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特許7556007正極材料の製造方法および、これを用いる正極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】正極材料の製造方法および、これを用いる正極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240917BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240917BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240917BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240917BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240917BHJP
   C01B 25/16 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/139
C01B25/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022173478
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2020204259の分割
【原出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2023015168
(43)【公開日】2023-01-31
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】62/945,425
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲ライ▼ 冠霖
(72)【発明者】
【氏名】陳 振崇
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲イク▼翰
(72)【発明者】
【氏名】許 榮木
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106369(JP,A)
【文献】特開2017-117792(JP,A)
【文献】特開2016-146322(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107706377(CN,A)
【文献】特開2007-242303(JP,A)
【文献】特開2015-069878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0142670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C01B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機導電性化合物およびカップリング剤を第1の溶媒に分散させ、第1の溶液を得て、
イオン伝導性セラミック化合物を第1の溶液に添加し、第1の混合物を得て、ここで該第1の混合物は、有機導電性化合物、カップリング剤、第1の溶媒およびイオン伝導性セラミック化合物のみからなり、
該混合物を50~100℃で60~240分間加熱し、第2の溶液を得て、
第2の溶液と活性粒子とを混合し、第2の混合物を得て、
第2の混合物を50-100℃で60-240分間攪拌し、結果物を得て、
該結果物を90~150℃で30~360分焼成し、正極材料を得ることを含む、正極材料の製造方法。
【請求項2】
イオン伝導性セラミック化合物と有機伝導性化合物の重量比が5:1~3:2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン伝導性セラミック化合物と前記有機導電性化合物との総重量に対してカップリング剤が、0.05wt%から10wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン伝導性セラミック化合物が、ドープチタン含有リン酸塩または未ドープチタン含有リン酸塩であり、前記チタン含有リン酸塩が式(I)の構造を有する、請求項1に記載の方法。
LixyTiz(PO4t式(I)
(式中、MはAl、Fe、またはCrであり;0.1≦x≦3;0.1≦y≦3;1≦z≦3;かつ1≦t≦3である。)
【請求項5】
前記イオン伝導性セラミック化合物が前記ドープチタン含有リン酸塩であり、かつMがAlまたはFeであり、ドープされる元素がCr、Zr、Sn、Ge、S、またはこれらの組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン伝導性セラミック化合物が前記ドープチタン含有リン酸塩であり、かつMがCrであり、ドープされる元素がZr、Sn、Ge、S、またはこれらの組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記チタン含有リン酸塩が、リン酸リチウムアルミニウムチタン(lithium aluminum titanium phosphate)、リン酸リチウム鉄チタン(lithium iron titanium phosphate)、またはリン酸リチウムクロムチタン(lithium chromium titanium phosphate)である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記有機導電性化合物が、アニリン部分、ピロール部分、マレイミド部分、またはイミノ部分を有する化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機導電性化合物が、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニルビニレン、ポリ-p-フェニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイミド、マレイミド化合物、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カップリング剤が、式(VI)の構造を有する化合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【化3】
(式中、R1、R2、R3およびR4は独立に-O H、-OCn2n+1、-Cn2nNH2、 -Cn2nSH、または-Cn2nOCOCHC HR5であり;R1、R2、R3およびR4 のうち少なくとも1つが-Cn2nNH2、-C n2nSH、-Cn2nNCO、-Cn2nNHCONH2、または-Cn2nOCOCHCH R5であり;nは独立に1~5の整数であり;R5は独立に水 素またはメチル基である。)
【請求項11】
前記カップリング剤が、式(VI)の構造を有する化合物であり、かつ前記カップリング剤が、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-methacryloxypropyl trimethoxysilane)、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(3-methacryloxypropyl triethoxysilane)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimethoxysilane)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxysilane,ATPES)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3-mercaptopropyltrimethoxysilane, MPTMS)、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(3-mercaptopropyltriethoxysilane)、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-acryloxypropyl trimethoxysilane)、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(3-acryloxypropyl triethoxysilane)、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(3-ureidopropyltriethoxysilane)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-isocyanatepropyltriethoxysilane)、またはこれらの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記活性粒子がリチウム含有酸化物であり、かつ前記リチウム含有酸化物が、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LNCM)、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケル酸化物、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
