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特許7556056リチウム-硫黄二次電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】リチウム-硫黄二次電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20240917BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240917BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240917BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/052
H01M10/0568
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022575452
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 KR2021015199
(87)【国際公開番号】W WO2022092800
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143315
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143326
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0143351
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウンジ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・パク
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-508148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0161706(US,A1)
【文献】特表2020-504434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
10/36-10/39
4/00-4/62
6/00-6/22
12/00-16/00
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム-硫黄二次電池用電解液であって、
前記非水系溶媒はエーテル系溶媒及び非溶媒を含み、
前記エーテル系溶媒は線状エーテル及び環状エーテルを含み、
前記非溶媒は下記化学式1で表される化合物であり、
前記非溶媒の含有量が非水系溶媒全体積に対して5体積%~20体積%であり、
前記エーテル系溶媒と前記非溶媒の体積比が95:5~80:20である、リチウム-硫黄二次電池用電解液。
【化1】
[前記化学式1において、
前記Rfは、互いに同一または異なり、それぞれ独立にC1~C3のフッ化アルキル基を表す。]
【請求項2】
前記リチウム塩がLiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)、LiCBO、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項3】
前記線状エーテルがジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルタートブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールタートブチルエチルエーテル、及びエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選択されることである、請求項1又は2に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項4】
前記環状エーテルがジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン、オキサン、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、エトキシテトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、フラン及び2-メチルフランからなる群より選択されることである、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項5】
前記化学式1のフッ化アルキル基が1~7個のフッ素で置換されたC1~C3のフッ化アルキル基である、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項6】
前記化学式1のフッ化アルキル基が1~5個のフッ素で置換されたC1~C2のフッ化アルキル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項7】
前記化学式1のフッ化アルキル基の末端にジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基を含むことである、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項8】
前記非溶媒の含有量が非水系溶媒全体積に対して5体積%~10体積%である、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項9】
前記線状エーテルの含有量が非水系溶媒全体積に対して50体積%~90体積%であり、前記環状エーテルの含有量が非水系溶媒全体積に対して10体積%~30体積%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項10】
前記線状エーテルと環状エーテルの体積比が9:1~5:5である、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項11】
前記線状エーテルがジメトキシエタンである、請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項12】
前記環状エーテルが2-メチルフランである、請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項13】
前記化学式1で表される化合物がトリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate)またはトリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate)である、請求項1~12のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用電解液。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電解液;
