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特許7555976非レシプロカル・バンド・パス・フィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】非レシプロカル・バンド・パス・フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/52 20060101AFI20240917BHJP
   H03H 11/04 20060101ALI20240917BHJP
   H01P 1/20 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H03H7/52
H03H11/04 Z
H01P1/20 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021572539
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 US2020031460
(87)【国際公開番号】W WO2020247132
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】16/434,596
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ディマジオ,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ラルーシュ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ラディシク,ベスナ
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0030280(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0087823(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0156327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/52
H03H 11/04
H01P 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非レシプロカル・バンド・パス・フィルタであって、
各ユニット・セルが所定の長さを有し且つインダクタおよびバラクタを含むものである、複数の繰り返す有限サイズのユニット・セルを含む伝送ラインと、
前記伝送ラインを伝播する伝送信号を提供する信号源と、
前記バラクタを変調する変調信号を提供する変調源であって、前記ユニット・セルの前記所定の長さと前記変調信号の波長との比は、前記伝送信号が、制御されたパス・バンドで一方向に前記伝送ラインに沿って伝播することを許容するが、前記伝送信号が、前記制御されたパス・バンドで逆方向に前記伝送ラインに沿って伝播することを妨げる伝播モードを提供するように、選択され、前記ユニット・セルの前記所定の長さは、前記変調信号の変調周期よりも小さい、変調源と
を含むフィルタ。
【請求項2】
請求項1のフィルタであって、前記伝送ラインはダブル・バンド・ギャップを有する分散曲線を有するように構成され、一方のバンド・ギャップは、前記ユニット・セルの前記所定の長さと前記変調信号の波長との比に依存する、フィルタ。
【請求項3】
請求項1のフィルタであって、前記伝送ラインは、時間的に静的であるが空間的に変調される伝送ラインである、フィルタ。
【請求項4】
請求項1のフィルタであって、前記変調信号は前記バラクタのキャパシタンスを制御する、フィルタ。
【請求項5】
請求項1のフィルタであって、前記インダクタは一定値インダクタである、フィルタ。
【請求項6】
請求項1のフィルタであって、前記変調源は、前記伝送信号と同じ方向に前記変調信号を伝播させる、フィルタ。
【請求項7】
請求項1のフィルタであって、前記変調源は、前記伝送信号と逆の方向に前記変調信号を伝播させる、フィルタ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルタを備えるアイソレータ。
【請求項9】
非レシプロカル・バンド・パス・フィルタであって、
各ユニット・セルが所定の長さを有し且つ一定値インダクタおよびバラクタを含むものである、複数の繰り返す有限サイズのユニット・セルと、時間的に静的であるが空間的に変調された伝送ラインと、
前記伝送ラインを伝播する伝送信号を提供する信号源と、
前記バラクタのキャパシタンスを制御することにより前記バラクタを変調する変調信号を提供する変調源であって、前記ユニット・セルの前記所定の長さと前記変調信号の波長との比は、前記伝送信号が、制御されたパス・バンドで一方向に前記伝送ラインに沿って伝播することを許容するが、前記伝送信号が、前記制御されたパス・バンドで逆方向に前記伝送ラインに沿って伝播することを妨げる伝播モードを提供するように、選択され、前記ユニット・セルの前記所定の長さは、前記変調信号の変調周期よりも小さい、変調源と