正極材料、導電性添加剤、およびバインダーを第2の溶媒に分散させて正極スラリーを得て、ただし正極材料が請求項1~12のいずれか1項に記載の方法から調製されるものであり、
正極スラリーを塗布工程によって正極集電層の表面に塗布して塗膜を得て、および、
塗膜を乾燥工程に付して正極活性層を得ることを含む、正極の製造方法。
【請求項14】
前記導電性添加剤にはカーボンブラック、導電性グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、またはグラフェンが含まれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記正極活性層において、前記正極材料、前記導電性添加剤、および前記バインダーの総重量に対し、前記正極材料の重量パーセントが96wt%~99.8wt%、前記導電性添加剤の重量パーセントが0.1wt%~2wt%、前記バインダーの重量パーセントが0.1wt%~2wt%である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は正極材料の製造方法、および正極の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来の液体電解質リチウムイオン電池では、その低い質量エネルギー密度および限定された寿命のために、ユニット当たりのエネルギー貯蔵コストが高い。下流のアプリケーション(downstream application)の安全性をさらに高めるため、固体電解質を従来の液体電解質の代わりに用いる固体電池の開発が目標となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第20130149587号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような固体電池の開発においては、電極と固体電解質との間の高い界面抵抗が問題となっている。無機セラミック導体で改質したリチウム含有酸化物の使用が、無機セラミック導体の高いイオン伝導性に対する解決の1つであるとみなされている。しかし、無機セラミック導体とリチウム含有酸化物との間に亀裂が生じやすくなり得るため、サイクル性能および高率放電能が低下し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態により、本開示は、電池の正極、例えばリチウムイオン電池の正極に用いられる正極材料を提供する。正極材料は、活性粒子と、活性粒子を覆うかまたは被包する(encapsulating)改質層とを含み得る。本開示の実施形態によれば、改質層は組成物の反応生成物であってよく、該組成物は、イオン伝導性セラミック化合物、有機導電性化合物およびカップリング剤を含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、イオン伝導性セラミック化合物は50から84重量部であり、有機導電性化合物は16から50重量部であり、イオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物との総重量は100重量部である。本開示の実施形態によれば、イオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物との総重量に対し、カップリング剤は0.05wt%から10wt%である。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態により、本開示は、正極、例えばリチウムイオン電池の正極を提供する。正極は正極集電層および正極活性層を含んでいてよく、正極活性層は正極集電層上に配置されてよい。正極活性層は、本開示の正極材料、導電性添加剤、およびバインダーを含み得る。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態により、本開示は、電池、例えばリチウムイオン電池を提供する。電池は本開示の正極、セパレータ、および負極を含んでいてよく、負極はセパレータにより正極と隔てられる。
【発明の効果】
【0008】
無機材料からなる改質層を用いる正極材料に比べ、本開示の正極材料の成分(有機/無機複合材料で構成される)の設計のために、改質層の亀裂伝播が抑制される。加えて、有機/無機複合材料で構成される改質層は安定な固体電解質界面(SEI)を形成することができるため、正極材料はイオン伝導性と電子伝導性を同時に示し、これにより界面抵抗が低減すると共に、高Cレート放電能が高まる。さらに、高いニッケル含有量を含む活性粒子の放熱量が低下し、リチウムイオン電池の使用における安全性がより一層改善され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。
図1】本開示の実施形態による正極材料の断面図である。
図2】本開示の実施形態による電池に用いる正極の断面図である。
図3】本開示の実施形態による電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
正極材料の製造方法、および正極の製造方法が以下の記載において詳細に説明される。以下の詳細な記載では、説明の目的で、本開示が十分理解されるように多数の特定の詳細および実施形態が示される。以下の詳細な記載に記述された特定の構成要素および配置が、本開示を明確に説明するために示される。しかしながら、ここに示された例示的な実施形態は単に説明の目的で用いられているにすぎず、本発明概念は、それら例示的実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化できるということは、明らかであろう。さらに、本開示を明確に説明するため、異なる実施形態の図では、類似および/または対応する構成要素を示すのに、類似および/または対応する符号を用いることがある。しかし、異なる実施形態の図における類似および/または対応する符号の使用は、異なる実施形態間のいかなる相関関係をも意味しない。
【0011】
本開示は、正電極材料を調製するための方法を提供する。この方法は、有機導電性化合物およびカップリング剤を第1の溶媒に分散させて第1の溶液を得ること、第1の溶液にイオン導電性セラミック化合物を添加して第1の混合物を得ること、該混合物を50~100℃で60~240分間加熱して第2の溶液を得ること、第2の溶液と活性粒子を混合して第2の混合物を得ること、第2の混合物を50~100℃で60~240分間撹拌して結果物を得ること、および結果物を90~150℃で30~360分焼成して正極材料を得ることを含む。
【0012】
本開示は、正極を調製するための方法を提供する。この方法は、正極材料、導電性添加剤、及びバインダーを第2の溶媒に分散させて正極スラリーを得ること、正極スラリーを塗布工程によって正極集電層の表面に塗布して塗膜を得ること、及び塗膜を乾燥工程に付して正極活性層を得ることを含む。
【0013】
本開示は、電池の正極、例えばリチウムイオン電池の正極に用いられる正極材料を提供する。本開示の正極材料は、活性粒子と、活性粒子の表面を覆う改質層とを含む。改質層は有機/無機複合材料であり、該有機/無機複合材料は、有機導電性化合物とイオン伝導性セラミック化合物とをカップリング剤により結合することで作製される。いくつかの実施形態において、改質層は活性粒子を被包する。無機材料からなる改質層を用いる正極材料に比べ、本開示の正極材料の成分(有機/無機複合材料で構成される)の設計のために、改質層の亀裂伝播が抑制される。加えて、有機/無機複合材料で構成される改質層は安定な固体電解質界面(SEI)を形成することができるため、正極材料はイオン伝導性と電子伝導性を同時に示し、これにより界面抵抗が低減すると共に、高Cレート放電能が高まる。さらに、高いニッケル含有量を含む活性粒子の放熱量が低下し、リチウムイオン電池の使用における安全性がより一層改善され得る。
【0014】
本開示の正極材料、導電性添加剤、およびバインダーを溶媒中に分散させて、正極スラリーを形成することができる。その正極スラリーを正極集電層上に塗布してからベイクして正極を形成することができる。本開示の正極は、電池(例えばリチウムイオン電池)の正極とするのに適している。本開示の正極を用いるリチウムイオン電池は、より安全であり、高Cレートにおける放電能力がより高く、かつ寿命がより長い。
