなければならない。従来の屋根ぶき材を貫通させると、シール及びその後の漏洩防止の問題が必然的に生じる。また、屋根荷重の増加があるため、屋根の骨組みに補強が必要となる場合が多い。更に、このようなソーラパネルは、屋根の視覚的な外観にマイナスの影響を与える。
【0011】
このほか、通常使用される瓦、屋根スレート、または屋根石材の代わりに使用される太陽光発電瓦が知られている。太陽光発電瓦は、太陽エネルギを収集して変換するために、上面、即ち太陽に向く面に、太陽光発電モジュールまたは太陽電池を備える。これらは、高架式ソーラパネル、即ち既存の被覆屋根に取り付けられたものにおける上述の欠点を大きく回避するものであるが、太陽光発電瓦の設置は、市販の瓦を用いた従来の屋根ぶきに比べて高価であり、比較的手間のかかるものである。大きな問題は、個々の太陽光発電瓦の電気的接続のための設置コストが高いことである。1つの太陽光発電瓦から次の太陽光発電瓦へと電流を巡らせる必要があるため、大規模なソーラパネルを用いる場合に比べ、接続工事のための設置作業や所要時間が多大なものとなる。
【0012】
この種の太陽光発電瓦、及びその設置は、例えば、DE 10 2011 055 904 A1、及びDE 20 2013 002 407 U1に詳細に記載されている。これらに記載されている瓦の設置は、特に追加の構成部材が必要であり、支持構造の変更が必要であるため、高価であり、手間のかかるものである。この場合、太陽光発電瓦は、例えば、DE 10 2016 104 096 A1に開示されているように、既に改善策が提供されており、設置をより一層最適化できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した太陽エネルギ瓦は、いずれもエネルギの効率的利用に関して最適化が必要である。家庭によるエネルギ使用の絶え間ない改善が要求される状況においては、日射によってもたらされるエネルギを、可能な限り最善の方法で、かつ簡単な方法で使用することが望まれる。
【0014】
従って、本発明の目的は、製造、設置、及びメンテナンスが可能な限り簡単かつ安価である太陽エネルギ瓦を提供することである。更に、エネルギ収量が更に最適化されることが望ましい。設置工程は、標準的な瓦を用いた屋根ぶきとの違いができるだけ小さくなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的は、請求項1に記載の特徴を有する太陽エネルギ瓦によって達成される。また、このような目的は、請求項11に記載の特徴を有する太陽エネルギシステム、及び請求項14に記載の特徴を有する方法によって達成される。
【0016】
本発明に必須であるのは、2つの開口、即ち太陽エネルギ瓦の上面の上部開口と、太陽エネルギ瓦の下面の下部開口とが設けられ、両開口を介し、設置作業が容易に行えるということである。例えば、太陽エネルギ瓦と、その下の屋根の桟との間だけでなく、隣接する太陽エネルギ瓦同士の必要な結合も行うことが可能であり、また必要に応じて再度取り外すこともできる。このような設置作業は、常に上方から、そして太陽エネルギ瓦の上面から行うことができることが特に有用である。従って、上部開口を介し、太陽エネルギ瓦へのアクセスや、太陽エネルギ瓦の下面へのアクセスも、常に上方から行うことができる。例えば、太陽エネルギシステムにおいて、互いに垂直方向で隣接して配置された太陽エネルギ瓦の場合、下面の下部開口を介し、例えば、更に下側に位置する次の太陽エネルギ瓦へのアクセスを、特に上方から確保することができる。従って、下側にある太陽エネルギ瓦の上部開口と、上側にあって隣接する太陽エネルギ瓦の下部開口とは、少なくとも部分的に位置が合致するように配置することができる。このとき、上部開口は、上側に配置された太陽エネルギ瓦のキャビティへの上方からのアクセスを可能にする。更に、この太陽エネルギ瓦の合致する下部開口を介し、更にその下側の太陽エネルギ瓦の上部開口を介し、下側に隣接する太陽エネルギ瓦のキャビティにアクセスすることもできる。このようにして、隣接する太陽エネルギ瓦間の必要な電気的接続及び熱伝導接続を、太陽エネルギシステムにおいて実施することができる。
【0017】
詳細には、太陽エネルギ瓦が提案され、当該太陽エネルギ瓦の形状は、従来の瓦の形状に実質的に相当し、当該太陽エネルギ瓦は、隣接する太陽エネルギ瓦と熱的及び/または電気的な伝導性を有して結合可能である。この太陽エネルギ瓦は、
屋根構造の少なくとも一部の領域に配置するための下面と、
下面とは反対側にある上面であって、当該上面の少なくとも一部の領域が、太陽エネルギ利用モジュールによって形成される上面と、
2つの対向する側壁と、
2つの側壁を接続する後面と、
当該後面に対向し、2つの側壁を接続する前面と
を備える。
【0018】
2つの側壁、後面、及び前面は、共に下面と上面とを接続することにより、2つの側壁、後面、前面、下面、及び上面の間にキャビティを形成する。下面は、前面の領域において、周囲からキャビティ内へのアクセスを提供するための下方開口を有し、上面は、後面の領域において、周囲からキャビティ内へのアクセスを提供するための上方開口を有する。
【0019】
一変形態様によれば、太陽エネルギ瓦は、日射から電気エネルギを得るための太陽光発電瓦として構成することが可能であり、太陽エネルギ利用モジュールは、太陽光発電モジュールとして構成することが可能である。これに代えて、太陽エネルギ瓦は、日射から熱エネルギを得るための太陽熱エネルギ瓦として構成することが可能であり、太陽エネルギ利用モジュールは、太陽熱エネルギモジュールとして構成することが可能である。但し、太陽エネルギ瓦は、日射から電気エネルギ及び熱エネルギを得るための複合瓦(組合わせ瓦)として構成することも可能であり、太陽エネルギ利用モジュールは、太陽光発電モジュール及び太陽熱エネルギモジュールの両方として構成することが可能である。導入部分に記載しているように、太陽熱エネルギモジュールは、吸収された日射による熱を流体に伝達し、熱エネルギを使用するために使用される。
【0020】
本出願の記載において、太陽エネルギ瓦に言及する場合、これは、太陽光発電瓦と太陽熱エネルギ瓦の両方のほか、複合瓦を意味しうるものである。本発明の効果を、具体的には太陽光発電瓦の例を用い、以下に説明する。但し、これらの効果は、通常、上述した他の2つのタイプの太陽エネルギ瓦にも当てはめることが可能である。特に、電気的接続の形成に関する効果は、隣接する太陽熱エネルギ瓦間の熱的接続、特に流体経路または流体搬送経路間の接続の形成にも当てはめることが可能である。
【0021】
太陽エネルギ瓦の1つの有用な構成によれば、下部開口は、周囲からキャビティ内に流入する周辺空気のための流入開口として形成され、上部開口は、キャビティから流出する周辺空気のための流出開口として形成される。その結果、エネルギ収量は、特定の方法で最適化される。これは太陽光発電瓦の例から明らかである。従って、提案する太陽光発電瓦の内部に空間を設けることが可能であり、当該空間内では、加熱されている太陽光発電モジュールからの熱などの廃熱を利用することができる。得られた熱は、太陽光発電瓦を通って流れる周辺空気に容易に伝達することが可能であり、この空気は、その後に、例えば、加熱空気によって作動させることができるヒートポンプを用い、家庭内において、目的とする方法で活用し利用することができる。このため、太陽光発電瓦は、流入する周辺空気のための流入開口と、その後に加熱された周辺空気のための流出開口とを有する。太陽光発電瓦の内部を通る過程で、周辺空気は、とりわけ、太陽光発電モジュールまたは太陽光発電モジュールに隣接する構成部材を通過して流れ、そこで発生した熱を吸収する。複数の隣接する(垂直方向で、上下に見て)太陽光発電瓦を用いて屋根構造の上に設置された状態において、流入開口は、実質的に水平な位置に関し、流出開口よりも下方に位置する。太陽光発電瓦の前面に近接して配置されて設置状態において太陽光発電瓦の最下部にある流入開口に空気が流入し、この空気は、自身の温度の上昇により、加熱中に太陽光発電瓦内を自動的に上昇していき、太陽光発電瓦の後面に近接して配置されて設置状態において太陽光発電瓦の最上部にある流出開口に向かって流れる。加熱された周辺空気は、この流出開口において、太陽光発電瓦の内部から出て、例えば、その上側にあって隣接する太陽光発電瓦にある次の流入開口に流入することができ、そこで更に加熱することができる。
【0022】
太陽光発電瓦の場合、日射から生じるエネルギが、電気エネルギの形でのみ使用されることから、最適化されたエネルギ収量に関して記載した効果は特に重要である。しかしながら、太陽光発電モジュールの廃熱についての上述のような利用により、熱エネルギも今や有効に使用される。一方、太陽光発電モジュールは、周囲を流れる周辺空気によって、即ちキャビティに面した太陽光発電モジュールの内側の面における流動によって下方から冷却され、結果として生じた熱が放散されることにより、構成部材が過熱から効果的に保護される。本出願の残りの部分は、特に、太陽光発電瓦の形の太陽エネルギ瓦の例を扱うので、流入開口及び流出開口という用語は主に、太陽エネルギ瓦または太陽光発電瓦の下部開口及び上部開口に対してそれぞれ使用される。但し、キャビティへの同様のアクセスは、下部開口としての流入開口によっても提供可能であり、上部開口としての流出開口もキャビティへのアクセスを提供可能であるので、開口に関するこれらの用語は、特に、設置上の効果として記載される全ての構成上の効果に関し、均等物であると理解することができる。従って、流入開口及び流出開口に起因する後述の構成上の効果は、提案に基づいて上部開口及び下部開口が設けられた別のタイプの太陽エネルギ瓦にも当てはめることが可能である。
【0023】
本発明による太陽エネルギ瓦の形状は、実質的に従来の瓦の形状に相当するものであり、太陽エネルギ瓦の使用によって屋根や住宅の外観が変わることは、ほとんどない。ここでいう「瓦」とは、瓦、屋根スレートまたは屋根板などの屋根ぶき材の同義語として理解されるべきものであり、本発明を瓦に限定するものではない。