を含み、
前記伝送ラインはダブル・バンド・ギャップを有する分散曲線を有するように構成され、一方のバンド・ギャップは、前記ユニット・セルの前記所定の長さと前記変調信号の波長との比に依存する、フィルタ。
【請求項10】
請求項9のフィルタであって、前記変調源は、前記伝送信号と同じ方向に前記変調信号を伝播させる、フィルタ。
【請求項11】
請求項9のフィルタであって、前記変調源は、前記伝送信号と逆の方向に前記変調信号を伝播させる、フィルタ。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載のフィルタを備えるアイソレータ。
【請求項13】
各ユニット・セルが所定の長さを有し且つインダクタおよびバラクタを含むものである、複数の繰り返す有限サイズのユニット・セルを含む伝送ラインに沿って、伝送信号が、制御されたパス・バンドで一方向に伝播することを許容するが、前記伝送ラインに沿って、前記伝送信号が、前記制御されたパス・バンドで逆方向に伝播することを妨げるための方法であって、前記伝送信号が、制御されたパス・バンドで一方向に前記伝送ラインに沿って伝播することを許容するが、前記伝送信号が、前記制御されたパス・バンドで逆方向に前記伝送ラインに沿って伝播することを妨げる伝播モードを提供するように、前記ユニット・セルの前記所定の長さ変調信号の波長との比を選択することを含み、前記ユニット・セルの前記所定の長さは、前記変調信号の変調周期よりも小さい、方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、前記伝送ラインはダブル・バンド・ギャップを有する分散曲線を有するように構成され、一方のバンド・ギャップは、前記ユニット・セルの前記所定の長さと前記変調信号の波長との比に依存する、方法。
【請求項15】
請求項13の方法であって、前記伝送ラインは、時間的に静的であり空間的に変調される伝送ラインである、方法。
【請求項16】
請求項13の方法であって、前記変調信号は前記バラクタのキャパシタンスを制御する、方法。
【請求項17】
請求項13の方法であって、前記インダクタは一定値インダクタである、方法。
【請求項18】
請求項13の方法であって、前記伝送ラインは非レシプロカル・バンド・パス・フィルタの一部である、方法。
【請求項19】
請求項13の方法であって、前記伝送信号と前記変調信号とは同じ方向に前記伝送信号に沿って伝播する、方法。
【請求項20】
請求項13の方法であって、記伝伝送信号と前記変調信号とは逆の方向に前記伝送信号に沿って伝播する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、一般に、有限のユニット・セルを含む非レシプロカル・バンド・パス・フィルタと関連し、より具体的には、複数の繰り返す有限のユニット・セルを有する伝送ラインを含む非レシプロカル・バンド・パス・フィルタであって、伝送信号が一方向に伝送ラインに沿ってパス・バンド内を伝播することを可能にし且つそのバンド内の伝送信号が反対方向に伝送ラインに沿って伝播することを妨げるようにする伝播モードを提供するように、ユニット・セルの長さと変調信号の波長との比が選択される、非レシプロカル・バンド・パス・フィルタと関連する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 一方向にRFまたは電磁エネルギが流れることのみを可能とするように、即ち、非レシプロカルであるように、レーダ・システム、アイソレータ、サーキュレータなどのような特定の回路および装置を設計することが望まれることが多々ある。また、通常、これらのタイプの回路は、コンパクトに、また、チップ上の集積回路として構成されることが望ましい。例えば、特定の周波数の電磁信号を送ることを可能とするが、その周波数の電磁信号を受け取らないようにする、即ち、レシプロシティを破る(break)回路を提供する必要があることが多い。
【0003】
[0003] 伝統的に、これらのタイプの回路および装置は、RFエネルギの流れを制御するために空間対称性を破るために、バルク磁性材料に依存している。現代のレーダ・システムおよび通信システムは、オンチップの高速および高パワーの回路を必要とする集積型フロントエンド受信機(integrated front-end receivers)に依存している。フェライトなどのようなバルク磁性材料は、このスケールの集積に適するようにできない。このレベルのコンパクトな集積を達成するためには、レシプロシティを破るための非磁性の代替物が必要である。同様に、バルク結晶を用いるファラデー回転を通じて光学的分離が達成されているが、これは、フォトニック・システムの集積には都合が悪い。RFおよびフォトニック・システムの集積に関する可能性を持つ、広帯域かつ低損失の非磁性アイソレータに関するコンセプトの進展における劇的な成長が、最近見られた。
【0004】