【0015】
本開示の実施形態により、本開示は、電池の正極、例えばリチウムイオン電池の正極を形成するのに用いる正極材料を提供する。図1に示されるように、正極材料10は、活性粒子12と、活性粒子12を覆うかまたは被包する改質層14とを含み得る。本開示の実施形態によれば、改質層は組成物の反応生成物であり得る。本開示の実施形態によれば、該組成物は、イオン伝導性セラミック化合物、有機導電性化合物、およびカップリング剤を含み得る。本開示の実施形態によれば、イオン伝導性セラミック化合物は50から84重量部(例えば55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、または80重量部)であってよく、有機導電性化合物は16から50重量部(例えば20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部または45重量部)であってよく、イオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物との総重量は100重量部である。本開示の実施形態によれば、イオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物との総重量に対し、カップリング剤は0.05wt%から10wt%(例えば0.1wt%、0.2wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、または9wt%)であってよい。
【0016】
本開示の実施形態によれば、改質層において、イオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物(または有機導電性化合物からの化合物誘導体)との重量比は、組成物におけるイオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物との重量比によって決まる。本開示の実施形態によれば、改質層におけるイオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物(または有機導電性化合物からの化合物誘導体)との重量比は、約5:1から3:2、例えば約4:1、約3:1、または2:1である。改質層におけるイオン伝導性セラミック化合物の量が多すぎると、電池の性能が劣化し得る(つまり、容量および重量に対するエネルギー密度が低下する)。改質層におけるイオン伝導性セラミック化合物の量が少なすぎると、イオン伝導性に乏しいために電池の性能が劣化し得る。
【0017】
本開示の実施形態によれば、組成物への有機導電性化合物の添加によって、有機導電性化合物の網目構造がカップリング剤によりイオン伝導性セラミック化合物を被包できるようになり、これにより改質層の亀裂の形成が回避される。結果として、イオン伝導性セラミック化合物が活性粒子から剥離しないようになる。加えて、有機/無機複合材料で構成される改質層は、活性粒子表面に安定な固体電解質界面(SEI)を形成することができる。その結果、正極材料はイオン伝導性と電子伝導性を同時に示し、これにより界面抵抗が低減すると共に、高率放電能が高まる。さらに、高いニッケル含有量を含む活性粒子の放熱量が低下し、リチウムイオン電池の使用における安全性がより一層改善され得る。
【0018】
本開示の実施形態によれば、イオン伝導性セラミック化合物は、ドープまたは未ドープチタン含有リン酸塩であってよく、該チタン含有リン酸塩は式(I)の構造
を有している:
【0019】
LixyTiz(PO4t 式(I)
【0020】
式中、MはAl、Fe、またはCrであってよく;0.13;0.13;13;かつ13である。例えば、xは0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、または3であってよく;yは0.4、0.8、1、1.2、1.4、1.5、1.6、1.7、2、2.5、または3であってよく;zは1、1.2、1.4、1.5、1.6、1.7、2、2.5、または3であってよく;かつtは1、1.2、1.4、1.5、1.6、1.7、2、2.5、2.9、または3であってよい。例えば、MはAlであり、xは2であり、yは1であり、zは1であり、かつtは3である。例えば、MはFeであり、xは1.5であり、yは0.8であり、zは1.2であり、tは2.9である。例えば、MはCrであり、xは2であり、yは1.2であり、zは2であり、tは3である。
【0021】
本開示の実施形態によれば、イオン伝導性セラミック化合物がドープチタン含有リン酸塩であり、かつMがAlまたはFeであるとき、該ドープチタン含有リン酸塩は元素がドープされており、該元素はCr、Zr、Sn、Ge、S、またはこれらの組み合わせである。本開示の実施形態によれば、イオン伝導性セラミック化合物がドープチタン含有リン酸塩であり、かつMがCrであるとき、該ドープチタン含有リン酸塩は元素でドープされており、該元素はZr、Sn、Ge、S、またはこれらの組み合わせである。本開示の実施形態によれば、チタン含有リン酸塩の総原子量に対し、ドープされる元素のドーズ量は1×10-9atom%から1atom%であってよい。例えば、MがAlであるとき、ドープされる元素はCrおよびSであり、Crのドーズ量は0.0024atom%、Sのドーズ量は0.005atom%である。
【0022】
本開示の実施形態によれば、チタン含有リン酸塩は、リチウムチタン含有リン酸塩、例えばリン酸リチウムアルミニウムチタン(lithium aluminum titanium phosphate)、リン酸リチウム鉄チタン(lithium iron titanium phosphate)、またはリン酸リチウムクロムチタン(lithium chromium titanium phosphate)であり得る。本開示の実施形態によれば、リチウムチタン含有リン酸塩はドープリン酸リチウムアルミニウムチタン、またはドープリン酸リチウム鉄チタンであってよく、ドープされる元素はCr、Zr、Sn、Ge、S、またはこれらの組み合わせであり得る。本開示の実施形態によれば、リチウムチタン含有リン酸塩はドープリン酸リチウムクロムチタンであってよく、ドープされる元素はZr、Sn、Ge、Sまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0023】
本開示の実施形態によれば、有機導電性化合物は、アニリン部分を有する化合物、ピロール部分を有する化合物、マレイミド部分を有する化合物、またはイミノ部分を有する化合物であり得る。
【0024】
本開示の実施形態によれば、本開示の有機導電性化合物はポリマー、例えばポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニルビニレン、ポリ-p-フェニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイミド、マレイミド化合物、またはこれらの組み合わせであってよい。ポリマーの重量平均分子量は、約10,000から1,000,000、例えば約30,000から1,000,000、30,000から900,000、50,000から800,000、80,000から750,000、または100,000から600,000であってよい。ポリマーの多分散性指数(PDI)は約1.3から3.0、例えば1.5、1.7、1.9、2.1、2.3、2.5、2.7,または2.9であってよい。
【0025】
本開示の実施形態によれば、有機導電性化合物はマレイミド化合物であってよく、該マレイミド化合物はマレイミド、ビスレイミド、またはこれらの組み合わせであり得る。本開示の実施形態によれば、マレイミドは式(II)または式(III)で表される構造を有し得る。
【0026】
【化1】
【0027】
式中、RaはC1-8アルキル基、-RNH2、-C(O)CH3、-CH2OCH3、-CH2S(O)CH3、-C65、-CH2(C65)CH3、フェニレン、ジフェニレン、脂環化合物(cycloaliphatics)、またはシラン置換芳香族化合物であり;YはH、C1-8アルキル基、-S(O)-Rc、-CONH2、または-C(CF33であり;Rbは独立にH、F、Cl、Br、HSO3、SO2、またはC1-8アルキル基であり;RはC1-8アルキレン基であり;RcはC1-8アルキル基である。
【0028】
本開示の実施形態によれば、C1-8アルキル基は直鎖または分岐アルキル基であり得る。例えば、C1-8アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、またはこれらの異性体であり得る。本開示の実施形態によれば、C1-8アルキレン基は直鎖または分岐アルキレン基であり得る。例えば、C1-8アルキレン基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン、オクチレンまたはこれらの異性体であり得る。
