(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】Kミラー走査、効率的な干渉測定、および空間周波数分析による瞳孔の位置合わせを備えた眼科撮像
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240917BHJP
A61B 3/14 20060101ALI20240917BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20240917BHJP
A61B 3/15 20060101ALI20240917BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240917BHJP
G02B 26/10 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/14
A61B3/12
A61B3/15
G01N21/17 630
G02B26/10 104Z
(21)【出願番号】P 2022505616
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071530
(87)【国際公開番号】W WO2021019025
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-14
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503317201
【氏名又は名称】カール ツァイス メディテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ワン、インジャン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ユアン
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウブ、ヨッヒェン
(72)【発明者】
【氏名】ダルビシュザデ バルチェイ、マハサ
(72)【発明者】
【氏名】リーヒー、コナー
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-098813(JP,A)
【文献】特開2006-068036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0291277(US,A1)
【文献】特表2008-518740(JP,A)
【文献】特開平03-066356(JP,A)
【文献】米国特許第04355871(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G02B 26/10-26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼のターゲット領域を撮像するための眼科撮像システムであって、
照明ビームを生成する光源と、
前記照明ビームを受け取って、コリメートされていない経路に沿って前記照明ビームを合焦させる第1の光学要素と、
前記コリメートされていない経路にあり、かつ前記ターゲット領域の共役面に配置されたビーム走査機構であって、前記第1の光学要素からの前記照明ビームを受け取る入射口と、走査位置が走査機構の動きに依存する走査ビームを出力する射出口とを有するビーム走査機構と、
前記ビーム走査機構から前記走査ビームを受け取る第2の光学要素と、を備え、前記第2の光学要素は、前記走査ビームを眼の前記ターゲット領域に合焦させる、システム。
【請求項2】
前記ターゲット領域が眼の網膜であり、前記ビーム走査機構が眼の網膜共役に配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ビーム走査機構がKミラーを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ビーム走査機構は、光軸の方向に沿って前記照明ビームを受け取り、かつ前記光軸の同じ方向に沿って前記走査ビームを出力する、請求項1乃至3の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の光学要素は走査レンズであり、前記第2の光学要素は接眼レンズであり、前記走査レンズは、前記照明ビームを前記ビーム走査機構内の焦点に合焦させる、請求項1乃至4の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項6】
前記照明ビームは、前記光源の軸出力方向を横切るラインビームである、請求項1乃至5の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項7】
前記ビーム走査機構は、二次元照明パターンを形成するように回転可能であり、前記二次元照明パターンは、前記ビーム走査機構の回転によって回転される前記走査ビームからなる、請求項1乃至6の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項8】
前記ビーム走査機構は、前記射出口において前記走査ビームを出力する出力側反射面を含む複数の反射面を含み、前記出力側反射面は、半径方向に変位して前記走査ビームに対して対応する半径方向の変位を与えるように構成可能である、請求項1乃至7の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項9】
前記出力側反射面が走査機構の射出軸に対して所定の角度にあり、前記出力側反射面が前記所定の角度に沿って半径方向に変位されており、前記照明ビームが第1の長さを有するラインビームであり、前記走査ビームが少なくとも前記ラインビームの長さだけ半径方向に変位する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
照明パターンが環状形状を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ビーム走査機構が出力走査ビームの軸を中心に回転し、前記出力走査ビームは前記ビーム走査機構の回転ごとに複数回回転
する、請求項1乃至10の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項12】
前記眼科撮像システムが、光干渉断層撮影システム(OCT)、光干渉断層撮影血管造影システム(OCTA)、または眼底撮像システムである、請求項1乃至11の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項13】
前記光源が、線形の一連の発光ダイオード(LED)であり、発光ダイオードの各々が選択的に作動可能である、請求項1乃至12の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項14】
前記光源が、所定のパターンで作動可能な円形配置の発光ダイオード(LED)である、請求項1乃至13の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項15】
前記ビーム走査機構が、第1のビーム周波数に対して反射性であり、かつ第2のビーム周波数に対して透過性である少なくとも1つの周波数選択光学系を含んでおり、前記ビーム走査機構が、前記第2のビーム周波数の光を前記射出口に向ける第2の光路を形成している、請求項1乃至14の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項16】
前記ビーム走査機構の前記入射口にある前記照明ビームが、第1のビーム周波数の第1の光成分と第2のビーム周波数の第2の光成分とを含んでおり、出力走査ビームは、前記第1の光成分によって形成されており、前記第2の光成分は、前記射出口への第2の光経路に沿った固視像を形成する、請求項1乃至15の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項17】
前記ビーム走査機構が、前記入射口で受け取られた前記照明ビームを反射する第1の表面と、第2の照明ビームに対して透過性を有する第2の表面とを有する少なくとも1つのミラーを含んでおり、前記第2の表面は、前記第1の表面とは反対側にあり、かつ前記ビーム走査機構の第2の入射口を形成している、請求項1乃至16の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項18】
前記ビーム走査機構に結合された運動並進機構をさらに備えており、前記運動並進機構は、前記ビーム走査機構に一次元並進運動を与える、請求項1乃至17の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項19】
前記運動並進機構が平行屈曲部を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記運動並進機構が、偏心を備えた誘導アクチュエータまたはモータを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記ビーム走査機構を含む第2の走査部品に入力される第1の走査信号を生成する第1の走査部品を含む走査システムをさらに備えており、
前記第1の走査部品は、眼の瞳孔共役に配置されており、前記第2の走査部品は、眼の網膜共役に配置されている、請求項1乃至20の1つまたは複数に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1の走査部品は、瞳孔共役に配置されたガルバノメータを含んでおり、前記ビーム走査機構は、網膜共役に配置されている、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、眼科撮像システムの分野に関する。より具体的には、簡素化された走査部品、低減された設計上の制約、および容易化された患者とシステムの位置合わせを有する眼科撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
早期診断は様々な眼疾患の治療を成功させる上で極めて重要である。光学撮像は、網膜の非侵襲的検査に適した方法である。光学撮像は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、緑内障などの視力喪失の主原因を特定するために使用できるが、損傷が発現するまで診断が下されないことが多い。眼科医療の目標は、疾患の前臨床段階で可能性のある病状を特定することである。この目標に対する障害は、眼科用の高度な光学撮像システム(例えば、眼科撮像システム)の複雑性およびコストであり、これらにより、その利用が制限される。
【0003】
眼底撮像システム(例えば、眼底撮像装置)および光干渉断層撮影(OCT:Optical Coherence Tomography)システムなど、様々なタイプの眼科撮像システムがある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5を参照)。眼底撮像装置およびOCTシステムは、角膜、網膜などのヒトの眼の前部および後部領域の生体内撮像を提供することができる。眼底撮像装置は、典型的には、二次元(2D)の表面画像をキャプチャするために使用されるとともに、水晶体とは反対側の眼の内面であり、かつ網膜、視神経乳頭、黄斑、中心窩および後極を含む眼底を撮像するために使用され得る。OCTシステムは、三次元(3D)情報をキャプチャして、そこから2Dおよび/または3Dの深度分解画像を生成することができる。
【0004】
眼底撮像装置とOCTシステムは、その基本的な実施方法は異なるが、いくつかの複雑性を共有している。両方とも、撮像情報(例えば、光)を収集するために複雑な走査部品を必要とすることがあり、両方とも光パワーの量が限られているため、光スループットを最適化することが望ましい。両方とも、様々な光学部品の位置決めに関する重要な要件を有する。例えば、複数の光部品を同じ共役面に配置する必要があり、これにより、追加の共役面を形成するためには追加の光リレーを形成する必要が生じ得る。眼科撮像システムを患者の眼に位置合わせするための位置合わせ機構(例えば、瞳孔の位置合わせ)を提供する必要性、および/または患者の視線を誘導するための固視点を提供する必要性から、さらなる複雑性が生じ得る。これらの困難性により、それらの設計および組み立てが複雑となり、より高コストにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4170398号明細書
【文献】米国特許第4732466号明細書
【文献】国際公開第2012/059236号
【文献】米国特許出願公開第2014/0232987号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0131050号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、複雑性およびコストが低減された眼科撮像システムを提供することである。
本発明の別の目的は、眼科撮像システムのための単純化された汎用的な走査機構を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、撮像光リレーにおける光パワー損失を低減するためのアーキテクチャを提供することである。
システム対患者の位置合わせおよび/または固視点を提供するために必要な部品の数を減少させることは、さらに別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、簡略化された回転走査および/または直線走査、緩和された設計制約、効率的なラインフィールド干渉測定および/またはフルフィールド干渉測定および/またはパーシャルフィールド干渉測定、および簡略化されたシステムと患者の位置合わせを備えた眼科撮像システムにおいて達成される。ガルバノメータスキャナに関連する複雑性およびコストは、Kミラーを走査部品として使用することによって回避され得る。Kミラーの使用により、ダブプリズムなどのプリズムに関連する収差の問題も回避される。これにより、Kミラーを眼科撮像システムのコリメートされていない光路に配置することが可能となる。例えば、Kミラーは、眼から射出される散乱光の中間焦点がKミラー(構造)内に位置するように配置され得る。さらに、本実施形態は、走査部品から瞳孔分割のタスクを取り除くことで、走査部品を任意の好都合な位置に自由に配置することが可能となり、かつ瞳孔共役面(pupil conjugate plane)に制限されなくなる。従って、本願のKミラーは、走査レンズと、眼に最も近いレンズである接眼レンズとの間に配置され得る。走査部品に対するこれらの制限の低減により、設計上の制約が低減されるとともに、製造が容易になる。
【0009】
Kミラーを回転走査に使用することにより、使用可能な走査ラインの長さを調節するためにKミラーを使用することが可能となる。Kミラー構造の3つのミラーのうちの1つを移動させることによって、出力走査ラインは回転の中心から半径方向に沿ってオフセットされる。これにより、環状走査パターンを作成すること、かつ/または走査ラインの長さを2倍にまで延長することができる。
【0010】
代替的に、または付加的に、線形走査を実現するために、Kミラーは往復運動(例えば、上下運動)で移動され得る。この往復運動により、入力走査ビーム(例えば、Kミラーへの走査ライン入力)をKミラー構造の入力側ミラーの異なる位置で反射させること、入力走査ビームをKミラー構造の出力側ミラーの異なる位置から反射させることが行われて、出力走査ビームの出力位置がオフセットされる。このようにして、出力走査ビームは、少なくとも1つの並進次元に沿って、サンプルを横切って走査するように形成され得る。また、本願のKミラーは、二次元の並進走査を生成するために、第2のKミラー、ガルバノメータスキャナなどの第2の走査部品と組み合わせることができる。例えば、第1の並進方向に沿った走査を行う第1の走査部品から出力された走査ビームは、第2の並進方向に沿った走査を行うKミラーに入射され得る。
【0011】
さらに、Kミラー構造の1つまたは複数のミラーは、片面が反射性を有しており、かつ反対面が透明性を有しているように作成され得る。反射面は、Kミラー構造の内部に面するように選択され得る。これは、例えば、ガラスシートに反射性を有しており、かつほぼ透明な材料(例えば、アルミニウムなどの誘電体コーティング)の薄層を塗布することによって、またはその薄層をガラスシートの中に埋め込むことによって実現することができる。このようにして、Kミラー構造用に(透明側からの)第2の入力ポータルが形成される。固視パターンは、この第2の入力ポータルを介してKミラーに入射され得る。付加的に、固視パターンを生成する機構をKミラーに固定して、両方が連動して移動するようにすることで、互いの相対位置が一定に保たれる。このようにして、走査プロセス中に患者によって知覚される固視パターンの位置は、一定に維持され得る。
【0012】
効率的な干渉測定(例えば、ラインフィールド干渉測定および/またはフライングスポット/点走査および/またはフルフィールド干渉測定および/またはパーシャルフィールド干渉測定)は、新規なビームスプリッタ(またはビーム分割器)構成を使用することによって提供され得る。ここで、ビームスプリッタは、入射光ビームのビームフットプリント(または焦点領域、または光フットプリント、または波面)とほぼ同じ大きさ(および好ましくはそれ以上の大きさ)の領域に及ぶ。このようにして、入射光ビームは、参照アームに沿った参照ビームと、サンプルアームに沿ったサンプルビームとに分割される。例えば、撮像システムがライン走査を使用している場合、ビームスプリッタは、好ましくは、走査ラインがビームスプリッタを通過するときに走査ラインを囲むのに十分な最小サイズのスリット(または線形)形状を有する。代替的に、撮像システムがフルフィールド撮像装置(または点スキャナ)を使用する場合、ビームスプリッタは、好ましくは、照明光がビームスプリッタを通過するときに照明光の焦点を囲むのに十分な最小サイズのディスク(またはドット)形状を有する。ビームスプリッタのサイズは、サンプルから戻って、ビームスプリッタ(例えば、その共役面)を通過する集光(例えば、散乱)光の量を、ビームスプリッタ(またはその共役面内のビームスプリッタの相対位置)を通過することなく最大にするように最小化される。換言すれば、ビームスプリッタは、撮像されるサンプルから戻る散乱光に対して、実用上可能な限り小さな障害物となるように設計され得る。別の言い方をすれば、サンプルアームから戻る(例えば、コリメートされた)光の波面は、ビームスプリッタの領域を超えて延在しており、かつ、好ましくは、ビームスプリッタを囲んでいる(またはビームスプリッタの1つまたは複数の半球状の側面に及んでいる)領域に及ぶ。理解されると思われるが、ビームスプリッタを通過するサンプルアームからの戻り光は、ビームスプリッタによって減衰されるが、サンプルアームからの戻り光の大部分はビームスプリッタによって減衰されずにビームスプリッタを通過するため(例えば、ビームスプリッタの面積は、サンプルアームからの戻り光の波面の面積(例えば、システム集光瞳(collection pupil)のサイズ)の5%未満であり得る)、戻りサンプル信号強度の大部分が保持される。
【0013】
さらに、ビームスプリッタは、必要に応じて、撮像システムの瞳孔分割機能を提供するように配置されることにより、このタスクから走査部品を解放するようにしてもよい。理解されると思われるが、1つまたは複数の移動型の走査部品分を瞳孔共役に配置すること、および瞳孔分割のための撮像領域(またはウィンドウ)と集光領域(またはウィンドウ)を形成することを行うよりも、小型で静的なビームスプリッタを瞳孔共役面に配置すること、および瞳孔分割のための照明および集光領域を形成することを行う方が容易である。
【0014】
機械的な集光瞳を形成するために物理的な集光アパーチャ(例えば、システム瞳ストップ)を患者の眼の瞳孔共役面に配置することによって、効率的な干渉測定がさらに提供され得る。任意選択的に、物理的な集光アパーチャは、モジュラー構成を有するように作製され得る。集光アパーチャは、軸上構成から軸外構成に、またはその逆に選択的に変更することができる。即ち、機械的集光瞳は、集光光(ビームスプリッタから集光器またはカメラに向かって戻る)を、軸上構成のものから軸外構成のものに変換することができる。軸上構成により、利用可能な最大量の光が集光器に到達することが可能であるが、そのような光によって提供される深度情報は、複素共役像の出現によって低減され得る。軸外構成は、集光器に到達する利用可能な光の量が低減されるが、複素共役像の生成が回避されるため、より高い深度分解能(例えば、フルレンジAスキャンまたはBスキャン)が実現される。即ち、軸外構成から集光された光に2D高速フーリエ変換(FFT)を適用することにより、(例えば、患者の瞳孔共役に対応する)集光アパーチャにおける散乱光の空間周波数分布が提供される。この空間周波数分布では、真の信号成分がそれらの複素共役成分から分離されるため、処理のための真の信号情報(複素共役成分を含まない)の選択が可能となる。
