(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレンフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240917BHJP
B29C 43/24 20060101ALI20240917BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20240917BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20240917BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240917BHJP
【FI】
C08J5/18 CEW
B29C43/24
B29C43/34
C09J7/25
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2021569209
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2020083896
(87)【国際公開番号】W WO2020253332
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】201910541757.4
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517045598
【氏名又は名称】日東電工(上海松江)有限公司
【氏名又は名称原語表記】NITTO DENKO (SHANGHAI SONGJIANG) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】716 Lianyang Road, Songjiang Industrial Zone, Shanghai 201613, China
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】李 旭
(72)【発明者】
【氏名】田 松
(72)【発明者】
【氏名】渡▲辺▼ 義宣
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-036266(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101491945(CN,A)
【文献】特開2001-164202(JP,A)
【文献】国際公開第2007/052664(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0014423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B29C 39/00-39/24、39/38-39/44、
43/00-43/34、43/44-43/48、
43/52-43/58
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向(MD)の引張強度が100MPa以上であり、200℃で30分加熱した後の縦方向(MD)の熱収縮率が10%以下であ
り、
融解エンタルピーが25kJ/kg以下であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンフィルム。
【請求項2】
厚みが15~150μmであることを特徴とする請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレンフィルム。
【請求項3】
ポリテトラフルオロエチレン粉末を成形して成形品を得ることと、
前記成形品をフィルム状に切削加工を行い、切削フィルムを得ることと、
前記切削フィルムをポリテトラフルオロエチレンの融点よりも低い温度でカレンダー加工して、ポリテトラフルオロエチレンフィルムを得ることとを含
み、
前記切削フィルムの厚みが75~300μmであることを特徴とする請求項1
又は2に記載のポリテトラフルオロエチレンフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレンフィルム厚みが50μm超100μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記切削フィルムと前記ポリテトラフルオロエチレンフィルムとの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したポリテトラフルオロエチレンフィルムとの厚み比は5/1~1.5/1であることを特徴とする請求項
3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記カレンダー加工は一段階又は二段階以上により実施されることを特徴とする請求項
5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記切削フィルムは230~310℃でカレンダー加工されることを特徴とする請求項
3に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1
