IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-塗装液混合装置及び塗装液の混合方法 図1
  • 特許-塗装液混合装置及び塗装液の混合方法 図2
  • 特許-塗装液混合装置及び塗装液の混合方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】塗装液混合装置及び塗装液の混合方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240917BHJP
   B05B 3/10 20060101ALI20240917BHJP
   B05B 5/04 20060101ALI20240917BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240917BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240917BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20240917BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B05C11/10
B05B3/10 B
B05B5/04 A
B05C5/00 101
B05D7/24 301U
B05D1/02 Z
B05D3/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022012206
(22)【出願日】2022-01-28
(62)【分割の表示】P 2021567546の分割
【原出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022064958
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019231128
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(72)【発明者】
【氏名】中川 文寛
(72)【発明者】
【氏名】川本 英樹
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-208158(JP,A)
【文献】実開平07-037350(JP,U)
【文献】特開2008-290252(JP,A)
【文献】特表2016-538991(JP,A)
【文献】特開2005-137980(JP,A)
【文献】特開2008-62157(JP,A)
【文献】特開2006-125012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B05B 3/10
B05B 5/04
B05C 5/00
B05D 7/24
B05D 1/02
B05D 3/00
B01F 23/40
B01F 25/72
B01F 25/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の塗装液がそれぞれ流れる複数の流路を有し、前記複数の流路が先端側に開口する供給管部と、
前記複数の流路を流れる塗装液が内部空間に供給されるように前記供給管部の出口部分に連なり、開口面積が前記複数の流路の開口総面積よりも小さくなるように、前記内部空間が出口側に進むにつれて狭まる縮径部分を有する混合ノズル部と、
を備え、
前記混合ノズル部には、混合液を噴射する噴射口が形成される、塗装液混合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装液混合装置であって、
前記複数の流路は、中央流路と、前記中央流路を周方向に囲む環状流路とを含み、
前記混合ノズル部は、前記環状流路の出口を覆っており、
前記縮径部分は、前記噴射口に進むにつれて徐々に狭まる形状に形成されている、塗装液混合装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗装液混合装置であって、
前記中央流路の断面積は、前記環状流路の断面積よりも大きい、塗装液混合装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の塗装液混合装置であって、
前記混合ノズル部が前記供給管部に対して着脱可能に形成される、塗装液混合装置。
【請求項5】
請求項3に記載の塗装液混合装置であって、
前記混合ノズル部の出口側の開口面積は、前記中央流路の出口側の開口面積よりも小さい、塗装液混合装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載の塗装液混合装置であって、
前記中央流路を流れる塗装液の流速よりも、前記環状流路を流れる塗装液の流速が大きくなるように設定される、塗装液混合装置。
【請求項7】
請求項3に記載の塗装液混合装置であって、
前記中央流路を硬化剤が流れ、前記環状流路を主剤が流れる、塗装液混合装置。
【請求項8】
(a)複数の塗装液がそれぞれ流れる複数の流路を有し、前記複数の流路が先端側に開口する供給管部と、前記複数の流路を流れる塗装液が内部空間に供給されるように前記供給管部の出口部分に連なり、開口面積が前記複数の流路の開口総面積よりも小さくなるように、前記内部空間が出口に進むにつれて徐々に狭まる縮径部分を有する混合ノズル部とを準備する準備ステップと、
(b)準備ステップの後で、前記供給管部に形成される複数の流路のそれぞれに塗装液を供給し、前記供給管部の出口から前記混合ノズル部の内部空間で複数の塗装液を混合させる供給ステップと、
を備え