【0015】
当業者には理解されると思われるが、第1のタイプのスペクトル分析(例えば、1D FFT)は、走査ビームの深度情報を復元するために集光サンプル光(例えば、干渉光)に典型的に適用される。しかしながら、上記したように、集光サンプル光に第2のタイプのスペクトル分析(例えば、2D FFT)を適用することによって、サンプルアームから戻る集光光(例えば、瞳孔共役面上の集光アパーチャにおける)の空間特性を復元することができる。上記で説明したように、この情報は、複素共役成分を含まないスペクトル情報を選択するために使用され得るが、この情報は、撮像システムを患者に位置合わせするためにさらに使用され得る。即ち、これらの空間特性は、眼科撮像装置(例えば、装置の集光アパーチャ)に対する患者の眼(例えば、患者の瞳孔)の位置に相関され得る。このスペクトル分析は、眼科撮像装置に対する眼の並進位置および軸方向位置の両方を決定するために使用され得ることが見出された。このようにして、眼科撮像装置の走査機構は、瞳孔カメラおよびその関連するハードウェア/ソフトウェアなどの追加の慣用的な位置合わせ装置を必要とすることなく、患者の眼科撮像装置に対する適切な位置合わせを少なくとも部分的に決定することができる。このようにして、本システムは、スペクトル分析に少なくとも部分的に基づいて、自動瞳孔位置合わせを提供することができる。
【0016】
他の目的および達成は、本発明のより完全な理解と共に、添付の図面と関連して以下の説明および特許請求の範囲を参照することによって明らかになるとともに、理解されるであろう。
【0017】
本発明の理解を容易にするために、本明細書においてくつかの刊行物を引用または参照することができる。本明細書で引用または参照される全ての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書で開示される実施形態は単なる例示であり、本開示の範囲はそれらに限定されるものではない。1つの請求項に記載のカテゴリ(例えば、システム)に記載されている任意の実施形態の特徴は、他の請求項に記載のカテゴリ(例えば、方法)においても請求することができる。添付の特許請求の範囲に記載されている従属関係または後方参照は、形式的な理由からのみ選択される。しかしながら、先行する請求項への意図的な参照から生じる主題も請求することができるため、添付の特許請求の範囲で選択された従属性に関係なく、請求項の任意の組み合わせおよびその特徴が開示されるとともに、請求することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面において、同様の参照符号/文字が同様の構成要素を参照する。
【
図1】ファイバカプラを使用するOCTシステムとは対照的に、一般化された自由空間の点走査OCTシステムを示す図である。
【
図2】複数の反射面からなるKミラーモジュールの側面図を示す図であり、本明細書では、3つのミラー面M1、M2、およびM3として実施されている。
【
図3】回転するKミラーモジュールの斜視図を示す図である。
【
図4】反射面を備えた三角プリズムを含む代替のKミラーモジュールを示す図である。
【
図5】走査レンズと接眼レンズとの間のコリメートされていない経路に配置された本願のKミラーを示す図である。
【
図6】Kミラーの3つのミラーの1つをオフセットすることによって、眼科撮像システムにおいて軸外スキャンを作成する方法を示す図である。
【
図7】
図6のミラーM3の適切なオフセット調整およびKミラーK1の回転速度によって作成され得る2つの例示的な固視標パターンT1およびT2を示す図である。
【
図8】2つの入力光ビームB1およびB2を備えたKミラーモジュールの実施形態を示す図である。
【
図9】ミラーM3が第1のビームB1に対して反射性を有しており、第2のビームB2(例えば、可視光)に対して透過性を有している代替の実施形態を示す図である。
【
図10】ミラーM1がKミラーの内部に面する第1の表面上で第1のビームB1に対して反射性を有すること、第1の表面の裏側にある(例えば、Kミラーの外側に面している)第2の表面上で第2のビームB2に対して透過性を有することの第3の代替の実施形態を示す図である。
【
図11】固視発生器(第2の光源)の2つの例示的な構成を示す図である。
【
図12】固視発生器(第2の光源)の2つの例示的な構成を示す図である。
【
図13】横方向の走査を実現するために一次元に沿って(矢印A5に沿って)並進されるKミラーモジュールK3を示す図である。
【
図14A】横方向ライン走査のために矢印A6に沿って直線的に並進されるKミラーK3を使用したより詳細なゼマックス(Zemax(登録商標))シミュレーションを示す図である。
【
図14B】横方向ライン走査のために矢印A6に沿って直線的に並進されるKミラーK3を使用したより詳細なゼマックス(Zemax)シミュレーションを示す図である。
【
図15】瞳孔共役に配置された第1の部分と、網膜共役に配置された第2の部分とを有する、2つの部分からなる走査機構を示す図である。
【
図16A】誘導アクチュエータを使用する第1のKミラー並進機構を示す図である。
【
図16B】誘導アクチュエータを使用する第1のKミラー並進機構を示す図である。
【
図17】偏心を備えたモータ(例えば、偏心ホイール/ディスク)を使用してKミラーを移動させることによって平行屈曲部を所与のオフセットΔxだけ変形させる代替の並進機構を示す図である。
【
図18】ラインフィールド眼科撮像システムで使用され得る3つのビームスプリッタ(SB)構成を示す図である。
【
図19】ラインフィールドSDOCTシステムにおけるスリット-BS軸上構成の簡略化された概略図である。
【
図20】ラインフィールドの用途に適した光フットプリントBSの第1の構造を示す図である。
【
図21】照明光が点または小さな2D領域に合焦されるフルフィールド(full-field)またはパーシャルフィールド(partial-field)の用途での使用に適した光フットプリントBSの第2の構造を示す図である。
【
図22】透明基板上の小面積コーティングを含む代わりに、本願のビームスプリッタの代替構成を示す図であり、ビームスプリッタが、全反射基板上のコーティングとして構築されており、照明光LtBは、ビームスプリッタを通過してサンプルアームに沿ってサンプルビームSBを形成しており、参照ビームRBは、ビームスプリッタで反射して参照アームに達する。
【
図23】本願の光フットプリント-BS軸上法を使用して取得され得るスペクトル71と、スペクトル71に1D FFTを適用することによって構築され得る結果として生じる代表的な網膜画像73とを示す図である。
【
図24】
図23と同じスペクトル71を示しているが、集光瞳を用いて、2D FFTを適用することによって構築された空間周波数分析画像75を示す図である。
【
図25】従来の軸上構成、軸外構成、および光フットプリント-BS軸上構成でキャプチャされたスペクトルの2D FFT分析を示す図である。
【
図26】光フットプリント-BSの軸上と軸外の両方の構成/モードで撮影された3つのサンプルOCT画像を示す図である。
【
図27】例示的なビーム分割態様と、フルフィールド干渉測定またはパーシャルフィールド干渉測定のための照明瞳/検出瞳を示す図である。
【
図28】
図27の3つの態様の各々について、2D空間周波数領域における例示的な検出信号(2D FFTを適用することによって得られるものなど)を示す図である。
【
図29】LF-SDOCTシステムにおける瞳孔の位置合わせのための空間周波数分析を示す図である。
【
図30】OCTシステムにおける瞳孔の位置合わせを決定するための例示的なワークフローを示す図である。
【
図31】LF-SDOCTにおける瞳孔の位置合わせのための空間周波数分析の経験的データを示す図である。
【
図32】LF-SDOCTにおける瞳孔の位置合わせのための空間周波数分析の経験的データを示す図である。
【
図33】LF-SDOCTにおける瞳孔の位置合わせのための空間周波数分析の経験的データを示す図である。
【
図34】LF-SDOCTにおける瞳孔の位置合わせのための空間周波数分析の経験的データを示す図である。
【
図35】様々な瞳孔の位置合わせ態様と、容積測定スキャン(volumetric scan)(例えば、容積スキャン(volume scan)、キューブスキャン、Cスキャン)に適用される対応する2D FFT分析を示す図である。
【
図36】様々な瞳孔の位置合わせ態様と、容積測定スキャン(例えば、容積スキャン、キューブスキャン、Cスキャン)に適用される対応する2D FFT分析を示す図である。
【
図37】様々な瞳孔の位置合わせ態様と、容積測定スキャン(例えば、容積スキャン、キューブスキャン、Cスキャン)に適用される対応する2D FFT分析を示す図である。
【
図38】様々な瞳孔の位置合わせ態様と、容積測定スキャン(例えば、容積スキャン、キューブスキャン、Cスキャン)に適用される対応する2D FFT分析を示す図である。
【
図39】様々な瞳孔の位置合わせ態様と、容積測定スキャン(例えば、容積スキャン、キューブスキャン、Cスキャン)に適用される対応する2D FFT分析を示す図である。
【
図40】容積測定OCTデータに適用され得る、本発明の例示的なワークフローを示す図である。
【
図41A】Y方向の位置合わせ不良(misalignment)を決定するための2D FFT分析の使用を示す実験データを示す図である。
【
図41B】Y方向の位置合わせ不良を決定するための2D FFT分析の使用を示す実験データを示す図である。
【
図42A】LF-SDOCTにおける2D FFT分析を使用したZ位置合わせ不良の検出に関連する実験データを示す図である。
【
図42B】LF-SDOCTにおける2D FFT分析を使用したZ位置合わせ不良の検出に関連する実験データを示す図である。
【
図42C】LF-SDOCTにおける2D FFT分析を使用したZ位置合わせ不良の検出に関連する実験データを示す図である。
【
図43A】撮像システムと完全にXYZ位置合わせされた試験眼のキューブスキャンからの3個の選択されたBスキャンのOCT画像(および対応する2D FFTデータ)を示す図である。
【
図43B】撮像システムに対してX方向に位置合わせ不良がある試験眼のキューブスキャンからの3個のBスキャンの3個の選択されたOCT画像(および対応する2D FFTデータ)を示す図である。
【
図44】空間周波数成分から瞳孔の位置合わせを決定するために実行され得る例示的な処理ステップを示す図である。
【
図45】スクリーン/電子ディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介するなどして、ユーザに位置合わせ情報を提示するための複数の実施形態を示す図である。
【
図46】スクリーン/電子ディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介するなどして、ユーザに位置合わせ情報を提示するための複数の実施形態を示す図である。
【
図47】スクリーン/電子ディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介するなどして、ユーザに位置合わせ情報を提示するための複数の実施形態を示す図である。
【
図48】フルフィールド(FF)TDOCTシステムに適用される本発明の別の例を示す図である。
【
図49】位置合わせおよび取得のフィードバックのために空間周波数分析を使用する例示的なワークフローを示す図である。
【
図50】眼底を撮像するためのスリット走査式眼科システムの例を示す図である。
【
図51】本発明のいくつかの実施形態での使用に適した眼の3D画像データを収集するために使用される一般化された周波数領域光干渉断層撮影システムを示す図である。
【
図52】en face血管系画像の一例を示す図である。
【
図53】例示的なコンピュータシステム(またはコンピューティングデバイスまたはコンピュータ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下でより詳細に説明するように、眼底撮像装置は眼底の高分解能グレースケール画像またはカラー画像を提供することができ、一方、光干渉断層撮影(OCT)および光干渉断層撮影血管造影(OCTA)は、網膜血管系の非侵襲的な、深度分解(例えば、Aスキャン)された、容積測定の(例えば、Cスキャン)、および二次元(例えば、en face(前頭面)またはBスキャン(横断面))の視覚化を可能にし得る。一般に、OCTは組織の構造画像(例えば、血管構造)を提供するのに対して、OCTAは血管系の機能画像(例えば、血流)を提供する。例えば、OCTAは、血流のモーションを固有コントラストとして使用することにより、血管の流れを画像化し得る。説明を分かり易くするために、本改良に関連する、そのような装置の簡単な概要を示す。様々なタイプの眼科撮像システムの詳細については、以下の「眼底撮像システム」の項目および「光干渉断層撮影(OCT)撮像システム」の項目で説明する。1つまたは複数の本発明の態様は、そのような眼科撮像システムのいずれか、または全てに適用することができる。例えば、様々な実施形態が、OCTシステムに適用されるものとして本明細書に記載されているが、特に明記されない限り、改善は、OCTAシステムおよび/または眼底撮像装置内で実施され得ることを理解されたい。
【0021】
図1は、光ファイバおよびファイバカプラ(複数可)を使用する
図42のOCTシステムとは対照的に、一般化された自由空間の点走査OCTシステム11を示す。本例では、OCTシステムは、任意選択的な成形アパーチャ15およびコリメートレンズ17を介して光ビームLtB(例えば、空間的にコヒーレントな点照明ビーム)をビームスプリッタ19に放出する、短い時間コヒーレンス長(単数または複数)を有する広帯域光源または掃引レーザー光源などの光源13を含む。当技術分野で知られているように、ビームスプリッタは、光のビームを2つに分離/分割する光学デバイスである。本例では、照明(光)ビームLtBの第1の部分は、参照アーム(参照光路)上の参照ビームRBに分離され(例えば、透過され)、光ビームLtBの第2の部分は、サンプルアーム(サンプル光路)上のサンプルビームSBに分離される(例えば、反射されるか、または折り曲げられる)。参照アームは、調整可能な光学遅延を有する再帰リフレクタ21を含み得る。一般に、光ビームは、ビームスプリッタを通過するたびに減衰される(例えば、パワーを喪失する)ことに留意されたい。例えば、光ビームは、ビームスプリッタ19を通過する(透過する)たびに50%減衰され得る。
【0022】
サンプルアームは、本例では、2つのガルバノメータ25および27(例えば、サーボ制御された回転(または振動)ミラー)を含む走査部品23を含み得る。第1のガルバノメータ(ガルボ)25は、サンプルビームSBの垂直走査(例えば、V走査)を提供し得(例えば、撮像されるサンプル上のサンプル点の列を規定し得るY軸方向の走査を提供する)、第2のガルボ27は、サンプルビームの水平走査(例えば、H走査)を提供し得る(例えば、サンプル上のサンプル点の行を形成し得るX軸方向の走査を提供する)。例えば、H走査ガルボ27は、ミラーを回転させて、サンプルビームを水平方向に個別のステップで(または連続的で定義可能なステップで)走査して、サンプル点の行を形成することができる。サンプル点の行が完了すると、V-走査ガルボ25は、新たな行を走査する準備として、ミラーを垂直方向に回転させて、サンプルビームを新たな垂直オフセット位置に移動させる。走査部品23と眼29との間の光路は、典型的には、走査レンズ31および接眼レンズ(または眼科用レンズ)33を含む。接眼レンズは、一般に、眼に最も近いレンズであり、かつサンプルビームSBを眼29の網膜35上に合焦させる。集光されるべき散乱光(例えば、集光ビームCB)は、その瞳孔を通過して眼29から射出されて、レンズ33とレンズ31との間に中間焦点Intr-FPを形成した後、走査部品23を通過してビームスプリッタ19に到達する。眼29からの集光ビームCBの戻り経路は、眼に対するサンプルビームSBの戻り経路と同様であるので、ガルボ27および25は、戻り光CBを「デスキャン」(または非走査)する効果があるため、ビームスプリッタ19に到達するまでに、集光ビームCBは、比較的静止した、または安定したビーム(非走査)である。
【0023】
ビームスプリッタ19で、サンプルアーム(例えば、集光ビームCB)および参照アーム(例えば、参照ビームRB)からの戻り光は、再結合され、合焦レンズ37およびアパーチャ39(焦点外の光を遮断し得る)を通して集光器41(例えば、時間ドメイン(例えば、フーリエドメイン)OCTの場合には光検出器/光センサ42、またはスペクトルドメイン(SD)OCTの場合には格子40と光センサ42からなる分光器))上に向けられる。この構成は、集光器41によってキャプチャされる干渉パターンを生成するために光ビームを重ね合わせる干渉計を構成しており、この干渉パターンを使用して、干渉ビームによって通過した経路の差を計算することができることが理解されよう。
【0024】
各走査点は、Aスキャンを構成するとともに、集光器41によって個別にキャプチャされる(または検出される)。走査部品23からのサンプルビームSBがサンプル全体にわたってラスタパターンで走査されると、一連のAスキャンが収集されて、網膜35の合成BスキャンまたはCスキャンが構築される。集光器41によって検出された各Aスキャンは、コンピュータまたはCPU43によって処理されて、Bスキャン、Cスキャン、および/またはen face画像を形成することができる。本例では、en face画像45が構築される。得られた画像(Aスキャン、Bスキャン、Cスキャン、および/またはen face画像)は、ビデオディスプレイ47上に表示され得るか、またはさらなる処理のために保存され得る。
【0025】
本システムがラインスキャナである場合、光源13は、点ビームの代わりにラインビームを形成する細長い光ビームを生成することとなる。ラインビームが第1の次元で所望の走査領域に及ぶ場合、その領域は、ラインビームを第2の次元(例えば、第1の次元に垂直な次元)で走査することによって撮像され得る。この場合、ガルボ25および27のいずれか1つのみが必要となる。
【0026】
フリーエアOCTシステムにおいてビームスプリッタ19を使用する際の困難性は、光がビームスプリッタ19を通過するたびに、そのパワーが減衰されることである。眼29をサンプリングする前および/または集光器41に到達する前に、ビームスプリッタ19で失われる光パワーの量を低減させることは利点となる得ることが理解されよう。別の困難性は、「瞳孔分割(pupil splitting)」の使用によってもたらされる複雑性であり、瞳孔分割は、眼に入射するサンプルビームSBと、集光器41によってキャプチャされるような、眼から射出される散乱光CBとの間の光干渉の量を低減するための技術である。
【0027】
眼底を走査する場合、一般に、角膜からの反射および眼の水晶体からの光散乱(例えば、白内障によるものなど)と同様に、外来光の集光(例えば、キャプチャまたは撮像)を回避することが望ましい。瞳孔分割は、瞳孔の最適に選択された複数の領域において、眼に入射する走査ビームと眼から射出される戻り(散乱)光とに対して異なる経路を提供することにより、角膜からの反射と眼の水晶体からの散乱光を遮断する。例えば、これらの領域は、瞳孔クリッピング(例えば、光ビームの一部が中心が瞳孔を形成する虹彩によって遮断されること)、白内障(例えば、眼の水晶体の曇った領域)からの光散乱、および(例えば、走査ビームが眼に入射するときに角膜に衝突することによって生じるような)光の鏡面反射(例えば、反射)を回避するように選択され得る。要するに、瞳孔分割は、(例えば、眼底の特定の位置を走査するために)照明光ビームSBが眼に入射する瞳孔サンプル領域(またはウィンドウ)と、眼から射出される散乱光CBのどの部分が集光器41によってキャプチャされるかを決定する瞳孔集光領域(またはウィンドウ)とに眼の瞳孔を分割するものである。
【0028】
典型的には、走査部品23は、瞳孔分割を提供する。瞳孔サンプル領域および瞳孔集光領域は瞳孔において結像されるため、走査部品23は、瞳孔共役面(またはその近傍)にあることが必要である。しかしながら、この場合、これは、ガルボ25および27の両方が瞳孔共役面にある必要があることを意味する。従って、両方を瞳孔共役面に近づけるために、両方を非常に接近させる必要があるが、これにより、構造および部品の選択が複雑になる。あるいは、各ガルボが別々の個々の瞳孔共役面にあるように、追加の光リレーが構築される必要がある場合があるが、これも、構築が複雑になり、かつ部品のコストが増加する。走査部品の位置決めの要件が緩和されれば、利点となり得る。
【0029】