又は2に記載のポリテトラフルオロエチレンフィルムを基材として含むことを特徴とする粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリテトラフルオロエチレンフィルム、該ポリテトラフルオロエチレンフィルムの製造方法及び該ポリテトラフルオロエチレンフィルムを含む粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いて、溶融成形後に切断、又は押出成形後にカレンダー加工を行うことにより、様々なPTFEフィルムを得ることが知られている。これら公知のPTFEフィルムは各分野において広く使用され、例えば、粘着テープの基材として使用できる。しかしながら、従来の溶融成形後の切断、又は押出成形後のカレンダー加工により得られたPTFEフィルムでは、高強度と低収縮率を両立できないという問題があり、高強度で高収縮率又は低強度で低収縮率のフィルムが一般的であるため、PTFEフィルムの適用及び使用寿命がだいぶ制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上述の状況に鑑みて、高強度を有しながら低収縮率を有するPTFEフィルム、該PTFEフィルムの製造方法及び該PTFEフィルムを含む粘着テープを提供することを目的とする。本発明のPTFEフィルムは、高い耐摩耗性、高い強度を有するとともに、高温での収縮を抑制することができる。また、本発明のPTFEフィルムの製造方法は簡単で実施しやすく、製造効率が高い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記問題について鋭意検討した結果、PTFEフィルムの縦方向(MD)の引張強度及び200℃で30分加熱した後の縦方向(MD)の熱収縮率を特定の範囲とすることによって、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]縦方向(MD)の引張強度が100MPa以上であり、200℃で30分加熱した後の縦方向(MD)の熱収縮率が10%以下であるポリテトラフルオロエチレンフィルム。
[2]厚みが15~150μmである[1]に記載のポリテトラフルオロエチレンフィルム。
[3]融解エンタルピーが25kJ/kg以下である[1]又は[2]に記載のポリテトラフルオロエチレンフィルム。
[4]ポリテトラフルオロエチレン粉末を成形して成形品を得ることと、
前記成形品をフィルム状に切削加工を行い、切削フィルムを得ることと、
前記切削フィルムをポリテトラフルオロエチレンの融点よりも低い温度でカレンダー加工して、ポリテトラフルオロエチレンフィルムを得ることとを含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリテトラフルオロエチレンフィルムの製造方法。
[5]前記切削フィルムの厚みは30~300μmである[4]に記載の製造方法。
[6]前記切削フィルムと前記ポリテトラフルオロエチレンフィルムとの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したポリテトラフルオロエチレンフィルムとの厚み比は5/1~1.5/1である[4]又は[5]に記載の製造方法。
[7]前記カレンダー加工は一段階又は二段階以上により実施される[6]に記載の製造方法。
[8]前記切削フィルムは230~310℃でカレンダー加工される[4]又は[5]に記載の製造方法。
[9][1]~[3]のいずれか1項に記載のポリテトラフルオロエチレンフィルムを基材として含む粘着テープ。
[10][4]~[8]のいずれか1項に記載の製造方法で得られたポリテトラフルオロエチレンフィルムを基材として含む粘着テープ。
【発明の効果】
【0006】
本発明のPTFEフィルムは、フィルムの強度を高めることができるとともに、熱収縮を効果的に抑制することができ、さらに、優れた平坦性及び高い耐摩耗性等の利点を有するため、特に高温領域用に適する。また、本発明のPTFEフィルムの製造方法は簡単で実施しやすく、製造効率が高い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のPTFEフィルムの縦方向(MD)の引張強度は100MPa以上であり、好ましくは100~200MPaであり、さらに好ましくは130~200MPaである。PTFEフィルムの縦方向(MD)の引張強度を上記範囲とすることによって、強度及び耐衝撃性を高めることができる。PTFEフィルムの縦方向(MD)の引張強度が100MPa未満であると、強度が足りないため、PTFEフィルムの変形や破断が発生しやすく、PTFEフィルムの適用が制限されてしまう。上記「縦方向(MD)」とは、通常、PTFEフィルムの長手方向(縦方向)を意味する。
なお、「縦方向(MD)の引張強度」は本明細書の実施例に記載の方法により測定される。
【0008】
200℃での熱収縮率は、高温下でのPTFEフィルムの構造安定性を表す指標であり、数値が低いほど、構造が安定し、フィルムの適用の観点から好適である。本発明において、PTFEフィルムの200℃で30分加熱した後の縦方向(MD)の熱収縮率は10%以下であり、好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。熱収縮率を上記範囲とすることによって、高温下でも、PTFEフィルムの収縮を抑制することができ、構造安定性に優れるPTFEフィルムを得ることができる。PTFEフィルムの200℃で30分加熱した後の縦方向(MD)の熱収縮率が10%を超えると、熱収縮抑制効果が不十分になり、PTFEフィルムの寸法安定性を改善する効果が得られない。熱収縮率は本明細書の実施例に記載の方法により測定される。
【0009】
本発明において、PTFEフィルムの厚みは15~150μmであり、好ましくは50~100μmである。PTFEフィルムの厚みが上記範囲であることにより、高強度で高い耐摩耗性PTFEフィルムを提供することができる。
【0010】