前記複数の流路のうちのいずれか1つを流れる塗装液の流速よりも、前記複数の流路のうちのいずれかの他の1つを流れる塗装液の流速が大きくなるように設定する、塗装液の混合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗装液を混合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗料フィードチューブから供給された複数の塗料が、管路内部に設けられるスタティックミキサーの内部を通過する際に混合されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-153184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のスタティックミキサーは、撹拌用の邪魔板を有している。この技術では、邪魔板部分に塗装液内の含有物質が詰りやすい。したがって洗浄に手間がかかり、メンテナンス性が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、メンテナンス性に優れた塗装用液混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、塗装液混合装置は、複数の塗装液がそれぞれ流れる複数の流路を有し、前記複数の流路が先端側に開口する供給管部と、前記複数の流路を流れる塗装液が内部空間に供給されるように前記供給管部の出口部分に連なり、開口面積が前記複数の流路の開口総面積よりも小さくなるように、前記内部空間が出口側に進むにつれて狭まる縮径部分を有する混合ノズル部と、を備える。
【0007】
また、上記課題を解決するため、塗装液の混合方法は、(a)複数の塗装液がそれぞれ流れる複数の流路を有し、前記複数の流路が先端側に開口する供給管部と、前記複数の流路を流れる塗装液が内部空間に供給されるように前記供給管部の出口部分に連なり、開口面積が前記複数の流路の開口総面積よりも小さくなるように、前記内部空間が出口に進むにつれて徐々に狭まる縮径部分を有する混合ノズル部とを準備する準備ステップと、(b)準備ステップの後で、前記供給管部に形成される複数の流路のそれぞれに塗装液を供給し、前記供給管部の出口から前記混合ノズル部の内部空間で複数の塗装液を混合させる供給ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記塗装液混合装置によると、混合ノズル部は、開口面積が前記複数の流路の開口総面積よりも小さくなるように、出口側に進むにつれて狭まる形状の内部空間を有する構成とされている。このため、複数の流路のそれぞれから混合ノズル部内に塗装液が供給されると、複数の塗装液は、混合ノズル部の内部空間において、流速を増しつつ、互いに混じり合う方向に案内される。このように各塗装液を偏向させることにより複数種の塗装液を混合することができる。このようにノズル内を流れる塗装液を偏向させて混合することで、撹拌用の邪魔板を設ける場合と比較して、塗装液の流速が極小となる領域を防ぐことができる。これによってノズル内における塗装液の詰まりを防ぐことができる。このことから塗装液の目詰まり解消作業の低減に起因して、メンテナンス性を向上させることができる。
【0009】
また、上記塗装液の混合方法によると、上述する混合ノズル部を準備し、供給ステップで、混合ノズル部を用いて塗装液を混合させる。これによって上述したように、ノズル内における塗装液の詰まりを防ぐことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る塗装液混合装置を示す説明図である。
図2図2図1におけるII-II線部分断面図である。
図3】変形例に係る塗装液混合装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る塗装液混合装置及び塗装液の混合方法について説明する。図1は実施形態に係る塗装液混合装置を示す説明図である。図2図1におけるII-II線部分断面図である。
【0012】
塗装液混合装置20は、複数の塗装液を混合する装置である。本実施形態では、一例として、塗装液混合装置20は、塗装装置の一部として設けられる。具体的には、塗装液混合装置20は、塗装装置のうちで塗装液を噴射する噴射口に近い位置に設けられる。たとえば塗装装置は、先端部を任意の位置及び姿勢に移動可能な塗装ロボット装置と、ロボット装置の先端部に設けられて塗装液を噴射する噴射装置と、塗装液を貯留する貯留タンクから噴射装置に向けて塗装液を供給する供給装置と、制御装置とを含んで構成される。制御装置は、ロボット装置、噴射装置および供給装置をそれぞれ制御する。
【0013】
制御装置が、ロボットに動作指令を与えることで、ロボットによって噴射装置の噴射口をあらかじめ定める位置及び向きに移動させることができる。また制御装置が、噴射装置および供給装置を制御することで、塗装液をあらかじめ定める噴射タイミングで、予め定める噴射量で噴射させることができる。
【0014】
本実施形態の塗装装置は、塗装液を微細化するためのベルカップ160を備えていてもよい。ベルカップ160は、塗装液が滞留する滞留空間163を形成するとともに、滞留空間163に滞留する塗装液を回転による遠心力によって、径方向外側に吐出する。より詳しくは、塗装装置は、ベルカップ160よりも上流側に設けられて、滞留空間163に塗装液を吐出する混合ノズル部40を有する。混合ノズル部40から吐出された塗装液は、ベルカップ160内の滞留空間163の噴射方向下流側壁面164に衝突する。ベルカップ160は、混合ノズル部40の噴射軸線まわりに高速回転する。ベルカップ160に付着した滞留空間163内の塗装液は、ベルカップ160とともに回転しつつ、遠心力によって径方向外側に移動する。塗装液は、ベルカップ160の壁面を伝って、遠心力によって滞留空間163に形成される開口Sから滞留空間163外に吐出される。塗装液は、ベルカップ160の壁面を径方向にさらに移動しながら薄膜状に移動し、ベルカップ160のエッジ部で粒子状となり、ベルカップ160から径方向外側へ飛散する。飛散した塗装液は、静電効果でさらに微粒化して塗装対象物に向かう。このようにして本実施形態の塗装装置は、霧化(微粒化)した塗装液を塗装対象物に吹き付ける。たとえば塗装装置は、自動車、自動二輪車または建設機械などの乗物車体の外装塗装に用いられる。塗装対象は、自動車部品、電化装置、金属部品等でもよい。
【0015】
本発明の実施の一形態の塗装装置は、複数の塗装液を混合して、ベルカップ160の滞留空間163に供給する。塗装装置は、色味を決定するための主剤となる塗装液と、主剤を硬化させるための硬化剤とを混合した混合液15をベルカップ160の滞留空間163に吐出する。混合液15は、塗装液の一例である。主剤は、要求される塗装形態(塗装色等)に応じて適宜選択される。また硬化剤については、要求される塗装形態(塗装色)にかかわらず共通化されてもよい。主剤および硬化剤については、塗装液として用いられる既知の材料を用いることができる。
