(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】プリント回路基板をデバッグするための方法、装置、およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
G01R 31/28 20060101AFI20240917BHJP
G06F 11/22 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
G01R31/28 G
G01R31/28 Z
G06F11/22 673F
(21)【出願番号】P 2022526208
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 NL2020050687
(87)【国際公開番号】W WO2021091376
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-07-05
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510297082
【氏名又は名称】ジェーティーエージー テクノロジーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン エインデン、ペトラス マリナス コーネリス マリア
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102803(JP,A)
【文献】特開2005-214957(JP,A)
【文献】特開2011-227014(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1542459(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/28-31/3193、
G06F 11/22-11/277
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板、及び/又は、そのようなプリント回路基板のための少なくとも1つのテストパターンをデバッグするための方法であって、前記プリント回路基板は、前記プリント回路基板上に搭載された複数のデバイスであって、前記複数のデバイスを相互接続するための回路端子を有する、複数のデバイスを備え、前記複数のデバイスは、バウンダリスキャン対応回路端子を有し、かつ、前記バウンダリスキャン対応回路端子のバウンダリスキャンセルのバウンダリスキャンレジスタを備える少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスを備え、前記方法は、処理ユニットを用い、かつ、
前記処理ユニットにより、前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャンプロパティを取得するステップであって、前記バウンダリスキャンプロパティは、前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャン対応回路端子のリストを少なくとも備える、ステップと、
前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスの接続性プロパティを取得するステップであって、前記接続性プロパティは、前記複数のデバイスの前記回路端子間の相互接続のリストを少なくとも備える、ステップと、
前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板上に搭載された前記複数のデバイスの少なくとも一部の回路グラフを表示するステップであって、前記回路グラフは、前記プリント回路基板上に搭載された前記複数のデバイスのうち少なくとも1つのデバイスと、前記デバイスの回路端子に相互接続される回路端子を備える
全ての別のデバイスとを、前記プリント回路基板をデバッグするために、少なくとも前記デバイス、前記
全ての別のデバイス、および前記デバイス間の相互接続を視覚化するために備え、前記デバイスは、前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板、前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイス、および前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスのうちの1つの回路端子、のグループの1つの選択を受けることにより決定されている、ステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記デバイスは、前記処理ユニットにより、少なくとも1つのプリント回路基板の選択を受けることによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デバイスは、前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板に搭載された少なくとも1つのデバイスの選択を受けることによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記デバイスは、前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスのうちの1つの回路端子の選択を受けることによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記表示するステップは、前記処理ユニットにより、前記複数のデバイスのうち少なくとも一部の回路グラフを表示することを備え、表示された前記複数のデバイスの各々について、前記デバイスに対応してプロパティが表示される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記プロパティは、回路端子の数、バウンダリスキャン対応回路端子の数、デバイスのタイプ、デバイスの前記タイプの連続番号識別、および相互接続された回路端子からなる群のうちの1つ以上を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、バウンダリスキャンプロパティの前記リストおよび前記接続性プロパティからバウンダリスキャン透過デバイスを決定することをさらに備え、前記バウンダリスキャン透過デバイスは、バウンダリスキャンテストのデータが無調整の方法で前記デバイスを通過するデバイスによって定義される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板に搭載された前記バウンダリスキャン対応デバイスのチェーンのバウンダリスキャン対応回路端子の少なくとも1つのバウンダリスキャン対応回路端子をバウンダリスキャンテストにかけることをさらに備える、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記バウンダリスキャンテストは、前記プリント回路基板に搭載された前記デバイスの前記接続性プロパティを生成するために動作する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記バウンダリスキャンプロパティは、前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャン記述言語(BSDL)ファイルから取得される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
グラフィカルインターフェース装置をさらに備え、表示するステップ、受けるステップ、操作するステップ、および提示するステップの少なくとも1つは、前記グラフィカルインターフェース装置から制御される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
プリント回路基板、及び/又は、そのようなプリント回路基板のための少なくとも1つのテストパターンをデバッグするためのデバッグ装置であって、前記プリント回路基板は、前記プリント回路基板上に搭載された複数のデバイスであって、前記複数のデバイスを相互接続するための回路端子を有する、複数のデバイスを備え、前記複数のデバイスは、バウンダリスキャン対応回路端子を有し、かつ、前記バウンダリスキャン対応回路端子のバウンダリスキャンセルのバウンダリスキャンレジスタを備える少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスを備え、前記デバッグ装置は、
前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャンプロパティを取得するステップであって、前記バウンダリスキャンプロパティは、前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャン対応回路端子のリストを少なくとも備える、ステップと、
前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスの接続性プロパティを取得するステップであって、前記接続性プロパティは、前記複数のデバイスの前記回路端子間の相互接続のリストを少なくとも備える、ステップと、
前記プリント回路基板上に搭載された前記複数のデバイスの少なくとも一部の回路グラフを表示するステップであって、前記回路グラフは、前記プリント回路基板上に搭載された前記複数のデバイスのうち少なくとも1つのデバイスと、前記デバイスの回路端子に相互接続される回路端子を備える
全ての別のデバイスとを、前記プリント回路基板をデバッグするために、少なくとも前記デバイス、前記
全ての別のデバイス、および前記デバイス間の相互接続を視覚化するために備え、前記デバイスは、処理ユニットにより、前記プリント回路基板、前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイス、および前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスのうちの1つの回路端子、のグループの1つの選択を受けることにより決定されている、ステップと、
を行うように構成される電子処理を備える、デバッグ装置。
【請求項13】