本発明によれば、PTFEフィルムの融解エンタルピーは25kJ/kg以下であり、好ましくは22kJ/kg以下である。融解エンタルピーは、結晶性を表す指標であり、PTFEフィルムの結晶性が低くなると、フィルムの柔軟性が高くなることが研究で判明した。PTFEフィルムの融解エンタルピーが25kJ/kgを超えると、PTFEフィルムの柔軟性が悪くなる。本発明において、「融解エンタルピー」とは、270~345℃の温度領域で測定された融解エンタルピーを意味する。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、
ポリテトラフルオロエチレン粉末を成形して成形品を得ることと、
前記成形品をフィルム状に切削加工を行い、切削フィルムを得ることと、
前記切削フィルムをポリテトラフルオロエチレンの融点よりも低い温度でカレンダー加工して、ポリテトラフルオロエチレンフィルムを得ることと
を含むポリテトラフルオロエチレンフィルムの製造方法をさらに提供する。
【0012】
ポリテトラフルオロエチレン粉末の成形により、ポリテトラフルオロエチレン粉末間のガスが除去され、ポリテトラフルオロエチレン粉末が溶融して一体化されることで、成形体が得られる。本発明の効果を損なわない範囲で、得られた成形体を様々なサイズの成形体に加工することができ、例えば、様々なサイズの円柱とすることができる。
【0013】
ポリテトラフルオロエチレン粉末は特に限定されず、市販品を使用してもよい。各メーカーの製法によって、ポリテトラフルオロエチレン粉末は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)のうちの少なくも1種を少量含んでもよい。
【0014】
ポリテトラフルオロエチレン粉末の成形温度は特に限定されないが、360~390℃の温度でポリテトラフルオロエチレン粉末の成形を行うことが好ましい。焼結温度が高すぎると、PTFEの分解が加速され、有毒ガスが発生する。
【0015】
ポリテトラフルオロエチレン粉末の成形時間は特に限定されないが、通常は例えば10~20時間である。成形時間は、成形温度の設定に応じて適宜調整してもよい。
【0016】
成形方法は特に限定されないが、例えば、液圧プレスや焼結炉などで成形できる。
【0017】
フィルム状に切削加工する方法は特に限定されないが、例えば、成形された成形体を精密CNC旋盤により切削加工を行って様々な厚みのPTFEフィルムとすることができる。
【0018】
切削フィルムの厚みは30~500μmであり、好ましくは30~300μmであり、より好ましくは75~300μmである。切削フィルムの厚みが上記範囲であることにより、本発明の高強度を有しながら収縮が抑制されたPTFEフィルムを形成する上で有利になる。切削フィルムの厚みが30μm未満であると、加工性能が影響される。切削フィルムの厚みが500μmを超えると、PTFEフィルムの実用性能が制限される。
【0019】
本発明において、切削フィルムの、ポリテトラフルオロエチレンの融点よりも低い温度でのカレンダー加工において、温度は重要な条件の一つである。カレンダー加工温度は、ポリテトラフルオロエチレンの融点よりも低い温度であれば、特に限定されないが、切削フィルムを230~310℃でカレンダー加工することが好ましく、切削フィルムを250~300℃でカレンダー加工することがより好ましい。温度を上記範囲とすることによって、高強度を有しながら低熱収縮率を有するPTFEフィルムを得ることができる。
【0020】
切削フィルムのカレンダー加工速度は特に限定されないが、例えば、0.5~5m/分とすることができる。カレンダー加工速度は、カレンダー加工温度の設定に応じて適宜調整してもよい。
【0021】
本発明において、切削フィルムとポリテトラフルオロエチレンフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したポリテトラフルオロエチレンフィルムとの厚み比は5/1~1.5/1であり、より好ましくは5/1~2/1であり、更に好ましくは4/1~2/1である。厚み比を上記範囲とすることによって、高強度を有するPTFEフィルムを得ることができる。厚み比が高すぎると、PTFEフィルムに破裂欠点が発生しやすくなり、構造が不均一になるという問題が生じる。一方、厚み比が低すぎると、PTFEフィルムの強度が低下するという問題が生じる。
【0022】
本発明において、カレンダー加工は、所望の切削フィルムとポリテトラフルオロエチレンフィルムの厚み比となるように、一段階又は二段階以上で実施することができる。本発明の効果を損なわない範囲で、高厚み比の工程を複数の低厚み比の工程に分けることができる。例えば、切削フィルムに対して、厚み比が1.5/1のカレンダー加工処理を実施してから、厚み比が2/1のカレンダー加工処理をさらに実施することができ、最終的に得られた、切削フィルムとポリテトラフルオロエチレンフィルムとの厚み比は3/1となる。
【0023】
カレンダー加工に使用される装置は、本発明で求められるカレンダー加工温度及び厚み比を達成できれば特に限定されないが、例えば、様々な材質のカレンダーロールや高精密ミラーロール等を使用することができる。
【0024】
本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のPTFEフィルムの製造方法は、上記工程以外の工程、例えば、予備プレス成形などの工程を含んでもよい。
【0025】
本発明の別の側面によれば、本発明のPTFEフィルムを基材として含む粘着テープ、又は本発明のPTFEフィルムの製造方法で得られたPTFEフィルムを基材として含む粘着テープを提供する。
【0026】
本発明のPTFEフィルムは基材として使用することができ、様々な粘着テープの製造に使用することができる。例えば、本発明の粘着テープは好ましくは、基材としてのPTFEフィルムと、粘着剤層とを含む。