【0029】
本開示の実施形態によれば、マレイミドは、マレイミド-フェニルメタン(maleimide-phenylmethane)、フェニル-マレイミド(phenyl-maleimide)、メチルフェニルマレイミド(methylphenyl maleimide)、ジメチルフェニル-マレイミド(dimethylphenyl-maleimide)、エチレンマレイミド(ethylenemaleimide)、チオ-マレイミド(thio-maleimid)、ケトン-マレイミド(ketone-maleimid)、メチレン-マレイミド(methylene-maleinimid)、マレインイミドメチルエーテル(maleinimidomethylether)、マレイミド-エタンジオール(maleimido-ethandiol)、4-フェニルエーテルマレイミド(4-phenylether-maleimid)、4-マレイミド-フェニルスルホン(4-maleimido-phenylsulfone)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0030】
本開示の実施形態によれば、ビスマレイミドは式(IV)または式(V)で表される構造を有していてよい。
【0031】
【化2】
【0032】
式中、RdはC1-8アルキレン基、-RNHR-、-C(O)CH2-、-CH2OCH2-、-C(O)-、-O-、-O-O-、-S-、-S-S-、-S(O)-、-CH2S(O)CH2-、-(O)S(O)-、-C65-、-CH2(C65)CH2-、-CH2(C65)(O)-,フェニレン,ジフェニレン、置換フェニレン、または置換ジフェニレンであり;ReはC1-8アルキレン基、-C(O)-、-C(CH32-、-O-、-O-O-、-S-、-S-S-、-(O)S(O)-、または-S(O)-であり;RはC1-8アルキレン基である。
【0033】
本開示の実施形態によれば、ビスマレイミドはN,N’-ビスマレイミド-4,4’-ジフェニルメタン(N,N'-bismaleimide-4,4'-diphenylmethane)、[1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド]([1,1'-(methylenedi-4,1-phenylene)bismaleimide])、[N,N’-(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド]([N,N'-(1,1'-biphenyl-4,4'-diyl) bismaleimide])、[N,N’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビスマレイミド]([N,N'-(4-methyl-1,3-phenylene)bismaleimide])、[1,1’-(3,3’ジメチル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド]([1,1'-(3,3'dimethyl-1,1'-biphenyl-4,4'-diyl)bismaleimide])、N,N’-エチレンジマレイミド(N,N'-ethylenedimaleimide)、[N,N’-(1,2-フェニレン)ジマレイミド]([N,N'-(1,2-phenylene)dimaleimide])、[N,N’-(1,3-フェニレン)ジマレイミド]([N,N'-(1,3- phenylene)dimaleimide])、N,N’-チオジマレイミド(N,N'-thiodimaleimide)、N,N’-ジチオジマレイミド(N,N'-dithiodimaleimide)、N,N’-ケトンジマレイミド(N,N'-ketonedimaleimide)、N,N’-メチレン-ビス-マレイミド(N,N'-methylene-bis-maleinimide)、ビス-マレインイミドメチル-エーテル(bis-maleinimidomethyl-ether)、[1,2-ビス-(マレイミド)-1,2-エタンジオール]([1,2-bis-(maleimido)-1,2-ethandiol])、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテル-ビス-マレイミド(N,N'-4,4'-diphenylether-bis-maleimid)、[4,4’-ビス(マレイミド)-ジフェニルスルホン]([4, 4'-bis(maleimido)-diphenylsulfone])、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0034】
本開示の実施形態によれば、カップリング剤は、式(VI)の構造を有する化合物のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0035】
【化3】
【0036】
式中、R1、R2、R3およびR4は独立に-OH、-OCn2n+1、-Cn2nNH2、-Cn2nSH、-Cn2nNCO、-Cn2nNHCONH2、または-Cn2nOCOCHCHR5であり、かつR1、R2、R3およびR4のうち少なくとも1つが-Cn2nNH2、-Cn2nSH、-Cn2nNCO、-Cn2nNHCONH2、または-Cn2nOCOCHCHR5であり;nは1~5の整数であり;R5は独立に水素またはメチルである。
【0037】
本開示の実施形態によれば、カップリング剤は式(VI)の構造を有する化合物であってよい。例えば、カップリング剤は、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-methacryloxypropyl trimethoxysilane)、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(3-methacryloxypropyl triethoxysilane)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimethoxysilane)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxysilane,ATPES)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3-mercaptopropyltrimethoxysilane, MPTMS)、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(3-mercaptopropyltriethoxysilane)、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-acryloxypropyl trimethoxysilane)、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(3-acryloxypropyl triethoxysilane)、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(3-ureidopropyltriethoxysilane)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-isocyanatepropyltriethoxysilane)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0038】
本開示の実施形態によれば、活性粒子はリチウム含有酸化物であり得る。例えば、リチウム含有酸化物は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LNCM)、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケル酸化物、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0039】
本開示の実施形態によれば、活性粒子の粒径は1μmから20μmであってよい。活性粒子の粒径が小さすぎると、活性粒子の分散性が不十分となる。活性粒子の粒径が大きすぎると、活性粒子の導電性が不十分となる。
【0040】
本開示の実施形態によれば、正極材料の総重量に対し、改質層は0.1wt%から10wt%であってよい。つまり、正極材料の総重量に対する改質層の重量比は約0.001から0.1、例えば約0.002、0.005、0.01、0.02、0.05、または0.08である。
【0041】
