(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】グランド部材付シールドプリント配線板及びグランド部材
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240917BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240917BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H05K9/00 R
H05K1/03 670
H05K1/03 650
H05K1/03 630G
H05K1/02 P
H05K1/02 B
(21)【出願番号】P 2022550596
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2021034019
(87)【国際公開番号】W WO2022059726
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020157507
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】春名 裕介
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-156457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 1/03
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム上にグランド回路を含むプリント回路と絶縁フィルムを順次設けてなる基体フィルムと、
シールド層、及び、前記シールド層に積層された保護層からなり、前記シールド層が前記保護層よりも前記基体フィルム側に配置されるように前記基体フィルムを被覆するシールドフィルムと、
前記シールドフィルムの保護層に配置されたグランド部材を備えるグランド部材付シールドプリント配線板であって、
前記グランド部材は、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、
前記第1主面側に配置された導電性粒子と、
前記導電性粒子を前記第1主面に固定する接着性樹脂とからなり、
前記グランド部材の断面における前記導電性粒子の断面の円形度が、0.35以上であり、かつ、前記導電性粒子は、前記シールドフィルムの保護層を貫いて前記シールドフィルムのシールド層に接続しており、
前記グランド部材の外部接続部材は、外部グランドと電気的に接続可能になって
おり、
前記グランド部材の外部接続部材の厚みは、5~10μmであることを特徴とするグランド部材付シールドプリント配線板。
【請求項2】
前記導電性粒子の断面の平均円相当径は、前記シールドフィルムの前記保護層の厚みの2倍以上である請求項1に記載のグランド部材付シールドプリント配線板。
【請求項3】
前記導電性粒子は、銅、銀、ニッケル、銀コート銅、銀コートニッケル、錫コート銅及び錫コートニッケルからなる群から選択される少なくとも一種からなる請求項1又は2に記載のグランド部材付シールドプリント配線板。
【請求項4】
前記外部接続部材は、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン
及び亜
鉛からなる群から選択される少なくとも一種からなる請求項1~3のいずれかに記載のグランド部材付シールドプリント配線板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかのグランド部材付シールドプリント配線板に用いられるグランド部材であって、
前記グランド部材は、
第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、
前記第1主面側に配置された導電性粒子と、
前記導電性粒子を前記第1主面に固定する接着性樹脂とを有し、
前記グランド部材が、前記グランド部材付シールドプリント配線板に用いられた際に、
前記グランド部材の断面における前記導電性粒子の断面の円形度が、0.35以上であ
り、
前記外部接続部材の厚みは、5~10μmであることを特徴とするグランド部材。
【請求項6】
第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、
前記第1主面側に配置された導電性粒子と、
前記導電性粒子を前記第1主面に固定する接着性樹脂とを有するグランド部材であって、
下記圧着条件で圧着した後の前記グランド部材の断面における前記導電性粒子の断面の円形度が、0.35以上であ
り、
前記外部接続部材の厚みは、5~10μmであることを特徴とするグランド部材。
加圧条件:厚みが6μmの硬化エポキシ樹脂からなる層に、厚みが10μmとなるように未硬化のエポキシ樹脂を塗布した樹脂層を準備する。次に、硬化エポキシ樹脂からなる層が上となるように樹脂層を配置し、その上に、外部接続部材の第1主面が下向きになるようにグランド部材を配置する。次に、3MPa、30分の条件で、グランド部材を樹脂層に圧着する。
【請求項7】
前記圧着条件で圧着する前の前記グランド部材において、
前記導電性粒子の周囲
の全てが、前記接着性樹脂に覆われている請求項5又は6に記載のグランド部材。
【請求項8】
前記圧着条件で圧着する前の前記グランド部材において、
前記導電性粒子の少なくとも一部が、前記接着性樹脂から露出している請求項5又は6に記載のグランド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランド部材付シールドプリント配線板及びグランド部材に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、小型化、高機能化が急速に進む携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、複雑な機構の中に回路を組み込むために多用されている。さらに、その優れた可撓性を生かして、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるフレキシブルプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したフレキシブルプリント配線板(以下、「シールドプリント配線板」とも記載する)が用いられるようになってきた。
