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特許7556014近位要素アクチュエータの固定及び解放メカニズム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】近位要素アクチュエータの固定及び解放メカニズム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022502492
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 US2020042139
(87)【国際公開番号】W WO2021011655
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】62/874,280
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521533326
【氏名又は名称】エバルブ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】リチャード チャイルズ
(72)【発明者】
【氏名】コージ キヅカ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】ダイラン バン ホーベン
(72)【発明者】
【氏名】タマー マフムード
(72)【発明者】
【氏名】チャド アブナサール
(72)【発明者】
【氏名】サントシュ プラブー
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0142589(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0041257(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0353181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織を係合させるための固定システムであって、前記固定システムは:
第1のアーム及び第2のアーム、
第1の位置と第2の位置の間で前記第1のアームに対して可動である第1の近位要素、
第1の位置と第2の位置の間で前記第2のアームに対して可動である第2の近位要素、及び
結合部材、
を含む植込み型固定装置と;
近位端部と遠位端部を有するカテーテルであって、前記近位端部と前記遠位端部の間に延在する少なくとも1つの管腔を画定するカテーテル、
前記少なくとも1つの管腔を通って延在し前記結合部材に対し解放可能に結合されたシャフトであって、シャフト管腔、並びに、該シャフト管腔と交差する第1の開口部及び第2の開口部を有する、シャフト、
前記シャフト管腔内で可動に配設されるアクチュエータロッドであって、前記アクチュエータロッドが第1の位置にあるときに前記第1の開口部及び前記第2の開口部をそれぞれ部分的に塞ぎ、前記アクチュエータロッドが第2の位置にあるときに前記第1の開口部及び前記第2の開口部を塞がない、アクチュエータロッド、
前記カテーテルの前記少なくとも1つの管腔を通って延在する第1の近位要素アクチュエータであって、第1の端部、第1の捕捉要素を含む第2の端部ならびに前記第1の端部と前記第2の端部の間の中間部分を有し、前記第1の近位要素アクチュエータの前記中間部分において前記第1の近位要素に結合されかつ前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第1の近位要素を移動させるために作動可能である、第1の近位要素アクチュエータ、及び
前記カテーテルの前記少なくとも1つの管腔を通って延在する第2の近位要素アクチュエータであって、第1の端部、第2の捕捉要素を含む第2の端部ならびに前記第1の端部と前記第2の端部の間の中間部分を有し、前記第2の近位要素アクチュエータの前記中間部分において前記第2の近位要素に結合されかつ、前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第2の近位要素を移動させるために作動可能である、第2の近位要素アクチュエータ、
を含む送達装置と;
を含
前記第1の捕捉要素は、前記アクチュエータロッドが前記第2の位置にあるときに、外部から前記第1の開口部内へ挿入されて収容可能となるように構成されるとともに、前記第1の捕捉要素は、前記第1の開口部内に収容された状態で前記アクチュエータロッドが前記第2の位置から移動して前記第1の位置にあるときに、前記第1の近位要素アクチュエータにおける前記第2の端部から前記第1の端部へ向かう方向の引張力に対して、前記第1の開口部の内壁及び前記アクチュエータロッドと機械的に干渉することで、前記第1の開口部からの前記第1の捕捉要素の離脱が阻止されて、前記第1の近位要素アクチュエータの前記第2の端部が前記シャフトに連結されるように構成され、
前記第2の捕捉要素は、前記アクチュエータロッドが前記第2の位置にあるときに、外部から前記第2の開口部内へ挿入されて収容可能となるように構成されるとともに、前記第2の捕捉要素は、前記第2の開口部内に収容された状態で前記アクチュエータロッドが前記第2の位置から移動して前記第1の位置にあるときに、前記第2の近位要素アクチュエータにおける前記第2の端部から前記第1の端部へ向かう方向の引張力に対して、前記第2の開口部の内壁及び前記アクチュエータロッドと機械的に干渉することで、前記第2の開口部からの前記第2の捕捉要素の離脱が阻止されて、前記第2の近位要素アクチュエータの前記第2の端部が前記シャフトに連結されるように構成されている、固定システム。
【請求項2】
前記第1の捕捉要素が第1の球体を含み、前記第2の捕捉要素が第2の球体を含む、請求項1に記載の固定システム。
【請求項3】
前記第1の捕捉要素が第1のラッパ形状体を含み、前記第2の捕捉要素が第2のラッパ形状体を含む、請求項1に記載の固定システム。
【請求項4】
患者の組織を係合させるための固定システムにおいて、前記固定システムは:
第1のアーム及び第2のアーム、
第1の位置と第2の位置の間で前記第1のアームに対して可動である第1の近位要素、
第1の位置と第2の位置の間で前記第2のアームに対して可動である第2の近位要素、及び
結合部材、
を含む植込み型固定装置と;
近位端部と遠位端部を有するカテーテルであって、前記近位端部と前記遠位端部の間に延在する少なくとも1つの管腔を画定するカテーテル、
前記少なくとも1つの管腔を通って延在し前記結合部材に対し解放可能に結合されているシャフト、
前記少なくとも1つの管腔を通って延在する第1の近位要素アクチュエータであって、第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1の近位要素アクチュエータの前記第2の端部において前記第1の近位要素に結合されかつ前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第1の近位要素を移動させるために作動可能である、第1の近位要素アクチュエータ、及び
前記少なくとも1つの管腔を通って延在する第2の近位要素アクチュエータであって、第1の端部及び第2の端部を有し、前記第2の近位要素アクチュエータの前記第2の端部において前記第2の近位要素に結合されかつ、前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第2の近位要素を移動させるために作動可能である、第2の近位要素アクチュエータ、
を含む送達装置と;
を含み、
前記第1の近位要素アクチュエータ及び前記第2の近位要素アクチュエータは各々、遠位挟持体を有する内側部材に対して軸方向に可動である外側シースを含み、前記外側シースは、前記内側部材に対して遠位に移動させることによって前記遠位挟持体を閉じ、前記内側部材に対して近位に移動させることによって前記遠位挟持体を開くように構成されている、
固定システム。
【請求項5】
患者の組織を係合させるための固定システムにおいて、前記固定システムは:
連結部材、
遠位要素、及び、
前記遠位要素に対して可動である近位要素、
を有する植込み型固定装置と;
近位端部及び遠位端部を有するカテーテルであって、
シャフト、
アクチュエータロッド、及び、
前記カテーテルの前記遠位端部から延びる近位要素アクチュエータ
を有するカテーテルと;
を含み、
前記シャフトは、前記植込み型固定装置の前記連結部材に連結されるとともに、中心軸、及び、前記中心軸に対して横方向に延びる横方向開口部、を画定し、
前記アクチュエータロッドは、前記シャフト内に配設されるとともに、前記横方向開口部と交差し、
前記近位要素アクチュエータは、前記近位要素に係合されるとともに、捕捉要素を画定するアクチュエータ遠位端部を有し、
前記アクチュエータ遠位端部が前記横方向開口部内を前記中心軸の第1の側から前記中心軸の第2の側へ延び、前記アクチュエータロッドによって前記捕捉要素が前記第2の側から前記第1の側へ戻って前記横方向開口部から抜け出ることを妨げられる、
固定システム。
【請求項6】
前記捕捉要素は、ラッパ形状を有している、請求項5に記載の固定システム。
【請求項7】
前記アクチュエータロッドは、前記遠位要素に連結されるとともに、前記前記近位要素に対して前記遠位要素を移動させるように構成されている、請求項5に記載の固定システム。
【請求項8】
前記近位要素アクチュエータに張力を加えると、前記捕捉要素が前記アクチュエータロッドの外面を圧迫する、請求項5に記載の固定システム。
【請求項9】
前記シャフトは、前記中心軸の周りに延びる側壁を含むとともに、円筒形の管腔を画定する、請求項5に記載の固定システム。
【請求項10】
前記横方向開口部は前記円筒形の管腔と交差するとともに、前記アクチュエータロッドは前記横方向開口部と交差する、請求項9に記載の固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年7月15日出願の米国仮特許出願第62/874,280号の優先権を主張するものであり、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、全般的に、医療方法、装置及びシステムに関する。詳細には、本発明は、組織近置又は弁修復などの身体組織の血管内、経皮的又は最小限の侵襲的外科治療のための方法、装置及びシステムに関する。より詳細には、本発明は、心臓弁及び静脈弁の修復に関する。
【背景技術】
【0003】
僧帽弁逆流症は、左心室から僧帽弁閉鎖不全による左心房の中への逆流が特徴的である。心臓収縮の正常なサイクル(収縮期)において、僧帽弁は、酸素化血液が左心房へ逆流するのを防止するための逆止め弁として作用する。このようにして、酸素化血液は大動脈弁を通過して大動脈の中へ送られる。弁逆流症は、心臓のポンプ効率を著しく低下させて、患者を深刻な進行性の心不全の危険に陥らせる可能性がある。
【0004】
僧帽弁逆流症は、僧帽弁又は左心室壁の多様な機械的欠陥から生じる可能性がある。弁尖、弁尖を乳頭筋に接続する弁索、乳頭筋又は左心室壁は、損傷その他の機能不全を受ける可能性がある。一般に、弁輪は、損傷したり、拡張したり、弱化して、左心室の高い圧力に対抗して適切に閉じる僧帽弁の能力を制限する可能性がある。
【0005】
僧帽弁逆流症の最も一般的な治療は、弁尖及び弁輪のリモデリングを含めた弁交換又は修復に依存しており、弁輪のリモデリングは、一般に弁輪形成術と呼ばれる。対向する弁尖の隣合う区分を縫合することに依存する僧帽弁修復のための最近の技術は、ボウタイ(bow-tie)」又は「エッジトゥエッジ(edge-to-edge)」術と呼ばれる。これらの技術は全て、非常に有効であり得るものの、通常は、一般的に胸骨切開によって患者の胸郭を開き、患者を心肺バイパス下に置く心臓切開手術に依存するものである。胸郭を開くことと患者をバイパス下に置くことの両方が必要ということは、外傷的であり、これには高い死亡率と罹患率が付随する。より近年になって、機能不全の弁に対し植込み型クリップを送達するために、低侵襲性カテーテルベースの手技が開発されてきた。これらのクリップは、弁尖の一部分を互いに締結するために使用され、これにより逆流を低減する。クリップは今後有望であるように思われるが、クリップの送達及び展開は、難易度が高い可能性がある。いくつかの状況において、蛍光透視法及び心エコー検査などの技術を用いてクリップ及び弁尖を視覚化することは困難な場合がある。したがって、改良された取付けメカニズム及び取付け評価方法が望ましい。
【0006】
このような理由から、僧帽弁及び他の心臓弁の修復を行なうための改良された方法、装置及びシステムを提供することが望ましい。このような方法、装置及びシステム及びシステムは、好ましくは、開胸手段を必要とせず、血管内で、すなわち心臓から遠い患者の脈管構造内の1点から心臓まで前進させられる装置を用いるか、又は低侵襲性のアプローチによって行なわれ得るものでなければならない。さらにこのような装置及びシステムは、固定装置のより容易な送達、ならびに最適な設置を保証するために、固定前において固定装置の再位置付け及び任意の取外しを可能にする特徴を提供しなければならない。さらに一層好ましくは、該方法、装置及びシステムは、心臓弁以外の身体内の組織の修復にとっても有用であると考えられる。これらの目的の少なくともいくつかは、以下に記載する発明によって達成されるものである。
【0007】
2.関連技術の説明
僧帽弁逆流症を治療する目的で僧帽弁尖を結合させ修正するための低侵襲性で経皮的な技術は、特許文献1~4中に記載されている。
【0008】
非特許文献1~3は、逆流を少なくするために相対する弁尖の縁部を互いに縫合する「エッジトゥエッジ」又は「ボウタイ」の僧帽弁修復を行なうための開胸手術方法について記載している。非特許文献4、5は、拡張型心筋症の性質及び治療について論述する総説である。
【0009】
僧帽弁形成術は、非特許文献6~9の刊行物中に記載されている。僧帽弁修復のための線形セグメント弁輪形成術は、非特許文献10~13に記載されている。
【0010】
経皮経管的心臓修復手技は、非特許文献14~16に記載されている。
【0011】
血管内心臓弁交換は、特許文献5~10中に記載されている。同様に、人工心臓弁の一時的設置のためのカテーテルについて記載する特許文献11も参照のこと。
【0012】
他の経皮経管的心臓修復は、特許文献12~15中に記載されている。
【0013】
胸腔鏡及び他の低侵襲性心臓弁修復及び置換手技は、特許文献16~21中に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第98/35638号
【文献】国際公開第99/00059号
【文献】国際公開第99/01377号
【文献】国際公開第00/03759号
【文献】米国特許第5,840,081号
【文献】米国特許第5,411,552号
【文献】米国特許第5,554,185号
【文献】米国特許第5,332,402号
【文献】米国特許第4,994,077号
【文献】米国特許第4,056,854号
【文献】米国特許第3,671,979号
【文献】米国特許第4,917,089号
【文献】米国特許第4,484,579号
【文献】米国特許第3,874,338号
【文献】国際公開第91/01689号
【文献】米国特許第5,855,614号
【文献】米国特許第5,829,447号
【文献】米国特許第5,823,956号
【文献】米国特許第5,797,960号
【文献】米国特許第5,769,812号
【文献】米国特許第5,718,725号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Maisano et al.(1998)Eur.J.Cardiothorac.Surg.13:240~246
【文献】Fucci et al.(1995)Eur.J.Cardiothorac.Surg.9:621~627
【文献】Umana et al.(1998)Ann.Thorac.Surg.66:1640~1646
【文献】Dec及びFuster(1994)N.Engl.J.Med.331:1564~1575
【文献】Alvarez et al.(1996)J.Thorac.Cardiovasc.Surg.112:238~247
【文献】Bach及びBolling(1996)Am.J.Cardiol.78:966~969
【文献】Kameda et al.(1996)Ann.Thorac.Surg.61:1829~1832
【文献】Bach及びBolling(1995)Am.HeartJ.129:1165~1170
【文献】Bolling et al.(1995)109:676~683
【文献】Ricchi et al.(1997)Ann.Thorac.Surg.63:1805~1806
【文献】McCarthy及びCosgrove(1997)Ann.Thorac.Surg.64:267~268
【文献】Tager et al.(1998)Am.J.Cardiol.81:1013~1016
【文献】Abe et al.(1989)Ann.Thorac.Surg.48:670~676
【文献】Park et al.(1978)Circulation58:600~608
【文献】Uchida et al.(1991)Am.HeartJ.121:1221~1224
【文献】AliKhan et al.(1991)Cathet.Cardiovasc.Diagn.23:257~262
【発明の概要】
【0016】
開示対象主題によると、患者の組織を係合させるための固定システムが提供されている。該システムは、第1のアーム及び第2のアーム、第1の位置と第2の位置の間で第1のアームとの関係において可動である第1の近位要素、第1の位置と第2の位置の間で第2のアームとの関係において可動である第2の近位要素、及び結合部材を有する植込み型固定装置を含む。該システムは、同様に、近位端部と遠位端部を有するカテーテルであって、近位端部と遠位端部の間に延在する少なくとも1つの管腔を画定するカテーテルと、及び少なくとも1つの管腔を通って延在し結合部材に対し解放可能に結合されているシャフトも含んでいる。送達装置はさらに、少なくとも1つの管腔を通って延在する第1の近位要素アクチュエータであって、第1の端部、第2の端部ならびに第1の端部と第2の端部の間の中間部分を有し、第1の近位要素アクチュエータの中間部分において第1の近位要素に結合されかつ第1の位置と第2の位置の間で第1の近位要素を移動させるために作動可能である、第1の近位要素アクチュエータと、少なくとも1つの管腔を通って延在する第2の近位要素アクチュエータであって、第1の端部、第2の端部ならびに第1の端部と第2の端部の間の中間部分を有し、第2の近位要素アクチュエータの中間部分において第2の近位要素に結合されかつ、第1の位置と第2の位置の間で第2の近位要素を移動させるために作動可能である、第2の近位要素アクチュエータと、を含む。それぞれ第1の近位要素アクチュエータ及び第2の近位要素アクチュエータの第2の端部は、シャフト及び結合部材のうちの少なくとも1つに結合可能である。
【0017】
開示対象主題によると、第1の近位要素アクチュエータ及び第2の近位要素アクチュエータは、性能を強化するためのさまざまな方法でシャフト及び/又は結合部材に結合され得る。例えば、第1の近位要素アクチュエータ及び第2の近位要素アクチュエータは、シャフト及び結合部材を結合解除することによってシャフト及び結合部材のうちの少なくとも1つから解放され得る。第1の近位要素アクチュエータの第2の端部は、第1のループを含むことができ、第2の近位要素アクチュエータの第2の端部は、第2のループを含むことができる。シャフト及び結合部材が共に結合された時点で、第1及び第2のループの各々は、シャフト及び結合部材のうちの少なくとも1つの周りに配置され得る。
【0018】
第1の近位要素アクチュエータの第2の端部は、第1の捕捉要素を含むことができ、第2の近位要素アクチュエータの第2の端部は第2の捕捉要素を含むことができる。第1の捕捉要素は第1の球体であり得、第2の捕捉要素は第2の球体であり得る。代替的には、第1の捕捉要素は第1のラッパ形状体であり得、第2の捕捉要素は第2のラッパ形状体であり得る。第1の捕捉要素はシャフト内の第1の開口部内に収容されるように構成され得、第2の捕捉要素はシャフト内の第2の開口部内に収容されるように構成され得る。第1の捕捉要素及び第2の捕捉要素は、シャフトの管腔の内部に収容されたアクチュエータロッドによって、対応する第1の開口部及び第2の開口部内に保持され得る。第1の捕捉要素及び第2の捕捉要素が、解放可能に共に結合された時点で、シャフト及び結合部材の間に収容され得る。
【0019】