【0016】
塗装液混合装置20は、供給管部30と、混合ノズル部40とを備える。供給管部30には、複数の流路32、34が形成されている。供給管部30の基端側から硬化剤12、主剤14がそれぞれ供給される。硬化剤12、主剤14は、異なる流路32、34を別々に流れ、それぞれの出口から流出する。混合ノズル部40は、供給管部30の出口部分に連なる。上述したように硬化剤12、主剤14は、混合ノズル部40内で混合され、混合ノズル部40の出口からベルカップ160の滞留空間163に向けて流出する。
【0017】
供給管部30は、管状に形成される複数の流路を有する。より具体的には、供給管部30は、複数の流路として、中央流路32と、外側流路となる環状流路34とを含む。本実施形態では、主剤14となる塗装液が環状流路34に供給される。また硬化剤12となる塗装液が中央流路32に供給される。硬化剤12は、主剤14に比べて粘度が大きい。また硬化剤12は、主剤14に比べて比重が大きい。また主剤14は、硬化剤12よりも流量(単位時間当たりに流れる体積)が多くなるように供給される。主剤14と硬化剤12とが互いに逆に通路を通ってもよい。
【0018】
中央流路32は、その中心軸線が、供給管部30の中心軸に沿って延びるように形成される。中央流路32には、流れ方向下流側に開放する出口が形成される。本実施形態では、中央流路32は、中心軸線に垂直な断面形状が円状になるように形成される。
【0019】
環状流路34は、中央流路32の径方向外側に位置する。環状流路34は、その中心軸線が、供給管部30の中心線に沿って延びるように形成される。環状流路34には、流れ方向下流側に開放する出口が形成される。本例では、環状流路34は、中央流路32の周囲を囲むように形成されている。環状流路34は、中央流路32を周方向全周にわたって覆う環状に形成されている。より具体的には、環状流路34は、中央管路の中心軸線を中心とする円環状に形成される。すなわち中央流路と、環状流路とは、同心円状に形成される。
【0020】
このような供給管部30は、2つの管の組合せによって形成することができ得る。例えば、外側の管に対して、中央の管を一定位置に位置決めするためのスペーサ部材が、中央の管と外側の管の間に介在配置されてもよい。このようにして、中央流路32の周囲に環状流路34が形成された状態が保たれてもよい。供給管部の各流路に関して、それぞれを連通する連通路は形成されておらず、中央流路及び環状流路を流れる硬化剤12及び主剤14は、供給管部30内では混合されることなく、入口から出口まで流れる。
【0021】
中央流路32の軸線に対して直交する横断面における形状は、円形のほか、楕円形、多角形状等であってもよい。また、環状流路34の横断面における形状は、円形環状のほか、楕円形環状、多角形状環状であってもよい。また各流路32、流路34の形状および大きさは、供給管部30の入口側と出口側とで、異なっていてもよい。
【0022】
混合ノズル部40は、供給管部30の出口部分に連なっている。混合ノズル部40は、軸線方向両端が解放される筒状に形成される。混合ノズル部40の入口部分が供給管部30の出口部分に接続される。混合ノズル部40の出口部分は、供給管部30の出口部分よりも流れ方向下流側に位置する。したがって混合ノズル部40の内部空間42の大部分は、供給管部30よりも塗装液の流れ方向下流側に配設される。具体的には、混合ノズル部40は、環状流路34の出口を覆う形状に形成される。中央流路32の出口および環状流路34の出口は、混合ノズル部40の内部空間に開放される。これによって各流路32,34を通過したそれぞれの硬化剤12、主剤14は、混合ノズル部40の内部空間42で合流する。本例の混合ノズル部40は、供給管部30の中心軸線と同軸の円管状に形成される。言い換えると混合ノズル部40の内部空間42は、中央流路32および環状流路34と同軸に形成される。
【0023】
混合ノズル部40は、出口に進むにつれて徐々に狭まる縮径部分を有する。具体的には、混合ノズル部40は、縮径部分のほか、供給管部30に接続される接続部分と、噴射口が形成される噴射部分とがそれぞれ形成される。混合ノズル部40は、流れ方向上流側から下流側に向かうにつれて、接続部分、縮径部分、噴射部分が軸線方向に並んで形成される。本例では、接続部分は、供給管部30の径方向外方から篏合することで、供給管部30に接続される。接続部分は、流れ方向下流側で縮径部分に連なる。また縮径部分は流れ方向下流側で噴射部分に連なる。本例では、噴射部分は、軸線方向にわたって径が一様な円管状に形成される。
【0024】
図2に示すように、混合ノズル部40の内部空間42は、噴射口が形成される出口側の開口面積S4が各流路32、34の開口総面積S1よりも小さくなるように形成される(S4<S1)。具体的には、内部空間42は、縮径部分によって、出口となる噴射口に進むにつれて断面積が徐々に狭まる形状に形成されている。本実施形態では、各流路32、34の開口総面積S1は、中央流路32の出口側における開口面積S2と、環状流路34の出口側における開口面積S3との和である。ここでは、内部空間42は、基端側空間43と、中間空間44と、先端側空間45とを含む。基端側空間43は、環状流路34の外径よりも大きい外径を保つ円柱状に形成される。ここでは、基端側空間43の外径は、供給管部30の外径と同じ大きさに設定されており、基端側空間43は供給管部30の出口側端部からさらに流れ方向下流に延びる。先端側空間45は、基端側空間43よりも小さい外径を保つ円柱状の空間部分に形成される。先端側空間45における先端側開口の面積S4が上記総面積S1よりも小さい。本実施形態では、先端側空間45の面積S4は、中央流路32の開口面積S2よりも小さく設定されている。また、中央流路32の断面積(軸線に沿った方向における断面積)は、外周側の環状流路34の断面積よりも大きくてもよい。
【0025】
中間空間44は、基端側空間43から先端側空間45に向けて徐々に狭まる形状に形成されている。ここでは、中間空間44は、基端側空間43から先端側空間45に向けて連続的に外径が小さくなる形に形成されている。換言すれば、中間空間44は、円錐の頂部の切除した円錐台状の空間に形成されている。
