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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】触媒系
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20240917BHJP
   C08F 297/08 20060101ALI20240917BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20240917BHJP
   C07F 17/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F297/08
C07F7/00 A
C07F17/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021570534
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2020064194
(87)【国際公開番号】W WO2020239602
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】19177308.4
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19177307.6
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】レスコーニ,ルイジ マリア クリストフォロ
(72)【発明者】
【氏名】トルシュ,ヴィルフリート
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルックネン,ヴィレ
(72)【発明者】
【氏名】カリオ,カッレ
(72)【発明者】
【氏名】ラスティグ,ソイレ
(72)【発明者】
【氏名】アジェラル,ノウレディン
(72)【発明者】
【氏名】ムストネン,マルヤ
(72)【発明者】
【氏名】レニチェンコ,アレクサンドル
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特許第7297782(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/122134(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0073463(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60-4/70
C08F 4/00-4/58
C08F 4/72-4/82
C08F 6/00-246/00
C08F 291/00-297/08
C07F 7/00-7/30
C07F 9/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持された触媒系であって、
(i)メタロセン錯体:
ここで、前記メタロセン錯体が下記の式(II)のメタロセン錯体である、
【化2】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R' 2 Si-、エチレン又はメチレンであり、ここで、式-R' 2 Si-において、各R'は独立して、C 1 ~C 20 -ヒドロカルビル基であり;
各R 1 は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC 1 ~C 6 -アルキル基、C 7~20 アリールアルキル基、C 7~20 アルキルアリール基若しくはC 6~20 アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C 1~10 -ヒドロカルビル基であり、及び2つの隣接するR 1 基が、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよい;
各R 2 は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH 2 -R 8 基であり、ここで、R 8 は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC 1~6 -アルキル基、C 3~8 シクロアルキル基、C 6~10 アリール基である;
R 3 は、直鎖状若しくは分岐状のC 1 ~C 6 -アルキル基、C 7~20 アリールアルキル基、C 7~20 アルキルアリール基若しくはC 6 ~C 20 -アリール基であり;
R 4 はC(R 9 ) 3 基であり、ここで、R 9 は、直鎖状若しくは分岐状のC 1 ~C 6 アルキル基である、
R 5 は、水素原子又は脂肪族C 1 ~C 20 -ヒドロカルビル基であり;
R 6 は、水素原子又は脂肪族C 1 ~C 20 -ヒドロカルビル基であり;又は
R 5 及びR 6 は、一緒になって、n個のR 10 基によって置換されていてもよい、フェニル環の2つの炭素を有する5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは0~4である;
各R 10 は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC 1 ~C 20 -ヒドロカルビル基であり;
R 7 は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC 1 ~C 6 -アルキル基又は、1~3個のR 11 基によって置換されていてもよい、6~20個の炭素原子を有する、アリール若しくはヘテロアリール基であり;
各R 11 は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC 1 ~C 6 -アルキル基、C 7~20 アリールアルキル基、C 7~20 アルキルアリール基若しくはC 6~20 アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C 1~10 -ヒドロカルビル基である、
(ii)ホウ素含有助触媒とメチルアルミノキサン助触媒とを含む助触媒系、
(iii)無機多孔質支持体、
を含む、前記担持された触媒系。
【請求項2】
前記無機多孔質支持体がシリカ支持体である、請求項1に記載の担持された触媒系。
【請求項3】
前記メタロセン錯体(i)の前記式(II)において、
各Xは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状、環式若しくは非環式の、C1~20-アルキル若しくは-アルコキシ基、C6~20-アリール基、C7~20-アルキルアリール基又はC7~20-アリールアルキル基であり;これらの基は、周期表の14~16族の1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい
各R1 は、独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R2の両方が同じであり、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C4-アルキル基でり;
R3 は、直鎖状若しくは分岐状の、C1~C6-アルキル基又はC6~20-アリール基であり;
R4は、C(R9)3基であり、ここで、各R9は同じであってもよく又は異なっていてもよく、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C4-アルキル基であり;
R5及びR6は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子又は脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、n個のR10 によって置換されていてもよい、フェニル環の2つの炭素を有する5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは、0~4である;
R10は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であり;
R7は、H又は、1~3個のR11基によって置換されていてもよい6~10個の炭素原子を有するアリール基であり、ここで、各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状の、C1~C6-アルキル基若しくはC6~20-アリール基又はOY基であり、ここで、YはC1~4-ヒドロカルビル基である、
請求項1又は2に従う担持された触媒系。
【請求項4】
前記メタロセン錯体が下記の式(VIII)のものである、請求項1に記載された担持された触媒系
【化6】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R'2Si-から選択される二価架橋であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、又はC6-アリール基である;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基,である;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R5は水素原子であり;
R6は水素原子であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、それらが結合しているフェニル環の2つの炭素を有する5員環の飽和炭素環を形成してもよく;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【請求項5】
前記メタロセン錯体が下記の式(IX)のものである、請求項1に記載された担持された触媒系
【化7】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは-R'2Si-であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、又はC6-アリール基である;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
各R2はメチルであり;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり、
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R5は水素原子であり;
R6は水素原子であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、それらが結合しているフェニル環の2つの炭素を有する5員環の飽和炭素環を形成してもよく;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【請求項6】
前記メタロセン錯体が下記の式(X)のものである、請求項1に記載された担持された触媒系
【化8】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは-R'2Si-であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、又はC6-アリール基である;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基である;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり、
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【請求項7】
前記メタロセン錯体が下記の式(XI)のものである、請求項1に記載された担持された触媒系
【化9】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは-R'2Si-であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、又はC6-アリール基である;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【請求項8】
前記メタロセン錯体が下記の式(XII)のものである、請求項1に記載された担持された触媒系
【化10】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは-Me2Si-であり;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【請求項9】
前記メタロセン(i)が、下記から選択されたものである、請求項1に記載された担持された触媒
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert.-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4’-tert.-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert.-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3’,5’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、又は
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジtert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド。
【請求項10】
前記ホウ素含有助触媒が、下記の式(B)のもの
BY3 (B)
ここで、Yは独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~15個の炭素原子を有するアリール基、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル若しくはハロアリールであり、ここで、該アルキルラジカルのそれぞれが1~10個の炭素原子を有し、且つ該アリールラジカルのそれぞれが6~20個の炭素原子を有する、又はフッ素原子であり、
又は、下記式の、アニオンを含むボレートのもの
(Z)4B- (C)
ここで、Zは、置換されていてもよいフェニル誘導体、ここで、該置換基はハロ-C1~6-アルキル又はハロ基である、及び対イオンとして、プロトン化されたアミン又はアニリンの誘導体である、
ある、請求項1~のいずれか1項に記載の担持された触媒系。
【請求項11】
前記対イオンが、メチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム若しくはp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウム、又はトリフェニルカルベニウムイオン、である、請求項10に記載の担持された触媒系。
【請求項12】
前記ホウ素含有助触媒が、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又はN,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである、請求項1~のいずれか1項に記載の担持された触媒系。
【請求項13】
前記ホウ素含有助触媒中のホウ素対前記式(I)の錯体中のジルコニウムの供給量のモル比が、0.1:1~10:1モル/モルの範囲にあり、及び前記アルミノキサン助触媒中のアルミニウム対前記式(I)の錯体中のジルコニウムのモル比が1:1~2000:1モル/モルの範囲である、請求項1~12のいずれか1項に記載の担持された触媒系。
【請求項14】
前記支持体の平均粒子サイズが、10~100μmである、請求項1~13のいずれか1項に記載の担持された触媒系。
【請求項15】
前記支持体の平均孔サイズが10~100nmの範囲であり、孔容積が1~3mL/gの範囲である、請求項1~14のいずれか1項に記載の担持された触媒系。
【請求項16】
前記担持された触媒系が、支持体の1グラム当たり10~100マイクロモルのジルコニウムと、支持体の1グラム当たり5~10ミリモルのAlとを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の担持された触媒系。
【請求項17】
前記担持された触媒系が、メタロセン(i)と、MAO及びボレート助触媒と、支持体とを含み、且つボレート助触媒を有しない同じ担持された触媒系に比べて、プロピレンとエチレンとの重合において、下記の不等号式に従より高い生産性を示す、
Δ生産性[kgPP/gcat] > 10 x C2[重量%]
ここで、Δ生産性は、プロピレン-エチレン共重合におけるモノマー供給物中の所与のエチレン濃度での、メタロセン-MAO-ボレート触媒の生産性とメタロセン-MAO触媒の生産性との間の差であり、C2[重量%]は、ポリマー中のエチレンの量である、
請求項1~16のいずれか1項に記載の担持された触媒系。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の担持された触媒系の調製方法であって、
a)支持体をメチルアルミノキサン助触媒と、炭化水素溶媒中で反応させて、任意的にその後乾燥して、メチルアルミノキサン助触媒で処理された支持体を得ること;
b)請求項1~のいずれか1項に記載されたメタロセン錯体を、メチルアルミノキサン助触媒と、炭化水素溶媒中で反応させること、ここで、工程a)において添加されるメチルアルミノキサン助触媒の量は、メチルアルミノキサン助触媒の総量の75.0~97.0重量%であり、及び工程b)において添加されるメチルアルミノキサン助触媒の量は、メチルアルミノキサン助触媒の総量の3.0~25.0重量%である
c)ボレート助触媒を、工程b)において得られた前記溶液中に加えて、前記メタロセン錯体と、ボレート助触媒と、メチルアルミノキサン助触媒との溶液を得ること、ここで、前記ボレート助触媒が、0.1:1~10:1の範囲の、供給量のホウ素/ジルコニウムのモル比が達成される量で添加される;
d)工程c)において得られた前記溶液を、工程a)において得られた、メチルアルミノキサン助触媒で処理された支持体に添加すること;及び
e)そのようにして得られた担持された触媒系を乾燥すること
の工程を含む、前記方法。
【請求項19】
プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー及びヘテロ相プロピレンコポリマーの調製の為の、請求項1~17のいずれか1項に記載の担持された触媒系の使用方法。
【請求項20】
ヘテロ相ポリプロピレンコポリマーを調製する方法であって、
(I)請求項1~17のいずれか1項に記載の担持された触媒系の存在下でプロピレンをバルクで重合させて、ポリプロピレンホモポリマーマトリックスを形成すること;
(II)前記マトリックス及び前記担持された触媒系の存在下で且つ気相において、プロピレンとエチレンとを重合させて、ホモポリマーマトリックスとエチレンプロピレンラバーとを含むヘテロ相ポリプロピレンコポリマーを形成すること
を含む、前記方法。
【請求項21】
ヘテロ相ポリプロピレンコポリマーを調製する方法であって、
(I)請求項1~17のいずれか1項に記載の担持された触媒系の存在下でプロピレンをバルクで重合させて、ポリプロピレンホモポリマーを形成すること;
(II)前記ホモポリマー及び前記担持された触媒系の存在下で且つ気相において、プロピレンを重合させて、ポリプロピレンホモポリマーマトリックスを形成すること;
(III)前記マトリックス及び前記担持された触媒系の存在下で且つ気相において、プロピレンとエチレンとを重合させて、ホモポリマーマトリックスとエチレンプロピレンラバー(EPR)とを含むヘテロ相ポリプロピレンコポリマーを形成すること
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素含有助触媒及びアルミノキサン助触媒を組み合わせた特定のクラスのメタロセン錯体を含む、新規な、改善された、シリカ担持された触媒系に関する。本発明はまた、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、特にエチレンとのプロピレンコポリマー、並びにヘテロ相プロピレンコポリマーを、好ましくは気相重合工程を含む多工程プロセスで製造する為の、新規な、改善された触媒系の使用に関する。該触媒系はそのような重合において顕著な触媒活性を示すので、該触媒系はプロピレン-エチレンコポリマーの製造において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
メタロセン触媒は、長年にわたり、ポリオレフィンを製造する為に使用されてきている。数え切れないほどの学術文献及び特許公報が、オレフィン重合におけるこれら触媒の使用を記載している。メタロセンは今日工業的に使用されており、及びポリプロピレン並びにポリエチレンは特に、しばしば、異なる置換パターンを有するシクロペンタジエニル系触媒系を使用して製造される。
【0003】
メタロセン触媒は、特定のポリマー特性を達成する為に、プロピレン重合において使用される。
【0004】
しかしながら、特に多段重合構成において、工業的規模でメタロセン触媒を使用する際に幾つかの問題がある。
【0005】
従って、そのような方法の為のプロセス及び触媒挙動を改善する為の余地がある。
【0006】
幾つかの多段重合は、2以上の反応器のシーケンスを利用し、該シーケンスにおいて、最初の反応器は液体モノマースラリーで動作する反応器(典型的にはループ反応器)であり(バルク重合とも呼ばれる)、2番目以降の反応器は気相(gas phase)で動作される。一般的に重合触媒の、特にメタロセン系触媒の、ありうる制限の1つは、該触媒が液体モノマー反応器(バルク工程)で高い活性を有する場合に、生成される材料の所望されるバルク対気相比(所謂、バルク/GPスプリット)を達成する為に、特にこの比率が2未満でなければならない場合に、気相反応器における活性がしばしば低すぎることである。
【0007】
工業用ポリプロピレン製造に関連する為には、メタロセン触媒は、全ての重合条件下、特に重合温度が少なくとも60℃である条件において、並びに液体反応器(理想的には、バルクスラリー)及び気相反応器の両方を含む多段プロセスの全ての実際の複数の重合反応器において、良好な性能を有していなければならない。
【0008】
1つの問題は、プロピレンとコモノマー、例えばエチレン、の共重合中に、プロピレン単独重合と比較して、より速い触媒崩壊及びMFRの増加が生じることである。
【0009】
特に3段階重合におけるヘテロ相コポリマーの工業生産において、触媒は、なかんずく、ラバー相が生成される第3の反応器中において依然として許容可能な活性を有するのに十分長い寿命を有しなければならない。ここで、問題の1つは、該触媒がバルクにおいて且つ第1気相(GPR1)反応器において高い活性を有する場合、第2気相反応器(GPR2)における活性がしばしば低く、高いGPR2 対 生成された材料のバルク+GPR1比(所謂、ラバースプリット(rubber split))を許さない。このことは、バルク工程における強い(初期)活性がより早い触媒失活をもたらすことができ、次に第2気相反応器におけるより貧弱な触媒活性をもたらすことを意味する。
【0010】
従って、特にプロピレンと、4~8子のC原子のα-オレフィン及び/又はエチレンとの間の共重合の場合に、プロピレンコポリマーを形成する為に、高く且つ安定した活性を提供する触媒系を見つけることが望まれている。安定な触媒活性は、高い気相活性を確保する為に、反応器内の滞留時間にわたる触媒活性の減衰が制限される必要があることを意味する。様々な先行技術の参考文献が、これらの特徴の1以上を目的としている。
【0011】
C2対称メタロセンは、例えば、国際公開第2007/116034号パンフレットに開示されている。この文書は、なかんずく、メタロセンであるrac-Me2Si(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBuInd)2ZrCl2の合成及び特性評価、並びに溶液重合における、プロピレンの単独重合及びエチレン及び高級アルファオレフィンとのプロピレンの共重合の為の、MAOによる活性化後の重合触媒としてのその使用を報告する。
【0012】
国際公開第02/02576号パンフレット及び国際公開第2014/096171号パンフレットは、なかんずく、rac-Me2Si[2-Me-4-(3,5-Me2Ph)Ind]2ZrCl2、並びに高Mwおよび高融点ポリプロピレンの製造におけるその使用を記載する。
【0013】
国際公開第02/02576号パンフレットのメタロセン触媒は、MAO又はボレートのいずれかで活性化され、それはシリカ担体上に指示される。60℃又は70℃の重合温度で、それらは、Tmが156℃~159℃を有するが、非常に貧弱な触媒活性のiPPを与える。
【0014】
国際公開第2014/096171号パンフレットのメタロセン触媒は、エマルジョン/固化技術、それに続く、触媒のオフライン予備重合で製造され、それは、国際公開第02/02576号パンフレットのメタロセン触媒と比較して、より高いTm、且つ同時により高い活性を有するi-PPの生成を可能にする。
【0015】
国際公開第06/097497号パンフレットは、なかんずく、シリカ上に担持されたrac-Me2Si(2-Me-4-Ph-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル)2ZrCl2、並びにエチレンとのプロピレンの単独重合及び共重合におけるその使用を記載する。
【0016】
国際公開第2013/007650号パンフレットは、複数の環のうちの1つの5位にアルコキシ基を含む或る非対称触媒、例えばジメチルシリレン(6-tert-ブチル-5-メトキシ-2-メチル-4-フェニル-1H-インデン-1-イル)-(6-tert-ブチル-2-メチル-4-フェニル-1H-インデン-1-イル)ジルコニウムジクロリド、を記載する。その優れた性能にもかかわらず、この参考文献に基づく触媒は、ポリプロピレンホモポリマーの溶融温度、及び低MFRでの生産性の点において制限される。加えて、該触媒の全体的な生産性がなお改善される必要がある。
【0017】
国際公開第2015/158790号パンフレットは、なかんずく、錯体である[ジメチルシランジイル[6-tert-ブチル-4-(3,5-ジtert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-2-メチルインデン-1-イル]-[4-(3,5-ジtert-ブチルフェニル)-2-メチル-5,6,7-トリヒドロ-s-インダセン1-イル]ジルコニウムジクロリド]を開示し、且つ、溶液プロセスにおける、エチレン/1-オクテンコポリマーの形成におけるこの錯体の使用を記載する。
【0018】
国際公開第2018/122134号パンフレットはなかんずく、錯体であるrac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドを記載し、それは、MAOで活性化され、且つシリカ上で担持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
多くの研究がメタロセン触媒の分野においてなされてきているが、特に低メルトインデックス(low melt index)(MI)(すなわち、高分子量,Mw)のポリマーが製造される場合に、生産性又は活性が比較的低いことがわかっている故に、主に該触媒の生産性又は活性に関連する幾つかの問題が、特に多段重合プロセスにおいて、なお残っている。
【0020】
本発明者等は、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー及びヘテロ相プロピレンコポリマーの製造において、当技術分野で知られている系と比較して、改善された重合挙動、より高い触媒生産性、改善された性能を有する、ホウ素含有助触媒及びアルミノキサン助触媒と組み合わせて、特定のクラスのメタロセン錯体を構成するシリカ担持された触媒系を特定し、それは、高Mwのプロピレン-エチレンコポリマーの製造を可能にし、従って、プロピレンランダムコポリマー、特にプロピレン-エチレンランダムコポリマー、及びまた好適にはヘテロ相プロピレンコポリマー、の製造の為に理想的である。該特定の触媒系は、従来技術の触媒系よりもプロピレンポリマーの設計においてより高い柔軟性/自由度を与える。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一つの観点から見ると、本発明は、担持された触媒系であって、
(i)下記の式(I)のメタロセン錯体:
【0022】
【化1】
【0023】
ここで、
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、炭素、ケイ素又はゲルマニウムに基づく二価架橋であり、該二価架橋において、1つ又は2つの骨格原子が複数の該リガンドを結合する;
各Arは、3~20個の炭素原子を有する、アリール又はヘテロアリール基、例えば、フェニル環又は5或いは6員環のヘテロアリール基、であり;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC6~20-アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基であり、及び2つの隣接するR1基が、それらが結合している炭素を含む環の一部であってもよい、
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCHR8’-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8-シクロアルキル基、C6~10-アリール基若しくは、1~3個のR11基によって置換されていてもよい3~20個の炭素原子を有するヘテロアリール基であり、及びR8’はH又はC1~6アルキルである;
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC6~C20-アリール基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である;
R5は、水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;
R6は、水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、n個のR10によって置換されていてもよい5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは0~4である;
各R10は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つC1~C20-ヒドロカルビル基又は、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であってもよい;
R7は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基又は、3~20個の炭素原子を有する、1~3個のR11基によって置換されていてもよい、アリール若しくはヘテロアリール基、例えばフェニル環若しくは5或いは6員環のヘテロアリール環、であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC6~20-アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基である;
(ii)ホウ素含有助触媒とアルミノキサン助触媒とを含む助触媒系、
(iii)多孔質無機支持体
を含む、上記触媒系を提供する。
【0024】
一つの観点から見ると、本発明は、担持された触媒系であって、
(i)下記の式(II)のメタロセン錯体:
【0025】
【化2】
【0026】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R'2C-、-R'2C-CR'2-、-R'2Si-、-R'2Si-SiR'2-、-R'2Ge-から選択される二価架橋であり、ここで、各R'は独立して、水素原子又は、周期表の14~16族の1以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であり、或いは2つのR’基が一緒になって環を形成してもよい;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基であり、及び2つの隣接するR1基が、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよい;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基である;
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~C20-アリール基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R5は、水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;
R6は、水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、n個のR10によって置換されていてもよい5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは0~4である;
各R10は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つC1~C20-ヒドロカルビル基又は、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であってもよい;
R7は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基又は、1~3個のR11基によって置換されていてもよい、6~20個の炭素原子を有する、アリール若しくはヘテロアリール基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基である、
(i)ホウ素含有助触媒とアルミノキサン助触媒とを含む助触媒系;及び
(ii)シリカ支持体
を含む、上記触媒系を提供する。
【0027】
更なる観点において、本発明は、前に定義されている通り、特定の触媒系を使用して、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー又はヘテロ相プロピレンコポリマーを製造する為の方法に関する。
【0028】
本発明に従う触媒系は、少なくとも1つの気相重合工程を含む、直列に接続された少なくとも2つの反応器を含む多段プロセスに特に適している。
【0029】
他の観点から見ると、本発明は、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー又は、該マトリックス(M)中に分散している、マトリックスポリプロピレンホモポリマーとアモルファスプロピレンコポリマー(A)とを含むヘテロ相プロピレンコポリマーの形成の為の、本明細書において前に定義された通りの触媒系のオレフィン重合における使用を提供する。
【0030】
本発明の触媒系を使用することにより、例えば多段階重合プロセスにおいて、特に気相重合工程において、及び存在する場合には、第2の気相重合工程においてさえ、異なる置換パターンを有する同様の触媒の活性よりもはるかに高い非常に高い活性が得られることができる。第1気相において及び任意の第2気相において高い活性を持つことの利点は、該プロセスのより高い全体的な生産性だけでなく、ポリマー特性の達成可能な範囲にもある:例えば、気相分割が高いと、より広い分子量分布でのポリプロピレンの製造を可能にする。ヘテロ相プロピレンコポリマーの文脈において、気相分割の制御は、該ポリマーのキシレン可溶性含有量、すなわち、その物理的且つ機械的特性の操作を許す。
【0031】
加えて、本発明の触媒系、特に助触媒としてMAO及びボレートを有する本発明の触媒系、は、ホウ素含有助触媒無しの触媒系と比較して、特にエチレンを用いてのポリプロピレンコポリマーの製造において、より高い生産性を示す。この効果は、エチレンの添加量とともに驚くことに増加し、下記の不等式(I)によって表されることができる:
Δ生産性[kgPP/gcat] > 10 x C2[重量%]
ここで、Δ生産性は、厳密に比較可能な条件下で行われるプロピレン-エチレン共重合におけるモノマー供給物中の所与のエチレン濃度での、メタロセン-MAO-ボレート触媒の生産性とメタロセン-MAO触媒の生産性との間の差である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
【0033】
発明の詳細な説明全体を通して、下記の定義が使用される。
【0034】
語「C1~20-ヒドロカルビル基」は、C1~20-アルキル、C2~20-アルケニル、C2~20-アルキニル、C3~20-シクロアルキル、C3~20-シクロアルケニル、C6~20-アリール基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC7~20-アリールアルキル基、又はこれらの基の組み合わせ、例えばアルキルによって置換されたシクロアルキル、を包含する。直鎖及び分岐のヒドロカルビル基は、環単位を含むことが出来ない。脂肪族のヒドロカルビル基は、アリール環を含むことが出来ない。
【0035】
特に明記されない限り、好ましいC1~20-ヒドロカルビル基は、C1~20-アルキル、C4~20-シクロアルキル、C5~20-シクロアルキル-アルキル基、C7~20-アルキルアリール基、C7~20-アリールアルキル基又はC6~20-アリール基、特にC1~10-アルキル基、C6~10-アリール基若しくはC7~12-アリールアルキル基、例えばC1~8-アルキル基、である。最も特に好ましいヒドロカルビル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル、C5~6-シクロアルキル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルである。
【0036】
語「ハロ」は、該錯体の定義に関連する場合、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基、特にクロロ基又はフルオロ基、を包含する。
【0037】
「元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子」を含む任意の基は好ましくは、O、S又はNを意味する。N基は、-NH-又は-NR"-として存在し得、ここで、R"はC1~C10-アルキルである。例えば、1~4個のヘテロ原子が存在しうる。元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含む該基はまた、アルコキシ基、例えばC1~C10-アルコキシ基、でありうる。
【0038】
金属イオンの酸化状態は、問題の金属イオンの性質と各金属イオンの夫々の酸化状態の安定性とによって主に支配される。
【0039】
本発明の錯体において、該金属イオンMは、該金属イオンの原子価を満たし、且つその利用可能な配位部位を満たすように、リガンドXによって配位されることが理解されるであろう。これらのσ-リガンドの性質は、大きく変わることができる。