プログラムコードデータが電子処理ユニットのメモリにロードされ、かつ、前記電子処理ユニットにより実行されるとき、請求項1から11のいずれかに記載の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムコードデータを記憶するデータ記憶装置を備える、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、1つ以上のプリント回路基板のデバッグに関する。
【0002】
本開示は、さらに、プリント回路基板をテストするための装置、およびデバッグ装置、ならびにコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0003】
プリント回路基板は、多数の電子コンポーネントを備えてもよく、これらのコンポーネントは、例えばコンタクトパッドを介してプリント回路基板に取り付けられる。導電性トラックは、それらの導電性パッドを介してコンポーネントを接続する。
【0004】
最近のプリント回路基板は、層間にトレース層または導電性トラックを持つ多層プリントを有する。そのため、プリント回路基板の上層と下層のトラックのみが視認可能である。最近のプリント回路基板は4層から8層を備え得るので(より多くの層も普通であり得るが)、ほとんどのトラックは見えない。したがって、コンポーネントのピンの多くは見えないため、コンポーネントのピンの多くをデバッガにより識別することが困難であるため、このようなプリント回路基板のテストおよびデバッグは困難である。また、多くのコンポーネントとトラックは非常に小さいため、このことがテストとデバッグをさらに複雑にする。
【0005】
また、コンポーネントの1つ又はトラックの1つによる故障は、すでにプリント回路基板の全体に故障を起こし得る。したがって、各コンポーネントと全てのトラックは、正しく機能するよう監視および試験されることができるのが望ましい。
【0006】
このため、プリント回路基板の設計段階において、バウンダリスキャン機能が基板に搭載され得る。バウンダリスキャンでは、電子シリアルインタフェースが提供され、これは今日の多くの電気コンポーネント、例えば集積回路の組み込みロジックへのアクセスを可能にする。バウンダリスキャンコンポーネントで、ロジックテスト、例えば外部テストプローブなしでのデバイス間の接続のテスト、例えばFPGAのプログラミングのためのプログラミングロジック、集積回路とマイクロコントローラのロジックのデバッグなど、いくつかの機能が基板に追加される。
【0007】
現在のプリント回路基板の多くは、バウンダリスキャンデバイスを搭載する。これらのプリント回路基板は、バウンダリスキャンテスト(BST)を実行することによりテストできる。バウンダリスキャンテスト(BST)は、プリント回路基板のテストを支援するために開発された方法であり、規格(IEEE Std. 1149.1--1990)に定められている。
【0008】
PCBの故障を検出するため、テストパターンまたはテストベクタを開発する必要があり、すべての故障をカバーし、かつ、できるだけ簡単に診断するテストベクタまたはテストパターンが好ましい。バウンダリスキャンテストでこのようなテストベクタを使用することは、プリント回路基板とその個々のコンポーネントとトラックのいくつかの機能的側面をテストするために非常に有益であり、かつ、どのコンポーネントが互いに接続されているか検査するためにも適切である。
【0009】
バウンダリスキャンは、PCBのすべての段階においてツールを提供する。つまり、設計段階では、バウンダリスキャンは、PCBが生産に移される前であっても、PCBの特定の側面のアドホックなデバッグのためのツールをPCBの設計者に提供する。設計が完了し、対応するテストベクタが開発されている場合、製造テスト段階で、組み立てられた基板は故障に関してテストされ得る。その後、サービス段階のバウンダリスキャンの類似性は、アドホックなデバッグのためのツールを提供する。
【0010】
PCBのすべての段階で、設計者、テスト者、およびサービスエンジニアは、テストの出力が期待通りかどうか決定するために(アドホックな)バウンダリスキャンテストを実行し得る。徹底した設計と製造であれば、ほとんどの出力は期待通りになり、テストはパスするであろう。しかし、すべての設計と製造と同様に、時には結果は期待通りではない。そのような場合、設計者および/またはテスト者は、デバッグを行い、テストの細部にまで入り込んで、どこにエラーがあるか決定しなければならないであろう。これは非常に困難であり得る。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、1つ以上のバウンダリスキャン対応デバイスを用いて、プリント回路基板およびプリント回路基板のためのテストパターンをデバッグするための簡略化された効率的な方法を提供することである。
【0012】