【0024】
本発明による太陽エネルギ瓦は、基本的に、太陽エネルギ利用モジュールや太陽光発電モジュールを有していない標準的な屋根瓦と同じ寸法を有する。
【0025】
隣接する複数の太陽光発電瓦の電気的接続のために、太陽光発電瓦は、通常、2つの電気的接続部材を有する。これらは、通常、プラグの形態の第1の電気的接続部材と、ソケットの形態の第2の電気的接続部材である。このとき、電気的接続を形成するため、一方の太陽光発電瓦のプラグを、隣接する他方の太陽光発電瓦のソケットに挿入することが可能であり、それによって、電気接続部が、互いに通電可能に接続される。
【0026】
電気的接続部材は、次に、太陽光発電モジュールに接続される。太陽光発電モジュールは、いわゆるガラスパッケージの一部であってもよい。例えば、ガラスパッケージは、2つのガラスプレートから構成されてもよく、それらの間に、窒化ケイ素から形成されるのが好ましい1つ以上の太陽電池が配置されてもよい。また、これらの太陽電池は、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)で形成された2つの薄膜の間に埋め込むことができる。太陽光発電モジュール、またはガラスパッケージのユニット全体において、日射は、公知の方法で電気エネルギに変換される。このようにして得られた電気エネルギは、接続された電気的接続部材を介して送られた後、目的とする方法で使用することができる。これに代えて、太陽光発電瓦のいずれか別の場所に、即ち電気的接続部材とは独立して、電気的接触面を設けることもできる。
【0027】
太陽光発電モジュールは、太陽光発電瓦の上面の一部である。屋根に設置された状態において、上面は、空または太陽の方に向けられており、従って、太陽光発電瓦の上面と見なされ、呼称される。太陽光発電瓦の下面は、上面とは反対側に位置する。この下面は、家屋の屋根構造の上に載置されるか、または屋根構造に結合される。例えば、太陽光発電瓦の下面は、屋根の桟の上に載置される。この屋根の桟においては、通常、太陽光発電瓦も、結合部材で更に固定されるが、例えば、通常、木製であるのが一般的である屋根の桟に、釘またはネジで結合することにより、結合部材が固定される。
【0028】
設置状態における後面は、上方の横向きの壁と理解すべきである。従って、太陽エネルギ瓦の後面は、屋根構造の隆起部、即ち屋根の棟の方に向いている。一方、太陽エネルギ瓦の反対側の横向きの壁は、前面と理解すべきである。このため、設置状態において、前面は、下方の横向きの壁となる。従って、被覆された屋根において、前面は、屋根のいわゆる軒樋板の方に向いている。
【0029】
側壁、前面、後面、及び下面として、単純な金属板を使用することもできる。例えば、上述の面は、実質的にアルミニウムで形成することが可能であり、従って、それらは、有利な軽量構成部材であると考えることができる。これにより、瓦の取扱い性をかなり改善する。実質的に互いに直角に配置された異なる壁またはシートの形態の構成部材を、単に互いに差し込み合ったり、例えばネジ止めまたはリベット止めなどで互いに結合したりすることができるので、太陽エネルギ瓦の製造も単純化される。これに代えて、またはこれに加えて、例えば、単一の金属薄板部材を設けることによって、いくつかの壁を形成することが可能である。即ち、下面を1つの板金部材とし、その縁部を曲げることによって2つの側壁を設けるか、或いは、金属の板として形成された下面のそれぞれの端部を曲げることによって、前面及び/または後面が実現される。
【0030】
上面は、例えば、太陽エネルギ利用モジュールまたは太陽光発電モジュールを備えたカバーまたは構造ユニットによって構成することができる。従って、流出開口とは別に、上面は、太陽光発電モジュールを備えた、いわゆるガラスパッケージによって構成することができる。このとき、キャビティは、ガラスパッケージによって上面が部分的に閉じられる一方、流出開口は、ガラスパッケージによって閉じられていない部分に相当する。
【0031】
本発明による太陽エネルギ瓦により、製造だけでなく、設置及びメンテナンスも、単純かつ安価となる。設置は、標準的な瓦の設置と異なる必要は全くない。太陽エネルギ瓦は、標準的な瓦に簡単に結合することも可能である。屋根構造への固定、例えば横方向に並ぶ瓦への固定も、釘またはネジで太陽エネルギ瓦を屋根の桟に固定することによって、通常の方法で行うことができる。例えば、この釘またはネジにより、後面に取り付けられて下面の下方に延びるロックプレートを介し、太陽エネルギ瓦を屋根の桟に簡単に取り付けることができる。
【0032】
更に、標準的な固定部材、例えば市販のストームサクションプロテクタを使用し、太陽エネルギ瓦を相互に結合することができる。別の方法では幾分複雑となるような、隣接する太陽光発電瓦の電気的接続部材の接続は、本発明の場合、隣接する太陽光発電瓦の流入開口及び流出開口を利用し、電気的接続部材を互いに接続するだけで実現することができる。太陽光発電瓦の内部に設けられたキャビティは、接続を実施するために容易に利用することができる。流入開口または流出開口を介した、太陽エネルギ瓦、例えば太陽光発電瓦の内部へのアクセスは、太陽エネルギ瓦または太陽光発電瓦のメンテナンス、またはそれ以外のタイプの修理作業を実行するために利用することもできる。
【0033】
キャビティと、太陽光発電瓦などの太陽エネルギ瓦を通って流れる空気を対象とする熱伝達とにより、廃熱の利用も可能となる。従って、本発明による太陽エネルギ瓦で覆われた住宅のエネルギ効率を更に高めることが可能となる。本発明による太陽エネルギ瓦により、エネルギ収量が向上する。
【0034】
流入開口及び流出開口の寸法は選択することが可能である。2つの側壁の間の寸法に関し、流入開口は、基本的に、2つの側壁の間の全幅にわたって延在するように設けられるのが好ましい。また、流出開口も、基本的に、2つの側壁の間の全幅にわたって延在させることが可能である。流入開口及び流出開口は、好ましくは2つの側壁の間に延在する幅を等しくすることができる。このようにして、隣接する太陽エネルギ瓦の流入開口または流出開口の最適な適用範囲を確保することができる。更に、太陽エネルギ瓦の内部への容易なアクセスが確保できるため、設置やメンテナンスのコストを最小限にすることができる。
【0035】
直交方向の流入開口または流出開口の寸法、即ち、前面から後面へと延びる前後方向に沿った長さにおいて、流入開口は、前面から後面へと延びる前後方向に沿って、流出開口よりも長く延在するように設けることができる。これにより、太陽エネルギ瓦における比較的小さな流出開口の全体が、隣接する太陽エネルギ瓦における比較的大きい流入開口と常に重なった位置にあることが確実となる。これにより、1つの太陽エネルギ瓦から次の太陽エネルギ瓦への加熱された周辺空気の確実な流通が確保される。
【0036】
上述の流入開口または流出開口の特性は、特に寸法や大きさ、並びに結果として生じる効果、特に設置の効果に関して、太陽エネルギ瓦において上面に上部開口を設けること及び下面に下部開口を設けることに、全般的に当てはめることができる。
【0037】
太陽エネルギ瓦の好ましい一態様によれば、上面には、前面から後面へと延びる前後方向に移動可能なカバーが設けられている。このカバーは、側壁または前面と後面とによって形成されたフレーム内に保持されるスライド式のプレートによって形成することが可能である。従って、この可動式カバーは、太陽エネルギ瓦の上面全体を完全に覆うものではなく、部分的に覆うものである。また、流出開口は、スライド式のカバーによって変位可能な上面に設けられ、その結果、ときにはより多く覆われ、ときにはより少なく覆われるようにすることができる。従って、このとき、太陽エネルギ瓦のキャビティは、異なる位置で、上方から、または外部からアクセス可能にすることができる。このようにして、キャビティは、後面の近傍に配置された流出開口だけでなく、反対側となる前面の近傍においても、外部からアクセス可能となる。このカバーは、後面の近傍に配置された流出開口が一時的に閉じられ、前面の近傍の上面に開口が形成されるまで移動可能となるように構成することもできる。カバーは、ガラスパッケージによって形成することが可能であり、このガラスパッケージは、太陽エネルギ利用モジュール、例えば太陽光発電モジュールを備える。
【0038】
太陽エネルギ瓦の更なる好ましい一態様によれば、下面は、実質的に金属ベースプレートによって形成され、この金属ベースプレートは、下部開口の領域に、少なくとも1つの金属板タブ、好ましくは2つの金属板タブを有する。
【0039】
また、太陽エネルギ瓦の初期状態において、金属板タブは、金属ベースプレートの基本面と実質的に平行に延在し、太陽エネルギ瓦が屋根に設置されるときに、基本面に実質的に垂直に延在する垂直部と、当該垂直部に接続し、基本面に実質的に平行に延在する水平部とを有することが好ましい。基本面とは、金属ベースプレートの主要部分によって形成される面のことである。太陽エネルギ瓦の初期状態とは、通常、設置前の状態を示すものである。設置の際、作業者は、金属板タブを折り曲げて、太陽エネルギ瓦が設置されるときに存在する水平部及び垂直部を設けることができる。これらの部分は、隣接する太陽エネルギ瓦間の結合を生成するために有効利用可能であり、従って、特に、ストームサクションへの保護、並びに等電位化のためにも、有効利用することができる。
【0040】
また、前記金属板タブには、一定間隔で配置された複数の孔が設けられているのが好ましい。このようにして、金属板タブにネジまたは結合手段を簡単に設けることが可能となり、その下側に配置された隣接する太陽エネルギ瓦への結合は、例えば、金属板タブを介して行うことができるため、このことは、屋根への太陽エネルギ瓦の設置に関して効果を有する。
【0041】