【0026】
このような混合ノズル部40は、金属管を延性変形させたり、切削加工させたりして形成されてもよい。本例では、混合ノズル部40の外形状も上記内部空間42に応じた形状に形成されている。混合ノズル部40内に上記内部空間42が形成されていればよく、混合ノズル部40の外形状は特に限定されない。
【0027】
本実施形態では、供給管部30と混合ノズル部40とは別体に形成されている。供給管部30の先端部における外径と混合ノズル部40の基端部における内径とは、供給管部30の先端部に混合ノズル部40の基端部を外嵌め可能な大きさに設定されている。このため、混合ノズル部40の基端部を供給管部30の先端部に外嵌めすることができ、これにより、混合ノズル部40が供給管部30に対して着脱可能に取付けられる取付構造を有する。混合ノズル部40を供給管部30に着脱可能に取付ける構造は、供給管部の先端部と混合ノズル部の基端部との一方が他方に対して圧入される構造であってもよい。また、たとえば供給管部と混合ノズル部との接続部分には、接続状態を維持するための抜け止め防止構造が形成されてもよい。たとえばボルト部材やクランプ部材といった締結部材によって着脱可能に構成される。この取付構造は、供給管部の先端部と混合ノズル部の基端部とに相互に螺合し合うねじ溝が形成され、両者が螺合される構造であってもよい。この取付構造は、その他、混合ノズル部にねじ込まれたネジが供給管部30の外周部に押付けられる構造であってもよいし、その他、供給管部30及び混合ノズル部40の一方に設けられたフック構造が他方に引っ掛かる構造であってもよい。
【0028】
各流路32、34に硬化剤12、主剤14を供給する構成について説明する。硬化剤供給源60と供給管部30の基端部とが硬化剤供給体61を介して連通接続される。硬化剤供給体61内の管路と中央流路32とが連通している。硬化剤供給源60は、塗装液12である硬化剤12を貯留するタンクである。硬化剤供給体61の途中には硬化剤ポンプ62が設けられている。硬化剤ポンプ62の駆動によって硬化剤供給源60に貯留された硬化剤12が中央流路32に向けて供給される。硬化剤ポンプ62の駆動を制御することで、中央流路32を流れる硬化剤12の流速(圧力)が調整される。
【0029】
主剤供給源66と供給管部30の基端部とが主剤供給体67を介して連通接続されている。主剤供給体67内の管路と環状流路34とが連通している。主剤供給源66は、塗装液14である主剤14を貯留するタンクである。主剤供給体67の途中には主剤ポンプ68が設けられている。主剤ポンプ68の駆動によって主剤供給源66に貯留された主剤14が環状流路34に向けて供給される。主剤ポンプ68の動作を制御することで、環状流路34を流れる主剤14の流速(圧力)が調整される。上記各ポンプ62、68は、制御ユニット16に接続されている。制御ユニット16は、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置、補助記憶装置等を備えるコンピュータによって構成されている。制御ユニット16は、補助記憶装置等に格納されたプログラムに従って動作することで、各ポンプ62、68の動作を制御する。これにより、各流路32、34への硬化剤12、主剤14の供給オンオフ、流路32、34における流速等が調整される。各流路32、34への硬化剤12、主剤14の供給オンオフ、流路32、34における流速等は、供給体61、67に設けられた電磁調整弁等の駆動制御によってなされてもよい。
【0030】
主剤が供給される環状流路は、複数種類の主剤供給が切り替えられるように構成されてもよい。この場合、異なる種類の主剤ごとに、タンクおよび主剤供給体がそれぞれ設けられるとともに、供給通路を切り替えるための切替装置が設けられる。制御ユニットは、切替装置を制御することによって、供給管部に供給する主剤を切り替えることができる。これによって制御装置は、塗装対象に応じて、異なる主剤を供給させることができる。
【0031】
塗装液の混合方法について説明する。塗装液の混合方法は、(a)上記供給管部30と混合ノズル部40とを準備する準備ステップと、(b)準備ステップの後で、供給管部30に形成される複数の流路32、34のそれぞれに硬化剤12、主剤14を供給し、供給管部30の出口から混合ノズル部40の内部空間42で複数の硬化剤12、主剤14を混合させる供給ステップと、を備える。
【0032】
混合ノズル部40の内部空間42は、硬化剤12と主剤14とが混合される空間であるため、混合用空間の一例である。この内部空間42は、出口側に進むにつれて狭まる形状となる縮径部分を有する。このため硬化剤12と主剤14とが、混合ノズル部40の内部空間42において、流速を増しつつ、互いに混じり合う方向に案内される。このように各硬化剤12、主剤14を偏向させることにより硬化剤12と主剤14とを混合することができる。このようにいわゆる剪断混合させることによって、供給体に攪拌用の邪魔板を設ける場合と比較して、塗装液の流速が極小となる領域を防ぐことができる。これによってノズル内における塗装液の詰まりを防ぐことができる。このことから塗装液の目詰まり解消作業の低減に起因して、メンテナンス性を向上させることができる。本実施形態では、このように塗装液の詰まりを防ぐことができることから、作業工程の削減のほかに、塗装液の詰まりを解消するための洗浄剤の使用量を低減することができる。これによって洗浄剤の廃液処理を減らすことがき、廃液処理にかかる費用や、環境への負荷を低減することができる。なお、ここでの剪断混合とは、各塗装液に主として剪断力を付与しながら混合を行うことをいう。
【0033】
本実施形態では、中央流路32を流れる硬化剤12の流量(単位時間当たりに流れる体積)よりも、環状流路34を流れる主剤14の流量が大きくなるように設定される。また中央流路32を流れる硬化剤12の流速よりも、環状流路34を流れる主剤14の流速が大きくなるように設定されてもよい。ここでの流速は、中央流路32、環状流路34のうち出口開口における流速である。このような流量または流速の設定は、中央流路32及び環状流路34の流路面積に鑑みて、上記各ポンプ62、68の駆動を制御すること等によりなされてもよい。
【0034】