【0003】
一般的なシールドプリント配線板は、通常、ベースフィルム上にプリント回路と絶縁フィルムを順次設けてなる基体フィルムと、導電層、上記導電層に積層されたシールド層、及び、上記シールド層に積層された保護層からなり、上記導電層が上記基体フィルムと接するように上記基体フィルムを被覆するシールドフィルムとから構成される。
また、プリント回路にはグランド回路が含まれており、グランド回路は、アースを取るために電子機器の筐体と電気的に接続されている。
上記の通り、シールドプリント配線板の基体フィルムでは、グランド回路を含むプリント回路の上に絶縁フィルムが設けられている。また、基体フィルムは、保護層を有するシールドフィルムにより被覆されている。
そのため、グランド回路と、電子機器の筐体とを電気的に接続するためには、絶縁フィルム及びシールドフィルムの一部にあらかじめ孔をあける必要があった。
このことは、プリント回路を設計する上で、自由度を妨げる要因となっていた。
【0004】
特許文献1には、ベースフィルム上にプリント回路と絶縁フィルムを順次設けてなる基体フィルムの少なくとも片面に、シールドフィルムを被覆してなるシールドフレキシブルプリント配線板(シールドプリント配線板)において、前記シールドフィルムは、カバーフィルムの片面に少なくとも導電性接着剤層を含むシールド層を設けたフィルムであって、その導電性接着剤層が前記基体フィルムに接着するように被覆してなり、一部が前記シールドフィルムのシールド層に接続され、他の一部が露出してその近傍のグランド部に接続可能に形成されたグランド部材を有することを特徴とするシールドフレキシブルプリント配線板(シールドプリント配線板)が開示されている。
さらに、特許文献1の第4実施形態に係る発明では、前記グランド部材が、金属箔と、前記金属箔の片面から突出する複数の金属フィラーと、前記金属箔と前記金属フィラーとの間にあって前記金属箔に前記金属フィラーを接着する導電性接着剤層とを有し、導電性フィラーがシールド層の導電性接着剤層及び金属薄膜層に接続され、金属箔が露出してその近傍のグランド部に接続されることが記載されている。
特許文献1に記載のフレキシブルプリント配線板を製造する際には、グランド部材の金属フィラーがカバーフィルムを突き抜けるように、グランド部材がカバーフィルムに押し付けられるが、この際、グランド部材を配置する位置は、任意に決定することができる。
そのため、このようなフレキシブルプリント配線板では、設計の自由度を妨げることなく、グランド回路と、電子機器の筐体を電気的に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような、グランド部材が配置されたフレキシブルプリント配線板は、その後、電気部品が配置され、電子部品を実装するためにリフロー処理を受ける。
グランド部材が配置されたフレキシブルプリント配線板では、グランド部材の金属フィラーと、シールドフィルムのシールド層とが接触している。しかし、フレキシブルプリント配線板がリフロー処理を受けると、熱負荷により各部材が熱膨張及び収縮し、グランド部材の金属フィラーと、シールドフィルムのシールド層との位置がずれ、接点が少なくなることがある。
グランド部材の金属フィラーと、シールドフィルムのシールド層との接点が少なくなると、接続安定性が損なわれ、グランド部材-シールド層間の電気抵抗が上昇するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、熱負荷がかかったとしても、グランド部材の導電性粒子とシールドフィルムのシールド層との接続安定性が損なわれにくいグランド部材付シールドプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のグランド部材付シールドプリント配線板は、ベースフィルム上にグランド回路を含むプリント回路と絶縁フィルムを順次設けてなる基体フィルムと、シールド層、及び、上記シールド層に積層された保護層からなり、上記シールド層が上記保護層よりも上記基体フィルム側に配置されるように上記基体フィルムを被覆するシールドフィルムと、上記シールドフィルムの保護層に配置されたグランド部材を備えるグランド部材付シールドプリント配線板であって、上記グランド部材は、第1主面と、上記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、上記第1主面側に配置された導電性粒子と、上記導電性粒子を上記第1主面に固定する接着性樹脂とからなり、上記グランド部材の断面における上記導電性粒子の断面の円形度が、0.35以上であり、かつ、上記導電性粒子は、上記シールドフィルムの保護層を貫いて上記シールドフィルムのシールド層に接続しており、上記グランド部材の外部接続部材は、外部グランドと電気的に接続可能になっていることを特徴とする。
【0009】
本発明のグランド部材付シールドプリント配線板では、導電性粒子の断面の円形度が0.35以上であり円形度が高い。
そのため、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板では、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層との接点が多く、これらの接触面積が大きい。
そのため、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板をリフロー処理や耐熱性試験を行う際に、各部材の熱膨張、収縮が生じたとしても、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層との接点を維持することができる。
そのため、グランド部材の導電性粒子とシールドフィルムのシールド層との接続安定性が損なわれにくくなる。
【0010】
本発明のグランド部材付シールドプリント配線板では、上記導電性粒子の断面の平均円相当径は、上記シールドフィルムの上記保護層の厚みの2倍以上であることが好ましい。
導電性粒子の断面の平均円相当径が上記範囲であると、グランド部材の導電性粒子が、シールドフィルムの保護層を充分に貫くことができ、グランド部材の導電性粒子とシールドフィルムのシールド層とを充分に接触させることができる。