送達システムはさらに、第1の近位要素アクチュエータマンドレル及び第2の近位要素アクチュエータマンドレルを含むことができ、第1及び第2の近位要素アクチュエータマンドレルは、カテーテルの少なくとも1つの管腔を通って延在している。第1の近位要素アクチュエータマンドレルは、第1の近位要素アクチュエータを、第1の近位要素アクチュエータマンドレルとカテーテルの間に解放可能に定着させるように構成され得、第2の近位要素アクチュエータマンドレルは、第2の近位要素アクチュエータを、第2の近位要素アクチュエータマンドレルとカテーテルの間に解放可能に定着させるように構成され得る。送達装置はさらに、第1の近位要素アクチュエータを切断して第1の近位要素を解放するように構成された第1のカッタを含むことができる。送達装置はさらに、第2の近位要素アクチュエータを切断して第2の近位要素を解放するように構成された第2のカッタを含むことができる。
【0020】
開示対象主題の別の態様によると、患者の組織を係合させるための固定システムが提供される。該システムは、第1のアーム及び第2のアーム、第1の位置と第2の位置の間で第1のアームとの関係において可動である第1の近位要素、第1の位置と第2の位置の間で第2のアームに対して可動である第2の近位要素、及び結合部材を有する植込み型固定装置を含む。該システムは同様に、近位端部と遠位端部を有するカテーテルであって、近位端部と遠位端部の間に延在する少なくとも1つの管腔を画定するカテーテル、及び少なくとも1つの管腔を通って延在し結合部材に対し解放可能に結合されているシャフトを有する送達装置をも含んでいる。該送達装置は、少なくとも1つの管腔を通って延在する第1の近位要素アクチュエータであって、第1の端部及び第2の端部を有し、第1の近位要素アクチュエータの第2の端部において第1の近位要素に結合され、かつ第1の位置と第2の位置の間で第1の近位要素を移動させるために作動可能である、第1の近位要素アクチュエータ、及び少なくとも1つの管腔を通って延在する第2の近位要素アクチュエータであって、第1の端部及び第2の端部を有し、第2の近位要素アクチュエータの第2の端部において第2の近位要素に結合されかつ、第1の位置と第2の位置の間で第2の近位要素を移動させるために作動可能である、第2の近位要素アクチュエータを含む。
【0021】
第1の近位要素アクチュエータ及び第2の近位要素アクチュエータは各々、第1のウィンドウを有する外側シースと、外側シースに対して軸方向に可動である内側マンドレルと、外側シースから延在しループを画定する縫合糸と、を含むことができる。縫合糸は、この縫合糸が外側シースのウィンドウ内に延在しループを通って内側マンドレルを収容する捕捉位置と解放位置との間で作動可能であり得る。
【0022】
第1の近位要素アクチュエータ及び第2の近位要素アクチュエータは各々、遠位挟持体を有する内側部材に対して軸方向に可動である外側シースを含み、外側シースは、内側部材に対して遠位に移動させることによって挟持体を閉じ、内側部材に対して近位に移動させることによって挟持体を開くように構成されている。第1の近位要素アクチュエータ及び第2の近位要素アクチュエータは各々、第1の近位要素アクチュエータの第2の端部の近位において弱化した領域を含み得る。
【0023】
開示対象主題によると、植込み型固定装置及び送達装置を含む、患者の組織を係合させるための固定システムが提供されている。植込み型固定装置は、第1のアーム及び第2のアーム、第1の位置と第2の位置の間で第1のアームに対して可動である第1の近位要素、第1の位置と第2の位置の間で第2のアームに対して可動である第2の近位要素、及び結合部材を含むことができる。送達装置は、近位端部と遠位端部を有するカテーテルであって、遠位端部と近位端部の間に延在する少なくとも1つの管腔を画定するカテーテルと、少なくとも1つの管腔を通って延在し結合部材に解放可能に結合されているシャフトと、を含むことができる。送達装置は、同様に、少なくとも1つの管腔を通って遠位に延在しかつ少なくとも1つの管腔を通って近位に戻るように延在して、カテーテルの遠位端部から延在するループを画定する第1の近位要素アクチュエータであって、そのループが第1の近位要素に結合され得、かつ第1の位置と第2の位置の間で第1の近位要素を移動させるために作動可能であり得る第1の近位要素アクチュエータと、少なくとも1つの管腔を通って遠位に延在しかつ少なくとも1つの管腔を通って近位に戻るように延在して、カテーテルの遠位端部から延在するループを画定する第2の近位要素アクチュエータであって、そのループが第2の近位要素に結合され得かつ第1の位置と第2の位置の間で第2の近位要素を移動させるために作動可能であり得る、第2の近位要素アクチュエータと、を含むこともできる。第1の近位要素アクチュエータにより画定されるループと第2の近位要素アクチュエータにより画定されるループは各々、シャフト及び結合部材のうちの少なくとも1つに結合され得る。
【0024】
開示対象主題の性質及び利点の他の側面は、図面を併用して考慮される以下に記載の詳細な説明の中で明記されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、心臓収縮期中の心臓の左心室及び左心房を例示する。
図2A図2Aは、正常接合における弁尖の自由縁部を例示する。
図2B図2Bは、逆流接合における弁尖の自由縁部を例示する。
図3A図3Aは、固定装置を用いた弁尖の把持、固定装置の遠位要素の反転、及び固定装置の取外しをそれぞれ例示している。
図3B図3Bは、固定装置を用いた弁尖の把持、固定装置の遠位要素の反転、及び固定装置の取外しをそれぞれ例示している。
図3C図3Cは、固定装置を用いた弁尖の把持、固定装置の遠位要素の反転、及び固定装置の取外しをそれぞれ例示している。
図4図4は、弁尖との関係における、所望の配向にある固定装置の位置を例示する。
図5A図5Aは、本出願の結合構造の例示的実施形態を示す。
図5B図5Bは、本出願の結合構造の例示的実施形態を示す。
図6A図6Aは、本出願の結合構造の例示的実施形態を示す。
図6B図6Bは、本出願の結合構造の例示的実施形態を示す。
図7A図7Aは、本発明の固定装置の一実施形態の固定要素の動作を例示する。
図7B図7Bは、本発明の固定装置の一実施形態の固定要素の動作を例示する。
図8A図8Aは、本発明の固定装置の一実施形態の固定要素の動作を例示する。
図8B図8Bは、本発明の固定装置の一実施形態の固定要素の動作を例示する。
図9図9は、固定装置の別の実施形態を例示する。
図10A図10Aは、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図10B図10Bは、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図11A図11Aは、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図11B図11Bは、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図12A図12Aは、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図12B図12Bは、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図13A図13Aは、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図13B図13Bは、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図14図14は、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図15図15は、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図16図16は、治療手技を行なうための身体内部での装置の導入及び設置の間の、考えられるさまざまな位置における図7の固定装置を例示する。
図17A図17Aは、さまざまな位置における固定装置を例示する。
図17B図17Bは、さまざまな位置における固定装置を例示する。
図17C図17Cは、さまざまな位置における固定装置を例示する。
図18図18は、近位要素及び係止構造を含む固定装置の一実施形態を例示する。
図19図19は、近位要素及び係止構造を含む固定装置の一実施形態を例示する。
図20図20は、それぞれ係止解除位置及び係止位置における係止構造の横断面図を提供している。
図21図21は、それぞれ係止解除位置及び係止位置における係止構造の横断面図を提供している。
図22A図22Aは、被覆を有し個別の作動が可能な固定装置の別の実施形態を例示する。
図22B図22Bは、被覆を有し個別の作動が可能な固定装置の別の実施形態を例示する。
図23図23は、被覆を有し個別の作動が可能な固定装置の別の実施形態を例示する。
図24図24は、被覆を有し個別の作動が可能な固定装置の別の実施形態を例示する。
図25図25は、被覆を有し個別の作動が可能な固定装置の別の実施形態を例示する。
図26図26は、被覆を有し個別の作動が可能な固定装置の別の実施形態を例示する。
図27図27は、被覆を有し個別の作動が可能な固定装置の別の実施形態を例示する。
図28図28は、グリッパプッシャを含む固定装置の別の実施形態を例示する。
図29図29は、近位要素が個別に作動する固定装置の一実施形態を例示する。
図30図30は、近位要素が個別に作動する固定装置の別の実施形態を例示する。
図31図31は、近位要素が個別に作動する固定装置の別の実施形態を例示する。
図32図32は、近位要素が個別に作動する固定装置の別の実施形態を例示する。
図33図33は、近位要素が個別に作動する固定装置の別の実施形態を例示する。
図34図34は、単一のアクチュエータにより近位要素が個別に作動する固定装置の別の実施形態を例示する。
図35図35は、単一のアクチュエータにより近位要素が個別に作動する固定装置の別の実施形態を例示する。
図36図36は、グリッパプッシャを伴う図9の固定装置を例示する。
図37図37は、グリッパプッシャを伴う図9の固定装置を例示する。
図38図38は、グリッパプッシャを伴う図9の固定装置を例示する。
図39図39は、グリッパプッシャを伴う図9の固定装置を例示する。
図40図40は、グリッパプッシャを伴う図9の固定装置を例示する。
図41図41は、グリッパプッシャ及び個別の作動を行う固定装置の別の実施形態を例示する。
図42図42は、グリッパプッシャ及び個別の作動を行う固定装置の別の実施形態を例示する。
図43図43は、グリッパプッシャ及び個別の作動を行う固定装置の別の実施形態を例示する。
図44図44は、グリッパプッシャ及び個別の作動を行う固定装置の別の実施形態を例示する。
図45図45は、グリッパプッシャ及び個別の作動を行う固定装置の別の実施形態を例示する。
図46図46は、グリッパプッシャ及び個別の作動を行う固定装置の別の実施形態を例示する。
図47図47は、グリッパプッシャ及び個別の作動を行う固定装置の別の実施形態を例示する。
図48図48は、グリッパプッシャ及び単一のアクチュエータでの個別の作動を行う固定装置の別の実施形態を例示する。
図49A図49Aは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図49B図49Bは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図49C図49C位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図50A図50Aは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図50B図50Bは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図50C図50Cは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図50D図50Dは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図50E図50Eは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図51A図51Aは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図51B図51Bは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図52A図52Aは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図52B図52Bは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図52C図52Cは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図52D図52Dは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図52E図52Eは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図52F図52Fは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図52G図52Gは、固定装置の近位要素に近位要素ラインを結合するさまざまな実施形態を例示している。
図53図53は、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図54A図54Aは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図54B図54Bは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図54C図54Cは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図54D図54Dは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図55A図55Aは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図55B図55Bは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図55C図55Cは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図56A図56Aは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図56B図56Bは、固定装置の別の実施形態に係るアクチュエータロッド及び関連構成要素を例示する。
図57図57は、固定装置にグリッパプッシャを解放可能に結合するための実施形態を例示する。
図58図58は、固定装置にグリッパプッシャを解放可能に結合するための実施形態を例示する。
図59A図59Aは、近位要素アクチュエータの構成を例示する。
図59B図59Bは、近位要素アクチュエータの構成を例示する。
図60A図60Aは、近位要素アクチュエータの別の構成を例示する。
図60B図60Bは、近位要素アクチュエータの別の構成を例示する。
図61図61は、機能性僧帽弁逆流症を有する心臓を概略的に例示する。
図62A図62Aは、開示されている主題の植込み型固定装置を用いた、機能性僧帽弁逆流症を有する心臓における逐次的弁尖捕捉を概略的に例示する。
図62B図62Bは、開示されている主題の植込み型固定装置を用いた、機能性僧帽弁逆流症を有する心臓における逐次的弁尖捕捉を概略的に例示する。
図63A図63Aは、変性僧帽弁逆流症を有する心臓を概略的に例示する。
図63B図63Bは、変性僧帽弁逆流症を有する心臓を概略的に例示する。
図64A図64Aは、開示対象主題の植込み型固定装置を用いた、変性性僧帽弁逆流症を有する心臓における逐次的弁尖捕捉を概略的に例示する。
図64B図64Bは、開示対象主題の植込み型固定装置を用いた、変性性僧帽弁逆流症を有する心臓における逐次的弁尖捕捉を概略的に例示する。
図65A図65Aは、開示されている主題に係る、捕捉要素を収容するための孔を有する送達システムシャフトの遠位端部の拡大図を例示する。
図65B図65Bは、開示されている主題に係る、捕捉要素を収容するための孔を有する送達システムシャフトの遠位端部の拡大図を例示する。
図65C図65Cは、図65Bの送達システムシャフトの遠位端部の横断面図である。
図65D図65Dは、ラッパ形状の捕捉要素を有する近位要素アクチュエータの遠位端部を例示する。
図65E図65Eは、開示対象主題に係る、捕捉要素を収容するための孔を有する送達シャフトの遠位端部の拡大図を例示する。
図65F図65Fは、球体の捕捉要素を有する近位要素アクチュエータの遠位端部を例示する。
図65G図65Gは、開示対象主題に係る、捕捉要素を収容するための孔を有する送達シャフトの遠位端部の拡大図を例示する。
図65H図65Hは、開示対象主題に係る、フィレット縁部を有する送達シャフトの孔の縁部の拡大図を例示する。
図65I図65Iは、開示対象主題に係る、丸味ある縁部を伴う面取りを有する送達シャフトの孔の縁部の拡大図を例示する。
図65J図65Jは、開示対象主題に係る、角度低減特徴部を含む送達シャフトの拡大図を例示する。
図66A図66Aは、開示対象主題に係る、送達システムシャフト、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびにループを用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図66B図66Bは、開示対象主題に係る、送達システムシャフト、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびにループを用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図66C図66Cは、開示対象主題に係る、送達システムシャフト、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびにループを用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図66D図66Dは、開示対象主題に係る、送達システムシャフト、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびにループを用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図67図67は、開示されている主題に係る、送達システムシャフト、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびにマンドレルを用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図68図68は、開示対象主題に係る、送達システムシャフト、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびにカッタを用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図69A図69Aは、開示対象主題に係る、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびにカッタを用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図69B図69Bは、開示対象主題に係る、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびにカッタを用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図70図70は、開示対象主題に係る、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびに挟持体を用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
図71図71は、示されている主題に係る、近位要素アクチュエータ及び近位要素の遠位端部、ならびに開ネックダウン領域を用いたこれらの間の結合の拡大図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.心臓生理学