主剤14は、環状流路34から内部空間42のうちで径方向外側領域に向けて供給される。上述したように内部空間42においては、環状流路34より供給される主剤14を囲む内周壁が狭まる。これによって内部空間42の内周壁によって径方向内側領域に偏向するとともに流速がさらに高められる。これにより、主剤14が径方向内側を流れる硬化剤12に向いやすくなり、主剤14と硬化剤12とが混合されやすくなる。言い換えると、主剤14の流速(流量)を高めることで、内部空間42で径方向内側に回り込む主剤14の流れを作り出しやすく、いわゆる剪断混合をさらに促進させることができる。なお、中央流路32を流れる硬化剤12の流速(または流量)は、環状流路34を流れる主剤14の流速(または流量)と同じであっても、大きく設定されていてもよい。
【0035】
また本実施形態では、中央流路32を流れる硬化剤12の粘度よりも、環状流路34を流れる主剤14の粘度が小さくなるように設定される。この設定は、硬化剤供給源60に貯留される硬化剤12の粘度を、主剤供給源66に貯留される主剤14の粘度よりも小さくすることによって実現されてもよい。
【0036】
このように環状流路34を流れる主剤14の粘度を小さくすることで、内部空間42において径方向外側を流れる主剤14の偏向を容易にすることができる。これによって径方向外側を流れる主剤14が径方向内側に向かいやすく、内部空間42で径方向外側から径方向内側に回り込む主剤14の流れを作り出しやすく、いわゆる剪断混合をさらに促進させることができる。なお、中央流路32を流れる硬化剤12の粘度は、環状流路34を流れる主剤14の粘度と同じであっても、大きく設定されてもよい。
【0037】
このように構成された塗装液混合装置20及び塗装液の混合方法によると、上述したように複数種の塗装液12、14を混合することができる。本実施形態では、混合ノズル部40によって吐出された混合液15がベルカップ160内の滞留空間163に到達し、ベルカップ160内でさらに攪拌される。これによって塗装対象物に到達する前の混合をさらに高めることができる。言い換えると、ベルカップ160内と混合ノズル部40の両方で混合させることができるので、混合ノズル部40だけで混合する場合に比べて、塗装対象物に到達する前の混合具合を向上させることができる。
【0038】
また、混合ノズル部40における内部空間は、先端側空間45に向けて連続的に徐々に狭まる形状である中間空間44に形成されていてもよい。この場合、硬化剤12、主剤14が付着しやすい角部分を抑えることができる。また硬化剤12、主剤14が混合ノズル部40の内周壁に付着したとしても、内周面の凹凸が防がれることで、洗浄液によって付着物を洗浄しやすい。このため、混合ノズル部40の洗浄等が容易となり、メンテナンス性に優れる。なお、本実施形態では、内部空間は、円錐台形状であるとしたが、軸線を通過する断面形状として他の形状に形成されてもよい。たとえば内周面が曲線状、たとえば放物線状に延びて、出口側に進むにつれて徐々に縮径する形状であってもよい。
【0039】
また、環状流路34は、中央流路32を周方向に囲む環状に形成されていてもよい。この場合、環状流路34から混合ノズル部40内に供給された主剤14を、中心軸線の全周にわたる領域から、混合ノズル部40の中心軸に向けて案内することができる。これにより周方向での混合具合に対する偏りを抑えることができる。これによって硬化剤12、主剤14をさらに好適に混合させることができる。
【0040】
また、混合ノズル部40は、供給管部30に対して着脱可能に形成されていてもよい。この場合、混合ノズル部40を供給管部30から取外して、混合ノズル部40を洗浄することができる。混合ノズル部40は、主剤14と硬化剤12とが混合されることで、上流側の部分に比べて、硬化による付着が生じやすい部分となる。この部分を取り外すことで、供給管部30を含めて洗浄する場合に比べて、付着部分を集中的に洗浄することができる。この点からも、塗装液混合装置20のメンテナンスが容易となる。さらに本実施形態では、混合ノズル部40は、供給管部30の下流側出口となる下流端部分(先端側部分)に接続される。これによって供給管部30よりも上流側に配置される場合に比べて、ベルカップ160となる下流側からアクセスしやすい。これによって混合ノズル部40を着脱しやすく、混合ノズル部40の洗浄のための取り外し作業時間を短縮することができる。
【0041】
また混合ノズル部40は、その内部空間42における先端側開口面積S4は、複数の流路32、34の開口総面積S1よりも小さくなるように形成されていてもよい(S4<S1)。この場合、硬化剤12、主剤14は、供給管部を流れる状態に比べて、混合ノズル部40から吐出される状態の流速を増加させることができる。このように先端側開口面積が絞られていることから、混合用空間での混合を促進することができ、各硬化剤12、主剤14の混合具合を高めることができる。また混合ノズル部40の出口よりも上流側の領域での開口面積が、複数の流路32、34の開口総面積S1よりも小さくなるように形成されていることで、吐出する前に各硬化剤12、主剤14の流速を増すことができ、混合具合をさらに高めることができる。
【0042】
また、中央流路32の開口面積S2が混合ノズル部40の出口の面積S4よりも大きく形成されていてもよい。この場合、絞り状態を強めることで、混合用空間での混合をさらに促進することができる。また、各硬化剤12、主剤14は、混合ノズル部40内でさらに流速を増す。このため、硬化剤12、主剤14の混合をさらに促進することができる。
【0043】
混合装置20には、流路32、34のさらに外周側に外周側流路136が形成されていてもよい。例えば、供給管部30の周囲に外側管部132が設けられている。供給管部30と外側管部132との間に環状をなす外周側流路136が形成されている。外周側流路136が環状をなしていることは必須ではなく、孔状に形成されていてもよい。
【0044】
外周側流路136の開口は、混合ノズル部40の外周側に開口している。また、外側管部132の開口は、混合ノズル部40の開口よりも手前側に開口していてもよい。より具体的には、外側管部132は、供給管部30の外周面に対して間隔をあけるように設けられる。混合ノズル部40は、供給管部30の先端部に被さっている。混合ノズル部40の基端側の外周面と外側管部132との間にも隙間が形成される。供給管部30の外周面と外側管部132との間の開口は、混合ノズル部40の外周側に開口している。また、外側管部132の先端部は、混合ノズル部40の開口よりも手前に位置している。このため、外周側流路136の開口は、混合ノズル部40の開口よりも手前に位置している。ここでは、外周側流路136は、ベルカップ160よりも手前で開口している。