【0011】
なお、本明細書において「円相当径」とは、グランド部材の断面における導電性粒子の断面の面積を真円の面積に換算し、その真円の面積から算出した直径のことを意味する。
【0012】
本発明のグランド部材付シールドプリント配線板では、上記導電性粒子は、銅、銀、ニッケル、銀コート銅、銀コートニッケル、錫コート銅及び錫コートニッケルからなる群から選択される少なくとも一種からなることが好ましい。
これらの材料は、導電性が高く、加工が容易であり導電性粒子の円形度を高くしやすいので、本発明における導電性粒子の材料として適している。
【0013】
本発明のグランド部材付シールドプリント配線板では、上記外部接続部材は、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、亜鉛及びステンレス鋼からなる群から選択される少なくとも一種からなることが好ましい。
これらの材料は、グランド部材と外部グランドとを電気的に接続するために適した材料である。
【0014】
本発明のグランド部材は、上記グランド部材付シールドプリント配線板に用いられるグランド部材であって、上記グランド部材は、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、上記第1主面側に配置された導電性粒子と、上記導電性粒子を上記第1主面に固定する接着性樹脂とを有し、上記グランド部材が、上記グランド部材付シールドプリント配線板に用いられた際に、上記グランド部材の断面における上記導電性粒子の断面の円形度が、0.35以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明のグランド部材は、上記本発明のグランド部材付シールドプリント配線板に用いられるグランド部材である。また、当該グランド部材付シールドプリント配線板において、グランド部材の断面における導電性粒子の円形度は0.35以上となる。
本発明のグランド部材が用いられたグランド部材付シールドプリント配線板では、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層との接点を多くすることができ、これらの接触面積を大きくすることができる。
そのため、本発明のグランド部材が用いられたシールドプリント配線板をリフロー処理や耐熱性試験を行う際に、各部材に熱負荷がかかり、熱膨張、収縮が生じたとしても、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層との接点を維持することができる。
従って、グランド部材の導電性粒子とシールドフィルムのシールド層との接続安定性が損なわれにくくなる。
【0016】
本発明のグランド部材は、第1主面と、上記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、上記第1主面側に配置された導電性粒子と、上記導電性粒子を上記第1主面に固定する接着性樹脂とを有するグランド部材であって、下記圧着条件で圧着した後の上記グランド部材の断面における上記導電性粒子の断面の円形度が、0.35以上であることを特徴とする。
加圧条件:厚みが6μmの硬化エポキシ樹脂からなる層に、厚みが10μmとなるように未硬化のエポキシ樹脂を塗布した樹脂層を準備する。次に、硬化エポキシ樹脂からなる層が上となるように樹脂層を配置し、その上に、外部接続部材の第1主面が下向きになるようにグランド部材を配置する。次に、3MPa、30分の条件で、グランド部材を樹脂層に圧着する。
【0017】
本発明のグランド部材は、ベースフィルム上にプリント回路と絶縁フィルムを順次設けてなる基体フィルムと、導電層、上記導電層に積層されたシールド層、及び、上記シールド層に積層された保護層からなり、上記導電層が上記基体フィルムと接するように上記基体フィルムを被覆するシールドフィルムの上に配置されることになる。より具体的には、グランド部材の導電性粒子が、シールドフィルムの保護層を貫いて、シールドフィルムの導電層に接触するように、熱圧着される。
本発明のグランド部材をシールドプリント配線板に用いると、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層との接点を多くすることができ、これらの接触面積を大きくすることができる。
そのため、本発明のグランド部材が用いられたシールドプリント配線板をリフロー処理や耐熱性試験を行う際に、各部材に熱負荷がかかり、熱膨張、収縮が生じたとしても、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層との接点を維持することができる。
従って、グランド部材の導電性粒子とシールドフィルムのシールド層との接続安定性が損なわれにくくなる。
【0018】
本発明のグランド部材では、上記導電性粒子の周囲が、上記接着性樹脂に覆われていてもよい。
このようなグランド部材は、外部接続部材の第1主面に導電性粒子及び接着性樹脂の混合物を塗布するだけで容易に製造することができる。
【0019】
本発明のグランド部材では、上記導電性粒子の少なくとも一部が、上記接着性樹脂から露出していてもよい。
導電性粒子の一部が接着性樹脂から露出している場合、この露出部を通じて通電可能である。そのため、グランド部材を用いてシールドプリント配線板を製造する際に、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層とを容易に電気的に接続させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のグランド部材付シールドプリント配線板では、導電性粒子の断面の円形度が0.35以上であり、円形度が高い。
そのため、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板では、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層との接点が多く、これらの接触面積が大きい。
そのため、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板をリフロー処理や耐熱性試験を行う際に、各部材の熱膨張、収縮が生じたとしても、グランド部材の導電性粒子と、シールドフィルムのシールド層との接点を維持することができる。