[0004] 電磁エネルギの優先的な又は一方向の流れを可能とする簡単な方法は、提案されたアイソレータ材料を、それに優先的方向を与えるために「バイアス」することである。これを行う1つの方法は、非線形材料または伝送ライン構造を通して変調波を伝播させて、変調波と制御される信号波との間でエネルギが結合されるようにする。信号波の伝送特性は、変調波の方向に対しての、その流れの方向に依存する。これは、川の水の流れを制御するためにパドル・ホイールを用いるというコンセプトと類似している。信号波としての水が、変調波としての動くパドルの方向に流れると、その水は通過するが、水の方向が逆になると、パドルの動きとは逆に流れてブロックされる。この類推は、水の速度に対して、パドルの速度、即ち、変調波の位相速度を変化させることにより、拡張することができる。水がパドルを伴って流れる場合、幾らかの水は跳ね返されるが、伴うのは幾分低いエネルギであり、これはダウンコンバージョンであり、それに対して、パドルに対して逆に流れる水に関しては、その水は高いエネルギでブロックされて跳ね返され、これはアップコンバージョンである。水の流れへの正味の影響はまた、パドルの速度が水の速度より速いか遅いかに依存する。
【0005】
[0005] 周期的空間時間変調媒体(periodic space-time modulated medium)の影響の基礎は良く知られており、伝送ライン理論と、空間時間変調は磁石無しのレシプロシティの破壊および信号の分離へと導くことができるという認識とを用いる空間時間変調連続媒体(space-time modulated continuous media)を含む。弱い空間時間変調がなされた媒体においてその非レシプロシティを認識するには、十分な精度で波の伝播を形作るために、僅かな変調高調波のみを必要とし、比較的高速の変調、即ち、信号より高い変調周波数のためのシステムを予想するために3波法(three-wave method)が提案されている。これは、非分散連続右手型媒体(nondispersive continuous right-handed media)に関してのみ達成された。短経路にわたって逆方向の波を効率的にブロックし、且つ順方向の伝送を向上させるために、空間時間変調媒体の能力を制御し且つ可能性としては向上させるために、分散エンジニアリング(dispersion engineering)を使用できることが、認識されている。このコンテキストでは、分散エンジニアリングは、有限のユニット・セルの寸法を考慮した、左手または負の指数の特性(left-handed or negative index characteristic)および/またはより複雑な等価の回路構造の組み入れのことであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、信号波とは別に変調されるバラクタを持つ複数の有限サイズのユニット・セルを含む右手型1次元伝送ライン構造を含む非レシプロカル・バンド・パス・フィルタの概略的な図である。
図2図2は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトル(real wave vector)とし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインに関しての、波ベクトルの実数部分と、波周波数との間の分散関係のグレイ・スケール・プロットを示し、セルの長さは、1次ハーモニック近似(first order harmonic approximation)を用いる空間変調周期と比べて小さい。
図3図3は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトルとし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインに関しての、波ベクトルの実数部分と、波周波数との間の分散関係のグレイ・スケール・プロットを示し、セルの長さは、2次ハーモニック近似(second order harmonic approximation)を用いる空間変調周期と比べて小さい。
図4図4は、横軸を波ベクトルのノーマライズされた虚数成分とし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、1次元ハーモニック近似を用いる実数波ベクトルの固定部分を有する、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルの虚数部分の分散のグレイ・スケール・プロットを示す。
図5図5は、横軸を波ベクトルのノーマライズされた虚数成分とし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、第1バンド・ギャップで実数波ベクトルの固定部分を有し且つ2次元ハーモニック近似を用いる、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルの虚数部分の分散のグレイ・スケール・プロットを示す。
図6図6は、横軸を波ベクトルのノーマライズされた虚数成分とし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、第1バンド・ギャップで実数波ベクトルの固定部分を有し、2次元ハーモニック近似を用いる、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルの虚数部分の分散のグレイ・スケール・プロットを示す。