正極;
負極;及び
分離膜を含むリチウム-硫黄二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月30日付け韓国特許出願第10-2020-0143315号、韓国特許出願第10-2020-0143326号及び2021年10月26日付け韓国特許出願第10-2021-0143351に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム-硫黄二次電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池の応用領域が電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵装置(ESS)などに拡大されるにつれて、相対的に低い重量対比エネルギー貯蔵密度(~250Wh/kg)を有するリチウム-イオン二次電池は、このような製品に対する適用の限界がある。これとは異なり、リチウム-硫黄二次電池は、理論上で高い重量対比エネルギー貯蔵密度(~2,600Wh/kg)を具現できるので、次世代二次電池の技術として脚光を浴びている。
【0004】
リチウム-硫黄二次電池は、S-S結合(Sulfur-Sulfur Bond)を有する硫黄系物質を正極活物質として用い、リチウム金属を負極活物質として用いた電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は、世界的に資源量が豊富で、毒性がなく、低い原子当たりの重量を有している利点がある。
【0005】
リチウム-硫黄二次電池は、放電時に負極活物質であるリチウムが電子を失ってイオン化しながら酸化され、正極活物質である硫黄系物質が電子を受け取って還元される。ここで、リチウムの酸化反応は、リチウム金属が電子を失ってリチウムカチオン形態に変換される過程である。また、硫黄の還元反応は、S-S結合が2つの電子を受け取って硫黄アニオン形態に変換される過程である。リチウムの酸化反応によって生成されたリチウムカチオンは電解質を介して正極に伝達され、硫黄の還元反応によって生成された硫黄アニオンと結合して塩を形成する。具体的に、放電前の硫黄は環状のS構造を有し、これは還元反応によりリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、LiS)に変換される。リチウムポリスルフィドが完全に還元される場合には、リチウムスルフィド(LiS)が生成されるようになる。
【0006】
正極活物質である硫黄は低い電気伝導度の特性のため、固相形態では電子及びリチウムイオンとの反応性を確保することが難しい。既存のリチウム-硫黄二次電池はこのような硫黄の反応性を改善するために、Li形態の中間ポリスルフィド(intermediate polysulfide)を生成して液相反応を誘導し、反応性を改善する。この場合、電解液の溶媒としてリチウムポリスルフィドに対して溶解性の高いジオキソラン(dioxolane)、ジメトキシエタン(dimethoxyethane)などのエーテル系溶媒が用いられる。
【0007】
しかし、このようなエーテル系溶媒を用いる場合、様々な原因によってリチウム-硫黄二次電池の寿命特性が低下する問題点が存在する。例えば、正極からのリチウムポリスルフィドの溶出、リチウム負極上にデンドライトの成長によるショート(short)の発生、電解液の分解による副産物の堆積などによりリチウム-硫黄二次電池の寿命特性が低下することができる。
【0008】
特に、このようなエーテル系溶媒を用いる場合、リチウムポリスルフィドを多量に溶解させることができるため反応性が高いが、電解液内に溶けるリチウムポリスルフィドの特性のため、電解液の含有量によって硫黄の反応性及び寿命特性が影響を受けることになる。
【0009】
近年、航空機及び次世代電気自動車などに要求される500Wh/kg以上の高エネルギー密度のリチウム-硫黄二次電池を開発するために、電極中の硫黄のローディング量が大きく、電解液の含有量が最小化されることが要求される。
【0010】
しかし、前記エーテル系溶媒の特性上、電解液の含有量が低くなるほど充放電中に急速に粘度が増加し、それにより、過電圧が発生して退化することがある問題がある。
【0011】
そこで、電解液の分解を防止し、優れた寿命特性を確保するために電解液の溶媒として非溶媒を添加する研究が持続的に行われている。それにもかかわらず、電解液の分解を防止し、かつ寿命特性を向上させることができる、電解液の成分及び組成については明確に明らかにされていない。特に、電解液の含有量が極めて少ないパウチセルなどの場合に適した電解液の成分及び組成については具体的に知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国公開特許公報第10-2007-0027512(2007年3月9日)、「リチウム-硫黄電気化学電池用電解質」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明では、リチウム-硫黄二次電池の電解液分解を防止し、寿命特性を向上させるために、リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム-硫黄二次電池用電解液として、前記非水系溶媒がエーテル系溶媒及び非溶媒をを含むことにより、前記問題を解決してリチウム-硫黄二次電池の性能を向上させることができることを確認し、本発明を完成した。
【0014】
したがって、本発明の目的は、電解液の分解を防止し、寿命特性を向上させることができるリチウム-硫黄二次電池用電解液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記電解液を備えて電池の性能が向上したリチウム-硫黄二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム-硫黄二次電池用電解液であって、前記非水系溶媒がエーテル系溶媒及び非溶媒を含み、前記エーテル系溶媒が線状エーテル及び環状エーテルを含み、前記非溶媒が下記化学式1で表される化合物を含むリチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0016】
【化1】
【0017】
[前記化学式1において、
前記Rfは、互いに同一または異なり、それぞれ独立にフッ素で置換された炭素数1~3のアルキル基を表す。]