【0040】
語 ヘテロアリールは、周期表の14~16基に属する1以上のヘテロ原子が1以上の環に存在する芳香族の単環式基又は多環式基を定義する。そのような基は、3~20個の炭素原子と、O、S及びNから選択される1以上のヘテロ原子を含みうる。
【0041】
触媒活性は、本出願において、1時間当たりの生成されたポリマーの量/g触媒であると定義される。触媒メタロセン活性は、本明細書において、1時間当たりの生成されたポリマーの量/gメタロセンであると定義される。語 生産性はまた、触媒活性を示す為に使用されることがあるが、本明細書において、語 生産性は触媒の単位重量当たりの生成されたポリマーの量を示す。
【0042】
語「分子量」は、本明細書において、特に明記されていない限り、重量平均分子量Mwを云う為に使用される。
【0043】
本発明は、ホウ素含有助触媒及びアルミノキサン助触媒と組み合わせた特定のクラスのメタロセン錯体を含み、従ってプロピレンの重合の為に理想的である、新規の、改善された担持された触媒系に関する。
【0044】
本発明のメタロセン触媒錯体は、対称又は非対称のいずれかであることができる。非対称は、該メタロセンの遷移金属中心に配向された2つのリガンドが異なることを単に意味し、すなわち、各リガンドは化学的に異なる1セットの置換基を持つ。この文脈において、インデニルリガンドの定義はまた、インダセニルを包含する。
【0045】
本発明のメタロセン触媒錯体は、それらのアンチ配置にあるキラルな、ラセミの架橋されたビスインデニルメタロセンでありうる。本発明の該メタロセンは、C2対称又はC1対称のいずれかでありうる。本発明の該メタロセンがC1対称である場合、それらは、リガンドの周辺ではなく、金属中心のすぐ近くでC2対称性を維持する故に、疑似C2対称性を維持する。それら化学の性質により、該錯体の合成の間に、メソ型とラセミ体とのエナンチオマー対(C2対称錯体の場合)又はアンチエナンチオマーとシンエナンチオマーとの対(C1対称複合体の場合)の両方が形成される。本発明の目的の為に、下の図に示されている通り、ラセミ体のアンチ形は、2つのインデニルリガンドがシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニル面に関して反対方向に位置していることを意味し、一方、ラセミ体のシン形は、2つのインデニルリガンドがシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニル面に関して同じ方向に位置していることを意味する。
【0046】
【化3】
【0047】
式(I)、及び任意のサブ式は、シス配置とアンチ配置との両方をカバーすることが意図されている。好ましいメタロセン触媒錯体、アンチ配置にある。
【0048】
本発明のメタロセン触媒錯体は、ラセミ-アンチ異性体として用いられうる。それ故に、理想的には、該メタロセン触媒錯体の少なくとも95モル%、例えば少なくとも98モル%、特には少なくとも99モル%、がラセミ-アンチ異性体形である。
【0049】
本発明のメタロセン触媒錯体において、下記のものが好ましくは適用される。本発明に従うメタロセン触媒錯体は、下記の式(I)のものである。
【0050】
【化4】
【0051】
下記の式(II)のものが好ましい。
【0052】
【化5】
【0053】
本発明の任意の式において、下記の好ましい特徴が適用される。
【0054】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドである。すなわち、各Xは独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状、環式若しくは非環式の、C1~20-アルキル若しくは-アルコキシ基、C6~20-アリール基、C7~20-アルキルアリール基又はC7~20-アリールアルキル基であり;これらの基は、周期表の14~16族の1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0055】
語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード基、好ましくはクロロ基、を包含する。
【0056】
語「周期表の14~16族に属するヘテロ原子」は例えば、Si、N、O又はSを包含する。
【0057】
より好ましくは、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル若しくはC1~6-アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基である。
【0058】
なおより好ましくは、各Xは独立して、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~4-アルキル若しくはC1~4-アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基である。
【0059】
最も好ましくは、各Xは独立して、塩素原子、ベンジル基又はメチル基である。
【0060】
好ましくは、両方のX基は同じである。
【0061】
両方のX基について最も好ましい選択肢は、2つの塩化物、2つのメチル基、又は2つのベンジル基である。
【0062】
Lは、炭素、ケイ素原子又はゲルマニウムに基づく架橋である。2つのリガンド間に1又は2個の骨格を結合する原子、例えば構造、例えばリガンド-C-リガンド(1つの骨格原子)又はリガンド-Si-Si-リガンド(2つの骨格原子)、がある。
【0063】
架橋原子は他の基を有することができる。例えば、好適な架橋リガンドLは、-R'2C-、-R'2C-CR'2-、-R'2Si-、-R'2Si-SiR'2-、-R'2Ge-、から選択され、ここで、各R'は独立して、水素原子又は、周期表の14~16族の1以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であり、或いは2つのR’基が一緒になって環を形成してもよい。一つの実施態様において、R’は、1~10個の炭素原子を有するアルコキシで置換された1~10個の炭素原子を有するアルキルでありうる。
【0064】
語「周期表の14~16族に属するヘテロ原子」は例えば、Si、N、O又はSを包含する。
【0065】
好ましくは、Lは、-R'2Si-、エチレン又はメチレンである。
【0066】
式-R'2Si-において、各R'は独立して、好ましくは、C1~C20-ヒドロカルビル基である。それ故に、語 C1~20-ヒドロカルビル基は、C1~20-アルキル、C2~20-アルケニル、C2~20-アルキニル、C3~20-シクロアルキル、C3~20-シクロアルケニル、C6~20-アリール基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC7~20-アリールアルキル基、又はもちろん、これらの基の組み合わせ、例えばアルキルによって置換されたシクロアルキル、を包含する。特に明記されない限り、好ましいC1~20-ヒドロカルビル基は、C1~20-アルキル、C4~20-シクロアルキル、C5~20-シクロアルキル-アルキル基、C7~20-アルキルアリール基、C7~20-アリールアルキル基、又はC6~20-アリール基である。
【0067】
一つの実施態様において、式-R'2Si-は、シラシクロアルカンジイル、例えばシラシクロブタン、シラシクロペンタン又は9-シラフルオレン、を表す。
【0068】
好ましくは、両方のR'基が同じである。R'が、C1~C10-ヒドロカルビル若しくはC6~C10-アリール基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tertブチル、イソブチル、C3~8-シクロアルキル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルであり、より好ましくは、両方のR'が、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル若しくはC6-アリール基であり、最も好ましくは、両方のR'がメチルであり、又は一つがメチルであり、且つ他がシクロヘキシルである。最も好ましくは、該架橋が-Si(CH3)2-である。
【0069】
Arは、3~20個の炭素原子を有する、アリール又はヘテロアリール基、例えば、フェニル環又は5或いは6員環のヘテロアリール環、である。Arは好ましくは、フェニル基又は、5或いは6員環のヘテロアリール環、例えばフラニル環、チオフェニル環若しくはピリジル環である。しかしながら、Ar基がフェニル基である場合が好ましい。
【0070】
Ar基がフェニル基である場合、R1置換基は環の3,4,5位(ここで、1位はインデニル環に結合されている)にあることが好ましい。
【0071】
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基であり、及び2つの隣接するR1基が、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよい。
【0072】
好ましくは、各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子又は、メチル又はtert-ブチルのような、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0073】
例えば、Ar環、例えばフェニル環、が置換されていないこと(すなわち、全ての3個のR1が水素原子である)、4’-tert.-ブチルフェニルのようにパラ位のみで置換されていること、3’,5’-ジメチルフェニル若しくは3’,5’-ジtert.-ブチルフェニルのように3’及び5’位において置換されていることがありうる。
【0074】
その上、両方のフェニル環が同じ置換パターンを持っていること、又は2つのフェニル環が異なる置換パターンを持っていることがありうる。
【0075】
それ故に、1つ又は2つのR1基がHである場合が好ましい。2つのR1基がHである場合、残りのR1基は好ましくは、パラ位にある。1つのR1基がHである場合、残りのR1基は好ましくは、メタ位置にある。
【0076】
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCHR8’-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8-シクロアルキル基、C6~10-アリール基若しくは、1~3個のR11基によって置換されていてもよい3~20個の炭素原子を有するヘテロアリール基であり、及びR8’はH又はC1~6アルキルである。
【0077】
好ましくは、R8’は、H又は、特にHである。
【0078】
好ましくは、各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基である。
【0079】
好ましくは、R2の両方が同じであり、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C4-アルキル基、より好ましくは、R2の両方が同じであり、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C3-アルキル基である。最も好ましくは、両方のR2がメチルである。
【0080】
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~C20-アリール基である。
【0081】
R3は好ましくは、直鎖状若しくは分岐状の、C1~C6-アルキル基又はC6~20-アリール基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec.-ブチル及びtert.-ブチル、好ましくは直鎖状のC1~C4-アルキル基、より好ましくはC1~C2-アルキル基、最も好ましくはメチル、である。
【0082】
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である。
【0083】
好ましくは、各R9は同じであってもよく又は異なっていてもよく、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C4-アルキル基であり、より好ましくは、R9は同じであり且つC1~C2-アルキル基である。最も好ましくは、R4はtert.-ブチル基であり、且つ従って全てのR9基がメチルである。
【0084】
本発明の一つの実施態様において、R5及びR6は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり、例えば、アルキル若しくはアルコキシ基、例えばC1~C10-アルキル若しくはアルコキシ基、である。
【0085】
好ましくは、R5及びR6は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基又はC1~C6-アルコキシ基である。
【0086】
より好ましくは、R5及びR6は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C4-アルキル基又はC1~C4-アルコキシ基である。
【0087】
他の実施態様において、R5及びR6は、一緒になって、n個のR10によって置換されていてもよい5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは、0~4、好ましくは0又は2、より好ましくは0、である;ここで、各R10は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つC1~C20-ヒドロカルビル基又は、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であり;好ましくは、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;好ましくは、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0088】
R7は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基又は、3~20個の炭素原子を有する、1~3個のR11基によって置換されていてもよい、アリール若しくはヘテロアリール基である。
【0089】
好ましくは、R7は、H又は、1~3個のR11基によって置換されていてもよい6~10個の炭素原子を有するアリール基であり、より好ましくは、R7は、H又は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基である。
【0090】
R7が、6~10個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基、例えばフェニル、である場合に、各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC6~20-アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基である。R7がHでないことが最も好ましい。
【0091】
R7が、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基である場合が最も好ましく、より好ましくは、R7が1~2個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基である。
【0092】
R7がHではない場合、特にR7が1~3個のR11基によって置換されていてもよい、3~20個の炭素原子を有する、アリール又はヘテロアリール基である場合、メタロセン錯体は新規であり、且つそれ自体が本発明の更なる観点を形成する。
【0093】
好ましくは、各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状の、C1~C6-アルキル基若しくはC6~20-アリール基又はOY基であり、ここで、YはC1~4-ヒドロカルビル基であり、より好ましくは、各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C4-アルキル基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~4-ヒドロカルビル基である。さらにより好ましくは、各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、メチル、エチル、イソプロピル、tert.-ブチル又はメトキシ、特に水素原子、メチル又はtert.-ブチル、である。さらにより好ましくは、各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つメチル、エチル、イソプロピル、tert.-ブチル又はメトキシ、特にメチル又はtert.-ブチル、である。
【0094】
アリール基、例えばフェニル基、が置換される場合、それは好ましくは、1又は2個のR11基、例えばHでないR11基、によって置換されている。
【0095】
該リガンドにおける4位の基と該リガンドにおけるR7基とが同じである場合が最も好ましい。それ故に、R7が3,5-ジメチルフェニル基である場合、該リガンドの4位上の基は3,5-ジメチルフェニル基であるべきである。これは、該環がインダセニル環である場合に特に当てはまる。
【0096】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(III)のものでありうる。
【0097】
【化6】
【0098】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、炭素、ケイ素又はゲルマニウムに基づく二価架橋であり、該二価架橋において、1つ又は2つの骨格原子が複数の該リガンドを結合する;
各Arは、3~20個の炭素原子を有する、アリール又はヘテロアリール基、例えばフェニル環又は5或いは6員環のヘテロアリール環、であり;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC6~20-アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基であり、及び2つの隣接するR1基が、それらが結合している炭素を含む環の一部であってもよい、
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCHR8’-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8-シクロアルキル基、C6~10-アリール基若しくは、1~3個のR11基によって置換されていてもよい3~20個の炭素原子を有するヘテロアリール基であり、及びR8’はH又はC1~6アルキルである;
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC6~C20-アリール基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である;
R5は、水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;
R6は、水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、n個のR10によって置換されていてもよい5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは0~4である;
各R10は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つC1~C20-ヒドロカルビル基又は、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であってもよい;