心収縮期における正常な心臓Hの左心室LVが、図1に例示されている。左心室LVは、収縮しており、血液は、矢印の方向で三尖(大動脈)弁AVを通って外向きに流れる。僧帽弁は、左心室内の圧力が左心房LA内の圧力よりも高い場合還流を防止する「逆止弁」として構成されていることから、僧帽弁MVを通した血液の還流つまり「逆流」は防止される。僧帽弁MVは、図1に例示されているように、均等に合わさって閉じる自由縁部FEを有する一対の弁尖を含む。弁尖LFの相対する端部は、弁輪ANと呼ばれる環状領域に沿って周囲の心臓構造に取り付けられる。弁尖LFの自由縁部FEは、各々の弁尖LFの下部表面全体にわたってしっかり固定された複数の分岐腱を含む腱索CT(以下腱索と呼ぶ)を通して左心室LVの下部部分にしっかり固定されている。腱索CTはそれ自体、左心室及び心室中隔IVSの下部部分から上向きに延在する乳頭筋PMに取り付けられている。
【0027】
心臓内の多くの構造的欠陥が、僧帽弁逆流症をひき起こし得る。逆流は、弁尖が適正に閉鎖せず心室から心房への漏出を可能にする場合に発生する。図2Aに示されているように、前尖及び後尖の自由縁部は通常、接合ラインCに沿って遭遇する。逆流をひき起こす欠陥の一例が図2Bに示されている。ここでは、心臓の拡大によって、僧帽弁輪が拡大した状態になり、心収縮期中に自由縁部FEが遭遇できなくなる。その結果、心室収縮期中に弁を通して血液が漏出できるようにする間隙Gがもたらされる。破断又は伸長した腱索は同様に、腱索を介して不適切な張力が弁尖に伝達されるために、弁尖の脱出もひき起こし得る。他の弁尖は正常な外形を維持している一方で、2つの弁尖が適切に遭遇せず、左心室から左心房への漏れが発生することになる。このような逆流は同様に、適正な閉鎖をもたらすのに充分な程度に左心室が収縮しない虚血性心疾患を患う患者においても発生する可能性がある。
【0028】
2.総合的概観
本発明の態様は、心臓弁逆流、特に僧帽弁逆流症を治療する目的で弁尖などの組織を把持し、これを近置し、定着させるための方法及び装置を提供する。本発明は同様に、特に腱索CTなどの解剖学的特徴によって取外しが妨げられる可能性のある部域内で、所望される場合に装置の再位置付け及び取外しを可能にする特徴も提供する。このような取外しにより、外科医は、所望される場合に新しい方法で弁に再度のアプローチが可能になると考えられる。
【0029】
把持は好ましくは非外傷性であり、多くのメリットを提供する。非外傷性とは、本発明の装置及び方法が、弁尖の構造又は機能にいかなる有意な臨床的障害もひき起こすことなく、弁尖に適用されその後取外され得ることを意味する。弁尖及び弁は、本発明の適用前と実質的に同じように機能し続ける。したがって、本発明を使用して弁尖の一定のわずかな侵入又はへこみが発生してもなお、「非外傷性」の定義を満たし得る。このため、本発明の装置は、弁の機能に負の影響を及ぼすことなく、罹患した弁に適用し、所望される場合には、取外し又は再位置付けすることができる。さらにいくつかの事例においては、把持、固定又はその両方の間に弁尖に孔を開けるか又は他の形で恒久的に影響を与えることが必要であるか又は望ましい場合があることが理解される。これらの事例のいくつかにおいては、把持及び固定を単一の装置によって達成し得る。これらの結果を達成するために多くの実施形態が提供されるものの、本明細書では、基本的特徴の総合的概観が提示される。このような特徴は、本発明の範囲を限定するように意図されておらず、本出願中で後述する個別の実施形態の説明のための基礎を提供する目的で提示されている。
【0030】
本発明の装置及び方法は、所望される治療部位の近くに位置付けされ標的組織を把持するために使用される介入ツールの使用を利用する。血管内利用分野において、介入ツールは典型的には介入カテーテルである。外科的利用分野では、介入ツールは典型的には介入器具である。好ましい実施形態においては、把持された組織の固定は、インプラントとして残される介入ツールの一部分で把持を維持することにより達成される。本発明は、身体全体にわたる組織近置及び固定のためのさまざまな利用分野を有するものの、弁、特に心臓弁、例えば僧帽弁の修復のために極めて適している。図3Aを参照すると、シャフト12などの送達装置及び固定装置14を有する介入ツール10が、心房側から僧帽弁MVに接近し弁尖LFを把持した状態で例示されている。上述のように、僧帽弁は、外科的に又は血管内技術を使用することによって、かつ、心室を通る逆行性アプローチによってか又は心房を通る順行性アプローチによってアクセス可能である。例示を目的として、順行性アプローチが説明される。
【0031】
固定装置14は、その遠位端部で介入ツール10のシャフト12に対し解放可能に取付けられる。本明細書中で本発明の装置を説明する場合、「近位」とは、患者の体外でユーザにより操作されるべき装置の端部に向かう方向を意味するものとし、「遠位」とは、ユーザから離れて、治療部位に位置付けされている装置の作業端部に向かう方向を意味するものとする。僧帽弁に関しては、近位は弁尖の心房側又は上流側を意味し、遠位は弁尖の心室側又は下流側を意味するものとする。
【0032】
固定装置14は概して、近位要素16(又は把持要素;ここで本明細書中、「近位要素」及び「把持要素」は互換的に使用される)及び遠位要素18(又は固定要素;ここで本明細書中、「遠位要素」及び「固定要素」は互換的に使用される)を含み、これらは、半径方向外向きに突出し、その間に弁尖を捕捉し保定する目的で図示されている通りに弁尖LFの相対する側に位置付け可能である。近位要素16は好ましくは、コバルトクロム、ニチノール又はステンレス鋼で構成され、遠位要素18は好ましくは、コバルトクロム又はステンレス鋼で構成されるが、好適な任意の材料を使用してよい。固定装置14は、結合構造17によってシャフト12に結合可能である。結合構造17は、固定装置14を離脱させ、インプラントとして残留させて、弁尖を接合位置に共に保持することを可能にする。
【0033】
いくつかの状況において、弁尖LFを捕捉するために近位要素16、遠位要素18又はその両方が展開された後、固定装置14を再位置付け又は取外すことが望まれる場合がある。このような再位置付け又は取外しは、幾つか例を挙げると、より良い弁機能を達成しようとして弁に再接近するため、弁尖上での装置14のさらに最適な位置付けのため、弁尖上のより良い足掛りのため、腱索などの周囲組織から装置14をほどくため、装置14を異なる設計を有する装置と交換するため、又は固定手技を中断するため、といったさまざまな理由から所望される可能性がある。固定装置14の再位置付け又は取外しを容易にするため、遠位要素18は、解放可能であり、腱索、弁尖又は他の組織に絡んだり、これらに干渉したり又は損傷を加えたりすることなく弁から装置14を引抜くのに好適な構成へと任意に反転可能である。図3Bは、遠位要素18が反転位置まで矢印40の方向に可動である反転を例示している。同様にして、近位要素16は、所望される場合には、上昇させることができる。反転位置において、装置14は、所望の配向へと再位置付けされ得、ここで遠位要素はこのとき、図3Aにあるように、弁尖に対抗して把持位置まで復帰し得る。代替的には、固定装置14は、図3Cに示されている通り、弁尖から引抜かれ得る(矢印42で示す)。このような反転は弁尖に対する外傷を低減し、周囲組織との装置の絡み合いをことごとく最小限に抑える。装置14が弁尖を通ってひとたび引抜かれたならば、身体からの取外し又は僧帽弁を通した再挿入に好適な閉鎖位置又は構成まで、近位要素及び遠位要素を移動させることができる。
【0034】
図4は、弁尖LFとの関係における所望の配向での固定装置14の位置を例示する。これは、心房側からの僧帽弁MVの短軸図であり、したがって、近位要素16は実線で示され、遠位要素18は破線で示されている。近位要素及び遠位要素16、18は、接合ラインCに実質的に直交するように位置付けされている。装置14は、おおよそ接合ラインに沿って逆流場所まで移動させられ得る。弁尖LFは、図4に示されているように、心臓拡張期中、弁尖LFが拡張期勾配の結果としてもたらされる開口部Oにより取囲まれて要素16、18間で所定の位置にとどまるように、所定の場所で保持される。有利にも、弁尖LFは、その近位又は上流側表面が僧帽弁MVを通る血流の方向に平行に垂直配向で互いに対面しているような形で接合される。上流側表面は、互いに接触するように合わされてもよいし、あるいは、わずかに離して保持されてもよいが、好ましくは、上流側表面が接合点において互いに対面する垂直配向に維持される。これは、標準的な外科的ボウタイ修復のダブルオリフィス幾何形状をシミュレートするものである。カラードプラーエコーにより、弁の逆流が低減されたか否が示される。結果としての僧帽弁フローパターンが満足のいくものである場合、弁尖はこの配向で共に固定され得る。結果としてのカラードプラー画像により、僧帽弁逆流症の改善が不充分であることが示された場合、介入ツール10が再位置付けされる。これは、弁尖LFが所定の場所に保持されている最適な結果が生成されるまで反復され得る。
【0035】
弁尖がひとたび所望の配設で接合されたならば、そのとき固定装置14をシャフト12から離脱させて、弁尖を接合位置で共に保持するためインプラントとして残留させる。先に言及した通り、固定装置14は、結合構造17によってシャフト12に結合される。図5A~5B、6A~6Bは、このような結合構造の例示的実施形態を示している。図5Aは、連接ライン又は噛合表面24において組み合わせられる上部シャフト20及び離脱可能な下部シャフト22を示す。噛合表面24は、組み合わせ及び後の離脱を可能にする又は容易にする任意の形状又は湾曲を有していてよい。ぴったりフィットする外側シース26がシャフト20、22上に位置付けされて、図示されているように噛合表面24を被覆する。図5Bは、上部シャフト20からの下部シャフト22の離脱を例示している。これは、噛合表面24が露出されてシャフト20、22が分離し得るように、外側シース26を引っ込めることによって達成される。
【0036】
同様にして、図6Aは、噛合表面32においてインターロックされている管状上部シャフト28及び離脱可能な管状下部シャフト30を例示する。ここでもまた、噛合表面32は、インターロック及び後の離脱を可能にする又は容易にする任意の形状又は湾曲を有していてよい。管状上部シャフト28及び管状下部シャフト30は、軸方向チャネルを有する外側部材を形成する。管状シャフト28、30を通して、ぴったりフィットするロッド34又は内側部材が挿入されて、図示されているように噛合表面32を架橋する。図6Bは、上部シャフト28からの下部シャフト30の離脱を例示している。これは、噛合表面32の上方の位置までロッド34を引っ込めることによって達成され、こうして今度はシャフト28、30が離隔可能になる。結合構造の他の例は、全ての目的のために参照により本明細書に組込まれている同時係属の米国特許出願第09/894,493号)中に記載され例示されている。
【0037】
同様にして、図6Aは、噛合表面32においてインターロックされている管状上部シャフト28及び離脱可能な管状下部シャフト30を例示する。ここでもまた、噛合表面32は、インターロック及び後の離脱を可能にする又は容易にする任意の形状又は湾曲を有していてよい。管状上部シャフト28及び管状下部シャフト30は、軸方向チャネルを有する外側部材を形成する。管状シャフト28、30を通して、ぴったりフィットするロッド34又は内側部材が挿入されて、図示されているように噛合表面32を架橋する。図6Bは、上部シャフト28からの下部シャフト30の離脱を例示している。これは、噛合表面32の上方の位置までロッド34を引っ込めることによって達成され、こうして今度はシャフト28、30が離隔可能となる。結合構造の他の例は、全ての目的のために参照により本明細書に組込まれている同時係属の米国特許出願第09/894,493号の中に記載され例示されている。
【0038】
3.固定装置
A.導入及び設置
固定装置14は、送達装置を使用して、弁又は所望される組織に対して送達される。送達装置は、利用分野に応じて剛性か又は可撓性であり得る。血管内での利用分野については、送達装置は、後のセクションで説明する可撓性送達カテーテルを含む。しかしながら典型的には、このようなカテーテルは、近位端部と遠位端部を有するシャフト、及びその遠位端部に対して解放可能に取付けられた固定装置を含む。シャフトは通常細長く可撓性で、血管内導入に好適である。代替的には、送達装置は、心臓壁を貫通する経胸腔外科用の導入用に使用され得る、より短く且つより可撓性の低い介入器具を含み得るが、概して、幾分かの可撓性及び最小限の外形が望ましい。固定装置は、図3Aに例示されている送達装置と解放可能に結合可能である。固定装置は、さまざまな形態を有することができ、そのいくつかの実施形態が本明細書中で説明される。
【0039】
図7A~8Bは、さまざまな位置又は構成における固定装置14の一実施形態を例示する。図7Aは、患者の脈管構造を通した、そしてこの例では僧帽弁を通した送達のための閉鎖構成にある固定装置14を例示している。固定装置14は、移植のための固定装置14の離脱を可能にする結合部材19を含む。この例において、結合部材19は、図5A~5Bの下部シャフト22及び噛合表面24を含むものとして示されており、したがって結合部材19は、以上の説明と同様の形で機能すると考えられる。固定装置14は同様に一対の相対する遠位要素18を含み、各遠位要素18は、閉鎖構成において相対する遠位要素18に向かって内向きに面する係合表面50を有する。遠位要素18は好ましくは、細長いアーム53を含み、各アームは、結合部材19に対して回転可能な形で連結された近位端部52及び自由端部54を有する。結合部材19に対するアーム53の好適な連結には、ピン、生体蝶番又は他の回転連結メカニズムが含まれる。図7Aの閉鎖構成においては、自由端部54が第1の方向を向いており、こうしてアーム53及び係合表面50は互いにそして軸21に対してほぼ平行になり、好ましくは互いに向かってわずかに内向きに角度が付いている。好ましい実施形態においては、アーム53間に組織が存在しない場合、アーム53は、自由端部54が互いに触れ合うか又は固定装置14が取付けられている場合にはシャフト12と係合するまで閉鎖され得、こうして、送達装置の中を通過するための固定装置14の外形は最小限に抑えられる。
【0040】
図7B~8Aは、係合表面50が一定の離隔角度56だけ離れて配置されている開放位置にある固定装置14を例示しており、ここでこの離隔角度56は、典型的には最高約180°、好ましくは最高90~180°であり、アーム53は概して軸21に対して対称に配置されている。アーム53は、さまざまな起動装置によって開放位置まで可動であり得る。例えば、矢印62によって標示されているように、結合部材19を通じてランジャ又はアクチュエータを前進させて、遠位要素18に取付けられたばね又はばね式起動装置58と係合させることができる。起動装置58に対抗する力を加えることによって、遠位要素18は結合部材19との関係において回転させられる。遠位要素18は、遠位要素18の離隔が180°未満である場合に図7Aの閉鎖位置に向かって遠位要素18を付勢する起動装置58のばねによって提供される抵抗に対抗して、アクチュエータロッドによってこの開放位置に保持され得る。起動装置58のばね荷重は、起動装置58の外向きの動作に抵抗し、装置14を閉鎖位置に向かって付勢する。
【0041】
この実施形態において、近位要素16は、図8Aに示された開放位置まで付勢されるもののアーム53が閉じられた時点で内向きに回転的に可動であるように、外向きに付勢され結合部材19に取付けられた弾力性あるループ状のワイヤ形態を含む。ワイヤ形態は、結合部材19に対して剛性的に取り付けられかつ内向きに弾性的に変形可能であるように充分な可撓性を有していてよく、又はピン又は生体蝶番などの回転継手によって取付けられてもよい。使用中、弁尖LFは、近位要素16と遠位要素18の間に位置付けされる。弁尖LFがひとたび近位要素と遠位要素16、18の間に位置付けされると、遠位要素18は閉鎖されて、弁尖を係合表面50と近位要素18の間で圧縮することができる。弁尖の厚み、弁尖の配設、弁尖上の固定装置の位置及び他の要因に応じて、アーム53は、図7Bの開放位置内に維持されるか、図7Aの完全閉鎖位置まで移動させられるか、又はその間のさまざまな位置のいずれかに設置されて弁尖LFを接合させそれらを所望される度合の力で所望される位置に保持することができる。いずれの場合でも、固定装置14は、送達カテーテルからの離脱後インプラントとして所定の場所にとどまることになる。
【0042】
いくつかの状況において、先に言及した通り、初期設置後に固定装置14を再度開放することが望ましい場合がある。装置14を再度開放するためには、アクチュエータロッドを再度前進させるか又は結合部材19内に再度挿入し再度前進させて、先に図7Bで矢印62により標示された通り起動装置58を圧迫してもよい。ここでもまた、このような前進は、上述のように起動装置58に対抗して力を加え、こうしてアーム53を外向きに移動させて弁尖に対する力を解放し、係合表面50を近位要素16から離れるように移動させる。弁尖はこのとき、固定装置14に対して自由に移動できる。このとき、固定装置14は、所望されるように再度位置付けされ得、アクチュエータロッドは引っ込められて、弁尖を接合させるべく遠位要素18を再び閉じることができる。
【0043】
いくつかの状況下では、弁を通した最初の挿入後に弁を通って戻るように又は完全に患者から固定装置14を引抜くことが望ましい場合がある。図7A~8Aに例示された閉鎖位置又は開放位置においてクリップを用いてこの試みがなされた場合、アーム53が、腱索、弁尖又は他の組織と干渉し絡み合った状態となる可能性があると思われる。これを回避するために、固定要素14は好ましくは、図8Bに例示されているように各アーム53が軸21に対して鈍角を成している状態で、自由端部54が閉鎖位置において向いていた第1の方向とは反対の第2の方向に自由端部54が向くように、アーム53を反転させるように適応されている。アーム53は、係合表面50が最高360°、好ましくは少なくとも最高270°の離隔角度56で配置されるように回転させられてよい。これは、上述のように結合部材19を通って延在するプッシュロッド又はプランジャを用いて、起動装置58に対抗する力を加えることによって達成され得る。この実施形態においては、遠位要素18がひとたび180°を超えて離れるように回転したならば、起動装置58のばね荷重が、遠位要素18を反転位置に向かって付勢する。起動装置58のばね荷重は、起動装置58の外向きの動作に抵抗し装置14を反転位置に向かって付勢する。
【0044】
アーム53が反転位置にある状態で、係合表面50は、固定装置が引抜かれるにつれて組織をそらせるための非外傷性表面を提供する。これにより、弁組織及び他の組織に対する損傷のリスクなく弁輪を通って装置を戻すように引込めることが可能になる。いくつかの事例においては、固定装置14がひとたび弁を通って引き戻されたならば、身体から(脈管構造を通してか又は外科的開口部を通して)装置を引抜くために装置を閉鎖位置に戻すことが望ましい。
【0045】
図7A~8Bに例示された実施形態は、生体適合性材料で構成された別個の構成要素から組立てられている。構成要素は、ステンレス鋼又は他の金属、Elgiloy(登録商標)、ニチロール、チタン、タンタル、金属合金又はポリマを非限定的に含めた同じ又は異なる材料から形成されてよい。さらに、これらの構成要素のいくつか又は全ては、移植後に周囲の組織によって吸収されるか又は血流中に溶解する生体吸収性材料でできていてもよい。僧帽弁修復の利用分野において、本発明の固定装置は、移植後数ヶ月以内で組織により完全に取囲まれており、その後装置は修復に対する負の影響なく溶解し得る又は吸収され得ることが分かった。
【0046】
図9は、固定装置14の別の実施形態を例示する。ここでは、固定装置14は、介入ツール10を形成するためにシャフト12に結合された状態で示されている。固定装置14は結合部材19及び一対の相対する遠位要素18を含む。遠位要素18は、細長いアーム53を含み、各アームは、結合部材19に対して回転連結された近位端部52及び自由端部54を有する。自由端部54は、周囲の組織構造との干渉及びこれらに対する外傷を最小限に抑えるため、丸味のある形状を有する。好ましくは、各自由端部54は、2本の軸を中心とした湾曲を画定し、この軸のうち一方は、アーム53の長手方向軸に直交する軸66である。したがって、係合表面50は、弁尖を把持し保持するのを支援するため、組織と接触する表面部域に対してカップ状の又は凹状の形状を有する。これによりさらに、アーム53を、閉鎖位置においてシャフト12の周りに入れ子にして、装置の外形を最小限に抑えることが可能になる。好ましくは、アーム53は、その長手方向軸66の周りで内向きに少なくとも部分的にカップ状になっているか又は湾曲している。同様に、好ましくは、各々の自由端部54は、軸66又はアーム53の長手方向軸に直交する軸67を中心とした湾曲を画定する。この湾曲は、自由端部54の最遠位部分に沿った背向湾曲である。同様に、自由端部54の長手方向縁部は、外向きに広がっていてよい。背向湾曲及び広がりの両方が、それと係合した組織に対する外傷を最小限に抑える。