太陽エネルギ瓦の好ましい別の一態様によれば、エアスライドバルブが設けられ、当該エアスライドバルブは、前面から後面へと延びる前後方向に沿って移動可能であり、流入開口の少なくとも一部の領域を、エアスライドバルブによって閉じることができるように配置されている。このようにして、例えば、上述したような流入開口と流出開口との寸法差をあらためて補償することができる。これは、流入開口の寸法及び位置が、可変となるように構成されているためである。エアスライドバルブは、キャビティに面する下面の内側に置かれるように構成することができる。このとき、エアスライドバルブは、この下面の内側に沿って移動可能である。その結果、流入開口は、より多く、またはより少なく覆い隠すことが可能となる。また、エアスライドバルブが、流入開口よりも後方になるまで前後方向に変位すれば、流入開口がエアスライドバルブで全く覆われないようにすることも可能となる。設置された状態において、一方の太陽エネルギ瓦の流出開口が、他方の太陽エネルギ瓦の流入開口と位置を合わせるように、2つの隣接する太陽エネルギ瓦が配置される場合、これら2つの開口は、エアスライドバルブによって、より良好に配置され、即ち、より良好に互いに位置を合わせることができる。エアスライドバルブにより流入開口を修正できるということにより、1つの太陽エネルギ瓦の流入開口は、設置状態においてその下側にある太陽エネルギ瓦の流出開口に適合させることが可能となる。このようにして、様々な屋根構造において必然的に起こり得る長さの差を補償することが可能となる。これにより、屋根の桟は、互いに一定の距離になくてもよく、数センチメートル多く離れたり、数センチメートル少なく離れていてもよい。そのような場合、設置された状態において上側に配置された上側の太陽エネルギ瓦が、その下側に配置された太陽エネルギ瓦から離れすぎていることで、上側の太陽エネルギ瓦の流入開口が、下側の太陽エネルギ瓦の流出開口を通る空気だけでなく、外部から流入する別の空気の流れにも曝される可能性がある。このことは、太陽エネルギ瓦に流れた空気が既に暖まっているものの、上側の太陽エネルギ瓦の過度に大きい流入開口、または完全には位置が一致していない流入開口を通って入り込む、より冷えた空気と混合すると、不具合となる可能性がある。従って、調整可能なエアスライドバルブは、最適な熱伝達を確保し、従って、システムのエネルギ利用とエネルギ効率を改善することもできる。
【0042】
太陽エネルギ瓦の好ましい一態様は、エアスライドバルブが、下面に実質的に平行に延びるベース部を有し、このエアスライドバルブが、ベース部から上面に向かって実質的に垂直に上方に伸びる肩部を有し、当該肩部には、後面の方に向く貫通開口が設けられていることを特徴とする。このことは、ベース部が下面の上に置かれているときに、太陽エネルギ瓦の下面に沿って、エアスライドバルブを容易に移動できることを意味する。エアスライドバルブの案内を支持するために、横方向の案内要素、回動要素、または摺動要素を設けてもよい。肩部により、エアスライドバルブに係合面が設けられ、これによりエアスライドバルブを前後方向に沿って容易に動かすことができる。貫通開口は、キャビティを通って延びるシャフトを有した後述のストームサクションプロテクタなどの更なる構成部材をエアスライドバルブに結合するため、及び/または他の構成部材とエアスライドバルブとの動きを一緒にするために使用することができる。エアスライドバルブは、肩部に隣接してベース部から離れるように延びるルーフ部のほか、固定部を有するのが好ましく、この固定部には、前面の方を向く貫通開口が設けられるのが好ましい。これにより、エアスライドバルブの肩部、ルーフ部、及び固定部の間に樋状の受容部が形成される。このハウジングは、例えば、後述するように、キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタのフック部材といった別の部材を収容するように機能する。従って、追加の部材またはストームサクションプロテクタの動きは、エアスライドバルブの動きと簡単に一緒にすることができる。更に、樋状のハウジングは、別の部材、例えばキャビティを通って延びるシャフトを有した後述のストームサクションプロテクタのフック部材の受容空間または保護として機能することができる。
【0043】
本発明による太陽エネルギ瓦は、ストームサクションプロテクタを備えることが可能であり、このストームサクションプロテクタは、例えば、屋根に太陽エネルギ瓦を固定するために、隣接する太陽エネルギ瓦に結合することができる。ウインドサクションプロテクタとしても知られているストームサクションプロテクタは、暴風雨によって屋根がむき出しになる(風吸引)のを防ぐために使用される。これは、通常、ワイヤまたはクランプを瓦に取り付けることによって達成され、瓦を屋根の桟にしっかりとつなぎ止める。固定には比較的時間がかかり、地域の条件によっては、瓦自体を覆うよりも時間がかかることがある。また、このような瓦を、屋根組立体(全体的に覆われた屋根)において置き換えること(例えば破損した場合)は、極めて手間のかかることである。本発明による太陽エネルギ瓦は、市販のストームサクションプロテクタを用いて固定することが可能である。また、これに代えて、本発明は、以下に記載するような、ストームサクションプロテクタの新規な構成も提供する。
【0044】
太陽エネルギ瓦の特に好ましい一態様によれば、隣接する太陽エネルギ瓦に結合することが可能なストームサクションプロテクタが提供され、このストームサクションプロテクタは、キャビティを通って後面から前面に向け、少なくとも流入開口の領域内に延びるシャフトを有する。また、ストームサクションプロテクタには、流入開口の方に配置される挿入端部が一端に設けられたフック部材を有する。また、ストームサクションプロテクタは、隣接する太陽エネルギ瓦のストームサクションプロテクタの挿入端部を収容するための受容開口を、流出開口の側に配置される他端に備える。このようにして形成されたストームサクションプロテクタは、太陽エネルギ瓦に結合され、前面から後面へと延びる前後方向に、太陽エネルギ瓦を通って前面から後面へと延びる。ストームサクションプロテクタは、一方の側に受容開口を有し、他方の側には挿入端部を有したフック部材を有する。この挿入端部は、例えば、ピン、ボルト要素、釘、マンドレル等とすることができる。この挿入端部は、別の、例えば、隣接するストームサクションプロテクタの対応する受容開口内に挿入することができる。複数の隣接する太陽エネルギ瓦の、そのような複数のストームサクションプロテクタは、それぞれがキャビティを通って延びるシャフトを有し、互いに連結、即ち、一緒になるように単純に差し込むだけで連結できるので、隣接する太陽エネルギ瓦も、簡単な方法で互いに結合でき、従って、固定することができる。
【0045】
上述の特徴によりキャビティを通って延びるシャフトを有して使用される、このようなストームサクションプロテクタは、それ自体単独で独自の新規な意義を有する。本発明による太陽エネルギ瓦以外の瓦にも、上述のストームサクションプロテクタを装備することが可能である。この点で、ストームサクションプロテクタは、後付け部品として設けることができる。このために、ストームサクションプロテクタの受容開口が一方の側に設けられ、挿入端部を有したフック部材が他方の側に設けられるように、ストームサクションプロテクタを瓦に結合する必要がある。このとき、市販の瓦は、上述のストームサクションプロテクタを用いて互いに結合され、従って、むき出しにならないように固定することができる。好ましくは瓦自体または瓦の幾つかを、通常の方法、例えば、屋根の桟に釘を打つか、またはネジを固定することによって、屋根の桟に固定すればよく、次に、上述のストームサクションプロテクタを相互に結合することにより、屋根がむき出しにならないことが確実になる。従って、キャビティを通って延在するシャフトを有した、上述のストームサクションプロテクタも、新規であり、有用である。
【0046】
このことは、キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタの後述する特徴にも当てはまる。このような後述のストームサクションプロテクタも、それ自体単独で独自の新規な意義を有する。この点に関し、太陽エネルギ瓦、特にその設置に関する上述及び後述の効果は、このような新規で有用なストームサクションプロテクタを備えた別の瓦にも部分的に当てはまる。
【0047】
上述の、キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタの挿入端部は、例えば、フック部材の基部の貫通孔を通過する釘によって形成される。これにより、隣接するストームサクションプロテクタ、ひいては隣接する瓦のポジティブフィット結合を確立するには、現場で釘を貫通孔に通して案内するだけでよいため、ストームサクションプロテクタまたは対応する瓦の設置が簡素化される。
【0048】
キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタの好ましい一態様は、シャフトの長さ方向に沿ってフック部材を延設できること、またはシャフトが長手方向に変位可能な伸縮式シャフトとして形成されることを特徴とする。例えば、フック部材は、シャフトが通過して延在する孔を有し、この孔を介し、フック部材が長手方向に変位可能な状態でシャフトに結合される。また、これに代えて、フック部材は、例えば押し付けられるようにして、シャフトに沿って変位できないように固定することもできる。そして、シャフトは、伸縮式シャフトとして、またはトランペットチューブのように構成することも可能である。このトランペットチューブの場合には、異なる直径の2つ以上のパイプ部材が互いに中に移動できるようにすることができる。これにより、フック部材の位置、ひいてはそれに結合された挿入端部の位置を、長手方向に沿って変化させることができる。従って、太陽エネルギ瓦の設置が大幅に単純化される。これは、屋根の上で下側に既に置かれている太陽エネルギの屋根瓦が、下側のストームサクションプロテクタの受容開口に、上側のストームサクションプロテクタの挿入端部が挿入されるように、その上に取り付けられる太陽エネルギ瓦と位置合わせしなければならないからである。このような構成は、上側のストームサクションプロテクタの挿入端部を、設置のために、シャフトに沿って、または(伸縮式の)シャフトと共に、一時的に後方に移動させ、その後、上側のストームサクションプロテクタの部分で上側の太陽エネルギ瓦が一直線に並ぶと、再び延長させて、下側のストームサクションプロテクタの受容開口とポジティブフィット結合がなされるようにする場合に有利である。