R7は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基又は、3~20個の炭素原子を有する、1~3個のR11基によって置換されていてもよい、アリール若しくはヘテロアリール基、例えばフェニル環若しくは5或いは6員環のヘテロアリール環、であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC6~20-アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基である。
【0099】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(IV)のものでありうる。
【0100】
【化7】
【0101】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R'2C-、-R'2C-CR'2-、-R'2Si-、-R'2Si-SiR'2-、-R'2Ge-から選択される二価架橋であり、ここで、各R'は独立して、水素原子又は、周期表の14~16族の1以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であり、或いは2つのR’基が一緒になって環を形成してもよい;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基であり、及び2つの隣接するR1基が、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよい;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基である;
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~C20-アリール基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R5は、水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;
R6は、水素原子又は、元素の周期表の14~16族からの1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、n個のR10によって置換されていてもよい5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは0~4である;
各R10は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つC1~C20-ヒドロカルビル基又は、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であってもよい;
R7は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基又は、6~20個の炭素原子を有する、1~3個のR11基によって置換されていてもよい、アリール又はヘテロアリール基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基である。
【0102】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(V)のものでありうる。
【0103】
【化8】
【0104】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R'2C-又は-R'2Si-から選択される二価架橋であり、ここで、各R'は独立して、水素原子又は、周期表の14~16族の1以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であり、或いは2つのR’基が一緒になって環を形成してもよい;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基であり、及び2つの隣接するR1基が、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよい;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基である;
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~C20-アリール基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R5は水素原子であり;
R6は水素原子であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、n個のR10によって置換されていてもよい5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは0~4である;
各R10は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つC1~C20-ヒドロカルビル基又は、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であってもよい;
R7は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基又は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいアリールであり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基である。
【0105】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(VI)のものでありうる。
【0106】
【化9】
【0107】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R'2C-又は-R'2Si-から選択される二価架橋であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、C1~10-アルキル-O-C1~10アルキル又はC6-アリール基である;
各Arは、フェニル環、又は5或いは6員環のヘテロアリール環であり;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCHR8’-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基であり、及びR8’はH又はC1~6アルキルである;
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC6~C20-アリール基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である;
R5は水素原子であり;
R6は水素原子であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、5員環の飽和炭素環を形成してもよく;
R7は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基又は、3~20個の炭素原子を有する、1~3個のR11基によって置換されていてもよい、アリール若しくはヘテロアリール基、例えば1~3個のR11基によって置換されていてもよい、フェニル環若しくは5或いは6員環のヘテロアリール環、であり;及び
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0108】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(VII)のものでありうる。
【0109】
【化10】
【0110】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R'2C-又は-R'2Si-から選択される二価架橋であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、C1~10-アルキル-O-C1~10アルキル又はC6-アリール基である;
各Arは、フェニル環、又は5或いは6員環のヘテロアリール環であり;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCHR8’-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基であり、及びR8’はH又はC1~6アルキルである;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である;
R5及びR6は、一緒になって、5員環の飽和炭素環を形成してもよく;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよい、フェニル環又は5或いは6員環のヘテロアリール環であり;及び
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0111】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(VIII)のものでありうる。
【0112】
【化11】
【0113】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R'2C-又は-R'2Si-から選択される二価架橋であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、C1~10-アルキル-O-C1~10アルキル又はC6-アリール基である;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基である;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R5は水素原子であり;
R6は水素原子であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、5員環の飽和炭素環を形成してもよく;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0114】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(IX)のものでありうる。
【0115】
【化12】
【0116】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは-R'2Si-であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、C1~10-アルキル-O-C1~10アルキル又はC6-アリール基である;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
各R2はメチルであり;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり、
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R5は水素原子であり;
R6は水素原子であり;又は
R5及びR6は、一緒になって、5員環の飽和炭素環を形成してもよく;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0117】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(X)のものでありうる。
【0118】
【化13】
【0119】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは-R'2Si-であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、C1~10-アルキル-O-C1~10アルキル又はC6-アリール基である;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基である;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0120】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(XI)のものでありうる。
【0121】
【化14】
【0122】
各Xは独立して、シグマドナーリガンド、例えばハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~4-アルキル若しくはC1~4-アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基、であり;
Lは-R'2Si-であり;ここで、各R'は独立して、C1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル、C1~10-アルキル-O-C1~10アルキル又はC6-アリール基である;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり、
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0123】
より好ましい実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(XII)のものでありうる。
【0124】
【化15】
【0125】
各Xは独立して、シグマドナーリガンド、例えばハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~4-アルキル若しくはC1~4-アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基であり;
Lは-Me2Si-であり;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり、
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R7は、1~3個のR11基によって置換されていてもよいフェニル基であり;
各R11は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0126】
一つの実施態様において、該メタロセン錯体は下記の式(XIII)のものでありうる。
【0127】
【化16】
【0128】
各Xは独立して、シグマドナーリガンドであり;
Lは、-R'2C-、-R'2C-CR'2-、-R'2Si-、-R'2Si-SiR'2-、-R'2Ge-から選択される二価架橋であり、ここで、各R'は独立して、水素原子又は、周期表の14~16族の1以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であり、或いは2つのR’基が一緒になって環を形成してもよい;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基又はOY基であり、ここで、Yは、C1~10-ヒドロカルビル基であり、及び2つの隣接するR1基が、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよい;
各R2は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R8基であり、ここで、R8は、H又は、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基である;
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~C20-アリール基であり;
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R5及びR6は、一緒になって、n個のR10によって置換されていてもよい5員環の飽和炭素環を形成してもよく、ここで、nは0~4である;
各R10は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つC1~C20-ヒドロカルビル基又は、元素の周期表の14~16族に属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であってもよい;及び
R7はHであり;
特に、ここで、
各Xは独立して、シグマドナーリガンド、例えばハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~4-アルキル若しくはC1~4-アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基、であり;
Lは-Me2Si-であり;
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基であり;
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり、
R4はC(R9)3基であり、ここで、R9は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基である;
R7はHである。
【0129】
本発明の特定の錯体は、下記を包含する:
rac-ジメチルシランジイルビス[2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3’,5’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジtert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド。
【0130】
疑いを避けるために、上記で提供された置換基の任意のより狭い定義は、任意の他の置換基の任意の他の広い又は狭くされた定義と組み合わせられることができる。
【0131】
上記記載の全体にわたって、置換基のより狭い定義が示されている場合には、より狭い定義が、本出願における他の置換基の全てのより広い及びより狭い定義と関連して開示されているとみなされる。
【0132】
錯体を形成する為に必要とされるリガンド、従って本発明の触媒は、任意のプロセスによって合成することができ、当業者である有機化学者は、必要なリガンド材料の製造の為の様々な合成プロトコルを考案することができるであろう。例として、国際公開第2007/116034号パンフレットが、必要な化学的性質を開示している。合成プロトコルはまた、一般的に、国際公開第2002/02576号パンフレット、国際公開第2011/135004号パンフレット、国際公開第2012/084961号パンフレット、国際公開第2012/001052号パンフレット、国際公開第2011/076780号パンフレット、国際公開第2015/158790号パンフレット、及び国際公開第2018/122134号パンフレットに開示されている。実施例の部がまた、当業者に十分な指示を提供する。
【0133】
助触媒
【0134】
活性な触媒種を形成する為に、当技術分野において周知である助触媒を使用する必要が通常ある。
【0135】
本発明に従うと、ホウ素含有助触媒とアルミノキサン助触媒とを含む助触媒系が、上記で定義されたメタロセン触媒錯体と組み合わせて使用される。
【0136】
該アルミノキサン助触媒は、下記の式(A)のものでありうる:
【0137】
【化17】
【0138】
ここで、nは6~20であり、及びRは下記の意味を有する。
【0139】