【0047】
僧帽弁の修復に好適な実施形態において、係合表面50を横断する横方向幅(係合された組織の幅を決定する幅)は、少なくとも約2mm、通常は3~10mm、そして好ましくは約4~6mmである。いくつかの状況においては、より幅広い係合が望まれ、この場合、係合表面50は例えば2cmとさらに大きく、あるいは互いに隣接して多数の固定装置が使用される。アーム53及び係合表面50は、アーム53の長手方向軸に沿って約4~10mm、好ましくは約6~8mmの組織長さを係合させるように構成されている。アーム53はさらに、グリップを増強し移植後の組織内殖を促進するために複数の開口部を含む。
【0048】
弁尖は、遠位要素18と近位要素16の間に把持される。いくつかの実施形態において、近位要素16は可撓性、弾力性を有し、結合部材19から片持ちになっている。近位要素は好ましくは、遠位要素に向かって弾力的に付勢される。各近位要素16は、組織が全く存在しない場合、遠位要素18の凹面内部で少なくとも部分的に陥凹するように整形され位置付けされる。固定装置14が開放位置にある場合、近位要素16は、図9に例示されているように、各近位要素16がアーム53の近位端部52近くで係合表面50から離隔されかつ、近位要素の自由端部が係合表面50と接触している状態で自由端部54の近くで係合表面50に向って勾配を有するように整形される。近位要素16のこの形状は、可変的な厚みの弁尖又は他の組織に適合する。
【0049】
近位要素16は、組織上のグリップを増大させるため、複数の開口部63及び波打ち状の側縁部61を含む。近位要素16は任意には、弁尖の把持及び/又は保持を支援するため、摩擦付属物、摩擦特徴部又はグリップ増強用要素を含む。好ましい実施形態において、摩擦付属物は、係合表面50に向かって延在する先細の鋭い先端部を有するかえし60を含む。プロング、巻線、バンド、かえし、溝、チャネル、ボス、表面粗化、焼結、高摩擦パッド、被覆、コーティング、又はこれらの組合せなど、任意の好適な摩擦の付属物を使用できるということが理解されよう。任意には、近位要素及び/又は遠位要素の中には磁石が存在してもよい。磁力による引き付けを起こすため、噛合表面は反対の磁極の材料で作られるか又はこれを含むことになる、ということが理解されよう。例えば、近位要素及び遠位要素は各々、組織のより急速な治癒及び内殖を容易にするべく近位要素と遠位要素の間に組織が恒常な圧縮下で保持されるように、反対の磁極の磁気材料を含むことができる。同様に、遠位要素に向かって近位要素を付勢すること加えて又はその代りに、磁力を用いて遠位要素18に向かって近位要素16を引き付けることもできる。これは、近位要素16の展開を支援することができる。別の例においては、遠位要素18は各々、遠位要素18の間に位置付けされた組織が磁力によってその間に保持されるように、反対の磁極の磁気材料を含む。
【0050】
近位要素16は、以下で説明するように、移植後のグリップ及び組織内殖を増強させるため、織物又は可撓性材料で被覆され得る。好ましくは、織物又は被覆がかえし又は他の摩擦特徴部と組み合わせて使用される場合、このような特徴部は、このような織物又は他の被覆から突出して、近位要素16が係合する別の組織と接触する。
【0051】
例示的実施形態において、近位要素16は、開口部63、波打ち状縁部61及びかえし60を創出するスタンピング作業を用いて、ばね様材料の金属シートから形成される。代替的には、近位要素16は、ばね様材料で構成され得、あるいは生体適合性ポリマから成形され得る。本発明において使用され得るいくつかのタイプの摩擦付属物は、それが係合させる組織を恒久的に改変するか又はこの組織に幾分かの外傷をひき起こす可能性があるものの、好ましい実施形態においては、摩擦付属物は非外傷性であり、臨床的に有意な形で組織に損傷を加えたり又は他の影響を及ぼしたりするものではない、ということを指摘しておかなければならない。例えば、かえし60の場合、固定装置14による僧帽弁尖の係合の後、装置が後続する手技の間に取出される場合に、かえし60は、弁尖組織の有意な恒常的瘢痕化又は他の機能障害を全く残さず、したがって非外傷性とみなされるということが実証されている。
【0052】
固定装置14は同様に、起動装置58も含んでいる。この実施形態において、起動装置58は2つのリンク部材又は脚部68を含み、各脚部68は、リベット継手76において遠位要素18の1つと回転可能な形で連接される第1の端部70及びスタッド74で回転可能な形で連接される第2の端部72を有している。脚部68は、好ましくは剛性又は半剛性金属又はポリマ、例えばElgiloy(登録商標)、コバルトクロム又はステンレス鋼で構成されているが、好適な任意の材料が使用されてよい。例示された実施形態においては、両方の脚部68が、単一のリベット78によってスタッド74にピン連接されているものの、各々の脚部68を別個のリベット又はピンによってスタッド74に個別に取付けてよい、ということが認識され得る。スタッド74は、アクチュエータロッド64(図示せず)と連接可能であり、このアクチュエータロッドはシャフト12を通って延在し、スタッド74、ひいては閉鎖、開放及び反転位置の間で遠位要素18を回転させる脚部68を移動させるべく軸方向に拡張可能かつ引込め可能である。同様に、スタッド74を不動化させることにより、脚部68は所定の場所に保持され、したがって、遠位要素18は所望の位置に保持される。スタッド74は、同様に、以下のセクションでさらに説明される係止用特徴部によって所定の場所に係止されてもよい。
【0053】
本明細書中で開示されている固定装置14の実施形態のいずれにおいても、弁尖の開閉と共に遠位要素18及び/又は近位要素16が移動又は屈曲できるようにするため閉鎖位置でこれらの要素内に幾分かの可動性又は可撓性を付与することが望ましい可能性がある。これにより、衝撃吸収性が与えられ、これにより、弁尖上への力が低減され、弁尖の引裂又はさらなる外傷の可能性は最小限に抑えられる。このような可動性又は可撓性は、遠位要素18を構築するために適切な厚みの可撓性及び弾力性ある金属又はポリマを使用することによって付与され得る。同様に、(以下で説明される)固定装置の係止構造は、係止された場合でも近位要素及び遠位要素の一定のわずかな動作を可能にするように可撓性材料で構築され得る。さらに、遠位要素18を閉鎖位置に(内向きに)付勢するものの弁尖が及ぼす力に応答してアームがわずかに開放できるようにするメカニズムによって、遠位要素18は、結合部材19又は起動装置58に連結可能である。例えば、単一の点でピン連接されるのではなくむしろ、これらの構成要素は、アームに対抗する力に応答してピンのわずかな並進運動を可能にしたスロットを通してピン連接され得る。ピン連接された構成要素をスロットの一端部に向かって付勢するためにばねが使用される。
【0054】
図10A~10B、11A~11B、12A~12B、13A~13B及び図14~16は、治療手技を行なうために身体内部に装置14を導入し設置する際の考えられるさまざまな位置における図9の固定装置14の実施形態を例示している。図10Aは、カテーテル86を通って送達される介入ツール10の一実施形態を例示する。介入ツール10はカテーテルの形をとることができ、同様にしてカテーテル86はガイドカテーテル又はシースの形をとることができる、ということが理解されよう。しかしながら、この例においては、介入ツール10及びカテーテル86なる用語が使用される。介入ツール10は、シャフト12に結合された固定装置14を含み、固定装置14は閉鎖位置で示されている。図10Bは、図10Aの固定装置の類似の実施形態をより大きな図で例示する。閉鎖位置において、遠位要素18の相対する対は、係合表面50が互いに面するように位置付けされている。各々の遠位要素18は、アーム53が共にシャフト12を取り囲み、任意にはシャフトの反対の側で互いに接触するような形でカップ状の又は凹状の形状を有する細長いアーム53を含む。こうして、カテーテル86を通して及び僧帽弁などのあらゆる解剖学的構造を通して容易に通過可能である固定装置14の低い外形が提供される。その上、図10Bはさらに起動装置58を含む。この実施形態において、起動装置58は、各々ベース69に対して可動な形で結合されている2本の脚部68を含む。ベース69は、シャフト12を通って延在し固定装置14を操作するために使用されるアクチュエータロッド64と連接されている。いくつかの実施形態において、アクチュエータロッド64は、起動装置58、詳細にはベース69に直接取付けられる。しかしながらアクチュエータロッド64は、代替的には、それ自体ベース69に取付けられているスタッド74に取付けられてよい。いくつかの実施形態において、スタッド74には、アクチュエータロッド64がねじタイプの作用によりスタッド74に取付けられるようにねじ山が付いている。しかしながら、ロッド64及びスタッド74は、固定装置14をシャフト12から離脱させることができるように解放可能である任意の構造によって接合され得る。
【0055】
図11A~11Bは、開放位置にある固定装置14を例示している。開放位置において、遠位要素18は、係合表面50が第1の方向に面するように回転させられる。アクチュエータロッド64の作用による結合部材19に対するスタッド74の遠位前進が、遠位要素18に力を加え、遠位要素はこの方向における運動が自由であることから継手76の周りを回転し始める。遠位要素18の半径方向外向きでのこのような回転及び運動は、継手80の周りの脚部68の回転をひき起こし、これにより脚部68は直接わずかに外向きとなる。スタッド74は、遠位要素18の所望の離隔に対応する任意の所望の距離まで前進させられてよい。開放位置において、係合表面50は、シャフト12に対して鋭角で配置され、好ましくは互いとの関係において90~180°の角度にある。一実施形態においては、開放位置で、アーム53の自由端部54は、両端部間で、約10~20mm、通常は約12~18mm、そして好ましくは約14~16mmのスパンを有する。
【0056】
近位要素16は典型的に、アーム53に向かって外向きに付勢されている。近位要素16は、シャフト12に向かって内向きに移動させられ、縫合糸、ワイヤ、ニチノールワイヤ、ロッド、ケーブル、ポリマライン又は他の好適な構造の形状にすることができる近位要素ライン90を用いて、シャフト12に接して保持されてよい。さまざまな形で近位要素ライン90を縫通させることによって、近位要素ライン90は、近位要素16と連結されてよい。図11Aに示されているように近位要素16がループ形状を有する場合、ライン90はループを通過し、折り返すことができる。図11Bに示されているように、近位要素16が細長い中実形状を有する場合、ライン90を、要素16内の開口部63の1つ以上に通してもよい。さらに、同じく図11Bに例示されているラインループ48が、近位要素16上に存在し、この中を近位要素ライン90が通り折り返してもよい。このようなラインループ48は、近位要素ライン90上の摩擦を低減するために、又は近位要素16が中実であるか又は近位要素ライン90が中を通って取付けられ得る他のループ又は開口部を備えていない場合に、有用であり得る。近位要素ライン90は、単一のライン90を折返し無く近位要素16に取付けることを可能にし、かつ所望される場合には近位要素16から直接的に単一のライン90を離脱させることを可能にする離脱可能な手段によって、近位要素16に対し取付け可能である。このような離脱可能な手段の例としては、幾つか例を挙げると、フック、スネア、クリップ又は破断可能な継手が含まれる。近位要素ライン90に対して充分な張力を加えることにより、離脱可能な手段を、例えば継手の破断によって近位要素16から離脱させることができる。離脱用の他の装置も使用可能である。同様にして、係止ライン92を類似の離脱可能な手段により、係止構造に着脱することができる。
【0057】
開放位置において、固定装置14は、近置又は治療すべき組織を係合させることができる。図9~11に例示された実施形態は、左心房からの順行性アプローチを用いた、僧帽弁の修復のために適応されている。介入ツール10は、左心房から左心室まで僧帽弁を通って前進させられる。遠位要素18は、接合ラインに直交するように配向され、その後、係合表面50が弁尖の心室表面と接触して弁尖を把持するように位置される。近位要素16は、弁尖が近位要素と遠位要素の間に存在するように弁尖の心房側にとどまる。この実施形態において、近位要素16は、遠位要素18に向けられたかえし60などの摩擦付属物を有する。しかしながら、近位要素16もかえし60もこの時点で弁尖と接触していない。
【0058】
介入ツール10は、弁尖が所望される場所で適正に接触又は把持されるように固定装置14を再度位置付けするために繰返し操作可能である。再位置付けは、固定装置を開放位置にした状態で達成される。いくつかの事例においては、装置14が開放位置にある状態で逆流をチェックすることもできる。逆流が充分に減少していない場合、装置を再度位置付けし、所望の結果が達成されるまで、逆流を再びチェックすることができる。
【0059】
固定装置14の再位置付け又は取外しを補助するために、固定装置14を反転させることが所望される場合もある。図12A~12Bは、反転位置にある固定装置14を例示する。結合部材19との関係においてスタッド74をさらに前進させることにより、遠位要素18は、各アーム53がシャフト12に対して鈍角を形成している状態で、係合表面50が外向きに面し自由端部54が遠位を向くようにさらに回転させられる。アーム53間の角度は好ましくは約270~360°の範囲内にある。スタッド74をさらに前進させると、継手76の周りで遠位要素18が回転させられる。半径方向外向きの遠位要素18のこの回転及び運動は、脚部68が概して互いに平行であるその初期位置に向かって戻されるように継手80を中心として脚部68を回転させることになる。スタッド74を、遠位要素18の所望される反転に対応した任意の所望の距離まで前進させることができる。好ましくは、完全に反転した位置で、自由端部54の両端間のスパンは、約20mm以下、通常は約16mm未満、そして好ましくは約12~14mmである。この例示において、近位要素16は、近位要素ライン90上に張力を加えることによって、シャフト12に接して位置付けされた状態にとどまる。こうして、再位置付けのための比較的大きな空間が要素16、18間に創出され得る。さらに、反転位置は、弁尖に対する外傷を最小限に抑えながら弁を通した固定装置14の引抜きを可能にする。係合表面50が、固定装置を近位に引込めるにつれて組織を変形させるための非外傷性表面を与える。さらに、かえし60には遠位方向に(近位要素16の自由端部から離れるように)わずかに角度が付いており、こうして固定装置が引抜かれている間にかえし60が組織を捕まえるか又は引き裂くリスクが低減されるという点も指摘しておかなければならない。
【0060】
固定装置14がひとたび弁尖に接して所望の場所に位置付けされたならば、弁尖は次に、近位要素16と遠位要素18の間に捕捉され得る。図13A~13Bは、このような位置における固定装置14を例示する。ここでは、近位要素16は、弁尖を間に保持するように係合表面50に向かって下降させられる。図13Bにおいて、近位要素16は、弁尖の非外傷性グリップを設けるために使用可能であるかえしを含むものとして示されている。代替的には、弁尖に孔を開けてそれらを所定の場所に保持するのをより積極的に支援するために、より大きく、より鋭利に尖ったかえし60又は他の貫入構造を使用することができる。この位置は、図11A~11Bの開放位置と類似しているが、近位要素16はここでは、その間において弁尖組織を圧縮するために近位要素ライン90上の張力を解放することによってアーム53に向かって下降させられる。逆流が充分に低減されていない場合には、任意の時点で近位要素16を上昇させ遠位要素18を調整するか反転させて固定装置14を再度位置付けすることができる。
【0061】
所望の配置において弁尖が近位要素と遠位要素16、18の間に捕捉された後、遠位要素18は、弁尖をこの位置に保持するために係止され得、あるいは、固定装置14を閉鎖位置に又は閉鎖位置に向かって戻すことができる。このような係止については、後のセクションにおいて説明される。図14は、弁尖(図示せず)が捕捉され接合された閉鎖位置にある固定装置14を例示する。これは、結合部材19に対して近位でスタッド74を引込めることによって達成され、こうして起動装置58の脚部68が遠位要素18に対して上向きの力を加え、今度は遠位要素18が回転させられて係合表面50が再び互いに面することになる。遠位要素18に向かって外向きに付勢される解放された近位要素16は、遠位要素18により同時に内向きに付勢される。このとき、固定装置14は、以下で説明するようにこの閉鎖位置に弁尖を保持するように係止され得る。
【0062】
図15に示されているように、固定装置14は次にシャフト12から解放され得る。言及された通り、固定装置14は、結合部材19によってシャフト12に対し解放可能に結合可能である。図15は、固定装置14の結合部材19が取付けられるシャフト12の一部分である結合構造を例示する。図示されている通り、近位要素ライン90は、シャフト12からの離脱の後、近位要素16に取付けられた状態にとどまって、固定装置14をカテーテル86と連結された状態に保つためのテザーとして機能することができる。任意には、近位要素ライン90が取出されている間、明確にこの目的のために、シャフト12と固定装置14の間に結合された別個のテザーを使用することが可能である。いずれの場合においても、弁尖又は組織の修復を、心エコー検査法などの非侵襲性の視覚化技術によって観察して、所望の成果を保証することができる。修復を所望しない場合、結合部材19をシャフト12と再連結するためにテザー又は近位要素ライン90を用いて固定装置14を回収することができる。
【0063】
図18に示されている例示的実施形態においては、近位要素ライン90は、シャフト12を通って延在し、近位要素16を通ってループにされ、シャフト12を通ってその近位端部に戻るように延在する、細長い可撓性の撚糸、ワイヤ、ケーブル、縫合糸又はラインである。離脱が所望される場合、各ラインの一方の端部は、シャフト12の近位端部で解放し、他方の端部を引っ張って、シャフト12を通って遠位でかつ近位要素16を通ってラインの自由端部を引き込み、こうして固定装置を解放することができる。例えば、図22Aにおいて以下でさらに説明するように、近位要素アクチュエータの遠位の第2の端部を定着から解放し、送達カテーテルのハンドルを引込めることによってなど、離脱のための代替的な方法及び技術を使用できるということが理解される。
【0064】
図16は、閉鎖位置にある解放された固定装置14を例示する。図示されているように、結合部材19は、介入ツール10のシャフト12から離隔された状態にとどまり、近位要素16は、組織(図示せず)が近位要素16と遠位要素18の間に存在し得るように展開されている。
【0065】
図17A~17Cは、装置14がさまざまな位置にある固定装置14上の被覆100を例示する。図17Aは、装置14が開放位置にある間の遠位要素18及び起動装置58を封入する被覆100を示す。こうして、係合表面50は、組織上の外傷を最小限に抑え組織の把持及び保定を支援するために追加の摩擦を提供する被覆100によって覆われている。図17Bは、反転位置にある図17Aの装置14を示す。被覆100は、ゆるくフィットしており、かつ/又は、可撓性又は弾性を有し、こうして装置14はさまざまな位置に自由に移動できるようになっており、被覆100は、装置14の輪郭に適合してあらゆる位置においてしっかりと取付けられた状態にとどまる。図17Cは、閉鎖位置にある装置14を示す。こうして、固定装置14が閉鎖位置でインプラントとして残される場合、装置14の露出した表面は実質的に被覆100により覆われている。被覆100は、固定装置14の特定の部分を覆う一方で、他の部分を露出したままにする。例えば、幾つか例を挙げると、被覆100は、遠位要素18上にフィットするものの、起動装置58にはフィットしないスリーブ、遠位要素18の遠位端部54上にフィットするキャップ、又は係合表面50を覆うパッド、を含み得る。被覆100は、かえしなどのあらゆる摩擦付属物を露出させておいてもよい、ということが認識され得る。同様に、被覆100は、近位要素16及び/又は固定装置14のいずれかの他の表面を覆うことができる。いずれの場合でも、被覆100は、多数回の導入サイクルそして心臓の内部に移植される場合には心臓周期の存続期間に耐えるための耐久性を有するものでなければならない。
【0066】
被覆100は、代替的には、固定装置14の表面に対し浸漬、噴霧、コーティング又は他の形で接着させられるポリマ又は他の好適な材料で構成され得る。任意には、ポリマコーティングは、組織の把持を支援するため及び/又は組織内殖を促進するための細孔又は輪郭を含み得る。