【0049】
キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタの、別の好ましい一態様によれば、圧縮バネがシャフトの周囲に配置され、この圧縮バネが、前面の方に変位させた位置でフック部材を保持することが提示される。これにより、屋根への太陽エネルギ瓦の設置が更に簡素化される。その理由は、設置状態において下側に配置されて、同じくキャビティを通って延びるシャフトを有した、隣接するストームサクションプロテクタの受容開口に、この圧縮バネが挿入端部を自動的に押し込むからである。シャフトの周囲に配置された圧縮バネとは、この圧縮バネが、シャフトの周囲に巻かれていることを意味するものであると理解することができる。このとき、シャフトは、圧縮バネの中心部を通って延在する。圧縮バネは、シャフト上に配置されたフック部材に連結することができる。従って、シャフト上のフック部材の変位により、圧縮バネを圧縮することができる。
【0050】
キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタは、後面側に位置するその端部で、後面に固定することができる。例えば、ストームサクションプロテクタのシャフトを、後面に結合することが可能である。ストームサクションプロテクタの受容開口のみが露出したままとなるため、その上側に配置されたストームサクションプロテクタの挿入端部を、この受容開口に再度挿入することができる。ストームサクションプロテクタを後面に固定するために、付加的な固定部材を設けてもよい。
【0051】
更に、キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタ、特にシャフトは、少なくとも後面の方に向く貫通開口を通って延在可能であり、好ましくは、更に前面の方に向く貫通開口を通って延在可能である。これにより、ストームサクションプロテクタと太陽エネルギ瓦との簡単な結合が確保される。また、ストームサクションプロテクタの移動もしくは変位、またはストームサクションプロテクタのフック部材の前後方向の変位は、容易にエアスライドバルブの変位と一緒に行うことができる。隣接する2つの太陽エネルギ瓦において、一方が他方の上側に位置する流入開口及び流出開口の位置合わせは、このように簡単な方法で行うことができる。
【0052】
キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタの好ましい一態様は、シャフトが、その長手方向軸線周りに回転可能に、及び/またはフック部材がシャフトの周りに回転可能に形成されることを特徴とする。このようにして、フック部材、ひいては挿入端部の位置に関し、更なる自由度を設けることができる。初期状態において、フック部材は、例えば、横方向に揺動可能であり、太陽エネルギ瓦の下面に実質的に平行に配置可能である。その後、屋根に設置するために、このフック部材は、この位置から揺動され、太陽エネルギ瓦の下面から下方に突出させることができる。このようにした後、挿入端部を有したフック部材は、その下側のストームサクションプロテクタの受容開口に容易に係合させることができる。
【0053】
キャビティを通って延びるシャフトを有した、ストームサクションプロテクタの更なる好ましい一態様によれば、後面の方に向くフック部材の側面が、前面の方に向く肩部の一方の側面に、少なくとも部分的に当接して静止することが提示される。これにより、特に簡単で効率的な太陽エネルギ瓦の設置が可能となる。これは、フック部材を前後方向に動かしたときに、肩部の上方でのエアスライドバルブの変位が、後面の方に向くフック部材の側面によって自動的に確保されるからである。従って、このようにして、フック部材とエアスライドバルブとの変位の間での単純な結合が達成される。
【0054】
上述の、キャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタの代替物として、提案する太陽エネルギ瓦は、特に、異なる、単純なストームサクションプロテクタを効果的に有することができる。前述した、下面の金属ベースプレートにおける金属板タブは、上下の隣接する太陽エネルギ瓦を、互いに機械的に結合できることになるので、上述のようなストームサクションプロテクタとしての役割も果たすことができる。加えて、ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材を効果的に設けることが可能であり、更により効果的には、2つのベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材を設けることができる。これらベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材は、釘として、または好ましくはネジとして形成することができる。ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材は、太陽エネルギ瓦の下面または金属ベースプレートを、設置された状態において下方にある屋根の桟に直接固定することができる。提案する太陽エネルギ瓦の上面にある上部開口及び下面にある下部開口の形態の有用な開口により、これらのベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材も、上方から容易にアクセス可能であり、容易に屋根の桟に取り付けたり、再び取り外したりことも可能である。このようにして、対応する太陽エネルギ瓦は、ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材によって屋根の桟に固定され、例えば暴風雨に関わる状態に曝されても安全となる。特に、上述の金属板タブを介した、隣接する太陽エネルギ瓦の結合と組み合わせることで、特に安全で、暴風雨に強い太陽エネルギ瓦のシステムを屋根の上に設けることができる。ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材のために、太陽エネルギ瓦の下面または金属ベースプレートに、孔を効果的に設けることができる。
【0055】
太陽エネルギ瓦の好ましい一態様は、設置状態において、外部からキャビティにアクセス可能となるように、前面が揺動可能に構成されることを特徴とする。このようにして、太陽エネルギ瓦のメンテナンスと設置を、更に簡素化することができる。例えば、プラグ部材とソケット部材との電気的接続は、下方に折り曲げられた前面を介したアクセスにより、外部から簡単に完了することができる。また、メンテナンス処理や目視検査も、このようなアクセスによって外部から容易に実施することができる。
【0056】
隣接する太陽エネルギ瓦、または、特に隣接する太陽光発電瓦の、上述の電気的接続については、例えば、第1の電気的接続部材を、キャビティに面する前面の側に固定することができる。これにより、設置及び取り外しが更に簡素化される。これは、接続部分が外部から容易にアクセス可能であるため、太陽エネルギ瓦間または太陽光発電瓦間の電気的接続を、容易に形成し、再び切り離すことができるからである。
【0057】
更に、第2の電気的接続部材を、流出開口の領域に配置することが可能であり、このとき、第2の電気的接続部材は、隣接する太陽エネルギ瓦または太陽光発電瓦の第1の電気的接続部材に接続するように構成することができる。従って、設置及び取り外しが更に簡素化される。これは、接続部分が外部から容易にアクセス可能なため、太陽エネルギ瓦間または太陽光発電瓦間の電気的接続を、容易に形成し、再び切り離すことができるからである。
【0058】
本発明による太陽エネルギシステムは、日射からエネルギを得るために使用される。また、この太陽エネルギシステムは、同時に廃熱を利用するために使用することもできる。本発明による太陽エネルギシステムは、本発明による太陽エネルギ瓦を少なくとも2つ、互いに結合して備え、設置状態において下側に配置された太陽エネルギ瓦の上部開口は、設置状態において上側に配置された太陽エネルギ瓦の下部開口と、少なくとも部分的に位置が合わせられている。
【0059】
このようにして、例えば、日射が電気エネルギまたは熱エネルギの生成に良好に使用されるだけではなく、廃熱が簡単な方法により家庭内で実用的に利用されるように、本発明による太陽エネルギ瓦で屋根を覆うことができるシステムが提供される。本発明による太陽エネルギ瓦に関して前述した効果は、本発明による太陽エネルギシステムにも当てはまる。
【0060】
太陽エネルギシステムは、特に太陽光発電システムを意味すると理解することができる。また、太陽熱エネルギシステムを指すことも可能である。また、太陽光発電技術と太陽熱エネルギ技術とを組み合わせて、太陽エネルギシステムに利用することもできる。
【0061】
屋根は、通常、設置状態において最下部に位置する太陽エネルギ瓦が、まず初めに屋根構造に固定され、例えば、釘やネジなどによって屋根の桟に固定されるようにして覆われる。しかしながら、太陽エネルギ瓦は、瓦の下面から屋根の桟の方に突き出ている1つ以上の背面取付式の桟保持部材を上方から引っ掛けることによって、屋根の桟に容易に留めることも可能である。従って、釘またはネジを用いた屋根の桟への固定は、全く必要ではなく、もし必要であれば、後で行うこともできる。次に、更なる太陽エネルギの瓦が、その前に取り付けられたものの上に取り付けられる。このとき、結合は、例えば、上側の太陽エネルギ瓦のキャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタのフック部材を、下側の太陽エネルギ瓦のキャビティを通って延びるシャフトを有したストームサクションプロテクタの受容開口に係合させることによって、両者の間で良好に行うことができる。このような結合に加え、電気的接続の形成も、上側の太陽エネルギ瓦の上部開口または流出開口を介して良好に行うことができる。また、代替的に記載したストームサクションプロテクタも、例えば、好ましくは等電位化部材を介し、上側の太陽エネルギ瓦の金属板タブを、下側の太陽エネルギ瓦の下面または金属ベースプレートに結合することによって、使用することが可能である。また、ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材を設けて、屋根の桟に固定することも可能である。これら等電位化部材を設けたり、ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材を設けたりする方式の組立作業は、上部開口または流出開口だけでなく、下部開口または流入開口の存在によって大幅に簡素化される。
