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特許7555993クロスヘッドの解体方法およびダミーニップル
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  • 特許-クロスヘッドの解体方法およびダミーニップル 図1
  • 特許-クロスヘッドの解体方法およびダミーニップル 図2
  • 特許-クロスヘッドの解体方法およびダミーニップル 図3
  • 特許-クロスヘッドの解体方法およびダミーニップル 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】クロスヘッドの解体方法およびダミーニップル
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/34 20190101AFI20240917BHJP
   B29C 48/27 20190101ALI20240917BHJP
【FI】
B29C48/34
B29C48/27
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022075962
(22)【出願日】2022-05-02
(65)【公開番号】P2023165202
(43)【公開日】2023-11-15
【審査請求日】2023-01-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小丹保 智夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓史
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-117953(JP,A)
【文献】実開昭60-179426(JP,U)
【文献】特開昭56-40536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/34
B29C 48/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド本体と、
前記クロスヘッド本体に装着されたスリーブと、
前記スリーブ内に挿入され、軸方向に沿って線心が通る孔を有するニップルホルダと、
前記ニップルホルダの先端部に装着されたニップルと、
前記ニップルの外側に同心状に配置され、前記ニップルとの間に前記線心の外周を被覆するための樹脂が流通する樹脂流路を形成するダイスと、
を有する押出機のクロスヘッドの解体方法であって、
前記ダイスを取り外した後、前記ニップルをダミーニップルに交換する工程と、
先端部に前記ダミーニップルが装着されたニップルホルダを、後端部側から前記スリーブ外へ抜き出す工程と、
を有する、
クロスヘッドの解体方法。
【請求項2】
請求項1に記載のクロスヘッドの解体方法において、
前記ダミーニップルは、
前記ニップルホルダの先端部に装着される装着部を有するダミーニップル本体と、
前記ダミーニップル本体の外周の少なくとも一部を覆う保護部材と
を有する、
クロスヘッドの解体方法。
【請求項3】
請求項1に記載のクロスヘッドの解体方法において、
前記ダミーニップルの最大外径は、前記ニップルホルダの前記スリーブに挿入される部分の最大外径よりも小さい、
クロスヘッドの解体方法。
【請求項4】
請求項1に記載のクロスヘッドの解体方法において、
前記ニップルホルダを抜き出す工程では、
前記ニップルホルダと前記ダミーニップルの接続部が前記スリーブ外に抜けきったときに、前記ダミーニップルの先端部は前記スリーブ内で支持されている、
クロスヘッドの解体方法。
【請求項5】
ダミーニップルであって、
ニップルホルダの先端部の被装着部と螺合する螺合部を有するダミーニップル本体と、
前記ダミーニップル本体の外周の少なくとも一部を覆う保護部材と
を有し、
前記保護部材は、前記ニップルホルダをスリーブ内から引き抜く際に、前記ダミーニップルとスリーブが接触してもスリーブの内壁面に傷が付かない部材である、
ダミーニップル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスヘッドの解体方法およびクロスヘッド用のダミーニップルに関する。
【背景技術】
【0002】
各種ケーブルは、例えば押出機を用いて、線心(導体など)の外周に樹脂層を押出成形することによって製造される。
【0003】