【0027】
本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の粘着テープは任意の適切な方法によって製造することができる。例えば、粘着剤層形成材料である組成物を基材上に塗布して、基材上に粘着剤層を形成する方法が挙げられる。このような塗布方法としては、ロールコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールブラッシング、スプレーコーティング、エアナイフコーティング、ダイコーターなどによる押出コーティングなどが挙げられる。
【0028】
また、基材としてのPTFEフィルムは、目的に応じて任意の適切な表面処理を施してもよい。例えば、基材の表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理やプライマー処理などの公知又は一般の適切な表面処理を施すことができる。
【0029】
粘着剤層の材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粘着剤を使用することができる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリシロキサン系粘着剤など、テープの粘着剤層に従来から使用されている粘着剤が挙げられる。テープの耐熱性の観点から、ポリシロキサン系粘着剤を主成分とする粘着剤層を使用することが好ましい。
【0030】
上記粘着剤層にポリシロキサン系粘着剤を使用する場合、任意の適切なポリシロキサン系粘着剤を使用することができる。このようなポリシロキサン系粘着剤としては、ポリシロキサン樹脂(ポリシロキサン系ポリマー、ポリシロキサン成分)のブレンド又は凝集により得られた粘着剤を使用することが好ましい。
【0031】
また、上記ポリシロキサン系粘着剤として、付加反応硬化型ポリシロキサン系粘着剤、過酸化物硬化型ポリシロキサン系粘着剤が挙げられる。これらのポリシロキサン系粘着剤の中でも、過酸化物(過酸化ベンゾイルなど)を使用せず、分解生成物が生じないという観点から、付加反応硬化型ポリシロキサン系粘着剤が好ましい。
【0032】
上記付加反応硬化型ポリシロキサン系粘着剤の硬化反応としては、例えば、ポリアルキルポリシロキサン系粘着剤を得ようとする場合、一般に白金触媒によりポリアルキルヒドロシロキサン組成物を硬化させる方法が挙げられる。
【0033】
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、例えば、5~100μmであることが好ましく、10~60μmであることがより好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例等における試験及び評価の方法は下記のとおりである。
【0035】
<PTFEフィルムの縦方向(MD)の引張強度>
GB/T 1040.3-2006に準拠して、引張試験機(AG-X plus、島津製作所製)により、200mm/分の引張速度で、各実施例及び比較例で得られたPTFEフィルムのMD方向(長手方向)の引張強度を測定した。測定結果を表1、2に示す。
【0036】
<粘着テープの縦方向(MD)の引張強度>
GB/T 30776-2014に準拠して、引張試験機(AG-X plus、島津製作所製)により、300mm/分の引張速度で、粘着テープのMD方向(長手方向)の引張強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0037】
<熱収縮率>
GB/T 12027-2004に準拠して、PTFEフィルム及び粘着テープを120mm×120mmのフィルムサンプル(試験片)に切断し、長さ100mm×100mmをマークして、200℃の加熱下で30分保持した後、室温で30分保持し、加熱前後の試験片のMD方向におけるマーク領域の寸法をノギスで測定し、熱収縮率を下記の式で求めた。
熱収縮率(%)=[[加熱前の長さ(mm)-加熱後の長さ(mm)]/加熱前の長さ(mm)]×100
【0038】
<融解エンタルピー>
融解エンタルピーはGB/T 19466.3-2004に準拠して、示差走査熱量測定(DSC測定)により求められる。具体的には、示差走査熱量計(DSC 8000、パーキンエルマー社製)を用いて融解エンタルピーを求めた。20℃/分で室温から380℃に昇温した後、20℃/分で室温まで降温し、昇温時のサーモグラムにより、GB/T 19466.3-2004に準拠してPTFEフィルムの融解エンタルピーを測定した。
【0039】
<PTFEフィルム及び粘着テープの熱収縮性評価>
PTFEフィルム及び粘着テープのMD方向の熱収縮率が10%を超えた場合、熱収縮性評価を「×」とする。
PTFEフィルム及び粘着テープのMD方向の熱収縮率が7%超10%以下である場合、熱収縮性評価を「△」とする。
PTFEフィルム及び粘着テープのMD方向の熱収縮率が5%超7%以下である場合、熱収縮性評価を「〇」とする。
PTFEフィルム及び粘着テープのMD方向の熱収縮率が5%以下である場合、熱収縮性評価を「◎」とする。
【0040】
<PTFEフィルムの耐破断性評価>
PTFEフィルムのMD方向の引張強度が100MPa未満である場合、耐破断性評価を「×」とする。
PTFEフィルムのMD方向の引張強度が100MPa以上130MPa以下である場合、耐破断性評価を「〇」とする。
PTFEフィルムのMD方向の引張強度が130MPa超200MPa以下である場合、耐破断性評価を「◎」とする。
【0041】
<粘着テープの耐破断性評価>
粘着テープのMD方向の引張強度が60N/cm未満である場合、耐破断性評価を「×」とする。