そのため、グランド部材の導電性粒子とシールドフィルムのシールド層との接続安定性が損なわれにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明のグランド部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のグランド部材が配置される前のシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のグランド部材の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図7】
図7は、実施例2に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図8】
図8は、実施例3に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図9】
図9は、実施例4に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図10】
図10は、実施例5に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図11】
図11は、実施例6に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図12】
図12は、実施例7に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図13】
図13は、実施例8に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図14】
図14は、実施例9に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図15】
図15は、比較例1に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図16】
図16は、比較例2に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【
図17】
図17は、比較例3に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のグランド部材及びグランド部材付シールドプリント配線板について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0023】
まず、本発明のグランド部材について説明する。
図1は、本発明のグランド部材の一例を模式的に示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、グランド部材1は、第1主面11と、第1主面11の反対側の第2主面12とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材10を備えている。
【0025】
また、第1主面11には、導電性粒子20が接着性樹脂30により固定されている。
さらに、グランド部材1では、導電性粒子20の周囲が、接着性樹脂30に覆われている。
【0026】
グランド部材1は、シールドプリント配線板に使用されることになる。
このようなシールドプリント配線板の構成について図面を用いて説明する。
図2は、本発明のグランド部材が配置される前のシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
【0027】
図2に示すように、シールドプリント配線板50は、基体フィルム60とシールドフィルム70とからなる。
シールドプリント配線板50において、基体フィルム60は、ベースフィルム61上にグランド回路62aを含むプリント回路62と絶縁フィルム63とを順次設けてなるフィルムである。
また、シールドフィルム70は、接着剤層71、接着剤層71に積層されたシールド層72、及び、シールド層72に積層された保護層73からなるフィルムである。
そして、シールドプリント配線板50では、シールドフィルム70の接着剤層71が基体フィルム60と接するように、シールドフィルム70が基体フィルム60を被覆している。
【0028】
次に、グランド部材1が、シールドプリント配線板50に使用される場合を、図面を用いて説明する。
図3は、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、グランド部材付シールドプリント配線板51は、シールドプリント配線板50にグランド部材1が配置されている。
グランド部材付シールドプリント配線板51を製造する際には、グランド部材1は、グランド部材1の導電性粒子20がシールドフィルム70の保護層73を貫くように、シールドプリント配線板50に押し付けられて配置される。
グランド部材1をシールドプリント配線板50に押し付ける際の条件は、グランド部材1の導電性粒子20の大きさや、シールドフィルム70の保護層73の厚みや種類に応じて適宜設定することが好ましい。
グランド部材1をシールドプリント配線板50に押し付ける際の条件は、例えば、2~9MPa、3~60minであることが好ましく、4~9MPa、30~60minであることがより好ましい。
【0029】
そして、グランド部材1の導電性粒子20を、シールドフィルム70のシールド層72と接触させる。
また、グランド部材1の外部接続部材10は、外部グランドGNDに接続されることになる。
これによりシールドフィルム70のシールド層72と外部グランドGNDとを電気的に接続することができる。
【0030】
このようにグランド部材1をシールドプリント配線板50に配置するので、シールドフィルム70の保護層73に孔等をあらかじめ設ける必要がなく、任意の位置にグランド部材1を配置することができる。
なお、グランド部材付シールドプリント配線板51は、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板の一態様でもある。
【0031】
グランド部材付シールドプリント配線板51において、グランド部材1の断面における導電性粒子20の断面の円形度は0.35以上である。当該円形度は、0.39以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、0.6以上であることがよりさらに好ましく、0.8以上であることが特に好ましい。なお、円形度の上限は1.0が好ましく、製造コストの点から0.98であることがより好ましく、0.90であることがさらに好ましく、0.85であることがさらに好ましい。