図7図7は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトルとし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、上側周波数カットオフを有する、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルの実数部分についての分散曲線を示す。
図8図8は、横軸を波ベクトルのノーマライズされた虚数成分とし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、固定の実数波ベクトルにおいて上側ギャップ虚数波ベクトルを有する、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルの固定の実数部分についての分散曲線を示す。
図9図9は、横軸を波ベクトルのノーマライズされた虚数成分とし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、固定の実数波ベクトルにおいて下側ギャップ虚数波ベクトルを有する、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルの実数部分についての分散曲線を示す。
図10図10は、図7に示すグラフであるが、pファクタが0.5である。
図11図11は、図8および図9に示すグラフをどのようにして1つのギャップへと合体できるかを示す。
図12図12は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトルとし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインに関しての、波ベクトルの分散曲線を示す。
図13図13は、横軸を波ベクトルのノーマライズされた虚数成分とし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインに関しての分散曲線を示す。
図14図14は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトルとし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインに関しての分散曲線に関しての数値計算されたバンド構造を示す。
図15図15は、横軸を波ベクトルの虚数成分とし、縦軸をノーマライズされた周波数としたグラフであり、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルの固定の実数部分に関しての、分散曲線バンド・ギャップを示す。
図16図16は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトルとし、縦軸をフロケ展開(Floquet expansion)係数の絶対値としたグラフであり、ハーモニックが+1のときの、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、順方向に動く信号波に関する。
図17図17は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトルとし、縦軸をフロケ展開係数の絶対値としたグラフであり、ハーモニックが-1のときの、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、順方向に動く信号波に関する。
図18図18は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトルとし、縦軸をフロケ展開係数の絶対値としたグラフであり、ハーモニックが-1のときの、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、逆方向に動く信号波に関する。
図19図19は、横軸をノーマライズされた実数波ベクトルとし、縦軸をフロケ展開係数の絶対値としたグラフであり、ハーモニックが+1のときの、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、逆方向に動く信号波に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0025] 有限サイズのユニット・セルを含む非レシプロカル・バンド・パス・フィルタに関する発明の実施形態の下記の検討は、本質的に単なる例示であり、本発明やその応用や使用を限定することは全く意図されていない。
【0008】