これらの問題に対する様々な解決策を以下に示す。各解決策は個別に説明される。
走査部品
第1の解決策は、走査部品を簡略化する方法に対処している。上記のOCTは点走査方式であるが、他のより効率的な走査方式は、並進走査方式および回転ライン走査方式を含む。回転ライン走査方式を構築するための1つの手法は、プリズム、例えば、ダブプリズムを使用することである。回転するダブプリズムに基づく走査方式は、プリズムを回転させることによって、ライン撮像機構をディスク撮像機構に変えることができる。回転スキャンを提供するために使用されるダブプリズムの例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、セドリック・ブラッタ(Cedric Blatter)他による「ダブプリズムを用いた回転デュアルビーム双方向ドップラーOCT(Dove Prism Based Rotating Dual Beam Bidirectional Doppler OCT)」(2013 OSA、2013年7月1日、第4巻、第7号、Biomedical Optics Express、1188)に提供されている。この手法では、ダブプリズムはサンプル経路内の一対のガルボミラーの前に配置される。これにより、ダブプリズムがコリメートされた光路内にあることが保証されるが、これは、プリズムの制限を強調することとなる。プリズムは、通常、コリメートされた光路に制限される。即ち、プリズムを使用する像回転光学系は、プリズムがコリメートされていない光路に配置された場合に導入されるかなりの量の収差のために、コリメートされた光路にしか配置できない。
【0030】
眼科撮像への応用(例えば、眼底撮像装置またはOCT/OCTAシステム)では、中間焦点(
図1の中間焦点Intr-FPなど)を有すること、および眼の屈折異常に対応するために光軸に沿って接眼レンズ(例えば、レンズ33)を調整することが望ましいことがある。この場合、中間焦点に近い空間は、走査部品(例えば、像回転光学系)を配置するのに便利な場所となり得る。しかしながら、これは一般にコリメートされた光路ではないため、プリズムを使用することはできない。従って、眼科撮像では、収差のない回転光学デバイスが望まれる。
【0031】
本明細書では、ダブプリズムのコリメートされた経路の制限を克服するKミラー(3つのミラー構造)を走査部品として使用することが提案されている。Kミラー構造は、ある角度で接合された2つのリフレクタが反対側の第3のリフレクタと対向する文字「K」に似た構造である。Kミラーは、3回の反射を利用してビームを反転させる特性を有しており、以下で説明するように、回転走査および横方向の走査に適している。
【0032】
図2は、複数の反射面からなるKミラーモジュールK1の側面図を示しており、本明細書では、KミラーモジュールK1は、3つのミラー面M1、M2、およびM3として実施されている。光線L1、L2、およびL3は、KミラーモジュールK1に入射および射出されることが示されている。説明を容易にするために、図示された光線L1、L2およびL3の方向に従って、反射面M1が入力ミラー(または反射面)と称されており、M2が中間ミラーと称されており、かつM3が出力ミラーと称されている。実施形態では、光線L1、L2、L3は、Kミラーに入射すると、傾斜した入力ミラーM1によって非傾斜(平坦な)中間ミラーM2に向かって反射され、次に、中間ミラーM2から逆傾斜した出力ミラーM3に向かって反射されて、入射光線と同じ方向に(例えば、同じ光軸に沿って)KミラーモジュールK1から射出される。
【0033】
図3は、回転するKミラーモジュールK1の斜視図を示す。ミラーM1において矢印A1で示されるように、Kミラーモジュール全体がその光軸を中心に角度θだけ回転されると、入力画像は、ミラーM3において矢印A2で示されるように、Kミラーモジュールからの出力において角度2θだけ回転されることになる。例えば、M1でKミラーモジュールに入射する、角度θに沿って配向された入力走査ラインは、第2の角度2θに沿って配向された状態でKミラーモジュールから射出されることになる。その結果、ミラーM1における入力走査ラインが1回回転するごとに、ミラーM3における出力走査ラインは2回回転することになる。戻り経路(例えば、ミラーM3においてKミラーに入射して、ミラーM1において存在する光ビーム)に関して、光ビームは、M3からM2からM1に反射され、かつ元の向きに回転して戻される(例えば、デスキャンされる)ことになる。
【0034】
図4は、代替のKミラーモジュールK2を示す。この構成では、KミラーモジュールK1の入力ミラーM1およびM3が、三角プリズム構造P1であって、外面M1’およびM3’が、光がプリズムP1を通過して収差が発生しないように反射型になっている三角プリズム構造P1に置き換えられている。この実施形態では、KミラーモジュールK1のミラーM1およびM3が、単一のプリズムP1上の2つの反射表面M1’およびM3’に置き換えられており、これにより、その製造が簡素化される。反射面M1’およびM3’は、三角プリズムP1の上面に反射コーティングを塗布することによって構成することができる。
【0035】
本願のKミラーを用いた走査/回転部品は、ダブプリズムに特徴的な収差による支障が生じることがなく、従って、コリメートされた光路またはコリメートされていない光路に配置され得る。例えば、
図5に示すように、眼科撮像への応用(例えば、眼底撮像装置またはOCT/OCTAシステム)において、本願のKミラーK1は、走査レンズ31と接眼レンズ33との間のコリメートされていない経路に配置され得る。より具体的には、本願のKミラーを用いた走査部品は、中間焦点(例えば、
図1からのIntr-FP)がKミラーK1内(例えば、ミラーM1、M2、およびM3間の光路に沿った空き空間内またはミラー表面上)に位置するように配置され得る。虹彩の走査視野(FOV)を定義する正面平面
図F1に示されているように、KミラーK1を回転させることによって、単一の静的ラインビームA3から回転スキャンA4を作成することができる。
【0036】
本願の回転装置はさらに、走査ビームを変化させる機構を備える。例えば、
図6に示すように、KミラーK1の3つのミラーのうちの1つ(例えば、出力ミラーまたは射出光学要素M3)をオフセットすることによって、眼科撮像システムにおいて軸外スキャン(off-axis scan)を作成することができる。即ち、出力ミラーM3を(例えば、半径方向に)オフセットすることにより、出力画像の位置の(例えば、半径方向の)変位が生じる。このようにして、走査されたFOV F1’の直径は、元の(例えば、入力)走査ラインA3の長さの2倍まで拡張することができる。この場合、走査の有効FOVは2倍になる。ミラーM3がさらにオフセットされると、環状(例えば、ドーナツ状)の走査パターンを作成することができる。
【0037】
任意選択的に、Kミラーを用いた走査部品が、患者に固視標を提供するために使用されてもよい。例えば、可視光利用の場合、撮像走査を作動させる前に、可視光ラインビームをKミラーK1に入力して、患者の固視標を作成することができる。
図7は、ミラーM3の適切なオフセット調整およびKミラーK1の回転速度によって作成され得る2つの例示的な固視標パターンT1およびT2を示す。このためには、Kミラーの回転速度をヒトの眼の感覚に応じて制御する必要があり得る。
【0038】
第2の例として、視野計の固視標を提供するためにKミラーを使用することができる。この場合、患者には、様々な強度および/または大きさの一連の固視点が視野内の所定の位置に提示され、かつ固視点の出現または不存在を識別するように求められる。
【0039】
代替的に、Kミラーは、複数の光ビーム出力を提供するために複数の入力を備えてもよく、そのうちの1つは、固視標を形成し得る。
図8は、2つの入力光ビームB1およびB2を備えたKミラーモジュールの実施形態を示す。この場合、ミラーM1およびM2は、光ビームB1に対して反射性を有しており、かつ光ビームB2に対して透過性(例えば、透明性)を有している。このようにして、ミラーM1は、Kミラーへの2つの別個の入力経路を規定する。例えば、ミラーM1およびM2はダイクロイック表面を有しており、かつ所定の周波数の光に対して透過性を有している。例示的な動作では、ビームB1は、Kミラーによって回転または他の方法でシフトされ得るが、ビームB2は、Kミラーをそのまま通過し得る。本例では、光ビームB1およびB2が可視であってもよく(例えば、それぞれが個々の固視標を選択的に規定する)、または一方が走査ビームであり、他方が固視標を規定し得る。
【0040】
図9は、ミラーM3が第1のビームB1に対して反射性を有しており、かつ第2のビームB2(例えば、可視光)に対して透過性を有している代替の実施形態を示す。このようにして、ミラーM3は、Kミラーへの第2の入力経路を規定する。本例では、第4のミラーM4は、固視発生器FG(例えば、第2の光源)からのビームB2を折り返して、ミラーM3を通過して出力して、患者に対する固視パターンを形成する。
【0041】
図10は、ミラーM1がKミラーの内部に面する第1の表面上で反射性を有する(例えば、B1に対して反射性を有する)ため、
図2~
図7を参照して上記のように機能すること、かつ第1の表面の裏側にある第2の表面上で光ビームB2に対して透過性を有することの第3の代替の実施形態を示す。この第2の表面は、Kミラーモジュールへの第2の入力を構成すること、および固視入力を提供することのために使用され得る。例えば、固視光源FGは、ミラーM1の第2の入力面を介して固視ビームB2(例えば、ラインビーム)をKミラーに入力すること、およびミラーM2およびM3で反射して、患者に対する出力固視パターン(例えば、
図7に示すような回転パターン)を生成することを行うことができる。この固視パターンは、撮像走査(例えば、ビームB1)の適用と同時に提供され得る。
【0042】
上記の全ての実施形態において、固視光源FGは、任意選択的に、固視光源FGおよびKミラーが連動して移動/回転するように、Kミラーに機械的に固定され得る。このようにして、固視パターンは、撮像走査の適用中に、患者に対して比較的静的に出現し得る。
【0043】
図11および
図12は、固視発生器(第2の光源)の2つの例示的な構成を示す。
図11において、固視発生器FGは、発光ダイオード(LED)の線形ストリップ(例示的に、7個のダイオードD1~D7を含むように示されている)を含み、それらの任意の組み合わせが選択的にオンされ得る。図示の例では、ダイオードD1、D3、D5、およびD7がオンされている。このパターンが回転のためにKミラーに送られると、結果的に得られる固視パターンは一連の同心円C1になる。代替的に、
図12に示されているように、固視発生器FGは、円形に配置された複数のダイオードを含み得る。この構成では、走査ラインビームは、円形配置のダイオードの中心内で伝送され得る。この場合、円形パターンを作成するために固視ビームを回転させる必要はない。さらに代替的に、固視発生器は、図示しないダイオードの二次元アレイを含み、それによって複数の異なるパターンを形成することができる。この構成は、ダイオードの複数のストリップ(
図11に示すような)を互いに隣接して配置することによって構成することができる。
【0044】
本願のKミラー構成は、回転走査を設ける代わりに、またはそれに加えて、直線的な走査(または横方向走査)を提供するようにさらに拡張され得る。例えば、撮像システムは、Kミラーを選択的に回転および/または並進させて、回転および/または並進の走査動作を切り替えるようにすることができる。
【0045】
Kミラーによる横方向ライン走査
網膜撮像では、ライン走査は、一般的に、瞳孔共役の近くに配置されたガルボミラーを使用して行われる。瞳孔共役の近くの空間が制限されているか、またはアクセスできない場合、網膜共役の近くで走査機構が実施されることが好ましい。これにより、別の瞳孔共役を作成するための追加の光リレーの必要性を回避することができる。
【0046】
回転ビームを生成するためのプリズムの使用は、ドナルド・エル・サリバン(Donald L. Sullivan)による「回転プリズムの位置合わせ(Alignment of Rotational Prisms)」(アプライド・オプティクス(Applied Optics)、第11巻、第9号、1972年9月)、およびリウ(Liu)他による「ポロプリズムのフィールド回転および偏光特性(Field Rotation and Polarization Properties of the Porro Prism)」(ジャーナル・オブ・ザ・オプティカル・ソサエティ・オブ・アメリカ・エー(J.Opt.Soc.Am.A)、第26巻、第5号、2009年5月)に記載されている。しかしながら、走査機構としての機能は十分に検討されていない。米国特許第7,463,394号明細書は、走査目的でのルーフプリズムの使用について説明しているが、2つの互いに垂直な反射面を有するプリズムに限定されている。さらに重要なことは、上記したように、プリズムを通過する光がコリメートされていない場合、プリズムは望ましくない収差を生成する可能性があるということである。従って、プリズムは、眼科撮像システムのビームが(コリメートされていない状態で)合焦される網膜共役またはその近傍に配置される走査部品としては適していない。ミラーを使用した点回転走査の例は、スティールマン(Steelman)による「角度分解低コヒーレンス干渉測定のための走査方式」(オプティクス・レターズ(Opt Lett.)、2017年11月15日、42(22)、4581-4584)に記載されている。しかしながら、サリバンが説明しているように、回転走査機構の位置合わせは困難である。横方向(または並進または一次元)の走査機構は、これらの課題のいくつかを回避すること、および位置合わせがより容易になることがあり得る。従って、横方向の走査機構のオプションが利用可能であれば、いくつかの用途において好ましい場合がある。本明細書では、簡略化された横方向の走査機構を実現するためにKミラーを使用する走査機構が提示されている。
【0047】
図13は、横方向の走査を実現するために一次元に沿って(矢印A5に沿って)並進されるKミラーモジュールK3を示す。本実施形態では、KミラーK3は、走査レンズ31と接眼レンズ33との間の網膜共役に、またはその近傍に配置される。説明のために、光源13は、走査レンズ31(または任意選択に対物レンズ)を通過する照明ラインビームLBであって、走査部品(例えば、KミラーK3)を介して、変位した走査ビームSB1およびSB2によって示されるように、眼29の網膜を走査するように接眼レンズ33を通過する照明ラインビームLBを提供するように示されている。説明のために、ミラーM1、M2、およびM3が第1の位置に示されており、ミラーM1b、M2b、およびM3bが矢印A5に沿って直線的に変位した第2の位置に示されている。KミラーK3がミラーM1、M2、およびM3によって示される第1の位置にあるとき、ラインビームLBはミラーM1からミラーM2に反射した後、ミラーM3に戻って、射出走査ビームSB1を形成する。同様に、KミラーがミラーM1b、M2b、およびM3bによって示される第2の位置にあるとき、ラインビームLBは、ミラーM1b上の第2のオフセット位置からミラーM2bで反射した後、ミラーM3bに戻って、射出走査ビームSB2を形成する。KミラーK3に往復運動を適用することにより、ラインビームSBは、眼29の網膜上で一次元に沿って走査されて、一次元の横方向の走査を実現することができる。この横方向の走査機構は、網膜共役においてスキャナが必要な場合にも対処しており、かつミラーリフレクタを使用することで、プリズムの望ましくない収差および分散特性を軽減することができる。さらに、本願の横方向の走査機構は、回転走査機構よりも位置合わせがより容易であり得る。
【0048】
図14Aおよび
図14Bは、横方向ライン走査のためにKミラーK3(矢印A6に沿って直線的に並進される)を使用したより詳細なゼマックス(Zemax(登録商標))シミュレーションを示す。
図14Aは、一例としてラインフィールド方式(例えば、ラインビーム)を使用することを示す。KミラーK3を網膜共役面において+/-mmだけシフトすると、走査ビームSB1~SB5によって示されるように、網膜において水平方向に8mmにわたってライン照明が走査される。走査された網膜の正面平面
図30は、Kミラーの(直線的な)並進運動によって生成される、異なる走査位置における5個のライン走査ビームSB1~SB5を示す。説明を簡単にするために、
図14Bは、網膜上の5つの異なる走査位置において5個の走査ビームSB1、SB2、SB3、SB4、およびSB5を形成するKミラーの5つの個別の横方向/シフト位置を示す。
【0049】
KミラーK3のように、ミラーリフレクタまたは反射面を使用することにより、プリズムによってコリメートされていない光ビームに導入される望ましくない収差が除去される。収差がないため、この手法は、ビームが典型的にはコリメートされない網膜共役における走査機構として好適である。網膜共役面の近くのスキャナは、瞳孔共役面へのアクセスが制限されているか、または利用できない場合に有用である。また、本実施形態は、本明細書で提案されるKミラーがルーフ構造を有していないため、米国特許第7,463,394号明細書に記載されるようなルーフ構造は、横方向の走査のためのビーム変位を生成するために必要ではないことを示す。本実施形態の別の利点は、横方向の走査が、回転方向の走査と比較して、一般的に位置合わせがより簡単であることである。
【0050】
横方向の走査のための複数の反射面を備えた他のミラー組立体が可能であり得る。一般に、ミラーシステムを介した奇数回の反射は、同じ方向に沿ってビームを変位させることができ、偶数回の反射は、その逆方向に沿ってビームを変位させることができる。ミラーモジュールが第1の量だけ横方向にシフトすると、第2の量の出力走査ビームの乗法的な横方向の変位/シフト/走査(例えば、2倍以上)を生じさせることができる。
【0051】
Kミラーを並進させると、1つの対応する次元の横方向の走査が行われるが、複数のKミラーを組み合わせて二次元以上の走査を行うことも可能である。例えば、2つのKミラーを垂直な走査軸と組み合わせることで、二次元の走査を実現することができる。しかしながら、この構造の走査速度は、ミラー組立体の並進に関連する速度制限によって制限される場合がある。
【0052】
Kミラーの横方向の走査は、他の走査方法と組み合わせることも可能である。例えば、
図15は、瞳孔共役に配置された第1の部分と、網膜共役に配置された第2の部分とを有する、2部分からなる走査機構を示す。本実施形態では、KミラーK4は、網膜共役に、またはその近傍に配置され、かつ低速軸走査に使用される。ガルボスキャナG1は瞳孔共役の近くに配置され、かつ高速軸走査に使用される。例えば、走査点が水平方向に走査されて走査点の行を形成した後、走査点が垂直方向に新たな行の位置にシフトされる二次元の点走査の場合、水平方向の走査は高速軸走査であり、垂直方向の走査は低速軸走査である。この実施形態では、システム統合を容易にするために、2つのスキャナ(K4およびG1)が空間内で分離されている。この実施形態は、また、走査ピボット点(またはガルボG1)が実質的に瞳孔共役にあることを可能にするが、これは、例えば、
図1に示されるように、2つのガルボスキャナが1つの瞳孔共役にある必要がある場合には実現するのが困難である。
【0053】
Kミラーのための複数の異なる並進機構が本発明に適している。
図16Aおよび
図16Bは、誘導アクチュエータ61を使用する第1のKミラー並進機構を示す。
本手法では、誘導アクチュエータ61は、平行屈曲部(例えば、等方性ばね)63と組み合わされ、各々が矢印A7およびA8によって示される相反する力を提供する。
図16Bに示されるように、誘導アクチュエータ61が適切な電流iの印加などによって作動/起動されると、支持バー62(および取り付けられたKミラーK5)を移動させて比例並進オフセットΔxを生じさせる力が生成される。逆に、誘導アクチュエータ61が作動されなくなるか、またはその印加電流iが減少されると、平行屈曲部63のばね力により、KミラーK5が反対方向に移動して、オフセットΔxが除去または減少される。誘導アクチュエータ61は、機械的アクチュエータと比較してより静的動作を提供し得る。平行屈曲部63により、コンパクトな直列配置が可能になる。また、変位は電流の関数Δx=f(i)であるため、エンコーダが不要になる。これは、誘導アクチュエータ61が、変位Δxに比例する力F
k(例えば、F
k(Δx)=kΔx、式中、kはばね定数)を発揮するばねと共に作用する、電流iの関数F
i(i)である力F
iを発揮するためである。平衡状態では、F
i(i)=F
k(Δx)=kΔxであるため、変位(Δx=F
i(i)/k)は電流iの関数である。
【0054】