【0045】
洗浄液供給源71の洗浄液がポンプ73によって洗浄液供給体72を介して外周側流路136内に供給される。洗浄液は、硬化剤12、主剤14の種類に応じてそれらの液を溶かしやすいものが選定される。
【0046】
このように外周側流路136を設けると、当該外周側流路136に洗浄液112を流すことで、混合ノズル部40の外周側及び先端側を洗浄することができる。この際、外周側流路136は、混合ノズル部40の外周側を通り、その先端側に至るため、流路32、34の開口に達し難い。このため、流路32、34から供給される硬化剤12、主剤14に洗浄液112が混じり難く、安定した混合液15を製造できる。
【0047】
{変形例}
本実施形態では、ベルカップ160を用いた塗装装置に混合装置20が用いられた例を示したが、本発明はこれに限らない。すなわちベルカップ160以外の手段を用いて混合した塗装液を霧状化する装置に適用してもよい。たとえば圧縮空気に塗装液を含めて吐出するスプレーガンの吐出部分に本発明の混合装置を用いても同様の効果を得ることができる。
【0048】
また本実施形態では、中央流路32の開口面積S2が混合ノズル部40の出口の面積S4よりも大きく形成された例を説明したが、中央流路32の開口面積S2と混合ノズル部40の出口の面積S4とは同じであってもよいし、中央流路32の開口面積S2が混合ノズル部40の出口の面積S4よりも小さく形成されていてもよい。
【0049】
また本実施形態では、混合ノズル部40が供給管部30に対して着脱可能であるとしたが、必ずしも着脱可能でなくてもよく、混合ノズル部と供給管部とが一体形成される場合も本発明に含まれる。また一体形成される場合には、環状流路の出口側外径と混合ノズル部の入口側外径とが同一形状に形成しやすい。これによって環状流路から混合ノズル部へ塗装液を円滑に流すことができる。
【0050】
なお、上記各実施形態において、複数の流路が中央流路32と環状流路34とを含むことは必須ではない。例えば、複数の流路は、並列するように形成された複数の孔状の流路であってもよい。またたとえば中央流路32と、中央流路に対して径方向外側に位置する外側流路とを含んでもよい。たとえば外側流路は、中央流路の周方向に複数設けられてもよい。たとえば複数の外側流路には、異なる成分の主剤がそれぞれ供給されてもよい。また本実施形態では、環状流路の径方向外側を一周して、洗浄液が流れる環状路が形成されたが、このような環状路が形成されない場合も本発明に含まれる。
【0051】
また本実施形態では、縮径部分は、開口面積が出口側に向かうにつれて連続的に徐々に狭まる構造としたが、階段状の段差形状に形成されてもよい。また中央流路と環状流路とが非同心円状に形成される場合も本発明に含まれる。また混合ノズル部が供給幹部の下流端側に取り付けられることが好ましいが、取り付け位置について他の位置に取り付けられる場合も本発明に含まれる。たとえば塗装装置が、供給管路および混合ノズル部がベルカップとともに回転するとしたが、ベルカップに対して非回転となる部分に設けられてもよく、たとえばベルカップから離れた位置に設けられる場合も本発明に含まれる。また各流路を流れる塗装液の流速、流量、粘度、含有物質および材料について本実施形態に限定されるものではなく、他の設定が用いられる場合も本発明に含まれる。
【0052】
また、供給管部30と混合ノズル部40とを着脱可能にする構成は、上記例に限られない。例えば、供給管部30の先端部と混合ノズル部40の基端部とが対向状態に配置された状態で、その周囲のフランジ部をネジ止等されてもよい。また、混合ノズル部40が供給管部30とは別体に形成されていることは必須でない。混合ノズル部40と供給管部30とが一体形成されていてもよい。
【0053】
混合ノズル部において、先端側に向けて徐々に狭まる空間は、上記実施形態のように混合ノズル部40の延在方向中間部に存在していてもよいし、混合ノズル部における先端側に達する領域に存在していてもよいし、基端側に存在していてもよいし、混合ノズル部の延在方向全体に存在していてもよい。これは、混合ノズル部において徐々に狭まる空間は、混合ノズル部の延在方向において少なくとも一部に存在していればよいことを意味している。中間空間44が、先端側に向けて徐々に狭まる形状に形成されていることは必須ではない。混合ノズル部は、上記したように段差を介して先端側に狭まる形状に形成されていてもよい。
【0054】
3つ以上の塗装液が混合される場合、供給管部には、3つ以上の流路が形成されていてもよい。この場合、上記したように、中央流路の周りに複数の環状流路が同心円状に形成されてもよい。
【0055】
実施形態において、混合ノズル部40は、外周側流路136のさらに外周側に被さっており、洗浄液が混合ノズル部40内を通るようにしてもよい。この場合、混合ノズル部40内の洗浄が可能となる。
【0056】
図3は変形例に係る塗装液混合装置20Bを示す説明図である。同図に示すように、外側管部132の内側に管部134が追加されている。管部134の先端部に混合ノズル部40に対応する混合ノズル部140が装着される。本実施形態では、管部134の先端部に混合ノズル部140が外嵌めされる。外側管部132の内周面と管部134の外周面との間には隙間が設けられ、外側管部132の内周面と混合ノズル部140の基端側外周部との間にも隙間が設けられる。管部134及び混合ノズル部140さらにそれらの内側部品を回転停止させた状態で、モータ等の回転駆動部によって外側管部132及びベルカップ160が回転駆動される。
【0057】
管部134は、供給管部30に対応する供給管部30Bの外周側を、隙間を隔てて覆っている。洗浄液は、供給管部30Bと管部134との間の環状の流路136B隙間を通り、混合ノズル部140内に供給され、混合ノズル部140から外側に出される。洗浄液が混合ノズル部140内を通るため、洗浄液が混合ノズル部140内を洗浄することができる。