アルミノキサンは、有機アルミニウム化合物の部分的加水分解、例えば式AlR3、AlR2Y及びAl2R3Y3の部分的加水分解、で形成され、ここで、Rは例えば、C1~C10-アルキル、好ましくはC1~C5-アルキル若しくはC3~C10-シクロアルキル、C7~C12-アリールアルキル若しくはアルキルアリール、及び/又はフェニル若しくはナフチルであり得、及びここで、Yは、水素原子、ハロゲン、好ましくは塩素原子若しくは臭素原子、又はC1~C10-アルコキシ、好ましくはメトキシ若しくはエトキシ、でありうる。結果として生じる酸素含有アルミノキサンは一般的に、純粋な化合物でなく、しかし、式(II)のオリゴマーの混合物である。
【0140】
好ましいアルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)である。助触媒として、本発明に従って使用される該アルミノキサンは、それらの製造の様式の為に、純粋な化合物ではない故に、本明細書の下記においてアルミノキサン溶液のモル濃度(molarity)は、それらのアルミニウム含有量に基づく。
【0141】
本発明に従うと、また、ホウ素含有助触媒が、アルミノキサン助触媒と組み合わせて使用される。
【0142】
関心のあるホウ素含有助触媒は、下記の式(B)のものを包含する。
BY3 (B)
ここで、Yは、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、1~約20個の炭素原子を有するアルキル基、6~約15個の炭素原子を有するアリール基、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル若しくはハロアリールであり、ここで、該アルキルラジカルのそれぞれが1~10個の炭素原子を有し、且つ該アリールラジカルのそれぞれが6~20個の炭素原子を有する、又はフッ素原子を有する。Yについての好ましい例は、フッ素原子、トリフルオロメチル、芳香族フッ素化基(aromatic fluorinated group)、例えば、p-フルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5-トリフルオロフェニル、及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。BY3についての好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタ-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン及び/又はトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
【0143】
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが特に好ましい。
【0144】
しかしながら、ボレートが使用されることが好ましい。
【0145】
これらの化合物は一般的に、下記の式(C)のアニオンを含む:
(Z)4B- (C)
ここで、Zは、置換されていてもよいフェニル誘導体であり、ここで、該置換基はハロo-C1~6-アルキル又はハロ基である。好ましい選択肢は、フルオロ又はトリフルオロメチルである。最も好ましくは、該フェニル基が、フッ素化されている。
【0146】
そのようなイオン性助触媒は好ましくは、弱く配位するアニオン(weakly-coordinating anion)、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はテトラキス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、である。
【0147】
好適なカチオン性対イオンは、トリフェニルカルベニウムを包含し、且つプロトン化されたアミン又はアニリンの誘導体、例えば、メチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム、又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウムである。
【0148】
本発明に従って使用されうる好ましいイオン性化化合物は、下記を包含する:
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0149】
好ましくは、下記が与えられる:
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0150】
或るホウ素含有助触媒が特に好ましいことが驚くべきことに見出された。それ故に、本発明において使用する好ましいボレートは、トリチル、すなわちトリフェニルカルベニウムイオン、を含む。従って、Ph3CB(PhF5)4及びそれらの類似体の使用が特に好まれる。
【0151】
助触媒の適切な量は、当業者に周知であろう。
【0152】
該メタロセンのホウ素供給量対ジルコニウムイオン供給量のモル比は、0.1:1~10:1モル/モル、好ましくは0.3:1~7:1、特には0.3:1~5:1モル/モル、の範囲にある。
【0153】
さらにより好ましくは、メタロセンのホウ素供給量対ジルコニウムイオン供給量のモル比B/Zrは、0.3:1~3:1である。
【0154】
該触媒は、シリカ支持体の1グラム当たり10~100マイクロモルのジルコニウム、及びシリカ支持体の1グラム当たり5~10ミリモルのAlを含むことができる。
【0155】
該アルミノキサン中のAl対該メタロセンのジルコニウムイオンのモル比は、1:1~2000:1モル/モル、好ましくは10:1~1000:1、より好ましくは50:1~600:1モル/モル、の範囲にありうる。
【0156】
触媒系
【0157】
上記された該メタロセン錯体は、触媒として、上記された適切な助触媒の組み合わせと一緒に使用される。
【0158】
本発明の触媒系は、担持された形態で使用される。使用される粒子状支持体材料は、シリカ、多孔質無機支持体、例えば、シリカ、アルミナ、又は混合された酸化物(mixed oxide)、例えばシリカ-アルミナ、であり、特にシリカ、である。
【0159】
シリカ支持体の使用が好ましい。当業者は、メタロセン触媒を担持する為に必要な手順を知っている。
【0160】
特に好ましくは、国際公開第94/14856号パンフレット、国際公開第95/12622号パンフレット、国際公開第2006/097497号パンフレット及びヨーロッパ特許出願第EP1828266号明細書に記載されている方法に類似した方法を使用して、該錯体が該支持体の孔内に付与されうるように該支持体は多孔質材料である。
【0161】
該支持体、例えばシリカ支持体、の平均粒子サイズが、10~100μmでありうる。しかしながら、該支持体が15~80μm、好ましくは18~50μm、の平均粒子サイズを有する場合に、特別な利点が得られることができることが判明した。
【0162】
該支持体、例えばシリカ支持体、の平均孔サイズは10~100nmの範囲であってもよく、及び、孔容積が1~3mL/gの範囲であってもよい。
【0163】
適切な支持材料の例は、例えば、PQコーポレーション(PQ Corporation)によって製造及び販売されているES757、グレース(Grace)によって製造及び販売されているSylopol 948、又はAGC Si-Tech Coによって製造されたSUNSPERA DM-L-303 silicaである。
【0164】
最適なシラノール基含有量に到達する為に、触媒調製において使用する前に、支持体は任意的に焼成されることができる。これらの支持体の使用は、当技術分野において日常的である。
【0165】
触媒系の調製
【0166】
本発明に従う触媒系を製造する為の幾つかの方法が存在する。
【0167】
一つの実施態様において、本発明に従う触媒系の調製方法であって、
a)支持体、例えばシリカ支持体、をアルミノキサン助触媒と、適切な炭化水素溶媒、例えばトルエン、中で反応させること、引き続き任意的に乾燥されてもよく、そしてアルミノキサン助触媒で処理(本明細書内以下において「処置」は「処理」と読み替えるものとする)された支持体をえること、
b)式(I)のメタロセン錯体をアルミノキサン助触媒と、適切な炭化水素溶媒、例えばトルエン、中で反応させること、
c)ボレート助触媒を工程b)において得られた溶液に添加して、式(I)のメタロセン錯体、ボレート助触媒及びアルミノキサン助触媒の溶液を得ること、ここで、該ボレート助触媒が、0.1:1~10:1の範囲の、供給量のホウ素/ジルコニウムのモル比が達成される量で添加される;
d)工程c)において得られた該溶液を、工程a)において得られた、アルミノキサン助触媒で処置された支持体に添加すること、ここで、工程a)において添加されたアルミノキサン助触媒の量は、アルミノキサン助触媒の総量の75.0~97.0重量%であり、及び工程b)において添加されたアルミノキサン助触媒の量は、アルミノキサン助触媒の総量の3.0~25.0重量%である;及び
e)そのようにして得られた担持された触媒系を乾燥すること
の工程を含む。
【0168】
重合
【0169】
本発明は、更なる観点において、前に定義されている通り、特定の触媒系を使用して、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー又はヘテロ相プロピレンコポリマーを製造する為の方法に関する。
【0170】
プロピレンホモポリマー及びプロピレンランダムコポリマーを製造する為の方法は、例えばバルクでの、例えばループリアクター(loop reactor)における、一段階の重合プロセス、でありうる。
【0171】
プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー又はヘテロ相プロピレンコポリマーはさらに、多段階重合プロセスにおいて製造されることができる。
【0172】
好ましくは、特にヘテロ相プロピレンコポリマーの場合、該方法は、気相重合工程を含む多段階重合プロセスである。
【0173】
本発明の方法における重合は好ましくは、少なくとも1つの液体スラリー反応器において、又は少なくとも1つの反応器が気相反応器であるところの少なくとも2以上、例えば2、3若しくは4、の重合反応器において、実施されうる。該方法は、予備重合工程を含みうる。この予備重合工程は、ポリマー合成において日常的に使用される慣用的な工程である。
【0174】
一つの実施態様において、プロピレンホモポリマー又はプロピレンランダムコポリマーを製造する為の重合方法は、予備重合反応器と組み合わされた1つの液体スラリー反応器を使用する。
【0175】
他の実施態様において、特にヘテロ相プロピレンコポリマーだけでなく、プロピレンランダムコポリマーを製造する為に、本発明の方法は好ましくは、2又は3個の主反応器を好ましくは使用し、但し、少なくとも1個の反応器は気相反応器である。理想的には、本発明の多段プロセスは、液体スラリーにおいて作動する第1の反応器と、気相反応器である第2の反応器及び任意の第3の反応器を使用する。この方法はまた、予備重合工程を利用しうる。液体スラリー反応は、ループ反応器において生じうる。
【0176】
本発明の触媒系を使用する方法は、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー又はヘテロ相プロピレンコポリマーの調製の為に理想的に適しており、それらは以下においてより詳細に定義されるであろう。ヘテロ相プロピレンコポリマー、ホモポリマー又はランダムコポリマーのマトリックス(M)において、コポリマーアモルファス画分、すなわち、アモルファスプロピレン-エチレンコポリマー(A)と一緒にされて、本発明のヘテロ相コポリマーを形成する。
【0177】
本発明に従うと、アモルファスプロピレン-エチレンコポリマー(A)は、気相反応器において形成される。本発明の目的の為に、アモルファスプロピレン-エチレンコポリマー(A)はまた、エチレンプロピレンラバー(ethylene-propylene rubber)、すなわちEPR、と呼ばれ、ここで、2つの気相反応器が使用される場合、第1の気相反応器は、ホモポリマー又はコポリマー成分、理想的にはホモポリマー成分、を生成し得、それによって、そのような第1の気相反応器からのこのポリマー成分は、該ポリマーのマトリックス(M)の一部を形成する。
【0178】
液体スラリー及び気相の共重合反応の場合、使用される反応温度は一般的に60~115℃(例えば、70~90℃)の範囲にあり、反応器圧力は一般的に気相反応の場合10~25バールの範囲にあり、ただし、液体スラリー重合は、高圧、例えば30~60バール、で動作するであろう。滞留時間は一般的に0.25~8時間(例えば、0.5~4時間)であるであろう。使用される気体は、任意的に非反応性気体、例えば窒素又はプロパン、との混合物としての、モノマーであるであろう。本発明の特定の特徴は、重合が少なくとも60℃の温度で行われることである。本発明の目的の為に、液体モノマーにおけるスラリー重合はまた、バルク工程と呼ばれる。
【0179】
一般的に、使用される触媒の量は、触媒の性質、反応器のタイプ及び条件、並びにポリマー生成物に所望される特性に依存するであろう。当技術分野で周知である通り、水素が、ポリマーの分子量を制御する為に使用されることができる。
【0180】
様々な反応器の間の生成物分割(production splits)は変わることができる。2個の反応器が使用される場合、分割は一般的に、バルク対気相で、30~70重量%から70~30重量%、好ましくは40~60重量%から60~40重量%、の範囲にある。3個の反応器が使用される場合、各反応器は好ましくは、少なくとも20重量%、例えば少なくとも25重量%、のポリマーを生成することが好ましい。気相反応器において生成されるポリマーの合計は好ましくは、バルク工程において生成される量を超えるべきである。値は、バルク反応器において30~45重量%、気相反応器において70~55重量%でありうる。
【0181】
本発明のメタロセン触媒系は、優れた触媒活性及び良好なコモノマー応答を有する。
【0182】
該触媒系はまた、高分子量の平均分子量Mwのポリマーを提供することができる。
【0183】
加えて、本発明の触媒系、特にMAO及びボレート助触媒を含む触媒系、は、ボレート助触媒無しの触媒系と比較して、特にエチレンを用いてのポリプロピレンコポリマーの製造において、より高い生産性を示す。この効果は、添加されるエチレンの量とともに驚くことに増加し、下記の不等式(I)によって表されることができる:
Δ生産性[kgPP/gcat] > 10 x C2[重量%]
【0184】
Δ生産性は、厳密に比較可能な条件下で行われるプロピレン-エチレン共重合におけるモノマー供給物中の所与のエチレン濃度での、メタロセン-MAO-ボレート触媒の生産性とメタロセン-MAO触媒の生産性との間の差である。C2重量%は、該ポリマー中のエチレンの量である。
【0185】
本発明の触媒系がヘテロ相PP/EPRブレンドの製造において使用される場合にさらに好ましい。これらの反応器の組み合わせは、2段階(バルクにおけるホモポリプロピレン(hPP)+気相におけるエチレンプロピレンラバー)又は3段階(バルクにおけるhPP+気相におけるhPP+気相におけるEPR)で製造されうる。
【0186】
従って、この観点から見ると、本発明は、
(I)本明細書において定義された触媒系の存在下でプロピレンをバルクで重合させて、ポリプロピレンホモポリマーマトリックスを形成すること;
(II)該マトリックス及び該触媒系の存在下で且つ気相において、プロピレンとエチレンとを重合させて、ホモポリマーマトリックス及びエチレンプロピレンラバー並びにアモルファスプロピレンコポリマー(A)を含むヘテロ相ポリプロピレンコポリマーを形成すること
を含む、ヘテロ相ポリプロピレンコポリマーの調製の為の方法を提供する。
【0187】
他の観点から見ると、本発明は、
(I)本明細書において定義された触媒系の存在下でプロピレンをバルクで重合させて、ポリプロピレンホモポリマーを形成すること;
(II)該ホモポリマー及び該触媒系の存在下で且つ気相において、プロピレンを重合させて、ポリプロピレンホモポリマーマトリックスを形成すること;
(III)該マトリックス及び該触媒系の存在下で且つ気相において、プロピレンとエチレンとを重合させて、ホモポリマーマトリックス及びエチレンプロピレンラバー(EPR)並びにアモルファスプロピレンコポリマー(A)を含むヘテロ相ポリプロピレンコポリマーを形成すること
を含む、ヘテロ相ポリプロピレンコポリマーの調製の為の方法を提供する。
【0188】
ポリマー
【0189】
特許請求の範囲に請求された触媒系が、より高い生産性でプロピレンランダムコポリマーの形成を可能にすることが本発明の特徴である。
【0190】
本発明の触媒を使用して製造されるランダムポリマーのMwは、200,000超、好ましくは少なくとも220,000、例えば少なくとも240,000、でありうる。320,000超の値がまた達成されている。単一の反応器において生成されるコポリマーのMw/Mn値は一般的に低く、例えば4未満、例えば3.5未満、さらには3.3未満、である。
【0191】
本発明の触媒系により製造されるプロピレンランダムコポリマーは、コモノマーの量及び/又はMFR調節剤として使用される水素の量に応じて、0.1~100g/10分の範囲のMFR2で製造されることができる(ISO1133,230℃/2.16kg荷重(load)に従って測定されたMFR2)。本発明の触媒の非常に高い分子量の能力を考えると、共重合体のMFR2、Mw及びMw/Mn値は、複数の反応器を使用することによって自由に広げることができ、ここで、温度、圧力及びH2濃度が該プロセス内で変えられることができる。
【0192】
特許請求の範囲に請求された触媒系が、高分子量を有するラバー相を有するヘテロ相コポリマーの形成を可能にすることが本発明のさらなる特徴である。
【0193】
従って、他の観点から見ると、本発明は、該マトリックス(M)中に分散された、マトリックスポリプロピレンホモポリマー及びアモルファスプロピレンコポリマー(A)並びにエチレンプロピレンラバーを含むヘテロ相プロピレンコポリマーの形成の為に、本明細書の上で定義された触媒系の、オレフィン重合における使用であって、
ここで、該ヘテロ相ポリプロピレンコポリマーは、
(a1) 30.0~85.0重量%の結晶画分(CF:crystalline fraction)、及び
(a2) 15.0~80.0重量%のエチレン含有量及び2.0~5.0dl/gの固有粘度(デカリン中、135°Cで)を有する、15.0~70.0重量%の可溶性画分(SF:soluble fraction)、ここで、該結晶画分(CF)及び該可溶性画分(SF)は、1,2,4-トリクロロベンゼン中、40℃で決定される、
によって特徴付けられている。
【0194】
そのようなヘテロ相プロピレンコポリマー(HECOs:heterophasic propylene copolymers)は、プロピレンホモポリマー(hPP)又は半結晶性ランダムプロピレン-エチレン若しくはプロピレン-ブテンコポリマー(rPP)であるところの半結晶性ポリマーマトリックス(M)、又はその2つの組み合わせを含み、ここで、ほとんどアモルファスのコポリマー(A)、例えばプロピレン-エチレンコポリマー(EP)、が分散されている(ラバー相、すなわちEPR)。
【0195】
従って、ポリプロピレンマトリックス(M)は、マトリックスの一部ではない(細かく)分散された介在物を含み、ここで、該介在物は、アモルファスコポリマー(A)を含む。
【0196】
本明細書で使用されている語「ヘテロ相ポリプロピレンコポリマー」語は、以下においてより詳細に定義されている通り、ポリプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーであるマトリックス樹脂と、該マトリックス樹脂中に分散された主にアモルファスコポリマー(A)とからなるコポリマーを意味する。
【0197】