図17は、偏心を備えたモータ65(例えば、オフセンタホイール/ディスク67)を使用してKミラーK5を移動させ、それによって平行屈曲部63を所与のオフセットΔxだけ変形させる代替の並進機構を示す。モータ65によって回転される物体(例えば、ホイールまたはディスク67)は、回転中心に対して非対称であるため、その回転により、KミラーK5を押圧することなどによって、隣接する平行屈曲部63の並進を引き起こすことができる。モータ65によって回転される物体67は、ディスクである必要はない。所望の走査速度および/またはパターンを提供するために、任意の形状(例えば、水滴形状)を設計することができる。
【0055】
以上説明したように、本発明は、走査部品(例えば、Kミラー)を網膜共役に配置することを可能にするため、それを瞳孔分割機能に使用することはできない。従って、本発明は、特別なサイズおよび形状の静止ビームスプリッタが瞳孔共役に配置されており、かつ瞳孔分割機能を提供するように使用されることを提案する。瞳孔分割機能を実施するための瞳孔共役におけるビームスプリッタの位置決めは、ビームスプリッタが静止しているために容易になり、これにより、眼科撮像システムの組み立てがさらに簡略化される。以下でさらに詳しく説明するように、この構成は、OCT/OCTAなどの干渉測定への応用にさらなる利点を提供する。
【0056】
効率的な干渉測定のためのビームスプリッタ設計
説明を容易にするために、本実施形態は、OCTシステムに適用されるものとして説明されるが、同様の瞳孔分割機能が、眼底撮像装置またはOCTAシステムに適用され得ることを理解されたい。また、説明を容易にするために、本実施形態は、
図1のOCT例を参照して上記したように、関連する構成要素に焦点を合わせるが、ラインフィールドまたはフルフィールド撮像などの特定のフィールド構成用に構成されている。ラインフィールド撮像の実施形態を最初に説明した後、フルフィールド撮像に適用される本発明の利点について説明する。本発明は、他のライトフィールド構成に適用され得ることが理解されるべきである。
【0057】
図18は、ラインフィールド眼科撮像システムで使用され得る3つのビームスプリッタ構成を示す。同様の構成が、フルフィールド眼科撮像システムで使用され得ることを理解されたい。第1のビームスプリッタ構成は、「従来の軸上(Conventional On-Axis)」構成と呼ばれ得る。第1のビームスプリッタ構成は、ビームスプリッタBSを、サンプル(例えば、眼)に対する照明/集光光軸上に中心として置くとともに、眼に対する照明(光)信号/ビームLtB(ここでは走査ラインSLとして図示されている)の光路全体およびサンプルからの集光信号/ビームCB全体に及ぶ。サンプルビームSBは、撮像されるサンプル(例えば、システムのサンプルアーム)、例えば、被検眼に向けられる。集光ビームのFOV(例えば、集光器から見た場合)は、ここでは円形の集光ウィンドウCWとして図示されている。この従来の軸上構成では、集光信号CBの全体が集光器に向かう途中でビームスプリッタBSを通過するため、集光ビームCBの全体が集光器に向かう途中でビームスプリッタBSによって減衰されることを示すために、集光ウィンドウCWは完全に暗く示されている。完全を期すために、システムの瞳ストップPS(例えば、物理的アパーチャストップ)も示されている。瞳ストップPSは、撮像される眼の瞳孔共役に配置され得る。この場合、瞳ストップPSは集光ウィンドウCWを形成するのに役立ち得る。
【0058】
第2の構成は、「軸外(Off-Axis)」構成と呼ばれ得る。第2の構成は、ビームスプリッタBSが戻り集光ビームCBの光路の一部(例えば、約半分)のみに及ぶようにビームスプリッタBSを照明/集光光軸から変位させる。この構成では、集光ウィンドウCWの一部は、ビームスプリッタSBを通過する集光ビームCBの一部に対応して暗く示されており、集光ウィンドウCWの残りは、ビームスプリッタBSの平面の上を通過するが、ビームスプリッタを通過しないため、ビームスプリッタBSによって減衰されない集光ビームCBの一部を強調するために白く示されている。この場合、ライン走査LS(例えば、照明ビームLtB)の焦点は、集光ウィンドウの暗い部分内に示されている。
【0059】
第3の構成は、本明細書では「光フットプリント-BS軸上(Light-Footprint-BS On-Axis)」と呼ばれ得る。第3の構成は、照明ビームLtBの光フットプリントに合わせた形状のビームスプリッタBSを使用する。このラインフィールドの例では、光フットプリント-BS軸上構成のビームスプリッタBSは、面積(または寸法)が入射照明光LtBの光フットプリントに適合しており、かつ入射照明光LtBよりもわずかに大きい細長いスリット(または長方形)として形成され得る。この場合、集光ビームのほとんどがビームスプリッタBSの上下を減衰することなく通過するため、集光ウィンドウCWは、ほとんどが白く示されている。ライン走査LS(例えば、照明ビームLtB)の焦点におけるビームスプリッタBSの位置に対応する集光ウィンドウCWの中央領域のみが暗く示されている。
【0060】
従来の軸上構成を用いたラインフィールドOCTでは、
図1を参照して上記したように、干渉計内のビームスプリッタ(BS)は、一般的には、光学面全体で均一なビーム分割比を有するプレート型またはキューブ型のビームスプリッタである。この典型的な例では、ビームスプリッタは、限られた量のサンプル光SBをサンプル(例えば、眼底)に向けて案内すること、およびサンプルからの後方散乱光信号CBを減衰させることを行うため、検出感度が制限される。例えば、従来の軸上構成では、照明ビームLtBはビームスプリッタBSを2回通過する(1回は参照ビームRBとサンプルビームSBに分割されるときであり、もう1回は集光ビームCBがサンプルから戻ってくるときである)。50/50のビームスプリッタの場合、これは、照明光LtBの75%が失われることを意味する(各経路で50%)。このパワーの非効率性は、特に、光源パワーおよび眼に許容される光パワーが制限されている場合には望ましくない。プローブ光(例えば、サンプル光SB)をサンプルに向かって効率的に誘導して、サンプルから戻る後方散乱光CBを効率的に集光する方法が必要とされる。
【0061】
これまでにも効率改善は提案されている。偏光を用いた手法は、(本出願と同じ譲受人に譲渡された)米国特許第7145661号明細書および米国特許第9778020号明細書に記載されている。この手法では、プローブビーム経路内の偏光BSと偏光回転子を非相互的なビーム分割器として使用することにより、後方散乱光の偏光を回転させ、偏光ビームスプリッタを効率的に通過させることができる。しかしながら、サンプルの複屈折により、後方散乱光の偏光状態がすでに変化している可能性があるため、効率が低下する。また、偏光光学系は一般的に高コストであるため、低コストのデバイスには適さない。軸外検出方法は、共同所有の米国特許出願公開第2018/0259316号に記載されている。米国特許出願公開第2018/0259316号では、プローブ光のより効率的な誘導と信号光のより高いスループットを可能にするように、ビームスプリッタが集光瞳を部分的に覆うように配置されている。しかしながら、この手法でも、集光瞳および信号光の大部分が遮断される。さらに、ビームスプリッタは、光センサまたはカメラの集光瞳共役にあるため、(眼の)瞳孔分割機能を提供することはできない。別の手法は、例えば、米国特許第7648242および6758564号明細書に記載されているように、ライン走査の走査型レーザー検眼鏡(SLO:scanning laser ophthalmoscope)においてアパーチャミラー/ビームスプリッタを使用するが、これまで、アパーチャビームスプリッタのいかなる利点も干渉測定に対して完全には実現されていない。別の手法は、上記した自由空間のビームスプリッタ構成に代えて、特殊なファイバカプラを使用することである。例えば、ファイバを用いた光サーキュレータの実施は、米国特許第7362444号明細書に記載されているような点走査(例えば、点フィールド)OCTに関連して説明されているが、この手法は、ラインフィールドOCTには適用できず、コストを増加させる。
【0062】
本願の手法では、軸外構成は、後方散乱集光光CBの一部がビームスプリッタと同じ平面(例えば、同じ(眼の)瞳孔共役平面)を通過することを可能にするが、ビームスプリッタを通過することを回避する。さらに、物理的アパーチャストップ(または瞳ストップ)PSは、別の(眼の)瞳孔共役面に配置され、かつ(眼の)瞳孔分割領域を形成するのに役立つように構成され得る。ビームスプリッタと組み合わせた物理的アパーチャの使用により、瞳孔分割機能が提供され得る。さらに、以下で説明するように、瞳ストップの形状は、より軸方向の高い深度分解能および/または光強度および横方向の分解能などの特定の撮像の必要性に応じて選択することができる。この例では、瞳ストップPSは、ビームスプリッタの大部分の領域を遮断するように形成されている。
【0063】
ラインフィールドOCTシステムでは、照明ビームLtBは、ビームスプリッタの1つの次元/方向(例えば、ライン走査LSの幅寸法に沿った)において合焦され(コリメートされていない状態で)、直交する次元(例えば、ライン走査LSの長さ寸法に沿って)においてコリメートされていない状態に維持される。この照明は、システム内の瞳において、かつ物体面においてそれぞれ相互に垂直なラインを形成する。光フットプリント-BS軸上構成では、ビームスプリッタBSは、照明ビームLtBが合焦される寸法が狭い光学面を有するスリットビームスプリッタ(スリットBS)であり得るとともに、システムの機械的/動作公差によって決定されるビーム幅の数倍(例えば、10倍)程度の狭さであり得る。また、スリットビームスプリッタは、走査ラインに沿った寸法がより広い光学面を有し得る。この場合も、ビームスプリッタは、(眼の)瞳孔共役面に、またはその近傍に配置することができる。また、このスリットビームスプリッタは、光源光LtBの大部分をサンプルに向けて導くための高い反射透過率(例えば、10/90)と、スリットビームスプリッタによる遮断または減衰なしに(または最小限の遮断または減衰を伴う)集光信号光CBに対する高いスループットとを有することができる。10/90の反射透過率は、光信号ビームがビームスプリッタを通過するたびに90%減衰することを意味するため、これはサンプルから戻ってくる集光信号CBを大幅に減少させることから、通常、従来の軸上方式には適していない。しかしながら、本願の光フットプリント-BS軸上構成では、戻ってくる集光信号光CBのほとんどがスリットBSを通過せず、従ってその90%の減衰を受けないため、高い反射透過率が可能となる。50/50のビーム分割比を備えた従来の軸上設計と比較して、本願のスリットビームスプリッタは約6dBの感度改善を提供することができる。また、他の設計と比較して、(光フットプリント-BS軸上構成の)スリットビームスプリッタは、ラインフィールド干渉測定における全ての局面(照明、集光、参照)において必要な光のみを効率的に誘導する相互部品である。
【0064】
有利には、本願の眼科撮像システムは、軸外構成と光フットプリント-BS軸上構成とを切り替えるように構成されてもよい。即ち、瞳ストップPSを変化させることによって、機器は、光学系を変更することなく、軸上動作と軸外動作とを切り替えることができる。どちらのモードにも独自の利点を有するため、この柔軟性により、デバイスは幅広い用途に対応することができる。スリットビームスプリッタは、低空間周波数の信号光を遮断すること、およびバックグラウンド信号と照明信号とを明確に分離することが可能である。
【0065】
この機能は、パルス調整型ダイオードレーザーなど、光源スペクトルが変動するシステムにおいて有用である。低空間周波数の遮断により、角膜反射を除去することもできる。軸上設計は、軸外方式と比較して実施が容易であり、スリットBSは、偏光を用いた方法と比較して低コストである。さらに、スリットビームスプリッタによって、同じ構成でライン走査の走査レーザー検眼鏡(SLO)が可能となり、これは、ミラーの穴では実現できない。
【0066】
図19は、ラインフィールドSDOCTシステムにおける光フットプリント-BS軸上構成の簡略化された概略図を示す。スリットビームスプリッタ(スリットBS)は、瞳孔共役面またはその近傍に配置される。光フットプリント-BS軸上設計により、照明(サンプル)ビームSBを効率的に誘導すること、および集光ビームCBの減衰または遮断を最小限に抑えることが可能となる。上述したように、集光ビームCBおよび戻り参照ビームRBは、アパーチャ39を通過して、分光器で構成され得る集光器41に到達する。回折格子40は、入射光を異なる周波数成分に分離するものであり、光センサ42は、結果として生じるスペクトルをキャプチャする。
【0067】
図20は、ラインフィールドの用途に適した光フットプリントビームスプリッタの第1の構造を示す。製造に関して、スリットBSは、より大きな基板64上のスリット状コーティング62であり得る。例えば、スリットBSは、薄いガラス基板66上のスリット状コーティングからなり得る。代替的に、スリットBSは、均一にコーティングされた薄いストライプ66の基板であり得る。基板は、プレートまたはプリズムであってもよく、コーティング表面は、2つの基板の間に挟まれていてもよい。
【0068】
図21は、照明光が点またはドットまたは小さな2D領域に合焦されるフルフィールドまたはパーシャルフィールドの用途での使用に適した光フットプリントBSの第2の構造を示す。この場合、照明光フットプリントによって決定されるサイズのドット状(例えば、円形)ビームスプリッタ68が使用され得る。ドット状のビームスプリッタ68は、より大きな基板64上にコーティングされ得るか、または均一にコーティングされた一片の円形状の基板70であり得る。ドット状のビームスプリッタ68は、瞳孔共役面における二次元の小領域となる。
【0069】
図22は、透明基板(例えば、薄いガラス基板64)上の小面積コーティングを含む代わりに、本願のビームスプリッタの代替構成を示しており、そのビームスプリッタは、全反射基板上のコーティングとして構築されており、照明光LtBは、ビームスプリッタを通過してサンプルアーム上にサンプルビームSBを形成するとともに、ビームスプリッタによって折り返されて、参照アーム上に参照ビームRBを形成する。
【0070】
空間周波数分析のみならず、効率的な照明および集光の同様の利点は、これら全てのビームスプリッタ構成に適用される。
典型的には、眼の網膜の深度情報を復元するために、(例えば、光センサ42によってキャプチャされた)スペクトルに1D FFTを適用することとなる。しかしながら、キャプチャされたスペクトルに2D FFTを最初に適用することにより、瞳孔共役における空間的なスペクトル分布を復元することができる。例えば、
図23は、光フットプリント-BS軸上手法を使用して取得され得るスペクトル71と、スペクトル71に1D FFTを適用することによって構築され得る代表的な網膜73とを示す。
図24は、同じスペクトル71を示しているが、2D FFTを適用すると、空間周波数画像75が得られる。
【0071】
図25は、従来の軸上、軸外、および光フットプリント-BS軸上構成でキャプチャされたスペクトルの2D FFT分析を示す。各分析は、復元された参照信号と、一方がゼロz軸基準の上にあり、他方が下にある2つの干渉信号とを示す。これらの干渉信号の一方(例えば、ゼロz軸より上の干渉信号)は真の干渉信号であり、他方(例えば、ゼロz軸より下の干渉信号)は真の干渉信号の複素共役に対応し得る。従来の軸上設計の場合、参照信号と干渉信号とが重なり合うため、分離が困難である。比較すると、軸外および光フットプリント-BS軸上構成から取得した信号の2D FFTは、低空間周波数(例えば、ゼロU
x値に近い)での参照信号と、より高い空間周波数での干渉信号との明確な分離を示す。これにより、インターフェログラムから参照スペクトルを直接取り出すことが可能となり、これは、パルス調整型ダイオードレーザーのようなスペクトルが変動する光源に対して特に重要である。従来の軸上法と比較して、軸外法は、より高い横方向分解能でより多くの光を集光するのみならず、一次元に沿った完全な位相分析/補正を可能にする完全な空間周波数成分を取得する。例えば、ゼロU
x値未満のスペクトルをマスクして、ゼロU
xを超えるスペクトル部分をZ次元に沿って分析することにより、複素共役成分による妨害なしに全範囲(例えば、より高い深度分解能)を得ることができる。しかしながら、ゼロ遅延に近い撮像に関して全範囲性能および感度の利点は、減少するか、または失われる可能性がある。光フットプリント-BS軸上設計は、より高い撮像感度(ゼロ遅延に近いことを含む)を提供することができ、かつ瞳孔共役面に異なるアパーチャストップPSを実装することにより、軸外動作に簡単に変換することができる。この柔軟性により、システムは様々な用途に対して様々なモードで動作することができる。網膜および皮膚の撮像など、深度範囲が重要ではない高感度および横方向の分解能の用途の場合、機器は光フットプリント-BS軸上モードで動作することができる。前眼部(眼)の撮像など、感度および横方向の分解能が損なわれる可能性がある長深度範囲の用途の場合、機器は軸外モードで動作することができる。例えば、図示された軸外スペクトルでは、z軸に沿って示されているような深度の全範囲は、真の干渉信号とその複素共役とが重なることなく、参照信号の一方の側における干渉信号から取得することができるため、より大きな軸方向分解能を実現することができる。これにより、汎用性の高いOCT装置を使用した様々な用途の可能性が広がる。
【0072】
眼科撮像システムは、瞳孔共役に可変(システム)ストップを導入することによって、より高い感度のための軸上モードと、より高い深度分解能のための軸外モードとの間で容易に切り替えることができる。例えば、
図26は、光フットプリント-BSの軸上モードと軸外モードの両方で撮影された3つのサンプルOCT画像を示す。画像77は、皮膚に対する軸上モードでのスリットBSの使用を示すものであり、画像78は、皮膚に対する軸外モードでのスリットBSの使用を示す。図示されるように、画像78は、より高い深度分解能を達成しているが、光が減少するとともに、横方向の分解能が低くなっている。皮膚のような散乱性の高いサンプルの場合、組織によって許容される浸透深度が制限されているため、高感度を実現するために、軸外モードよりも光フットプリント-BS軸上モード(画像77)が好ましい場合がある。しかしながら、テープまたは前眼部など、より透明度の高いサンプルの場合、画像79に示すように、軸外モードは、より長い深度範囲を提供する。
【0073】
図27は、例示的なビーム分割態様と、フルフィールド干渉測定またはパーシャルフィールド干渉測定のための照明瞳/検出瞳を示す。この場合、光フットプリントBSは、照明信号LtBのフルフィールド(FF)焦点領域(例えば、光フットプリント)によって決定されるサイズのドットビームスプリッタとして実施される。
図18の構成要素と同様の全ての構成要素は、同様の参照符号を有しており、上記で説明されている。
【0074】
図28は、
図27の3つの態様の各々について、2D空間周波数領域における例示的な検出信号(2D FFTを適用することによって得られるものなど)を示す。上記したように、従来の軸上モードの参照信号81と干渉信号83は互いに重なり合っているが、それらは軸上モードおよび光フットプリント-BS軸上モードにおいて分離されている。
【0075】
要約すると、上記の実施形態では、ビームスプリッタBSは、効率的な照明および信号収集のために、ラインフィールドOCTシステムの瞳孔共役に配置される。可変または切り替え可能なシステム瞳ストップは、軸上モードと軸外モードとを切り替えるため、または集光瞳のサイズ/形状を選択するために、(例えば、別の)瞳孔共役に配置されてもよい。上記で説明したように、本構成は、サンプルビームおよび集光ビームの瞳孔分割のためにビームスプリッタを使用することができる。また、本実施形態では、光センサ/カメラによって読み取られた参照信号の低空間周波数成分を干渉信号から分離することが可能である。次に、参照信号は、OCT処理におけるバックグラウンド信号として使用され得る。2D FFTを使用することで、瞳孔共役における空間的なスペクトル分布が得られ、複素共役成分を除く干渉信号の選択が可能となる。また、本願のスリットBS設計により、同じ構成を使用してラインフィールドOCTとライン走査SLOとを統合することが可能である。
【0076】
さらに、キャプチャされたスペクトルの2D FFTを取得することにより、瞳孔共役(例えば、患者の眼の瞳孔)における2D空間周波数分布が提供されることに留意されたい。これは、画像をキャプチャする前に、眼科撮像システムを患者の眼に位置合わせするための空間周波数分析を使用することにつながる。
【0077】
瞳孔の位置合わせのためのOCTにおける空間周波数分析