粘着テープのMD方向の引張強度が60N/cm以上80N/cm以下である場合、耐破断性評価を「〇」とする。
粘着テープのMD方向の引張強度が80N/cm超120N/cm以下である場合、耐破断性評価を「◎」とする。
【0042】
[実施例1]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが180μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを240℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は3/1であった。
【0043】
[実施例2]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが240μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを240℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は4/1であった。
【0044】
[実施例3]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが240μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを260℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は4/1であった。
【0045】
[実施例4]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが300μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを300℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は5/1であった。
【0046】
[比較例1]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが240μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを150℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は4/1であった。
【0047】
[比較例2]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが90μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを150℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は1.5/1であった。
【0048】
[実施例5]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが180μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを240℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は3/1であった。
上記得られたPTFEフィルムを基材として、シリカゲル(DOWSIL 7657 Adhesive、ダウ社製)を基材上に塗布し、厚みが30μmの粘着剤層を形成することで、粘着テープを得た。
【0049】
[実施例6]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが240μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを260℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は4/1であった。
上記得られたPTFEフィルムを基材として、シリカゲル(DOWSIL 7657 Adhesive、ダウ社製)を基材上に塗布し、厚みが30μmの粘着剤層を形成することで、粘着テープを得た。
【0050】
[実施例7]
PTFE粉末(62X、デュポン社製)を380℃で焼結炉内で15時間成形して、成形体を得た。そして、得られた成形体を精密CNC旋盤で切削加工を行い、厚みが300μmの切削フィルムを得た。次に、得られた切削フィルムを300℃でカレンダーにより1.5m/分のカレンダー加工速度でカレンダー加工し、厚みが60μmのPTFEフィルムを得た。切削フィルムとPTFEフィルムの厚み比、すなわち、カレンダー加工前の切削フィルムとカレンダー加工したPTFEフィルムとの厚み比は5/1であった。
上記得られたPTFEフィルムを基材として、シリカゲル(DOWSIL 7657 Adhesive、ダウ社製)を基材上に塗布し、厚みが30μmの粘着剤層を形成することで、粘着テープを得た。
【0051】
【0052】
【0053】
上記の結果から、PTFEフィルムの縦方向(MD)の引張強度及び200℃で30分加熱した後の縦方向(MD)の熱収縮率を特定の範囲に制御することによって、PTFEフィルムの強度を高めるとともに、熱収縮を効果的に抑制することができ、高強度及び低熱収縮率を両立するPTFEフィルムが得られることが分かった。したがって、本発明のPTFEフィルムは特に高温領域用に適する。
【0054】
一方、比較例1、2では、PTFEフィルムの縦方向(MD)の引張強度及び200℃で30分加熱した後の縦方向(MD)の熱収縮率のいずれか一方が本発明の範囲外であったため、得られたPTFEフィルムは強度又は熱収縮性が悪く、高強度及び低収縮率を両立するPTFEフィルムが得られなかった。