【0058】
この場合において、供給管部30に対応する供給管部30Bの先端側の最外周の環状周縁部に、凹部35aが形成されてもよい。より具体的には、供給管部30Bのうち外周側の環状周縁部(ここでは環状流路34の外周を区画する管の解放端縁部)に凹部35aが形成される。凹部35aは、例えば、供給管部30Bの先端部から基端部に向けて凹む切欠状に形成される。凹部35aは、方形状の凹みであってもよいし、供給管部30Bの軸線方向に長いスリット状の凹みであってもよいし、半円状又は三角形状の凹みであってもよい。凹部35aは、供給管部30Bの先端側の環状周縁部に1つ形成されてもよいし、複数形成されてもよい。凹部35aの深さ(供給管部30Bの軸線方向の長さ)及び凹部35aの幅(供給管部30Bの周方向の長さ)は任意であるが、例えば、中央流路32の直径の1/4から2/3程度の大きさであってもよい。
【0059】
混合ノズル部140の基端部は、段部141Sを介して径方向外側に広がる形状に形成される。混合ノズル部140のうちの基端部が管部134の先端部に外嵌めされた状態で、段部141Sの内向き面141Saが管部134の解放端を覆っている。内向き面141Saは管部134の解放端に接していてもよい。なお、内向き面141Saは管部134の解放端から離れていてもよい。
【0060】
洗浄液は、内向き面141Saにあたり、凹部35aを通過して環状流路34の先端側を流れる。この際、環状流路34の径方向内側に向う流れが形成される。内向き面141Saが管部134の解放端に接していれれば、洗浄液の全てが凹部35aを通り、洗浄液はより確実に内側に偏向される。これにより、混合ノズル部140内で、洗浄液が混合ノズル部140の内周面に沿って流れることを防ぎ、径方向内側の流れ、さらには、径方向内側に渦巻く流れを形成することができる。これにより、凹部35aから環状流路34の上流側に向って洗浄液を浸入させやすい。
【0061】
また、洗浄液が通過する流路断面積(管部134と供給管部30Bとの隙間であって管部134の軸線に垂直な方向の断面積)に比べて、洗浄液が流路136Bから内側に流れ込む流路の径方向における総断面積(内向き面141Saが管部134の解放端に接している場合、凹部35aにおける管部30Bの径方向に沿った総断面積)が小さく形成される。これにより、凹部35aの上流側で洗浄液が流れる流速に比べて、凹部35aを通過する洗浄液の流速を高めることができる。
【0062】
このように洗浄液を混合ノズル部140の傾斜よりもさらに径方向内側に向うように案内する案内部の一例として凹部35aが設けられることで、洗浄効果を高めることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、混合ノズル部140の基端部が、洗浄液の通路の内側区画を形成する供給管部30Bの解放端を完全におおっている。混合ノズル部140の基端部は、供給管部30Bの解放端の部分的に覆ってもよいし、覆わなくてもよい。
【0064】
凹部35aは、供給管部30Bを径方向に貫通する形状であればよく、その形状は特に限定されない。また、洗浄液を混合ノズル部140の内側に案内する案内部としては供給管部30Bの径方向に貫通する凹部である必要は無い。例えば、内向き面141Sa自体が洗浄液を混合ノズル部140の内側に案内するガイドであってもよく、この場合、凹部35aは省略されてもよい。また、供給管部の先端部の外周側と内向き面141Saとの間に、凹凸形状の組合せによって、洗浄液を混合ノズル部140の内側に案内するガイド流路が形成されてもよい。
【0065】
なお、洗浄液を流さない二液混合塗装を行うだけの場合も、本発明に含まれる。
【0066】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0067】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0068】
以上説明したように、本明細書は、下記の各態様を含んでいる。
【0069】
第1の態様は、複数の塗装液がそれぞれ流れる複数の流路を有し、前記複数の流路が先端側に開口する供給管部と、前記複数の流路を流れる塗装液が内部空間に供給されるように前記供給管部の出口部分に連なり、開口面積が前記複数の流路の開口総面積よりも小さくなるように、前記内部空間が出口側に進むにつれて狭まる縮径部分を有する混合ノズル部と、を備える塗装液混合装置である。
【0070】
本混合装置は、混合ノズル部は、開口面積が前記複数の流路の開口総面積よりも小さくなるように、出口側に進むにつれて狭まる形状の内部空間を有する構成とされている。このため、複数の流路のそれぞれから混合ノズル部内に塗装液が供給されると、複数の塗装液は、混合ノズル部の内部空間において、流速を増しつつ、互いに混じり合う方向に案内される。このように各塗装液を偏向させることにより複数種の塗装液を混合することができる。このようにノズル内を流れる塗装液を偏向させて混合することで、撹拌用の邪魔板を設ける場合と比較して、塗装液の流速が極小となる領域を防ぐことができる。これによってノズル内における塗装液の詰まりを防ぐことができる。このことから塗装液の目詰まり解消作業の低減に起因して、メンテナンス性を向上させることができる。
【0071】
第2の態様は、第1の態様に係る塗装液混合装置であって、前記縮径部分は、開口面積が出口に進むにつれて連続的に徐々に狭まる形状に形成されている、塗装液混合装置である。この場合、塗装液が付着しやすい角部分を抑えることができる。また塗装液が混合ノズル部の内周壁に付着したとしても、内周面の凹凸が防がれることで、洗浄液によって付着物を容易に洗浄しやすい。このため、混合ノズル部の洗浄等が容易となり、メンテナンス性に優れる。
【0072】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る塗装液混合装置であって、前記複数の流路は、中央流路と、前記中央流路を周方向に囲む環状流路とを含む、塗装液混合装置である。これによって環状流路から混合ノズル部内に供給された塗装液を、中心軸線の全周にわたる領域から、混合ノズル部の中心軸に向けて案内することができる。これにより周方向での混合具合に対する偏りを抑えることができる。これによって塗装液をさらに好適に混合させることができる。