[0026] 図1は、複数の有限ユニット・セル14を含む右手型1次元非レシプロカル伝送ライン構造12を含む非レシプロカル・バンド・パス・フィルタ10の概略的な図であり、ここでは、複数の有限ユニット・セル14は3つであり、それぞれ、セル長aと、独立的に変調されるキャパシタンスC、例えば、バラクタと、一定インダクタンスLとを含む。実際には、伝送ライン構造12は、多くのセル14を含み、数学的には無限の長さと考えることができる。フィルタ10は、更に、フィルタリングされて伝送ライン構造12を左から右へ伝播する伝送信号を提供する伝送信号源16と、伝送信号を変調するためにキャパシタCのキャパシタンスを制御する変調信号を提供する変調信号源18とを含む。変調信号は、伝送信号と同じ方向に伝播するものとして示されているが、伝送信号と逆の方向へ伝播することもできる。下記は、バルク磁性材料を用いない非レシプロカル・バンド・パス・フィルタの開発へと導く、右手型の空間時間変調される伝送ライン構造に関しての、有限ユニット・セル長aを持つ現実的な等価回路のモデリングに関する検討である。
【0009】
[0027] 波動解(wave solution)のブロッホ-フロケ展開(Bloch-Floquet expansion)は、伝送ライン構造12を分析するために、時間と空間との双方に周期性を含むように、周期的ポテンシャルにおいて用いることができる。フロケ理論では、周期的ポテンシャルにより変調される無限媒体における波動方程式の一般解は、平面波と、同じ変調の周期性を持つ関数との積として書くことができる、と述べている。この場合、構造12の周期性は、空間と時間との双方の変調を含むように一般化できる。解の一般化した形は下記により与えられる。
【0010】
【数1】
【0011】
ここで、wは、実数値を有する正の周波数であり、kは、複素数波ベクトルであり、F(z,t)は、変調と同じ空間および時間の周期性を持つ関数であり、級数展開として表すことができる。
【0012】
【数2】
【0013】
ここで、sは、ハーモニック整数であり、ポテンシャルの時間および空間の周期性は、変調信号周波数wの値と、複素数変調信号波ベクトルkの値とにより与えられ、関数Fの展開における各項は、時間および空間におけるハーモニックである。
【0014】
[0028] キルヒホフの法則を用いて、構造12の電流Iと電圧V(n,t)との間の関係を導き出すことができ、セル位置nと時間tとの関数として電圧V(n,t)に関して波動方程式を表すことにより、下記のものが得られる。
【0015】
【数3】
【0016】
[0029] 式(3)において、ポテンシャルの分布は、時間空間可変キャパシタC(n,t)により表される。既知の技術でなされたように、キャパシタCの周期的変調は簡単な式により与えられる。
【0017】
【数4】
【0018】
ここで、Cは、一定バックグラウンド・キャパシタンスであり、Cは、キャパシタンス変調であり、積naは、1次元伝送ライン構造12に沿ったユニット・セル14の位置zと等しい。展開したフロケ解における共通の項を等しくすると、フロケ展開係数(Floquet expansion coefficient)Vの中での後続の帰納法的関係が下記のように与えられる。
【0019】
【数5】
および
【数6】
【0020】
ここで、変調ファクタはM=C/Cであり、Dは、セル長aの有限ユニット・セル長を持つ右手型伝送ラインに関しての一般化した帰納項(generalized recursion term)である。これは結果として、以前に研究された連続(a=0)変調される伝送ラインにおいて存在しない自然な分散となり、ここでまた、上側カットオフ周波数を課す。ユニット・セル長aが小さい値の場合、式(6)は、時間空間変調される連続的右手型伝送ラインに関して以前に導き出した式へと縮小する。
【0021】
[0030] 式(5)および(6)を用いて、連続的端数関係(continuous fraction relation)を下記のように導き出すことができる。
【0022】
【数7】
【0023】
[0031] f(k,w)に関して式(7)を解くと、周波数wと、選択された中央ハーモニックsあたりに中心がある波ベクトルkとの間の分散関係が得られる。式(7)は、伝統的に、0次ハーモニック(s=0)に設定され、従って、低次のハーモニック(例えば、s=-1およびs=+1)のみが、小から中の変調ファクタMを想定した継続的端数において維持される。この近似は、連続的な空間時間変調される伝送ラインを形作るための既知の3波混合アプローチ(three-wave mixing approach)と等価である。
【0024】
[0032] 式(6)は、伝送ライン・コンポーネント・パラメータの特定の組に関しての曲線を計算するために使用できる一組の一般的分散曲線を導き出すために、純粋に無次元の形にすることができる。無次元(ノーマライズした)変数は下記のように定義できる。
【0025】
【数8】
【0026】
[0033] 式(6)は、下記のものへと変換できる。
【0027】
【数9】
【0028】
ここで、p=ka/2π、r=v/v、v=w/k、およびv=a/(LC1/2であり、vは、空間時間ポンプ変調が無くユニット・セル長aと比較して信号波長が大きい場合の伝送信号の位相速度を表し、vは、空間時間変調波の等価の位相速度であり、rファクタは、これら2つの速度の比である。
【0029】
[0034] 新たに導入されたパラメータpは、空間変調波長に対しての伝送ラインのユニット・セル長aの比と等しい。換言すると、パラメータpは、ユニット・セル長aと変調信号の波長λとの間の比である。pファクタは、システム全体の分散にわたっての追加の制御をもたらし、結果として、ストップ・バンド内の周波数を持つ波に対しての減衰における増進とマルチギャップ分散との双方が得られる。