グランド部材1の断面における導電性粒子20の断面の円形度が0.35以上であるので、グランド部材付シールドプリント配線板51では、グランド部材1の導電性粒子20と、シールドフィルム70のシールド層72との接点が多く、これらの接触面積が大きい。
そのため、グランド部材付シールドプリント配線板51をリフロー処理や耐熱性試験を行う際に、各部材の熱膨張、収縮が生じたとしても、グランド部材1の導電性粒子20と、シールドフィルム70のシールド層72との接点を維持することができる。
そのため、グランド部材1の導電性粒子20とシールドフィルム70のシールド層72との接続安定性が損なわれにくくなる。
【0032】
なお、本明細書において、「グランド部材の断面における導電性粒子の断面の円形度」とは以下の方法で計測・算出した値を意味する。
まず、グランド部材付シールドプリント配線板をエポキシ樹脂で包埋する。
次に、エポキシ樹脂ごとグランド部材を切断し、グランド部材の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影する。
次に、断面SEM画像について、画像解析ソフト(SEM Control User Interface Ver3.10)を用いて、画像に写っている10個の導電性粒子を任意に選択し、導電性粒子の断面の周囲長と断面積を計測し、下記式に基づいて円形度を算出する。
円形度=4π×(面積)/(周囲長)2
【0033】
グランド部材付シールドプリント配線板51において、導電性粒子20の断面の円形度を0.35以上にする方法としては、例えば、グランド部材1を作製する際に真球度の高い導電性粒子を用いる方法が挙げられる。真球度の高い導電性粒子を得る方法としては、例えば、アトマイズ法、ディスクアトマイズ法等が挙げられる。
また、グランド部材1をシールドプリント配線板50に押し付ける際に、プレス条件を調節することにより、導電性粒子の断面の円形度を制御することができる。
【0034】
なお、グランド部材1は、下記圧着条件で圧着した後のグランド部材1の断面における導電性粒子20の断面の円形度が、0.35以上であることが好ましい。
加圧条件:厚みが6μmの硬化エポキシ樹脂からなる層に、厚みが10μmとなるように未硬化のエポキシ樹脂を塗布した樹脂層を準備する。次に、硬化エポキシ樹脂からなる層が上となるように樹脂層を配置し、その上に、外部接続部材の第1主面が下向きになるようにグランド部材を配置する。次に、3MPa、30分の条件で、グランド部材を樹脂層に圧着する。
【0035】
グランド部材付シールドプリント配線板51において、接着性樹脂30の厚みを[A]とし、導電性粒子20の断面の円相当径を[B]とし、保護層73の厚みを[C]とし、シールドフィルム70の総厚みを[D]とした場合、[C]<([B]-[A])であり、かつ、0.5≦([B]-[A])/[D]≦5.0であることが好ましい。
[C]<([B]-[A])であると、導電性粒子20がシールドフィルム70の保護層73を貫きやすくなり、グランド部材1の導電性粒子20とシールドフィルム70のシールド層72とを充分に接触させることができる。
([B]-[A])/[D]が0.5以上であると、グランド部材1とシールドフィルム70の接続安定性が向上する。
([B]-[A])/[D]が5.0以下であると、導電性粒子20が適度な大きさであるので、グランド部材付シールドプリント配線板51の上面に凹凸が形成されにくくなり平滑性を維持できる。その結果、グランド部材付シールドプリント配線板51にボンディングフィルム等を貼り付けやすくなる。
([B]-[A])/[D]は、0.8以上であることがより好ましく、1.0以上であることがより好ましい。
([B]-[A])/[D]の下限値は、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがより好ましい。
【0036】
また、[B]/[C]は、3.0以上であることが好ましく、7.0以下であることが好ましい。
[B]/[C]が上記範囲であると、グランド部材付シールドプリント配線板51に熱衝撃が繰り返し与えられたとしても、グランド部材1の外部接続部材10とシールドフィルム70のシールド層72間の電気抵抗が大きくなりにくい。
【0037】
次に、グランド部材1の各構成について詳述する。
【0038】
グランド部材1では、外部接続部材は、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、亜鉛及びステンレス鋼からなる群から選択される少なくとも一種からなることが好ましい。
これらの材料は、グランド部材と外部グランドとを電気的に接続するために適した材料である。
【0039】
グランド部材1では、外部接続部材10の厚みは、特に限定されないが、5~10μmであることが好ましい。
【0040】
グランド部材1では、導電性粒子20の平均粒子径は、2~20μmであることが好ましい。
導電性粒子20の平均粒子径が上記範囲であると、グランド部材1を用いてシールドプリント配線板50を製造する際に、グランド部材1の導電性粒子20が、シールドフィルム70の保護層73を充分に貫くことができ、グランド部材1の導電性粒子20とシールドフィルム70のシールド層72とを充分に接触させることができる。
【0041】
グランド部材1では、導電性粒子20は、銅、銀、ニッケル、銀コート銅、銀コートニッケル、錫コート銅及び錫コートニッケルからなる群から選択される少なくとも一種からなることが好ましい。
これらの材料は、導電性が高く、加工が容易であり導電性粒子20の円形度を高くしやすいので、導電性粒子20の材料として適している。
【0042】
グランド部材1では、導電性粒子20は、ディスクアトマイズ法により製造された粒子であることが好ましい。
ディスクアトマイズ法を用いることにより、真球に近い導電性粒子20を製造することができる。そのため、このような導電性粒子を有するグランド部材1を用いてシールドプリント配線板50を製造すると、グランド部材1の導電性粒子20と、シールドフィルム70のシールド層72との接触面積をより大きくすることができる。その結果、グランド部材1の導電性粒子20とシールドフィルム70のシールド層72との接続安定性がさらに損なわれにくくなる。