この目的は、本開示の第1の態様において、プリント回路基板、及び/又は、そのようなプリント回路基板のための少なくとも1つのテストパターンをデバッグするための方法であって、前記プリント回路基板は、前記プリント回路基板上に搭載された複数のデバイスであって、前記複数のデバイスを相互接続するための回路端子を有する、複数のデバイスを備え、前記複数のデバイスは、バウンダリスキャン対応回路端子を有し、かつ、前記バウンダリスキャン対応回路端子のバウンダリスキャンセルのバウンダリスキャンレジスタを備える少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスを備え、前記方法は、電子処理ユニットを用い、かつ、
前記処理ユニットにより、前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャンプロパティを取得するステップであって、前記バウンダリスキャンプロパティは、前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャン対応回路端子のリストを少なくとも備える、ステップと、
前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスの接続性プロパティを取得するステップであって、前記接続性プロパティは、前記複数のデバイスの前記回路端子間の相互接続のリストを少なくとも備える、ステップと、
前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板上に搭載された前記複数のデバイスの少なくとも一部の回路グラフを表示するステップであって、前記回路グラフは、前記プリント回路基板上に搭載された前記複数のデバイスのうち少なくとも1つのデバイスと、前記デバイスの回路端子に相互接続される回路端子を備える前記複数のデバイスからの少なくとも1つの別のデバイスとを、前記プリント回路基板をデバッグするために、少なくとも前記デバイス、前記別のデバイス、および前記デバイス間の相互接続を視覚化するために備え、前記デバイスは、前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板、前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイス、および前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスのうちの1つの回路端子、のグループの1つの選択を受けることにより決定されている、ステップと、
を備える方法により、達成される。
【0013】
バウンダリスキャンにより、PCB上のコンポーネントおよびこれらのコンポーネント間の相互接続の正確さを検証するための低コストなツールが提供される。バウンダリスキャンは、プリント回路基板の表面にあるコンポーネントと相互接続だけでなく、多層PCBの中間層にあるコンポーネントと相互接続についても、特定の機能面、および、PCB内のコンポーネントとネットの構造的なテストの両方を可能にする。
【0014】
バウンダリスキャンにより、設計者、テスト者、およびサービスエンジニアは、PCBの特定の側面をデバッグするためのツールを与えられる。設計段階では、PCBのテストをより効率的に、即ちバウンダリスキャンテストを用いて、行えるように、バウンダリスキャン対応デバイスを選択することが、例えば、設計者を助け得る。テスト段階では、テスト者は事前に定義されたバウンダリスキャンテストまたはテストベクタを実行してもよく、すべてのコンポーネントと相互接続がテストに応じて期待通りに動作するかどうか判断し得る。
【0015】
バウンダリスキャンテストが失敗した場合、つまりテスト対象のコンポーネントおよび/または相互接続が失敗を示すか、または、テストの出力データが期待通りでない場合、さらなる試験とエラーの場所を決定するためにデバッグが必要であり得る。
【0016】
多くの場合、テスト者または設計者は、バウンダリスキャンテストの出力から、エラーが発生した場所の少なくともいくつかの詳細を受け取るか又は決定し得る。例えば、PCB上のあるコンポーネントまたはコンポーネントのブロックでテストが失敗する。デバッガは、次に、そのブロック内またはその近傍のコンポーネントをさらに調査したいが、それは、小型化されたコンポーネントと(隠れた)相互接続のために決定が困難である。
【0017】
現在、デバッガは、プローブテスト、ならびに、PCBの設計詳細を検査する、即ち回路レイアウト、コンポーネントのリスト、コンポーネントの位置およびネットリストを検査するなどの従来のデバッグ技術を採用し得る。しかし、デバッガは、そのような情報へのアクセス又はそのような情報を常に自由に持つことはない。
【0018】
本開示の第1の態様による提示された方法では、バウンダリスキャンテスト装置または汎用コンピュータなどの処理ユニットは、プリント回路基板上のバウンダリスキャン対応デバイスのプロパティを取得するであろう。処理ユニットは、PCB上のデバイス間の相互接続のリストも得る。このデータが得られると、処理ユニットは、コンポーネントと相互接続を知り、かつ、グラフィックユーザインタフェースを通じて、コンポーネント及び/又は相互接続の選択をユーザから得て、グラフィックユーザインタフェースを通じてその視覚的表示を提供するであろう。
【0019】