【0062】
太陽エネルギシステムの好ましい一態様は、加熱された周辺空気によってもたらされる熱エネルギを用いる、特にヒートポンプまたは熱交換器の形態の消費機構が、設置された状態において最上部に配置された太陽エネルギ瓦の上部開口に直接的に接続されることを特徴とする。これにより、日射によってもたらされるエネルギを更に良好に利用するシステムが提供される。
【0063】
例えば、棟、即ち屋根の棟は、屋根の上に配置された最上部の太陽エネルギ瓦に結合される。このとき、屋根の棟の中には、キャビティを設けることが可能であり、このキャビティは、最上部にある太陽エネルギ瓦の上部開口または流出開口と位置が合わせられている。屋根の棟の縁部は、周囲環境に対し、最上部にある上部開口または流出開口を塞ぎ、封止を行う。そして、加熱された周辺空気が、屋根の棟のキャビティを通って、内部に向け、家の方に吸い込まれ、例えば、家で利用される。付加的な送風装置を設けることも可能である。また、この送風装置は、例えば、より下方の太陽エネルギ瓦にも設けることが可能であり、太陽エネルギ瓦を通って流れることにより暖められた空気を、屋根の棟に向けて更に上方に積極的に向かわせることもできる。下部開口または流入開口を覆う孔あき板を、最下部の太陽エネルギ瓦の下方に設けることもできる。これにより、所望の周辺空気の流入または通過流が確保される一方、不要な物体や野生生物さえも、太陽エネルギ瓦のキャビティへの侵入が防止される。特に、設置された状態において最下部に配置される太陽エネルギ瓦か、またはその外側には、周辺空気が、この太陽エネルギ瓦のキャビティに確実に入るようにする吸気部材または送風装置を設けることができる。また、フラップを屋根の棟に設け、太陽エネルギ瓦を通って流れる加熱された周辺空気を、必要に応じて再び周囲環境に放出できるようにすることも可能である。このフラップは、手動で操作してもよいし、自動的に制御してもよい。このフラップは、例えば、家庭で使用できない加熱された周辺空気によって過剰な熱が供給される可能性がある場合に、開くようにしてもよい。
【0064】
太陽エネルギシステムの更なる一態様によれば、等電位化部材が設けられてもよく、この等電位化部材は、少なくとも2つの相互に結合された太陽エネルギ瓦の少なくとも2つの下面を、少なくとも一部が貫通して延び、好ましくは、等電位化部材が、設置状態において下側に配置された太陽エネルギ瓦の前記金属ベースプレートを、設置状態において上側に配置された太陽エネルギ屋根瓦の金属板タブに結合するように、等電位化部材が配置される。この等電位化部材は、例えば、ネジまたは釘として実現してもよい。一方、この等電位化部材は、隣接する太陽エネルギ瓦間の機械的結合を行う役割を果たす。従って、それはまた、ストームサクションプロテクタとしても作用する。更に、隣接する太陽エネルギ瓦を、特にそれらの金属ベースプレートの領域において、隣接する太陽エネルギ瓦のハウジングが相互の電気的な伝導性を有して結合することができる。このような目的のために、例えば、金属ベースプレート及び金属板タブの両方だけでなく、等電位化部材も、金属とすることができる。これにより、等電位化が確保され、例えば、最終的に接地を行うことができる。
【0065】
本発明による方法は、日射からエネルギを得ると共に、廃熱を利用するために使用される。太陽エネルギ瓦、好ましくは本発明による太陽エネルギ瓦を用いた、本発明による方法では、太陽エネルギ利用モジュールを使用して、日射から熱エネルギ及び/または電気エネルギを生成し、それによる太陽エネルギ利用モジュールの加熱によって生成された廃熱を、通過して流れる周辺空気に放出し、加熱された周辺空気を、特にヒートポンプまたは熱交換器の形態の消費機構に送給する。
【0066】
これにより、日射によってもたらされるエネルギを、より効率的に使用する方法が提供される。太陽光発電瓦内の太陽光発電モジュールなどの、太陽エネルギ利用モジュールで生成された電気エネルギまたは電気だけでなく、加熱された太陽光発電モジュールからの廃熱も、必要に応じて利用され、有効活用される。本発明による太陽光発電瓦に関して上述した効果は、特に本発明による太陽光発電瓦を使用する場合、本発明による方法にも同様に当てはまる。
【0067】
本方法の好ましい一態様は、好ましくは本発明による太陽エネルギシステムにおいて、複数の太陽エネルギ瓦を、屋根構造の上に設けて取り付け、設置状態において最下部に配置された太陽エネルギ瓦によって周辺空気を引き込み、引き込まれた周辺空気を、隣接する太陽エネルギ瓦のそれぞれの流出開口及び流入開口を通し、隣接する太陽エネルギ瓦のキャビティを通して送給し、加熱された周辺空気を、設置状態において最上部に配置された太陽エネルギ瓦から引き出し、消費機構に供給することを特徴とする。隣接する太陽エネルギ瓦は、ここでも、上下で隣接する太陽エネルギ瓦を意味するものと理解すべきである。このように、日射によってもたらされるエネルギは、電気の形で電気エネルギを生成するため、及び熱を利用するための両方を目的とする方法で使用される。この場合、周辺空気は、受動的方法または能動的方法のいずれかにより、まず低温の空気として、そしてその後に加熱された空気として、引き込んで取り出し、またはポンプで送り出すことができる。周辺空気の吸引及び送給を補助するために、付加的な吸引要素及び/または排出要素を設けてもよい。しかしながら、太陽エネルギ瓦を通る周辺空気の流れは、完全に受動的な方法で実施することもできる。即ち、最下部の太陽エネルギ瓦内で加熱された周辺空気が、自動的に上方に上昇し、その結果、最下部の太陽エネルギ瓦の流出開口に向かって流れるという効果を積極的に利用することが可能である。これより上の部分では、暖まった周辺空気が、その直上に配置された太陽エネルギ瓦に入り、そこで加熱された周辺空気は、引き続き加熱されていく。
【0068】
添付図面を参照し、本発明を更に詳細に説明する。これらの図面は、本発明の好ましい例示的な実施形態を示すものであり、図示する特徴に本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】太陽光発電瓦の形態の、本発明による太陽エネルギ瓦を示す分解図である。
図2】組み立てた状態の図1の太陽光発電瓦を示す平面図である。
図3図2の太陽光発電瓦の下方からの斜視図である。
図4図2の太陽光発電瓦の側面図である。
図5図2の太陽光発電瓦の正面図である。
図6図5の太陽光発電瓦を、切断線A-Aに沿う前後方向の断面で示し、詳細を拡大して付加的に示す図である。
図7】太陽光発電瓦の形態の、本発明による太陽エネルギ瓦を示す分解図である。
図8】太陽光発電瓦の形態の太陽エネルギ瓦で覆われた屋根の詳細を示す平面図である。
図9】太陽光発電瓦の形態の、提案する太陽エネルギ瓦の更なる例示的な一実施形態を示す図である。
図10図9の例示的な実施形態を、設置された状態で示す図である。
図11図9の実施形態の側面図(a)、及び図10の実施形態の側面図(b)である。
図12】屋根に設置された、図8図11に示すいくつかの隣接する太陽光発電瓦の側面図(a)、及びB部の拡大詳細図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下では、太陽光発電瓦の例を用いて本発明を説明する。但し、本発明は、このタイプの太陽エネルギ瓦に限定されるものではない。その効果は、特に太陽熱エネルギ瓦や、太陽光発電及び太陽熱エネルギを使用する複合瓦によっても生じる。特に、太陽光発電瓦における電気的接続の形成に関する以下の効果は、隣接する太陽熱エネルギ瓦間の熱的接続の形成にも当てはめることが可能である。太陽熱エネルギ瓦の場合、電気配線の代わりに流体配管が設けられる。このため、電気的接続の代わりに、瓦を敷設する際の電気的接続と同様の方法で互いに接続される流体搬送パイプの接続のための接続部材が必要となる。
【0071】
図1は、本発明による太陽光発電瓦1の好ましい一実施形態を示す分解図である。太陽光発電瓦1は、まず、下部に示す基本的な枠組みを備える。例えば、太陽光発電瓦1は、金属のベースプレート3によって実質的に形成される下面2(矢印で示す)を備える。下面2は、図示しない屋根構造の上で、少なくとも一部の部分において、太陽光発電瓦1を支持するために使用される。更に、太陽光発電瓦1は、前面4と、2つの対向する側壁5及び側壁6と、前面4に対向する後面7とを有する。前面4と後面7とは、2つの側壁5及び側壁6を互いに接続する。
【0072】
更に、太陽光発電瓦1は、実質的にガラスパッケージ9によって形成された上面8を有する。このガラスパッケージ9の部分は、とりわけ、公知の方法で日射から電気エネルギを発生する太陽光発電モジュールである。上面8と下面2とは、2つの側壁5,6と、後面7及び前面4とを接続することにより、太陽光発電瓦1にキャビティ10を形成する。
【0073】
太陽光発電瓦1の上面8は、ガラスパッケージ8によって完全には閉じられていない。組み立てた状態の図1の太陽光発電瓦1の平面図である図2に示すように、上面8は、後面7の領域に流出開口11を有している。この流出開口11は、太陽光発電瓦1のキャビティ10への外部からのアクセスを可能にするものである。
【0074】