このような押出成形に用いられる押出機は、通常、クロスヘッド本体と、該本体に挿入された円筒状のニップルホルダと、該ニップルホルダの先端部に保持されたニップルと、該ニップルの外側に同心状に配置されたダイスと、該ダイスを保持するダイスホルダとを備えている。そして、ニップルホルダの内側に線心を走行させながら、ニップルとダイスの間に形成された樹脂流路を通して、線心の周囲に樹脂を押し出すことによって、樹脂層を形成する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-117953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクロスヘッドにおいて樹脂層の厚みや種類を変更する場合、ニップルやニップルホルダをクロスヘッド本体から取り外して、ニップルの交換やニップルホルダおよびクロスヘッド本体内の清掃が行われる。具体的には、まず、クロスヘッド本体からダイスやダイスホルダを取り外し、露出したニップルをニップルホルダから取り外す。その後、ニップルホルダを、その後端部側からクロスヘッド本体外へ引き抜くといった作業が行われる。
【0006】
しかしながら、ニップルホルダをクロスヘッド本体から引き抜く際に、ニップルホルダに付着した樹脂などによって、ニップルホルダが抜けにくいことがあった。また、ニップルホルダを力任せに引き抜こうとすると、ニップルホルダの先端部がクロスヘッド本体から抜けきった瞬間、その重さにより床に落下することがあった。また、ニップルホルダが床に落下することにより、ニップルホルダが変形したり、破損したりするという問題があった。
本発明の主な目的は、ニップルホルダの落下を防止可能なクロスヘッドの解体方法およびクロスヘッド用のダミーニップルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
クロスヘッド本体と、
前記クロスヘッド本体に装着されたスリーブと、
前記スリーブ内に挿入され、軸方向に沿って線心が通る孔を有するニップルホルダと、
前記ニップルホルダの先端部に装着されたニップルと、
前記ニップルの外側に同心状に配置され、前記ニップルとの間に前記線心の外周を被覆するための樹脂が流通する樹脂流路を形成するダイスと、
を有する押出機のクロスヘッドの解体方法であって、
前記ダイスを取り外した後、前記ニップルをダミーニップルに交換する工程と、
先端部に前記ダミーニップルが装着されたニップルホルダを、後端部側から前記スリーブ外へ抜き出す工程と、
を有するクロスヘッドの解体方法
が提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、
本発明のクロスヘッドの解体方法に用いられる、
クロスヘッド用のダミーニップル
が提供される。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、
クロスヘッド本体と、
前記クロスヘッド本体に装着されたスリーブと、
前記スリーブ内に挿入され、軸方向に沿って線心が通る孔を有するニップルホルダと、
前記ニップルホルダの先端部に装着されたニップルと、
前記ニップルの外側に同心状に配置され、前記ニップルとの間に前記線心の外周を被覆するための樹脂が流通する樹脂流路を形成するダイスと、
を有する押出機のクロスヘッド用のダミーニップルであって、
前記ニップルホルダの先端部に装着される装着部を有するダミーニップル本体と、
前記ダミーニップル本体の外周の少なくとも一部を覆う保護部材と
を有し、
前記ニップルに代えて、前記ニップルホルダの先端部に装着される、
クロスヘッド用のダミーニップル
が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニップルホルダの落下を防止可能なクロスヘッドの解体方法およびクロスヘッド用のダミーニップルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】クロスヘッドの構造を示す概略断面図である。
図2】クロスヘッドの解体方法の一部を示す概略断面図である。
図3】クロスヘッドの解体方法の他の一部を示す概略断面図である。
図4】ダミーニップルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る押出機のクロスヘッドの構成について説明した後、当該クロスヘッドの解体方法について説明する。
【0013】
[クロスヘッドの構成]
図1は、本実施形態に係る押出機のクロスヘッド10の構造を示す概略断面図である。図1に示す通り、クロスヘッド10は、クロスヘッド本体20と、スリーブ30と、ニップルホルダ40と、ニップル50と、ダイス60と、ダイスホルダ70とを有する。
【0014】
クロスヘッド本体20は、スリーブ30と、ニップルホルダ40を保持する。本体20には、樹脂注入口(不図示)が設けられ、クロスヘッド本体20とスリーブ30との間に形成される流路(不図示)に樹脂が供給される。
【0015】
スリーブ30は、ニップルホルダ40を保持する部材であり、クロスヘッド本体20内に装着されている。