本開示の実施形態によれば、改質層は有機導電性化合物を含み、かつ該有機導電性化合物は網目構造を有する。カップリング剤の使用により、有機導電性化合物とイオン伝導性セラミック化合物との間には化学結合が形成される。
【0042】
本開示の実施形態によれば、正極材料を作製する方法は次のステップを含んでいてよい。先ず、有機導電性化合物およびカップリング剤を溶媒中に分散または溶解させ、第1の溶液を得る。溶媒は、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ピロリドン、N-ドデシルピロリドン、γ-ブチロラクトン、またはこれらの組み合わせとすることができる。第1の溶液の総重量に対し、第1の溶液の固形分は1wt%から20wt%であってよい。次いで、第1の溶液を25~90℃で10~120分撹拌し、イオン伝導性セラミック化合物をその溶液に添加して混合物を得る。ここで、イオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物との重量比は約5:1から3:2であり、カップリング剤は(イオン伝導性セラミック化合物と有機導電性化合物との総重量に対し)0.05wt%から10wt%とすることができる。次いで、その混合物を50~100℃で60~240分加熱し、第2の溶液を得る。次いで、第2の溶液を活性粒子と混合し、その混合物を50~100℃で60~240分撹拌する。次いで、得られたものを90~150℃で30~360分ベイクし、本開示の正極材料を得る。
【0043】
本開示の実施形態により、本開示は、電池(例えばリチウムイオン電池)に用いられる正極も提供する。本開示の実施形態によれば、図2に示されるように、正極20は、正極集電層22と、正極集電層22上に配置された正極活性層24とを含む。本開示の実施形態によれば、正極活性層24は、前述の正極材料、導電性添加剤、およびバインダーを含む。
【0044】
本開示の実施形態によれば、電池(例えばリチウムイオン電池)に用いられる本開示の正極20は正極集電層22および正極活性層24からなるものであってよい。
【0045】
本開示の実施形態によれば、正極活性層24において、正極材料、導電性添加剤、およびバインダーの総重量に対し、正極材料の重量パーセントは約96wt%から99.8wt%(例えば約96.5wt%、97wt%、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、または99.5wt%)であってよく、導電性添加剤の重量パーセントは約0.1wt%から2wt%(例えば約0.2wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.8wt%、1.0wt%、1.2wt%、1.4wt%、1.6wt%、または1.8wt%)であってよく、バインダーの重量パーセントは約0.1wt%から2wt%(例えば約0.2wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.8wt%、1.0wt%、1.2wt%、1.4wt%、1.6wt%、または1.8wt%)であってよい。導電性添加剤の量が少なすぎると、電池の充放電のパフォーマンスが悪くなる。導電性添加剤の量が多すぎると、電池の容量が減少し得る。バインダーの量が少なすぎると、正極活性層が形成されなくなってしまう。バインダーの量が多すぎると、硬く脆弱な正極活性層24が形成されてしまう。
【0046】
本開示の実施形態によれば、導電性添加剤はリチウム電池の正極に用いられる導電性添加剤、例えばカーボンブラック、導電性グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、またはグラフェンであってよい。本開示の実施形態によれば、バインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。バインダーが添加されるため、正極活性層24を正極集電層22上に直接配置することができ、これにより正極活性層24が正極集電層22から剥離するのが防がれる。
【0047】
本開示の実施形態によれば、正極に用いられるバインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0048】
本開示の実施形態によれば、正極集電層22には、金属箔、例えばアルミニウム箔、カーボンコートアルミニウム箔、ステンレス鋼箔、または他の金属箔(例えば白金、チタンなど)が含まれ得る。
【0049】
本開示の実施形態によれば、正極を作製する方法は次のステップを含み得る。先ず、正極材料、導電性添加剤、およびバインダーを溶媒(例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ピロリドン、N-ドデシルピロリドン、γ-ブチロラクトン、またはこれらの組み合わせ)中に分散させて、正極スラリーを得る。正極スラリーの固形分は40wt%から80wt%である。次いで、正極集電層を準備する。次いで、塗布プロセスにより正極スラリーを正極集電層の表面に塗布する。塗布プロセスは、スクリーン印刷、スピンコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、溶媒キャスト法またはディップコーティングであってよい。次に、そのコーティングに対して乾燥プロセスを行い(プロセス温度90~180℃)、正極活性層を得る。これで、本開示の正極を作製するプロセスは完了である。
【0050】
本開示の実施形態により、図3に示されるように、本開示は電池100、例えばリチウムイオン電池も提供する。電池100は、前述の正極20、セパレータ30、および負極40を含み、負極40はセパレータ30により正極20と隔てられている。本開示の実施形態によれば、電池100は電解質液50をさらに含んでいてよく、電解質液は正極20と負極40との間に配置される。正極、セパレータおよび負極は互いに積層され、かつ電解質液50中に浸漬されている。つまり、電池100は電解質液で満たされる。本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示の正極活性層24はセパレータ30と正極集電層22との間に配置される。
【0051】
本開示の実施形態によれば、本開示の電池100は、正極20、セパレータ30、負極40、および電解質液50で構成されていてよい。
【0052】
本開示の実施形態によれば、セパレータ30の材料には、絶縁材料、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ(フッ化ビニリデン)フィルム、ポリアニリンフィルム、ポリイミドフィルム、不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン(PS)、セルロース、またはこれらの組み合わせが含まれる。例えば、セパレータはPE/PP/PE多層複合構造であり得る。本開示の実施形態によれば、セパレータは多孔質構造を有していてよい。つまり、セパレータの孔がセパレータ全体にわたり均一に分布される。
【0053】
本開示の実施形態によれば、電解質液50は溶媒およびリチウム塩(またはリチウム含有化合物)を含み得る。本開示の実施形態によれば、溶媒は有機溶媒、例えばエステル溶媒、ケトン溶媒、カーボネート溶媒、エーテル溶媒、アルカン溶媒、アミド溶媒、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、溶媒は、1、2-ジエトキシエタン、1、2-ジメトキシエタン、1、2-ジブトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸プロピル(PA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、リチウム塩(またはリチウム含有化合物)は、LiPF6、LiClO4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiDFOB)、LiBF4、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2CF2CF32、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiGaCl4、LiNO3、LiC(SO2CF33、LiSCN、LiO3SCF2CF3、LiC65SO3、LiO2CCF3、LiSO3F、LiB(C654、LiB(C242(LiBOB)、LiFePO4、Li7La3Zr212、LiLaTi26、Li2.9PO3.30.46、Li3PO4、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO43、Li3.6Si0.60.44、Li5La3Ta212、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0054】