このようにPCBの開発段階で、PCB設計者は、バウンダリスキャンテストを開発し、かつ、テストの結果が正しくないこと、例えばコンポーネントが応答しない、もしくはコンポーネントが期待されるものとは異なって応答することを決定し得るか、または、設計のある態様により、そのようなテストが実行できないこと、もしくは期待よりも少ない部分が実行できることを発見し得る。このような場合、設計者は、テストが失敗するところ、またはテスト結果の結果が期待通りでないところで、PCBのコンポーネントが他のコンポーネントと相互作用するかどうか決定するためにデバッグを開始し得る。この必要性は、設計段階でのテストの予期せぬ結果の間に生じるだけでなく、PCBが既に組み立てられたが、PCBのテストがコンポーネントまたはコンポーネントのサブブロックまたは相互接続が故障していることを指摘した、テスト段階での失敗したテストの間にも生じる。
【0020】
PCBのデバッグおよび/またはPCBのテストベクタの開発中のデバッグのために、そしておそらくは他の段階でも、回路レイアウト(の一部)を視覚化する必要性があることは、本発明者の洞察であった。これは、デバッガが問題を解決するために必要な情報を取得し、かつ、その結果が期待通りになるまでテストを再実行することを支援する。この目的のために、第1の態様による方法では、処理ユニットは、グラフィックユーザインターフェースを介して、すべてのコンポーネントとそれらのピンのリストを生成し、表示するであろう。ユーザは、複数のコンポーネントのうちの1つの複数のピンのうちの1つを選択してもよく、かつ、その選択と、バウンダリスキャン対応デバイスの得られたバウンダリスキャンプロパティおよび相互接続のリストとに基づいて、処理ユニットが、ピンが選択されたコンポーネントの回路グラフにおけるどの別のコンポーネントがそれに接続されているか決定できるようにし得る。これらのコンポーネントを含む回路グラフ、つまり選択されたピンを持つコンポーネント、および、同じ回路グラフの任意の他のコンポーネントは、グラフィカルユーザインターフェースを通じてユーザに示され、ユーザはデバッグのための簡単でわかりやすい方法を提供される。
【0021】
一例では、前記デバイスは、前記処理ユニットにより、少なくとも1つのプリント回路基板の選択を受けることによって決定される。
【0022】
一例では、前記デバイスは、前記処理ユニットにより、前記少なくとも1つのプリント回路基板の前記選択のプリント回路基板に搭載された少なくとも1つのデバイスの選択を受けることによって決定される。
【0023】
一例では、前記デバイスは、前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスのうちの1つの回路端子の選択を受けることによって決定される。
【0024】
PCBをデバッグするための第1の態様による可視化方法は、グラフィカルユーザインタフェースを通じて、ユーザの選択の回路グラフの全体または一部を可視化できる。選択は、PCB全体を含んでもよく、それは、すべてのコンポーネントを有する複数の回路グラフの可視化をもたらす。選択は、単一のデバイスを含んでもよく、それは、そのグラフのすべてのコンポーネントを有する回路グラフの視覚化をもたらす。そして最後に、選択は、デバイスの単一のピンまたは回路端子であってもよく、それに接続されるデバイスまたは複数のデバイス、および、したがってその回路グラフが視覚化される。
【0025】
一例では、前記表示するステップは、前記処理ユニットにより、前記複数のデバイスのうち少なくとも一部の回路グラフを表示することを備え、表示された前記複数のデバイスの各々について、前記デバイスに対応してプロパティが表示される。
【0026】
一例では、前記プロパティは、回路端子の数、バウンダリスキャン対応回路端子の数、デバイスのタイプ、デバイスの前記タイプの連続番号識別、および相互接続された回路端子からなる群のうちの1つ以上を備える。
【0027】
デバイスの視覚化に加えて、表示される情報は、そのデバイスのピンもしくはコンタクトパッドの数などのさらなる情報、または、ユーザが、例えば抵抗器、マイクロコントローラなど、それがどのコンポーネントであるか分かり得る情報を含んでもよい。
【0028】
一例では、前記方法は、バウンダリスキャンプロパティの前記リストおよび前記接続性プロパティからバウンダリスキャン透過デバイスを決定することをさらに備え、前記透過デバイスは、バウンダリスキャンテストのデータが無調整の方法(non-adjusted manner)で前記デバイスを通過するデバイスによって定義される。
【0029】
PCB上のデバイスまたはコンポーネントは、バウンダリスキャンの目的のために、透過デバイス(トランスペアレントデバイス)と見なされ得る。そのような透過デバイスの例は、特定の状況下で受動/非能動コンポーネントであるためのトラックと見なされる抵抗器である。この場合、この透過デバイスが一部を構成する回路グラフは、透過デバイスの両方のピン上のコンポーネントまたはデバイスを含むであろう。したがって、表示される回路グラフは、両方のピンのグラフを視覚化するであろう。複数の透過デバイスの場合、2つ以上の回路グラフが1つの単一のグラフに結合されてもよく、例えば2つ、3つ、またはそれ以上のグラフを、ユーザに表示するための1つのグラフに結合する。
【0030】