また、本発明は、前記リチウム塩がLiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)、LiCBO、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群より選択される1種以上である、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記線状エーテルがジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルタートブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールタートブチルエチルエテール、及びエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選択されることである、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記環状エーテルがジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン、オキサン、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、エトキシテトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、フラン及び2-メチルフランからなる群より選択されることである、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記化学式1のフッ化アルキル基が1~7個のフッ素で置換されたC1~C3のフッ化アルキル基である、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記化学式1のフッ化アルキル基が1~5個のフッ素で置換されたC1~C2のフッ化アルキル基である、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記化学式1のフッ化アルキル基の末端にジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基を含むものである、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0023】
また、本発明は、前記非溶媒の含有量が非水系溶媒全体積に対して5体積%~20体積%である、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記線状エーテルの含有量が非水系溶媒全体積に対して50体積%~90体積%であり、前記環状エーテルの含有量が非水系溶媒全体積に対して10体積%~30体積%である、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記エーテル系溶媒と非溶媒の体積比が95:5~80:20である、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0026】
また、本発明は、前記線状エーテルと環状エーテルの体積比が9:1~5:5である、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記線状エーテルがジメトキシエタンである、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0028】
また、本発明は、前記環状エーテルが2-メチルフランである、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0029】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物がトリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate)またはトリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate)である、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0030】
また、本発明は、前記電解液、正極、負極及び分離膜を含むリチウム-硫黄二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るリチウム-硫黄二次電池用電解液は、リチウム塩及び非水系溶媒を含み、前記非水系溶媒としてエーテル系溶媒及び非溶媒を含み、前記エーテル系溶媒として線状エーテル及び環状エーテルを含み、非溶媒として特定の構造の化合物を含むことにより、リチウム-硫黄二次電池の駆動中の電解液の分解を防止し、寿命特性を向上させる効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明により提供される具体例は、以下の説明によりすべて達成されることができる。以下の説明は本発明の好ましい具体例を記述すると理解されなければならず、本発明が必ずしもこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0033】
本発明は、リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム-硫黄二次電池用電解液であって、前記非水系溶媒がエーテル系溶媒及び非溶媒を含み、前記エーテル系溶媒が線状エーテル及び環状エーテルを含み、前記非溶媒が下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム-硫黄二次電池用電解液を提供する。
【0034】
【化2】
【0035】
[前記化学式1において、
前記Rfは、互いに同一または異なり、それぞれ独立にC1~C3のフッ化アルキル基を表す。]
本発明のリチウム-硫黄二次電池用電解液は、リチウム塩及び非水系溶媒を含むことができ、前記リチウム塩は非水系有機溶媒に溶解しやすい物質であって、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)、LiCBO、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群より選択されるものであってもよく、好ましくはLiN(CFSOであってもよい。
【0036】
前記リチウム塩の濃度は、電解質混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解した塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウム電池分野において公知の他の要因などの様々な要因により、0.2~2M、具体的に0.5~1.8M、より具体的に0.6~1.7Mであってもよい。0.2M未満で用いると電解質の伝導度が低くなって電解質の性能が低下する可能性があり、2Mを超えて用いると電解質の粘度が増加してリチウムイオン(Li+)の移動性が低下する可能性がある。
【0037】
前記非水系溶媒はエーテル系溶媒及び非媒質を含むことができ、前記エーテル系溶媒は線状エーテル及び環状エーテルを含むことができる。
【0038】
前記線状エーテルは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルタートブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールタートブチルエチルエーテル、及びエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選択することができ、好ましくはジメトキシエタンであってもよい。