眼科撮像システム/装置を患者の眼に適切に位置合わせすることは、画像品質およびキャプチャされた画像から得られる情報に影響を与える可能性がある画像取得における重要なステップである。しかしながら、適切な位置合わせを得るためには、撮像部品を追加すること、および技術者との多くのやりとりを行うことを必要とする複雑なプロセスになる可能性がある。眼科用OCT機器では、患者の瞳孔を機器に位置合わせするプロセスの一部として、患者の眼の後房を画像化するために虹彩カメラ(または他の位置合わせ補助構成/機構)が通常必要である。この要件は、システムを複雑にするとともに、コストを増加させる。従って、特に、目的が小型で低コストのOCT装置である場合、瞳孔の位置合わせを実現するための簡単で費用効果の高い手法が望まれる。
【0078】
OCT干渉における空間周波数は、瞳孔共役における後方散乱光と参照光とのオフセットに起因する。空間周波数成分(例えば、ラインフィールドSD-OCTシステムにおける干渉の二次元FFT)を分析することにより、システムの集光瞳内の後方散乱信号の空間分布を推測することができる。この情報はOCTデータに組み込まれており(統合されており)、OCT装置の患者の位置合わせのために抽出することができるため、OCT装置の設定が簡略化され、かつコストが低減される。
【0079】
OCTにおける空間周波数分析の研究は、近年、眼の撮像の可能性を開拓している。フルフィールド(FF)en faceOCT画像の空間周波数成分は、デジタル収差補正に使用されており、例えば、クマール(Kumar)他による「フルフィールドOCTの数値合焦法:共通信号に基づく比較(Numerical focusing methods for full field OCT:a comparison based on a common signal)」(オプティクス・エクスプレス(Opt. Express)、V22、第13巻、16061-16078、2014年)を参照されたい。しかしながら、OCTにおける空間周波数分析(例えば、2Dまたは3D FFT)を患者の瞳孔の位置合わせのために使用することは、十分に検討されていない。この手法は、患者の瞳孔の位置合わせの問題に対する直接的な解決策を提供することを本明細書で説明する。
【0080】
本願の方法では、OCT干渉信号における空間周波数(例えば、容積測定LF-SDOCTシステムにおける干渉の2D FFT)は、例えば、完全自動瞳孔位置合わせサブシステムまたは半自動瞳孔位置合わせサブシステム、または位置合わせの指示、提案を提供するか、またはシステムオペレータに位置合わせ不良の考えられる原因を特定するシステムの一部として使用され得る患者の瞳孔の位置合わせに対する手がかりとして使用される。空間周波数成分は、瞳孔共役における後方散乱信号と参照光のオフセットから生成され得る。空間周波数成分はFFT空間内で視覚化および分析することができ、かつ機器の瞳に対する患者の瞳孔の位置合わせをFFT空間内で推測することができる。例えば、ライン走査OCTシステムでは、網膜上のライン照明に平行な次元の位置合わせ情報は、その次元に沿った空間周波数成分から推測され得る。
【0081】
説明のために、ラインフィールド(LF)-SDOCTシステムにおいて、上記で説明した光フットプリント-BS軸上法を実施する本発明の一例が提供される。本発明は、フルフィールド、パーシャルフィールド、およびスパイラル走査OCTシステムなどの他のタイプのOCTシステムで実施され得ることを理解されたい。
図29は、本願の例示的なLF-SDOCTシステムにおける瞳孔の位置合わせのための空間周波数分析を示す。この実施形態では、照明ビーム/信号は、瞳孔面でラインビーム91を形成し(対応する(例えば、概ね直交する)ラインビームも網膜面で形成される(例えば、図示しないが、網膜上でライン照明を形成する)ことに留意されたい)、機器の集光瞳92は、照明ラインビーム91を中心とする円形領域(または他の形状の領域)であり得る。
図29にさらに示すように、光センサから見て、参照信号は、集光瞳92における照明ラインビーム91の領域内に存在し得る。例Ex1に示されるように、集光瞳92が患者の瞳孔93に位置合わせされると、集光瞳92内の全空間周波数成分94が検出される。しかしながら、例Ex2に示されるように、集光瞳92が、患者の瞳孔93でラインビーム91に垂直な第1の方向にオフセットされている場合、例Ex1の空間周波数94と比較して、空間周波数95の一部が欠落している。欠落部分は、この第1の方向に沿った集光瞳92と患者の瞳孔93との位置合わせ不良の程度に対応する。例Ex3に示されるように、ラインビーム91に平行な第2の方向に沿った集光瞳92のオフセット(例えば、図示しないが、網膜上のライン照明に垂直である)は、(例えば、網膜上の単一の走査位置での単一の走査次元に沿った単一のスキャン(例えば、bスキャン)を使用して)結果的に生じる空間周波数96から容易に決定することができないことに留意されたい。この場合、ラインビーム92は、第2の方向に直交するように回転されることにより、この第2の方向における任意のオフセットを記録することができる。即ち、いくつかの実施形態では、2D空間内の集光瞳オフセットを識別するために、例えば、回転走査機構によるなど、2つの相互に垂直なスキャンを使用することができる。従って、2つの次元に沿った瞳孔の位置合わせ状態は、2つの測定値から推測することができる。
【0082】
付加的に、または代替的に、位置合わせ不良情報は、ラインフィールドOCT内の一方向に沿って容易に決定可能であるため、その一方向に沿ったFFTを決定することによって、位置合わせ不良情報/手がかりを任意選択的に取得することができる。例えば、変位は、ラインビーム91に平行な次元に沿ってFFTを計算することによって決定され得る。この場合、位置合わせ不良情報は一次元(1D)FFTを使用して決定されてもよく、2D FFTを計算する必要がない場合がある。
【0083】
従って、OCTにおける空間周波数分析は、患者の瞳孔の位置合わせに対する手がかりを簡単な方法で提供する。この方法は、OCT装置において位置合わせの手がかりを提供するための追加の構成/機器(例えば、虹彩カメラ)の必要性を軽減するか、または排除することができる。
【0084】
図30は、本発明の実施形態によるOCTシステムにおける瞳孔の位置合わせを決定するための例示的なワークフローを提供する。ステップS1において、少なくとも1つのOCT干渉データセット(例えば、1回の網膜走査)が収集される。データセットは、例えば、ラインフィールドまたはフルフィールドのSDOCT/TDOCTデータセットとすることができる。ステップS2において、少なくとも1つの次元に沿ったデータセットのFFTにより、その方向に沿った空間周波数成分が明らかとなる。直交方向に沿った任意選択的な第2のFFTにより、その第2の方向に沿った空間周波数成分が明らかとなり得る。例えば、ラインフィールドOCTの場合、ラインビームと平行な方向に沿ってFFTを決定することを選択してもよい。ステップS3において、空間周波数分布が決定される。次に、特別な空間周波数データが処理されることにより、システムの集光瞳に対する患者の瞳孔の位置合わせが判定される(ステップS4)。ステップS5において、位置合わせ情報は、自動位置合わせのためにシステムによって使用されてもよく、または位置合わせを誘導するためにユーザが使い易い形式で人間のシステムオペレータに提示されてもよい。
【0085】
図31、
図32、
図33、および
図34は、本実施形態によるLF-SDOCTにおける瞳孔の位置合わせのための空間周波数分析の経験的データを示す。各図は、個々のOCT画像101と、2D FFTでのそれに対応する干渉画像103(空間周波数信号を示す)と、参考のために、OCTの虹彩カメラで撮影された患者の瞳孔(例えば、試験眼)の対応する画像105および107とを示す。
図31は、患者の瞳孔がX、Y、およびZ方向においてシステムの集光瞳に位置合わせされたときに取得された第1のデータセットを示す。図示されるように、空間周波数信号全体が干渉画像103内で視認可能である。
【0086】
図32は、患者の瞳孔がY方向にオフセットされたときに取得された第2のデータセットを示す。この場合、オフセットにより、空間周波数成分の4分の1が、干渉画像103から欠落している。また、オフセットが大きくなるほど、より多くの空間周波数情報が欠落することが観察される。本願の方法の1つの利点は、方法がOCT照明および集光に直接関連しているため、患者の照明の知覚およびその結果得られるOCT画像は全て、位置合わせ状態に関連しているということである。
図32の例から、空間周波数成分の喪失は、対応するOCT画像101における横方向分解能の喪失としても観察されることが明らかである。Y軸に沿ったオフセットにより、OCT画像101における網膜構造の傾斜が生じる。
【0087】
図33は、眼が機器に近すぎる場合の例を示しており、
図34は、眼が機器から遠すぎる場合の例を示している。Yオフセットが与えられると、
図33および
図34のOCT画像101における口径食(vignetting)は、Z軸のオフセットに関する情報を伝達する。さらに言えば、2D FFTの空間103では、Zオフセットは空間周波数のエッジにおいて反対の勾配として現れる。さらに、患者は、位置合わせ不良のために口径食が生じたライン照明の一部を知覚することとなる。この情報は、単独で、または組み合わせて、自動化されたサブシステム、半自動化されたサブシステム、または手動手順のいずれかにより、瞳孔の位置合わせを誘導するための手がかりとして使用することができる。
【0088】
代替の実施形態では、本発明は、容積/容積測定(またはキューブ)スキャン(例えば、Cスキャン)において見出すことができるか、又はそこから抽出されるような、(例えば、網膜の)2D領域に及ぶ複数のBスキャンに適用することができる。例えば、容積測定LF-SDOCTシステム(または他の走査タイプのOCTシステム)における干渉の2D FFTは、OCTシステムに対する患者の瞳孔の位置合わせの手がかりとして使用することができる。網膜上の変位した位置に沿って複数のBスキャンを使用することによって、追加の位置合わせ情報を取得することができる。網膜上のライン照明に平行な次元における位置合わせ情報は、その次元に沿った空間周波数成分から推測することができる。空間周波数成分は、FFT空間で視覚化および分析することができ、このFFT空間内では、機器の瞳に対する患者の瞳孔の位置合わせを推測することができる。他の次元における瞳孔の位置合わせは、1つまたは複数の再構成されたBスキャン内の網膜の位置から推測することができ、網膜の位置は、サンプルおよび参照ミラーからの後方散乱光間の光路長差によって決定することができる。便利なことに、三次元(X、Y、Z)全てにおける位置合わせ不良に関する情報は、一連のインターフェログラム(例えば、Bスキャン)の2D FFT分析を使用して推測することができ、一連のインターフェログラムは、容積スキャンからなるか、または容積スキャンを構成するBスキャンから選択することができる。
【0089】
好ましい実施形態では、この方法は、容積測定LF-SDOCTシステムを用いて実施される。
図29を参照して上記で説明したように、光源からの照明ビームは、瞳孔面において(かつ網膜面においても)ラインビーム91を形成しており、機器の集光瞳92は、ラインビーム91を中心とする領域(例えば、円形領域)であってもよい。
【0090】
図35~
図39は、様々な瞳孔の位置合わせ態様と、例えば、容積測定スキャンに適用される対応する2D FFT分析を示す。
図29の構成要素と同様の
図35~
図39の全ての構成要素は、同様の参照符号を有しており、かつ上記で説明されている。
図35~
図39の実施形態は、容積測定スキャン(または所定の2D領域に及ぶ複数のBスキャン)を示しているため、複数のBスキャンを取得/分析することができる。OCTシステムの走査周波数に応じて、取得されるBスキャンの数は異なり得る。例えば、典型的なOCTシステム/デバイスにおけるキューブスキャン(Cスキャン)は、1回の集光モード動作において100を超えるBスキャン(例えば、取得のキャプチャ)を含み得る。しかしながら、容積測定スキャンを構成する全てのBスキャンを2DFFT分析に提示する必要があるわけではないことを理解されたい。2D領域に及ぶ選択Bスキャンは、Cスキャンから抽出され得る。例えば、2D FFT分析は、CスキャンにおけるBスキャンの一部(例えば、10%、25%、50%など)に適用され得る。例えば、Cスキャンにおける1つおきのBスキャン(または4つおきのBスキャンなど)が2D FFT分析用に選択され得る。2D FFT分析用に選択されるBスキャンは、Cスキャンの走査領域全体の大部分(例えば、半分以上)に及んでもよく、またはCスキャンの走査領域の所定の部分/一部(例えば、半分未満)内から選択され得る。
【0091】
図35に示すように(および
図29の例Ex1に示すように)、単一のBスキャン内で、患者の瞳孔93がX、Y、およびZ次元で位置合わせされると、集光瞳内の完全な空間周波数成分94が検出される。
図19における例Ex2の場合と同様に、
図36に示す単一のBスキャン内で、瞳孔が瞳孔におけるライン照明に対して垂直に(または網膜上のライン照明の次元に平行に)オフセットされると、例えば、Y軸に沿ってオフセットされると、空間周波数95の一部が欠落する。欠落部分は、この方向に沿った患者の瞳孔93の位置合わせ不良の程度に対応し得る。
【0092】
図37および
図38に示すように、空間干渉97および99の位置/場所をそれぞれ位置合わせされた状態の空間干渉94(例えば、
図35に示されている)と比較することにより、(例えば、Z方向における)不正確な作動距離が、単一のBスキャン内で検出され得る。患者の瞳孔93がZ方向における正しい作動距離に配置されていない場合(
図37に示すように撮像装置から遠すぎるか、または
図38に示すように撮像装置に近すぎる場合)、個々の空間干渉97および99の垂直位置は、位置合わせされたケース94とは異なるものとなる。位置合わせされた状態に対する空間干渉のオフセットは、作動距離(Z)に沿った位置合わせ不良および位置合わせ不良の方向に関する情報を提供し得る。
【0093】
図35~
図38は、Y方向およびZ方向における位置合わせ不良情報が単一のBスキャンから抽出され得ることを示す。それにもかかわらず、計算された位置合わせ不良の量を確認するため、または複数のBスキャンからの位置合わせ不良の測定値を平均化するなどのために、追加情報を提供するため、必要に応じて、追加のYおよびZ位置合わせ不良情報を追加のBスキャンから(例えば、網膜上の異なる位置から)抽出することができることを理解されたい。以上説明したように、X方向における位置合わせ不良は、ラインビーム91を直交する位置に回転させること、およびその結果得られる空間周波数を決定することによって決定することができる。しかしながら、X方向における位置合わせ不良の検出は、患者の網膜上の異なる位置からの複数のBスキャンの2D FFT空間を比較(および/または対比)することによって(例えば、位置を変化させることによってBスキャンが2D FFT空間内でどのように変化するかを決定することによって)、ラインビーム91を回転させることなく、決定することもできる。
【0094】
図39を参照すると、容積測定OCTスキャン(または、代替的に、2D領域に及ぶ任意の数のBスキャン(例えば、8個のBスキャン)の取得/キャプチャ/アクセス)において、X方向における患者の瞳孔の横方向の位置合わせ不良は(例えば、ラインビーム91の回転なしに)、複数のBスキャン(または容積)にわたる網膜の位置の漸進的なシフトとして、かつ2D FFT空間における干渉の異なる垂直位置として現れる可能性がある。任意選択的に、容積測定スキャンは、OCTシステムのCスキャンキャプチャモード動作全体の一部であってもよく、または、任意の(例えば、所定の)数のBスキャン(例えば、8個のBスキャン)は、OCTシステムの特殊な位置合わせ走査モード動作の一部であってもよい。示されているように、網膜の所与の2D領域に沿った異なるBスキャンの2D FFTが決定されると、干渉パターンの位置が(例えば、Z軸に沿った垂直方向に)変化する。例えば、X方向の位置合わせ不良の量に応じて、干渉パターンが互いに近づくこと(例えば、互いに接近すること)があり得るか、または互いに遠くに移動すること(互いに距離を置くこと)があり得る。この例では、N番目のBスキャンに関する2D FFTは、空間干渉パターンが互いに遠く離れていること、および正しい位置合わせの位置86/88から遠く離れていることを示している。しかしながら、(N+1)番目のBスキャンと(N+2)番目のBスキャンの2D FFTとを決定すると、空間干渉パターンは互いに近づいている。2D FFT干渉がBスキャン位置によって(例えば、適切な位置合わせの位置86/88に対して)どのように変化するかを決定することによって、X方向における位置合わせ不良情報(例えば、位置合わせ不良の量および/または方向)を推測することができる。X方向の位置合わせ不良(例えば、量および/または方向±X)は、2D FFT干渉が網膜上の所与の2D領域にわたってBスキャンからBスキャンに変化する量および/または方向に関連し得る。このX方向の情報を、所与の2D領域内の1つまたは複数のBスキャンから抽出されたYおよびZ情報と組み合わせることによって、追加の情報を収集することができる。
【0095】
従って、容積測定OCT(例えば、LF-SDOCT)における二次元インターフェログラムの分析により、全ての方向における患者の(OCT装置に対する)瞳孔の位置合わせの手がかりを簡単な方法で提供することができる。この方法は、そのような装置において位置合わせの手がかりを提供するための追加の構成(例えば、虹彩カメラ)の必要性を軽減するか、または排除することができる。また、スキャン取得中にOCTオペレータにリアルタイムで位置合わせフィードバックを提供すること、および/または自動位置合わせおよび/またはスキャンの自動取得に使用することもできる。
【0096】
図40は、容積測定OCTデータに適用され得る、本発明の例示的なワークフローを提供する。ステップSt1において、少なくとも1つの容積測定LF-SDOCT干渉データセット(複数のBスキャンを含む)が収集される。ステップSt2において、2D FFT分析が、(インターフェログラム)データセット、または2D領域に及びデータセットからの選択Bスキャンに適用される。ステップSt3において、空間周波数分布および深度プロファイルが決定される。即ち、2D FFT分析により、空間周波数-深度プロファイル(Z方向に沿った情報およびY方向に沿った空間周波数)が明らかになる。ステップSt4において、キューブ全体、またはキューブ内の選択された数のBスキャンまたはキューブの選択された一部にわたるこのデータの処理によって、システムの集光瞳に対する患者の瞳孔の(例えば、三次元における)位置合わせが決定される。ステップSt5において、位置合わせ情報は、システムを患者に自動位置合わせするためにOCTシステムによって使用されてもよく、かつ/またはシステムの位置合わせを誘導するためにユーザが使い易い形式でシステムオペレータおよび/または患者に提示されてもよい。即ち、システムは、位置合わせを改善するためにシステムまたは患者を調整するための提案をシステムオペレータまたは患者に提供するか、または不正確な位置合わせに寄与する可能性のある原因(または不正確なシステムの使用)を提示するために、決定された瞳孔の位置合わせを使用することができる。患者は、提供された情報を患者自己位置合わせアプリケーションにおいて使用することができる。
【0097】
本実施形態の1つの利点は、実施形態がOCT照明および集光に直接関連しているため、患者の照明の知覚およびその結果得られるOCT画像は全て、位置合わせ状態に関連しているということである。
図41Aおよび
図41Bは、Y方向の位置合わせ不良を決定するための2D FFT分析の使用を示す実験データを提供する。
図41Aおよび
図41Bは、それぞれ、BスキャンのOCT画像100a/100bと、Bスキャンの対応する2D FFT分析102a/102bと、かつ従来のOCTシステムにおいて適切な患者とシステムの位置合わせを決定するために通常使用されるような、システムの虹彩カメラによって見られる(画像がキャプチャされる)被試験眼(例えば、試験眼)の画像104a/104b(写真)とを示す。比較のために、
図41Aは適切なXYZの位置合わせの状態を示しており、
図41BはY方向/次元における位置合わせ不良の状態を示している(XZ次元は適切な位置合わせ状態のままである)。以上説明したように、Y方向における位置合わせ不良情報は、単一のBスキャンから抽出され得る。従って、
図41Bは、単一のBスキャンのOCT100b画像および2D FFT空間102bにおける干渉、および対応する虹彩カメラ画像104bを示しているが、上記で説明したように、Y位置合わせ不良は、任意選択的に、容積OCTスキャンの複数のBスキャンから決定され得る。
【0098】
図41Aのデータセットは、患者の瞳孔がX、Y、およびZ方向においてシステムの集光瞳に位置合わせされたときに取得される。