本開示の実施形態によれば、負極40は、負極集電層42と、負極集電層42上に配置された負極活性層44とを含んでいてよく、負極活性層44は負極材料を含む。いくつかの実施形態において、負極活性層はバインダーをさらに含み、負極材料およびバインダーの総重量に対し、負極材料の重量パーセントは約98wt%から99.9wt%(例えば約98.5wt%、99wt%、または99.5wt%)であってよく、バインダーの重量パーセントは約0.1wt%から2wt%(例えば約0.2wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.8wt%、1.0wt%、1.2wt%、1.4wt%、1.6wt%、または1.8wt%)であってよい。本開示の実施形態によれば、負極に用いられるバインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、負極集電層は金属箔、例えば銅箔、ニッケル箔、またはアルミニウム箔であってよい。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態によれば、負極活性層44はセパレータ30と負極集電層42との間に配置される。本開示の実施形態によれば、負極材料には炭素材、リチウム、遷移金属酸化物、リチウム含有化合物、ケイ素含有化合物、またはこれらの組み合わせが含まれる。本開示の実施形態によれば、炭素材にはメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、コークス、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンファイバー、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、リチウム含有化合物には、LiAl、LiMg、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sb、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、LiC6、Li3FeN2、Li2.6Co0.4N、またはLi2.6Cu0.4Nが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、ケイ素含有化合物には、酸化ケイ素、炭素修飾酸化ケイ素、炭化ケイ素、純シリコン材料(pure-silicon material)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、遷移金属酸化物にはLi4Ti512、またはTiNb27が含まれ得る。
【0056】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照にしながら、例示的な実施形態を詳細に説明する。本発明概念は、ここに示された例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明確とするために周知の部分についての説明は省き、また、全体を通して類似する参照番号は類似する構成要素を指すものとする。
【実施例
【0057】
作製例1:
ポリアニリン(PANI)(Chanmol Biotech Co., Ltd.よりCM-PAD9901の商品名で市販されている)をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散または溶解し、ポリアニリン溶液を得た。このポリアニリン溶液の固形分は5wt%であった(つまり、PANIとNMPとの重量比は5:95)。次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(ATPES)(カップリング剤となる)をポリアニリン溶液に加えた。ATPESとPANIとの重量比は1:100であった。次いで、得られた溶液を25℃で60分均一に撹拌してから、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)(NEI社よりNanomyte(登録商標)LATPの商品名で市販されている)(Li/Al/Ti/PO4のモル比は2/1/1/3)をその溶液に加えて混合物を得た。LATPとPANIとの重量比は2:1であった。次いで、その混合物を70℃で180分撹拌し、スラリー(1)を得た。
【0058】
作製例2:
をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散または溶解し、マレイミド溶液を得た。マレイミド溶液の固形分は5wt%であった(つまり、マレイミドとNMPとの重量比は5:95)。次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(ATPES)(カップリング剤となる)をマレイミド溶液に加えた。ATPESとマレイミドとの重量比は0.2:100であった。次いで、得られた溶液を25℃で60分均一に撹拌してから、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)(NEI社よりNanomyte(登録商標)LATPの商品名で市販されている)(Li/Al/Ti/PO4のモル比は2/1/1/3)をその溶液に加えて混合物を得た。LATPとマレイミドとの重量比は3:2であった。次いで、その混合物を70℃で180分撹拌し、スラリー(2)を得た。
【0059】
作製例3:
ポリアニリン(PANI)(Chanmol Biotech Co., Ltd.よりCM-PAD9901の商品名で市販されている)(純度99.2%)をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散または溶解し、ポリアニリン溶液を得た。ポリアニリン溶液の固形分は5wt%であった(つまり、PANIとNMPとの重量比は5:95)。次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(ATPES)(カップリング剤となる)をポリアニリン溶液に加えた。ATPESとPANIとの重量比は2:100であった。次いで、得られた溶液を25℃で60分均一に撹拌してから、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)(NEI社よりNanomyte(登録商標)LATPの商品名で市販されている)(Li/Al/Ti/PO4のモル比は2/1/1/3)をその溶液に加えて混合物を得た。LATPとPANIとの重量比は4:1であった。次いで、その混合物を70℃で180分撹拌し、スラリー(3)を得た。
【0060】
作製例4:
をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散または溶解し、マレイミド溶液を得た。マレイミド溶液の固形分は5wt%であった(つまり、マレイミドとNMPとの重量比は5:95)。次いで、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)(カップリング剤となる)をマレイミド溶液に加えた。MPTMSとマレイミドとの重量比は0.2:100であった。次いで、得られた溶液を25℃で60分均一に撹拌してから、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)(NEI社よりNanomyte(登録商標)LATPの商品名で市販されている)(Li/Al/Ti/PO4のモル比は2/1/1/3)をその溶液に加えて混合物を得た。LATPとマレイミドとの重量比は3:2であった。次いで、その混合物を70℃で180分撹拌し、スラリー(4)を得た。
【0061】
作製例5:
ポリピロール(PPy)(Sigma-Aldrich社より577030の商品名で市販されている)をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散または溶解し、ポリピロール溶液を得た。このポリピロール溶液の固形分は5wt%であった(つまり、PPyとNMPとの重量比は5:95)。次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(ATPES)(カップリング剤となる)をポリピロール溶液に加えた。ATPESとPPyとの重量比は1:100であった。次いで、得られた溶液を25℃で60分均一に撹拌してから、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)(NEI社よりNanomyte(登録商標)LATPの商品名で市販されている)(Li/Al/Ti/PO4のモル比は2/1/1/3)をその溶液に加えて混合物を得た。LATPとPPyとの重量比は3:2であった。次いで、その混合物を100℃で150分撹拌し、スラリー(5)を得た。