【0030】
[0035] 分散関係をグラフィック的に解くために、式(7)を、式(9)により与えられる帰納項Dの無次元の形を用いて作り直すことができ、次に、f(k,w)kの絶対値(ABS)のlogを、波ベクトルk値および周波数w値の選択された範囲に関しての(k,w)ペアのグリッドについて、プロットすることができる。周波数w値は、正の実数と定義されるが、一般に、k波ベクトル値は複素数である。そのため、(k,w)グリッドは、波ベクトルkの実数部分と虚数部分とに関して分離してプロットされる。伝送ライン構造12はロスレスなので、波ベクトルkの虚数部分がゼロである波ベクトルkの実数部分の様々な値についての伝播する波の解が、最初に見つかる。同様に、減衰する波の解も得られ、この場合、波ベクトルkは実数(固定)および虚数の成分を有する。これでf(k,w)の値のプロットの有用性が明らかになったが、この場合、f(k,w)の2Dのカラーまたはグレイ・スケールのプロットは、最小を表示し、従って、f(k,w)=0という分散解(dispersion solution)となる。
【0031】
[0036] 図2および図3は、横軸を複素数波ベクトルkとし、縦軸を周波数wとしたグラフであり、空間変調周期と比べて小さいユニット・セル長を有し、時間的に静的であるが空間的に変調される伝送ラインでの、波ベクトルkの実数部分の分散についてのグレイ・スケール・プロットを示す。特に、図2および図3は、式(7)を切り詰めるための帰納項Dにおける、図2に示す1次ハーモニック(s=-1,+1)近似および図3に示す2次ハーモニック近似(s=-2,-1,+1,+2)を伴う、波ベクトルkの実数部分および中心ハーモニックs=0に関してのlog ABS[f(k,w)]についての、グレイ・スケール・プロットを示す。この例では、r=0(w=0)と設定され、a<<空間変調周期(λ=2π/k)である。
【0032】
[0037] 図2および図3の明るい線は、log ABS[f(k,w)]の最小値、従って、分散解またはブリルアン・ゾーンを表し、ここでは、-1と+1とのハーモニック線が0次線と交差し、ゾーンの境界で予想どおりにバンド・ギャップが形成される(図2)。近似に2次、-2および+2、のハーモニックが付加されると、ここで、2つの追加の分散線が、交差点での追加のバンド・ギャップを伴って、観察される(図3)。
【0033】
[0038] 時間変調は無しと仮定されているので(r=0またはw=0)、分散は、変調信号ベクトルkの符号に関してレシプロカルである。高次のハーモニックを付加することにより、追加の分散線およびバンド・ギャップが図2および図3の0次分散線の上に現れることになる。0次線の左および右への繰り返すブリルアン・ゾーン構造が無いのは、式(7)においてs=0を選択するからである。s=-1または+1が選択された場合、これは、図2および図3に示すパターンの原点を、左または右へと、横方向にずらすことになる。これらが高次の解の全てに含まれた場合、伝送ライン構造12に関しての繰り返すブリルアン・ゾーン・スキームの全てを得ることができる。残りの検討における目的のためには、式(7)における原点を開始するs=0にとどまることのみが必要である。
【0034】
[0039] この時間的に静的でありほぼ連続的な(a<<空間変調周期)伝送ライン構造12の分析を完了するために、波ベクトルkの固定の実数部分についてのlog ABS[f(k,w)]のグレイ・スケール・プロットを、波ベクトルkの虚数部分を変化させながら、得ることができる。波ベクトルkの実数部分は、図2および図3に示すバンド・ギャップのところに固定され、波ベクトルkの虚数部分を変化させて、特定の周波数wでの波の減衰の強度を決定する。
【0035】
[0040] 図4図5、および図6は、横軸を複素数波ベクトルkとし、縦軸を周波数wとしたグラフであり、バンド・ギャップ内の周波数でのフロケ展開された波の解の成分の減衰の指数強度を表す、波ベクトルkの固定の実数部分を有するlog ABS[f(k,w)]のグレイ・スケール・プロットを示す、第1バンド・ギャップのところで波ベクトルkの固定の実数部分を有する非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルkの虚数部分の分散についてのグレイ・スケール・プロットを示す。波ベクトルkの実数部分は、ABS[f(k,w)]を最小化するように調節され、次に、グレイ・スケール・プロットのためにその値に固定される。図4および図5に示すように、1次および2次の近似についての減衰(波ベクトルkの虚数部分の最大値)は同じである。説明したように、この第1ギャップは、波ベクトルk=πの実数部分のブリルアン境界(Brillouin boundary)で生じる。図5において高い周波数範囲で示す2次ギャップは、2次近似と相対して幾らか大きい変調ファクタMが原因で、波ベクトルkの少しだけ大きい実数部分で生じる。
【0036】