本発明において、語「マトリックス」は、その一般的に受け入れられている意味で解釈されるべきであり、すなわち、該語は、分離された粒子(isolated particles)又は離散された粒子(discrete particles)、例えばラバー粒子、が分散されうる連続相(本発明において、連続ポリマー相)を云う。該プロピレンポリマーは、マトリックスとして機能できる連続相を形成するような量で存在する。
【0198】
その上、語「アモルファスコポリマー」、語「分散相」(dispersed phase)、語「主にアモルファスコポリマー」及び語「ラバー相」は、同じことを意味し、すなわち、本発明において交換可能である。アモルファスは、DSCによって純粋な成分として分析された場合(キシレン抽出によってマトリックスから抽出された後)、コポリマーが、20J/g未満の融解熱を有することを意味する。
【0199】
マトリックス(M):
特定のヘテロ相ポリプロピレンコポリマーのマトリックス(M)は、プロピレンホモポリマー若しくは半結晶性プロピレン-エチレンコポリマー若しくはプロピレン-ブテンコポリマー又はそれらの2つの組み合わせである。語「半結晶性」は、該コポリマーが明確に定義された融点と50J/g超の融解熱とを有していることを示す。
【0200】
本発明で使用される表現 ホモポリマーは、実質的に、すなわち少なくとも97.0重量%の、好ましくは少なくとも98.0重量%の、より好ましくは99.0重量%の、なおより好ましくは少なくとも99.8重量%の、プロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施態様において、該プロピレンホモポリマー中のプロピレン単位のみが検出可能である。
【0201】
一つの実施態様において、マトリックス(M)は、上に又は下に定義されたプロピレンのホモポリマーを含み、好ましくは、上に又は下に定義されたプロピレンのホモポリマーからなる。
【0202】
該ポリプロピレンホモポリマーは、単一のポリプロピレンホモポリマー画分(=単峰性)を含むか又はそれからなり得、しかしまた、異なるポリプロピレンホモポリマー画分の混合物を含みうる。
【0203】
ポリプロピレンホモポリマーが異なる画分を含む場合、ポリプロピレンホモポリマーは、二峰性又は多峰性であると理解される。
【0204】
これらの画分は、異なる平均分子量又は異なる分子量分布を有しうる。
【0205】
該ポリプロピレンホモポリマーは、分子量又は分子量分布の観点から、二峰性又は多峰性であることが好ましい。
【0206】
代替的には、該ポリプロピレンホモポリマーは、平均分子量及び/又は分子量分布の観点から単峰性でありうることが好ましい。
【0207】
従って、一つの実施態様又は本発明において、該マトリックス(M)は単峰性であり、一方、他の実施態様において、該マトリックス(M)は二峰性であり、且つ2つのプロピレンホモポリマー画分(hPP-1)及び(hPP-2)からなる。
【0208】
更なる実施形態において、該マトリックス(M)は二峰性であり、且つ1つのホモポリマー画分及び1つの半結晶性コポリマー画分からなる。
【0209】
アモルファスプロピレンコポリマー(A)):
特定のヘテロ相ポリプロピレンコポリマーの第2の成分は、プロピレンとエチレンとのアモルファスコポリマーであるプロピレンコポリマー(A)である。
【0210】
従って、第2の成分は、該マトリックス(M)に分散されているエラストマーコポリマー(すなわち、分散相)である。
【0211】
上記された通り、語「アモルファス(プロピレン-エチレン)コポリマー」、語「分散相」(dispersed phase)及び語「ラバー相」は、同じことを意味し、すなわち、本発明に関して交換可能である。
【0212】
該アモルファスプロピレン-エチレンコポリマー(A)は、室温でキシレンに完全に溶解する。
【0213】
該プロピレンポリマーマトリックスのように、該分散相は、単峰性、又は多峰性、例えば二峰性、であることができる。
【0214】
一つの実施態様において、該分散相は単峰性である。より特には、該分散相は好ましくは、固有粘度及び/又はコモノマー分布に関して単峰性である。
【0215】
単峰性及び多峰性、例えば二峰性、の定義に関しては、上記の定義が参照される。
【0216】
好ましくは、単峰性の分散相は、1つの反応段階で作製され、より好ましくは気相反応器において、1つのプロピレン-エチレンコポリマー画分を含み又はそれからなる。
【0217】
最終的なヘテロ相プロピレンコポリマー
【0218】
本発明に従うヘテロ相プロピレンコポリマーは、上記された通り、連続重合によって生成され、ここで、少なくとも1つの工程において、プロピレンホモポリマーマトリックスが生成され、そして次の工程において、該アモルファスプロピレン-エチレンコポリマー(A)が、プロピレンホモポリマーの存在下で生成される。
【0219】
ヘテロ相プロピレンコポリマーのマトリックス相及びアモルファス相を特徴づける為に、幾つかの方法が知られている。
【0220】
1つの方法は、キシレン冷溶性(XCS:xylene cold solubles)画分を抽出し、従って、キシレン冷溶性(XCS)画分をキシレン冷不溶性(XCI:xylene cold insoluble)画分から分離することである。ヘテロ相プロピレンコポリマーのキシレン冷溶性(XCS)画分は、アモルファス相に主に対応することが知られている。しかしながら、該マトリックス相の小部分、約1.0重量%、が含まれうる。該キシレン抽出は、結晶性の高いマトリックス相、例えばプロピレンホモポリマーマトリックス相、を持つヘテロ相ポリプロピレン組成物の為に特に適している。
【0221】
ヘテロ相プロピレンコポリマーは、15.0~70.0重量%の範囲、好ましくは20.0~60.0重量%の範囲、の総キシレン可溶性(XCS)画分(25℃で、ISO 16152に従って決定された)を有する。
【0222】
他の方法は、溶媒として1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を使用するCRYSTEX QC方法を用いて結晶画分と可溶性画分とを分離することある。この方法は、下記の測定方法の部において説明されている。この方法において、結晶画分(CF)及び可溶性画分(SF)が互いに分離される。結晶画分(CF)は主にマトリックス相に対応し、且つエラストマー相のごく一部しか含まないが、可溶性画分(SF)は主にエラストマー相に対応し、且つマトリックス相のごく一部しか含まない。
【0223】
キシレンによる及び1,2,4-トリクロロベンゼンによる抽出を使用した分離方法における違いにより、一方ではXCS/XCI画分と、他方では可溶性/結晶(SF/CF)画分との特性は完全には同じでないが、類似している。
【0224】
上に示されている通り、本発明に従うヘテロ相プロピレンコポリマーは、該ヘテロ相プロピレンコポリマーの総重量に基づいて、15.0~70.0重量%の範囲で、40℃で1,2,4-トリクロロベンゼン中で測定される可溶性画分(SF)によって特徴付けられ、及び可溶性画分(SF)は、は15.0~80.0重量%の範囲にあるエチレン含有量C2(SF)と2.0~5.0dl/gの固有粘度とを有する。
【0225】
好ましくは、ヘテロ相プロピレンコポリマーの可溶性画分(SF)の量は、20.0重量%~50.0重量%である。
【0226】
好ましくは、該可溶性画分(SF)は、18.0~60重量%の範囲、より好ましくは20.0~50重量%の範囲、のエチレン含有量C2(SF)を有する。
【0227】
好ましくは、該可溶性画分(SF)は、2.0~4.0dl/gの固有粘度を有する。
【0228】
該ヘテロ相ポリプロピレン組成物は好ましくは、0.2~100g/10分の、より好ましくは1~40g/10分の、メルトフローレートMFR2を有する。
【0229】
本発明に従うプロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー又はヘテロ相プロピレンコポリマーは、最終用途の要件に基づいて選択され且つ当技術分野で周知であるところの通常の添加剤を含みうる。
【0230】
本発明の触媒によって製造されるプロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー又はヘテロ相プロピレンコポリマーは、あらゆる種類の最終製品、例えば、パイプ、フィルム(キャスト、ブロー(blown)又はBOPPフィルム、繊維、成形品(例えば、射出成形、ブロー成形、回転成形品)、押出コーティング等、に有用である。
【0231】
本発明は、下記の非制限的な実施例及び図を参照することによって説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0232】
図1a図1aは、CRYSTEX QC計測器の概略図を示す。
図1b図1bは、例示的なエチレン-プロピレンコポリマーサンプルの溶出図を示し、且つTREFカラム(不活性材料、例えばガラスビーズ、で満たされたカラム)において得られた可溶性画分及び結晶画分を示す。
図2図2は、本明細書における実施例について、iV画分のXCS 対 気相における生産性をプロットしたものである。
図3図3は、本発明の実施例について、XCS画分のエチレン含有量 対 XCS画分のiVをプロットしたものである。
図4図4は、本発明の実施例について、XCS画分のエチレン含有量 対 XCS画分のiVをプロットしたものである。
図5図5は、本発明の実施例について、該ポリマーのエチレン含有量 対 生産性をプロットしたものである。
図6図6は、本発明の実施例について、該ポリマーのエチレン含有量 対 生産性をプロットしたものである。
図7図7は、本発明の実施例について、該ポリマーのエチレン含有量 対 MFRをプロットしたものである。
【0233】
測定方法
【0234】
(a)メルトフローレート(MFR)
該メルトフローレートは、ポリプロピレンについて、ISO 133 15(230℃,2.16kg荷重(load))に従って、MFR2として測定される。該MFRはポリマーの流動性を示し、従って加工性を示し、しかし、またポリマーMwの尺度である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度が低くなり、従ってその分子量が低い。
【0235】
(b)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び多分散度(Mw/Mn)
平均分子量(Mz、Mw及びMn)、分子量分布(MWD:Molecular weight distribution)及び多分散性指数、PDI=Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量であり、且つMwは重量平均分子量である)によって記されるその幅広さは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって、ISO16014-1:2003、ISO16014-2:2003、ISO16014-4:2003及びASTM D6474-12に従って、下記の式を使用して決定された。
【0236】
【数1】
【0237】
一定の溶出容量間隔(constant elution volume interval)ΔViの場合、ここで、Ai及びMiはそれぞれ、溶出容量Viに関連付けられたクロマトグラフィーピークスライス面積及びポリオレフィン分子量(MW)であり、ここで、Nは、複数の統合限界(integration limits)の間のクロマトグラムから得られたデータポイントの数に等しい。
【0238】
赤外(IR)検出器(PolymerChar(Valencia,スペイン)製のIR4若しくはIR5、又は3×Agilent-PLgel Olexis及び1×Agilent-PLgel Olexis Guardカラムを備えられたAgilent Technologies製の示差屈折率計(RI)、のいずれかを備えられた高温GPC機器が使用された。溶媒及び移動相として、250mg/Lの2,6-ジtertブチル-4-メチル-フェノール)で安定化された1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)が使用された。該クロマトグラフィーシステムは、160℃で、1mL/分の一定流速で動作された。サンプル溶液200μLが、分析ごとに注入された。データ収集が、Agilent Cirrusソフトウェアバージョン3.3又はPolymerChar GPC-IR制御ソフトウェアのいずれかを使用して実施された。
【0239】
該カラムのセットは、ユニバーサル較正(ISO 16014-2:2003に従う)を使用して、0.5kg/モル~11,500kg/モルの範囲の19の狭いMWDポリスチレン(PS)標準を用いて較正された。該PS標準は、数時間にわたって室温で溶解された。ポリオレフィン分子量へのポリスチレンピーク分子量の変換は、下記のMark Houwink等式及び下記のMark Houwink定数を使用することによって達成される。
【0240】
【数2】
【0241】
較正データをフィットさせる為に、三次多項式フィット(third order polynomial fit)が使用された。
【0242】
全てのサンプルが、0.5~1mg/mlの濃度範囲で調製され、そして、穏やかな連続的振盪下で、160℃で、PPについては2.5時間、PEについては3時間、溶解された。
【0243】
(c)DSC分析、ピーク融解温度(Tm)、融解熱(Hm)、及びピーク結晶化温度(Tc)
DSC分析は、5~7mgのサンプルにおいて、Mettler TA Instrument Q2000示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定された。DSCは、ISO 11357/パート3/方法C2に従って、-30~+225℃の温度範囲で10℃/分のスキャン速度で、加熱/冷却/加熱サイクルで実行される。結晶化温度(Tc)は冷却工程から決定され、一方、ピーク融解温度(Tm)及び融解熱(Hm)は2番目の加熱工程から決定される。
【0244】
(d)固有粘度
固有粘度(intrinsic viscosity)(iV)が、1999年10月のDIN ISO 1628/1(デカリン中、135℃で)に従って測定された。
【0245】
(e)キシレン冷可溶性画分
キシレン冷可溶物(xylene cold solubles)(XCS,重量%)が、ISO 16152;2005年に従って、25°Cで決定された。
【0246】
(f)Al及びZr決定(ICP法)
触媒の元素分析が、質量Mの固体サンプルを採取し、ドライアイス上で冷却することによって実行された。サンプルは、硝酸(HNO3,65%,Vの5%)及び新たに脱イオン化された(DI)水(Vの5%)に溶解することによって、既知の容量Vまで希釈された。次に、該溶液がフッ化水素酸(HF,40%,Vの3%)に加えられ、DI水で最終容量Vまで希釈され、2時間安定された。
【0247】
該分析は、ブランク(5%HNO3の溶液、DI水中の3%HF)、及びAlの0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm及び300ppmの6つの標準液、DI水中の5% HNO3、3% HFの溶液中の、Hf及びZrの0.5ppm、1ppm、5ppm、20ppm、50ppm及び100ppmを使用して較正されたThermo Elemental iCAP 6300誘導結合プラズマ-光放射分光計(ICP-OES:Inductively Coupled Plasma-Optical Emmision Spectrometer)を使用して室温で実行された。
【0248】
分析の直前に、ブランクと、100ppm Al、50ppm Hf、Zr標準、品質管理サンプル(DI水中の5% HNO3,3% HFの水溶液中の、20ppm Al,5ppm Hf,Zr)を実行して、再傾斜(reslope)を確認した。該QCサンプルはまた、5番目のサンプル毎に実行され、そして、スケジュールされた分析セットの最後に実行される。
【0249】
ハフニウムの含有量は282.022nm及び339.980nmのラインを使用してモニタリングされ、及びジルコニウムの含有量は339.198nmのラインを使用してモニタリングされた。アルミニウムの含有量は、ICPサンプル中のAl濃度が0~10ppm(100 ppmにのみ較正)の場合は167.079nmのラインを介して、10ppm超のAl濃度の場合は396.152nmのラインを介してモニタリングされた。
【0250】
報告された値は、同じサンプルから採取された3つの連続したアリコートの平均であり、且つサンプルの元の質量と希釈量とをソフトウェアに入力することによって、元の触媒に関連付けられる。
【0251】
(g)Crystex分析
結晶性及び可溶性画分法
該ポリプロピレン(PP)組成物の結晶画分(CF:crystalline fraction)及び可溶性画分(SF:soluble fraction)、並びに夫々の画分のコモノマー含有量及び固有粘度が、CRYSTEX QC、Polymer Char(Valencia,スペイン)によって分析された。
【0252】
CRYSTEX QC機器の概略図が図1aに示されている。結晶画分及びアモルファス画分は、図1Bに示されている通り、160℃での溶解、40℃での結晶化、そして、160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン(1,2,4-TCB)中への再溶解の温度サイクルを通じて分離される。SF及びCFの定量化並びにエチレン含有量(C2)の決定は、赤外線検出器(IR4)と固有粘度(IV)の決定に使用されるオンライン2キャピラリー粘度計(online 2-capillary viscometer)によって行われる。
【0253】
IR4検出器は、エチレン-プロピレンコポリマー中の濃度とエチレン含有量とを測定する為に、2つの異なるバンド(CH3及びCH2)でIR吸光度を検出する多波長検出器である。IR4検出器は、2重量%~69重量%の範囲の既知のエチレン含有量(13C-NMRによって決定される)及び較正の為に使用される各EPコポリマーの2~13mg/mlの様々な濃度を有する一連の8つのEPコポリマーを用いて較正される。
【0254】
可溶性画分(SF)及び結晶画分(CF)の量は、XCS較正を通じて、ISO 16152に準拠した標準重量分析法に従って決定された、「キシレン冷可溶性」(XCS)量及びそれぞれのキシレン冷不溶性(XCI)画分と相関する。XCS較正は、2~31重量%におけるXCS含有量を用いて様々なEPコポリマーを試験することによって達成される。
【0255】
親EPコポリマー並びにそれの可溶性画分及び結晶画分の固有粘度(IV)は、オンライン2キャピラリー粘度計(capillary viscometer)を使用して決定され、且つISO 1628に従ってデカリン中の標準方法によって決定される対応する複数のIV’と相関した。較正は、IV=2~4dL/gの様々なEP PPコポリマーを使用して達成される。
【0256】
分析されるべきPP組成物のサンプルは、10mg/ml~20mg/mlの濃度で秤量される。抗酸化剤として250mg/lの2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む1,2,4-TCBを有するバイアルの自動充填後、該サンプルは、160℃で、完全な溶解が達成されるまで、通常60分間、800rpmの一定撹拌で溶解される。
【0257】
図1a及び図1bに示されている通り、該サンプル溶液の定義された体積が、不活性支持体で満たされたカラム内に注入され、ここで、該サンプルの結晶化及び結晶性部分から可溶性画分の分離が行われている。この方法は2回繰り返される。第1の注入中、全サンプルは高温で測定され、該PP組成物のIV[dl/g]及びC2[重量%]を決定する。第2の注入中、該結晶化サイクルを用いる可溶性画分(低温で)及び結晶画分(高温で)が測定される(重量%SF、重量%C2、IV)。