【0016】
ニップルホルダ40は、ニップル50を保持する円筒状の部材であり、内部に線心を通せるようになっている。本実施形態では、ニップルホルダ40は、スリーブ30内に挿入され、位置決め固定された状態で、ニップルホルダ40の先端部(ニップルホルダ40の被装着部43付近)が、スリーブ30およびクロスヘッド本体20の外に露出するように構成されている。ニップルホルダ40は、ニップルホルダ本体41と、孔42と、被装着部43と、フランジ44とを有する。
孔42は、ニップルホルダ本体41に軸方向に沿って設けられた貫通孔であり、導体などの線心が軸方向に沿って通れるようになっている。
被装着部43は、ニップルホルダ本体41の先端部に設けられた、ニップル50が装着される部位である。本実施形態では、被装着部43は雌ねじであるが、ニップル50が着脱可能な機構であればこれに限定されない。
フランジ44は、ニップルホルダ本体41の後端部に設けられ、図示しない調整ねじなどで、クロスヘッド本体20またはスリーブ30に位置決め固定される。
【0017】
ニップル50は、ニップルホルダ40の先端部に装着されている。本実施形態では、ニップル50は、ニップルホルダ40の先端部に螺合されている。
【0018】
ダイス60は、ニップル50の外側に同心状に配置されている。それにより、ニップル50とダイス60との間(ニップル50の外周面とダイス60の内周面との間)に、線心の外周を被覆する樹脂が流通する樹脂流路61が形成される。すなわち、ニップル50とダイス60との間隔を調整することで、樹脂層の厚みを調整することができる。ニップル50とダイス60との間隔は、例えばニップル50の外径を変更することで調整することができる。
【0019】
ダイスホルダ70は、ダイス60を保持する部材であり、クロスヘッド本体20の先端部に装着されている。
【0020】
上記のように構成された押出機のクロスヘッド10では、クロスヘッド本体20の樹脂注入口(不図示)から樹脂を供給する。クロスヘッド本体20に供給された樹脂は、本体20とスリーブ30の間の流路(不図示)を通って、ニップル50とダイス60の間に形成された樹脂流路61に押し出される。
一方、線心を、ニップルホルダ40の孔42に沿って走行させる。そして、ニップル50の先端部で、ニップルホルダ40の孔42を走行する線心の周囲を、樹脂流路61を流れる樹脂で被覆する。それにより、線心の周囲に樹脂層を形成することができる。
【0021】
上記のように構成された押出機のクロスヘッド10では、樹脂層の厚みや樹脂の種類を変更する場合、クロスヘッド10の一部を解体して、ニップル50の交換やニップルホルダ40またはスリーブ30内の清掃が行われる。以下、クロスヘッド10の解体方法について説明する。
【0022】
[クロスヘッドの解体方法]
図2および図3は、クロスヘッド10の解体方法を示す概略断面図である。具体的には、図2A~2Cおよび図3A~3Cは、クロスヘッド10の解体方法の一連の流れを示している。図4は、ダミーニップル80の概略図である。具体的には、図4Aは、ダミーニップル80の概略正面図であり、図4Bは、概略断面図である。なお、図4Bでは、ニップルホルダ40の先端部も図示している。また、図4A以外は、ねじ溝は省略している。
同図に示す通り、本実施形態に係るクロスヘッド10の解体方法は、1)ダイス60とダイスホルダ70を取り外した後、ニップル50をダミーニップル80に交換する工程と、2)先端部にダミーニップル80が装着されたニップルホルダ40を、後端部側からスリーブ30外へ抜き出す工程と、を有する。
【0023】
1)の工程について
本実施形態では、まず、ダイス60およびダイスホルダ70を取り外す(図2Aおよび図2B参照)。そして、露出したニップル50をニップルホルダ40から取り外し(図2C参照)、ダミーニップル80に交換する(図3A参照)。
【0024】
ダミーニップル80は、ニップル50に代えて、一時的にニップルホルダ40の先端部に装着されるものである。そして、ダミーニップル80は、後述の2)の工程でニップルホルダ40を引き抜く際に、ニップルホルダ40の先端部を保護するとともに、ニップルホルダ40の落下を防止するための目印として機能する。図4Bに示すように、ダミーニップル80は、ダミーニップル本体81と、保護部材82とを有する。
【0025】
本実施形態では、ダミーニップル本体81は円筒状の部材であり、ニップルホルダ40の先端部に装着される装着部83を有する。装着部83は、例えばニップルホルダ40の被装着部43と螺合する螺合部である。なお、本実施形態では、ダミーニップル本体81は円筒状であるが、ニップル50と同様に円錐状などであってもよい。また、ダミーニップル80の装着部83は螺合部に限らず、ニップルホルダ40の先端部に装着可能であれば他の機構であってもよい。また、ダミーニップル本体81の構成材料も、所定の強度を有するものであればよく、ニップルホルダ40と同様に金属材料でありうる。