[0041] 図4図5、および図6は、波ベクトルkの虚数部分に関しての正と負との双方の値を示す。波ベクトルkの固定の正の実数部分に関してのこの時間的に静的な例(外部エネルギ源が無い)における暴走解(runaway solutions)を避けるために、波ベクトルkの虚数部分の正の値を得るようにし、また、波ベクトルkの固定の負の実数部分については、波ベクトルkの虚数部分の負の値を得るようにする。
【0037】
[0042] 上記で検討したように、連続的に空間的に変調される伝送ラインの分散と減衰との双方を説明するための、f(k,w)のプロットの有用性が確立された。時間的に静的な伝送ライン構造12での分散への有限ユニット・セル長aの影響を、考慮することができる。バラクタ・ベースの伝送ライン構造12に関して、この推定は、バラクタを、λ=2π/kの周期でユニット・セル14間で周期的に変化する固定のキャパシタに置換しないかぎり、非物理的である。
【0038】
[0043] 図7図8、および図9は、横軸を複素数波ベクトルkとし、縦軸を周波数wとしたグラフであり、M=0.1、r=0、およびp=0.2に関して有限ユニット・セル長を持つ、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、波ベクトルkの実数部分についての分散曲線を示す。図7は、2つのバンド・ギャップについての、波ベクトルkの虚数部分のプロットと共に、第1ハーモニック近似についての波ベクトルkの実数部分の分散曲線を示す。後続することは、第2ハーモニック近似に関して基礎的に異ならない。殆どが有限ユニット・セル2 14から生じる分散を強調するために、比較的弱い変調定数M=0.1が選択された。分散は、-1と+1とのハーモニックでの0次分散線の交差点で形成される2つのバンド・ギャップと共に、上側カットオフ周波数を示す。図7図8、および図9における下側周波数ギャップは、図4でk=πで見られるギャップと同じであるが、ここで、カットオフ周波数に起因して0次分散曲線上で曲がり交差する1次ハーモニックに起因して、第2ギャップが現れる。2つのギャップの相対的減衰強度は図8および図9で見ることができ、ギャップの幅および強度は、周波数w=9.5での「新たな」ギャップに関してはかなり大きい。
【0039】
[0044] 図9の下側ギャップは、k=πにとどまるが、図8の上側ギャップは、式(9)においてもたらされたpファクタで、波ベクトルkの実数部分のその位置を変える。pファクタを定義する別の方法は、空間変調波長(λ=2π/k)に対する有限ユニット・セル長aの比である。上側および下側のギャップは、図10および図11に示すように、p=0.5と設定することにより、波ベクトルk=πの実数部分で、一致するようにでき、ここで、図10は、図7に示すグラフであるがpファクタが0.5であり、図11は、1つのギャップへと合体させた図8および図9に示すグラフである。ファクタP>0.5の場合、上側ギャップは、波ベクトルk=πの固定の実数部分のギャップより下に落ち、ここで下側ギャップとなる。留意すべき重要な点は、このダブル・バンド・ギャップ特徴は、変調ファクタMの小から中の値の計算に2次ハーモニック項を含むとき、持続する、ということである。これは、典型的な伝送ライン構造12の計算に関しては1次ハーモニック分析で十分であろうことを、意味する。
【0040】
[0045] 時間的に静的な周波数w=0の制限は、取り除かれ、有限ユニット・セル伝送ライン構造12に置かれ、rファクタが非0にされることを可能とする。これは、変調波を注入することができ、その振幅は、周波数wおよび位相速度v=w/kで、空間および時間においてバラクタのキャパシタンスを変化させるために、十分に強いことを、意味する。有限ユニット・セル長aが無限に小さい場合、非レシプロカルの挙動を回復することができる。有限ユニット・セル長aが許される場合、図7図8、および図9に示されるダブル・バンド・ギャップ構造を回復することができるが、非レシプロカルの度合いはrファクタの値に依存する。時間的に静的な場合と同様に、上側ギャップの波ベクトルkの位置は、pファクタを調節することにより調節することができる。しかしながら、伝送ライン構造12はここでは非レシプロカルなので、2つのバンド・ギャップの相対的な位置は伝送信号の伝播が+k方向か-k方向かに応じて異なる。
【0041】
[0046] 特に興味深い例は、a+kの伝播する信号に関して2バンド・ギャップが1つのギャップへと合体するように、pファクタが調節されるときのものである。図12は、横軸を複素数波ベクトルkとし、縦軸を周波数wとしたグラフであり、時間的に静的であるが空間的に変調される伝送ラインについての、波ベクトルkの虚数部分の分散プロットを示し、図13は、横軸を複素数波ベクトルkとし、縦軸を周波数wとしたグラフであり、M=0.20、r=0.10、およびp=0.44に関しての、非レシプロカルの有限ユニット・セルの伝送ラインでの、分散曲線についての計算されたバンド構造を示す。
【0042】