ディスクアトマイズ法とは、高速で回転しているディスクに溶解した金属を流下し、ディスク上面に形成した溶融膜を高速回転により液滴状に飛散させて金属粒子を製造する方法である
この方法では、溶融温度、ディスク回転数を制御することにより、粒子径の揃った流動性・配列性に富んだ球状粒子を製造することができる。
【0043】
グランド部材1では、接着性樹脂30は、特に限定されないが、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、熱可塑性エラストマ系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等からなることが好ましい。これら樹脂は優れた接着性を有する。
【0044】
上記の通りグランド部材1では、導電性粒子20の周囲が、接着性樹脂30に覆われている。そのため、グランド部材1は、外部接続部材10の第1主面11に導電性粒子20及び接着性樹脂30の混合物を塗布するだけで容易に製造することができる。
この混合物を塗布する際の厚みは、10~50μmであることが好ましい。
【0045】
また、本発明のグランド部材では、導電性粒子の少なくとも一部が、接着性樹脂から露出していてもよい。
図4は、本発明のグランド部材の別の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示すグランド部材2は、導電性粒子20の一部が、接着性樹脂30から露出している以外は、
図1に示すグランド部材1と同じ構成である。
導電性粒子20の一部が接着性樹脂30から露出している場合、この露出部を通じて通電可能である。そのため、グランド部材2を用いてシールドプリント配線板を製造する際に、グランド部材2の導電性粒子20と、シールドフィルム70のシールド層72とを容易に電気的に接続させることができる。
【0046】
次に、シールドプリント配線板50の各構成について詳述する。
【0047】
シールドプリント配線板50の基体フィルム60を構成するベースフィルム61及び絶縁フィルム63の材料は、特に限定されないが、エンジニアリングプラスチックからなることが好ましい。
このようなエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。
また、これらのエンジニアリングプラスチックの内、難燃性が要求される場合には、ポリフェニレンサルファイドフィルムが好ましく、耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。なお、ベースフィルム61の厚みは、10~40μmであることが好ましく、絶縁フィルム63の厚みは、10~30μmであることが好ましい。
【0048】
シールドプリント配線板50のシールドフィルム70を構成する接着剤層71は、導電性接着剤層であってもよく、絶縁性接着剤層であってもよい。
シールドフィルム70の接着剤層71が導電性接着剤層である場合、グランド回路62aと接着剤層71とを接触させることにより、グランド回路62a-外部グランドGNDを電気的に接続することができる。
このような構成であると、電磁波シールド性が向上する。
また、接着剤層71が導電性接着剤層である場合、異方導電性接着剤層であってもよく、等方導電性接着剤層であってもよい。
【0049】
シールドフィルム70の接着剤層71が、絶縁性接着剤層である場合、シールドフィルム70の接着剤層71は、特に限定されないが、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、熱可塑性エラストマ系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等であることが好ましい。また、シールドフィルム70の接着剤層71には、脂肪酸炭化水素樹脂、C5/C9混合樹脂、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、熱反応性樹脂等の粘着性付与剤が含まれていてもよい。これら粘着性付与剤が含まれていると、シールドフィルム70の接着剤層71の粘着性を向上させることができる。
【0050】
シールドフィルム70の接着剤層71が、導電性接着剤層である場合、シールドフィルム70の接着剤層71は、樹脂と導電性微粒子とからなる。
【0051】
樹脂としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、熱可塑性エラストマ系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等であることが好ましい。
また、接着剤層71には、脂肪酸炭化水素樹脂、C5/C9混合樹脂、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、熱反応性樹脂等の粘着性付与剤が含まれていてもよい。これら粘着性付与剤が含まれていると、接着剤層71の粘着性を向上させることができる。
【0052】
導電性微粒子としては、特に限定されないが、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コート銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、アトマイズ法、カルボニル法などにより作製することができる。また、上記以外にも、金属粉に樹脂を被覆した粒子、樹脂に金属粉を被覆した粒子を用いることもできる。なお、導電性微粒子は、AgコートCu粉、又は、AgコートNi粉であることが好ましい。この理由は、安価な材料により導電性の安定した導電性微粒子を得ることができるからである。
なお、導電性微粒子の形状は、球状に限定される必要はなく、例えば、樹枝状、フレーク状、スパイク状、棒状、繊維状、針状等であってもよい。
【0053】
シールドフィルム70の接着剤層71が導電性接着剤層である場合、接着剤層71は、異方導電性接着剤層であってもよく、等方導電性接着剤層であってもよいが、異方導電性接着剤層であることがより好ましい。