【0026】
保護部材82は、ダミーニップル本体81の外周の少なくとも一部を覆う部材である。保護部材82は、スリーブ30の内壁面に傷が付かないような部材であればよく、例えばダミーニップル本体81よりも弾性率が低い部材、好ましくはスポンジ状部材や繊維部材である。それにより、ダミーニップル80を装着したニップルホルダ40を引き抜く際に、ダミーニップル80の外周面とスリーブ30の内壁面とが接触しても、スリーブ30の内壁面に傷を付きにくくすることができる。
【0027】
ダミーニップル80の最大外径D1は、ニップルホルダ40のスリーブ30内を通る部分の最大外径D2よりも小さいことが好ましい(図4B参照)。それにより、ダミーニップル80を装着したニップルホルダ40を後端部から引き抜く際に、ダミーニップル80の外周面とスリーブ30の内壁面とが接触しにくくなるため、スリーブ30の内壁面に傷を付きにくくすることができる。
【0028】
ダミーニップル80の長さLは、ダミーニップル80とニップルホルダ40の接続部C(またはニップルホルダ40の先端部)がスリーブ30外に抜けきったときに、ダミーニップル80の先端部が、スリーブ30内で支持されるような長さであることが好ましい。それにより、ニップルホルダ40の先端部がスリーブ30外に抜けきったことを作業者が認識したときに、ダミーニップル80の先端部がスリーブ30内で支持されているため、ニップルホルダ40が床に落下するのを防止することができる。なお、ダミーニップル80の長さLとは、ダミーニップル80をニップルホルダ40に装着したときの長さを意味し(図4B参照)、装着部83を除いた部分の長さを意味する。例えば、ダミーニップル80の長さLは、95mm程度である。ダミーニップル80の長さLは、適宜変更可能であり、クロスヘッドの長さに応じて変更されうる。
【0029】
2)の工程について
次いで、先端部にダミーニップル80が装着されたニップルホルダ40を、後端部側からスリーブ30外へ抜き出す(図3B参照)。具体的には、ニップルホルダ40とダミーニップル80との接続部Cがスリーブ30外に抜けきるまでニップルホルダ40を引き抜く。その後、ダミーニップル80の先端部がスリーブ30外に抜けきるまで、慎重にニップルホルダ40を引き抜く。そして、抜き出したニップルホルダ40からダミーニップル80を取り外し(図3C参照)、ニップルホルダ40の清掃や他のニップル50の取り付けなどを行う。
【0030】
[作用]
以上の本実施形態によれば、クロスヘッド10を解体する際には、ダイス60を取り外した後、ニップル50をダミーニップル80に交換する。その後、先端部にダミーニップル80が装着されたニップルホルダ40を、後端部側からスリーブ30外へ抜き出す。
このとき、作業者が、ニップルホルダ40とダミーニップル80との接続部C(ニップルホルダ40の先端部)がスリーブ30外に抜けきったことを認識したときに、ダミーニップル80の先端部はスリーブ30内で支持されている(図3B参照)。すなわち、ニップルホルダ40の先端部に適度な遊びを形成できる。また、作業者が、ニップルホルダ40の先端部がスリーブ30外に抜けきったことを認識することで、その後の抜き出し作業を慎重に進めることができる。それにより、ニップルホルダ40が床に落下するのを防止できる。
【0031】
また、本実施形態では、ダミーニップル80は、ダミーニップル本体81の外周面が保護部材82で覆われている。そのため、ダミーニップル80が装着されたニップルホルダ40をスリーブ30外に抜き出す際に、ダミーニップル80の外周面とスリーブ30の内壁面とが接触しても、スリーブ30の内壁面に傷を付きにくくすることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、ダイス60とダイスホルダ70が、クロスヘッド本体20から取り外せるように構成されているが、これに限らず、ニップルホルダ40をスリーブ30内に挿入したままの状態で、先端部に装着されたニップル50をダミーニップル80に交換できるように構成されていてもよい。例えば、ダイス60とダイスホルダ70は、ニップル50とダイス60との間隔を広げて、ニップル50を取り外せるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 クロスヘッド
20 クロスヘッド本体
30 スリーブ
40 ニップルホルダ
41 ニップルホルダ本体
42 孔
43 被装着部
44 フランジ
50 ニップル
60 ダイス
70 ダイスホルダ
80 ダミーニップル
81 ダミーニップル本体
82 保護部材
83 装着部
図1
図2
図3
図4