好ましくは、ユーザまたはデバッガ(開発者、テスト者またはサービスエンジニア)は、コンポーネントのどれが透過であるかを選択または変更することができ、したがって、視覚化された結合回路グラフを持つであろう。これらの透過コンポーネントの多くが互いに接続されている場合、視覚化された回路グラフは、グラフィカルユーザインタフェースを介してその簡単で分かりやすい提示を行うには大きくなりすぎるかもしれない。この目的のために、本方法は、好ましくは、回路グラフにおけるコンポーネントの最大数の入力がユーザから得られるステップを備える。
【0031】
一例では、前記方法は、前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板に搭載された前記バウンダリスキャン対応デバイスのチェーンのバウンダリスキャン対応回路端子の少なくとも1つのバウンダリスキャン対応回路端子をバウンダリスキャンテストにかけることをさらに備える。
【0032】
一例では、前記バウンダリスキャンテストは、前記プリント回路基板に搭載された前記デバイスの前記接続性プロパティを生成するために動作する。
【0033】
一例では、前記バウンダリスキャンプロパティは、前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャン記述言語(BSDL)ファイルから取得される。
【0034】
一例では、方法は、グラフィカルインターフェース装置をさらに備え、表示するステップ、受けるステップ、操作するステップ、および提示するステップの少なくとも1つは、前記グラフィカルインターフェース装置から制御される。
【0035】
本開示の第2の態様では、プリント回路基板、及び/又は、そのようなプリント回路基板のための少なくとも1つのテストパターンをデバッグするためのデバッグ装置であって、前記プリント回路基板は、前記プリント回路基板上に搭載された複数のデバイスであって、前記複数のデバイスを相互接続するための回路端子を有する、複数のデバイスを備え、前記複数のデバイスは、バウンダリスキャン対応回路端子を有し、かつ、前記バウンダリスキャン対応回路端子のバウンダリスキャンセルのバウンダリスキャンレジスタを備える少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスを備え、前記デバッグ装置は、
前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャンプロパティを取得するステップであって、前記バウンダリスキャンプロパティは、前記少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャン対応回路端子のリストを少なくとも備える、ステップと、
前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスの接続性プロパティを取得するステップであって、前記接続性プロパティは、前記複数のデバイスの前記回路端子間の相互接続のリストを少なくとも備える、ステップと、
前記プリント回路基板上に搭載された前記複数のデバイスの少なくとも一部の回路グラフを表示するステップであって、前記回路グラフは、前記プリント回路基板上に搭載された前記複数のデバイスのうち少なくとも1つのデバイスと、前記デバイスの回路端子に相互接続される回路端子を備える前記複数のデバイスからの少なくとも1つの別のデバイスとを、前記プリント回路基板をデバッグするために、少なくとも前記デバイス、前記別のデバイス、および前記デバイス間の相互接続を視覚化するために備え、前記デバイスは、前記処理ユニットにより、前記プリント回路基板、前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイス、および前記プリント回路基板に搭載された前記複数のデバイスのうちの1つの回路端子、のグループの1つの選択を受けることにより決定されている、ステップと、
を行うように構成される電子処理を備える、デバッグ装置が提供される。
【0036】
本開示の第3の態様では、プログラムコードデータが電子処理ユニットのメモリにロードされ、かつ、前記電子処理ユニットにより実行されるとき、上記態様および例のうちいずれかの方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムコードデータを記憶するデータ記憶装置を備える、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0037】
本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴は、本実施形態の詳細な説明および図面を参照することにより、容易に理解され、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本開示の一態様による方法のステップをフローチャートの態様で示す。
【
図2】
図2は、例示的な態様で、本開示の一態様による方法を実行するためのグラフィカルユーザインターフェースを示す。
【
図3】
図3は、例示的な態様で、本開示の一態様によるグラフィカルユーザインタフェースにおける回路グラフの提示を示す。