【0067】
被覆100のいずれも、幾つか例を挙げると、薬剤、抗生物質、抗血栓薬又は抗血小板薬、例えばヘパリン、COUMADIN(登録商標)(ワルファリンナトリウム)を任意に含むことができる。これらの作用物質は例えば、被覆100内に含浸されるか又は被覆上にコーティングされてよい。これらの作用物質は、次に、治療効果を得る目的で把持された組織を取囲む組織及び/又は血流まで送達され得る。
【0068】
B.固定装置係止構造
先に言及した通り、固定装置14は任意には、特定の位置、例えば開放位置、閉鎖位置又は反転位置又はそれらの間の任意の位置に装置14を係止するための係止構造を含む。係止構造には、装置の係止及び係止解除の両方を可能にする係止解除構造が含まれるということが理解され得る。図18~21は、係止構造106の実施形態を例示する。図18を参照すると、この実施形態において、係止構造106は、結合部材19と起動装置58のベース69の間に配置されている。ベース69は、係止構造106を通って延在するスタッド74に対して固定的に取付けられている。スタッド74は、結合部材19及び介入ツール10のシャフト12を通過するアクチュエータロッド64に対して解放可能に取付けられている。ベース69は同様に、それ自体遠位要素18に連結されている起動装置58の脚部68に連結されている。
【0069】
図18は同様に、この実施形態においては係止構造に跨り係止構造106の下に連接する近位要素16をも例示する。近位要素16は、近位要素ライン90によって支持された状態で示されている。近位要素16は、近位要素ライン90の操作により昇降させられる。さらに、係止構造106の解放ハーネス108と連結された状態で、係止ライン92が示されている。係止ライン92は、以下で説明されるように、係止構造106を係止及び係止解除するために使用される。近位要素ライン90及び係止ライン92は、幾つか例を挙げると、典型的にはワイヤ、ニチノールワイヤ、ケーブル、縫合糸又は撚糸などの任意の好適な材料で構成されていてよい。さらに、近位要素ライン90及び/又は係止ライン92は、コーティング、例えばパリレン(parylene)を含むことができる。パリレンは、密着性(conformal)で生体適合性のある蒸着されたピンホールの無い保護フィルムである。パリレンは不活性であり、水分、化学物質及び電荷から保護する。
【0070】
図19は、図18の係止構造106の前面図を提供する。しかしながら、ここで近位要素16は、両方の近位要素16を通っている単一の近位要素ライン90によって支持されている。この配設においては、両方の要素共、単一の近位要素ライン90の作用によって同時に昇降させられる。近位要素16が別個の近位要素ライン90によって個別に操作されるか又は単一の近位要素ライン90によって一緒に操作されるかのいずれであっても、近位要素ライン90は、直接近位要素内の開口部を通って及び/又は近位要素上の被覆100の一層又は一部分を通って、又は被覆100の上方又は下方の縫合糸ループを通って延在し得る。
【0071】
図20~21は、それぞれ係止解除位置及び係止位置における係止構造106を示す係止構造106の例示である。図20を参照すると、係止構造106は、転動要素などの1つ以上のくさび留め要素を含む。この実施形態において、転動要素は、スタッド74の反対の側に配置された一対のバーベル110を含み、各バーベルは一対の概して円筒形のキャップ及びそれらの間のシャフトを有する。バーベル110及びスタッド74は好ましくはコバルトクロム又はステンレス鋼で構成されているが、任意の好適な材料を使用することも可能である。バーベル110は、解放ハーネス108のフック形端部112によって操作される。係止ライン92(図18中に例示)によりハーネス108に対して上向きの力が加えられた時点で、フック形端部112は、図20に示されているように、ばね114に対抗してバーベル110を上昇させる。これによって、バーベル110は側壁又は傾斜表面116に沿って引き上げられ、こうしてバーベル110はスタッド74に対するくさび留めから解放される。この位置で、スタッド74は自由に移動できる。こうして、係止ライン92がハーネス108を上昇させた又は持ち上げたとき、係止構造106は、スタッド74が自由に起動装置58ひいては遠位要素18を任意の所望される位置まで移動させることのできる係止解除位置にある。係止ライン92によるハーネス108の解放は、係止構造106を、図21に例示された係止位置へと移行させる。フック形端部112によりバーベル110上の上向きの力を解放することにより、ばね114はバーベル110を下向きに力を加え、バーベル110を傾斜表面116とスタッド74の間にくさび留めする。こうしてスタッド74の動作が制限され、スタッドはそれ自体、起動装置58ひいては遠位要素18を所定の場所に係止する。さらに、スタッド74は、バーベル110を収容する1つ以上の溝82又は刻み目を含み得る。これにより、バーベル110を確定された位置に落ち着かせることでより迅速かつ確動的係止を提供し、バーベル110の動作をさらに阻止することで係止用特徴部の安定性を増大させ、かつバーベルが係止位置に達したことの明確な標示をユーザに対し提供することができる。さらに、溝82は、遠位要素18の相対的位置、特に遠位要素18間の距離を標示するために使用することができる。例えば、各々の溝82は、遠位要素18間の距離の0.5mm又は1.0mmの減少と一致するように位置付けされ得る。スタッド74が移動させられるにつれて、バーベル110は溝82と接触し、スタッド74が移動するものとして探知される溝82の数を計数することによって、ユーザは遠位要素18間の距離を決定することができ、弁尖の厚み、幾何形状、離隔距離、血流動態及び他の要因に基づいて所望される接合度を提供することができる。こうして、溝82はユーザに対し触覚フィードバックを提供することができる。
【0072】
係止構造106は、固定装置14が把持及び再位置付け中に介入ツール10に取付けられている時点では係止解除位置にとどまり、その後インプラントとして残された時点で係止位置を維持できるようにする。しかしながら、係止構造106は、望まれる場合には固定装置14の設置全体を通して反復的に係止及び係止解除され得る、ということが理解され得る。最終的設置がひとたび決定されたならば、係止ライン92及び近位要素ライン90は取外され、固定装置は残される。
【0073】
本発明の上述の実施形態は、遠位要素18の開閉のために、押し開き・引き閉じメカニズムを利用しているものの、引き開き・押し閉じメカニズムも同様に可能であるということを理解すべきである。例えば、遠位要素18は、その近位端部において結合部材19ではなくむしろスタッド74に結合されてよく、脚部68は、その近位端部においてスタッド74ではなくむしろ結合部材19に対して結合され得る。この例においては、スタッド74が結合部材19との関係において遠位に押された場合、遠位要素18は閉鎖すると考えられ、一方、結合部材19に向かって近位にスタッド74を引くと遠位要素18は開放すると考えられる。
【0074】
C.近位要素の個別の作動
別の実施形態において、図9を参照すると、近位要素16の作動は、1つ以上の近位要素ライン又はアクチュエータ90を使用することによって達成され得る。このような作動は、さまざまな方法で実現可能である。例えば、図22Aに示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、それぞれ近位要素16A及び16Bの半径方向外向きのかつ近位の側に配置されたラインループ48A及び48Bをくぐることができる。近位要素アクチュエータ90A及び90Bの遠位端部は、共に結合された状態で図22Aに示されているシャフト12と結合部材19を取り巻く閉ループ95A及び95Bを含み得る。以上で論述した通り、シャフト12及び結合部材19は解放可能に共に結合され得る。閉ループ95A及び95Bでシャフト12及び結合部材を取囲むために、閉ループ95A及び95Bは、シャフト12及び結合部材19を共に結合する前に、シャフト12及び/又は結合部材19の真上に設置される。閉ループ95A及び95Bがシャフト12及び結合部材19を取巻く場合、閉ループ95A及び95Bは、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの遠位端部をシャフト12及び結合部材19に対して所定の場所に保持し、近位要素アクチュエータ90A及び90Bを引込めることのできる度合を制限する。ラインループ48A及び48B内をくぐることによって、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、それぞれ近位要素16A及び16Bに機械的にリンクされる。こうして、図23に示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、方向96に近位に引込められた場合、それぞれ、近位要素16A及び16Bを遠位要素18A及び18Bから離れるように移動させる。同様にして、近位要素アクチュエータ90A及び90Bを遠位に押すことによって、近位要素16A及び16Bは遠位要素18A及び18Bに向かって遠位に移動させられる。
【0075】
別の実施形態においては、近位要素アクチュエータ90A及び90Bが近位要素16A及び16Bを近位に引っ張り、近位要素16A、及び16Bを遠位に押すことができるようにするために、各々の近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、薄いワイヤ部分90Dと厚いワイヤ部分90Eを伴って構成され得る。薄いワイヤ部分90Dは、ループ48A及び48Bから厚いワイヤ部分90Eまで延在する。この薄いワイヤ部分90Dは、近位要素アクチュエータ90A及び90Bが近位に引っ張られた場合に、ラインループ48A及び48Bを通ってこれらの近位要素アクチュエータを引込めることができるようにする。一方、より高い剛性の区分はループ48A及び48Bを通ってシャフト12に向かって延在するのに必要な方向転換を行なうように容易には折曲げることができないため、厚いワイヤ部分90Eは、近位要素アクチュエータ90A及び90Bのこれらの部分がループ48A及び48Bを通過するのを阻止する剛性を有する。したがって、厚いワイヤ部分90Eがループ48A及び48Bに達する点まで近位要素アクチュエータ90A及び90Bが押された場合、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、近位要素16A及び16Bをそれぞれ遠位要素18A及び18Bに向かって押すように機能する。
【0076】
図59A及び59Bは、丸く薄いワイヤ部分90Dの端部を圧延することによって厚いワイヤ部分90Eが形成される一実施形態を示す。詳細には、ワイヤの丸い部分の圧延は、丸い区分の厚みT1を厚みT2まで減らすために圧延の結果として形成される厚い部分T3を有する横断面を結果としてもたらす。これにより、寸法T2及びT3を有する実質的に短形の横断面が結果として得られる。とりわけ、T3はT1より大きく、T2はT1より小さい。近位要素アクチュエータ90A及び90Bの端部をこのように扁平化した結果、端部の曲げ特性は変化する。すなわち、圧縮荷重下で、曲げは、図59Bの平面内ではなく図59Aの平面に沿って発生する傾向をもつ。丸い部分(薄い)は、0.023~0.030cm(0.009~0.012インチ)の範囲内の直径を有することができ、一方厚い部分は、0.033~0.051cm(0.013~0.02インチ)の範囲内の幅を有し得る。同様に、図60A及び60B中に示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、アクチュエータの遠位端部に向かって厚くなる多数の厚い部分を伴って形成され得る。図60Bに示されているように、TA<TB<TC<TDである。
【0077】
図22Bに示されている別の実施形態においては、厚い/薄いワイヤの組合せの使用に対する代替案として、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、外側管90Gの内部に格納された薄いワイヤを含むことができる。この実施形態においては、より剛性の高い厚いワイヤ部分に依存する代りに、近位要素アクチュエータは、近位要素16A及び16Bを遠位に押すために外側管90Gを含む。外側管90Gは、例えば、編組ポリアミド管を含み得る。
【0078】
厚いワイヤ部分又は外側管を使用することにより、近位要素16A及び16Bを、より大きな力で遠位要素に向かって遠位に押し、或いは位置付けすることができる。対照的に、薄いワイヤの近位要素アクチュエータ90A及び90Bのみと組合わさった形で遠位に延在するべく近位要素16A及び16Bを付勢するように構成されている場合、近位要素16A及び16Bと遠位要素18A及び18Bの間の係合力は、遠位要素が遠位に、すなわち例えば図3Bに示されているように120~180°移動させられるにつれて低下する。しかしながら、厚いワイヤ部分又は外側管のいずれかを近位要素16A及び16B内に導入した場合、近位要素はより大きな力で遠位に押され得る。こうして、弁尖の接合中に弁尖を捕捉するためのより高い制御及びより良い位置付けが提供される。さらに、弁尖間に比較的大きな間隙が存在する場合、図3Bに示されているように180°の整列で延在する遠位要素を有することで、システムはこの間隙又は離隔距離全体にわたり弁尖をより容易に捕捉することが可能となる。その上、遠位要素18A及び18Bを係合させるためにこの範囲(120~180°以上)にわたり近位要素16A及び16Bを押す能力は、弁尖の把持のための応答ならびに改善された幾何形状を提供する。
【0079】
近位要素16A及び16Bを遠位要素18A及び18Bからさまざまな角度及び距離のところで移動させられるように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bを移動させることができる。そして、近位要素アクチュエータ90A及び90Bが押したり引いたりされる度合は、遠位要素18との関係において近位要素16A及び16Bが有する位置を保つように維持され得る。例えば、図24に示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは近位に引っ張られ図示された位置に維持されて、近位要素16A及び16Bを遠位要素18との関係における中間位置に維持する。この中間位置は、近位要素16A及び16Bが付勢されて向かう位置と、近位要素16A及び16Bが図23にあるように完全に引込められている位置との間にある。図27に示されているように、近位要素16A及び16Bがひとたび所望の位置に来たならば、シャフト12及び結合部材19を結合解除して、近位要素アクチュエータ90A及び/又は90Bの近位での引込めが近位要素ラインを近位要素16から結合解除するようにすることができる。こうして、シャフト12、近位要素アクチュエータ90A及び90Bそして他の部品を手術部位から取外すことができる一方で、固定装置14を所定の場所に残すことが可能である。図22~28に示されているように、固定装置14は典型的に、以下の図16A~16Cで論述したものと実質的に同じ被覆100を含む。
【0080】
近位要素16A及び16Bの独立した作動を提供することが望ましい場合がある。例えば、図25に示されているように、近位要素アクチュエータ90Aは近位に引込められ、遠位要素18Aから離れるように近位要素16Aを回転させ、一方、近位要素アクチュエータ90Bは、遠位に押され、近位要素16Bを遠位要素18Bに向かって回転させる。同様にして、図26に示されているように、近位要素アクチュエータ90Aは単独で残されて、近位要素16Aが、付勢されて向かう位置を維持できるようにし、一方、近位要素アクチュエータ90Bは近位に引込められて、近位要素16Bを遠位要素18Bから離れるように移動させる。近位要素16A及び16Bの独立した作動を提供することにより、弁尖を近位要素16A及び16B及び遠位要素18A及び18Bによって別個に把持することが可能になる。こうして、固定装置14は、弁尖をより容易にかつさらに最適な場所で接合することができる。例えば、2つの弁尖を同時に把持することとは対照的に、第1の弁尖を所望の位置で把持することができ、このとき、第2の弁尖をさらに最適な位置で把持できるように、固定装置14を再位置付けすることができる。
【0081】
限定ではなく例示を目的とした図61~64Bを参照して、さまざまな逆流性僧帽弁症の病因の究明が、個別の弁尖捕捉又は逐次的弁尖捕捉の利益を享受できる。例えば図61は、制限された短かい僧帽弁後尖(PML)を伴う機能的僧帽弁逆流症を有する心臓を示す。僧帽弁前尖(AML)及びPMLの両方を同時に捕捉することは、PMLの限定的な可動性、PMLの短かい長さ、弁尖間の広い間隙、及び腱索網及び付随する乳頭筋などの弁下構造が伝達する高いテザリング力のうちの1つ以上を理由として、困難であり得る。個別の弁尖捕捉は、(1)最初にAMLの同時捕捉への配慮なしにPMLを捕捉するため(図62A)、(2)PMLの捕捉を保定しながらAMLの捕捉のための位置にカテーテルを穏やかに再位置付けするため(図62B)、及び(3)AMLを捕捉するため、に使用可能である。この順序は、術者がどの弁尖をよりむずかしいものあるいは心臓周期中特に不動であるものと見取ったかに基づいて、順序の入れ替え又は修正可能である。
【0082】
例えば、図63A~Bは、PMLが過度に動揺しているもののAML腱索支持網が無傷である、変性僧帽弁逆流症を有する心臓の動揺性シナリオを示す。この場合、無傷の腱索を有するAMLは、その縁部角度に起因して心臓収縮圧力下でより中央で移動する(図63A)。したがって、AML捕捉は、弁尖縁部が内向きにかつ弁尖間に位置付けされた固定装置14(図示せず)内へより深く移動する心臓収縮期の間、より容易でかつより効果的であり得る。しかしながら心臓収縮の間、動揺性PMLは、腱索からテザー解除され、左心房内で制御不能な形で動揺し得る。したがって、PMLの弁尖捕捉は、心臓周期の心臓収縮期の間、より困難である。対照的に、心臓拡張期(図63B)においては、動揺性PMLは下向きに押され得る。この位置であれば、最大量の弁尖の捕捉をよりうまく促すことができる。したがって、このシナリオにおいては、AML捕捉を心臓収縮期中に行なうことができ(図64A)、AML捕捉を心臓拡張期中に行なうことができる(図64B)。
【0083】
代替的には、個別に作動可能な近位要素アクチュエータをなおも同時に移動させることができることから、所望される場合には弁尖をなおも同時に把持することができる。同様に、弁尖は、把持された後、最初の把持で接合が不良であった場合などには、解放され再び把持され得る。説明された実施形態は、本明細書中に記載のs係止又はl係止構成のいずれでも利用可能である。
【0084】
以上で説明した装置に類似する固定装置の実施形態は、例えば図28に示されているように、グリッパプッシャ81及び個別に作動可能な近位要素16A及び16Bの両方を含み得る。グリッパプッシャ81及び個別に作動可能な近位要素16A及び16Bの両方を有することにより、固定装置は、弁尖をより精確にかつより強く把持することなどの上述の利点を多く有することができる。
【0085】
別の実施形態においては、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、各々、図18に示されているシャフト302の突出部分318に出入りする連続ループを含み得る。しかしながら、図29~33に示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、係止ライン92を取り除くことができるように、解放ハーネス108と結合されてよい。
【0086】
図29は、近位要素アクチュエータ90Aが近位要素16Aの端部及び解放ハーネス108を通ってループにされている構成を例示している。他方の近位要素アクチュエータ90Bは、近位要素16Bのみを通ってループにされている。したがって、この実施形態における近位要素アクチュエータ90Aの操作は、近位要素16Aを近位か遠位のいずれかに作動させて、組織を係合又は係合解除する。組織の係合が完了し弁尖が適正に接合された後、近位要素アクチュエータ90Aをさらに作動させて係止構造106の解放ハーネス108を解放することができる。一方、固定装置14が再位置付けを必要とすることが決定された場合、近位要素アクチュエータ90Aに張力を加えることで、係止構造は係止解除される。このとき、近位要素アクチュエータ90Aをさらに作動すると、近位要素16Aが弁尖から係合解除されて、再位置付けを行なうことができるようになる。
【0087】