【0062】
作製例6:
およびポリアニリン(PANI)(Chanmol Biotech Co., Ltd.よりCM-PAD9901の商品名で市販されている)をN-メチルピロリドン(NMP)中に分散または溶解し、溶液を得た。ポリアニリンとマレイミドとの重量比は1:4であった。この溶液の固形分は5wt%であった(つまり、マレイミドおよびポリアニリンの総重量とNMPの重量との比は5:95)。次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(ATPES)(カップリング剤となる)をその溶液に加えた。APTESの重量とマレイミドおよびポリアニリンの総重量との比は0.1:100であった。次いで、得られた溶液を90℃で60分撹拌してから、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)(NEI社よりNanomyte(登録商標)LATPの商品名で市販されている)(Li/Al/Ti/PO4のモル比は2/1/1/3)をその溶液に加えて混合物を得た。LATPの重量とマレイミドおよびポリアニリンの総重量との比は1:1であった。次いで、その混合物を70℃で180分撹拌し、スラリー(6)を得た。
【0063】
出発物質およびスラリー(1)~(6)の量を表1に示した:
【0064】
【表1】
【0065】
実施例1
作製例1のスラリー(1)(固形分量1重量部)および96.83重量部のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiiMnjCok2,i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;およびk:0.11~0.12)(Ningbo Ronbay New Energy Technology Co., Ltd.よりNMC811-S85Eの商品名で市販されている)を混合し、60℃で120分撹拌して、修飾リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(固形分量97.83重量部)を得た。次いで、0.99重量部の導電性カーボン(TimCal Co.よりsuper-pの商品名で市販されている)、カーボンナノチューブ溶液(NMP中に溶解したカーボンナノチューブ)(固形分2.2%、固形分量0.3重量部)、および1.39重量部のバインダー(Solvay S.AよりPVDF5130の商品名で市販されている)を修飾リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物と混合した。均一に撹拌した後、リチウムイオン電池正極スラリーを得た。
【0066】
次いで、リチウムイオン電池正極スラリーをアルミニウム箔(正極集電層となる)(厚さ12μm、An Chuan Enterprise Co., Ltd.,より市販されている)に塗布した。乾燥させた後、正極活性層を有する正極が得られた。次いで、負極(負極活性層はSiO/C(酸化ケイ素およびカーボンの混合物)(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd. よりKYX-2の商品名で市販されている)であり、負極集電層は銅箔(Chang Chun GroupよりBFR-Fの商品名で市販されている)である))、およびセパレータ(Asahi KaseiよりCelgard 2320の商品名で市販されている)を準備した。次いで、負極、セパレータおよび正極を順に配置し、ジェリーロール内に封止した(サイズ65mm(高さ)×55mm(幅)×65mm(長さ))。電解質液(LiPF6塩および溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの容積比は1:1)、LiPF6の濃度は1.1M)をジェリーロール中に注入して、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表2に示されている。
【0067】
実施例2
作製例1のスラリー(1)を作製例2のスラリー(2)に置き換えたこと以外、実施例1と同じ方式で実施例2を行って、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表2に示されている。
【0068】
実施例3
作製例1のスラリー(1)を作製例3のスラリー(3)に置き換え、かつスラリーの固形分量を1重量部から1.5重量部に増やしたこと以外、実施例1と同じ方式で実施例3を行って、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表2に示されている。
【0069】
実施例4
作製例1のスラリー(1)を作製例4のスラリー(4)に置き換えたこと以外、実施例1と同じ方式で実施例4を行って、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表2に示されている。
【0070】
実施例5
作製例1のスラリー(1)を作製例5のスラリー(5)に置き換えたこと以外、実施例1と同じ方式で実施例5を行って、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表2に示されている。
【0071】
【表2】
【0072】
ここで、正極のシート抵抗は4探針の抵抗率測定により測定し;電極の付着力は引張試験機により測定し;電池抵抗は電池内部抵抗測定により測定し;放電容量および放電率は電池充電/放電システムにより測定し;かつ電池の放熱量は示差走査熱量計により測定した。
【0073】
実施例6
作製例1のスラリー(1)を作製例6のスラリー(6)に置き換えたこと以外、実施例1と同じ方式で実施例6を行って、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表3に示されている。
【0074】
実施例7
スラリー(1)の固形分量を1重量部から5重量部に増やしたこと以外、実施例1と同じ方式で実施例7を行って、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表3に示されている。
【0075】
実施例8
スラリー(3)の固形分量を1重量部から0.5重量部に減らしたこと以外、実施例3と同じ方式で実施例8を行って、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表3に示されている。
【0076】
実施例9
スラリー(6)の固形分量を1重量部から5重量部に増やしたこと以外、実施例6と同じ方式で実施例9を行って、電池を得た。次いで、電池の試験を行った。結果が表3に示されている。
【0077】
【表3】
【0078】
比較例1
標準的なリチウムイオン電池の正極スラリー(97.3%のNMC811(LiNiiMnjCok2、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;かつk:0.11~0.12)(Ningbo Ronbay New Energy Technology Co., Ltd.よりNMC811-S85Eの商品名で市販されている)、1%のSuper-P(導電性炭素粉末)(TimCal Co.より市販されている)、および1.4%のPVDF-5130、0.3%のカーボンナノチューブ(TUBALL(商標) BATT NMP 0.4% PVDF SOLVAY SOLEF(登録商標) 5130の商品名でOCSiAlより市販されている)を含む)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(厚さ12μm、An Chuan Enterprise Co., Ltd.,より市販されている)上に塗布した。乾燥させた後、正極活性層を有する正極が得られた。次いで、負極を準備した。その負極活性層はSiO/C(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.よりKYX-2の商品名で市販されている)であり、負極集電層は銅箔(Chang Chun GroupよりBFR-Fの商品名で市販されている)であった。セパレータ(Celgard 2320の商品名で販売されている)を準備した。次いで、負極、セパレータおよび正極を順に配置し、ジェリーロール内に封止した(サイズ65mm(高さ)×55mm(幅)×65mm(長さ))。電解質液(LiPF6および溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの容積比は1:1)、LiPF6の濃度は1.1Mとした)をジェリーロール中に注入して電池を得た。次いで、その電池の試験を行った。結果が表4に示されている。
【0079】
比較例2