【0258】
EPは、エチレンプロピレンコポリマーを意味する。
【0259】
PPは、ポリプロピレンを意味する。
【0260】
図1aは、CRYSTEX QC計測器の概略図を示す。
【0261】
図1bは、例示的なエチレン-プロピレンコポリマーサンプルの溶出図を示し、且つTREFカラム(不活性材料、例えばガラスビーズ、で満たされたカラム)において得られた可溶性画分及び結晶画分を示す(Del Hierro,P.;Ortin,A.;Monrabal,B.;“Soluble Fraction Analysis in polypropylene”,The Column Advanstar Publications,2014年2月,第18~23を参照)。
【0262】
(h)NMR分光法による微細構造の定量化
ポリマーのコモノマー含有量及びコモノマー配列分布を定量化する為に、定量的核磁気共鳴(NMR)分光法が更に使用された。定量的13C{1H}NMRスペクトルは、1H及び13Cでそれぞれ400.15MHz及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400NMR分光計を使用して溶液状態で記録された。全てのスペクトルは、全ての空気圧に窒素ガスを使用して、125℃で13Cに最適化された10mmの拡張された温度プローブヘッドを使用して記録された。約200mgの材料が、クロム-(III)-アセチルアセトナート(Cr(acac)3)とともに3mlの1,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)中に溶解され、65mMの緩和剤溶液を溶媒中に溶解した(Singh,G.,Kothari,A.,Gupta,V.,Polymer Testing 28 5 (2009),475)。均一な溶液を保証する為に、ヒートブロック中で最初にサンプル調製をした後、NMRチューブがさらに回転式オーブンで少なくとも1時間さらに加熱された。磁石内に挿入されると、該チューブは10Hzで回転された。この設定は、主に高分解能の為に選択され、正確なエチレン含有量の定量化の為に定量的に必要である。最適化されたチップの角度、1秒のリサイクル遅延、及び2レベルのWALTZ16デカップリングスキームを使用して標準のシングルパルス励起が、NOE無しで使用された(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187 (2007) 225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,1128)。合計6144(6k)のトランジェント(transients)が、スペクトル毎に取得された。
【0263】
定量的13C{1H}NMRスペクトルが処理され、積分され、そして、独自のコンピュータープログラムを使用して該積分からの関連する定量的特性が決定された。全ての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に参照していた。このアプローチは、この構造単位が存在しない場合でさえも、同等の参照を許した。エチレンの取り込みに対応する特徴的な信号が観察された(Cheng,H.N.,Macromolecules 17 (1984),1950)。
【0264】
観察された2,1-エリスロ レギオ欠陥(erythron regio defects)に対応する特徴的な信号(L.Resconi,L.Cavallo,A.Fait,F.Piemontesi,Chem.Rev.2000,100(4),1253,中に及びCheng,H.N.,Macromolecules 1984,17,1950,中に及びW-J.Wang and S.Zhu,Macromolecules 2000,33 1157,中に記載されている)では、決定された特性に対するレギオ欠陥の影響についての補正が必要であった。他のタイプのレギオ欠陥に対応する特徴的な信号は観察されなかった。
【0265】
コモノマー画分は、13C{1H}スペクトルにおけるスペクトル領域全体にわたる多数の信号の積分を通して、Wang等の方法(Wang,W-J.,Zhu,S.,Macromolecules 33 (2000),1157)を使用して定量化された。この方法は、その堅牢な性質と、必要に応じてレギオ欠陥の存在を説明する能力の為に選択された。積分領域は、遭遇したコモノマー含有量の全範囲にわたって適用性を高める為にわずかに調整された。
【0266】
PPEPPシーケンスにおいて分離されたエチレンのみが観察されたシステムの場合、Wang等の方法は、存在しないことがわかっているサイトの非ゼロ積分の影響を減らす為に変更された。このアプローチは、そのようなシステムについてのエチレン含有量の過大評価を減らし、且つ絶対エチレン含有量を決定する為に使用されるサイトの数を下記のように減らすことによって達成された:
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+(Sαβ+Sαγ))
この1組のサイトの使用を通じて、対応する積分方程式は、Wang等の記事(Wang,W-J.,Zhu,S.,Macromolecules 33 (2000),1157)において使用されているのと同じ表記法を使用して、下記の通りになる:
E=0.5(I+I+0.5(I+I)))
プロピレンの絶対含有量の為に使用される式は変更されなかった。
【0267】
コモノマー取り込みのモルパーセントは、下記のモル分率から計算された:
E[mol%]=100*fE
コモノマーの取り込みの重量パーセントは、下記のモル分率から計算された:
E[重量%]=100*(fE*28.06)/((fE*28.06)+((1-fE)*42.08))
【0268】
IR分光法によるコモノマー含有量
定量的赤外線(IR)分光法が、主要な方法への較正を通じてコポリマーのエチレン含有量を定量する為に使用された。
較正は、定量的な13C溶液状態核磁気共鳴(NMR)分光法によって決定された既知のエチレン含有量の1組の社内用非商業的較正標準の使用を通じて容易にされた。該較正の手順は、文献において十分に文書化されている慣用的な方法で行われた。該較正セットは、様々な条件下でパイロット又はフルスケールのいずれかで生成された0.2~75.0重量%の範囲のエチレン含有量の38個の較正標準で構成されていた。該較正セットは、最終的な定量的IR分光法によって遭遇する典型的な様々なコポリマーを反映するように選択された。
【0269】
定量的IRスペクトルは、Bruker Vertex 70 FTIR分光計を使用して固体状態で記録された。スペクトルは、180~210℃及び4~6mPaでの圧縮成形によって調製された厚さ300μmの25x25mmの正方形のフィルム上に記録された。非常に高い(>50モルl%)エチレン含有量を有するサンプルは、100μmの厚さのフィルムが使用された。標準透過FTIR分光法は、5000~500cm-1のスペクトル範囲、6mmのアパーチャ(aperture)、2cm-1のスペクトル分解能、16個のバックグラウンドスキャン、16個のスペクトルスキャン、64個のインターフェログラムゼロ充填率(interferogram zero filling factor)及びブラックマンーハリス 3ターム アポダイゼーション(Blackmann-Harris 3-term apodisation)を使用して行われた。
【0270】
定量分析は、(CH2)>2構造単位に対応する730及び720cm-1(AQ)でのCH2ロッキング変形(rocking deformations)の総面積を使用して行われた(積分法G,限界762及び694cm-1)。定量的バンドが、CH構造単位に対応する4323cm-1(AR)のCHバンドの面積に正規化された(積分法G,限界4650、4007cm-1)。次に、重量パーセント単位のエチレン含有量が、二次検量線を使用して正規化された吸収(AQ/AR)から予測された。該検量線は、該較正セットで測定された、正規化された吸光度と一次コモノマー含有量との通常の最小二乗(OLS:ordinary least squares)回帰によって予め作成されていた。
【0271】
本発明が、下記の実施例によって、今説明されるであろう。
【0272】
下記に示されている下記の錯体C1は、比較例(CE1~CE4)及び本発明の実施例(IE1~IE4)の為の触媒を調製する際に使用された。
【0273】
【化18】
【0274】
C1である(rac-アンチ-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル)(2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル)ジルコニウムジクロリド)は、国際公開第2019/007655号パンフレット,pp 49ffに記載された通りの手順に従って合成された。
【0275】
MAO-シリカ支持体の調製
メカニカルスターラーを備えられたガラス反応器に、600℃で事前に焼成された、AGC Si-Tech CoからのシリカグレードDM-L-303(10.0g)が充填された。次に、乾燥トルエン(50mL)が加えられた。次に、混合物が35℃に加熱され、そして、35℃(40rpm)で15分間撹拌された。次に、ランクセス(Lanxess)からのトルエン中のMAOの30重量%溶液(25mL)が、カニューレを介して25分間かけて添加され、35℃でさらに2時間撹拌された。固形物が沈降され、そして母液が吸い上げられ、そして廃棄された。トルエン(50mL)が加えられ、該混合物が80℃に加熱され、そして、この温度で1時間撹拌された。固形物が沈降され、そして液体が吸い上げられ、そして廃棄された。トルエンでの洗いがさらに2回繰り返され、引き続き、60℃でヘプタン(50mL)で洗われた。次に、ケーキが、真空下、60℃で数時間乾燥されて、13.7gの支持体を白色粉末として得た。
【0276】
ICS1(本発明の触媒系1):触媒の調製
窒素を満たされたグローブボックスにおいて、乾燥トルエン(2mL)中のMAO 0.5mL(トルエン中30重量%,AXION 1330 CA Lanxess)の溶液が、メタロセンC1(63.0mg,78マイクロモル)のアリコートに加えられた。室温で60分間撹拌された後、72.0mgのトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが加えられた。混合物が室温で60分間撹拌された。次に、上記された通りに調製された、2.0gのMAO処置されたシリカがガラスバイアル内に入れられた。次に、トルエン中の、メタロセン、MAO及びボレートの溶液が、穏やかに混合されながら10分間かけて該支持体にゆっくりと添加された。結果として得られた混合物が十分に振盪され、そして一晩放置された。次に、乾燥トルエン(10mL)が加えられ、そして、スラリーが60℃で30分間、十分に混合された。固体が沈降され、そして液体が吸い上げられ、そして廃棄された。洗いが、室温で、10mLのトルエンで2回、そして10mLのヘプタンで1回繰り返された。結果として得られたケーキが、Ar流れ中で、60℃で3時間乾燥されて、ピンク色の自由流動性粉末として2.3gの触媒を得た。
【0277】
ICS2(本発明の触媒系2):触媒の調製
窒素を満たされたグローブボックスにおいて、乾燥トルエン(2mL)中のMAO 0.5mL(トルエン中30重量%,AXION 1330 CA Lanxess)の溶液が、メタロセンC1(63.0mg,78マイクロモル)のアリコートに加えられた。室温で60分間撹拌された後、36.0mgのトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが加えられた。混合物が室温で60分間撹拌された。次に、上記された通りに調製された、2.0gのMAO処置されたシリカ(支持体B)がガラスバイアル内に入れられた。次に、トルエン中の、メタロセン、MAO及びボレートの溶液が、穏やかに混合されながら10分間かけて該支持体にゆっくりと添加された。結果として得られた混合物が十分に振盪され、そして一晩放置された。次に、乾燥トルエン(10mL)が加えられ、そして、スラリーが60℃で30分間、十分に混合された。固体が沈降され、そして液体が吸い上げられ、そして廃棄された。洗いが、室温で、10mLのトルエンで2回、そして10mLのヘプタンで1回繰り返された。結果として得られたケーキが、Ar流れ中で、60℃で3時間乾燥されて、ピンク色の自由流動性粉末として2.2gの触媒を得た。
【0278】
CCS1(比較例の触媒系1):触媒の調製
窒素を満たされたグローブボックスにおいて、乾燥トルエン(1mL)中のMAO 0.25mL(トルエン中30重量%,AXION 1330 CA Lanxess)の溶液が、メタロセンC1(31.5mg,38マイクロモル)のアリコートに加えられた。混合物が室温で60分間撹拌された。次に、上記された通りに調製された、1.0gのMAO処置されたシリカ(支持体B)がガラスバイアル内に入れられた。次に、トルエン中の、メタロセン及びMAOのが、穏やかに混合されながら5分間かけ該支持体にゆっくりと添加された。結果として得られた混合物が十分に振盪され、そして一晩放置された。次に、乾燥トルエン(5mL)が加えられ、そして、スラリーが60℃で30分間、十分に混合された。固体が沈降され、そして液体が吸い上げられ、そして廃棄された。洗いが、室温で、5mLのトルエンで2回、そして5mLのヘプタンで1回繰り返された。結果として得られたケーキが、Ar流れ中で、60℃で3時間乾燥されて、ピンク色の自由流動性粉末として1.0gの触媒を得た。
【0279】
CCS2(比較例の触媒系2):触媒の調製
グローブボックス内にて、86.8mgの乾燥且つ脱気された界面活性剤S2がセプタムボトル内の2mLのMAOと混合され、そして一晩反応させられた。翌日、41.1mgのC1(0.051mmol,1当量)が別のセプタムボトル内の4mLのMAO溶液に溶解され、そしてグローブボックス内で攪拌された。
【0280】
60分後、1mLの界面活性剤溶液と4mLのMAO-メタロセン溶液とが、40mLのPFC(パーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン)を含み且つオーバーヘッドスターラー(攪拌速度=600rpm)を備えられた50mLの乳化ガラス反応器内に、-10℃で連続して添加された。赤いエマルジョンがすぐに形成され、そして、-10℃/600rpmで15分間撹拌された。次に、該エマルジョンが2/4テフロン(登録商標)チューブを介して、90℃で、100mLの高温PFCに移され、そして、移し替えが完了するまで600rpmで攪拌され、次に、速度が300rpmに下げられた。15分間の撹拌後、油浴が取り除かれ、そして、撹拌機がオフにされた。該触媒はPFCの頂部上に沈殿され、そして、35分後に溶媒が吸い上げられた。残りの赤色触媒が、アルゴン流れで、50℃で2時間乾燥された。0.54gの赤色の自由流動性粉末が得られた。(Al 36.9重量%,Zr 0.26重量% Al/Zr(モル濃度(molar))480)
【0281】
S2:1H,1H-パーフルオロ(2-メチル-3-オキサヘキサン-1-オール)(CAS 26537-88-2) Unimatecから購入され、活性化されたモレキュラーシーブで乾燥(2回)され、そして、使用前に、アルゴンバブリングで脱気された。
【0282】
触媒の為の予備重合工程(オフライン予備重合)が、気体供給ラインとオーバーヘッドスターラーとを備えられた125mLの圧力反応器内で行われた。乾燥及び脱気されたパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン(15cm3)及び予備重合されるべき所望の量の触媒がグローブボックス内の反応器内にロードされ、そして該反応器が密閉された。次に、該反応器が該グローブボックスから取り出され、そして25℃に保たれ水冷浴内に置かれた。オーバーヘッドスターラーと供給ラインとが接続され、そして攪拌速度が450rpmに設定された。該実験は、プロピレン供給を該反応器内に開放することによって開始された。該反応器内の全圧が約5バールgに上げられ、そしてマスフローコントローラーを介したプロピレン供給によって、目標の重合度に達するまで一定に保たれた。反応が、揮発性成分をフラッシュすることによって停止された。グローブボックス内で該反応器を開かれ、そして内容物がガラス容器内に注がれた。パーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサンが、一定の重量が得られるまで蒸発されて、予備重合された触媒を得た。
【0283】
CC3(比較例の触媒系3):触媒の調製
CC2と同じ触媒錯体が使用されたが、MAOに加えてボレート助触媒がまた追加された。
【0284】
グローブボックス内にて、234.3mgの乾燥且つ脱気された界面活性剤S2(0.2mLのトルエン中)が5mLのMAOに滴下された。溶液が30分間撹拌されたままにされた。次に、95.6mgのC1がMAO/界面活性剤溶液に加えられた。60分間の撹拌後、104.9mgのトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが添加された。
【0285】
60分間の撹拌後、5mLの界面活性剤-MAO-メタロセン-ボレートが、40mLのPFCを含み且つオーバーヘッドスターラー(攪拌速度=600rpm)を備えられた50mLの乳化ガラス反応器内に、-10℃で連続して添加された。赤いエマルジョンがすぐに形成され、-10℃/600rpmで15分間撹拌された。次に、該エマルジョンが2/4テフロン(登録商標)チューブを介して、90℃で、100mLの高温PFCに移され、そして、移し替えが完了するまで600rpmで攪拌され、次に、速度が300rpmに下げられた。15分間の撹拌後、油浴が取り除かれ、そして、撹拌機がオフにされた。該触媒がPFCの頂部上に沈殿され、そして、35分後に溶媒が吸い上げられた。触媒をPFCの上に沈殿され、そして、35分後に溶媒が吸い上げられた。残りの触媒がアルゴン流れの下、50℃で2時間乾燥された。0.70gの赤色の自由流動性粉末が得られた。(Al 31.9重量%,Zr 0.56重量% Al/Zr(モル濃度(molar))193;B/Zr(モル濃度(molar))0.98)
【0286】
該触媒が、CC2について上記された通りに予備重合された。
【0287】
【表1】
*分析データは、純粋な(予備重合されていない)触媒を参照する
n.a. 適用できない
【0288】
重合:
2段階バルク(C3ホモ)+気相(C2/C3)重合
【0289】
工程1:予備重合及びバルク単独重合
0.4バールgのプロピレンを含むオートクレーブが、約4400gのプロピレンで満たされた。トリエチルアルミニウム(ヘプタン中の0.62モル/l溶液0.80ml)が、追加のxgプロピレンによって反応器内に注入された。溶液が、20℃、且つ250rpmで、少なくとも20分間撹拌された。上記で調製された触媒系は、以下に記載される通りに注入された。所望の量の固体触媒が、グローブボックス内の5mlステンレス鋼バイアル内にロードされ、次に、4mlのn-ヘプタンを含み且つ7バールの窒素で加圧された2番目の5mlバイアルがその頂部に加えられた。このデュアルフィーダーシステムは、該オートクレーブの蓋のポート上に取り付けられた。必要なH2量の投与がマスフローコントローラーを介して直接的に行われた。その後、2つのバイアルの間のバルブが開かれ、そして固体触媒が窒素圧下で2秒間ヘプタンと接触され、そして次に、xgのプロピレンで反応器内にフラッシュされた。予備重合が10分間行われた。予備重合工程の終わりに、温度が75℃に上げられ、そして、重合の間を通じて一定に保たれた。内部反応器温度が設定された重合温度よりも2℃低い温度に達したときに、重合時間の測定が開始された。
【0290】