図30に例示されているように、別の実施形態において、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、作動のためにより良い梃子力を与えるため、シャフト12を横断するように構成されていてよい。ここでもまた、この構成において近位要素アクチュエータ90Aは、近位要素16Aの端部及び解放ハーネス108を通ってループにされている。他方の近位要素アクチュエータ90Bは、近位要素16Bのみを通ってループにされている。しかしながら、このような形でシャフトを横断すると、近位要素アクチュエータ90A及び90Bがシャフト302の突出部分318から出る点とそれらが対応する近位要素16A及び16Bに連結する点との間の角度的関係が変化する。したがって、近位要素16A及び16B上の合力は、図29の構成において示されている近位要素アクチュエータ90A及び90Bに対する所与の量の張力について増大する。この配設により、係止ライン92を取除くことも可能になる。図29に例示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの各々は、シャフト12に跨っていてよい。しかしながら、同様に、シャフト12の同じ側で交叉するようにラインを配索してよい。
【0088】
図31は、近位要素アクチュエータ90A及び90Bを配索する別の構成を示す。この構成においては、近位要素アクチュエータ90A及び近位要素アクチュエータ90Bは各々近位要素16A及び16Bの1つ及び解放ハーネス108と結合される。図30中に示された実施形態は、近位要素16Aが弁尖との係合位置へと移動させられた後で初めて固定装置14を係止するものの、図31の構成は、術者が近位要素16A及び16B間での弁尖の係合の順序を制御できるようにする。換言すると、術者が単に近位要素16Bの作動を選択しただけの場合には、近位要素アクチュエータ90Aを固定装置14の係止後に作動する必要はない。
【0089】
図32及び33は、近位要素アクチュエータ90A及び90Bのために考えられる別の構成を例示する。各々の近位要素アクチュエータは、突出部分318から退出しこれに戻るループを含む。しかしながら、この場合、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは各々、近位要素16A及び16Bのうちの対応する方の端部を2重に貫通して、その後、解放ハーネス108の周りでループにされている。図32では、近位要素アクチュエータ90Aは、近位要素16Aに隣接する突出部分318の側で突出部分318を退出し、近位要素アクチュエータ90Bは近位要素16Bに隣接する突出部分318の側で突出部分318を退出する。代替的構成では、近位要素アクチュエータ90Aは、近位要素16Aと反対の突出部分318の側で突出部分318を退出し、近位要素アクチュエータ90Bは、近位要素16Bとは反対の突出部分318の側で突出部分318を退出する。このような形でシャフトを横断すると、近位要素アクチュエータ90A及び90Bがシャフト302の突出部分318から出る点とそれらが対応する近位要素16A及び16Bに連結する点との間の角度的関係が変化する。したがって、近位要素16A及び16B上の合力は、近位要素アクチュエータ90A及び90Bに対する所与の量の張力について増大する。
【0090】
図29~33の実施形態の各々において、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの各々は、シャフト302の突出部分318から延在しそこに戻る単一の又は多数のフィラメントで形成され得る単一のラインで形成可能である。しかしながら、図32及び33の実施形態において、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、図24に示されているように、単に突出部分318から延在しその後結合シャフト12又は結合部材19で終結するだけでもよい。
【0091】
D.近位要素/単一アクチュエータの個別の作動
他の実施形態において、逐次的把持は、単一のアクチュエータを使用して達成可能である。図34は、近位端部と遠位端部を有する単一の近位要素アクチュエータ90がシャフト302の突出部分318から近位要素16Aの1つまで延在する構成を例示している。アクチュエータは、近位要素16Aの遠位端部において小穴を通ってループにされてよく、あるいは同じ場所で縫合糸によって保持されてもよい。このとき、同じ近位要素アクチュエータ90は、結合シャフト12を横断して他方の近位要素16Bまで延在し、そこで近位要素16Aと類似の形でこの近位要素16Bの遠位端部に結合される。この近位要素アクチュエータ90の遠位端部は、結合シャフト12又は結合部材19のいずれかまで延在し、そこにしっかり固定される。図34では、これはループを用いてしっかり固定される。しかしながら、近位要素アクチュエータは、以下で開示される実施形態のいずれにおいても一致して、固定装置14に対し解放可能に固定されてよい。
【0092】
この構成の幾何形状によって、各々の近位要素16A及び16Bは、個別に作動され得、近位要素アクチュエータ90は、結合部材19の離隔と並行して解放され得る。図35で例示されているように、近位要素アクチュエータ90の配索の仕方に起因して、合力F1及びF2は異なる角度にある。これらの合力及びその方向は、近位要素90上の張力及び近位要素アクチュエータ90が対応する近位要素16A又は16Bに接近するか又は近位要素から離れるように延在する方向(角度)に基づくものである。対応する近位要素を移動させる力は、対応する近位要素の長さに直交する力の成分である。この直交する成分は、FN1及びFN2で表わされている。合力と直交成分の間の角度(θ1、θ2)がさらに小さくなると、直交成分は大きくなる。図35中に例示されているように、角度θ1は角度θ2よりも小さいことから、直交成分FN1は直交成分FN2よりも大きくなる。したがって、近位要素アクチュエータ90内の所与の張力量について、近位要素16Aは近位要素16Bよりも大きな移動力を受け取ることになる。このことはすなわち、近位要素16Aが開放している間、近位要素16Bは閉鎖状態にとどまり、近位要素16Aが完全に開放した後に、近位要素16Bが開放するということを意味している。こうして、単一の近位要素アクチュエータ90を用いて、近位要素16A及び16Bを別々に作動することが可能になる。
【0093】
E.近位要素を係合するためのグリッパプッシャ
いくつかの状況においては、近位要素と遠位要素の間への弁尖の挿入が不充分であることに起因して、弁尖が固定装置から完全に又は部分的に離脱する可能性がある。したがって、心エコー検査法及び蛍光透視法などの標準的な画像技術を用いて、固定装置内への弁尖の挿入の評価が行なわれる。しかしながら、送達カテーテルとの関係における近位要素及び遠位要素の角度及び/又は位置に応じて、固定装置内への弁尖の挿入の深さを査定すること又は弁尖と固定装置の近位要素及び遠位要素とを区別することが困難である可能性がある。したがって、遠位要素が相互に変位しているより開放した構成に遠位要素を置いた状態で、視覚化が行なわれることが好ましい。しかしながら、固定装置の現在の多くの実施形態は単に近位要素を約85°の開先角度まで開放することしか可能にしないものであることから、近位要素と遠位要素の間に弁尖をしっかりと把持するためには、遠位要素は約45°と好ましくは60°との間の開先角度まで閉じられなければならない。この構成は術者が弁尖及び固定装置を視覚化しそれらを区別する一助となるものの、遠位要素を90°超の開先角度、さらに好ましくは120°以上までさらに広げることが好ましい。したがって、さらに広げるように近位要素を修正することが望ましいと考えられる。
【0094】
図36~40は、グリッパプッシャを含むことを主要な相違点として、図7A~14の装置と類似する固定装置の一実施形態を例示している。図36は、概して先に説明した固定装置14と同じ形態である固定装置14を例示している。先に説明した特徴に加えて、固定装置14は、グリッパプッシャ81も含んでいる。グリッパプッシャ81は、半径方向外向きに変形して弓なり領域83を結果としてもたらし、この領域83は、それが近位要素16の上部表面と係合するまで拡張する。弓なり領域83は、半径方向外向きに変形し続けるにつれて、さらに近位要素16を押し進め、こうして近位要素は変形させられ遠位要素18の係合表面に向かって外向きに回転させられることになる。こうして、近位要素16は、通常よりもさらに外向きに変形され得、したがって、その間の開先角度がより大きいさらに開放した位置に遠位要素が配置された時点で弁尖は近位要素と遠位要素の間に捕捉され得る。好ましい実施形態において、遠位要素間の開先角度は約90°超、好ましくは約110°超、そしてより好ましくは約120°超である。図36の実施形態において、グリッパプッシャ81は、金属、ポリマ又は他のワイヤ様の材料から形成された2つのアームを含む。例示的材料としては、コバルトクロム合金、ステンレス鋼、ニチノールなどが含まれる。グリッパプッシャを製造するために、同様にポリマを使用することができる。グリッパプッシャ81は、概してグリッパプッシャアームの長手方向軸に平行な軸方向に配向された圧縮力を加えた時点で外向きに弓なりになるように作動され得る。圧縮中、グリッパプッシャは外向きに弓なりになって、弓なり領域83を形成する。他の実施形態においては、グリッパプッシャは、外向きに弓なりになって弓なり領域83を形成するように弾力的に付勢されるばねであってよい。しかしながら、近位要素ライン(ここでは例示せず)が近位要素16を持ち上げるために緊張させられた場合、グリッパプッシャばねは、縮小した外形まで圧潰する。
【0095】
図37は、近位要素16(グリップ要素とも呼ばれる)が遠位要素18(固定要素とも呼ばれる)と係合状態になるようにグリッパプッシャ81が拡張された状態で、組織内殖のための被覆を有する固定装置14を例示している。弁尖(便宜上図示せず)は、それぞれの間に挟まれている。図38は、圧潰構成にあるグリッパプッシャ81を例示する。弓なり領域83は圧潰して、近位要素16をシャフト12に向かって引込めることができるようにし、弁尖(図示せず)を固定装置14から解放できるようにする。グリッパプッシャ83は、近位要素がグリッパプッシャ81と干渉せずに引込むことができるように、近位要素16からオフセットされる。
【0096】
図39は、好ましくは2つのばねアーム99を含むグリッパプッシャ83を強調表示している。各アーム99は、ワイヤから形成されているか、又はシート又は他の在庫材料から機械加工され、この実施形態においては、矩形の横断面を有するが、他の横断面も同様に企図されている。各アーム99の遠位部分91は、固定装置上のボス又は他の取付けメカニズムと係合できる1対のフィンガを形成するノッチ付き領域93を有する。ノッチは、固定装置14が送達カテーテルのシャフト12から離脱されたときにボスから解放され得る。さらに、各アームは、より大きい遠位弓なり領域83及びより小さい近位弓なり領域95を含む2つの弓なり領域つまりピークを含む。より大きい弓なり領域83はより大きな距離、外向きに広がって、近位要素16と係合し、これを遠位要素18と係合するように押す。遠位弓なり領域83が弛緩し近位要素16から離れるように圧潰した場合、又は近位要素を引込めることで圧潰した場合、より小さい近位弓なり領域95は半径方向外向きに拡張する。取付けリング又は結合用カラー97が突出部分318に隣接し(以下で詳述)、シャフト12全体にわたり摺動可能な形で配置され、シャフト12に対するグリッパアーム99の結合を可能にする。図40は、近位要素16と係合状態にある遠位弓なり領域83を例示し、同様に固定装置14上のボス94と各アーム99の遠位部分上のノッチ93の係合をも例示している。
【0097】
例えば図10A~11Bを参照して上述のように、近位要素16の作動は、1つ以上の近位要素ライン又はアクチュエータ90を使用することによって達成される。別の実施形態において、この作動は、以上に記載の近位要素アクチュエータ90及びグリッパプッシャ81の組合せによって実現可能である。例えば、図41に示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、それぞれ近位要素16A及び16Bの半径方向外向きのかつ近位の側に配置されたラインループ48A及び48Bをくぐることが可能になる。近位要素アクチュエータ90A及び90Bの遠位端部は、共に結合された状態で図41に示されているシャフト12と結合部材19を取り巻く閉ループ95A及び95Bを含み得る。以上で論述した通り、シャフト12及び結合部材19は解放可能に共に結合され得る。閉ループ95A及び95Bでシャフト12及び結合部材19を取囲むために、閉ループ95A及び95Bは、シャフト12及び結合部材19を共に結合する前に、シャフト12及び/又は結合部材19の真上に設置される。閉ループ95A及び95Bがシャフト12及び結合部材19を取巻く場合、閉ループ95A及び95Bは、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの遠位端部をシャフト12及び結合部材19との関係において所定の場所に保持し、近位要素アクチュエータ90A及び90Bを引込めることのできる度合を制限する。ラインループ48A及び48B内をくぐらせることによって、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、それぞれ近位要素16A及び16Bに機械的にリンクされる。こうして、図42に示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、方向96に近位に引込められた場合、それぞれ近位要素16A及び16Bを、遠位要素18A及び18Bから離れるように移動させる。
【0098】
しかしながら、近位要素16A及び16Bの独立した作動を可能にする近位要素アクチュエータ90A及び90Bを組み合わせた形で、グリッパプッシャ81は同様に固定装置内に含められてもよい。こうして、近位要素16A及び16Bは、通常よりもさらに外向きに変形され得、したがって、遠位要素間の開先角度がより大きいさらに開放した位置に、遠位要素が配置された時点で、弁尖は、近位要素と遠位要素の間に捕捉され得る。好ましい実施形態において、遠位要素間の開先角度は約90°超、好ましくは約110°超、そしてより好ましくは約120°超である。したがって、この実施形態において、固定装置は独立した動作、ならびに近位要素16A及び16Bが広い範囲で動作する能力を有する。
【0099】
近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、近位要素16A及び16Bを、遠位要素18A及び18Bからさまざまな角度及び距離のところへ移動させるように移動可能である。そして、近位要素アクチュエータ90A及び90Bが押したり引いたりされる度合は、遠位要素18に対して近位要素16A及び16Bが有する位置を保つように維持され得る。例えば、図43に示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは近位に引っ張られて図示された位置に維持され、近位要素16A及び16Bを遠位要素18との関係における中間位置に維持する。この中間位置は、近位要素16A及び16Bが付勢されて向かう位置と、近位要素16A及び16Bが図42にあるように完全に引込められている位置との間にある。図46に示されているように、近位要素16A及び16Bがひとたび所望の位置に来たならば、シャフト12及び結合部材19を結合解除して、近位要素アクチュエータ90A及び/又は90Bの近位での引込めが近位要素ラインを近位要素16から結合解除するようにすることができる。こうして、シャフト12、近位要素アクチュエータ90A及び90Bそして他の部品を手術部位から取外しすることができる一方で、固定装置14を所定の場所に残すことが可能である。図41~47に示されているように、固定装置14は典型的に、被覆100を含む。
【0100】
近位要素16A及び16Bの独立した作動を提供することが望ましい場合がある。例えば、図44に示されているように、近位要素アクチュエータ90Aは近位に引込められ、遠位要素18Aから離れるように近位要素16Aを回転させ、一方、近位要素アクチュエータ90Bは、遠位に押され、近位要素16Bを遠位要素18Bに向かって回転させる。同様にして、図45に示されているように、近位要素アクチュエータ90Aは単独で残されて、近位要素16Aが、付勢されて向かう位置を維持できるようにし、一方、近位要素アクチュエータ90Bは近位に引込められて、近位要素16Bを遠位要素18Bから離れるように移動させる。
【0101】
図47に例示されている別の実施形態においては、近位要素16A及び16Bの独立した作動は、図46に描かれた実施形態と類似の要領で行なわれる。しかしながら、図47に示されているように、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは2重ループ構成で形成されている。各々の近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、近位要素16A及び16Bのうちの対応する近位要素の遠位端部を通って配索されシャフト12又は結合部材19の周りでループにされた後、退出し、シャフト302の突出部分318を通って戻る。この構成は、図46中に例示されている実施形態と類似の作業上の融通性を提供するが、結合部材19がシャフト12から解放される前に近位要素アクチュエータ90A及び90Bを取外すことを可能にする。
【0102】
図48に例示されている別の実施形態においては、単一の近位要素アクチュエータ90が、図34に描かれている実施形態と類似の要領で逐次的把持を行なうように構成されている。しかしながら、この実施形態も同様に、遠位要素18A及び18Bの開放方向での拡大された範囲の動作を可能にするために、グリッパプッシャ81を利用する。この構成の幾何形状によって、各々の近位要素16A及び16Bは、別個に動作することができ、近位要素アクチュエータ90は、結合部材19の分離と連動して解放され得る。図35で例示されているように、近位要素アクチュエータ90の配索の仕方に起因して、合力F1及びF2は異なる角度にある。これらの合力及びその方向は、近位要素90上の張力及び近位要素アクチュエータ90が対応する近位要素16A又は16Bに接近しており近位要素から離れるように延在する方向(角度)に基づくものである。ここでもまた、対応する近位要素を移動させる力は、対応する近位要素の長さに直交する力の成分である。この直交する成分は、FN1及びFN2で表わされている。したがって、近位要素アクチュエータ90内の所与の張力量のために、近位要素16Aは近位要素16Bよりも大きな移動力を受け取ることになる。このことはすなわち、近位要素16Aが開放している間、近位要素16Bは閉鎖状態にとどまり、近位要素16Aが完全に開放した後に、近位要素16Bが開放するということを意味している。こうして、単一の近位要素アクチュエータ90を用いて近位要素16A及び16Bのそれぞれの作動が可能になる。しかしながら、さらにこの実施形態では、遠位要素間の開先角度は約90°超、好ましくは約110°超、より好ましくは約120°超であり得る。したがって、この実施形態において、固定装置は、別個の作動ならびに近位要素の広い範囲の動作を可能にする。
【0103】
F.近位要素アクチュエータの結合
上述の実施形態の多くにおいて、近位要素アクチュエータ90又は近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、固定装置14に解放可能に結合され得る端部を含む。以下で説明するのは、上述の実施形態のいずれにでも適用され得る近位要素アクチュエータを解放可能に結合するためのさまざまな方法及び構造を示す多数の実施形態である。
【0104】
多くの実施形態において、シャフト12及び結合部材19はL係止メカニズムを介して解放可能に共に結合される。例えば、図49Aに示されているように、近位要素アクチュエータ90は、平坦な区分90Fから遠位の湾曲したT字形端部90Tを含むことができ、シャフト12はL字形端部12Lを含むことができる。図49Bの斜視図に示されているように、近位要素アクチュエータ90は、それとシャフト12が結合部材19のチャネル19C内に設置された場合に結合部材19に対し解放可能に結合される。シャフト12がチャネル19Cを通って設置されるにつれて、L字形端部12Lは、それらがアパーチャ19Aに到達するまで内向きに押される。到達した時点で、L字形端部12Lは外向きに延在してアパーチャ19Aの中にフィットし、これによりシャフト12は、図49Cの横断面図に示されているように、結合部材19に対して所定の場所に係止される。湾曲したT字形遠位端部90Tは、典型的に、シャフト12がチャネル19C内に設置される前に空間19CA内に設置される。図49Cに示されているように、このとき、湾曲したT字形の遠位端部90Tは、シャフトが内部に設置された時点で、シャフト12のより幅広の部分とチャネル19Cとの間の空間つまりポケット19CAの中に捕捉された状態になる。他のL係止又は他の係止メカニズムは、参照により本明細書中に全内容が組込まれている、2009年2月26日出願の「移植可能な固定装置のための離脱メカニズム」なる名称の同一出願人による米国特許出願第12/393,452号中に記載されている。