【0039】
前記環状エーテルは、ジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン、オキサン、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、エトキシテトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、フラン及び2-メチルフランからなる群より選択することができ、好ましくは2-メチルフランであってもよい。
【0040】
また、前記非溶媒は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0041】
【化3】
【0042】
[前記化学式1において、
前記Rfは、互いに同一または異なり、それぞれ独立にC1~C3のフッ化アルキル基を表す。]
前記化学式1で表される化合物は、リチウムイオンを溶媒和することなく、150℃以上の高い引火点及び5cP以下の低い粘度を示す。具体的に、前記化学式1で表される化合物は、引火性(flammability)及び粘度を下げる効果を示す。これにより、電解液の劣化を防止し、リチウムイオンの移動性を向上させ、電池の長期駆動にも高い安定性を確保することができる。
【0043】
前記化学式1のフッ化アルキル基は、1~7個のフッ素で置換されたC1~C3のフッ化アルキル基であってもよく、好ましくは1~5個のフッ素で置換されたC1~C2のフッ化アルキル基であってもよく、より好ましくは前記フッ化アルキル基の末端にジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基を含むフッ化アルキル基であってもよい。
【0044】
また、前記化学式1で表される化合物は、フッ素が置換されたトリアルキルオルソフォーメート系化合物であってもよく、前記トリアルキルオルソフォーメート系化合物中の3個のアルキル基は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1~2のアルキル基であってもよい。また、前記アルキル基は、それぞれ独立に1~7個のフッ素で置換されたフッ化アルキル基であってもよく、好ましくは1~5個のフッ素で置換されたフッ化アルキル基であってもよく、より好ましくは末端にジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基で置換されたアルキル基であってもよい。具体的に、前記化学式1で表される化合物は、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate)またはトリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate)であってもよい。
【0045】
また、本発明のリチウム-硫黄二次電池用電解液は、非水系溶媒として、エーテル系溶媒及び非溶媒を含むことにより、リチウム-硫黄二次電池の電解液の分解を防止し、寿命特性を向上させる効果を示す。特に、前記エーテル系溶媒として線状エーテル及び環状エーテルを含み、非溶媒として前記化学式1で表される化合物を含むことにより、電池の寿命特性を著しく向上させる効果を示す。
【0046】
このとき、前記非溶媒の含有量は、非水系溶媒全体積に対して5体積%~20体積%であってもよく、好ましくは5体積%~10体積%であってもよい。また、前記エーテル系溶媒と非溶媒の体積比は99:1~50:50であってもよく、好ましくは95:5~70:30であってもよく、より好ましくは95:5~80:20であってもよい。
【0047】
前記非溶媒の含有量及びエーテル系溶媒と非溶媒の体積比が前記範囲未満の場合には寿命特性の改善効果が不十分であり、前記非溶媒の含有量及びエーテル系溶媒と非溶媒の体積比が前記範囲を超える場合には、高い電流密度で放電が不可能な問題が発生する可能性があるため、前記非溶媒の含有量及びエーテル系溶媒と非溶媒の体積比は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0048】
また、前記線状エーテルの含有量は、非水系溶媒全体積に対して50体積%~90体積%であってもよく、好ましくは60体積%~80体積%であってもよく、より好ましくは60体積%~75体積であってもよい。また、前記環状エーテルの含有量は、非水系溶媒全体積に対して10体積%~30体積%であってもよく、好ましくは15体積%~25体積%であってもよい。
【0049】
前記線状エーテルと環状エーテルの体積比は9:1~1:9であってもよく、好ましくは8:2~2:8であってもよく、より好ましくは7:3~3:7であってもよい。
【0050】
また、前記線状エーテルと非溶媒の体積比は20:1~1:1であってもよく、好ましくは15:1~5:1であってもよく、より好ましくは15:1~3:1であってもよい。
また、前記環状エーテルと非溶媒の体積比は1:10~10:1であってもよく、好ましくは1:5~5:1であってもよく、より好ましくは1:4~1:1であってもよい。
【0051】
前記線状エーテルの含有量、環状エーテルの含有量、線状エーテルと環状エーテルの体積比、線状エーテルと非溶媒の体積比及び環状エーテルと非溶媒の体積比が前記範囲外の場合、電池の寿命特性の改善効果が不十分で所望の効果が得られないため、前記線状エーテルの含有量、環状エーテルの含有量、線状エーテルと環状エーテルの体積比、線状エーテルと非溶媒の体積比及び環状エーテルと非溶媒の体積比は、前記範囲を満たすことが好ましい。
【0052】
本発明のリチウム-硫黄二次電池用電解液は、添加剤として硝酸または亜硝酸系化合物をさらに含むことができる。前記硝酸または亜硝酸系化合物はリチウム電極に安定した被膜を形成し、充放電効率を向上させる効果を示す。このような硝酸または亜硝酸系化合物としては、本発明において特に限定するものではないが、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、硝酸バリウム(Ba(NO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、亜硝酸リチウム(LiNO)、亜硝酸カリウム(KNO)、亜硝酸セシウム(CsNO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)などの無機系硝酸または亜硝酸化合物;メチルニトラート、ジアルキルイミダゾリウムニトラート、グアニジンニトラート、イミダゾリウムニトラート、ピリジニウムニトラート、エチルニトライト、プロピルニトライト、ブチルニトライト、ペンチルニトライト、オクチルニトライトなどの有機系硝酸または亜硝酸化合物;ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエンなどの有機ニトロ化合物及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種であってもよく、好ましくは硝酸リチウム(LiNO)であってもよい。