図41Bのデータセットは、患者の瞳孔がY方向にオフセットされたときに取得される(例えば、光軸の上部に向かって約2.5mm)。この例では、オフセットにより、(位置合わせされた場合の空間周波数成分102aと比較して)空間周波数成分102bの約4分の1が欠落している。また、周波数成分102bの干渉パターンのストライプは、
図41Aの位置合わせ状態のものと比較して、より厚いか、またはより幅広である。さらに、位置合わせ不良のオフセットが大きいほど、欠落している空間周波数パターンの量が大きくなることが観察されている(例えば、それらは互いに比例および/または相関している)。空間周波数成分の喪失は、OCT画像100bにおける横方向分解能の喪失としても観察される。即ち、OCT画像100bに示されるように、Yにおけるオフセットにより、網膜構造の傾斜が生じ得る。
【0099】
図42A、
図42B、および
図42Cは、LF-SDOCTにおける2D FFT分析を使用したZ位置合わせ不良の検出に関連する実験データを示す。即ち、OCT画像および2D FFTに対するZ位置合わせ不良(OCTシステムの光軸に沿った位置合わせ不良)の影響が示されている。
図42A、
図42B、および
図42Cはそれぞれ、BスキャンのOCT画像106a/106b/106cと、Bスキャンの対応する2D FFT分析108a/108b/108cと、Bスキャンが取得されたときの試験眼の対応する画像110a/110b/110cとを示しており、
図42Aは、適切なXYZ位置合わせの状態を示しており、
図42Bは、OCT装置に向かうZ方向における位置合わせ不良(例えば、Zオフセット)の状態を示しており(XYは適切に位置合わせされている)、
図42Cは、OCT装置から離れるZ方向における位置合わせ不良の状態を示している(XYは適切に位置合わせされている)。
【0100】
2D FFTおよびOCT画像における縦軸は、深度プロファイル(Z方向に沿った情報)を表している。結果として、患者の瞳孔と撮像装置との間の距離と、設計された/所望の作動距離との差は、この軸に沿って表現され得る。位置合わせ不良の方向も導き出すことができる。例えば、患者の眼が撮像装置に対して設計された作動距離よりも近くに配置されている場合、干渉ストライプは、2D FFTデータにおいて垂直軸に沿ってより近くなり(108aと比較して108b)、網膜層は、OCT画像の上部側に向かってより配置/表示されている(106aと比較して106b)。
図42Bは、撮像装置により近い(例えば、向かって)0.4mmのZオフセットを有する例示的なケースを表す。また、(
図42Cに示されているように)患者の眼が設計された作動距離からさらに離れて配置されている場合、干渉ストライプ108cは、2D FFTデータにおいて垂直軸に沿って互いに分離/移動する傾向を示しており(108aと比較して108c)、OCT画像106c内の網膜層は、OCT画像の底部側に向かってより表示/配置されている(106aと比較して106c)。
図42cの最後のデータセットは、撮像装置(例えば、OCTシステム)から離れた0.4mmのZオフセットを有するケースを示している。
【0101】
以上説明したように、2D領域の様々な部分(例えば、撮像/走査されるべき網膜または他のターゲット上)からの複数のBスキャンへのアクセスにより、現在の走査方向を回転させることなく(例えば、走査ラインビームを回転させることなく)、X位置合わせ不良情報を決定することができる。例えば、容積測定OCTスキャンを取得する(または2D領域に及ぶ複数のBスキャンを取得する)こと、および2D FFTデータにおける干渉ストライプの垂直位置および/または強度を比較することにより、X位置合わせ不良を検出することができる(例えば、X位置合わせ不良情報を決定することができる)。この目的のために、既存の全キューブスキャン(例えば、典型的なCスキャン取得モードからの128個のBスキャン)または全キューブスキャンの一部(例えば、8個のBスキャン、これは、別の位置合わせモードの一部(例えば、位置合わせの目的で個別に実施されるスキャン取得モード)であり得る)を使用することができる。比較のために、
図43Aは、撮像システムと完全にXYZ位置合わせされた試験眼116のキューブスキャンからの3個の選択されたBスキャンのOCT画像112a-112c(および対応する2D FFTデータ114a-114c)を示しており、
図43Bは、撮像システムに対してX方向に位置合わせ不良がある試験眼116のキューブスキャンからの3個のBスキャンの3個の選択されたOCT画像118a~118c(および対応する2D FFTデータ119a~119c)を示している(YZ方向は位置合わせされたままである)。即ち、
図43Aおよび
図43Bは、完全に位置合わせされたケース(
図43A)と、1mmのX位置合わせ不良を有するケース(
図43B)との間の比較を提供する。いずれの場合も、Bスキャンの3つの例示的なOCT画像(例えば、
図43Aにおける112a-112c、および
図43Bにおける118a-118c)、およびそれらの個々の2D FFTデータは、全キューブスキャンの最初、中間、および最後のBスキャンを表している。図示されているように、X方向の位置合わせ不良は、容積測定LF-SDOCTスキャンにおける1番目のBスキャンから64番目のBスキャン、最後(128番目)のBスキャンへと進むにつれて、空間周波数分析(2D FFT119a~119c)における周波数成分間の分離が増大することとして現れる。
【0102】
従って、ラインフィールドのインターフェログラムの2D FFTは、瞳孔の位置合わせの手がかりとして直接使用することができる。例えば、それは、現在のスキャンの2D FFTを基準としての完全に位置合わせされたケースの2D FFTデータと比較することによって、XYZの位置合わせ不良を検出するために使用することができ、かつ/またはYおよびX方向における位置合わせ不良など、いくつかの位置合わせ不良のケースも基準スキャンなしで検出/決定/測定することができる。代替的に、または付加的に、瞳孔の位置合わせまたは位置特定に関するより多くの情報を取得するために、(フィルタリング、二値化、重心の検出、および/または機械学習アルゴリズムへの入力などによって)2D FFTデータを処理することができる。
【0103】
図44は、空間周波数成分から瞳孔の位置合わせを決定するために実行され得る例示的な処理ステップを示す。最初に、ステップSt10において、2D FFT空間121における信号の上半分120(例えば、真の干渉信号)が、複素共役アーチファクトを除去するために切り取られる。切り取られた信号は、ステップSt12および画像122において各空間周波数(例えば、列)にわたって合計される。これは、空間周波数に対する後方散乱信号の強度を表す1Dプロファイルを形成する。ステップSt13において示されるとともに、バイナリマスク125に示されるように、線形ランプ123は、正および負の空間周波数に対してそれぞれステップSt12の瞳孔の位置合わせを二値化するための可変閾値として使用され得る。ランプ123によって定義された閾値よりも高い値は、機器の集光瞳に位置合わせされている患者の瞳孔の一部を示すものと決定される。従って、バイナリマスク125は、位置合わせされた部分を色(例えば、灰色)で示しており、位置合わせされていない部分を白で示していることによって形成される。ステップSt14において、バイナリマスク125の重心を計算することにより、患者の瞳孔の重心126が決定される。この重心は、軸(例えば、Y軸)に沿った相対位置を示すことによって、位置合わせ情報(例えば、位置合わせ測定値)を提供する。次に、この位置合わせ測定値は、撮像システムの自動位置合わせサブシステムまたは部品で使用されるか、または手動位置合わせ手順を支援するためにユーザに提供され得る。
【0104】
位置合わせ情報は、ユーザが容易に解釈することができる複数の方法で提示され得る。
図45、
図46、および
図47は、画面を介するなどして、ユーザに位置合わせ情報を提示するための複数の実施形態を示す。
図45は、患者の瞳孔に対する機器の瞳(例えば、集光瞳)の位置を示す領域を表示する1つの実施形態を示しており、この領域は、色付き、または影付きの領域として表示され得る。
図46は、機器の集光瞳に位置合わせされている(例えば、集光瞳の領域内にある)患者の瞳孔の部分を示すために影付きの領域が使用される別の実施形態を示す。瞳孔の位置および大きさを処理されたデータからさらに推測できる場合、その情報を、ユーザにグラフィカルに提示するようにしてもよい。
図47は、簡略化のため、患者の瞳孔の重心のみがユーザに表示される代替の実施形態を示す。
【0105】
図48は、フルフィールド(FF)TDOCTシステムに適用される本発明の別の例を示す。上記と同様に、患者の瞳孔93は影付きの領域として示されており、集光瞳は点線の円92として示されている。この場合、照明は瞳孔面の焦点に小さな円形領域91’を形成しており、集光瞳92は照明焦点91’を中心とした円形領域である。例Ex4は、集光瞳92が患者の瞳孔93に位置合わせされている状況を示している。この場合、集光瞳内の全空間周波数成分131が検出される。
【0106】
例Ex5および例Ex6に示すように、瞳孔がオフセットされている場合、空間周波数132および133の対応する部分がそれぞれ欠落している。実施例Ex5およびEx6の各々において、それらの個々の空間周波数132および133の欠落部分は、点線の部分円135として内に囲まれて示されている。この場合も、欠落部分は、瞳孔の位置合わせ不良の程度に対応している。しかしながら、フルフィールドの場合、2Dの位置合わせ不良は、FFT空間内で(例えば、2D FFTから)任意の方向において直接視覚化できることに留意されたい。
【0107】
上記の瞳孔検出方法の結果は、位置合わせのためにユーザにフィードバックされること、および/または自動位置合わせのために機器にフィードバックされること、および/またはスキャンまたは画像の自動取得をトリガーするためにフィードバックされることとなり得る。
【0108】
図49は、位置合わせおよび取得のフィードバックのために空間周波数分析を使用する例示的なワークフローを示す。この例は、追加のフィードバック機能を提供するために、
図44のワークフローに基づいて構築されている。
図44の構成要素と同様の全ての構成要素は、同様の参照符号を有しており、上記で説明されている。本願のワークフローは、ステップS100において、システムと瞳孔の位置合わせを開始するようにシステムオペレータ(またはシステム自動化ルーチンまたは機構)に通知することによって、開始される。これに続いて、瞳孔を位置合わせするための上記の複数のステップが行われる。これらのステップは、データ(例えば、スキャン)を収集すること、その2D FFT(またはライン走査ビームSBに平行な方向に沿った1D FFT)を計算すること、および2D FFT空間から所望の信号(例えば、真の干渉信号)を切り取ることのステップS101を含み得る。これに続いて、空間周波数にわたって切り取られた信号を合計するステップS102と、合計した信号を二値化するステップS103とが行われる。この時点で、第1の決定ステップD1は、瞳孔の位置合わせされた部分が、良好な画像をキャプチャするために患者の瞳孔と機器の集光瞳との間に十分な重複があると経験的に決定された所定のパーセンテージ閾値(例えば、50%)よりも高いかどうかをチェックする。高くない場合(D1=否)、システムは瞳孔の位置が不明であると判断する(ステップS105)。この情報は、この位置合わせ条件が満たされるまで探索を続けるためにユーザまたはシステムにフィードバックされる(ステップS106)。しかしながら、決定ステップD1で、瞳孔の位置合わせされた部分が所定の閾値よりも高いと判断された場合(D1=是)、処理はステップS104に移行することと、重心を計算することとを行う。次に、第2の決定ステップD2は、決定された重心が、所定の許容範囲内(例えば、5ピクセル以内)での良好な位置合わせを示すかどうか、またはより良好な位置合わせを達成するために患者/機器をどの方向に移動させるべきかをチェックする。決定ステップD2が、瞳孔が十分に位置合わせされていないことと、位置調整が必要であることとを決定した場合(D2=否)、この情報は、ステップS107およびS106において、ユーザまたはシステムにフィードバックされる。例えば、
図44において、重心126が、位置合わせ位置127より上にあると決定されたとする。この情報をシステム、患者、またはシステムオペレータにフィードバックすることにより、患者の瞳孔を下げること、および機器との位置合わせを改善することを行うことができる。決定ステップD2が、瞳孔が所定の許容範囲内に十分に位置合わせされていると決定した場合(D2=是)、ステップS108において、スキャンまたは画像が自動的にキャプチャされる。次に、第3の決定ステップD3は、十分なデータ(例えば、スキャン)が収集されたことをチェックする。追加のデータが必要な場合(D3=否)、プロセスは、ステップS101において新たなデータを収集する前に、システムまたはユーザに通知する(ステップS106)。即ち、十分なデータが収集されるまで(D3=是)、このプロセスが繰り返される。この時点で、ステップS109において、OCT撮像動作が停止されること、セッションが終了したことをユーザに通知することが行われる。
【0109】
患者の瞳孔のシステムの集光瞳への位置合わせを決定するためにスペクトル分析を使用する上記の実施形態は、例示的な実施形態である。他の実施形態は、当業者には明らかであろう。例えば、本発明の方法は、LF-TDOCTまたはFF-SDOCTシステムを使用して実施することができる。また、この方法は、軸外後方散乱光を検出する点走査システムにおいて実施することができる。さらに別の例として、ホロスコープ手法を使用する場合のように、干渉が瞳孔共役面で検出される場合、システムの集光瞳内の後方散乱光の空間分布は、ホロスコープ空間分布信号によって直接推測することができる。この場合、空間周波数分布のための(2D)FFTを決定するステップが省略され得る。
【0110】
従って、FFT空間における空間周波数分布は、瞳孔の位置合わせの手がかりとして直接使用することができる。
以下に、本発明に好適な様々なハードウェア及びアーキテクチャの説明が提供される。
【0111】
眼底撮像システム
眼底を撮像するために使用される撮像システムの2つのカテゴリは、投光照明撮像システム(又は投光照明撮像装置)及び走査照明撮像システム(又は走査撮像装置)である。投光照明撮像装置は、閃光ランプを用いるなどにより、被検査物の対象となる視野(FOV)全体を同時に光であふれさせ、フルフレームカメラ(例えば、全体として、所望のFOVを取り込むのに十分なサイズの2次元(2D)光センサアレイを有するカメラ)を用いて被検査物(例えば、眼底)のフルフレーム画像を取り込む。例えば、投光照明眼底撮像装置は、眼の眼底を光であふれさせ、カメラの単一の画像取り込みシーケンスで眼底のフルフレーム画像を取り込む。走査撮像装置は、対象物、例えば眼を横切って走査される走査ビームを提供するものであり、走査ビームは、走査ビームが対象物を横切って走査され、所望のFOVの合成画像を作成するように再構成され、例えば合成され得る一連の画像セグメントを作成するときに、異なる走査位置で結像される。走査ビームは、点、線、又はスリット若しくは幅広線などの2次元領域とすることができる。
【0112】
図50は、眼水晶体(又は水晶体)CLとは反対側の眼Eの内表面であり且つ網膜、視神経乳頭、黄斑、中心窩、及び後極を含み得る、眼底Fを撮像するためのスリット走査式眼科システムSLO-1の例を図示する。本例では、撮像システムは、走査ラインビームSBは、眼底F全体にわたって走査されるように、眼Eの光学構成要素(角膜Crn、虹彩Irs、瞳孔Ppl、及び水晶体を含む)を横断する、いわゆる「スキャン-デスキャン」構成である。投光眼底撮像装置の場合には、スキャナは不要であり、光は一度に所望の視野(FOV)全体に照射される。他の走査構成は当技術分野で知られており、特定の走査構成は本発明にとって重要ではない。図示のように、撮像システムは、1つ又は複数の光源LtSrc、好ましくは、エタンデュが好適に調節された多色LEDシステム又はレーザシステムを含む。任意選択のスリットSlt(調節可能又は静止)は、光源LtSrcの前に位置決めされ、走査ラインビームSBの幅を調節するために使用され得る。追加的に、スリットSltは、撮像中に静止したままであり得るか、又は特定の走査に関して若しくは反射抑制に使用される走査中に異なる共焦点レベル及び異なる用途を可能にするために異なる幅に調整され得る。任意選択の対物レンズObjLは、スリットSltの前に配置することができる。対物レンズObjLは、限定されるものではないが、屈折、回折、反射、又はハイブリッドレンズ/システムを含む最先端のレンズのいずれか1つとすることができる。スリットSltからの光は、瞳分割ミラーSMを通過して、スキャナLnScnへ導かれる。走査面と瞳面とをできるだけ近づけて、システムの口径食を低減することが望ましい。2つの構成要素の画像間の光学距離を操作するために、オプションの光学系DLが含まれ得る。瞳分割ミラーSMは、光源LtSrcからスキャナLnScnに照明ビームを通過させ、スキャナLnScnからの検出ビーム(例えば、眼Eから戻る反射光)をカメラCmrに向けて反射し得る。瞳分割ミラーSMのタスクは、照明ビームと検出ビームとを分割し、システム反射の抑制を補助することである。スキャナLnScnは、回転ガルボスキャナ又は他のタイプのスキャナ(例えば、圧電又はボイスコイル、微小電気機械システム(MEMS)スキャナ、電気光学偏向器、及び/又は回転ポリゴンスキャナ)とすることができる。瞳分割がスキャナLnScnの前に行われるか又は後に行われるかに応じて、1つのスキャナが照明経路内にあり、別々のスキャナが検出経路内にある2つのステップに走査を分割することができる。特定の瞳分割配置は、米国特許第9456746号明細書において詳細に説明されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
スキャナLnScnから、照明ビームは、眼Eの瞳孔がシステムの画像瞳に結像されることを可能にする1つ又は複数の光学系、この場合は、走査レンズSL及び眼科用又は接眼レンズOLを通過する。概して、走査レンズSLは、複数の走査角度(入射角)のいずれかでスキャナLnScnから走査照明ビームを受け取り、略平面焦点面(例えば、コリメートされた光路)を有する走査ラインビームSBを生成する。眼科用レンズOLは、走査ラインビームSBを眼Eの眼底F(又は網膜)に集束させ、眼底を撮像し得る。このようにして、走査ラインビームSBは、眼底Fを横切って移動する横断走査ラインを作成する。これらの光学系の可能な構成の1つは、2つのレンズ間の距離がほぼテレセントリックな中間眼底画像(4-f構成)を生成するように選択されるケプラー型望遠鏡である。眼科用レンズOLは、単レンズ、色消しレンズ、又は異なるレンズの配置とすることができる。全てのレンズは、当業者に知られているように、屈折性、回折性、反射性、又はハイブリッドとすることができる。眼科用レンズOL、走査レンズSLの焦点距離、瞳分割ミラーSM及びスキャナLnScnのサイズ及び/又は形状は、所望の視野(FOV)に応じて異なる可能性があり、そのため、例えば、視野に応じて、光学系のフリップ、電動ホイール、又は着脱可能な光学要素を使用することにより、複数の構成要素をビーム経路の内外に切り替えることができる配置を想定することができる。視野の変化により瞳孔上に異なるビームサイズがもたらされるので、FOVの変更に合わせて瞳分割をも変更することができる。例えば、45°~60°の視野は、眼底カメラについての典型的な又は標準的なFOVである。60°~120°以上のより高視野、例えば広視野FOVも実現可能であり得る。広視野FOVは、幅広線眼底撮像装置(BLFI)と光干渉断層撮像法(OCT)などの別の撮像モダリティとの組み合わせに望ましい場合がある。視野の上限は、ヒトの眼の周りの生理学的条件と組み合わせたアクセス可能な作動距離により決定され得る。典型的なヒトの網膜は、FOVが水平140°及び垂直80°~100°であるため、システム上で可能な限り高いFVOに関して非対称の視野を有することが望ましいことがある。
【0114】
走査ラインビームSBは、眼Eの瞳孔Pplを通過して、網膜又は眼底、すなわち表面Fへ導かれる。スキャナLnScn1は、眼Eの横方向位置の範囲が照明されるように、網膜又は眼底F上の光の位置を調整する。反射光又は散乱光(又は蛍光撮像の場合は放射光)は、照明と同様の経路に沿って導かれ、カメラCmrへの検出経路上に集光ビームCBを定義する。
【0115】