接着剤層71が、異方導電性接着剤層である場合、導電性微粒子は、接着剤層71の全体量に対し3~39重量%の範囲で含まれることが好ましい。また、導電性微粒子の平均粒子径は2~20μmの範囲が好ましいが、異方導電性接着剤層の厚みに応じて最適な大きさを選択することが好ましい。
また、接着剤層71が、等方導電性接着剤層である場合、導電性微粒子は、接着剤層71の全体量に対し39重量%を超えて95重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。導電性微粒子の平均粒子径は、異方導電性接着剤層と同様にして選択することができる。
【0054】
シールドプリント配線板50のシールドフィルム70を構成するシールド層72は、電気信号からの不要輻射や外部からの電磁波などのノイズを遮蔽するシールド効果を示せばどのような材料からなっていてもよい。例えば、シールド層72は、等方導電性樹脂や、金属からなっていてもよい。
シールドフィルム70のシールド層72が金属からなる場合、金属箔や蒸着膜等の金属層であってもよく、層状に形成された導電性粒子の集合体であってもよい。
シールドフィルム70のシールド層72が金属層である場合には、金属を構成する材料としては、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
シールドフィルム70のシールド層72が導電性微粒子の集合体である場合には、導電性微粒子としては、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コート銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉からなることが好ましい。
これらの材料からなるシールドフィルム70のシールド層72は、導電性が高く、電気信号からの不要輻射や外部からの電磁波などのノイズを遮蔽するシールド効果を示す。
【0055】
シールドフィルム70のシールド層72の厚みとしては、0.01~10μmであることが好ましい。
シールドフィルムのシールド層の厚みが0.01μm未満では、充分なシールド効果が得られにくく、物理衝撃や、熱衝撃を受けた際に破れやすくなる。
シールドフィルムのシールド層の厚みが10μmを超えると屈曲しにくくなる。
【0056】
シールドプリント配線板50のシールドフィルム70を構成する保護層73の材料としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂等であることが好ましい。
【0057】
シールドフィルム70の保護層73の厚みとしては、1~10μmであることが好ましい。
保護層の厚みが1μm未満であると、保護層が破れやすく、また、絶縁性が充分になりにくい。
保護層の厚みが10μmを超えると、グランド部材の導電性粒子が保護層を貫きにくくなる。
【0058】
次に、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板の別の態様について説明する。
図5は、本発明のグランド部材付シールドプリント配線板の別の一例を模式的に示す断面図である。
【0059】
図5に示す、グランド部材付シールドプリント配線板151は、シールドフィルム170が、保護層173と、シールド層172とからなり、シールド層172が導電性接着剤層であり、シールド層72と接着剤層71とが一体化していること以外は、
図3に示すグランド部材付シールドプリント配線板51と同じ構成である。
【0060】
グランド部材付シールドプリント配線板151では、シールド層172が導電性接着剤層であり、シールドフィルム170を基体フィルム60に接着するための機能と、電磁波をシールドする機能の両方を備える。
【0061】
シールドフィルム170のシールド層172は、樹脂と導電性微粒子とからなる導電性接着剤層である。
シールド層172を構成する樹脂としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、熱可塑性エラストマ系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等であることが好ましい。
また、シールド層172には、脂肪酸炭化水素樹脂、C5/C9混合樹脂、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、熱反応性樹脂等の粘着性付与剤が含まれていてもよい。これら粘着性付与剤が含まれていると、シールド層172の粘着性を向上させることができる。
【0062】
シールド層172を構成する導電性微粒子としては、特に限定されないが、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コート銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、アトマイズ法、カルボニル法などにより作製することができる。また、上記以外にも、金属粉に樹脂を被覆した粒子、樹脂に金属粉を被覆した粒子を用いることもできる。なお、導電性微粒子は、AgコートCu粉、又は、AgコートNi粉であることが好ましい。この理由は、安価な材料により導電性の安定した導電性微粒子を得ることができるからである。
なお、導電性微粒子の形状は、球状に限定される必要はなく、例えば、樹枝状、フレーク状、スパイク状、棒状、繊維状、針状等であってもよい。
【0063】
さらに、シールドフィルム170のシールド層172は、等方導電性接着剤層であることが好ましい。この場合、導電性微粒子は、シールド層の全体量に対し39重量%を超えて95重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。導電性微粒子の平均粒子径は、2~20μmであることが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(製造例1)
アトマイズ法により作製した銅コートニッケルからなる導電性粒子と、エポキシ系接着性樹脂とを混合し、導電性粒子-接着性樹脂混合物を作製した。
次に、厚みが6μmの銅からなる外部接続部材を準備し、一方の面に導電性粒子-接着性樹脂混合物を塗布した後加熱乾燥して厚み10μmの接着性樹脂を形成し、製造例1に係るグランド部材を製造した。
【0066】
(製造例2)~(製造例3)及び(比較製造例1)
導電性粒子を表1に示すものを使用した以外は、製造例1と同様に、製造例2~製造例3及び比較製造例1に係るグランド部材を製造した。