【0053】
また、前記電解液は、充放電特性、難燃性などの改善を目的として他の添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤の例示としては、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロペンスルトン(PRS)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
【0054】
本発明のリチウム-硫黄二次電池用電解液の製造方法は、本発明において特に限定されず、当業界において公知の常法により製造することができる。
【0055】
また、本発明は、リチウム-硫黄二次電池用電解液を含むリチウム-硫黄二次電池を提供する。
【0056】
前記リチウム-硫黄二次電池は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する分離膜及び電解液を含むことができ、前記電解液として本発明に係るリチウム-硫黄二次電池用電解液を含むことができる。
【0057】
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質を含むことができる。
【0058】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。
【0059】
前記正極集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。
【0060】
前記正極活物質は、正極活物質と選択的に導電材及びバインダーを含むことができる。
【0061】
前記正極活物質は硫黄元素(Elemental sulfur、S);Li(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素-硫黄ポリマー((C)n:x=2.5~50、n≧2)からなる群より選択された1種以上であってもよい。好ましくは無機硫黄(S)を用いることができる。
【0062】
前記正極は、前記正極活物質の他に、遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄の合金から選択される1つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0063】
前記遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれてもよく、前記IIIA族元素としては、Al、Ga、In、Tiなどが含まれてもよく、IVA族元素としてはGe、Sn、Pbなどが含まれてもよい。
【0064】
前記導電材は、電気伝導性を向上させるためのもので、リチウム二次電池において化学変化を起こさない電子伝導性物質であれば特に制限されず、一般的にカーボンブラック(carbon black)、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末、導電性金属酸化物、有機導電材などを用いることができ、現在導電材として市販されている商品としては、アセチレンブラック系(シェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)またはガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製品)、ブルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製品)及びスーパーP(エムエムエム(MMM)社製品)などがある。例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。
【0065】
また、前記正極活物質は正極活物質を正極集電体に維持させ、活物質の間を繋ぐ機能を有するバインダーをさらに含むことができる。前記バインダーとしては、例えば、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)、スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)などの様々な種類のバインダーを用いることができる。
【0066】
前記正極としては、硫黄のローディング量が高い正極を用いることができる。前記硫黄のローディング量は3.0mAh/cm以上であってもよく、好ましくは4.0mAh/cm以上であってもよく、より好ましくは5.0mAh/cm以上であってもよい。
【0067】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質を含むことができる。または、前記負極はリチウム金属板であってもよい。
【0068】
前記負極集電体は、負極活物質の支持のためのもので、優れた導電性を有し、リチウム二次電池の電圧領域で電気化学的に安定したものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。
【0069】
前記負極集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。
【0070】
前記負極活物質は、リチウム(Li)を可逆的に吸蔵(Intercalation)または放出(Deintercalation)することができる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。前記リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵または放出することができる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレートまたはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム( Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群より選択される金属の合金であってもよい。好ましくは、前記負極活物質はリチウム金属であってもよく、具体的に、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であってもよい。
【0071】
前記負極活物質の形成方法は特に制限されず、当業界において通常用いられる層または膜の形成方法を用いることができる。例えば、圧着、コーティング、蒸着などの方法を用いることができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初期充電により金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も、本発明の負極に含まれる。
【0072】