本発明の例示的なスリット走査式眼科システムSLO-1の「スキャン-デスキャン」構成では、眼Eから戻る光は、瞳分割ミラーSMへの途中でスキャナLnScnにより「デスキャン」される。すなわち、スキャナLnScnは、瞳分割ミラーSMからの照明ビームSBを走査して、眼Eを横切る走査照明ビームSBを定義するが、スキャナLnScnは、同じ走査位置で眼Eからの戻り光も受け取るので、戻り光をデスキャンして(例えば、走査動作をキャンセルして)、スキャナLnScnから瞳分割ミラーSMへの非走査(例えば、定常又は静止)集光ビームを定義するという効果があり、瞳分割ミラーSMは、集光ビームをカメラCmrに向けて折り返す。瞳分割ミラーSMにおいて、反射光(又は蛍光撮像の場合には放射光)は、画像を取り込むために光センサを有するデジタルカメラであり得る、カメラCmrへ導かれる、検出経路上への照明光から分離される。撮像(例えば、対物レンズ)レンズImgLは、眼底がカメラCmrに結像されるように検出経路内に位置決めされ得る。対物レンズObjLの場合のように、撮像レンズImgLは、当技術分野で知られている任意のタイプのレンズ(例えば、屈折、回折、反射又はハイブリッドレンズ)であり得る。追加の動作の詳細、特に、画像におけるアーチファクトを低減する方法が、国際公開第2016/124644号パンフレットで説明されており、その内容の全体は参照により本明細書に組み込まれる。カメラCmrは、受信した画像を取り込み、例えば、画像ファイルを作成し、この画像ファイルは、1つ又は複数の(電子)プロセッサ又は計算装置(例えば、
図44に示すコンピュータシステム)により更に処理することができる。したがって、集光ビーム(走査ラインビームSBの全ての走査位置から戻る)は、カメラCmrにより収集され、フルフレーム画像Imgは、個々に取り込まれた集光ビームの合成から、モンタージュなどにより、構築され得る。しかしながら、照明ビームが眼Eを横切って走査され、集光ビームがカメラの光センサアレイを横切って走査されるものを含む、他の走査構成も想定される。参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2012/059236号パンフレット及び米国特許出願公開第2015/0131050号明細書は、戻り光がカメラの光センサアレイを横切って掃引される設計、戻り光がカメラの光センサアレイを横切って掃引されない設計などの様々な設計を含む、スリット走査式検眼鏡のいくつかの実施形態を説明している。
【0116】
本例では、カメラCmrは、プロセッサ(例えば、処理モジュール)Procとディスプレイ(例えば、表示モジュール、コンピュータ画面、電子画面など)Dsplとに接続され、プロセッサとディスプレイの両方は、画像システム自体の一部とすることができ、又は、無線ネットワークを含むケーブル又はコンピュータネットワークを介してデータがカメラCmrからコンピュータシステムに渡されるコンピュータシステムなどの、別個の専用の処理及び/又は表示ユニットの一部であり得る。ディスプレイ及びプロセッサは、一体型ユニットとすることができる。ディスプレイは、従来の電子ディスプレイ/画面とするか又はタッチスクリーン型とすることができ、機器オペレータ又はユーザに情報を表示し且つ機器オペレータ又はユーザから情報を受信するためのユーザインタフェースを含むことができる。ユーザは、限定されるものではないが、マウス、ノブ、ボタン、ポインタ、及びタッチスクリーンを含む、当技術分野で知られているような任意のタイプのユーザ入力装置を使用してディスプレイと対話することができる。
【0117】
撮像の実行中に患者の視線が固定されたままであることが望ましい場合がある。視線の固定を達成する1つの方法は、患者に凝視するように指示できる固視標を提供することである。固視標は、眼のどの領域が撮像されるかに応じて、機器の内部又は外部とすることができる。内部固視標の一実施形態が
図50に示されている。撮像のために使用される一次光源LtSrcに加えて、1つ又は複数のLEDなどの、任意選択の第2の光源FxLtSrcは、レンズFxL、走査要素FxScn及び反射器/ミラーFxMを使用して光パターンが網膜に結像されるように位置決めすることができる。固視スキャナFxScnは、光パターンの位置を移動させることができ、反射器FxMは、光パターンを固視スキャナFxScnから眼Eの眼底Fへ導く。好ましくは、固視スキャナFxScnは、所望の固視位置に応じて網膜/眼底上の光パターンを移動させることができるように固視スキャナFxScnがシステムの瞳面に位置するように配置される。
【0118】
スリット走査式検眼システムは、用いられる光源及び波長選択フィルタリング要素に応じて、異なる撮像モードで動作することが可能である。トゥルーカラー反射率撮像(手持ち式又は細隙灯検眼鏡を使用して眼を検査するときに臨床医により観察される撮像と同様の撮像)は、一連の有色LED(赤色、青色、緑色)を用いて眼を撮像する場合に達成することができる。各カラーの画像は、各走査位置で各LEDをオンにした状態で段階的に構築することができ、又は各カラー画像を別個に完全に撮影することができる。3つのカラー画像は、トゥルーカラー画像を表示するために組み合わせることができ、又は網膜の異なる特徴を強調するために個々に表示することができる。赤色チャネルは、脈絡膜を最も良く強調し、緑色チャネルは網膜を強調し、青色チャネルは網膜前層を強調する。追加的に、特定の周波数の光(例えば、個々の有色LED又はレーザ)は、眼内の異なる蛍光体(例えば、自発蛍光)を励起するために使用することができ、結果として得られる蛍光は、励起波長をフィルタで除去することにより検出できる。
【0119】
眼底撮像システムはまた、赤外線レーザ(又は他の赤外線光源)を使用するなどにより、赤外線反射率画像を提供することができる。赤外線(IR)モードは、眼がIR波長に敏感ではないという点で有利である。この赤外線(IR)モードは、機器の位置合わせ中にユーザを補助するために(例えば、プレビュー/位置合わせモードで)眼の邪魔をせずにユーザが画像を連続的に撮影することを可能にし得る。また、IR波長は、組織を通る透過性が高く、且つ脈絡膜構造の視覚化の改善をもたらし得る。加えて、蛍光眼底血管造影(FA)及びインドシアニングリーン(ICG)血管造影撮像は、蛍光色素が被検者の血流に注入された後に画像を収集することにより達成することができる。
【0120】
光干渉断層撮影システム
眼底写真、眼底自発蛍光(FAF)、蛍光眼底造影法(FA)に加えて、眼科画像はその他の撮像モダリティ、例えば光干渉断層撮影法(OCT)、OCT眼底造影法(OCTA)、及び/又は眼エコー写真によって製作されてもよい。本発明又は本発明の少なくとも一部は、当業界で理解されるように、若干の改良を加えて、これらのその他の眼科撮像モダリティにも応用されてもよい。より具体的には、本発明はまた、OCT及び/又はOCTA画像を生成するOCT/OCTAシステムにより生成された眼科画像にも応用されてよい。例えば、本発明は、en face OCT/OCTA画像にも応用されてよい。眼底画像の例は米国特許第8967806号明細書及び同第8998411号明細書において提供されており、OCTシステムの例は米国特許第6741359号明細書及び同第9706915号明細書において提供され、OCTA撮像システムの例は米国特許第9700206号明細書及び同第9759544号明細書に見られるかもしれず、これらすべての内容の全体を参照によって本願に援用する。万全を期して、例示的なOCT/OCTAシステムの例を本願で提供する。
【0121】
図51は、本発明との使用に適した眼の3D画像データ収集用の一般型周波数領域光干渉断層撮影(FD-OCT)システムを図解する。FD-OCTシステムOCT_1は、光源LtSrc1を含む。典型的な光源には、時間コヒーレンス長が短い広帯域光源、又は掃引レーザー源が含まれるがこれらに限定されない。光源LtScr1からの光のビームは、典型的に光ファイバFbr1によってサンプル、例えば眼Eを照明するように誘導され、典型的なサンプルはヒトの眼内組織である。光源LrSrc1は、スペクトル領域OCT(SD-OCT)の場合の短い時間コヒーレンス長の広帯域光源か、掃引光源OCT(SS-OCT)の場合の波長調整可能レーザー源の何れかとすることができる。光は、典型的には光ファイバFbr1の出力とサンプルEとの間のスキャナScnr1でスキャンされ、それによって光のビーム(破線Bm)はサンプルの画像撮影対象領域を横方向に(x及びyに)スキャンされる。フルフィールドOCTの場合、スキャナは不要であり、光は一度に所望の視野(FOV)全体に当てられる。サンプルから散乱した光は、典型的に照明用の光を案内するために使用されるものと同じ光ファイバFbr1へと集光される。同じ光源LtSrc1から派生する参照光は別の経路に沿って移動し、この場合、これには光ファイバFbr2及び調整可能な光学遅延を有する逆反射板RR1が含まれる。当業者であればわかるように、透過性参照経路も使用でき、調整可能遅延はサンプル又は干渉計の参照アームの中に設置できる。集光されたサンプル光は、典型的にファイバカプラCplr1において参照光と結合され、OCT光検出器Dtctr1(例えば、光検出器アレイ、デジタルカメラ等)内の光干渉を形成する。1つのファイバポートが検出器Dtctr1に到達するように示されているが、当業者であればわかるように、干渉信号のバランス又はアンバランス検出のために様々な設計の干渉計を使用できる。検出器Dtctr1からの出力は、プロセッサCmp1(例えば、コンピューティングデバイス)に供給され、それが観察された干渉をサンプルの深度情報へと変換する。深さ情報は、プロセッサCmp1に関連付けられるメモリ内に保存され、及び/又はディスプレイ(例えば、コンピュータ/電子ディスプレイ/スクリーン)Scn1に表示されてよい。処理及び保存機能はOCT機器内に配置されてよく、又は機能は収集されたデータが転送される外部処理ユニット(例えば、
図53に示されるコンピュータシステム)上で実行されてもよい。このユニットは、データ処理専用とすることも、又はごく一般的で、OCTデバイス装置に専用ではないその他のタスクを実行することもできる。プロセッサCmp1は例えば、ホストプロセッサに供給される前に、又は並行してデータ処理ステップの一部又は全部を実行するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、グラフィクス処理ユニット(GPU)、システムオンチップ(SoC)、中央処理ユニット(CPU)、汎用グラフィクス処理ユニット(GPGPU)、又はそれらの組合せを含んでいてよい。
【0122】
干渉計内のサンプルアームと参照アームは、バルク光学系、ファイバ光学系、又はハイブリッドバルク光学システムで構成でき、また、当業者の間で知られているように、マイケルソン、マッハ・ツェンダ、又は共通光路系設計等、異なるアーキテクチャを有することができる。光ビームとは、本明細書において使用されるかぎり、慎重に方向付けられるあらゆる光路と解釈されるべきである。ビームを機械的にスキャンする代わりに、光の場が網膜の1次元又は2次元領域を照明して、OCTデータを生成できる(例えば、米国特許第9332902号明細書、ディー・ヒルマン(D.Hillmann)他著、「ホロスコピ-ホログラフィック光干渉断層撮影(Holoscopy-holographic optical coherence tomography)」オプティクス・レターズ(Optics Letters)、第36巻(13)、p.2290、2011年、ワイ・ナカムラ(Y.Nakamura)他著、「ラインフィールドスペクトルドメイン光干渉断層撮影法による高速3次元ヒト網膜撮像(High-Speed three dimensional human retinal imaging by line field spectral domain optical coherence tomography)」、オプティクス・エクスプレス(Optics Express)、第15巻(12)、p.7103、2007年、ブラスコヴィッチ(Blazkiewicz)他著、「フルフィールドフーリエドメイン光干渉断層撮影法の信号対ノイズ比の研究(Signal-to-noise ratio study of full-field Fourier-domain optical coherence tomography)」、アプライド・オプティクス(Applied Optics)、第44巻(36)、p.7722(2005年)参照)。時間ドメインシステムでは、参照アームは干渉を生じさせるために調整可能な光学遅延を有する必要がある。バランス検出システムは典型的にTD-OCT及びSS-OCTシステムで使用され、分光計はSD-OCTシステムのための検出ポートで使用される。本明細書に記載の発明は、何れの種類のOCTシステムにも応用できる。本発明の様々な態様は、何れの種類のOCTシステムにも、又はその他の種類の眼科診断システム及び/又は、眼底撮像システム、視野試験装置、及び走査型レーザー偏光計を含むがこれらに限定されない複数の眼科診断システムにも適用できる。
【0123】
フーリエドメイン光干渉断層撮影法(FD-OCT)において、各測定値は実数値スペクトル制御干渉図形(Sj(k))である。実数値スペクトルデータには典型的に、背景除去、分散補正等を含む幾つかの後処理ステップが行われる。処理された干渉図形のフーリエ変換によって、複素OCT信号出力Aj(z)=|Aj|eiφが得られる。この複素OCT信号の絶対値、|Aj|から、異なる経路長での散乱強度、したがってサンプル内の深度(z-方向)に関する散乱のプロファイルが明らかとなる。同様に、位相φjもまた、複素OCT信号から抽出できる。深度に関する手散乱のプロファイルは、軸方向スキャン(A-スキャン)と呼ばれる。サンプル内の隣接する位置において測定されたA-スキャンの集合により、サンプルの断面画像(断層画像又はB-スキャン)が生成される。サンプル上の横方向の異なる位置で収集されたBスキャンの集合が、データボリューム又はキューブを構成する。特定のデータボリュームについて、高速軸とは1つのB-スキャンに沿ったスキャン方向を指し、低速軸とは、それに沿って複数のB-スキャンが収集される軸を指す。「クラスタスキャン」という用語は、血流を識別するために使用されてよいモーションコントラストを解析するために、同じ(又は実質的に同じ)位置(又は領域)での反復的取得により生成されるデータの1つのユニット又はブロックを指してよい。クラスタスキャンは、サンプル上のほぼ同じ位置において比較的短い時間間隔で収集された複数のA-スキャン又はB-スキャンで構成できる。クラスタスキャンのスキャンは同じ領域のものであるため、静止構造はクラスタスキャン中のスキャン間で比較的変化しないままであるのに対し、所定の基準を満たすスキャン間のモーションコントラストは血液流として識別されてよい。B-スキャンを生成するための様々な方法が当業界で知られており、これには、水平又はx方向に沿ったもの、垂直又はy方向に沿ったもの、x及びyの対角線に沿ったもの、又は円形若しくは螺旋パターンのものが含まれるがこれらに限定されない。B-スキャンは、x-z次元内であってよいが、z次元を含む何れの断面画像であってもよい。
【0124】
OCT血管造影法又は関数型OCTにおいて、解析アルゴリズムは、動き又は流れを解析するために、サンプル上の同じ、又はほぼ同じサンプル位置において異なる時間に収集された(例えば、クラスタスキャン)OCTデータに適用されてよい(例えば、米国特許出願公開第2005/0171438号明細書、同第2012/0307014号明細書、同第2010/0027857号明細書、同第2012/0277579号明細書、及び米国特許第6549801号明細書を参照されたく、これらの全ての全体を参照によって本願に援用する)。OCTシステムでは、血流を識別するために多くのOCT血管造影法処理アルゴリズム(例えば、モーションコントラストアルゴリズム)のうちの何れか1つを使用してもよい。例えば、モーションコントラストアルゴリズムは、画像データから導出される強度情報(強度に基づくアルゴリズム)、画像データからの位相情報(位相に基づくアルゴリズム)、又は複素画像データ(複素に基づくアルゴリズム)に適用できる。en face画像は3D OCTデータの2D投射である(例えば、個々のA-スキャンの各々の強度を平均することにより、これによって、各A-スキャンが2D投射内のピクセルを画定する)。同様に、en face脈管画像は、モーションコントラスト信号を表示する画像であり、その中で深度に対応するデータディメンション(例えば、A-スキャンに沿ったz方向)は、典型的にはデータの全部又は隔離部分を加算又は集積することによって、1つの代表値(例えば、2D投射画像内のピクセル)として表示される(例えば、米国特許第7301644号明細書を参照されたく、その全体を参照によって本願に援用する)。血管造影機能を提供するOCTシステムは、OCT血管造影(OCTA)システムと呼ばれてよい。
【0125】
図52は、en face脈管構造画像の例を示す。データを処理し、当業界で知られるモーションコントラスト法の何れかを用いてモーションコントラストをハイライトした後に、網膜の内境界膜(ILM:internal limiting membrane)の表面からのある組織深さに対応するピクセル範囲を加算して、その脈管構造のen
face(例えば、正面図)画像が生成されてよい。
【0126】
コンピューティングデバイス/システム
図53は、例示的なコンピュータシステム(又はコンピューティングデバイス又はコンピュータデバイス)を図解する。幾つかの実施形態において、1つ又は複数のコンピュータシステムは本明細書において記載又は図解された機能を提供し、及び/又は本明細書において記載又は図解された1つ又は複数の方法の1つ又は複数のステップを実行してよい。コンピュータシステムは、何れの適当な物理的形態をとってもよい。例えば、コンピュータシステムは、埋込みコンピュータシステム、システムオンチップ(SOC)、又はシングルボードコンピュータシステム(SBC)(例えば、コンピュータ・オン・モジュール(COM)又はシステム・オン・モジュール(SOM)等)、デスクトップコンピュータシステム、ラップトップ若しくはノートブックコンピュータシステム、コンピュータシステムのメッシュ、携帯電話、携帯型情報端末(PDA)、サーバ、タブレットコンピュータシステム、拡張/仮想現実装置、又はこれらのうちの2つ以上の組合せであってよい。適当であれば、コンピュータシステムはクラウド内にあってよく、これは1つ又は複数のクラウドコンポーネントを1つ又は複数のネットワーク内に含んでいてよい。
【0127】
幾つかの実施形態において、コンピュータシステムはプロセッサCpnt1、メモリCpnt2、ストレージCpnt3、入力/出力(I/O)インタフェースCpnt4、通信インタフェースCpnt5、及びバスCpnt6を含んでいてよい。コンピュータシステムは、任意選択により、ディスプレイCpnt7、例えばコンピュータモニタ又はスクリーンも含んでいてよい。
【0128】
プロセッサCpnt1は、コンピュータプログラムを構成するもの等、命令を実行するためのハードウェアを含む。例えば、プロセッサCpnt1は、中央処理ユニット(CPU)又は汎用コンピューティング・オン・グラフィクス処理ユニット(GPGPU)であってもよい。プロセッサCpnt1は、命令を内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリCpnt2、又はストレージCpnt3から読み出し(又はフェッチし)、この命令を復号して実行し、1つ又は複数の結果を内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリCpnt2、又はストレージCpnt3に書き込んでよい。特定の実施形態において、プロセッサCpnt1は、データ、命令、又はアドレスのための1つ又は複数の内部キャッシュを含んでいてよい。プロセッサCpnt1は、1つ又は複数の命令キャッシュ、1つ又は複数のデータキャッシュを、例えばデータテーブルを保持するために含んでいてよい。命令キャッシュ内の命令は、メモリCpnt2又はストレージCpnt3内の命令のコピーであってもよく、命令キャッシュはプロセッサCpnt1によるこれらの命令の読出しをスピードアップするかもしれない。プロセッサCpnt1は、何れの適当な数の内部レジスタを含んでいてもよく、1つ又は複数の算術論理演算ユニット(ALU:arithmetic
logic units)を含んでいてよい。プロセッサCpnt1は、マルチコアプロセッサであるか、又は1つ若しくは複数のプロセッサCpnt1を含んでいてよい。本開示は特定のプロセッサを説明し、図解しているが、本開示は何れの適当なプロセッサも想定している。
【0129】