【0067】
【0068】
(モデルシールドプリント配線板の作製)
6μmのエポキシ樹脂からなる保護層に、0.1μmの銀の蒸着膜からなるシールド層、及び、10μmの異方導電性接着剤層が順に積層されたシールドフィルム1を準備した。
また、6μmのエポキシ樹脂からなる保護層に、2μmの銅箔からなるシールド層、及び、10μmの異方導電性接着剤層が順に積層されたシールドフィルム2を準備した。
また、6μmのエポキシ樹脂からなる保護層に、14μmの等方導電性樹脂からなるシールド層が順に積層されたシールドフィルム3を準備した。シールドフィルム3では、等方導電性樹脂が接着剤層としての機能も有している。
【0069】
厚み63μmのポリイミドフィルムからなるモデル基板を準備し、当該モデル基板の上に、接着剤層が接触するようにシールドフィルム1をそれぞれ配置した。そして、外部接続部材の導電性粒子が配置された面が、シールドフィルムの保護層と対面するように、製造例1に係るグランド部材を、シールドフィルム1の上に配置した。
次に、3MPa、30分の条件で、シールドフィルム1及び製造例1に係るグランド部材をモデル基板に熱圧着した。
これにより、シールドフィルム1の保護層を、製造例1に係るグランド部材の導電性粒子により貫かせ、製造例1に係るグランド部材の導電性粒子を、シールドフィルムのシールド層と接触させた。
これにより、実施例1に係るモデルシールドプリント配線板を製造した。
また、表2に示すグランド部材とシールドフィルムの組み合わせとした以外には、実施例1と同様に実施例2~実施例9及び比較例1~比較例3に係るモデルシールドプリント配線板を製造した。
【0070】
(円形度の測定)
各モデルシールドプリント配線板をエポキシ樹脂に包埋した。
次に、LEICA製ミクロトームRM2265にて、エポキシ樹脂ごとグランド部材を切断した。
次に、上記断面を、日本電子製 走査型電子顕微鏡JSM-6510LAにて撮影した。撮影条件は2次電子像、x1000倍もしくはx3000倍、加速電圧15kVとした。
次に、断面SEM画像について、画像解析ソフト(SEM Control User Interface Ver3.10)を用いて、画像に写っている10個の導電性粒子を任意に選択し、導電性粒子の断面の周囲長と断面積を計測し、下記式に基づいて円形度を測定し、その平均値を算出した。結果を表2に示す。
円形度=4π×(面積)/(周囲長)2
【0071】
また、グランド部材における接着性樹脂の厚みも測定した。結果を表2に示す。
【0072】
【0073】
また、実施例1~実施例9及び比較例1~比較例3に係るグランド部材の断面のSEM写真を
図6~17に示す。
図6は、実施例1に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図7は、実施例2に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図8は、実施例3に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図9は、実施例4に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図10は、実施例5に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図11は、実施例6に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図12は、実施例7に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図13は、実施例8に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図14は、実施例9に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図15は、比較例1に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図16は、比較例2に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
図17は、比較例3に係るモデルシールドプリント配線板の断面のSEM写真である。
【0074】
(耐熱性試験1)
各モデルシールドプリント配線板を炉に配置し、雰囲気の温度が260℃となるように加熱し、その後、室温になるまで放置する工程を3回繰り返し、各モデルシールドプリント配線板に熱衝撃を加えた。
その後、各モデルシールドプリント配線板のグランド部材の外部接続部材-シールドフィルムのシールド層間の電気抵抗を測定した。結果を表2に示す。
【0075】
(耐熱性試験2)
各モデルシールドプリント配線板を炉に配置し、雰囲気の温度が-55℃となるように冷却した後、雰囲気の温度が125℃となるように加熱して15分間維持する工程を200回繰り返し、各モデルシールドプリント配線板に熱衝撃を加えた。
その後、各モデルシールドプリント配線板のグランド部材の外部接続部材-シールドフィルムのシールド層間の電気抵抗を測定した。結果を表2に示す。
【0076】
表2に示すように、モデルシールドプリント配線板において、グランド部材の導電性粒子の円形度が0.35以上である実施例1~実施例9に係るグランド部材を用いると、耐熱性試験1においてモデルシールドプリント配線板のグランド部材の外部接続部材-シールドフィルムのシールド層間の電気抵抗が小さくなり、接続安定性が維持されることが判明した。
また、グランド部材の導電性粒子の円形度が0.39以上である実施例1~8では、耐熱性試験2においても、モデルシールドプリント配線板のグランド部材の外部接続部材-シールドフィルムのシールド層間の電気抵抗が小さくなり、接続安定性が維持されることが判明した。
【符号の説明】
【0077】
1、2 グランド部材
10 外部接続部材
20 導電性粒子
30 接着性樹脂
50 シールドプリント配線板
51、151 グランド部材付シールドプリント配線板
60 基体フィルム
61 ベースフィルム
62 プリント回路
62a グランド回路
63 絶縁フィルム
70、170 シールドフィルム
71 接着剤層
72、172 シールド層
73、173 保護層