【0073】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係る塗装液混合装置であって、前記混合ノズル部が前記供給管部に対して着脱可能に形成される、塗装液混合装置である。これにより、混合ノズル部を供給管部から取外して、混合ノズル部を洗浄することができる。この点からも、塗装液混合装置のメンテナンスが容易となる。
【0074】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る塗装液混合装置であって、前記混合ノズル部は、前記供給管部の下流端部分に取付けられる、塗装液混合装置である。これによって混合ノズル部が供給管部よりも上流側に配置される場合に比べて、下流側からアクセスしやすい。これによって混合ノズル部を着脱しやすく、混合ノズル部の洗浄のための取り外し作業時間を短縮することができる。
【0075】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る塗装液混合装置であって、前記複数の流路は、前記供給管部の中央に設けられた中央流路と前記中央流路の径方向外側に位置する外側流路とを含み、前記混合ノズル部の出口側の開口面積は、前記中央流路の出口側の開口面積よりも小さい、塗装液混合装置である。これにより、混合ノズル部による絞り状態を強めることで、混合用空間での混合をさらに促進することができる。また、各塗装液は、混合ノズル部内でさらに流速を増す。このため、塗装液の混合をさらに促進することができる。
【0076】
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係る塗装液混合装置であって、前記混合ノズル部から噴射される塗装液が滞留する滞留空間を形成するとともに、前記滞留空間に滞留する塗装液を回転による遠心力によって径方向外側に吐出する回転部材が設けられる、塗装液混合装置である。この場合、混合ノズル部によって吐出された液がベルカップ内の滞留空間に到達し、ベルカップ内でさらに攪拌される。これによって塗装対象物に到達する前の混合をさらに高めることができる。
【0077】
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係る塗装液混合装置であって、前記供給管部の外周側を覆い、前記混合ノズル部に連なる管部をさらに備え、前記供給管部と前記管部との間に、洗浄液を、前記供給管部と前記管部との間を通って前記混合ノズル部の内部空間に供給する、洗浄液用流路が形成されるものである。これにより、洗浄液によって混合ノズル部内を洗浄することができる。
【0078】
第9の態様に係る塗装液の混合方法は、(a)複数の塗装液がそれぞれ流れる複数の流路を有し、前記複数の流路が先端側に開口する供給管部と、前記複数の流路を流れる塗装液が内部空間に供給されるように前記供給管部の出口部分に連なり、開口面積が前記複数の流路の開口総面積よりも小さくなるように、前記内部空間が出口に進むにつれて徐々に狭まる縮径部分を有する混合ノズル部とを準備する準備ステップと、(b)準備ステップの後で、前記供給管部に形成される複数の流路のそれぞれに塗装液を供給し、前記供給管部の出口から前記混合ノズル部の内部空間で複数の塗装液を混合させる供給ステップと、を備える塗装液の混合方法である。
【0079】
この塗装液の混合方法によると、上述する混合ノズル部を準備し、供給ステップで、混合ノズル部を用いて塗装液を混合させる。これによって上述したようにことで、ノズル内における塗装液の詰まりを防ぐことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0080】
第10の態様は、第9の態様に係る塗装液の混合方法であって、前記準備ステップ(a)で、前記複数の流路が、中央流路と、前記中央流路を周方向に囲む環状流路とを含む供給管部を準備し、前記供給ステップ(b)で、前記中央流路と前記環状流路とにそれぞれ異なる塗装液を供給し、前記中央流路を流れる塗装液の流速よりも、前記環状流路を流れる塗装液の流速が大きくなるように設定する、塗装液の混合方法である。混合ノズル部の内部空間においては、環状流路より供給される塗装液を囲む内周壁が狭まる。これによって内部空間の内周壁によって径方向内側領域に偏向するとともに流速がさらに高められる。これにより、環状流路より供給される塗装液が中央流路より供給される塗装液に向いやすくなり、複数の塗装液が混合されやすくなる。
【0081】
第11の態様は、第9又は第10の態様に係る塗装液の混合方法であって、前記準備ステップ(a)で、前記複数の流路が、中央流路と、前記中央流路を周方向に囲む環状流路とを含む供給管部を準備し、前記供給ステップ(b)で、前記中央流路に供給する塗装液の粘度よりも、前記環状流路に供給する塗装液の粘度が小さくなるように設定する、塗装液の混合方法である。これにより、混合ノズル部の内部空間において径方向外側を流れる塗装液の偏向を容易にすることができる。これによって径方向外側を流れる塗装液が径方向内側に向かいやすく、内部空間で径方向外側から径方向内側に回り込む塗装液の流れを作り出しやすく、いわゆる剪断混合をさらに促進させることができる。
【0082】
第12の態様は、第9から第11のいずれか1つの態様に係る塗装液の混合方法であって、前記準備ステップ(a)で、前記複数の流路が、中央流路と、前記中央流路を周方向に囲む環状流路とを含む供給管部を準備し、前記供給ステップ(b)で、主剤となる塗装液を前記環状流路に供給し、前記主剤を硬化させるための硬化剤を前記中央流路に供給する、塗装液の混合方法である。主剤となる塗装液が混合ノズル部の内部空間によって径方向内側領域に偏向するとともに流速がさらに高められる。これにより、主剤が径方向内側を流れる硬化剤に向いやすくなり、主剤と硬化剤とが混合されやすくなる。
【符号の説明】
【0083】
12 硬化剤(塗装液)
14 主剤(塗装液)
20、20B 塗装液混合装置
30 供給管部
32 中央流路
34 環状流路
40 混合ノズル部
42 内部空間
134 管部
160 ベルカップ
163 滞留空間
S1 開口総面積
S2 中央流路の開口面積
S3 環状流路の開口面積
S4 混合ノズル部の開口面積
図1
図2
図3