【
図4】
図4は、例示的な態様で、本開示の一態様によるグラフィカルユーザインタフェースにおける別の回路グラフの提示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、プリント回路基板、PCBをデバッグするための方法のステップのフローチャート100を示す。デバッグは広義に解釈され、このことは、デバッグが設計、製造、テスト、およびPCBに対する測定の実行のいくつかの段階で実行され得ることを意味する。設計段階では、PCB設計者は、どのコンポーネント(例えば、どのサプライヤからのどのタイプのデバイス)をPCB上のどの物理的位置に配置されるべきか定義している。コンピュータは、このような決定において設計者を助ける。好ましくは、設計者は、可能であれば、デバイスもしくはコンポーネント、より好ましくはコンポーネントのサブブロック、または、さらに好ましくはPCB全体、もしくはいくつかのPCBの完全なシステムが、バウンダリスキャンテストを行うように配置されるように、バウンダリスキャン対応デバイスを選択する。
【0040】
この目的のために、PCBは、相互接続またはトラックを介して、電力供給するための、および/または、電子コンポーネントを電源およびPCB上の他のコンポーネントと接続するための少なくとも1つ、しかし大抵は2つ以上の回路端子またはコンタクトパッドを有する少なくとも1つのバウンダリスキャン対応デバイスを備える。
【0041】
バウンダリスキャン機能を提供するために、バウンダリスキャン対応デバイスは、回路端子のそれぞれに関するスキャンセルを含むための追加ロジックを備える。セルは互いに接続され、バウンダリスキャンセルのチェーンまたはバウンダリスキャンシフトレジスタを形成する。バウンダリスキャン対応デバイスは、レジスタのためのインターフェースとしての、かつ、クロック信号、リセットなどの制御回路を提供するためのテストアクセスポートをさらに備える。バウンダリスキャンレジスタを形成するバウンダリスキャンセルは、テストデータ入力から、異なるバウンダリスキャンセルを経て、テストデータ出力に、データをシフトするように構成されている。テストアクセスポートは、各々の異なるバウンダリスキャンセルを制御し、例えば、対応するバウンダリスキャン回路端子に論理信号を出力するドライバとして動作させる。また、セルは、その回路端子の論理信号を取り込むためのセンサとして動作するように制御され得る。
【0042】
いくつかのバウンダリスキャン対応デバイスは、一緒に直列に相互接続されることができる。これは、バウンダリスキャン対応デバイスのテストデータ出力を、別のバウンダリスキャン対応デバイスのテストデータ入力に接続することにより行うことができる。このようにして、例えば電子処理ユニットまたは汎用コンピュータとのインターフェースを介して、制御インターフェースまたはバウンダリスキャンコントローラから制御可能なバウンダリスキャンチェーンが形成される。
【0043】
図1に示すように、本開示のバウンダリスキャン方法は、PCBをデバッグするために構成される。PCBは、複数のコンポーネントを備え、それらのうちの少なくとも1つまたはいくつかは、PCBに搭載され、かつ、デバイスを相互接続するための回路端子を有するバウンダリスキャン対応デバイスである。回路端子は、それらがバウンダリスキャンセルのバウンダリスキャンレジスタを備えることを意味するバウンダリスキャン対応回路端子である。この方法は、PCB設計者、テスト者、またはPCBを扱う他のユーザに対して簡略化された効率的なデバッグ機能を有効にするためのいくつかのステップを備える。
【0044】
最初のステップ110では、処理ユニットは、PCB上のバウンダリスキャンに対応するデバイスのバウンダリスキャンプロパティを取得する。これらのプロパティは、PCBに搭載されたバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャン記述言語(BSDL)ファイルから取得されてもよい。BSDLファイルの情報は、
図2に示されるように、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)にも利用されている。
【0045】
ステップ110の後、前、または並列に実行されてもよい次のステップ120において、処理ユニットは、上記プリント回路基板に搭載された複数のデバイスの接続性プロパティを取得する。接続性プロパティは、上記デバイスの上記回路端子間の相互接続のリストを少なくとも備える。これらの相互接続プロパティまたはトラックデータは、PCB上のすべてのネットまたは回路を記述する、したがって、どのデバイスまたはコンポーネントのどのピンまたは回路端子が互いに接続されるかを記述する、いわゆるネットリストから取得されてもよい。
【0046】
デバイスおよび相互接続プロパティが取得されると、処理ユニットは、GUIを介してユーザ(デバッガ)に情報を表示し得る。表示されるものは、コンポーネント、これらのコンポーネントの回路端子、およびネットリストのリストである。したがって、ユーザは、(すべてのコンポーネントの)すべての回路端子、すべてのコンポーネント、すべてのネット、またはPCB全体のリストを提示され得る(130)。次に、ユーザは、GUIを介して、リストから1つを選択し得る。