【0105】
近位要素アクチュエータ90の湾曲したT字形端部90Tは同様に、他の多くの方法でシャフト12及び結合部材19に対して近位要素ライン90を解放可能に結合するのを容易にするためにも使用可能である。例えば、図50Aに示されているように、シャフト12のL字形端部12Lは、少なくとも1つの近位要素ラインスロット12Sを含み得る。図50C及び50Dに示されているように、近位要素アクチュエータ90のT字形端部90Tは、近位要素ラインスロット12S内に摺動させられる。その後、シャフト12は結合部材19内に設置され、これにより同様に近位要素ライン90を所定の場所に係止する。図50Eに示されているように、結合部材19からシャフト12を取外すことによって、近位要素ライン90をL字形端部12Lの近位要素ラインスロット12Sから外に摺動させることが可能になり、これにより、シャフト12及び結合部材19の両方から近位要素アクチュエータ90が結合解除される。
【0106】
図51Aに示されているように、近位要素アクチュエータ90は平坦なT字形端部90TFを含み得る。シャフト12はさらに、シャフト12の遠位部分を取り囲む内側遠位被覆1511及び、内側遠位被覆を取り囲む外側遠位被覆1521を含み得る。内側遠位被覆1511は、典型的に、シャフト12との関係において固定された位置にあり、一方外側遠位被覆は、外側遠位被覆1521のサイドチャネル1525を通って設置された内側遠位被覆1511のタブ1515によって確定される範囲で、シャフト12に対して可動である。近位要素アクチュエータ90をシャフト12及び結合部材19に対して解放可能に結合するために、T字形端部90TFは、内側遠位被覆1511のT字形切り抜き1513内に嵌め込まれ、シャフト12が結合部材19内に設置されると、図51Bに示されている通り、結合部材19は、内側遠位被覆1511上で外側遠位被覆1521を押して、T字形切り抜き1513ならびにT字形端部90TFが覆われる。これにより、内側遠位被覆1511と外側遠位被覆1521の間に設置されたコイルばね1522が圧縮される。固定装置14がシャフト12から解放されると、外側遠位被覆1521は、コイルばね1522の作用によって遠位に移動してT字形切り抜き1513を露出させ、近位要素アクチュエータを解放する。いくつかの実施形態において、外側遠位被覆1521は、内側遠位カバー1523に対してばね荷重を受け、こうして図51Bに示されたそれらの相対的位置を維持する傾向をもつことになる。
【0107】
例えば図52A~52Gに示されているような多様な内側及び外側遠位カラーをシャフト12の遠位部分上に用いて、さまざまな方法により、近位要素アクチュエータ90を固定装置14に対して解放可能に結合することができる。図52Aは、一対のT字形切り抜き1513及びタブ1514を有する内側遠位カラー1511Aを示す。図52Bは、チャネル1524を有する外側遠位カラー1521Aを示す。チャネル1524は、例えば図52C~52Eに示されているように、内側遠位カラー1511Aが外側遠位カラー1521A内に摺動させられるにつれてそのタブ1514を介して内側遠位カラー1511Aを誘導する。図51A及び51B中に示された実施形態の場合のように、近位要素アクチュエータ90をシャフト12及び結合部材19に対して解放可能に結合するために、T字形端部90TFは、内側遠位カラー1511SのT字形切り抜き1513内に嵌め込まれる。シャフト12が結合部材19内に設置されると、結合部材19は、内側遠位カラー1511S上の外側遠位カラー1521Sを押して、図52F及び52Gに示されている通り、T字形切り抜き1513ならびにT字形端部90TFが覆われる。これにより、図52Cに示されたコイルばね1522Aが圧縮される。固定装置14がシャフト12から解放されると、外側遠位カラー1521Aは、コイルばね1522Aの作用によって遠位に移動してT字形切り抜き1513Aを露出させ、近位要素アクチュエータ90を解放する。
【0108】
他の実施形態においては、近位要素アクチュエータ90は、結合部材19及びシャフト12を通過するアクチュエータロッド64の取出しによって作動される構造に対して、解放可能に係合され得る。図53に例示されているように、結合部材19及び介入ツール10のシャフト12を通過するアクチュエータロッド64に対しスタッド74が解放可能に取付けられている。このようにして、アクチュエータロッド64は、固定装置と連結可能であり、固定装置を操作するように作用して、主に遠位要素を開閉する。弁尖が接合された後、アクチュエータロッド64はスタッド74から近位で取り外されて、結合部材19、又は代替的に上述のL係止メカニズムを解放する。以下の実施形態において、アクチュエータロッド64のこの作用は、近位要素アクチュエータ90を解放するために利用可能である。
【0109】
一実施形態において、図54A~54D及び55A~55に例示されているように、近位要素アクチュエータ90を保持し解放するために、アクチュエータロッド64と組合わせてばね部材331が利用される。図54Aに示されているように、突出部分318から延在するシャフトの一部分は、その内部に形成された2つのウィンドウ333を有する。2つのばね部材が、対応するウィンドウに隣接してシャフト12の周囲に位置付けされ、こうして湾曲部分335がシャフト12内部に形成されたアクチュエータロッド通路内に延在するようになっている。これらの湾曲部分335の近位側を、突出部分318又はシャフト12の外部部分に固定することができる。各々の湾曲部分335の遠位側が、「C」字形状の各端部に形成されたノッチ339を有する「C」字形部分に取付けられる。1つのばね上の1つの「C」字形状部分の対応する端部は、対応するノッチ339がいずれか1つの近位要素アクチュエータの端部における球体337の運きを制限できるように、別のばねの端部に当接するように構成されている。図54Cは、「C」字形部分が接触して、球体337の遠位運動を阻止するノッチを形成している位置を例示している。
【0110】
図55Aに例示されているように、アクチュエータロッド64は、狭い部分と広い部分を有する先細の外形を有するように構成されている。アクチュエータロッド64が図55Bにおいて近位に移動させられるにつれて、アクチュエータロッド64の幅広部分が湾曲部分335と接触して、隣接するばね部材331の対応する「C」字形部分を分離させる。こうして、ノッチ339が開かれ、近位アクチュエータ90の球体337は図55Cに示されているように解放されることになる。
【0111】
図56A及び56Bに例示されているような別の実施形態において、近位要素アクチュエータ90又は近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、シャフト12に対して蝶番式に取付けられた1つ又は1組のライナ65を使用することによって、シャフト12に解放可能に取付けられてよい。この構成では、シャフト12内に一対のウィンドウ33が形成される(単一の近位要素アクチュエータの場合には、1つのウィンドウしか必要とされない)。各ウィンドウ33の近位側でシャフト12の内側にライナが蝶番式に取付けられる。図56Aに示されているようにアクチュエータロッド64が近位に引き抜かれた場合、ライナ65が内向きに移動して、近位要素アクチュエータ90は自由に移動できるようになる。アクチュエータロッド64がこの位置にあるとき、近位要素アクチュエータ90をウィンドウ33内に挿入するか又はウィンドウ33から引き抜くことができる。一方で、アクチュエータロッド64が図56Bに示されているように遠位に移動させられた場合、ライナ65は、シャフト12の内側表面を外向きに圧迫して近位要素アクチュエータを捕捉又は挟む。これにより、近位要素アクチュエータはしっかりと固定され、近位要素16は独立して移動できるようになる。近位要素アクチュエータ90は、アクチュエータロッド64が図56Aに示された位置まで再び近位に移動させられるまで、シャフト12に固定される。
【0112】
図65A~Iを参照すると、限定的ではなく例示を目的として、アクチュエータロッド64は、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの近位運動を制限するためのアンカとして使用可能である。以上で開示した通り、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの第2の端部(例えば遠位端部)は各々捕捉要素、例えば球体337A(図65F参照)又は他の形状、例えば直円錐形状のラッパ形状体338A(図65D参照)を含むことができ、これらはシャフト12内部に収容されるようにサイズ決定され得る。図65A~65Cに示されているように、突出部分318から延在し、L係止のL字形端部12Lの近位にあるシャフト12の一部分は、内部に画定された2つのスロット401A及び401Bを有することができる。スロット401Aは孔402A及び402Bを画定することができ、スロット401Bは孔402C及び402Dを画定できる。孔402A及び402Cは、その内部を通って、それぞれスロット401A及び401Bへと、ラッパ形状体338A及び338B(図示せず)をそれぞれ収容するようにサイズ決定され得る。孔402B及び402Dは、それぞれラッパ形状体338A及び338Bがそれぞれスロット401A及び401Bを超えて延在するのを阻止するようにサイズ決定され得る。スロット401A及び401B及び孔402A~402Dの構成は、シャフト12内の特徴部のより容易な製造を可能にし得る。スロット401A及び401Bは、確実にシャフト12全体を貫通しないように穿設され得る。この構成において、近位要素アクチュエータ90A及び90Bのラッパ形状体338A及び338Bは、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの緩みを管理するため、シャフト12内部に維持され得る。
【0113】
近位要素アクチュエータ90Aのラッパ形状体338Aは、(シャフト12を通過する)アクチュエータロッド64の挿入及び固定装置のスタッド74との結合に先立って、孔402Aを通り、孔402Bに向かってスロット401A内に挿入され得、近位要素アクチュエータ90Bのラッパ形状体338Bは、孔402Cを通り、孔402Dに向かってスロット401B内に挿入され得る。アクチュエータロッド64がシャフト12を通過した状態で、ラッパ形状体338A及び338Bひいては近位要素アクチュエータ90A及び90Bの動作を制限することができる。例えば、ラッパ形状体338A及び338Bを、それぞれ孔402B及び402Dを通って前進しないように抑止することができ、かつそれぞれアクチュエータロッド64を通過して及び孔402A及び402Bを通って引っ張られないように阻止することができる。したがって、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの第2の端部を、シャフト12に対して所定の場所に保持することが可能である。アクチュエータロッド64がひとたびスタッド74から結合解除され、その後引込められたならば、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの遠位端部におけるラッパ形状体338A及び338Bの動作はもはや制限されず、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは自由に移動できる。近位の引込み時点で、近位要素アクチュエータ90A及び90Bはそれぞれ孔402A及び402Cを縫通して、それぞれ近位要素16A及び16Bから結合解除することができる。
【0114】
開示された本発明の主題によると、スロット401A及び401Bは、シャフト12の遠位端部に向かって一定の角度で穿設され得(図65E及び65G参照)、ここで例えば一方の孔402Bは一方の側で他方の孔402Aに対して遠位に形成され、一方の孔402Dは他方の側で他方の孔402Cに対して遠位に形成される。スロット401A及び401Bのこの構成は、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの展開をより容易にすることができ、摩擦を低減することができる。
【0115】
孔402Aには、フィレット半径403A(図65B及び65H参照)が具備され得、孔402Cにはフィレット半径403B(図示せず)が具備され得、これにより、孔402A及び402C上の鋭利な縁部を制限することができ、近位要素アクチュエータ90A及び90Bがフィレット半径403A及び403B上で穏やかに曲線を描くことを可能にすることができる。したがって、フィレット半径403A及び403Bは、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの厳しく急激な湾曲を減らすことができる。フィレット半径403A及び403Bは同様に、過度に強く近位要素アクチュエータ90A及び90Bを引っ張ったことによる、又は多くの使用サイクルに起因する障害ならびに局在化した曲げひずみも減少することができる。フィレット半径403A及び403Bは少なくとも0.003cm(0.001インチ)であり得る。フィレット半径は、近位要素ライン90A及び90Bの直径の少なくとも20%であり得る。開示された主題によると、フィレット半径は出口孔サイズの少なくとも10%であり得る。フィレット半径403A及び403Bは、それぞれの孔402A及び402C全周に延在でき、又は近位で引っ張られた場合に近位要素アクチュエータ90A及び90Bが係合することになる近位縁部に沿って延在することができる。付加的に又は代替的には、孔402A及び402Cには、平滑化された角403D及び403Eを有する面取り面403C(図65I参照)が具備され得、これにより近位に引っ張られた場合の近位要素アクチュエータ90A及び90Bの折曲げが制限される。
【0116】
付加的に又は代替的には、角度低減特徴部405をシャフト12の外側表面上に具備することができる。例えば、角度低減特徴部405はOリング又は金属リングを含むことができ、シャフト12の外径上に具備され得、これにより、張力下で引っ張られた場合の近位要素アクチュエータ90A及び90Bの曲げを制限することができる。
【0117】
本明細書中で開示され先に論述されている通り、追加のスリーブを提供することが可能である。スリーブ(図示せず)は、遠位角度付き孔の進入場所全体にわたり配置され得、捕捉要素がマンドレルとスリーブの間にとどまるように保証でき、かつ閉鎖中の緩みを制御することができる。
【0118】
各近位要素アクチュエータの第2の端部をシャフトでしっかり固定する前に、各々の近位要素アクチュエータをそれぞれの近位要素と結合することができる。例えば、図22A、27及び53を参照すると、各々の近位要素アクチュエータは、第1の端部、第2の端部及び第1の端部と第2の端部の間の中間部分を含むことができる。近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、近位要素アクチュエータの中間部分においてそれぞれ近位要素16A及び16Bに結合され得、こうして、近位要素アクチュエータ90A及び90Bが近位に作動させられたとき、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは、それぞれアーム53A及び53Bとの関係において近位要素16A及び16Bを移動させ、これにより第1及び第2の近位要素16A及び16Bを第1及び第2の位置の間で移動させることができる。
【0119】
代替的には、図29~34に関して説明した通り、近位要素アクチュエータ90は、少なくとも1つの管腔を通って遠位に、そして少なくとも1つの管腔を通って近位に戻るように延在し得る。開示された主題によると、さまざまなカテーテル構成を提供することができる。例えば、少なくとも1つの管腔は、少なくとも第1の近位要素アクチュエータ管腔及び第2の近位要素アクチュエータ管腔を含むことができる。少なくとも1つの管腔は、少なくとも第3の近位要素アクチュエータ管腔及び第4の近位要素アクチュエータ管腔を含むことができる。送達装置はさらに、少なくとも1つの管腔を通って延在するシャフトを含むことができ、このシャフトは植込み型固定装置の結合部材に対して解放可能に結合されている。
【0120】
図66A~Dを参照すると、限定的ではなく例示を目的として、各々の近位要素アクチュエータ90A及び90Bはそれぞれ、カテーテルの遠位端部から延在するループ95C及び95Dを画定することができる。ループ95C及び95Dは各々アクチュエータロッド64を取り巻くことができる。図66A及び66Bに関連して以上で論述したように、突出部分318から延在するシャフト12の一部分は、内部に形成された2つのウィンドウ33を有することができる。ループ95C及び95Dは、シャフト12内部に形成されたそれぞれのウィンドウ33を通過することができ、こうして、各ループがアクチュエータロッド64を取り巻くことができるようになっている。固定装置14がひとたび所望の位置になったならば、アクチュエータロッド64はスタッド74から結合解除され引込められ、次に近位要素アクチュエータ90A及び90Bの後続する近位引込みが、近位要素16A及び16Bから近位要素アクチュエータ90A及び90Bを結合解除する。代替的には、単一のウィンドウ33を具備することができ、このウィンドウ33を通って各ループ95C及び95Dを配置し、アクチュエータロッド64の周りでループにすることができる。
【0121】
代替的には、近位要素アクチュエータ90A及び90Bは各々、(図22A~B及び27の例示的実施形態に関して以上で詳述したように)第2の端部にそれぞれループ95A及び95Bを含むことができる。このようにして、各ループ95A及び95Bを、それぞれのウィンドウ33を通って配置し、アクチュエータロッド64の周りでループにすることができる。この構成は、図27に例示された実施形態と類似の動作上の融通性を提供することができるが、シャフト12及び結合部材19が結合解除される前に近位要素アクチュエータ90A及び90Bの取外しを可能にする。代替的には、単一のウィンドウ33を提供することができ、各々のループ95A及び95Bをこのウィンドウ33を通って配置し、ロッド64の周りでループにすることができる。
【0122】
本明細書中でさらに具体化されているように、各々の近位要素アクチュエータは、シャフト302の突出部分318から延在し、この突出部分へと戻る単一の又は多数のフィラメントで形成され得る。図67で示されているように、例えば、近位要素アクチュエータ90A及び90B(ここでは、明確さのために近位要素アクチュエータ90Aのみが描かれている)は、1つ以上の近位要素アクチュエータマンドレル404を使用することによってシャフト302の突出部分318に対し解放可能に取付けられた第2の端部を有することができる。この構成において、近位要素アクチュエータマンドレル404は、介入ツール10の近位端部から管腔406を通ってシャフト302の突出部分318まで延在することができ、こうして、近位要素アクチュエータマンドレル404をユーザが患者の身体外で操作できるようになっている。例えば、近位要素アクチュエータマンドレル404の遠位端部は、管腔406の直径よりも大きい直径を有するプランジャ408を含むことができ、こうして、近位要素アクチュエータマンドレル404の近位運動がシャフト302の突出部分318の遠位表面に対しプランジャ408を圧迫できるようになっている。本明細書中で開示されているように、単一のアクチュエータマンドレル及びプランジャ、又はそれぞれの近位要素アクチュエータに各々結合された2つ以上のアクチュエータマンドレル及びプランジャを使用することができる。各々の近位要素アクチュエータ90A及び90B(図示せず)は、突出部分318から延在でき、したがって中間部分において、例えば近位要素16A及び16Bのアクチュエータループ48A(及び図示されていない48B)を通して、それぞれの近位要素16A(及び図示されていない16B)に結合され得る。近位要素アクチュエータの第2の端部は、シャフトの突出部分318にしっかり固定される。すなわち、近位要素アクチュエータマンドレル404を遠位に移動させることにより、近位要素アクチュエータ90A及び90Bの遠位端部を各々、シャフト302の突出部分318の遠位表面とそれぞれのプランジャ408の近位表面の間に設置して、各々の近位要素アクチュエータマンドレル404の近位運動がそれぞれの近位要素アクチュエータを捕捉するか又は挟むようにすることができる。本明細書中で開示されているように、単一のアクチュエータマンドレル及びプランジャを使用することができ、あるいは、2つのアクチュエータマンドレル及び各々それぞれの近位要素アクチュエータに結合されたプランジャを使用することもできる。こうして、近位要素16を別個に移動させ解放することができるような形で、近位要素アクチュエータをしっかりと固定することができる。近位要素の展開後、それぞれの近位アクチュエータを近位要素アクチュエータマンドレル404の遠位運動によって離脱させて、各近位要素アクチュエータ90を解放しそれぞれの近位要素から結合解除することを可能にすることができる。