ガラスパッケージ9は、太陽光発電瓦1のためのカバーを形成する。このカバーは、太陽光発電瓦1の上面8においてキャビティ10を部分的に閉塞する。流出開口11は、ガラスパッケージ9によって閉塞されていない部分によって形成されている。
【0075】
上面8における流出開口11の位置は、カバー、即ちガラスパッケージ9が、前面4から後面7へと延びる前後方向Lに沿って移動可能に構成されているため、可変となっている。図2に示す状態から、ガラスパッケージ9を前後方向Lにずらすことができるので、流出開口11の大きさが減少する。しかし、同時に、これは、太陽光発電瓦1のキャビティ10への更なるアクセスを可能にすることになる。太陽光発電瓦1の上面8においてガラスパッケージ9を変位させることによって、キャビティ10は、前面4の近傍でも外部からアクセス可能となる。従って、カバー、即ちガラスパッケージ9を移動可能とすることにより、太陽光発電瓦1のキャビティ10は、必要に応じて様々な箇所で外部からアクセス可能とすることができるので、設置作業またはメンテナンス作業が容易になる。
【0076】
また、図1に示すように、下面2も、流入開口12の形態の開口を備える。太陽光発電瓦1のキャビティ10は、この流入開口12を介して外部からアクセスすることも可能である。
【0077】
本発明にとって重要であるのは、上述の開口、即ち流入開口12及び流出開口11を用いて外部からアクセス可能となることにより、太陽光発電瓦1のキャビティ10を利用することができるという成果である。即ち、流入開口12は、周囲Uから太陽光発電瓦1のキャビティ10内へと周辺空気が流入できるようにするという役割を果たす。そして、この周辺空気は、その後、太陽光発電瓦1の流出開口11の方向に流れる。この流動経路において、周辺空気は、とりわけ、ガラスパッケージ9、即ち太陽光発電モジュールを通過し、この太陽光発電モジュールは、動作中に強力に加熱される。この熱から得られるエネルギは、太陽光発電瓦1のキャビティ10を通って流れる周辺空気に廃熱を放出することによって利用される。このようにして加熱された周辺空気は、例えば、太陽光発電瓦1の下流にあるヒートポンプまたはそれ以外の消費機構において、実用的に利用することができる。
【0078】
このような目的のために、屋根構造の上に見られるように、いくつかの太陽光発電瓦1を、最下部から最上部まで一続きに結合することが可能であり、このとき、下側の太陽光発電瓦1の流出開口11は、その上に配置された隣接する太陽光発電瓦1の流入開口12と常に位置が合うようになっている。また、いくつかの太陽光発電瓦1を、屋根の上で横方向に隣接して設けることも可能である。このような目的のために、横方向に隣接する太陽光発電瓦1は、側壁5に設けられた支持部13と、側壁6に設けられたクランプ部14とを介し、少なくともポジティブフィット方式で、互いに結合することができる。太陽光発電瓦1は、標準的な瓦に横方向で一緒に結合することも可能である。このような目的のために、市販の瓦も、支持部13及びクランプ部14の形態の整合する同等物だけは有している必要がある。このため、本発明による太陽光発電瓦1は、従来の瓦の形状及び寸法に実質的に相当する寸法及び外形も有している。
【0079】
電気的接続部材は、例えば、プラグ及びソケットの形態であり、この電気的接続部材を介し、隣接する太陽光発電瓦1を互いに電気的に接続することができるが、本実施形態では図示されていない。
【0080】
いわゆるストームサクションプロテクタ15は、屋根の上に取り付けられたいくつかの太陽光発電瓦1を結合したり、固定したりするために設けられる。以下に記載して説明するストームサクションプロテクタ15は、それ自体が新規な意義を有する。特定の条件下では、このストームサクションプロテクタ15を市販の瓦と共に使用することもできる。
【0081】
この点で好ましいものとして、本明細書に示す例示的な実施形態において、光起電力瓦1は、ストームサクションプロテクタ15を有する。組み立てた状態において、このストームサクションプロテクタ15は、後面7から前面4に向けて、キャビティ10を通り、少なくとも流入開口12の領域内へと延びている。
【0082】
ストームサクションプロテクタ15は、前後方向Lに沿って延在するシャフト16を有している。シャフト16の周囲には、圧縮バネ17が配置されている。前面4の方に向くシャフト16の端部には、ストームサクションプロテクタ15のフック部材18が配置されている。
【0083】
フック部材18は、シャフト16に沿って長さ方向に変位するように構成されている。フック部材18は、シャフト16上で前後方向Lに沿って後方に移動可能であり、圧縮バネ17を圧縮することができる。但し、その初期状態では、フック部材18が、圧縮バネ17によって図示の位置に保持され、前面4の方に変位されている。
【0084】
フック部材18には、挿入端部19が設けられている。本実施形態において、挿入端部19は釘である。挿入端部19は、例えば、ピン、ボルト部材、マンドレルなどであってもよい。挿入端部19は、例えば隣接する、別のストームサクションプロテクタの対応する受容開口に挿入することができる(更なる詳細は、受容開口30と併せて後述する)。複数の隣接する太陽光発電瓦1の、このような複数のストームサクションプロテクタを互いに結合、即ち単に差し込んで結合することができるので、隣接する太陽光発電瓦1も、簡単な方法で互いに結合することによって固定することができる。
【0085】
本実施形態において、ストームサクションプロテクタ15の挿入端部19が釘として形成され、図6に示すように、フック部材18の基部を貫通する貫通孔を通して案内されるということにより、ストームサクションプロテクタ15や、これに対応する太陽光発電瓦1の設置が簡単になる。これは、隣接するストームサクションプロテクタ15、ひいては隣接する太陽光発電瓦1のポジティブフィット結合を確立するために、現場で、釘、即ち挿入端部19を、貫通孔に通して案内するだけでよいからである。
【0086】
組み立てた状態において、ストームサクションプロテクタ15は、太陽光発電瓦1の後面7に固定される。このために、後面7は孔20を有し、この孔20を通して、ストームサクションプロテクタ15のシャフト16が案内される。更に、ストームサクションプロテクタ15は、固定板21も有しており、この固定板21を介し、ストームサクションプロテクタ15、及び最終的には太陽光発電瓦1を、屋根構造の屋根の桟に固定することができる。このような目的のために、太陽光発電瓦1は、釘により、または図2図3及び図4に示すように、固定板21を使用してネジ22により、屋根の桟にしっかりと結合される。
【0087】
太陽光発電瓦1は、更にエアスライドバルブ23を有する。太陽光発電瓦1を下方から見た斜視図である図3に示すように、エアスライドバルブ23は、必要に応じ、流入開口12を少なくとも部分的に閉じることができる。エアスライドバルブ23は、前後方向Lに沿って移動可能であり、従って、流入開口12の大きさを増減させることができる。このような目的のために、エアスライドバルブ23は、その全体が移動可能であるように構成されている。また、エアスライドバルブ23は、流入開口12がエアスライドバルブ23によって、部分的ではなく全く閉じられないように、前後方向Lに沿って十分に後方に移動させることができる。このとき、エアスライドバルブ23は、全てがベースプレート3の上方にあり、前後方向Lの逆方向に、流入開口12の上には突出していない。
【0088】
エアスライドバルブ23の前後方向の動きは、ストームサクションプロテクタ15、即ちフック部材18の動きと一緒になされる。このため、エアスライドバルブ23は、第1に、ベース部24を備えている。ベース部24は、下面2、即ちベースプレート3に対し、実質的に平行に延びる。ベース部24は、ベースプレート3に沿って摺動可能であることで、前後方向の変位が可能となる。
【0089】
また、エアスライドバルブ23は、ベース部24から上面8に向かって実質的に垂直に上方に延びる肩部25を有する。後面7に対向するフック部材18の側部26は、図6に詳細を拡大して示す図から分かるように、前面4に対向する肩部25の一方の側面に当接して静止する。このようにして、フック部材18の変位により、フック部材18がエアスライドバルブ23の肩部25に押し付けられることで、エアスライドバルブ23の同時の変位が自動的に確実になされる。
【0090】
また、肩部25は、貫通開口を有しており、この貫通開口を通って、ストームサクションプロテクタ15のシャフト16が延びている。
【0091】
エアスライドバルブ23は、肩部25に接続されたルーフ部27を備える。このルーフ部27は、肩部25に対して実質的に直角であり、ベース部24に対して実質的に平行である。ルーフ部27に対して実質的に直角であり、下面2に向かって再び下方に延在する固定部28が、ルーフ部27に接続されている。また、この固定部28には、貫通開口29、即ち、前面4に対向し、ストームサクションプロテクタ15のシャフト16が貫通して案内される貫通開口29が設けられている。
【0092】
シャフト16は、反対側の端部において、太陽光発電瓦1の後面7に固定されている。図6に詳細を拡大して示す図から分かるように、フック部材18の前後方向の変位によって、ストームサクションプロテクタ15のシャフト16の位置は変化しない。その代わりに、フック部材18をシャフト15に沿って移動させることが可能であり、これによりエアスライドバルブ23の肩部25も移動し、それと同時に圧縮バネ17を圧縮する。これにより、太陽光発瓦1の設置が更に容易になる。
【0093】
従って、通常、設置された状態において最下部に位置する太陽光発瓦1が最初に屋根構造に固定され、釘、または本実施形態に示すようにネジ22によって、屋根の桟に固定されるようにして、屋根が覆われる。これに代えて、太陽光発電瓦1は、固定板21で上方から屋根の桟に単に引っ掛けるだけにして、更に屋根の桟にネジ22を締め付けなくてもよい。
【0094】
次に、更なる太陽光発電瓦1が、その前に取り付けたものの上に取り付けられる。このとき、上側の太陽光発電瓦1のストームサクションプロテクタ15のフック部材18を、下側の太陽光発電瓦1のストームサクションプロテクタ15の受容開口30に係合させることによって、2つの太陽光発電瓦1の間で効率的に結合を行うことができる。