メモリCpnt2は、処理を実行し、又は処理中に中間データを保持するプロセッサCpnt1のための命令を保存するメインメモリを含んでいてよい。例えば、コンピュータシステムは、命令又はデータ(例えば、データテーブル)をストレージCpnt3から、又は他のソース(例えば、他のコンピュータシステム)からメモリCpnt2にロードしてもよい。プロセッサCpnt1は、メモリCpnt2からの命令とデータを1つ又は複数の内部レジスタ又は内部キャッシュにロードしてもよい。命令を実行するために、プロセッサCpnt1は内部レジスタ又は内部キャッシュから命令を読み出して復号してもよい。命令の実行中又はその後に、プロセッサCpnt1は1つ又は複数の結果(これは、中間結果でも最終結果でもよい)を内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリCpnt2、又はストレージCpnt3に書き込んでよい。バスCpnt6は、1つ又は複数のメモリバス(これは各々、アズレスバスとデータバスを含んでいてよい)を含んでいてよく、プロセッサCpnt1をメモリCpnt2及び/又はストレージCpnt3に連結してよい。任意選択により、1つ又は複数のメモリ管理ユニット(MMU)は、プロセッサCpnt1とメモリCpnt2との間のデータ伝送を容易にする。メモリCpnt2(これは、高速揮発性メモリであってもよい)には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、例えばダイナミックRAM(DRAM)又はスタティックRAM(SRAM)が含まれていてよい。ストレージCpnt3には、データ又は命令のための長期又は大容量メストレージを含んでいてよい。ストレージCpnt3はコンピュータシステムに内蔵されても外付けでもよく、ディスクドライブ(例えば、ハードディスクドライブHDD、又はソリッドステートドライブSSD)、フラッシュメモリ、ROM、EPROM、光ディスク、磁気光ディスク、磁気テープ、ユニバーサルシリアルバス(USB)-アクセス可能ドライブ、又はその他の種類の不揮発性メモリのうちの1つ又は複数を含んでいてよい。
【0130】
I/OインタフェースCpnt4は、ソフトウェア、ハードウェア、又はそれら両方の組合せであってよく、I/Oデバイスと通信するための1つ又は複数のインタフェース(例えば、シリアル又はパラレル通信ポート)を含んでいてよく、これはヒト(例えば、ユーザ)との通信を可能にしてもよい。例えば、I/Oデバイスとしては、キーボード、キーパッド、マイクロフォン、モニタ、マウス、プリンタ、スキャナ、スピーカ、スチールカメラ、スタイラス、テーブル、タッチスクリーン、トラックボール、ビデオカメラ、他の適当なI/Oデバイス、又はこれら2つ以上の組合せが含まれていてよい。
【0131】
通信インタフェースCpnt5は、他のシステム又はネットワークと通信するためのネットワークインタフェースを提供してもよい。通信インタフェースCpnt5は、Bluetooth(登録商標)インタフェース又はその他の種類のパケットベース通信を含んでいてよい。例えば、通信インタフェースCpnt5は、ネットワークインタフェースコントローラ(NIC)及び/又は、無線ネットワークとの通信のための無線NIC若しくは無線アダプタを含んでいてよい。通信インタフェースCpnt5は、WI-FIネットワーク、アドホックネットワーク、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、無線PAN(例えば、Bluetooth WPAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、携帯電話ネットワーク(例えば、汎欧州デジタル移動電話方式(Global System for Mobile Communications)(GSM(登録商標))ネットワーク等)、インタネット、又はこれらの2つ以上の組合せとの通信を提供してよい。
【0132】
バスCpnt6は、コンピューティングシステムの上述のコンポーネント間の通信リンクを提供してよい。例えば、バスCpnt6は、アクセラレーテッド・グラフィックス・ポート(Accelerated Graphics Port)(AGP)若しくはその他のグラフィクスバス、拡張業界標準(Enhanced Industry Standard)アーキテクチャ(EISA)バス、フロントサイドバス(FSB)、ハイパートランスポート(HyperTransport)(HT)インタコネクト、業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、インフィニバンド(InfiniBand)バス、low-pin-count(LPC)バス、メモリバス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA)バス、ペリフェラル・コンポーネント・インターコネクト(Peripheral Component Interconnect)(PCI)バス、PCI-Express(PCIe)バス、シリアル・アドバンスト・テクノロジ・アタッチメント(serial advanced technology attachment)(SATA)バス、ビデオ・エレクトロニクス・スタンダーズ・アソシエーション・ローカル(Video Electronics Standards Association
local)(VLB)バス、若しくはその他の適当なバス、又はこれらの2つ以上の組合せを含んでいてよい。
【0133】
本開示は、特定の数の特定のコンポーネントを特定の配置で有する特定のコンピュータシステムを説明し、図解しているが、本開示は何れの適当な数の何れの適当なコンポーネントを何れの適当な配置で有する何れの適当なコンピュータシステムも想定している。
【0134】
本明細書において、コンピュータ可読非一時的記憶媒体は、1つ又は複数の半導体ベース又はその他の集積回路(IC)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)若しくは特定用途IC(ASIC))、ハードディスクドライブ(HDD)、ハイブリッドハードドライブ(HHD)、光ディスク、光ディスクドライブ(ODD)、磁気光ディスク、磁気光ドライブ、フロッピディスケット、フロッピディスクドライブ(FDD)、磁気テープ、ソリッドステートドライブ(SSD)、RAM-ドライブ、SECURE DIGITALカード若しくはドライブ、その他のあらゆる適当なコンピュータ可読非一時的記憶媒体、又は適当であればこれらの2つ以上あらゆる適当な組合せを含んでいてよい。コンピュータ可読非一時的記憶媒体は、揮発性、不揮発性、又は適当であれば揮発性と不揮発性の組合せであってよい。
【0135】
本発明は幾つかの具体的な実施形態と共に説明されているが、当業者にとっては明白であるように、上記の説明を参照すれば多くのその他の代替案、改良、及び変形型が明らかである。それゆえ、本明細書に記載の発明は、付属の特許請求の範囲の主旨と範囲に含まれるかもしれないあらゆるこのような代替案、改良、応用、及び変形型の全てを包含することが意図されている。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
眼のターゲット領域を撮像するための眼科撮像システムであって、
照明ビームを生成する光源と、
前記照明ビームを受け取って、コリメートされていない経路に沿って前記照明ビームを合焦させる第1の光学要素と、
前記コリメートされていない経路にあり、かつ前記ターゲット領域の共役面に配置されたビーム走査機構であって、前記第1の光学要素からの前記照明ビームを受け取る入射口と、走査位置が走査機構の動きに依存する走査ビームを出力する射出口とを有するビーム走査機構と、
前記ビーム走査機構から前記走査ビームを受け取る第2の光学要素と、を備え、前記第2の光学要素は、前記走査ビームを眼の前記ターゲット領域に合焦させる、システム。
[付記2]
前記ターゲット領域が眼の網膜であり、前記ビーム走査機構が眼の網膜共役に配置されている、付記1に記載のシステム。
[付記3]
前記ビーム走査機構がKミラーを含む、付記1または2に記載のシステム。
[付記4]
前記ビーム走査機構は、光軸の方向に沿って前記照明ビームを受け取り、かつ前記光軸の同じ方向に沿って前記走査ビームを出力する、付記1乃至3の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記5]
前記第1の光学要素は走査レンズであり、前記第2の光学要素は接眼レンズであり、前記走査レンズは、前記照明ビームを前記ビーム走査機構内の焦点に合焦させる、付記1乃至4の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記6]
前記照明ビームは、前記光源の軸出力方向を横切るラインビームである、付記1乃至5の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記7]
前記ビーム走査機構は、二次元照明パターンを形成するように回転可能であり、前記二次元照明パターンは、前記ビーム走査機構の回転によって回転される前記走査ビームからなる、付記1乃至6の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記8]
前記ビーム走査機構は、前記射出口において前記走査ビームを出力する出力側反射面を含む複数の反射面を含み、前記出力側反射面は、半径方向に変位して前記走査ビームに対して対応する半径方向の変位を与えるように構成可能である、付記1乃至7の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記9]
前記出力側反射面が走査機構の射出軸に対して所定の角度にあり、前記出力側反射面が前記所定の角度に沿って半径方向に変位されており、前記照明ビームが第1の長さを有するラインビームであり、前記走査ビームが少なくとも前記ラインビームの長さだけ半径方向に変位する、付記8に記載のシステム。
[付記10]
照明パターンが環状形状を有する、付記9に記載のシステム。
[付記11]
前記ビーム走査機構が出力走査ビームの軸を中心に回転し、前記出力走査ビームは前記ビーム走査機構の回転ごとに複数回回転し、その複数回は1の倍数に限定される、付記1乃至10の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記12]
前記眼科撮像システムが、光干渉断層撮影システム(OCT)、光干渉断層撮影血管造影システム(OCTA)、または眼底撮像システムである、付記1乃至11の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記13]
前記光源が、線形の一連の発光ダイオード(LED)であり、発光ダイオードの各々が選択的に作動可能である、付記1乃至12の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記14]前記光源が、所定のパターンで作動可能な円形配置の発光ダイオード(LED)である、付記1乃至13の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記15]
前記ビーム走査機構が、第1のビーム周波数に対して反射性であり、かつ第2のビーム周波数に対して透過性である少なくとも1つの周波数選択光学系を含んでおり、前記ビーム走査機構が、前記第2のビーム周波数の光を前記射出口に向ける第2の光路を形成している、付記1乃至14の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記16]
前記ビーム走査機構の前記入射口にある前記照明ビームが、第1のビーム周波数の第1の光成分と第2のビーム周波数の第2の光成分とを含んでおり、出力走査ビームは、前記第1の光成分によって形成されており、前記第2の光成分は、前記射出口への第2の光経路に沿った固視像を形成する、付記1乃至15の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記17]
前記ビーム走査機構が、前記入射口で受け取られた前記照明ビームを反射する第1の表面と、第2の照明ビームに対して透過性を有する第2の表面とを有する少なくとも1つのミラーを含んでおり、前記第2の表面は、前記第1の表面とは反対側にあり、かつ前記ビーム走査機構の第2の入射口を形成している、付記1乃至16の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記18]
前記ビーム走査機構に結合された運動並進機構をさらに備えており、前記運動並進機構は、前記ビーム走査機構に一次元並進運動を与える、付記1乃至17の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記19]
前記運動並進機構が平行屈曲部を含む、付記18に記載のシステム。
[付記20]
前記運動並進機構が、偏心を備えた誘導アクチュエータまたはモータを含む、付記19に記載のシステム。
[付記21]
前記ビーム走査機構を含む第2の走査部品に入力される第1の走査信号を生成する第1の走査部品を含む走査システムをさらに備えており、
前記第1の走査部品は、眼の瞳孔共役に配置されており、前記第2の走査部品は、眼の網膜共役に配置されている、付記1乃至20の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記22]
前記第1の走査部品は、瞳孔共役に配置されたガルバノメータを含んでおり、前記ビーム走査機構は、網膜共役に配置されている、付記21に記載のシステム。
[付記23]
光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
照明ビームを生成する光源と、
瞳孔共役面に配置されており、かつ前記照明ビームの焦点フットプリントを受け取るビームスプリッタであって、前記ビームスプリッタは受け取られた前記照明ビームの第1の部分をサンプルアームに沿って撮像されるサンプルに方向付けるとともに、受け取られた前記照明ビームの第2の部分を参照アームに方向付ける、前記ビームスプリッタと、
瞳孔共役面に配置されており、前記瞳孔共役面に集光ウィンドウを形成するシステム瞳ストップと、
集光瞳を通って前記サンプルアームから戻る後方散乱光をキャプチャする光センサと、
前記光センサによってキャプチャされたデータを処理または保存するためのコンピューティングデバイスと、を備え、
前記ビームスプリッタは、前記集光ウィンドウの一部に及んでおり、かつ前記ビームスプリッタの両側に前記集光ウィンドウの少なくとも2つの未抽出領域を形成しており、
前記サンプルアームから戻る集光光は、前記ビームスプリッタの瞳孔共役面を通過するとともに、前記集光ウィンドウの前記未抽出領域を通過する、システム。
[付記24]
前記ビームスプリッタは、サンプルに方向付けられた光に対する照明領域と、サンプルアームから戻る後方散乱光に対する集光領域とを規定する瞳孔分割を提供する、付記23に記載のシステム。
[付記25]
前記ビームスプリッタは、前記照明ビームの受け取られた焦点フットプリントの形状に適合した形状を有する、付記23または24に記載のシステム。
[付記26]
前記ビームスプリッタの大きさは、前記照明ビームの受け取られた焦点フットプリントの大きさと同様である、付記23乃至25の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記27]
前記ビームスプリッタの形状が、前記照明ビームの受け取られた焦点フットプリントの形状と同様である、付記23乃至26の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記28]
前記コンピューティングデバイスは、前記光センサによってキャプチャされたデータに二次元(2D)FFT分析を適用しており、2D FFT分析は、参照信号と干渉信号とを分離する、付記23乃至27の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記29]
前記参照信号は、低空間周波数で前記干渉信号から分離される、付記28に記載のシステム。
[付記30]
前記2D FFT分析は、真の干渉信号をその複素共役からさらに分離する、付記28または29に記載のシステム。
[付記31]
深度分解画像は、前記2D FFT分析から決定された真の干渉信号に1D FFT分析を適用すること、およびその複素共役を除外することによって構築される、付記30に記載のシステム。
[付記32]
前記2D FFT分析は、前記集光瞳における後方散乱光の空間分布を決定する、付記28乃至31の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記33]
前記コンピューティングデバイスは、決定された空間分布に基づいて、前記集光瞳に対する患者の瞳孔の位置合わせ測定値を決定する、付記32に記載のシステム。
[付記34]
前記位置合わせ測定値に少なくとも部分的に基づいて、OCTシステムを患者の眼に位置合わせする自動瞳孔位置合わせ部品をさらに備える、付記33に記載のシステム。
[付記35]
瞳ストップが、軸上構成と軸外構成との間で切り替え可能であるように自動化されている、付記23乃至34の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記36]
光干渉断層撮影(OCT)システムであって、
照明ビームを生成する光源と、
瞳孔共役面に配置されており、かつ照明ビームの焦点フットプリントを受け取るビームスプリッタであって、前記ビームスプリッタは受け取られた前記照明ビームの第1の部分をサンプルアームに沿って撮像されるサンプルに方向付けるとともに、受け取られた前記照明ビームの第2の部分を参照アームに方向付ける、前記ビームスプリッタと、
瞳孔共役面に配置されたシステム集光瞳と、
前記参照アームから、かつ前記サンプルアームから集光瞳を通って戻る後方散乱光をキャプチャする光センサと、
前記光センサによってキャプチャされたデータを分析すること、前記後方散乱光と参照光との干渉に基づいて、前記集光瞳内の前記後方散乱光の空間分布を抽出することを行うコンピューティングデバイスと、を備えるシステム。
[付記37]
分析によって干渉信号の空間周波数成分が抽出される、付記36に記載のシステム。
[付記38]
前記後方散乱光と前記参照光との干渉によって、少なくとも1つの空間次元における空間フリンジが生成される、付記36または37に記載のシステム。
[付記39]
分析は、少なくとも1つの次元に沿ってキャプチャされたデータに対してフーリエ変換を実行することを含んでいる、付記36乃至38の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記40]
OCTシステムは、焦点フットプリントがラインビームであるラインフィールドOCTシステムであり、少なくとも1つの次元が前記ラインビームの長さに平行である、付記36乃至39の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記41]
分析は、キャプチャされたデータに対して二次元フーリエ変換を実行することを含んでいる、付記36乃至40の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記42]
前記サンプルは眼であり、前記コンピューティングデバイスは、前記後方散乱光の前記空間分布に少なくとも部分的に基づいて、集光瞳に対する眼の瞳孔の位置合わせに関する位置合わせ情報をさらに抽出する、付記36乃至41の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記43]
前記位置合わせ情報に少なくとも部分的に基づいてOCTシステムを眼に位置合わせする自動瞳孔位置合わせ部品をさらに備える、付記42に記載のシステム。
[付記44]
前記位置合わせ情報が電子ディスプレイ上に表示される、付記42または43に記載のシステム。
[付記45]
前記コンピューティングデバイスは、前記位置合わせ情報に基づいて位置合わせ不良の考えられる原因を識別する、付記42乃至44の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記46]
キャプチャされた前記後方散乱光は、前記サンプル上の二次元領域に及ぶ複数のBスキャンを構成しており、
前記空間分布は、前記複数のBスキャンの各々から抽出されており、
前記コンピューティングデバイスは、抽出された前記空間分布に基づいて前記サンプルのOCTシステムへの位置合わせに関連する位置合わせ情報を抽出する、付記36乃至45の1つまたは複数に記載のシステム。
[付記47]
前記位置合わせ情報は、前記複数のBスキャンのうちの少なくとも1つスキャンの空間分布と、眼の瞳孔が前記集光瞳に対して許容可能な位置合わせ内にある状態に対応する参照空間分布との比較に少なくとも部分的に基づくものである、付記46に記載のシステム。
[付記48]
前記位置合わせ情報は、前記複数のBスキャンにおける1つのBスキャンから別のBスキャンへの空間分布の変化に少なくとも部分的に基づくものである、付記46または47に記載のシステム。
[付記49]
前記複数のBスキャンの各々から抽出された空間分布は、少なくとも2つの干渉パターンを含んでおり、
前記空間分布の変化は、1つのBスキャンと別のBスキャンとを比較した場合の、少なくとも2つの干渉パターン間の距離の変化を含んでいる、付記48に記載のシステム。