前記分離膜は、本発明のリチウム-硫黄二次電池において正極と負極を物理的に分離するためのもので、通常、リチウム-硫黄二次電池において分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れるものが好ましい。
【0073】
前記分離膜は多孔性基材からなってもよく、前記多孔性基材は通常電気化学素子に用いられる多孔性基材であればいずれも使用が可能であり、例えばポリオレフィン系多孔性膜または不織布を用いることができるが、これに特に限定されるものではない。
【0074】
前記ポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した膜(membrane)が挙げられる。
【0075】
前記不織布としては、ポリオレフィン系不織布の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)及びポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)などをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した不織布が挙げられる。前記不織布の構造は、長繊維で構成されたスパンボンド不織布またはメルトブローン不織布であってもよい。
【0076】
前記多孔質基材の厚さは特に制限されないが、1~100μm、好ましくは5~50μmであってもよい。
【0077】
前記多孔質基材に存在する気孔の大きさ及び気孔も特に制限されないが、それぞれ0.001~50μm及び10~95%であってもよい。
【0078】
前記電解液はリチウムイオンを含み、これを媒介として正極と負極で電気化学的な酸化または還元反応を引き起こすためのもので、前述のことに従う。
【0079】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電気化学素子の製造工程のうち適切な段階で行うことができる。すなわち、電気化学素子の組み立て前または電気化学素子の組み立ての最終段階などで適用することができる。
【0080】
本発明に係るリチウム-硫黄二次電池は、一般的な工程である巻取り(winding)以外にも、分離膜と電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0081】
前記リチウム-硫黄二次電池の形状は特に制限されず、円筒型、積層型、コイン型など様々な形状とすることができる。
【0082】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであるだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【0083】
[実施例]
リチウム-硫黄二次電池用電解液の製造
実施例1-1
75M(mol/L)のリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)及び5重量%の硝酸リチウム(LiNO)を、非水系溶媒全体積に対して75体積%のジメトキシエタン(DME)、20体積%の2-メチルフラン(2-MeF)及び5体積%のトリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)の混合溶媒に溶解させ、リチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0084】
実施例1-2
ジメトキシエタン(DME)を70体積%で用い、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)10体積%で用いたことを除いては、実施例1―1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0085】
実施例1-3
ジメトキシエタン(DME)を60体積%で用い、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)20体積%で用いたことを除いては、実施例1-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0086】
実施例2-1
トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)の代わりに、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate、TDOF)を用いたことを除いては、実施例1-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0087】
実施例2-2
ジメトキシエタン(DME)を70体積%で用い、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate、TDOF)10体積%で用いたことを除いては、実施例2-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0088】
実施例2-3
ジメトキシエタン(DME)を60体積%で用い、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate、TDOF)20体積%で用いたことを除いては、実施例2-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0089】
比較例1-1
ジメトキシエタン(DME)を77体積%で用い、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)3体積%で用いたことを除いては、実施例1-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0090】
比較例1-2
ジメトキシエタン(DME)を58体積%で用い、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)22体積%で用いたことを除いては、実施例1-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0091】
比較例1-3
ジメトキシエタン(DME)を80体積%で用い、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)を用いていないことを除いては、実施例1-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0092】
比較例1-4
ジメトキシエタン(DME)を90体積%で用い、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)10体積%で用い、2-メチルフラン(2-MeF)を用いていないことを除いては、実施例1-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0093】
比較例1-5