【0123】
付加的に又は代替的に、限定的ではなく例示を目的として、明確さのため近位要素アクチュエータ90Aのみが描かれている図68を参照すると、近位要素アクチュエータマンドレル404の遠位端部は、その遠位端部に固定的に取付けられたブレード410を含むことができる。近位要素アクチュエータマンドレル404はシャフト302に対して回転可能であり、こうしてブレード410をシャフト302に対して回転させることができる。こうして、近位要素アクチュエータマンドレル404の回転はブレード410を展開させて、それぞれの近位要素アクチュエータ90を切断することができる。例えば、各近位要素アクチュエータ90を、シャフト302の突出部分318に結合させて、それぞれの近位要素と結合された中間部分とループを形成するか、又はそれぞれの近位要素に直接結合させることができる。ひとたび近位要素アクチュエータが近位要素ラインマンドレルのブレードによって切断されたならば、近位要素アクチュエータをシャフト/管腔から引き抜くことができる。各々の近位要素アクチュエータを個別に切断するために単一のマンドレル404及びブレード410を具備することができ、あるいは、個別に取外すために、各々の近位要素アクチュエータ90A及び90Bについて別個の近位要素アクチュエータマンドレル404及びブレード410を具備することができる。
【0124】
本明細書中で開示されているように、限定的にではなく例示を目的として図69A~Bに示されているように、各々の近位要素アクチュエータ90A及び90B(ここでは明確さのため近位要素アクチュエータ90Aのみが描かれている)は、中に形成されたウィンドウ90Wを有する外側シース90G、外側シース90Gに対して軸方向に可動である内側マンドレル414、及び外側シースから延在してループ412を画定する縫合糸を含むことができる。縫合糸は、それが外側シース90Gのウィンドウ90W内に延在し、ループ412を通して内側マンドレル414を収容する捕捉位置と解放位置の間で作動可能であり得る。それぞれの外側シース90Gの内部に内側マンドレル414が配置され得、ここで内側マンドレル414は、外側シース90に対して可動であり得る。各ループ412は、それぞれの近位要素16A及び16B(ここでは、明確さのため近位要素16Aのみが描かれている)のラインループ48又は小穴を通過し、外側シース90Gの内部に形成されたウィンドウ90Wに戻ることができる。ガイドシース内部のループ412に内側マンドレル414を通過させて、近位要素アクチュエータ90Aを近位要素16Aに固定することができる。こうして、近位要素の展開後、内側マンドレル414を近位に引込めることで、ループ412を解放し、近位要素16Aからの近位要素アクチュエータ90Aの結合解除を可能にすることができる。
【0125】
本明細書中でさらに説明されるように、近位要素アクチュエータ90は、ユーザが力を加えることによって活動化される構造に対して解放可能に係合され得る。例えば図70に示されているように、各々の近位要素アクチュエータ90A及び90B(ここでは明確さのため近位要素アクチュエータ90Aのみが描かれている)は、摺動可能な外側シース90S及びその遠位端部に挟持体90Pを有する内側部材を含むことができ、例えばここで挟持体90Pには1つ以上の挟持体プロング90PPなどが含まれる。挟持体90Pは、1つ以上の挟持体プロング90PPが外向きに付勢されるような形で形状記憶材料を用いて形成され得る。このようにして挟持体プロング90PPは、それぞれの近位要素16A及び16B(ここでは明確さのため、近位要素16Aのみが描かれている)のアクチュエータループ48を通って設置され得る。挟持体90Pに向かう摺動可能な外側シース90Sの遠位運動は、挟持体プロング90PPを内向きの位置に係止して、近位要素16Aのラインループ48を挟持体プロング90PPの内部に捕捉することができる。これを用いて、各々の近位要素アクチュエータ90をそれぞれの近位要素16にしっかり固定して、個別の動作及び解放を可能にすることができる。近位要素の展開後、摺動可能な外側シース90Sを挟持体90Pから離れるように近位に移動させ、こうして挟持体プロング90PPがもはや内向きの位置に係止されず近位要素アクチュエータ90がそれぞれの近位要素16から結合解除され得るようにすることができる。
【0126】
付加的に又は代替的に、限定的ではなく例示を目的として、図71を参照すると、各々の近位要素アクチュエータ90A及び90B(ここでは明確さのため近位要素アクチュエータ90Aのみが描かれている)は、例えば接着剤又は溶接によって、それぞれの近位要素16A及び16B(ここでは明確さのため近位要素16Aのみが描かれている)に対し直接固着され得る。各々の近位要素アクチュエータ90は、弱化した領域、例えばその遠位端部に近接するネックダウン部分90Nを含み得る。ユーザが近位要素アクチュエータ、例えば近位要素アクチュエータ90Aに対して充分な量の近位力を加えた場合、近位要素アクチュエータ90Aは破損又は破断して近位要素アクチュエータ90Aを近位要素16Aから結合解除させることができる。例えば、ネックダウン部分90Nは近位要素アクチュエータ90Aの破損場所がネックダウン部分90Nで確実に発生するように寸法決定され得る。他の好適な構成には、ミシン目入り領域又は他の形で弱化されたものであり得る弱化領域が含まれる。
【0127】
近位要素アクチュエータ90を解放可能に固定する方法及び構造は、以上において1つ又は2つの近位要素アクチュエータのいずれかを伴っていたものの、単一又は多数のいずれかの近位要素アクチュエータ90と共に使用するためにこれらの構造を利用又は修正することが可能である。
【0128】
G.グリッパプッシャの解放可能な固定
以上で記載されているように、図39は、好ましくは2つのばねアーム99を含むグリッパプッシャ83を強調表示している。各々のアーム99は、ワイヤから形成されるか又はシート又は他のストック材料から機械加工されており、この実施形態においては矩形横断面を有するが、他の横断面も同様に企図されている。図39の実施形態において、各アーム99の遠位部分91は、固定装置上のボス又は他の取付けメカニズムと係合し得る一対のフィンガを形成するノッチ付き領域93を有する。ノッチは、固定装置14が送達カテーテルのシャフト12から離脱させられた時点でボスから解放され得る。図57及び58は、L係止構成と組合せてグリッパプッシャ83のアーム99をしっかり固定するための変形実施形態を示す。
【0129】
図57及び58は、図6Aに例示された噛合表面32に対する代替的実施形態を例示する。ここで、上部シャフト500は、戻り止め構造504、508を伴う下部シャフト506と解放可能に結合されている。この実施形態における上部及び下部シャフトは概して、管状であるが、当業者であれば、他の構成も可能であることを認識するものである。この例示的実施形態における戻り止めメカニズムは、管状上部シャフト500上に一体化して形成された1つ以上のばねアーム502、及びばねアーム502を収容するようにサイズ決定された1つ以上の受け口508を含む。管状上部シャフト500は、その遠位端部にフランジ様の係合表面504を有する1つ以上のばねアーム502と一体化して形成されている。ばねアーム502は好ましくは、内向きに、すなわちシャフト500の内部に向かって付勢される。離脱可能な管状下部シャフト506は、1つ以上の受け口を特色として有し、ここでアパーチャ508が、ばねアーム502の係合表面504及びグリッパプッシャ83のアーム99の係合表面を収容しこれと噛合するように構成されている。アパーチャ508は、下部シャフト506の壁全体にわたって延在していてよく、ばねアーム502の係合表面504及びアーム99の遠位端部91にある係合表面101の両方とぴったり合うようにサイズ決定されている。アーム99を管状下部シャフト506に対して解放可能に結合するため、アーム99の係合表面101は対応するアパーチャ508内にフィットさせられる。その後ぴったり合うロッド34(例えばアクチュエータロッド64)が管状シャフト500、506を通って挿入され、内向きに付勢されたばねアーム502を外向きに変形させ、こうして係合表面504は対応する受け口508及びアーム99と係合するように押され、これにより、グリッパプッシャ83及び上部シャフト500を下部シャフト506に結合させることになる。
【0130】
図58は、上部シャフト500からの下部シャフト506の離脱を例示する。これは、ロッド34をばねアーム502の上方の位置まで引込めて、内向きに付勢された係合表面504を受け口508から係合解除可能にし、グリッパプッシャ83のアーム99がシャフト500、506と共に離隔できるようにすることによって実現される。
【0131】
以上が、本発明の好ましい実施形態についての完全な説明であるものの、本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな変形形態、置換、付加、修正及び等価物が可能である。例えば、上述の実施形態の多くにおいて本発明は、上流側すなわち僧帽弁の場合には心房側からの弁構造への接近という状況下で説明されている。弁の心室側又は下流側からのアプローチ、ならびに心臓壁を貫通する外科的アプローチの使用を含めた、他のアプローチでも同様に以上の実施形態のいずれかを利用できる、ということが理解されなければならない。さらに、本発明は、心臓弁以外のさまざまな他の組織構造の治療において使用可能であり、血管内、内視鏡及び開腹手術を含めた、さまざまな組織近置、取付け、閉鎖、締付け及び結紮の利用分野において有用である。
【0132】
ここでもまた、明確な理解のために以上の発明は、図及び実施例により幾分か詳細に説明されてきたものの、さまざまな変形形態、修正及び等価物が使用可能であることは明白であり、以上の説明は、添付のクレームによって定義される本発明の範囲を限定するものとして考えられるべきものではない。
なお、本発明の実施態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
患者の組織を係合させるための固定システムであって、前記固定システムは:
第1のアーム及び第2のアーム、
前記第1の位置と第2の位置の間で前記第1のアームに対して可動である第1の近位要素、
前記第1の位置と第2の位置の間で前記第2のアームに対して可動である第2の近位要素、及び
結合部材、
を含む植込み型固定装置と;
近位端部と遠位端部を有するカテーテルであって、前記近位端部と前記遠位端部の間に延在する少なくとも1つの管腔を画定するカテーテル、
前記少なくとも1つの管腔を通って延在し前記結合部材に対し解放可能に結合されているシャフト、
前記少なくとも1つの管腔を通って延在する第1の近位要素アクチュエータであって、第1の端部、第2の端部ならびに前記第1の端部と前記第2の端部の間の中間部分を有し、前記第1の近位要素アクチュエータの前記中間部分において前記第1の近位要素に結合されかつ前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第1の近位要素を移動させるために作動可能である、第1の近位要素アクチュエータ、及び
前記少なくとも1つの管腔を通って延在する第2の近位要素アクチュエータであって、第1の端部、第2の端部ならびに前記第1の端部と前記第2の端部の間の中間部分を有し、前記第2の近位要素アクチュエータの前記中間部分において前記第2の近位要素に結合されかつ、前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第2の近位要素を移動させるために作動可能である、第2の近位要素アクチュエータ、
を含む送達装置と;
を含む固定システムであって、それぞれ前記第1の近位要素アクチュエータ及び第2の近位要素アクチュエータの前記第2の端部が前記シャフト及び前記結合部材のうちの少なくとも1つに結合されている、固定システム。
[態様2]
前記第1の近位要素アクチュエータ及び前記第2の近位要素アクチュエータが、前記シャフト及び結合部材を結合解除することによって、前記シャフト及び前記結合部材のうちの少なくとも1つから解放される、態様1に記載の固定システム。
[態様3]
前記第1の近位要素アクチュエータの前記第2の端部が第1のループを含み、前記第2の近位要素アクチュエータの前記第2の端部が第2のループを含む、態様1に記載の固定システム。
[態様4]
前記シャフト及び前記結合部材が共に結合された時点で、前記第1及び第2のループの各々が前記シャフト及び前記結合部材のうちの少なくとも1つの周りに配置されている、態様3に記載の固定システム。
[態様5]
前記第1の近位要素アクチュエータの前記第2の端部が、第1の捕捉要素を含み、前記第2の近位要素アクチュエータの前記第2の端部が第2の捕捉要素を含む、態様1に記載の固定システム。
[態様6]
前記第1の捕捉要素が第1の球体を含み、前記第2の捕捉要素が第2の球体を含む、態様5に記載の固定システム。
[態様7]
前記第1の捕捉要素が第1のラッパ形状体を含み、前記第2の捕捉要素が第2のラッパ形状体を含む、態様5に記載の固定システム。
[態様8]
前記第1の捕捉要素が前記シャフト内の第1の開口部内に収容されるように構成され、前記第2の捕捉要素が前記シャフト内の第2の開口部内に収容されるように構成されている、態様5に記載の固定システム。
[態様9]
前記第1の捕捉要素及び第2の捕捉要素が、前記シャフトの管腔の内部に収容されたアクチュエータロッドによって、対応する前記第1の開口部及び第2の開口部の中に保持されている、態様8に記載の固定システム。
[態様10]
前記第1の捕捉要素及び前記第2の捕捉要素が、解放可能に共に結合された時点で、前記シャフト及び前記結合部材の間に収容されている、態様5に記載の固定システム。
[態様11]
前記送達システムがさらに、第1の近位要素アクチュエータマンドレル及び第2の近位要素アクチュエータマンドレルを含み、前記第1及び第2の近位要素アクチュエータマンドレルが、前記カテーテルの前記少なくとも1つの管腔を通って延在しており、前記第1の近位要素アクチュエータマンドレルが、前記第1の近位要素アクチュエータを前記第1の近位要素アクチュエータマンドレルと前記カテーテルの間に解放可能に定着させるように構成されており、前記第2の近位要素アクチュエータマンドレルが、前記第2の近位要素アクチュエータを前記第2の近位要素アクチュエータマンドレルと前記カテーテルの間に解放可能に定着させるように構成されている、態様1に記載の固定システム。
[態様12]
前記送達装置がさらに、前記第1の近位要素アクチュエータを切断して前記第1の近位要素を解放するように構成された第1のカッタを含む、態様11に記載の固定システム。
[態様13]
前記送達装置がさらに、前記第2の近位要素アクチュエータを切断して前記第2の近位要素を解放するように構成された第2のカッタを含む、態様12に記載の固定システム。
[態様14]
患者の組織を係合させるための固定システムにおいて、前記固定システムは:
第1のアーム及び第2のアーム、
第1の位置と第2の位置の間で前記第1のアームに対して可動である第1の近位要素、
第1の位置と第2の位置の間で前記第2のアームに対して可動である第2の近位要素、及び
結合部材、
を含む植込み型固定装置と;
近位端部と遠位端部を有するカテーテルであって、前記近位端部と前記遠位端部の間に延在する少なくとも1つの管腔を画定するカテーテル、
前記少なくとも1つの管腔を通って延在し前記結合部材に対し解放可能に結合されているシャフト、
前記少なくとも1つの管腔を通って延在する第1の近位要素アクチュエータであって、第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1の近位要素アクチュエータの前記第2の端部において前記第1の近位要素に結合されかつ前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第1の近位要素を移動させるために作動可能である、第1の近位要素アクチュエータ、及び
前記少なくとも1つの管腔を通って延在する第2の近位要素アクチュエータであって、第1の端部及び第2の端部を有し、前記第2の近位要素アクチュエータの前記第2の端部において前記第2の近位要素に結合されかつ、前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第2の近位要素を移動させるために作動可能である、第2の近位要素アクチュエータ、
を含む送達装置と;
を含む固定システム。
[態様15]
前記第1の近位要素アクチュエータ及び前記第2の近位要素アクチュエータが各々、
第1のウィンドウを有する外側シースと、
前記外側シースに対して軸方向に可動である内側マンドレルと、
前記外側シースから延在しループを画定する縫合糸と、
を含み、
前記縫合糸は、この縫合糸が前記外側シースの前記ウィンドウ内に延在して前記ループを通して前記内側マンドレルを収容する捕捉位置と解放位置との間で作動可能である、
態様14に記載の固定システム。
[態様16]
前記第1の近位要素アクチュエータ及び前記第2の近位要素アクチュエータは各々、遠位挟持体を有する内側部材に対して軸方向に可動である外側シースを含み、前記外側シースは、前記内側部材に対して遠位に移動させることによって挟持体を閉じ、前記内側部材に対して近位に移動させることによって前記挟持体を開くように構成されている、態様14に記載の固定システム。
[態様17]
前記第1の近位要素アクチュエータ及び前記第2の近位要素アクチュエータが各々、前記第2の端部の近位において弱化した領域を含む、態様14に記載の固定システム。
[態様18]
患者の組織を係合させるための固定システムにおいて、前記固定システムは:
第1のアーム及び第2のアーム、
第1の位置と第2の位置の間で前記第1のアームに対して可動である第1の近位要素、
第1の位置と第2の位置の間で前記第2のアームに対して可動である第2の近位要素、及び
結合部材、
を含む植込み型固定装置と;
近位端部と遠位端部を有するカテーテルであって、前記近位端部と前記遠位端部の間に延在する少なくとも1つの管腔を画定するカテーテル、
前記少なくとも1つの管腔を通って延在し前記結合部材に対し解放可能に結合されているシャフト、
前記少なくとも1つの管腔を通って遠位に延在しかつ前記少なくとも1つの管腔を通って近位に戻るように延在して、前記カテーテルの前記遠位端部から延在するループを画定する第1の近位要素アクチュエータであって、そのループが前記第1の近位要素に結合されかつ前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第1の近位要素を移動させるために作動可能である、第1の近位要素アクチュエータ、及び
前記少なくとも1つの管腔を通って遠位に延在しかつ前記少なくとも1つの管腔を通って近位に戻るように延在して、前記カテーテルの前記遠位端部から延在するループを画定する第2の近位要素アクチュエータであって、そのループが前記第2の近位要素に結合されかつ前記第1の位置と前記第2の位置の間で前記第2の近位要素を移動させるために作動可能である、第2の近位要素アクチュエータ、
を含む送達装置と;
を含む固定システムであって、前記第1の近位要素アクチュエータにより画定される前記ループと前記第2の近位要素アクチュエータにより画定される前記ループが各々、前記シャフト及び前記結合部材のうちの少なくとも1つに結合されている、固定システム。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49A
図49B
図49C
図50A
図50B
図50C
図50D
図50E
図51A
図51B
図52A
図52B
図52C
図52D
図52E
図52F
図52G
図53
図54A
図54B
図54C
図54D
図55A
図55B
図55C
図56A
図56B
図57
図58
図59A
図59B
図60A
図60B
図61
図62A
図62B
図63A
図63B
図64A
図64B
図65A
図65B
図65C
図65D
図65E
図65F
図65G
図65H
図65I
図65J
図66A
図66B
図66C
図66D
図67
図68
図69A
図69B
図70
図71