【0047】
処理ユニットは、ユーザからのリストの選択を受け(140)、コンポーネントの1つが選択されたコンポーネントであるか若しくは選択された回路端子を備えるグラフに含まれる複数のコンポーネントを有する回路グラフを視覚化し(150)、または、代わりに、ステップ130で選択されたPCBの一部を形成する全ての回路グラフが視覚化される。
【0048】
図2において、バウンダリスキャンテストを開発及び/又はテストするためのバウンダリスキャンアプリケーションの一例のGUI200が示されている。GUI200を通じて、ユーザは、バウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャンプロパティを取得し、かつ、接続性プロパティを取得するために、処理ユニットを制御でき得る。GUI200は、バウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャンプロパティ及び接続性プロパティを抽出するために、複数のソースから回路図をインポートするように構成されてもよい。
【0049】
図2に示すGUI200は、いくつかのセクション210,220,230,240,250を備える。第1のセクション210では、例えば基板の数および基板(PCB)の詳細の情報を備えるプロジェクトの詳細が表示され得る。ボードの1つを選択することにより、ボード上のデバイスの詳細がセクション220に表示される。これらは、例えば
図2にデバイスQ1,R9,U12およびR8により示されるようなバウンダリスキャン対応デバイスのバウンダリスキャンプロパティを備える。デバイスプロパティの下には、ネットプロパティのためのセクション230があり、それは基板上にどのネットが存在するか示している。一番下には、アプリケーションを実行する際の選択とステップの詳細またはログを表示するための別のログ250のセクションが設けられる。
【0050】
PCB、デバイスまたはコンポーネント、回路端子またはネットを選択した後、対応する回路グラフは、好ましくはセクション210,220および230の上のオーバーレイである別の回路グラフエクスプローラ240に提示される。
図3および
図4では、回路グラフエクスプローラ240のより詳細な図が示される。
【0051】
図3では、回路グラフエクスプローラ240は、4つのデバイス、すなわち2つの集積回路320,330および2つの抵抗器310,340と共に示されている。抵抗器350の近くにあるアイコン350は、リストの選択、すなわち、この場合はデバイスを示す。デバイスの間には、回路内の各デバイスがどのように接続されているか示すための相互接続も表示されている。
【0052】
いくつかの回路グラフは多数のコンポーネントを備え得るので、コンポーネントの最大数は、好ましくは設定可能である。好ましくは、可視化されたコンポーネントは、行と列の配列に配置され、このことは、ユーザに列ごと及び行ごとのコンポーネントの最大数を設定できるようにして、回路グラフの可読性を向上する。
【0053】
図4では、回路グラフ240のより精巧な例が、多数のデバイスとともに示されている。示されるように、デバイス410,420,430,440,450,460,470,480,490,510は、デバイス、例えば抵抗器410,460,490のタイプおよびデバイス492のタイプのシーケンス番号を示す追加情報を備える。さらに、どのピンまたは回路端子がどのデバイスと接続するか示すために、回路端子の識別情報も好ましくは491で示される。
【0054】
図4に示すように、抵抗器R3,460は、部分的に透けて見え、それはデバイスがバウンダリスキャン透過デバイスとみなされるか、または、そのように構成されることを示す。
【0055】
開示された例に対する他の変形は、クレームされた開示を実施する当業者によって、図面、開示および添付の請求項の検討から理解され、効果を発揮することができる。請求項において、単語「備える」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載された複数の項目の機能を果たしてもよい。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実だけで、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体などの適切な媒体に記憶/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線又は無線通信システムを介してなどの他の形態で配布されることもできる。請求項に記載された参照符号は、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。同様の参照符号は、類似または同等の機能を示す。
【0056】
本開示は、上記に開示されたような例に限定されず、当業者によって、発明的な技術を適用することなく、添付の請求項に開示された本開示の範囲を超えて、任意のデータ通信、データ交換及びデータ処理環境での使用のために修正及び拡張することが可能である。