標準的なリチウムイオン電池の正極スラリー(97.3%のNMC811(LiNiiMnjCok2、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;かつk:0.11~0.12)(Ningbo Ronbay New Energy Technology Co., Ltd.よりNMC811-S85Eの商品名で市販されている)、1%のSuper-P(導電性炭素粉末)(TimCal Co.より市販されている)、1.4%のPVDF-5130、および0.3%のカーボンナノチューブ(TUBALL(商標) BATT NMP 0.4% PVDF SOLVAY SOLEF(登録商標) 5130の商品名でOCSiAlより市販されている)を含む)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(厚さ12μm、An Chuan Enterprise Co., Ltd.,より市販されている)上に塗布した。乾燥させた後、正極活性層を有する正極が得られた。次いで、負極を準備した。その負極活性層はSiO/C(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.よりKYX-2の商品名で市販されている)であり、負極集電層は銅箔(Chang Chun GroupよりBFR-Fの商品名で市販されている)であった。セパレータ(Celgard 2320の商品名で販売されている)を準備した。次いで、負極、セパレータおよび正極を順に配置し、ジェリーロール内に封止した(サイズ65mm(高さ)×55mm(幅)×65mm(長さ))。電解質液(LiPF6および溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの容積比は1:1)、LiPF6の濃度は1.1Mとした)をジェリーロール中に注入した。次いで、その電池の試験を行った。結果が表4に示されている。
【0080】
比較例3
標準的なリチウムイオン電池の正極スラリー(97.3%のNMC811(LiNiiMnjCok2、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;かつk:0.11~0.12)(Ningbo Ronbay New Energy Technology Co., Ltd.よりNMC811-S85Eの商品名で市販されている)、1%のSuper-P(導電性炭素粉末)(TimCal Co.より市販されている)、1.4%のPVDF-5130、および0.3%のカーボンナノチューブ(TUBALL(商標) BATT NMP 0.4% PVDF SOLVAY SOLEF(登録商標) 5130の商品名でOCSiAlより市販されている)を含む)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(厚さ12μm、An Chuan Enterprise Co., Ltd.,より市販されている)上に塗布した。乾燥させた後、正極活性層を有する正極が得られた。次いで、負極を準備した。その負極活性層はSiO/C(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.よりKYX-2の商品名で市販されている)であり、負極集電層は銅箔(Chang Chun GroupよりBFR-Fの商品名で市販されている)であった。セパレータ(Celgard 2320の商品名で販売されている)を準備した。次いで、負極、セパレータおよび正極を順に配置し、ジェリーロール内に封止した(サイズ65mm(高さ)×55mm(幅)×65mm(長さ))。電解質液(LiPF6および溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの容積比は1:1)、LiPF6の濃度は1.1Mとした)をジェリーロール中に注入した。次いで、その電池の試験を行った。結果が表4に示されている。
【0081】
比較例4
標準的なリチウムイオン電池の正極スラリー(97.3%のNMC811(LiNiiMnjCok2、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;かつk:0.11~0.12)(Ningbo Ronbay New Energy Technology Co., Ltd.よりNMC811-S85Eの商品名で市販されている)、1%のSuper-P(導電性炭素粉末)(TimCal Co.より市販されている)、1.4%のPVDF-5130、および0.3%のカーボンナノチューブ(TUBALL(商標) BATT NMP 0.4% PVDF SOLVAY SOLEF(登録商標) 5130の商品名でOCSiAlより市販されている)を含む)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(厚さ12μm、An Chuan Enterprise Co., Ltd.,より市販されている)上に塗布した。乾燥させた後、正極活性層を有する正極が得られた。次いで、負極を準備した。その負極活性層はSiO/C(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.よりKYX-2の商品名で市販されている)であり、負極集電層は銅箔(Chang Chun GroupよりBFR-Fの商品名で市販されている)であった。セパレータ(Celgard 2320の商品名で販売されている)を準備した。次いで、負極、セパレータおよび正極を順に配置し、ジェリーロール内に封止した(サイズ65mm(高さ)×55mm(幅)×65mm(長さ))。電解質液(LiPF6および溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの容積比は1:1)、LiPF6の濃度は1.1Mとした)をジェリーロール中に注入した。次いで、その電池の試験を行った。結果が表4に示されている。
【0082】
比較例5
標準的なリチウムイオン電池の正極スラリー(97.3%のNMC811(LiNiiMnjCok2、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;かつk:0.11~0.12)(Ningbo Ronbay New Energy Technology Co., Ltd.よりNMC811-S85Eの商品名で市販されている)、1%のSuper-P(導電性炭素粉末)(TimCal Co.より市販されている)、1.4%のPVDF-5130、および0.3%のカーボンナノチューブ(TUBALL(商標) BATT NMP 0.4% PVDF SOLVAY SOLEF(登録商標) 5130の商品名でOCSiAlより市販されている)を含む)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(厚さ12μm、An Chuan Enterprise Co., Ltd.,より市販されている)上に塗布した。乾燥させた後、正極活性層を有する正極が得られた。次いで、負極を準備した。その負極活性層はSiO/C(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.よりKYX-2の商品名で市販されている)であり、負極集電層は銅箔(Chang Chun GroupよりBFR-Fの商品名で市販されている)であった。セパレータ(Celgard 2320の商品名で販売されている)を準備した。次いで、負極、セパレータおよび正極を順に配置し、ジェリーロール内に封止した(サイズ65mm(高さ)×55mm(幅)×65mm(長さ))。電解質液(LiPF6および溶媒を含む。溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含み(ECとDECとの容積比は1:1)、LiPF6の濃度は1.1Mとした)をジェリーロール中に注入した。次いで、その電池の試験を行った。結果が表4に示されている。
【0083】
【表4】
【0084】
表2~4に示されるように、リチウムイオン電池の正極が本開示の正極材料により作製されていると、リチウムイオン電池正極のシート抵抗および電極の付着力が改善され得る。さらに、電池の抵抗および放熱量が低減し、高率放電能が向上する。
【0085】
開示された方法および物質に様々な修飾および変更を加え得ることは、明らかであろう。明細書および実施例は単なる例示と見なされることが意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示される。
【符号の説明】
【0086】
10…正極材料
12…活性粒子
13…改質層
20…正極
22…正極集電層
24…正極活性層
30…セパレータ
40…負極
42…負極集電層
44…負極活性層
50…電解質液
100…電池
図1
図2
図3