[0047] 非レシプロカル・バンドギャップ対称性は、MATLAB(登録商標) fsolveを用い、局所解にしたがって、複素数波ベクトルkに関して式(7)においてf(k,w)=0を数的に解くことにより、より良く示される。図14は、横軸を複素数波ベクトルkとし、縦軸を周波数wとしたグラフであり、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインでの、-kおよび+kの伝播モードに関しての分散曲線についての計算されたバンド構造を示し、非レシプロカル・バンドギャップを表示する。図15は、横軸を複素数波ベクトルkとし、縦軸を周波数wとしたグラフであり、非レシプロカルの時間空間変調される有限サイズのユニット・セルの伝送ラインについての、計算されたバンド構造でのギャップでの波ベクトルkの固定の実数部分に関しての波ベクトルkの計算された虚数部分を示す。ほぼゼロの長さの有限ユニット・セルを持つ時間空間変調された伝送ラインと比較して、波ベクトルkの最大虚数値の値の大きい増加がある。これは、ストップ・バンド内の周波数を持つ1つの波の減衰を強くし、それに続いて、良好な信号分離に必要な長さ、即ち、ユニット・セル14の数を減らす。
【0043】
[0048] 伝送ライン・パラメータのこの特定の選択に関して、バンドパス・フィルタを、非レシプロカル特性を用いて構成することができる。この例では、伝送信号は、図15の左側に示された2つのギャップの間で-k方向に伝播することができるが、このバンド領域内で+k方向に動く伝送信号は、有効にブロックされる。この挙動は、変調信号の方向を逆にすることにより、自動的に逆にすることができる。
【0044】
[0049] 現実的な寸法、材料、および信号パラメータを持つ非レシプロカル・バンド・パス・フィルタ10の例は、下記のように提供される。変調ポンプ周波数w=6.28GHzおよびk=6.58cm-1、変調されていない相対的誘電率ε=9.8およびp=0.44、およびユニット・セル・サイズa=0.420cmに関して、図15は、中心バンド・ギャップΔf(Δw/2π)=5.17GHzを提供し、これに伴う中心ギャップ幅はΔf=1.18GHz、上側ギャップ幅は0.94GHz、下側ギャップ幅は0.67GHzである。
【0045】
[0050] また、興味をもたれるのは、フロケ展開係数Vsへの、有限ユニット・セル分散の影響である。1次元ハーモニック近似に関しては、これらの複素数の係数Vは下記のように与えられる。
【0046】
【数10】
【0047】
ここにおいて、周波数wおよび波ベクトルkは、式(7)の分散条件f(k,w)=0に対しての解のペアであり、係数Vは1(unity)へと任意に設定される。
【0048】
[0051] 例として、有限ユニット・セル長aを持つ連続的伝送ラインについての係数を、比較することができる。図16図19は、空間時間変調された伝送ラインでの、横軸を複素数波ベクトルkとし、縦軸をフロケ展開係数Vの絶対値としたグラフであり、パラメータM=0.30、r=0.10、およびp=0または0.25についてのグラフ線を有する。図16は+k方向の値を示し、図17は-k方向の値を示し、図18はs=-1のハーモニックスを示し、図19はs=+1のハーモニックスを示す。+k値がバンドギャップより下の順方向伝播信号については、連続的伝送ラインと比べて、有限ユニット・セルの場合についてはs=+1のハーモニックにおいて大きい増大が提供され得る。これはまた、逆方向-k信号に関してのs=-1のハーモニックについても真であるが、少し小さいものとなる。逆に、+k信号についての-1のハーモニックと-k信号についてのs=+1のハーモニックとの何れも、変化は小さい。
【0049】
[0052] アイソレータの応用についての分散エンジニアのレシプロシティの破壊の方法として、空間時間変調された伝送ライン構造12は、有限ユニット・セル長aを含むように、従来技術を超えて拡張された。ブロッホ-フロケの方法は、解のセットの完全なハーモニックの展開を提供し、限定されたハーモニック項のセットの使用を正当化するために用いることができる。周波数wと波ベクトルkとの双方のグリッドのグレイ・スケール・プロットと、MATLAB(登録商標)の複素数ソルバー(complex solver)とは、様々な伝送ライン・パラメータについての分散バンド構造を例示するために用いられた。有限ユニット・セル分散を用いる時間的に静的で純粋な空間変調は、空間変調周期に対するユニット・セル長aの比率を制御することによりチューン可能なレシプロカル・ダブル・バンド・ギャップ構造を生じさせる。時間空間変調を導入することにより、一意のバンド・パスおよびストップ・バンドの挙動を示すようにチューン可能な非レシプロカル・ダブル・バンド・ギャップ構造を生じさせる。
【0050】
[0053] 上記の検討は、本開示の単なる例としての実施形態を開示および説明する。当業者は、このような検討から、および添付の図面および請求の範囲から、下記の請求の範囲に定めたこの開示の精神および範囲から外れることなく、それらの様々な変更、改造、および変形が可能であることを、容易に認識するであろう。
図1
図2
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図5
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