工程2:気相C3C2単独重合
バルク工程が完了した後、攪拌機の速度が50rpmに下げられ、そして、圧力が、モノマーをベントすることによって0.3バールgに下げられた。攪拌速度が180rpmに設定され、及び反応器の温度が70℃に設定された。次に、反応器の圧力が、定義されたC3/C2気体混合物を供給することによって設定値まで上げられた(表を参照)。圧力及び温度が、この工程についての設定時間が経過するまで、ターゲットのポリマー組成に対応する組成のマスフローコントローラー、C3/C2気体混合物を介して供給することによって、且つサーモスタットによって一定に保たれた。
【0291】
次に、反応器が(約30℃に)冷やされ、そして揮発性成分がフラッシュアウトされた。該反応器がN2で3回、そして真空/N2サイクルで1回、パージされた後、生成物が取り出され、そしてドラフト内で一晩乾燥された。100gのポリマーが0.5重量%のIrganox B225(アセトン中の溶液)で添加され、そしてフード内で一晩乾燥され、引き続き60℃で、真空乾燥オーブン中、2時間乾燥された。
【0292】
【表2】
【0293】
下記の表3a)及び表3b)は、重合の結果を示す。
【0294】
【表3a】
【0295】
【表3b】
【0296】
図2図4から、ボレートを、シリカ/MAO/メタロセン触媒に添加することによって、より高い気相活性を有する触媒系が得られ(図2、さらに、それは、(Borealis Sirius catalyst technologyに従って製造された)自己支持触媒(self-supported catalysts)で製造されたヘテロ相プロピレンコポリマーよりもより高い分子量のヘテロ相プロピレンコポリマーを生じる。
【0297】
以下に示されている下記の錯体C2は、比較例(CE5~CE9)及び本発明の実施例(IE5~IE9)の為の触媒の調製に使用された。
【0298】
【化19】
4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセン
【0299】
【化20】
【0300】
2.0g(2.56ミリモル)のNiCl2(PPh3)Ipr及び36.3g(100.8ミリモル)の4,8-ジブロモ-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの混合物に、500ml(250ミリモル,2.5当量)のTHF中0.5Mの3,5-ジメチルフェニルマグネシウムブロミドが添加されて、穏やかな還流を維持した(約15分間)。結果として得られた溶液がさらに1時間還流されて、次に室温に冷やされ、そして1200mlの0.5MHCl及び500mlのジクロロメタンが加えられた。有機層が分離され、K2CO3で乾燥され、シリカゲル60の短いパッド(40~63μm,約30ml)に通され、そして次に、蒸発乾固されて、褐色がかった油として4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンのジアステレオマーの粗混合物を得た。さらに、315mgのTsOHが420mlのトルエン中の該粗生成物の溶液に添加され、そして結果として得られた混合物がディーンスタークヘッド(Dean-Stark head)を使用して10分間還流された。次に、220mgのTsOHをもう1回加え、そして得られた混合物が10分間還流された。最後に、最後の操作が50mgのTsOHで繰り返された。室温まで冷却した後、反応混合物が200mlの10%K2CO3で洗われた。有機層が分離され、そして水層がさらに200mlのジクロロメタンで抽出された。一緒にされた有機抽出物が無水K2CO3で乾燥され(有機層はこの段階で深紅色になった)、シリカゲル60の短いパッド(40~63μm,30ml)を通過させ、そして、結果として得られた淡黄色の溶液が約30mlまで蒸発されて、かなりの量の白色の沈殿物を含む溶液を得た。この混合物に300mlのn-ヘキサンが加えられた。沈殿した固体が濾別され(G3)、n-ヘキサンで洗われ、そして、真空で乾燥された。この手順は、白色の微結晶性固体として29.33g(77.48ミリモル,76.9%)の4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンを与えた。母液を蒸発乾固されて、黄色がかった固体の塊を得た。この塊が40mlの温かいn-ヘキサンで粉砕され、室温に冷やされ、そして濾過された(G3)。得られた固体がn-ヘキサンで洗われ、そして、真空乾燥された。この手順はさらに、白色粉末として4.55g(12.02ミリモル,11.9%)の4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンを与えた。従って、表題の生成物の総収量は33.88g(89.5ミリモル,88.8%)であった。
【0301】
1H NMR (CDCl3): δ7.04(s,2H),7.03(s,2H),6.98(s,2H),6.43(m,1H),3.23(s,2H),2.89(t,J=7.3Hz,2H),2.83(t,J=7.3Hz,2H),2.38(s,6H),2.37(s,6H),2.04(s,3H),1.99(quint,J=7.3Hz,2H)。13C{1H} NMR (CDCl3): δ145.38,142.84,140.85,140.43,140.21,139.80,138.37,137.55,137.39,133.44,129.64,128.39,128.19,127.31,126.61,126.34,42.49,32.76,32.51,26.08,21.43,16.81。
【0302】
[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル]クロロジメチルシラン
【0303】
【化21】
【0304】
250mlのエーテルと40mlのTHFとの混合物中の11.96g(31.59ミリモル)の4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンの懸濁液に、-30℃に冷却され、ヘキサン中の13.0ml(31.59ミリモル)の2.43M nBuLiが一度に加えられた。結果として得られた混合物が室温で一晩撹拌され、次に、このようにして得られた大量のオレンジ色の沈殿物を含む薄オレンジ色の溶液が-50℃に冷却され、そして、19.0ml(20.33g,157.5ミリモル,4.99当量)のジクロロジメチルシランが一度に加えられた。この混合物が室温で一晩撹拌され、そして次に、ガラスフリット(G3)を通して濾過され、フラスコ及びフィルターケーキが50mlのトルエンですすがれた。濾液が蒸発乾固されて、14.9g(約100%)の表題の化合物を白色の固体塊として与え、それはさらに精製すること無しにさらに使用された。
【0305】
1H NMR (CDCl3): δ7.09(s,2H),7.02-6.94(m,4H),6.51(m,1H),4.07(s,1H),3.26-3.14(m,1H),2.95-2.79(m,2H),2.60(ddd,J=12.4Hz,J=8.4Hz,J=4.1Hz,1H),2.38及び2.37(2s,合計12H),2.24(s,3H),2.12-1.99(m,1H),1.95-1.80(m,1H),-0.16(s,3H),-0.20(s,3H)。13C{1H} NMR (CDCl3): δ146.19,143.17,140.68,140.29,139.94,139.92,138.37,137.59,137.42,132.60,129.86,128.52,128.24,127.85,127.28,126.32,49.67,33.33,32.73,26.15,21.45,21.42,18.10,3.92,-1.45。
【0306】
[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシラン
【0307】
【化22】
【0308】
250mlのエーテル中の10.13g(31.59ミリモル)の5-tert-ブチル-7-(3,5-ジメチルフェニル)-6-メトキシ-2-メチル-1H-インデン(MC-1について上記された通りに生成された)の溶液に、-30℃に冷却された、ヘキサン中の13.0ml(31.59ミリモル)の2.43M nBuLiが一度に加えられた。この混合物が室温で一晩撹拌され、次に、少量の沈殿物を含む結果として得られた薄オレンジ色の溶液が-45℃に冷却され、そして、200mgのCuCNが加えられた。結果として得られた混合物が-25℃で0.5時間撹拌され、次に、200mlのTHF中の14.9g(31.59ミリモル)の(上で調製された)[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル]クロロジメチルシランの溶液が一度に加えられた。この混合物が室温で一晩撹拌され、次に、シリカゲル60(40~63μm)のパッドを通して濾過され、それがさらに2x50mlのジクロロメタンによって洗われた。一緒にされた有機溶出物が蒸発乾固され、そして、残留物が高温で真空乾燥されて、24.0g(約90%純度の約100%)の表題の生成物(立体異性体の約55:45混合物)をわずかに黄色がかった固体泡として与え、それはさらに精製すること無しにさらに使用された。
【0309】
1H NMR (CDCl3): δ7.27及び7.25(2s,合計2H),7.04(s,4H),6.98,6.95及び6.93(3s,合計3H),6.90及び6.85(2s,合計1H),6.46(s,1H),6.23及び6.20(2s,合計1H),4.41及び4.16(2s,合計1H),3.30-2.62(m,1H),3.22及び3.20(2s,合計3H),3.04-2.79(m,2H),2.68-2.56(m,1H),2.39(s,6H),2.35(s,9H),2.32(s,3H),2.18-1.80(6s及び2m,合計9H),1.44及び1.38(2s,合計9H),-0.52,-0.58,-0.62及び-0.73(4s,合計6H)。
【0310】
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
【0311】
【化23】
【0312】
250mlのエーテル中の23.06g(30.54ミリモル)の[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシランのわずかに濁った黄色がかった溶液に、-30℃に冷却された、ヘキサン中の25.1ml(60.99ミリモル)の2.43M nBuLiが一度に加えられた。この混合物が室温で5.5時間撹拌され、次に、結果として得られた赤色の溶液が-50℃に冷却され、そして、7.12g(30.55ミリモル)のZrCl4が加えられた。反応混合物が室温で24時間撹拌されて、LiClの沈殿物を含む暗赤色の溶液を与えた。NMR分光法の証拠として、この溶液は、幾つかの他の不純物で汚染された、アンチ-ジルコノセンとシン-ジルコノセンジクロリドとの約85/15混合物を含んでいた。この混合物が、(赤い泡の状態に)蒸発乾固され、そして、残留物が100mlの温トルエンで処置された。結果として得られた懸濁液がガラスフリット(G4)を通じて濾過され、フィルターケーキが2x50mlの温トルエンで洗われた。濾液が蒸発乾固され、そして、残留物が70mlの熱n-ヘキサン中に溶解された。この溶液から室温で、一晩で落下した薄オレンジ色の沈殿物が収集され、そして、真空中で乾燥された。この手順は、該錯体の1モル当たり約1.0モルのn-ヘキサンを含む、7.8gのアンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドを与え、従って、単離されたアンチ-錯体の調整された正味重量は7.13g(26%)であった。母液が60mlまで蒸発された。-25℃で一晩この溶液から沈殿された薄オレンジ色の粉末が集められ、そして真空中で乾燥された。この手順は、該錯体の1モル当たり約0.75モルのn-ヘキサンを含む8.6gのアンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドを与え、従って、単離されたアンチ-錯体の調整された正味重量は8.03g(29%)であった。
【0313】
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド x 1.0 nヘキサン
【0314】
C54H60Cl2OsiZr x C6H14についての計算値:C,71.96;H,7.45,。実測値:C,72.30;H,7.69。
【0315】
1H NMR (CDCl3): δ7.55-6.90(非常にbr.s.,4H),7.39(s,1H),7.10(s,1H),7.03(s,1H),6.98(s,1H),6.95(s,1H),6.94(s,1H),6.81(s,1H),6.58(s,1H),3.41(s,3H),3.15-3.01(m,2H),2.93(ddd,J=16.0Hz,8.1Hz,3.3Hz,1H),2.51-2.41(m,1H),2.39(s,3H),2.36(s,3H),2.34(s,12H),2.30(s,3H),2.04(s,3H),2.07-1.95(m,1H),1.85-1.68(m,1H),1.35(s,9H),1.14(s,3H),-0.13(s,3H)。13C{1H} NMR (CDCl3): δ159.87,144.73,144.10,143.25,141.39,138.39,138.08,137.81,137.47,136.90,134.61,134.39,134.26,132.05,131.96,131.74,131.11,128.96,128.91,128.82,128.74,127.74,127.44,127.01(br.s),126.76,123.42,123.12,121.60,121.08,82.55,81.91,62.67,35.68,33.87,32.39,30.39,26.04,21.53,21.47,21.41,21.24,19.78,18.60,3.62,1.70。
【0316】
MAO-シリカ支持体の調製
メカニカルスターラーとフィルターネットとを備えられた鋼製反応器が窒素でフラッシュされ、そして、反応器温度が20℃に設定された。次に、600℃で事前に焼成された、AGC Si-Tech CoからのシリカグレードDM-L-303(5.0kg)が供給ドラムから追加され、そして、手動バルブを使用して窒素で注意深く加圧及び減圧された。次に、トルエン(22kg)が加えられた。混合物が15分間撹拌された。次に、ランクセス(Lanxess)からのトルエン中のMAOの30重量%溶液(9.0kg)が、70分以内に該反応器の上部の供給ラインを介して加えられた。次に、反応混合物が90℃まで加熱され、そして90℃でさらに2時間撹拌された。スラリーが沈降され、そして母液がフィルターで除かれた。触媒が、トルエン(22kg)で、90℃で2回洗われ、引き続き、沈降、そして濾過された。該反応器が60℃に冷やされ、そして、固体がヘプタン(22.2kg)で洗われた。最後に、MAOで処置されたSiO2が60℃で2時間、窒素流下2時間乾燥され、次に、撹拌しながら真空下(-0.5バールg)で5時間乾燥された。MAOで処置された支持体は、自由流動性の白色粉末として集められ、12.2重量%のAlを含むことがわかった。
【0317】
本発明の触媒系3(ICS3) 触媒の調製
トルエン中の30重量%MAO(0.7kg)が、20℃のビュレットを介して鋼製窒素ブランク反応器に加えられた。次に、トルエン(5.4kg)が撹拌しながら加えられた。メタロセンC2(93g)が金属シリンダーから加えられ、引き続き、1kgのトルエンでフラッシュされた。混合物が20℃で60分間撹拌された。次に、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(91g)が金属シリンダーから加えられ、引き続き、1kgのトルエンでフラッシュされた。混合物が、室温で1時間撹拌された。結果として得られた溶出物が、上記で調製されたMAO-シリカ支持体の攪拌されたケーキに1時間かけて加えられた。該ケーキが12時間放置され、引き続き、N2流れ下、60℃で2時間、乾燥され、そしてさらに、撹拌しながら真空(-0.5バールg)下で5時間乾燥された。
【0318】
乾燥した触媒は、13.9%のAlと0.11%のZrとを含むピンク色の自由流動性粉末の形でサンプリングされた。
【0319】
比較例の触媒系4(CCS4)
トルエン中の30重量%MAO(0.7kg)が、20℃のビュレットを介して鋼製窒素ブランク反応器に加えられた。次に、トルエン(6.4kg)が攪拌しながら加えられた。メタロセンC2(93g)が金属シリンダーから加えられ、引き続き、1kgのトルエンでフラッシュされた。混合物が20℃で60分間撹拌された。結果として得られた溶出物が、上記で調製されたMAO-シリカ支持体の攪拌されたケーキに1時間かけて加えられた。該ケーキが12時間放置され、引き続き、N2流れ下、60℃で2時間、乾燥され、そしてさらに、撹拌しながら真空(-0.5バールg)下で5時間乾燥された。
【0320】
乾燥した触媒は、12.8%のAlと0.084%のZrとを含むピンク色の自由流動性粉末の形でサンプリングされた。
【0321】
重合:
予備重合及びバルク重合
0.4バールgのプロピレンを含む21.2Lのオートクレーブが、3950gのプロピレンで満たされた。トリエチルアルミニウム(ヘプタン中の0.62モル/l溶液0.80ml)が、追加の240gプロピレンによって反応器内に注入された。溶液が、20℃、且つ250rpmで、少なくとも20分間撹拌された。所望のH2量が、マスフローコントローラーを介して反応器に供給される。触媒が、以下に記載される通りに注入された。所望の量の固体触媒が、グローブボックス内の5mlステンレス鋼バイアル内にロードされ、次に4mlのn-ヘプタンを含み且つ7バールの窒素で加圧された2番目の5mlバイアルがその頂部に加えられた。このデュアルフィーダーシステムは、該オートクレーブの蓋のポート上に取り付けられた。その後、2つのバイアルの間のバルブが開かれ、そして固体触媒が窒素圧下で2秒間ヘプタンと接触され、240gのプロピレンで反応器内にフラッシュされた。予備重合が10分間行われた。予備重合工程の終わりに、温度が75℃に上げられ、そして、重合の間を通じて一定に保たれた。エチレン-プロピレン共重合実験の場合、55℃からエチレンの添加が開始された。量及び供給速度が、下記の表4において見られることができる。反応器内温度が設定された重合温度よりも2℃低い温度に達したときに、重合時間の測定が開始された。所望の重合時間が経過したときに、5mlのETOHが反応器内に供給されて重合を停止させた。次に、反応器が約30℃に冷やされ、そして揮発性成分をフラッシュアウトした。該反応器がN2で3回、そして真空/N2サイクルで1回、パージされた後、生成物が取り出され、そしてドラフト内で一晩乾燥された。100gのポリマーが0.5重量%のIrganox B225(アセトン中の溶液)で添加され、そしてフード内で一晩乾燥され、引き続き60℃で、真空乾燥オーブン中、2時間乾燥された。
【0322】
触媒、H2及びC2の正確な量が、下記の表4において見られることができる。
【0323】
【表4】
【0324】
下記の表5は、重合の結果を示す。
【0325】
【表5】
【0326】
図5及び図6から、より多くのエチレンが添加されるほど、ホウ素含有助触媒を有しない触媒システムと比較して、本発明に従う触媒系を使用する場合の生産性における差が大きくなることが容易に分かることができる。
【0327】
トリチルボレートコアクチベーターを含むシリカ-MAO触媒はまた、非ボレート触媒と比較して、任意の所与のC2含有量でわずかに優れたMFR制御(同じH2濃度でのより低いMFR)を有する。この効果は、図7において見られる。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7