【0095】
従って、受容開口30は、ストームサクションプロテクタ15の挿入端部19に対応している。受容開口30は、図1及び図7に示され、特に図6において見ることができる。受容開口30は、中空シャフトをシャフト16として用いることによって形成される。従って、後面7側に配置されたシャフト16の端部における、この中空シャフトの中央開口は、隣接するストームサクションプロテクタ15の挿入端部19のための受容開口30として機能する。
【0096】
これらの設置作業も、上述した電気的接続の形成と同様に、上側の太陽光発電瓦1の流出開口11を介し、簡便な方法で効率的に実施することができる。
【0097】
圧縮バネ17は、前面4の方に変位した位置に、フック部材19を保持し、従って同時に、被覆された屋根において上側に配置された太陽光発電瓦1の挿入端部19が、下側に配置された太陽光発電瓦1の受容開口30内に確実に保持される。
【0098】
上述のストームサクションプロテクタ15は、図8の例示的な実施形態と共に後述する代替的なストームサクションプロテクタと区別するために、シャフト16を有したストームサクションプロテクタ15と称することもできる。
【0099】
図7は、太陽光発電瓦1を更に拡大し分解して示す図である。個々のリベット31やネジ32を確認することができ、これらは、側壁5,6、前面4、後面7、及びベースプレート3を結合するために使用される。更に、実質的に上面8を形成するガラスパッケージ9は、その個々の部品で示されている。ガラスパッケージ9は、上下のガラスプレート33を有し、その間に上下のエチレン酢酸ビニル薄膜34が配置されている。実質的に窒化ケイ素から形成される2つの隣接する太陽電池35が、これら2つのエチレン酢酸ビニル薄膜34内に配置される。この太陽電池35は、本実施形態において、日射から電気エネルギを生成するために使用される太陽光発電モジュールを形成する。
【0100】
ガラスパッケージ9は、日射及び自身の動作によって強力に加熱される。これによって廃熱が生じ、この廃熱は、特に、設けられている太陽光発電瓦1によって使用される。例えば、流入開口12を介し、周辺空気が周囲環境Uから引き込まれ、太陽光発電瓦1のキャビティ10を通って流れ、今度は加熱空気として、流出開口11から流出する。この後、この加熱空気は、特に、ヒートポンプなどの消費機構において利用することができる。
【0101】
太陽光発電瓦1のキャビティ10を通って流れる加熱空気が、未使用のままで太陽光発電瓦1から漏れ出ないようにするために、構成部材である下面2即ちベースプレート3、側壁5,6、前面4、後面7、及び上面8即ちガラスパッケージ9は、互いに結合され、または気密状態に封止される。
【0102】
図8は、太陽光発電瓦1で覆われた屋根を抜粋した例を示す。4つの列が示され、それぞれの列は、一方の上に他方が配置された4つの太陽光発電瓦1を有し、下側の2つの太陽光発電瓦1のみに、参照符号1が付されている。太陽光発電瓦1の上面8を上から見た図において、太陽光発電瓦1のガラスパッケージ9を確認することができる。更に、列の最上部の太陽光発電瓦1では、流出開口11を確認することができる。太陽光発電瓦1のキャビティ10へのアクセスは、これらの流出開口11を介して確保される。
【0103】
太陽光発電瓦1のキャビティ10へのアクセスにより、屋根の基本的な設置作業の後で、更なる設置作業やメンテナンス作業が容易に可能となるという特別な効果が得られる。このように、屋根は、最初に屋根職人によって取り付けることもできる。提案した太陽光発電瓦1は、通常の瓦のように屋根の上に敷設することができる。この作業は、専門的な追加の訓練なしで、屋根職人によって実施することができる。その後、隣接する太陽光発電瓦1の電気的接続、または全般的なメンテナンス作業、特に電気部品に関連するメンテナンス作業は、専門的に訓練された人員によって実施することができる。従って、屋根の被覆を形成するために、太陽光発電瓦1は、この後、例えば、太陽光発電の技術者、または追加訓練済の屋根職人などの屋根職人によって、所定の位置にネジ留めして結合することが可能であり、このためには、それぞれの太陽光発電瓦1のカバー、即ち本実施形態ではガラスパッケージ9を移動できることが効果的である。
【0104】
太陽光発電瓦1のキャビティ10へのアクセスは、下面2が流入開口12の形態の下部開口を有し、上面8が流出開口11の形態の上部開口を有するという両方のことを主たる要因として、永久的に確保されている。上面8は、前後方向に変位可能なカバーを有することが特に効果的である。本実施形態の場合、このカバーは、ガラスパッケージ9自体によって形成される。
【0105】
列の最も上の太陽光発電瓦1から分かるように、太陽光発電瓦1の電気部品36が、太陽光発電瓦1のキャビティ10内に設けられている。既に被覆されている屋根では、隣接する太陽光発電瓦1の電気部品36を、適切な方法により極めて簡単に、隣接する太陽光発電瓦1の隣接する電気部品36に効率的に接続することができる。ガラスパッケージ9を簡単に上方に移動可能であり、その結果、実際には太陽光発電瓦1の後面7の近傍の上方に位置する流出開口11が、今度は前面4の近傍で、キャビティ10への別の上部開口をもたらし、従って、前面4の近傍でも太陽光発電瓦1のキャビティ10へのアクセスが可能となるので、キャビティ10へのアクセスが可変となる。次に、これを利用して、下側にある太陽光発電瓦1内への直接的なアクセス、具体的には、下側にあって隣接する太陽光発電瓦1の流出開口11を介し、直接的なアクセスを生成することができる。
【0106】
図9は、太陽光発電瓦1の別の例示的な実施形態を示すが、図9には部分的にしか示されていない。図9では、特に、ベースプレート3を確認することができる。図8の例を用いて前述したように、このような太陽光発電瓦1、即ちこのようなベースプレート3を備えた太陽光発電瓦1を、屋根を覆う際に用いることができる。
【0107】
先に示した例示的な実施形態とは異なり、本実施形態において示す太陽光発電瓦1の初期状態において、設置前に屋根の上に存在するベースプレート3は、太陽光発電瓦1の前面4の方に向けて延在すると共に流入開口12の領域に配置された2つの金属板タブ37を有する。図9に示すような太陽光発電瓦1の初期状態において、これらの金属板タブ37は、ベースプレート3の基本面Eと実質的に平行に延びている。また、2つの金属板タブ37は、互いに対しても平行に配置されている。更に、金属板タブ37は、一定間隔で配置された複数の孔38を有し、そのうちのいくつかのみが、図9において参照符号38で示されているが、具体的には、図示する例示的な実施形態において、各金属板タブ37が、12個の孔38を有する。
【0108】
更に、太陽光発電瓦1の後面7の領域には、更なる孔が設けられており、これらの孔は、特に、後述する構成部材を屋根の上に取り付けるために必要である。図9に加えて図10において、ストームサクションプロテクト部材用の2つの孔39’のほか、桟保持ブラケット用の2つの孔40’が設けられている。これらは、ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材39、及び桟保持部材40の形態で、図11及び図12に示して後述する構成部材のために設けられている。これらの構成部材の機能のほか、同じく図11及び図12に示されている等電位化部材41の機能は、特に、図12に関連して屋根の上に設置された状態で示されている太陽光発電瓦1についての記載の中で説明する。
【0109】
図示し、以下で更に説明する例示的な実施形態では、図示するように、シャフト16及びエアスライドバルブ23をも有したストームサクションプロテクタ15の形態で、図1図7に示して前述した太陽光発電瓦1に関して使用される構成部材も、必要に応じて適用することが可能である。
【0110】
図10は、図9による例示的な実施形態を示すが、ここでは設置された状態、即ち、太陽光発電瓦1が屋根に取り付けられた状態で示されている。ここでは、図9とは異なり、2つの金属板タブ37が、図10には示されない隣接するもう1つの太陽光発電瓦に適合するように構成され、太陽光発電瓦1の下部に配置される。図9の初期状態と比較して、それぞれの金属板タブ37は、まず、実質的に90°だけ下方に折り曲げられ、次に、実質的に90°だけ再び上方に折り曲げられる。従って、金属板タブ37はそれぞれ、設置状態において、ベースプレート3の基本面Eに実質的に垂直に、即ち屋根に垂直に延びる垂直部42と、この垂直部42に接続し、設置状態において、ベースプレート3の基本面Eに実質的に平行に、即ち屋根に平行に延びる水平部43とを有する。
【0111】
図11は、図9の太陽光発電瓦1の側面図(図11のa)、並びに図10の太陽光発電瓦1の側面図(図11のb)である。但し、ここでは、図9及び図10の図示に加え、構成部材であるベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材39、桟保持部材40、及び等電位化部材41も見ることができる。ベースプレートの面にあるストームサクションプロテクト部材39は、ベースプレート3から実質的に垂直に下方に延びていることが明らかである。同様に、桟保持部材40は、ベースプレート3から実質的に垂直に下方に延びている。等電位化部材41は、ベースプレート3と後面7との間の遷移領域にある角部に配置され、図示する太陽光発電瓦1の見た目に関して斜め下方且つ後方に延びている。
【0112】
ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材39、桟保持部材40、及び等電位化部材41は、ベースプレート3、即ち太陽光発電瓦1とは別体、または別個に設けられた着脱可能な構成部材であることが好ましい。従って、ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材39は、釘またはネジとすることが可能であり、これを用い、孔39’に通してベースプレート3を介し、図11に示していない屋根の桟に、太陽光発電瓦1を取り付けることができる。例えば、桟保持部材40は、金属製であるのが好ましいピン、またはネジとすることが可能であり、これらのピンまたはネジは、孔40’に通してベースプレート3に挿入することができ、図11には示していない屋根の桟に当接する上方からのストッパとして固定機能を提供することができる。また、等電位化部材41も、釘またはネジとして構成することができる。等電位化部材41は、ベースプレート3、または太陽光発電瓦1のベースプレート3と後面7との間の遷移部分を通るだけでなく、上方に隣接する太陽光発電瓦の金属板タブ37を通って延在することが可能である。このとき、この等電位化部材41は、2つの隣接する(上下の)太陽光発電瓦1を互いに結合するようにも部分的に機能し、従って、ストームサクションに対する保護にも部分的に寄与する。等電位化部材41は、2つの隣接する太陽光発電瓦1を設置して互いに結合する際に、金属板タブ37のボア38に通して導入され、このとき、上側に隣接する太陽光発電瓦1の金属板タブ37を、下側に隣接する太陽光発電瓦1のベースプレート3に結合することができる。
【0113】
ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材39、桟保持部材40、及び等電位化部材41の3つの構成部材は、図12においても、詳細に、且つ使用状態、即ち図示した太陽光発電瓦1の屋根の上における設置状態で見ることができる。図12のaでは、3つの太陽光発電瓦1が全体的に見えており、更なる太陽光発電瓦1が、左下端に部分的に見えていて、これらの太陽光発電瓦1は、屋根の4つの桟44によって示される屋根の上に取り付けられている。
【0114】
設置のために、屋根は、通常の方法により、屋根職人によって太陽光発電瓦1で覆われる。まず、屋根の桟44の上に、それぞれの太陽光発電瓦1を配置し、桟保持部材40によって、この屋根の桟44の上に上方から取り付けできることが特に有用である。原則として、標準的な通常の瓦と同様に、提案する太陽光発電瓦1で屋根を覆うことができる。特に、ここでの効果は、屋根職人が、いつでも、太陽光発電瓦1のキャビティ10に、上方からアクセスできることである。これは、上述したように、太陽光発電瓦1の上面8に流出開口11の形態の上部開口を設けることによって確保され、また、カバーまたはガラスパッケージが上方に移動可能に構成されることによって容易となる。このようなキャビティ10へのアクセスは、ベースプレート3及び一体的に取り付けられたベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材39を介し、例えば釘打ちまたはネジ止めによって、太陽光発電瓦1を屋根のそれぞれの桟44に結合することができるということによって、設置者が、太陽光発電瓦1を屋根の上に容易に固定できることを確実にするものである。
【0115】
最終的には、この後、隣接する太陽光発電瓦1を、その下側で隣接する太陽光発電瓦1の上に配置し、上側の太陽光発電瓦1の流入開口12(下部開口)が、下側の太陽光発電瓦1の流出開口11(上部開口)と少なくとも部分的に位置が合致するように、下側に配置された太陽光発電瓦1との位置合わせを順次行うことによって、隣接する太陽光発電瓦1を複数設けることができる。
【0116】
隣接する太陽光発瓦1の金属板タブ37は、金属板タブ37の垂直部42が、その下に配置された太陽光発電瓦1の後面7に当接し、金属板タブ37の水平部43が、その下に配置された太陽光発電瓦1のベースプレート3に当接するように、屈曲させて、適合させることができる。次に、下側に配置された太陽光発電瓦1のベースプレート3または後面7は、等電位化部材41を、金属板タブ37に貫通させるかネジ止めすることにより、これら2つの構成部材を用い、所定の位置において、金属板タブ37に結合することができる。この目的のために、金属板タブ37に、一定間隔で配置された様々な孔38を設け、これらの孔38を通して等電位化部材41を挿入可能とすることが特に有用である。屋根の桟44が、屋根の上に必ずしも等間隔で配置されているとは限らず、従って、それぞれの太陽光発電瓦1間の距離も、常にわずかに異なる可能性があるという事実に対し、このようにして効果的に対処することも可能である。金属板タブ37は、屋根職人が屋根を覆うまでは、上述したように初期状態から曲げないようにすることが可能であり、その結果、金属板タブ37の水平部43及び垂直部42を、隣接する太陽光発電瓦1と完全に適合させることができる。
【0117】
隣接する太陽光発電瓦1の配置、及び互いの結合を支援するため、図示する太陽光発電瓦1のそれぞれは、後面7に水平部45を有する。この水平部45には、上側に配置される次の太陽光発電瓦1を、そのベースプレート3を介して、常に載置することができる。更に、この水平部45は、上側に配置された太陽光発電瓦1の流入開口12(下部開口)が、下側に配置された太陽光発電瓦1の後面7の実装時の壁面を更に越えて延在することになる場合に、上側に隣接する太陽光発電瓦1の流入開口12、即ち下部開口を部分的に覆うか、または閉じるように効果的に機能する。
【0118】
既に一部の説明を行った等電位化部材41は、隣接する太陽光発電瓦1のハウジングまたはベース本体を、電気的な伝導性を有して互いに結合可能とすることを確保するためにも使用される。このようにして、等電位化を行うことが可能となり、例えば、一方の太陽光発電瓦1の上面と他方の太陽光発電瓦1の下面との間の電位差から生じる電流を選択的に放電し、例えば、接地回路に供給することができる。このような目的のために有効な点として、等電位化部材41だけでなく、ベースプレート3及び金属板タブ37の両方も、金属製または導電性を有するものとすることができる。
【0119】
流出開口11の形態の上部開口、及び流入開口12の形態の下部開口の配置により、図示する太陽光発電瓦1のような、提案する太陽エネルギ瓦の設置、及び特に個々の取り外しに関し、予期しない効果が達成される。即ち、例えば、等電位化部材41によって、金属板タブ37及びその下側に隣接する太陽光発電瓦1のベースプレート3に結合され、また、桟保持部材40によって屋根の桟44に取り付けられ、ベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材39によって屋根の桟44に固定された隣接する太陽光発電瓦1を用いて被覆された屋根の場合、単一の太陽光発電瓦1を、極めて単純に取り外すことができる。このような目的のために、例えば、取り外そうとする太陽光発電瓦1の、上面8、即ちガラスパッケージ9の形態であるカバーを、上方に変位させることができる。このように上方に移動した位置において、例えば固定機構によって、上面8を固定し、その位置に保持することもできる。このとき、流出開口11の形態である下側の太陽光発電瓦1の上部開口が、流入開口12の形態の取り外そうとする太陽光発電瓦1の下部開口と位置を合せて配置されているので、この取り外そうとする太陽光発電瓦1のキャビティ10へのアクセスのほか、下側の太陽光発電力瓦1のキャビティ10へのアクセスをも得ることができる。そこで、下側の隣接する太陽光発電瓦1において、取り外そうとする太陽光発電瓦1と下側の太陽光発電瓦1との間の結合は、これら2つの太陽光発電瓦1を結合する等電位化部材41を緩めることによって解除することができる。その後、このようなプロセスは、取り外そうとする太陽光発電瓦1の後面7の近傍の上端部分で繰り返すことができるが、このときは、取り外そうとする太陽光発電瓦1の上側に隣接する太陽光発電瓦1を介してアクセスを得ることによって、このプロセスを繰り返すことができる。これは、隣接する太陽光発電瓦1において、上面8を再び上方に移動させると、取り外そうとする太陽光発電瓦1のキャビティ10にアクセスを得ることができるからである。こうして、全ての必要な結合、具体的には、ねじ込み式の等電位化部材41の結合を解除することができるが、取り外そうとする太陽光発電瓦1の桟保持部材40、及びベースプレート取付式ストームサクションプロテクト部材39も外すことが可能となる。このとき、取り外そうとする太陽光発電瓦1は、もはや固定されておらず、隣接する太陽光発電瓦1で形成されている組立構造から単純に分離することができる。これとは逆に、組立構造への太陽光発電瓦1の再設置も可能である。
【0120】
可動の上面8の代わりに、またはこれに加えて、個々の太陽光発電瓦1の取り外し及び設置についての上述の効果は、揺動可能な前面4によっても達成することができる。前面4を折り曲げることによって、前述したような上面8の上方への変位と同様に、この場合でも、隣接する太陽光発電瓦1へのアクセスが、上側の太陽光発電瓦1の流入開口12の形態の開口と、これに位置を合わせた下側の太陽光発電瓦1の流出開口11の形態の開口を通して得られる。
【0121】
流入開口12及び流出開口11によって得られる上述の効果は、特に簡素化された組み付け及び取り外し作業、並びにメンテナンス作業に関し、上述したような上部開口及び下部開口を有する太陽エネルギ瓦全般に当てはめることが可能である。本発明は、上述したような太陽光発電瓦1の例示的な実施形態に限定されるものではない。特に、開口は、太陽エネルギ瓦の設置または敷設の簡素化のみを目的として設けることもできる。また、開口は、空気の流動が太陽エネルギ瓦を通過しない場合であっても有用である。このことは、純粋な太陽光発電瓦だけでなく、太陽熱エネルギ瓦または複合瓦(太陽熱及び太陽光発電を使用)の場合にも当てはまる。
図1
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図5
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図8
図9
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図11a)】
図11b)】
図12a)】
図12b)】