2-メチルフラン(2-MeF)を90体積%で用い、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-trifluoroethyl)orthoformate、TFEO)10体積%で用い、ジメトキシエタン(DME)を用いていないことを除いては、実施例1-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0094】
比較例2-1
ジメトキシエタン(DME)を77体積%で用い、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate、TDOF)3体積%で用いたことを除いては、実施例2-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0095】
比較例2-2
ジメトキシエタン(DME)を58体積%で用い、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate、TDOF)22体積%で用いたことを除いては、実施例2-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0096】
比較例2-3
ジメトキシエタン(DME)を80体積%で用い、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate、TDOF)を用いていないことを除いては、実施例2-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0097】
比較例2-4
ジメトキシエタン(DME)を90体積%で用い、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate、TDOF)10体積%で用い、2-メチルフラン(2-MeF)を用いていないことを除いては、実施例2―1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0098】
比較例2-5
2-メチルフラン(2-MeF)を90体積%で用い、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate、TDOF)10体積%で用い、ジメトキシエタン(DME)を用いていないことを除いては、実施例2-1と同様の方法でリチウム-硫黄二次電池用電解液を製造した。
【0099】
前記実施例1-1~実施例1-3、実施例2-1~実施例2-3、比較例1-1~比較例1-5及び比較例2-1~比較例2-5のリチウム-硫黄二次電池用電解液のうち、線状エーテルと化学式1で表される化合物の含有量は、下記表1に示す通りである。
【0100】
【表1】
【0101】
[実験例]
リチウム-硫黄二次電池の寿命特性評価
硫黄をアセトニトリル中で導電材及びバインダーと共にボールミルを使用してミッシングして正極活物質スラリーを製造した。このとき、導電材としてはカーボンブラックを、バインダーとしてはSBRとCMCの混合形態のバインダーをそれぞれ使用し、混合比率は重量比で硫黄:導電材:バインダーが72:24:4となるようにした。前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体にローディング量が5.0mAh/cmとなるように塗布した後、乾燥して空隙率が68%の正極を製造した。また、厚さ45μmのリチウム金属を負極とした。
【0102】
前述の方法で製造した正極と負極を対面するように位置させた後、厚さ20μm、気孔度45%のポリエチレン分離膜を前記正極と負極との間に介在した。
【0103】
その後、ケース内部に前記実施例1-1~実施例1-3、実施例2-1~実施例2-3、比較例1-1~比較例1-5及び比較例2-1~比較例2-5に係る電解液を注入し、リチウム-硫黄二次電池を作製した。
【0104】
前記方法で製造されたリチウム-硫黄二次電池を0.1Cの電流密度で放電と充電を2.5回繰り返した後、0.2Cの電流密度で放電と充電を3回繰り返し、その後、0.5Cの電流密度で300サイクル進行しながら、リチウム-硫黄二次電池の容量維持率が80%である時点の寿命サイクルを測定することにより、電池の寿命特性を確認した。このとき得られた結果は、表2に示す通りである。
【0105】
【表2】
【0106】
ただし、線状エーテルを含まない比較例1-5及び比較例2-5に係る電解液は、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)及び硝酸リチウム(LiNO)を十分に溶解させることができないため、電池の駆動が難しく寿命特性を測定できなかった。
【0107】
前記表2に示すように、実施例1-1~1-3及び実施例2-1~1-3に係る電解液を適用したリチウム-硫黄二次電池の場合、比較例1-1~1-2及び比較例2-1~2-2に係る電解液を適用したリチウム-硫黄二次電池に比べて電池の寿命特性に優れることを確認することができた。
【0108】
具体的に、本発明に係るリチウム-硫黄二次電池は、非水系溶媒のうち化学式1で表される化合物(トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2,2-)trifluoroethyl)orthoformate))またはトリアルキルオルソフォーメート系化合物(トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルソフォーメート(Tris(2,2-difluoroethyl)orthoformate))の含有量が5体積%~20体積%である実施例1-1~実施例1-3及び実施例2-1~2-3に係るリチウム-硫黄二次電池用電解液を用いることにより、リチウム負極に安定したSEI(Solid-Electrolyte Interphase)膜を形成させ、リチウムとポリスルフィドとの間の反応及び電解液の分解を抑制し、電池の寿命特性が向上する効果を示す。
【0109】
また、実施例1-1~1-3及び実施例2-1~2-3に係る電解液を適用したリチウム-硫黄二次電池の場合、比較例1-3~1-5及び比較例2-3~2-5に係る電解液を適用したリチウム-硫黄二次電池に比べて電池の寿命特性に優れることを確認することができた。
【0110】
具体的に、本発明に係るリチウム-硫黄二次電池は、非水系溶媒として線状エーテル、環状エーテル、化学式1で表される化合物をいずれも含む実施例1-1~実施例1-3及び実施例2-1~実施例2-3に係るリチウム-硫黄二次電池用電解液を用いることにより、化学式1で表される化合物を含まない比較例1-3及び比較例2-3、環状エーテルを含まない比較例1-4及び比較例2-4、並びに線状エーテルを含まない比較例1-5及び比較例2-5に比べて電池の寿命特性に優れることを確認することができた。
【0111】
本発明の単純な変形または変更はすべて本発明の範囲に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明らかになるであろう。